平成15(行ウ)51 障害基礎年金支給停止処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成17年1月27日 名古屋地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-7505.txt

判決文本文51,565 文字)

平成17年1月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成15年(行ウ)第51号障害基礎年金支給停止処分取消請求事件口頭弁論終結日平成16年10月21日判決 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の請求被告が原告に対して平成14年10月15日付けでした障害基礎年金の支給停止処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,国民年金法30条の4第1項に規定するいわゆる20歳前障害に係る障害基礎年金(以下,「本件障害基礎年金」ともいう。)の支給を受けていた原告が,妹の死亡により労働者災害補償保険法(以下,「労災保険法」という。)22条の4に規定する遺族年金(以下,単に「遺族年金」ともいう。)を受給することになったところ,被告が,国民年金法36条の2第1項1号の併給調整規定に基づき,本件障害基礎年金の支給停止処分を行ったため,原告が,上記併給調整規定は憲法14条及び25条に違反するなどと主張して,上記支給停止処分の取消しを求めた抗告訴訟である。 1 前提事実(争いのない事実及び各項末尾記載の証拠によって容易に認定できる事実)(1) 本件障害基礎年金の支給裁定原告(昭和48年3月18日生)は,生来性の自閉症を有し,20歳に達した日において障害等級2級16号に該当する程度の障害の状態にあったことから,平成11年法律第87号による改正前の国民年金法3条2項,平成11年政令第393号による改正前の国民年金法施行令1条1号に基づき,愛知県知事により本件障害基礎年金の支給裁定を受けた上で,平成5年4月分から本件障害基礎年金の支給を受けていた(甲5の2・3,弁論の全趣旨)。 なお,原告が受給した本件障害基礎年金の支給額は,平成10年4月分から平成11年3月分までは年79万9500円,平成11年4月分か 本件障害基礎年金の支給を受けていた(甲5の2・3,弁論の全趣旨)。 なお,原告が受給した本件障害基礎年金の支給額は,平成10年4月分から平成11年3月分までは年79万9500円,平成11年4月分から平成14年8月分までは年80万4200円である(甲1)。 (2) 遺族年金の支給原告の妹であるA(当時23歳)は,平成10年10月26日,職場から帰宅する途上,交通事故により死亡した。 原告は,平成11年4月11日,名古屋北労働基準監督署長に対して遺族年金の支給を請求したところ,同署長は,同年8月23日,平成10年11月分にさかのぼり,遺族年金の支給決定をした(甲2の1,5の1・2,弁論の全趣旨)。 なお,原告が受給した遺族年金の額は,平成11年10月は74万7808円(平成10年11月から平成11年9月までの分),平成11年12月から平成12年8月まで隔月ごとに13万5583円(各2か月分),平成12年10月から平成13年8月までは隔月ごとに13万4950円(前同),平成13年10月から平成14年8月までは隔月ごとに15万7054円(前同)である(甲2の1)。 (3) 支給停止額変更届の提出原告は,名古屋市北区役所を経由して名古屋北社会保険事務所に対し,平成14年の現況届を提出した。これによって,被告は,原告が平成10年11月以降遺族年金の支給を受けていることを知り,原告に対して,障害基礎年金受給権者支給停止額変更届の提出を求めた。 原告は,これに応じて,平成14年8月30日,上記社会保険事務所を経由して被告に対し,同届を提出した。 (4) 障害基礎年金支給停止処分被告は,国民年金法36条の2第1項1号に基づき,平成14年10月15日付けで,原告に対し,平成10年11月にさかのぼり,本件障害基礎年金の支給を停止し,その年金額を0円に変更する 年金支給停止処分被告は,国民年金法36条の2第1項1号に基づき,平成14年10月15日付けで,原告に対し,平成10年11月にさかのぼり,本件障害基礎年金の支給を停止し,その年金額を0円に変更する旨の処分(以下「本件処分」という。)を行い,これを通知した上で,平成14年11月25日付けで,支給停止に係る本件障害基礎年金のうち支給済みの全額の返納を求める旨の納入告知をした。 原告は,その後,被告に対して,平成10年11月分から平成14年8月分までの受給済みの本件障害基礎年金合計301万3785円を返納した。 (5) 審査請求等原告は,平成14年12月24日,愛知社会保険事務局社会保険審査官に対し,本件処分の根拠となった国民年金法36条の2第1項が憲法14条,25条に違反していることを理由に,審査請求をしたが,同審査官は,平成15年2月19日付けで,同請求は同審査官の権限に属さない事項について審査を求めるもので不適法であるとして,これを却下するとの決定を行い,そのころ,原告に対して通知した(甲2の1・2)。 原告は,上記決定を不服として,同年4月15日付けで,社会保険審査会に対し,同様の再審査請求をしたが,社会保険審査会は,同年6月30日付けで,現行の国民年金法が憲法に違反しているかどうかを審査する権限を有しないので同請求は不適法であるとして,これを却下するとの裁決を行い,そのころ,原告に対して通知した(甲3,4)。 (6) 本訴の提起原告は,平成15年9月30日,名古屋地方裁判所に,本件処分の取消しを求める本訴を提起した。 2 関係法令(抜粋)(1) 制定当時の国民年金法(昭和34年法律第141号)(国民年金制度の目的)1条国民年金制度は,日本国憲法第25条第2項に規定する理念に基き,老齢,廃疾又は死亡によつて国民生活の安定がそこ (1) 制定当時の国民年金法(昭和34年法律第141号)(国民年金制度の目的)1条国民年金制度は,日本国憲法第25条第2項に規定する理念に基き,老齢,廃疾又は死亡によつて国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止し,もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。 (被保険者の資格)7条① 日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の日本国民は,国民年金の被保険者とする。 (以下略)(資格取得の時期)8条前条の規定による被保険者は,20歳に達した日,日本国民となつた日又は日本国内に住所を有するに至つた日に,被保険者の資格を取得する。 (年金給付の種類)15条この法律による給付(以下「年金給付」という。)は,次のとおりとする。 1 老齢年金 2 障害年金 3 母子年金,遺児年金及び寡婦年金(支給要件)26条老齢年金は,次の各号のいずれかに該当する者が65歳に達したときに,その者に支給する。 1 保険料納付済期間(略)が,25年以上である者 2 前号に該当しない者であつて,保険料納付済期間が10年以上であり,かつ,その保険料納付済期間と保険料免除期間(略)とを合算した期間が,25年以上であるもの(支給要件)30条障害年金は,疾病にかかり,又は負傷し,かつ,次の各号の要件に該当する者が,その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(略)がなおつた日(……以下「廃疾認定日」という。)において,その傷病により別表(注:本判決添付の別表1)に定める程度の廃疾の状態にあるときに,その者に支給する。 1 当該傷病についてはじめて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において被保険者であつた者については,初診日の前日において次のいずれかに該当したこと。 イ初診日の属する月の前月までの 病についてはじめて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において被保険者であつた者については,初診日の前日において次のいずれかに該当したこと。 イ初診日の属する月の前月までの被保険者期間に係る保険料納付済期間が15年以上であるか,又はその保険料納付済期間が5年以上であり,かつ,その被保険者期間のうち保険料免除期間を除いたものの3分の2以上を占めること。 