平成23(ワ)7858等 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年3月28日 大阪地方裁判所
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判決文本文29,009 文字)

平成25年3月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(ワ)第7858号商号使用差止等請求事件(以下「第1事件」という。)平成23年(ワ)第12421号損害賠償請求事件(以下「第2事件」という。)口頭弁論終結日平成25年1月18日判決原告サンヨーホームズ株式会社 同訴訟代理人弁護士比嘉廉丈同比嘉邦子同川上確同橋本匡弘同酒井美奈被告三洋電機株式会社同訴訟代理人弁護士岡田春夫同長 谷 川          裕同斎藤綾 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨被告は,原告に対し,金6億2707万4036円及びこれに対する平成23年4月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え(第1事件に係る訴えについては,後記のとおり取り下げ済みである。)第2 事案の概要本件は,かつて被告の子会社であり,別紙本件ブランド等目録記載のロゴ及び被告が商標権を有する同目録記載の登録商標(以下,ロゴと登録商標を併せて「本件ブランド商標」という。)を使用していた原告が,被告との資本関係を解消する際に,本件ブランド商標を付した看板等を変更するために多額の費用を支出したことにつき,被告に対し,主位的に債務不履行に基づく損害賠償請求,予備的に費用負担の合意に基づく ,被告との資本関係を解消する際に,本件ブランド商標を付した看板等を変更するために多額の費用を支出したことにつき,被告に対し,主位的に債務不履行に基づく損害賠償請求,予備的に費用負担の合意に基づく支払請求又は不法行為に基づく損害賠償請求をした事案である。 なお,被告は,原告ほか2社を相手方として,商号の使用差止等を求める第1事件を提起し,その後に原告が第2事件を提起して上記請求をしたため,当庁において両事件の弁論を併合したところ,原告ほか2社が商号を変更したことから,被告は第1事件に係る訴えをいずれも取り下げた(併合した弁論の分離はされていない。)。 1 判断の基礎となる事実争いのない事実,掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(なお,以下,第1事件(併合の前後を問わない。)で提出された証拠は第1事件甲,第1事件乙などと標記し,第2事件(併合前)で提出された証拠は第2事件甲,第2事件乙などと表記する。)。 (1) 当事者原告は,建物・建築物の設計,施工,販売等を目的とする法人である(第2事件甲1)。 被告は,各種電気機械器具及び電気照明器具等の製造,販売等を目的とする法人である(第2事件甲2)。 (2) 原告と被告との関係ア原告は,昭和44年,久保田鉄工株式会社(現在の株式会社クボタ。以下「クボタ」という。)の全額出資によって設立され,当時の商号は「クボタハウス株式会社」であった(第2事件甲1)。イ原告は,平成14年4月,被告の完全子会社となり,その商号を「三洋ホームズ株式会社」に変更した(第2事件甲1。以下「本件商号」という。)。ウ平成18年以降,原告についての被告の持ち株比率は低下し,平成20年4月25日には19 を「三洋ホームズ株式会社」に変更した(第2事件甲1。以下「本件商号」という。)。ウ平成18年以降,原告についての被告の持ち株比率は低下し,平成20年4月25日には19.91%となり,平成23年6月7日には資本関係が完全に解消された(第1事件甲12の1~3)。 (3) 本件商号契約,本件ブランド契約ア本件商号契約原告と被告は,平成21年3月16日,商号使用許諾契約を締結した(第1事件甲18。以下「本件商号契約」といい,第1事件甲18の契約書を「本件商号契約書」という。)。 本件商号契約では,被告は,原告に対し,商号の一部に「三洋」を含めること(以下,このような商号を「三洋商号」という。)を承諾し,原告が商号として「三洋ホームズ株式会社」(本件商号)を使用することに異議を唱えない(1条)とされた。その一方で,同契約の期間は平成23年3月31日まで(但し,被告から,契約満了の1年前までに書面で再契約の申し入れがあった場合は,新たな契約の締結について,原被告は協議する。)とされ(3条1項),契約が終了した場合,原告は,直ちに三洋商号の使用を中止する(4条1項)とされた。 イ本件ブランド契約また,原告と被告は,同日,ブランド使用許諾契約を締結した(第1事件甲33・第2事件甲7。以下「本件ブランド契約」といい,第1事件甲33・第2事件甲7の契約書を「本件ブランド契約書」という。)。 本件ブランド契約では,被告は,原告に対し,本件ブランド商標を名刺,封筒,看板等に自社を表すマークとして使用すること等について,非独占的使用権を許諾し(2条),原告は,対価として売上総額に0.2%を乗じて算出した額のロイヤリティを支払うものとされた(8条)。その一方で,同契約の期間は平成23年3月31日 ること等について,非独占的使用権を許諾し(2条),原告は,対価として売上総額に0.2%を乗じて算出した額のロイヤリティを支払うものとされた(8条)。その一方で,同契約の期間は平成23年3月31日まで(但し,被告から,契約満了の1年前までに書面で再契約の申し入れがあった場合は,新たな契約の締結について,原被告は協議する。)とされ(17条),契約が終了した場合,原告は,いかなる対象物又は媒体上にも本件ブランド商標を使用してはならず,使用が禁止された対象物もしくは媒体のすべてを被告の指示に従って,無償で引き渡すか,破棄することに同意するものとされた(19条)。 (4) 原告による本件商号,本件ブランド商標使用の取りやめア原告は,平成23年3月頃から,看板,のぼり,旗,垂れ幕等における本件ブランド商標の使用を順次取りやめており(以下「本件商標変更」という。),その費用を負担した(第2事件甲26~28)。 イまた,原告は,平成24年12月21日に,商号を「三洋ホームズ株式会社」(本件商号)から「サンヨーホームズ株式会社」に変更した(第1事件乙25)。 2 争点(1) 債務不履行に基づく損害賠償請求ア被告は原告に対し本件ブランド商標を使用させる義務を負っていたか(争点1-1)イ被告の債務不履行と原告の主張する損害との因果関係があるか(争点1-2)(2) 費用負担の合意に基づく支払請求ア原被告間で,本件ブランド契約締結時に,契約が短期間で打ち切られた場合には,本件商標変更に要する費用を被告が負担する旨の合意があったか (争点2-1)イ原被告間で,本件ブランド契約締結後に,本件商標変更に要する費用 には,本件商標変更に要する費用を被告が負担する旨の合意があったか (争点2-1)イ原被告間で,本件ブランド契約締結後に,本件商標変更に要する費用を被告が負担する旨の合意があったか (争点2-2)(3) 不法行為に基づく損害賠償請求被告の本件商標変更の費用負担に関する交渉での対応が不法行為を構成するか (争点3)(4) 原告の損害又は費用の額 (争点4)第3 争点に係る当事者の主張 1 債務不履行に基づく損害賠償請求(1) 争点1-1(被告は原告に対し本件ブランド商標を使用させる義務を負っていたか)について【原告の主張】ア平成22年5月2日に本件ブランド契約の再契約が成立したこと(ア) 本件ブランド契約は,原告による本件ブランド商標の使用を短期間に限定する趣旨ではない。 本件ブランド契約は,コーポレート・ブランドである本件ブランド商標を使用許諾の対象としているところ,一般に,企業は,コーポレート・ブランドが短期間に変更されることを望まず,短期間に限定される趣旨の使用許諾契約を締結するはずがない。また,原告及び被告は,グループ会社の関係でなくなった後も良好な関係にあり,原告は,本件ブランド商標を使用すると共に(第2事件乙3),被告の売上げに貢献し,2年間で1億7000万円弱のロイヤリティを被告に支払っており,このような多額のロイヤリティが発生する以上,契約期間を短期間に限定する趣旨とは解されない。 