平成17(ワ)1768 損害賠償

裁判年月日・裁判所
平成20年4月24日 東京地方裁判所 その他
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判決文本文65,166 文字)

平成20年4月24日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成17年(ワ)第1768号,同第8176号,平成19年(ワ)第21171号各損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成19年12月20日判決主文 被告西武鉄道株式会社,被告株式会社プリンスホテル,被告A及び被告Bは,別紙認容額等一覧表1の「原告」欄記載の各原告に対し,連帯して,同表「認容額」欄記載の各金員及びこれらに対する平成16年10月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告Cは,別紙認容額等一覧表2の「原告」欄記載の各原告に対し,被告西武鉄道株式会社,被告株式会社プリンスホテル,被告A及び被告Bと連帯して,同表「認容額」欄記載の各金員及びこれらに対する平成16年10月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を,亡Dから相続した財産の存する限度において,支払え。 上記原告らのその余の請求及び上記原告ら以外の原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用の負担は次のとおりとする。 ( )別紙認容額等一覧表1の「原告」欄記載の原告らと被告西武鉄道株式会 社,被告株式会社プリンスホテル,被告A及び被告Bとの間においては,当該当事者間において生じた訴訟費用のうち,当該原告らに生じた費用の3分の1及び当該被告らに生じた費用を当該被告らの負担とし,当該原告らに生じたその余の費用を当該原告らの負担とし,その余の原告らと当該被告らとの間においては,当該当事者間において生じた訴訟費用の全部をその余の原告らの負担とする。 ( )別紙認容額等一覧表2の「原告」欄記載の原告らと被告Cとの間におい ては,当該当事者間において生じた訴訟費用のうち,当該原告らに生じた費用の3分の1及び被告Cに生じた費用を被告Cの負担とし,当該原告らに生じたその余の費用を当該原 載の原告らと被告Cとの間におい ては,当該当事者間において生じた訴訟費用のうち,当該原告らに生じた費用の3分の1及び被告Cに生じた費用を被告Cの負担とし,当該原告らに生じたその余の費用を当該原告らの負担とし,その余の原告らと被告Cとの間においては,当該当事者間において生じた訴訟費用の全部をその余の原告らの負担とする。 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1請求被告らは,別紙損害等一覧表の「氏名」欄記載の各原告に対し,連帯して,同表「請求額」欄記載の各金員及びこれらに対する平成16年10月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を,被告Cにおいては亡Dから相続した財産の存する限度において,支払え。 第2事案の概要本件は,原告らが,被告らに対し,被告西武鉄道株式会社(以下「被告西武鉄道」という)が株式会社コクド(以下「コクド」という)所有にかかる。 。 被告西武鉄道の株式数を過少に記載した有価証券報告書及び半期報告書を関東財務局長等に対し継続して提出してその虚偽記載を訂正せず,また,コクドも当該虚偽記載に積極的に関与したため,被告西武鉄道の株式(以下「西武鉄道株式」という)を取得した原告らが損害を被ったと主張し,被告西武鉄道及。 びコクドを吸収合併した被告株式会社プリンスホテル(以下「被告プリンスホテル」という)に対しては不法行為(民法709条,719条1項前段)に。 基づき,被告西武鉄道及びコクドの代表取締役であった被告A,被告西武鉄道の代表取締役であった被告B並びに被告西武鉄道の代表取締役であった亡Dの相続人である被告Cに対しては不法行為(民法709条,719条1項前段)又は平成16年法律第97号による改正前の証券取引法(平成18年法律第65号により法律の題名が「金融商品取 取締役であった亡Dの相続人である被告Cに対しては不法行為(民法709条,719条1項前段)又は平成16年法律第97号による改正前の証券取引法(平成18年法律第65号により法律の題名が「金融商品取引法」と改められた。以下「旧証取法」という)24条の4,24条の5第5項,22条1項に基づき,連帯して,。 損害賠償金及びこれらに対する不法行為の後の日である平成16年10月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 前提事実(証拠等により認定した事実は当該証拠等を文末に掲記し,当事者間に争いがない事実は証拠等を掲記しない)。 ( )当事者 ア原告ら原告らは,平成16年10月13日当時,西武鉄道株式を所有していた者である(甲10の各枝番,弁論の全趣旨。 )イ被告ら(ア)被告西武鉄道は,鉄道事業等を目的とし,平成16年12月17日に上場廃止となるまで,その発行する株式(西武鉄道株式)を東京証券取引所市場第1部に上場していた株式会社である。 (イ)コクドは,不動産の所有,売買,貸借等を目的とする株式会社であったが,平成18年2月1日,被告プリンスホテルに吸収合併された。 (ウ)被告Aは,被告西武鉄道においては,昭和35年5月取締役に,昭和40年11月代表取締役副社長に,昭和48年11月代表取締役社長に,平成元年1月代表取締役会長にそれぞれ就任したが,平成16年4月14日取締役を辞任したことに伴い代表取締役も退任し,コクドにお,,,いては昭和32年10月代表取締役に昭和40年代表取締役社長に平成7年6月に代表取締役会長にそれぞれ就任したが,平成16年10月13日に代表取締役及び取締役を辞任した者である。 (エ)被告Bは,被告西武鉄道において,昭和51年6月取締役に,昭和 社長に平成7年6月に代表取締役会長にそれぞれ就任したが,平成16年10月13日に代表取締役及び取締役を辞任した者である。 (エ)被告Bは,被告西武鉄道において,昭和51年6月取締役に,昭和59年6月常務取締役に,平成8年6月代表取締役社長にそれぞれ就任したが,平成16年4月8日に代表取締役を,同月14日に取締役をそれぞれ辞任した者である。 (オ)亡D亡Dは,被告西武鉄道において,平成5年6月取締役に,平成16年4月8日代表取締役社長に就任し,平成17年1月28日取締役を辞任したことに伴い代表取締役も退任した者である。 ,,亡Dは平成17年2月19日死亡し被告Cが唯一の相続人であるが被告Cは,限定承認の申述をし,その申述は同年7月5日東京家庭裁判所八王子支部に受理された。 ( )虚偽記載のある被告西武鉄道の有価証券報告書及び半期報告書の提出 被告西武鉄道は,昭和59年4月1日から平成16年10月13日までの間,関東財務局長等に対し,真実は発行済株式総数の過半数を有する親会社であったコクドが所有する西武鉄道株式の数を過少に虚偽記載した有価証券報告書(昭和59年6月に提出された同年3月期から平成16年6月に提出された同年3月期までのもの)及び半期報告書(昭和59年12月に提出された昭和60年3月期中間期から平成15年12月に提出された平成16年3月期中間期までのもの以下有価証券報告書と半期報告書を一括して有。 ,「価証券報告書等」という)を提出していた(甲1,9の72,弁論の全趣。 旨。 )( )西武鉄道株式の上場廃止等 ア東京証券取引所は,平成16年当時,株券上場廃止基準において,次のような上場銘柄の上場廃止事由を定めていた(甲9の72〔資料8,乙〕ロ1の1。 )①少数特定者持株数(所有株式数の多い順に1 ア東京証券取引所は,平成16年当時,株券上場廃止基準において,次のような上場銘柄の上場廃止事由を定めていた(甲9の72〔資料8,乙〕ロ1の1。 )①少数特定者持株数(所有株式数の多い順に10名の株主が所有する株式及び役員が所有する株式の総数)が上場株式数の80%を超えている場合において1か年以内に上場株式数の80%以下とならないとき株,(券上場廃止基準2条1項2号a(a),昭和57年10月1日改正付則3項,5項。以下「少数特定者持株数基準」という。 。)②上場会社が財務諸表等又は中間財務諸表等に虚偽記載を行い,かつ,その影響が重大であると東京証券取引所が認めた場合(同2条1項11号a。以下「財務諸表等虚偽記載基準」という)。 ③公益又は投資者保護のため,東京証券取引所が当該銘柄の上場廃止を適当と認めた場合(同2条1項16号)イ被告西武鉄道は,平成16年10月13日,関東財務局長に対し,コクド及び被告プリンスホテルが個人名義で実質的に所有する西武鉄道株式(以下,他人名義で実質的に所有する株式を「名義株」という)の存在。 が判明したとして,平成12年3月期から平成16年3月期までの有価証券報告書等につき,コクド及び被告プリンスホテルの所有する西武鉄道株式の株式数及び所有割合を訂正し(平成16年3月期にコクドが所有する株式数及びその割合は,1億8701万4000株,43.16%から2億8093万1000株,64.83%に訂正された,コクドの表示。)を「その他の関係会社」から「親会社」に訂正する等の訂正報告書を提出し,その旨を公表した(甲2。 )ウ東京証券取引所は,平成16年10月13日,上記イのとおり,同日被告西武鉄道が平成12年3月期から平成16年3月期までの有価証券報告書等の虚偽記載を公表し訂正報告書を の旨を公表した(甲2。 )ウ東京証券取引所は,平成16年10月13日,上記イのとおり,同日被告西武鉄道が平成12年3月期から平成16年3月期までの有価証券報告書等の虚偽記載を公表し訂正報告書を提出したことを受けて,同年3月31日現在の西武鉄道株式の株式分布状況を審査したところ,株券上場廃止基準2条1項2号a(a)関係(少数特定者持株数が80%を超えたため)に該当することが判明したとして,西武鉄道株式を当該規定に係る猶予期間(平成16年4月1日から平成17年3月31日まで)入り銘柄としたことを公表し,西武鉄道株式が同項11号a(上場会社が財務諸表等又は中間財務諸表等に虚偽記載を行い,かつ,その影響が重大であると認めた場合)の前段に該当し,かつ,同項16号(公益又は投資者保護のため,),当該銘柄の上場廃止を適当と認めた場合に該当するおそれがあるとして西武鉄道株式が株券上場廃止基準に該当するかどうかを認定した日まで,同株式を監理ポスト(上場廃止となるおそれがある銘柄についてその事実を投資者に周知させるため割り当てられるもの)に割り当てることを決定し,その旨を公表した(甲9の72〔資料12,乙イ4。 〕)東京証券取引所は,平成16年11月16日,西武鉄道株式が,株券上場廃止基準2条1項11号a及び同項16号に該当するとして,西武鉄道株式を同年12月17日に上場廃止とする旨を決定し,西武鉄道株式は,同日,上場廃止となった。 エ西武鉄道株式の東京証券取引所における終値は,有価証券報告書等の虚偽記載が公表された平成16年10月13日が1株1081円(当該公表前に同日の取引は終了していた,上場廃止決定のあった同年11月1。)6日が1株268円,最終取引日の同年12月16日が1株485円であった(乙ハ1,2。 )( )西武鉄道株 81円(当該公表前に同日の取引は終了していた,上場廃止決定のあった同年11月1。)6日が1株268円,最終取引日の同年12月16日が1株485円であった(乙ハ1,2。 )( )西武鉄道株式の帰趨 被告西武鉄道を含むグループ企業の再編において,平成18年2月1日に被告西武鉄道がその事業の一部を被告プリンスホテルに承継させる会社分割,同月2日に被告西武鉄道が被告プリンスホテルの完全子会社となるための株式交換,同月3日に被告プリンスホテルが株式会社西武ホールディングス(以下「西武ホールディングス」という)の完全子会社となるための株。 式移転が行われたことから,被告西武鉄道の株主は,その所有していた西武鉄道株式1株について西武ホールディングスの株式1株を所有することとなった。 争点 ( )被告西武鉄道,コクド,被告A,被告B及び亡D(以下「被告西武鉄道 ら」という)には,民法709条,719条1項前段の違法行為が存在す。 るか。 ( )被告A,被告B及び亡Dには旧証取法24条の4,24条の5第5項, 22条1項に基づく責任があるか。 ( )原告らに生じた損害があるか。それはいくらか。 争点に関する当事者の主張( )争点( )(被告西武鉄道らの違法行為の有無)について 【原告らの主張】ア被告西武鉄道の違法行為について(ア)被告西武鉄道は,東京証券取引所の株券上場廃止基準である少数特定者持株数基準及び財務諸表等虚偽記載基準が定められた後の昭和59年4月1日から平成16年10月13日までに提出した有価証券報告書等において,コクドが所有する西武鉄道株式の数(平成12年3月期以降に提出された有価証券報告書等には被告プリンスホテルが所有する西武鉄道株式の数も含む)を過少に記載し,その虚偽記載を訂正する訂 書等において,コクドが所有する西武鉄道株式の数(平成12年3月期以降に提出された有価証券報告書等には被告プリンスホテルが所有する西武鉄道株式の数も含む)を過少に記載し,その虚偽記載を訂正する訂。 正報告書を提出しなかった。 (イ)被告西武鉄道は,遅くとも昭和43年ころには,コクドが所有する名義株の数量も正確に把握し,コクドが自社の名義で所有している西武鉄道株式に名義株を加えるとコクドが被告西武鉄道の親会社となること,名義株をコクドの所有株式数に加えれば少数特定者持株数が西武鉄道株式総数の80%を超えることを熟知していた。したがって,被告西武鉄道は,遅くとも昭和59年4月1日以降,西武鉄道株式が株券上場廃止基準(少数特定者持株数基準及び財務諸表等虚偽記載基準)に抵触する状態にあって,本来上場を維持できないか,上場廃止の高度の蓋然性を有する株式であることを認識し又は認識し得た。そうすると,被告西武鉄道は,このまま有価証券報告書等の虚偽記載を継続すれば,投資家に西武鉄道株式を上場株式として市場で取得させ,若しくは上場を維持できない株式であるにもかかわらず上場株式としての価格で取得させ,又は上場廃止が決定され株価が下落することにより,投資家に損害を生じさせることを予見することが可能であった。 (ウ)以上によれば,被告西武鉄道が昭和59年4月1日から平成16年10月13日までに提出した有価証券報告書等において,コクドが所有する西武鉄道株式の数(平成12年3月期以降に提出された有価証券報告書等には被告プリンスホテルが所有する西武鉄道株式の数も含む)。 を過少に記載する虚偽記載をし,その訂正報告書を提出しなかったことは,平成16年10月13日以前に西武鉄道株式を取得した原告らとの関係で,民法709条,719条1項前段の違法行為に該当する。 )。 を過少に記載する虚偽記載をし,その訂正報告書を提出しなかったことは,平成16年10月13日以前に西武鉄道株式を取得した原告らとの関係で,民法709条,719条1項前段の違法行為に該当する。 イコクドの違法行為について(被告プリンスホテル関係)(ア)コクドは,被告西武鉄道が有価証券報告書等にコクドが所有する西武鉄道株式の数を過少に記載し,その虚偽記載を訂正する訂正報告書を,,提出しなかったという違法行為を行うについて被告西武鉄道と共同し名義株の真実の所有者がコクドであることを隠蔽し続けることによって積極的に関与した。 (イ)コクドが所有する名義株は遅くとも昭和33年ころまでには存在し,コクドは,自社名義の西武鉄道株式と名義株とを合わせたものをコクド所有の西武鉄道株式として扱い,名義株分の配当金も受領し,名義。 ,,株の株券も管理していたまたコクドの代表取締役であった被告Aは被告西武鉄道の代表取締役社長に就任した昭和48年11月ころには,コクドが所有する西武鉄道株式の数は発行済株式総数の過半数を大きく超えているのに,被告西武鉄道が有価証券報告書にコクドが所有する西武鉄道株式の数を過少に記載していることを認識した。したがって,コクドは,遅くとも昭和59年4月1日以降,西武鉄道株式が株券上場廃止基準(少数特定者持株数基準及び財務諸表等虚偽記載基準)に抵触する状態にあって,本来上場を維持できないか,上場廃止の高度の蓋然性を有する株式であることを認識し又は認識し得た。そうすると,コクド,,はこのまま被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載が継続すれば投資家に西武鉄道株式を上場株式として市場で取得させ,若しくは上場を維持できない株式であるにもかかわらず上場株式としての価格で取得させ,又は上場廃止が決定され株価が下落する 等の虚偽記載が継続すれば投資家に西武鉄道株式を上場株式として市場で取得させ,若しくは上場を維持できない株式であるにもかかわらず上場株式としての価格で取得させ,又は上場廃止が決定され株価が下落することにより,投資家に損害を生じさせることを予見することが可能であった。 (ウ)それにもかかわらず,コクドは,平成16年10月13日に被告西武鉄道が有価証券報告書等の虚偽記載を公表するまで,所有する名義株の存在を隠蔽し続け,子会社であった被告西武鉄道に対し,当該虚偽記載の訂正報告書を提出するように求めず,また,大量保有報告書の提出が義務付けられた平成2年以降は,大量保有報告書や変更報告書に自社の所有する西武鉄道株式の数について虚偽を記載しこれを訂正しなかった。このことは,平成16年10月13日以前に西武鉄道株式を取得した原告らとの関係で,民法709条,719条1項前段の違法行為に該当する。 ウ被告Aの違法行為について,,(ア)被告Aはコクドの代表取締役に就任した後の昭和35年ころにはコクドが所有する名義株の存在を知っており,また,昭和48年11月に被告西武鉄道の代表取締役社長に就任したころには,被告西武鉄道が有価証券報告書にコクドが所有する西武鉄道株式の数を過少に記載していることを認識したにもかかわらず,当該虚偽記載の是正を指示しなかった。さらに,被告Aは,昭和55年ころには,名義株をコクドの自社名義に書き換えるように指示して報告を受けていたから,コクドが被告西武鉄道の親会社であり,西武鉄道株式の少数特定者持株数が発行済株式総数の80%を超えていることを認識していた。したがって,被告Aは,遅くとも昭和59年4月1日以降,西武鉄道株式が株券上場廃止基準(少数特定者持株数基準及び財務諸表等虚偽記載基準)に抵触する状態にあって,本来上 超えていることを認識していた。したがって,被告Aは,遅くとも昭和59年4月1日以降,西武鉄道株式が株券上場廃止基準(少数特定者持株数基準及び財務諸表等虚偽記載基準)に抵触する状態にあって,本来上場を維持できないか,上場廃止の高度の蓋然性を有する株式であることを認識し又は認識し得た。そうすると,被告Aは,このまま被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載が継続すれば,投資家に西武鉄道株式を上場株式として市場で取得させ,若しくは上場を維持できない株式であるにもかかわらず上場株式としての価格で取得させ,又は上場廃止が決定され株価が下落することにより,投資家に損害を生じさせることを予見することが可能であった。 (イ)それにもかかわらず,被告Aは,昭和59年4月1日から平成16年4月14日までは被告西武鉄道の代表取締役の地位にあり,同日以降も被告西武鉄道の意思決定を左右することができる立場にあったのに,同年10月13日まで,被告西武鉄道に有価証券報告書等の虚偽記載をさせ訂正報告書を提出しないという違法行為を継続させた。また,被告Aは,昭和59年4月1日以降,コクドの代表取締役として,名義株の存在を隠蔽し続けることで被告西武鉄道と共同して当該虚偽記載に積極的に関与していた状態を中止して被告西武鉄道に訂正報告書を提出するように求める義務があり,また,大量保有報告書の提出が義務付けられた平成2年からは,コクドが所有する西武鉄道株式の数について真実を記載した大量保有報告書や変更報告書を提出し,又は訂正報告書を提出すべき義務があったのに,これらの義務を怠った。このことは,平成16年10月13日以前に西武鉄道株式を取得した原告らとの関係で,民法709条,719条1項前段の違法行為に該当する。 エ被告Bの違法行為について(ア)被告Bは,昭和51年6 。このことは,平成16年10月13日以前に西武鉄道株式を取得した原告らとの関係で,民法709条,719条1項前段の違法行為に該当する。 エ被告Bの違法行為について(ア)被告Bは,昭和51年6月に被告西武鉄道の取締役に就任後,コクドが名義株により多数の西武鉄道株式を有していること,被告西武鉄道が有価証券報告書等にコクドが所有する西武鉄道株式の数を過少に記載していることを認識した。それゆえ,被告Bは,遅くとも昭和59年4月1日以降,西武鉄道株式が株券上場廃止基準(少数特定者持株数基準及び財務諸表等虚偽記載基準)に抵触する状態にあって,本来上場を維持できないか,上場廃止の高度の蓋然性を有する株式であることを認識し又は認識し得た。そうすると,被告Bは,このまま被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載が継続すれば,投資家に西武鉄道株式を上場株式として市場で取得させ,若しくは上場を維持できない株式であるにもかかわらず上場株式としての価格で取得させ,又は上場廃止が決定され株価が下落することにより,投資家に損害を生じさせることを予見することが可能であった。 (イ)被告Bは,昭和59年4月1日以降は取締役として取締役会を招集するなどして,平成8年6月以降は代表取締役社長として,有価証券報告書等に真実を記載させ,訂正報告書を提出させて,被告西武鉄道の違法行為を中止させる義務があったのに,これを怠った。このことは,平成16年10月13日以前に西武鉄道株式を取得した原告らとの関係で,民法709条,719条1項前段の違法行為に該当する。 オ亡Dの違法行為について(被告C関係)(ア)亡Dは,被告西武鉄道の取締役に就任した平成5年6月以降,同社の取締役として調査を行うことにより,同社がそれまで有価証券報告書等にコクドが所有する西武鉄道株式の数を過少 ついて(被告C関係)(ア)亡Dは,被告西武鉄道の取締役に就任した平成5年6月以降,同社の取締役として調査を行うことにより,同社がそれまで有価証券報告書等にコクドが所有する西武鉄道株式の数を過少に記載する虚偽記載を行ってきたこと及び西武鉄道株式が株券上場廃止基準(少数特定者持株数基準及び財務諸表等虚偽記載基準)に抵触する状態にあって,本来上場を維持できないか,上場廃止の高度の蓋然性を有する株式であることを認識し得た。また,亡Dは,平成16年4月8日に被告西武鉄道の代表取締役に就任したころには,上記の事実を認識した。 (イ)それにもかかわらず,亡Dは,被告西武鉄道の取締役に就任した平成5年6月以降は取締役として取締役会を招集するなどして,平成16年4月以降は代表取締役社長として,有価証券報告書等に真実を記載させ,訂正報告書を提出させて,被告西武鉄道の上記(ア)の違法行為を中止させる義務があったのに,これを怠った。このことは,平成16年10月13日以前に西武鉄道株式を取得した原告らとの関係で,民法709条,719条1項前段の違法行為に該当する。 【被告西武鉄道の反論】東京証券取引所の株券上場廃止基準である少数特定者持株数基準は,少数特定者持株数の所有割合が80%を超えた場合に直ちに上場を廃止するというものではなく,審査対象決算期の翌日から起算して1か年以内に少数特定者持株数が80%以下にならない場合に初めて上場を廃止するというものである。東京証券取引所は,平成16年10月13日に,西武鉄道株式を,同年4月1日から平成17年3月31日までの間を当該1か年の猶予期間とする猶予期間入り銘柄に指定しており,昭和59年4月1日時点では,西武鉄道株式が,株券上場廃止基準としての少数特定者持株数基準に抵触していることはあり得ない。また,大株主の を当該1か年の猶予期間とする猶予期間入り銘柄に指定しており,昭和59年4月1日時点では,西武鉄道株式が,株券上場廃止基準としての少数特定者持株数基準に抵触していることはあり得ない。また,大株主の状況等についての虚偽記載は,財務諸表等虚偽記載基準にいう「財務諸表等又は中間財務諸表等の虚偽記載」ではないし,仮に上記基準に該当するとしても,影響が重大であるとして上場廃止をするかどうかは東京証券取引所の政策的な判断にゆだねられているのであるから,昭和59年4月1日時点で,西武鉄道株式が,株券上場廃止基準としての財務諸表等虚偽記載基準に抵触していたということはできない。 したがって,被告西武鉄道において,昭和59年4月1日以降,西武鉄道株式が,本来上場を維持し得ないか上場廃止の高度の蓋然性を有する株式であることを認識し又は認識し得たということはなく,被告西武鉄道には原告ら主張の違法行為はない。 【被告プリンスホテルの反論】アコクドには,被告西武鉄道と共同して名義株の真実の所有者がコクドであることを隠蔽し続けたという事実はない。また,コクドは,被告西武鉄道の有価証券報告書等の作成等について何らの権限もないから,コクドにおいて原告らが主張するような名義株の取扱いがあったからといって,被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載への積極的関与と評価することはできない。同様に,コクドは,被告西武鉄道の有価証券報告書等の訂正について何らの指示権限もない以上,被告西武鉄道に対して有価証券報告書等の訂正報告書を提出するように求める法的義務はない。また,大量保有報告書やその訂正報告書の提出は旧証取法上の義務にすぎず,コクドが虚偽記載のある大量保有報告書を提出しその訂正をしなかったことが,直ちに民法709条の不法行為となるわけではない。 イ西武鉄道株式は,昭 書やその訂正報告書の提出は旧証取法上の義務にすぎず,コクドが虚偽記載のある大量保有報告書を提出しその訂正をしなかったことが,直ちに民法709条の不法行為となるわけではない。 イ西武鉄道株式は,昭和59年4月1日時点で,株券上場廃止基準としての少数特定者持株数基準や財務諸表等虚偽記載基準に抵触していたわけではない。西武鉄道株式の上場廃止は東京証券取引所の高度な政治的判断に基づく裁量的決定で行われたものであり,コクドにおいて,昭和59年4月1日以降,西武鉄道株式が本来上場を維持し得ないか上場廃止の高度の蓋然性を有する株式であることを認識し又は認識し得たということはない。 【被告Aの反論】ア西武鉄道株式が本来上場を維持し得ないか上場廃止の高度の蓋然性を有する株式であったとする原告らの主張が失当であることは,被告西武鉄道及び被告プリンスホテルの主張と同様である。 イ被告Aが,被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載を知り得る状況となったのは,コクドの担当取締役から報告を受けた平成16年5月25日のことである。したがって,被告Aは,同日以前に提出された平成15年3月期までの有価証券報告書及び平成16年3月期中間期までの半期報告書の虚偽記載について認識していなかった。また,被告Aは,被告西武鉄道において,有価証券報告書等の作成・提出業務等の機械的作業を各担当部門にゆだね,会社の管理業務部門が適切かつ円滑に行われるよう社内体制を維持構築するために適切な注意義務を果たしていた。それゆえ,被告Aには,平成16年5月25日以前に提出された有価証券報告書等の虚偽記載について,故意も過失もない。 ウまた,被告Aは,平成16年3月期の有価証券報告書(同年6月提出)の虚偽記載についてはこれを認識し得る立場にあったものの,当該年度の有価証券報告書の虚偽 の虚偽記載について,故意も過失もない。 ウまた,被告Aは,平成16年3月期の有価証券報告書(同年6月提出)の虚偽記載についてはこれを認識し得る立場にあったものの,当該年度の有価証券報告書の虚偽記載のみから西武鉄道株式の上場が廃止されることまで考えることは極めて困難であり,被告Aが当該有価証券報告書についてした行為と原告らに生じた損害との間には相当因果関係は存在しない。 【被告Bの反論】ア被告Bは,被告西武鉄道の有価証券報告書等に記載されるコクドが所有する西武鉄道株式の数が虚偽だとは知らず,また,虚偽の事実が発覚するまで業務・会計監査で指摘されたこともなかったから,知らなかったことについて過失がない。被告Bは,昭和50年代には,コクドが名義株という形式で実際にはかなりの西武鉄道の株を所有していることは認識していたが,名義株が有価証券報告書等に記載されなかったことや名義株の法律上の意味合いを認識してはいなかった。 イ被告Bは,平成16年4月に被告西武鉄道の取締役を辞任しているところ,その後の同年6月29日になって被告西武鉄道の同年3月期の有価証券報告書が提出されており,当該有価証券報告書の提出後に西武鉄道株式を取得した原告らに生じた損害と被告Bの行為との間には相当因果関係がない。 【被告Cの反論】ア亡Dは,平成16年4月に被告西武鉄道の代表取締役社長に就任する前は,同社の有価証券報告書等の作成提出に関する決裁権限を有していなかったし,名義株の存在を知らされていなかったから,それまでの有価証券報告書等の虚偽記載については過失がない。 また,亡Dは,被告西武鉄道の代表取締役社長に就任した約2か月後の平成16年3月期の有価証券報告書の提出期限までには,コクドや被告A,,の協力を得て名義株の実質的所有者を調査確定することは不可能で た,亡Dは,被告西武鉄道の代表取締役社長に就任した約2か月後の平成16年3月期の有価証券報告書の提出期限までには,コクドや被告A,,の協力を得て名義株の実質的所有者を調査確定することは不可能であり株主構成については株主名簿のとおりに有価証券報告書に記載するほかなかった。したがって,亡Dには,当該有価証券報告書の虚偽記載についても過失はない。 ウ亡Dは,被告西武鉄道の代表取締役社長に就任後,コンプライアンスの徹底のために被告西武鉄道の組織全体を見直した結果,名義株の存在や有価証券報告書等の虚偽記載を発見した。そこで,亡Dは,平成16年10月13日,有価証券報告書等の虚偽記載を自ら公表した。このように,法を遵守した亡Dの行為に照らし,同人の相続人である被告Cに対し不法行為に基づく損害賠償請求をすることは,権利濫用(民法1条3項)に当たり許されない。 エ株式が上場されている会社の業績が,取締役の過失により悪化して株価が下落するなど全株主が平等に不利益を受けた場合において,株主が取締役に対しその責任を追及する方法としては,株主代表訴訟によるべきであり,民法709条に基づき,直接取締役に損害賠償を求めることは許されない。したがって,原告らが,亡Dの不法行為責任に基づき,被告Cに対し,損害賠償を請求することはできない。 ( )争点( )(被告A,被告B及び亡Dの旧証取法に基づく責任の有無)につ いて【原告らの主張】被告西武鉄道は,昭和59年4月1日から平成16年10月13日までの間,関東財務局長等に対し,真実は発行済株式総数の過半数を有する親会社であったコクドが所有する西武鉄道株式の数を過少に虚偽記載した有価証券報告書等を提出していた。当該有価証券報告書等の虚偽記載は,大株主の株式の所有状況という,市場で実質的に流通している 有する親会社であったコクドが所有する西武鉄道株式の数を過少に虚偽記載した有価証券報告書等を提出していた。当該有価証券報告書等の虚偽記載は,大株主の株式の所有状況という,市場で実質的に流通している株式数を把握するために必要な,投資家の投資判断に影響を与える重要な事項についてされたものである。原告らは,当該記載が虚偽であることを知らないで西武鉄道株式を取得した者であるから,被告西武鉄道が当該有価証券報告書等を提出した当時,,,,の取締役は旧証取法24条の424条の5第5項22条1項に基づき有価証券報告書等の虚偽記載によって原告らに生じた損害を賠償すべき責任を負う。 被告A及び被告Bは昭和59年4月1日以前から平成16年4月14日まで,亡Dは平成5年6月から平成17年1月28日まで,被告西武鉄道の取締役の地位にあったから,これらの被告らは,それぞれ取締役の地位にあった時に被告西武鉄道が提出した有価証券報告書等の虚偽記載により原告らに生じた損害を賠償すべきである。 【被告Aの反論】ア株式の流動性は,有価証券報告書等によらずとも,株式市場において公開される株式の出来高や売買高で判明するし,被告西武鉄道の支配可能性については,虚偽記載の訂正前であっても有価証券報告書等を見れば,コクド等のグループ企業が被告西武鉄道の過半数の発行済株式を有していることは開示されていた。したがって,被告西武鉄道の有価証券報告書等に虚偽記載があった大株主の状況は,旧証取法24条の4及び24条の5第5項にいう「重要な事項」には当たらない。 イ前記( )【被告Aの反論】イのとおり,被告Aは,平成16年5月25 日に被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載を知り得る状況となったのであり,それ以前に提出された有価証券報告書等の虚偽記載を認識しておらず, Aの反論】イのとおり,被告Aは,平成16年5月25 日に被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載を知り得る状況となったのであり,それ以前に提出された有価証券報告書等の虚偽記載を認識しておらず,被告西武鉄道の管理業務が適切かつ円滑に行われるように社内体制を維持構築する注意義務を果たしていた。したがって,被告Aには,被告西武鉄道が同日以前に提出した有価証券報告書等の虚偽記載については,旧証取法21条2項1号所定の免責事由(記載が虚偽であることを知らず,かつ,相当な注意を用いたにもかかわらず知ることができなかったこと)があるから,同法24条の4,24条の5第5項,22条1項に基づく責任を負わない。また,被告Aは,平成16年3月期の有価証券報告書が提出された同年6月時点では,被告西武鉄道の取締役ではなかったので,当該有価証券報告書の虚偽記載による損害についても,旧証取法24条の4,22条1項に基づく責任を負わない。 【被告Bの反論】ア旧証取法24条の4及び24条の5第5項に規定する「重要な事項」とは投資家の判断を誤らせる財務に関する事項を意味すると解すべきである。したがって,株主に関する事項の誤りは,投資家の判断を誤らせるものではないので,被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載は「重要,な事項」の虚偽記載には該当しない。 イ前記( )【被告Bの反論】アのとおり,被告Bは,被告西武鉄道の有価 証券報告書等に記載されたコクドが所有する株式数が虚偽だとは知らず,また,虚偽の事実が発覚するまで業務・会計監査で指摘されたこともなかったので,旧証取法21条2項1号の免責事由が存在する。 ウ被告Bは,平成16年4月に被告西武鉄道の取締役を辞任している。したがって,被告西武鉄道の平成16年3月期の有価証券報告書の提出(同年6月29日)の後に 取法21条2項1号の免責事由が存在する。 ウ被告Bは,平成16年4月に被告西武鉄道の取締役を辞任している。したがって,被告西武鉄道の平成16年3月期の有価証券報告書の提出(同年6月29日)の後に西武鉄道株式を取得した原告らに生じた損害と,被告Bの行為との間には相当因果関係がない。 【被告Cの反論】ア旧証取法24条の4及び24条の5第5項の「重要な事項」とは投資家の判断に影響を与える事項を意味すると解すべきである。したがって,被告西武鉄道の有価証券報告書等に虚偽記載があった株主に関する事項は,投資家の判断を誤らせるものではないので,当該「重要な事項」には該当しない。 イ前記( )【被告Cの反論】アのとおり,亡Dは,平成16年4月に被告 西武鉄道の代表取締役社長に就任する前は,同社の有価証券報告書等の虚,。 偽記載については知らなかったし知らなかったことについて過失がないまた,亡Dは,被告西武鉄道の代表取締役社長に就任した後も,平成16年3月期の有価証券報告書の提出期限までに名義株の実質的所有者を調査確定することは不可能であった。したがって,亡Dには,当該虚偽記載についても過失はなく,旧証取法21条2項1号の免責事由が存在する。 ,,,ウ旧証取法24条の424条の522条1項に基づく損害賠償責任は同法20条若しくは商法522条の類推適用による5年間又は民法167条1項の適用による10年間の各消滅時効にかかる。そこで,被告Cは,本件口頭弁論期日において,原告らが本件各訴えを提起するまでに,その提出から上記の各期間が既に経過している有価証券報告書等の虚偽記載に基づく責任について,消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 ( )争点( )(原告らに生じた損害の有無及び範囲)について 【原告らの主張】ア原告らによる西武 有価証券報告書等の虚偽記載に基づく責任について,消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 ( )争点( )(原告らに生じた損害の有無及び範囲)について 【原告らの主張】ア原告らによる西武鉄道株式の取得等について原告らは,いずれも,被告西武鉄道が有価証券報告書等の虚偽記載を公表した平成16年10月13日以前に,東京証券取引所市場第1部に上場されていた西武鉄道株式を取得した者である。原告らは,①別紙損害等一覧表「持ち株数」欄記載の数量の西武鉄道株式を「取得時期」欄記載の,日に「取得価格」欄記載の価格(1株当たり)で買い付けて購入し,②,同表「売却時期」欄に「保有」と記載された取得株式については,これに代わり本件口頭弁論終結時点で同一数量の西武ホールディングス株式を保有し(以下,取得した西武鉄道株式に代わり西武ホールディングス株式を保有する原告らを「保有原告ら」という,③同表「売却時期」欄に年。)月日が記載された取得株式については,当該年月日に「売却価格」欄記載の価格(1株当たり)で売却した(以下,取得した西武鉄道株式を売却した原告らを「処分原告ら」という。なお,同一原告が保有原告らにも処分原告らにも含まれることがある。 。)