ロ初診日の属する月前における直近の基準月(略)の前月まで引き続き3年間被保険者であり,かつ,その期間のすべてが保険料納付済期間又は1年6箇月をこえない保険料免除期間で満たされていること。 ハ初診日の属する月の前月までの被保険者期間につき,第26条各号のいずれかに該当していること。 2 初診日において被保険者でなかつた者については,初診日において65歳未満であり,かつ,初診日の前日において第26条各号のいずれかに該当したこと。 (年金額)33条① 障害年金の額は,初診日の属する月の前月までの被保険者期間に係る初診日の前日における保険料納付済期間に応じて,それぞれ次の表(略-ただし,保険料納付済期間が26年未満の2万4000円から40年の4万2000円まで,1年きざみで1200円あて増額された金額が記載されている。)の下欄に定める額とする。 ② 廃疾の程度が別表に定める1級に該当する者に支給する障害年金の額は,前項の規定にかかわらず,同項に定める額に6000円を加算した額とする。 (支給要件)37条① 母子年金は,夫が死亡した場合において,死亡日の前日において次の各号のいずれかに該当し,かつ,夫の死亡の当時夫によつて生計を維持した被保険者たる妻が,夫の死亡の当時,夫又は妻の子であつて18歳未満であるか又は20歳未満で別表に定める廃疾の状態にあるもの(略)と生 のいずれかに該当し,かつ,夫の死亡の当時夫によつて生計を維持した被保険者たる妻が,夫の死亡の当時,夫又は妻の子であつて18歳未満であるか又は20歳未満で別表に定める廃疾の状態にあるもの(略)と生計を同じくするときに,その者に支給する。 1 死亡日の属する月の前月までの妻の被保険者期間に係る保険料納付済期間が15年以上であるか,又はその保険料納付済期間が5年以上であり,かつ,その被保険者期間のうち保険料免除期間を除いたものの3分の2以上を占めること。 2 死亡日の属する月前における直近の基準月の前月まで引き続き3年間被保険者であり,かつ,その期間のすべてが保険料納付済期間又は1年6箇月をこえない保険料免除期間で満たされていること。 (以下略)(障害福祉年金の支給要件)56条① 疾病にかかり又は負傷し,かつ,次の各号の要件に該当する者が,廃疾認定日においてその傷病により別表に定める1級に該当する程度の廃疾の状態にあるときは,第30条に定める障害年金の支給要件に該当しない場合においても,これに該当するものとみなして,その者に障害年金を支給する。(以下略) 1 初診日において被保険者であつた者については,初診日の前日において次のいずれにも該当しなかつたこと。 イ初診日の属する月の前月までの被保険者期間のうち保険料免除期間を除いたものが5年以上である場合においては,その期間のうちの保険料納付済期間が,その期間の3分の2に満たないこと。 ロ初診日の属する月前における直近の基準月の前月まで引き続く3年間(その者が20歳に達した後の期間に限る。)が,保険料納付済期間又は保険料免除期間で満たされていないこと。 2 初診日において被保険者でなかつた者については,初診日において65歳未満であり,かつ,初診日の前日において第53条第1項に規定する老齢福 料納付済期間又は保険料免除期間で満たされていないこと。 2 初診日において被保険者でなかつた者については,初診日において65歳未満であり,かつ,初診日の前日において第53条第1項に規定する老齢福祉年金の支給要件に該当したこと。 ② 前項の規定により支給する障害年金は,障害福祉年金と称する。 (障害福祉年金の額)58条障害福祉年金の額は,1万8000円とする。 (福祉年金の支給停止)65条① 老齢福祉年金,障害福祉年金及び母子福祉年金(略)は,受給権者が次の各号のいずれかに該当するときは,その該当する期間,その支給を停止する。 1 公的年金各法に基く年金たる給付を受けることができるとき。 2 監獄,労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されているとき。 3 少年院その他これに準ずる施設に収容されているとき。 ② 前項第1号に規定する給付が,その全額につき支給を停止されているときは,同項の規定を適用しない。(以下略)③ 福祉年金の額が,第1項第1号に規定する給付の額(略)をこえるときは,そのこえる部分については,同項の規定にかかわらず,当該福祉年金の支給を停止しない。 ④ 福祉年金は,受給権者が前年において13万円(略)をこえる所得を有したときは,その年の5月から翌年の4月まで,その支給を停止する。 (以下略)66条① 老齢福祉年金又は障害基礎年金(略)は,その受給権者の配偶者が6000円をこえる額の公的年金各法に基く年金たる給付(略)を受けることができるときは,その期間,その年金額のうち当該公的年金各法に基く年金たる給付の額から6000円を控除した額(略)に相当する部分の支給を停止する。 (以下略)(国庫負担)85条① 国庫は,毎年度,国民年金事業に要する費用(次項及び第3項に規定する費用を除く。以下同じ。)に充てるため,当該年度 した額(略)に相当する部分の支給を停止する。 (以下略)(国庫負担)85条① 国庫は,毎年度,国民年金事業に要する費用(次項及び第3項に規定する費用を除く。以下同じ。)に充てるため,当該年度において納付された保険料の総額の2分の1に相当する額を負担する。 ② 国庫は,福祉年金の給付に要する費用を負担する。 ③ 国庫は,毎年度,予算の範囲内で,国民年金事業の事務の執行に要する費用を負担する。 (保険料)87条① 政府は,国民年金事業に要する費用に充てるため,保険料を徴収する。 (以下略)(保険料の納付義務)88条① 被保険者は,保険料を納付しなければならない。 ② 世帯主は,その世帯に属する被保険者の保険料を連帯して納付する義務を負う。 ③ 配偶者の一方は,被保険者たる他方の保険料を連帯して納付する義務を負う。 89条被保険者が次の各号のいずれかに該当するに至つたときは,その該当するに至つた日の属する月前における直近の基準月からこれに該当しなくなる日の属する月までの期間に係る保険料は,(中略)納付することを要しない。 1 障害年金又は母子福祉年金の受給権者であるとき。 2 生活保護法(略)による生活扶助又はらい予防法(略)によるこれに該当する援助を受けるとき。 3 国立のらい療養所その他の施設であつて,厚生省令で定めるものに収容されるとき。 90条次の各号のいずれかに該当する被保険者から申請があつたときは,都道府県知事は,申請のあつた日の属する月前における直近の基準月からその指定する月までの期間に係る保険料につき,(中略)これを納付することを要しないものとすることができる。ただし,世帯主又は配偶者にこれを納付するについて著しい困難がないと認められるときは,この限りでない。 1 所得がないとき。 2 被保険者又は被保険者の属する世 ことを要しないものとすることができる。ただし,世帯主又は配偶者にこれを納付するについて著しい困難がないと認められるときは,この限りでない。 1 所得がないとき。 2 被保険者又は被保険者の属する世帯の他の世帯員が生活保護法による生活扶助以外の扶助又はらい予防法によるこれに相当する援助を受けるとき。 3 地方税法(略)に定める障害者であつて,年間の所得が13万円以下であるとき。 4 地方税法に定める寡婦であつて,年間の所得が13万円以下であるとき。 5 その他保険料を納付することが著しく困難であると認められるとき。 (2) 労働者災害補償保険法(昭和40年法律第130号による改正後のもの)[保険給付の種類]12条① この法律による保険給付は,次のとおりとする。 1 療養補償給付 2 休業補償給付 3 障害補償給付 4 遺族補償給付 5 葬祭料 6 長期傷病補償給付(以下略)[遺族補償給付]16条遺族補償給付は,遺族補償年金又は遺族補償一時金とする。 [遺族補償年金-受給権者]16条の2① 遺族補償年金を受けることができる遺族は,労働者の配偶者,子,父母,孫,祖父母及び兄弟姉妹であつて,労働者の死亡の当時その収入によつて生計を維持していたものとする。(以下略)[遺族補償一時金]16条の6 遺族補償一時金は,次の場合に支給する。 1 労働者の死亡の当時遺族補償年金を受けることができる遺族がないとき。 (以下略)[保険料の徴収]24条政府は,労働者災害補償保険事業に要する費用に充てるため,保険関係が成立している事業の事業主(略)から保険料を徴収する。 (3) 国民年金法(昭和40年法律第130号による改正後のもの)(障害福祉年金等の支給停止)65条① 障害福祉年金,母子福祉年金及び準母子福祉年金は,受給権者が次の各号のいずれかに を徴収する。 (3) 国民年金法(昭和40年法律第130号による改正後のもの)(障害福祉年金等の支給停止)65条① 障害福祉年金,母子福祉年金及び準母子福祉年金は,受給権者が次の各号のいずれかに該当するときは,その該当する期間,その支給を停止する。 1 公的年金給付(労働者災害補償保険法(略)の規定による年金たる給付を含む。)を受けることができるとき。 2 監獄,労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されているとき。 3 少年院その他これに準ずる施設に収容されているとき。 (以下略)(4) 国民年金法(昭和60年法律第34号による改正後のもの)(給付の種類)15条この法律による給付(略)は,次のとおりとする。 1 老齢基礎年金 2 障害基礎年金 3 遺族基礎年金 4 付加年金,寡婦年金及び死亡一時金(支給要件)30条① 障害基礎年金は,疾病にかかり,又は負傷し,かつ,その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(略)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において次の各号のいずれかに該当した者が,当該初診日から起算して1年6月を経過した日(……以下「障害認定日」という。)において,その傷病により次項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときに,その者に支給する。ただし,当該傷病に係る初診日の前日において,当該初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があり,かつ,当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2に満たないときは,この限りでない。 1 被保険者であること。 2 被保険者であつた者であつて,日本国内に住所を有し,かつ,60歳以上65歳未満であること。 ② 障害等級は,障害の程度に応じて重度のものから1級及び2級とし,各級の障害の状態 保険者であること。 2 被保険者であつた者であつて,日本国内に住所を有し,かつ,60歳以上65歳未満であること。 ② 障害等級は,障害の程度に応じて重度のものから1級及び2級とし,各級の障害の状態は,政令で定める。 30条の4① 疾病にかかり,又は負傷し,その初診日において20歳未満であつた者が,障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達した日において,障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日において,障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときは,その者に障害基礎年金を支給する。 (以下略)(年金額)33条① 障害基礎年金の額は,60万円とする。 ② 障害の程度が障害等級の1級に該当する者に支給する障害基礎年金の額は,前項の規定にかかわらず,同項に定める額の100分の125に相当する額とする。 36条の2① 第30条の4の規定による障害基礎年金は,受給権者が次の各号のいずれかに該当するときは,その該当する期間,その支給を停止する。 1 恩給法(略)に基づく年金たる給付,労働者災害補償保険法(略)の規定による年金たる給付その他の年金たる給付であつて政令で定めるものを受けることができるとき。 2 監獄,労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されているとき。 3 少年院その他これに準ずる施設に収容されているとき。 4 日本国内に住所を有しないとき。 ② (略)③ 第1項に規定する障害基礎年金の額及び同項第1号に規定する給付の額(略)が,いずれも政令で定める額に満たないときは,第1項の規定を適用しない。ただし,これらの額を合算した額が当該政令で定める額を超えるときは,当該障害基礎年金のうちその超える額に相当する部分については,この限りでない。 ④ 第1項に規定する障害基礎年金の額が,前項に規定する政令で定める額以上で した額が当該政令で定める額を超えるときは,当該障害基礎年金のうちその超える額に相当する部分については,この限りでない。 ④ 第1項に規定する障害基礎年金の額が,前項に規定する政令で定める額以上であり,かつ,第1項第1号に規定する給付の額を超えるときは,その超える部分については,同項の規定にかかわらず,当該障害基礎年金の支給を停止しない。 (以下略)36条の3① 第30条の4の規定による障害基礎年金は,受給権者の前年の所得が,(中略)政令で定める額を超えるときは,その年の8月から翌年の7月まで,その支給を停止する。 (以下略)(国庫負担)85条① 国庫は,毎年度,国民年金事業に要する費用(次項に規定する費用を除く。以下同じ。)に充てるため,次に掲げる額を負担する。 1 当該年度における基礎年金(略)の給付に要する費用の総額(次号及び第3号に掲げる額を除く。以下略)……の3分の1に相当する額 2 (略) 3 当該年度における第30条の4の規定による障害基礎年金の給付に要する費用の100分の40に相当する額(以下略)(5) 国民年金法施行令(昭和61年政令第53号によるもの)4条の7 法第30条第2項に規定する障害等級の各級の障害の状態は,別表(注:本判決添付の別表2)に定めるとおりとする。 3 本件の争点本件処分の違法性(違憲性)(1) 国民年金法36条の2第1項1号のうち本件障害基礎年金と遺族年金との併給調整を定めた部分(以下「本件併給調整規定」という。)は,憲法25条に違反するか。 (2) 本件併給調整規定は,憲法14条に違反するか。 4 争点についての当事者の主張(1) 争点(1)(本件併給調整規定の憲法25条適合性)について(原告の主張)ア国民年金法と憲法25条との関係国民年金制度は,憲法25条2項に定める国 するか。 4 争点についての当事者の主張(1) 争点(1)(本件併給調整規定の憲法25条適合性)について(原告の主張)ア国民年金法と憲法25条との関係国民年金制度は,憲法25条2項に定める国の社会保障向上・増進義務を具体化した制度であり,年金給付を行うことにより人々に対して健全な国民生活の維持・向上を保障することを目的とする制度である(国民年金法1条参照)。 そして,憲法25条1項は生存権保障の目的あるいは理念を,2項はその目的,理念の実現に努力すべき国の責務を定めたものとして一体的に解釈すべきであるから,国民年金法は憲法25条1項の生存権を具体化した立法であり,健康で文化的な最低限度の生活の保障を目的とするものである。 イ年金による生活保障の必要性(ア) 障害者の生活実態障害者は,その障害によって就労することができないため,労働による収入を全く得られないか,あるいは著しく制限されざるを得ない。また,障害者は,日常生活においても自立生活が困難であり,介助等により多額の出費を余儀なくされることが多い。 現に,原告は,自閉症及び中度の知能障害のため,家庭内での食事や排泄等の日常生活はできるものの,社会生活は困難である。同人は,現在,名古屋市北区所在の塗装会社で働いているが,最低賃金制の適用が除外されているため,手取り賃金は月7万円程度にすぎない。そのため,同人は,同居の父母の扶養(妹のAの生前は,同女の扶養も含む。)によって生活している。 このような障害者の生活状態に照らすと,障害者は,障害基礎年金と親族の扶養によって初めて人間らしい生活が可能となる場合が多いといわざるを得ない。 (イ) ノーマライゼーションの理念と障害者の権利の国際的保障ノーマライゼーションとは,「障害者の日常生活の様式や条件を社会の主流にある人々の標準や様 活が可能となる場合が多いといわざるを得ない。 (イ) ノーマライゼーションの理念と障害者の権利の国際的保障ノーマライゼーションとは,「障害者の日常生活の様式や条件を社会の主流にある人々の標準や様式に可能な限り近づける」という理念であって,世界における障害者福祉の普遍的理念であり,我が国においても障害者福祉及び社会福祉全般の理念である。 すなわち,国際連合総会において昭和23年(1948年)に採択された世界人権宣言においては,障害の有無にかかわらず,人は皆自由であり,かつ尊厳と権利について平等であると謳われ,さらに疾病,心身障害等による生活不能の場合は,保障を受ける権利を有するとされている。