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主文 原告等の訴を却下する。訴訟費用は原告等の負担とする。事実 原告等訴訟代理人は、高等海難審判庁か同庁昭和三十一年第二審第三号汽船洞爺丸遭難事件につき昭和三十四年二月九日言渡した「本件遭難は、洞爺丸船長の運航に関する職務上の過失に基因して発生したものであるが、本船の船体構造及び青函連絡船の運航管理が適当でなかつたこともその一因である、」旨を主文とする裁決はこれを取消す、訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求め、被告訴訟代理人は原告等の訴を却下する、訴訟費用は原告等の負担とするとの判決を求めた。原告等訴訟代理人の事実上及び法律上の陳述は、別紙訴状請求の原因の項及び昭和三十四年七月十日附準備書面記載のとおりであり、被告訴訟代理人の答弁は、別紙答弁書の理由の項及び昭和三十四年八月十四目附準備書面記載のとおりである。理由 当裁判所は、本件裁決は訴訟の対象たり得べき行政処分に当らないものと判断する。その理由は以下のとおりである。一、 訴訟の対象となし得る行政庁の行為の範囲裁判所法第三条によれば「裁判所は日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する」ものであり、ここに「法律上の争訟」とは法令を適用することによつて判決し得べき権利義務に関する当事者間の具体的な紛争をいう。すなわち司法裁判は具体的な権利義務の紛争について法令を適用してその法律関係を明らかにする作用であり、具体的な権利義務その他法律関係の紛争に当らない事件は特別の規定がない限り訴訟の対象とならない。行政庁の行為の違法を主張してその取消を求める訴についても同様であつて、その行政庁の行為が具体的な権利義務その他法律関係の変動を伴う 紛争に当らない事件は特別の規定がない限り訴訟の対象とならない。行政庁の行為の違法を主張してその取消を求める訴についても同様であつて、その行政庁の行為が具体的な権利義務その他法律関係の変動を伴うものであり、その行為の効力を争うことによつてかような権利変動を争う場合には、そこには法律上の紛争が存在するから右行政庁の行為の取消を求める訴を提起することができるけれども、行政庁の行為が単なる事実上の行為である場合、(事実上の行為ではあつてもこれによつて直接に権利関係の変動を生する結果となる関係上法律上の行為と同視しなければならない場合があるとすればその場合を除く。 利義務その他法律関係の変動を伴うものであり、その行為の効力を争うことによつてかような権利変動を争う場合には、そこには法律上の紛争が存在するから右行政庁の行為の取消を求める訴を提起することができるけれども、行政庁の行為が単なる事実上の行為である場合、(事実上の行為ではあつてもこれによつて直接に権利関係の変動を生する結果となる関係上法律上の行為と同視しなければならない場合があるとすればその場合を除く。)或は単なる勧告、事実の通知、意見の表明等に過ぎない場合等これによつて権利変動を生じない場合は、その行為を争うこともまた権利関係の紛争には当らないのであるから、その行為の取消を求める訴訟を提起する余地がない。たとえかような権利変動を生じない行政庁の行為が処分、決定、裁決等の形式を以てなされた場合でも、結論を異にするものではなく、これに対し出訴を許す旨の特別の視定がない限り、これが取消の訴を提起することはできない。これらの行為であつても、それが法律関係を定める前提となる場合には、裁判所はこれを調査し、行為自体の成立不成立や、その行為の法律上の要件の存否を判断することがあるけれども、それは裁判の前提としてなす判断の過程に過ぎないのであつて、裁判所がこのような判断をなすことがあるということから直ちにそれを独立の訴訟の対象となすことができるという結論を引き出すことはできない。