- 1 - 主文 原判決主文第2項中,社会保険庁長官が控訴人に対して平成20年7月15日付でした,亡Aを受給権者とする通算老齢年金に係る未支給保険給付の不支給処分の取消しを求める請求を棄却した部分を取り消し,上記不支給処分を取り消す。 訴訟費用は,第1,2審を通じ,これを2分し,その1を控訴人の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1控訴の趣旨 主文第1項同旨 訴訟費用のうち,上記不支給処分の取消請求に係る部分は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 第2事案の概要等 本件は,昭和60年法律第34号による改正前の厚生年金保険法(以下「旧厚年法」という。)の通算老齢年金の受給権者であった亡Aが失踪宣告によって死亡したものとみなされたことから,亡Aの配偶者である控訴人が,厚生年金保険法(以下「厚年法」という。)37条1項の規定に基づき,亡Aの通算老齢年金の未支給保険給付(以下「本件未支給保険給付」という。)の請求をしたところ,社会保険庁長官から,亡Aの死亡の当時,亡Aと生計を同じくしていたとはいえないとの理由で不支給処分を受けた(以下「本件不支給処分」という。)ため,その取消しを求めた事案である。 原審が控訴人の請求を棄却したため,控訴人が控訴した。なお,控訴人は,- 2 -原審において,本件不支給処分の取消請求のほか,①被控訴人に保管されている年金の個人加入記録原簿にある控訴人の情報に誤りがあるとして,情報の加入とこれと矛盾する情報の取消し及び原簿訂正証明書の交付を求め,また,②社会保険事務所職員等の違法行為により精神的苦痛を被ったとして国家賠償法1条1項に基づき損害賠償請求をしたところ,原審は,上 加入とこれと矛盾する情報の取消し及び原簿訂正証明書の交付を求め,また,②社会保険事務所職員等の違法行為により精神的苦痛を被ったとして国家賠償法1条1項に基づき損害賠償請求をしたところ,原審は,上記①の請求に係る訴えを却下し,②の請求を棄却したが,控訴人は,①及び②の請求については不服申立ての対象としていない。 なお,平成22年1月1日から日本年金機構法(平成19年法律第109号)が施行され,日本年金機構が設立されたが,本件訴訟は,日本年金機構に承継されるものではない(同法附則12条1項,日本年金機構法施行令附則2条参照)。ただし,同法の施行前に社会保険庁長官がした保険給付の裁定その他の処分は,厚生労働大臣がした裁定その他の処分とみなされることになった(同法附則73条)。 関係法令の概要は,以下のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の「1関係法令等の概要」(原判決3頁19行目から同11頁6行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決4頁8行目の末尾に,「すなわち,昭和60年法律第34号附則63条は,「大正15年4月1日以前に生まれた者又は施行日の前日において旧厚生年金保険法による老齢年金の受給権を有していた者については,新厚生年金保険法第3章第2節並びに附則第8条,第15条及び第28条の3の規定を適用せず,旧厚生年金保険法中同法による老齢年金,通算老齢年金及び特例老齢年金の支給要件に関する規定並びにこれらの年金たる保険給付の支給要件に- 3 -関する規定であってこの法律によって廃止され又は改正されたその他の法律の規定(これらの規定に基づく命令の規定を含む。)は,これらの者について,なおその効力を有する。」旨定めている。」を付加する。 本件の前提事実は,原判決の「事実及び され又は改正されたその他の法律の規定(これらの規定に基づく命令の規定を含む。)は,これらの者について,なおその効力を有する。」旨定めている。」を付加する。 本件の前提事実は,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の「2前提事実」(原判決11頁7行目から同14頁18行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 争点及びこれに対する当事者の主張(1)控訴人の未支給保険給付の受給権の有無(争点1)。 争点1に係る当事者の主張の概要は,以下に当審における主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の「4当事者の主張の概要」の「(3)争点(3)について」(原判決17頁7行目から同19ページ19行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 ア控訴人(ア)厚年法37条2項の規定に基づく主張老齢厚生年金の請求は,受給権者からの申請主義をとっており,その支給は「2か月生き抜いた後に,その2か月分を翌月15日ころに支給する」という後払いの原則によっているため,被保険者が例えば4月8日に死亡した場合,2月分及び3月分の老齢厚生年金が未支給年金となる。その者に係る遺族厚生年金受給権者は,厚年法59条各項により認定されるが,2月分及び3月分は死者名義の年金であって,特別な規定がない限り,遺族厚生年金の受給権者になったばかりの者は請求ができなくなることから,制度上必然的に生じる事態に対応するために,厚年- 4 -法37条が設けられたものであると解すべきである。そして,厚年法37条2項に「前項の場合において」とあるのは,遺族厚生年金の受給権者が未支給保険給付の受給権者である旨を規定しているものと解するべきである。本件認定基準は,遺族年金受給資格に係る認定基準であって未支給の保険給付 項の場合において」とあるのは,遺族厚生年金の受給権者が未支給保険給付の受給権者である旨を規定しているものと解するべきである。本件認定基準は,遺族年金受給資格に係る認定基準であって未支給の保険給付に係る認定基準ではない。控訴人は,亡Aの遺族として遺族厚生年金の受給権者に該当するから,亡Aの死亡の当時亡Aと生計を同じくしていたか否かを論ずるまでもなく,当然に亡Aの未支給保険給付の受給権が認められる。 (イ)厚年法37条1項の規定に基づく主張仮にその者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたこと(生計同一要件)を要するとしても,失踪宣告を受けたというだけで,夫婦間の実態を調査することなく,生計同一要件がないとすることは著しく不当である。法律上の妻が夫と別居している場合を想定すると,やむを得ない理由による別居ともいえず,経済的援助もなく,音信や訪問もないという場合には離婚同然の状態にあるといえるが,これ以外であれば生計同一要件は認められるべきである。失踪宣告を受けても合理的限定的な「死亡の当時」ということはないから,行方不明となった当時の夫婦関係に基づき,行方不明となる3年前程度の実態に即して生計同一か否かを判断すべきであり,離婚同然の状態に至っていなければ生計を一つにしていると解するべきである。亡Aが行方不明となった平成7年▲月からの7年間を見てみると,生死不明である以上別居はやむを得ないといえる。また,控訴人は亡A名義の家に住み,亡Aの不在者財産管理人を相- 5 -手方とする家庭裁判所の審判によって,自宅及び別荘の地代や固定資産税,水道代等の支払いを受けていたものであり,控訴人は年間20万円余の国民年金のみが固定収入であったことから,昭和63年までは亡A名義の預金であった夫婦預金を原資とする保険金や年金を拠り所として何 税,水道代等の支払いを受けていたものであり,控訴人は年間20万円余の国民年金のみが固定収入であったことから,昭和63年までは亡A名義の預金であった夫婦預金を原資とする保険金や年金を拠り所として何とか生活を続けることができたものであり,亡Aから経済的援助を受けていたことと同視されるべきである。そして,離婚同然の状態であれば,行方不明者を捜索することなどしないはずであるが,控訴人は,長女とともに,また,家庭裁判所を通じて,亡Aの捜索に尽力した。このことは,精神的なつながりに係る行為として評価されるべきである。 以上によれば,控訴人は亡Aと生計を同一にしていたというべきである。 イ被控訴人(ア)厚年法による保険給付を受ける権利は,同法1条の目的に照らし,権利の移転性が原則として否定されており(厚年法41条1項参照),一身専属性を有するもので,相続の対象外であると解されている(民法896条ただし書)。厚年法37条1項の規定に基づく未支給保険給付制度は,遺産相続的見地からではなく,受給権者の死亡当時,その者と生計を同じくしていた者の社会保障の見地から,一身専属的な権利である未支給保険給付の支給を認めたものである。生計とは,暮らしを立てるための手立てであり,生計同一関係とは,居住関係及び消費生活関係という両面から,生活共同体として一体的に消費生活を営み家計を同一にするといえる場合を指すというべきである。 - 6 -(イ)厚年法37条1項の文言及び失踪宣告制度の趣旨からすると,控訴人が,亡Aの死亡の当時,亡Aと生計を同じくしていたか否かは失踪期間満了時を基準として認定するべきである。厚年法59条1項は,生計維持要件の充足性の認定時を「失踪の宣告を受けた被保険者であった者にあっては,行方不明となった当時。」として読み替えている。こ 失踪期間満了時を基準として認定するべきである。厚年法59条1項は,生計維持要件の充足性の認定時を「失踪の宣告を受けた被保険者であった者にあっては,行方不明となった当時。」として読み替えている。この読替規定は,昭和46年法律第72号による厚年法の改正によってされたものであり,受給要件の緩和を図ったものである。当時の「厚生年金保険法関係想定問答」には,普通失踪のように失踪日から7年経過して時点で死亡したものとみなされるものについては,死亡当時では,7年間以上も行方不明となっているので,被保険者でなくなっていたり,また,生計維持の関係がない等が一般的であり,遺族年金が支給されないことになるため,このような事態を解消するため,失踪者の場合は,被保険者資格や生計維持関係を行方不明時点で認定することとするものであると説明されている。一方,上記厚年法改正以後においても,厚年法37条1項については,同法59条のような読替規定が置かれることがなかったことからすると,厚年法37条1項は,失踪宣告を受けた受給権者との間に生計同一関係があることをおよそ想定していないと解するべきである。このように解すると,遺族厚生年金の生計維持要件中の生計同一要件の判断と未支給保険給付の生計同一要件の判断時点に差異が生ずるが,遺族厚生年金と未支給保険給付の目的及び内容等の差異に照らし合理的であるといわなければならず,また,同要件が,配偶者等であることに加えて課されている趣旨からすると,離婚同然の状態に至- 7 -っていなければ足りると解することは相当でない。 (ウ)本件認定基準は厚年法37条1項の生計同一要件に当たる場合を具体化したものであり,本件未支給保険給付においても適用されるべきである。亡Aは,平成14年▲月▲日をもって普通失踪宣告により死亡したものとみなさ 基準は厚年法37条1項の生計同一要件に当たる場合を具体化したものであり,本件未支給保険給付においても適用されるべきである。亡Aは,平成14年▲月▲日をもって普通失踪宣告により死亡したものとみなされたものであり,生死が7年間も明らかではなかった以上,亡Aと控訴人が生活共同体として一体的に消費生活を営み家計を同一にしていたとはいえないというべきであり,本件認定基準によっても生計同一関係があるといえないことは明らかである。すなわち,亡Aは,同年▲月ころ,これ以上頼らないでほしいなどと記載したはがきを控訴人に送りつけた後ほどなくして失踪し,その後7年間生死不明の状態にあったものであるから,生活共同体として一体的に消費生活を営み家計を同一にする関係にあったとはいえない。また,控訴人が亡Aとの夫婦預金の一部を預け替え,平成15年ころまでそれを生活費の一部に当てていた事実があったとしても,同預金は控訴人が昭和56年ころに財産分与ないし慰謝料の趣旨で受け取ったものから生活費を支出していたというにすぎないから,これをもって生計を同一にしていたということにはならない。さらに,控訴人は,亡Aの不在者財産管理人を選任した上,これを相手方として平成10年に婚姻費用分担の審判を受け,年間約28万円の支給等を受けているようであるが,これは,亡A名義及び亡Aと控訴人の共有名義の不動産を維持するため,亡Aの残置財産から支弁することが認められたものにすぎない。したがって,このような形で婚姻費用の分担を受けているからといって,生死が7年間も明ら- 8 -かでない亡Aと控訴人が生活共同体として一体的に消費生活を営み家計を同一にしているとはいえない。 したがって,控訴人には未支給年金の受給権は認められない。 (2)本件不支給決定は行政手続法に違反するか否か(争 人が生活共同体として一体的に消費生活を営み家計を同一にしているとはいえない。 したがって,控訴人には未支給年金の受給権は認められない。 (2)本件不支給決定は行政手続法に違反するか否か(争点2)ア控訴人本件認定基準によって生計同一性を判断し本件不支給処分をしたのであれば,同基準は,審査基準として行政手続法5条に基づき作成及び公表されるべきであるところ,これがなされていない。また,本件不支給処分においては,同基準に沿った処分理由が示されていない。本件不支給処分は,行政手続法1条の目的に反し,同5条及び8条に違反する。 イ被控訴人上記アの主張はいずれも争う。控訴人は本件認定基準が記載された書面を平成15年7月28日に受領している。また,本件不支給処分において提示すべき理由としては甲7に記載の程度で足りる。 第3当裁判所の判断 争点1について(1)通算老齢年金の未支給の保険給付の受給を請求することができる者について通算老齢年金は,大正15年4月1日以前に生まれた者で,複数の年金制度に加入し,各制度の加入期間が1年以上に達するものの,当該各制度から個別に老齢年金を受給することができないといったような場合に,当該各制度の加入期間を通算することにより受給資格要件を付与し,当該各制度から- 9 -加入期間に比例した額の支給を行う老齢年金をいうものである(旧厚年法第3章第2節の2)。通算老齢年金制度は,昭和60年法律第34号により廃止されたが,同法律附則63条は,「大正15年4月1日以前に生まれた者又は施行日の前日において旧厚生年金保険法による老齢年金の受給権を有していた者については、新厚生年金保険法第3章第2節並びに附則第8条、第15条及び第28条の3の規定を適用せず、旧厚生年金保険法中同法による老齢年金、 いて旧厚生年金保険法による老齢年金の受給権を有していた者については、新厚生年金保険法第3章第2節並びに附則第8条、第15条及び第28条の3の規定を適用せず、旧厚生年金保険法中同法による老齢年金、通算老齢年金及び特例老齢年金の支給要件に関する規定並びにこれらの年金たる保険給付の支給要件に関する規定であつてこの法律によつて廃止され又は改正されたその他の法律の規定(これらの規定に基づく命令の規定を含む。)は、これらの者について、なおその効力を有する。」と定め,大正15年4月1日以前に生まれた者等について経過措置を設けた。 亡Aは大正14年▲月▲日生まれであるから,上記経過規定が適用され,「旧厚生年金保険法中同法による老齢年金、通算老齢年金及び特例老齢年金の支給要件に関する規定並びにこれらの年金たる保険給付の支給要件に関する規定であつてこの法律によつて廃止され又は改正されたその他の法律の規定」が依然として適用されることになる。ただし,上記経過規定は「新厚生年金保険法第3章第1節」の適用を排除していないから,通算老齢年金の受給権者が死亡した場合にだれが未支給の保険給付の支給を請求できるかについては,現行の厚生年金保険法37条により判断されることになるというべきである。 (2)厚年法37条1項は,「保険給付の受給権者が死亡した場合において,その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかったもの- 10 -があるときは,その者の配偶者,子,父母,孫,祖父母又は兄弟姉妹であって,その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは,自己の名で,その未支給の保険給付の支給を請求することができる。」