令和2(ワ)20432 地位確認等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年5月13日 東京地方裁判所
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判決文本文47,964 文字)

令和6年5月13日判決言渡し同日原本領収裁判所書記官令和2年(ワ)第20432号地位確認等請求事件口頭弁論終結の日令和6年1月29日判決 主文 1 本件訴えのうち、原告が、被告に対し、基本給月額31万4500円の支給を受ける権利を有する地位にあることの確認を求める部分を却下する。 2 被告は、原告に対し、192万7200円及び別紙1の「各月の損害 額合計」欄記載の各金員に対する「損害発生日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は、原告に対し、130万4600円及び別紙2の「各月の損害額合計」欄記載の各金員に対する「損害発生日」欄記載の日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 4 被告は、原告に対し、55万円及びこれに対する令和2年2月18日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は、これを13分し、うち9を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 7 この判決は、第2項ないし第4項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主位的請求(1) 原告が、被告に対し、社宅管理規程に基づき月額3万6000円の負担を 求めることができる権利を有する地位にあることを確認する。 (2) 被告は、原告に対し、78万6280円並びに別紙3の「各月の損害額」欄記載の各金員に対する「損害発生日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員及び同別紙「弁護士費用」欄記載の金員に対する平成29年2月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 被告は、原告に対し、244万5520円並びに平 まで年5分の割合による金員及び同別紙「弁護士費用」欄記載の金員に対する平成29年2月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 被告は、原告に対し、244万5520円並びに平成30年3月から令和 2年3月までの別紙4の「各月の損害額」欄記載の各金員に対する「損害発生日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員、令和2年4月から令和6年3月までの同別紙の「各月の損害額」欄記載の各金員に対する「損害発生日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年3分の割合による金員、及び同別紙「弁護士費用」欄記載の金員に対する令和2年2月18 日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 (4) 原告が、被告に対し、基本給月額31万4500円の支給を受ける権利を有する地位にあることを確認する。 (5) 被告は、原告に対し、299万6300円並びに平成30年4月から令和2年3月までの別紙5の「各月の差額」欄記載の各金員に対する「差額発生 日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員、及び令和2年4月から令和6年3月までの同別紙の「各月の差額」欄記載の各金員に対する「差額発生日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 (6) 被告は、原告に対し、29万9630円及びこれに対する令和2年2月1 8日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (7) 被告は、原告に対し、440万円及びこれに対する令和2年2月18日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 (8) 被告は、原告に対し、110万円及びこれに対する令和3年7月14日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 (9) 被告は、原告に対し、55万円及びこれに対する令和3年3月 (8) 被告は、原告に対し、110万円及びこれに対する令和3年7月14日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 (9) 被告は、原告に対し、55万円及びこれに対する令和3年3月16日から 支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 2 予備的請求(1) (主位的請求(3)が認容されないときの予備的請求)被告は、原告に対し、244万5520円並びに平成30年3月から令和2年3月までの別紙4の「各月の損害額」欄記載の各金員に対する「損害発生日」欄記載の日から支 払済みまで年5分の割合による金員、令和2年4月から令和6年3月までの同別紙の「各月の損害額」欄記載の各金員に対する「損害発生日」欄記載の日から支払済みまで年3分の割合による金員、及び同別紙「弁護士費用」欄記載の金員に対する平成30年3月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) (主位的請求(5)及び(6)が認容されないときの予備的請求)被告は、原告に対し、329万5930円並びに平成30年4月から令和2年3月までの別紙5の「各月の差額」欄記載の各金員に対する「差額発生日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員及び令和2年4月から令和6年3月までの同別紙の「各月の差額」欄記載の各金員に対する「差額発生日」欄 記載の日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、被告の女性従業員である原告が、被告に対して以下の主位的請求(下記(1)ないし(5)記載の①~⑨)及び予備的請求(下記(6)記載の⑩及び⑪)をす る事案である。 (1) 原告が、被告が総合職に対してのみ社宅制度(被告の社宅管理規程に基づき、被告が従業員の居住する賃貸住宅の借主となって賃料 び予備的請求(下記(6)記載の⑩及び⑪)をす る事案である。 (1) 原告が、被告が総合職に対してのみ社宅制度(被告の社宅管理規程に基づき、被告が従業員の居住する賃貸住宅の借主となって賃料等を全額支払い、その一部を当該従業員の賃金から控除し、その余を被告が負担する制度。以下同じ。)の利用を認めているのが、雇用の分野における男女の均等な機会及 び待遇の確保等に関する法律(以下「均等法」という。)6条2号、同法7条 及び民法90条に違反すると主張して、① 原告が社宅管理規程に基づき月額3万6000円の負担を求める権利を有する地位にあることの確認② 平成29年2月27日から平成30年2月27日までの期間について、社宅制度の男女差別に係る不法行為に基づく損害賠償及び遅延損害金の支 払③ 平成30年3月27日から令和6年3月25日までの期間について、社宅制度に基づく賃料負担義務の不履行を理由とする損害賠償及び遅延損害金の支払を求めている。 (2) 原告が、男性の一般職と原告との間にある賃金格差が労働基準法(以下「労基法」という。)4条に違反すると主張して、④ 原告が基本給月額31万4500円の支給を受ける権利を有する地位にあることの確認⑤ 労働契約による賃金請求権に基づき、平成30年4月から令和6年3月 までの各賃金の差額及び遅延損害金の支払⑥ 上記⑤に対応する弁護士費用及びこれに対する遅延損害金の支払を求めている。 (3) 原告が、社宅制度の男女差別及び男女賃金差別が違法であると主張して、⑦不法行為ないし債務不履行に基づく慰謝料及び弁護士費用並びにこれに対 する遅延損害金の支払を求めている。 (4) 原告が、被告による違法な業務外しをされたと主張して、⑧不法行為に基 して、⑦不法行為ないし債務不履行に基づく慰謝料及び弁護士費用並びにこれに対 する遅延損害金の支払を求めている。 (4) 原告が、被告による違法な業務外しをされたと主張して、⑧不法行為に基づく損害賠償及び遅延損害金の支払を求めている。 (5) 原告が、被告による違法な査定により低い人事考課をされたと主張して、⑨不法行為に基づく損害賠償及び遅延損害金の支払を求めている。 (6) 原告は、上記(1)③が認容されない場合に備え、⑩平成30年3月27日か ら令和6年3月25日までの期間に係る社宅制度の男女差別による不法行為に基づく損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払を、上記(2)⑤及び⑥が認容されない場合に、⑪平成30年4月から令和6年3月までの期間に係る男性一般職との男女賃金差別による不法行為に基づく損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払を予備的に求めている。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実。なお、書証は特記しない限り枝番を全て含む。以下同じ。)(1)ア被告は、ビニフレーム工業株式会社が取り扱っていた農業ハウス用フッ素フィルム「エフクリーン」の販売事業を、旭硝子株式会社(現在のAG C株式会社(以下「AGC」という。))が買収したことに伴い、同事業を運営するための100%子会社として、平成11年6月23日に設立された株式会社である。被告は、本社を東京都に置き、東日本営業所(埼玉県加須市)、中日本営業所(愛知県豊川市)、西日本営業所(福岡県久留米市)を有している(甲2、3)。 イ原告は、昭和●年●月●日生の独身女性であり、短期大学を卒業後、平成20年4月から紹介予定派遣で被告の管理室(当時の名称は事務部)で勤務した後、同 留米市)を有している(甲2、3)。 イ原告は、昭和●年●月●日生の独身女性であり、短期大学を卒業後、平成20年4月から紹介予定派遣で被告の管理室(当時の名称は事務部)で勤務した後、同年7月頃に被告に正社員として採用され、現在まで管理室での業務に従事している(甲73)。平成30年6月には簿記検定3級の資格を取得した(甲6)。 (2) 被告の就業規則、給与規程及び社宅管理規程(以下、これらの規程を併せて「就業規則等」ということがある。)には別紙6の規定がある。 総合職と一般職の区分については、平成12年8月1日制定の給与規程2条に、「この規程において総合職とは、会社の命ずる任地に赴任することが可能であり、その任地での業務を円滑に遂行できる能力があると認められる職 能をいう。」(同条1項)、「この規程において一般職とは、前項以外の職能を いう。」(同条2項)との規定が置かれて以来、改定を経つつも賃金規程において同様の定義がされていた(別紙6「給与規程」欄)。 その後、平成27年4月1日の就業規則改定により、就業規則上、期間の定めのない従業員につき、総合職と一般職の区分が設けられ(2条2項(1))、総合職は、被告の命ずる任地に赴任することが可能であり、職能ランク基準 に相応する専門知識を基礎とした総合的な判断能力を発揮し、非定型で幅のある業務を円滑に遂行する能力があると認められる者、一般職は、一般事務等の定型的、補助的な業務に従事する職種であり、就業場所に異動がない者と定義されている(別紙6「就業規則」欄)。 総合職に位置づけられる従業員は、本社勤務の管理職数名のほかは、各営 業所に勤務する営業職が多数を占めている(乙34、弁論の全趣旨)。 社宅制度に関する社宅管理規程の定めは、当初は被告が命 総合職に位置づけられる従業員は、本社勤務の管理職数名のほかは、各営 業所に勤務する営業職が多数を占めている(乙34、弁論の全趣旨)。 社宅制度に関する社宅管理規程の定めは、当初は被告が命ずる任地への通勤が困難と認められ転居することとなった総合職を対象とするものであったが、平成23年7月以降は適用対象が転勤に関する事情と無関係な場合にも拡大され、平成30年3月16日の改定により、社宅管理規程上も、通勤圏 に自宅を保有しない60歳未満の総合職に対しては、被告が必要と認めた場合に社宅制度の適用がある旨が明確にされた(別紙6「社宅管理規程」欄)。 なお、被告が総合職からの社宅制度適用の申出を許可しなかった例は存在しない(弁論の全趣旨)。 (3) A(平成30年4月9日時点で満●歳)は、平成22年4月1日から平成 26年9月25日まで被告の総合職として勤務していた者であり、他社での勤務の後、平成30年7月1日付けで被告の一般職として採用され、令和5年10月16日に総合職に登用された(乙7、9、弁論の全趣旨)。 3 争点① 被告が一般職に社宅制度の利用を認めていないことは直接差別又は間接差 別として違法といえるか否か(争点1-1) ② 原告が社宅管理規程に基づき月額3万6000円の負担を求める権利を有する地位の有無(争点1-2)③ 被告が原告に社宅管理規程を適用しないことが債務不履行に当たるか否か(平成30年3月27日から令和6年3月25日までの期間分)(争点1-3) ④ 社宅制度に係る不法行為の成否(平成29年2月27日からから令和6年3月25日までの期間分。ただし、平成30年3月27日から令和6年3月25日までの期間分は争点1-3に係る請求の予備的請求)(争点1-4)⑤ Aと原告との賃 (平成29年2月27日からから令和6年3月25日までの期間分。