平成29(行ウ)102 所得税更正処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成31年1月17日 大阪地方裁判所
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判決文本文12,824 文字)

- 1 - 平成31年1月17日判決言渡平成29年(行ウ)第102号所得税更正処分取消等請求事件 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 東税務署長が原告に対し平成28年3月23日付けでした原告の平成25年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分のうち,総所得金額439万0159円,納付すべき税額マイナス685万9340円を超える部分を取り消す。 2 東税務署長が原告に対し平成28年3月23日付けでした過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,平成25年中にゴルフ会員権の譲渡をした原告が,同年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告において,譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金 額があるとして,これを事業所得等と損益通算したところ,東税務署長から,平成28年3月23日付けで,別表の「更正処分等」欄のとおり更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい,本件更正処分と併せて「本件各処分」という。)を受けたことから,被告を相手に,本件更正処分のうち上記確定申告による申告額を超える部分及び 本件賦課決定処分の各取消しを求める事案である。 1 法令の定め等⑴ 譲渡所得とは資産の譲渡による所得をいう(所得税法33条1項)ところ,ゴルフクラブの会員である個人がその会員である地位(いわゆる会員権)を譲渡(営利を目的として継続的に行われるものを除く。)したことによる所得 は,譲渡所得に該当する(所得税基本通達33-6の2)。 - 2 - 譲渡所得の金額の計算に当たっては,その年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の のを除く。)したことによる所得 は,譲渡所得に該当する(所得税基本通達33-6の2)。 - 2 - 譲渡所得の金額の計算に当たっては,その年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除する(所得税法33条3項)。 ⑵ 総所得金額,退職所得金額又は山林所得金額を計算する場合において,不動産所得の金額,事業所得の金額,山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計 算上生じた損失の金額があるときは,政令で定める順序により,これを他の各種所得の金額から控除する(所得税法69条1項)。 なお,上記損失の金額のうちに所得税法62条1項に規定する資産に係る所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは,当該損失の金額のうち政令で定めるもの以外のものは生じなかったものとみなすとされていると ころ(同法69条2項,所得税法施行令200条1項),平成26年政令第137号による所得税法施行令178条1項2号の改正により,ゴルフ会員権も上記「当該損失の金額のうち政令で定めるもの以外のもの」に含まれることとなったため,同年4月1日以後にされるゴルフ会員権の譲渡に係る損失は,損益通算の対象とすることができない。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,掲記の証拠等により容易に認定することができる事実。以下,書証番号は特記しない限り各枝番を含む。)⑴ 原告によるゴルフ会員権の取得原告は,平成9年7月18日,株式会社A(以下「A社」という。)との間で,同社が経営するゴルフクラブであるBの会員契約を締結し,同年8月8 日,入会登録料100万円及び入会保証金450万円の合計550万円(以下,併せて「本件登録料等」という。)