平成10(行コ)49 児童扶養手当受給資格喪失処分取消請求控訴事件(原審・京都地方裁判所平成7年(行ウ)第22号事件)

裁判年月日・裁判所
平成12年5月16日 大阪高等裁判所 その他
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判決文本文18,471 文字)

主文 一原判決を取り消す。 二被控訴人の請求を棄却する。 三訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第一控訴の趣旨主文同旨第二事案の概要一事案の概要(事案の骨子、争いのない事実、関係法令等の内容、争点、争点に関する当事者の主張)は、原判決四頁九行目「(」の次に「児童手当法施行令及び母子及び寡婦福祉法施行令の一部を改正する政令(平成一〇年政令第二二四号)による改正前のもの。」を付加し、次に補足するほか、原判決「事実及び理由」の「第二事案の概要」及び「第三争点に関する当事者の主張」に記載のとおりであるから、これを引用する。 二控訴人の当審における補充主張 1 争点1について(一) 児童扶養手当は、憲法二五条規定の趣旨を実現するために創設された社会保障制度であるところ、社会保障制度に関して具体的にどのような立法措置を講ずるかは、国家の財政状況等をも勘案した高度の政策的判断が不可欠であるから、どのような場合に児童扶養手当を支給するかは、広範な立法裁量にゆだねられていると解される(最高裁判所昭和五七年七月七日大法廷判決・民集三六巻七号一二三五頁)。 このような児童扶養手当の性質に鑑み、法は、四条一項一号ないし四号において主要な類型の支給対象児童を規定した上、五号においてこれに準ずる状態の児童につき政令制定権者の裁量によって具体的に規定することを委任したものと考えられる。よって、右五号に該当し得ると考えられる類型の児童についても、政令の規定を待ってはじめてその給付についての権利義務関係が根拠づけられるのである。 したがって、仮に、「その他前各号に準ずる状態にある児童」に当たるべき類型の児童であるにもかかわらず、政令が支給の対象としなかったとしても、それは、法による委任の範囲内にお 拠づけられるのである。 したがって、仮に、「その他前各号に準ずる状態にある児童」に当たるべき類型の児童であるにもかかわらず、政令が支給の対象としなかったとしても、それは、法による委任の範囲内における裁量によるものであり、支給しないことが違法となるものではないし、政令の規定を待たずに当該類型に該当する児童について給付を受ける権利が生じることもない。 (二) また、児童が法四条二項各号のいずれかに該当するときは、その児童については支給されず(同条二項)、また、母又は養育者が同条三項各号のいずれかに該当するときには、その母又は養育者には支給されず(同条三項)、さらに、法九条ないし一一条に規定する事由があるときには、児童扶養手当の全部又は一部の支給が停止される。 このような法の規定の構造から、法四条一項は、児童扶養手当の支給の積極要件の一つである支給対象となる児童を定めたものであり、同条二項ないし四項(ただし、四項は未施行である。)はその消極要件を定め、法九条ないし一一条は支給制限事由を規定したものであることは明らかである。 したがって、法四条一項五号は、同項一号ないし四号とともに児童扶養手当支給の積極要件を定めたものであり、これを受けて制定された施行令一条の二各号も、それぞれが児童扶養手当の支給対象となる児童を定めたものと解すべきことは当然で、施行令一条の二の三号は、一個の支給要件として「認知されない婚姻外の児童」を支給対象者とする旨を規定するもので、同三号の「(父から認知された児童を除く。)」との括弧書き部分(以下「本件括弧書き」ともいう。)をその消極的要件を定めたと解するのは失当である。 右のことは、施行令一条の二の規定が消極要件を定めた法二項ないし四項のような規定となっていないこと、施行規則一一条、様式第九号(裏面1、カ、(ト)) その消極的要件を定めたと解するのは失当である。 右のことは、施行令一条の二の規定が消極要件を定めた法二項ないし四項のような規定となっていないこと、施行規則一一条、様式第九号(裏面1、カ、(ト))は、施行令一条の二の三号に該当する事由を「母が婚姻によらないで懐胎した児童で父から認知されていないもの」と規定していること、立法者(政令制定権者)も本件括弧書きで消極的要件を定めるという認識はまったくなかったことにも示されている。 以上のように、施行令一条の二の三号は、一個の不可分の支給要件を定めたものであるから、同号の本件括弧書きのみを無効としながら、その余の部分を有効と判断することは、新たな支給要件を創設したことになり、司法権の限界を超えるものとして許されない。 (三) 法四条一項五号を「父と生計を同じくしていない児童」を具体的に規定することを施行令に委任した規定と解するのは誤りである。 なぜなら、「父と生計を同じくしていない児童」のすべてを支給対象とするとされたのであれば、端的に法四条一項において「父と生計を同じくしていない児童」を支給要件として規定すれば足りるのに、同項は、一号ないし四号において支給対象となる児童を類型ごとに具体的に列挙し、五号も、「その他前各号に準ずる状態にある児童(で政令で定めるもの)」と規定していて、「その他父と生計を同じくしていない児童(で政令で定めるもの)」といった規定の仕方をしていない。 