主文 本件控訴を棄却する。 理由 第1 本件控訴の趣意等本件控訴の趣意は弁護人内田健太作成の控訴趣意書及び控訴趣意補充書に、 これに対する答弁は検察官金山洋文作成の答弁書及び「答弁書の記載内容変更申入れ書」と題する書面に、それぞれ記載されたとおりである。 本件は、被告人が、令和3年9月13日午前8時52分頃、大型貨物自動車を運転し、北海道苫小牧市内の交通整理の行われていない丁字路交差点を右折進行するに当たり、自車は車体の長さが約11.5メートルあり、右折 を開始してから完了するまでに相応の時間を要し、その間、対向車線を塞ぐことになるのであるから、前方左右を注視し、対向直進車両の有無及びその安全を確認しながら同交差点の中心の直近の内側を右折進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り、当時、同交差点内の右方には右方道路から同交差点内に進行してきて右折待ちのため停止していた車両があり、 同交差点の中心の直近の内側を右折進行するためには、同車の向かって左側を通過する必要があるのに、あえて同車の向かって右側を通過して、右方道路の左側車線に進行しようとして、前方左右を注視せず、対向直進車両の有無及びその安全確認不十分のまま漫然時速約25ないし33キロメートルで同交差点を内小回りに右折進行した過失により、折から対向直進してきた被 害者(当時32歳)運転の大型自動二輪車に気付かないまま、同車前部に自車左側面部を衝突させて同自動二輪車もろとも同人を路上に転倒させ、よって、同人に多発外傷の傷害を負わせ、同日午前10時10分頃、同市内の病院において、同人を前記傷害による外傷性ショックにより死亡させたという事案である。 論旨は、事実誤認の主張であり、被告人には過失が認められず 傷害を負わせ、同日午前10時10分頃、同市内の病院において、同人を前記傷害による外傷性ショックにより死亡させたという事案である。 論旨は、事実誤認の主張であり、被告人には過失が認められず無罪である のに、過失を認めて有罪とした原判決の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認がある、というのである(なお、控訴趣意書においては、法令適用の誤りとの記載もみられるが、実質的には事実誤認の主張に収れんされるものと解される。)。 第2 原判決の判断 1 本件の争点被告人が運転していた大型貨物自動車(以下「被告人車両」という。)と被害者が運転していた大型自動二輪車(以下「被害車両」という。)が原判示のとおり衝突する事故が生じ(以下「本件事故」という。)、被害者が死亡したことは争いがないところ、原審弁護人(当審弁護人と同一である。) は、被害車両は本件事故当時、最高速度が時速60キロメートルの道路を時速約118キロメートルで進行しており、被告人が、右折に当たり、そのような高速度で走行してくる対向直進車両の存在を予見することは不可能であったから予見義務違反はなく、結果回避義務違反もないとして、被告人に過失はなく、被告人は無罪である旨主張した。 これに対し、原裁判所は、概要以下のとおり説示し、被告人の過失が認められると判断した(なお、以下の日時は、特に断りがない限り、令和3年のものである。)。 2 証拠上認定できる事実関係証拠によれば、以下の事実が認められる(当事者間にも特に争いはな い。)。 ⑴ 本件事故現場等の状況ア本件事故現場の状況本件事故現場は、千歳市方面(北側)とA町方面(南側)を結ぶ道道B線(以下「本件道路」という。)に、C町方面に延びる市道(以下「市道」と 。 ⑴ 本件事故現場等の状況ア本件事故現場の状況本件事故現場は、千歳市方面(北側)とA町方面(南側)を結ぶ道道B線(以下「本件道路」という。)に、C町方面に延びる市道(以下「市道」と いう。)が東側から接続する丁字路交差点(以下「本件交差点」という。) であり、交通整理は行われていない。本件交差点付近において、本件道路及び市道に交通規制はない。本件交差点付近の本件道路及び市道の周囲は緑地帯になっており、本件事故当日に実施された実況見分時の人及び車の交通量は少なかった。 イ本件交差点付近の本件道路の状況 本件道路は、片側1車線のアスファルト舗装された平坦な道路で、本件交差点内を含めて中央線が引かれており、本件交差点北側付近には導流帯が設けられている。本件道路の幅員は、本件交差点の北側出口付近で約13.4メートル、南側出口付近で約12.3メートルである。 本件交差点北側方向には、こ線橋が存在し、その頂点付近から本件交差点 北側出口に向けて、下り勾配(1度ないし2度)となっている。本件道路は、前記頂点付近から本件交差点南側に至るまで直線の道路形状であり、対向車線の見通しを妨げるものはなく、この間に信号機は設けられていない。 ウ本件交差点付近の市道の状況市道は、片側1車線のアスファルト舗装された平坦な道路で、中央線は本 件交差点の手前まで引かれており、幅員は本件交差点出口付近で約13.6メートルである。 ⑵ 本件事故関係車両ア被告人車両は、右ハンドルの事業用大型貨物自動車で、その車体は、長さ約11.51メートル、幅約2.49メートル、高さ約3.63メート ルで、最小回転半径は10メートルである。 