ただし、平成30年3月27日から令和6年3月25日までの期間分は争点1-3に係る請求の予備的請求)(争点1-4)⑤ Aと原告との賃金の差に労基法4条違反があるか否か及び原告に支給されるべき賃金額(争点2-1) ⑥ 原告に支給されるべき賃金額との差額賃金請求の可否(争点2-2)⑦ 差額賃金請求に係る弁護士費用の請求の可否(争点2-3)⑧ 賃金格差に係る不法行為の成否(争点2-2及び争点2-3に係る請求の予備的請求)(争点2-4)⑨ 社宅制度の男女差別及び賃金格差に係る慰謝料請求等の可否(争点3) ⑩ 違法な業務外しによる不法行為の成否(争点4)⑪ 違法査定による不法行為の成否(争点5) 4 争点に関する当事者の主張(1) 被告が一般職に社宅制度の利用を認めていないことは直接差別又は間接差別として違法といえるか否か(争点1-1) 【原告の主張】ア直接差別の主張住宅の貸与に関しては、均等法6条2号、均等法施行規則1条4号により、労働者の性別を理由とする差別的取扱い(直接差別)が禁止されているところ、男性である総合職には社宅制度の利用を認め、女性である一般 職には給与規程に基づく住宅手当の支給にとどまる結果、著しい待遇の格 差(例えば、平成23年当時、一般職への住宅手当は月額3000円であったのに対し、自己都合の総合職が家族寮を利用した場合、家賃月額8万2000円とすると、被告の負担金額は6万5600円であり、約21倍の格差となる。)が存在するのであり、このような場合には、待遇の格差が性差によるものと推定し、合理的理由に基づく理由がなければ直接差別に 該当し違法というべきである。 また、被告は、採用時に、男性 差となる。)が存在するのであり、このような場合には、待遇の格差が性差によるものと推定し、合理的理由に基づく理由がなければ直接差別に 該当し違法というべきである。 また、被告は、採用時に、男性を営業職として、女性を事務職とし、その後男性を「総合職」へ、女性を「一般職」へ振り分けていること、被告に総合職と一般職との間に転換制度がなく、女性に不利益な取り扱いとなることを容認していたこと、年齢給の昇給幅の差や経験給の格差を設ける などの労働条件において性別を理由にした差別を行っていることなどからすれば、社宅制度を総合職にのみ利用させていることは性別による差別であることは明らかであるといえる。 そして、被告は総合職に社宅制度を適用するのは、営業職を確保する目的がある、総合職の労働の対価が含まれるなどと主張するが、いずれも実 態に反するものであり、上記格差を正当化する合理的理由とは言えない。 さらに、原告は総合職相当の業務を遂行しており、このことからも、社宅制度の適用を認めないことに合理的な理由を欠く。 以上より、被告が一般職に社宅制度の利用を認めていないことは、性別を理由に差別的取扱いをするものであり、均等法6条2号に反し違法であ り、民法90条違反でもある。 イ間接差別の主張被告が一般職に社宅制度の利用を認めていないことが均等法6条2号違反とはいえないとしても、間接差別(均等法7条)に当たる。 被告においては、総合職は過去に在籍した1名の女性従業員を除き全員 が男性であり、一般職は総合職に転換した1名の男性従業員を除き全員女 性である。総合職には社宅制度の適用があり、一般職には社宅制度の適用がないという取り扱いは、総合職と一般職の男女の構成からして、女性が社宅制度の適用から排除される結果になり、 を除き全員女 性である。総合職には社宅制度の適用があり、一般職には社宅制度の適用がないという取り扱いは、総合職と一般職の男女の構成からして、女性が社宅制度の適用から排除される結果になり、女性が不利益な扱いを受けることは明らかであり、実質的に女性であることを理由とする差別に当たる。 その上、社宅制度の利用を一般職(女性)に認めない理由が、一般職に転 勤がないことにあるところ、これは均等法7条が禁じた「労働者の住居の移転を伴う配置転換に応じることができることを要件とするもの」を理由とすることにほかならない。 したがって、間接差別として、合理的理由がない限り、均等法7条(直接又は類推適用)ないし民法90条に違反し違法である。そして、合理的 理由がないことは、上記アのとおりである。 よって、被告が一般職に社宅制度の利用を認めていないことは、均等法7条(直接適用又は類推適用)ないし民法90条に違反し違法である。 【被告の主張】ア直接差別に当たらないこと 被告が一般職を女性と、総合職を男性として区分けして取り扱っている事実はないことから、一般職に社宅制度の利用を認めていないことは、直接差別(均等法6条2号)に当たらない。そもそも、被告は、女性が総合職に応募しやすいように、海外営業担当と明示して募集するなどの工夫をしたこともあり、過去に女性の総合職も、男性の一般職も在籍していたの である。一般職がほとんど女性で構成されているのは、採用時に男性の応募が少なく、応募者の中でより高い評価を得たのが女性だったことによる結果にすぎない。以上より、一般職に社宅制度の利用を認めていないことが直接差別に当たらないことは明らかである。 イ間接差別に当たらないこと 被告には全国3か所に展開する支店があり、被告の営 果にすぎない。以上より、一般職に社宅制度の利用を認めていないことが直接差別に当たらないことは明らかである。 イ間接差別に当たらないこと 被告には全国3か所に展開する支店があり、被告の営業職のうち3分の 1の人員は転勤を経験しており、営業所で担当するエリアごとに顧客の形態が異なり、複数のエリアでの営業を経験することが必要であり、営業所の所長には営業所を1~2か所経験した者が就任していることからすれば、被告が転勤に応ずることができることを社宅制度の利用要件としていることは合理的である。 被告では、総合職に利用させる目的で社宅制度を整備しているところ、これは、単なる福利厚生ではなく、営業職の採用戦略の一環とされてきた。 被告にとって営業職の確保は最重要課題といえるが、被告の営業職はいわゆる3Kと呼ばれる職場であり、採用競争における優位性を確保するため、被告は採用の際に、社宅提供を提示してきたのである。また、労働の対価 という趣旨も含まれている。 以上より、被告が、社宅制度の利用を総合職に認め、転勤の必要のない一般職に利用を認めていないことに合理的な理由がある。 (2) 原告が社宅管理規程に基づき月額3万6000円の負担を求める権利を有する地位の有無(争点1-2) 【原告の主張】平成30年3月16日に施行された社宅管理規程は、「本規程は、就業規則第28条に基づき、当社(以下、会社という)が総合職社員・・・に貸与する社宅に関する事項について定める。」旨規定している(甲27・1条)ところ、「総合職」の箇所は上記(1)【原告の主張】欄に記載のとおり違法無効であ るものとして一般職を含む「社員」と読み替えるべきである。 原告は、平成30年1月13日、労働組合を通じて被告に対して社宅制度を女性従 は上記(1)【原告の主張】欄に記載のとおり違法無効であ るものとして一般職を含む「社員」と読み替えるべきである。 原告は、平成30年1月13日、労働組合を通じて被告に対して社宅制度を女性従業員に適用することを求めており、これによって、原告の社宅制度利用の申し出がされている。また、令和2年2月17日の要求書でも当該申し出を行い、念のため訴状においても社宅制度利用の申し出をする。 原告は、40歳以上50歳未満であるから、別紙6に基づくと、被告が月 額賃料の50%を負担することになる。そして、原告の現在の月額賃料7万2000円であり、そのうちの50%は3万6000円である。 よって、原告が、被告に対して、社宅管理規程に基づき月額3万6000円の負担を求める権利を有する地位にあることの確認を求める。 【被告の主張】 被告の社宅制度は総合職を対象としており、上記(1)【被告の主張】のとおり適法である。したがって、原告の主張は認められない。 (3) 被告が原告に社宅管理規程を適用しないことが債務不履行に当たるか否か(争点1-3)【原告の主張】 原告は社宅制度の利用ができるため、被告は、原告に対して、平成30年3月27日から令和6年3月25日までの期間中、原告の賃料支払日までに、社宅管理規程で定めた負担率に応じた賃料を負担する債務を負っていた。 原告は、独身者・本社勤務であるため、原告が40歳になるまでの平成30年3月から同年7月までの間、被告は、原告の賃料月額9万円までは毎月 25日までに80%を負担する債務を負っていた。 原告が40歳となった令和元年8月以降、被告は、原告の賃料月額9万円までは毎月25日までに50%の負担をする債務を負っていた。 それにもかかわらず、被告は、上記債務の履行を する債務を負っていた。 原告が40歳となった令和元年8月以降、被告は、原告の賃料月額9万円までは毎月25日までに50%の負担をする債務を負っていた。 それにもかかわらず、被告は、上記債務の履行を怠ってきたから、原告は別紙4記載の損害発生日に対応する各月の損害額欄記載の損害を被った。各 金額の根拠は以下のとおりである。また、賃料支払日は令和4年2月までは毎月27日、同年3月以降は毎月25日となっている。 ア平成30年3月から令和元年7月まで原告の月額賃料 7万2000円(甲44)被告の負担すべき額 5万7600円 住宅手当 1万2000円(甲19) 差額(損害) 4万5600円イ令和元年8月から令和5年3月まで原告の月額賃料 7万2000円(甲44・45・69)被告の負担すべき額 3万6000円住宅手当 1万2000円(甲19) 差額(損害) 2万4000円ウ令和5年4月から令和6年3月まで原告の月額賃料 7万2000円(甲69)被告の負担すべき額 3万6000円住宅手当 1万5000円(甲19) 差額(損害) 2万1000円エ更新料について原告は、平成30年2月27日、令和2年2月27日及び令和4年2月27日に、それぞれ更新料相当額7万円の損害を被った。 【被告の主張】 被告の社宅制度は総合職を対象としており、被告は原告に対し、原告の賃料支払日までに、社宅管理規程で定めた負担率に応じた賃料を負担する債務は負っていない。 したがって、債務不履行はない。 (4) 社宅制度に係る不法行為の成否(争点1-4) 【原告の主張】上記のとおり、被告が一般職に社宅制度の利用を認め 料を負担する債務は負っていない。 したがって、債務不履行はない。 (4) 社宅制度に係る不法行為の成否(争点1-4) 【原告の主張】上記のとおり、被告が一般職に社宅制度の利用を認めていないことは違法であり、不法行為を構成する。 ア平成29年2月27日から平成30年2月27日までの期間分社宅制度を利用していれば、原告が支出する必要のなかった家賃(毎月 25日が賃料支払日である。)及び更新料相当額が損害に当たる。 したがって、別紙3記載のとおり、損害発生日欄に各月の損害額欄記載の各損害が発生した。 また、訴訟追行のために必要な弁護士費用も相当因果関係の認められる損害額であり、上記合計額の1割に相当する7万1480円が認められるべきであり、平成29年2月27日に遅滞に陥ったというべきである。 イ平成30年3月27日から令和6年3月25日までの期間分(争点1-3に係る請求の予備的請求)被告が原告の社宅管理規程に定める割合の原告の家賃を負担しないことは債務不履行に当たるが、予備的に、不法行為に基づく損害賠償請求権により、上記(3)【原告の主張】に記載したのと同額の損害賠償を請求する(な お、第1の請求欄に掲記のとおり、遅延損害金の起算日及び利率は異なる。)。 【被告の主張】被告が一般職に社宅制度の利用を認めていないことは適法であり、不法行為を構成しない。 (5) Aと原告との賃金の差に労基法4条違反があるか否か及び原告に支給されるべき賃金額(争点2-1)【原告の主張】被告が平成30年3月16日に改定した就業規則等では、総合職用の給与テーブルと一般職用の給与テーブルが定められており、総合職と一般職 とでは賃金体系が異なる。 被告は、この改定した給与規程に基づ が平成30年3月16日に改定した就業規則等では、総合職用の給与テーブルと一般職用の給与テーブルが定められており、総合職と一般職 とでは賃金体系が異なる。 被告は、この改定した給与規程に基づき号俸を付与するに際し、原告が実際に行っている業務にふさわしく是正を図り基本給の号俸を付与するという考慮は全くせず、平成30年3月に原告は、一般職の27号俸(別紙6別表2を参照)を付与された。 これに対して、Aには一般職の48号俸(別紙6別表2を参照)が付与 されているが、Aと原告との間には著しい格差があり、基本給及び賞与について著しい格差が生じている。 原告とAの年齢差は1歳であり、勤続年数は原告の方が10年近くも長く、労働契約上の法的な地位は全く同一であり、原告は実質的に総合職の業務を遂行していたのであるから、原告はAと量と質において同等以上の 業務を行ってきたのであるが、それにも関わらず、男女間で上記のような著しい待遇の格差が存在する以上、当該格差は性別を理由としたものと推定して、当該格差が合理的な理由に基づくことを被告において主張立証すべきであり、立証できなければ、性別を理由とした差別として労基法4条及び民法90条の公序良俗違反として違法というべきである。 そして、Aが過去に総合職であったとしても、一般職としての賃金格差が問題となっていること、原告は総合職相当の業務を10年以上にわたって遂行してきた実績があること、平成30年3月の給与規程の改定に際し、被告は原告の担当業務の実態にふさわしい号俸を付与すべきであったのにそれをしていないことからすれば、被告の主張する理由は、原告とAと の賃金格差を正当化できるものではない。 したがって、原告とAとの賃金格差は労基法4条及び民法90条の公序良俗に違 ったのにそれをしていないことからすれば、被告の主張する理由は、原告とAと の賃金格差を正当化できるものではない。 したがって、原告とAとの賃金格差は労基法4条及び民法90条の公序良俗に違反する違法なものである。 よって、労基法4条及び13条により、原告は、Aの現在の月額基本給と同額の基本給の支給を受ける権利がある。