その後,昭和50年(1975年)に採択された「障害者の権利宣言」,昭和57年(1982年)に採択された「障害者に関する世界行動計画」,平成5年(1993年)に採択された「障害者の機会均等化に関する基準規則」などによって,障害者の権利保障とともに,その権利保障の経済的な裏付けとしての所得保障を講ずることが国際連合加盟各国に求められている。 この間,昭和58年(1983年)から平成4年(1992年)までを国連障害者の10年として,障害者の社会生活と社会発展への「完全参加と平等」を目標に行動計画を策定することとなり,引き続いて平成5年(1993年)から平成14年(2002年)までをアジア太平洋障害者の10年として,引き続いた取組みを行うこととされた。 我が国も,国連加盟国として,上記の各宣言,行動計画を実現する責務を負っており,国民年金法を解釈する際,上記各宣言・行動計画を重要な解釈指針とすべきである。 (ウ) 障害者基本法我が国の障害者基本法(平成16年法律第80号による改正前のもの)も,1条において,障害者のための施策は,障害者の自立と社会,経済,文 行動計画を重要な解釈指針とすべきである。 (ウ) 障害者基本法我が国の障害者基本法(平成16年法律第80号による改正前のもの)も,1条において,障害者のための施策は,障害者の自立と社会,経済,文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進することを目的として推進されるべき旨規定し,その経済的裏付けとして,20条において,国及び地方公共団体は,障害者の生活の安定に資するため,年金,手当等の制度に関し,必要な施策を講じなければならないと規定し,障害者の所得保障に関わる施策を義務づけている。そして,24条では,障害者の福祉に関する施策の策定及び実施に当たっては,障害者の父母その他障害者の養護に当たる者がその死後における障害者の生活について懸念することのないよう特に配慮がなされなければならないと規定している。 したがって,国民年金法における障害基礎年金受給権の有無を解釈するに当たっては,前記の国際的保障と障害者基本法の趣旨が最大限尊重されなければならない。 (エ) 生活保護制度の問題点生活保護制度の目的は「一時的に」生活困窮の状態に陥った者に対する最低限度の生活保障を行うことにあるため,①同制度そのものが,要保護状態が長期にわたって継続する障害という事故の特性になじみにくく,②給付を受けるに当たっては補足性の原理に基づく資産調査を経なければならず,そのために,家計や家族関係等のプライバシーの暴露を余儀なくされることとなり,また,それに伴うスティグマ(恥辱感)を生じやすく,③障害者加算制度も生活保護制度の一環である以上,その対象者は生活困窮の状態にある障害者に限られるという問題がある。 このように,生活保護は,障害を持つ人の自立を阻害する制度的宿命を持っており,生活保護の存在を理由に,最低生活保障としての年金給付の性格を否定するのは正当でない る障害者に限られるという問題がある。 このように,生活保護は,障害を持つ人の自立を阻害する制度的宿命を持っており,生活保護の存在を理由に,最低生活保障としての年金給付の性格を否定するのは正当でない。 (オ) 年金による所得保障は憲法25条によって保障されること他方,年金制度上の所得保障制度のみが,他の制度と異なって,①一定の障害水準に該当するものすべてを包摂し得るものであること,②一定の支給要件を満たす者はだれでも,人たるに値する一定水準の生活を継続的かつ確実に営むことができる展望を持ち得るものであること,③給付の内容は,障害があることにより失われた稼得能力や障害があることに伴って生じる特別な出費に対する一定の填補を行うとともに,社会生活上のあらゆる分野への参加の促進を一定程度保障し得るものであることなどの条件を満たす可能性を持っている。 そして,前記のようなノーマライゼーションの理念の実現,障害者の完全参加と平等の実現という国際的な保障の在り方,生活保護制度の問題点を踏まえると,障害基礎年金は,障害のない人との実質的平等を実現するための所得保障の中心となるべきものであり,かつ,障害のない人との実質的平等を実現するための「年金による所得保障」は,憲法25条によって保障されているというべきである。 ウ本件併給調整規定の合理性の欠如本件併給調整規定には,下記に詳論するように,合理性が認められない。 (ア) 保険事故の重複による併給の必要性被告は,障害者が障害を負っていることと,障害者を扶養していた親族が労災事故に遭ったことが重なったからといって,障害者の稼得能力の喪失又は低下の程度がその数に比例して増加したわけではないことは明らかであり,実態的にみても,本件障害基礎年金と遺族年金との併給を認めるべき事情はないと主張する。 しかし,障害 ,障害者の稼得能力の喪失又は低下の程度がその数に比例して増加したわけではないことは明らかであり,実態的にみても,本件障害基礎年金と遺族年金との併給を認めるべき事情はないと主張する。 しかし,障害者は,日常生活を送る上で,障害を有するがゆえに健常者には必要でない様々な支出(例えばタクシー利用による交通費,代筆,付添看護等の費用)を余儀なくされることは,経験則上も明らかである。そうすると,仮に,被告が主張するように,障害と扶養者の死亡により,原告の稼得能力の低下の程度が倍加していないとしても,二つの保険事故の発生により,稼得能力の低下の程度が加重されたことは明白であり,したがって,全額の支給停止という併給調整は許されるものではない。 (イ) 拠出の原則は補完的なものにとどまり重視すべきではないことa 被告は,国民年金制度が拠出制の社会保険制度であることを出発点として,国民年金法30条に基づく20歳後障害に係る障害基礎年金と,同法30条の4第1項に基づく本件障害基礎年金とを峻別し,前者は拠出制年金であって所得保障を目的としない保険給付であり,後者は非拠出制年金であって所得保障のための福祉的措置と位置づけ,本件併給調整規定が合理的である旨主張する。 しかしながら,争点(2)において詳述するように,60年改正によって,20歳後障害に係る障害基礎年金も非拠出制年金に近い実質を有するようになった上,そもそも,現行の国民年金制度は,単純な保険原理に立脚しているのではなく,日本国憲法の定める生存権原理に立脚しており,私保険と異なって拠出と給付とが対価関係に立っているものでもないから,拠出の原則はあくまでも補完的なものとして理解されるべきである。 したがって,同一事由により複数の受給権が生じる場合であって,かつニーズの重複が認められないときには,原則 っているものでもないから,拠出の原則はあくまでも補完的なものとして理解されるべきである。 したがって,同一事由により複数の受給権が生じる場合であって,かつニーズの重複が認められないときには,原則として併給しないこととし,拠出が複数ある時に限り,その拠出履歴を考慮した調整を行うことができるが,複数の事故によりニーズの加重が認められるときは,拠出の有無及び数にかかわらず,ニーズの平均的加重に応じた同一内容の併給率でなければならないというべきである。 b 近時,国民年金法に関する重要な改正が行われた(国民年金法等の一部を改正する法律(平成16年法律第104号))ところ,併給調整に関しては,国民年金法20条1項(併給調整),同附則第9条の2の4(併給調整の特例)の改正により,65歳以降の障害基礎年金と老齢厚生年金の併給が可能となった。20歳前障害者についても,これにより併給可能となり,特別の制限が設けられていない(国民年金法施行令4条の8によれば,同法36条の2第1項1号の併給調整の対象となる年金に老齢基礎年金が含まれていない。)。 これまでは,障害基礎年金と老齢厚生年金の併給は認められておらず,20歳前障害者が厚生年金の被保険者になって保険料を納付した場合,その保険料は事実上「掛け捨て」のような形になっていたが,今般の改正により併給が認められ,この状況が改められた。これは極めて重要な改正であり,国においても,障害のある人の年金による所得保障が必要不可欠であることが認識されたものといえる。そして,20歳前障害の場合,就職しても本件障害基礎年金を継続して受給できるわけであるから,それに対応する拠出はなく,非拠出制を理由に本件併給調整規定の合理性を主張する被告の主張もその前提を欠くこととなったといえる。 なお,国民年金法36条の2(20歳前障 続して受給できるわけであるから,それに対応する拠出はなく,非拠出制を理由に本件併給調整規定の合理性を主張する被告の主張もその前提を欠くこととなったといえる。 