平成24(行コ)89 固定資産税等賦課取消請求控訴事件(原審・さいたま地方裁判所平成23年(行ウ)第19号)

裁判年月日・裁判所
平成24年9月20日 東京高等裁判所 租税
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判決文本文20,367 文字)

- 1 - 主文 1 原判決を取り消す。 2 坂戸市長が平成22年12月1日付けで控訴人に対してした,別紙物件目録記載の家屋に係る平成22年度の固定資産税及び都市計画税の賦課処分を取り消す。 3 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文同旨第2 事案の概要 1 本件は,坂戸市長から家屋について平成22年度の固定資産税及び都市計画税の賦課処分を受けた控訴人が,当該家屋は,平成21年12月7日に新築したものであるが,賦課期日である平成22年1月1日の時点では,控訴人は当該家屋の所有者として登記簿に登記されておらず,また,家屋補充課税台帳にも登録されていなかったのであるから,平成22年度の固定資産税及び都市計画税の納税義務者ではなく,上記の賦課処分は違法であると主張して,その取消しを求める事案である。 原審は,控訴人の請求を棄却した。 そこで,控訴人がこれを不服として控訴した。 2 前提となる事実(1) 控訴人は,平成21年12月7日,埼玉県坂戸市内において,別紙物件目録記載の家屋(以下「本件家屋」という。)を新築し,その所有権を取得した。 (争いのない事実)(2) 控訴人は,平成21年12月12日,本件家屋に入居した。 (乙9)- 2 -(3) 坂戸市の担当者は,平成21年12月18日,現地調査により本件家屋の完成を確認した。 (乙9)(4) 平成22年1月1日の時点においては,本件家屋の登記記録及び家屋補充課税台帳は,いずれも作成されていなかった。 (争いのない事実)(5) 本件家屋について,平成22年10月8日,登記原因を「平成21年12月7日新築」,所有者を控訴人として 登記記録及び家屋補充課税台帳は,いずれも作成されていなかった。 (争いのない事実)(5) 本件家屋について,平成22年10月8日,登記原因を「平成21年12月7日新築」,所有者を控訴人として,表題登記がされた。 (甲1)(6) 坂戸市は,平成22年11月2日,控訴人から図面の提出を受け,本件家屋の評価を行った。 (乙9)(7) 坂戸市長は,平成22年12月1日,本件家屋の平成22年度家屋課税台帳に,控訴人を所有者として登録したうえ,平成21年12月新築,課税標準額1026万6176円,固定資産税相当額7万5497円,都市計画税相当額2万0532円と登録した。 (甲5)(8) 坂戸市長は,平成22年12月1日,控訴人に対し,本件家屋に係る平成22年度の固定資産税7万5400円及び都市計画税2万0500円(以下,両税を併せて「固定資産税等」ともいう。)を賦課した(以下,これらを併せて「本件賦課処分」という。)。 (争いのない事実)(9) 控訴人は,平成23年1月13日,坂戸市長に対し,本件賦課処分を不服として異議申立てをしたところ,坂戸市長は,平成23年2月9日,上記異議申立てを棄却した。 (甲4)- 3 -(10) 控訴人は,平成23年4月10日,本件訴えを提起した。 (争いのない事実) 3 法令の定め(以下,地方税法の規定については,法令名の記載を省略する。)(1) 固定資産税に関する用語の意義固定資産税について,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。 1 固定資産土地,家屋及び償却資産を総称する。 …(中略)… 9 固定資産課税台帳土地課税台帳,土地補充課税台帳,家屋課税台帳,家屋補充課税台帳及び償却資産課税台帳を総称する。 …(中略)… 土地,家屋及び償却資産を総称する。 …(中略)… 9 固定資産課税台帳土地課税台帳,土地補充課税台帳,家屋課税台帳,家屋補充課税台帳及び償却資産課税台帳を総称する。 …(中略)… 12 家屋課税台帳登記簿に登記されている家屋(建物の区分所有等に関する法律…(中略)…)について第381条第3項に規定する事項を登録した帳簿をいう。 13 家屋補充課税台帳登記簿に登記されている家屋以外の家屋でこの法律の規定によって固定資産税を課することができるものについて第381条第4項に規定する事項を登録した帳簿をいう。 (341条)(2) 固定資産税の課税客体等固定資産税は,固定資産に対し,当該固定資産所在の市町村において課する。 (342条1項)(3) 固定資産税の賦課期日固定資産税の賦課期日は,当該年度の初日の属する年の1月1日とする。 (359条)(4) 固定資産税の納税義務者- 4 -ア固定資産税は,固定資産の所有者(質権又は100年より永い存続期間の定めのある地上権の目的である土地については,その質権者又は地上権者とする。以下固定資産税について同様とする。)に課する。 (343条1項)イ前項の所有者とは,土地又は家屋については,登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者(区分所有に係る家屋については,当該家屋に係る建物の区分所有等に関する法律第2条第2項の区分所有者とする。以下固定資産税について同様とする。)として登記又は登録されている者をいう。この場合において,所有者として登記又は登録されている個人が賦課期日前に死亡しているとき,若しくは所有者として登記又は登録されている法人が同日前に消滅しているとき,又は所有者として登記されている第348条第1項の者が同日前に所有者でなく 録されている個人が賦課期日前に死亡しているとき,若しくは所有者として登記又は登録されている法人が同日前に消滅しているとき,又は所有者として登記されている第348条第1項の者が同日前に所有者でなくなっているときは,同日において当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする。 (343条2項)(5) 固定資産課税台帳の登録事項,備付け及び閲覧などア市町村は,固定資産の状況及び固定資産税の課税標準である固定資産の価格を明らかにするため,固定資産課税台帳を備えなければならない。 (380条1項)イ市町村長は,家屋課税台帳に,総務省令で定めるところによって,登記簿に登記されている家屋について不動産登記法第27条第3号及び第44条第1項各号に掲げる登記事項,所有権の登記名義人の住所及び氏名又は名称並びに当該家屋の基準年度の価格又は比準価格(第343条第2項後段及び同条第4項の場合にあっては,当該各項の規定によって固定資産税を課されることとなる者の住所及び氏名又は名称並びにその基準年度の価格又は比準価格)を登録しなければならない。 - 5 -(381条3項)ウ市町村長は,家屋補充課税台帳に,総務省令で定めるところによって,登記簿に登記されている家屋以外の家屋でこの法律の規定によって固定資産税を課することができるものの所有者の住所及び氏名又は名称並びにその所在,家屋番号,種類,構造,床面積及び基準年度の価格又は比準価格を登録しなければならない。 (381条4項)エ市町村長は,納税義務者その他の政令で定める者の求めに応じ,固定資産課税台帳のうちこれらの者に係る固定資産として政令で定めるものに関する事項が記載(…(中略)…)をされている部分又はその写し(…(中略)…)をこれらの者の閲覧に供しな 定める者の求めに応じ,固定資産課税台帳のうちこれらの者に係る固定資産として政令で定めるものに関する事項が記載(…(中略)…)をされている部分又はその写し(…(中略)…)をこれらの者の閲覧に供しなければならない。 (382条の2第1項)(6) 建物の表題登記の申請新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は,その所有権の取得の日から1月以内に,表題登記を申請しなければならない。 (不動産登記法47条1項)(7) 都市計画税ア市町村は,…(中略)…市街化区域…(中略)…内に所在する土地及び家屋に対し,その価格を課税標準として,当該土地又は家屋の所有者に都市計画税を課することができる。 (702条1項前段)イ …(中略)…前項の「所有者」とは,当該土地又は家屋に係る固定資産税について第343条(第3項,第8項及び第9項を除く。)において所有者とされ,又は所有者とみなされる者をいう。 (702条2項)- 6 -ウ都市計画税の賦課期日は,当該年度の初日の属する年の1月1日とする。 (702条の6) 4 争点家屋を新築して所有しているが,表題登記がされていないため,固定資産税の賦課期日である1月1日の時点においては,登記簿に所有者としての登記がされておらず,家屋補充課税台帳も作成されていない者に対してされた,当該年度の固定資産税及び都市計画税の賦課決定は適法か否か。 5 当事者の主張(被控訴人の主張)(1) 固定資産税は,固定資産を所有する事実に担税力を見出して課される財産税であるから,その納税義務者は,賦課期日である1月1日現在における固定資産の所有者であり(343条1項),1月1日現在において登記又は登録されている者だけに限定される理由はない。1月1日には未登記の家屋に ら,その納税義務者は,賦課期日である1月1日現在における固定資産の所有者であり(343条1項),1月1日現在において登記又は登録されている者だけに限定される理由はない。1月1日には未登記の家屋についても,1月1日に当該家屋が存在し,かつ,所有者が明らかな場合には,その所有者に課税することができると解すべきである。 控訴人は,平成22年1月1日の時点において本件家屋を所有していたのであるから,同人に対して本件家屋に係る平成22年度の固定資産税等を賦課した本件賦課決定に違法はない。 (2) 343条2項は,同条1項の所有者課税の大原則を受けて,課税技術の要請上から,所有者判定の基準として,登記名義人課税の原則を改めて規定したにすぎない。 また,同条2項前段は,登記簿又は家屋補充課税台帳への登記又は登録が,賦課期日の時点で存在することを要求しておらず,課税客体や所有者の固定資産課税台帳への登録が賦課期日後になったとしても何ら問題はないというべきである。 地方税法においては,市町村長が賦課期日である1月1日に登録されてい- 7 -なかった価格等をその後に固定資産課税台帳に登録することを認めている(410条1項,411条1項)ことからしても,1月1日の時点で登記又は登録が必要であるとは解されないというべきであって,法定納期限の翌日から起算して5年以内であれば,後日,固定資産課税台帳に登録し,課税客体の存した賦課期日に対応する年度分を遡及課税できるというべきである。 なお,固定資産税等の納税義務者については,既存家屋の所有権移転の場合には,賦課期日現在の登記簿の記載により判断されるが,新築家屋の場合には,賦課期日現在で家屋が完成しているか否かにより判断されるべきであって,所有権移転の場合は登記の受付日が基準となるのに対し,新築家屋の場 期日現在の登記簿の記載により判断されるが,新築家屋の場合には,賦課期日現在で家屋が完成しているか否かにより判断されるべきであって,所有権移転の場合は登記の受付日が基準となるのに対し,新築家屋の場合には登記の原因日が基準となるものと解するべきである。 (3) 仮に,控訴人主張のように解するとすると,家屋を建てた後も,表題登記を数年遅らせて遡って建築年月日を登記すれば,その間,固定資産税を免れることになり,不公平である。賦課期日に課税客体として固定資産が実在する以上,その所有者は固定資産税を支払うべきである。 (控訴人の主張)(1)ア固定資産税の賦課期日は,当該年度の初日の属する年の1月1日とされており(359条),固定資産税の納税義務者は賦課期日における固定資産の「所有者」である(343条1項)。この場合の「所有者」とは,家屋については,登記簿又は家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者をいう(同条2項)と定められている。