また,被告が他社と締結した本件ブランド商標の使用許諾契約では,契約を自動的に更新する旨の条項があり( 多額のロイヤリティが発生する以上,契約期間を短期間に限定する趣旨とは解されない。 また,被告が他社と締結した本件ブランド商標の使用許諾契約では,契約を自動的に更新する旨の条項があり(第2事件甲25),本件ブランド契約も同趣旨の契約であったと解される。また,本件ブランド契約の更新に関する条項は,平成20年4月1日作成案(第2事件甲5。以下「第1案」という。)には存在していたのが,平成21年3月2日作成案(第2事件甲6。以下「第2案」という。)で削除された後,最終的には復活しており,原被告間には,契約更新又は再契約を認める趣旨の合意があったとみるべきである。 (イ) 本件ブランド契約では,原告から契約満了の1年前までに書面で再契約の申し入れがあった場合は,新たな契約の締結について原被告は協議すると定めている(17条但し書き)。また,原被告間で紛争が生じた場合,原被告は90日以内に和解による解決のためあらゆる可能性を追求するものと定めているが(22条),これは,原告が以前,商号及びブランドを変更した際に多大な費用,時間及び労力を要したことに鑑み,万が一紛争が生じた場合には,一定期間内に迅速かつ柔軟にその紛争を解決し,原告に負担が生じないようにする趣旨である。 (ウ) 被告は,本件ブランド契約当時,被告が原被告間のグループ関係を解消した後も,原告の筆頭株主として良好な協力関係を維持する旨述べていたことから,平成23年4月1日以降も,再契約により本件ブランド商標の使用を継続できるものと思っていた。 そして,実際,平成22年1月,被告のP4部長から原告のP5専務(同年6月からは原告の特別顧問である。)に対し,本件ブランド契約等の再契約の申入れを失念しないようにとの指示があり,原告は,同年2月1日,被告に対し 成22年1月,被告のP4部長から原告のP5専務(同年6月からは原告の特別顧問である。)に対し,本件ブランド契約等の再契約の申入れを失念しないようにとの指示があり,原告は,同年2月1日,被告に対し,本件ブランド契約の再契約の申入れを行った(第2事件甲9)。 これに対し,被告は,原告の申入れから90日の間に,その諾否の回答及び協議の申入れを行わなかった。 (エ) 以上のとおり,コーポレート・ブランドの重要性,ロイヤリティの支払等の事情を総合して考慮すれば,本件ブランド契約は,原告による再契約の申入れから90日が経過した平成22年5月2日の時点で,再契約が成立したものと解すべきであり,被告は,平成23年4月1日以降も,原告に本件ブランド商標を使用させる債務がある。イ平成22年5月31日に再契約の合意があったこと被告は,同月27日に,原告に対し,再契約の申入れを拒絶する旨を述 べ(第2事件甲10),翌28日,原告のP1社長に対し,被告のP2社長から,再契約の申入れについて,①継続的なブランド使用の必要性,②被告の製品のこれまでの積極的,優先販売の実績及び今後の見通し,③海外展開の予定,④ロイヤリティの支払について具体的な記載を追加して欲しい旨の指示をした。原告は,この指示に基づき,同月31日,再度,再契約の申入れを行ったところ,同日,被告のP2社長から原告のP1社長に,これを了解する旨の電話があった。したがって,遅くとも平成22年5月31日には,原被告間に本件ブランド契約の再契約が成立しており,被告は,平成23年4月1日以降も,原告に本件ブランド商標を使用させる債務がある。 ウ再契約締結の拒絶は信義則に反することなお,原告は,平成14年にコーポレート・ブランドを本件ブランド商標に変更 成23年4月1日以降も,原告に本件ブランド商標を使用させる債務がある。 ウ再契約締結の拒絶は信義則に反することなお,原告は,平成14年にコーポレート・ブランドを本件ブランド商標に変更した際,約3億円もの費用を要し(第2事件甲29,30),本件ブランド契約に基づくロイヤリティとして2年間で1億7000万円を負担している。これに加えて,本件商標変更の費用として6億円も支出することは,原告にとって極めて大きな負担になる。それにもかかわらず,被告が原告に対し再契約の期待をもたせるような対応をとったことは信義則に反するものであって,被告の再契約締結の拒絶は,権利濫用として許されない。 【被告の主張】ア本件ブランド契約の再契約は成立していないこと(ア) 被告は,産業界でのコーポレート・ブランドを重要視する流れを受け,子会社での本件ブランド商標及び三洋商号の使用に関する権利義務関係を明確にするため,平成19年頃,これらの使用について,ブランド使用料を徴収する制度を創設した。原告との本件ブランド契約もその中で締結されたものである。しかしながら,原告については,当初,他の子会社と同様,本件ブランド商標と三洋商号を一体とする契約であることを考慮しつつ,契約更新については,他の子会社と異なり,合意がなければ契約更新しないものとされていた(第1案の19条但し書き。第2事件甲25参照)。その後,原告については,特に,三洋商号を子会社が無断で使用したこと,資本関係の希薄化・解消が見込まれていたこと,被告自身がパナソニック株式会社の子会社となることが予定されたことなどから,原告が本件ブランド商標を使用できなくなることが予想されたため,本件ブランド商標と商号とを別々の契約として締結することとなり,平成21 ナソニック株式会社の子会社となることが予定されたことなどから,原告が本件ブランド商標を使用できなくなることが予想されたため,本件ブランド商標と商号とを別々の契約として締結することとなり,平成21年3月2日頃,契約の終期のみを定め,延長や更新を想定しない内容の契約書案を作成した(第2案の17条)。その後,原告から使用継続の可能性の打診を受けたため,本件ブランド契約には,再契約の申入れがあった場合の協議に関する条項が設けられたが(17条但し書き),文言上明らかなように,自動延長又は自動更新の定めではなく,合意することができれば再契約の締結があり得るという趣旨にすぎない。(イ) 原告は,被告は,原告による再契約の申入れから90日の間に原告に対し回答や協議の申入れをしなかったため,90日を経過した時点,すなわち平成22年5月2日に再契約が成立していたと主張する。しかしながら,そもそも,本件ブランド契約において,再契約の申入れから90日が経過した時点で,再契約が成立したものとみなす旨の規定は一切ない上,本件ブランド契約締結の経緯からしても,本件ブランド契約は,再契約の申入れから一定期間の経過によって自動的に再契約が締結される趣旨でないことは明らかである。 なお,原告は,被告は再契約の申入れに対し何ら回答や協議の申入れをしなかったと述べるが,被告は,平成22年4月7日,再契約の締結 に関する協議の場を設けるために原告との日程調整を行っており(第2事件乙4),同年5月11日,原告と協議を行っている。 イ再契約の合意はないこと(ア) 被告は,本件ブランド契約について,平成22年2月1日付で原告から再契約の申入れを受けたが(第2事件甲9),原告に本件ブランド商標の使用継続を認めるべき状況変化 約の合意はないこと(ア) 被告は,本件ブランド契約について,平成22年2月1日付で原告から再契約の申入れを受けたが(第2事件甲9),原告に本件ブランド商標の使用継続を認めるべき状況変化はなかったことから,同年5月27日に原告の申入れを受けられない旨回答しており(第2事件甲10),原告と被告との間で再契約の新たな合意は成立していない。 (イ) 原告は,被告の指示により再度の再契約の申入書を送付したところ,平成22年5月31日,P2社長が「わかりました」と述べたとして,遅くともこの時点で再契約が成立したと主張する。しかしながら,P2社長は,再契約を締結して欲しい旨だけ述べられても検討できないことから,担当部門が対応できるように再契約の締結を必要とする理由等,具体的な事情を盛り込んだ上で整理して欲しいという趣旨で再度の申入書を作成するよう述べたにすぎない。また,P2社長は,原告からの再度の再契約の申入書(第2事件甲11)が送付されたことにつき「わかりました」と述べたにすぎず,再契約の成立を約束したものではない。なお,実際に,P2社長は,申入書の内容を確認しておらず,担当部門に適切に対応するよう指示したにすぎない。