昭和43(う)1588 法人税違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和45年4月20日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件各控訴を棄却する。          理    由  本件各控訴の趣意は、被告人両名の弁護人下飯坂潤夫作成名義の控訴趣意書、同 補充書および同弁護人外三名共同作成名義の控訴

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判決文本文11,934 文字)

主文 本件各控訴を棄却する。 理由 本件各控訴の趣意は、被告人両名の弁護人下飯坂潤夫作成名義の控訴趣意書、同補充書および同弁護人外三名共同作成名義の控訴趣意書(誤記訂正を含む。)、同補充書に、これらに対する答弁は、検事古谷菊次作成名義の答弁書、同補充書にそれぞれ記載してあるとおりであるから、いずれもこれを引用し、これに対して当裁判所は、つぎのように判断する。 弁護人下飯坂潤夫外三名の控訴趣意第一中の訴訟手続の法令違反の論旨(同補充第一の一を含む。)および弁護人下飯坂潤夫の控訴趣意第一(同補充を含む。)について。 論旨は、要するに原裁判所が検察官の訴因変更請求を許可し、変更後の訴因につき有罪の言渡しをしたことをもつて訴訟手続の法令違反があると主張するものである。 よつて、まず、論旨指摘の原審訴訟手続の経過につき記録を調べてみるに、本件公訴事実は、昭和三一年一二月二五日付起訴状によると、「被告株式会社Aは、(中略)月賦販売の方法によつて繊維製品、家具、皮革製品、電気機具その他の販売業を営むことを目的とするもの、被告人は、右会社の代表取締役でその業務全般を統轄処理するものであるが、第一、被告人は、被告会社の前記業務に関し法人税を逋脱することを企て、Bその他の従業員と意思を通じて、右会社の仕入、売上等取引の一部を公表決算より脱漏せしめる等経理上の不正処理を行ない、昭和二九年六月三〇日、東京都世田谷区若林町二七〇番地所在世田谷税務署において、同署々長に対し、昭和二八年五月一日から同二九年四月三〇日までの間の事業年度における法人税の確定申告をするに際し、同事業年度における所得金額は、二〇、二三七、九〇〇円、これに対する税額は八、四九九、九一八円であるのにかかわらず、ことさらに所得金額を七、八九六、 の事業年度における法人税の確定申告をするに際し、同事業年度における所得金額は、二〇、二三七、九〇〇円、これに対する税額は八、四九九、九一八円であるのにかかわらず、ことさらに所得金額を七、八九六、一〇〇円、これに対する税額を三、三一六、三六〇円と過少に申告し、もつて不正の行為によつて差引き五、一八三、五五八円の法人税を逋脱し、第二、被告会社は、その業務に関し、被告人において右第一のとおり法人税を逋脱したものである」というにあり、検察官の本件訴因変更の請求は、昭和四二年九月一六日付検察官の原裁判所に対する訴因変更請求書の記載によると、右公訴事実中、所得金額「二〇、二三七、九〇〇円」とあるのを、「八一、二五六、五二一円」に、税額「八、四九九、九一八円」とあるのを、「三四、一二七、七三〇円」に、差引税額「五、一八三、五五八円」とあるのを、「三〇、八一一、三七〇円」に各訂正したく訴因変更を請求するというものであり(なお、申告所得金額「七、八九六、一〇〇円」とあるのを、「七、八九六、一四五円」と訂正)、これに対し原裁判所は第一〇回(昭和四二年一一月二日)公判期日において右請求書に基づく訴因変更許可決定を宣告したものであるが、その理由の骨子とするところは、右請求は逋脱所得、逋脱税額を拡張するもので、公訴事実の同一性を害しないものであること、右請求の根拠は主として所得計算方法の変更、なかんづく売掛金に関する従前の実現主義基準を発生主義基準に変更することにあり、従つて立証関係も大部分は従前の資料を利用するというにあつて、審理経過等からしても、右許可によりとくに訴訟が著しく遅延するとは認められないこと、本件差戻判決は売掛金計算に関しいわゆる実現主義を前提とすべきか否かについては何ら触れるところがないから、発生主義基準に変更したからといつて、その拘束力に に訴訟が著しく遅延するとは認められないこと、本件差戻判決は売掛金計算に関しいわゆる実現主義を前提とすべきか否かについては何ら触れるところがないから、発生主義基準に変更したからといつて、その拘束力に牴触することにはならないし、右各主義の当否は最終的に裁判所が判断することであるから、検察官がその一方を主張することは自由であるというにあることが明らかである。 