イ被害車両は、大型自動二輪車の警察車両で、いわゆる白バイである。 、長さ約11.51メートル、幅約2.49メートル、高さ約3.63メート ルで、最小回転半径は10メートルである。 イ被害車両は、大型自動二輪車の警察車両で、いわゆる白バイである。 ⑶ 本件事故状況等ア被害者は、9月13日の本件事故当時、被害車両を運転し、本件道路を千歳市方面(北側)からA町方面(南側)へ進行中、本件交差点に接近し た。 イ被告人は、本件事故当時、被告人車両を運転し、本件道路をA町方面(南側)から千歳市方面(北側)へ進行中、本件交差点を右折して市道に入ろうと、本件交差点に接近した。その際、Dの運転する車両が、市道から本件交差点を右折して本件道路の千歳市方面(北側)に進行しようと、本件交差点内(市道と本件道路の接続部分中央付近)で、一時停止していた。 ウ被告人は、本件交差点の中心(本件道路及び市道の各中央線の延長の交点。以下同じ。)に達する約25.37メートル前の地点から、一時停止することなく、市道方面に向けて、右折待ちのD車両の向かって右側すなわち前記接続部分の南側を進行する、いわゆる内小回り右折(以下「本件右折」という。)を開始した。 その結果、本件右折開始から約2.5秒後の同日午前8時52分59秒頃、本件交差点内において、右折中の被告人車両左側面部(同車両後端から約4. 6メートルの箇所。原審甲12)に、対向車線を直進進行していた被害車両前部が衝突し(以下単に「衝突」という。)、本件事故が発生した。 3 被告人供述の検討 ⑴ 被告人は、捜査段階においては、本件右折前に被害車両に気付かなかった旨の供述をしていた一方、原審公判廷においては、これと異なる供述をするので、各供述の信用性について検討する。 ⑵ 捜査段階供述の検討ア 9月14日付け警察官 本件右折前に被害車両に気付かなかった旨の供述をしていた一方、原審公判廷においては、これと異なる供述をするので、各供述の信用性について検討する。 ⑵ 捜査段階供述の検討ア 9月14日付け警察官調書(原審乙2)の供述要旨 私は、右折の手前で直進している時から前方は見ていたが、その段階で白バイは確認できていなかった。自車のドライブレコーダーの映像を見ると、右折する手前で最徐行するか一時停止した上で対向車の確認をしていれば、白バイに気付いて右折せずに止まっていたと思う。私も白バイが来ていることが分かっていれば、先に右折するような運転はしなかったと思う。不注意 な運転をした理由は、ハンドルを右に切り始めるときに、意識が右折先の道 路の確認に向いていたからだと思う。 イ信用性の検討前記アの被告人供述は、被告人は対向車線からオートバイが来ていることに全く気付かなかったと述べていた旨のD証言によって、その核心部分が強く補強されている上、本件事故翌日という記憶が鮮明な時期になされた供述 であり、その内容に特に不自然な点もないことからすれば、信用することができる。 ⑶ 原審公判供述の検討ア原審公判供述の要旨私は、右折する前に前方を確認したところ、対向車線の上り坂になってい るところの頂上付近に、自転車かバイクの影のようなものが見えたような気がするが、それが白バイとは気付かなかったし、速度も分からなかった。この距離なら曲がりきれると考えて、その後は意識的にその影の動きを追っていなかった。事故当初は気が動転して、白バイが見えなかったと答えてしまったが、落ち着いて事故を振り返るうちに、何日か経って、影が見えたこと を思い出した。 イ信用性の検討影のようなものが見えた気がする旨の前記原審公判 、白バイが見えなかったと答えてしまったが、落ち着いて事故を振り返るうちに、何日か経って、影が見えたこと を思い出した。 イ信用性の検討影のようなものが見えた気がする旨の前記原審公判供述は、具体的な車両やその速度を確認できたとする訳でもなく、非常に曖昧な内容である上、本件事故翌日の供述(前記⑵ア)から供述を変遷させた理由も、本件事故後何 日か経過して思い出したというものにとどまっていることからすれば、被告人の観察や記憶の正確性には疑問があり、原審弁護人の指摘を踏まえても、にわかに措信できるものではない。 4 認定事実に基づく検討⑴ 予見可能性について ア道路交通法37条は、車両等は、交差点で右折する場合において、当 該交差点において直進しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない旨規定しており、右折車両の運転者は、対向直進車両の速度及び同車との距離を判断した上、自車が対向直進車両の進路上を通過し終えるのに要する時間を考慮して、対向直進車両に衝突等の危険を回避するために制動や進路変更をさせることなく、同車の接近前に自車が右折を完 了し得ることを確認し得た場合のほかは、対向直進車両が通過するまで右折進行を一時差し控えるべき義務を負うと解される。 イ本件においては、被告人は、本件右折を開始するに当たり、前方左右を注視し、対向直進車両(被害車両)の有無を確認した上、同車の速度及び同車との距離を判断し、同車の接近前に自車が安全に右折を完了し得るかを 確認する義務があったといえる。