平成21(わ)501 殺人未遂被告事件

裁判年月日・裁判所
平成22年4月14日 静岡地方裁判所 沼津支部
ファイル
hanrei-pdf-80142.txt

判決文本文2,174 文字)

平成22年4月14日宣告平成21年(わ)第501号殺人未遂被告事件判決主文被告人を懲役3年に処する。 この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予し,その猶予の期間中被告人を保護観察に付する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,陸上自衛官として勤務していた者であるが,同じ小隊に所属する先輩隊員のAから,自己が業務上の基本的事項でミスを繰り返すことについて重ねて指導を受けたことに嫌気が差し,かえって同人を憎悪するようになっていたところ,平成21年9月21日午後2時10分ころ,静岡県a郡b番地所在の陸上自衛隊甲駐屯地総合訓練場において,同人が他の隊員に対して演習訓練中の被告人のミスを話しているのを聞きつけて憤慨し,A(当時28歳)を殺害することを決意して,その背後から,右手に持った銃剣(刃体の長さ約165㎝)を同人の後頸部を目.掛けて突き刺したが,その刃が頭蓋骨に当たったため深く刺さらず,同人に全治約1週間を要する頭部刺切創の傷害を負わせたにとどまり,殺害の目的を遂げなかったものである。 (証拠の標目)省略(法令の適用)被告人の判示所為は刑法203条,199条に該当するところ,所定刑中有期懲役刑を選択し,判示の罪は未遂であるから同法43条本文,68条3号を適用して法律上の減軽をした刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処し,後記の情状により同法25条1項を適用してこの裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予し,なお同法25条の2第1項前段を適用して被告人をその猶予の期間中保護観察に付し,,。 訴訟費用は刑訴法181条1項本文によりこれを被告人に負担させることとする(量刑の事情)本件は,自衛官である被告人が,先輩隊員に憎しみを募らせ,同人の後頸部を銃剣で突き刺して殺害しようとしたが,未遂に終 用は刑訴法181条1項本文によりこれを被告人に負担させることとする(量刑の事情)本件は,自衛官である被告人が,先輩隊員に憎しみを募らせ,同人の後頸部を銃剣で突き刺して殺害しようとしたが,未遂に終わったという事案である。 ,,,,まず行為の態様を見ると被告人は他の隊員と会話中の被害者の背後に回り突然,先端が鋭くとがった殺傷用具である銃剣を逆手に持ち,これを急所である後頸部に目掛けて振り下ろしたのであり,その刺突箇所が少しずれれば致命傷となる可能性が高いものであった。無防備な者に対する,強固な殺意に基づく大胆かつ危険な犯行というべきである。また,国の安全を保つ任務に使用すべき銃剣を凶行に用いた点でも,強い非難に値する。 幸いにして被害者の負傷の程度は軽いものであったが,被害後約1週間はよく眠れなかったと述べるなど,精神的苦痛には軽視できないものがある。 そして,動機を見ると,被告人は,自衛隊入隊後,同期の者と比べても基本的事項の習得が遅く,先輩隊員らから重ねて指導を受けるうちに嫌気が差し,謙虚に自己を見つめ直すことが不十分なまま,時にはふてくされた態度も示すようになって更に指導を受けるという悪循環に陥っていた。そして,演習訓練中に厳しく指導していた先輩隊員らに対し,一方的に恨みを募らせた挙げ句,本件凶行に及んでいるのであって,犯行動機は逆恨みというほかなく,身勝手である。 以上によれば,被告人の刑事責任はかなり重いというべきである。 しかしながら,次のような酌むべき事情も指摘できる。すなわち,被告人の行為は決して正当化できるものではないが,その切っ掛けは,被害者が被告人の失態を他の隊員に話した上,被告人がそばにいるのを知りながら被告人とは組みたくない旨話すなど,配慮に欠けた言動に及んでいた点にある。また,被告人は,現時点では本件に至っ 切っ掛けは,被害者が被告人の失態を他の隊員に話した上,被告人がそばにいるのを知りながら被告人とは組みたくない旨話すなど,配慮に欠けた言動に及んでいた点にある。また,被告人は,現時点では本件に至った主たる原因は自分にあると認めており,他者との間で適切なコミュニケーションを築く能力に不安はあるものの,反省を深めようとしていると思われる。弁護人を通じて被害者に対し,謝罪の手紙を送った上,親の援助を得て100万円を支払い,示談を成立させている。そのため,被害者は厳重な処罰までは求めないと述べて,被害感情を緩和させている。これまでに前科がなく,20歳とまだ若い。本件により懲戒免職が見込まれ,社会的制裁を受けるとも評価できる。さらに,故郷から実父が出廷し,今後の更生を支援すると述べている。 これらの事情を総合考慮すれば,被告人の行為は甚だ危険で短慮というほかないが,先に指摘した被告人に有利に考慮すべき事情に照らすと,検察官の求刑である法定刑の最下限の懲役5年でも重すぎる。被告人に対しては,未遂減軽をした上,社会内で更生の道を歩ませるのが相当である。ただし,被告人の帰住先や就業先はいまだ確定しておらず,その性格傾向や家族関係も考慮すると,第三者による援助指導が必要であると考え,猶予期間中被告人を保護観察に付することとする。 (求刑懲役5年)平成22年4月14日静岡地方裁判所沼津支部刑事部片山隆夫裁判長裁判官岡田龍太郎裁判官西谷大吾裁判官

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る