例外として例えば法律関係を証する書面の真否が確認の訴の対象とされ(民事訴訟法第二百二十五条)、条例の制定改廃の請求者の署名に関する決定に対する出訴もできるけれども(地方自治法第七十四条の二第八項)、これらはそれぞ 法律関係を証する書面の真否が確認の訴の対象とされ(民事訴訟法第二百二十五条)、条例の制定改廃の請求者の署名に関する決定に対する出訴もできるけれども(地方自治法第七十四条の二第八項)、これらはそれぞれ特別の規定により特に明文を以て許されているから可能なのであつて、このような法令上の根拠がない限り権利変動を生じない行政庁の行為に対しては、その取消を求める訴を提起することができない。二、 高等海難審判庁の裁決に対する出訴についての規定現行海難審判法によれば、地方海難審判庁の裁決に対しては訴を提起することができないことを規定しているけれども(第五十三条第四項)、高等海難審判庁の裁決に対しては出訴の許否について規定を設けず、そして出訴する場合の裁判管轄、出訴期間、被告適格、執行停止、判決等について規定を設けている(第五十三条ないし第五十六条)。 を求める訴を提起することができない。二、 高等海難審判庁の裁決に対する出訴についての規定現行海難審判法によれば、地方海難審判庁の裁決に対しては訴を提起することができないことを規定しているけれども(第五十三条第四項)、高等海難審判庁の裁決に対しては出訴の許否について規定を設けず、そして出訴する場合の裁判管轄、出訴期間、被告適格、執行停止、判決等について規定を設けている(第五十三条ないし第五十六条)。すなわち高等海難審判庁の裁決に対し出訴できる場合のあることは法の当然予想するところであるが、いかなる場合に裁決に対して出訴できるかについては法は沈黙しており、出訴の許否に関する一般原則を排除して一般原則によれは出訴できないはずの裁決に対してもなおかつ裁判所に出訴できる趣旨を定めた規定は設けられていないし、海難審判法の規定全体を通覧してもかような趣旨は見出し難い。従つて高等海難審判庁の裁決に対していかなる場合に出訴できるかの問題はこれを一般原則に照して定めなければならない。三、 海難審判の性格と出訴の許否<要旨>現行海難審判法は、それ以前の海員懲戒法が海員を懲戒することを目的として立法されたのと異り、審判に</要旨>よつて海難の原因を究明しその発生の防止に寄与しようとする見地から立案されている。すなわち旧海員懲戒法の下では海員の懲戒に必要な限度においてのみ海難の原因が審査され、海員の死亡その他の 判に</要旨>よつて海難の原因を究明しその発生の防止に寄与しようとする見地から立案されている。すなわち旧海員懲戒法の下では海員の懲戒に必要な限度においてのみ海難の原因が審査され、海員の死亡その他の理由で懲戒の必要がないときは、いかに重大な海難でもこれを審査することがなかつたところ、海難審判法は、右の制度を改めて、海難審判の目的を直接に海難の審査に置き、海員の懲戒の要否に関係なく海難の在るところ必ずその原因を明らかにすべきものとしたのである。かくして旧時の海員審判所が海員懲戒機関であつて海員の法律上の責任につき判断をする機能だけを営んでいたのに対し、現在の海難審判庁は海難についての関係者の責任の有無にかかわりなく海難の原因を審査究明する調査機関となり、ただその結果海難が海技従事者又は水先人の職務上の故意又は過失に因つて発生したものであることが判明したときは、更にその者を懲戒しなければならないものとし、その限度において海員懲戒機関としての機能をも併有することとなつたのである。 あつて海員の法律上の責任につき判断をする機能だけを営んでいたのに対し、現在の海難審判庁は海難についての関係者の責任の有無にかかわりなく海難の原因を審査究明する調査機関となり、ただその結果海難が海技従事者又は水先人の職務上の故意又は過失に因つて発生したものであることが判明したときは、更にその者を懲戒しなければならないものとし、その限度において海員懲戒機関としての機能をも併有することとなつたのである。この懲戒の裁決は、懲戒を受ける者の法律上の地位に不利益な変動を生じさせるものであるから、明らかに訴訟の対象となるべき行政処分であり、訴訟の一般原則に従い当然司法裁判所に出訴することができる性格を有し、それは憲法の保障するところでもある。海難審判法中、裁判管轄、出訴期間、被告適格、執行停止、判決等に関する規定は、正にこの場合にその適用を見ることになる。