そして、本件交差点付近の本件道路は、ある程度の幅員があり、交差道路に優先し、信号機もなく、直線が続く平坦な道路であること、周囲を緑地帯に囲まれ、本件事故当時の交通量も少なかったこと、被 といえる。そして、本件交差点付近の本件道路は、ある程度の幅員があり、交差道路に優先し、信号機もなく、直線が続く平坦な道路であること、周囲を緑地帯に囲まれ、本件事故当時の交通量も少なかったこと、被告人車両の対向車線は、本件交差点に向けて若干の下り勾配となっており、被告人車両及び対向直進車両との間に見通しを妨げるものもなか ったことなどからすれば、対向直進車両が最高速度である時速60キロメートルを基準として、時速20キロメートルをある程度超過する速度で、本件道路を進行してくることも十分予測し得るというべきであるから、上記の確認に当たっては、そのような事情をも考慮することが求められるというべきである。 ウ以上を前提に検討すると、本件右折開始時点において、被告人車両と被害車両との距離は約79メートルであり、これは、被害車両が、本件道路の最高速度を時速20キロメートル超過する時速80キロメートル(秒速約22.22メートル)で進行してきた場合には約3.56秒で、本件道路の最高速度を時速25キロメートル超過する時速85キロメートル(秒速約2 3.61メートル)で進行してきた場合には約3.35秒で、同時点におけ る被告人車両の位置に到達する距離であった。 次に、被告人車両が本件右折の完了に要する時間等を検討すると、被告人車両の車体は長く、右折完了に相応の時間を要し(被告人も、このことを当然認識していたものと考えられる。)、具体的には、被告人車両が本件右折を開始した地点から右折完了地点までの距離は約27.4メートルであるか ら、被告人車両が本件右折の開始から完了に要するまでの時間は、本件右折開始後から衝突時までの平均速度の秒速約7.74メートルで進行した場合で約3.54秒、被告人に有利に考慮して、本件右折開始前1秒 ら、被告人車両が本件右折の開始から完了に要するまでの時間は、本件右折開始後から衝突時までの平均速度の秒速約7.74メートルで進行した場合で約3.54秒、被告人に有利に考慮して、本件右折開始前1秒間の平均速度である秒速約9.4メートルで進行した場合であっても、約2.91秒を要する。前者の場合であれば、時速80ないし85キロメートルで進行して くる大型自動二輪車である被害車両に急な制動や進路変更を余儀なくさせるだけでなく、被告人車両と被害車両が衝突してその運転者の死亡の結果を伴う交通事故が発生する可能性が相当高いことは明らかである。後者の場合であっても、被告人車両が本件右折を開始した時点で、被害車両は衝突時の同車の位置から少なくとも約67.4メートル手前の地点を走行していたこと からすれば、被害車両は、最高速度を時速23.38キロメートル超過する時速83.38キロメートル(67.4÷2.91×3.6≒83.38)以上の速度で進行していれば、被告人車両が本件右折を完了するまでに、被告人車両右折完了地点付近の上記位置に到達することになり、やはり、同様の結果が発生する可能性が高いと認められる。 エ以上によれば、被告人は、本件右折開始時に、対向直進車両の有無及び同車と自車との距離等を確認していれば、被害車両の存在を確認し、同車が通常予測し得る速度で進行してきた場合に、その接近前に自車が右折を完了することができず、自車と被害車両が衝突等してその運転者の死亡の結果を伴う交通事故を発生させることを十分予見することが可能であったし、予 見する義務があったといえる。 ⑵ 結果回避可能性についてア前記のとおり、右折車両の運転者は、対向直進車両に衝突等の危険を回避するために制動や進路変更をさせることなく、同車 見する義務があったといえる。 ⑵ 結果回避可能性についてア前記のとおり、右折車両の運転者は、対向直進車両に衝突等の危険を回避するために制動や進路変更をさせることなく、同車の接近前に自車が右折を完了し得ることを確認し得た場合のほかは、対向直進車両が通過するまで右折進行を一時差し控えるべき義務を負うと解される。この点、本件公訴 事実は、原判示と同旨の注意義務を掲げるものであるが、検察官は、同注意義務につき、対向直進車両の動静に留意し、その安全を確認しながら進行すべき注意義務も含む趣旨であり(仮に被告人が原審公判廷において供述するように右折に際して被害車両の存在に気付いていたとしても、同注意義務に違反している。)、また、①結果回避措置を本件交差点の中心の直近の内側 を通ることに限定する趣旨ではなく、②前方を注視し、適切な走行を行うことにより、被害車両との衝突を回避すべきことも包含しており、例えば、そもそも右折を差し控えるなどの回避措置も当然含む趣旨であると釈明している。 イそして、被告人は、本件右折開始時点において、前記のとおり、被害 車両の接近前に自車が右折を完了することができず、被害車両と衝突等してその運転者の死亡の結果を伴う交通事故を発生させるという結果を予見すれば、その場で右折を差し控える、又は、道路交通法34条2項にのっとり、本件交差点の中心の直近の内側を通過する右折開始地点まで直進するなどして、容易に結果発生を回避することが可能であったということができるから、 結果回避可能性(結果回避義務違反)も認められる。 ⑶ 原審弁護人の主張の検討ア原審弁護人は、被告人は、制限速度が時速60キロメートルの道路を時速約118キロメートルもの高速度で進行する対向直進車両の存在を予見 避義務違反)も認められる。 ⑶ 原審弁護人の主張の検討ア原審弁護人は、被告人は、制限速度が時速60キロメートルの道路を時速約118キロメートルもの高速度で進行する対向直進車両の存在を予見する義務はない旨主張する。しかしながら、本件における予見可能性の判断 において重要であるのは、被告人が、本件右折を開始する前に、対向直進車 両が通常予測し得る程度の速度で進行してきて被告人車両と衝突等する結果を予見することができたか否かであって、被害車両が前記高速度で進行してくることまで具体的に予見することができなかったとしても、直ちに被告人の予見可能性が否定されることにはならない。 イまた、原審弁護人は、右折車両としては、右折開始時ではなく右折開 始前の合理的な時点において、通常想定される速度で進行してきた場合に衝突のおそれがあるような位置に対向直進車両がいるかを確認すれば足りるとした上で、被告人の原審公判供述を前提にして、被告人は、本件右折の数秒前に一度、相当遠方まで注視し、被害車両を発見した上で右折をしたものであるから、過失はない旨主張する。しかしながら、前記のとおり、そもそも 被告人の原審公判供述の信用性は高いものではないし、同供述を前提としたとしても、被告人は、影のようなものが見えたにすぎず、それが車両であるかの判別や速度の確認すらも十分できていない状況であった。加えて、仮に、被告人が前記こ線橋の頂上付近にいた被害車両を見たことがあったとしても、それは、被告人車両が本件右折を開始するまで約6秒も前のことであったと 考えられ、被告人は、その後衝突まで意識的に被害車両を確認したこともなかったというのであるから、被告人は本件右折に当たって対向直進車両の動静を確認したとはいい難く、注意義務を果たしたとはいえな 考えられ、被告人は、その後衝突まで意識的に被害車両を確認したこともなかったというのであるから、被告人は本件右折に当たって対向直進車両の動静を確認したとはいい難く、注意義務を果たしたとはいえない。原審弁護人の主張は、道路交通法の趣旨にも沿わない独自の見解であって採用できない。 ウさらに、原審弁護人は、被告人の捜査段階供述を前提としても、被告 人が本件右折時に被害車両を認識できなかったのは、同車が通常の注意をしても発見できないほど遠くの位置を走行していたためであるから、結果回避可能性はなかったなどとも主張するが、前記のような本件右折開始時の被告人車両と被害車両との距離や被告人車両からの見通し等に照らして、同主張がその前提を欠くことは明らかである。 エその他、原審弁護人の主張を検討しても、前記の判断を左右するもの はない。 第3 当裁判所の判断 1 総説以上の原判決の事実認定に論理則、経験則等に照らし不合理な点はなく、当裁判所も是認できる。 所論を検討する前に若干付言すると、弁護人は衝突前の被害車両の速度が法定速度を大幅に超えるものであることを殊更重視して予見義務及び結果回避義務について主張を展開するが、原判決を虚心坦懐に読めば容易に理解できるように、法定速度である時速60キロメートルを基準として時速20キロメートルをある程度超過する速度で進行する車両があることは予見すべき であり、そのことは十分可能であったことを前提として、車体の長さ約11. 51メートルの大型貨物自動車である被告人車両が、本件で被告人が実際に行った態様で本件交差点を右折進行する場合、対向直進車両が時速60キロメートルを基準として、時速20キロメートルをある程度超過する速度で進行していたとしても、その安全な進行を妨害する 被告人が実際に行った態様で本件交差点を右折進行する場合、対向直進車両が時速60キロメートルを基準として、時速20キロメートルをある程度超過する速度で進行していたとしても、その安全な進行を妨害することなく右折を完了するこ とはできないのであるから、そのような右折を差し控えるなどして結果を回避すべきであり、そのことは十分可能であるとして、被告人の過失を認めたものである。弁護人は、時速約120キロメートルに近い高速度で進行する車両の存在を予見し、そのような車両との衝突結果を回避する義務がないと主張するが、事案の本質を見失い、かつ原判決を正解しないものであって、 到底採用することはできない。 以下所論に沿って詳述する。 2 被告人の原審公判供述の信用性についてまず、過失の判断の前提として、所論は、原判決が、右折する前に前方を確認したところ、対向車線の上り坂になっているところの頂上付近に、自転 車かバイクの影のようなものが見えたような気がするなどとした被告人の原 審公判供述について、にわかに措信できないとしたのに対し、以下の各点を指摘して論難する。