このような規定の仕方から、立法府が「父と生計を同じくしていない児童」のすべてを支給対象とする立法政策を採用したものでないことは明らかである(大阪高裁判決・乙第八号証一〇丁裏も同旨)。 また、附帯決議に法的拘束力はなく、そして、本件附帯決議は、政治的観点から政府に対する要望を述べたものである。のみならず、本件附帯決議の文 は明らかである(大阪高裁判決・乙第八号証一〇丁裏も同旨)。 また、附帯決議に法的拘束力はなく、そして、本件附帯決議は、政治的観点から政府に対する要望を述べたものである。のみならず、本件附帯決議の文言から、立法者が現行の児童扶養手当制度が父と生計を同じくしていない児童のすべてを支給対象としているとは考えていなかったことは明らかである。 (四) なお、児童扶養手当法施行令及び母子及び寡婦福祉法施行令の一部を改正する政令(平成一〇年政令第二二四号)により、児童扶養手当法施行令一条の二の三号は改正され、平成一〇年八月一日から施行され(以下「本件改正」という。)、「母が婚姻によらないで懐胎した児童」全般に受給資格が認められることとなった。 この改正は、立法技術上、本件括弧書きを削るという体裁となっているが、その内容は、「母が婚姻によらないで懐胎した児童であって父から認知されたもの」を児童扶養手当の対象として新たに創設するものである。 右のとおり、本件改正は児童扶養手当の対象として新たに創設するものであるが、最も簡潔な改正方式として本件括弧書きの削除という方法が採られたにすぎず、法四条一項五号が、「父と生計を同じくしない児童」について網羅的に受給資格を認めるべきことを命じた規定であることを前提として改正されたものではない。 2 争点2について(一) 憲法一四条一項は、絶対的な法の下の平等を保障したものではなく、合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって、各人に存する経済的、社会的その他種々の事実関係上の差異を理由に法的取扱いに区別を設けることは、その区別が合理性を有する限り、何ら右規定に違反しないと解すべきであり(最高裁判所昭和三九年五月二七日大法廷判決・民集一八巻四号六七六頁、同昭和三九年一一月一八日大法廷判決・刑集一八巻九号五七九頁 その区別が合理性を有する限り、何ら右規定に違反しないと解すべきであり(最高裁判所昭和三九年五月二七日大法廷判決・民集一八巻四号六七六頁、同昭和三九年一一月一八日大法廷判決・刑集一八巻九号五七九頁、同平成七年七月五日大法廷判決・民集四九巻七号一七八九頁)、立法府が裁量の範囲を逸脱したといえるような事情がない限り、合理性を欠くということはできず、憲法一四条一項に違反するものではない(最高裁判所平成元年三月二日第一小法廷判決・裁判集民事一五六号二七一頁)。 そして、立法府の政策的、技術的裁量に基づく判断に委ねられている立法分野においては、問題とされる法律の条項が不合理な差別を定めるものとして憲法一四条一項に違反するかどうかの司法審査は、それが立法府の裁量に逸脱するかどうかを基準として判断するべきである。 すなわち、立法府が法律を制定するに当たり、その政策的、技術的判断に基づき、各人についての経済的、社会的その他種々の事実関係上の差異または事柄の性質の差異を理由としてその取扱いに区別を設けることは、それが立法府の裁量の範囲を逸脱するといえるような事情がない限り、合理性を欠くということはできず、憲法一四条一項に違反するものではないというべきで、このことは、最高裁判所平成元年三月二日第一小法廷判決(裁判集民事一五六号二七一頁)からも明らかである。 右の点を児童扶養手当についてみると、まず、児童扶養手当制度は、憲法二五条の趣旨を実現するために設けられた社会保障制度であるから、具体的にどのような児童福祉手当制度を設けるかの選択決定、本件でいえば、児童扶養手当の支給要件をいかに定めるかは立法府の広範な裁量にゆだねられており、しかも、生活保護制度が最低限度の生活を保障する救貧制度である(生活保護法二条)のに対して、児童扶養手当制度は、児童の福祉を 養手当の支給要件をいかに定めるかは立法府の広範な裁量にゆだねられており、しかも、生活保護制度が最低限度の生活を保障する救貧制度である(生活保護法二条)のに対して、児童扶養手当制度は、児童の福祉を増進する防貧制度であり(法一条)、社会保障制度全体の中で、生活保護によって最低限度の生活が保障されていることを前提としているだけ、最低限度の生活の保障を具体化する以上に、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的考察とそれに基づいた政策的判断を必要とされる(国の財政事情を無視することができないことはいうまでもない)から、児童扶養手当制度を設けるに当たっての立法府の裁量は極めて広範なものである。 さらに、法四条一項五号は、法が本来支給対象としている同項一号ないし四号の児童に加えて、政令制定権者が他の類型の児童をも補充的に支給対象として規定することを許容する趣旨の規定であるから、立法府から委任を受けた政令制定権者が具体的にどのような類型の児童を支給対象とするかについては、政令制定権者の広い裁量に委ねられており、施行令一条の二の三号に定めたことは、政令制定権者の裁量の範囲内に属する事柄というべきである。 (二) 右に加え、施行令一条の二の三号の規定は、合理性を有しているから、憲法一四条一項に違反しない。 