Aの現在の基本給は月額31 万4500円であるから、原告は、基本給月額31万4500円の支給を受ける権利を有する地位を有している。 【被告の主張】Aは、平成30年7月に中途採用で被告の一般職として採用されたものであるが、その際の就労条件は同人の前職の給与を参考として同人と協議 の上決定したものである。すなわち、採用の際に、同人から被告に希望す る給与額が伝えられたところ、その金額が同人の前職の給与額を下回っていたことから、希望額で決定したものである。 そもそも、Aは、過去に被告の総合職として勤務しており、総合職としての能力を備え、他の企業に転職してさらに経験を積んでおり、英語や韓国語の資格・能力を有しているなど、被告に有益な経験と能力を有してい たのであり、そのような人物の給与が原告の給与額を上回ることは何ら不当ではない。 (6) 原告に支給されるべき賃金額との差額賃金請求の可否(争点2-2)【原告の主張】平成30年3月16日以降、毎年3月16日に労基法4条及び13条に基 づき原告の賃金額は、Aと同額になるのであるから、原告は、被告に対して、以下の差額について賃金請求権を有する。 ア平成30年4月支払分から平成31年3月支払分Aの月額基本給は、平成30年7月1日に同人が入社した時点で29万4000円であるから、原告には月額基本給と同額支払われるべきである 。 ア平成30年4月支払分から平成31年3月支払分Aの月額基本給は、平成30年7月1日に同人が入社した時点で29万4000円であるから、原告には月額基本給と同額支払われるべきである が、26万8000円しか支払われておらず、毎月25日限り2万6000円の差額が発生している。 また、Aの賞与は合計148万4700円であるところ、原告には135万3400円しか支給されていないから、賞与支払日である平成30年7月15日及び同年12月15日限り、各6万5650円の差額が発生し ている。 イ平成31年4月支払分から令和2年3月支払分被告は、平成31年3月16日の賃金改定により、Aの号俸を50とし、月額基本給として30万0500円を、賞与として年間合計157万7625円支給した。 これに対して、原告には月額基本給として27万3500円しか支給し ていないから、毎月25日限り2万7000円の差額が発生している。 また、原告には賞与として年間合計143万5873円しか支給していないから、令和元年7月15日及び同年12月15日限り、各7万0875円の差額が発生している。 ウ令和2年4月支払分から令和3年3月支払分 被告は、令和2年3月16日の賃金改定により、Aの号俸を53とし、月額基本給として30万6500円を、賞与として年間合計160万9125円を支給した。 これに対して、原告には月額基本給として27万6500円しか支給していないから、毎月25日限り3万円の差額が発生している。 また、原告には賞与として年間合計145万1625円しか支給していないから、令和2年7月15日及び同年12月15日限り、各7万8750円の差額が発生している。 エ令和3年4月支払分から令和4年3月支払分 は賞与として年間合計145万1625円しか支給していないから、令和2年7月15日及び同年12月15日限り、各7万8750円の差額が発生している。 エ令和3年4月支払分から令和4年3月支払分被告は、令和3年3月16日の賃金改定により、Aの号俸を55とし、 月額基本給として31万0500円を、賞与として年間合計163万0125円を支給した。 これに対して、原告には月額基本給として月額27万9500円しか支給していないから、毎月25日限り3万1000円の差額が発生している。 また、原告には賞与として年間合計146万7375円しか支給してい ないから、令和3年7月15日及び同年12月15日限り、各8万1375円の差額が発生している。 オ令和4年4月支払分から令和5年3月支払分被告は、令和4年3月16日の賃金改定により、Aの号俸を57とし、月額基本給として31万2500円を、賞与として年間合計164万06 25円を支給した。 これに対して、原告には月額基本給として月額28万2500円しか支給していないから、毎月25日限り3万円の差額が発生している。 また、原告には賞与として年間合計148万3125円しか支給していないから、令和4年7月15日及び同年12月15日限り、各7万8750円の差額が発生している。 カ令和5年4月支払分から令和6年3月支払分被告は、令和5年3月16日の賃金改定により、Aの号俸を59とし、月額基本給として31万4500円を、賞与として年間合計165万1125円を支給した。 これに対して、原告には月額基本給として月額28万4500円しか支 給していないから、毎月25日限り3万円の差額が発生している。 また、原告には賞与として年間合計149万3625円しか支給し これに対して、原告には月額基本給として月額28万4500円しか支 給していないから、毎月25日限り3万円の差額が発生している。 また、原告には賞与として年間合計149万3625円しか支給していないから、令和5年7月15日及び同年12月15日限り、各7万8750円の差額が発生している。 キ小括 以上のとおり、原告は、被告に対し、合計299万6300円の差額賃金請求権を有している。 【被告の主張】原告の主張は争う。 (7) 差額賃金請求に係る弁護士費用の請求の可否(争点2-3) 【原告の主張】被告のAと原告との男女賃金差別による債務不履行により、原告は弁護士に訴訟追行を委任せざるを得ず、原告は少なくとも299万6300円の損害を被った。 男女賃金差別の債務不履行は、労基法4条、民法90条違反の不法行為も 同時に成立するものであるから、男女賃金差別と相当因果関係のある弁護士 費用の請求が認められるべきである。 よって、原告は、被告に対し、男女賃金差別の債務不履行に基づき、29万9630円の弁護士費用に係る損害が発生している。 そして、原告は、令和2年2月17日に、労働組合を通じ、被告に対して、男女差別による一切の損害金の請求をしているから、同日の経過をもって遅 滞に陥っている。 【被告の主張】原告の主張は争う。 (8) 賃金格差に係る不法行為の成否(争点2-4)【原告の主張】 被告が、原告が女性であることを理由として、Aより低い号俸を付したことは労基法4条、民法90条に反し違法である、被告には故意又は過失がある。そして、上記(6)【原告の主張】及び(7)【原告の主張】で主張したのと同様の損害が生じている。 したがって、原告は、被告に対し、賃金格差に係る不法行 に反し違法である、被告には故意又は過失がある。そして、上記(6)【原告の主張】及び(7)【原告の主張】で主張したのと同様の損害が生じている。 したがって、原告は、被告に対し、賃金格差に係る不法行為に基づく損害 賠償請求を有しており、その具体的な金額は上記(6)【原告の主張】及び(7)【原告の主張】と同内容である(なお、第1の請求欄に掲記のとおり、遅延損害金の起算日及び利率は異なる。)。 【被告の主張】原告の主張は争う。 (9) 社宅制度の男女差別及び賃金格差に係る慰謝料請求等の可否(争点3)【原告の主張】上記(3)(4)【原告の主張】のとおり、被告が一般職に社宅制度の利用を認めていないことは、違法であり債務不履行又は不法行為を構成する。上記(6)ないし(8)【原告の主張】のとおり、被告が、原告が女性であることを理由とし てAより低い号俸を付したことは違法であり債務不履行又は不法行為に該当 する。 これにより、原告には精神的苦痛が生じており、それを慰謝するための金額は400万円をくだらない。また、弁護士費用としてその1割の40万円とするのが相当である。 したがって、原告は被告に対し、慰謝料等について440万円の損害賠償 請求権を有しており、これは令和2年2月18日に遅滞に陥っている。 【被告の主張】原告の主張は争う。 (10) 違法な業務外しによる不法行為の成否(争点4)【原告の主張】 被告は、①令和2年11月以降、それまで原告が担当していた経費システムの設定・運用について、支払依頼登録マスタという設定を除いて原告に関与させないこととし、②令和3年6月30日、それまで原告が単独で行っていた算定基礎届、賞与支払届、労働保険申告書及び高年齢雇用継続給付金について、B(以下 払依頼登録マスタという設定を除いて原告に関与させないこととし、②令和3年6月30日、それまで原告が単独で行っていた算定基礎届、賞与支払届、労働保険申告書及び高年齢雇用継続給付金について、B(以下「B」という。)が事前に内容を確認するよう変更し、③令 和3年7月14日、それまで原告が使用していた被告の実印及び銀行印の使用禁止を命じ、原告が行っていた払込票での支払処理、所得税納付、手形の処理について、原告に単独ではできないようにし、④令和3年7月14日、それまで原告が単独で行っていた銀行印での手形への押印をC(以下「C室長」という。)の担当とし、手形が届いた際の領収書の発行業務にC室長又は Bの確認を必要とし、⑤令和3年7月14日、それまで原告が単独で行っていた売掛金残高確認書をC室長又はBの確認を必要とし、⑥原告が担当していた従業員の社用携帯電話の機種変更の際の業務から事前告知なく原告を外し、⑦令和3年11月25日、原告が手配などを担当していた健康診断業務を全てBの担当とするなどの業務外しを行った。 これらの業務外しは、業務命令権の行使として行われたものであるところ、 業務上の必要性を欠き、手続的相当性を欠き、業務命令権の濫用として原告の人格権を侵害し違法である。 これによって原告に生じた精神的苦痛を慰謝するには100万円をくだらない。また弁護士費用としてはその1割の10万円とするのが相当である。 【被告の主張】 原告の主張する①は、経費に関わる全ての処理をまとめて効率化できるクラウド型の経費精算システムであるところ、その導入作業は責任者をC室長として管理室全体で行い、原告はマスタ登録という作業を分担していた。原告はそのマスタ登録作業を実施したことで、原告の業務自体は終了したということにすぎな ムであるところ、その導入作業は責任者をC室長として管理室全体で行い、原告はマスタ登録という作業を分担していた。原告はそのマスタ登録作業を実施したことで、原告の業務自体は終了したということにすぎない。 原告の主張する②~⑤は、企業コンプライアンスに基づき業務の見直しを行ったことによる結果であり、業務上の必要性のある合理的な措置である。 原告の主張する⑥については、原告がC室長に対して自らの業務としては申告していなかったこと、C室長が原告に対して携帯電話の機種変更の手続を質問したものの原告がわからないと回答したことからC室長が実施したと いう経緯であり、違法な業務外しと評価されるものではない。 原告が主張する⑦については、システム変更によって健康診断の予約を各従業員が行うことになったことによるものである。また、現在でも従業員に対する連絡は原告が行っており(乙51)、恣意的に原告を業務から外したというものではない。 以上より、違法な業務外しなどと評価されるものはない。 (11) 違法査定による不法行為の成否(争点5)【原告の主張】原告は平成31年3月実施の人事考課(以下「平成30年度考課」という。)、令和2年3月実施の人事考課(以下「令和元年度考課」という。)及び令和3 年3月実施の人事考課(以下「令和2年度考課」といい、これらを併せて「本 件各考課」という。)により、いずれも給与テーブル上のランクが1号俸昇級しているが、上記3年度で他の一般職が平均して合計6号俸昇級しているのに対し、その半分の合計3号俸の昇級にとどまる。 原告は、総合職が行う業務を行ってきたのであり、一般職の平均の半分という低い査定をされる合理的な理由は存在しない。低い査定となったのは原 告が労働組合を通じて団体交渉 3号俸の昇級にとどまる。 原告は、総合職が行う業務を行ってきたのであり、一般職の平均の半分という低い査定をされる合理的な理由は存在しない。低い査定となったのは原 告が労働組合を通じて団体交渉を行ったことや本件訴訟提起の影響があるというべきである。 また、被告は、自らの定める手続に則らずに人事考課を行っており、公正な人事考課といえるものではない。 したがって、被告が原告に対して行った平成30年度考課、令和元年度考 課、令和2年度考課は、それぞれ人事考課権(労働契約法3条5項)の濫用として被告は不法行為責任を負う。 そして、違法な査定により、原告は精神的苦痛を被り、その苦痛を慰謝するには令和3年3月16日の査定(令和2年度考課)の時点で50万円を下らない。また、弁護士費用としてはその1割である5万円とするのが相当で ある。 【被告の主張】原告は、本件各考課により現状維持で据え置かれたことはなく、毎年1号俸の昇級を繰り返している。しかも、他の一般職の職員と著しい違いがあるわけではない。 原告の担当する業務の性質から達成目標を設定しにくいとしても、それは工夫次第であるが、原告の評価の元となる達成目標には具体性に欠けるところがあるので(乙59、60の1、60の2、61)、それを考慮したうえでも評価としては1号俸の昇級を繰り返している以上、本件各考課における被告の評価に不適切な点はないというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 訴えの利益について確認の訴えは、確認の利益が認められる場合、すなわち判決の既判力をもって法律関係の存否を確定することが、提訴者の権利又は法律関係に生じている現実的な不利益又は危険を除去するために有効かつ適切である場合に限って許容されると解すべきである。原告は わち判決の既判力をもって法律関係の存否を確定することが、提訴者の権利又は法律関係に生じている現実的な不利益又は危険を除去するために有効かつ適切である場合に限って許容されると解すべきである。原告は、基本給月額31万4500円の支給を受 ける権利を有する地位にあることの確認を求めているところ、原告が、月例賃金の差額請求とは別途、かかる確認を求めることが原被告間の紛争を解決するために有効かつ適切であると認めることはできない。