すなわち、①影を発見したという供述の根幹部分については、反対尋問を経ても崩れることがなかった、②被告人がゴールド免許であり、会社に5年間の無事故違反証明書を提出し、セーフティドライバーの証明書も持っていたことも踏まえれば、被告人が右折に際して前方を注視し ていたという供述内容は自然である、③事故直後の目撃者のDに対する「全く見えなかった」との発言は、一度影らしきものを見つけたものの、ぶつかる直前まで被害車両を認識できなかったという原審公判供述と矛盾しない、④そもそも原審公判供述と捜査段階の供述のうちいずれが有利か否かは明白ではなく、被告人が自己の責任を逃れようと虚 たものの、ぶつかる直前まで被害車両を認識できなかったという原審公判供述と矛盾しない、④そもそも原審公判供述と捜査段階の供述のうちいずれが有利か否かは明白ではなく、被告人が自己の責任を逃れようと虚偽の供述へと変遷させる動機 が乏しい、⑤被告人が、遠くに影のようなものが見えたと供述している以上、原判決が信用性を減殺する事情とする具体的な車両やその速度を確認できていないことは何ら不自然ではなく、影と被告人車両との距離や被害車両の走行速度を踏まえれば、その内容は自然である、⑥事故直後に動揺した状態で不正確な供述をするという事態は通常あり得ることであり、事故直後の動揺 した状態から少し落ち着いて記憶が喚起されたという変遷の理由は合理的であるなどとして、被告人の原審公判供述は信用することができ、信用性を否定した原判決の判断は不合理であると主張する。 しかしながら、①については、そもそも被告人の原審公判廷における供述は、その内容自体、遠くに何となく、影というか、自転車なのかバイクなの かちょっとわからないが見えたような気がする(原審第5回公判被告人供述調書4頁)という程度のもので、具体的な車両やその速度を確認できたとするものではなく、非常に曖昧な内容であって、右折開始時の注意義務を尽くしたとはいえない程度のものである。さらに、この原審公判供述については、被告人自身、事故及び事故後の状況ははっきり覚えていないという前提での 供述にすぎないし、本件事故翌日の供述(原審乙2)から供述を変遷させて いるところ、変遷の理由について、本件事故翌日の供述では普通の精神状態ではなかったと思うので見えなかったと言ったが、自宅に戻り気持ち的に少し安定して思い出した(前記被告人供述調書5頁から6頁)、あるいは、毎日毎日事故のことを振り 本件事故翌日の供述では普通の精神状態ではなかったと思うので見えなかったと言ったが、自宅に戻り気持ち的に少し安定して思い出した(前記被告人供述調書5頁から6頁)、あるいは、毎日毎日事故のことを振り返って思い出した(同12頁)などと述べるにとどまっていて合理的な理由は説明できていない上、そもそも、本件事故翌日の 供述においては、映像を見た感じでは、白バイが遠くにいるときは白線と白バイが同化して見えにくく感じると供述するなどかなり冷静な分析もできており(原審乙2・5頁)、特段の精神的動揺はうかがわれないことに照らしても、被告人の原審公判供述は信用性に欠けるものというほかない。以上によれば、所論が指摘する事情によっても、供述の信用性が高まるなどとはい えない。②については、本件事故前に安全運転を心がけていたからといって、本件事故時も同様であるとはいえないのは明らかであるところ、現に被告人は、本件時、一旦停止することもなく、内小回り右折という、およそ安全運転を心がけていた者とは思われない運転をしているのであって、所論は採用できない。③については、Dに対する発言は、被告人が、本件事故の発生直 後に、Dから、前の方からオートバイが来ているのに分からなかったのかなどと尋ねられたのに対して、影のようなもの等について何ら言及せず、全く気がつかなかったと述べたものであるから、被告人が事故直後で動揺していた可能性は排斥できないとしても、原審公判供述の信用性が支えられることにはならず、他方で、本件事故翌日の警察官に対する供述でも、影のような ものについて全く言及がなかったこと(原審乙2)とよく整合することから、所論は採用できない。④については、原判決は、被告人の原審公判供述について、虚偽供述の動機の有無を信用性判断の根拠にしてはおらず ものについて全く言及がなかったこと(原審乙2)とよく整合することから、所論は採用できない。④については、原判決は、被告人の原審公判供述について、虚偽供述の動機の有無を信用性判断の根拠にしてはおらず、被告人の観察や記憶の正確性に疑問があることを根拠としたものであるから、所論指摘の点は結論に影響しない。⑤及び⑥についても、既に述べたとおりであっ て、所論指摘の点は、被告人の原審公判供述がにわかに措信できるものでは ないとした原判決の判断を揺るがすものではない。 さらに、所論は、原判決が、被告人の原審公判供述に基づき、前方車両の確認をしたのが右折開始の約6秒前と認定しているところ、そもそも原審公判廷で被告人ははっきり覚えていないとしている上、被告人が発見した影の位置に関しても検察官の誘導により、その「付近」と述べたにとどまるから、 このような供述を前提に前方確認の位置や時点を認定することは不適切であると主張する。 