を支払ってその会員権(以下「本件旧会員権」 ブであるBの会員契約を締結し,同年8月8 日,入会登録料100万円及び入会保証金450万円の合計550万円(以下,併せて「本件登録料等」という。)を支払ってその会員権(以下「本件旧会員権」という。)を取得した(甲12,乙1)。 本件旧会員権は,①入会保証金の返還請求権,②クラブ会則及び施設利用約款等に基づく施設利用権並びに③クラブ会則に基づく施設利用料金及び 年会費等諸費用納入義務から成り,入会保証金の据置期間は15年間とされ- 3 - ていた(甲12)。 ⑵ A社に係る再生計画の骨子東京地方裁判所は,平成17年2月10日,A社につき,再生手続開始の決定をしたところ,同手続において認可された再生計画(以下「本件再生計画」という。)の骨子は,以下のとおりであった(甲1,乙7,16)。 ア経営体制(ア) オリックス株式会社(以下「オリックス」という。)は,その100%出資の関連会社であるC有限会社(以下「C社」という。)をしてA社の全発行済株式を取得させる。これにより,A社はオリックスグループに帰属する。 (イ) A社が所有するゴルフ場施設(以下「本件ゴルフ場」という。)は,同社が保有を継続する。 (ウ) 本件ゴルフ場の営業及び会員権の発行は,オリックスの100%出資の関連会社であるD株式会社(以下「D社」という。)が行う(A社は本件ゴルフ場の営業をD社に譲渡する。)。A社の職員は,D社に転籍する。 イ継続希望会員への新規会員権の発行本件ゴルフ場の会員規約に基づき有効な会員資格を有する預託金債権者(以下「旧会員」という。)のうち,会員契約の継続を希望する全ての会員(一定の要件に該当する者を除く。)に対し,入会金その他の金員を徴収することなく,D社から新規に本件ゴルフ場に係るゴル 託金債権者(以下「旧会員」という。)のうち,会員契約の継続を希望する全ての会員(一定の要件に該当する者を除く。)に対し,入会金その他の金員を徴収することなく,D社から新規に本件ゴルフ場に係るゴルフ会員権を発行す る。 ウ預託金の弁済上記イの新規会員権の発行を受けない旧会員に対しては,預託金額(450万円)の1.66%(1口につき7万4700円)を一括弁済する。 ⑶ 原告による入会の申込み等 原告が,D社に対し,平成17年9月9日付け「個人会員入会申込書」と- 4 - 題する書面(乙2)を提出してEコースへの入会を申し込んだところ,D社は,同年11月1日付けで,原告に対し,新規会員権(以下「本件新会員権」という。)を発行した。 ⑷ 原告による本件新会員権の譲渡原告は,平成25年11月20日,合同会社Fに対し,本件新会員権を2 0万円で売却した。 ⑸ 原告による確定申告原告は,平成26年3月5日,別表の「確定申告」欄のとおり,平成25年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告をしたところ,同申告においては,本件登録料等(550万円)が本件新会員権の取得費に該当し,譲渡所 得の金額の計算上530万円の損失が生じたものとして,所得税法69条1項による損益通算がされていた。 ⑹ 本件各処分及び不服申立ての経緯ア東税務署長は,本件旧会員権と本件新会員権との間に資産としての同一性が認められず,本件登録料等は本件新会員権の取得費として控除するこ とができないとして,平成28年3月23日付けで,別表の「更正処分等」欄のとおり,本件各処分をした。 イ原告は,平成28年5月6日,本件各処分について異議申立てをしたが,東税務署長は,平成28年6月29日付けで,これを棄却する旨の決定をした。 「更正処分等」欄のとおり,本件各処分をした。 イ原告は,平成28年5月6日,本件各処分について異議申立てをしたが,東税務署長は,平成28年6月29日付けで,これを棄却する旨の決定をした。 ウ原告は,平成28年7月21日,本件各処分について審査請求をしたが,国税不服審判所長は,平成29年1月6日付けで,これを棄却する旨の裁決をした。 ⑺ 本件訴えの提起原告は,平成29年6月5日,本件訴えを提起した。 3 主な争点及び当事者の主張- 5 - 本件における主な争点は,原告がA社に支払った本件登録料等(550万円)が本件新会員権の取得費(所得税法33条3項)に該当しないかであり,この点についての当事者の主張は,以下のとおりである。 (被告の主張)⑴ ゴルフ場経営の再建のために,ゴルフ場施設等の営業譲渡がされた場合に おいて,営業譲渡後のゴルフ会員権の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算に当たり,新旧ゴルフ会員権につき資産の同一性があるとして,旧会員権の取得費をもって新会員権の取得費に当たるといえるためには,旧会員権が,当該営業譲渡の前後を通じて,同一性をもって新会社に引き継がれていることが必要であるというべきである。そして,民事再生手続において当該営業譲渡 がされたときの上記同一性の判断に当たっては,再生計画の定め及び趣旨を勘案すべきである。 ⑵ 本件旧会員権は,いわゆる預託金会員制ゴルフ会員権であって,①ゴルフ場施設の優先利用権(以下「プレー権」という。),②一定の据置期間経過後に預託金の返還を請求することができる権利(以下「預託金返還請求権」と いう。)及び③年会費納入義務を含む契約上の地位であると解されるところ,これらの各部分についての本件再生計画の定めは,以下のとおりである。 することができる権利(以下「預託金返還請求権」と いう。)及び③年会費納入義務を含む契約上の地位であると解されるところ,これらの各部分についての本件再生計画の定めは,以下のとおりである。 本件ゴルフ場の営業は,本件再生計画によりA社からD社に譲渡されるところ(以下,この営業譲渡を「本件営業譲渡」という。),本件再生計画には,本件ゴルフ場の営業を譲り受けるD社は,再生債務者であるA社から,旧会 員との間の会員契約を引き継がず,債務を承継しないことが明記されている(本件再生計画第2の3②)。加えて,本件営業譲渡後のプレー権については,旧会員のうち,所定の条件を満たし,D社との間で新たに会員契約を申し込んだ者が有する旨規定されている(同第2の3⑤ア)一方,当該契約を締結しない旧会員のプレー権は,再生債権元本に対する再生計画所定の弁済を受 けた後に消滅することが規定されている(同第3の2⑺)。また,預託金返還- 6 - 請求権については,D社との間で新たに会員契約を締結しない旧会員は,再生計画所定の弁済を受け(同第3の2⑴②),A社は,弁済を行えば,当該旧会員に対するその余の債務の免除を受けることが規定されている(同第3の2⑺)。これらの規定によれば,プレー権及び預託金返還請求権に対応する債務が,A社からD社に引き継がれないことは明らかであり,年会費納入義務 も,D社との間の新たな会員契約の締結によって発生するものというべきである。 なお,本件再生計画においては,D社は新規会員権を発行するに当たり,会員に対して新たな預託金の支払を求めないとされているが,同時に,A社はD社が新会員に対して負担することとなる預託金の総額に相応する精算 金を支払うこととされている(同第2の2②)。これは,本来であれば,A社に 託金の支払を求めないとされているが,同時に,A社はD社が新会員に対して負担することとなる預託金の総額に相応する精算 金を支払うこととされている(同第2の2②)。これは,本来であれば,A社においては切下げ後の預託金債務を旧会員に弁済し,新会員においてD社に対し預託金10万円を支払うべきところ,かかる方法はう遠であり,顧客離れにもつながりかねないことから,D社と新規に会員契約の締結を希望する旧会員に対する預託金の返還と,D社に対する預託金の支払について,A社 とD社との間で精算することとしたものと理解される。 以上によれば,本件再生計画の定め及びその趣旨は,旧会員の有するゴルフ会員権をA社からD社に引き継がせないというものであり,新規会員権は,D社との間の新たな会員契約の締結によって付与されたものと評価すべきである。そうすると,本件において,旧会員権が,本件営業譲渡の前後を通 じて,同一性をもってD社に引き継がれているということはできない。 なお,国税庁は,ゴルフ会員権の取扱いについて,平成15年7月4日付け資産課税課情報第13号「個人所有の預託金制ゴルフ会員権を巡る課税上の問題について」(以下「平成15年情報」という。)及び平成24年8月付け国税庁ホームページに掲載のお知らせ「ゴルフ会員権の譲渡所得に係る取 得費の取扱いについて」をそれぞれ通知ないし公表しているが,これらは,- 7 - 更生手続等の前後を通じてゴルフ会員権に資産としての同一性が認められるためには,ゴルフ会員権としての性質が維持されていることのみならず,その内容を成すプレー権や年会費納入義務等の同一性が認められなければならないこと,これらの権利義務の同一性が認められるためには,その発生原因となる会員契約の同一性が認められなければならないこ らず,その内容を成すプレー権や年会費納入義務等の同一性が認められなければならないこと,これらの権利義務の同一性が認められるためには,その発生原因となる会員契約の同一性が認められなければならないことを当然の前 提としている。