すなわち,「1月1日の家屋の所有者として登記又は登録されている者」に対して課税するのではなく,「1月1日に家屋の所有者として登記又は登録されている者」に対して課税するということであり,このことは都市計画税についても同様である(702条2項,702条の6)。 イ登記簿又は家屋補充課税台帳への登記,登録が,賦課期日である1月1日に存することを要求していることは,最高裁昭和30年3月23日大法- 8 -廷判決が「1月1日現在において土地台帳若しくは土地補充課税台帳に所有者として登録されている者をいい」とし,最高裁昭和47年1月25日判決が「一定の時点に,所有者として登記または登録されている者を所有者として課税する」としていることや,地方税法に関する文献等からも明らかである。 ウちなみに,市町 ,最高裁昭和47年1月25日判決が「一定の時点に,所有者として登記または登録されている者を所有者として課税する」としていることや,地方税法に関する文献等からも明らかである。 ウちなみに,市町村民税については,「市町村内に住所を有する個人」に課することを定めた(294条1項1号)うえ,「前項1号の市町村内に住所を有する個人とは,住民基本台帳法の適用を受ける者については,当該市町村の住民基本台帳に記録されている者をいう。」(同条2項)とされているが,「市町村は,当該市町村の住民基本台帳に記録されていない個人が当該市町村内に住所を有する者である場合には,その者を当該住民基本台帳に記録されている者とみなして,その者に市町村民税を課することができる。」(同条3項)と規定を設けて,住民基本台帳に記録されていない個人についても,当該住民基本台帳に記録されている者とみなすこととしている。しかし,固定資産税については,このようなみなし規定は存在しない。 エそして,控訴人が,平成22年1月1日現在,本件家屋の所有者として登記簿に登記されておらず,かつ,家屋補充課税台帳にも登録されていなかったことは争いがなく,その後に当該家屋につき登記がされても,平成22年の固定資産税等の納税義務を生じるものではない。 オしたがって,本件賦課決定は違法であり,取り消されるべきである。 (2) 被控訴人は,新築家屋については,既存家屋の場合とは区別されるべきであると主張するが,地方税法は,新築家屋について例外規定を置かず,既存家屋の所有権移転の場合と区別していない。新築家屋について例外だとするのであれば,不動産取得税において,新築家屋の取得者についてみなし規定(73条の2第2項)があるように,明文の規定を置くべきである。 - 9 -課税要件充足の有無は,租 築家屋について例外だとするのであれば,不動産取得税において,新築家屋の取得者についてみなし規定(73条の2第2項)があるように,明文の規定を置くべきである。 - 9 -課税要件充足の有無は,租税法律主義から,税法の文理解釈により判断すべきものであり,これと異なる行政実例は判断の基準にはならない。 (3) 地方税法は,本件のような場合について,平成22年度分の固定資産税等を遡及的に課税することを予定しておらず,平成23年度の固定資産課税台帳の閲覧を経て,平成23年度から課税されるものと解すべきであって,遡及して課税できるとすれば,固定資産課税台帳の閲覧の機会を奪われたまま,いきなり課税されることになる。実際,坂戸市は,平成22年12月1日に本件家屋を家屋課税台帳に登録すると同時に納税通知書を発しており,台帳課税主義は全く骨抜きにされている。 課税客体が存在する以上,固定資産課税台帳に登録されていなくても,民法上の所有者をどこまでも探索して課税するというのでは,賦課期日制度を無視することになり,台帳課税主義を採用する必要もない。 (4) 家屋に対する固定資産税の前身は家屋税であるが,家屋税法9条は,「家屋税ハ納期開始ノ時ニ於テ家屋臺帳ニ所有者トシテ登録セラレタル者ヨリ之ヲ徴ス」とされていたものである。 (5) なお,新築建物の所有権を取得した者は,所有権取得の日から1か月以内に表題登記を申請しなければならないところ(不動産登記法47条1項),本件家屋の完成日は平成21年12月7日であるから,1か月以内である平成22年1月6日に登記申請をしたとしても何ら問題はない。この場合も平成22年1月1日現在において登記又は登録がないのであるから,平成22年度の固定資産税等を賦課できないことに変わりはない。そうすると,本件家屋の登記が平成22 たとしても何ら問題はない。この場合も平成22年1月1日現在において登記又は登録がないのであるから,平成22年度の固定資産税等を賦課できないことに変わりはない。そうすると,本件家屋の登記が平成22年10月8日になったことにより特に責められるべき問題があるとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 被控訴人は,固定資産税は固定資産を所有する事実に担税力を見出して課される財産税であり,343条1項によれば,その納税義務者は,賦課期日であ- 10 -る1月1日現在における家屋の所有者であるから,賦課期日である平成22年1月1日に現に本件家屋を所有していた者である控訴人に対してした本件賦課処分に違法はないと主張する。 2 そこで,本件賦課処分の適法性について検討する。 (1)ア固定資産税は,土地,家屋及び償却資産の資産価値に着目して課せられる物税であるが,地方税法は,その納税義務者について,343条1項において「固定資産税は,固定資産の所有者(質権又は100年より永い存続期間の定めのある地上権の目的である土地については,その質権者又は地上権者とする。以下固定資産税について同様とする。)に課する。」と定め,質権又は100年より永い存続期間の定めのある地上権の目的である土地については,その質権者又は地上権者に,それ以外の固定資産については,その「所有者」に固定資産税を課するとしているが,ここにいう「所有者」については,同条2項前段は,「前項の所有者とは,土地又は家屋については,登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者(区分所有に係る家屋については,当該家屋に係る建物の区分所有等に関する法律第2条第2項の区分所有者とする。以下固定資産税について同様とする。)