昭和62(ラ)27 移送決定に対する即時抗告事件

裁判年月日・裁判所
昭和62年10月13日 高松高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原決定を取り消す。      相手方の本件移送申立を却下する。          理    由  一 抗告の趣旨及び理由 本件抗告の趣旨は主文同旨の裁判を求めるものであり、その

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判決文本文3,278 文字)

主文 原決定を取り消す。 相手方の本件移送申立を却下する。 理由 一抗告の趣旨及び理由本件抗告の趣旨は主文同旨の裁判を求めるものであり、その理由は別紙抗告理由(一)(二)のとおりである。 二当裁判所の判断 1 一件記録によると、原決定に至る経緯として、次の事実が認められる。 (一) 抗告人らの被相続人であるAは昭和五〇年一二月一日及び昭和五二年一一月一日の二回にわたり相手方との間で、被保険者をA、保険金受取人を同人又は抗告人Bとする生命保険契約(以下「本件各保険契約」という。)を締結したが、昭和六一年一月四日Aの死亡により、抗告人らが本件各保険契約に基づく死亡保険金の支払請求権を相続人として、又は保険金受取人としてそれぞれ取得したとして相手方に右各保険金の支払を求める訴(以下「本案訴訟」という。)を原裁判所に対し提起した。 (二) これに対し、相手方は、本案訴訟は生命保険契約に基づく保険金の請求であるところ、相手方の本店は東京都渋谷区にあり、保険金の支払場所も普通保険約款(以下「本件約款」という。)一一条により右本店(本社)となつているから、右訴訟の普通裁判籍及び義務履行地による特別裁判籍とも東京都渋谷区にあり、原裁判所には本案訴訟の管轄権がないと主張し、これを管轄裁判所である東京地方裁判所に移送するよう求めた。 (三) 原裁判所は、相手方の主張を採用し、本案訴訟について原裁判所の管轄は認められず、右管轄は東京地方裁判所にあるとして、民訴法三〇条一項により、右訴訟を同裁判所に移送する旨の原決定をなした。 2 そこで、原決定の当否について判断する。 (一) まず、一件記録によると、相手方の本店は東京都渋谷区にあるものと認められるから、本案訴訟の普通裁判籍は同区にあるものと する旨の原決定をなした。 2 そこで、原決定の当否について判断する。 (一) まず、一件記録によると、相手方の本店は東京都渋谷区にあるものと認められるから、本案訴訟の普通裁判籍は同区にあるものと認められる。したがつて、この点に関する原決定の判断には誤りはない。 (二) 次に、本案訴訟の義務の履行地による特別裁判籍も東京都渋谷区にあるかについて検討するに、一件記録によると、次の事実が認められる。 (1) 相手方の本件約款一一条には「保険金は調査のため特に日時を要する場合のほか、第九条の書類が本社に到達してから五日以内に本社で支払う。」旨定められているところ、Aは相手方の定款・約款及び特約条項に従う旨の文言が記載された契約申込書に署名・捺印したうえこれを相手方に提出して契約の締結を申し込み、契約締結後相手方から交付された保険証券にも右約款等に基づいて契約を締結した旨の記載があつたが、Aはこれに対し異議を申し出なかつた。 (2) 相手方を保険者とする生命保険金の支払は、その支払について契約関係者間に争いがなく任意にこれがなされる限り、受取人の住所地の支社・営業所の窓口で交付されるか、受取人の指定する金融機関の口座に振り込まれるかいずれかの方法によつているのであるから、右約款による支払場所の定めは、契約関係者間において右支払について紛争が生じ、これが裁判で争われる場合を予想したもので、右は実質上専属的合意管轄を定めたものにほかならない。 (3) 相手方と保険契約を締結しようとする者は、本店所在地に居住しない限り、住所地所在の支社・営業所の担当者と契約締結の交渉をしているのであるから、右保険金の支払も保険金受取人の住所又は右支社・営業所でなされるものと考え、本店まで出向いて支払を受けるものとは考えてなく、まして、将来保険金の支払が裁判所で 契約締結の交渉をしているのであるから、右保険金の支払も保険金受取人の住所又は右支社・営業所でなされるものと考え、本店まで出向いて支払を受けるものとは考えてなく、まして、将来保険金の支払が裁判所で争われるようになつたときには東京地方裁判所で審理を受けるようになるなどとは思い及ばないところであつて、もし、相手方の担当者から前記約款の趣旨の説明を受ければ、右のような約款を定めない同業他社の存在する限り、これら同業他社との契約締結を望み、相手方との契約締結に躊躇するものと考えられ、Aもその例外となるものではなかつた。 (4) わが国の生命保険会社は、かつて相手方と同様本件約款一一条と同旨の約款を定めるのが大勢であつたもののようであるが、これが附合契約としての約款の内容としては適当でないと考えたためか、近時右約款を改め本店のみならず支社その他で保険金を支払うこととするものが増加しており、その状況は社団法人生命保険協会加盟の各社について別表(一)(二)のとおりである。 右認定事実に基づいて考えるに、保険は営業的商行為であり、相手方が保険を営業とする会社であることが明らかであるから、本件各保険契約に基づく保険金の支払場所は商法五一六条一項により保険金受取人であるA(同人死亡によりその相続人である抗告人ら)又は抗告人Bの住所となるところ、右支払場所については本件約款一一条によつて相手方本店とする特約が成立しているため、右約款一一条が有効である限り、前記法条の適用が排除され、本件各保険金支払の義務の履行地は相手方本店所在地であり、その裁判籍は東京都渋谷区ということとなる。 <要旨>しかしながら、本件約款一一条による義務の履行地の定めは、前記認定のとおり、実質上専属的合意</要旨>管轄を定めたものにほかならないところ、およそ右専属的合意管轄のように、 うこととなる。 <要旨>しかしながら、本件約款一一条による義務の履行地の定めは、前記認定のとおり、実質上専属的合意</要旨>管轄を定めたものにほかならないところ、およそ右専属的合意管轄のように、相手方と対等の立場にない経済的弱者ともいうべき保険契約者に不利に、しかも同人が十分にその意味を理解することなくしてなされたものと推測されるものについては、その効力を有しないものとみるのが相当である。なぜならば、約款は保険契約のように大量処理の必要上附合契約によらなければならない性質のものについて定められるものであつて事柄の性質上必ずしもその内容について具体的合意を要しないものとされているのであるから、当然その内容は合理性・妥当性を備えなければならないと解されるところ、本件約款一一条は右要件の具備について疑問なしとしないからである。このことは、前記認定のとおり、本件約款一一条と同旨のものが生命保険業界において保険契約者の利便を考慮して漸次改善されつつあることに加え、もし保険会社において従来の右約款に固執するときは、その説明をなす限り、契約申込者は既に右約款を改めた同業他社との契約締結に流れるであろうと考えられることによつても裏付けられるところである。そうすると、本件約款一一条は相手方がその説明をなさず、しかも保険契約者がこれを知らなかつたことを前提に存続可能なものと言つても過言でなく、このような約款は附合契約としての許容限度を超えたものと解さざるをえない。 したがつて、本件各保険金支払義務の履行地は抗告人らの住所地であり、その特別裁判籍は松山市にほかならない。 3 以上のとおりであるから、本件各保険金支払請求訴訟について原裁判所にその管轄権がないことを前提にその移送を求めた相手方の本件申立は理由がなく失当たるを免れない。 4 よつて、右判断 らない。 3 以上のとおりであるから、本件各保険金支払請求訴訟について原裁判所にその管轄権がないことを前提にその移送を求めた相手方の本件申立は理由がなく失当たるを免れない。 4 よつて、右判断と異なる原決定は不当であるから、これを取り消したうえ本件申立を却下することとし、主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官高田政彦裁判官早井博昭裁判官上野利隆)別紙<記載内容は末尾1添付>

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