イ原告らの被った損害について(ア)主位的主張原告らは,被告西武鉄道が有価証券報告書等の虚偽記載を公表した平成16年10月13日以前に西武鉄道株式を取得したが,当該虚偽記載をしてその訂正報告書を提出しないという被告西武鉄道らの違法行為がなければ,本来は上場を維持し得ない株式である西武鉄道株式を対価を支払ってまで取得することはなかったから,西武鉄道株式を取得させられたこと自体が原告らの被った損害である。したがって,原告らが西武鉄道株式取得の対価として支出した取得価格全額が損害額である(西武 支払ってまで取得することはなかったから,西武鉄道株式を取得させられたこと自体が原告らの被った損害である。したがって,原告らが西武鉄道株式取得の対価として支出した取得価格全額が損害額である(西武鉄道株式の1株当たりの取得価格に取得株式数を乗じた額。別紙損害等一覧表「損害額(①」欄に記載のとおり。 ))(イ)予備的主張1原告らは,被告西武鉄道の有価証券報告書等に虚偽記載をしてその訂正報告書を提出しないという被告西武鉄道らの違法行為によって,本来は上場を維持し得ない株式である西武鉄道株式を上場株式として上場プレミアが付加された対価で取得させられたから,上場プレミアとしての価値相当部分が原告らが被った損害である。そして,損害額である上場プレミアとしての価値相当分は,以下のとおり,①原告らの西武鉄道株式の取得価格から取得時点での本来あるべき価格(当該虚偽記載がなか)(,,ったと仮定した場合の価格である想定価格を控除するか下記abc,②当該虚偽記載の公表前後における市場価格の変動から直接推定)する方法(下記d,e,f)により算出することができる。 a(取得価格-0円)×取得株式数市場で売買することができない株式は無価値であるから,原告らの取得価格自体が上場プレミアの額である。 b(取得価格-44円又は48円)×取得株式数取得価格から,西武鉄道株式を国税庁の財産評価基本通達等に基づき配当還元方式で評価した額(1株44円又は48円)を控除した額が上場プレミアの額である。 c(取得価格-268円)×取得株式数取得価格から,有価証券報告書等の虚偽記載の公表以降の底値である1株268円(上場廃止決定日の終値)を控除した額が上場プレミアの額である。 d(1081円-268円=813円)×取得株式数有価証券報告書等の虚偽記 証券報告書等の虚偽記載の公表以降の底値である1株268円(上場廃止決定日の終値)を控除した額が上場プレミアの額である。 d(1081円-268円=813円)×取得株式数有価証券報告書等の虚偽記載の公表直前の価格(1株1081円)から,当該公表以降の底値である1株268円までの下落額(1株813円)が上場プレミアの額である。 e(取得価格×0.752)×取得株式数取得価格に,有価証券報告書等の虚偽記載の公表直前の価格(1株1081円)から当該公表以降の底値である1株268円までの下落率(813円÷1081円=0.752)を乗じた額が上場プレミアの額である。 f(1141円-533円=608円)×取得株式数平成16年法律第97号による改正後の証券取引法21条の2第2項を類推適用し,西武鉄道株式について,有価証券報告書等の虚偽記載の公表前1か月間の市場価格の平均額1141円から当該公表後1か月間の市場価格の平均額533円を控除した額(608円)が上場プレミアの額である。 (ウ)予備的主張2原告らは,平成16年10月13日の被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載の発覚前に,少なくとも1株1081円(同日の終値)の対価を支払って西武鉄道株式を取得したが,当該虚偽記載をしたという被告西武鉄道らの違法行為の結果,その公表後に株価が大幅に下落して上場廃止となったから,同日の虚偽記載の公表後の価格の下落分が損害である。 そして,保有原告らにおいては西武鉄道株式の同日の終値1株1081円と本件口頭弁論終結時の価格との差額(この額の具体的主張はな。),,いが処分原告らにおいては1株1081円と売却価格との差額がそれぞれ1株当たりの損害額となる。 (エ)弁護士費用(主位的主張,予備的主張1及び同2に共通)原告らは,弁護士である原 。),,いが処分原告らにおいては1株1081円と売却価格との差額がそれぞれ1株当たりの損害額となる。 (エ)弁護士費用(主位的主張,予備的主張1及び同2に共通)原告らは,弁護士である原告ら訴訟代理人に委任して本件訴訟の提起を余儀なくされたので,そのことによる弁護士費用相当額(別紙損害等一覧表「損害額(②」欄記載のとおり)の損害を被った。 )(オ)まとめしたがって,原告らが,被告らに対して支払を求める損害賠償金の額は,別紙損害等一覧表「請求額(①+②」欄の損害賠償金(主位的主)張に基づき計算された額)である。 【被告ら共通の反論】ア主位的主張に対する反論西武鉄道株式は,東京証券取引所の裁量判断によって上場廃止になったものであり,昭和59年4月1日以降本来上場を維持し得ない株式であったわけではない。西武鉄道株式は,平成16年12月17日に上場廃止となるまで市場で自由に売買ができたから,原告らは出捐に見合った株式を取得している。また,原告らが主張するように,西武鉄道株式を取得したこと自体が損害であり,対価として支出した取得価格全額が損害額であるとすると,その後に売却して代金を得たことや現在の株式保有による利益が一切考慮されないことになるし,原告らが負担すべき虚偽記載公表までの株価の値下がり分までも損害額に含まれることになって不当である。 イ予備的主張1に対する反論西武鉄道株式は東京証券取引所の裁量による異例な判断で上場廃止に至ったのであるから,本来は上場を維持し得ない株式であることを前提に上場プレミアという取得価格との差額が損害であるという予備的主張1はその前提を欠き失当である。被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載はその公表前後で同社の企業価値に何らの影響を与えていないこと,西武鉄道株式は上場廃止後においても が損害であるという予備的主張1はその前提を欠き失当である。被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載はその公表前後で同社の企業価値に何らの影響を与えていないこと,西武鉄道株式は上場廃止後においても1株919円で取引されていたこと,西武ホールディングス株式は1株1175円で単元未満株式の買取りが行われていること,当該虚偽記載の公表直前の株価が1株1081円であったことに照らすと,原告らが西武鉄道株式を取得した時点における想定価格と原告らの取得価格との間に差額は存しないから,原告らの予備的主張1は失当である。 ウ予備的主張2に対する反論株価の下落は株主が本来負担すべきリスクであるし,有価証券報告書等の虚偽記載公表後の株価の下落は,当該公表前後で企業価値に変動がない以上一過性の下落に過ぎず,原告らが株価の下落で損害を被ったとはいえない。また,西武ホールディングス株式の1株当たりの価格は1081円を上回っており,保有原告らには損失が生じていない。処分原告らが,西武鉄道株式を売却して損失が確定したのは自らの投資判断に基づくものであり,被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載によって売却を強いられたというものではないから,当該虚偽記載と処分原告らが売却によって被った損失との間には相当因果関係は認められない。 東京証券取引所が,有価証券報告書等の株主構成に関する虚偽記載を理由に西武鉄道株式の上場廃止決定をしたのは,極めて異例な政策的,裁量的判断に基づくものであるから,虚偽記載のある有価証券報告書等が提出された平成16年6月までの時点では上場廃止の予見可能性もなく,当該虚偽記載と上場廃止との間には相当因果関係がない。 【被告西武鉄道の反論】会社制度の本質からすると,企業価値を離れた株式価値の減少を観念し,それについて会社が責任を負うとすると,企 能性もなく,当該虚偽記載と上場廃止との間には相当因果関係がない。 【被告西武鉄道の反論】会社制度の本質からすると,企業価値を離れた株式価値の減少を観念し,それについて会社が責任を負うとすると,企業価値の減少が生じるほか,株主間の平等や資本維持の要請を損なうことにもなる。したがって,株主が,株式価値の減少が企業価値の変動と無関係に生じたとして会社に対し損害賠償を求めることはできない。被告西武鉄道の有価証券報告書等に虚偽の記載がされていたのは株主構成部分であって,当該虚偽記載の公表の前後で同社の企業価値には何らの変動もない。よって,原告らの請求は理由がなく,認められるべきではない。 第3当裁判所の判断 争点( )(被告西武鉄道らの違法行為の有無)について ( )前記前提事実( )及び( ),後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の 事実が認められる。 ア西武鉄道株式の東京証券取引所への上場西武鉄道株式は,昭和24年に東京証券取引所に上場された。西武鉄道株式は,昭和36年10月に東京証券取引所が開設する市場が市場第1部と市場第2部に分けられた後の昭和39年5月から昭和40年8月までの間に,月平均売買高が一定基準を下回ったことから市場第2部に指定替えをされたことがあったものの,昭和40年8月以降は,一貫して市場第1部に上場されていた(甲9の72)。 イ被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載(ア)被告西武鉄道は,昭和32年3月期以降に提出した有価証券報告書等において,コクドが所有する西武鉄道株式の数について,コクドが自社名義で所有する株式の数のみを記載してコクドが他人名義で所有する株式(名義株)を除外し,過少に虚偽の記載をしていた。 ,,,すなわち被告西武鉄道は昭和32年3月期の有価証券報告書にはコクドが 社名義で所有する株式の数のみを記載してコクドが他人名義で所有する株式(名義株)を除外し,過少に虚偽の記載をしていた。 ,,,すなわち被告西武鉄道は昭和32年3月期の有価証券報告書にはコクドが所有する西武鉄道株式の数としてコクドが自社名義で所有していた30万9600株(発行済株式総数439万9440株の7.04%)のみを記載していた。しかし,コクドが当時所有していた西武鉄道株式は,自社名義で所有していたもののほか,個人名義で所有していたもの(名義株)が322万1203株あり,自社名義で所有する株式と名義株を併せてコクドが所有する西武鉄道株式の数は353万0803株(発行済株式総数の80.26%)に達していた。被告西武鉄道は,,,それ以降も平成16年3月期まで提出した有価証券報告書等においてコクドが所有する西武鉄道株式の数を過少に記載することを継続した。 コクドが実際に所有する西武鉄道株式が発行済株式総数に占める割合は,名義株を含めると昭和32年3月末から平成13年3月末まで一貫,。 して70%以上であり昭和16年3月末まででも64%を超えていたところが,被告西武鉄道が有価証券報告書に記載したコクドが所有する株式の数は,名義株の数を除いていたために,昭和59年3月期までは発行済株式総数の40%未満であり,昭和60年3月期から平成16年3月期までも48.77%を超えることはなかった(甲1,2)。 (イ)また,被告西武鉄道は,平成12年3月期から平成16年3月期までに提出した有価証券報告書等においても,被告プリンスホテルが所有する西武鉄道株式の数について,被告プリンスホテルが自社名義で所有する株式の数のみを記載し,被告プリンスホテルが他人名義で所有する()。 ,株式名義株を除外することにより虚偽の記載をしていたすな 鉄道株式の数について,被告プリンスホテルが自社名義で所有する株式の数のみを記載し,被告プリンスホテルが他人名義で所有する()。 ,株式名義株を除外することにより虚偽の記載をしていたすなわち被告西武鉄道が平成12年3月期の有価証券報告書に記載した,被告プリンスホテルが所有する西武鉄道株式の数は,225万2000株で発行済株式総数の0.52%にすぎなかったが,被告プリンスホテルが当時個人名義で所有していた株式(名義株)は397万株あり,自社名義で所有する株式と名義株を併せると被告プリンスホテルが所有する西武鉄道株式の数は622万2000株(発行済株式総数の1.44%)に達していた。被告西武鉄道は,それ以降も平成16年3月期まで,提出した有価証券報告書等において,被告プリンスホテルについて,所有する西武鉄道株式の数から名義株を除いて過少に記載し,又は大株主としての株式所有状況を記載しないことを継続した(甲1,2)。 (ウ)東京証券取引所は,昭和57年10月1日,株券上場廃止基準を改正して,少数特定者持株数(所有株式数の多い順に10名の株主が所有する株式及び役員が所有する株式の総数)が上場株式数の80%を超えている場合において,所定の猶予期間内(審査対象決算期の翌日から1年以内。ただし,制定直後は経過措置により3年以内)に80%以下にならないときには上場を廃止するという少数特定者持株数基準を設けた。しかし,被告西武鉄道は,上記のようにコクドが所有する西武鉄道株式(平成12年3月期からは被告プリンスホテルが所有する西武鉄道株式の数も含む)から名義株の数を除いて有価証券報告書等を記載し。 ていたため,実際には,少数特定者持株数は,少数特定者持株数基準が設けられる前(遅くとも昭和32年)はもちろん,同基準が設けられた後も平成1 含む)から名義株の数を除いて有価証券報告書等を記載し。 ていたため,実際には,少数特定者持株数は,少数特定者持株数基準が設けられる前(遅くとも昭和32年)はもちろん,同基準が設けられた後も平成16年3月末まで,一貫して上場株式数の80%を超えていた一方で,有価証券報告書等の記載に基づき計算した場合には常に80%を下回っていた(甲1,2,乙イ1,弁論の全趣旨)。 ウ名義株の取扱い及び有価証券報告書等の虚偽記載の経緯(ア)コクドは,遅くとも昭和32年までには,自社名義のほか,個人名義で西武鉄道株式(名義株)を所有するようになり,被告西武鉄道は,そのころまでに,株主の管理上,一般の株式をA株と,コクドが所有す。 ,る名義株をB株と区別するようになった被告西武鉄道総務部株式課は有価証券報告書においてコクドが所有する株式数から除外しているB株(名義株)の存在が明らかにならないように,一般の株主等も閲覧する株主名簿には,株式担当者のみがA株とB株の区別が分かるような記号を記載していた。また,同課は,毎年,株主総会の定足数を満たす等のため,名義株の名義人の委任状を作成して被告西武鉄道あてに郵送していたほか,実際にはコクドに支払われている名義株への配当金が名義上の株主に支払われているように装うために名義株の名義人(約2000人)の配当金領収証を作成した上で,コクドの株式担当者に当該個人名義の押印を依頼する作業を行っていた。そして,同課は,昭和43,4,,4年ころにはコクドの株式担当者から個人名義の印鑑の引渡しを受けその後は,同課において委任状や配当金領収証の押印まで行うようになった(甲9の30及び64)。 (イ)コクドは,昭和32年当時,名義株を含む所有する西武鉄道株式の,,株券をコクドの広尾分室と呼ばれていたEの事務所で保管 や配当金領収証の押印まで行うようになった(甲9の30及び64)。 (イ)コクドは,昭和32年当時,名義株を含む所有する西武鉄道株式の,,株券をコクドの広尾分室と呼ばれていたEの事務所で保管していたが同人が亡くなった後の昭和40年からは,当該株券をコクドの原宿本社で保管,管理するようになり,コクドの社員であったFが,専ら,そのころから,名義株を含めたコクド所有の西武鉄道株式に係る事務を担当するようになった。Fは,昭和43,44年ころには,名義株の状況を正確に把握するため,被告西武鉄道の担当者から名義株の名義人一覧表の交付を受け,これに基づき,名義人ごとに総株数と券種ごとの株券数を把握する名寄せ作業を行い,その後は,名義株に係る株券の出入りを株券受払帳を作成して記録するようになった(甲1,9の30)。 コクドは,名義株を含め所有する西武鉄道株式に係る株券を原宿本社の地下金庫に保管していたが,昭和45,46年ころ,その管理態勢を厳格にし,金庫の鍵だけでなく,金庫に至るまでの倉庫,書庫,金庫室の鍵を別々の者に保管させるなどして,株券の管理を担当するFだけではなく,総務課長,総務部長,財務部長,秘書課長,そして,コクドの代表取締役社長であった被告Aの5人がそろわなければ地下金庫を解錠できないようにした。その後,コクドにおいては,名義株を売却するなどして西武鉄道株式に係る株券の出し入れをする場合には,必ず,地下金庫の鍵を保管していた被告Aが立ち会うようになった(甲9の30。 及び32)(ウ)被告Aは,被告西武鉄道の取締役に就任する直前の昭和35年3月に西武鉄道株式2万株の名義上の株主となったが,その際,被告Aは何ら取得のための資金を負担せず,コクドが実質的に所有していた西武鉄道株式の名義人となっただけであった。その後も,被告Aが 和35年3月に西武鉄道株式2万株の名義上の株主となったが,その際,被告Aは何ら取得のための資金を負担せず,コクドが実質的に所有していた西武鉄道株式の名義人となっただけであった。その後も,被告Aが名義人となった西武鉄道株式は新株割当により逐次増加し,被告西武鉄道の代表取締役社長に就任する直前の昭和48年10月には54万株に,昭和57年10月には81万株に増加しているが,被告Aは,これらの株式はコクドが所有するものであることを認識しており,これらの株式については配当金も受領していなかった。したがって,被告Aは,遅くとも昭和35年には名義株の存在を認識していたと推認することができる甲,。(9の73及び74)被告Aは,被告西武鉄道の代表取締役社長に就任して間もない昭和48年11月ころに,被告西武鉄道がその提出する有価証券報告書にコクドの所有する西武鉄道株式の数を過少に記載していることを知った。被告Aは,名義株が発生した理由までは承知していなかったものの,西武鉄道株式の過半数を超える株式をコクドが所有していることを公表すると,非上場会社であるコクドが被告西武鉄道の親会社であることが世間に明らかになり,金融機関の対応上もよくないと考えた。そこで,被告Aは,それまでと同様に,コクドが所有する名義株の存在を公表しないという判断をし,被告西武鉄道の有価証券報告書にコクドが所有する西武鉄道株式の数について真実を記載するよう指示をしないことにした。 そして,被告Aは,被告西武鉄道の代表取締役に就任してしばらくは回覧を受けていた有価証券報告書について,回覧の必要がない旨を指示して,昭和49年下期(同年10月1日ないし昭和50年3月31日)の有価証券報告書からは,その回覧を受けないようになった。また,被告Aは,被告西武鉄道の代表取締役社長として 回覧の必要がない旨を指示して,昭和49年下期(同年10月1日ないし昭和50年3月31日)の有価証券報告書からは,その回覧を受けないようになった。また,被告Aは,被告西武鉄道の代表取締役社長として,毎年6月に開催されていた同社の定時株主総会の招集について決裁を行う際,コクドが所有する西武鉄道株式の数が過少に記載されていた営業報告書についても決裁を行っていたが,被告西武鉄道の会長となって上記決裁をしなくなった平成元年1月まで,正確に記載するように指示することはなかった(甲。 