すなわち、法四条一項一号ないし四号によって保護の対象としている児童に共通に認められる状態は、父から扶養が期待できなくなった場合(同項二号及び四号)や事実上扶養されない危険が生じた場合(同項一号及び三号)であって、いずれも経済的な面で児童にとって生活環境の悪化があったことにおいて共通し、したがって、法四条一項一号ないし四号は、児童の生活環境の悪化がある場合を類型的に定めたものといえる。 そして、婚姻外の児童は、当初から父(法律上の父及び事実上 環境の悪化があったことにおいて共通し、したがって、法四条一項一号ないし四号は、児童の生活環境の悪化がある場合を類型的に定めたものといえる。 そして、婚姻外の児童は、当初から父(法律上の父及び事実上の父)の存在しない状況で出生し、母に養育されてきた場合であるから、直ちに「生活環境の悪化」があるということも、同項一号ないし四号に準ずる状態にあるということもできないから、仮に、内閣が婚姻外の児童を一律に保護の対象外としたとしても、裁量権の行使が著しく合理性を欠くとも、裁量の範囲を逸脱・濫用したともいえないが、政令制定権者は、法制定の際の附帯決議や国会における議論等を考慮しつつ、その裁量の範囲内で、婚姻外の児童の一部も保護対象者としたのである。したがって、このような婚姻外の児童を「生活環境の悪化」が類型的に認められるために保護の対象とされた施行令一条の二の一号及び二号の児童と同列に論じることはできない。 さらに、婚姻外の児童について父から認知されていないものに限ることとした施行令一条の二の三号の規定は、婚姻外の児童は、血縁上の父が認知すれば、父による扶養義務が発生し、類型的にこれまでの父からの扶養が期待できない状況から脱却することが考えられ、その意味で「生活環境の好転」があったものと評価することができること、施行令制定時に想定された「父のない児童」は、法四条一項四号の「父の生死が明らかでない児童」に準ずるものとして保護対象者とされたものであり、父が認知すれば、父の存在が明らかになったといえるし、これにより父による扶養が期待し得ること、法律婚が父母の別居等により事実上解消し、母のみが児童を監護する場合と婚姻外の児童が認知された場合とは、いずれも扶養義務を負う父は存在するが、現実には父により監護されないことが多いという点で極めて類似しているも 別居等により事実上解消し、母のみが児童を監護する場合と婚姻外の児童が認知された場合とは、いずれも扶養義務を負う父は存在するが、現実には父により監護されないことが多いという点で極めて類似しているものの、前者の場合に児童扶養手当が支給されないのであって、婚姻外の児童が認知された場合に児童扶養手当を支給しないとすることにも合理性があるといえる。 (三) 本件改正によって、婚姻外の児童が父から認知されても、引き続き児童扶養手当を支給することができるようになったが、それは、改正前の施行令一条の二の三号の支給要件の下では、婚姻外の児童が認知されると児童扶養手当の受給資格が失われるために父に対して認知を求めるのを躊躇することになりかねないことから、受給資格を維持して、父に対し認知とともに養育費の支払いも求め得るようにすることが、母子家庭の自立支援が一層重視されている今日の社会状況等にかんがみて相当であるという政策的裁量判断に基づき、父母が婚姻を解消した世帯との均衡にも配慮して改正されたもので、政令制定権を有する内閣に委ねられた裁量判断に基づくものである。 3 争点3について規約人権委員会は、B規約四〇条四項に従って、B規約の締約国が提出する規約の履行状況に関する報告を検討するほか、適当と認める一般的意見を締約国に送付することになっており、経済社会理事会にも送付することができる。 しかし、規約人権委員会によれば、一般的意見の目的は、「規約の実施を促進するため全ての締約国がこの報告活動を活用できるようにすること、多くの報告が不充分であった点に締約国の注意を促すこと、達成された進歩を報告活動のなかで示唆し、人権の保護並びにその促進についての締約国や国際機関の活動を鼓舞すること」(乙第一〇号証)とされているのであって、各締約国にB規約の解釈及び履行に 促すこと、達成された進歩を報告活動のなかで示唆し、人権の保護並びにその促進についての締約国や国際機関の活動を鼓舞すること」(乙第一〇号証)とされているのであって、各締約国にB規約の解釈及び履行に当たって参考とされることが期待されているにすぎず、締約国に対し法的拘束力はない。 我が国は、B規約を締結しているが、選択議定書は締結しておらず、また、B規約四一条に従って締約国からの通報を規約人権委員会が受理し、かつ検討する権限を有することを認める宣言をしていないから、規約人権委員会が我が国に対して選択議定書やB規約四一条に基づく意見を行う余地はなく、我が国と規約人権委員会との閑係で問題となるのは、B規約四○条に規定されている定期報告義務のみである。 さらに、個人の通報に対する規約人権委員会の意見は、その通報の対象とされた具体的事案限りのものであって、B規約四〇条四項の一般的意見のような一般性をもたず、当該通報を行った者と関係国のみを対象とするものであるし、関係国に対する法的拘束力もない。 締約国からの定期報告に関する規約人権委員会の権限については、規約人権委員会は、報告に基づき、規約の履行状況について検討した上でその見解を示すにすきず、これは「当事国との建設的な対話」(乙第一一号証、乙第二一号証)のためのものであるとされているのであって、その見解は、締約国を法的に拘束するものではない。 4 争点4について施行令一条の二の三号は、児童の権利に関する条約二六条、二条一項、三条一項、七条一項、八条一項に違反しない。 