したがって,本件旧会員権と本件新会員権との資産としての同一性を否定することと,上記の通知ないし公表された考え方とは,何ら矛盾しないものである。 ⑶ したがって,本件登録料等は,本件新会員権の取得費に該当しない。 (原告の主張) ⑴ オリックスは,金融・リースを目的とする,東証一部上場の一流企業とされる。オリックスは,その100%出資の子会社として,C社及びD社を有している。本件再生計画において,A社はC社に全発行済株式を保有されることとなり,オリックスがA社の全面的支配権を有することとなった。 本件再生計画の下において,A社はC社に全発行済株式を保有されること となっただけで,法人としては何らの変化もない。A社は,本件ゴルフ場の保有を継続しており,ゴルフ場の営業をD社に委任しただけであり,A社とD社は実質的に同一である。 ⑵ 本件再生計画においては,旧会員のうち会員契約の継続を希望する全ての会員に対して,入会金その他の金員を徴収することなく,ゴルフ会員権を発 行するものとされている。そして,当該ゴルフ会員権の内容については,従来どおりとする再建方針が示されていたのであり(甲11),現に,本件旧会員権と本件新会員権とでプレー権の内容は同一である。また,本件再生計画によっても,本件ゴルフ場の利用が制限されたことはなく,プレー権は消滅していないのであり,原告の有するプレー権は,本件旧会員権の取得時から 本件新会員権の譲渡時まで,その性質を変容することなく,継続して存続し- 8 - 制限されたことはなく,プレー権は消滅していないのであり,原告の有するプレー権は,本件旧会員権の取得時から 本件新会員権の譲渡時まで,その性質を変容することなく,継続して存続し- 8 - ていた。 さらに,本件旧会員権と本件新会員権とで年会費は同額であり,預託金返還請求権を有することも同一である。 以上のとおり,本件旧会員権と本件新会員権とを比べると,会員権の内容はそのまま維持されている。 ⑶ 以上によれば,本件旧会員権と本件新会員権とは,実質的に,資産としての同一性を維持しているというべきである。 被告は,本件再生計画等において,旧会員権が効力を失うとされていること等を理由に資産としての同一性がないと主張するが,事実関係を無視した主張である。現に,平成15年情報も,「ゴルフ会員権を巡る種々の方策の判 定に当たってのメルクマールは,そのゴルフ会員権はゴルフ会員権としての性質を有しているか(維持しているか),という点を基本として行う」としているところ,本件新会員権がゴルフ会員権としての性質を維持していることは明らかである。 ⑷ したがって,本件登録料等は,本件新会員権の取得費に該当する。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に加え,証拠(甲1,10,11,14,乙2,8,14)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ⑴ A社は,平成17年2月1日,東京地方裁判所に対し,再生手続開始の申 立てをした。 ⑵ A社は,平成17年2月8日,債権者説明会を開催し,再生手続を進めるに当たっての方針として,「オリックス支援による再建方針」(甲11)を示したところ,同方針において,会員権の取扱いは,以下のとおりとされていた。 ア 「現会員の優先的プレー権について,従来通 当たっての方針として,「オリックス支援による再建方針」(甲11)を示したところ,同方針において,会員権の取扱いは,以下のとおりとされていた。 ア 「現会員の優先的プレー権について,従来通りとする。優先的予約権,- 9 - プレーフィー,年会費についても従来通りとする。」イ 「預託金については,恐縮ですが,大幅に切り下げさせていただきます。 (内容については,裁判所・監督委員とも協議の上,決定します。)」ウ 「追加負担なしで,現会員に新たなゴルフ会員権証書を発行する。名義書換も認める。」 エ 「ローン中の会員については,何らかの条件で,会員が名義書換できるようにする。(以下,略。)」⑶ 東京地方裁判所は,平成17年2月10日,A社につき,再生手続開始の決定をした。 ⑷ A社が平成17年5月16日付けで再生計画案を提出したところ,東京地 方裁判所は,同年7月20日,再生計画認可の決定をし,同決定は,同年8月16日に確定した。 本件再生計画の骨子は前記前提事実⑵のとおりであるが,その具体的な内容は,要旨,以下のとおりであった。 ア本件営業譲渡 A社は,以下のとおり,本件ゴルフ場の営業をD社に譲渡する。その結果,A社は引き続き本件ゴルフ場を保有し,D社が本件ゴルフ場の運営及び新規会員権の発行を行うこととなる。 (ア) 譲渡対象本件ゴルフ場の営業及びA社が保有する資産のうち現預金,未収入金 及び固定資産を除く全部。なお,D社は,後記イにより,旧会員と新規に会員契約を締結するものとし,A社の債務及びA社と旧会員との会員契約を承継しない。 (イ) 譲渡価格2500万円 (ウ) 譲渡日- 10 - 再生計画認可の決定の確定日が属する月の翌月1日(平成17年9月1日 務及びA社と旧会員との会員契約を承継しない。 (イ) 譲渡価格2500万円 (ウ) 譲渡日- 10 - 再生計画認可の決定の確定日が属する月の翌月1日(平成17年9月1日)イ旧会員の処遇(ア) D社は,旧会員のうちD社による本件ゴルフ場の運営が開始した後も会員としての利用を希望する旨を再生計画認可の決定の確定日から2 か月以内に書面で申し込んだ者で,譲渡日前日現在,旧会員契約に基づき有効な会員資格を有し,年会費の未納がないものについては,新会員契約の締結の申込みがあったものとみなして,同契約を締結し,遅滞なく新規会員権を発行する。 D社は,旧会員に新規会員権を発行するに際しては,入会金その他の 金員を徴収しない。 (イ) 旧会員のうち,上記(ア)以外のものについては,確定した再生債権元本に1.66%を乗じた金額を,再生計画認可の決定の確定日から90日以内に,一括して支払う。 ウ新規会員権の内容 預託金は10万円とし,平成22年10月1日以降,退会時に返還するものとする。 新クラブの年会費は従来どおりとする。 新会則,新クラブの規約,諸規則は,本件再生計画に定めるほかは,A社の規則・会則や諸規則を基本的に踏襲するものとする。 エ A社は,上記イ(イ)の弁済を行ったときは,弁済後の再生債権残元本額等(預託金返還債務の残額等)の全額について支払債務の免除を受ける。また,上記イ(イ)の退会会員が有するゴルフ場施設利用権(プレー権)は,上記弁済を行ったときにA社との関係で全て消滅する。 ⑸ D社及びC社は,平成17年8月5日付けで,旧会員等に対し,「ご挨拶お よび入会説明会開催のご案内」と題する文書(乙8)を発送したところ,同- 11 - 文書には,ゴルフクラ る。 ⑸ D社及びC社は,平成17年8月5日付けで,旧会員等に対し,「ご挨拶お よび入会説明会開催のご案内」と題する文書(乙8)を発送したところ,同- 11 - 文書には,ゴルフクラブの運営引継以降の本件ゴルフ場の利用について,「弊社らを含むオリックスグループは,上記ゴルフクラブのゴルフ場資産を引き継いでゴルフ場事業の運営に携わるものでありますが,弊社らを含むオリックスグループは皆様に対する預託金返還債務を含む従来の会員契約上の地位は再生計画案に基づき一切承継しておりません。しかしながら,平成17 年9月30日までに,D株式会社との間で新たな会員契約を締結いただいた場合には,当該会員契約に従って新たな預託金をお支払いただくことなく,1口10万円の新規預託金会員券1口(預託金は,平成22年10月1日以降,退会時に会員券および弊社所定用紙と交換に返還いたします。)を発行するとともに,この預託金債務はD株式会社が負うこととなり,ゴルフ場施設 はこれまでと同様にご利用いただけることとなります。引継日より3ヶ月間は,現行のBの会員カードを受付にてご呈示いただく事により,従前と同様,ゴルフ場施設を提供させていただきます。」などと記載されていた。 ⑹ A社は,本件再生計画に基づき,平成17年9月1日をもって,本件ゴルフ場の営業をD社に譲渡した(本件営業譲渡)。A社は,本件営業譲渡に先立 ち,同年8月29日付けで,旧会員に対し,「ご案内」と題する文書(乙14)を発送したところ,同文書には,「再生計画に基づき9月1日をもってオリックスグループに営業権譲渡し,経営移管いたします。つきましては,移管に伴い従来のBと会員様との契約はすべて効力を失いますので,退会を希望される方は下記の通りお手続き下さいますようご案内申し上げま ックスグループに営業権譲渡し,経営移管いたします。