9の68,75及び76)被告Aは,昭和49年,コクドが所有する名義株のうち265万4100株が被告西武鉄道の元社長で死亡したGの名義となっていることについて,被告西武鉄道の現社長でもある被告Aの名義になっている名義株が54万株であることと比較してG名義の名義株が不自然に多く(被告西武鉄道の有価証券報告書に記載される役員持株数には,名義株のうち当該役員の名義となっている株式数が記載される扱いになっていた,Gの相続人が権利主張をしてくるおそれがあるとの指摘をFか。)ら受けた。そこで,被告Aは,FからG名義の名義株をコクドの自社名義に書き換えた方がよいとの進言を受けて,Fに対しその実施を指示した。Fは,被告西武鉄道の株式課に連絡して株主名簿上の株主をGからコクドに書き換えさせ,また,被告Aの立会いの下にコクド原宿本社の地下金庫からG名義の株券を出し入れして,被告西武鉄道の株式課に株券の名義も書き換えさせた(甲9の30,64及び73)。 (エ)上記(ウ)のG名義の名義株の名義が書き換えられた後は,被告西武鉄道の発行済株式総数に対するコクドの所有割合(79.64%)及びその内訳(自社名義で所有する株式の数6230万8044株,21. 57%。名義株の数1億6773 の名義が書き換えられた後は,被告西武鉄道の発行済株式総数に対するコクドの所有割合(79.64%)及びその内訳(自社名義で所有する株式の数6230万8044株,21. 57%。名義株の数1億6773万5862株,58.07%)にしばらく変化はなかったところが被告Aが昭和54年Fに対し名。 ,,,,「義株を会社名義に切り替えていったらどうだ。50%を超えてもいいんだから」と言い,コクドが所有する名義株の名義を個人からコクドに。 変更することを指示した。そこで,Fは,被告西武鉄道株式課の担当者に,被告西武鉄道の株主名簿上の名義株の名義を個人からコクドに変更するように連絡した。Fは,当初,50音順に「あ」から始まる名義の株式からコクド名義に変えるように話をした。これに対し,被告西武鉄道の担当者は,当時約2000人いた名義株(被告西武鉄道でのB株)の名義人の数が減少すると,東京証券取引所の市場第1部上場の基準株主数を満たさなくなるおそれがあることを懸念し,各名義人の株の一部だけの名義を書き換えることとし,また,市場や監督当局の目を引いて名義株の存在が発覚することを避けるために,少しずつ名義変更をしていくことにした(甲1,9の30及び64。 。 )その結果,Fから被告西武鉄道総務部株式課への連絡に基づき,昭和55年3月期中から,毎年,名義株についてコクド名義へ被告西武鉄道の株主名簿の書換えが行われた。昭和61年3月末時点では,西武鉄道株式の発行済株式総数(4億3330万4640株)に対するコクドの所有割合は79.64%のままであったものの,その内訳は,自社名義の株が48.31%(2億0933万0859株,名義株が31.3)3%(1億3573万5000株)となった。Fは,被告西武鉄道の有価証券報告書にも記載されているコクド ものの,その内訳は,自社名義の株が48.31%(2億0933万0859株,名義株が31.3)3%(1億3573万5000株)となった。Fは,被告西武鉄道の有価証券報告書にも記載されているコクドの自社名義の西武鉄道株式の数が50%以上になって,公表されている数字上でもコクドが被告西武鉄道の親会社となると,非上場会社であるコクドに対しても財務状況開示の要望が高まる可能性があること等を憂慮した。そこで,Fは,当時のコクドの常務取締役,経理部長,財務部長とも相談の上,昭和61年3月期以降,名義株の名義変更作業を中止した(甲1,9の30,62。 及び64。 )Fは,名義株のコクド名義への書換えについて,昭和54年から最初の3年程度は,その期に何株の名義株をコクド名義に書き換え,名義株,,の割合がどの程度になっているかについてメモを作成し被告Aに対し当該メモを示しながら報告を行っていた。しかし,被告Aは,任せるから特に報告に来なくてよいという態度であったので,Fは,その後は被告Aへの報告を取り止めた(甲9の30)。 名義株のコクド名義への書換えは,当初は,Fが書き換える名義と株数の一覧表を作成してこれを西武鉄道総務部株式課に交付し,被告西武鉄道の株主名簿のみを書き換える形で行われたが,株券の名義はそのままになっていた。そこで,Fは,昭和58年1月ころ,被告Aに対し,名義株の名義をコクドの名義に書き換えてきたが,被告西武鉄道の株主名簿のみ書換えをしただけで株券の名義はそのままになっているので,株券の名義の書換えをする必要がある旨を話し,その了解を得た。その際,被告Aは,Fに対し,株券の名義書換の作業はコクドの本社ではなく,被告西武鉄道の本社で行うように指示した上,名義株に係る株券を毎朝コクド原宿本社の地下金庫から出し入れするために, 解を得た。その際,被告Aは,Fに対し,株券の名義書換の作業はコクドの本社ではなく,被告西武鉄道の本社で行うように指示した上,名義株に係る株券を毎朝コクド原宿本社の地下金庫から出し入れするために,1週間程度,毎朝,地下金庫の解錠に立ち会った(甲9の30及び64)。 (オ)コクドは,上場会社の株式を5%を超えて保有する大株主が大量保有報告書の提出を義務付けられた平成2年に,西武鉄道株式について大量保有報告書を提出した。しかし,コクドは,その所有する西武鉄道株,,式の数を過少に記載して名義株の存在を窺わせないようにしその後も保有割合に一定の変動が生じた場合に提出することが義務付けられている変更報告書にも同じく過少な株式数を記載して提出し,被告西武鉄道が有価証券報告書等の虚偽記載を公表するまで,コクドが実際に所有する西武鉄道株式の数を正確に記載した訂正報告書を提出しなかった甲。 (1,9の21)(カ)Fが名義株のコクド名義への書換えを停止した昭和61年3月期以降は,名義株の数にしばらく変化がなかった。しかし,コクドは,平成7年3月期の決算が経常赤字となって金融機関からの融資枠や借入金利に悪影響が出ることを避けるため,被告Aの了承の下,その所有する西武鉄道株式(名義株を含む)を関係会社へ売却した結果,名義株の数。 は減少を始めた。コクドはその後も関係会社への西武鉄道株式の売却を,,,,行ったが株式に関する業務を担当していたFが直接被告Aに対しコクドの名義株を売却に充てること,コクドの自社名義及びその子会社名義の西武鉄道株式の所有割合が50%を超えないようにしていることを報告したこともあった。また,Fは,コクドの関係会社以外の会社に対し西武鉄道株式の売却を始めた平成12年以降,相対取引で相手方が購入する場合には 株式の所有割合が50%を超えないようにしていることを報告したこともあった。また,Fは,コクドの関係会社以外の会社に対し西武鉄道株式の売却を始めた平成12年以降,相対取引で相手方が購入する場合には,コクドの自社名義の株式を売った上で,その分の名義株をコクド名義に書き換えるという処理をしていた。これに対し,被告Aは,Fに対し,西武鉄道株式を市場で売却するよう指示し,Fは,相対取引でないと名義株を減らせないと反論したこともあった(甲9。 の30,32及び33)(キ)コクドの代表取締役専務で,名義株の存在や被告西武鉄道による有価証券報告書等の虚偽記載を認識していたHは,平成15年春ころ,新聞報道で株券不発行制度の5年以内の導入が検討されていることを知った。Hは,名義株については,同制度の導入後に株主が開設すべき振替口座を開設することができないことから,同制度の導入によって,コクドと被告西武鉄道は名義株の存在やこれまでの有価証券報告書等の虚偽記載を明らかにせざるを得なくなると判断した。そこで,Hは,同年5月ころ,被告Aに対し,株券不発行制度の導入前に名義株をなくすべきことを進言したが,被告Aは「あと5年あるんだろう。いざとなった,ら俺が売ってやる」と述べて,コクドが所有する名義株の売却に消極。 的な態度を示した。しかし,Hは,被告西武鉄道に働きかけ,同年8月ころから数度にわたって,コクドからHら,被告西武鉄道から株式業務を担当する常務取締役ら,以前から名義株の存在を認識している者だけが出席する勉強会を開催した(コクドや被告西武鉄道内でも,名義株の存在は,株式担当者や配当金処理の担当者ら限られた者しか認識していなかった。当該勉強会の場において,株券不発行制度の導入により。)名義株は存在し得なくなるが,名義株をコクド名義に名義書換す 株の存在は,株式担当者や配当金処理の担当者ら限られた者しか認識していなかった。当該勉強会の場において,株券不発行制度の導入により。)名義株は存在し得なくなるが,名義株をコクド名義に名義書換すると,①少数特定者持株数基準に該当し西武鉄道株式が上場廃止となる,②以前の有価証券報告書及び大量保有報告書の虚偽記載について罰則がある,③コクドが被告西武鉄道の親会社であることが判明するという問題点の指摘や名義株判明以前に少数特定者持株数基準所定の所有割合8,(0%超)に長期間抵触している被告西武鉄道には,同基準所定の猶予期間(1年間)は与えられないであろうという意見も出され,名義株の存在を公表せずに売却することが必要であるという結論が示された。そこで,Hは,それまでも数回被告Aに対して名義株の売却を進言していたが,平成16年5月25日,改めて,被告Aに対し,上記の勉強会での結論の内容を伝えた。これに対し,被告Aは,同年7月の参議院選挙が終わって株価が上がれば売却すればよいと述べ,速やかな売却には賛成しなかった(甲9の8,9及び37)。 (ク)結局,被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載及び名義株の存在は,平成16年8月20日の被告西武鉄道の取締役会において監査役がこれを指摘したことを契機に,被告西武鉄道及びコクド内部で公然と問題とされるようになり,被告西武鉄道が同年10月13日にこれを公表するに至った(前記前提事実( )イ,甲9の10ないし13,38及 び79。 )( )有価証券報告書等の虚偽記載と不法行為の成立要件としての違法行為の 成否ア有価証券の投資判断に必要な情報の開示は,投資家の合理的な投資判断を可能にさせ,上場有価証券の公正な価格形成及び円滑な流通を確保する上で必要不可欠である。有価証券報告書等は,有価 為の 成否ア有価証券の投資判断に必要な情報の開示は,投資家の合理的な投資判断を可能にさせ,上場有価証券の公正な価格形成及び円滑な流通を確保する上で必要不可欠である。有価証券報告書等は,有価証券の発行会社が当該会社や当該有価証券に関する所定の事項を記載して提出し,その後に所定(,,の期間公衆の縦覧に供せられるものである旧証取法24条24条の525条。流通市場において有価証券の売買を行う投資家にとって,有価)証券報告書等は,容易かつ正確に発行会社や有価証券に関する情報を入手することができる手段であるし,個々の一般投資家がこれに記載された情報を直接利用しなくても,当該記載によって公表された情報は市場の株価に反映される。このため,有価証券報告書等の重要な事項について虚偽の記載をすることは,有価証券の流通市場における公正な価格形成及び円滑な取引を害し,個々の投資家の利益を害する危険性の大きい行為といわなければならない。したがって,有価証券報告書等を提出する会社及び当該会社の取締役は,有価証券報告書等の提出に当たり,その重要な事項について虚偽の記載がないように配慮すべき注意義務があり,これを怠ったために当該重要な事項に虚偽の記載があり,それにより当該会社が発行する有価証券を取得した者に損害が生じた場合には,当該会社及び当該取締役は,当該取得者が記載が虚偽であることを認識しながら当該有価証券を取得した等の特段の事情がない限り,当該損害について不法行為による賠償責任を負うというべきである。 イ一般的に,株式市場においては,会社の経営に参加しようとして株式を取得しようとする投資家もいるので,株式の発行会社が他の会社の子会社かどうかは,経営参加を目的として市場に参入する投資家の投資判断にとって極めて重要な要素となる。また,株価は市場 しようとして株式を取得しようとする投資家もいるので,株式の発行会社が他の会社の子会社かどうかは,経営参加を目的として市場に参入する投資家の投資判断にとって極めて重要な要素となる。また,株価は市場における株式の需給関係で形成されるので,市場における株式の流動性も投資家が投資判断において考慮する重要な要素であるといわなければならない。 ところが,被告西武鉄道は,昭和32年3月期から平成16年3月期までに提出した有価証券報告書等において,コクドが所有する西武鉄道株式の数として,コクドが自社名義で所有する株式数のみ記載し,個人名義で。 ,,実質的に所有する名義株の数を除外して記載していたその結果真実は昭和32年3月期から平成16年3月期までの間,継続して,コクドが被告西武鉄道の発行済株式総数の過半数を有していた親会社であったにもかかわらず,有価証券報告書等の上ではコクドの所有割合は50%を下回って記載されていた(上記( )イ(ア))。 また,東京証券取引所が,昭和57年10月1日に,株券上場廃止基準として少数特定者持株数基準を設けた後も,名義株をコクドが所有する西武鉄道株式に含めて正しく算定すれば,西武鉄道株式は少数特定者持株数が上場株式数の80%を超えて流動性が著しく低い状況が続いていた。ところが,被告西武鉄道は,コクドが所有する西武鉄道株式の数を過少に有価証券報告書等に記載していたため,少数特定者持株数の割合が80%を超えていることを隠蔽する状況となっていた(上記( )イ(ウ))。 以上のような被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載は,被告西武鉄道の被支配状況や西武鉄道株式の流動性について投資家に重大な誤解を。 ,,生じさせるおそれがあるといわねばならないとりわけ被告西武鉄道が少数特定者持株数基準の施行後に,コクド 記載は,被告西武鉄道の被支配状況や西武鉄道株式の流動性について投資家に重大な誤解を。 ,,生じさせるおそれがあるといわねばならないとりわけ被告西武鉄道が少数特定者持株数基準の施行後に,コクドが所有する西武鉄道株式の数について有価証券報告書等に真実を記載していれば,同基準所定の猶予期間(経過措置により同基準が設けられた後の決算期である昭和58年3月期から3年以内。上記( )イ(ウ) )も昭和61年3月末には経過して,西 )武鉄道株式は上場廃止となったはずであって,そのような事項についての虚偽記載が,投資家の投資判断に重大な影響を与える重要な事項であることは明らかであるというべきである。そうすると,少なくとも,株券上場廃止基準としての少数特定者持株数基準が設けられた昭和57年10月1日以降に被告西武鉄道が提出した有価証券報告書等についてされた,コクドが所有する西武鉄道株式の数の過少な記載は,重要な事項に虚偽記載をしたものというべきであり,原告らが不法行為の成立要件としての違法行為であると主張する昭和59年4月1日以降に被告西武鉄道が提出した有価証券報告書等の虚偽記載は,重要な事項についての虚偽記載をしたものに当たると認めるのが相当である。 ウしたがって,被告西武鉄道が,昭和59年4月1日以降に提出した有価証券報告書等において,被告西武鉄道及びその取締役が注意義務を怠ったために,コクドが所有する西武鉄道株式の数という重要な事項に虚偽の記載があり,それにより西武鉄道株式を取得した者に損害が生じたと認められる場合には,被告西武鉄道及び当該取締役は,特段の事情がない限り,当該損害について不法行為による賠償責任を負うというべきである。 エなお,原告らは,被告西武鉄道らが有価証券報告書等の虚偽記載を認識していたことに加え,西武鉄道株式 取締役は,特段の事情がない限り,当該損害について不法行為による賠償責任を負うというべきである。 エなお,原告らは,被告西武鉄道らが有価証券報告書等の虚偽記載を認識していたことに加え,西武鉄道株式が株券上場廃止基準に抵触する状態にあって本来上場を維持できない株式か上場廃止の高度の蓋然性を有する株式であり,投資家に損害を生じさせることを予見することが可能であったことをも主張する。しかし,被告西武鉄道らにつき不法行為の成立要件としての違法行為があったと認められるためには,上記アないしウに述べたとおり,被告西武鉄道らが注意義務を怠ったために,コクドが所有する西武鉄道株式の数という有価証券報告書等の重要な事項に虚偽の記載がされたことで足りる。したがって,原告らとしては,被告西武鉄道らに虚偽記載の認識又はその可能性があったことを主張立証すれば足りるのであって,これに加えて,被告西武鉄道らに投資家が被る具体的な損害に対する予見可能性があったことまで主張立証する必要はないというべきである(ただし,被告西武鉄道らの不法行為の成立要件としての違法行為があったと認められたとしても,原告ら主張の損害を被告西武鉄道らに帰責させることができるかどうかは,当該損害及び相当因果関係の有無の判断にかかることはいうまでもない。 。)( )被告Aの不法行為責任の有無について アまず,最初に,被告西武鉄道及びコクドの取締役,代表取締役を長年にわたって務めていた被告Aの不法行為責任の有無について検討する。 前記( )の認定事実によれば,被告Aは,①昭和35年に被告西武鉄道 の取締役に就任したころ既にコクドが所有する名義株の存在を認識しており,昭和48年11月に被告西武鉄道の代表取締役社長に就任して間もないころには,コクドは西武鉄道株式の過半数を所有していたにも の取締役に就任したころ既にコクドが所有する名義株の存在を認識しており,昭和48年11月に被告西武鉄道の代表取締役社長に就任して間もないころには,コクドは西武鉄道株式の過半数を所有していたにもかかわらず,被告西武鉄道がコクドの所有する西武鉄道株式から名義株を除外して過少に記載していることを認識したこと,②それにもかかわらず,コクドが被告西武鉄道の親会社であることが判明することによる金融機関への対応を懸念するなどして,真実を有価証券報告書に記載するよう指示しないことに決め,その後,有価証券報告書の回覧すら不要としたこと,③昭和45年ころ以降は名義株を含むコクド所有の西武鉄道株式の株券を保管するコクド本社の地下金庫の管理態勢を強化して必ず自らがその出し入れに立ち会うようにするなど,コクドが所有する西武鉄道株式の管理に極めて重大な関心を有していたことが推認できること,④昭和49年にはG名義の名義株を,昭和54年にはその他の名義株を,それぞれコクドの自社名義に書き換えることをコクドの株式担当者であったFに指示し,その結果についても報告を受けていたこと,⑤平成7年3月期から,コクドのいわゆる益出しのための西武鉄道株式の売却を認めて実施させたが,その過程で,名義株も売却に充てることやコクドの自社名義及びその子会社名義の西武鉄道株式の所有割合が50%にならないようにしているとの報告を受けていたこと,⑥平成15年5月ころ以降数回にわたりコクドの代表取締役専務のHから名義株の問題を指摘されていたことが認められる。 