そして、論旨は、これに対し、検察官の右訴因変更請求は、なるほど、これを形式的表面的にみれば、公訴事実中の金額の変更請求に過ぎないもののようにみられるけれども、それは右原決定も触れているように、所得計算の原則の変更、すなわち、売掛金計算につき実現主義から発生主義へ基準原則を変更したうえ、発生主義による計算方式に基づいて金額を変更しようとしているものであり、しかも本件につき課税当局の行なつた課税および告発の行政処分、検察官の起訴、第一次第一審並びに控訴審の審判も実現主義に基づき行なわれていたもので、本件差戻判決の拘束力の点、さらには関係基本通達の解釈上、当該法人が所得計算につき発生主義、実現主義のいずれをとるかはその自由であり、そのいずれかが選択された以上、課税当局がこれを変更することはできないこととされていたこと等に徴すると、右訴因変更請求は、公訴事実の同一性を害するものであり、かつ、本件のように起訴後一〇年以上を経過した後になつては、刑訴法一条、憲法三七条の趣旨からしても、許すべからざるものであるというにあると認められる。 <要旨>よつて、審按するに、本件公訴事実の本旨とするところは、すでに引用したところから明らかなように、被</要旨>告人並びに被告会社が特定の一事業年度において実際の所得金額はいくらいくらであつたのに、これを下廻る、これこれの所得しかなかつたとして虚偽の過少申告を 引用したところから明らかなように、被</要旨>告人並びに被告会社が特定の一事業年度において実際の所得金額はいくらいくらであつたのに、これを下廻る、これこれの所得しかなかつたとして虚偽の過少申告をなし正当な法人税額と右申告税額との差額を逋脱したというにあるのであるから、本件訴因変更請求のように、同一事業年度における実際の所得金額の増加、ひいて逋脱税額の増加を求めるに過ぎないものは、いわゆる公訴事実の同一性を害するものではないと解するのが相当である。もつとも、本件においては、検察官主張にかかる所得金額、ひいて逋脱税額の増加は、被告会社の当期分、すなわち、第三期分の所得計算につき従来の方式を変更し、第一、二期と同様の発生主義に準拠した結果であり、しかもここに至るまでの経過が所論指摘のとおりであることも明認されるところであるが、記録によれば、当期の売掛金ないし月賦販売利益の計算方法につき、被告会社が第一、二期については発生主義に拠つたのに、第三期については、いわゆる現金主義(これが当時の法人税基本通達二五〇による実現主義に拠つたものと認められないことは、後に触れるとおりである。)に拠つたものであることについては、本件差戻前の第一次第一審において検察官が冒頭陳述として主張し、被告人、弁護人側においても、これを受け、とくに第三期において発生主義基準を採らなかつたことについて陳弁している形跡が窺われるし、また、記録を調査してみても、本件訴因変更請求により被告人側の防禦に実質的な不利益を生ぜしめたような形跡も認められないし、かつ、本件差戻判決の判示自体に照らし、本件訴因変更請求許可決定をすることが右拘束力に牴触するものともいえず、すすんで右決定後の訴訟の経過に徴してみても、被告人側が特段の反証活動を強要される結果となり、訴訟を著しく遅延せしめたもの らし、本件訴因変更請求許可決定をすることが右拘束力に牴触するものともいえず、すすんで右決定後の訴訟の経過に徴してみても、被告人側が特段の反証活動を強要される結果となり、訴訟を著しく遅延せしめたものとも認められないので、結局検察官の本件訴因変更請求を許可した原決定は相当と認めるのほかなく、これを目して訴訟手続の訴訟法ないし憲法違反であるとする主張は採用の限りでなく、論旨は、理由がない。 