として登記又は登録されている者をいう。」と定め,同条1項にいう に係る家屋については,当該家屋に係る建物の区分所有等に関する法律第2条第2項の区分所有者とする。以下固定資産税について同様とする。)として登記又は登録されている者をいう。」と定め,同条1項にいう「所有者」の意義を明らかにしている。 被控訴人は,同条2項前段は,登記簿上の所有名義人と真実の所有者が異なっていた場合において,固定資産税の納税義務者となる所有者について登記名義人課税の原則を改めて規定したものであるにすぎないと主張するが,同項の文言には何らの留保も置かれておらず,同項が,被控訴人主張のような特定の場合についてのみ1項の「所有者」の意義を定めたものと解すべき理由はない。 イそして,地方税法は,上記の例外として,「この場合において,所有者として登記又は登録されている個人が賦課期日前に死亡しているとき,若- 11 -しくは所有者として登記又は登録されている法人が同日前に消滅しているとき,又は所有者として登記されている第348条第1項の者が同日前に所有者でなくなっているときは,同日において当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする。」(343条2項後段)と定めて,①所有者として登記又は登録されている個人が賦課期日前に死亡しているとき,②所有者として登記又は登録されている法人が同日前に消滅しているとき,③所有者として登記されている348条1項の者が同日前に所有者でなくなっているときには,賦課期日において当該土地又は家屋を「現に所有している者」が343条1項の「所有者」であり,その者が納税義務者となることを定めている。 なお,そのほかに,地方税法においては,災害により所有者が不明であ るときや土地区画整理事業の施行に係る土地など一定の場合については,その使用者等をもって所有者とみなす旨の規定が設けられている(34 ,そのほかに,地方税法においては,災害により所有者が不明であ るときや土地区画整理事業の施行に係る土地など一定の場合については,その使用者等をもって所有者とみなす旨の規定が設けられている(343条4項ないし9項)。 ウこのように,343条1項にいう「所有者」とは,常に私法上の所有者と同義に用いられているものではなく,土地又は家屋について原則的に納税義務を負う者を定めた同項及び同条2項前段の規定における「所有者」とは,「登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者」をいい,前記イ掲記のないしに該当するときには,上記の例外として,賦課期日において当該土地又は家屋を「現に所有している者」すなわち私法上の所有者をいうものと定められている。 (2)アところで,地方税法は,「固定資産税の賦課期日は,当該年度の初日の属する年の1月1日とする。」(359条)と定め,固定資産税の課税要件を確定させて具体的な納税義務を発生させるための基準となる日を当該年度の初日の属する年の1月1日としている。 - 12 -そして,前記のとおり,343条1項及び2項前段による家屋の「所有者」とは,当該家屋について登記簿に所有者として登記され,又は家屋課税補充台帳に登録されている者をいうとされているのであるから,この点の課税要件の充足の有無は,賦課期日である1月1日において判断されるべきこととなる。 ちなみに,「賦課期日である1月1日に当該家屋について所有者として登記簿又は家屋補充課税台帳に登記又は登録されている者であること」が固定資産税の課税要件であることは,上記の者についてそのような登記がされている限り,同人が当該固定資産を現に所有してないことや,その後に当該固定資産の所有権を他に移転したことは,当該固 あること」が固定資産税の課税要件であることは,上記の者についてそのような登記がされている限り,同人が当該固定資産を現に所有してないことや,その後に当該固定資産の所有権を他に移転したことは,当該固定資産に係る固定資産税の納税義務の成立を左右しないと解されていること(最高裁判所昭和30年3月23日大法廷判決・昭和28年(オ)第616号・民集9巻3号336頁,最高裁判所昭和47年1月25日第三小法廷判決・昭和46年(オ)第766号・民集26巻1号1頁参照)からしても,明らかである。 イ(ア) これに対し,被控訴人は,納税義務を負うべき者は,当該固定資産を「現に所有している者」であり,その者について賦課期日の時点で登記又は登録されていることは課税の要件ではないと主張する。 (イ) しかし,343条2項前段が適用される場合における同条1項にいう「所有者」とは,私法上の所有者又は同条2項後段の「現に所有している者」と同義ではなく,「登記簿に所有者として登記され,又は家屋補充課税台帳に登録されている者」をいうのであり,これが課税要件とされていることは前述したとおりであるから,賦課期日より後に課税要件の一部が備わったとしても,特段の規定がない限り,納税義務の発生を肯定することはできない。 (ウ) 被控訴人は,417条1項において, 1月1日に登録されていなかった「価格等」を,後日,市町村長が固定資産課税台帳に登録すること- 13 -を認めていることから,賦課期日の時点で所有者として登記又は登録されていることは課税の要件ではないと主張するが,389条1項柱書によれば,417条1項にいう「価格等」の中に所有者が含まれないことは明らかであり,同項の規定によって価格等を決定し,又は決定された価格等を修正して,これを固定資産課税台帳に登録できるか 条1項柱書によれば,417条1項にいう「価格等」の中に所有者が含まれないことは明らかであり,同項の規定によって価格等を決定し,又は決定された価格等を修正して,これを固定資産課税台帳に登録できるからといって,被控訴人の主張のように解すべき根拠とはならない。 (エ) また,同343条2項後段の規定も,同項前段にいう「登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者(…略…)として登記又は登録されている者」とは,賦課期日における登記又は登録の内容を前提としていると解するのが自然である。 (オ) 被控訴人は,既存家屋の所有権移転の場合には,賦課期日現在の登記簿の記載が基準となるが,新築家屋の場合には,これと区別して,賦課期日現在で家屋が完成しているか否かを基準とすべき旨を主張するが,賦課期日が設けられた意味については,前記アに記載したとおりであって,課税要件の確定について,既存家屋の所有権移転の場合と新築家屋の場合とを別異に取り扱う旨の定めは設けられておらず,同一の法令上の文言を二義的に解釈すべき根拠はない。 (カ) したがって,被控訴人の上記主張は理由がない。 (3) 以上によれば,家屋については,これを現実に所有している者であっても,賦課期日である1月1日に登記簿又は家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されていない限り,343条1項及び2項前段の規定に基づいて固定資産税の納税義務を負うことはないというべきである。 そして,これを本件についてみると,控訴人は,平成22年度の賦課期日である平成22年1月1日において,本件家屋の登記記録に所有者として記録されたり,家屋補充課税台帳に登録されていた者ではないのであるから,- 14 -控訴人が343条1項及び2項前段の規定に基づいて本件家屋に係る同年度の納税義務を負う者で 登記記録に所有者として記録されたり,家屋補充課税台帳に登録されていた者ではないのであるから,- 14 -控訴人が343条1項及び2項前段の規定に基づいて本件家屋に係る同年度の納税義務を負う者ではないことは明らかである。 また,都市計画税は,市街化区域内に所在する土地及び家屋の「所有者」が納税義務者とされ(702条1項前段),その場合の「所有者とは,当該土地又は家屋に係る固定資産税について第343条(第3項,第8項及び第9項を除く。)において所有者とされ,又は所有者とみなされる者をいう。」とされている(702条2項)が,控訴人が343条において所有者とされ又は所有者とみなされる者とはいえないことは前述したとおりであるから,控訴人は平成22年度の都市計画税の納税義務を負う者にも該当しない。 ちなみに, 控訴人は,平成21年12月7日に本件家屋の所有権を取得したものであるから,不動産登記法47条1項の規定によっても,平成22年1月1日までに表題登記の申請をしなければならない義務はなく,368条1項の規定による追徴を受ける理由も存在しない。 (4)ア被控訴人は,このように解した場合には,家屋を新築した後,表題登記を数年遅らせて遡って建築年月日を登記すれば,固定資産税を数年間免れることになり,不公平であると主張する。 イ確かに,固定資産税は,土地,家屋及び償却資産の資産価値に着目して課せられる物税であるから,賦課期日において当該固定資産を現実に所有する者に課すのが最もその趣旨に沿うというべきであるが,他方,極めて大量に存在する固定資産税の対象物件について,市町村において,その現実の所有者を逐一正確に把握することは困難である。そこで,土地及び家屋の固定資産税については,原則として固定資産の登記を基準とするという仕組みを採用をすること 象物件について,市町村において,その現実の所有者を逐一正確に把握することは困難である。そこで,土地及び家屋の固定資産税については,原則として固定資産の登記を基準とするという仕組みを採用をすることによって,課税事務を円滑かつ迅速に行うことを可能としたものと解される。 その結果,前述のとおり,1月1日に所有者として登記簿に登記されている者は,所有者であってもなくても,また,その後所有権の移転があっ- 15 -ても,その年の4月1日に始まる年度の固定資産税の納税義務を負うものとされているのであって,このように当該固定資産の実質的所有者が必ずしも固定資産税の納税義務者とならない事態が生じることは,土地又は家屋の固定資産税について前記のような課税技術が採用された帰結としてやむを得ないものというべきである。 ウまた,家屋が新築された場合には,不動産登記法は,「新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は,その所有権の取得の日から1月以内に,表題登記を申請しなければならない。」(同法47条1項)として,所有権を取得した者に1か月の期間内に表題登記を申請することを義務付けているところ,地方税法は,「登記所は,土地又は建物の表示に関する登記をしたときは,10日以内に,その旨を当該土地又は家屋の所在地の市町村長に通知しなければならない。」(382条1項)と定めて,登記所に通知義務を課し,「市町村長は,前2項の規定による登記所からの通知を受けた場合においては,遅滞なく,当該土地又は家屋についての異動を土地課税台帳又は家屋課税台帳に記載(当該土地課税台帳又は家屋課税台帳の備付けが第380条第2項の規定により電磁的記録の備付けをもって行われている場合にあっては,記録。以下本項において同じ。)をし,又はこれに記載をされた事項 に記載(当該土地課税台帳又は家屋課税台帳の備付けが第380条第2項の規定により電磁的記録の備付けをもって行われている場合にあっては,記録。以下本項において同じ。)をし,又はこれに記載をされた事項を訂正しなければならない。」(382条3項)と定めて,家屋が新築されて特定の者が所有権を取得した事実が家屋課税台帳に反映される仕組みを設けている。 そして,上記の家屋の所有権を取得した者が不動産登記法47条1項に基づく申請を怠ったときは,10万円以下の過料に処することとされており(同法164条),地方税法においても,「市町村長は,登記簿に登記されるべき土地又は家屋が登記されていないため,又は地目その他登記されている事項が事実と相違するため課税上支障があると認める場合においては,当該土地又は家屋の所在地を管轄する登記所にそのすべき登記又- 16 -は登記されている事項の修正その他の措置をとるべきことを申し出ることができる。この場合において,当該登記所は,その申出を相当と認めるときは,遅滞なく,その申出に係る登記又は登記されている事項の修正その他の措置をとり,その申出を相当でないと認めるときは,遅滞なく,その旨を市町村長に通知しなければならない。」