したがって、本件訴えのうち、上記確認を求める部分は、確認の利益を欠くものであり、不適法であるとして却下を免れない。 2 認定事実(前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認められる。)(1) 被告の業務内容(甲3、乙1、2、34、弁論の全趣旨)被告は、農業用ハウスの屋根、側面、又はビニールハウスの外覆材として使用されるエフクリーンの販売を業とする。被告の営業職は、全国の農業協 同組合や農家、農業用ハウスの設置業者を訪問して営業活動を行っている。 そのうち農家に対する営業活動では、取扱業者とともに、営業車両で各地の農家を訪れ、農地におけるエフクリーンの性能・設置方法の説明、試験的な設置による販促活動等を行っている。 被告の本社(東京都)には、事業統括室、管理室、海外営業統括部が置か れ、国内営業は、東日本営業所(埼玉県加須市)、中日本営業所(愛知県豊川市)、西日本営業所(福岡県久留米市)が担い、それぞれに管理職、営業職及び一般職が配置されている。 (2) 被告従業員の男女の人数の変遷(甲73、乙9、弁論の全趣旨)被告における平成20年から令和2年までの毎年4月時点での「総合職」、 「一般職」の男女別の人数の推移は以下のとおりである。なお、以下の「総 合 変遷(甲73、乙9、弁論の全趣旨)被告における平成20年から令和2年までの毎年4月時点での「総合職」、 「一般職」の男女別の人数の推移は以下のとおりである。なお、以下の「総 合職」の女性はD、「一般職」の男性はAである。 平成20年総合職(男性15名)、一般職(女性4名)平成21年総合職(男性15名)、一般職(女性3名)平成22年総合職(男性16名)、一般職(女性3名)平成23年総合職(男性16名)、一般職(女性3名) 平成24年総合職(男性14名、女性1名)、一般職(女性3名)平成25年総合職(男性16名、女性1名)、一般職(女性3名)平成26年総合職(男性17名、女性1名)、一般職(女性3名)平成27年総合職(男性16名、女性1名)、一般職(女性5名)平成28年総合職(男性17名、女性1名)、一般職(女性5名) 平成29年総合職(男性18名)、一般職(女性5名)平成30年総合職(男性17名)、一般職(女性5名)令和元年総合職(男性19名)、一般職(女性5名、男性1名)令和2年総合職(男性20名)、一般職(女性5名、男性1名)また、設立時から令和2年4月までの間に被告に在籍した総合職は合計3 4名(うち女性はD1名)、一般職は合計7名(うち男性はA1名)である。 そしてそのうち15名の総合職(Dを含む。)が自己都合により、1名の総合職が定年により、3名の一般職が自己都合により退職している。 (3) 被告の採用プロセスア概要(乙3、4、11、19~21、68、弁論の全趣旨) 被告は、設立当初、ビニフレーム工業株式会社のエフクリーン販売事業担当者のうち、部門トップの1名を除き、同社の親会社からの出向者を含む全員(17名)を従業員とし 21、68、弁論の全趣旨) 被告は、設立当初、ビニフレーム工業株式会社のエフクリーン販売事業担当者のうち、部門トップの1名を除き、同社の親会社からの出向者を含む全員(17名)を従業員として受け入れたほか、AGCからの出向者(5名)、新規採用者(3名)の合計25名の役職員の体制で発足した。 それ以降、被告はいわゆる新卒一括採用を実施しておらず、欠員などに より採用の必要が生じた場合に、人材紹介会社を通して、営業職や一般事 務といった職種ごとに採用活動を行っており、入社後の総合職及び一般職という区分については、求人に際して明示していない。 被告が営業職を採用する場合、人材紹介会社の掲載する求人情報には、は業務内容がエフクリーンの営業であること、応募資格として普通自動車免許、勤務場所は配属予定の営業所等を明示し、転勤は当面の間無い、あ るいは将来的に転居を要する転勤の可能性がある旨を、待遇・福利厚生として借上社宅制度がある旨を記載している。また、総合職の採用プロセスにおいては適性試験を実施し、書類選考や面接の結果を合わせて採用の可否を決定している。営業職として採用された従業員は、入社後に総合職としての処遇を受けることになる。 イ総合職の採用(ア) Eの採用について(甲72、弁論の全趣旨)E(以下「E」という。)は、平成12年に4年制大学を卒業後、経理職として会計事務所で2~3年間、他社で8~9年間の勤務(その間経理部長を務めることもあった)を経て、平成23年2月1日から被告の 管理室長補佐(総合職)として勤務し、社宅制度も利用していた。 Eは、採用時から平成24年12月31日付けで退職するまでの間に、被告から転勤の可能性がある旨を伝えられたことはなく、転勤の打診を受けたこともない。 合職)として勤務し、社宅制度も利用していた。 Eは、採用時から平成24年12月31日付けで退職するまでの間に、被告から転勤の可能性がある旨を伝えられたことはなく、転勤の打診を受けたこともない。 (イ) 女性総合職の採用について(乙10~17、原告本人p3~5、弁論の 全趣旨)被告は、平成23年10月頃から、人材紹介会社を通じて海外営業部の営業職の採用活動を行ったところ、男性7名、女性3名から応募があり、全員が適性試験を受験した。 被告は、平成24年2月頃に、Dを海外事業部の営業職として採用す る方針を固め、同年3月16日付けで採用した。Dは、新卒者ではあっ たもののドイツへの留学経験があり、ドイツ語に加えて英語の能力を有していた。 Dは、被告での勤務期間中、営業職として勤務し、社宅制度を利用していた。 (ウ) 平成29年の営業職の採用について(乙21、22) 被告は、平成29年1月頃に、3~4名の営業職の採用を目的として、複数の人材紹介会社を通じて採用活動を行った。同年3月13日時点で応募した67名全員が男性であった。 (エ) 令和元年の営業職の採用について(乙23~25)被告は、令和元年に東日本営業所及び西日本営業所の営業職各1名の 採用活動を実施した。その過程で、女性1名が西日本営業所の営業職に応募し、書類選考において採用担当者2名から面接相当及び条件次第で面接相当との評価を得たが、同人は採用を辞退し面接には至らなかった。 その他、東日本営業所について8名、西日本営業所について16名の応募者がいたが、全員が男性であった。 (オ) 管理室長候補者の採用について(乙26~33、原告本人p5~7、被告代表者p18、弁論の全趣旨)被告は、令和2年8月頃から、転勤なしの条件で管理 者がいたが、全員が男性であった。 (オ) 管理室長候補者の採用について(乙26~33、原告本人p5~7、被告代表者p18、弁論の全趣旨)被告は、令和2年8月頃から、転勤なしの条件で管理室長候補者の採用活動を始め、同年11月9日付けで、Bを採用した。被告は、同人を総合職として位置付けているが、社宅制度の利用は認めていない。 ウ一般職の採用(ア) 概要(乙34、弁論の全趣旨)令和3年7月時点で、被告には5名の一般職従業員が在籍しており、うち4名が女性(原告を含む。)、1名が男性(A)である。このうち、女性1名は被告設立時に引き継いだ従業員で、定年後も嘱託として引き 続き在籍する者であり、うち原告を含む女性3名は、被告の設立後に、 いったん派遣社員として被告で勤務した後に正社員として採用された者である(その余の2名については後記(ウ)(エ)のとおり。)。 (イ) 原告の採用について(甲4、5、原告本人p1・29~30)原告は、平成20年4月から7月までの間、紹介予定派遣で事務職として被告で勤務し、平成20年7月頃に正社員として採用された。 平成20年5月19日付けの原告の労働条件明示書には、業務内容が総務・経理・人事業務(給与計算・小口現金管理等)であること、賃金が月額20万0750円であることなどが記載されており、労働条件通知書には、業務内容が本部管理業務であること、月給20万0750円の内訳は基本給が19万7750円、住宅手当が3000円であること などが記載されていた。 上記の原告の業務内容や賃金額と、派遣会社を通じて示されていた募集要項の記載との間に大きな乖離はなかった。 (ウ) 平成26年の女性一般職の採用について(乙18)被告は、平成26年8月頃に、人材紹介会社 告の業務内容や賃金額と、派遣会社を通じて示されていた募集要項の記載との間に大きな乖離はなかった。 (ウ) 平成26年の女性一般職の採用について(乙18)被告は、平成26年8月頃に、人材紹介会社を通じて海外営業部の一 般職の採用活動を行ったところ、複数名の応募の中から面接等の審査を経て女性従業員が採用された。 (エ) Aの採用について(乙7、43、弁論の全趣旨)Aは、平成30年4月頃に、被告に対し人材紹介会社を通さず直接採用を打診した。その際、Aは転勤がない職種での採用を希望したところ、 一般職として同年7月1日付けで採用された。 Aの賃金額については、採用の過程において、前職における給与額や本人の希望も踏まえ、採用時の被告の給与規程における給与テーブル上のランク(別紙6別表2参照)は48号俸とすることを合意した。 (4) 被告従業員の給与額の決定方法 ア概要(弁論の全趣旨) 被告は、平成11年設立時に、AGCの買収以前からエフクリーン販売事業部門に在籍していた者を中心に従業員を受け入れ、独自の新規採用も実施した。設立当初の従業員の給与は、当時の暫定的な就業規則や給与規程(平成12年に制定されたものとほぼ同様の規定)の中で、年齢給、経験給及び業績給を調整して前職(新卒を採用する場合を除く。)在職時の給 与に合わせたものを定めた。 また、設立後に採用した従業員の給与額は、総合職も一般職も、求人票に掲載した年収額、その者の前職の給与額及び本人の希望額等を踏まえて決定し、給与規程における年齢給、経験給及び業績給を調整していた。 イ平成30年3月の給与規程の改定に伴う措置(乙43、弁論の全趣旨) 被告は平成30年3月16日に給与規程を改定し、従前は年齢給、経験給及び業績給の合計とさ 給及び業績給を調整していた。 イ平成30年3月の給与規程の改定に伴う措置(乙43、弁論の全趣旨) 被告は平成30年3月16日に給与規程を改定し、従前は年齢給、経験給及び業績給の合計とされていた賃金体系から、給与テーブルを適用する体系に変更し、改定前の賃金額を基準に、新たな給与規程における給与テーブル上のランクを決定した。 この際に決められた原告の給与テーブル上のランク(別紙6別表2参照) は37号俸であり、原告以外の一般職は、それぞれ33号俸、35号俸、36号俸及び50号俸であった。 (5) 平成23年7月以降における社宅制度の適用対象の拡大について(前提事実(2)、甲24、弁論の全趣旨)被告は、平成23年7月から、それまで会社都合による場合に総合職に適 用されるとしていた社宅制度について、自己都合(結婚等で妻帯者向け住居に引っ越す場合や親元からの独立で引っ越す場合)でも被告が認めた場合には適用されることとした。この適用対象の拡大以降、自己都合の場合の社宅制度における会社の負担割合は以下の表に記載(金額はいずれも家賃額を指す。独身寮かつ50歳以上の場合は省略)のとおり運用されていた。 妻帯者向け、扶養家族のある従業員独身寮(39歳以下)独身寮(40歳以上)自己都合かつ会社が認めた場合①8.2万円まで:80%②8.2万円超12万円まで:20%③12万円超:0%①8.2万円まで:80%②8.2万円超12万円まで:20%③12万円超:0%①8.2万円まで:20%②8.2万円超12万円まで:10%③12万円超:0%(6) 総合職の転勤について(原告本人p16、被告代表者p19~21)被告の営業職は、一定数転勤を経験した従業員もいるが、 :20%②8.2万円超12万円まで:10%③12万円超:0%(6) 総合職の転勤について(原告本人p16、被告代表者p19~21)被告の営業職は、一定数転勤を経験した従業員もいるが、相当数の従業員が被告において一度も転勤を経験していない(少なくとも6名の総合職は転勤の経験がなく、それ以外にも、採用の際に転居し、転勤自体は経験したことがない従業員が相当数存在する。)。転勤を一度も経験していない営業職の 従業員の中にも、社宅制度の適用が認められている者が存在する。 被告の管理室における総合職(管理室長及び管理室長補佐)で過去に転勤を経験した者はないが、これらの者も社宅制度の適用が認められていた。 (7) 原告の業務内容(甲72、73、乙34、弁論の全趣旨)ア管理室では、営業事務、人事・総務・経理関係全般の業務を扱っていた。 管理室長は、経理・人事・総務の決裁権を有していた。 原告が被告に採用された時、管理室には、原告とF元室長が在籍しており、F元室長は給与計算、勤怠管理、社会保険関係手続、ハローワークの対応、退職金関係の業務を行っていた。なお、その間、国税局が調査に入り、税務申告の修正又は更正が必要となった際にも原告が対応した。 イ F元室長が平成22年10月8日に被告を退職すると、後任者がすぐに着任することはなく、平成23年2月1日にEが採用されるまでの間、原告が管理室の業務を単独で扱っていた。 Eは、平成23年2月に採用されると、管理室に配属され、室長補佐として経理業務を中心に担当した。 平成23年9月頃には、AGCから出向したG(以下「G元室長」という。)が管理室長として着任した。 Eが平成24年12月31日に退職すると、原告は、Eが担当していた経理業務を引き継いだ。 平成23年9月頃には、AGCから出向したG(以下「G元室長」という。)が管理室長として着任した。 Eが平成24年12月31日に退職すると、原告は、Eが担当していた経理業務を引き継いだ。 ウ原告は、被告の実印や銀行印を社内の金庫に保管しており、これらを利 用する業務や、社会保険と雇用保険の計算など、総合職の決裁を受けず、単独で行っていたものがあった(原告本人p45~46)。 平成30年4月頃にはC室長が、令和2年11月にはBがそれぞれ入社し、現在の管理室の人員は、C室長、B及び原告の3名である。 