と定める。また,同3項は,「第1項の場合において,死亡した受給権者が死亡前にその保険給付を請求していなかったときは,同項に規定する者は,自己 ,その未支給の保険給付の支給を請求することができる。」と定める。また,同3項は,「第1項の場合において,死亡した受給権者が死亡前にその保険給付を請求していなかったときは,同項に規定する者は,自己の名で,その保険給付を請求することができる。」と定める(なお,厚年法による保険給付を受ける権利は,権利の移転性が原則として否定されており(厚年法41条1項参照),一身専属性を有するもので,相続の対象外であると解されているのであり,厚年法37条の規定に基づく未支給保険給付制度は,遺産相続的見地からではなく,受給権者の死亡当時受給権者と生計を同じくしていた者の生活保障の見地から認められたものと解される。)。 したがって,本件では,①控訴人が死亡した受給権者の死亡の当時において配偶者であったといえるかどうか,②控訴人が死亡した受給権者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたといえるか(生計同一要件)の2点が検討されなければならない。 ところで,本件は,受給権者である亡Aが失踪宣告を受けて死亡したとみなされた事案であるところ,このような場合には,「その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたもの」という厚年法の文理に照らし,失踪宣告によりAが死亡したとみなされる時点当時において,生計同一要件を充足しているか否かが判断されるべきである(このことは,厚年法において,遺族厚生年金の受給権者については,「被保険者又は被保険者であった者の配偶者,子,父母,孫又は祖父母であって,被保険者又は被保険者であった者の- 11 -死亡の当時(失踪の宣告を受けた被保険者であった者にあっては,行方不明となった当時)その者によって生計を維持したものとする。」旨定められていて,「その者によって生計を維持した」という生計維持要件は,「被保険者又は被保険者であった者の 者であった者にあっては,行方不明となった当時)その者によって生計を維持したものとする。」旨定められていて,「その者によって生計を維持した」という生計維持要件は,「被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時」において判断することを原則としながら,被保険者であった者が失踪宣告を受けた場合には,例外として,行方不明となった当時において判断するという特則(読替規定)が置かれていることとの対比からしても明らかであるというべきである。)。 なお,同条2項の「前項の場合において」というのは,1項の「保険給付の受給権者が死亡した場合において」の部分を受けるものであり,同条2項は,遺族厚生年金の受給権者である妻が死亡した場合に,被保険者又は被保険者であった者の子(遺族厚生年金の受給権者である妻の子ではなく,したがって,1項の「その者の子」には含まれない者)についても,一定の要件を充足すれば,妻の遺族厚生年金に係る未支給の保険給付を請求することができることを規定しているものに過ぎないから,同条2項の存在は,上記解釈を左右するものではない。 したがって,本件においては,亡Aが死亡したとみなされる時点である平成14年▲月▲日当時の事実関係に照らし,控訴人が亡Aの配偶者に当たるといえるか,また,亡Aと生計を同じくしていたといえるかについて,以下検討する。 (3)証拠(甲22,23,83(ただし,下記認定に反する部分を除く。))及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア控訴人と亡Aは,昭和31年12月27日に婚姻し,長男,次男,長女- 12 -の3人の子を儲けた。婚姻当時,両者はともに公立学校の教員をしていたが,控訴人は昭和39年11月に退職した。亡Aは,昭和61年3月の定年まで引き続き教員をしていた。亡Aは,土地を賃借し,住宅ローンを の3人の子を儲けた。婚姻当時,両者はともに公立学校の教員をしていたが,控訴人は昭和39年11月に退職した。亡Aは,昭和61年3月の定年まで引き続き教員をしていた。亡Aは,土地を賃借し,住宅ローンを組んで借地の上に家を建て,そこに両者は居住していた。また,両者は,昭和50年には共有名義で山小屋(別荘)を建て,これを所有していた。 イその後,亡Aの暴力が原因で,控訴人から夫婦関係調整の調停が申し立てられ,その調停の場で,Aが自宅を出て別居することが話し合われた。 その結果,控訴人と亡Aは,昭和56年7月1日,亡Aが自宅を出る形で別居し,以後亡Aは,別の場所に長男と居住するようになり,住民票も別にされた。ただ,当時,両者の間に離婚しようという意思まであったわけではない。 ウ控訴人は,上記自宅に,次男とは昭和61年10月ころまで,長女とは平成11年2月ころまで,それぞれ進学,就職等による転居期間を除いて,ともに居住し続けた。他方,亡Aは,別居後も,自宅の固定資産税及び地代,控訴人と共同使用していた山小屋の固定資産税,管理費用等を一人で負担し続けた(これは後記の亡Aが行方不明になる時点まで続いた。)。 また,亡Aは,別居時にあった夫婦名義の郵便定額貯金及び公社債預貯金(額面合計867万円。以下これを「本件夫婦預金」という。)もすべて控訴人の管理に任せ,控訴人がこれを引き出し,費消することを認めた。 控訴人は,本件夫婦預金を生活費に一部充てたほか,本件夫婦預金を原資にして保険料を支払い,養老保険及び個人年金保険に加入した。その結果,控訴人は,平成5年6月には満期保険金として約285万円,平成12年- 13 -11月には据置保険金として約137万円をそれぞれ受領し,平成6年から平成15年までの10年間,毎年8月にそれぞれ約50万円の私的年金の支 には満期保険金として約285万円,平成12年- 13 -11月には据置保険金として約137万円をそれぞれ受領し,平成6年から平成15年までの10年間,毎年8月にそれぞれ約50万円の私的年金の支払を受けた。 エまた,亡Aは,昭和56年8月から昭和57年3月まで,控訴人名義の預金口座に毎月約12万円を振り込むなどした。また,同年4月からは,次男及び長女名義の預金口座に毎月合計約20万円を,昭和59年4月からは長女名義の預金口座に毎月16万5000円を振り込んだ。 オ亡Aは,昭和61年3月に勤務先を定年退職したが,退職に際して,控訴人に対して「年金生活になって収入が半分になって大変だ。何かあったらいってきてください。」と伝え,いったん長女名義の預金口座への振込みをやめたが,長女及び控訴人の要請を受け,長女名義の預金口座に,自己の退職年金のうち昭和61年から平成6年分の加給年金額に相当する約180万円を,平成4年3月から平成6年8月までの間に分割して振り込んだ。 カ控訴人は,亡Aとの別居後,月額2万円ないし6万円程度の家庭教師のアルバイト収入を得ていたなどのほかは,さしたる収入はなかった。なお,控訴人は,平成5年9月以降,年額約20万円の老齢基礎年金を受給している。 キ控訴人と亡Aは,山小屋が老朽化したことから,平成3年から4年にかけ,約1100万円をかけて共同で新たに山小屋を建築し,両名の共有名義とした。亡Aは登記手続の一切を控訴人に委任し,不動産取得税を納付した。 - 14 -ク亡Aは,平成7年▲月に行方不明となった。控訴人は,亡Aを不在者とする不在者財産管理人選任の申立てをし,平成9年4月10日に,亡Aの不在者財産管理人(以下「亡A管理人」という。)が選任された。 ケ控訴人は,亡A管理人を相手方として,横浜家庭裁判所に婚 を不在者とする不在者財産管理人選任の申立てをし,平成9年4月10日に,亡Aの不在者財産管理人(以下「亡A管理人」という。)が選任された。 ケ控訴人は,亡A管理人を相手方として,横浜家庭裁判所に婚姻費用分担の審判を申し立てたところ,平成10年10月29日,横浜家庭裁判所は,控訴人と亡Aは同居中種々の確執があって不仲になったものであるが,控訴人が婚姻費用の分担請求を放棄ないし喪失したと推認すべき事情はうかがわれないこと,むしろ,亡Aが別居後,自宅と山小屋の固定資産税,地代,修繕費,山小屋の管理費用等の諸費用を分担することを約束し,不在者となるまでは分担してきたという事情があることなどを考慮して,不在者である亡Aは,婚姻費用の分担として,過去に控訴人が負担した修繕費20万3730円を直ちに支払うほか,自宅及び山小屋の固定資産税,地代,管理費用,水道料,修繕費等に相当する年額28万7600円を,別居解消又は婚姻解消に至るまで,毎年12月末日限り支払えとの審判をした。その結果,控訴人は,亡A管理人から,上記婚姻費用の支払を受けてきた。 コなお,控訴人は,亡Aが死亡したとみなされる平成14年▲月時点においても,上記自宅に居住していた。 (4)以上の事実を前提に以下検討する。 ア控訴人が厚年法37条1項の配偶者に当たるといえるか本件では,亡Aに別居後内縁関係にある者がいたことをうかがわせる証拠はないところ,控訴人と亡Aが別居してから亡Aが失踪宣告により死亡- 15 -したものとみなされる時点まで約21年が経過しているが,別居時に控訴人と亡Aが離婚しようとする意思まで持っていたわけではなく((3)イ),控訴人は別居後も亡A名義の自宅に居住し続け,亡Aは,行方不明になるまでは控訴人が居住していた自宅の固定資産税及び地代,控訴人も使用し が離婚しようとする意思まで持っていたわけではなく((3)イ),控訴人は別居後も亡A名義の自宅に居住し続け,亡Aは,行方不明になるまでは控訴人が居住していた自宅の固定資産税及び地代,控訴人も使用していた山小屋の固定資産税,管理費用等を一人で負担し((3)ウ),また,平成6年8月ころまでは控訴人と同居する子名義の預金口座等に相当額の金員を送金していたものである((3)エ,オ)。また,控訴人と亡Aは共同で山小屋を建てたりするなどしていた((3)キ)。そして,亡Aが行方不明になった後も,亡Aの法定代理人である亡A管理人(なお,家庭裁判所が選任した不在者の財産管理人は,亡Aの法定代理人である(民法28条参照)。)が相当額の婚姻費用を負担し続けてきたのである((3)ケ)から,亡Aが行方不明になった平成7年▲月当時はもとより,亡Aが死亡したものとみなされた平成14年▲月▲日の時点においても,控訴人とAとの婚姻関係が実態を失い,形骸化していて,事実上の離婚状態にあったとみることは相当でないというべきである。したがって,控訴人は,亡Aが死亡したものとみなされた平成14年▲月▲日の時点において,厚年法37条1項所定の配偶者であったと認めるのが相当である(なお,この点は,被控訴人も争わないところである。)。 イ生計同一要件充足の有無次に,控訴人が,亡Aが法的に死亡したものとみなされた平成14年▲月▲日の時点において生計同一要件を充足するか否かについて検討する。 生計を同じくするとは,消費生活上の家計を一つにしていると認められ- 16 -る状況にあることを指すものであり,夫婦の場合では,同居して,夫婦それぞれが得た収入及び支出を合わせて共同に計算して,生活している状況にあることがその典型ということができる。しかし,必ずしも同居していることは絶 とを指すものであり,夫婦の場合では,同居して,夫婦それぞれが得た収入及び支出を合わせて共同に計算して,生活している状況にあることがその典型ということができる。しかし,必ずしも同居していることは絶対の要件でなく,例えば夫が単身赴任して別居している場合でも,夫婦それぞれが得た収入・支出を合わせて共同に計算し,婚姻費用を分担しあって生活していると評価できるなら,消費生活上の家計を一つにしており,生計を同じくすると評価できるというべきである。さらに,たとえば夫が勝手に別居したが(民法770条1項2号にいう「悪意の遺棄」に当たるケース),家庭裁判所において夫が妻に相当額の婚姻費用を支払うよう命じられて,夫がそれを履行し,妻がそれにより生活しているような場合も,夫と妻の収入,支出を合わせて共同に計算し,婚姻費用を分担しあっているとみることができるから(家庭裁判所の婚姻費用分担の審判においては,通常,夫と妻それぞれの収入,支出を総合勘案して分担額が決められる。),生計を同じくするという要件を充足するというべきである(すなわち,生計を同じくしているかどうかは,法的,規範的な要素を含めて判断すべきものであるから,夫が単身赴任している例のように夫が自主的に婚姻費用を負担しているか,それとも夫が民法760条の婚姻費用分担義務に基づき強制的に婚姻費用を分担させられているかという違いを殊更重視すべきでないのである。)。また,夫が従来の住所を去るに当たり(たとえば海外に長期滞在した場合,従来の住所との関係では夫は不在者ということになる。民法25条参照),財産の管理人を置き(なお,同法25条,28条参照),同人に従来の住所地に残された財産の中から- 17 -妻への相当額の婚姻費用の支払を委任し,それが財産管理人により履行されていたところ,夫が死亡したという を置き(なお,同法25条,28条参照),同人に従来の住所地に残された財産の中から- 17 -妻への相当額の婚姻費用の支払を委任し,それが財産管理人により履行されていたところ,夫が死亡したという場合を考えると,この場合も,夫死亡当時,夫と妻は生計を同じくしていたと評価できることは明らかである(なお,財産管理人は夫の代理人であるから,財産管理人が婚姻費用を支払っていたということは,法的には不在者である夫が妻に婚姻費用を支払ったと評価されるものである。)。 ところで,本件は,夫が従来の住所を去って容易に帰来する見込みがないことから,家庭裁判所において,財産管理人が選任され,さらに,同人を相手方として,従来の住所に残された亡Aの財産の負担において控訴人に対する婚姻費用の分担が命じられ,財産管理人がそれに従って控訴人に婚姻費用を支払ってきたというものである((3)ク,ケ)。そして,家庭裁判所が選任した不在者の財産管理人は不在者の法定代理人の地位にあるから,財産管理人が婚姻費用を支払ったということは,法的には不在者であるAが控訴人に婚姻費用を支払ったと評価されるのである。しかも,上記事実関係((3)カ,ケ)によると,支払われていた婚姻費用の額が控訴人の生計に占める割合は決して少なくないものであったということができる(なお,この婚姻費用は,亡A所有の自宅及び亡Aと控訴人の共有の山小屋の固定資産税,地代,管理費用,水道料,修繕費等に充てることが想定されているものであるが,自宅等を使用しているのは専ら控訴人であるから,これは,結局,控訴人の生活維持の趣旨のものということができるのである。)。そうすると,亡Aが法的に死亡したとみなされる平成14年▲月▲日当時において,控訴人と亡Aとは生計を同じくしていたと- 18 -評価できるというべきであ 趣旨のものということができるのである。)。そうすると,亡Aが法的に死亡したとみなされる平成14年▲月▲日当時において,控訴人と亡Aとは生計を同じくしていたと- 18 -評価できるというべきである(なお,上記の,不在者が任意に選任した財産管理人が婚姻費用を支払っているケースと本件との違いは,不在者の意思で選任された財産管理人が婚姻費用を支払っているか,裁判所が選任した財産管理人が裁判所の審判に従って婚姻費用を支払っているのかの点にすぎないところ,上記のように,生計を同じくするかどうかは,法的,規範的な要素も含めて判断されるべきものであるから,不在者の意思を殊更に重視するのは相当でないのであり,不在者が選任した財産管理人が婚姻費用を支払っているケースと本件とは同じというべきである。)。 なお,Aが,法的に死亡したとみなされる平成14年▲月▲日当時において,現実には従来の住所地とは別の場所で生存し,別途生計を立てて生活していた可能性がないわけではないが,その点の立証はない(行方不明になった直後に亡Aは死亡していたというような可能性もあるのである。)。また,仮にそうであったとしても,従来の住所地に残されたAの財産の中から相当額の婚姻費用の分担がされているのであるから,この点は,控訴人と亡Aが生計を同じくしていたという判断の妨げにならないというべきである。 したがって,本件では,亡Aが死亡したものとみなされる平成14年▲月▲日当時において,亡Aと控訴人は生計を同じくしていたと認定するのが相当である。