これに反して海難の原因を明らかにするだけの審判(以下、原因裁決という)においては海難の原因を明らかにするため、それが人の故意又は過失に因つて発生したものであるかとうか及び船体若しくは機関の構造、材質若しくは工作又は船舶のぎ装若しくは性能に係る事由に因つて発生したものであるかどうか等の点にわたつて海難の原因を探究すべき 又は過失に因つて発生したものであるかとうか及び船体若しくは機関の構造、材質若しくは工作又は船舶のぎ装若しくは性能に係る事由に因つて発生したものであるかどうか等の点にわたつて海難の原因を探究すべきことは法第三条の規定するとおりであるけれども、それは関係者の責任追求のためだけのものではなくて海難の原因を明らかにする手段に過ぎないことは右条項その他法全体の趣旨から明らかであり、海難審判庁は、いやしくも海難が発生して審判開始の申立を受けた以上、たとえ海技従事者又は水先人の全部が死亡して懲戒を受くべき者が存在しない場合でも、又利害関係人間に和解が成立しもしくは裁決をまたず不法行為責任等に関する民事判決が言渡されて確定し、もはや関係者間の法律関係を論議する余地のないことが明らかな場合でも、なおかつ原因裁決によつて海難の原因を明らかにすべき職責を免かれることができない。このように原因裁決は関係人の法律上の責任を宣言するためのものでないことは明らかであり、従つてそれは訴訟の対象となる公法上の法律関係に関するものには該当ぜず、訴訟の一般原則に照し、かような原因裁決に対しては出訴を認めることができない。 が言渡されて確定し、もはや関係者間の法律関係を論議する余地のないことが明らかな場合でも、なおかつ原因裁決によつて海難の原因を明らかにすべき職責を免かれることができない。このように原因裁決は関係人の法律上の責任を宣言するためのものでないことは明らかであり、従つてそれは訴訟の対象となる公法上の法律関係に関するものには該当ぜず、訴訟の一般原則に照し、かような原因裁決に対しては出訴を認めることができない。以上の見解は海難審判と司法裁判との本質を考慮した上の結果であつて、行政事件訴訟特例法の解釈の結果ではなく、従つて原告主張のように海難審判法施行の日が行政事件訴訟特例法施行の日より前であるということは、右結論には関係がない。四、 原因裁決による事実上の不利益について海難が人の故意又は過失に因つて生じたものであることが裁決を以て明らかにされたときは、これによつてその人の債務不履行上、不法行為上の責任を明らかにする上に事実上一歩を進めることにはなるけれども、これらの法律上の責任の存在を是認するためには更に他の法律要件を明らかにすることを要するのであつて つてその人の債務不履行上、不法行為上の責任を明らかにする上に事実上一歩を進めることにはなるけれども、これらの法律上の責任の存在を是認するためには更に他の法律要件を明らかにすることを要するのであつて、原因裁決によつて直ちに法律上の責任が確認されるものではない。海難が特定の人の故意又は過失によつて生じたものであることが高等海難審判庁の裁決の主文において示された場合には、高等海難審判庁の裁決が一般に権威のあるものとされている以上、これによつてその者が多大の不利益を感ずることにはなるけれども、その不利益は本来事実上の不利益で法律上の不利益には当らない。すなわち裁決における右判断は当然その者に民事上その他法律上の責任を生じさせるものではない。その者が右過失を理由として他から損害賠償の請求を受けた場合にも、その請求を排除するための一切の手段は右裁決によつてすこしも妨げられるものではない。原因裁決を援用してかような請求権の存在を主張する者に対しては、単に請求を拒否するのみならず進んで原因裁決の不当を主張し積極的に債務不存在確認の訴を提起して過失の存否につき司法裁判所の判断を求めることもできる。損害賠償の請求が裁判上なされた場合にも裁決において過失ありとされた者は無過失を主張し被告として一切の防禦手段を尽すことができるのであり、裁判所が過失の有無を判定するには裁決の主文にも理由にも拘束されることなく、故意、過失の構成要件の個々について自ら検討を加えて独自の見地から事実を認定し法律上の判断を下すものであり、裁判所が事実の調査を省略し、裁決の内容を検討することなくその結論だけをそのまま採用して過失を認定するようなことは考えられない。 