エ被告は、従業員に社用の携帯電話を支給し、2年ごとに機種変更をして おり、平成28年以前は、原告が携帯電話の手配、電話番号リストの作成、各営業所への発送などの業務を行っていたが、平成30年及び令和2年に機種変更を行った際にはC室長がこれらの業務を行い、令和4年に機種変更をした際にも、原告は業務に関与しなかった(甲73、乙55、弁論の全趣旨)。 オ被告は、令和2年8月、新規に「楽楽精算」という経費システム(以下「本件システム」という。)を導入することとした。同年9月には、原告がマスタ登録やワークフローの作成を実施し、C室長に対しその確認を求めた。C室長は、同月28日、被告の従業員宛てに、同年11月2日からの本件システム導入と、今後の予定としてパスワード設定などの作業依頼を する旨を周知した。C室長は、同年12月24日、B及び原告と本件システムに関する打合せを行い、本件システムの運用方法・操作手順を確認するなどし、同月29日、被告の従業員宛てに、本件システムのワークフローを令和3年1月5日頃から開始する旨のメールを送付した。原告は、Bの指示の下で、同年4月20日頃に本件システムの機能のテストを実施し し、同月29日、被告の従業員宛てに、本件システムのワークフローを令和3年1月5日頃から開始する旨のメールを送付した。原告は、Bの指示の下で、同年4月20日頃に本件システムの機能のテストを実施し たうえで、B及びC室長に対し、具体的な運用に関する意見をメールで述 べた。(甲57~61、乙44~46)カ令和3年5月13日付けで被告の監査役に就任したH(以下「H監査役」という。)は、同月18日にC室長から、同月25日にBからヒアリングを実施し、同年6月18日、C室長及びBに対して、管理室の物品管理・業務体制につき、受取手形を保管していた金庫に施錠されていないことを指 摘し、これを常時施錠し、鍵の管理も限られたメンバーで行うこと、実印の保管場所をキャビネット内から金庫での保管に変更し、押印を社長及び管理室長の権限とすること、原告のみが行っている領収書の管理・発行につき複数人によるチェックを行うこと等を指示した(以下「本件監査」という。乙52、54の1・2)。 これを受けて、被告は管理室の執務体制を下記のとおり変更した(以下、下記(ア)~(エ)の業務の変更を併せて「本件各業務変更」という。)。 (ア) 令和3年6月30日、それまで原告が単独で行っていた算定基礎届、賞与支払届、労働保険申告書及び高年齢雇用継続給付金の業務について、Bが事前に内容を確認するよう変更した。 (イ) 令和3年7月14日、被告の実印及び銀行印の管理者を社長又は室長とし、原告は、払込票での支払処理、所得税納付、手形の処理を単独ではできなくなった。 (ウ) 令和3年7月14日、それまで原告が行っていた手形への銀行印の押印をC室長の担当に変更し、手形が届いた際の領収書の発行業務はC室 長又はBの確認を要することとした。 ( くなった。 (ウ) 令和3年7月14日、それまで原告が行っていた手形への銀行印の押印をC室長の担当に変更し、手形が届いた際の領収書の発行業務はC室 長又はBの確認を要することとした。 (エ) 令和3年7月14日、それまで原告が単独で行っていた売掛金残高確認書をC室長又はBの確認を要することとした。 キ被告では、令和2年度の健康診断から各従業員が対象の健診機関に受診予約をすることとし、健康診断の結果をクラウドで管理するシステムを導 入したが、事前に原告に対して情報共有されていなかった(甲73p41、 乙51、弁論の全趣旨)。 (8) Aが総合職に登用された経緯被告は、DX推進を業務内容とする新しい部署を設置することとなり、これを担当する総合職を社内公募した。被告は、複数名の応募者に対し、適性試験、面接及び論文による選考を実施したうえで、令和5年10月16日、 Aが総合職に登用された(原告本人p2~3、被告代表者p8~9・22)。 (9) 原告の査定及び経緯ア平成30年3月頃から令和3年3月頃までの間の被告の査定手続等について(乙56)被告が当時適用していた給与査定手順においては、月例給与の査定を毎 年3月上旬に実施し、その結果を3月16日から始まる4月度の月例給与(4月25日支払)から反映することとされ、昇級及び降級については、「原則として現行維持~3段階UPの範囲にて評価する。ただし、特段の理由がある場合は、降級や3段階UP以上の昇給もあり得る。」と記載されている(給与規程にも同趣旨の記載がある(別紙6・別表2)。)。 そして、個人目標の設定と月例給与査定のスケジュールは、①1月中旬頃に個人目標設定を行う、②1月末頃に従業員が個人目標に対する自己評価を行い「個人目標管理シー ある(別紙6・別表2)。)。 そして、個人目標の設定と月例給与査定のスケジュールは、①1月中旬頃に個人目標設定を行う、②1月末頃に従業員が個人目標に対する自己評価を行い「個人目標管理シート」及び自己PRシートを所長(営業所長、管理室長等を指す。以下同じ)に提出し、所長はこれらに評価結果を記入して2月15日頃に管理室に提出する、③2月上旬頃、所長は担当部署の 「月例給与査定用紙」に対象者の評価結果を記入し、上長(所長から見た場合は統括部長を指す。以下同じ)に提出し、上長はこれに評価結果を記入し、2月15日頃に管理室に提出する、④管理室で全ての評価結果を取りまとめて社長に提出し、3月上旬頃の査定会議で審査し(場所間・同一ランク内の相対評価を行い、必要に応じて1次評価に対する修正を行う。)、 社長決裁後人事発令を行う、⑤3月末頃、所長から部下の従業員に対して (ア) 個人目標管理評価シートには、目標欄に、パソコンの入替作業への対応、勤怠管理システム導入の補助作業、郵便物関係のコスト管理削減、システムのバージョンアップなどの事務に関する具体的な作業内容等が記載され、実績報告欄には問題なく業務を実施できた旨が、実績評価の自己評価欄には上半期・通期ともに期待した水準に達した旨が記載され、 1次評価者のコメント欄には、期待した水準に達したものと判断した旨が記載されていた(乙60の1・2、66の2・3)。また、自己PRシートにも、平成30年度の評価に係るものと同趣旨の記載がされていた(乙60の1、66の4)。 (イ) C室長は、令和2年4月13日、原告に対し、同年3月から給与テーブ ル上のランクが1号俸昇級した旨を連絡した(甲67)。 (ウ) C室長は、原告から、評価のフィードバックを実施してほしいとの要 C室長は、令和2年4月13日、原告に対し、同年3月から給与テーブ ル上のランクが1号俸昇級した旨を連絡した(甲67)。 (ウ) C室長は、原告から、評価のフィードバックを実施してほしいとの要望を受けて、令和2年4月16日の実施を打診したものの、原告から別日に実施してほしいとの連絡を受け、最終的に同年8月5日に実施した(甲67、乙60の2)。 (エ) 被告が令和2年3月に実施した令和元年度考課で、原告の給与テーブル上のランクは1号俸昇級することとなった(乙43)。 オ原告の令和2年度考課に係る事実経過(ア) 個人目標管理評価シートには、目標欄に、上半期・通期ともに経費削減・節約、業務効率の向上、期末監査の是正対応、システム導入への対 応等が掲げられ、実績報告(自己申告)欄には、具体的な業務実績が記載され、実績評価欄(上半期)には、自己評価・1次評価・最終評価ともに、期待した水準に達した旨記載され、1次評価者のコメント欄には、上半期(1~6月)・通期(1~11月まで)ともに本人の評価のとおり期待した水準に達したものと判断した旨が記載されている(乙61、6 7)。また、自己PRシートには、社内環境整備を通し会社業績に貢献し た旨が記載されている(乙61)。 (イ) 被告内部では、上半期の評価のフィードバックを令和2年6月19日までに行うよう連絡されていたが、C室長が原告に対するフィードバックを実施したのは同年8月5日であった(上記エ(ウ)と同じ面談。甲67、乙61、弁論の全趣旨)。また、C室長は、通期に関するフィードバック を令和3年2月24日に実施した(乙61)。 (ウ) 被告が令和3年3月に実施した令和2年度考課で、原告の給与テーブル上のランクは1号俸昇級することとなった(乙43)。 関するフィードバック を令和3年2月24日に実施した(乙61)。 (ウ) 被告が令和3年3月に実施した令和2年度考課で、原告の給与テーブル上のランクは1号俸昇級することとなった(乙43)。 (10) 労働組合を通じた申し入れア原告が加入する労働組合は、平成29年11月29日付けで、住宅手当 などの福利厚生は、総合職と一般職の区分けをせず同一賃金として公平に適用すべきことを内容とする要求書、団体交渉申入書を送付した(甲29、30)。また、同労働組合は、同日付けで、被告に対し、労働組合加入通知書を送付し、原告の賃金・労働条件及び雇用に関する事項についての一切の交渉を代表する旨を通知した(甲28)。 イ原告が加入する労働組合は、平成30年1月13日付けで、社宅手当を女性従業員にも適用することを内容とする要求書及び団体交渉申入書を送付した(甲31、32)。 ウ原告が加入する労働組合は、令和2年2月17日、被告に対し、住宅管理規程を一般職にも適用すること、過去の男女差別によって生じた損害分 の一切を請求することなどを内容とする要求書を電子メールで送付した(甲36の1・2)。 (11) 原告の家賃額及び更新料ア家賃平成30年3月以降の原告の家賃は、月額7万2000円である。家賃 の支払日は、令和4年2月までは毎月27日で、同年3月以降は毎月25 日である。(甲44、45、69)イ更新料原告は、平成30年2月27日、令和2年2月27日及び令和4年2月27日に更新料として各7万円を支払った(甲44、45、69)。 3 争点1-1ないし争点1-4について (1) 争点1-1に関する当裁判所の判断ア直接差別について(ア) 原告は、被告が一般職には社宅制度の利用を認め った(甲44、45、69)。 3 争点1-1ないし争点1-4について (1) 争点1-1に関する当裁判所の判断ア直接差別について(ア) 原告は、被告が一般職には社宅制度の利用を認めず、総合職に社宅制度の利用を認めていることにより、男女間で著しい待遇の格差が存在していることから、そのような待遇の格差が性差によるものと推認すべき であり、均等法6条2号、均等法施行規則1条4号に違反する旨主張する。 そこで検討するに、被告においては設立時から令和2年4月までの間に合計34名の総合職が在籍し、そのうち女性は1名(D)のみで、残りの33名は全て男性であること、一般職は合計7名が在籍し、男性は 1名(A)のみで残りは全て女性である(認定事実(2))。そして、社宅制度の利用を総合職のみに認めることで、社宅制度を利用する総合職と、一般職との間で、一定の待遇の格差(例えば、平成29年2月時点で、40歳未満の総合職が、8万2000円の家賃の独身寮を利用した場合、会社が6万5600円を負担する一方で、一般職は同額の家賃であった 場合には3000円又は6000円の住宅手当が支給されるにすぎない。)が存在することが認められる。 しかしながら、被告が社宅制度の利用対象者とする総合職の大半は営業職で占められているところ、その採用に応募したのはほとんどが男性であり、応募した女性はDのほか、同人と同じ求人に応募した女性2名 (乙11)と、令和元年度に実施した際の1名(乙25の2)のみであ る(認定事実(3)イ)ことからも明らかなとおり、社宅制度の適用を受けてきたのがDを除き全て男性であったのは、社宅制度の適用対象の大半を占める営業職が、女性からの応募の少ない職種であることが原因であると認めることができ、社宅制度 明らかなとおり、社宅制度の適用を受けてきたのがDを除き全て男性であったのは、社宅制度の適用対象の大半を占める営業職が、女性からの応募の少ない職種であることが原因であると認めることができ、社宅制度に伴う上記の待遇の格差が、性別に由来するものと認めることはできない。そして、被告の設立当初まで遡っ ても、総合職にのみ社宅制度の利用を認める制度設計の背景に、男女の別によって待遇の格差を生じさせる趣旨があったことを推認するに足りる事情は認められないし、過去に被告に在籍したDは社宅制度を利用しており、他方でAに社宅制度の利用が認められているわけではないことからすれば、性別によって制度の運用が歪められているともいえない。 そうすると、社宅制度に関する待遇の格差が男女の性別を直接の理由とするものと認めることはできないし、社宅制度の適用を受けてきたのがDを除き全て男性であったという外形的事実から、これを男女の性別を理由とする直接差別であると推認することはできないというべきである。 (イ) 原告は、①被告が女性を採用した場合には一般職に、男性を採用した場合には総合職に振り分けていたこと、②被告に総合職と一般職との間に転換制度がなく、女性が不利な地位に固定化されていること、③被告が年齢給や経験給の昇給幅に格差を設けるなど性別による差別による待遇格差を設けていたこと、④被告社内で総合職は男性で、一般職は女性 であるという体質が染みついていることなどを主張し、これらの事実より社宅制度を総合職にのみ認めていることが性別による差別であることが推認できる旨主張する。 a 女性を採用した場合には一般職に振り分け、男性を採用したときには総合職に振り分けていた旨の主張について 被告は、募集・採用・配置・昇進についての女性差別を禁 が推認できる旨主張する。 a 女性を採用した場合には一般職に振り分け、男性を採用したときには総合職に振り分けていた旨の主張について 被告は、募集・採用・配置・昇進についての女性差別を禁止した平 成9年改正均等法の施行日(平成11年4月1日)以降に設立されており、当該法改正以前から存在した直接差別に該当する人事制度を引き継ぐ形で男性を総合職、女性を一般職に割り振る措置がとられた事実は認められない。 上記認定のとおり、被告は設立当初から就業規則等により総合職と 一般職の定義規定を設けたうえで、営業職の求人に際しては、業務内容と転勤の可能性があることを明示しつつ、男女を問わず募集を行い、採用された者については、Dを含め入社後に総合職に位置づけていた。 