しかしながら、原判決は、影のようなものを確認したという被告人の原審公判供述をにわかに措信できるものではないと明確に指摘した上で、「仮に」被告人の原審公判供述を前提としたところで、右折開始時に要求される注意 義務を果たしたとはいえないと説示したのであって、所論は原判決を正解しないものである。その点を措くとしても、影の位置は対向車線の上り坂になっているところの頂上付近であるとの被告人の供述を明確化するため、検察官が図面を示し、場所を特定したものであるところ、その際に原審弁護人から異議が出されることはなく、原審弁護人からの確認の尋問に対しても、被 告人は図示した場所を訂正することがなかったのであるから、原判決が、そのような審理経過を踏まえ、前記図示を前提とした判断を示すことに何ら問題はない。 これに関 らの確認の尋問に対しても、被 告人は図示した場所を訂正することがなかったのであるから、原判決が、そのような審理経過を踏まえ、前記図示を前提とした判断を示すことに何ら問題はない。 これに関連し、所論は、被告人が前方を確認した時期について、曲がる3秒前とか4秒前とかとの原審公判供述をもとにして、早くとも右折開始の3 秒前であることを前提にした判断がなされるべきであるともいう。 しかしながら、被告人は、所論指摘の供述をする(原審第5回公判被告人供述調書11頁)一方、影が見えたタイミングからハンドルを切るまでの時間は、4秒、5秒くらいとも述べており(同16頁)、その記憶は極めて曖昧というほかない上、被告人車両が右折を開始する3秒前の被害車両の位置 は、被告人が確認したという影の位置よりも相当に被告人車両に接近するこ とになり、その供述内容に矛盾が生じるから、所論は採用できない。 以上のとおり、被告人の原審公判供述をにわかに措信できないとした原判決の判断は何ら不合理ではない。 3 予見可能性について所論は、被害車両は、法定速度が時速60キロメートルのところ、時速1 18キロメートル程度で走行しており、通常の車両ではあり得ない速度であることはもとより、緊急の場合の北海道警察の内部通達による上限速度である概ね時速100キロメートルさえも大幅に上回る異常な高速度で進行していたのであるから、信頼の原則や法令の趣旨に照らせば、被告人には、被害車両の存在を予見する義務がなかったと主張する。 しかしながら、既に述べたように、本件で予見することが求められているのは、時速118キロメートルで走行する対向直進車両の存在ではなく、原判示のとおり法定速度である時速60キロメートルを基準として時速20キロメートルをある程度 に、本件で予見することが求められているのは、時速118キロメートルで走行する対向直進車両の存在ではなく、原判示のとおり法定速度である時速60キロメートルを基準として時速20キロメートルをある程度超過する速度で進行する車両の存在であり、このような予見自体は何ら困難ではなく、本件事故当時の具体的な状況に照らしても、 上記の予見義務を課すことが被告人に酷であるともいえないから、所論は採用できない。なお、本件において、被告人が前方確認を尽くして対向直進する被害車両を認識した上で右折したなどといった事情があれば、所論の指摘を検討する余地もあろうが、既に説示したとおり、そもそも上記事情は認められないのであるから、この点でも所論は採用できない。 4 結果回避義務の履行について所論は、まず、右折開始前に二、三回意識的に前方を確認し、こ線橋の頂上付近に影のようなものが見えたとの被告人の原審公判供述を前提とした上で、本件においては、本件道路の形状、事故時の時刻、被告人車両の特性に照らし、被告人がある程度遠くまでの前方を適切に確認することが可能な状 況にあり、側方からの進入可能性がないことなどに照らし、自身が発見した 影のほかに見落とした車両が存在することは想定されない状況にあったというべきであり、被告人が右折開始の3ないし6秒前に行った前方確認の後、右折の支障として想定されるのは、被害車両のように、法定速度を2倍近く超過した速度で走行する対向直進車両のみであって、そのような車両があり得ることまで予想して前方の安全を確認する義務はなく、被告人が述べる右 折開始前の前方確認により、本件右折時に必要な安全確認義務は果たされていると主張する。 しかしながら、前述のように、影のようなものを確認したという原審公判供述はにわかに く、被告人が述べる右 折開始前の前方確認により、本件右折時に必要な安全確認義務は果たされていると主張する。 しかしながら、前述のように、影のようなものを確認したという原審公判供述はにわかには信用し難いものであり、所論は前提を欠く主張である。仮に被告人の原審公判供述を前提としたところで、原判決が適切に指摘してい るように、被告人が原審公判廷で供述する前方に確認したという影が被害車両だとすると、被告人の前方確認は右折開始の約6秒も前ということになり、その後衝突まで意識的に被害車両を確認したことはなかった(なお、被告人は、原審公判廷において、影のようなものを確認した後も、前方を確認したかのような口吻を示すが、その後衝突までに被害車両に気が付くことはなか ったとも述べていることに照らし、少なくとも意識的に被害車両を確認したとは認められないとの原判決の判断は正当である。)