主文 被告人を懲役1年6月に処する。 未決勾留日数中80日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、警察共済組合本部事務局年金部年金審査課遺族審査係係員として、長期給付関係の裁定又は決定及び改定に関する業務等並びにこれらに伴い警察共済組合本部に設置されている業務用のパーソナルコンピュータを操作して、地方公務員共済組合連合会が管理する、情報連携システムの機能を有している情報共有化システムを用いて、これと連携している日本年金機構が管理するインデックスファイル管理システムによって閲覧できる年金加入者の情報を検索閲覧する業務に従事していたものであるが、令和5年6月7日午後0時6分頃から令和6年5月20日午前10時52分頃までの間、別紙一覧表(掲載省略)記載のとおり、83回にわたり、東京都内、千葉県内又はその周辺において、依頼された対象者の住所を特定して教示する旨の被告人によるSNSへの書き込みを閲覧して住所特定等を依頼してきたA等36名に対し、前記パーソナルコンピュータを操作して知り得たB等84名の住所等を、前記A等36名のそれぞれ使用する携帯電話機にSNSのダイレクトメッセージを送信する方法で教示し、もって組合の事業に関して職務上知り得た秘密を漏らした。 (量刑の理由)本件は、警察共済組合本部において年金審査等の業務に従事し、日本年金機構が令和6年(わ)第1062号、同第1187号、同第1347号、同第1769号地方公務員等共済組合法違反被告事件令和7年1月28日千葉地方裁判所刑事第1部宣告 管理するシステムと連携している地方公務員共済組合連合会のシステムを用いて年金加入者の個人情報を検索閲覧できる立場にあった被告人が、SNS上で「住所特定屋」などと 方裁判所刑事第1部宣告 管理するシステムと連携している地方公務員共済組合連合会のシステムを用いて年金加入者の個人情報を検索閲覧できる立場にあった被告人が、SNS上で「住所特定屋」などと自称し、被告人に住所特定等を依頼してきた者36名に対して、合計84名の住所等の個人情報を漏洩したという事案である。 情報通信技術が発達した現代社会において、個人情報保護に対する意識が高まっていることは論をまたず、年金業務をはじめとする公的職務に従事する者に高い秘密保持義務が課せられていることは当然である。それにもかかわらず、被告人は、そのような自身の責務にも、個人情報を漏洩される者の心情にも何ら思いを致すことなく、経済的利益を得るという身勝手な動機で個人情報を意のままに取り扱い、11か月余りの長期間、職業的・常習的に本件各犯行を繰り返した。本件各犯行は、被漏洩者の生活の平穏を害するおそれが極めて高く、また、個人情報を取り扱う公的業務に携わる者に対する信頼を毀損して社会に大きな不安を与えるものである。 妻の休業等で被告人の世帯収入が減っていたという事情を踏まえても、経緯に特に酌むべき事情があるとはいえない。 本件各犯行によって84名もの個人情報が漏洩され、中には実際に生活の平穏を害された被漏洩者も存在しており、本件による影響は甚大である。ところで、弁護人は、被告人は依頼者に対して犯罪行為をしないよう求めており、漏洩した情報が悪用されるとは考えていなかった、困っている人を助けているという思いもあった、などと主張する。しかし、相当数の依頼者は、被告人に対し、被漏洩者との関係性や情報の用途について全く説明しておらず、また、判示別表番号11の依頼者のように、第三者の依頼を仲介して被告人に多数の依頼をしていることが明らかな者も存在していたのであるから、漏 被漏洩者との関係性や情報の用途について全く説明しておらず、また、判示別表番号11の依頼者のように、第三者の依頼を仲介して被告人に多数の依頼をしていることが明らかな者も存在していたのであるから、漏洩した情報が悪用される危険性について被告人が確定的に認識していたことに疑いの余地はない。加えて、被告人が「住所特定屋」と自称し、依頼者の信用を得るべく、依頼者自身の情報を格安で提供する、また情報提供実績を都度SNSに投稿するなどの工夫をして集客に勤しみ、本件各犯行によって相当高額の利益を得ていたことに照らせば、結局のところ被告人が専ら経済的 利益を得る目的で本件各犯行を繰り返していたことは明白であって、強い非難に値する。 以上に照らせば、被告人の刑事責任は重く、被告人が本件を認めて反省の言葉を述べていること、妻が被告人の監督を誓っていること、本件によって懲戒免職処分を受けたこと、前科がないことなどといった被告人のために酌むべき一般情状を考慮しても、本件が刑の執行を猶予すべき事案であるとは到底認めることができない。 被漏洩者が84名もの多数に及んでいるという点においても、経緯に特に酌むべき事情が見当たらず、利欲的かつ身勝手な動機によって職業的、常習的に繰り返されたという点においても、本件が極めて犯情悪質な事案であることからすれば、被告人に対しては、処断刑の上限である懲役1年6月の実刑をもって臨むほかない。 よって、主文のとおり判決する。 (求刑懲役1年6月)令和7年2月6日千葉地方裁判所刑事第1部 裁判官西澤恵理 官西澤恵理
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