下飯坂弁護人外三名の控訴趣意第一中、事実誤認、法令適用の誤りの論旨(同補充第一の二を含む。)について。 論旨は、被告会社は当期にかかる決算書の貸借対照表中に、月賦未収分商品科目を設けていること、さらには右科目の期末売掛金を第四期分に計上、申告していること等を根拠に、被告人、被告会社においては所得隠匿の意思のなかつたことは明白であつて逋脱犯は成立しないから、この点において原判決には事実誤認、法令適用の誤りがあると主張し、とくに、原判決の(逋脱所得計算説明)の二、売掛金の4、三期末売掛金公表額の項の説示、すなわち、「被告会社は、当期申告において、未収分商品という科目下に、五、三四四万三、三二四円を計上しているが、前述したとおり、右の未収分商品は、当期発生の売掛金の原価を表示したものである。 そうすると、被告会社は、発生主義における売掛金、すなわち別紙計算書による売掛金実際額中、右同額を公表しているとしなければならない」との部分を利益に援用するものである。 しかしながら、原判決は、すでに、(逋脱所得計算説明)の二、売掛金1において、被告会社は、当期確定申告において、売掛金としては、表勘定の期首売掛金残額を計上し、当期発生の売掛金を全く計上しないという、法人税法上許容され得ない処理方法を採つたものとしたうえ、所論の公表貸借対照表上における未収商品科目の計 て、売掛金としては、表勘定の期首売掛金残額を計上し、当期発生の売掛金を全く計上しないという、法人税法上許容され得ない処理方法を採つたものとしたうえ、所論の公表貸借対照表上における未収商品科目の計上に触れて、右は期日未到来売掛金の原価ではなく、当期発生の全売掛金の原価を表示したものであることが認められるとし、結局、被告会社は脱税の意図のもとに殊更に通達基準によることが可能な会計処理すらしていなかつたものとしているところであり、右認定判示は記録に徴し優に是認するに足りるところである。 そもそも、論旨も認めるように、当時の法人税基本通達二四九、二五〇によれば、被告会社の営むような割賦販売に対しては、その損益算入につき売買契約の効力発生日または商品等引渡しの日時が属する事業年度の損益に算入すべきものとする原則(いわゆる発生主義)が緩和され、当該事業年度において収入すべき年、月賦金に対応する売却益を見積り、当該事業年度の益金に算入すること(いわゆる実現主義)、言葉を換えていえば、期日未到来分の売掛金に関するかぎり、当期の所得として計上することを要しないとする方法が例外的に認められていたものであるところ、被告会社が第三期に計上した「月賦未収分商品」とは、いわゆる「割賦基準における未収商品」すなわち、期日未到来分売掛金の原価ではなく、当期発生の全売掛金、従つて期日到来分、未到来分の全部を含めたものの原価を意味していることが明らかである以上、いわゆる実現主義に準拠したとしても計上することを要求される期日到来分に対応する売却益を見積り、当該事業年度に計上するという措置を採らなかつたとの非難を免れ得ないことは当然であり、しかも、かように計上方法を採つた経緯につき、被告人自ら、昭和三一年一一月二〇日付検察官宛ての上申書中において、「二十八年度決算期に於て いう措置を採らなかつたとの非難を免れ得ないことは当然であり、しかも、かように計上方法を採つた経緯につき、被告人自ら、昭和三一年一一月二〇日付検察官宛ての上申書中において、「二十八年度決算期に於てB税理士から二十八年度は二十六、二十七年度より契約販売高が著しく増加したので、同年度決算は期末決算期日を超えて翌事業年度に入金する。