なお,国民年金法36条の2(20歳前障害の併給調整)については,「未決勾留者に対して20歳前に支給事由が生じた障害基礎年金の支給を停止する現行制度を改めること」とされ,第2号,第3号の勾留者等について支給停止が緩和されたことも注目すべきである。 (ウ) 労災保険法上の遺族年金給付を併給調整の対象とすべきでないことa 労災保険法上の業務災害に関する保険給付の事業は,無過失損害賠償の理論に基づき,労働基準法によって個別使用者に課せられた災害補償責任を基礎とし,業務災害に対して迅速かつ公正な保護を及ぼすことを趣旨とするものであり,労災保険制度の本質的性格は,業務災害によって損傷・紛失した労働能力(稼得能力)を回復・填補するため,使用者の連帯責任に基づき必要な保険給付を行うものであって,労働者の所得保障のための社会保障制度ではない。 確かに,労災保険法は,昭和35年以降数次の改正によって,その内容は変容してきているが,特別加入制度,通勤災害に対する保険給付,障害補償や遺族補償の年金化などといった社会保障的機能を有するに至った徴表とされる制度は,いずれも労働関係における使用者の責任原理と矛盾するものではない。また,労災保険法に基づく給付のうち国庫負担の割合は0.1パーセント程度にすぎない。 以上によれば,労災保険法に基づく給付の基本的性格は,使用者集団責任に基づくものである。したがって,このような使用者集団責任に基づく保険給付としての性格を本質としている遺族年金と,本件障害基礎年金とが併給されるべきことはむしろ当然であって,本件併給調整規定に合理性がないことは明らかである。 b 家族から 使用者集団責任に基づく保険給付としての性格を本質としている遺族年金と,本件障害基礎年金とが併給されるべきことはむしろ当然であって,本件併給調整規定に合理性がないことは明らかである。 b 家族からの扶養及び障害基礎年金の支給を受けていた障害者にとって,扶養者である家族が労働災害により死亡したために給付を受けることとなる遺族年金は,従前の扶養料に代替されるものにすぎない。 にもかかわらず,扶養者からの扶養が遺族年金になった途端に障害基礎年金の支給が制限されるというのでは全く筋が通らない。障害者の自立の促進,所得保障の観点から,扶養者からの扶養の有無を問うことなく障害基礎年金を支給するのであれば,当然,扶養者が死亡したことによる遺族年金の支給が開始されても,障害基礎年金の支給を停止すべきではない。 本件併給調整規定の非合理性は,この点でも明瞭である。 (エ) 併給しても国庫負担の重複とならないこと被告は,本件障害基礎年金は受給者の保険料ではなく国庫負担と他人の保険料を引き当てにしたものであるから,国の財政事情を考慮して支給制限を行うのが理に適っていると主張する。 しかし,前記のとおり,労災保険法上の給付の基本的性格は使用者集団責任に基づくものであって,その財源も多額の国家財政が投入されている恩給や国民年金制度等とは大きく異なり,大部分が使用者の支払う保険料によって賄われ,その財源に占める国庫負担は微々たるものにすぎない(なお,平成15年度労働保険特別会計労災勘定予算(案)における平成15年度歳入予定額は1兆4159億円であるところ,保険料収入が1兆0435億円であるのに対し,労災保険事業に対する国庫補助見込額は13億0700万円にすぎない。)。 したがって,国家財政の効率的配分という併給調整の制度趣旨との関連で考えた場合,本件障害基礎年金 5億円であるのに対し,労災保険事業に対する国庫補助見込額は13億0700万円にすぎない。)。 したがって,国家財政の効率的配分という併給調整の制度趣旨との関連で考えた場合,本件障害基礎年金を受給していた者が新たに遺族年金の支給を受けるに至ったとしても,それによって国家財政の負担による所得保障の重複という事態はほとんど生じない。 (オ) 立法府の裁量論なお,被告は,本件併給調整規定の憲法25条適合性を論ずるに当たって,最高裁判所昭和57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁(以下「堀木訴訟判決」という。)などを引用し,「著しく合理性を欠き明らかに立法府の裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ない場合を除き,裁判所が審査判断するのに適しない」旨主張する。 しかし,堀木訴訟判決は,障害福祉年金と児童扶養手当との併給調整規定に関するものであって,障害基礎年金と遺族年金との併給調整規定の合憲性が問題となっている本件とは事案を異にする。 エ小括以上のとおり,本件併給調整規定には合理性が認められない。また,障害基礎年金は月額約6万7000円であって,これだけでは最低生活の基準たる生活保護基準にも満たないことや,前記の障害者の生活の実態(雇用,収入,介護等の現在の実情)に照らせば,本件併給調整規定に基づく本件障害基礎年金の支給停止は,必然的に障害者の人間的な生活の維持を著しく困難とする。 したがって,本件併給調整規定は憲法25条に違反するものであって,同規定に基づいて行われた本件処分も,憲法25条によって保障された原告の「年金による所得保障」を侵害し,原告の日常生活・社会生活上の身体的・精神的・経済的負担をさらに増大させるものであるから違憲である。 (被告の主張)ア合憲性の判断基準憲法25条は,いわゆる福祉国家の理念に基づき,すべての国 し,原告の日常生活・社会生活上の身体的・精神的・経済的負担をさらに増大させるものであるから違憲である。 (被告の主張)ア合憲性の判断基準憲法25条は,いわゆる福祉国家の理念に基づき,すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るよう国政を運営すべきこと(1項)並びに社会的立法及び社会的施設の創造拡充に努力すべきこと(2項)を国の責務として宣言したものであるが,同条1項は,国が個々の国民に対して具体的・現実的に上記のような義務を有することを規定したものではなく,同条2項によって国の責務であるとされている社会的立法及び社会的施設の創造拡充により個々の国民の具体的・現実的な生活権が設定充実されてゆくものである。そして,憲法25条にいう「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは,極めて抽象的・相対的な概念であって,その具体的内容は,その時々における文化の発達の程度,経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに,同条の規定の趣旨を現実の立法として具体化するに当たっては,国の財政事情を無視することができず,また,多方面にわたる複雑多様な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするから,同条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は,立法府の広い裁量に委ねられており,それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ないような場合を除き,裁判所が審査判断するに適しない事柄であることは,判例法理となっている(最高裁判所昭和23年9月29日大法廷判決・刑集2巻10号1235頁,堀木訴訟判決等参照)。 してみれば,憲法25条が「年金による所得保障」を保障しているとは到底解することができない。そもそも障害者に対する所得保障をどのように実現していくかは, 巻10号1235頁,堀木訴訟判決等参照)。 してみれば,憲法25条が「年金による所得保障」を保障しているとは到底解することができない。そもそも障害者に対する所得保障をどのように実現していくかは,何も国民年金制度だけで取り扱うべきものではなく,生活保護法を中心とする公的扶助法,身体障害者福祉法や国民健康保険法その他の医療保険法等の各法制度に基づく諸施策の総合によって実現されるものであるところ,上記のとおり,かかる判断は国の財政事情を無視することができず,さらには,多方面にわたる複雑多様な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするから,裁判所が審査判断するに適しない事柄である。したがって,原告の主張は,本件処分の根拠規定である本件併給調整規定が著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ないような場合であることを基礎づけるには足りず,失当である。 