というのであるから、被告人は本件右折に当たって対向直進車両の動静を確認したとはいい難い。 この点、所論は、右折開始前のいずれかの時点で前方を瞥見さえすれば、注意義務を履行したといえることを前提として主張を展開していることがうか がえるが、右折開始時において要求される前方確認義務(ここでは本件事故と関連する対向直進車両との関係のみを論ずる。)は、道路交通法37条の趣旨に照らし、自車の右折により、対向直進車両の安全な進行を妨げないこと、すなわち、衝突しないことはもとより、対向直進車両が衝突を回避するために制動や進路変更を余儀なくさせることなく、自車の右折を完了できる か否かを判断するに足りるだけの前方確認を尽くすことが求められるという べきであり、対向直進車両の有無はもとより、車両の種類やその速度を確認することが求められるというべきであるが、被 か否かを判断するに足りるだけの前方確認を尽くすことが求められるという べきであり、対向直進車両の有無はもとより、車両の種類やその速度を確認することが求められるというべきであるが、被告人は、影のようなものを見たとはいうものの、車両の種類や速度は不明であるというのであるから、この点からも被告人が要求される前記の前方確認義務を果たしていないことは明らかであり、いずれにせよ所論は採用できない。 また、所論は、被告人が、捜査段階において、右折開始前に前方は見ていたと述べているところ、本件事故前、被告人が前記のとおり安全運転に努めていたと認められる事情があることから、その供述は自然であって信用でき、そうすると、原審公判供述と同様に右折開始前の一定の時間、少なくとも三、四秒前には明確な前方確認を行ったという事実が認定されると主張する。 しかしながら、本件事故前に安全運転を心がけていたからといって、本件事故時も同様であるとはいえないことは前記のとおりである。また、捜査段階においては、右折開始前のどの程度前に前方確認を行ったのかは述べておらず、被告人は前方確認時に被害車両を見たとも供述していないところ、本件道路の視認状況を踏まえれば意識的に前方確認をしながら被害車両を捕捉 できない事態は想定し難いから、被告人が前方確認を仮にしたとしても、意識的なものではない一瞬の目視等のため被害車両を現認できなかったものと推認できる。この点からも、被告人が右折時に要求される前方確認義務を果たしたとは到底認められず、やはり所論は採用できない。 5 結果回避可能性について 所論は、右折時においては、運転者は、前方確認義務と右方確認義務の二つの義務を同時に負担しているところ、前方確認、右方確認の順番で確認することは許されるし 。 5 結果回避可能性について 所論は、右折時においては、運転者は、前方確認義務と右方確認義務の二つの義務を同時に負担しているところ、前方確認、右方確認の順番で確認することは許されるし、右折開始直前に前方を確認し、自身の右折により対向直進車両を妨害するおそれがないことを確認できた場合に、再度前方確認を行う義務を基礎づける合理的な理由はないし、右折開始時(0秒前)に前方 確認を行わなければならないわけではない、本件道路の形状、被告人車両の 特性に照らし、被告人がある程度遠くまでの前方を確認することが容易であったこと、側方からの進入可能性が考えられない状況にあったこと、本件の右折時に右側に右折待ちの車両が存在し、被告人は、右折に際して右方の確認が強く求められる状況にあったことといった具体的な事情を踏まえれば、少なくとも右折開始の一、二秒前に前方確認をすれば十分な前方確認をして いたと評価されるべきであるところ、右折開始の1秒前ないし2秒前の被害車両の衝突地点からの距離は100.3メートルないし133.6メートルであるから、仮に被告人が右折開始の1秒前ないし2秒前に前方確認をしても、対向直進車両に対し制動や進路変更をさせることなく、同車両の接近前に自車が右折を完了しうることを確認し得た場合に該当すると判断して右折 を実行し、事故を惹起させた合理的な疑いがあり、結果回避可能性は認められないと主張する。 しかしながら、既に指摘したとおり、被告人は、本件において、自車の右折により対向直進車両(被害車両)の安全な進行を妨害することなく、すなわち、衝突しないことはもとより、対向直進車両が衝突を回避するために制 動や進路変更を余儀なくさせることなく、自車の右折を完了できるか否かを判断するに足りるだけの前方確認 害することなく、すなわち、衝突しないことはもとより、対向直進車両が衝突を回避するために制 動や進路変更を余儀なくさせることなく、自車の右折を完了できるか否かを判断するに足りるだけの前方確認を尽くすことが求められており、その際には、法定速度時速60キロメートルを基準として時速20キロメートルをある程度超過する速度で進行する対向直進車両があることを予見するとともに、車体の長さ約11.51メートルの大型貨物自動車である被告人車両が被害 車両に前記妨害をすることなく本件交差点の右折を完了できるか否かについて、できる限り慎重に確認すべき義務が課されているというべきである。