我が国の第一回報告に関する児童の権利に関する委員会の最終見解は、児童の権利に関する条約四五条に基づく、「提案及び一般的な性格を有する勧告」の性質を有するもので、そもそも我が国の裁判所に対する法的拘束力を持たないし、その内容を の権利に関する委員会の最終見解は、児童の権利に関する条約四五条に基づく、「提案及び一般的な性格を有する勧告」の性質を有するもので、そもそも我が国の裁判所に対する法的拘束力を持たないし、その内容を見ても、施行令一条の二の三号が児童の権利に関する条約に違反するか否かに関しては、何も言及していないから、施行令一条の二の三号が児童の権利に関する条約に違反するとの被控訴人の主張の根拠となるものではない。 三被控訴人の当審における主張 1 争点1について(一) 法一条の法の目的規定は、法解釈の重要な指針である。したがって、「父と生計を同じくしていない児童」は可能な限り丁寧に網羅されることを法は予定しており、その支給対象として「父と生計を同じくしていない児童」という規定だけでもよいところ、具体的施行の便宜のために一定の典型例を例示としてあげ、その他は政令に委ねたのであり、法四条一項五号は、「父と生計を同じくしていない児童」を具体的に規定することを施行令に委任したという原判決の解釈が正しい。 控訴人は、法四条一項五号の趣旨を、①「前各号に準ずる状態にある児童」に限定することにより委任の範囲を画し、②その範囲においてどのような児童を支給対象として選択するかは政令制定権者の裁量に委ねたものと主張するが、これは、立法趣旨、国会審議の経過、附帯決議及び母子世帯の生活実態などを全く無視した解釈であり、誤りである。 (二) 法制定時の国会審議の内容について、法の提示理由や説明は、その法の趣旨を明確にするためになされるもので、当然本件委任の範囲の解釈の一資料となるものであり、本件附帯決議自体に法的拘束力がないとしてもその意思表明は法の解釈の一つの指針となるものであって、政令制定権者は、附帯決議の精神を十分理解し尊重して政令の内容を決めることが要請される。 昭和 あり、本件附帯決議自体に法的拘束力がないとしてもその意思表明は法の解釈の一つの指針となるものであって、政令制定権者は、附帯決議の精神を十分理解し尊重して政令の内容を決めることが要請される。 昭和六〇年の法改正案、改正内容について、厚生省は、非婚の母の子を全て支給対象から除外しようとしたが、これに対して国民の反対運動がおこり、国会審議の結果除外されなかったのであり、国民の意思が「非婚の母の子」を支給対象とすることを支持したのである。 (三) 原判決は、児童扶養手当法施行令一条の二の三号の規定の趣旨について、本件除外規定以外の文言によって「母が婚姻(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)によらないで懐胎した児童について手当を支給する。」と定めたうえ、本件除外規定によって「ただし、父から認知された児童については認知のときから手当を支給しない。」と定めた規定であると判示する(原判決四五頁)が、これは、児童扶養手当法の法理論的な解釈としても正当である。 これに対し、控訴人は、「右判断は、裁判所が児童扶養手当の支給要件を創設することにほかならないから、許されない」と反論し、その根拠として、「認知されていないこと」の要件が「前項の規定にかかわらず」「・・・に該当するときは、支給しない」「・・・であるときは支給しない」という規定の体裁にはなっていないことなどを主張する。 しかし、①右主張は、控訴人の結論に沿うように法の構造を別の言葉で表現して繰り返したにすぎず、およそ根拠とはなり得ない主張であり、右の要件を括弧書きで定めるか、あるいは「前項の規定にかかわらず」というような体裁で規定するかは全く形式的な立法技術上の問題で、それが児童扶養手当法の法構造を判断する材料とはならないことは明白である。 ②控訴人は、施 めるか、あるいは「前項の規定にかかわらず」というような体裁で規定するかは全く形式的な立法技術上の問題で、それが児童扶養手当法の法構造を判断する材料とはならないことは明白である。 ②控訴人は、施行規則一一条、様式第九号の規定の仕方を根拠として掲げるが、規則は政令の下位に位置し、その内容も手続的であって、下位のものが上位の解釈を決める根拠とは到底なり得ない。 ③更に控訴人が根拠として掲げる立法者(政令制定権者)の認識であるが、そもそも立法者=政令制定権者という考えが全くの誤りであって、立法者は憲法四一条が定めるようにあくまで国会であって、施行令一条の二の三号の趣旨を考えるにあたっても国会の意思こそ重んじられるべきである。 ④控訴人は、原判決は裁判所が新たな支給要件を創設することになると主張するが、施行令一条の二の三号の本文は文字どおり「母が婚姻によらないで懐胎した児童」が基本規定として支給対象となっているものであるから、「(父から認知された児童を除く)」という括弧書き部分のみを無効とすることは、制限規定の解除であるから、基本に戻って従来の差別が解消されることになるだけである。そのことは、本件改正が児童扶養手当法施行令一条の二の三号の要件の中から本件括弧書きを削除しただけであり、その結果、「母が婚姻によらないで懐胎した児童」という要件のみになったことからも明らかである。 また、児童扶養手当法は、父母が離婚した児童をその対象としているところ、実質的にも、父母が離婚した児童につき父に扶養義務(民法八七七条一項)があることと、認知(同法七七九条)され遡及的に父子関係が生じた(同法七八四条)児童につき父に扶養義務があることは同じであるから、認知された児童に受給資格があるとすることは、何ら新しい支給要件を創設したことにはならない。