(381条7項)との規定が設けられている。 さらに,同条4項は,登記簿に登記されている以外の家屋については,「市町村長は,家屋補充課税台帳に,総務省令で定めるところによって,登記簿に登記されている家屋以外の家屋でこの法律の規定によって固定資産税を課することができるものの所有者の住所及び氏名又は名称並びにその所在,家屋番号,種類,構造,床面積及び基準年度の価格又は比準価格を登録しなければならない。」(381条4項)ものとされている。 したがって,これらの仕組みの下では,市町村長が,適切にその権限を その所在,家屋番号,種類,構造,床面積及び基準年度の価格又は比準価格を登録しなければならない。」(381条4項)ものとされている。 したがって,これらの仕組みの下では,市町村長が,適切にその権限を行使することによって,被控訴人が主張するような事態は相当程度回避できるものと認められ,それでも課税が困難なものが生じるとしても,そのことは,現行法の仕組みの下では避けられないものであり,必要があれば立法による手当てがされるべきであって,そのために,課税要件を法の文言を離れて多義的・便宜的に解釈したり,法の定めていない要件を付加して解釈適用することは許されない。 (5) 以上のとおり,控訴人は本件家屋に係る平成22年度の固定資産税及び都市計画税の納税義務者とは認められないから,本件賦課処分は違法である。 3 よって,本訴請求は理由があるから,原判決を取り消したうえ,控訴人の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第7民事部 - 17 -裁判長裁判官市村陽典 裁判官齊木利夫 裁判官清水響 (原裁判等の表示) 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求坂戸市長Aが原告に対し,別紙物件目録記載の家屋につき,平成22年12月1日付けでなした平成22年度固定資産税7万5400円,同年度都市計画税2万0500円の賦課処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,平成21年12月7日に新築された別紙物件目録記載の家屋(本件家屋)につき坂戸市長から平成22年度固定資産税及び都市計画税(固定資産税等)の賦課処分( 処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,平成21年12月7日に新築された別紙物件目録記載の家屋(本件家屋)につき坂戸市長から平成22年度固定資産税及び都市計画税(固定資産税等)の賦課処分(本件処分)を受けた原告が,本件処分に係る賦課期日である平成22年1月1日時点において原告は本件家屋の登記簿にも家屋補充課税台帳にも所有者として登記又は登録をされていなかったのであるから,原告は平成22年度の固定資産税等の納税義務者ではなく,したがって本件処分は地方税法(法)に反し違法であると主張して,同処分の取消しを求めている事案である。 1 争いのない事実(証拠等により容易に認定できる事実については,かっこ内- 18 -に証拠を示す。)(1) 原告は,平成21年12月7日,本件家屋を新築した。 (2) 本件家屋について,平成22年1月1日時点では,登記簿にも家屋補充課税台帳にも原告名義の登記又は登録がなかった。その後,平成22年10月8日付けで,登記原因を「平成21年12月7日新築」とし,所有者を原告とする表示登記がされ,同年12月1日には,所有者を原告として「平成22年度家屋課税台帳兼補充台帳」に登録された。(甲1,5)(3) 坂戸市長は,平成22年12月1日付けで,原告に対し,平成22年度の固定資産税7万5400円及び都市計画税2万0500円を賦課した(本件処分)。 (4) 原告は,本件処分を不服として,平成23年1月13日,坂戸市長に対し異議申立てをした。 これに対し,坂戸市長は,平成23年2月9日付けで,上記異議申立てを棄却する決定をした。(甲4)(5) 原告は,平成23年4月10日,本件訴えを提起した。 2 争点原告は平成22年度の固定資産税等の納税義務を負うか。 3 争点に関する当事者の主張(被告の主張) 決定をした。(甲4)(5) 原告は,平成23年4月10日,本件訴えを提起した。 2 争点原告は平成22年度の固定資産税等の納税義務を負うか。 3 争点に関する当事者の主張(被告の主張)原告は,平成22年度の固定資産税等の納税義務を負う。 納税義務者は,固定資産の所有者である(法343条1項)が,賦課期日である1月1日現在における家屋の所有者であればよく,1月1日現在に登記又は登録されている者だけに限定されない。1月1日に未登記の家屋であっても,1月1日に存在し所有者が明らかな場合には課税することができるのである。 原告は,平成22年1月1日現在において,本件家屋の所有者として登記も登録もされていなかったが,同日現在における本件家屋の所有者で,平成22年度の家屋課税台帳に登録されるべき者であり,当該年度の固定資産税等の納税義務者であ- 19 -る。原告が主張するような考えがまかり通るとすれば,家屋を建てた後,表示登記を数年遅らせて遡って建築年月日を登記すれば,固定資産税を数年間免れることになり,不公平である。 納税義務者については,新築家屋の場合には,賦課期日現在家屋が完成しているか否かにより判断され,所有権移転の場合には,賦課期日現在の登記簿の記載により判断されるものである。新築家屋と既存家屋の所有権移転の場合の法の解釈は異なるのであり,原告の主張は,所有権移転の場合の解釈を新築家屋の場合に当てはめたもので,失当である。 (原告の主張)固定資産税の賦課期日は,当該年度の初日の属する年の1月1日とされており(法359条),固定資産税の納税義務者は賦課期日における固定資産の「所有者」である(法343条1項)。この場合の「所有者」とは,土地又は家屋については,登記簿又は土地補充課税台帳もしくは家屋補充課税台帳に所有者 ,固定資産税の納税義務者は賦課期日における固定資産の「所有者」である(法343条1項)。