また、D以外にも、被告は令和元年の営業職募集に際して唯一の女性応募者を書面選考後の面接まで進めようとしていたこと(応募者の辞 退により実現せず)から明らかなとおり、営業職の採用の過程でも女性を排除する傾向はうかがわれない。 他方で、被告は事務職についても人員補充の必要が生じたときに採用活動を行っていたところ、海外営業部の女性従業員及びAを除き、いったん派遣社員として勤務し、その後正社員に採用されている。海 外営業部の女性従業員の採用の際には、人材紹介会社を通じ、事務職という業務内容を明示して採用活動を行っていた。Aの採用の際には、同人からの採用の打診があり、転勤ができないという同人の希望を踏まえ、一般職として採用された。これらの従業員について、被告は、業務内容や転勤がないことを踏まえ、就業規則等に基づき一般職とし て処遇していたものである。 以上のような、営業職及び事務職の各採用プロセスと、その後の総合職及び一般職への振分けは、被告の就業規則 容や転勤がないことを踏まえ、就業規則等に基づき一般職とし て処遇していたものである。 以上のような、営業職及び事務職の各採用プロセスと、その後の総合職及び一般職への振分けは、被告の就業規則等における総合職及び一般職の区分を踏まえた処遇と認めるのが相当であって、原告が主張するように、男性を採用すれば総合職に、女性を採用すれば一般職に 割り振るという運用がされていたと認めることはできない。 なお、Eは営業職ではなく管理室の経理業務の担当として採用されており、採用過程において転勤の可能性があるとは説明を受けなかったことが認められ、その他管理室に勤務した総合職について、転勤があり得る旨の説明がされた事実はうかがわれない(認定事実(3)イ(ア)、弁論の全趣旨)。しかしながら、Bを除き、管理室に勤務した総合職の 採用時に、被告から転勤がないという確約を受けた事実は見当たらず、転勤に応じ得ないという意向を明示したAが、一般職として採用されたことを踏まえると、就業規則等において総合職として扱われていた以上、Eや管理室に勤務した総合職(Bを除く)も、被告から業務命令として転勤を命じられればこれに応じる義務があったことは否定で きない。加えて、管理職については「職能ランク基準に相応する専門知識を基礎とした総合的な判断能力を発揮し、非定型で幅のある業務を円滑に遂行する能力があると認められる」という就業規則等における定義規定に照らして総合職として処遇することに合理性はあること、Eについても、他社で経理部長を務めた経歴に着目して、被告が管理 職候補者として扱い、就業規則等の上記規定にかかわらず総合職として処遇するのがふさわしいと判断したとしても不合理ではないことからすれば、被告が、Eや管理室の管理職を総合職に振り 、被告が管理 職候補者として扱い、就業規則等の上記規定にかかわらず総合職として処遇するのがふさわしいと判断したとしても不合理ではないことからすれば、被告が、Eや管理室の管理職を総合職に振り分けたのが、男性であることを理由とする措置であったと認めるには足りない。 以上によれば、被告が、女性を採用した場合には一般職に振り分け、 男性を採用したときには総合職に振り分けていた旨の原告の主張は採用できない。 b 一般職から総合職への転換制度がないとの主張について被告において、一般職から総合職への転換を認める制度は存在しないが(被告代表者p28~29)、そもそも、女性を採用すれば一般職 に、男性を採用すれば総合職に振り分けていたという原告主張の前提 が認められないことは上記のとおりであって、一般職から総合職への転換制度がないとしても、これをもって均等法6条2号、均等法施行規則1条4号に違反するということはできない。 c 年齢給や経験給等の待遇格差の主張について原告は、平成30年3月以前の給与規程において、合理的な理由な く年齢給は総合職が45歳まで昇給するのに対し、一般職は40歳で昇給が頭打ちになること、経験給は総合職が勤続年数に応じて30年まで昇給するのに対し、一般職は10年で昇給が頭打ちになるという待遇格差が設けられていたのは、性別による差別としかいえない旨主張する。 しかしながら、上記のように、被告が採用時に女性を一般職に、男性を総合職に振り分けていた事実が見当たらないことなどを踏まえると、被告の平成30年3月以前の賃金体系におけるこのような差異は、総合職と一般職の職能等に着目して定められた差異であると解され、性別による差別であると解すべき理由は見当たらない。 したがって、上 告の平成30年3月以前の賃金体系におけるこのような差異は、総合職と一般職の職能等に着目して定められた差異であると解され、性別による差別であると解すべき理由は見当たらない。 したがって、上記のような昇給幅に差があることをもって、一般職と総合職との区別が男女差別である旨の原告の主張は採用できない。 d 被告社内で総合職は男性を、一般職は女性を指す旨の主張について証拠(甲39、46、48、50~54)によれば、被告の社内の会議、社内連絡及び会議録などにおいて、総合職を男性社員や男性と、 一般職を女性社員や女性と呼称していた事実を認めることができる。 また、平成23年7月以降の社宅制度についての文書(甲24)に、「妻帯者向け、扶養家族のある方の住居」など総合職として男性を想定しているかのような表現が記載されている文書も存在する。 これらの表現は相当性を欠くものではあるものの、長年にわたって 総合職に占める男性の割合が多く、一般職に占める女性の割合が多い 状態が続いているがゆえに従業員間に蔓延していた固定観念を反映したものであると考えるのが自然であり、これをもって、被告が性別を理由として総合職を男性に、一般職を女性に担当させる運用を実施していたことを裏付けるものとはいえず、原告の主張は採用できない(ウ) 以上によれば、被告が総合職にのみ社宅制度の利用を認めていること が、均等法6条2号、均等法施行規則1条4号に違反する旨の原告の主張は採用できない。 イ間接差別について(ア) 判断枠組み均等法(平成18年6月21日号外法律第82号による改正後)7条 は、「事業主は、募集及び採用並びに前条各号に掲げる事項に関する措置であつて労働者の性別以外の事由を要件とするもののうち、措置の要件を満たす男 年6月21日号外法律第82号による改正後)7条 は、「事業主は、募集及び採用並びに前条各号に掲げる事項に関する措置であつて労働者の性別以外の事由を要件とするもののうち、措置の要件を満たす男性及び女性の比率その他の事情を勘案して実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置として厚生労働省令で定めるものについては、当該措置の対象となる業務の性質に照らして当該措置の実 施が当該業務の遂行上特に必要である場合、事業の運営の状況に照らして当該措置の実施が雇用管理上特に必要である場合その他の合理的な理由がある場合でなければ、これを講じてはならない。」旨規定している。 均等法7条を受けた同法施行規則2条2号には、「労働者の募集若しくは採用、昇進又は職種の変更に関する措置であつて、労働者の住居の移 転を伴う配置転換に応じることができることを要件とするもの」が挙げられている。ここには、住宅の貸与(均等法6条2号、同法施行規則1条4号)が挙げられていないものの、①性別以外の事由を要件とする措置であって、②他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるものを、③合理的な理由がないときに講ずること(以 下「間接差別」という。)は、均等法施行規則に規定するもの以外にも存 在し得るのであって、均等法7条には抵触しないとしても、民法等の一般法理に照らし違法とされるべき場合は想定される(平成18年6月14日衆議院厚生労働委員会「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」、令和2年2月10日雇均発0210第2号「「改正雇用 の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について」の一部改正について」参照) 部を改正する法律案に対する附帯決議」、令和2年2月10日雇均発0210第2号「「改正雇用 の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について」の一部改正について」参照)。 そうすると、雇用分野における男女の均等な待遇を確保するという均等法の趣旨に照らし、同法7条の施行(平成19年4月1日)後、住宅の貸与であって、労働者の住居の移転を伴う配置転換に応じることがで きることを要件とするものについても、間接差別に該当する場合には、民法90条違反や不法行為の成否の問題が生じると解すべきであり、被告の社宅制度に係る措置についても同様の検討が必要である。すなわち、措置の要件を満たす男性及び女性の比率、当該措置の具体的な内容、業務遂行上の必要性、雇用管理上の必要性その他一切の事情を考慮し、男 性従業員と比較して女性従業員に相当程度の不利益を与えるものであるか否か、そのような措置をとることにつき合理的な理由が認められるか否かの観点から、被告の社宅制度に係る措置が間接差別に該当するか否かを均等法の趣旨に照らして検討し、間接差別に該当する場合には、社宅管理規程の民法90条違反の有無や被告の措置に関する不法行為の成 否等を検討すべきである(「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」(平成18年厚生労働省告示第614号・最終改正:平成27年厚生労働省告示第458号)第3の1(1)、(3)ロ参照)。 (イ) 検討 被告は、設立後の就業規則等において、総合職を「会社の命ずる任地 に赴任することが可能であり、その任地での業務を円滑に遂行できる能力があると認められる職能をいう」としたうえで、総合職を対象とする社宅制度を設けている おいて、総合職を「会社の命ずる任地 に赴任することが可能であり、その任地での業務を円滑に遂行できる能力があると認められる職能をいう」としたうえで、総合職を対象とする社宅制度を設けていることからすれば、実質的に「住宅の貸与」といえる社宅制度の適用について、住居の移転を伴う配置転換に応じることができることを要件としていることになる。 原告は平成29年2月27日以降の社宅制度による会社負担額と原告が受け取った住宅手当の差額を損害として賠償を求めていることから、以下ではその判断に必要な限度で被告の社宅制度について検討する。 a 被告は、社宅制度につき労働者の住居の移転を伴う配置転換に応じることができることを要件とする一方で、その運用面においては、平 成23年7月に自己都合の場合(結婚等で妻帯者向け住居に引っ越す場合や親元からの独立で引っ越す場合)にも社宅制度の利用を認める方針を示した(認定事実(5))。その後、平成30年3月の社宅管理規程の改正により、この方針が正式に条項化されている(別紙6)。これにより、通勤圏内に自宅を所有していない総合職には、転居を伴う転 勤をしたか否か、その現実的可能性の有無及び大小等の事情を問わず、社宅制度の利用が認められていたことになる(なお、令和2年11月に総合職として採用されたBは、社宅制度を利用してないが、総合職でありながら転勤がない条件で採用された特殊な事例であること(認定事実(3)イ(オ))、本訴提起の影響を受けた措置である可能性も否定で きないことに照らし、ここでの検討の対象外とする。)。 そして、平成23年7月以降、令和2年4月までの間に在籍した総合職は、男性29名、女性1名(D)、一般職は男性1名、女性5名であり(乙9)、総合職の大部分を男性が、一般職の大部 対象外とする。)。 そして、平成23年7月以降、令和2年4月までの間に在籍した総合職は、男性29名、女性1名(D)、一般職は男性1名、女性5名であり(乙9)、総合職の大部分を男性が、一般職の大部分を女性が占めていた。 そうすると、社宅制度の実際の運用は、総合職でありさえすれば、 転勤の有無や現実的可能性のいかんを問わず、通勤圏内に自宅を所有しない限り希望すれば適用されるというのが実態であり、その恩恵を受けたのは、Dを除き全て男性であったということになる。 b 措置の具体的な内容として、被告の社宅利用者には、会社の負担率も、40歳以上の独身寮対象者を除き、家賃月額8.2万円までは8 0%、8.2万円超12万円までは20%とされている(認定事実(5))。 これにより、社宅利用者である総合職は、一般職に支給されていた住宅手当(平成20年4月1日以降は3000円、平成24年6月16日以降は3000円であるが一定の場合には6000円、平成27年4月1日以降は借家の場合8000円、平成30年3月16日以降 は1万2000円等)を上回る経済的恩恵を受けており、その格差はかなり大きいということができる(例えば原告の家賃月額7万2000円を前提とすると、社宅制度を適用した場合の被告の負担額は月額5万7600円に上り、その他に入居費用や更新料も一定額を被告が負担することになる。)。 c 被告は、社宅制度の利用を総合職に限定している理由として、①被告の営業職には転勤があり得、そのキャリアシステムにおいて、複数のエリアで営業を経験することが必要で、営業所の所長にも複数エリアで勤務した者が就いていること、②営業職の採用戦略の一環として、営業職の採用競争における優位性を確保するためであること、③労働 の対価で 営業を経験することが必要で、営業所の所長にも複数エリアで勤務した者が就いていること、②営業職の採用戦略の一環として、営業職の採用競争における優位性を確保するためであること、③労働 の対価であることを挙げる。 しかし、社宅制度の適用対象である総合職には、営業職以外の者も含まれるところ、上記①及び②は、いずれも営業職に関する事情であって、社宅制度の利用を総合職に限定している理由の説明とはなり得ない。その点は措きつつ、以下順次検討する。 (a) 転勤が営業職のキャリアシステム上必要かつ有用であるとの主張 について被告は全国に3か所の営業所を有し、一定数の営業職が過去に転勤を経験している事実は認められる。 