において過失ありとされた者は無過失を主張し被告として一切の防禦手段を尽すことができるのであり、裁判所が過失の有無を判定するには裁決の主文にも理由にも拘束されることなく、故意、過失の構成要件の個々について自ら検討を加えて独自の見地から事実を認定し法律上の判断を下すものであり、裁判所が事実の調査を省略し、裁決の内容を検討することなくその結論だけをそのまま採用して過失を認定するようなことは考えられない。原因裁決は訴訟における当事者の立証責任の所在にすら変動を生じさせることがない。海難原因の探究には専門的技術的知識を必要と くその結論だけをそのまま採用して過失を認定するようなことは考えられない。原因裁決は訴訟における当事者の立証責任の所在にすら変動を生じさせることがない。海難原因の探究には専門的技術的知識を必要とすることが多いため、その審理についての専門家を以て構成された海難審判庁の裁決が、客観的事実における因果関係の究明につき権威あるものとして一般に尊重されることは否定し難いけれども、それすら裁判所の判断を拘束するものではなく、まして確定した事実関係の上に立つて人の故意過失の有無や施設管理の瑕疵が民事刑事の責任を生じさせる程度に達しているか否か等を判定することは、法律上の価値判断であつて、司法裁判所が法全体の価値体系に従い衡平に判断すべき事項であり、海難審判庁の原因裁決は、なんらこの点を確定するものではない。このように人の故意過失を肯定した原因裁決も、その人に事実上の不利益を及ぼすこはあつても、その法律上の地位にはなんら影響するところがない。事実上の不利益はそれがいかに大であつても、他に特段の事由がない限り、それが大であるということから直ちに法律上の不利益に転化するものではない。以上のように原因裁決が人の権利義務その他法律関係に変動を及ぼすものと解せられない以上、右は取消訴訟の対象となるべき行政処分に該当しないものというべきである。五、 「過失が法律上の概念である」との主張について人の過失を判定することは法律的判断を伴うものであり、又過失という概念は法律上使用されているけれども、過失そのものは法律関係の発生変更消滅の要件事実の一であるに過ぎずそれ自体が権利義務その他法律関係を成すものではない。或る人に過失ありや否やが争われているときは、その争は過失に基く具体的法律関係の存否の争の前提問題として争われるのであつて、その具体的法律関係から離 法律上の概念である」との主張について人の過失を判定することは法律的判断を伴うものであり、又過失という概念は法律上使用されているけれども、過失そのものは法律関係の発生変更消滅の要件事実の一であるに過ぎずそれ自体が権利義務その他法律関係を成すものではない。或る人に過失ありや否やが争われているときは、その争は過失に基く具体的法律関係の存否の争の前提問題として争われるのであつて、その具体的法律関係から離 れ自体が権利義務その他法律関係を成すものではない。或る人に過失ありや否やが争われているときは、その争は過失に基く具体的法律関係の存否の争の前提問題として争われるのであつて、その具体的法律関係から離れて独立に過失の存否だけを争うことは、もたや権利義務その他法律関係の紛争ということはできないから、司法裁判の対象となる法律上の紛争には当らない。一般の民事訴訟においても、故意過失の存否だけを切離して独立の訴訟の対象とすることは認められないし、係属中の訴訟において故意過失が争となつているときこれを中間判決の対象として裁判をすることも行われていない。これらの点から考えても、過失が法律上の概念であるということから直ちに過失の有無の紛争は司法裁判の対象たる法律上の争訟であるという結論を引き出すことは無理である。六、 審判における争訟手続の構造との関係海難審判の手続が対審による争訟手続の構造をとつていることは関係法令上明らかであるが、手続が対審争訟の構造をとつているということは審査の正確と能率を期する上においてそれが最も適当とされているからである。見解の分れ得る問題について相対する反対意見をそれぞれの者に代表させて互に弁論をなさしめその結果に基いて第三者的立場に立つ者が結論を下すという審査方式は人類社会が考案した優れた手段の一であつて、訴訟手続ておいても採用されているけれども、それはあくまで審査の方式に過ぎず、この方法によることは訴訟のみに限定されるべき必然性はない。