したがって、 れ遡及的に父子関係が生じた(同法七八四条)児童につき父に扶養義務があることは同じであるから、認知された児童に受給資格があるとすることは、何ら新しい支給要件を創設したことにはならない。したがって、認知された児童については受給資格がないとの規定に対し裁判所が違憲かどうかの判断をすることに何ら問題はない。 2 争点2について(一) 控訴人は「社会保障制度については高度の政策的判断が必要であり、広範な立法裁量に委ねられている」と主張する。しかし、百歩譲って控訴人のいうように「広範な立法裁量」があるとしても、本件は、その結果として国会で成立した法が委任している一「政令」の問題であり、その裁量の幅はきわめて狭いと解すべきである。 従って、政令一般の「裁量」ではなく、「父から認知された児童」をあえて排除しなければならない合理的理由の有無が厳しく問われるべきものである。 「認知された婚姻外の児童」のいる母子世帯の生活実態は、他の児童扶養手当受給世帯に比べて経済的に豊かであることは全く実証されていない。むしろ、離婚給付があったり、父との同居期間があり父としての愛情や責任感が示されるケースの多い離婚母子世帯に比較して、貧困であると推測されるのである。 (二) 控訴人は、児童扶養手当は、母子福祉年金の補完であり、生活環境の悪化を基準としたものであり、一ないし四号は、生活環境の悪化を類型的に定めたものであり、認知は生活環境の好転であるから合理性があると主張するが、児童扶養手当法施行令一条の二の一ないし四号は、生活環境の悪化を指標とはしておらず、本件括弧書きを除いて、父と生計を同じくしていない児童を類型的に定めたものである。 もし、生活環境の悪化を基準とするものであれば、生活環境の悪化の有無に関わらず支給することを説明できないし、認知されても、父による扶養 、父と生計を同じくしていない児童を類型的に定めたものである。 もし、生活環境の悪化を基準とするものであれば、生活環境の悪化の有無に関わらず支給することを説明できないし、認知されても、父による扶養が始まるというものではなく、生活環境が好転しない場合が多いが、このような場合にも支給を停止する理由を説明できないし、このたび施行令を改正し、認知を受けた場合についても支給を認めたことを説明できない。 (三) 控訴人は、認知がない場合には、法四条一項四号の「父の生死が明らかでない場合」に準じるなどと主張するが、「父の生死が明らかでない場合」の認定はほとんど皆無であり、通常は「一年以上遺棄された」の要件に該当するかどうかで認定されているが、右の適用については厳しい運用がなされており、現実の扶養がない場合の代替的措置とはなりえない。 また、事実婚の場合には、「別居」は直ちに「結婚生活の解消」すなわち「離婚」となり、法四条一項一号に該当して児童扶養手当は支給される。したがって、法律婚が事実上破綻した場合には「父と生計を同じくしない。」状態になったものとして、受給資格を認めることが法の理念に合致するのである。したがって、法律婚の場合に別居によって受給できないからといって、認知された非嫡出子も我慢せよ、というのは、比較する対象を恣意的に選び、他に救済されない者がいるから「合理的」だというもので、本末転倒の議論である。 3 争点3について(一) 自由権規約二六条は、締約国に対し、社会保障のための立法まで義務づけるものではないが、一旦「立法が行われた場合には、その立法はその内容において差別があってはならない」とされている(規約人権委員会の一般的意見一八(甲六))。 日本政府の第四回定期報告書に対する規約人権委員会の「最終見解」の中で、「委員会は引き続き非 法はその内容において差別があってはならない」とされている(規約人権委員会の一般的意見一八(甲六))。 日本政府の第四回定期報告書に対する規約人権委員会の「最終見解」の中で、「委員会は引き続き非嫡出子に対する差別について、とりわけ、国籍、戸籍と相続権の問題に関して懸念を表明する。委員会は、規約二六条により、すべての子供たちは平等な保護を受ける権利があることを再確認し、締約国に対し、民法九〇〇条四号を含む法制度を改正するための必要な手段を取ることを勧告する。」(甲七七の一二項)と述べており、この見解に照らしても、本件括弧書きが自由権規約二六条に反することが明らかとなっている。 (二) 自由権規約二六条は、異別の取扱い禁止に関する一般的規定である。そして、二四条において、未成年者に対する配慮から、より重い基準が課せられている。したがって、未成年者に対する差別は、その差別の正当化事由があることの特別な立証負担が国に課せられている。 前記一般的意見(甲六)によると、異別の取扱いをすることが差別とはならないためには、①区別の基準が合理的であること、②区別の根拠が客観的であること、③区別の目的が規約のもとで正当な目的を達するものであること、の三つの要件を充たすことを要する、とされている。 しかしながら、嫡出性による区別は、右の差別基準に該当しない。また、非嫡出子が認知されると受給が打ち切りとなることは、嫡出子で両親が離婚した場合に受給されることとの比較において、出生による差別となり、規約二四条、二六条に反する。 (三) 控訴人は、規約人権委員会の一般的意見・意見(ビューのこと)・定期報告書に対する最終意見が法的拘束力を持たないと主張する。 