他方で、被告の営業職の求人票には、転勤は「当面無」としており(乙19、20)、転勤の可能性は示されているとはいえ、労働者 の能力の育成・確保や組織運営上の人事ローテーションの必要性等からの定期的な転勤は予定されておらず、実際にも、少なくとも6名の総合職は転勤の経験がなく、それ以外にも転勤を経験したことがない営業職(入社の際の転居が転勤に当たらないことは明らかである。)が相当数存在する(認定事実(6))。 また、営業職ではない総合職として管理室に勤務をしていたEは、採用面接の際に、将来転勤があり得るという説明を受けておらず(甲72)、管理室に勤務した総合職がその後転勤を命じられた実績も認められない。 以上からすれば、被告において労働者の能力の育成・確保や組織 運営上の人事ローテーションの必要性等からの転勤が定期的に行われているとは認められず、営業職のキャリアシステム上の必要性や有用性という観点からは説明することができない社宅制度の利用者が数多く存在すると認められる。 (b) 営業職の からの転勤が定期的に行われているとは認められず、営業職のキャリアシステム上の必要性や有用性という観点からは説明することができない社宅制度の利用者が数多く存在すると認められる。 (b) 営業職の採用競争における優位性を確保する旨の主張について 労働者にとって有利な待遇を提示することが採用活動における優位性を得る一要素となること自体は否定できない。しかしながら、採用競争における優位性確保のためには賃金を手厚くすることが最も効果的であることは自明であるうえ、営業職の求人票においては、社宅制度の存在には言及しているものの、その適用の実態(特に、 通勤圏内に自宅を保有しない限り、転勤に関する事情とは無関係に 希望すれば社宅制度を利用できること)は明示されておらず、これが営業職の採用競争においてどの程度の効果を発揮しているかは明らかでない。そうすると、採用競争における優位性確保としての社宅制度の重要性が高いとは認められない。 また、社宅制度の利用が営業職の採用戦略上有用であるというこ とであれば、営業職に対して社宅制度の利用を認めることで足りるのであり、例外的な場合を除いて転勤が予定されていない管理室勤務の総合職(被告全体で設立時から令和2年4月までに在籍した合計34名の総合職のうち4名(乙9))に対して社宅制度の利用を認める合理的な理由はうかがわれない。 以上によれば、営業職の採用競争における社宅制度の重要性が高いとは認められず、社宅制度の実際の運用もそのような趣旨から合理性を説明することができるわけではない。 (c) 労働の対価である旨の主張について被告の社宅管理規程や社宅制度の説明に関する文書(甲24)上、 総合職の労働の対価としての趣旨が含まれていることをうかがわせる文言は見当たら い。 (c) 労働の対価である旨の主張について被告の社宅管理規程や社宅制度の説明に関する文書(甲24)上、 総合職の労働の対価としての趣旨が含まれていることをうかがわせる文言は見当たらない。総合職であっても、通勤圏内に自宅を保有する者は社宅制度の適用外とされているところ、被告が同一の労働の提供を受けながら通勤圏内に自宅を保有しない者にのみ対価を追加することに合理性はない。 被告における社宅制度は、実質的に住宅費用の補助を内容とするものであり、福利厚生の趣旨と解するのが相当であって、労働の対価としての趣旨が含まれていると認めることはできず、被告の主張は採用することができない。 d 小括 以上の諸点を総合考慮すると、少なくとも平成23年7月以降、社 宅制度という福利厚生の措置の適用を受ける男性及び女性の比率という観点からは、男性の割合が圧倒的に高く、女性の割合が極めて低いこと、措置の具体的な内容として、社宅制度を利用し得る従業員と利用し得ない従業員との間で、享受する経済的恩恵の格差はかなり大きいことが認められる。他方で、転勤の事実やその現実的可能性の有無 を問わず社宅制度の適用を認めている運用等に照らすと、営業職のキャリアシステム上の必要性や有用性、営業職の採用競争における優位性の確保という観点から、社宅制度の利用を総合職に限定する必要性や合理性を根拠づけることは困難である。 そうすると、平成23年7月以降、被告が社宅管理規程に基づき、 社宅制度の利用を、住居の移転を伴う配置転換に応じることができる従業員、すなわち総合職に限って認め、一般職に対して認めていないことにより、事実上男性従業員のみに適用される福利厚生の措置として社宅制度の運用を続け、女性従業員に相当程度の不利益を与えてい ができる従業員、すなわち総合職に限って認め、一般職に対して認めていないことにより、事実上男性従業員のみに適用される福利厚生の措置として社宅制度の運用を続け、女性従業員に相当程度の不利益を与えていることについて、合理的理由は認められない。したがって、被告が上 記のような社宅制度の運用を続けていることは、雇用分野における男女の均等な待遇を確保するという均等法の趣旨に照らし、間接差別に該当するというべきである。 (2) 争点1-2に関する判断ア平成30年3月16日に施行された被告の社宅管理規程は、「本規程は、 就業規則第28条に基づき、当社(以下、会社という)が総合職社員(以下、社員という)に貸与する社宅に関する事項について定める。」旨規定している(第1条)ところ、社宅の利用を総合職に限り、一般職に認めていない。 原告は、社宅制度の利用に「総合職」という要件を設けることは公序良 俗に違反すると主張する。この点は、上記の社宅管理規程1条の規定のう ち、社宅制度の適用対象を「総合職社員」と定める部分の効力の問題に帰着すると考えられる。 イしかし、被告において総合職の多数を男性が占めていること自体は、総合職の大半を占める営業職につき女性の応募が少ないという事情に起因するものであって、性差別の結果とは認められないことは、既に述べたとお りであるから、社宅管理規程1条にいう「総合職」が男性を指す意味で用いられているとは認められない。また、社宅管理規程は、適用対象である総合職から社宅制度の利用の希望があれば当然に利用を認めるものではなく、被告が必要と認めた場合に限り許可することとされているのであって(2条1項)、運用次第では総合職を要件とすることの合理的理由が認めら れ、社宅制度に関して間接差別の 利用を認めるものではなく、被告が必要と認めた場合に限り許可することとされているのであって(2条1項)、運用次第では総合職を要件とすることの合理的理由が認めら れ、社宅制度に関して間接差別の問題が生じないことも考えられないわけではない。 そうすると、上記社宅管理規程の規定や文言自体に公序良俗違反の問題があるとまではいえず、社宅管理規程の一部無効を理由に、原告にその適用を認め、同規程に基づく権利を認めることはできない。 したがって、争点1-2に関する原告の主張は理由がなく、採用することができない。 (3) 争点1-3に関する判断この点に関する原告の主張は、原告にも社宅管理規程の適用があることを前提にするものであるところ、上記(2)のとおり、社宅管理規程が公序良俗違 反により無効になるとはいえず、総合職でない原告に対しこれを適用することはできない。 したがって、争点1-3に関する原告の主張は採用することができない。 (4) 争点1-4に関する判断ア上記のとおり、平成23年7月以降、被告が社宅制度の利用を総合職に のみ認め、一般職に対して認めない運用を続けていることは、均等法の趣 旨に照らせば、間接差別に該当し、被告はそれによる違法な状態を是正すべき義務を負っている。そして、被告がこうした状態を是正する場合、相当数の総合職が恩恵を受けている社宅制度自体を撤廃することは事実上困難であるから、一般職にも社宅制度の適用を認め、総合職と同一の基準で待遇すること以外に現実的な方策は考え難い。かかる方策をとることなく、 間接差別に該当する措置を漫然と継続した被告の行為は違法であり、少なくとも過失が認められることから、被告はこれにより原告に生じた損害につき賠償する責任を負う。 被告の平成23年7月 となく、 間接差別に該当する措置を漫然と継続した被告の行為は違法であり、少なくとも過失が認められることから、被告はこれにより原告に生じた損害につき賠償する責任を負う。 被告の平成23年7月以降における社宅制度の運用からすれば、一般職に社宅管理規程が適用される場合、原告もその適用を申請し、承認されて いたと認めるのが相当であり、上記の不法行為によって、原告には別紙1及び別紙2の各「損害発生日」欄記載の各日に、対応する「損害額」欄記載のとおり損害が発生したものと認められる(下記(ア)ないし(エ)も参照。その認定根拠は認定事実(11)及び別紙6)。なお、本件の内容に照らすと弁護士費用については、別紙1及び別紙2の各「損害発生日」欄記載の各日に 対応する「損害額」欄記載の額の1割(各「弁護士費用」欄に記載の金額)が発生するものと認めるのが相当である。 (ア) 平成30年3月から令和元年7月まで原告の月額賃料 7万2000円被告の負担すべき額 5万7600円 住宅手当 1万2000円差額(損害) 4万5600円(イ) 令和元年8月から令和5年3月まで原告の月額賃料 7万2000円被告の負担すべき額 3万6000円 住宅手当 1万2000円 差額(損害) 2万4000円(ウ) 令和5年4月から令和6年3月まで原告の月額賃料 7万2000円被告の負担すべき額 3万6000円住宅手当 1万5000円 差額(損害) 2万1000円(エ) 更新料について原告は、平成30年2月27日、令和2年2月27日及び令和4年2月27日に、それぞれ更新料相当額7万円の損害を被った。 イそして、不法行為に基づく損害 2万1000円(エ) 更新料について原告は、平成30年2月27日、令和2年2月27日及び令和4年2月27日に、それぞれ更新料相当額7万円の損害を被った。 イそして、不法行為に基づく損害賠償請求権は、催告を要することなく、 損害の発生と同時に遅滞に陥っている。したがって、別紙1及び別紙2の「損害発生日」欄に記載の日から遅滞に陥っており、別紙1については平成28年法律第44号による改正前の民法所定の法定利率(年5分)が、別紙2については、同改正後の民法所定の法定利率(年3分)が適用される(民法419条1項、改正附則17条参照)。 ウ以上に照らすと、平成30年3月27日から令和6年3月25日までの期間についての原告の予備的請求(不法行為に基づく損害賠償請求権)は、理由がある。 4 争点2-1ないし争点2-4について(1) 争点2-1についての判断 ア被告は、平成30年3月16日に就業規則及び給与規程を改定し、それ以前は年齢給、経験給及び業績給の合計とされていた賃金体系から、給与テーブルを適用する体系に変更し、改定する以前の賃金額を基準に、新たな給与規程における給与テーブル上のランクを決定し、原告のランクは37号俸と決定された(認定事実(4)イ)。これに対して、同年7月1日付け で被告に採用されたAのランクは48号俸であった(認定事実(3)ウ(エ))。 そして、同日時点におけるAの給与テーブル上のランクは原告より11号俸分高く、基本給は月額2万6000円(29万4000円-26万8000円)高く、想定される年収としてはAの方が44万3300円(501万2700円-456万9400円)高い(別紙6・別表2)ところ、Aが男性であることを理由として、原告よりも高い賃金額が決定されてい 円)高く、想定される年収としてはAの方が44万3300円(501万2700円-456万9400円)高い(別紙6・別表2)ところ、Aが男性であることを理由として、原告よりも高い賃金額が決定されてい たとすれば、労基法4条に違反することとなる。 しかしながら、Aのランクが48号俸とされたのは、Aの採用の過程で、過去に被告での勤務歴を有する同人の職務能力に関する一定の評価に加え、同人の前職での賃金額や、同人が提示した賃金額を踏まえ、被告と同人との間で合意に達したためであると認めるのが相当である(前提事実 (3)、認定事実(3)ウ(エ))。 原告はこのような経過が存在したことを否認するが、転職活動を行う労働者にとって賃金額は転職先を決定する重要な要素であると考えられるところ、Aは、それ以前に被告の総合職として勤務をした経験があり、被告の業務に対する理解を有し、その後の転職先での経験等も加味し、被告 が、原告を含む他の一般職よりも高い条件を提示してでもAを採用したいと考えることは何ら不自然なことではない。 そうすると、Aの賃金額が一般職の中では高い48号俸として合意したことは、Aの経験等を背景として、被告が上記の賃金額を支払ってでもAを採用したいと考え、Aがこれに応じたためであるといえ、Aが男性であ るといった意図は認め難い。これに反する原告の主張は採用できない。 イまた、原告は、原告とAとの年齢差や、勤続年数の違い、原告が総合職相当の業務を遂行していることに照らせば、上記の賃金の格差は性別を理由とするものと推定すべきである旨主張するが、Aの給与テーブル上のランクを48号俸と合意するに至った上記の経過において、男性であること によってAが有利な扱いを受けた事実はうかがわれず、かえって転職市場 にお る旨主張するが、Aの給与テーブル上のランクを48号俸と合意するに至った上記の経過において、男性であること によってAが有利な扱いを受けた事実はうかがわれず、かえって転職市場 における交渉原理を反映したものであるといえるのであるから、原告の主張する推定をすべき根拠はない。 原告は、被告が平成30年3月の給与規程の改定の際に原告に付した号俸が、原告の担当業務にふさわしい実態を反映していない旨も主張する。 確かに、原告は平成22年10月にF元室長の退職後に、同人の業務を引 き継ぎ、経理業務や実印、銀行印を扱う業務を中心に、本件各業務変更がされた令和3年6月頃まで単独で行っていたとうかがわれ(認定事実(7))、総合職が担当していた業務の一部を事実上担当していたといえる。