主文 本件抗告を棄却する。理由 第一、 本件抗告申立の理由記録に編綴の抗告申立書のとおりであるから、これを引用する。第二、 当裁判所の判断(1) 所論指摘の事実関係のうち、つぎの事実は、記録上明うかである。すなわち、右被告人は、「1」 前記被告事件の四〇回公判期日(昭和四三年一二月二〇日―以下、単に月日のみで表示する―)に、正当な期日の告知を受けながら、出頭しなかつたこと、および同日付の、A病院医師B作成の裁判所用診断書が同日提出されていること、並びに、これによれば、病名は、食中毒で出廷不能と記載されていること「2」 つぎの四一回公判期日(昭和四四年一月一三日―以下、単に月日のみて表示する―)に、正当な召喚を受けているのにかかわらず、出頭しなかつたこと、および一月七日付のC共済病院医師D作成の裁判所用診断書が右期日に提出されていること、並びに、これによれば、「高血圧症、薬物中毒症、坐骨神経痛、偏頭痛」により出廷困難である旨が記載されていること「3」 原裁判所が、右事実に基いて、一月二四日付で、保釈取消決定をなしたこと、およびこれによれば、取消理由は、被告人が召喚を受け正当な理由がなく出頭しないときという指定条件に違反したことにあることが、いずれも明らかである。一件記録を精査検討しても、両診断書が内容虚偽のものであるとか、被告人の病気が仮病であると認めるに足りる疏明は存在しないから、被告人は、両公判期日当時、それぞれ病気で出廷困難であつたといわざるを得ない。被告人が病気で出廷困難であれば、原則として、「正当な理由がなく出頭しないとき」という条件を満たさないことは、所論指摘のとおりであると認める。<要旨>(2) 但し、被告人が、一応外形的には病気であつても、公判審 出廷困難であれば、原則として、「正当な理由がなく出頭しないとき」という条件を満たさないことは、所論指摘のとおりであると認める。 公判期日当時、それぞれ病気で出廷困難であつたといわざるを得ない。被告人が病気で出廷困難であれば、原則として、「正当な理由がなく出頭しないとき」という条件を満たさないことは、所論指摘のとおりであると認める。<要旨>(2) 但し、被告人が、一応外形的には病気であつても、公判審 出廷困難であれば、原則として、「正当な理由がなく出頭しないとき」という条件を満たさないことは、所論指摘のとおりであると認める。<要旨>(2) 但し、被告人が、一応外形的には病気であつても、公判審理をわざと引き延す目的のために、故意に病気</要旨>になるような積極的な方法を採つたことが一応認められる場合、或は、そこまで厳格な疏明がない場合でも、被告人の病気が、社会通念からいつて、公判審理引延の目的からではないかという疑が、相当程度以上濃厚であると一応認められる場合には、外形的には病気による不出廷であり、その旨の正式の診断書が提出されているとしても、なおかつ「正当な理由がなく出頭しないとき」という条件を充足するものと解する。もつとも、このように解したからといつて、そのことが、必然的に、病気のため正当な攻撃防禦が尽せない状態の下にある被告人の出廷を心理的に強要したり、審理を強行したりすることを認容し、奨励することには、もちろんならない。名は病気不出頭という名目を、正当な理由による不出頭という外形を装いながら、実質は、外形だけを悪用した、いわば脱法行為ともいいうるような場合であることが、一応諸般の事情から相当程度以上濃厚と認められる場合に限つて、正当な理由に該らないとして、保釈取消事由に該当するものと解するだけの話である。(3) 本件の場合について、一件記録に基き検討を加える。(イ) 一二月二〇日の不出頭理由について。「1」 前記のとおり、診断書によるときは、食中毒となつているが、「2」 医師Bからの一月一三日付電話聴取書によれば、「一二月一七日来院、一九日、二〇日と診察しただけであること」が認められ、「3」 検察官検事橋本友明の保釈取消請求書によれば、「同検事が、一二月二五日午後四時頃、被告人の制限住居(渋谷区a、bハイツ 二月一七日来院、一九日、二〇日と診察しただけであること」が認められ、「3」 検察官検事橋本友明の保釈取消請求書によれば、「同検事が、一二月二五日午後四時頃、被告人の制限住居(渋谷区a、bハイツ)に赴いたところ、家人不在であり、同建物所有者の娘E(三〇才位)に尋ねたところ、『被告人は、二四、五才の女性と同棲していて、毎夜一〇時頃には部屋に帰つて来ている』とのことであり、さらに近所の(株)Fに赴き、同店員に所在を尋ねたところ、『被告人は、現在所用で外出していて、帰宅時間は不明』とのことであつた」ことがうかがわれる。 