(2) 争点1-2(被告の債務不履行と原告の主張する損害との因果関係があるか)について【原告の主張】被告は,上記(1)【原告の主張】のとおり,原告に本件ブランド商標を使用させる債務があるにもかかわらず,平成22年6月3日,原告に対し,平成23年4月1日以降の本件ブランド商標の使用を認める意思は全くなく,協 議及び交渉に応じるつもりもない旨主張し,協議を一方的に打ち切った。原告は,他社と共同で建築・販売しているマンション等については,使用期間を6か月延長して欲しい旨申し入れ く,協 議及び交渉に応じるつもりもない旨主張し,協議を一方的に打ち切った。原告は,他社と共同で建築・販売しているマンション等については,使用期間を6か月延長して欲しい旨申し入れたが,被告はそれすら拒絶した。これによって,原告は,平成23年4月1日以降本件ブランド商標を継続して使用することを断念し,本件商標変更及びその費用負担を余儀なくされた。したがって,被告の債務不履行と本件商標変更の費用負担との間には,因果関係がある。【被告の主張】ア被告の債務不履行がないこと原告は,本件ブランド商標を使用させる債務の不履行を主張するが,上記(1)【被告の主張】のとおり,再契約はそもそも成立していないことから,債務不履行はない。本件商標変更は,本件ブランド契約の期間満了に伴う当然のことである。イ原告の主張する損害との因果関係がないこと仮に,被告に債務不履行があるとしても,当該債務不履行と原告が損害として主張する金6億2707万4036円の負担との因果関係はない。 本件ブランド契約では,契約満了を理由として被告は何ら費用負担しないことが明確に定められており(18条4項),原被告間において,原告が費用を負担する旨の合意があったことは明らかである。また,原告と被告との資本関係は,平成23年6月7日に完全に解消されており,仮に再契約が成立していたとしても,原告は翌8日以降,本件ブランド商標を使用することはできない(本件ブランド契約18条2項)。 したがって,仮に再契約が成立したとしても,原告が本件ブランド商標を使用できた期間は約2か月間であり,この点からも,前記損害との因果関係は認められない。  2 費用負担の合意に基づく支払請求(1) 争点2-1(原 告が本件ブランド商標を使用できた期間は約2か月間であり,この点からも,前記損害との因果関係は認められない。  2 費用負担の合意に基づく支払請求(1) 争点2-1(原被告間で,本件ブランド契約締結時に,契約が短期間で打ち切られた場合には,本件商標変更に要する費用を被告が負担する旨の合意があったか)について【原告の主張】ア本件ブランド契約書に,再契約の申入れによる協議(17条但し書き)が定められた趣旨は,同契約が短期間で打ち切られることのないように協議する旨の合意に加え,同契約が短期間で打ち切られた場合には,原告の損失が大きくなるため,原告に生じる損害を被告が填補する旨の合意も含まれていたというべきである。 イ原告は,平成22年6月3日の時点で,被告に対し,本件商標変更のための費用が5億円を超えることを告げると共に,当該協議条項に基づく費用負担協議を申し入れ,被告はこれに応じた。その後,原告のP5顧問が,被告のP7課長の依頼を受けて,同年9月10日,本件ブランド商標の使用状況の明細と使用サンプル資料を提出したところ,被告のP4部長からは,同月16日,他のグループ会社についても同様の処理をすること,他のグループ会社の費用からすれば6億円は少額であるなどの話があり,さらに,同年11月18日,被告による6億円の費用負担が税務上認められる方法を検討して欲しい旨の話があった。 また,原告のP5顧問は,同年9月27日,10月5日に追加の明細を提出し,平成23年2月4日に最終的な内訳を記載した明細書を提出した。そのほか,被告のP7課長の依頼で,原告のP5顧問は,平成23年1月11日に本件ブランド商標及び商号使用契約に関する経緯と費用負担に関する書面(第2事件甲22)を提出し,同月21日に本 提出した。そのほか,被告のP7課長の依頼で,原告のP5顧問は,平成23年1月11日に本件ブランド商標及び商号使用契約に関する経緯と費用負担に関する書面(第2事件甲22)を提出し,同月21日に本件商標変更の費用6億円の内訳を記載した書面(第2事件甲23)を提出した。また,被告のP4部長からは,本件商標変更の費用負担を税務会計上,交際費ではなく費用として計上・処理するため,弁護士作成の文書によって費用請求して欲しい旨の申入れがあり,原告のP5顧問は,同年2月17日,そのような文書を被告に送付した(第2事件甲24)。なお,被告からは被告が費用を負担することの理由を求められたことはなく,協議を求められたこともない。ウ以上の経緯を踏まえると,原被告間では,本件ブランド契約が短期間で打ち切られた場合には,被告がその費用を負担する旨の合意が成立していたというべきである。【被告の主張】ア本件ブランド契約17条但し書きは,再契約の申入れがあった場合には,新たな契約の締結を協議する旨定めているにすぎず,上記1(1)【被告の主張】のとおり,契約を短期間で終了させないための合意と解することはできず,費用負担の合意があったと解することもできない。このことは,同契約18条4項で,被告は,原告において発生する契約満了を理由とする費用を一切負担しないことが明確に定められていることからも明らかである。原告は,契約書の文言と異なる合意があると主張するものであるが,上記1(1)【被告の主張】のとおり,本件ブランド契約書は,原被告間の具体的な事情を踏まえて締結されたものであり,その文言と相反する別途の合意があったという主張は認められない。なお,本件ブランド契約の再契約の締結に至らなかった場合には, 書は,原被告間の具体的な事情を踏まえて締結されたものであり,その文言と相反する別途の合意があったという主張は認められない。なお,本件ブランド契約の再契約の締結に至らなかった場合には,被告が本件商標変更の費用を負担すべきことを原告から念押しされたという事実はなく,P4部長がこれを了解した事実もない。イ以上のとおり,被告は,本件ブランド契約17条但し書きを根拠とする費用負担の義務はなく,むしろ,同契約18条4項のとおり,契約終了により原告に発生する費用を何ら負担する義務を負っていない。(2) 争点2-2(原被告間で,本件ブランド契約締結後に,本件商標変更に要する費用を被告が負担する旨の合意があったか)について【原告の主張】ア平成22年6月3日の時点で,原告が被告に本件商標変更の費用が5億円を超えることを告げたところ,被告は,費用負担を前提に,確定した費用発生項目の明細を提出するよう指示した。原告にとって本件商標変更によって生じる費用負担と影響は甚大なものであったが,被告の上記指示を受け,原告は,少なくとも本件商標変更の費用は,被告が負担してくれるものと信じ,被告とそれ以上の期間延長の交渉を行うことなく,平成23年3月31日に確定的に本件ブランド商標の使用を停止した。イこのように,原告は,本件商標変更の費用は被告が負担することを前提に本件ブランド商標の使用を停止したのであり,上記経過及び本件ブランド契約締結に至る経緯も踏まえると,被告も,このことを当然に認識,認容していたというべきである。したがって,原被告間には,遅くとも平成23年3月31日時点で,本件商標変更に伴う費用を被告が負担する旨の合意が成立していた。【被告の主張】被告は,本件商標変更の費用を負担する旨の発言や したがって,原被告間には,遅くとも平成23年3月31日時点で,本件商標変更に伴う費用を被告が負担する旨の合意が成立していた。【被告の主張】被告は,本件商標変更の費用を負担する旨の発言や,それを前提とする発言をしたことはない。被告は,本来,本件ブランド契約18条4項により同契約期間の満了により原告に発生する費用を負担する義務を負っていないにもかかわらず,原告から本件商標変更の費用負担につき協議の申入れがあったことから,円満・早期解決のために,被告が費用負担すべき合理的な理由が存在する項目については,個別具体的に費用の負担の可否を検討するとの対応をとり,原告に当該項目及びその具体的な理由を示すよう求めていたものである。しかしながら,原告は,被告の要求する事項を全く示すことなく,漫然と明細(第2事件甲14,16,18,20)を提出し,平成23年1月11日になって,突然,本件商標変更による費用の見込額が6億円であるとだけ通知してきたのであり(甲22),費用負担に関する合意が成立することはなかった。したがって,本件ブランド契約18条4項に定めるとおり,被告には,契約終了により原告に発生する費用を何ら負担する義務はない。 