つきましては,移管に伴い従来のBと会員様との契約はすべて効力を失いますので,退会を希望される方は下記の通りお手続き下さいますようご案内申し上げます。ご入会を 希望される場合でも9月30日までに入会お申込が無い場合,退会の手続きに移らせていただきます」などと記載され,旧会員権の取扱いについて,「9月1日以降,旧Bの会員権は無効になります。」と記載されていた。 ⑺ 前記前提事実⑶のとおり,原告は,D社の運営するEコースへの入会を申し込み,D社から本件新会員権が発行された。 2 本件登録料等が本件新会員権の取得費に該当しないかについて- 12 - ⑴ 譲渡所得の金額の計算に当たっては,所得税法33条3項が,譲渡所得の総収入金額から当該所得の「基因となった資産」の取得費を控除することができる旨定めていることから,譲渡した資産との同一性が認められない資産の取得に要した金額を当該譲渡所得の取得費として控除することはできないと解される。以下,本件旧会員権と本件新会員権の間に上記のような取得 費の控除が認められる同一性があるか否かについて検討する。 ⑵ 前記前提事実⑴によれば,本件旧会員権は,いわゆる預託金会員制ゴルフクラブの会員契約に基づく契約上の地位として,会則に従って本件ゴルフ場を優先的に利用し得る権利(プレー権)及び年会費納入等の義務と共に,会則に定める据置期間の経過後は退会に伴って入会時に預託した預託金の返 還を請求することができる権利(預託金返還請求権)を内容とするものであるが,その法律上の発生原因は,原告とA社との間の会員契約であるということができる。 次に,上記認定事実によれば,本件再生計画において,A社はD社に対し本件ゴルフ場の営業及びA社が保 するものであるが,その法律上の発生原因は,原告とA社との間の会員契約であるということができる。 次に,上記認定事実によれば,本件再生計画において,A社はD社に対し本件ゴルフ場の営業及びA社が保有する資産のうち現預金,未収入金及び固 定資産を除く全部を譲渡するものの,A社の債務及びA社と旧会員との会員契約は承継しないこととされ,旧会員のうち本件営業譲渡後もD社の運営するゴルフクラブの会員として本件ゴルフ場の利用を希望するものにおいては,本件営業譲渡後一定の期間内にその旨書面で申し込むことにより,D社との間で新たに会員契約を締結することができるものとされ,また,その余 の旧会員については,本件営業譲渡後一定期間内に切下げ後の預託金が返還され,当該弁済によって預託金残額については債務免除を受けるとともに,プレー権は消滅するものとされている。さらに,D社及びC社並びにA社からも,旧会員に対し,D社は従来の会員契約上の地位は一切承継しない旨やA社と旧会員との間の契約は効力を失う旨の案内がされていたものである。 以上のような事情を前提に,原告においても,再生債権の弁済として,A社- 13 - から本件旧会員権に基づく預託金の返還を受けることもできたが,これをせずに,D社の運営するゴルフクラブへの入会を申し込み,D社から本件新会員権の発行を受けたというのである。 以上のような本件再生計画の定め等に照らせば,A社と旧会員との間の会員契約を発生原因とする旧会員権は,旧会員が本件営業譲渡後に新規会員権 の発行を受けたか否かにかかわらず,本件再生計画により同会員契約が効力を失ったことに伴い一旦消滅したものというべきであり,他方で,新規会員権は,旧会員の選択に基づきD社との間で締結された新規会員契約により新たに発生したもの わらず,本件再生計画により同会員契約が効力を失ったことに伴い一旦消滅したものというべきであり,他方で,新規会員権は,旧会員の選択に基づきD社との間で締結された新規会員契約により新たに発生したものと解するのが相当である。 そうすると,本件旧会員権と本件新会員権とでは,法律上の発生原因であ る会員契約を異にするものというべきであって,そうである以上,本件旧会員権と本件新会員権とは契約上の地位としての同一性を欠くものというほかない。したがって,原告がA社に支払った本件登録料等の550万円は,飽くまで本件旧会員権の取得に要した金額であるから,本件新会員権の取得費には該当しないといわざるを得ない。 ⑶ 原告の主張についてア原告は,A社もD社も同一資本の企業グループの子会社であり,A社は本件ゴルフ場の保有を継続しており,D社は本件ゴルフ場運営の委託を受けているにすぎず,A社とD社は実質的には同一といえるから,本件旧会員権と本件新会員権とは,実質的に,資産としての同一性を維持している などと主張する。 