月賦未収金は之を翌期の売上に計上する会計処理方法によるべきであるとのことで、当社としてはその通りに決算書を作成して貰つた次第であります」と述べ、第三期の利益を翌期に繰り延べ、結局、当期の所得を秘匿する、いわゆる逋脱の犯意があつたことを自白しているのであつて、所論指摘の、被告会社がなした未収商品科目下の公表金額は、前述したとおりのもので、発生主義ないし実現主義による売掛金としてのそれでない以上、右逋脱の犯意を否定するに足りる証拠資料となるものではなく、原判決が、右科目下の金額が当期発生の売掛金の原価を表示したもので、発生主義における売掛金実際額中、右同額を公表しているものとしなければならないといつているのも、単に売掛金の数額算出上言及したに過ぎないものであり、原判決としては、上記引用のとおり、被告会社に逋脱の犯意があつたことを認めたうえ、以上のとおり判示したものであることは、全判文を通読すれば、自ら明らかなところである。そしてまた、被告会社が第三期の未収収益(期日未到来分)を第四期の所得として申告、納税したことは、原判決も、(逋脱所得計算説明)の二、売掛金1の第四期において、これを認める趣旨の説示をしているところであるが、同時に、犯則所得は、逋脱犯成立時において客観的に確定しているものであることも原判決説示のとおりであつて、犯意の存否に影響をおよぼすことがらでないことはいうまでもないところである。 なお、すでに述 同時に、犯則所得は、逋脱犯成立時において客観的に確定しているものであることも原判決説示のとおりであつて、犯意の存否に影響をおよぼすことがらでないことはいうまでもないところである。 なお、すでに述べたとおり、被告会社は、第一、二期においては前記通達二四九による発生主義によつて売掛金を計上してきたのに、第三期に至つて、突如として、法人税法並びに基本通達の解釈上許容されない、いわゆる現金主義による計上方法を採用したものである以上、課税ないし検察当局において、被告会社の現金主義による計上方法を否認して、実際の売掛金を算出するに当つては、被告会社の要望を容れて実現主義に依拠することはとにかくとして、第一、第二期と同様、発生主義に依拠することは、すでに被告会社に前示のような逋脱の犯意が認められるものである以上、何ら差支えないところというべきであつて、この点に関する原判示並びに売掛金計算方法も相当として是認することができる。 これを要するに、原判決には所論のような事実誤認、法令適用の誤りは存しない。論旨は理由がない。 下飯坂弁護人外三名の控訴趣意第二(同補充第二、第三を含む。)について。 論旨は、要するに本件差戻判決は、法人税逋脱犯の罪となるべき事実を構成する実際の所得金額を確定するには、その前提として当該事業年度の総益金および総損金の内容をなす個々の益金または損金、すなわち、純資産の増加または減少の原因となるべき各個の具体的事実を証拠により認定する必要があるとしたうえ、第一次第一審判決は検察官主張にかかる修正貸借対照表上の資産および負債に属する各勘定科目につきこれを証拠によらないで認定した違法がある旨判示していることからすれば、原審は右法律的判断に拘束され、右判断に従つて判決すべきであるのにかかわらず、原審は右判示の趣旨を誤り解し、結局におい 科目につきこれを証拠によらないで認定した違法がある旨判示していることからすれば、原審は右法律的判断に拘束され、右判断に従つて判決すべきであるのにかかわらず、原審は右判示の趣旨を誤り解し、結局において、逋脱犯を認定するには、益金、損金または資産、負債を構成する各勘定科目の数額を証拠により認定すべき旨判示したものであると解すべきであるとし、各勘定科目、とくに現金、売掛金、棚卸商品等にかかる具体的事実を証拠によつて認定することなく、その各数額を何らかの証拠による、単なる推計によつて算出しているに過ぎないものであるから、原判決には、本件差戻判決の拘束力に背反するという、訴訟手続の法令違反があるのみならず、法人税逋脱犯を構成する事実の認定につき法人税法の解釈、適用を誤つたものであり、とくに本件逋脱犯における構成要件該当事実の一つである売掛金勘定の具体的事実が証拠によつて確実に認定されていない以上、その余の勘定科目に属する具体的事実の立証の有無を問題とするまでもなく被告人は無罪である旨主張するものと解される。 