しかし、一般的意見二四は、「規約に基づく委員会の役割は、委員会に必然的に規定の解釈を行わせ、規約解釈の 的意見・意見(ビューのこと)・定期報告書に対する最終意見が法的拘束力を持たないと主張する。 しかし、一般的意見二四は、「規約に基づく委員会の役割は、委員会に必然的に規定の解釈を行わせ、規約解釈の発展を生じさせることになる。」として(甲八〇)、規約委員会が内在的に規約の解釈権限を有することを明らかにしている。また、条約の解釈に関するウィーン条約は日本も批准しているところ、右一般的意見二四は、ウィーン条約に従えば、規約の留保の効力については、委員会の解釈が法的拘束力を有するとの立場をとっている。 このように、規約人権委員会の出す一般的意見・意見(ビューのこと)・定期報告書に対する最終意見が法的拘束力を持つことは明らかである。 仮に拘束力がないとしても、規約人権委員会の判断は有権的解釈として高い地位に立つものであり、特段の事情のない限り、これを尊重して従うべきである。 裁判例でも、規約人権委員会の判断が自由権規約の解釈に対する補足的手段であることや、解釈の指針となることが認められている(大阪高等裁判所平成六年一〇月二八日判決・判例時報一五一三号八六頁、徳島地方裁判所平成八年三月一五日判決・判例時報一五九七号一二三頁、高松高等裁判所平成九年一一月二五日判決・判例時報一六五三号一二〇頁)。 4 争点4について一九九八年五月二七日及び二九日に国連子どもの権利委員会(以下、CRCと略す)の日本政府報告の審査が行われた。そして、同年六月にCRCは最終見解を発表し(甲七九)、その中で、「一九九八年五月の本件政令の改正決定」(同年八月一日実施)について「歓迎する」と述べ評価した(三項)。 厚生省は、我国法制度における非嫡出子差別問題への国際的批判を回避すべく、CRC審査の直前に本件改正を内部決定し、国内での改正手続未了にも関わらず、CRC審査の場 迎する」と述べ評価した(三項)。 厚生省は、我国法制度における非嫡出子差別問題への国際的批判を回避すべく、CRC審査の直前に本件改正を内部決定し、国内での改正手続未了にも関わらず、CRC審査の場で公表している。このことからみても、本件括弧書きがいかに不当なもので、国際的批判を免れないものであったことが明白である。 第三当裁判所の判断一争点1について 1 法令の規定の一部を違憲等の理由により無効とすることにより、裁判所による新立法を創設するに等しい結果が生じる場合は、法令の規定の一部を無効とすることは許されない。しかし、当該規定が積極要件と消極要件から構成されていて、消極要件のみを無効とするだけであれば、裁判所による新立法を創設することにはならない。 施行令一条の二の三号に関して、当裁判所も、原審と同じく、同号は本件括弧書きを除いた本文の積極要件と括弧書きの消極要件から構成されており、よって、裁判所が本件括弧書きを無効と判断することは、それにより消極要件が無効とされるだけであって、積極要件を創設するものではないから、本件括弧書きが無効であるかどうかを判断することは司法権の範囲を逸脱するものということはできないと考える。 すなわち、胎児認知が稀なことに鑑みれば、施行令一条の二の三号の「父から認知された児童を除く」との本件括弧書きが適用される具体的な場面は、申請により児童扶養手当の支給を受けていた者が認知によって受給が打ち切りとなるのが専らで、実際的には、同条項は消極要件として機能すること、そして、同号の規定が括弧書きで且つ「父から認知された児童を除く」と除外が規定されていることからすると、これを消極要件と解することは可能である。 2 控訴人の指摘するように、法四条一項は、児童扶養手当の支給の積極要件を定め、同条二、三項が消極要件 れた児童を除く」と除外が規定されていることからすると、これを消極要件と解することは可能である。 2 控訴人の指摘するように、法四条一項は、児童扶養手当の支給の積極要件を定め、同条二、三項が消極要件を定め、法九条ないし一一条が支給制限事由を規定しており、施行令一条各号は、積極要件を定めた法四条一項の委任を受けた規定である。しかし、右に指摘したような本件括弧書きが適用される実際的場合及び施行令一条の二の三号の形式に鑑み、施行令一条の二の三号は、本件括弧書きを除いた本文の積極要件と括弧書きの消極要件から構成されているとすることも、充分根拠のあることである。 3 このように、本件括弧書きは消極要件であると解するのが相当であるから、これが無効であるかどうかを判断することは支給要件を創設したことにはならず、これに反する控訴人の主張は採用できない。 二争点2について 1 被控訴人は、本件括弧書きが憲法一四条一項に違反する旨主張するので、この点につき検討する。 ところで、児童扶養手当は、憲法二五条の規定の趣旨を実現するために創設された社会保障制度で、憲法二五条の規定は、国権の作用に対し、一定の目的を設定しその実現のための積極的な発動を期待するという性質のものであり、しかもその時々における経済的、社会的条件、一般的な国民の生活状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、現実の立法として具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することはできず、また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。 したがって、具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き ものである。 