そして海難審判の手続がこの対審争訟の構造をとつているということは、審査手続の慎重なことを示すものではあつても、その裁決に対し司法裁判所に出訴できるか否かの問題とはかかわりがない。七、 以上のとおり海難審判における原因裁決は、権利義務その他法律関係になんらの変動をも及ぼすものでない 示すものではあつても、その裁決に対し司法裁判所に出訴できるか否かの問題とはかかわりがない。 限定されるべき必然性はない。そして海難審判の手続がこの対審争訟の構造をとつているということは、審査手続の慎重なことを示すものではあつても、その裁決に対し司法裁判所に出訴できるか否かの問題とはかかわりがない。七、 以上のとおり海難審判における原因裁決は、権利義務その他法律関係になんらの変動をも及ぼすものでない 示すものではあつても、その裁決に対し司法裁判所に出訴できるか否かの問題とはかかわりがない。七、 以上のとおり海難審判における原因裁決は、権利義務その他法律関係になんらの変動をも及ぼすものでないから、司法裁判の対象たる法律上の争訟に該当せず、解釈上もこれに対する出訴の可能性を肯定する余地なく、又これに対して出訴を許す旨の特別の立法措置もない。原因裁決の本質が以上に述べたとおりである以上、仮にこれに対し司法裁判所に出訴を認めることとしても、その訴訟の判決の既判力は原裁決の当否を確定するに止まり、民事刑事の法律上の責任を左右する効力はなく、いかに本案の審理を尽して過失等を肯定又は否定する判決をしても、その過失等に基く法律上の責任を問題とする民事刑事の訴訟においては、更に過失等の有無について改めて審理を重ねなければならないのであつて、原因裁決に対し出訴を認めて裁判所の判決を得ることは、その判決中の故意過失の判断について既判力を認めるような特別の立法措置(かような立法措置の可否はそれ自体甚しく疑問であり、今直ちにこれを可とすることはできない。)を伴わない限り、民事刑事の裁判をなすにつきなんら加えるところなく、徒らに無用の手続を重ね益なきものといえよう。もし海難審判庁の原因裁決の結果自己の過失を肯定されたことを不当とし、その結果第三者より損害賠償等の請求を受ける虞があつて自己の法律上の地位が危殆に頻していることを主張する者があれば、敢て原因裁決に対する出訴の途をとるまでもなく直ちに司法裁判所に債務不存在確認の訴を起すのが救済として端的直截であり、かような訴を提起できるほど法律上の地位に危殆を生じていない者については、司法裁判所に救済を求める途がないといしてもあながち不当とはいえない。海難の原因を探究し将来におけるその発生を防止するためには、現 うな訴を提起できるほど法律上の地位に危殆を生じていない者については、司法裁判所に救済を求める途がないといしてもあながち不当とはいえない。 裁判所に債務不存在確認の訴を起すのが救済として端的直截であり、かような訴を提起できるほど法律上の地位に危殆を生じていない者については、司法裁判所に救済を求める途がないといしてもあながち不当とはいえない。海難の原因を探究し将来におけるその発生を防止するためには、現 うな訴を提起できるほど法律上の地位に危殆を生じていない者については、司法裁判所に救済を求める途がないといしてもあながち不当とはいえない。海難の原因を探究し将来におけるその発生を防止するためには、現行の海難審判法のとつた対審争訟の構造による二審制審査方式は慎重周到であつて、適切に運用される限り充分その使命に堪えるものであり、海難発生の防止という見地から見れば、関係者の権利義務そのものに直接の変動を生じない原因裁決に対して更に司法裁判所に出訴を認めるまでの必要はないものといえるのであり、海難審判法が原因裁決に対して特に出訴の途を設けなかつたことはその理由があるものと解せられる。以上の次第で高等海難審判庁の原因裁決に対しては、司法裁判所にその取消の訴を提起することができない。本件裁決は、その主文から明らかなように、懲戒を命じたものではなく、本件海難の原因が船長の過失と船体構造及び運航管理が適当でなかつたことによることを主文で宣言した原因裁決に過ぎないから、その取消を求める本件訴は不適法として却下すべきである。よつて主文のとおり判決する。(裁判長判事川喜多正時判事小沢文雄判事位野木益雄)
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