3 争点3(被告の本件商標変更の費用負担に関する交渉での対応が不法行為を構成するか)について【原告の主張】原告は,平成22年6月3日の時点で,被告に対し,本件ブランド契約17条但し書きに基づく費用負担協議を申し入れ,被告もこれに応じ,両者において協議が行われた。そして,本件商標変更に伴う費用の負担金額は確定してなかったものの,原告は,これを被告が全額負担するものと信じ,平成23年3月31日に確定的に本件ブランド商標の使用を停止するようにした。ところが,被告のP4部長は,同月2 う費用の負担金額は確定してなかったものの,原告は,これを被告が全額負担するものと信じ,平成23年3月31日に確定的に本件ブランド商標の使用を停止するようにした。ところが,被告のP4部長は,同月2日になって突然,負担額の桁が違う等と述べて費用負担を拒絶したのであり,被告はその後も協議に応じない。このような被告の一連の行為は,少なくとも商道徳,信義則(民法1条2項)に反するものであって,不法行為を構成する。【被告の主張】被告は,本件商標変更に伴う費用を負担する義務が全くないにもかかわらず,円満・早期解決のために,原告と誠実に協議してきたのであり,被告の対応及び交渉が不法行為に該当するとはいえない。 4 争点4(原告の損害又は費用の額)について【原告の主張】(1) 原告は,本件ブランド商標を「サンヨーホームズ」の新ブランドに変更したことに伴い,2億9236万1449円を支出した(第2事件甲26)。 また,原告は,本件商標変更に伴い,今後,3億4500万円を負担する予定である(第2事件甲26)。 (2) 被告は,変更告知,広告に要した費用については,原告の知名度を上げるためのものであり,因果関係のある損害とは認められないと主張するが,コーポレート・ブランドが世間一般に認知され,企業イメージとして定着するまでには,多大な費用,労力及び期間を必要とするところ,原告は,被告の突然の再契約拒絶により,短期間での変更を余儀なくされ,変更前の告知期間として十分な期間を設けられなかったのであるから,上記費用についても,因果関係のある損害と認められるべきである。 【被告の主張】(1) 本件商標変更について原告が実際に支出した金額は,金2億9236万1449円にすぎない。また,同金額のうち金2億1496 ても,因果関係のある損害と認められるべきである。 【被告の主張】(1) 本件商標変更について原告が実際に支出した金額は,金2億9236万1449円にすぎない。また,同金額のうち金2億1496万0535円は「変更告知,広告」費用であるところ(第2事件甲26),当該費用は,新ブランドへの変更を告知するのに必要な費用ではなく,新ブランドへの変更をきっかけとして,原告の認知度を広げる目的で出された広告宣伝の費用と考えられ,本件商標変更に要した費用と評価することはできない。また,本件商標変更の告知は,変更の直前又は変更と同時にされるもので,変更から一定期間経過後はもはや必要ないものと考えられるから,原告の新ブランドへの変更から1か月を経過した平成23年5月以降に支出されたテレビコマーシャルや新聞広告費用は,明らかに,原告そのものの認知度を広げる広告宣伝の趣旨で支出されたものといえる(第2事件甲32)。このような膨大な広告宣伝費用を,本件商標変更に要した費用と評価することはできない。 (2) また,原告は,今後支出予定の費用として,金3億4500万円の「変更告知,広告」費用を挙げるが,原告が新ブランドに変更してから既に1年以上が経過していることからすれば,ブランドの変更告知を目的とした広告等を出す必要はなく,これらは,原告の知名度を高めるための広告宣伝費用であり,被告が負担する理由がないことは明らかである。第4 当裁判所の判断 1 事実関係前記第2の1「前提となる事実」に加え,証拠(証人P5及び証人P4並びに掲記のもの。ただし,証人P5のうち,後記排斥する部分は除く。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。(1) 原告及び被告の関係,原告による本件商号及び本件ブランド商標の使用 に掲記のもの。ただし,証人P5のうち,後記排斥する部分は除く。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。(1) 原告及び被告の関係,原告による本件商号及び本件ブランド商標の使用ア被告とクボタは,平成13年12月13日,クボタが平成14年4月1日付けで,原告の発行済全株式を被告に譲渡すること,原告及び原告の子会社の商号については,平成14年2月末を目途に被告が新商号を決定することなどを内容とする基本合意をした(第2事件甲41)。原告は,平成14年4月1日,被告の完全子会社となり,この頃,商号を本件商号に変更すると共に,本件ブランド商標の使用を開始したが,この時点では,本件ブランド商標等の使用は無償とされた。 イ被告は,平成18年以降,事業の選択と集中を進める過程で,取引銀行や大株主の強い要請などもあり,原告に対する出資比率を低下させる方針をとり,順次,原告に対する出資比率を低下させ,平成19年12月には,原告が実施を予定する第三者割当て増資にも応じなかったため,平成20年4月25日には,被告の原告に対する出資比率は19.91%になり,原告は被告の持分法適用会社ではなくなった(第1事件甲40)。その後,被告は保有する原告株式を売却し,平成23年6月7日,両者の資本関係は解消された(第1事件甲12の1~3)。 なお,被告は,平成20年12月19日に,パナソニック株式会社と資本・業務提携契約を締結し(第1事件甲11),平成23年4月1日に,同社の完全子会社となった(第1事件甲10の3)。  ウ一方,原告は,平成20年2月に株式公開準備委員会を設置し,株式公開に向けた諸課題について検討を行った上,同年9月の取締役会で,平成23年3月期中に東京証券取引所第2部に株式上場し ウ一方,原告は,平成20年2月に株式公開準備委員会を設置し,株式公開に向けた諸課題について検討を行った上,同年9月の取締役会で,平成23年3月期中に東京証券取引所第2部に株式上場したい旨の議案が,全員異議なく承認可決された(第1事件甲55,56)。 原告は,平成23年3月には,平成24年度内に株式上場を目指す旨の記者発表を行い,同年4月から,新ブランド「サンヨーホームズ」を導入し,新たなロゴマークを使用している(第1事件甲15~17)。 (2) 被告におけるブランド使用料徴収制度ア我が国では,バブル崩壊後の1990年代から,企業のコーポレート・アイデンティティに対する取り組みとして,新たにコーポレート・ブランド戦略という経営手法が模索されるようになり,同年代末からは,各企業においてブランドの専門部署が次第に設立され始め,ブランド研究内容について積極的に企業のブランド戦略に取り入れていくような動きもあり,また,商標制度を中心とする様々な知的財産に関する法制度が整備されたことにより,次第にブランドの知的財産管理の必要性や手法についても注目されつつあった。2000年代に入ると,企業の合併,経営統合,買収が活発に行われるようになり,また,事業の分社化や本社のホールディングカンパニー化なども日本企業に浸透するようになり,その中で,企業としては,自身のアイデンティティを更に明確に確立し,単一の企業だけではなく,グループ企業の統治という観点から,コーポレート・ブランドに対する取り組み強化の必要性が増大するようになった。その中で,ブランドの価値を金額換算し,企業の評価指標として活用する動きも活発となり,グループ会社からコーポレート・ブランド使用料を徴収するという取り組みについても,様々な企業が開始するよう った。その中で,ブランドの価値を金額換算し,企業の評価指標として活用する動きも活発となり,グループ会社からコーポレート・ブランド使用料を徴収するという取り組みについても,様々な企業が開始するようになった(第2事件乙2)。 イ被告においても,グループの経営戦略として,グループ全体で信頼の回復と三洋ブランド価値の再構築並びに維持・向上を推進していくこととし,当該活動にかかる投資及び活動の原資を確保する目的で,平成19年6月に,ブランド使用料の徴収制度を創設し,三洋ブランド(商号,商標)を使用するグループ会社からブランド使用料を徴収することとされた。