なお,原告がその主張の根拠とする世界人権宣言,障害者の権利宣言,障害者に関する世界行動計画などは,いずれも国際連合ないしその機関の考え方を表明したものであって,加盟国に対する法的拘束力を有するものではない。 イ本件併給調整規定の合理性について(ア) 立法の経緯からみた障害基礎年金における併給調整規定の合理性a 旧法における障害者福祉年金制度の概要及び法的性質我が国の国民年金制度は,昭和34年の国民年金法の制定により制度化されたところ,その立案過程において,自己責任の原則を基調とする経済社会の基本的性格や予想される将来の人口趨勢が考慮された結果,国民年金制度の基本的構成としては,社会保険方式による拠出制が採用された。そのため,国民年金制度における老齢年金,障害年金及び遺族年金といった各国民年金の支給を受けるには,国民年金に加入し,かつ,保険料納付済期間など所定の要件を満たす必要が 式による拠出制が採用された。そのため,国民年金制度における老齢年金,障害年金及び遺族年金といった各国民年金の支給を受けるには,国民年金に加入し,かつ,保険料納付済期間など所定の要件を満たす必要があることとされた。 もっとも,身体障害者等の必ずしも十分な所得を得ることが困難な者に対しても年金による保護を及ぼす必要があることも,国民年金制度の導入の要因の一つであった。そこで,本来的には国民年金の支給要件を欠くために年金支給を受けられない者のうち一定の範囲の者について,所得保障の観点から非拠出制(すなわち国庫負担)の福祉年金が設けられた。 すなわち,国民年金の加入年齢は20歳であり,20歳未満の者は国民年金の被保険者になり得ないため,20歳前に生じた傷病等に起因する障害については,本来的には国民年金(障害年金)の支給対象とはなり得ない。しかし,①若年において重度の障害がある場合,通常その障害が回復することは極めて困難であり,したがって稼働能力はほとんど永久的に奪われていると考えられること,他方,②年齢的にみても親の扶養を受ける程度を少なくするためにも所得保障の必要性は高いこと,しかも,③このような事例は恒常的に発生するものであることなどの理由から,非拠出型の福祉年金として障害福祉年金の支給を受け得るものとした(57条1項)。 b 旧法における障害者福祉年金に係る併給調整規定もっとも,福祉年金制度は,保険料の拠出要件を必要としない,全額を国庫負担とする所得保障制度であるため,かかる所得保障の要請をどのような場合にまで及ぼすべきかを検討するに当たっては,他の社会保険制度の運用状況や国民の意識など多方面にわたる複雑多様な諸要素を勘案する必要があることはいうまでもない。そして,国民年金法の立法過程では,福祉年金の財源が国庫に限られていたこと っては,他の社会保険制度の運用状況や国民の意識など多方面にわたる複雑多様な諸要素を勘案する必要があることはいうまでもない。そして,国民年金法の立法過程では,福祉年金の財源が国庫に限られていたことから,所得保障の要請がより切実で,かつ,効果のある者に集中するのが相当であるとの考えにより,①所得が一定水準以上である者については,福祉年金の支給を制限し(65条4項),また,②所得が一定水準以上ではない者であっても,公的年金給付を受けることにより所得保障が図られているといえる者については,障害福祉年金の支給を停止するものとされた(65条1項1号)。 c 昭和60年改正による障害基礎年金制度への移行昭和60年改正によって,従来支給額が低額であるという批判があった障害福祉年金は,全国民で支える基礎年金の考え方を活かして,保険料と国庫とを財源とする障害基礎年金へと移行した。 もっとも,昭和60年改正による障害福祉年金の本件障害基礎年金への移行は,従来の国民年金制度の基本構造(社会保険方式による拠出制)を何ら変更するものではない。つまり,本件障害基礎年金の対象者は,保険事故である障害が発生した時点においては,年齢の関係上,国民年金加入者となりようがなく,保険料を全く拠出していないため,本来的には国民年金の支給を受けられない者であるという構造に変化はなく,こういった者を保険料を納付した者と同一視できないのは当然である。そのため,昭和60年改正前の国民年金法で設けられていた障害福祉年金に関する所得制限,併給調整規定は,いずれも昭和60年改正後も引き継がれた。 d 本件障害基礎年金に併給調整規定を置くことの合理性このように,社会保険方式を採用する我が国の国民年金制度の中では,本件障害基礎年金は,本来的な形である保険給付ではなく,所得保障の観点からす 。 d 本件障害基礎年金に併給調整規定を置くことの合理性このように,社会保険方式を採用する我が国の国民年金制度の中では,本件障害基礎年金は,本来的な形である保険給付ではなく,所得保障の観点からする公的扶助的色彩が強い社会保障推進のための政策的な配慮に基づく特別な措置としての性格を有する。そして,他の公的年金の支給を受けることにより所得保障が図られている者であるならば,本件障害基礎年金を支給する必要性は低く,また,このような場合にまで二重に年金を支給することは,国の負担が重複し,財政基盤の悪化を招きかねない。 このような考慮から,昭和60年改正後の国民年金法は,労災保険法に基づく年金給付を含む公的年金による所得保障が図られている場合には,本件障害基礎年金の支給を停止することとしたものである。 (イ) 労災保険法上の給付は所得保障の機能を有すること障害福祉年金と労災保険法に基づく年金たる給付との本件併給調整規定は,昭和40年法律第130号による改正により追加されたものであるところ,これは労災保険法に基づく年金たる給付が所得保障の機能を有するようになったことから規定されたものであって,合理性を有する。 すなわち,昭和22年発足当初の労災保険制度は,発生した災害(労災)に対して補償を行い,労働者の保護を図ることを本来的な目的とするものの,一時金による打切補償の体系であった。ところが,業務上の傷病による療養と休業が長期に及ぶものについては,一定の期間経過後において,打切補償を支給するのみとすることの是非が議論されるに至り,昭和30年には「けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法」が制定されて長期補償への途が開かれ,昭和35年の労災保険法の一部改正では,上記けい肺等特別保護法等の補償に関する部分を吸収し,かつ,一定の重篤な傷病にかかった者 傷性せき髄障害に関する特別保護法」が制定されて長期補償への途が開かれ,昭和35年の労災保険法の一部改正では,上記けい肺等特別保護法等の補償に関する部分を吸収し,かつ,一定の重篤な傷病にかかった者や一定の重度の身体障害が存する者に対しては,必要な補償を行うための長期給付が行われることとされた。そして,昭和40年の労災保険法の一部改正では,障害補償の年金の範囲の拡大や遺族補償を原則として年金化するなどの法整備がされ,これによって3年を限度とした一時金中心の打切補償の給付体系から,各種の年金による長期補償の給付体系へ移行した。 このように,労災保険の保険給付は,業務災害に対する使用者責任を法理上の前提とし,被災者の稼得能力の損失を回復し,又は補てんすることを目的とする点において,一面では厚生年金保険その他の社会保険の給付と性格を異にするものであるが,上記昭和40年改正によって,保険給付が年金による長期補償の給付体系へ移行し,労災保険法上の年金たる保険給付は,その所得保障的機能において他の社会保険の年金給付と共通性を持つに至った。そこで,福祉年金と労災保険法で定められるに至った年金給付との調整を図る必要が生じたため,旧法65条1項1号が改正され,併給調整の対象に労災保険法に基づく年金給付も含まれることとなったのであって,このような併給調整を行うことは合理的である。 ウ原告の主張に対する反論(ア) 堀木訴訟判決の射程について原告は,堀木訴訟と本件とは事案を異にし,本件は堀木訴訟判決の射程外にあると主張する。 しかし,本件併給調整規定は,憲法25条の趣旨を実現するために設けられた社会保障制度の一つである国民年金制度の中の一規定であるから,具体的にどのような併給調整規定を設けるかの選択決定は,多方面にわたる複雑多様な,しかも高度の専門技術的 の趣旨を実現するために設けられた社会保障制度の一つである国民年金制度の中の一規定であるから,具体的にどのような併給調整規定を設けるかの選択決定は,多方面にわたる複雑多様な,しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とすることは多言を要しない。