ば、「同検事が、一二月二五日午後四時頃、被告人の制限住居(渋谷区a、bハイツ)に赴いたところ、家人不在であり、同建物所有者の娘E(三〇才位)に尋ねたところ、『被告人は、二四、五才の女性と同棲していて、毎夜一〇時頃には部屋に帰つて来ている』とのことであり、さらに近所の(株)Fに赴き、同店員に所在を尋ねたところ、『被告人は、現在所用で外出していて、帰宅時間は不明』とのことであつた」ことがうかがわれる。(ロ) 一〇月三一日(三七回公判期日)の不出頭理由について。被告人は、右期日に出頭せず、その際医師G作成の正式の診断書を提出しているのであるが、右医師からの一月一三日付電話聴取書によれば、「一〇月三一日頃、診察・投薬し、その後は一回も診察等していない」ことが認められる。(ハ) 一月一三日の期日に不出頭の理由について。「1」 前記のとおり、診断書によれば、各種の病名が記載されているが、「2」 裁判所書記官の報告書(一月二二日C共済病院において医師Dからの事情聴取)および、右医師からの合計四通の電話聴取書によれば、「被告人は、鎮痛・睡眠薬セデスを一日に二〇ないし三〇錠を常用したため、睡眠薬中毒になつた」ことが明らかに認められ、なお、「右病院は横須賀市にあり、被告人の制限住居とはかなり離れてもいるし、従前診察を受けた病院でもないこと」が明らかであるから、一月七日急きよ同病院に入院するに至つたことについて、疑の目をもつて見られてもやむを得ない面があることは否定できない。「3」 右疏明書類およびHからの一月二三日付電話聴取書によれば「被告人は、入院中、一月一七日、家事整理で自宅に帰るという名目で外泊の許可をとつて、病 てもやむを得ない面があることは否定できない。「3」 右疏明書類およびHからの一月二三日付電話聴取書によれば「被告人は、入院中、一月一七日、家事整理で自宅に帰るという名目で外泊の許可をとつて、病院を出て、一月二三日までの一週間病院を抜け出していたこと、および実際には自宅には帰つていなかつた、従つて、この間はどこに行つていたのか全く不明であること」が認められる。(ニ) その他、一件記録によると、「一二月二〇日の期日には、弁護人による被告人質問、検察官の論告が、一月一三日の期日には、弁護人の弁論が予定されていたこと」がうかがわれ、かつ、被告人は、現在執行猶予期間中(懲役二年六月・五年間執行猶予)の身であり、あと何か月かで執行猶予期間が切れるという関係にあることが認められる。 ていなかつた、従つて、この間はどこに行つていたのか全く不明であること」が認められる。(ニ) その他、一件記録によると、「一二月二〇日の期日には、弁護人による被告人質問、検察官の論告が、一月一三日の期日には、弁護人の弁論が予定されていたこと」がうかがわれ、かつ、被告人は、現在執行猶予期間中(懲役二年六月・五年間執行猶予)の身であり、あと何か月かで執行猶予期間が切れるという関係にあることが認められる。(ホ) 右以外の、被告人の公判期日不出頭の回数について。被告人は、右以外にも、「1」三〇回(43、5、15)、「2」二七回(43、3、30)、「3」二三回(43、1、19)の各公判期日に出頭せず、正式の診断書が提出されているのは「2」についてだけで、「1」「3」については、診断書など全く提出されていない。「4」 以上説示の諸事情を総合して判断するとき、一月一三日当時の病気が、審理引延のために、故意に病気になるような積極的な方法を採つたとまでは、もちろんいい得ないが、社会通念上、審理引延の目的で、多量のセデスを服用して睡眼薬中毒にかかり、ひいてその他の病気も併発或は増勢を来たしたものではないかと疑うに足りる相当な理由があると一応認めて差支えない。このような場合には、外形的には、病気であり、かつ、その旨の正式の診断書が提出されているとしても、なおかつ「正当な理由がなく出頭しないとき」という条件に該当すると解せられないことはない。原決定は、相当であり、所論主張の 形的には、病気であり、かつ、その旨の正式の診断書が提出されているとしても、なおかつ「正当な理由がなく出頭しないとき」という条件に該当すると解せられないことはない。原決定は、相当であり、所論主張のような違法のかどは発見できない。本件抗告は理由がない。そこで刑訴法四二六条一項により主文のとおり決定する。(裁判長判事江里口清雄判事内田武文判事横地正義)
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