しかしながら、所論指摘の本件差戻判決中の関係部分並びに右にかかる原判決の判示部分を仔細に吟味、検討するに、所論は、右両者の趣旨とするところを正解しない結果による独自の見解を出でないものであつて、採用に値しないものといわざるを得ない。すなわち、本件差戻判決の判示をみるに、立論の出発点として、「法人税法の定めによれば、法人税の課税標準たる法人の各事業年度の所得は、その当該事業年度の総益金から総損金を控除した金額によるとされ、具体的には各事業年度の総益金及び総損金の内容を構成する個々の益金又は損金、換言すれば純資産の増加又は減少の原因となるべき一切の事実を法人の貸借対照表ないし損益計算書を通して把握」すべきであるとしていることからみると、右判示 金及び総損金の内容を構成する個々の益金又は損金、換言すれば純資産の増加又は減少の原因となるべき一切の事実を法人の貸借対照表ないし損益計算書を通して把握」すべきであるとしていることからみると、右判示は、法人税法違反の逋脱犯の罪となるべき事実を構成する実際の所得金額を確定するには、貸借対照表ないし損益計算書の借方、貸方の全勘定科目の内容を、それぞれの科目につき確定する必要があるとの当然の事理を明らかにしたにとどまるものと解するのが相当であつて(このことは、原判決もとくに指摘しているとおり、本件差戻判決が、第一次第一審判決の認定中、被告会社が八〇〇万円の架空借入工作をしたことだけから、同額の逋脱所得があつたと認定した点を捉えて、証拠による認定をしない違法があるとしていることからも優に窺い知ることができる。)、右見解に立つかぎり、本件差戻判決のいう「個々の益金又は損金、すなわち、純資産の増加又は減少の原因となるべき各個の具体的事実」が、所論のいうように、つねに「法人の貸借対照表の各勘定科目に示されている各個の益金又は損金の具体的内容、金額、帰属等の具体的事実」を指すものであり、従つて売掛金についていえば、期首期末の具体的事実、すなわち、販売月日、販売品目、数量、金額、相手方等の具体的内容が売掛債権ごとに証拠により明らかにせられなければならないとする趣旨までも含むものなどとはとうてい解することはできないところである。所論の趣旨における具体的事実が会計学上のいわゆる取引事実を意味するとすれば、原判決もとくに説示しているように、逋脱所得の認定は損益計算法によるほかないこととなるが、法人税を逋脱するため、会社が正しい経理をせず、帳簿も伝票も完備していないような情況のもとにおいて、損益計算法のみにより実際所得が計算され得るなどということは、およそ考え よるほかないこととなるが、法人税を逋脱するため、会社が正しい経理をせず、帳簿も伝票も完備していないような情況のもとにおいて、損益計算法のみにより実際所得が計算され得るなどということは、およそ考えられないところであつて、原判決も説示するように、会社が売上を除外する等、経理の実態を秘匿する場合には、財産増減法によらざるを得ないことは当然であり、しかもこの方法によつても実際所得の最少限度を算出、確定するものであるかぎり、被告人側に何ら不利益を与えるものではないし、右計算の過程において、いわゆる直接証拠のみならず、間接証拠が用いられることがあるとしても、いわゆる論理法則、経験法則に反しないかぎり、訴訟法上、かような採証方法が許されないとするいわれは存しない。 以上の見地に立つて、原判決中の本件各勘定科目の数額の認定につき、本件記録並びに証拠物を精査のうえ検討してみるに、何ら訴訟法違反その他の違法を見出すことはできない。論旨は理由がない。 下飯坂弁護人外三名の控訴趣意第三について。 