したがって,本件においても堀木訴訟判決で示された判断枠組みが妥当することはいうまでもなく,このような処理は,社会保障制度の憲法適合性が争われた事案でも広く採用されているところである(最高裁判所昭和57年12月17日第二小法廷判決・訟務月報29巻6号1074頁,最高裁判所昭和57年12月17日第二小法廷判決・訟務月報29巻6号1121頁,札幌地方裁判所平成元年12月17日判決・労民40巻6号743頁,最高裁判所平成元年3月2日第一小法廷判決・訟務月報35巻9号1754頁,最高裁判所平成13年3月13日第三小法廷判決・訟務月報48巻8号1961頁)。 原告の主張は,単に事案の性格を異にするというのみで,いかなる判断枠組みに依拠すべきかが提示されていないから,主張として完結していないといわざるを得ない。 (イ) 本件障害基礎年金の法的性格について原告は,昭和60年改正後の国民年金法においては,20歳後障害に係る障害基礎年金の支給内容と本件障害基礎年金のそれとは異ならず,また,20歳後障害に係る障害基礎年金の拠出要件も緩和されており,加入直後に生じた傷病に基づく障害については,全く保険料を納付することなく障害基礎年金が支給されることになったことから,本件障害基礎年金は,20歳後障害に係る障害基礎年金と同一の性格を有する旨主張する。 しかし,昭和60年改正によっても,従前の障害福祉年金は,その法的性格を変ずることなく,本件障害基礎年金に移行し,それゆえ,旧法で設けられていた障害福祉年金 基礎年金と同一の性格を有する旨主張する。 しかし,昭和60年改正によっても,従前の障害福祉年金は,その法的性格を変ずることなく,本件障害基礎年金に移行し,それゆえ,旧法で設けられていた障害福祉年金に関する所得制限や併給調整規定は現行法にそのまま引き継がれているのであって,原告の主張はかかる立法の経緯を無視するものである。 また,昭和60年改正により20歳後障害に係る障害基礎年金について保険料納付要件が緩和されるに至っているが,被保険者期間中の滞納期間が3分の1を超えないという形で拠出要件は維持されているのであり,かかる要件が撤廃されているわけではない。 加えて,原告が指摘する加入直後に生じた傷病に基づく障害については,確かに,これが初診日の属する月の前々月までに被保険者期間がないような場合には上記拠出要件には妥当しないため,実際の保険料拠出がなくとも障害基礎年金が支給されることがあり得る。しかし,かかる措置が極めて限定的な場合にのみ妥当することや,前述のとおり拠出要件が維持されていることをも併せ考慮すれば,上記措置が極めて例外的なものであり,20歳後障害に係る障害基礎年金制度の本則でないことは明らかである。したがって,原告の主張は,極めて例外的な措置をもって20歳後障害に係る障害基礎年金制度の法的性質を立論するという誤りを犯しており,理由がない。 (ウ) 労災保険法に基づく年金給付の法的性格について原告は,労災保険制度の本質的性格は,業務災害によって損傷・紛失した労働能力(稼得能力)を回復・填補するため使用者の連帯責任に基づき必要な保険給付を行うものであって,労働者の所得保障のための社会保障制度ではないと主張する。 しかし,労災保険法は,度重なる改正を経て,今日では業務災害及び通勤災害についての総合的生活保障制度とでもいうべき制度と を行うものであって,労働者の所得保障のための社会保障制度ではないと主張する。 しかし,労災保険法は,度重なる改正を経て,今日では業務災害及び通勤災害についての総合的生活保障制度とでもいうべき制度となっており,労働基準法上の補償責任保険的性格は次第に希薄化し,労災保険が社会保障化していることは,ほぼ一致した理解となっている。 また,労災保険法所定の遺族年金が,その受給権者を単に被災労働者の配偶者等の親族とするのではなく,労働者の死亡当時にその労働者の収入によって生計を維持していた者であることを要求しているのは(労災保険法16条の2第1項),まさに,遺族年金が遺族の生活保障を目的としていることの現れにほかならない。 したがって,労災保険法の改正に伴って,保険給付が大幅に年金化されたため,労災保険の給付も,その所得補償的な機能において他の社会保険の給付と共通性を持つようになったといえるのであって,原告の主張は理由がない。 (エ) 遺族年金は扶養料としての性質を有する旨の主張について原告は,年金受給者たる障害者の立場から見れば,労災給付たる遺族年金は従前の親族からの扶養料に替わるものにすぎないにもかかわらず,本件障害基礎年金の受給権者が扶養義務者により扶養されている状況下においてはその受給が認められるのに対し,扶養義務者が労働災害により死亡したことを原因として遺族年金が受給できるようになった場合には本件障害基礎年金の支給を停止するというのは明らかな矛盾であると主張する。 しかしながら,原告の上記主張は,以下のとおり,本来比較の対象とならないものを比較するものである。 a 支給停止が問題となる場面本件障害基礎年金の支給停止にも2種類のものがある。一つは,本件併給調整規定のように複数の公的年金の受給調整としての支給停止であって,所得保障が図ら 較するものである。 a 支給停止が問題となる場面本件障害基礎年金の支給停止にも2種類のものがある。一つは,本件併給調整規定のように複数の公的年金の受給調整としての支給停止であって,所得保障が図られている関係にある者を対象とするものである。もう一つは,国民年金法36条の3所定のいわゆる所得制限としての支給停止である。両者は同じ支給停止の制度であるが,それが問題となる場面は異なる。というのも,同条の3所定の所得制限は,拠出と支給との対応関係がないことを前提として,本件障害基礎年金の制度趣旨をどの程度の者に及ぼすべきかが問題となるのに対し,本件併給調整規定は,事故が複数あったからといって,所得能力喪失・減退の程度が比例的に加重するものではなく,それゆえ,公的な所得保障を二重三重に実施するのは適切ではないとの考えを基本として,その調整をどのように図るかが問題となるのである。 このように,同条の3の所得制限は,公的年金による保障を及ぼすかどうかというものであって,その内実は支給要件に近いものといえるのに対し,併給調整を含む本件条項は,公的年金の給付との関係で所得保障が及んでいる者に併給を認めるか否かを問題とするものということができる。 b 原告の主張の分析原告の主張は,時点を原告の親族の死亡に伴う労災保険の遺族年金の受給の前後に分けて,①受給前の状況における本件障害基礎年金の支給と,②受給後の状況における本件障害基礎年金の支給停止という結論の相違をもって,本件条項の不合理性を指摘するものと解される。 しかし,①は所得制限の問題であり,②は併給調整の問題に当たるものであるところ,両者は問題となる場面を異にする以上,そこで考慮されている事情も必ずしも同一ではないから,これらを単純に比較するのは適切ではない。 まず,所得制限については,本件障害 問題に当たるものであるところ,両者は問題となる場面を異にする以上,そこで考慮されている事情も必ずしも同一ではないから,これらを単純に比較するのは適切ではない。 まず,所得制限については,本件障害基礎年金の非拠出制という性格に照らし,一定の所得が確保されている者については,公的な所得保障を及ぼすのは相当でないことから,かかる制約が設けられているところ,その趣旨を徹底すれば,およそ生活を維持するための手段が存在すれば,支給を停止するといった措置も考えられなくはない。しかし,受給が問題となり得る者には未だ公的な所得保障が及んでおらず,さらには,本件障害基礎年金制度においては,その趣旨にかんがみて収入調査を簡素化したため,収入状況を完全に把握することは不可能であることを前提として,扶養義務者の所得を問題とすることは,扶養義務者等の扶養により支給を制限すると障害者の自立促進,所得保障の充実の観点にかんがみてふさわしくないとの政策的な判断から,昭和60年改正により撤廃されたものである。 他方,併給調整は,複数の公的年金が併存する場合に問題となるものであり,支給停止であれ,支給額の減額であれ,いずれにせよ複数あるうちの一つの公的年金の支給は保障されるものであり,本件障害基礎年金に即していえば,本件併給調整規定によって本件障害基礎年金に相当する支給額は保障されることを前提としつつも,同年金が非拠出制であることを考慮して,国庫負担の割合の高い本件障害基礎年金を支給停止するとしたものである。 このように,所得制限と併給調整との間では,他の公的な所得保障が及んでいるかどうかという点で重要な相違があるため,その帰結が異なるのは当然であって,そこに何らの問題性も見いだし難い。 