なお,このように解することは,受給権者の遺族の生活の保障を図るという厚年法37条の立法趣旨に適合するものといえる。 結論 したがって,争点2について判断するまでもなく,本件不支給処分は違法で- 19 -あるから取り消されるべきであ の生活の保障を図るという厚年法37条の立法趣旨に適合するものといえる。 結論 したがって,争点2について判断するまでもなく,本件不支給処分は違法で- 19 -あるから取り消されるべきであるところ,これを棄却した原判決は失当であり,本件控訴は理由がある。よって,原判決を取り消すこととし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第9民事部裁判官宇田川基裁判官北澤純一裁判長裁判官大坪丘は,転補につき,署名押印することができない。 裁判官宇田川基(原裁判等の表示)主文 - 20 - 本件訴えのうち,被告に保管されている年金の個人加入記録原簿にある原告の情報に関して「昭和36年4月資格取得同41年1月脱退共済年金退職一時金支給期間」の情報を加入し,これと矛盾する情報を取り消し,原簿訂正証明書を交付すべき旨を命ずることを求める訴えの部分を却下する。 その余の訴えに係る原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1請求 社会保険庁長官が原告に対して平成20年7月15日付けでした厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律により復活した未支給年金の不支給処分を取り消す。 被告は,被告に保管されている年金の個人加入記録原簿にある原告の情報に関し,「昭和36年4月資格取得同41年1月脱退共済年金退職一時金支給期間」の情報を加入し,これと矛盾する情報を取り消し,原簿訂正証明書を原告に交付せよ。 被告は,原告 原簿にある原告の情報に関し,「昭和36年4月資格取得同41年1月脱退共済年金退職一時金支給期間」の情報を加入し,これと矛盾する情報を取り消し,原簿訂正証明書を原告に交付せよ。 被告は,原告に対し,90万円及びこれに対する平成21年1月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,昭和60年法律第34号による改正前の厚生年金保険法(以下「旧厚年法」という。)の通算老齢年金の受給権者であった亡Aが行方不明となり,失踪宣告によって死亡したものとみなされたことから,亡Aの妻である原告- 21 -が,①厚生年金保険法(以下「厚年法」という。)37条1項に基づき,亡Aの通算老齢年金の未支給保険給付の請求をしたところ,社会保険庁長官から,亡Aの死亡の当時亡Aと生計を同じくしていたとはいえないとの理由で不支給処分を受けたため,同処分の取消しを求めるとともに,②原告の年金記録が記載されたいわゆるねんきん特別便(以下単に「ねんきん特別便」という。)に,公立学校共済組合から退職一時金を受け取った期間が旧厚年法における脱退手当金支給期間として記載されていたことから,原告の年金原簿上の情報に誤りがあるとして,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(以下「行政機関個人情報保護法」という。)27条,29条等並びに厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律(以下「時効特例法」という。)4条に基づき,「昭和36年4月資格取得同41年1月脱退共済年金退職一時金支給期間」の情報を加入してこれと矛盾する情報を取り消し(以下,上記情報の加入及びこれと矛盾する情報の取消しを併せて「本件訂正」という。),原簿訂正証明書を交付すべき旨を命ずることを求め,さらに,③上記保険給付を請求する手続及び年金 る情報を取り消し(以下,上記情報の加入及びこれと矛盾する情報の取消しを併せて「本件訂正」という。),原簿訂正証明書を交付すべき旨を命ずることを求め,さらに,③上記保険給付を請求する手続及び年金記録の訂正を求める手続において社会保険事務所職員等の不法行為により精神的苦痛を被ったと主張して,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づいて,慰謝料90万円とこれに対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 関係法令等の概要(1)通算老齢年金通算老齢年金は,大正15年4月1日以前に生まれた者で,複数の年金制度に加入し,各制度の加入期間が1年以上に達するものの,当該各制度から- 22 -個別に老齢年金を受給することができないといったような場合に,当該各制度の加入期間を通算することにより受給資格要件を付与し,当該各制度から加入期間に比例した額の支給を行う老齢年金をいう(旧厚年法第3章第2節の2)。通算老齢年金は,昭和60年法律第34号により同61年4月から導入された基礎年金制度の下では,いずれの年金制度に加入しても,すべて国民年金(老齢基礎年金)の受給資格期間になることから廃止されたが,一定の条件を満たす者にあっては,通算老齢年金が支給される経過措置が設けられている(昭和60年法律第34号附則63条)。 (2)未支給保険給付ア保険給付の受給権者が死亡した場合において,その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは,その者の配偶者,子,父母,孫,祖父母又は兄弟姉妹であって,その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたもの(以下,受給権者と生計を同じくしているという要件を「生計同一要件」といい,そのような関係を「生計同一関係」ということがある。)は,自己の名で,その未支給の保険 当時その者と生計を同じくしていたもの(以下,受給権者と生計を同じくしているという要件を「生計同一要件」といい,そのような関係を「生計同一関係」ということがある。)は,自己の名で,その未支給の保険給付の支給を請求することができる(厚年法37条1項。なお,旧厚年法37条1項も同様の規定である。)。 イ前記アの場合において,死亡した者が遺族厚生年金の受給権者である妻であったときは,その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた被保険者又は被保険者であった者の子であって,その者の死亡によって遺族厚生年金の支給の停止が解除されたものは,同項に規定する子とみなす(厚年法37条2項)。 - 23 -ウ前記アの場合において,死亡した受給権者が死亡前にその保険給付を請求していなかったときは,同項に規定する者は,自己の名で,その保険給付を請求することができる(厚年法37条3項。なお,旧厚年法37条3項も同様の規定である。)。 (3)遺族厚生年金ア遺族厚生年金は,被保険者(失踪の宣告を受けた被保険者であった者であって,行方不明となった当時被保険者であった者を含む。)が,死亡した場合に,その者の遺族に支給する。ただし,死亡した者につき,死亡日の前日において,死亡日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり,かつ,当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2に満たないときは,この限りでない(厚年法58条1項1号)。 イ遺族厚生年金を受けることができる遺族は,被保険者又は被保険者であった者の配偶者,子,父母,孫又は祖父母であって,被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時(失踪の宣告を受けた被保険者であった者にあっては,行方不明となった当時)その者によって生計を維持したものとする( 配偶者,子,父母,孫又は祖父母であって,被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時(失踪の宣告を受けた被保険者であった者にあっては,行方不明となった当時)その者によって生計を維持したものとする(以下,被保険者又は被保険者であった者によって生計を維持していたという要件を「生計維持要件」といい,そのような関係を「生計維持関係」ということがある。)。ただし,妻以外の者にあっては,次に掲げる要件(省略)に該当した場合に限るものとする(厚年法59条1項)。 ウ前記アの規定の適用上,被保険者又は被保険者であった者によって生計を維持していたことの認定に関し必要な事項は,政令で定める(厚年法5- 24 -9条4項)。 エ厚年法59条1項に規定する被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その者によって生計を維持していた配偶者,子,父母,孫又は祖父母は,当該被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた者であって厚生労働大臣の定める金額(年額850万円)以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のものその他これに準ずる者として厚生労働大臣の定める者とする(厚生年金保険法施行令3条の10)。 (4)生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて(昭和61年4月30日庁保険発第29号社会保険庁年金保険部国民年金課長・社会保険庁年金保険部業務第一課長・社会保険庁年金保険部業務第二課長から,都道府県民生主管部(局)保険主管課(部)長・都道府県民生主管部(局)国民年金主管課(部)長あて通知。以下「本件認定基準」という。)ア総論(ア)遺族厚生年金の受給権者に係る生計維持関係の認定については,生計同一要件(後記イ)及び収入要件(後記ウ)を満たす場合に死亡した被保険者又は被保険者であった者と生計維持関係があるものと認定 論(ア)遺族厚生年金の受給権者に係る生計維持関係の認定については,生計同一要件(後記イ)及び収入要件(後記ウ)を満たす場合に死亡した被保険者又は被保険者であった者と生計維持関係があるものと認定するものとする。ただし,これにより生計維持関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には,この限りでない。 (イ)未支給年金及び未支給の保険給付の支給対象者に係る生計同一関係の認定については,生計同一要件(後記イ)を満たす場合に死亡した- 25 -被保険者又は被保険者であった者と生計同一関係があるものと認定するものとする。ただし,これにより生計同一関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には,この限りでない。 イ生計同一に関する認定要件(ア)配偶者に係る生計同一関係の認定に当たっては,次に該当する者は,生計を同じくしていた者に該当するものとする。 a住民票上同一世帯に属しているときb住民票上世帯を異にしているが,住所が住民票上同一であるときc住所が住民票上異なっているが,次のいずれかに該当するとき(a)現に起居を共にし,かつ,消費生活上の家計を1つにしていると認められるとき(b)単身赴任,就学又は病気療養等のやむを得ない事情により住所が住民票上異なっているが,次のような事実が認められ,その事情が消滅したときは,起居を共にし,消費生活上の家計を1つにすると認められるとき①生活費,療養費等の経済的な援助が行われていること。 ②定期的に音信,訪問が行われていること。 (イ)認定の方法前記(ア)の事実の認定については,受給権者から別表1(省略)の書類の提出を求め行うものとする。 ウ収入に関する認定要件 こと。 ②定期的に音信,訪問が行われていること。 (イ)認定の方法前記(ア)の事実の認定については,受給権者から別表1(省略)の書類の提出を求め行うものとする。 ウ収入に関する認定要件- 26 -(ア)遺族厚生年金の受給権者に係る収入に関する認定に当たっては,次のいずれかに該当する者は,厚生大臣の定める金額(年額850万円)以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外の者に該当するものとする。 a前年の収入(前年の収入が確定しない場合にあっては,前々年の収入)が年額850万円未満であること。 b前年の所得(前年の所得が確定しない場合にあっては,前々年の所得)が年額655.5万円未満であること。 c一時的な所得があるときは,これを除いた後,上記a又はbに該当すること。 d上記のa,b又はcに該当しないが,定年退職等の事情により近い将来収入が年額850万円未満又は所得が年額655.5万円未満となると認められること。 (イ)認定の方法前記(ア)の認定については,受給権者からの申出及び遺族厚生年金の受給権者の状況に応じ次の書類の提出又は提示を求め行うものとする。 a前記(ア)a又はbに該当する者については,前年若しくは前々年の源泉徴収票,課税証明書,確定申告書等収入額及び所得額を確認することができる書類(以下省略)b前記(ア)c又はdに該当する者については,前年若しくは前々年の源泉徴収票若しくは課税証明書並びに当該事情を証する書類等(5)行政機関個人情報保護法- 27 -ア27条(訂正請求権)何人も,自己を本人とする保有個人情報(次に掲げるものに限る。)の内容が事実でないと思料するときは,この法律の定めるところにより,当該保有個人情報を保有する行政機関の長に対し,当該保有個人情報の訂正(追加又 己を本人とする保有個人情報(次に掲げるものに限る。)の内容が事実でないと思料するときは,この法律の定めるところにより,当該保有個人情報を保有する行政機関の長に対し,当該保有個人情報の訂正(追加又は削除を含む。以下同じ。)を請求することができる。ただし,当該保有個人情報の訂正に関して他の法律又はこれに基づく命令の規定により特別の手続が定められているときは,この限りでない(1項)。 (ア)開示決定に基づき開示を受けた保有個人情報(1号)(イ)2号及び3号省略イ29条(保有個人情報の訂正義務)行政機関の長は,訂正請求があった場合において,当該訂正請求に理由があると認めるときは,当該訂正請求に係る保有個人情報の利用目的の達成に必要な範囲内で,当該保有個人情報の訂正をしなければならない。 (6)行政手続法(以下「手続法」という。)ア5条(審査基準)(ア)行政庁は,審査基準(申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準)を定めるものとする(1項,2条8号ロ)。 (イ)行政庁は,審査基準を定めるに当たっては,許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない(2項)。 (ウ)行政庁は,行政上特別の支障があるときを除き,法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法- 28 -により審査基準を公にしておかなければならない(3項)。 イ6条(標準処理期間)行政庁は,申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間(中略)を定めるよう努めるとともに,これを定めたときは,これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。 ウ7条( 準的な期間(中略)を定めるよう努めるとともに,これを定めたときは,これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。 ウ7条(申請に対する審査,応答)行政庁は,申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず,かつ,申請書の記載事項に不備がないこと,申請書に必要な書類が添付されていること,申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については,速やかに,申請をした者(以下「申請者」という。)