したがって、具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しないといわなければならない(最高裁判所昭和五七年七月七日大法廷判決・民集三六巻七号一二三五頁)。 したがって、児童扶養手当の支給要件を定めるについては立法府の広い裁量にゆだねられており、また、本件においては、立法府である国会から委任を受けた内閣においても、立法府の委任の範囲内においてではあるが、右に述べたのと同様の理由により広い裁量に基づき政令を制定することができると解される。 よって、制定された政令(施行令)が立法の委任の範囲を逸脱・濫用しているかどうか、あるいは支給要件等についてなんらかの区別が設けられている場合に、その区別が法の下の平等を保障した憲法一四条一項に違反していないかについては、その政令あるいは区別が明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合及び著しく合理性を欠く場合を除き裁判所が審査判断するのに適しない。 2 そこで、本件児童扶養手当の支給要件を検討するに、被控訴人は、法は「父と生計を同じくしていない児童」の保護を規定したものであると主張する。 なるほど、法一条は、「父と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため、・・・もって、児童の福祉の増進を図ることを目的とする。」と規定し、その目的が父と生計を同じくしていない児童」を保護の対象としており、また、本件附帯決議の表現は「本制度の実施にあたっては、その原因いかんを問わず、父と生計を同じくしていないすべての児童を対象として」となっている。 しかし、父と生計を同じくしていない児童のすべてを保護の対象にし 決議の表現は「本制度の実施にあたっては、その原因いかんを問わず、父と生計を同じくしていないすべての児童を対象として」となっている。 しかし、父と生計を同じくしていない児童のすべてを保護の対象にしようとするのであれば、端的に、そのような規定とされて然るべきところ、法は一条において、「父と生計を同じくしていない児童」を法の目的とはしているものの、具体的な支給条件としては規定しておらず、(附帯決議には法的拘束力がない点はともかくとしても、)本件附帯決議をした国会が、法の本文において「父と生計を同じくしていない児童」というように規定せず、附帯決議の中で前記の表現をしたことは、国会としても附帯決議の内容は政令制定権者に努力目標として示したものと解されるところである。 そうだとすると、受給の要件は、控訴人が主張するような「生活状態の悪化が生じたこと」に限定されるものではないが、被控訴人が主張するような「父と生計を同じくしていない児童すべて」でもなく、父と生計を同じくしていない児童及びこれに準じる児童で、生活状態の悪化または生活の困窮が見込まれる児童のうち、どの範囲の児童を対象とするかは、政令に委ねられたものというべきである。 したがって、政令制定権者である政府は、父と生計を同じくしていない児童及びこれに準じる児童で、生活状態の悪化または生活の困窮が見込まれる児童のうち、どのような児童を対象とするかを、裁量により決定することができるものである。 3 以上を踏まえて、本件括弧書きが裁量権の範囲を逸脱するものであるか、あるいは法の下の平等を保障した憲法一四条に違反するものかどうかについて判断する。 婚姻によらない母子状態にある世帯の児童は、そもそも当初から法律的な父がいない状態であり、父と生計を同じくしない児童として手当の支給を受けるが、認知を受 に違反するものかどうかについて判断する。 婚姻によらない母子状態にある世帯の児童は、そもそも当初から法律的な父がいない状態であり、父と生計を同じくしない児童として手当の支給を受けるが、認知を受けることにより、法律上は父のいない状態から脱却し、そして、父には監護、養育の義務が生じ、母から養育費の請求(児童からの扶養請求)ができることになる。その意味で、この場合、生活環境の好転があったと評価できる。 確かに、婚姻によらない母子状態にある世帯の児童に対し認知がなされた場合においても、被控訴人の主張するように、現実には、父から養育費の支給を受けることは少なく、その生活状態は、婚姻を解消した母子家庭の児童と類似し、後者の場合には児童扶養手当が支給されていることとの均衡に欠ける面があることは否めない。 しかし、婚姻関係にある父が家庭を離れているものの、それが遺棄には該当せず、そして母子に生活費を渡さないといった状況下の児童には児童扶養手当は支給されないのである。 そうだとすると、立法あるいは委任を受けた内閣が、現実には、父から養育費の支給を受けることは少ないといった現実の状況を考慮しなかったことをもって、認知を受けることによって、児童手当が支給されなくなるといった区別が法の下の平等を保障した憲法一四条に違反しているとか、政令が明らかに裁量の逸脱・濫用と見ることはできない。 三争点3ないし5について被控訴人は、本件括弧書きが、自由権規約二条、二六条、二四条に、児童の権利条約二六条、二条一項等に、女性差別撤廃条約に、各違反することを理由に無効であると主張する。 ところで、我が国が自由権B規約を締結していること、選択議定書を締結していないこと、B規約四一条に従って締約国からの通報を規約人権委員会が受理し、かつ検討する権限を有することを認め ると主張する。 