論旨は、要するに原判決は期末資産については、これ以下ではない、すなわち、最少限、期首資産については、これ以上ではない、すなわち、最大限の証明がなされることによつて、財産増減法による最少限の逋脱所得の証明が可能であるとしているが、右理論によれば、当期である第三期の期首資産を最大限に証明することは、同時に前期である第二期の期末資産を最大限に証明したことになり、とくに原判決のいう、期末資産の最少限の証明ということとは全く相反した証明方法に転化せざるを得ないので、原判決理由には理由の不備ないし理由のくいちがいがあるとの趣旨を主張するものであるが、第三期の期首資産を最大限に証明するといつても、それはあくまでも証拠に基づくものである以上客観的には何ら被告人側の不利となる筋 理由の不備ないし理由のくいちがいがあるとの趣旨を主張するものであるが、第三期の期首資産を最大限に証明するといつても、それはあくまでも証拠に基づくものである以上客観的には何ら被告人側の不利となる筋合のものではなく、要するに原判決の右判示部分は財産増減法による逋脱所得の確定について当然のことを説示したに止まるものであり、所論は畢竟言葉の論理を操つる独自の所論という外はなく、採用の限りでない。 下飯坂弁護人外三名の控訴趣意第四(同補充第四を含む。)について。 論旨は、要するに原判決は被告会社に法人税逋脱の事実がないのに逋脱があるとの予断のもとに、本来検察官に属する挙証責任を被告人に転換したうえ、被告会社の当期である第三期の資産増額は、専ら被告人個人および有限会社C、同Aからの持込み資産によるものであつて、被告会社の当期の事業取得によつて発生したものではないのに、右事実を看過し、被告会社の当期、期末、期首における売掛金、在庫商品等の主要資産勘定科目の金額につき、証拠によらず、杜撰な推計計算を行ない、その結果算出された増差額の大部分は売掛金の計算基準を実現主義から発生主義に変更することによつて生じたもので、いわゆる通脱犯意を欠く売掛金増差額であるのに、右推計計算による、実際所得金額と申告所得金額との差額のすべてを逋脱所得と認定した点において、判決に影響をおよぼすことの明らかな法令違反、事実誤認があるとする趣旨の主張をするものである。 しかしながら、原判決中の別紙修正貸借対照表および別紙逋脱所得計算書、税額計算書の各記載を、挙示にかかる各関係証拠と対比、検討してみるに、すべて肯認するに足りるものであることにかんがみれば、原判示の犯罪事実が証拠に基づくものであることは明白であつで、被告人側に有罪の予断をもち、挙証責任を転換して不利益な事実認定を 、検討してみるに、すべて肯認するに足りるものであることにかんがみれば、原判示の犯罪事実が証拠に基づくものであることは明白であつで、被告人側に有罪の予断をもち、挙証責任を転換して不利益な事実認定をしたものでないことは勿論であり、また、原審において検察官の訴因変更請求が許可され、本件売掛金の計算方法につき実現主義基準から発生主義基準に変更されたことによる増差額につき被告人側に逋脱の犯意がないといえないことについては、すでに弁護人らの控訴趣意第二に対し説明したとおりであるので(被告人は、第一次第一審公判においても、その審理において、数額の点は別として、逋脱の事実そのものは認めている。)、論旨はとうてい採用の限りでない。 以下においては、論旨の根拠とする事由中重要なもののみにつき説明を加えておく。 (一) 持込み資産について。 所論は、原判決が(弁護人の主張に対する判断)の二、において、いわゆる持込み資産についての弁護人の主張を、数千万円の現金を被告人が自宅押入れの中に長期間保管すること自体不自然であるのみならず、被告人が捜査当時においてかような事情を供述していないことを勘案すれば、被告人の右主張にそう上申書の記載は措信できないとして排斥した点を事実誤認であると主張するものであるが、関係各証拠を仔細に吟味、検討してみても、原判決の右結論は、優に肯認するに足りるものであつて、所論にいう、当時銀行預金がなかつたという事実も、そのことから直ちに、所論主張のように莫大な額の現金がそのままの状態で保管されていたということにはならないし、また、所論のいうように、Dら三名の者の各不動産購入の事実があつたとしても、そのことのみをもつてその資金が持込み現金で支払われたとの結論を導くことができるものともいうことはできない。 (二) 委託品について。 所論は 、Dら三名の者の各不動産購入の事実があつたとしても、そのことのみをもつてその資金が持込み現金で支払われたとの結論を導くことができるものともいうことはできない。 (二) 委託品について。 