イ上記アの事実に照らせば,被告Aは,被告西武鉄道の代表取締役社長に就任した昭和48年11月ころから被告西武鉄道が有価証券報告書等の虚偽記載を公表した平成16年10月13日までの間,被告西武鉄道が有価証券報告書等においてコクドが所有す 告西武鉄道の代表取締役社長に就任した昭和48年11月ころから被告西武鉄道が有価証券報告書等の虚偽記載を公表した平成16年10月13日までの間,被告西武鉄道が有価証券報告書等においてコクドが所有する西武鉄道株式の数を名義株を除外して過少に記載していることや,コクドが実際は被告西武鉄道の発行済株式総数の過半数を超える株式を所有していることを認識していたものと優に推認することができる。 そうすると,被告Aは,被告西武鉄道の代表取締役として有価証券報告書等の提出に当たりその重要な事項について虚偽の記載がないように配慮すべき注意義務を負っていたにもかかわらず,これを怠ったために,被告西武鉄道が昭和59年4月1日以降に提出した同年3月期の有価証券報告書から平成16年3月期中間期の半期報告書(平成15年12月に提出。 甲9の6)までの有価証券報告書等において,コクドが所有する西武鉄道株式の数という重要な事項について虚偽の記載を続けていたというべきである。したがって,被告Aは,上記有価証券報告書等の虚偽記載により西武鉄道株式を取得した者に損害が生じたと認められる場合には,特段の事情がない限り,当該損害について不法行為による賠償責任を負うというべきところ,本件全証拠を検討するも,特段の事情の存在を認めるに足りる証拠は存在しない。ただし,被告Aは平成16年3月期の有価証券報告書が提出された同年6月には被告西武鉄道の代表取締役及び取締役の地位になかったから(前記前提事実( )イ(ウ) ,当該有価証券報告書の虚偽記 )載に限っては,被告西武鉄道の代表取締役としての注意義務違反を理由とする不法行為責任は負わないというべきである。 ウ被告Aは,昭和32年10月から平成16年10月13日までは,コクドの代表取締役の地位にもあり(上記前提事実( )イ(ウ) ての注意義務違反を理由とする不法行為責任は負わないというべきである。 ウ被告Aは,昭和32年10月から平成16年10月13日までは,コクドの代表取締役の地位にもあり(上記前提事実( )イ(ウ) ,被告Aは, )昭和35年ころには名義株の存在を認識し,昭和48年11月ころには被告西武鉄道が有価証券報告書に記載するコクドの所有する西武鉄道株式の数から名義株を除外してこれを過少に虚偽の記載をしていることを認識し(上記ア,また,その後も,コクドの株式担当者であったFの報告によ)って名義株の所有割合やその管理状況等も把握していた(上記( )ウ(エ) 。 )それにもかかわらず,被告Aは,被告西武鉄道による有価証券報告書等の虚偽記載の前提である,コクドが名義株として西武鉄道株式を大量に所有しているという状態を全面的に解消したり公表したりするように指示せず,名義株の維持,管理を容認していた(上記( )ウ(エ)ないし(キ) 。 )加えて,平成2年の証券取引法の改正により大量保有報告書の制度が導入されてからは,コクドは大量保有報告書及び変更報告書に保有する西武鉄道株式の数を過少に記載して提出し,その後も訂正報告書を提出せず,名義株の存在を公表しなかった(上記( )ウ(オ) 。このように,被告Aが )コクドの代表取締役として,同社が所有する名義株の存在を公表しなかった行為は,同社の名義株の存在とその不公表が被告西武鉄道による有価証券報告書等の虚偽記載の前提となっていたこと,被告Aが名義株の存在をコクドにおいて公表することを決断し実施すれば被告西武鉄道が有価証券報告書等の虚偽記載を継続することは不可能であったことに照らすと,被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載が西武鉄道株式の取得者との関係で不法行為となる場合においては,被告Aの当 西武鉄道が有価証券報告書等の虚偽記載を継続することは不可能であったことに照らすと,被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載が西武鉄道株式の取得者との関係で不法行為となる場合においては,被告Aの当該行為も,当該取得者との関係で,被告西武鉄道の不法行為と共同の不法行為(民法719条1項前段)を構成するというべきである。 エ小括以上によれば,被告Aは,昭和59年4月1日から平成16年10月13日までの間に提出された被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載について不法行為責任を負う。 ( )被告Bの不法行為責任の有無について ア前記前提事実( )イ(エ)及び後掲の証拠によれば,以下の事実が認めら れる。 被告Bは,コクド勤務を経て,昭和48年11月被告Aが被告西武鉄道の代表取締役社長となるのに併せて被告西武鉄道に入社し,秘書室長,総務部長を経て,昭和51年6月に取締役に就任した。被告Bは,取締役就,,,任に際し代金を支払うこともなくその後に配当金を受けることもなく西武鉄道株式2万株の名義人とされたことから名義株の存在を認識した。 被告Bは,株式課を所管する総務部長に就任して数年した昭和50年代の前半ごろには,株式課が名義株の管理のために個人印を大量にコクドから預かっていること,被告西武鉄道の株主総会に名義株を利用して同社の社員らが動員されていることを知った。また,被告Bは,被告西武鉄道の株主総会の時期になると,被告Aが「株は大部分あるんだから総会なんか心配することはねえ」などとコクドが西武鉄道株式の大部分を所有していることを前提とした発言をしていたのに,公表されていたコクドの所有割合が少なかったことなどから,多数の名義株が存在することを知り,被告西武鉄道の有価証券報告書等においてはコクドが所有する西武鉄道株式について名義 した発言をしていたのに,公表されていたコクドの所有割合が少なかったことなどから,多数の名義株が存在することを知り,被告西武鉄道の有価証券報告書等においてはコクドが所有する西武鉄道株式について名義株の存在を隠した記載がされていることに気が付いた。しかし,被告Bは,コクドが名義株を利用して西武鉄道株式の大半を所有し,被告Aがそのことを背景として被告西武鉄道の経営を支配していたことから,取締役総務部長の地位にあったころはもちろん,昭和59年6月に常務取締役に,平成8年6月に代表取締役社長に就任した後も,平成16年4月8日に代表取締役を辞任するまで(取締役も同月14日に辞任した,。)株式課に対しては名義株を含むコクドが所有する西武鉄道株式についてはコクドの言うとおりにするように指示し,真実と異なる記載がされていることを知りながら有価証券報告書等を提出させていた(甲9の66ない。 し70)イ上記アの認定事実によれば,被告Bは,被告西武鉄道が有価証券報告書等にコクドが所有する西武鉄道株式の数を過少に記載していることを認識していたのであるから,同社の取締役として取締役会の招集を請求してその是正を促すなどして,また,平成8年6月から平成16年4月までの間は代表取締役として,有価証券報告書等の重要な事項について虚偽の記載がないように配慮すべき注意義務を負っていたというべきである。それにもかかわらず,被告Bが当該注意義務を怠ったため,被告西武鉄道は昭和59年4月1日以降に提出した同年3月期の有価証券報告書から平成16年3月期中間期の半期報告書までの有価証券報告書等において,コクドが所有する西武鉄道株式の数という重要な事項について虚偽の記載を続けた。そうだとすると,被告Bは,上記有価証券報告書等の虚偽記載により西武鉄道株式を取得した者に損害が 価証券報告書等において,コクドが所有する西武鉄道株式の数という重要な事項について虚偽の記載を続けた。そうだとすると,被告Bは,上記有価証券報告書等の虚偽記載により西武鉄道株式を取得した者に損害が生じたと認められる場合には,特段の事情がない限り,当該損害について不法行為による賠償責任を負うというべきところ,本件全証拠を検討するも,特段の事情の存在を認めるに足りる証拠は存在しない。ただし,被告Bは平成16年3月期の有価証券報告書が提出された同年6月には被告西武鉄道の代表取締役及び取締役の地位になかったから(前記前提事実( )イ(エ) ,当該有価証券報告書の虚偽 )記載に限っては,被告西武鉄道の代表取締役としての注意義務違反を理由とする不法行為責任は負わないというべきである。 ウ小括以上によれば,被告Bは,昭和59年4月1日から平成16年4月14日までに提出された被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載について不法行為責任を負う。 ( )亡Dの不法行為責任の有無について(被告C関係) ア前記前提事実( )イ(オ)及び後掲の証拠によれば,以下の事実が認めら れる。 (ア)亡Dは,運輸省勤務等を経て,平成5年6月被告西武鉄道の常務取締役に就任し,専務取締役を経て,平成16年4月8日代表取締役社長に就任した。亡Dは,平成13年7月には名義株を取り扱っていた総務部株式課を所管する管理本部長に就任していたが,当時の代表取締役社長であった被告Bが,当時の株式課長に対して,亡Dにはコクドの株のことは話す必要がないと指示していたこともあり,代表取締役社長に就任する直前までは,コクドが公表されている以上に西武鉄道株式を所有していることを知らなかった。亡Dは,平成16年4月上旬ころ,当時関連事業部の部長であったIから,コクドは公表されてい 取締役社長に就任する直前までは,コクドが公表されている以上に西武鉄道株式を所有していることを知らなかった。亡Dは,平成16年4月上旬ころ,当時関連事業部の部長であったIから,コクドは公表されている以上の西武鉄道株式を所有しており,実際の所有割合は50%を超えていると思われること,そのことが明らかになると過去に遡って有価証券報告書の訂正が必要になるという話を聞き,はじめて,名義株の存在や有価証券報告書に虚偽記載があることを認識した。亡Dは,同年5月25日ころ,被告西武鉄道の総務部長及び株式の担当をしていた同部次長から,西武鉄道株式には,株主名簿上は個人名義になっているが実際にはコクドが所有する名義株という株式が存在すること,名義株は平成16年3月期で約1億株あること,これが発覚すると,西武鉄道は東京証券取引所の株券上場廃止基準である少数特定者持株数基準所定の所有割合(80%超)に抵触すること,有価証券報告書には名義株分を除いた虚偽の記載をしており証券取引法違反となること等の報告を受けた。亡Dは,上記報告を受けた直後ころ,コクド代表取締役専務であったHから,株券不所持制度が始まれば,名義株の存在が発覚し,西武鉄道株式が株券上場廃止基準に抵触していることが判明するので,それまでに名義株を解消しなければならないという話を聞いた(甲9の34,35,42,5。 4及び66〔資料①-1)〕(イ)しかし,亡Dは,平成16年6月20日ころ,総務部長,総務部次長らと同月中に提出予定の同年3月期の有価証券報告書の記載を名義株,,の存在を反映させたものにするかどうかについて話し合い従来どおり有価証券報告書には,名義株分を記載せず,株主総会が終わってから検討するという判断をした。その結果,被告西武鉄道は,平成16年6月29日,亡Dの判断に基づ のにするかどうかについて話し合い従来どおり有価証券報告書には,名義株分を記載せず,株主総会が終わってから検討するという判断をした。その結果,被告西武鉄道は,平成16年6月29日,亡Dの判断に基づき,それまでと同様,コクドの所有する西武鉄道株式の数を過少に記載した同年3月期の有価証券報告書を提出した(甲9の35,36,42及び66。 。 )イ(ア)上記ア(ア)の認定事実によれば,亡Dは平成5年6月に被告西武鉄道の常務取締役に就任したものの,代表取締役社長に就任する直前の平成16年4月上旬ころまでは,名義株の存在や有価証券報告書に虚偽記載があることを認識していなかったことが認められる。そうすると,亡Dは平成5年6月から被告西武鉄道の取締役の地位にあったとはいえ,平成16年4月上旬ころまでは,取締役会を招集するなどしてその是正を促す余地はなかったものというべきであって,原告らの主張のうち,平成5年6月以降代表取締役に就任した直前である平成16年4月上旬ころまでの間,取締役としての注意義務違反があるとする部分は,理由がない。 (イ)次に,原告らは,亡Dには被告西武鉄道の代表取締役としての注意義務違反があると主張するので,この点について検討することにする。 上記ア(ア),(イ)の認定事実によれば,亡Dは,①平成16年5月25日ころ,被告西武鉄道の総務部長らから,西武鉄道株式には株主名簿上は個人名義になっているが実際にはコクドが所有する名義株という株式が存在すること,名義株は同年3月期で約1億株あり,これが発覚すると被告西武鉄道は東京証券取引所の株券上場廃止基準である少数特定者持株数の所有割合80%超に抵触すること,有価証券報告書にはコクドが所有する株式数からは名義株分を除外した虚偽記載をしており証券取引法違反となることの報告を受けたこ 株券上場廃止基準である少数特定者持株数の所有割合80%超に抵触すること,有価証券報告書にはコクドが所有する株式数からは名義株分を除外した虚偽記載をしており証券取引法違反となることの報告を受けたこと,②上記報告の直後ころ,コクド代表取締役専務であったHから,株券不所持制度が始まれば名義株の存在が発覚して西武鉄道株式が株券上場廃止基準に抵触していることが判明するからそれまでに名義株を解消しなければならないという話を聞いていたこと,③それにもかかわらず,同年6月20日ころ,同年3月期の有価証券報告書には,従来どおり,コクドが所有する西武鉄道株式として名義株分は記載しないこととし,コクドの所有する西武鉄道株式の数を過少に記載した同月期の有価証券報告書を同年6月29日に提出したことが認められる。 そうすると,亡Dは,被告西武鉄道の代表取締役として有価証券報告書等の重要な事項について虚偽の記載がないように配慮すべき注意義務を負っていたにもかかわらず,当該注意義務を怠ったため,同社が提出した平成16年3月期の有価証券報告書の重要な事項について虚偽の記載をしたものであることは明らかである。したがって,亡Dは,当該虚偽記載により西武鉄道株式を取得した者に損害が生じたと認められる場合には,特段の事情がない限り,当該損害について不法行為による賠償責任を負うというべきところ,本件全証拠を検討するも,特段の事情の存在を認めるに足りる証拠は存在しない。 ウところで,被告Cは亡Dに対する不法行為に基づく損害賠償請求は権利濫用である旨主張する。しかし,上記イ(イ)に述べたとおり,亡Dが不法行為の成立要件である違法行為を行ったことは明らかであって,これによって生じた損害について被害者がその賠償を求めることが権利濫用に当たるとは認められない。また,被告Cは,上場 べたとおり,亡Dが不法行為の成立要件である違法行為を行ったことは明らかであって,これによって生じた損害について被害者がその賠償を求めることが権利濫用に当たるとは認められない。また,被告Cは,上場会社の業績が取締役の過失により悪化して株価が下落するなど全株主が平等に不利益を受けた場合において株主が取締役に対しその責任を追及する方法としては,株主代表訴訟の方法によるべきであって,民法709条に基づき直接取締役に損害賠償を求めることは許されない旨主張する。しかし,原告らは,亡Dが関与して被告西武鉄道が虚偽記載のある有価証券報告書を提出したため,西武鉄道株式を取得した原告らが直接損害を被ったと主張して賠償を求めているのであって,亡Dが違法行為によって被告西武鉄道に損害を与えた結果として間接的に被った損害の賠償を求めているのではないから,被告Cの上記主張はその前提を欠き失当である。 エ小括以上によれば,亡Dの相続人である被告Cは,平成16年6月29日に提出された被告西武鉄道の同年3月期の有価証券報告書の虚偽記載について,同年6月29日以降西武鉄道株式を取得した原告らに対し,不法行為責任を負う。 ( )被告西武鉄道の不法行為責任の有無について ア上記( )で認定した事実及び後掲の証拠によれば,以下の事実が認めら れる。 被告西武鉄道は,同社が提出した昭和32年3月期から平成16年3月期までの有価証券報告書等において,コクドが所有する西武鉄道株式の数について,コクドが自社名義で所有する株式の数のみを記載してコクドが他人名義で所有する株式(名義株)を除外することにより過少に虚偽の記載をしていた。また,被告西武鉄道は,平成12年3月期から平成16年3月期までに提出した有価証券報告書等においては,被告プリンスホテルが所有する西武鉄道株式 義株)を除外することにより過少に虚偽の記載をしていた。また,被告西武鉄道は,平成12年3月期から平成16年3月期までに提出した有価証券報告書等においては,被告プリンスホテルが所有する西武鉄道株式の数についても,被告プリンスホテルが自社名義で所有する株式の数のみを記載し,被告プリンスホテルが他人名義で所有する株式(名義株)を除外することにより虚偽の記載をしていた(上記。 ( )イ(ア)及び(イ)) 被告西武鉄道は,昭和32年ころまでに,株主の管理上,一般の株式を,,A株コクドが所有する名義株をB株として区別して管理するようになり株主名簿には株式担当者のみがA株かB株かが分かる記号を付したり,株主名簿が昭和58年ころに電算化された後はコクドや被告プリンスホテルが所有する名義株には他の一般の株式とは別のコード番号を付して管理す,。 るなどして名義株の存在が担当者以外には知られないように扱っていたそして,被告西武鉄道総務部株式課の担当者は,名義株の株主名簿上の名義書換や株券の名義書換についても,コクドの株式担当者の連絡,指示に従って行っていた(甲1,9の30,56,57及び64)。 被告西武鉄道は,コクドに支払われている名義株への配当金が名義上の株主に支払われているように装うため,かつては個人名義の配当金領収証を作成して個人印の押印まで行ったり,名義株について,毎年株主総会の定足数を満たすように名義人の委任状を作成して被告西武鉄道あてに郵送し,あるいは保管している議決権行使書に個人印を押印して議決権行使個数に算入したりしていた。また,法人税確定申告書に添付する「同族会社の判定に関する明細書」について,税務署への提出用と会計監査用(公認会計士への提出用)の2種類を作成し,コクドの所有株式数について,税務署提出用のものには名義株を 人税確定申告書に添付する「同族会社の判定に関する明細書」について,税務署への提出用と会計監査用(公認会計士への提出用)の2種類を作成し,コクドの所有株式数について,税務署提出用のものには名義株を含めた真実の数を記載していたが,会計監査用のものには名義株分を控除した虚偽の数を記載するなどして,有価証券報告書等においてコクドが所有する西武鉄道株式の数から除外している名義株の存在が明らかにならないようにしていた(上記( )ウ(ア),甲。 1,9の37,58)イ上記アの認定事実に照らせば,被告西武鉄道は,組織的に有価証券報告書等の虚偽記載を行い,その前提となる名義株の存在の隠蔽を行ってきたものということができる。