しかしながら,A社とD社の法人格が異なることは明らかであり,本件再生計画においてもそれを前提として,D社がA社の権利義務を承継しないという枠組みが策定されているのであるから,本件旧会員権と本件新会員権との間で取得費の控除が認められる同一性があるとは到底いうことが できない。原告の上記主張は採用することができない。 - 14 - イ原告は,本件旧会員権と本件新会員権は,プレー権,年会費支払義務は同一で,預託金返還請求権を有する点でも同一であるから,実質的に,資産としての同一性を維持しているなどと主張する。 確かに,上記認定事実によれば,本件旧会員権と本件新会員権は,いずれも,A社が保有する本件ゴルフ場を会 求権を有する点でも同一であるから,実質的に,資産としての同一性を維持しているなどと主張する。 確かに,上記認定事実によれば,本件旧会員権と本件新会員権は,いずれも,A社が保有する本件ゴルフ場を会則に従って優先的に利用し得る権 利(本件ゴルフ場に係るプレー権)をその基本的な構成部分とするゴルフ会員権であり,その会則も,本件営業譲渡の前後で基本的に同じ内容であったというのであるから,プレー権の内容は同じであり,年会費支払義務の内容も同じであるなど,本件旧会員権と本件新会員権とは権利義務の主体は異なるものの,その内容においては類似点が多いということができる。 しかしながら,仮に契約上の地位に係る権利義務の内容が同じであっても,上記のとおり,その発生原因である会員契約が異なる以上,本件旧会員権と本件新会員権は別個のものといわざるを得ないから,取得費の控除が認められる同一性があるということはできない。なお,原告は,平成15年情報の記載を引き合いに出して,営業譲渡型の再建型処理の場合に,営業 譲渡の前後で権利の同質性が認められれば旧会員権と新会員権の同一性が認められる旨主張するが,上記場合は,営業譲渡の前後を通じて会員契約が継続していることを前提とするものであって,A社の権利義務をD社が承継しない本件営業譲渡の場合とは事案が異なるというべきである。そうすると,営業譲渡契約の内容次第で,取得費の控除が認められるか否かが 左右されることとなるが,そもそも再生手続においては,再生債務者の契約の相手方である債権者の地位は,再生計画の内容次第で変更を受けることが予定されており,これを前提とした権利の変動にも様々なバリエーションがあり得るのであって,やむを得ないというべきである。 以上によれば,原告の上記主張は採用することができな 次第で変更を受けることが予定されており,これを前提とした権利の変動にも様々なバリエーションがあり得るのであって,やむを得ないというべきである。 以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。 ウ原告は,本件旧会員権と本件新会員権とが資産としての同一性を有する- 15 - というべき理由として,D社は旧会員に対し新規会員権を発行するに当たり会員に対して新たな金銭の支払を求めないとされていたことを挙げる。 しかしながら,これは,本来であれば,A社において切下げ後の預託金債務を当該会員に弁済し,別途当該会員においてD社に預託金10万円を支払うべきところ,このような方法によるのはう遠であること等から,旧会 員に対する預託金の返還とD社に対する預託金の支払についてA社とD社との間で精算することとしたにすぎないから,上記判断を左右するものではない。 ⑷ 以上のとおり,本件登録料等は,本件新会員権の取得費に該当しない。 3 本件各処分の適法性について 原告は,本件各処分の適法性に係る被告の主張について,上記の点のほかに,争うことを明らかにせず,本件記録によっても,被告の上記主張に不合理な点は見当たらない。 したがって,本件各処分は,いずれも適法であるということができる。 4 結論 よって,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり,判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官松永栄治 裁判官森田亮 - 16 - 裁判官横井真由美 亮 裁判官横井真由美

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