に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め,又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。 エ8条(理由の提示)(ア)行政庁は,申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は,申請者に対し,同時に,当該処分の理由を示さなければならない(1項本文)。 (イ)前記本文に規定する処分を書面でするときは,同項の理由は,書面により示さなければならない(2項)。 オ9条(情報の提供)- 29 -(ア)行政庁は,申請者の求めに応じ,当該申請に係る審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければならない(1項)。 (イ)行政庁は,申請をしようとする者又は申請者の求めに応じ,申請書の記載及び添付書類に関する事項その他の申請に必要な情報の提供に努めなければならない(2項)。 前提事実本件において前提となる事実は,以下のとおりである(当事者間に争いのある事実は,各末尾記載の証拠及び弁論の全趣旨により認定した。)。 (1)当事者等亡Aは,大正14年▲月▲年生まれの男性であり,旧厚年法による通算老齢年金の受給権者であった。亡Aは,平成7年▲ のある事実は,各末尾記載の証拠及び弁論の全趣旨により認定した。)。 (1)当事者等亡Aは,大正14年▲月▲年生まれの男性であり,旧厚年法による通算老齢年金の受給権者であった。亡Aは,平成7年▲月に行方不明となり,同15年6月27日,失踪宣告の裁判が確定して,同14年▲月▲日をもって死亡したものとみなされた。(甲18,20,22)原告(昭和▲年▲月▲日生まれ)は,昭和31年12月27日に亡Aと婚姻の届出をした者であるが,同56年7月1日に亡Aと別居し,住民票上の住所を異にしていた。(甲20,22)(2)遺族共済年金に関する訴訟ア原告は,地方公務員等共済組合法の遺族共済年金の給付を受けるため,平成15年9月16日,公立学校共済組合に対し,遺族共済年金の決定請求書を提出したが,同組合は,同月26日,原告が亡Aの遺族に該当しないものと認定し,原告の請求を棄却する旨の処分をした。そこで,原告は,- 30 -公立学校共済組合審査会の審査請求を経た上,同組合に対し,同処分の取消しと同組合の担当職員の不法行為に基づく損害賠償(慰謝料)を求める訴訟を東京地方裁判所に提起した。(甲22。以下「前回訴訟」という。)イ東京地方裁判所は,前回訴訟につき,前記処分を取り消し,損害賠償請求を棄却する旨の判決をした。これに対し,原告及び公立学校共済組合の双方が東京高等裁判所に控訴したところ,東京高等裁判所は,平成19年5月31日,原判決を一部変更し,前記処分を取り消した部分についての控訴は棄却したものの,原告の損害賠償請求については一部につき理由があるものとして認容する旨の判決を言い渡し,同判決はそのまま確定した。(甲22)(3)亡Aの通算老齢年金及び遺族厚生年金の請求に係る経緯ア原告は,平成20年1月11日,社会保険庁長官に対し,亡Aの通算 として認容する旨の判決を言い渡し,同判決はそのまま確定した。(甲22)(3)亡Aの通算老齢年金及び遺族厚生年金の請求に係る経緯ア原告は,平成20年1月11日,社会保険庁長官に対し,亡Aの通算老齢年金についての裁定請求書及び未支給保険給付請求書並びに遺族厚生年金についての裁定請求書を提出した。(乙6ないし8)イ社会保険庁長官は,平成20年7月10日,同月15日付けで,上記アの通算老齢年金の未支給保険給付の請求につき,これを不支給とする旨の決定(以下「本件不支給処分」という。)をした。 ウ原告は,本件不支給処分を不服として,平成20年8月11日,東京社会保険事務局社会保険審査官(以下「社保審査官」という。)に対して審査請求をしたが,社保審査官は,原告の審査請求は旧厚年法37条1項の規定自体に対するものであり,審査事項以外の趣旨のものであるから不適法であるとし,同年10月9日付けで上記審査請求を却下する旨の決定を- 31 -した。(甲2,乙9)しかし,保険給付に関する処分に不服があるときは,社会保険審査官に対する審査請求をすることができるところ(厚年法90条1項),証拠(乙9)によれば,原告の審査請求は,旧厚年法37条1項の規定自体の不服をいうものではなく,本件不支給処分の違法をいうものであると認められるから,同請求は保険給付に関する処分についてのものとして適法なものである。 エ原告は,平成20年10月17日,上記ウの却下決定を不服として,社会保険審査会(以下「社保審査会」という。)に対して再審査請求をした。 (甲9)オ原告は,平成21年1月19日,再審査請求から3月を経過しても社保審査会が裁決を行わなかったため,本件不支給処分の取消し等を求める本件訴えを提起した。(乙10,当裁判所に顕著な事実)カ社保審査会は,平成 平成21年1月19日,再審査請求から3月を経過しても社保審査会が裁決を行わなかったため,本件不支給処分の取消し等を求める本件訴えを提起した。(乙10,当裁判所に顕著な事実)カ社保審査会は,平成21年4月30日,上記再審査請求を棄却する旨の裁決をした。(乙10)(4)原告の年金記録に係る確認申立てに係る経緯ア原告のねんきん特別便は平成20年3月10日付けで作成されて原告に送付されたが,これには,原告が公立学校共済組合から退職一時金を受け取った期間のうち昭和36年4月1日以後の期間が,旧厚年法の脱退手当金支給期間とされ,「厚年脱退手当金支給期間(昭和36年4月1日以後期間)」と記載されていた。原告は,足立社会保険事務所(以下「足立事務所」という。)に対し,上記記載の訂正等を求めたが,足立事務所は,- 32 -社会保険事務所ではねんきん特別便の再発行を行うことはできないため,上記記載は,共済組合による退職一時金支給期間を含むものとして,「厚生年金脱退一時金等の支給期間」と読み替えてもらいたい旨を伝えた。そこで,原告は,平成20年8月26日,自らの年金記録の訂正を求めて,年金記録に係る確認申立書(甲16)を足立事務所に提出したが(以下,この申立てを「本件年金記録確認申立て」という。),足立事務所の適用課長B(以下「B課長」という。)は,同年11月12日になって本件年金記録確認申立てに係る申立書を東京社会保険事務局に送付し,東京社会保険事務局は,同月18日,年金記録確認東京地方第三者委員会(以下「第三者委員会」という。)が設置されている東京行政評価事務所に対し,同申立書を送付した。 イしかし,東京行政評価事務所は,本件年金記録確認申立ての内容は第三者委員会の対象外のものであるとして,同年12月2日付けで東京社会保険事務局に同申 京行政評価事務所に対し,同申立書を送付した。 イしかし,東京行政評価事務所は,本件年金記録確認申立ての内容は第三者委員会の対象外のものであるとして,同年12月2日付けで東京社会保険事務局に同申立書を返戻した。(甲17の1)ウ東京社会保険事務局は,平成20年12月11日付けで足立事務所に本件年金記録確認申立てに係る申立書を返戻し,足立事務所は,同月17日付けで原告に同申立書を返戻した。(甲17の1及び2) 争点 (1)本件訴えのうち,年金原簿につき本件訂正を行い原簿訂正証明書を交付すべき旨を命ずることを求める部分が適法か。 (2)原告の年金原簿に事実と異なる記載がされているか。 (3)本件不支給処分が適法か。 - 33 -(4)足立事務所職員等の行為が国家賠償法上違法であるか,違法であるとして,原告の損害額はいくらか。 当事者の主張の概要(1)争点(1)について(原告の主張)原告のねんきん特別便では,原告が公立学校共済組合から退職一時金の支給を受けた期間のうち昭和36年4月1日以後の期間が,旧厚年法の脱退手当金支給期間とされ,「厚年脱退手当金支給期間(昭和36年4月1日以後期間)」として記載されているから,原告の年金原簿にも同様の記載がされているものと推測され,このような事実と異なる年金記録を訂正する必要がある。 したがって,本件訴えのうち,年金原簿につき本件訂正を行うこと及び原簿訂正証明書を交付することを求める部分は,訴えの利益に欠けるところはなく,適法である。 (被告の主張)ア確かに,原告は,公立学校共済組合から退職一時金の支給を受けているのみであり,旧厚年法の脱退手当金の支給は受けていないが,脱退手当金支給期間又は退職一時金支給期間のうち昭和36年4月1日以後の期間は,いずれも,老齢基礎年金等の支給要 退職一時金の支給を受けているのみであり,旧厚年法の脱退手当金の支給は受けていないが,脱退手当金支給期間又は退職一時金支給期間のうち昭和36年4月1日以後の期間は,いずれも,老齢基礎年金等の支給要件の特例に関する国民年金法附則9条1項の適用について,合算対象期間(国民年金法附則7条1項)に算入することができるから(昭和60年法律第34号附則8条5項柱書き,同項7号及び同号の2),年金原簿の記載が脱退手当金支給期間とされて- 34 -いるか,退職一時金支給期間とされているかによって,原告の年金受給に係る法的地位ないし権利に違いが生ずることはない。 イまた,社会保険業務センターの国民年金厚生年金保険年金給付関係業務取扱要領では,合算対象期間に関する記録処理において,合算対象期間の種別に応じて,「1」から「9」までのコードが設定されており,このうちコード「4」は,「脱退手当金支給期間又は退職一時金支給期間のうち昭和36年4月1日以後の期間」とされている。そして,原告のねんきん特別便において,退職一時金支給期間が「厚年脱退手当金支給期間(昭和36年4月1日以後期間)」と記載されたのは,両者について同一コードが設定され,これをねんきん特別便に反映する際に,両者を包含する趣旨で「厚年脱退手当金支給期間(昭和36年4月1日以後期間)」と表示することとしたものであり,これをもって,年金原簿に事実と異なる記載がされていることを示すものとはいえない。 ウ以上によれば,本件訴えのうち,年金原簿につき本件訂正を行うこと及び原簿訂正証明書を交付することを求める部分は,訴えの利益を欠く不適法なものであって却下されるべきである。 (2)争点(2)について(原告の主張)原告は,昭和30年4月から同40年12月までの間,公立学校共済組合の被保険者であったと 分は,訴えの利益を欠く不適法なものであって却下されるべきである。 (2)争点(2)について(原告の主張)原告は,昭和30年4月から同40年12月までの間,公立学校共済組合の被保険者であったところ,公立学校を退職した際,同組合から退職一時金を受領した。しかし,原告のねんきん特別便には,昭和36年4月から同41年1月までの期間が旧厚年法の脱退手当金支給期間のうち同36年4月- 35 -1日以後の期間として記載されていた。そうすると,原告の年金原簿には,これと同様に事実と異なる記載がされていると考えられる。 (被告の主張)前記(1)の被告の主張イ記載のとおり,原告のねんきん特別便の記載をもって年金原簿に事実と異なる記載がされているということはできない。 (3)争点(3)について(原告の主張)ア亡Aが,失踪状況にあった7年の間に死亡したか否かは不分明であるし,死亡したとしてもその時点は不明なのであって,失踪宣告によって死亡したものとみなされる日は社会秩序維持の必要から定められたものにすぎず,亡Aについては合理的限定的な「死亡の当時」は存在しない。そして,被保険者が失踪宣告によって死亡したものとみなされる場合の生計同一要件の判断においては,当該被保険者が行方不明になった当時の状況を重視するのが社会保障の趣旨に合致する。 これを原告についてみるに,前回訴訟の判決では,亡Aが行方不明になった当時の状況に照らして,原告と亡Aとが離婚同然の状態にはなく生計同一関係にあるものと認められた。そして,原告は,亡Aの失踪中も亡A名義の住宅に無償で居住し続けており,しかも,原告が亡Aの不在者財産管理人に対して申し立てた婚姻費用分担審判では,同管理人が原告に対して,①上記住宅の固定資産税及び地代,②長野県にある亡A及び原告の共有名義の山小屋2棟 けており,しかも,原告が亡Aの不在者財産管理人に対して申し立てた婚姻費用分担審判では,同管理人が原告に対して,①上記住宅の固定資産税及び地代,②長野県にある亡A及び原告の共有名義の山小屋2棟の地代及び固定資産税,③定額の水道代,④上記住宅及び山小屋の修理費年額3万円を支払うよう命じられており,原- 36 -告は,上記審判により得た金銭で上記の住宅及び山小屋2棟を維持してきた。また,原告は,亡Aとの別居当時から原告と亡Aの預金を管理しており,家庭裁判所の許可を得て,生活費の不足分をそこから補填するとともに,上記預金を原資とした私的年金を平成15年8月まで受給していた。 さらに,原告は,亡Aが失踪してから2年程度は長女と共に亡Aの捜索を続け,横浜家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てるとともに,同管理人選任前に亡Aの預金を凍結した。加えて,亡Aの長男が亡Aの失踪中亡Aの預金約1800万円を無断で引き出したため,原告は,亡Aの相続人として,長男に対する損害賠償請求訴訟を提起し,勝訴判決を得た。 以上のとおり,原告は,亡Aの経済的援助を受けて生活し,その財産の管理等を行ってきたのであるから,亡Aの死亡の当時亡Aと生計を同じくしていたということができる。 イ厚年法37条2項は,死亡した被保険者に未支給保険給付がある場合,遺族厚生年金の受給権者が未支給保険給付の受給権者である旨を規定していると解すべきである。そして,原告は,亡Aの遺族として遺族厚生年金の受給権者に該当するから,同項により,亡Aの未支給保険給付の受給権者となる。 (被告の主張)ア未支給保険給付に係る生計同一要件の認定事務は,本件認定基準に基づいて行われており,この認定基準によれば,原告のように,未支給保険給付の請求者が配偶者であり,住民票上の住居を異にし,かつ, 張)ア未支給保険給付に係る生計同一要件の認定事務は,本件認定基準に基づいて行われており,この認定基準によれば,原告のように,未支給保険給付の請求者が配偶者であり,住民票上の住居を異にし,かつ,別居している場合については,①単身赴任,就学又は病気療養等のやむを得ない事- 37 -情により住所が住民票上異なってはいるが,②生活費等の経済的援助又は定期的な音信若しくは訪問が行われていて,③①の事情が消滅したときには,起居を共にし,消費生活上の家計を1つにすると認められるときに,生計同一要件を満たすものとされている。しかし,原告においては,亡Aが失踪宣告により死亡したとみなされる時点である平成14年▲月▲日当時,亡Aの生死不明の状態が7年間継続した後の時点であるという事情の性質上,生活費等の経済的援助又は定期的な音信若しくは訪問が行われていたと認めることはできない。また,亡Aが行方不明となった原因は不明であり,かつ,その後7年間における亡Aの心情を推察する事情もない以上,住所が住民票上異なるに至る事情が消滅したときに,起居を共にし,消費生活上の家計を1つにすることになることも想定することができない。したがって,原告が亡Aの死亡の当時亡Aと生計を同じくしていたということはできない。 イ厚年法37条2項は,その規定文言に照らせば,同条1項に規定する子の意義に関する規定であって,遺族厚生年金の受給権者であることのみをもって,未支給保険給付の受給を認める旨を規定したものでないことは明らかである。 (4)争点(4)について(原告の主張)ア足立事務所総合相談室長C(以下「C室長」という。)の対応に関する違法(ア)C室長は,社会保険庁においては,受給権者が失踪宣告によって死- 38 -亡したものとみなされる場合には未支給保険給 足立事務所総合相談室長C(以下「C室長」という。)の対応に関する違法(ア)C室長は,社会保険庁においては,受給権者が失踪宣告によって死- 38 -亡したものとみなされる場合には未支給保険給付を請求することはできないとの取扱いがされていることを知っていたはずである。そうすると,原告が足立事務所を訪れて前回訴訟の判決や亡Aの失踪宣告等を伝えた平成19年6月6日,原告が亡Aの年金について相談した同年9月11日,又は,原告が亡Aの通算老齢年金の裁定請求書を提出した同20年1月10日のいずれかの時点において上記取扱いを原告に教示すべきであったのであり,これを行わなかったC室長の対応は,手続法9条に違反する。 (イ)原告が,平成20年7月7日に足立事務所を訪れ,C室長に原告の未支給保険給付の請求が認められない理由を尋ねたところ,①失踪宣告による死亡認定者に係る未請求分の老齢年金請求の取扱い(失踪宣告により死亡したものとみなされた者については,その者の死亡当時に生計を同じくする者が存在しないため,未支給年金を支払うことができないから,そのような場合には請求の裁定は行わず,請求の却下とする。)が記載された文書(甲5の1)及び②根拠条文として厚年法37条及び59条が記載された文書(甲5の2)を示した(以下,これらの文書を併せて「本件説明文書」という。)。しかし,本件説明文書は,亡Aの死亡が認定されておらず,亡Aには死亡当時という特定の時期がないのに,受給権者が特定の時期に死亡したことを前提とするものであるから,本件説明文書を用いて理由を提示することは手続法8条に違反する。また,C室長は,本件説明文書を原告に黙読させ,それに対する原告の主張を無視するとともに,原告に黙って引き下がるよう仕向けてお- 39 -り,このようなC室長の対応は, とは手続法8条に違反する。また,C室長は,本件説明文書を原告に黙読させ,それに対する原告の主張を無視するとともに,原告に黙って引き下がるよう仕向けてお- 39 -り,このようなC室長の対応は,具体的な審査基準を定めてこれを公にし,名宛人に意見陳述の手続を執らなければならないとする手続法5条及び手続法第3章の各条に違反している。さらに,C室長は,本件説明文書を原告に黙読させて処分通知に代え,文書による処分通知を求めたのにこれを拒否しており,このようなC室長の対応は,手続法9条に違反する。 (ウ)C室長は,原告の遺族厚生年金の申請において,当時76歳であった原告の過去5年間の年収がいずれも850万円を超えるはずがないにもかかわらず,平成14年度の課税証明書を提出するよう求め,これを提出することができないのであれば,過去5年分(同15年度から同19年度までの5年間)の課税証明書をすべて提出するよう求めており,このようなC室長の対応は,手続法9条に違反する。 イ本件不支給処分に関する違法本件不支給処分は,原告の申請から約半年も経過した後に行われており,手続法7条に違反している。また,その処分理由には亡Aの「死亡の当時」という特定することのできない時期が記載されているとともに,厚年法37条2項が記載されておらず,手続法8条に違反している。さらに,本件不支給処分の理由が記載された社会保険業務センター所長から社保審査官あての意見書(甲33)が,本件不支給処分から5箇月後に,しかも,平成20年12月10日付けの再審査請求における公開審理の実施通知(甲12)に同封された資料の中に密かに入れられる形で送付されており,手続法8条に違反している。 - 40 -ウ社保審査官の対応に関する違法(ア)社保審査官は,原告の審査請求を不適法却下するま (甲12)に同封された資料の中に密かに入れられる形で送付されており,手続法8条に違反している。 - 40 -ウ社保審査官の対応に関する違法(ア)社保審査官は,原告の審査請求を不適法却下するまで約2箇月を要しており,このような社保審査官の対応は,手続法7条に違反する。 (イ)社保審査官は,原告に送付した平成20年8月12日付け書面において,審査請求の件数が多いため審査決定書の謄本の送付まで相当日数がかかるなどと述べており,そのような審査件数が多い時こそこれに対応した処理期間を設定すべきであるのに,これをしなかったことは手続法6条に違反している。 (ウ)社保審査官は,原告の審査請求を旧厚年法の規定自体に不服がある旨を主張するものとして不適法却下したが,原告はそのような主張はしていないし,戸籍上の夫婦における生計同一要件を審査するに当たり事実関係を調査せずに処分しており,手続法5条ないし8条に違反する。 エ社保審査会の対応に関する違法(ア)社保審査会は,原告の再審査請求を受け付けてから同請求を受理するまで約1箇月を要しており,このような社保審査会の対応は,手続法7条に違反している。 (イ)社保審査会は,標準処理期間を公開審理から3箇月程度とし,請求者に対して「公開審理後2~3か月後を目途に裁決書を送付している」旨の通知を行っているが,このような処理期間の定め方は,申請の到達から処分までの期間を定めるべきとする手続法6条と異なるものであるし,上記期間が公表されていない点も同条に違反している。 (ウ)社保審査会は,原告に対し,公開審理を行うときは当該公開審理日- 41 -の約半月前にあらかじめ別途通知する旨を知らせながら,実際には,公開審理日の50日前に日程を連絡してきており,通知の仕方がし恣意的であり違法である。 (エ 行うときは当該公開審理日- 41 -の約半月前にあらかじめ別途通知する旨を知らせながら,実際には,公開審理日の50日前に日程を連絡してきており,通知の仕方がし恣意的であり違法である。 (エ)再審査請求についての公開審理では,委員や参与の質問に簡潔に回答するよう求め,それ以外の発言については許可を要するものとされており,発言内容の記録の正確さに担保がなく,手続法第3章各条に違反する。 オ原告の年金記録の訂正要求等への対応に関する違法(ア)原告は,ねんきん特別便に「厚年脱退手当金支給期間(昭和36年4月1日以後期間)」と記載されている部分の訂正を求めたが,足立社会保険事務所長(以下「足立事務所長」という。)は,上記記載の期間は,原告が公立学校共済組合から退職一時金を受け取った期間のうち昭和36年4月1日以後の期間で間違いないとしながら,正しい内容を記載したねんきん特別便を送付することもできないため,上記記載を,共済組合の支給した退職一時金支給期間を含むということから,「厚生年金脱退一時金等の支給期間」と読み替えてほしいとして訂正を拒否している(甲15)。しかし,この足立事務所長の措置は,合理的な理由を示して行われたものではないから,手続法8条に違反している。 (イ)原告は,平成20年8月26日に本件年金記録確認申立てをしたが,足立事務所のB課長は,何ら補正すべき箇所がなかったのに,原告の申立書を約2箇月間も足立事務所に留め置き,同年11月12日になってようやく東京社会保険事務局に送付した。このような足立事務所の- 42 -対応は,手続法7条に違反するものであり,また,年金記録に係る確認申立てについて標準処理期間が公にされていない点で手続法6条にも違反している。 (ウ)原告の本件年金記録確認申立てに係る申立書は,足立事 は,手続法7条に違反するものであり,また,年金記録に係る確認申立てについて標準処理期間が公にされていない点で手続法6条にも違反している。 (ウ)原告の本件年金記録確認申立てに係る申立書は,足立事務所から,東京社会保険事務局を経由して平成20年11月18日に第三者委員会に到達したものの,何らの応答及び処分もないまま,同年12月2日に東京社会保険事務局に返戻され,足立事務所を経由して同月18日に原告に届けられており,このような対応は,手続法5条及び第3章各条に違反する。 カ原告の損害以上のとおり,原告は,亡Aの未支給保険給付の請求手続及び年金記録の確認手続において,足立事務所の職員等の違法行為により精神的苦痛を被った。この精神的苦痛を慰謝するための慰謝料としては,90万円が相当である。 (被告の主張)アC室長の対応に関する違法(ア)原告は,平成19年6月6日,自らの老齢厚生年金の返納に関して足立事務所を訪れたにすぎず,同日には,いまだ亡Aに係る通算老齢年金の未支給保険給付の請求を行っていない。したがって,C室長においてこれを具体的に予見することはできないから,C室長において,原告の未支給保険給付の請求に対する取扱いを原告に示す法的義務が生ずると解することはできない。また,未支給保険給付に関する厚年法37- 43 -条1項は,「死亡の当時」の意義について,厚年法59条1項と異なり,「失踪の宣告を受けた被保険者であった者にあっては,行方不明となった当時」との読替規定がないことは法律上明らかであるから,原告の未支給保険給付の請求の可否について,社会保険事務所において,殊更に情報提供すべき必要性があるとも解されない。 (イ)C室長が,平成14年度の課税証明書の提出を求めたのは,亡Aが同年▲月▲日付けで死亡とみなされているため, について,社会保険事務所において,殊更に情報提供すべき必要性があるとも解されない。 (イ)C室長が,平成14年度の課税証明書の提出を求めたのは,亡Aが同年▲月▲日付けで死亡とみなされているため,本来であれば,生計維持要件のうちの収入要件の判断に当たって,同13年度又は同12年度の課税証明書が必要となるところ,課税証明書の取得に関する実務上の取扱いを踏まえて,原告が入手可能でかつ亡Aが死亡とみなされた時点に最も近い同14年度の課税証明書の提出を求めたのである。そして,前回訴訟の判決は,それ自体直ちに遺族厚生年金の請求のための要件充足性の判断を拘束するものではないし,76歳の者の年収が850万円を超えないとの経験則もない。したがって,C室長が,原告に対し,平成14年度の課税証明書を要求したことは違法であるということはできない。 (ウ)C室長は,原告の意思を無視して原告が黙って引き下がるように仕向けるような言動などはしておらず,原告に説明するために社会保険業務センターから提供を受けた本件説明文書を示したにすぎない。 イ本件不支給処分に関する違法(ア)確かに,本件不支給処分は,原告の請求から約半年後にされたものではあるが,旧厚年法による年金給付に係る未支給年金の手続は,社会- 44 -保険事務所における当該年金給付の裁定手続のほかに,社会保険業務センターにおける未支給年金の支給手続を行う必要があるため,一般的な老齢年金給付において裁定から支払までに要する期間よりも時間を要するのである。また,原告の未支給保険給付の請求から本件不支給処分に至る時期は,時効特例法の施行に伴い,届出の審査や年金の支払手続のために社会保険事務所や社会保険業務センターが多忙を極めた時期であったから,上記の点をもって違法であるということはできない。 (イ) 至る時期は,時効特例法の施行に伴い,届出の審査や年金の支払手続のために社会保険事務所や社会保険業務センターが多忙を極めた時期であったから,上記の点をもって違法であるということはできない。 (イ)本件不支給処分の通知には,本件不支給処分の理由として「受給権者の死亡当時,受給権者と生計を同じくしていたものとは認められないため」と記載されており,本件不支給処分の処分理由としては,上記程度の記載で十分である。したがって,本件不支給処分における理由の告知につき手続法8条違反はない。 原告に対する公開審理の期日及び場所等の通知に,社会保険業務センター所長から社保審査官あての原告の審査請求に対する意見書が同封されていたのは,原告が平成20年10月17日付けで社保審査会に再審査請求をしたことを受けて,社保審査官が社保審査会に関係資料として送付したものを社保審査会を通じて原告に送付したものであって,密かに入れられたものではないし,上記意見書が原告あてのものではないことや本件不支給処分から約5箇月後に送付されたものであることが違法であるということもできない。 ウ社保審査官及び社保審査会の対応に関する違法社保審査官及び社保審査会の裁決は,審査請求に対する行政庁の裁決- 45 -(手続法3条1項15号)として,手続法第2章から第4章までの規定が適用されないから,社保審査官及び社保審査会の措置が手続法6条ないし8条並びに手続法第3章の規定に違反するという原告の主張は失当である。 なお,社保審査官は,原告の審査請求を法令の規定自体の適否に対する不服をいうものであるとして不適法却下しているが,このような社保審査官の解釈は相当なものということができるし,原告が再審査請求をして更に原処分を争うことが可能であることも考慮すると,社保審査官が原告の審査請求を不適 るとして不適法却下しているが,このような社保審査官の解釈は相当なものということができるし,原告が再審査請求をして更に原処分を争うことが可能であることも考慮すると,社保審査官が原告の審査請求を不適法却下したことは違法と評価すべきものではない。 エ原告の年金記録の訂正要求等への対応に関する違法(ア)原告の年金原簿の記載には誤りがない上,足立事務所長は,原告に対し,ねんきん特別便に「厚年脱退手当金支給期間(昭和36年4月1日以後期間)」と記載されている期間は,公立学校共済組合から退職一時金を受け取った期間のうち昭和36年4月1日以後の期間で相違ないため,上記記載を「厚生年金脱退一時金等の支給期間」と読み替えてもらいたい旨の回答文書を送付しており,必要な説明を行っているというべきである。 (イ)確かに,本件年金記録確認申立てに係る申立書は,平成20年8月26日に足立事務所に提出され,同年11月12日に東京社会保険事務局に送付されている。しかし,当時,足立事務所では,年金記録に係る確認申立書の受付後,申立てに係る記録の調査及び確認を行った上で東京社会保険事務局に送付していたところ,本件年金記録確認申立てがさ- 46 -れた当時,年金記録に係る確認申立書が多数受け付けられ,申立てに係る記録の調査及び確認に少なくとも4箇月以上の期間を要していたから,上記事情をもって違法であるということはできない。 (ウ)原告が訂正を求める公立学校共済組合の加入期間の記録は,社会保険庁ではなく,同組合において管理しているものであるから,第三者委員会の審査の対象となるものではない。したがって,本件年金記録確認申立てについて何らの応答がされないまま,その申立書が原告に返戻されたことをもって,違法の評価を受けるべきものではない。 オ原告の損害否認ないし争う なるものではない。したがって,本件年金記録確認申立てについて何らの応答がされないまま,その申立書が原告に返戻されたことをもって,違法の評価を受けるべきものではない。 オ原告の損害否認ないし争う。 第3争点に対する判断 争点(1)について(1)年金原簿訂正請求に係る訴えについて原告は,被告に対し,行政機関個人情報保護法27条,29条等及び時効特例法4条に基づき,自らの年金原簿につき本件訂正を行うよう求めているところ,原告が,本件訴えの提起に先立ち,行政機関個人情報保護法27条に基づき,社会保険庁長官に対し,自己の年金原簿上の記録について本件訂正を行うよう請求した事実はうかがわれないから,この訴えは,いわゆる非申請型の処分の義務付けの訴えとして提起されたものであると解される。 ところで,行政機関個人情報保護法27条は,何人も,自己を本人とする保有個人情報(行政機関の職員が職務上作成し,又は取得した個人情報であって,当該行政機関の職員が組織的に利用するものとして,当該行政機関が- 47 -保有しているものをいう(同法2条3項)。)で開示決定に基づき開示を受けたもの等の内容が事実でないと思料するときは,同法の定めるところにより,当該保有個人情報を保有する行政機関の長に対し,当該保有個人情報の訂正(追加又は削除を含む。)を請求することができると規定しており,同法28条は訂正請求の手続を,また,同法29条は行政機関の長の保有個人情報訂正義務をそれぞれ規定している。他方,行政事件訴訟法37条の2第1項は,いわゆる非申請型の処分の義務づけの訴えを提起することができるのは,①一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり,かつ,②その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限る旨を規定するところ,前記のとおり,保有個 を提起することができるのは,①一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり,かつ,②その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限る旨を規定するところ,前記のとおり,保有個人情報の訂正については行政機関個人情報保護法27条に基づく請求が第1次的な方法として定められているが,原告が本件訴えの提起に先立ち同条に基づいて自己の年金原簿上の記録につき本件訂正を行うよう請求した事実はうかがわれないのであるから,その義務付けを求める本件訴えは,上記②の「その損害を避けるため他に適当な方法がないとき」との要件を満たさない不適法な訴えといわざるを得ない。 (2)年金原簿訂正証明書交付請求に係る訴えについて原告は,自己の年金原簿上の記録につき本件訂正を行うことの義務付けを求めるとともに,本件訂正を行った旨の原簿訂正証明書を交付するよう求める義務付けの訴えを提起しているところ,この証明書交付の義務付けの訴えが抗告訴訟として適法であるというためには,その対象とする行為である上記原簿訂正証明書交付行為が行政事件訴訟法3条2項所定の「行政庁の処分- 48 -その他公権力の行使に当たる行為」すなわち処分に該当することが必要である。そして,この処分とは,公権力の主体たる国又は公共団体の行為のうち,その行為によって,直接に国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものと解される(最高裁判所昭和37年(オ)第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。 しかし,年金原簿の訂正証明書の交付について定めた法律上の規定が存在することはうかがわれず,これが国民の権利義務に影響を及ぼすものとも認められないから,年金原簿の訂正証明書を交付する行為は処分であるということはできない 証明書の交付について定めた法律上の規定が存在することはうかがわれず,これが国民の権利義務に影響を及ぼすものとも認められないから,年金原簿の訂正証明書を交付する行為は処分であるということはできない。したがって,その義務付けを求める訴えは,不適法な訴えといわざるを得ない。 争点(3)について(1)厚年法37条1項は,未支給保険給付の請求をすることができる者につき,受給権者の死亡の当時,その者と生計を同じくしていた者であることを要する旨規定するところ,亡Aは,平成7年▲月に行方不明となり,失踪宣告により同14年▲月▲日をもって死亡したものとみなされたのであるから(前提事実),原告が,同日までの7年間にわたって行方不明であった亡Aと死亡したものとみなされた当時において生計を同一にしていたといえないことは明らかである。 (2)原告は,亡Aは社会秩序維持の必要から失踪宣告によって死亡したものとみなされたにすぎず,合理的限定的な「死亡の当時」は存在しないなどとして,厚年法37条1項の規定する「死亡の当時」は,受給権者が失踪宣告- 49 -により死亡した場合には行方不明になった当時の状況を重視して判断すべきであると主張する。 しかし,厚年法59条1項が,遺族厚生年金の受給権者である遺族の範囲につき,被保険者又は被保険者であった者の配偶者等であって,被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その者によって生計を維持したものとしつつ,生計維持関係の有無の基準時について,「失踪の宣告を受けた被保険者であった者にあっては,行方不明となった当時」として別段の定めを設けているのに対し,同法37条1項は,生計同一関係の有無の基準時について,単に受給権者の死亡の当時とするのみで,受給権者が失踪宣告を受けて死亡したものとみなされる場合について遺族厚生年金 の定めを設けているのに対し,同法37条1項は,生計同一関係の有無の基準時について,単に受給権者の死亡の当時とするのみで,受給権者が失踪宣告を受けて死亡したものとみなされる場合について遺族厚生年金の場合のような別段の定めをしていない。このような同一法律中に存する両規定の文言等に照らすと,同法37条1項により未支給保険給付を請求する場合における生計同一関係の基準時は,受給権者が失踪宣告により死亡したものとみなされる場合であっても,その死亡の当時であると解するのが相当である。そして,失踪宣告制度の趣旨は,不在者の生死不明の状態が永続した場合には,不在者の財産及び身分に関し利害関係を有する者の地位を不安定な状態にすることになるため,対世的かつ画一的に不在者を死亡したものとして取り扱って財産上及び身分上の法律関係を確定させる点にあるところ,このような失踪宣告の制度趣旨に照らすと,受給権者が失踪宣告により死亡したものとみなされる場合には,厚年法37条1項の規定する「死亡の当時」は,死亡とみなされる失踪期間満了時をいうものと解するのが相当である。 このように解すると,受給権者が失踪宣告により死亡したものとみなされ- 50 -る場合,遺族厚生年金では,生計維持関係を行方不明当時で判断するため,同年金が支給される余地があるのに対し,未支給保険給付では,生計同一関係を死亡したものとみなされた当時で判断することになるため,支給が認められないことになる。しかし,遺族厚生年金は,被保険者又は被保険者であった者が死亡した場合にその死亡によって生計の維持に支障を来すこととなる遺族の生活の安定を図ることを目的としたものであり,被保険者等の収入に依拠して生計を維持していた遺族が,原則として老齢厚生年金の報酬比例の年金の額の4分の3に相当する額の支給を受ける権利を ととなる遺族の生活の安定を図ることを目的としたものであり,被保険者等の収入に依拠して生計を維持していた遺族が,原則として老齢厚生年金の報酬比例の年金の額の4分の3に相当する額の支給を受ける権利を自らの権利として取得するのに対し,未給付保険給付は,受給権者が死亡した場合にその遺族を保護することを目的とするものではあるものの,単に受給権者と生計を同じくしていたにすぎない遺族が,受給権者が給付を受けていない限度において受給権者の権利を承継取得するにとどまるものである。このような遺族厚生年金と未支給保険給付のそれぞれの目的,内容等に照らすと,遺族厚生年金は,未支給保険給付に比して,より遺族の保護を指向するものということができるから,遺族厚生年金においてのみ遺族の保護の見地から生計維持要件を緩和する措置が採られているには合理的な理由があるということができる。 したがって,原告と亡Aの生計同一関係の有無については,亡Aの死亡の当時,すなわち,亡Aが死亡したとみなされる平成14年▲月▲日当時の状況に照らして判断されるべきであり,原告の上記主張は採用することができない。 (3)また,原告は,厚年法37条2項が遺族厚生年金の受給権者が未支給保- 51 -険給付の受給権者である旨を規定するものであることを前提として,原告は,亡Aの「遺族」(厚年法59条1項)に当たり遺族厚生年金の受給権者であるから亡Aの未支給保険給付の受給権者でもあると主張する。 しかし,厚年法37条2項は,死亡した保険給付の受給権者が遺族厚生年金の受給権者である妻であった場合の未支給保険給付を請求することができる者の範囲に関する規定であって,死亡した受給権者の配偶者が,当該受給権者に支給すべき未支給保険給付を請求する場合について規定しているものでないことはその規定上明らかである 給付を請求することができる者の範囲に関する規定であって,死亡した受給権者の配偶者が,当該受給権者に支給すべき未支給保険給付を請求する場合について規定しているものでないことはその規定上明らかであるから,原告の上記主張は,前提を欠くものであって,採用することができない。 (4)さらに,原告は,亡Aの失踪後も亡Aの経済的援助によって生活していたなどとして,亡Aの死亡の当時亡Aと生計を同じくしていたと主張する。 確かに,原告が,亡Aの失踪中も,亡A名義の住宅に無償で居住し続けていたこと,原告が,亡Aの不在者財産管理人を相手方として婚姻費用分担審判を申し立て,同審判においては,同管理人が原告に対し,①上記住宅の固定資産税及び地代,②長野県にある亡A及び原告の共有名義の山小屋2棟の地代及び固定資産税,③定額の水道代,④上記住宅及び山小屋の修理費年額3万円を支払うよう命じられており,原告は,上記婚姻費用分担審判により得た金銭で亡A名義及び亡Aと原告の共有名義の不動産を維持していたことが認められる(甲23,弁論の全趣旨)。しかしながら,亡Aの生死が7年間も明らかでない以上,失踪宣告により死亡とみなされた当時において原告と亡Aとが一体的に消費生活を営み家計を同一にすることは想定し得ないし,上記支出は,亡Aが失踪中であるものの,いまだ原告との間- 52 -の婚姻関係が継続していることから,原告の生活に必要な費用の一部を亡Aの残置財産から支弁することが認められたものにすぎないというべきである。そうすると,上記事情をもって原告が亡Aの死亡の当時亡Aと生計を同じくしていたということはできない。 また,原告は,亡Aとの別居当時から原告と亡Aの預金を管理し,生活費の不足分を上記預金から補填するとともに,上記預金を原資とした私的年金を平成15年まで受給 を同じくしていたということはできない。 また,原告は,亡Aとの別居当時から原告と亡Aの預金を管理し,生活費の不足分を上記預金から補填するとともに,上記預金を原資とした私的年金を平成15年まで受給していたことが認められるが(甲22),前記のとおり,亡Aの生死が7年間も明らかでない以上,失踪宣告により死亡とみなされた当時において原告と亡Aとが一体的に消費生活を営み家計を同一にすることは想定し得ず,上記の各事情も,亡Aが失踪中であるものの,いまだ原告との間の婚姻関係が継続していることに基づき亡Aが失踪する前の財産状態を維持することが承認されているにすぎないものであるというべきであるから,上記事情をもって原告が亡Aの死亡の当時亡Aと生計を同じくしていたということはできない。 さらに,原告は,亡Aと生計を同じくしていたことを基礎付ける事情として,亡Aが失踪してから2年程度長女とともに亡Aの捜索を続け,横浜家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立て同管理人選任前に亡Aの預金を凍結したこと,亡Aの長男が亡Aの失踪中に亡Aの預金約1800万円を無断で引き出したため,亡Aの相続人として,長男に対する損害賠償請求訴訟を提起し,勝訴判決を得たことを主張するが,これらの事情は,原告が亡Aと婚姻関係にあったことから行方不明となった亡Aの所在を明らかにするよう努めるとともに,その財産の不当な流出を防止しようとしたものにす- 53 -ぎず,これらをもって原告が亡Aと亡Aの死亡の当時亡Aと生計を同じくしていたということはできない。 (5)以上によれば,原告は,亡Aの死亡の当時,亡Aと生計を同じくしていたということはできず,これを前提としてされた本件不支給処分は適法である。 争点(4)について(1)認定事実前提事実に証拠(甲1ないし6,9,13,15 死亡の当時,亡Aと生計を同じくしていたということはできず,これを前提としてされた本件不支給処分は適法である。 争点(4)について(1)認定事実前提事実に証拠(甲1ないし6,9,13,15,16,22,26,33,39,46,乙3ないし9,11ないし14,16,17[枝番がある場合には枝番を含む。])及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 ア亡Aの通算老齢年金及び遺族厚生年金の請求に係る経緯等(ア)原告は,平成19年6月6日,足立事務所を訪れ,C室長に対し,原告自身の老齢厚生年金等に関する相談を行ったが,その際,時効特例法の施行が決定したら電話するよう依頼した。そこで,C室長は,同年7月9日,原告に架電して時効特例法の施行を伝えた。 (イ)原告は,平成19年9月11日,足立事務所を訪れ,C室長に対し,亡AがD株式会社に勤務していたことがあるなどとしてその厚生年金の受給権の有無について相談し,昭和21年3月1日から同22年3月31日まで東京都所在の同社に勤務したとの内容で亡Aに係る厚生年金保険の被保険者加入期間照会申出書を提出した。また,C室長は,同日,原告から,遺族共済年金と原告自身の老齢厚生年金との支払調整に- 54 -ついて質問を受けたため,平成19年7月に選択届が処理され,同年10月分から支払額の半額ずつを返還することになっていることなどを説明した。 (ウ)前記(イ)の照会申出書は,平成19年9月20日に資格照会を担当する文京分室の記録管理係に送付されたものの,しばらく回答がされなかったことから,原告は,足立事務所に対して前記照会に対する回答の有無を確認した。これに対し,C室長は,同年10月22日,原告に対し,「連絡が遅くなり申し分けありません。資格(記録)確認の件数が非常に多いため,回答まで ,足立事務所に対して前記照会に対する回答の有無を確認した。これに対し,C室長は,同年10月22日,原告に対し,「連絡が遅くなり申し分けありません。資格(記録)確認の件数が非常に多いため,回答まで3,4ヶ月かかっている状況です。申し分けありませんが,もう少しお待ちいただくようお願いいたします。」との書面をファックスで送付し,同年12月にも原告から回答を急ぐよう求められたため,原告にD株式会社の所在した区を千代田区,中央区及び港区と特定してもらった上,再度,文京分室に対して照会を行ったところ,亡Aにつき厚生年金保険の被保険者加入期間が存在することが判明した。そこで,足立事務所長は,原告に対し,同年12月14日付けで,亡Aが昭和21年3月11日から同22年9月9日までの間,D株式会社を事業所とする厚生年金保険の被保険者であった旨を回答し,さらに,上記以外にも,亡Aが,同61年4月1日から同62年4月1日までの間,新宿区教育委員会教育指導課を事業所とする厚生年金保険の被保険者であったことが判明したことから,足立事務所長は,原告に対し,平成19年12月25日付けで,そのことを原告に回答した。 (エ)亡Aに係る厚生年金保険の被保険者加入期間が判明したことから,- 55 -原告は,C室長に対し,遺族厚生年金の受給手続を進めるよう依頼した。 そこで,C室長は,平成20年1月9日,原告に対し,遺族厚生年金の請求に必要な書類等が記載された文書を送付したが,同文書には,遺族年金の請求に必要な書類として戸籍謄本や住民票等のほか,平成14年度の課税証明書が必要である旨が記載されており,同年度の課税証明書が取れない場合には,現在取れるものすべてが必要となる旨が付記されていた。原告は,同月11日,足立事務所を訪れ,遺族厚生年金の裁定請求書並びに亡Aに係る通 ある旨が記載されており,同年度の課税証明書が取れない場合には,現在取れるものすべてが必要となる旨が付記されていた。原告は,同月11日,足立事務所を訪れ,遺族厚生年金の裁定請求書並びに亡Aに係る通算老齢年金についての裁定請求書及び未支給保険給付請求書を提出した。その際,原告は,生計維持要件のうちの収入要件については前回訴訟の判決で明らかであるから課税証明書は不要である旨を述べたが,C室長から,同年度の課税証明書は必要であり,これを提出することができないのであれば,過去5年分の課税証明書がどうしても必要である旨を告げられたため,前回訴訟で提出した同年度の課税証明書の写しを提出した。 (オ)C室長は,平成20年2月4日,亡Aに係る通算老齢年金の裁定請求書を社会保険業務センターに進達した。しかし,当時,同センターは,同19年7月に成立し施行された時効特例法に基づく新たな業務である届書の審査や支払手続に加え,同年12月から開始されたねんきん特別便の送付に伴う業務等を行っていたため,通常の業務に相当の遅れが生じていた。そのため,上記裁定には相当な時間を要し,また,遺族厚生年金についても,同20年2月7日に受給権発生日を同14年▲月▲日とする裁定が行われたものの,遺族共済年金との支給調整が必要であ- 56 -り,この処理は,同センターにおいて行われるものであったため,同年金の支払はいまだ行われていない状態であった。上記のような状況を踏まえ,C室長は,同20年2月9日,原告に対し,原告の請求に係る各年金の処理につき,遺族厚生年金は入力済みであるが共済年金との連絡調整が必要であるためいまだ決定されておらず,昨年8月の人がまだ処理されていない状況であること,通算老齢年金についても同様に時間がかかる予定であることなどを記載した文書をファックスで送 年金との連絡調整が必要であるためいまだ決定されておらず,昨年8月の人がまだ処理されていない状況であること,通算老齢年金についても同様に時間がかかる予定であることなどを記載した文書をファックスで送付した。 (カ)原告は,遺族厚生年金として,平成20年3月14日,同14年12月分から同20年1月分までとして8万8831円の支払を受け,また,同年4月15日には同年2月及び3月分として6533円の支払を受けた。そして,同年6月13日には,同年4月分及び5月分として6533円の支払を受けるとともに,同19年7月6日に施行された時効特例法により給付されることとなった同14年▲月分から同年11月分までとして1万9900円の支払を受けた。 (キ)社会保険庁長官は,平成20年3月6日付けで,亡Aに係る通算老齢年金の裁定を行い,社会保険業務センター所長は,同年4月15日付けで,亡Aあてに「厚生年金保険支給額変更通知書」(甲1)を送付し,これを受けて,足立事務所は,同月14日,亡Aに係る通算老齢年金につき,未支給保険給付請求書を進達した。 (ク)しかし,その後も亡Aに係る通算老齢年金が支給されなかったため,原告から何度も問い合わせがされ,これを受けたC室長においても,社会保険業務センターに同年金の支給を督促していたところ,平成20- 57 -年7月,同センターから,失踪宣告により死亡したものとみなされる亡Aについては未支給保険給付が認められない旨の回答を受け,ファックスで本件説明文書の送付を受けた。そこで,C室長は,同月7日,原告に本件説明文書を示して,亡Aに係る通算老齢年金の未支給保険給付の請求は認められない旨を説明した。これに対し,原告は,足立事務所長に対し,同月10日付けの内容証明郵便で,C室長から示された理由は納得することができないの ,亡Aに係る通算老齢年金の未支給保険給付の請求は認められない旨を説明した。これに対し,原告は,足立事務所長に対し,同月10日付けの内容証明郵便で,C室長から示された理由は納得することができないので改めて未給付の通年老齢年金が支給されない理由等を記載した文書を1週間以内に送付するよう求めた。(甲6)(ケ)社会保険庁長官は,前記(キ)の通算老齢年金の裁定が誤りであったとして,平成20年7月10日,同裁定を取り消すとともに,同月15日付けで本件不支給処分をした。 (コ)原告は,本件不支給処分を不服として,平成20年8月9日付けで社保審査官に審査請求をしたが,社保審査官は,原告の審査請求は旧厚年法37条1項の規定自体に対するものであり,審査事項以外の趣旨のものであるから不適法であるとして,同年10月9日付けで同請求を却下する旨の決定をした。 (サ)原告は,平成20年10月17日,上記(コ)の決定を不服として,社保審査会に対して再審査請求をした。 (シ)社保審査会委員長は,原告に対し,平成20年10月20日付け書面で,同月17日に原告の再審査請求に係る請求書を受け取った旨を通知したが,同書面には,原告の再審査請求の審理の予定につき,原告の- 58 -請求が受理することができるものであるかを審理した上,要件が整っているときは,原則として公開審理を行うが,公開審理を行うときには,当該公開審理日の約半月前にあらかじめ別途通知する旨が記載されていた。その後,同委員長は,同年12月10日付け書面により公開審理の期日及び場所等を原告に通知したが,この通知には,審査会が出した結論は,裁決書で結果を知らせること,裁決書はおおむね公開審理後2ないし3箇月後を目途に送付していることなどが記載されていた。なお,上記通知には,社会保険業務センター所長か 通知には,審査会が出した結論は,裁決書で結果を知らせること,裁決書はおおむね公開審理後2ないし3箇月後を目途に送付していることなどが記載されていた。なお,上記通知には,社会保険業務センター所長から社保審査官あての原告の審査請求に対する意見書が同封されており,同意見書には,旧厚年法37条1項は,未支給保険給付は受給権者の死亡の当時受給権者と生計を同じくしていた者は支給を請求することができるとされているところ,原告は亡Aの死亡当時亡Aと生計を同じくしていた者と認められないから,未支給保険給付を支給しないこととした旨が記載されていた。 (ス)原告は,平成21年1月19日,再審査請求から3箇月を経過しても裁決がされなかったことから,本件不支給処分の取消し等を求める本件訴えを提起した。他方,社保審査会は,同年4月30日,原告の再審査請求を棄却する旨の裁決をした。 イ本件年金記録確認申立ての経緯等(ア)原告のねんきん特別便は,平成20年3月10日付けで作成されて原告に送付された。原告のねんきん特別便には,①昭和25年3月20日から同年11月1日までが厚生年金保険の加入期間として,②同- 59 -36年4月から同41年1月までが年金支給計算上の合算対象期間となる旧厚年法の脱退手当金支給期間のうち同36年4月1日以後の期間として,③同41年4月から同56年1月までが年金支給計算上の合算対象期間となる任意加入しなかった期間として,④同月19日から同61年4月1日までが国民年金加入期間として,⑤同日から平成3年8月15日までが国民年金加入期間としてそれぞれ記載されていた。 (イ)原告は,昭和30年4月1日から同40年12月31日まで公立学校共済組合に加入し,同41年2月28日付けで退職一時金の支給決定を受けこれを受給していたが 期間としてそれぞれ記載されていた。 (イ)原告は,昭和30年4月1日から同40年12月31日まで公立学校共済組合に加入し,同41年2月28日付けで退職一時金の支給決定を受けこれを受給していたが,旧厚年法の脱退手当金の支給を受けたことはなかった。しかし,社会保険業務センターにおいては,脱退手当金支給期間及び退職一時金支給期間のうち昭和36年4月1日以後の期間が同一コードで処理されていたため,原告のねんきん特別便では,共済組合の退職一時金支給期間のうち昭和36年4月1日以後の期間が,旧厚年法の脱退手当金支給期間のうち昭和36年4月1日以後の期間とされ,「厚年脱退手当金支給期間(昭和36年4月1日以後期間)」と表示された。 (ウ)原告は,平成20年5月1日,ねんきん特別便に記載された加入記録の内容に「もれ」や「間違い」があるとして,足立事務所に対し,昭和56年4月1日から同57年3月31日までE高等学校に勤務していた旨を記載した年金加入記録回答票を提出したが,足立事務所は,平成20年7月15日付けで,同校における昭和56年4月1日から同5- 60 -7年3月31日までの期間について,同校を事業所とした厚生年金保険の加入がない旨を回答した。 (エ)原告は,平成20年7月31日,ねんきん特別便に記載された加入記録の内容に「もれ」や「間違い」があるとして,足立事務所に対し,昭和30年4月1日から同40年12月31日までF中学校に勤務し公立学校共済組合に加入していたこと,同36年4月から同40年12月までの期間の記載につき,厚生年金保険から脱退手当金を受け取っていないことなどを記載した年金加入記録回答票等を提出した。 (オ)足立事務所長は,原告に対し,平成20年8月13日付け書面により,ねんきん特別便に「厚年脱退手当金支給期間(昭和3 手当金を受け取っていないことなどを記載した年金加入記録回答票等を提出した。 (オ)足立事務所長は,原告に対し,平成20年8月13日付け書面により,ねんきん特別便に「厚年脱退手当金支給期間(昭和36年4月1日以後期間)」と記載されていることについて,当該期間は,原告が公立学校共済組合から退職一時金を受け取った期間のうち昭和36年4月1日以後の期間に相違ないが,社会保険事務所ではねんきん特別便の再発行ができないこと,そのため,上記記載については,脱退手当金支給期間が共済組合による退職一時金支給期間を含むことから「厚生年金脱退一時金等の支給期間」と読み替えてもらいたい旨を伝えた。 (カ)原告は,平成20年8月26日,本件年金記録確認申立てに係る申立書を足立事務所に提出したが,その当時,多数の年金関係の相談者が社会保険事務所を訪れていたことなどから,社会保険事務所の事務に相当な遅れが生じており,足立事務所においては,年金記録に係る確認申立書を受け付けても,東京社会保険事務局に送付するまでに4箇月程度を要する状況であり,原告の申立書も未処理の状態が続いていた。 - 61 -(キ)B課長は,平成20年11月7日,足立事務所を訪れた原告と面談し,本件年金記録確認申立てに係る申立書を直ちに第三者委員会に送付すると伝え,同月10日に決裁をとって,事務連絡便のある同月12日に東京社会保険事務局に送付し,その旨を原告に通知した。東京社会保険事務局は,同月18日,第三者委員会の設置されている東京行政評価事務所に同申立書を送付した。 (ク)東京行政評価事務所は,本件年金記録確認申立てに係る申立書は第三者委員会の対象外の内容であるとして,平成20年12月2日付けで同申立書を東京社会保険事務局に返戻した。東京社会保険事務局は,同月11日付けで同申立書を は,本件年金記録確認申立てに係る申立書は第三者委員会の対象外の内容であるとして,平成20年12月2日付けで同申立書を東京社会保険事務局に返戻した。東京社会保険事務局は,同月11日付けで同申立書を足立事務所に返戻し,足立事務所は,同月17日付けでこれを原告に返戻した。 (2)C室長の対応に関する違法についてア原告は,C室長が,平成19年6月6日,同年9月11日又は平成20年1月10日のいずれかの時点において,受給権者が失踪宣告により死亡したものとみなされる場合は未支給保険給付を請求することができない旨を原告に教示しなかったことが手続法9条に反し違法であると主張する。 しかし,手続法9条は申請者の求めに応じて審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しに関する情報を提供する努力義務を定めるものであり,処分の内容に関わる情報を提供することを義務付けるものではないから,C室長が原告に対し亡Aに係る通算老齢年金の未支給保険給付を請求することができない旨を教示しなかったことが同条に違反す- 62 -るということはできない。 この点を措くとしても,原告は平成19年6月6日,同年9月11日及び同20年1月11日に足立事務所を訪れているところ,このうち,同19年6月6日には自らの老齢厚生年金に関して足立事務所を訪れたにすぎず(前記(1)ア(ア)),同年9月11日も亡Aの厚生年金保険の被保険者加入期間の照会手続を行っているにすぎないのであり(前記(1)ア(イ)),亡Aにつき年金給付を請求するか否か,請求するとしてもいかなる保険給付を請求するかが明らかでない以上,上記両日において,C室長に,受給権者が失踪宣告により死亡したものとみなされる場合は未支給保険給付を請求することができない旨を教示すべき法的義務があったということはできない。また 明らかでない以上,上記両日において,C室長に,受給権者が失踪宣告により死亡したものとみなされる場合は未支給保険給付を請求することができない旨を教示すべき法的義務があったということはできない。また,原告は,同20年1月11日,足立事務所に亡Aに係る通算老齢年金の未支給保険給付の請求書を提出しているものの(前記(1)ア(エ)),請求書の提出を受けたにすぎない段階でその請求の適否の見通しを述べることは行政の公正さを疑わしめることになるから,この段階で受給権者が失踪宣告により死亡したものとみなされる場合は未支給保険給付を請求することができない旨を教示すべき法的義務があるということはできない。 イ原告は,本件説明文書は,亡Aの死亡が認定されておらず,亡Aには死亡当時という特定の時期がないのに亡Aが特定の時期に死亡したことを前提とするものであるから,C室長が本件説明文書を原告に示したことは手続法8条に反すると主張する。 しかし,手続法8条は,拒否処分を行う場合にはその理由を同時に示さ- 63 -なければならないことを規定しているところ,C室長が本件説明文書を原告に示して原告の請求が認められない旨を伝えた後,平成20年7月15日付け書面によって本件不支給処分の通知が行われていること(前提事実)からすると,C室長は,社会保険業務センターから失踪宣告により死亡したものとみなされる亡Aについては未支給保険給付が認められない旨の回答を受けて,正式な処分に先立ち事実上その旨を原告に伝えたにとどまり,これが原告の請求に対する正式な処分を通知する趣旨で行われたものであるとは認められないから,その際にC室長が本件説明文書を示したことが手続法8条違反に当たるということはできない。 この点を措くとしても,前記2(2)のとおり,亡Aは失踪宣告によって平成14年▲ のであるとは認められないから,その際にC室長が本件説明文書を示したことが手続法8条違反に当たるということはできない。 この点を措くとしても,前記2(2)のとおり,亡Aは失踪宣告によって平成14年▲月▲日をもって死亡したものとみなされ,実際に死亡しているか否かにかかわらず,法律上は同日をもって死亡したものと取り扱うことになるのであり,このことは未支給保険給付の請求においても異なるものではないから,本件説明文書の内容に原告主張のような不備があるということはできない。そうすると,C室長が原告の請求が認められない旨を伝える際に本件説明文書を示したことが国家賠償法上違法であるということはできない。 ウ原告は,C室長が,本件説明文書を原告に黙読させ,それに対する原告の主張を無視するとともに,原告に黙って引き下がるよう仕向けたとして,このようなC室長の対応が手続法5条及び第3章各条に違反し違法であると主張する。 しかし,C室長が,足立事務所を訪れた原告に対して原告の未支給保険- 64 -給付の請求が認められない旨を伝える際,本件説明文書を示したことは前記(1)ア(ク)のとおりであるが,C室長が本件説明文書を原告に黙読させ,それに対する原告の主張を無視するとともに,原告に黙って引き下がるよう仕向けたことを認めるに足りる証拠はなく,原告の上記主張は採用することができない。 エ原告は,C室長が本件説明文書を原告に黙読させて処分通知に代え,文書による処分通知を拒否したとして,このようなC室長の対応が手続法9条に違反し違法であると主張する。 しかし,手続法9条は申請者の求めに応じて審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しに関する情報を提供する努力義務を定めるものであり,処分の通知方法に関する義務を定めるものではないから,原告の請求に対する は申請者の求めに応じて審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しに関する情報を提供する努力義務を定めるものであり,処分の通知方法に関する義務を定めるものではないから,原告の請求に対する処分の通知を文書で行わなかったことが手続法9条違反に当たるとはいえない。 この点を措くとしても,前記イのとおり,C室長は,社会保険業務センターから失踪宣告により死亡したものとみなされる亡Aについては未支給保険給付が認められない旨の回答を受けて,正式な処分に先立ち事実上その旨を原告に伝えたにとどまり,これが原告の請求に対する正式な処分を通知する趣旨で行われたものであるとは認められないから,その際にC室長が原告の請求に対する処分通知の文書を交付すべき義務を負うということはできず,上記文書を交付しなかったことが国家賠償法上違法であるということはできない。 オ原告は,当時76歳の原告が過去5年間に年収850万円を超えるはず- 65 -がないにもかかわらず,平成14年度の課税証明書を提出するよう求め,これを提出することができないのであれば,過去5年分(同15年度から同19年度までの5年間)の課税証明書をすべて提出するよう求めたことが違法であると主張する。 しかし,C室長は,亡Aが同14年▲月▲日をもって死亡したものとみなされるため,生計維持要件のうちの収入要件の判断資料としては,同13年度又は同12年度の課税証明書が必要であったが,課税証明書の取得の困難性等を考慮し,亡Aが死亡したものとみなされた時点に最も近い平成14年度の課税証明書の提出を求めたのであり(弁論の全趣旨),それがない場合には,その後の資料によって亡Aの死亡当時における原告の収入の見込みを推断するほかないところ,その場合には,ある程度の期間にわたる収入額を基礎とするのが相当であるか (弁論の全趣旨),それがない場合には,その後の資料によって亡Aの死亡当時における原告の収入の見込みを推断するほかないところ,その場合には,ある程度の期間にわたる収入額を基礎とするのが相当であるから,C室長が過去5年間の課税証明書の提出を求めることが不合理であるということはできない。また,原告が当時76歳であったとしても,そのことから直ちに所得額が年額850万円を超えないことが推認されるものではないし,前回訴訟の判決では,原告が公立学校共済組合との関係で地方公務員等共済組合法上の遺族共済年金の受給権者である「遺族」に該当すると認定されているものの,これをもって,直ちに原告が厚年法上の遺族厚生年金の受給権者である「遺族」に該当するとは認められない。