この場合の「所有者」とは,土地又は家屋については,登記簿又は土地補充課税台帳もしくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者をいう(同条2項)。すなわち,「1月1日の家屋の所有者として登記又は登録されている者」に対して課税するのではなく,「1月1日に家屋の所有者として登記又は登録されている者」に対して課税するということであり,このことは都市計画税についても同様である(法702条2項,702条の6)。原告が,平成22年1月1日現在,本件家屋の所有者として登記簿に登録されておらず,かつ,家屋補充課税台帳にも登録されていなかったことは争いがないから,その後に当該家屋につき登録がなされても平成22年度の固定資産税等については課税できないはずである。 本件のようなケースでは,平成22年度について遡及的に課税することを法は予定しておらず,翌平成23年度における固定資産課税台帳の縦覧を経て,平成23年度から課税されることになるだけのことである。平成22年度について遡及して課税できるとすれば,本来ならば固定資産課税台帳の縦覧の機会を与えられるべきであるのに,このような機会を奪われ,いきなり課税されることになり,不当であ- 20 -る。 個人に係る市町村民税については,賦課期日である1月1日現在,住民基本台帳に登録されていなくても,1月1日現在当該市町村内に住所を有する者を住民基本台帳に記録されている者とみなす旨のみなし規定が置かれている(法294条3項)のに対し,固定資産税についてはこのようなみなし規定が置かれていない。このような市町村民税との対比においても,賦課期日の時点において登記簿又は家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されていなく のに対し,固定資産税についてはこのようなみなし規定が置かれていない。このような市町村民税との対比においても,賦課期日の時点において登記簿又は家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されていなくてもよいとする解釈は誤りであることが明らかである。 納税義務者につき,新築家屋の場合と既存家屋の所有権移転の場合とを分けて規定する条文は存在せず,これらを分けて論ずる被告の主張は独自の解釈に過ぎない。 被告が,新築家屋について法の明文の規定なくして例外を認めるというならば,それは立法論であって解釈論ではない。 新築建物の所有権を取得した者は,所有権取得の日から1か月以内に表題登記を申請しなければならないところ(不動産登記法47条1項),本件家屋の完成日は平成21年12月7日であるから,1か月以内である平成22年1月6日に登記申請をしたとしても何ら問題はなく,この場合でも平成22年1月1日現在においては登記又は登録がないのであるから,平成22年度の固定資産税等は賦課できないことに変わりはない。そうすると,本件家屋の登記が平成22年10月8日になったことにより特に責められるべき問題があるとはいえない。これは,賦課期日制度を採用している以上やむを得ないものである。 第3 当裁判所の判断 1 固定資産税について(1) 地方税法上,固定資産税の課税客体は,土地,家屋及び償却資産(固定資産)とされ(法342条1項,341条1号),納税義務者は,固定資産の所有者とされる(法343条1項)。そして,これらの課税要件を確定するための基準日として,賦課期日が,当該年度の初日の属する年の1月1日と定められている(法35- 21 -9条)。すなわち,固定資産税の課税客体は,賦課期日現在において当該市町村に所在する固定資産であり,納税義務者は,賦課期日現在にお 年度の初日の属する年の1月1日と定められている(法35- 21 -9条)。すなわち,固定資産税の課税客体は,賦課期日現在において当該市町村に所在する固定資産であり,納税義務者は,賦課期日現在における固定資産の所有者ということになる。 (2) 新築家屋が課税客体となる時期は,一連の新築工事が完了した時点であると解されるところ(最高裁昭和59年12月7日第二小法廷判決・民集38巻12号1287頁),本件において,本件家屋に係る一連の新築工事が平成21年12月7日に完了したことは当事者間に争いがないから,平成22年度の固定資産税の賦課期日である平成22年1月1日現在において,課税客体である本件家屋が所在したものと認められる。そして,同日現在における本件家屋の所有者が原告であることについても争いがない。そうである以上,賦課期日現在において現に課税客体として存在する本件家屋の賦課期日現在における所有者である原告は,平成22年度の固定資産税の納税義務者として,納税義務を負うものというべきである。 (3) これに対し,原告は,原告が納税義務を負わないことの根拠として,賦課期日である平成22年1月1日現在において,原告が登記簿にも家屋補充課税台帳にも所有者として登記又は登録されていなかったことを主張するので,この点について検討する。 前述のとおり,固定資産税の納税義務者は固定資産の所有者であるところ(法343条1項),ここにおける「所有者」とは,家屋については,登記簿又は家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者をいうとされる(同条2項前段)。このように,納税義務者の決定においては,登記簿に所有者として登記されている者が原則として当然に納税義務者となるという意味において,「登記名義人課税の原則」が採用されているということができる。不 )。このように,納税義務者の決定においては,登記簿に所有者として登記されている者が原則として当然に納税義務者となるという意味において,「登記名義人課税の原則」が採用されているということができる。不動産について登記簿の記載と異なる真実の所有者を判定するのは容易でないこと,かかる判断は窮極的には司法判断に属するものであって行政庁がするには適さないこと,複雑多岐な私法上の実体関係に課税庁が介入することは一律大量処理の観点からも妥当でないことなどから,これらの考慮と円滑迅速な課税という課税技術上の要請に基づき,所有者判- 22 -定の基準として,上記のような登記名義人課税の原則が採用されたものと解される。 