所論は、同じく原判示の「三、委託品について」の項につき、被告会社の棚卸表中には「委」の符合が付されているもののほかにも、委託品であつて右符合が付されていないものも多数混入しており、しかもその額は三、六〇〇万円程度である旨の主張が排斥ざれたことを非難するものであるが、右主張にかかる原審証人Eの証言内容を他の関係証拠と対比のうえ、仔細に吟味、検討してみるに、右証言を措信できないとする原判断に誤りがあるとは認められず(なお、原判決が「委」の符合が付されている商品については、これらをすべて委託品として除外したうえでの認定をしていることは証拠上明らかである。)、その他関係証拠に徴しても、原判決にはこの点に関する事実誤認は勿論、その他の違法があるとはいえない。 (三) Dおよび被告人の供述について。 所論は、Dの経歴、能力等からみて、その捜査官等に対する供述や上申書は信用性のないものであり、被告人は右Dに示唆されて捜査官等に迎合する供述をしたものであつて、これまた信用性がない旨主張するものであるが、所論指摘の右両名にかかる各供述内容を、他の関係証拠と対比しつつ、仔細に吟味、検討してみても、任意性、信用性に欠けるものがあるとは、とうてい認められないところである。 (四) 棚卸商品について。 所論は、原判決の認定した棚卸高は誤りであるとして、(1)原判決は昭和二九年七月三一日現在の棚卸表によつて逆算したというが、一部には七月三一日ではなく、八月一日、八月五日現在の棚卸表を用いている、(2)前記のように委託品三、六〇〇万円が混入している、(3)七三一日現在の棚卸表 三一日現在の棚卸表によつて逆算したというが、一部には七月三一日ではなく、八月一日、八月五日現在の棚卸表を用いている、(2)前記のように委託品三、六〇〇万円が混入している、(3)七三一日現在の棚卸表には、立川、追浜店の在庫表がない、(4)担当の国税査察官が本件査察当時から約二〇日間位を費して実施した棚卸による昭和三〇年一月三日現在の在庫高が判つている以上、これを用いて逆算すべきであるのにこれを用いていない、(5)企業比較、経費分析の結果に基づき、経験則にも合致し、蓋然性も高い、弁護人側の算定した在庫量と比較すると、原判決の棚卸高は実際よりも四、〇〇〇万円以上も多額であるなどと主張するものである。 しかしながら、右(2)の委託品の問題についてはすでに述べたとおりであり、右(1)、(3)については、横須賀店の棚卸計算につき「二九年八月五日現在調」と表記された在庫調記録を用いたこと、立川、追浜両店分の棚卸表がないため推計計算を行なつたことは、原判文自体に徴し明白なところであるが、同時に、原判決がなしたところの、これらの在庫表を主体として逆算計算した、期首期末の棚卸高が是認するに足りる推計計算の結果による合理的なものであることも、十分に納得のゆくところであるので、所論は結局採用できない。 また、(4)については、国税査察官が本件発覚後実施した自らの棚卸結果を採用せず、被告会社側において本件申告時により近接した時期において実施していたそれを採用したからといつて、不当視できないことは勿論であり、(5)については、商品回転率あるいは商品売場面積等に依拠して縷々主張するところがあるけれども、その由つて立つ根拠数字が原審に顕われた関係証拠資料との対比上、たやすく納得し得ないものがあるといわざるを得ない以上、とうてい採用の限りでない。 その他弁護人の各 縷々主張するところがあるけれども、その由つて立つ根拠数字が原審に顕われた関係証拠資料との対比上、たやすく納得し得ないものがあるといわざるを得ない以上、とうてい採用の限りでない。 その他弁護人の各所論に徴し、本件記録並びに証拠物を精査のうえ、再思三考してみても、原判決には何ら事実誤認、法令違反は存しない。 以上の次第で、論旨はすべて理由がない。 よつて、本件各控訴はいずれも理由がないから、刑訴法三九六条により、これを棄却することとし、主文のように判決をする。 (裁判長判事栗本一夫判事石田一郎判事藤井一雄)

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