しかしながら、原告の担当する業務は、総合職である上司の不在の際にその担当業務を代行したほかは、総務・経理に関する定型的な一般事務が中心であ り(認定事実(7))、原告の担当業務が全て総合職相当であるとは認められず、また、業務上の責任の観点からも、原告が総合職に代替する存在として位置付けられるとは認め難い。そして、平成30年3月の給与規程の変更によって、被告の賃金体系が、職務内容を唯一の要素として決定されるものに変更されたわけではなく、総合職の業務の一部を事実上担当してい たとしても、それをもって、一般職の給与テーブルにおける37号俸という原告の給与が直ちに不当に低いと評価できるものでもない。 したがって、同月の改定の際に原告に付した号俸が不当に低かったと評価することはできず、まして被告が女性であることを理由に原告に不適切な号俸を付与したと認めることはできない。 ウさらに、Aと原告にそれぞれ付与されたランクは、平成31年3月にAが5 と評価することはできず、まして被告が女性であることを理由に原告に不適切な号俸を付与したと認めることはできない。 ウさらに、Aと原告にそれぞれ付与されたランクは、平成31年3月にAが50号俸で原告は38号俸(その差は12号俸)、令和2年3月にAが53号俸で原告は39号俸(その差は14号俸)、令和3年3月時点でAが55号俸で原告が40号俸(その差は15号俸)と号俸の差は拡大している(認定事実(9)イ)。 他方で、Aよりも昇級幅が大きい一般職も存在し、その他の一般職も1 ~2号俸ずつ昇級しており、女性の一般職が性別を理由に不利に扱われている事情はうかがわれない。また、本件全証拠に照らしても、毎年3月に行われている人事考課に際して、Aが男性であるがゆえに優遇されているとか、他の一般職が女性であるがゆえに不利に扱われているといった事情は見当たらない。 そうすると、Aと原告の賃金の差については、平成30年7月1日時点のみならず、平成31年3月時点以降においても、性別に基づくものであると認める根拠はない。 エ以上より、Aと原告の賃金の差が性別に基づくとの原告の主張は採用できず、労基法4条及び民法90条違反であるとは認められない。 (2) 争点2-2ないし争点2-4についての判断上記(1)のとおり、Aと原告の賃金の差が性別に基づくとの原告の主張は採用できず、原告の賃金額をAと同額とすべきである旨の原告の主張も理由がない。したがって、被告に上記の賃金の差に係る債務不履行又は不法行為が成立するともいえない。 以上より、原告のAの賃金との差額賃金請求(争点2-2)、債務不履行に基づく弁護士費用の請求(争点2-3)並びに不法行為に基づく差額賃金及び弁護士費用相当の損害賠償請求(争点2-4)はい 以上より、原告のAの賃金との差額賃金請求(争点2-2)、債務不履行に基づく弁護士費用の請求(争点2-3)並びに不法行為に基づく差額賃金及び弁護士費用相当の損害賠償請求(争点2-4)はいずれも認められない。 5 争点3(社宅制度の男女差別及び賃金格差に係る慰謝料請求等の可否)について 上記のとおり、平成23年7月以降、被告が社宅制度の利用を総合職にのみ認め、一般職に対して認めない運用を続けていることは、間接差別に該当する措置を漫然と継続したものとして違法であり、不法行為が成立する(上記3(1)(4))。 そして、被告が少なくとも平成23年7月以降、間接差別に該当する違法な 社宅制度の運用を行ってきた結果、原告は、相当期間にわたって待遇の格差を 甘受させられる状況に置かれ、平成29年11月29日以降、労働組合を通じて福利厚生を総合職と一般職とで区別すべきではない旨を申し入れた後にも是正されなかったものである。 そうすると、被告による社宅制度の運用は、直接差別とまでは評価できないこと、被告が平成20年4月1日以降、一般職も対象にした住宅手当制度を設 け(別紙6)、原告も所定の額を受領していること(弁論の全趣旨)、社宅制度の運用による平成29年2月以降の損害については、上記3の損害賠償及びこれに対する遅延損害金の請求が認容されることで一定程度は填補されること等を勘案しても、原告に慰謝料によって填補しなければならない精神的苦痛が生じたことは否定し難い。これらに加えて、本件に現れた一切の事情を総合考慮 すると、被告の違法な社宅制度によって原告に生じた精神的苦痛を慰謝するに必要な金額は、50万円と認めるのが相当である。また、原告が本件訴訟の提起及び追行を弁護士に委任したことは相当であり、弁護士費用 すると、被告の違法な社宅制度によって原告に生じた精神的苦痛を慰謝するに必要な金額は、50万円と認めるのが相当である。また、原告が本件訴訟の提起及び追行を弁護士に委任したことは相当であり、弁護士費用として、慰謝料額の1割に当たる5万円を損害と認める。 他方で、Aと原告の賃金に差があることをもって被告に不法行為が成立せず、 この点に関する原告の主張に理由がないことは上記4(2)のとおりである。 6 争点4(違法な業務外しによる不法行為の成否)について(1) 原告は、令和2年11月以降、それまで原告が担当していた本件システムの設定・運用について、支払依頼登録マスタという設定を除き、原告を関与させないこととしたのであり、これが業務命令権の濫用として原告の人格権 を侵害し違法である旨主張する。 しかしながら、認定事実(7)オによれば、令和2年8月以降、被告の管理室において本件システムの導入へ向けた作業を進めた事実が認定できるものの、被告が、原告を当該業務から外したなどという事実はうかがわれない。証拠(甲57~61)からは、C室長が、原告との情報共有、作業指示、確認依 頼への対応などを適時に行えていなかった様子もうかがわれ、本件システム の導入へ向けた円滑なマネジメントという点で問題があったようにも見えるが、これをもって、C室長が業務命令権を濫用したとか、原告の人格権を侵害したと評価できないことは明らかである。 原告は、マスタ登録、ワークフロー、レイアウト設定等の業務について十分な説明なく、一方的に担当を外されたもので手続の相当性を欠くなどと主 張する。しかし、管理室の責任者として本件システムの導入に当たっていたC室長には、個々の業務の割り振りや、進捗管理に関する広範な裁量があり、進捗に応じて、誰がどの作業 続の相当性を欠くなどと主 張する。しかし、管理室の責任者として本件システムの導入に当たっていたC室長には、個々の業務の割り振りや、進捗管理に関する広範な裁量があり、進捗に応じて、誰がどの作業を行うかは柔軟に変更し得るものであって、本件全証拠に照らしても、C室長が、不当な動機に基づき、これらの業務の担当から原告を外したことを推認させる事情は見当たらない。また、C室長は、 その権限に基づく業務の割り振り等につき、事前に個々の従業員に説明や告知をすべき義務があるとまではいえない。 したがって、原告の主張は採用できない。 (2) 原告は、本件各業務変更が業務命令権の濫用であり違法であるなどと主張する。 しかしながら、本件各業務変更は、令和3年6月18日のH監査役による本件監査を受けて行われたものであり(認定事実(7)カ)、管理室の金庫や実印等の管理状況に問題がある、領収書の管理発行を一人の従業員が行うことには適正な業務遂行の観点から問題があるといったH監査役の正当な指摘を踏まえ、重要な物品の管理を社長や管理室長が行い、物品の管理や使用方法 を透明化し、複数の担当者の確認を行うことによって、特定の従業員が単独で行うことにより起こり得る不正や過誤を防止する必要性の下で行われたものであると認められる。 原告は、10年にもわたって原告が単独で問題なく遂行し、歴代の監査役からも問題視されてこなかった、本件各業務変更は、本件訴訟における原告 の主張を契機にされたものであるなどと主張するが、仮にそのような事情が 認められるとしても、上記の必要性が失われるものではない(本件各業務変更やそれに先立つ本件監査が、本件訴訟における担当業務に係る原告の主張を契機に行われたとしても、原告の主張を契機に、被告が不健全な業務 られるとしても、上記の必要性が失われるものではない(本件各業務変更やそれに先立つ本件監査が、本件訴訟における担当業務に係る原告の主張を契機に行われたとしても、原告の主張を契機に、被告が不健全な業務処理体制を見直したというにすぎない。)。実際、Bが原告の業務を確認したことによって、原告が従前行った社会保険料の申告に誤りがあり修正申告をすべ きことなどが判明している(乙47~49)のであり、本件各業務変更に上記のような業務上の必要性があることは裏付けられている。 以上によれば、本件各業務変更が業務命令権の濫用であるとはいえず、原告の主張は採用できない。 (3) 原告は従前担当していた社用携帯電話の機種変更の業務を事前告知なくC 室長が担当したこと(認定事実(7)エ)、被告が健康診断の結果を管理するクラウドシステムを導入することについて、原告に情報共有せずに進めたこと(認定事実(7)キ)が業務命令権の濫用であり違法であるなどと主張するが、従前原告がこれらの業務を担当していたとしても、C室長が原告に対して携帯電話の機種変更業務を行う旨事前説明すべきことや、健康診断の結果の管 理にシステム導入することを事前に情報共有及び説明すべき義務がないことは上記(1)のとおりであり、原告の主張を採用することはできない。 (4) 以上のほか、原告は1日3時間くらいしか業務しない日もあり過少な業務による人格権侵害がある、本件システム導入の打合せに入れてもらえないなど孤立化による人格権侵害がある旨主張する。しかしながら、原告の業務量 が減少していたとしても、それは、業務の適正化による見直しや、システム導入による合理化の結果であり、本件全証拠に照らしても、C室長やBが、原告に対し、不当な意図に基づき過小な業務要求しかしていないといった事 いたとしても、それは、業務の適正化による見直しや、システム導入による合理化の結果であり、本件全証拠に照らしても、C室長やBが、原告に対し、不当な意図に基づき過小な業務要求しかしていないといった事実は認められない。また、本件システム導入の際に、原告に適時に情報共有がされなかったからといって、C室長のマネジメントの問題を示すものに過 ぎず、原告に対する不当な動機に基づくものとは認められない。 したがって、違法な業務外しが行われ原告の人格権が違法に侵害されている旨の原告の主張はいずれも採用できない。 7 争点5(違法査定による不法行為の成否)について(1) 原告は、本件各考課において、原告が他の一般職の平均を下回る昇級にとどまったことが、人事考課権の濫用に当たり、不法行為に該当する旨主張す る。 確かに、原告は平成22年10月にF元室長の退職後、本件各業務変更が行われるまで、総合職が担当していた業務の一部を事実上担当していたといえる(4(1)イ)。他方で、人事考課は本来企業が労働者の職務の遂行度、業績、能力等を踏まえて行うべきもので、広範な裁量が存在するといえる。そ して、本件各考課における原告の査定は、いずれも給与テーブル上のランクが1号俸ずつ昇級しており、被告の定める査定手順と整合するものである(認定事実(9)アイ)。 また、本件各考課に当たり原告が作成した個人目標管理評価シートや自己評価シートに記載された原告の業務内容は、定型的な一般事務の域を出るも のではなく、業務実績として特筆すべき成果も認められない(認定事実(9)ウ~オ)。 その他、本件全証拠に照らしても、原告の査定に当たって、被告における不当な動機が介在したことを認めるに足りる証拠はない。 これらの事情を踏まえると、被告が人事考課 ない(認定事実(9)ウ~オ)。 その他、本件全証拠に照らしても、原告の査定に当たって、被告における不当な動機が介在したことを認めるに足りる証拠はない。 これらの事情を踏まえると、被告が人事考課権を濫用したとは認められな い。 原告は原告の人事考課が一般職の平均より低いものとされる合理的な理由はない旨主張するが、原告と同じ業務を行っていた一般職は存在せず、また、他の一般職の職務の遂行度、業績、能力等といった事情は明らかではないことからすれば、他の一般職との比較において、原告に対する本件各考課の相 当性を検討することはできないといわざるを得ない。そして、本件の事実関 係の下で、被告が人事考課権を濫用したと認められないことは上記のとおりであり、原告の主張を採用することはできない。 原告は、原告が労働組合を通じて団体交渉を行ったことや本件訴訟提起の影響により、低い査定にとどまった旨主張するが、本件全証拠に照らしても、そのような不当な動機が本件各考課において考慮された事実はうかがわれな い。 (2) 原告は、平成30年度考課に当たっては、被告において実施することになっている人事考課のフィードバックを目的とした面談が行われず、令和元年度考課及び令和2年度考課に当たっても、実施時期が本来想定していたよりも半年程度遅れていた旨主張する。 確かに、原告主張の事実は認められるものの(認定事実(9))、被告において、人事考課のフィードバックは、従業員の課題の自覚や職務能力の向上を目的として、事後的に行われるものであるから、かかる手順が踏まれなかったことや、本来の実施時期よりも遅れて実施されたという事情をもって、人事考課の内容が不当であることを示すものとはいえない。 したがって、上記事情は、本件各考課にお 、かかる手順が踏まれなかったことや、本来の実施時期よりも遅れて実施されたという事情をもって、人事考課の内容が不当であることを示すものとはいえない。 したがって、上記事情は、本件各考課において不当な人事考課が行われた事実を裏付ける事情にはなり得ないのであり、原告の主張は採用できない。 第4 結論以上によれば、原告の請求は、主文第2項ないし第4項の限度で理由があり、基本給月額31万4500円の支給を受ける権利を有する地位にあることの確認 を求める部分は却下し、その余は理由がないから棄却することとする。 東京地方裁判所民事第33部 裁判官大門真一朗 裁判長裁判官別所卓郎及び裁判官根本宜之は、いずれも転補のため署名押印することができない。 裁判官大門真一朗

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