加えて,昭和59年4月1日以降,被告西武鉄道の代表取締役社長であった被告A(平成16年4月14日まで,被告)B(平成8年6月から平成16年4月8日まで)及び亡D(平成16年4月8日から)は,その代表取締役社長の在任中に被告西武鉄道が提出した有価証券報告書等にはコクドが所有する西武鉄道株式の数を過少に虚偽の記載がされていることを承知していたこと,これら3名の被告西武鉄道の代表取締役としての行為も西武鉄道株式を取得した者に対する不法行為の成立要件としての違法行為を構成することは,前示のとおりである。 そうすると,西武鉄道株式の発行者である被告西武鉄道は,有価証券報告書等の提出に当たり,その重要な事項について虚偽の記載がないように配慮すべき注意義務を負っていたにもかかわらず,これを怠り,昭和59年4月1日から平成16年10月13日までに提出した有価証券報告書等の重要な事項に虚偽の記載をしたものというべきである。したがって,有価証券報告書等の虚偽記載により,西武鉄道株式を取得した者に損害が生じた場合には,被告西武鉄道は,特段の事 提出した有価証券報告書等の重要な事項に虚偽の記載をしたものというべきである。したがって,有価証券報告書等の虚偽記載により,西武鉄道株式を取得した者に損害が生じた場合には,被告西武鉄道は,特段の事情がない限り,当該損害について不法行為による賠償責任を負うというべきところ,本件全証拠を検討するも,特段の事情の存在を認めるに足りる証拠は存在しない。 ウ小括以上によれば,被告西武鉄道は,昭和59年4月1日から平成16年10月13日までに提出した有価証券報告書等の虚偽記載について,原告らに対し,不法行為責任を負う。 ( )コクドの不法行為責任の有無について(被告プリンスホテル関係) ア被告西武鉄道が,昭和32年3月期から平成16年3月期までの有価証券報告書等において,コクドが所有する西武鉄道株式の数について,虚偽記載をするに至ったのは(上記( )イ(ア) ,コクドが,西武鉄道株式を )自社名義で所有するほか他人名義の名義株でも大量に所有していたのに,この名義株の存在を公表しなかったためということができる。 すなわち,被告西武鉄道の親会社であるコクド,ひいてはコクドの代表取締役であった被告Aが名義株の存在を公表するという判断をしない限り,被告西武鉄道が有価証券報告書等にコクドの所有する西武鉄道株式の真実の数を記載することが難しい面があったことは否定できないところである。ところが,昭和32年からコクドの代表取締役であった被告Aは,昭和35年ころには名義株の存在を認識し,被告西武鉄道の代表取締役社長に就任した昭和48年11月ころには被告西武鉄道が有価証券報告書にコクドが所有する西武鉄道株式の数を過少に記載していることを知りながら,非上場会社であったコクドが被告西武鉄道の親会社であることが判明した場合の影響を懸念して,コクドが所有する名 が有価証券報告書にコクドが所有する西武鉄道株式の数を過少に記載していることを知りながら,非上場会社であったコクドが被告西武鉄道の親会社であることが判明した場合の影響を懸念して,コクドが所有する名義株の存在を公表せず,被告西武鉄道において有価証券報告書等に記載するコクドが所有する西武鉄道株式の数について,真実を記載するように指示しないことにした(上記( )ア及びイ。そして,コクドは,その後も,被告Aの指示ないし了 )解の下,名義株の一部について個人名義からコクド自社名義へ名義書換することを被告西武鉄道に指示し(昭和54年から昭和61年,名義株に)ついての株式配当金を被告西武鉄道から受領することを継続し,平成2年以降はその保有する西武鉄道株式を過少に記載した大量保有報告書や変更報告書を提出してその後も訂正報告書を提出せず,名義株を維持してその存在を公表しないようにしてきた(上記( )ウ(エ),(オ) 。 )イそうすると,コクドは,昭和59年4月1日から平成16年10月13日までに提出した有価証券報告書等の重要な事項に虚偽の記載をしたという被告西武鉄道の不法行為について,名義株の存在を公表しないことにより積極的に関与したものというべきである。したがって,コクドが,昭和59年4月1日から平成16年10月13日までの間,名義株の存在を公表しなかったことは,被告西武鉄道の当該不法行為と共同の不法行為(民法719条1項前段)を構成し,コクドは不法行為責任を負うというべきである。 ウ小括以上によれば,コクドを吸収合併した被告プリンスホテルは,昭和59年4月1日から平成16年10月13日までに提出された被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載について,原告らに対し,不法行為責任を負う。 争点( )(被告A,被告B及び亡Dの旧証 は,昭和59年4月1日から平成16年10月13日までに提出された被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載について,原告らに対し,不法行為責任を負う。 争点( )(被告A,被告B及び亡Dの旧証取法に基づく責任の有無)につい て( )はじめに ア昭和59年4月1日から平成16年10月13日までに被告西武鉄道が提出した有価証券報告書等の虚偽記載について,原告らは,被告A,被告B,被告C(亡D)に対しては,不法行為に基づく損害賠償請求に加え,選択的に,旧証取法に基づく損害賠償請求をも求めている。そして,両請求において,求めている損害金額は同一である。そうだとすると,被告らについて原告らの請求している期間,不法行為責任が認められるのであれば,旧証取法に基づく責任の有無まで判断する必要はないことになる。 イところで,前記1( )で検討したとおり,被告Aについては,原告らの 請求している昭和59年4月1日から平成16年10月13日までの間に,被告西武鉄道が提出した有価証券報告書等の虚偽記載について原告らに対し不法行為責任が認められるので,それ以上に旧証取法に基づく責任の有無についてまで判断する必要はないことになる。また,被告Bについては,前記1( )で検討したとおり,昭和59年4月1日から被告西武鉄 道の取締役を辞任した平成16年4月14日までに提出された同社の有価証券報告書等の虚偽記載については不法行為責任を負うが,同日以降に提出された有価証券報告書の虚偽記載については不法行為責任を負わないところ,原告らは,被告Bに対しては,同日以降に提出された有価証券報告書の虚偽記載についての旧証取法に基づく損害賠償を請求していない(前記第2の3( )【原告らの主張。そうだとすると,被告Bについても, 】)旧証取法に基づく責任に 以降に提出された有価証券報告書の虚偽記載についての旧証取法に基づく損害賠償を請求していない(前記第2の3( )【原告らの主張。そうだとすると,被告Bについても, 】)旧証取法に基づく責任についてまで判断する必要はないことになる。 前記1( )の検討結果によれば,亡Dが不法行為責任を負うのは亡Dが 代表取締役に就任した平成16年4月8日以降に提出された被告西武鉄道の同年3月期の有価証券報告書の虚偽記載についてであり,同人が被告西武鉄道の代表取締役就任前に取締役の地位にあった平成5年6月から平成16年4月7日までの間に提出された有価証券報告書等の虚偽記載については,原告らに対し,不法行為責任を負わないのであるから,この期間,旧証取法に基づく責任を負うか否かをさらに判断する必要があるということになる。よって,以下,検討することにする。 ( )亡Dの責任について(被告C関係) ア重要な事項についての虚偽の記載の該当性原告らは,被告Cに対しては,亡Dが被告西武鉄道の代表取締役就任前に取締役であった平成5年6月から平成16年4月7日までの間,旧証取法の責任があると主張していると理解することができる前記第2の3( )( 【原告らの主張。ところで,被告西武鉄道が前記期間中に提出した有】)価証券報告書等に,コクドが所有する西武鉄道株式の数を過少に記載した虚偽記載があることは,前記前提事実( )のとおりである。また,当該虚 偽記載が,投資家の投資判断に重大な影響を与える事実を偽ったものであり,旧証取法24条の4,24条の5第5項にいう「重要な事項」について虚偽の記載があったものに該当することも,前記1( )イで述べたとこ ろから明らかである。 イ免責事由の有無について被告Cは,亡Dには旧証取法21条2項1号所定の免責事由が 重要な事項」について虚偽の記載があったものに該当することも,前記1( )イで述べたとこ ろから明らかである。 イ免責事由の有無について被告Cは,亡Dには旧証取法21条2項1号所定の免責事由が存在する旨主張するので,この点について判断する。 亡Dは代表取締役社長に就任する直前の平成16年4月上旬ころまで有価証券報告書に虚偽記載があることを知らず,また,被告西武鉄道内でも被告Aのほか株式担当者を中心とした一部の者しか名義株の存在が明らかにされておらず,株式課長には当時の社長であった被告Bから亡Dには名義株のことは話さないように指示までされていたというのであるから(前記1( ) ,亡Dは,被告西武鉄道の代表取締役に就任する直前の平成1)6年4月上旬ころまでは,相当な注意を用いたとしても当該虚偽記載を知ることができなかったものとして,上記の免責事由の存在を認めるのが相当である。 ウ小括以上によれば,亡Dは,被告西武鉄道が平成5年6月から平成16年4月7日までの間に提出した有価証券報告書等の虚偽記載について,旧証取法24条の4,24条の5第5項,22条1項に基づく責任を負わないというべきである。 争点3(原告らに生じた損害の有無及び範囲)について( )原告らによる西武鉄道株式の取得等について ア証拠(甲10の各枝番。ただし枝番23,41,104,148,236,245,268,276を除く)及び弁論の全趣旨によれば,原告。 ,,,,,らのうち別紙損害等一覧表記載の原告番号23 236,245,268,276の各原告を除く原告らが,東京証券取引所市場第1部に上場されていた西武鉄道株式を,①同表「持ち株数」欄記載の数量「取得時期」欄記載の日に「取得価格」欄記載の価格(1株,,当たり) 268,276の各原告を除く原告らが,東京証券取引所市場第1部に上場されていた西武鉄道株式を,①同表「持ち株数」欄記載の数量「取得時期」欄記載の日に「取得価格」欄記載の価格(1株,,当たり)で買い付けて購入したこと,②同表「売却時期」欄に「保有」と記載された取得株式については,これに代わり本件口頭弁論終結時点で同一数量の西武ホールディングス株式を所有していること,③同表「売却時期」欄に年月日が記載された取得株式については,当該年月日に「売却価格」欄記載の価格(1株当たり)で売却したことが認められる。 イ原告番号23の原告について原告番号23の原告が提出した「お預かり証券等の残高」と題する書面(甲10の23の1)及び取引報告書(甲10の23の2)には名宛人の記載はないものの,当該証拠によれば,同原告主張のとおり,西武鉄道株,,式1000株が平成16年5月14日に1株1330円で取得されかつ同量の株式が同年10月15日に1株781円で売却された事実が認められ,また,原告ら訴訟代理人弁護士竹橋正明作成の陳述書(甲10の23の3)によれば,上記各証拠は同弁護士の求めに応じて同原告から送付されたものと認められる。そうすると,原告番号23の原告が,その主張のとおり西武鉄道株式を取得,売却したものと推認するのが相当であり,当該推認を覆すに足りる証拠は存在しない。 ウ原告番号41の原告について原告番号41の原告が提出した株券(甲10の41の1)によれば,同原告が昭和57年9月25日から平成元年8月18日までの間に,西武鉄道株式1000株を取得したことは認められるものの,それ以上に同原告。 ,主張の取得時期及び取得価格を認めるに足りる証拠は存在しないそして弁論の全趣旨によれば,同原告は,上記の西武鉄道株式に代わり本件口頭弁論終結時点 したことは認められるものの,それ以上に同原告。 ,主張の取得時期及び取得価格を認めるに足りる証拠は存在しないそして弁論の全趣旨によれば,同原告は,上記の西武鉄道株式に代わり本件口頭弁論終結時点で同一数量の西武ホールディングス株式を所有していることが認められる。 エ原告番号104の原告について弁論の全趣旨によれば,原告番号104番の原告が平成16年10月13日以前に西武鉄道株式1000株を取得したこと,これに代わり本件口頭弁論終結時点で同一数量の西武ホールディングス株式を所有していることが認められるものの,それ以上に同原告主張の取得時期及び取得価格を認めるに足りる証拠は存在しない。 オ原告番号148番の原告について証拠(甲10の148の1の1及び2)及び弁論の全趣旨によれば,原告番号148番の原告が,①平成16年9月3日に西武鉄道株式1000株を1株1200円で取得し,同年12月14日にこれを1株410円で売却したこと,②西武鉄道株式4000株を同原告主張の取得時期に取得し,これに代わり本件口頭弁論終結時点で同一数量の西武ホールディングス株式を所有していることが認められるものの,それ以上に当該4000株についての同原告主張の取得価格を認めるに足りる証拠は存在しない。 カ原告番号236の原告について証拠(甲10の236の1の1ないし5)及び弁論の全趣旨によれば,原告番号236の原告が,①平成12年中に取得したと主張する西武鉄道株式1万9000株については,主張の取得時期及び取得価格で取得し,これに代わり本件口頭弁論終結時点で同一数量の西武ホールディングス株式を所有していること,②それ以外に西武鉄道株式1000株を平成16年10月13日以前に取得し,これに代わり本件口頭弁論終結時点で同一数量の西武ホールディングス株式を所有して 西武ホールディングス株式を所有していること,②それ以外に西武鉄道株式1000株を平成16年10月13日以前に取得し,これに代わり本件口頭弁論終結時点で同一数量の西武ホールディングス株式を所有していることが認められるものの,当該1000株についての同原告主張の取得時期及び取得価格を認めるに足りる証拠は存在しない。 キ原告番号245の原告について証拠(甲10の245の1及び2の各1,2)及び弁論の全趣旨によれば,原告番号245番の原告が,①平成14年1月24日に西武鉄道株式1000株を1株1491円で取得し,同年10月19日にこれを1株639円で売却したこと,②西武鉄道株式1000株を平成16年10月13日以前に取得し,同年11月2日にこれを1株453円で売却していることが認められるものの,当該1000株の同原告主張の取得時期及び取得価格を認めるに足りる証拠は存在しない。 ク原告番号268の原告について原告番号268の原告が提出した「約定履歴照会」と題する書面(甲10の268の1)には名宛人の記載はない。しかし,当該証拠によれば,同原告主張のとおり,西武鉄道株式1000株が平成16年9月8日に1株1212円で取得された事実が認められ,また,証拠(甲10の268の3)及び弁論の全趣旨によれば,同原告が平成17年3月時点で西武鉄道株式1000株を所有しており,これに代わり本件口頭弁論終結時点で同一数量の西武ホールディングス株式を所有していることが認められることに照らすと,同原告はその主張の取得時期及び取得価格で西武鉄道株式1000株を取得したものと推認することができ,当該推認を覆すに足りる証拠は存在しない。 ケ原告番号276の原告について証拠(甲10の276の1の1及び2,同10の276の2)及び弁論の全趣旨によれば,原告番号2 たものと推認することができ,当該推認を覆すに足りる証拠は存在しない。 ケ原告番号276の原告について証拠(甲10の276の1の1及び2,同10の276の2)及び弁論の全趣旨によれば,原告番号276の原告が,①平成10年7月31日に西武鉄道株式1000株を1株3275円で,平成11年3月10日に西武鉄道株式1000株を1株3275円でそれぞれ取得し,これに代わり本件口頭弁論終結時点で同一数量の西武ホールディングス株式を所有していること,②上記①以外に西武鉄道株式1000株を平成16年10月13日以前に取得し,平成16年10月18日に1株711円で売却していることが認められるものの,それ以上に上記②の1000株について同原告主張の取得時期及び取得価格を認めるに足りる証拠は存在しない。 ( )主位的主張について ア原告らは,被告西武鉄道が有価証券報告書等の虚偽記載を公表した平成16年10月13日以前に西武鉄道株式を取得したが,被告西武鉄道らの違法行為がなければ,本来は上場を維持し得ない株式である西武鉄道株式を対価を支払ってまで取得することはなかったから,西武鉄道株式を取得させられたこと自体が原告らの被った損害であり,対価として支出した取得価格全額が損害額である旨主張するので,その主張の成否について検討する。 イ不法行為に基づく損害賠償並びに旧証取法24条の4,24条の5第5項,22条1項に基づく損害賠償のいずれにおいても,賠償の対象となるべき損害とは,違法行為がなかったとしたならばあるべき利益状態と違法行為がされた利益状態の差であると解される。そうすると,仮に被告らの違法行為がなければ原告らが西武鉄道株式を取得することはなかったという原告らの主張が認められる場合においても,原告らの損害は,西武鉄道株式の取得前の利益状態と西武 解される。そうすると,仮に被告らの違法行為がなければ原告らが西武鉄道株式を取得することはなかったという原告らの主張が認められる場合においても,原告らの損害は,西武鉄道株式の取得前の利益状態と西武鉄道株式の取得後の利益状態の差でなければならない。原告らは,西武鉄道株式の取得価格の支出によって西武鉄道株式を取得しているのであるから,西武鉄道株式を取得させられたこと自体が損害であり,対価として支出した取得価格全額が損害額であるとの原告らの主位的主張は,取得した西武鉄道株式が当該取得時点で無価値であったということを前提とするものと理解するほかない。 しかし,前記前提事実( )及び( ),証拠(甲11の1)及び弁論の全趣 旨によれば,①西武鉄道株式は,原告らが西武鉄道株式を取得した昭和61年7月18日から平成16年10月13日までの間は,上場株式として市場での売買が自由にされており,その期間中は1株1080円(同日安値)以上で取引されていたこと,②西武鉄道株式は,有価証券報告書等の虚偽記載の公表後から西武鉄道株式の上場廃止までの間において底値となった同年11月16日(上場廃止決定日)ですら1株268円(終値)で取引され,上場廃止前の最終取引日である同年12月16日には1株485円(終値)まで価格は上昇していたことが認められる。このような認定事実に照らすと,西武鉄道株式が平成16年12月17日をもって東京証券取引所での上場を廃止されたからといって,当該事実をとらえて,原告らが西武鉄道株式を取得した時点で当該株式が客観的に無価値であったと認める余地はないというべきである。 ウまた,前記前提事実( )及び( ),上記( )の認定事実及び弁論の全趣旨 によれば,①原告らは,昭和61年7月18日から平成16年10月13日までの間に西 地はないというべきである。 