徴収対象会社は,第1段階としては連結子会社であり,その他のグループ会社については,後日徴収を検討することとされた。また,使用料は,商号については売上高の0.2%,商標については商標対象売上高の0.3%とされた(第1事件甲30・第2事件乙1)。 なお,被告は,平成23年3月31日当時でみても,連結子会社132社,持分法適用会社43社を有しており(第1事件甲8の1),昭和55年頃から,既に多くの子会社が三洋商号を使用していた(第1事件甲8の2~4)。 ウ被告は,ブランド使用料の徴収制度の具体的な適用につき,その子会社には,三洋商号及び本件ブランド商標をセットで許諾することとし,その他のグループ会社(原告による出資比率が20%以上である持分法適用会社)には,個別に検討して許諾の要否を判断する方針をとることとした(第1事件甲40)。 平成19年9月には,被告とその子会社の一つとの間で,ブランド使用許諾契約を締結した(第1事件甲34・第2事件甲25。以下「別件ブランド契約」という。)。 同契約は,①被告は,子会社に対して,三洋商号の使用,本件ブ の子会社の一つとの間で,ブランド使用許諾契約を締結した(第1事件甲34・第2事件甲25。以下「別件ブランド契約」という。)。 同契約は,①被告は,子会社に対して,三洋商号の使用,本件ブランド商標を名刺,封筒,看板等に自社を表すマークとして使用すること等を許諾すると共に(2条1項),②子会社は,ロイヤリティとして,売上総額の0.5%を支払い(10条),③契約期間については,平成19年4月1日から5年間有効で,期間満了の3か月前までに両当事者から何らの意思表示がないときは,契約は自動的に更に2年間更新されるものとして(18条),④契約終了後,被告は,販売逸失利益にかかる補償,弁済, 賠償,あるいは当該使用権の付与に関する経費,投資,賃貸,その他の誓約にかかる補償,弁済,賠償の責任を子会社に対して負わず(19条4項),子会社は,本件ブランド商標を使用した対象物もしくは媒体のすべてを被告の指示に従い,無償で被告に引き渡すか,又は破棄することに同意すること(20条2項)等を内容とするものであった。 (3) 本件ブランド契約締結に至る経緯ア平成19年12月頃,原告は将来的に被告の持分法適用会社ではなくなることが予定されていたが,被告は,子会社及び持分法適用会社からブランド使用料を徴収する関係上,原告についても,三洋商号,本件ブランド商標を使用する以上は使用料の負担を求める旨の方針をとり,同月21日,原告に対し,ブランド使用料の負担を依頼した(第1事件甲31・第2事件乙3)。 イ被告は,原告に対し,平成20年4月1日頃,本件ブランド契約の第1案を提示した(第1事件甲32・第2事件甲5)。 第1案では,①被告は,原告に対して,三洋商号の使用,本件ブランド商標を名刺,封筒,看板等に自 平成20年4月1日頃,本件ブランド契約の第1案を提示した(第1事件甲32・第2事件甲5)。 第1案では,①被告は,原告に対して,三洋商号の使用,本件ブランド商標を名刺,封筒,看板等に自社を表すマークとして使用すること等を許諾するとされ(2条1項),②ロイヤリティについては,原告の要請を受けて,別件ブランド契約とは異なり,売上総額の0.2%を支払うこととされた(10条)。 そして,③契約期間については,自動的に更新するものとはせず,平成20年4月1日から2年間有効で,期間満了の3か月前までに原告から契約更新の要請があった場合には,原被告は契約更新について協議をし,書面により合意された場合は,合意の条件に基づいて更新することができることとされた(19条)。また,④契約終了後の補償等,本件ブランド商標を使用した対象物及び媒体の取扱いについては,別件ブランド契約と同様に規定された(20条4項,21条2項)。  原告は,同年5月7日頃,第1案についての改善要望案を作成し,訂正事項及び要望事項を記載したが,そこでは,上記契約期間や契約終了後の取扱いへの言及はなかった(第1事件甲43)。 ウその後,平成20年11月に,原告が,被告に無断で,「三洋コミュニティサービス株式会社」という子会社を設立していたことが判明し(第1事件甲3,40,乙6),同年12月には,被告はパナソニック株式会社と資本・業務提携契約を締結し,被告はパナソニック株式会社の子会社となることが予定され(第1事件甲11),その結果,パナソニック株式会社の関連会社であるパナホーム株式会社が,原告とグループ会社内で競合することとなった。 被告は,平成21年3月3日頃,上記事情を考慮して,原告との間で商号使用許諾契約と商標使用許諾契約を別々に 連会社であるパナホーム株式会社が,原告とグループ会社内で競合することとなった。 被告は,平成21年3月3日頃,上記事情を考慮して,原告との間で商号使用許諾契約と商標使用許諾契約を別々に締結することとし,本件商号契約,本件ブランド契約の第2案を提示した(前者につき第1事件甲47の1,後者につき第2事件甲6)。 第2案では,②本件商号契約にはロイヤリティ支払条項がなく,本件ブランド契約には第1案と同じ条項が入り,③契約期間について,原告から,平成22年度内に予定している株式上場と合わせて社名変更を検討したい旨の申し出があったことを踏まえ,第1案を変更して,契約締結日から平成23年3月31日までとされ,契約更新の協議に関する文言は削除された(17条。第1事件甲39)。また,⑤契約の解除原因として,新たに,契約締結時の原告の出資比率の減少,被告の株式上場が追加された(18条2項3)。④契約終了後の取扱い等に関する条項は,第1案のまま維持された。 第2案について,原告及び被告は同月5日に協議を行ったが,その際,原告が②ロイヤリティ,③契約期間,④契約終了後の取扱いを問題とすることはなく,⑤出資比率の減少等を契約の解除原因とするのは不適当との意見等が出された(第1事件甲48の1~3)。 被告は,平成21年3月6日頃,本件商号契約,本件ブランド契約の修正案を提示したが(第1事件甲49の1~3。以下「第3案」という。),このときも,②ロイヤリティ,③契約期間,④契約終了後の取扱いについての変更はなく,⑤契約の解除原因のうち,出資比率の減少が削除されていた。 エ同月9日頃,原告の専務取締役で被告との交渉に当たっていたP5(平成22年6月からは原告の特別顧問である。)から,被告に対し 更はなく,⑤契約の解除原因のうち,出資比率の減少が削除されていた。 エ同月9日頃,原告の専務取締役で被告との交渉に当たっていたP5(平成22年6月からは原告の特別顧問である。)から,被告に対し,契約の期限について再考する余地はないのか,何らかの事情で商号,商標の使用を継続する必要が生じた場合に備えてあらかじめ手続を定めた条項を入れて欲しいなどという問い合わせがあった(第1事件甲56)。 これを受けて,被告は,本件商号契約,本件ブランド契約の契約期間について,契約締結日から平成23年3月31日までとするものの,期間満了の1年前までに原告から書面で再契約の申入れがあった場合には,新たな契約の締結について協議をするとした修正案を作成し,原告に提示した(第1事件甲50の1~3。以下「第4案」という。)。 これについて,原告から特段意見は述べられず,被告は,平成21年3月11日,経営会議及び取締役会において,第4案の内容で決裁を経たが,その際,期限後になし崩し的に延長することのないようにすることを求める同会議等の指摘があった(第1事件甲39,51)。 (4) 本件商号契約,本件ブランド契約の締結ア原告及び被告は,平成21年3月16日,上記第4案の内容で,本件商号契約,本件ブランド契約を締結した。 なお,このとき,原告以外に原告の子会社2社(当時の商号で,三洋ホームズコミュニティサービス株式会社,三洋リフォーム株式会社)も被告との間で,本件商号契約と同内容の契約を締結した(第1事件甲19,20)。 イその後,原告が,本件ブランド契約に基づき,被告に対して2年間に支払ったロイヤリティの総額は,1億6743万5285円に上った(第2事件甲8の1~4)。 (5) 0)。 イその後,原告が,本件ブランド契約に基づき,被告に対して2年間に支払ったロイヤリティの総額は,1億6743万5285円に上った(第2事件甲8の1~4)。 (5) 原告による本件ブランド契約の再契約の申入れア原告の代表取締役P1は,平成22年2月1日,被告の代表取締役P2宛に,本件商号契約,本件ブランド契約の使用許諾期間は平成23年3月31日までとなっているが,原告としては「SANYO」ブランドの向上に努め,引き続き被告の製品を積極的に購入していくこと,原告は,本件商号,本件ブランド商標で広く一般に認知されていること,商号変更には多大な費用を要するが株式公開を目指しており厳しい収益環境にあることなどから,本件商号及び本件ブランド商標の使用許諾の延長を申し入れた(第2事件甲9)。 イ原告の上記申入れを受け,同年4月7日に日程調整がされた上(第2事件乙4),同年5月11日に被告の経営企画本部主管会社統括部部長のP6,同部長兼同本部企画部部長のP4が原告のP1社長と面談し,その後,同月27日,被告の副社長で経営企画本部長であるP3が,原告のP1社長宛に,本件ブランド契約及び本件商号契約について,その使用許諾の期間延長は困難である旨通知した(第2事件甲10)。 翌28日,原告のP1社長と被告のP2社長は直接面談を行い,その後,P1社長は,被告のP3副社長宛に,再度,使用許諾の期間延長を申し入れた(第2事件甲11)。このとき,原告は,①最長3年以内を目途に株式公開準備をしており,事業計画の達成が重要課題であるが,その実現のためには本件商号,本件ブランド商標の使用が必須であること,②原告は,被告の製品を積極的に販売しており,今後も拡大を図ることなどから,最低限,株式公開までは現状維 達成が重要課題であるが,その実現のためには本件商号,本件ブランド商標の使用が必須であること,②原告は,被告の製品を積極的に販売しており,今後も拡大を図ることなどから,最低限,株式公開までは現状維持を望む旨述べ,さらに,ロイヤリティについても事業拡大と共に増額を図り,株式公開時には,被告ができる限りの売却益を取得できるように図りたいなどとしている。 ウこれに対し,同年6月3日,原告のP1社長と被告のP3副社長,P4部長が出席した打合せにおいて,P3副社長は,期限の延長を認めるつもりは一切ないが,平成23年3月31日に収束するための方法,課題については,被告内部においても協議をする旨述べた(第1事件乙8,第2事件甲12)。 (6) 原被告間の本件商標変更の費用負担に関する協議ア被告の経営企画本部経営管理部の課長であるP7は,平成22年7月27日,原告のP5顧問に対し,契約終了に伴って本件商号,本件ブランド商標の使用を終了することを前提に,終了に向けた具体的な手続について協議するために,同年8月20日までに,本件商号,本件ブランド商標の使用状況(原告の子会社による使用も含む。)について,使用媒体,使用数,使用部門名,使用場所等を連絡するよう求めた(第2事件乙5)。 これを受けて,原告のP5顧問は,被告のP7課長宛に,平成22年9月10日に「SANYOブランド使用明細」と題する書面を送付した(第2事件甲13,14)。同書面には,本件ブランド商標を使用した対象物,媒体が列挙されているが,具体的な対象物の特定,費用額までは明らかにされなかった。 イその後,同月21日に原被告の担当者が面談をした際に,原告から被告に対し,本件商標変更に要する費用負担の申入れがあった(第2事件甲40)。こ 対象物の特定,費用額までは明らかにされなかった。 イその後,同月21日に原被告の担当者が面談をした際に,原告から被告に対し,本件商標変更に要する費用負担の申入れがあった(第2事件甲40)。これに対し,被告は,費用負担をするためには,株主や税務当局に説明できるように,被告が負担することが合理的と考えられるような理由のある項目の特定とその理由の提示が必要であると伝え,これらの提出を要求した(第2事件甲40)。 原告のP5顧問は,同月27日及び同年10月5日,さらに「SANYOブランド使用明細」と題する書面を送付した(第2事件甲15~18)。 同書面には,本件ブランド商標が使用されている対象物,媒体が列挙され,一部については費用額の見積もりも明らかにされたが,当該対象物等について被告の負担が合理的と考えられる理由については何ら提示がされていなかった。 さらに,平成23年1月26日,原告のP1社長,P5顧問と被告の取締役常務執行役員・財務本部長のP8,P4部長が出席した打合せにおいて,P1社長が,本件商標変更に伴う費用負担の申入れをしたのに対し,P8常務は,被告の業績も厳しく,会計上・税務上の問題をクリアする必要があるが,負担内容も分からないので協議する旨述べた(第2事件乙8)。 これを受けて,原告のP5顧問は,平成23年2月4日に,「SANYOロゴ変更費用明細」と題する書面を送付し(第2事件甲19,21)。 同書面により,原告及びその子会社の本件商標変更に要する費用が合計6億2707万4036円である旨が初めて伝えられた。 ウ原告は,平成23年1月11日,P1社長名義で被告のP3副社長宛に,「ブランド並びに商号使用契約満了に伴う申請について」という書面を送付した。その中で,原告は,「三洋ホームズ」の商標 られた。 ウ原告は,平成23年1月11日,P1社長名義で被告のP3副社長宛に,「ブランド並びに商号使用契約満了に伴う申請について」という書面を送付した。その中で,原告は,「三洋ホームズ」の商標を原告の自主管理に移行して欲しいこと,新ブランド・ロゴへの変更に当たっては,多方面への告知や現在使用中の看板・カタログ・建築現場用品などの多額の変更費用・在庫処分を伴うため,相当額の費用(見込額6億円)を負担して欲しいことを申請した(第2事件甲22)。 また,原告は,同月21日,P5顧問名義で被告のP4部長宛に「SANYOブランド契約の期間満了について」と題する書面を送付し,その中で,平成20年2月1日付けで期間更新に関する書面を提出した際に,P2社長より口頭で了解する方向での発言があったこと,その後,パナソニック株式会社によるTOBで被告が子会社化することが明らかになった後に,一方的に契約を打ち切りにする話が出てきたことなどと述べ,原告のその後の事業展開におけるブランド・ロゴ変更の認知・周知徹底への影響を考えれば,被告の税務上の認容の可否をもって,一方的に契約満了とすることは承服できないこと,被告の費用負担なしで契約を打ち切るのであれば,本件ブランド商標について6か月の延長使用を検討する必要があることなどを主張した(第2事件甲23)。 さらに,原告は,平成23年2月17日付けの内容証明郵便を被告に送付し,その中で,本件ブランド契約17条但し書きの趣旨は,同18条2項各号に掲げられる事由等がある又は終了の合意が成立しない限りは,自動的に更新する趣旨であると解すべきであり,本件では原告は平成20年1月21日付けで書面による再契約の申し入れをしたにもかかわらず,同年5月27日まで返答がされなかったこと 意が成立しない限りは,自動的に更新する趣旨であると解すべきであり,本件では原告は平成20年1月21日付けで書面による再契約の申し入れをしたにもかかわらず,同年5月27日まで返答がされなかったことにより,既に契約期間の延長が決定していること,これについて被告に異議がある場合は,本件ブランド契約22条1段の定めに基づき,90日間和解による解決のためあらゆる可能性を追求する必要があり,和解による解決ができない場合は,同条2段に基づき,日本商事仲裁協会への仲裁申立てがされるべきであることなどを主張し,原告としては,本件ブランド契約が平成23年3月31日に終了する旨の主張には応じられない旨を主張した(第2事件甲24の1・2)。 その後,原告は,同年3月1日付けの内容証明郵便を被告に送付し,その中で,本件ブランド契約の契約期間は平成25年3月31日まで延長されているが,仮にこの原告の主張に応じられない場合は,契約期間中の一方的な契約解除として,原告が被ることになる本件商標変更に伴う損害合計6億2707万4036円を請求する旨主張した(第2事件乙6)。 エ原告及び被告は,平成23年3月2日にも費用負担に関する打合せを行い(第2事件乙9),被告は,同月18日,原告による上記2通の内容証明郵便に対する回答として,本件ブランド契約17条を自動更新ないし延長条項と解することはできず,同契約は同月31日に満了すること,原告は平成22年5月27日から平成23年2月まで,被告との間で契約期間の満了を前提とした協議を行っており,その間,契約期間の更新又は延長について一切主張されてこなかったこと,被告が原告に上記請求金額を支払う理由はなく,被告は円満解決のために原告と費用負担の協議をしてきたが,これは費用負担の義務を認め その間,契約期間の更新又は延長について一切主張されてこなかったこと,被告が原告に上記請求金額を支払う理由はなく,被告は円満解決のために原告と費用負担の協議をしてきたが,これは費用負担の義務を認めるものではなく,いまだ原被告間で合意にも至っていないこと,一方で,被告としては,本件ブランド契約の満了に関する紛争が円満に解決するのであれば,原告が株式上場するまでの間で,原告及びその子会社が三洋商号を使用することについて中止を求めない旨の譲歩案を提案する用意があることを伝えた(第2事件乙7)。 (7) 原告の記者発表等ア原告のP1社長は,平成22年9月22日,記者懇談会で,被告がパナソニック株式会社の完全子会社となって社名が変更された後であっても,本件商号を引き続き使用する一方,本件ブランド商標については変更を検討する旨明らかにし,その旨の報道がされた(第1事件甲15の1)。 イまた,原告のP1社長は,平成23年3月,本件商号を引き続き使用する一方,ブランド商標については,新たに「サンヨーホームズ」を導入することを表明した(第1事件甲15の2)。 ウ原告は,平成23年3月以降,随時本件商標変更を行った(第2事件甲24~26)。 2 債務不履行に基づく損害賠償請求について(1) 争点1-1(被告は原告に対し本件ブランド商標を使用させる義務を負っていたか)についてア平成22年5月2日に本件ブランド契約の再契約が成立したとの主張について (ア) 原告は,本件ブランド契約は,契約書に自動更新条項はないものの,コーポレート・ブランドの重要性,ロイヤリティの支払,契約条項の内容の決定に至る経緯等の事情を総合して考慮すれば,原告による再契約の申入れから90日が経過した平成22年5月2日の時点で,再契約 の,コーポレート・ブランドの重要性,ロイヤリティの支払,契約条項の内容の決定に至る経緯等の事情を総合して考慮すれば,原告による再契約の申入れから90日が経過した平成22年5月2日の時点で,再契約が成立したものと解すべきであると主張する。 (イ) この点,一般論として,企業は,コーポレート・ブランドが短期間で変更されることを望まず,短期間に限定される趣旨の使用許諾契約の締結を望まない場合があるとしても,本件ブランド契約については,以下のような事情が存するから,自動更新を認めない趣旨であったと認められる。 すなわち,被告は,平成19年6月にブランド使用料の徴収制度を創設し,他の子会社との間では,契約の自動更新条項が入った使用許諾契約を締結しているものの,本件ブランド契約の契約期間は,平成23年3月31日までに限定されており,更新には書面による合意が必要とされている。また,被告が提案した第1案でも,契約期間は平成22年3月31日までに限定され,更新には書面による合意が必要とされているところ,第2案でも,契約期間は平成23年3月31日までに限定され,更新に関する条項は設けられていなかった。 そして,前記認定事実によると,被告がこのように本件ブランド契約の契約期間を限定したのは,原告については,第1案作成当時,被告とのグループ関係が解消された時点では,本件ブランド商標の使用を停止するのが適当と考えられていたところ,その後,被告は,パナソニック株式会社の子会社となることが決まり,原告はパナソニック株式会社の関連会社とグループ会社内での競合関係になることから,実際上,本件ブランド商標の使用継続は困難であったことなどの事情によるものといえる。 また,本件ブランド契約締結以前における原告側の事情をみても,原告は,第2 になることから,実際上,本件ブランド商標の使用継続は困難であったことなどの事情によるものといえる。 また,本件ブランド契約締結以前における原告側の事情をみても,原告は,第2案作成前の平成20年9月には,取締役会で平成23年3月期中に株式上場する旨の方針を確立しているところ,株式上場に当たっては,将来的に使用継続が不安定な本件ブランド商標ではなく,新たな商標への切替えを検討すべき状況にあったといえるし,前記認定事実のとおり,被告が第2案において契約期間を平成23年3月31日としたのは,原告が上記日程で株式上場を行い,併せて商号の変更も検討することを考慮した結果であると認められる。なお,原告の株式上場は,平成23年4月1日以降にずれ込んでいるが,原告は,再契約を拒絶された後も,株式上場(株式公開)までは本件ブランド商標の使用を継続したい旨願い出ており,このような対応も,契約締結時において,原告が契約期間を株式上場予定の同年3月31日までと限定することを受諾していたことを裏付けるものといえる。 したがって,本件ブランド契約は,協議により別途合意が成立しない限り,契約の更新,継続を予定せず,平成23年3月31日をもってこれを終了させる趣旨でされたと認めるのが相当である。 原告は,本件ブランド商標を使用するロイヤリティとして,2年間で1億6743万5285円を被告に支払っており,原告は,多額のロイヤリティが生じている以上,短期間に限定する趣旨ではないと主張するが,ロイヤリティの金額が契約期間の解釈に影響すると解すべき理由はないし,原告のロイヤリティは売上額の0.2%であって,他の子会社(0.5%)よりも低い料率に設定されているのであるから,直ちに高額といえるものでもない。そうすると,本件ブランド契約17条の定め ないし,原告のロイヤリティは売上額の0.2%であって,他の子会社(0.5%)よりも低い料率に設定されているのであるから,直ちに高額といえるものでもない。そうすると,本件ブランド契約17条の定めが申入れから90日間の経過による自動更新の定めであるなどと解すべき理由はなく,原告の主張には理由がない。  (ウ) 原告は,P5顧問は,平成21年3月5日にP4部長との面談において,第2案における本件ブランド契約の契約期間の定めが,当然に契約が延長される前提であることを確認すると共に,仮に延長されない場合には費用負担をして欲しい旨申し入れており,同月11日にもP4部長との間で,第4案の17条は延長を前提とするものであり,仮に延長しない場合は,費用負担の協議をすることとした旨主張し,証人P5はこれに沿った証言をし(同7,9頁),同月6日案として,「契約満了の6か月前までに書面による申入れがないときは,3年間延長されるものとし,以後も同様とする」旨記載された契約書案を提出する(第2事件甲34。以下「原告6日案」という。)。 しかしながら,被告は,本件ブランド契約交渉の当初から契約期間を延長しない方針をとっており,交渉過程で契約期間の自動更新を認める条項は一度も提示されておらず,また費用負担についても,当初から一貫して,被告は費用負担をしない旨の条項(第1案20条4項,21条2項)が設けられていたところ,何故この段階に至って延長や費用負担の合意をすることとなったのかは明らかにされていない。また,平成21年3月5日頃は,未だ契約書案の改定作業がされていたのであるから,延長や費用負担の合意がされたのであれば,それが条項に盛り込まれてしかるべきところ,それがされなかった理由についても明らかにされていない。原告 頃は,未だ契約書案の改定作業がされていたのであるから,延長や費用負担の合意がされたのであれば,それが条項に盛り込まれてしかるべきところ,それがされなかった理由についても明らかにされていない。原告は,原告6日案を書証として提出するものの,同案に基づいて,原被告間で具体的な協議がされたと認めるに足りる証拠はない。 また,原告自身の本件ブランド契約締結後の行動をみても,被告から再契約の申入れを拒否された平成22年5月27日以降,原告は,主に被告との間で,一定期間の使用継続を願い出るか,契約期間の満了を前提とした費用負担等に関する協議を行っていたのであり,被告のP1社長は,同年9月22日に,本件ブランド商標を変更する旨の記者発表を していたのである。そして,原告が再契約が成立している旨の主張をするようになったのは,平成23年2月の内容証明郵便以降であって,このような経過からしても,原告と被告との間で本件ブランド契約が自動更新される旨の合意があったというのはきわめて不自然である。 したがって,証人P5の上記証言は信用できず,期間延長や費用負担の合意があったとする原告の主張は採用できない。 イ平成22年5月31日に再契約の合意があったという主張について(ア) 原告の再契約の申入れに対し,同月31日,被告のP2社長は原告のP1社長に「わかりました。」と述べたことから,再契約の合意があり,被告は,平成23年4月1日以降も,原告に本件ブランド商標を使用させる債務がある旨主張する。