このような求められる確認義務の内容に照らせば、対向直進車両に対する妨害等の可能性を見極め、右折を回避すべきか否かを判断する最後の機会である右折開始時点で、前方確認義務を尽くす必要があることは当然である。以上 と異なり、右折開始の一、二秒前に前方確認を尽くせば足りるとする所論は 独自の見解というほかない。なお、所論は、被告人が前方確認義務と右方確認義務を同時に負っており、右方確認が強く求められる状況にあったことをも上記見解の根拠とするが、求められる前方確認義務の前記内容に照らせば、同義務を尽くして初めて右折開始が許されると解すべきであるから、右折開始の際の右方確認義務を上記見解の根拠とすることは相当ではない。更にい えば、そもそも被告人が、右折先の右方確認を特に慎重に行う必要が生じたのは、内小回り右折という道路交通法34条2項に反する方法によって右折を行ったからであり、この点でも所論は採用し難い(通常の右折方法では、右折先出口付近の横断者の有無や安全の確認をすれば足りるのに対し、内小回り右折においては、右折先の本来の通行車線に至るまでにその対向車線 たからであり、この点でも所論は採用し難い(通常の右折方法では、右折先出口付近の横断者の有無や安全の確認をすれば足りるのに対し、内小回り右折においては、右折先の本来の通行車線に至るまでにその対向車線を 横切ることになるので、対向車線上の車両の有無や安全の確認をする必要が生じる。)。このような異様な右折方法をとる必要性は何らなく、通常の方法で右折を行えば足りるというべきであるが、被告人は、内小回り右折の方法をとるために右折先の安全をより注視する必要が生じ、その結果前方確認が疎かになるおそれがあるため、前方確認義務と右方確認義務を同時に尽く す必要があったのであれば、右折開始前に一旦停止するなどした上で前方及び右方の安全確認を行うべきであった。そうすれば、右折先の安全確認をより注意深く行わなければならないからといって、前方確認を右折開始の一、二秒前に行う必要はなく、被告人に酷な要求をすることにもならないが、実際には、そのような安全確認は行われなかった。そうすると、一旦停止する などせず、右折開始までに前方及び右方の安全確認を併せて行うことを前提としたものと理解できる所論は、その前提が誤っているというほかなく、失当である。 なお、付言すると、所論は、①原判示のとおり、被害車両が時速83.38キロメートルという原判決の想定速度上限(時速85キロメートル)ぎり ぎりの速度で進行してこない限り、衝突事故は発生しない距離関係にあった、 ②ドライブレコーダーの解析には限界があり、解析誤差を踏まえれば、右折開始時において、被害車両が時速85キロメートルを超える速度で進行してこない限り、本件事故が発生しない可能性があり、結果回避可能性の存在については合理的な疑いが残るなどとして、原判決の判断は、実験結果の数値だけを至上の 両が時速85キロメートルを超える速度で進行してこない限り、本件事故が発生しない可能性があり、結果回避可能性の存在については合理的な疑いが残るなどとして、原判決の判断は、実験結果の数値だけを至上のものとして、これに全面的に依拠する判断手法であり、実体と の乖離を否定し難く、必ずしも相当ではないものである旨主張する。 しかしながら、原判決は、被告人車両が本件右折の開始から完了に要するまでの時間について、本来であれば本件右折開始後から衝突時までの平均速度(秒速約7.74メートル)を前提に検討する方が合理的とも思われるところ、計測上の誤差が生じる可能性等も考慮の上、慎重を期すため、被告人 に有利に考慮して、本件右折開始の前の1秒間の平均速度(秒速約9.4メートル)を前提に、被害車両が時速83.38キロメートル以上の速度で進行していれば、本件同様の結果が発生する可能性が高いと判断したものと理解できる。さらに、原判決は、前方確認義務を検討する前提として、本件道路の状況等に関する諸般の事情を総合的規範的に考慮して、最高速度である 時速60キロメートルを基準として、時速20キロメートルをある程度超過する速度を想定しているのであって(必ずしも時速85キロメートルを想定速度の上限としているとまではいい難い。原判決9頁⑵⑶参照)、その前提で、時速83.38キロメートルも、原判決の前記想定速度内に十分入っていることを踏まえた判断をしたものと理解できる。以上によれば、原判決の 判断について、実験結果の数値だけを至上のものとして、これに全面的に依拠する判断手法などとはいえず、所論は採用の限りではない。 第4 結論その他るる主張する点も含め、所論はいずれも採用することができず、論旨は理由がない。 よって、刑訴法396条により 拠する判断手法などとはいえず、所論は採用の限りではない。 第4 結論その他るる主張する点も含め、所論はいずれも採用することができず、論旨は理由がない。 よって、刑訴法396条により、主文のとおり判決する。 令和7年2月20日札幌高等裁判所刑事部 裁判長裁判官青沼潔 裁判官高杉昌希 裁判官並河浩二
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