ウまた,前記前提事実( )及び( ),上記( )の認定事実及び弁論の全趣旨 によれば,①原告らは,昭和61年7月18日から平成16年10月13日までの間に西武鉄道株式を1株1081円以上の価格で取得したこと,②被告西武鉄道による有価証券報告書等の虚偽記載は平成16年10月13日の東京証券取引所での取引時間終了後に公表されたこと,③原告らを含む投資家は平成16年10月13日までは被告西武鉄道が有価証券報告書等に虚偽記載をしていることを知らずに同社の株式を取引していたこと,④平成16年10月13日の西武鉄道株式の終値は1株1081円であったことが認められる。 エ上記ウで認定した事実によれば,原告らが西武鉄道株式を取得した時点から有価証券報告書等の虚偽記載が公表された平成16年10月13日(同日の終値1株1081円)までの株価の下落部分は,当該虚偽記載とは関係のない,原告らの西武鉄道株式取得後における経済情勢の変動や被告西武鉄道の企業業績,株式市場の動向等を反映した市場原理によって生じたものと解するのが相当であり,当該判断を覆すに足りる的確な証拠は存在しない。そうだとすると,原告らが被った損害は西武鉄道株式を取得させられたこと自体であり,対価として支出した取得価格全額が損害額であるとの原告らの主位的主張は,当該虚偽記載と関係のない要因による株価の下落に相当する額まで被告らが賠償すべき損害に含めて主張していることになり,そのような原告らの主張には理由がないというべきである。 オしたがって,西武鉄道株式を取得させられたこと自体が原告らの被った損害であり,対価として支出した取得価格全額が損害額であるという原告らの主位的主張は,その余の点を判断するまでもなく理由がない。 ( )予備的主張1について させられたこと自体が原告らの被った損害であり,対価として支出した取得価格全額が損害額であるという原告らの主位的主張は,その余の点を判断するまでもなく理由がない。 ( )予備的主張1について ア原告らは,被告西武鉄道らの違法行為によって,本来は上場を維持し得ない株式である西武鉄道株式を上場株式として上場プレミアが付加された対価で取得させられたから,上場プレミアとしての価値相当部分が原告らが被った損害であると主張する。そして,原告らは,当該価値相当分(損害額)について,①原告らの取得価格から取得時点での本来あるべき価格(有価証券報告書等の虚偽記載がなかったと仮定した場合の価格)である想定価格を控除するか,②当該虚偽記載の公表前後における市場価格の変動から推定する方法により算出できる旨主張するので,順次,この点について検討する。 イ西武鉄道株式は,原告らが同株式を取得してから平成16年12月17日に上場が廃止されるまで,あるいは,少なくとも被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載が公表されて監理ポストに割り当てられる前までは,通常の上場株式として取引可能であった(なお,監理ポストに割り当てられても売買方法が他の株式と異なるわけではない。したがって,。)仮に上場株式の価格には上場プレミアとしての価値相当部分というものが存在し,当該部分を原告らが西武鉄道株式の取得の対価として支出していたとしても,上場プレミアが上場株式であるという事実のみで付加されるものであるならば,原告らが西武鉄道株式を取得した時点では同株式は上場株式であった以上,その対価としての支出が取得時点で確定的に原告らの損害として生ずるとは認め難い。 ウしかし,前記前提事実( ),前記1( )の認定事実,証拠(甲9の72) によれば,東京証券取引所が,平成16 の対価としての支出が取得時点で確定的に原告らの損害として生ずるとは認め難い。 ウしかし,前記前提事実( ),前記1( )の認定事実,証拠(甲9の72) によれば,東京証券取引所が,平成16年11月16日,株券上場廃止基準2条1項11号a(上場会社が財務諸表等又は中間財務諸表等に虚偽記載を行いかつその影響が重大であると認めた場合及び同項16号公,,)(益又は投資者保護のため,当該銘柄の上場廃止を適当と認めた場合)に該当するとして西武鉄道株式の上場廃止決定をしたのは,以下の理由からであったことが認められる。すなわち,被告西武鉄道においては,コクドが実質的に所有する名義株が昭和32年ころから継続して存在し,その数量が株券上場廃止基準としての少数特定者持株数基準に抵触する水準に及んでおり,東京証券取引所は,こうした事態が被告西武鉄道の内部管理態勢等組織的な問題に起因して発生したことを考慮し,西武鉄道株式を上場廃止とした。 上記事実に照らすと,西武鉄道株式の上場廃止の原因となった事実は,原告らが西武鉄道株式を取得した時点においても既に存在していたということができる。そうだとすると,原告らが上場プレミアとして主張するものは,被告西武鉄道の有価証券報告書等に虚偽記載を継続するという被告西武鉄道らの違法行為がなく,上場廃止の原因となった上記の事実が明らかにされていれば,原告らが対価として支出する必要がなかった額を意味するものと解する余地がないではない。そこで,進んで,原告らが主張する上場プレミアの価値相当分の額についてその成否を検討することにする。 エ原告らは,上記ア①の1株当たりの想定価格を,0円(無価値,44)円若しくは48円(国税庁の財産評価基本通達による算定)又は268円(上場廃止決定日の終値)である旨主張する することにする。 エ原告らは,上記ア①の1株当たりの想定価格を,0円(無価値,44)円若しくは48円(国税庁の財産評価基本通達による算定)又は268円(上場廃止決定日の終値)である旨主張する。 しかし,原告らの主張を前提にすると,その主張は,原告らが西武鉄道株式を取得した時点から当該虚偽記載が公表された平成16年10月13日(同日の終値1株1081円)までの,当該虚偽記載と関係のない要因,()による株価の下落に相当する額も取得価格と想定価格との差額損害額に含めて主張しているということができ,理由がないことは主位的主張と同様である(上記( )エ。 )また,前記前提事実( )及び証拠(甲11の1,乙イ2,3,13)に よれば,①西武鉄道株式は,有価証券報告書等の虚偽記載の公表後から西武鉄道株式の上場廃止までの間において底値となった平成16年11月16日(上場廃止決定日)ですら1株268円(終値)で取引され,上場廃(),止前の最終取引日には1株485円終値まで市場価格は上昇しており当該虚偽記載の公表後から上場廃止までの期間中に終値が1株200円台まで下落したのは同日の1日のみであること,②西武鉄道株式の上場廃止後である平成18年1月から2月にかけて行われた被告西武鉄道を含むグループ企業の再編において,被告西武鉄道には,上場廃止後の平成17年9月期に多額の減損処理等による約114億円の中間純損失を計上した結果,同年3月期と比較して資本合計が496億円から363億円に減少したという重大なマイナス要因が存在したにもかかわらず,西武鉄道株式は1株919円と評価されてその譲渡がされ,また,被告西武鉄道は会社分割等に反対する株主からの株式買取請求に対しては1株919円での買取りに応じていることが認められる。このように,西武鉄 武鉄道株式は1株919円と評価されてその譲渡がされ,また,被告西武鉄道は会社分割等に反対する株主からの株式買取請求に対しては1株919円での買取りに応じていることが認められる。このように,西武鉄道株式は,上場廃止が織り込まれた後の市場価格や上場廃止後の実際の売買価格ですら上記のような価格で取引されていたのであるから,当該虚偽記載がなかったと,,仮定した場合における原告らの取得時点での西武鉄道株式の想定価格が原告ら主張のように,無価値であるとか,44円若しくは48円又は268円といった低額であると認めることはできないというべきである。よって,原告らの主張は理由がなく,採用することができない。 オ原告らは,上記ア②の上場プレミアの額を推定する方法として,①有価証券報告書等の虚偽記載の公表直前の西武鉄道株式の価格(平成16年10月13日の終値。1株1081円)より当該公表から上場廃止までの間の底値(上場廃止決定日の終値。1株268円)を差し引いた下落額(1081円-268円=813円)か,②下落率(813円÷1081円=75.2%)を原告らの西武鉄道株式の取得価格に乗じた額が,上場プレミアの額と推定される旨主張する。 ,(. )しかし原告らの西武鉄道株式の取得価格に上記の下落率 2%を乗じた額をもって上場プレミアの額に相当する旨の主張は,原告らが西武鉄道株式を取得した時点から当該虚偽記載が公表された平成16年10月13日(同日の終値1株1081円)までの,当該虚偽記載と関係のない要因による株価の下落に相当する額までをも損害額に含めて被告らに負担させることを主張していることになり,理由がないことは主位的主張について述べたところと同様である(上記( )エ。加えて,上記エの認定 )事実(上場廃止が織り込まれた後の市場価 含めて被告らに負担させることを主張していることになり,理由がないことは主位的主張について述べたところと同様である(上記( )エ。加えて,上記エの認定 )事実(上場廃止が織り込まれた後の市場価格や上場廃止後の実際の売買価格)に照らせば,そもそも,上場廃止決定日の1株268円(終値)という西武鉄道株式の価格は,当時の市場心理を反映した極端な価格下落場面における価格であって,客観的な価値を示しているとはいい難いということは明らかというべきである。したがって,当該虚偽記載の公表直前の価(),格1株1081円から1株268円までの下落額又は下落率をもって原告らの西武鉄道株式の取得価格と当該取得時点における被告西武鉄道らの違法行為が存在しない場合の想定価格との差額(上場プレミアの価値相当額)を推定するという上記主張は合理性を欠いており,理由がない。 カまた,原告らは,平成16年法律第97号による改正後の証券取引法21条の2第2項の類推適用によって上場プレミアの価値相当額を算定すべき旨主張する。 しかし,同条は,平成16年法律第97号による改正によって新たに設,,,けられた規定であり当該改正の経過措置を定める附則1条3号5条は当該改正後の証券取引法21条の2の規定は,その規定の施行の日(平成16年12月1日)以後に提出される有価証券報告書等について適用し,同日前に提出されたものについては適用しない旨を明確に定めている。したがって,被告西武鉄道が平成16年10月13日以前に提出した有価証券報告書等に当該規定を類推適用することは,上記経過措置の定めに明らかに反することになる。また,有価証券報告書等の虚偽記載が公表された場合に,当該有価証券の市場価額の公表前1か月間の平均額から公表後1か月間の平均額を控除した額を,当該虚偽記載による 置の定めに明らかに反することになる。また,有価証券報告書等の虚偽記載が公表された場合に,当該有価証券の市場価額の公表前1か月間の平均額から公表後1か月間の平均額を控除した額を,当該虚偽記載による損害の額と推定するという同法21条の2第2項の考え方は,法律の規定がなくても当然に用いられるべき確立された経験則であるということもできない。 したがって,同項の類推適用をいう原告らの上記主張は理由がない。 キ以上のとおりであって,原告らが西武鉄道株式を取得した時点で上場プレミアとしての価値相当部分の損害を被ったという原告らの主張を認めるに足りる証拠はなく,原告らの予備的主張1は理由がない。 ( )予備的主張2について ア原告らは,被告西武鉄道らの違法行為の結果,有価証券報告書等の虚偽記載が公表された平成16年10月13日から西武鉄道株式の株価が下落したことが損害であると主張する。そして,取得した西武鉄道株式を売却せずに本件口頭弁論終結時において西武ホールディングス株式を所有している原告ら(保有原告ら)の1株当たりの損害額は,同日の終値1株1081円と本件口頭弁論終結時の価格との差額であり,平成16年10月13日以降に西武鉄道株式を売却した原告ら(処分原告ら)の1株当たりの損害は,1081円と1株当たりの売却価格との差額である旨主張するので,この点について判断する。 イ保有原告らの損害の有無について(ア)前記( ),( )で認定した事実及び後掲の証拠等によれば,次の事実 が認められる。 a保有原告らは取得した西武鉄道株式のうち別紙損害等一覧表売,,「却時期」欄に「保有」と記載されたものについては,本件口頭弁論終結時において,これに代えて割当てを受けた同一株式数の西武ホールディングス株式を所有している(前記( ) 。 等一覧表売,,「却時期」欄に「保有」と記載されたものについては,本件口頭弁論終結時において,これに代えて割当てを受けた同一株式数の西武ホールディングス株式を所有している(前記( ) 。 1 )b西武鉄道株式の上場廃止後である平成18年1月から2月にかけて行われた被告西武鉄道を含むグループ企業の再編において,西武鉄道株式は1株919円と評価されてその譲渡がされ,被告西武鉄道は会社分割等に反対する株主からの株式買取請求に対しても1株919円での買取りに応じていた(前記( )エ。 )c西武ホールディングスから同社の株主価値の評価を依頼されたベリングポイント株式会社は,平成19年5月14日付けで,平成18年9月30日を評価基準日として,西武ホールディングスの株式の1株当たりの評価額を,DCF法(DiscountedCashFlow法の略であり,事業を構成する資産にかかわらず,生み出す収益(キャッシュ・フロー)に重きを置いて評価する手法であり,将来のキャッシュ・フローを一定の割引率で割り引いて企業価値を算出する方法)で1102円ないし1342円と,修正純資産法(資産・負債の時価を個別に評価し,その差額の時価ベースの純資産を評価する方法)で1780円ないし1939円と算定しているが,本件全証拠を検討するも,これらの評価額が不合理であることを窺わせるに足りる的確な証拠は存在しない(乙イ5,弁論の全趣旨。 )d西武ホールディングスは,平成19年5月21日以降,単元未満株式の買取請求に対し,1株1175円での買取りに応じている(乙イ6,7の1ないし8。 )(イ)上記(ア)で認定した事実に照らせば,本件全証拠によっても,本件口頭弁論終結時において,保有原告らが有する西武ホールディングスの株式の価格が,1株1081円を下回 6,7の1ないし8。 )(イ)上記(ア)で認定した事実に照らせば,本件全証拠によっても,本件口頭弁論終結時において,保有原告らが有する西武ホールディングスの株式の価格が,1株1081円を下回っているとは認められない。 したがって,取得した西武鉄道株式を売却せず本件口頭弁論終結時において西武ホールディングス株式を所有している保有原告らが,別紙損害等一覧表「売却時期」欄に「保有」と記載のある西武鉄道株式につい,。 てその主張する株価下落による損害を被ったと認めることはできないよって,保有原告らの予備的主張2は,その余の点を判断するまでもなく理由がない。 ウ処分原告らの損害の有無について(ア)前記前提事実( ),前記( ),( )の認定事実及び後掲の証拠等によ れば,次の事実が認められる。 a東京証券取引所は,平成16年10月13日,被告西武鉄道が平成12年3月期から平成16年3月期までの有価証券報告書等の虚偽記載を公表し訂正報告書を提出したことを受けて,同年3月31日現在の西武鉄道株式の株式分布状況を審査した。その結果,東京証券取引所は,西武鉄道株式について,株券上場廃止基準2条1項2号a(a)関係(少数特定者持株数が80%を超えたため)に該当することが判明したとして,同株式を当該規定に係る猶予期間(平成16年4月1日から平成17年3月31日まで入り銘柄としたことを公表した前)(記前提事実( )ウ。 )b東京証券取引所は,被告西武鉄道の有価証券報告書の「第5経理の状況」中「関連当事者との取引」で,コクドの属性が親会社であるのに「その他の関係会社」と記載され,議決権等の被所有割合も過少に記載されていたことから財務諸表等に虚偽記載があると判断した。また,東京証券取引所は,以前からコクドが名義株を所有してお 親会社であるのに「その他の関係会社」と記載され,議決権等の被所有割合も過少に記載されていたことから財務諸表等に虚偽記載があると判断した。また,東京証券取引所は,以前からコクドが名義株を所有しており,大株主の状況について長年にわたって有価証券報告書等に虚偽の事実が記載されてきたこと等を考慮し,平成16年10月13日,西武鉄道株式が株券上場廃止基準2条1項11号a(上場会社が財務諸表等又は中間財務諸表等に虚偽記載を行い,かつ,その影響が重大であると認めた場合)の前段に該当し,かつ,同項16号(公益又は投資者保護のため,当該銘柄の上場廃止を適当と認めた場合)に該当するおそれがあるとして,西武鉄道株式が株券上場廃止基準に該当するかどうかを認定した日まで,同株式を監理ポスト(上場廃止となるおそれがある銘柄についてその事実を投資者に周知させるため割り当てられるもの)に割り当てることを決定し,その旨を公表した(前記前提事。 実( )ウ,甲9の72) 東京証券取引所は,上記監理ポスト指定の公表文の中で,被告西武鉄道がした有価証券報告書等の虚偽記載の訂正は,同社の筆頭株主であるコクド及びその子会社の被告プリンスホテルが所有する西武鉄道株式の数について,過年度にわたり加算すべき相当量の実質所有分の存在が判明したことによるものであり,被告西武鉄道の株式事務が適正に行われていなかったことにも起因するものと認められることから,今後の審査いかんによっては株券上場廃止基準に該当することとなるため,そのおそれがある銘柄として監理ポストに割り当て,投資者の注意を喚起する旨を注記していた(前記前提事実( )ウ,甲9の 72〔資料12。 〕)c西武鉄道株式の株価は,監理ポストへの割当てを公表した翌日の平成16年10月14日は急落し,終値が1株881円の 起する旨を注記していた(前記前提事実( )ウ,甲9の 72〔資料12。 〕)c西武鉄道株式の株価は,監理ポストへの割当てを公表した翌日の平成16年10月14日は急落し,終値が1株881円のストップ安となり,その後も下落を続け,同年11月16日には1株268円(終値)まで下落した(前記前提事実( )エ,甲9の72,同11の1。 )d東京証券取引所は,平成16年11月16日,西武鉄道株式が上記bの株券上場廃止基準2条1項11号a及び同項16号に該当するとして,同年12月17日に上場廃止とする旨を決定した。そして,東京証券取引所は,同年11月16日の取引時間終了後,上記決定内容及び同年12月16日まで西武鉄道株式を整理ポスト(上場廃止が決定された銘柄についてその事実を投資者に周知させるため割り当てられるもの)に割り当てる旨を公表した(前記前提事実( )ウ,甲9。 の72)e西武鉄道株式は,上場廃止決定があった平成16年11月16日の翌日から同年12月16日までの間,整理ポストにおいて取引が続けられ,同日の終値は1株485円まで上昇したが,同月17日上場廃止となった(前記前提事実( )エ,甲9の72。 )f処分原告らは,被告西武鉄道が提出した有価証券報告書等にコクドが所有する西武鉄道株式の数を虚偽記載したことを認識することなく,平成16年10月13日までに,別紙損害等一覧表「持ち株数」欄記載の数量の西武鉄道株式を1株1081円以上の取得価格で取得した(前記( )ウ。そして,処分原告らは,当該虚偽記載が公表さ )れた翌日の同月14日から上場廃止までの間の同表「売却時期」欄に記載された日に,同欄に日付が記載された株式を,同表「売却価格」欄記載の価格で売却した。