これらの諸点を考慮すれば,C室長が同14年度の課税証明書又は過去5年分の課税証明書の提出を求めたことが国家賠償法上違法であるということはできない。 (3)本件不支給処分に関する違法について- 66 -ア原告は,本件不支給処分は,原告の申請から約半年も経過した後に行われており,手続法7条に違反し違法であると主張する。 しかし,手続法7条は,申請に対する審査を遅滞なく開始すべきことを規定しているところ,本件不支給処分は原告の申請から約半年後にされたものではあるものの(前提事実),原告が亡Aに係る通算老齢年金の未支給保険給付の請求をした平成20年1月当時,社会保険業務センターは,同19年7月に成立し施行された時効特例法に基づく新たな業務である届書の審査や支払手続に加え,同年12月から開始されたねんきん特別便の送付に伴う業務等を行うこととなっていたため通常の業務に相当な遅れが生じていたこと(前記(1)ア(オ))を考慮すれば,本件不支給処分がされた時期につき手続法7条に違反し違法であるということ 特別便の送付に伴う業務等を行うこととなっていたため通常の業務に相当な遅れが生じていたこと(前記(1)ア(オ))を考慮すれば,本件不支給処分がされた時期につき手続法7条に違反し違法であるということはできない。 イまた,原告は,本件不支給処分の理由には,亡Aの「死亡の当時」という特定することのできない時期が記載されるとともに,厚年法37条2項が記載されておらず,本件不支給処分が手続法8条に違反し違法であると主張する。 しかし,本件不支給処分には,「受給権者の死亡当時,受給権者と生計を同じくしていたものとは認められないため。」という処分理由が付されているところ(甲7),前記2(2)で説示したとおり,未支給保険給付との関係においても,亡Aは平成14年▲月▲日に死亡したものとみなされるのであるから,その死亡時期は同日をもって特定されているというべきであるし,厚年法37条2項は,受給権者が遺族厚生年金の受給権者である妻であった場合の未支給保険給付を請求することができる者の範囲に- 67 -関する規定であって,死亡した受給権者の配偶者が当該受給権者の未支給保険給付を請求する場合とは無関係のものである。そうすると,本件不支給処分において提示された理由に原告主張のような不備があるということはできず,かえって,本件不支給処分において提示すべき理由としてはその程度の記載で足りるというべきである。したがって,本件不支給処分が示した理由につき手続法8条に違反する違法があるということはできない。 ウさらに,原告は,本件不支給処分の理由が記載された社会保険業務センター所長から社保審査官あての意見書(甲33)が,本件不支給処分から5箇月後に,しかも,平成20年12月10日付けの再審査請求における公開審理の実施通知に同封された資料の中に密かに入れられる形で原 ター所長から社保審査官あての意見書(甲33)が,本件不支給処分から5箇月後に,しかも,平成20年12月10日付けの再審査請求における公開審理の実施通知に同封された資料の中に密かに入れられる形で原告に送付されたとして,本件不支給処分が手続法8条に違反すると主張する。 しかし,手続法8条は,拒否処分を行う場合にはその理由を同時に示さなければならないことを規定しているところ,社会保険庁長官は,原告に対し,受給権者の死亡の当時,受給権者と生計を同じくしていたものとは認められないとの理由で本件不支給処分が行われた旨を通知しており(甲7),前記イにおいて説示したとおり,本件不支給処分において示すべき理由としてはその程度の記載で足りるというべきである。そうすると,本件不支給処分においては,処分と同時にその理由が示されているということができるから,上記意見書の送付は,手続法8条の要請によって本件不支給処分の理由を提示するものであるとは認められない。したがって,上- 68 -記意見書が本件不支給処分から5箇月後に原告に送付されたことが手続法8条に違反するものということはできず,上記意見書が原告あてでないことや再審査請求における公開審理の実施通知に同封されていたことが上記判断を左右するものともいえない。 (4)社保審査官の対応に関する違法ア原告は,原告の審査請求から裁決までに約2箇月を要したことが手続法7条に違反する,審査件数が多いときに対応した処理期間を設定しなかったことが手続法6条に違反する,原告の審査請求を不適法却下したことが手続法5条ないし8条に違反すると主張する。 イしかし,手続法3条1項15号は,審査請求,異議申立てその他の不服申立てに対する行政庁の裁決,決定その他の処分については,手続法第2章から第4章までの規定は適用しない旨 条に違反すると主張する。 イしかし,手続法3条1項15号は,審査請求,異議申立てその他の不服申立てに対する行政庁の裁決,決定その他の処分については,手続法第2章から第4章までの規定は適用しない旨を規定しているから,社保審査官の裁決には,手続法6条ないし8条の規定は適用されない。 ウそして,原告が審査請求をした当時,多数の審査請求がされたために裁決に相当日数を要する状態であったことからすれば(弁論の全趣旨),社保審査官が審査請求から決定まで約2箇月を要したことが直ちに違法であるということはできないし,社保審査官において審査請求が多数であることに対応する処理期間を設定しなければならない義務があるとする法的根拠は見当たらない。もっとも,社保審査官は,原告の審査請求が本件不支給処分の違法をいうものとして適法な請求であるにもかかわらず,同請求が旧厚年法37条1項の規定自体の不服をいうものであるとして不適法却下しているが(前提事実),社保審査官の裁決に対しては社保審査- 69 -会への再審査請求という不服申立ての途が設けられているのであること(厚年法90条1項)を考慮すれば,社保審査官が原告の審査請求を不適法として却下したことが直ちに国家賠償法上違法であるということはできない。 エ以上のとおり,社保審査官の対応が国家賠償法上違法であるということはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 (5)社保審査会の対応に関する違法ア原告は,原告の再審査請求を受理するのに約1箇月を要したことが手続法7条に違反する,裁決までの期間が公開審理からの期間としてしか定められておらず,これが公表されていないことが手続法6条に違反する,公開審理日の通知が恣意的にされており違法である,公開審理における発言に制限が加えられていることが手続法第3章各条に違反 してしか定められておらず,これが公表されていないことが手続法6条に違反する,公開審理日の通知が恣意的にされており違法である,公開審理における発言に制限が加えられていることが手続法第3章各条に違反すると主張する。 イしかし,手続法3条1項15号は,審査請求,異議申立てその他の不服申立てに対する行政庁の裁決,決定その他の処分については,手続法第2章から第4章までの規定は,適用しない旨を規定しているから,社保審査会の裁決には,手続法6条及び7条並びに第3章の規定は適用されない。 ウそして,社保審査会は,原告の再審査請求に係る請求書を平成20年10月17日に受け付け,その約1箇月後である同年11月27日に同請求を受理していることが認められるものの(甲26),社保審査会は,再審査請求としての要件を備えているかの要件審査を行って受理するか否かを決定し,要件が整っているときに受理して内容の審理を進めることにしているのであり(甲10),請求の内容如何によっては受理までに相応の- 70 -日数を要すると考えられるから,原告の再審査請求に係る請求書を受け取ってから同請求を受理するまで約1箇月を要したことが違法であるということはできない。また,社保審査会は,原告に公開審理の日程を知らせる通知に,公開審理後2ないし3箇月後を目途に裁決書を送付している旨を記載していることが認められるが(前記(1)ア(シ)),社保審査会において申立書の到達から裁決までの期間を設定してこれを公表しなければならない法的義務があるとする根拠は見当たらない。さらに,社保審査会は,原告に対し,公開審理を行うときは当該公開審理日の約半月前にあらかじめ別途通知する旨を知らせながら(甲10),実際には公開審理日の50日前に日程を連絡したことが認められるものの(甲12),公開審理の日程 対し,公開審理を行うときは当該公開審理日の約半月前にあらかじめ別途通知する旨を知らせながら(甲10),実際には公開審理日の50日前に日程を連絡したことが認められるものの(甲12),公開審理の日程の連絡は,公開審理への参加の機会を保障する趣旨のものであると解されるから,合理的な範囲内で通知予定日以前に日程の連絡を行うことは上記趣旨に合致するものであり,社保審査会の上記措置が国家賠償法上違法であるということはできない。加えて,社保審査会が行った再審査請求についての公開審理では,意見陳述は要点をまとめ簡潔に発言するよう求めるとともに,委員や参与員の質問に対する回答以外の発言については許可を要するものとされているが(甲12),公開審理においては,要領を得た簡潔な発言を求めたり,発言に許可を要するものとすることは迅速かつ充実した審理のための合理的な措置であって,かかる措置が違法であるということもできない。 エ以上のとおり,社保審査会の対応に違法な点があるということはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 - 71 -(6)原告の年金記録の訂正要求等への対応に関する違法についてア原告は,足立事務所長が,原告のねんきん特別便に,「厚年脱退手当金支給期間(昭和36年4月1日以後期間)」と記載されている期間につき,原告が公立学校共済組合から退職一時金を受け取った期間のうち昭和36年4月1日以後の期間に間違いはないとしながら,共済組合による退職一時金支給期間を含むということから,上記記載を「厚生年金脱退一時金等の支給期間」と読み替えるよう求めて上記記載の訂正を拒否しており,この足立事務所長の対応は,合理的な理由を示さずにされたもので,手続法8条に反する違法なものであると主張する。 しかし,手続法8条は,申請に対する処分についての規定である 記記載の訂正を拒否しており,この足立事務所長の対応は,合理的な理由を示さずにされたもので,手続法8条に反する違法なものであると主張する。 しかし,手続法8条は,申請に対する処分についての規定であるところ,手続法にいう「処分」とは,行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいい,「申請」とは,法令に基づき,行政庁の許可,認可,免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為であって,当該行為に対して行政庁が認否の応答をすべきこととされているものをいうとされている(手続法2条2号及び3号)。そして,ねんきん特別便は,社会保険庁が同庁の管理している年金情報を被保険者とされている者に知らせるものにすぎず,足立事務所長がねんきん特別便の訂正に応じないことが手続法所定の「処分」に当たるとはいえないから,足立事務所長の上記対応が手続法8条に違反するものでないことは明らかである。 そして,足立事務所長は,原告に対し,ねんきん特別便の記載は社会保険庁において決定されたことであること,社会保険事務所ではねんきん特別便の再発行ができないことを理由として原告に対してねんきん特別便- 72 -の記載の読み替えを依頼しているところ(前提事実,甲15),ねんきん特別便が社会保険庁で管理する年金情報を被保険者とされている者に通知し,被通知者からの回答によって年金情報の正確性を確保することなどを目的とするものであると考えられることに照らすと,厚生年金に係る年金情報を社会保険庁において一元的に管理する必要があるから,第三者委員会の審議を経て行われる総務大臣によるあっせん手続によらないで,ねんきん特別便の記載の訂正を各社会保険事務所において個別に行うことはねんきん特別便の上記目的に反することになる。そうすると,足立事務所長が原告に対して示した上記理由が るあっせん手続によらないで,ねんきん特別便の記載の訂正を各社会保険事務所において個別に行うことはねんきん特別便の上記目的に反することになる。そうすると,足立事務所長が原告に対して示した上記理由が不合理なものということはできず,足立事務所長の上記対応が国家賠償法上違法であるということはできない。 イ原告は,足立事務所のB課長が,平成20年8月26日にされた本件年金記録確認申立てにつき,何ら補正すべき箇所がなかったにもかかわらず,申立書を約2箇月間も足立事務所に留め置き,同年11月12日になってようやく東京社会保険事務局に送付したことは手続法7条に違反するし,年金記録に係る確認申立てについての標準処理期間が公表されていないことも手続法6条に反すると主張する。 確かに,B課長は,同年8月26日にされた本件年金記録確認申立てに係る申立書を同年11月12日に東京社会保険事務局に送付したことが認められるが,本件年金記録確認申立てがされた当時は,多数の年金関係の相談者が社会保険事務所を訪れていたことなどから,社会保険事務所の事務に相当な遅れが生じており,足立事務所においては,年金記録に係る- 73 -確認申立書を受け付けても,東京社会保険事務局に送付するまでに4箇月程度を要する状況であったことが認められ(前記(1)イ(カ)),このような本件年金記録確認申立て当時の状況に照らすと,B課長の上記対応が手続法7条に反するものとまでいうことはできない。また,上記のとおり,手続法6条が標準処理期間を公にしておかなければならないとしているのは,申請をしようとする者あるいは申請者に対して秘密にしないとの趣旨であって,その具体的方法も,提出先機関における備付けのほか,申請者の求めに応じて提示することも許されるところ,原告が足立事務所に対して標準処理期間を る者あるいは申請者に対して秘密にしないとの趣旨であって,その具体的方法も,提出先機関における備付けのほか,申請者の求めに応じて提示することも許されるところ,原告が足立事務所に対して標準処理期間を明らかにするよう求めるなどしたことは認められず,他に年金記録の確認申立てに係る標準処理期間が公にされなかったことを認めるに足りる証拠はない。 ウ原告は,第三者委員会が,本件年金記録確認申立てについて何らの応答及び処分もしないまま,申立書を東京社会保険事務局及び足立事務所を経由して原告に返戻したことにつき,具体的な審査基準を定めてこれを公にし,名あて人に意見陳述の機会を与えた上で処分と同時に理由を示すべきであるとする手続法6条及び第3章各条に違反し違法であると主張する。 第三者委員会は,本件年金記録確認訂正申立ての内容が第三者委員会の対象外の内容であるとして,その申立書を東京社会保険事務局及び足立事務所を経由して原告に返戻しているが,原告が本件年金記録訂正申立てにおいて訂正を求めている年金記録は,原告の公立学校共済組合に加入していた期間に関するものであり,この記録は同組合において管理するものであるから,社会保険庁においてその訂正に応ずる筋合いのものではない。 - 74 -したがって,第三者委員会の上記対応が手続法6条及び第3章各条に違反して違法であるということはできない。 第4 結論 以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,本件訴えのうち,被告に保管されている年金の個人加入記録原簿にある原告の情報に関して「昭和36年4月資格取得同41年1月脱退共済年金退職一時金支給期間」の情報を加入し,これと矛盾する情報を取り消し,原簿訂正証明書を交付すべきことを命ずることを求める部分は不適法であるから,これを却下することとし,その余の訴えに 月脱退共済年金退職一時金支給期間」の情報を加入し,これと矛盾する情報を取り消し,原簿訂正証明書を交付すべきことを命ずることを求める部分は不適法であるから,これを却下することとし,その余の訴えに係る原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部裁判長裁判官杉原則彦裁判官品田幸男裁判官角谷昌毅
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