(イ) しかしながら,上記やり取りについては,仮にこれがあったとしてもその前後の脈絡も不明であり,直ちに再契約の合意の意思表示をみることはできない上,被告がこの時点でそれまでの方針から翻意して再契約を締 しかしながら,上記やり取りについては,仮にこれがあったとしてもその前後の脈絡も不明であり,直ちに再契約の合意の意思表示をみることはできない上,被告がこの時点でそれまでの方針から翻意して再契約を締結する必要が生じたような事情も見当たらない。 したがって,原被告間に,平成22年5月31日頃に再契約の合意があったと認めることはできない(なお,その後の原告の行動からしても,再契約の合意があったとは認められないことは,上記ア(ウ)のとおりである。)(2) 小括以上のとおりであって,本件ブランド契約の再契約が成立したとは認められないことから,原告の債務不履行に基づく損害賠償請求は,その余について判断するまでもなく理由がない。 3 費用負担の合意に基づく支払請求(1) 争点2-1(原被告間で,本件ブランド契約締結時に,契約が短期間で打ち切られた場合には,本件商標変更に要する費用を被告が負担する旨の合意があったか)についてア原告は,平成22年6月3日以降,原被告間で,本件商標変更に要する費用負担の協議がされたことをもって,原被告間では,本件ブランド契約が短期間で打ち切られた場合には,被告が原告の損害を填補するために費用負担する旨の合意が成立していたことの証左である旨主張する。イしかしながら,本件ブランド契約18条4項は,被告は,本契約の解除や満了を理由に,販売逸失利益にかかる補償,弁済,賠償,あるいは当該使用権の付与に関する経費,投資,賃貸,その他の誓約にかかる補償,弁済,賠償の責任を子会社に対して負わないとされ,同契約19条2項は,契約が終了した場合,原告は,いかなる対象物又は媒体上にも本件ブランド商標を使用してはならず,使用が禁止された対象物もしくは媒体のすべてを被告の指 子会社に対して負わないとされ,同契約19条2項は,契約が終了した場合,原告は,いかなる対象物又は媒体上にも本件ブランド商標を使用してはならず,使用が禁止された対象物もしくは媒体のすべてを被告の指示に従って,無償で引き渡すか,破棄することに同意するとされており,被告は本件ブランド商標の変更に伴う費用負担の責任を負わないことが明確に定められているところ,これらの条項は,別件ブランド契約においても設けられており,本件ブランド契約でも第1案の当初から最終的な合意に至るまで変更されていない。また,費用負担について,契約締結に至る過程で,原被告間で具体的な協議がされたことを認めるに足りる証拠はない(この点について,平成21年3月5日に合意があったとするP5証言が信用できないのは上記(1)ア(ウ)のとおりである上,原告6日案においてすらこの点への言及がない。)。 したがって,本件ブランド契約の際に,原告が主張する費用負担の合意があったとは認められない。この点,原告自身も,平成22年2月の再契約の申入れでは,本件商標変更による費用負担が厳しいことをその理由の一つとして挙げており,当該費用を原告が負担すべき旨の認識を有していたと認められる。 ウしたがって,原被告間で,本件ブランド契約締結時に,契約が短期間で打ち切られた場合には,本件商標変更に要する費用を被告が負担する旨の合意があったとは認められない。 (2) 争点2-2(原被告間で,本件ブランド契約締結後に,本件商標変更に要する費用を被告が負担する旨の合意があったか)について原告は,平成22年7月27日以降,被告が原告に対し,本件商号契約,本件ブランド契約の終了に伴って本件商号,本件ブランド商標の使用を終了することを前提に,終了に向けた具体的な手続の協議とし ついて原告は,平成22年7月27日以降,被告が原告に対し,本件商号契約,本件ブランド契約の終了に伴って本件商号,本件ブランド商標の使用を終了することを前提に,終了に向けた具体的な手続の協議として,本件商号,本件ブランド商標の使用状況・金額,被告が費用負担することが合理的と考えられるような理由のある項目の特定とその理由の提示を求めていたことを指摘し,遅くとも,平成23年3月31日時点で,本件商標変更に伴う費用を被告が負担する旨の合意が成立していた旨主張する。 しかしながら,その際に,被告が想定していた費用負担をすることが合理的と考えられる場合とは,具体的には,被告の事業開発本部傘下で原被告の共同事業がされた場合や,被告が原告に指示して本件ブランド商標を使用した掲示物,看板等を設置させたような場合であったとされるのに,原告は,平成23年2月になって,全体の見積もりとして合計6億2707万4036円である旨を伝えているものの,同金額については具体的な内訳も明らかにせず,被告が費用負担をすることが合理的と考えられる理由を具体的に示したと認めるに足りる証拠もないことからすれば,両者間においては,費用負担に関する交渉がされていたにとどまるのであって,これをもって,費用負担の合意があったことの根拠とすることはできない。このような交渉段階をもって,被告が原告に対し,6億円余りもの高額な金員を支払う旨の合意があったとはいえないことは明らかであって,原告の主張には理由がない(なお,被告が交渉に応じたことにより,原告が費用負担について一定の期待を有していたとしても,そのことのみから原被告間に費用負担の合意が成立したと評価することはできない。)。 (3) 小括以上のとおり,原告の費用負担の合意に基づく支払請求につい としても,そのことのみから原被告間に費用負担の合意が成立したと評価することはできない。)。 (3) 小括以上のとおり,原告の費用負担の合意に基づく支払請求についても理由がない。 4 不法行為に基づく損害賠償請求(被告の本件商標変更の費用負担に関する交渉での対応が不法行為を構成するか。争点3)について(1) 原告は,本件商標変更に伴う費用を被告が全額負担するものと信じ,平成23年3月31日に確定的に本件ブランド商標の使用を停止するようにしたが,被告のP4部長は,同月2日になって突然,負担額の桁が違う等と述べて費用負担を拒絶したのであり,このような被告の一連の行為は,少なくとも商道徳,信義則(民法1条2項)に反するものであって,不法行為を構成する旨主張する。(2) しかしながら,そもそも,原被告間で,被告が全額を負担することを前提とした交渉がされていたとは認められず,原告が,本件商標変更に伴う費用を被告が全額負担すると信じることについて合理的な見当たらない。被告がどの範囲で費用負担をするかについては具体的な話は一切されていなかったのであるから,仮に,被告が平成23年3月に費用負担の交渉を打ち切ったとしても,それ自体は,何ら不当なものとはいえない。 また,原告は,平成23年2月以降,それまでの費用負担に関する交渉にもかかわらず,被告に内容証明郵便を送付して,本件ブランド契約が自動更新されている旨を主張し,その主張が認められないのであれば,契約の一方的解除を理由として本件商標変更に要する費用を請求するなど,自ら交渉の継続を困難とする行動を取ったのであるから(なお,これに対して,被告は商号の使用継続を認める旨の譲歩案も提示するなどしている。),仮に,被告が交渉を打ち切ったとしても,これ 請求するなど,自ら交渉の継続を困難とする行動を取ったのであるから(なお,これに対して,被告は商号の使用継続を認める旨の譲歩案も提示するなどしている。),仮に,被告が交渉を打ち切ったとしても,これが商道徳,信義則に反するものとはいえないことはよりいっそう明らかである。 原告は,前記内容証明郵便は,被告の依頼に基づいて送付したと主張するが,被告が当時求めていたのは,被告が費用負担をすることが合理的と考えられる理由であって,自らに不利な内容の種々の主張を被告の方から求めたとは考えられず,原告の主張は採用できない。 (3) したがって,被告の行為が不法行為を構成するとは認められず,原告の不法行為に基づく請求には理由がない。 第5 結論以上によれば,原告の請求はすべて理由がない。よって,主文のとおり判決する。大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官谷有恒 裁判官松川充康 裁判官網田圭亮 

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