したがって,所有権が移転されたにもかかわらずその旨の登記がされていない場合等,登記簿上の所有名義人と真実の所有者が異なり得る場合には,賦課期日現在における登記簿の記載を基準として所有者を判定し,登記簿上の所有名義人に課税することとなるのである。もっとも,固定資産税は,固定資産の資産価値に着目し,その所有の事実に担税力を見出して課される一種の財産税であると解されることからすれば,固定資産税の実質的な負担者は,固定資産の真実の所有者であるべきであって,「固定資産税は,固定資産の所有者……に課する。」とする法343条1項の規定も,この原則を明らかにしたものということができる。このため,登記簿上の所有名義人が真実の所有者と異なった場合,登記名義人課税の原則により固定資産税を課税されてこれを納付した登記簿上の所有名義人は,真実の所有者に対して不当利得返還請求をすることができるのであって(最高裁昭和47年1月25日第三小法廷判決・民集26巻1号1頁),固定資産の真実の所有者が固定資産税の実質的な負担者となるべきとの原則はこの限りで維持されるものである。 をすることができるのであって(最高裁昭和47年1月25日第三小法廷判決・民集26巻1号1頁),固定資産の真実の所有者が固定資産税の実質的な負担者となるべきとの原則はこの限りで維持されるものである。 このように,登記名義人課税の原則が,所有者判定の基準として課税技術上採られた措置に過ぎないことに鑑みれば,この原則は,既存の家屋についての所有権移転の場合と異なり,新築家屋について,賦課期日現在における登記簿への登記又は家屋補充課税台帳への登録を要求する趣旨のものではなく,賦課期日現在において未登記であっても,課税客体として存在する以上は,その所有者が固定資産税の納税義務者となることに何ら問題はないというべきである。そして,このことは,固定資産の所有の事実に担税力を見出して課される一種の財産税としての固定資産税の性格からも認められるものである。そうであれば,固定資産税を賦課する段階において,登記簿又は家屋補充課税台帳の記載を基準として所有者を判定すれば足りるのであり,所有者判定の基準としての登記名義人課税の原則が,賦課期日現在において存在する新築家屋について,賦課期日時点で未登記の場合に固定資産税の納税義務を誰も負わないとの趣旨を含むものとまで解することはできない(法343- 23 -条2項前段も,文理上,登記簿又は家屋補充課税台帳への登記又は登録が,賦課期日の時点においてなされていることを要求していない。)。したがって,このような場合には,固定資産税の納税義務者として課税するために,賦課期日現在において登記簿又は家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている必要はなく,賦課決定処分時に賦課期日における所有者として登記又は登録されていれば足りると解するのが相当である。原告の主張は,所有者の判定基準としての登記名義人課税の原則と,課 記又は登録されている必要はなく,賦課決定処分時に賦課期日における所有者として登記又は登録されていれば足りると解するのが相当である。原告の主張は,所有者の判定基準としての登記名義人課税の原則と,課税要件の確定に関し,基準日後に権利変動しても納税義務者の変動が生じないものとして徴税の便宜を図る賦課期日の制度とを混同したものであって,採用することができない。 なお,原告は,納税義務者のみなし規定が置かれている市町村民税との対比からも,固定資産税については賦課期日現在において登記簿又は家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている必要があると主張する。しかしながら,かかる主張も登記名義人課税の原則と賦課期日の制度とを混同したものといえるし,上記規定は住所の判定基準である住民基本台帳に記録されないまま課税することを認めるものであって(法294条3項,4項参照),登記簿及び家屋課税台帳兼補充台帳の記載に従って課税する本件とは場面を異にし,採用することができない。 (4) 以上より,原告は,賦課期日である平成22年1月1日現在における本件家屋の所有者として,平成22年度の固定資産税の納税義務者となる。坂戸市の担当者は,平成22年12月1日,本件家屋の所有者,所在及び評価額等を家屋課税台帳兼補充台帳に登録し,かかる台帳に基づき,同日付けで原告に対し固定資産税を賦課したものであるから,本件処分に違法な点はない。 2 都市計画税について(1) 都市計画税は,都市計画法5条の規定により都市計画区域として指定されたもののうち,市街化区域内に所在する土地及び家屋に対し,その価格を課税標準として,当該土地又は家屋の所有者に課される(法702条1項)。ここにおける「所有者」とは,当該土地又は家屋に係る固定資産税について法343条において所有- 24 び家屋に対し,その価格を課税標準として,当該土地又は家屋の所有者に課される(法702条1項)。ここにおける「所有者」とは,当該土地又は家屋に係る固定資産税について法343条において所有- 24 -者とされ,又は所有者とみなされる者をいう(法702条2項)。都市計画税の賦課期日は,当該年度の初日の属する年の1月1日である(法702条の6)。 (2) これらの規定からすれば,都市計画税の納税義務者についても固定資産税と同様に解することができるから,前記1で述べたのと同様,原告は,平成22年度の都市計画税についても納税義務者となる。 第4 結論以上によれば,原告は,本件家屋について平成22年度の固定資産税等の納税義務者となるから,本件処分は適法である。よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 さいたま地方裁判所第4民事部 裁判長裁判官原啓一郎 裁判官古河謙一 裁判官高部祐未

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