ところで、我が国が自由権B規約を締結していること、選択議定書を締結していないこと、B規約四一条に従って締約国からの通報を規約人権委員会が受理し、かつ検討する権限を有することを認める宣言をしていないことは争いがない。 右のとおり、我が国は、選択議定書は締結しておらず、また、B規約四一条に従って締約国からの通報を規約人権委員会が受理し、かつ検討する権限を有することを認める宣言をしていないから、規約人権委員会との関係で問題となるのは、B規約四〇条に規定されている定期報告義務のみであるところ、規約人権委員会の出す一般的意見の目的は、「規約の実施を促進するため全ての締約国がこの報告活動を活用できるようにすること、多くの報告が不充分であった点に締約国の注意を促すこと、達成された進歩を報告活動のなかで示唆し、人権の保護並びにその促進についての締約国や国際機関の活動を鼓舞すること」(乙一〇)とされているのであって、各締約国にB規約の解釈及び履行に当たって参考とされることが期待されているにすぎず、締約国に対し法的拘束力はない。 付言するに、本件児童扶養手当は社会権であり、直接には人権A規約の問題であり、このような社会保障については、即時に具体的な権利として認めることは求めていない(A規約九条)。なるほど、同規約二条二項によれば、社会権についても平等に行使されることが規定されている。 しかし、社会保障制度を設けるについては、その時々における経済的、社会的条件、一般的な国民の生活状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、現実の立法として具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することはできず、また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであって、具体的にどの の立法として具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することはできず、また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであって、具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられていることは、先に説示のとおりであり、右A規約について、権利の実現に向けて積極的に社会政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣言したものであって、個人に対し、即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではない(最高裁判所平成元年三月二日第一小法廷判決・裁判集民事一五六号二七一頁参照)し、本件において裁量の逸脱・濫用がないことは前記のとおりであるから、なんら自由権規約に反するところではない。 以上の次第であって、規約人権委員会の一般的意見に法的拘束力があることを前提とする被控訴人の主張は理由がない。 次に、児童の権利に関する条約違反の主張の点につき判断するに、同条約二条一項で、児童に対し、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、確保することが定められているが、同条約二六条ですべての児童が社会保障からの給付を受ける権利を認めるものとしつつ、その給付に関し、適当な場合には、児童及びその扶養について責任を有する者の資力及び事情等を考慮することができるものとされている(引用した原判決の一三頁五行目ないし同一五頁四行目)のであって、必ずしも母子家庭に一律に受給資格を認めることまで要求されているものではないし、また、我が国の第一回報告に関する児童の権利に関する委員会の最終見解は、児童の権利に関する条約四五条に基づく、「提案及び一般的な性格を有する勧告」の性質を有するもので、我が国の裁判所に対する法的拘束力を持たないし、その内容を見ても、施行令一条の二の三号が児童の権利に関する の権利に関する条約四五条に基づく、「提案及び一般的な性格を有する勧告」の性質を有するもので、我が国の裁判所に対する法的拘束力を持たないし、その内容を見ても、施行令一条の二の三号が児童の権利に関する条約に違反するか否かに関しては、何も言及していないから、施行令一条の二の三号が児童の権利に関する条約に違反するとまではいえない。 さらに、本件児童扶養手当は、男女間における差別的扱い、すなわち女性を不利益に扱っているものではないから、そもそも女性差別撤廃条約違反の問題は生じない。 四争点6について控訴人は、本件括弧書きにより、認知の請求をするか、児童扶養手当を受給するかの二者択一を迫られることなどを理由に、認知請求権を侵害する旨主張するが、同括弧書きが認知を受けないことを奨励し、父に責任を果たさせないことを目的としたものではなく、一応の合理性があり、明らかに裁量権を逸脱し、濫用したものとまでは認められないし、認知請求権の消長に影響を与えるものとまではいえないから、控訴人の右主張も理由がない。 五以上の次第であって、被控訴人の本件請求は理由がない。 第四結語よって、右と結論を異にする原判決を取り消し、被控訴人の請求は、理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第三民事部裁判長裁判官岡部崇明裁判官古川行男裁判官鳥羽耕一

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