その結果,処分原告らは,当該売却した西武鉄道株式 た翌日の同月14日から上場廃止までの間の同表「売却時期」欄に記載された日に,同欄に日付が記載された株式を,同表「売却価格」欄記載の価格で売却した。その結果,処分原告らは,当該売却した西武鉄道株式について,平成16年10月13日の終値である1株1081円と比較して,同表「1081円と売却価格との差額」欄記載の額のとおりの損失を被った(前記( ))。 (イ)上記(ア)で認定した事実によれば,被告西武鉄道の昭和59年4月1日以降に提出された有価証券報告書等の虚偽記載がなければ,平成16年10月13日に当該事実が判明して西武鉄道株式が東京証券取引所によって監理ポストに割り当てられ,その株価が急落し,同年11月16日の上場廃止決定により,同株式が同年12月17日をもって上場廃止となるという事態が生じなかったことは明らかである。また,そのような事態が発生しなければ,処分原告らが,同年10月14日から上場廃止までの間に,別紙損害等一覧表「売却時期」欄記載の日に「売却価格」欄記載の売却価格で,同月13日までに取得していた西武鉄道株式を売却することもなかったことは容易に推認されるところである。そして,上記(ア)cのとおり,西武鉄道株式の株価は,上場廃止となるおそれがあることを投資者に周知させるため割り当てられる監理ポストへの割当てを公表した日の翌日の取引から急落しているのであって,西武鉄道株式を所有していた処分原告らが,上場廃止によって投下資本の回収が困難になることを回避するために西武鉄道株式を売却するという選択をしたことは,投資家の行動として十分理解することができ,不合理なものということはできない。 (ウ)被告らは,保有原告らに損失が生じていないことに照らしても,処分原告らが西武鉄道株式を売却したのは自らの投資判断に基づくものであって 理解することができ,不合理なものということはできない。 (ウ)被告らは,保有原告らに損失が生じていないことに照らしても,処分原告らが西武鉄道株式を売却したのは自らの投資判断に基づくものであって,被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載によってその売却を強いられたというものではないから,当該虚偽記載と処分原告らが売却によって被った損失との相当因果関係はない旨主張する。 確かに,上記( )及び後掲の証拠によれば,①当該虚偽記載が公表さ れて西武鉄道株式が監理ポストに割り当てられ,株価が急落したという同一の状況にあっても,原告らの中でさえ同株式を売却しなかった者も相当割合存在すること(上記( ) ,②平成16年9月末日と平成17 1 )年3月末日の被告西武鉄道の株主名簿上の株主を比較すると,平成16年9月末日の株主8711人のうち6254人(71.89%)が平成17年3月末日時点でも株主名簿に記載されている一方,同月末日時点の株主の数は1万3316人に増加しており,当該虚偽記載の公表と上場廃止をはさんで,約7割の株主名簿上の株主が継続保有を選択している一方,新たに西武鉄道株式を取得して株主となった者も相当数存在すること(乙イ9,③原告らの中でも,当該虚偽記載の公表から上場廃)止までの株価の下落局面において,30人(うち処分原告ら20人)が西武鉄道株式を追加で取得していること(乙イ10)が認められる。そうだとすると,当該虚偽記載の公表後に西武鉄道株式の株価が急落して上場廃止に至る過程で,処分原告らが,当該虚偽記載のために西武鉄道株式の売却を強いられたとまでは評価し難い点があることは否めないところである。 しかし,違法行為と損害との間に相当因果関係が認められるには,当該違法行為によって当該損害の発生が強いられたという関係まで必要とさ 強いられたとまでは評価し難い点があることは否めないところである。 しかし,違法行為と損害との間に相当因果関係が認められるには,当該違法行為によって当該損害の発生が強いられたという関係まで必要とされるものではなく当該違法行為から当該損害が通常生ずべき民,「」(法416条1項)ものであれば足りると解するのが相当である。これを本件についてみるに,原告らを含む投資家は,西武鉄道株式を取得した時はもちろん平成16年10月13日に公表されるまで被告西武鉄道の有価証券報告書等の虚偽記載の事実は知らなかったのであって上記( )( ウ,西武鉄道株式が,いわば突然,同日に監理ポストに指定されて上)場廃止のおそれがあるとされたことによって,相当数の投資家が混乱したことは,翌日の株価の急落(ストップ安)からも容易に推認されるところである。そして,西武鉄道株式が監理ポストに割り当てられ,その株価が下落し,同年12月17日をもって上場廃止となるという過程において,上場廃止により投下資本の回収が困難になることを回避するため,一般の投資家がこれを売却するという選択をしたことに何ら不自然な点はない。他方,被告西武鉄道らは,それぞれが賠償責任を負うべき有価証券報告書等の虚偽記載については,同報告書の提出時に虚偽記載の存在を認識していたことは既に説示したとおりであるから,当該虚偽記載に起因する通常採られ得る選択によって確定した処分原告らの損失を,被告らに負担させることが不合理であるという理由もない。 また,西武鉄道株式を所有していた者が,同株式について,平成16年10月14日からの株価の下落と上場廃止のおそれが生じた局面において,多額の損失を避けるためにいったんは同株式を売却して損失を確定させ,他方で,株価の反転上昇や今後の所有に伴う利益を完全に失う 年10月14日からの株価の下落と上場廃止のおそれが生じた局面において,多額の損失を避けるためにいったんは同株式を売却して損失を確定させ,他方で,株価の反転上昇や今後の所有に伴う利益を完全に失うことを恐れ,改めて同株式を取得し直すことも,投資家の行動として一般的にあり得ることであり,何ら不自然,不合理な行動ということはできない。したがって,処分原告らの一部の者が,平成16年10月14日以降に西武鉄道株式を追加取得している事実があるからといって,そのことは当該虚偽記載とその公表前に取得されていた西武鉄道株式の売却により確定した損失との間の相当因果関係を否定する理由にはならないというべきである。さらに,継続所有を選択した多数の株主には損失の確定的発生が認められず賠償請求が認められないからといって,そのことをもって,売却によって確定的に損失を被った株主の賠償請求を否定する理由になるものではない。 (エ)被告らは,東京証券取引所が有価証券報告書等の株主構成に関する虚偽記載を理由に,株券上場廃止基準2条1項11号a及び同項16号に基づいてした西武鉄道株式の上場廃止決定は,極めて異例の政策的,裁量的判断に基づくものであるから,虚偽記載のある有価証券報告書等が提出された平成16年6月までの時点では,上場廃止の予見可能性はなく,当該虚偽記載と上場廃止との間には相当因果関係がない旨主張する。 確かに,少数特定者持株数基準は,少数特定者持株数が上場株式の80%を超えている場合において所定の猶予期間内に80%以下にならないときに上場廃止事由とするものであって,猶予期間の始期である「審査対象決算期の翌日」の意義については解釈の余地がある。そして,証拠(甲9の72)によれば,東京証券取引所も被告西武鉄道の少数特定者持株数が相当以前から上場株式の80% て,猶予期間の始期である「審査対象決算期の翌日」の意義については解釈の余地がある。そして,証拠(甲9の72)によれば,東京証券取引所も被告西武鉄道の少数特定者持株数が相当以前から上場株式の80%を超えていたことを認識していながら猶予期間の始期を直前決算期の翌日である平成16年4月1日からと定めたことが認められるから,昭和59年4月1日から平成16年10月13日までの間に被告西武鉄道が有価証券報告書等を提出した時点で,西武鉄道株式が少数特定者持株数基準という上場廃止原因に当然に該当していたということはできない。 しかし,名義株の存在を前提として,被告西武鉄道が有価証券報告書等に親会社であるコクドが所有する株式数を過少に虚偽の記載をすることは昭和32年には既に始まっていたこと(前記1( )イ(ア) ,東京 )証券取引所が昭和57年10月1日に株券上場廃止基準として少数特定者持株数基準を定めた後は,株主構成(大株主の状況)についての有価証券報告書等の記載は当該持株数が上場株式の80%を超えるかどうかを投資家が認識する資料として特に重要なものとなったといえること(前記1( )イ,弁論の全趣旨,被告西武鉄道の有価証券報告書等の )当該虚偽記載は,少数特定者持株数を投資家及び東京証券取引所が正確に判断することを不可能とし,結果として少数特定者持株数基準に基づく上場廃止を免れることにつながるものであったこと前記前提事実( )( アないしウ,前記1( )イ,弁論の全趣旨)に照らすと,少数特定者持 株数基準が施行された昭和57年10月1日以降も,当該虚偽記載のある有価証券報告書等を提出すれば,東京証券取引所が西武鉄道株式について上場廃止決定や監理ポストへの指定を含めた措置を執り,その結果として西武鉄道株式を取得していた投資家に対して も,当該虚偽記載のある有価証券報告書等を提出すれば,東京証券取引所が西武鉄道株式について上場廃止決定や監理ポストへの指定を含めた措置を執り,その結果として西武鉄道株式を取得していた投資家に対して損失を与える可能性があることについては,当該虚偽記載を認識していた者にとっては予見可能であったと認めるのが相当である。 (オ)被告西武鉄道は,原告らの請求を認めると企業価値の減少が生じ,資本維持の要請を損なう旨主張する。しかし,投資家は,株式の発行会社の経営リスクは甘受すべきであるが,発行会社が違法行為により投資家の利益を直接侵害した場合に投資家がこれを甘受しなければならないという理由は見い出せず,賠償責任の負担により発行会社の企業価値が低下するのは当該違法行為により損害を被った者が存在したことの当然の結果にすぎないというべきである。したがって,被告西武鉄道の上記主張は理由がなく,採用することができない。 (カ)以上の検討結果によれば,処分原告らが,平成16年10月13日の時点で所有していた西武鉄道株式を売却した結果,同日の終値1株1081円と売却価格との間に生じた差額については,被告西武鉄道から提出された有価証券報告書等の虚偽記載と相当因果関係のある損害というべきである。 エ各被告が賠償すべき処分原告らの損害(ア)被告西武鉄道及び被告プリンスホテル先に検討したとおり,被告西武鉄道及びコクドは,被告西武鉄道が昭和59年4月1日から平成16年10月13日までの間に提出した,昭和59年3月期から平成16年3月期までの各有価証券報告書等の重要な事項(コクドが所有する西武鉄道株式の数)の虚偽記載について,これにより西武鉄道株式を取得した者に損害が生じた場合には,当該損害について不法行為に基づく賠償責任を負う(前記1( )及び( ) 。 事項(コクドが所有する西武鉄道株式の数)の虚偽記載について,これにより西武鉄道株式を取得した者に損害が生じた場合には,当該損害について不法行為に基づく賠償責任を負う(前記1( )及び( ) 。 7 )処分原告らは,平成4年12月10日から平成16年10月13日までの間に西武鉄道株式を取得した者であって,その取得前に被告西武鉄道の上記虚偽記載のある有価証券報告書等が継続して提出されており,処分原告らは当該記載が虚偽であることを知らずに取得したから,被告西武鉄道及びコクドは,当該虚偽記載と相当因果関係のある処分原告らの損害については,不法行為責任を負う。そして,前示(上記ウ(カ)),,,のとおり処分原告らが被った1株1081円と売却価格との差額は当該虚偽記載と相当因果関係がある損害ということができ,被告西武鉄道及びコクドを吸収合併した被告プリンスホテルは,処分原告ら全員に対し,当該損害を賠償すべき責任を負うというべきである。 (イ)被告A先に検討したとおり,被告Aは,被告西武鉄道及びコクドと同様に,被告西武鉄道が昭和59年4月1日から平成16年10月13日までの間に提出した,昭和59年3月期から平成16年3月期までの各有価証券報告書等の重要な事項(コクドが所有する西武鉄道株式の数)の虚偽記載について,これにより西武鉄道株式を取得した者に損害が生じた場合には,当該損害について不法行為責任を負う(前記1( ) 。したが 3 )って,被告Aは,被告西武鉄道及び被告プリンスホテルと同じく,処分原告らが被った1株1081円と売却価格との間に生じた差額について,当該虚偽記載と相当因果関係のある損害として,処分原告ら全員に対し賠償すべき責任を負う。 (ウ)被告B先に検討したとおり,被告Bは,被告西武鉄道が昭和59年4月1日から平成 生じた差額について,当該虚偽記載と相当因果関係のある損害として,処分原告ら全員に対し賠償すべき責任を負う。 (ウ)被告B先に検討したとおり,被告Bは,被告西武鉄道が昭和59年4月1日から平成16年4月14日までの間に提出した,昭和59年3月期から平成16年3月期中間期までの各有価証券報告書等の重要な事項(コクドが所有する西武鉄道株式の数)の虚偽記載について,これにより西武鉄道株式を取得した者に損害が生じた場合には,当該損害について不法行為責任を負うが,平成16年3月期の有価証券報告書の虚偽記載については不法行為責任を負わない(前記1( ) 。しかし,平成16年3 4 )月期の有価証券報告書が提出された後も,それまでに提出された有価証券報告書等が公衆に縦覧されていることを考慮すると,結局,同月期の有価証券報告書が提出された平成16年6月29日以降に西武鉄道株式を取得した処分原告らの損害についても,被告Bが取締役であった当時に提出された有価証券報告書等の虚偽記載との間に相当因果関係があると認めるのが相当であり,被告Bは,その賠償責任を免れないというべきである。 したがって,被告Bは,被告西武鉄道,被告プリンスホテル及び被告Aと同じく,処分原告らが被った1株1081円と売却価格との間に生じた差額について,当該虚偽記載と相当因果関係のある損害として,処分原告ら全員に対し賠償すべき責任を負う。 (エ)亡D(被告C)先に検討したとおり,亡Dは,被告西武鉄道が平成16年6月29日に提出した同年3月期の有価証券報告書の重要な事項(コクドが所有する西武鉄道株式の数)の虚偽記載に限って,これにより西武鉄道株式を取得した者に損害が生じた場合には,当該損害について不法行為に基づく責任を負う(前記1( ) 。 )したがって,亡Dは,処分原告ら 西武鉄道株式の数)の虚偽記載に限って,これにより西武鉄道株式を取得した者に損害が生じた場合には,当該損害について不法行為に基づく責任を負う(前記1( ) 。 )したがって,亡Dは,処分原告らが,平成16年6月29日以降に取得した西武鉄道株式を,同年10月14日以降に売却したことによって被った1株1081円と売却価格との間に生じた差額の限度において,当該虚偽記載と相当因果関係のある損害として,賠償すべき責任を負うにとどまる。 (オ)被告西武鉄道,被告プリンスホテル,被告A及び被告Bが賠償すべき損害額西武鉄道株式を平成16年10月14日以降に売却した処分原告らは,別紙認容額等一覧表1の「原告」欄記載の原告らであり,これらの処分原告らが被った損害額である,同月13日の終値である1株1081円と売却価格との差額は,同表「売却による損害額」欄記載のとおりである。 そして,本件訴訟の提起及び追行に係る弁護士費用のうち,事案の難易,不法行為に係る請求額及び認容額その他本件に現れた一切の事情を斟酌すれば,被告西武鉄道,コクド,被告A及び被告Bの違法行為と相当因果関係のある損害としての弁護士費用は,各処分原告が被った損害額としての1株1081円と売却価格との差額の1割と認めるのが相当であり,その額は,別紙認容額等一覧表1「弁護士費用額」欄記載のとおりである。 したがって,被告西武鉄道,被告プリンスホテル,被告A及び被告Bは,不法行為に基づき,連帯して,別紙認容額等一覧表1の「原告」欄記載の各原告に対し,同表「認容額」欄記載の損害賠償金及びこれらに対する不法行為の後である平成16年10月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払う義務を負う。 (カ)被告Cが賠償すべき損害額平成16年6月29日以降に西武鉄道株式を取 対する不法行為の後である平成16年10月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払う義務を負う。 (カ)被告Cが賠償すべき損害額平成16年6月29日以降に西武鉄道株式を取得し,同年10月14日以降に売却した処分原告らは,別紙認容額等一覧表2の「原告」欄記載の原告らであり(上記( ) ,これらの処分原告らが被った損害額で 1 )ある,同月13日の終値である1株1081円と売却価格との差額は,同表「売却による損害額」欄記載のとおりである。 そして,亡Dの違法行為と相当因果関係のある損害としての弁護士費用は,事案の難易,不法行為に係る請求額及び認容額その他本件に現れた一切の事情を斟酌すれば,各処分原告が被った損害額としての1株1,,081円と売却価格との差額の1割と認めるのが相当でありその額は別紙認容額等一覧表2「弁護士費用額」欄記載のとおりである。 したがって,亡Dの相続について限定承認をしている被告Cは,不法行為に基づき,その余の被告らと連帯して,別紙認容額等一覧表2記載の各原告に対し,同表「認容額」欄記載の損害賠償金及びこれらに対する不法行為の後である平成16年10月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を亡Dの相続財産の範囲の限度で支払う義務を負う。 第4 結論 以上によれば,原告らの本件請求は,①別紙認容額等一覧表1の「原告」欄記載の各原告らが,被告西武鉄道,被告プリンスホテル,被告A及び被告Bに対しては不法行為に基づき,同表「認容額」欄記載の各損害賠償金及びこれらに対する不法行為の後である平成16年10月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め,②別紙認容額等一覧表2の「原告」欄記載の各原告らが,被告Cに対して不法行為に基づき,他の被告らと ある平成16年10月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め,②別紙認容額等一覧表2の「原告」欄記載の各原告らが,被告Cに対して不法行為に基づき,他の被告らと連帯して,同表「認容額」欄記載の各損害賠償金及びこれらに対する不法行為の後である平成16年10月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を亡Dから相続した財産の範囲で支払を求める限度で理由があるからその限度で認容し,上記原告らのその余の請求及び上記原告ら以外の原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第8部裁判長裁判官難波孝一裁判官矢尾和子裁判官徳岡治

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