以上の次第で,原告が比較の対象としている二つの場面は,その前提とする事情を異に んでいるかどうかという点で重要な相違があるため,その帰結が異なるのは当然であって,そこに何らの問題性も見いだし難い。 以上の次第で,原告が比較の対象としている二つの場面は,その前提とする事情を異にするから,結論の相違が生じたとしても何ら不合理ではない。 (オ) 国庫負担の重複について原告は,労災保険制度の給付の財源は,大部分が使用者の支払う保険料によって賄われ,国庫負担の割合は微々たるものにすぎないことから,遺族年金と本件障害基礎年金を併給したからといって,国庫による二重の所得保障という事態は生じないと主張する。 しかし,労災保険法32条に基づいて労災保険の財源の一部に国庫が充てられていることは否定できないのであって,本件障害基礎年金と遺族年金との併給を認めることは,国庫の負担が重複する関係に立つことはいうまでもない。 また,本件併給調整規定によって支給停止されるのは,遺族年金ではなく本件障害基礎年金であることに留意する必要がある。すなわち,これは,本件障害基礎年金が非拠出型の年金であり,国庫の負担が大きく,国の財政に与える影響が大きいことに由来するものであって,それゆえ,国の財政事情からの考察がより必要となるのは,本件障害基礎年金に関する財政基盤であって,労災保険の財政基盤ではない。 したがって,原告の上記主張には理由がない。 (2) 争点(2)(本件併給調整規定の憲法14条適合性)について(原告の主張)ア併給調整規定の合憲性判断基準被告は,本件併給調整規定の憲法14条適合性を論ずるに当たって,堀木訴訟判決を引用し,「著しく合理性を欠き明らかに立法府の裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ない場合を除き,裁判所が審査判断するのに適しない」旨主張する。 しかし,前記のとおり,堀木訴訟判決は,障害福祉年金と児童扶養手当との併給調整規定に関す 明らかに立法府の裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ない場合を除き,裁判所が審査判断するのに適しない」旨主張する。 しかし,前記のとおり,堀木訴訟判決は,障害福祉年金と児童扶養手当との併給調整規定に関するものであって,障害基礎年金と遺族年金との併給調整規定の合憲性が問題となっている本件とは事案を異にする。 仮に,併給調整規定を制定するか否かについて立法裁量の余地があるとしても,国家が公金を用いて行うものである以上は,平等原則に反するものであってはならないことはいうまでもないから,これに反する場合には立法裁量にも制約が及ぶというべきである(いわゆる学生障害無年金訴訟に関する東京地方裁判所平成16年3月24日民事第3部判決参照)。 イ本件併給調整規定による差別の存在20歳後障害に係る障害基礎年金受給者については,扶養をしていた親や兄弟等が労災で死亡したことにより遺族年金が支給されることになっても,障害基礎年金の支給が継続されるのに対して,20歳前障害者については,扶養をしていた親や兄弟等が労災で死亡したことにより遺族年金が支給されることとなった場合,本件併給調整規定により,本件障害基礎年金の支給が停止される。 このように,本件併給調整規定は,20歳未満に障害の初診日を迎えた障害者であるという社会的身分により,障害基礎年金を停止するか否かについて明確に差別している。 ウ本件併給調整規定の合理性の欠如(ア) 所得保障の必要性国民年金法上の障害者基礎年金は,障害者に対する所得保障を目的とするところ,所得保障の必要性は,20歳前障害者の方が20歳後障害者に比して相対的に大きい。なぜなら,前者の大部分に重度の障害があり,その多くは障害の回復が極めて困難であり,また,20歳前障害者には精神障害者も含まれているところ,精神障害者に対する社会の偏見はいま 比して相対的に大きい。なぜなら,前者の大部分に重度の障害があり,その多くは障害の回復が極めて困難であり,また,20歳前障害者には精神障害者も含まれているところ,精神障害者に対する社会の偏見はいまだ強く,雇用の場は極めて限られ,経済的自立の道は極めて厳しいからである。 にもかかわらず,本件併給調整規定は,よりによって所得保障の必要性が高い20歳前障害者に対してのみ労災保険給付との併給調整を行うという逆立ち的処理を行っているのであって,それだけで同規定に合理性がないことが推測されるといっても過言ではない。 (イ) 本件障害基礎年金は20歳後障害に係る障害基礎年金と性格が異ならないこと被告は,本件障害基礎年金が昭和60年改正前の障害福祉年金と同様に非拠出制であることから,拠出制の20歳後障害基礎年金と差異を設けることが合理的である旨主張している。 確かに,昭和60年改正前の国民年金法では,障害年金と障害福祉年金とは,その根拠,給付の支給要件及び内容において大きく異なり,障害福祉年金は年金給付とは異なる特別措置であり,両者がその性質を異にすると考える余地があった。 しかしながら,昭和60年改正後の国民年金法においては,障害者に対する給付は,20歳後の初診日であろうと20歳前の初診日であろうと障害基礎年金と同一の名称で規定され,いずれも国民年金法15条に基本的な根拠規定がある。また,障害等級が同一の場合,両者の年金給付額は全く同一であり,子の加算措置も行われ,20歳前障害者についても扶養義務者の所得制限が撤廃されるなど,障害福祉年金に対して課せられていた支給制限は大きく取り払われており,本件障害基礎年金の支給内容は,20歳後障害に係る障害基礎年金と実質的にみても変わらない。 また,国民年金制度は,単なる保険制度ではなく,給付・反対給付均等 ていた支給制限は大きく取り払われており,本件障害基礎年金の支給内容は,20歳後障害に係る障害基礎年金と実質的にみても変わらない。 また,国民年金制度は,単なる保険制度ではなく,給付・反対給付均等の原則,収支相当の原則などの保険原理を大幅に修正し,国民の生存権を保障することを目的として,社会連帯の精神に立ち,すべての国民にあまねく年金の利益を及ぼすという国民皆年金を実現することを根本的な趣旨とするものである。そして,当初の国民年金法30条は,障害年金の拠出要件について,同給付が拠出制年金と規定するに足りる厳しい拠出要件を定めていたものの,その後の改正で順次緩和され,昭和60年改正で,被保険者期間要件が撤廃され,被保険者期間中の保険料滞納期間が3分の1を超えなければよいとされた。これにより,現行の国民年金法では,加入直後に生じた傷病に基づく障害については,全く保険料を納付することなく,障害基礎年金が支給されることにもなった。こうして,障害基礎年金は,その意味では,現在では非拠出制年金に近い実質を有するに至ったといっても過言ではない。 すなわち,上記のような実質を踏まえるなら,20歳後障害に係る障害基礎年金も,本件障害基礎年金と同様,単なる保険給付ではなく障害者の所得保障を目的とした給付であり,両者の性格は基本的に同一であるというべきである。 (ウ) 本件併給調整規定に合理性がないことは,争点(1)において述べたとおりであるが,平等原則との関係では,さらに①本件併給調整規定は特定の種類の障害者に対する差別的取扱いを内包すること,②初診日の認定判断が困難であることを指摘することができる。 a 本件併給調整規定が特定の種類の障害者に対する差別的取扱いを内包すること特定の種類の障害者(知的障害,自閉症の障害者等)は,その障害の診断基準などの 断が困難であることを指摘することができる。 a 本件併給調整規定が特定の種類の障害者に対する差別的取扱いを内包すること特定の種類の障害者(知的障害,自閉症の障害者等)は,その障害の診断基準などのため,生来の障害や乳幼児期の突発的な要因等に起因するものに限られている。そのため,これらの種類の障害者のほぼすべてが初診日を20歳前に迎えることとなり,本件併給調整規定の適用対象となる。 このように,本件併給調整規定は,特定の種類の障害がある障害者に対する差別的取扱いをもたらすものであり,この点でも本件併給調整規定は憲法14条に違反する。 b 初診日の認定判断が困難であること本件併給調整規定の適用の有無は,初診日が20歳の前か後かによって左右されるところ,精神障害者に対する「初診日」の認定判断にはあいまいさと困難さが伴うため,本件併給調整規定に基づく支給停止という不利益処分を行うための基準が不明確である。 すなわち,国民年金法はいわゆる初診日主義を採用しているところ,「初診日」とは,障害の原因となった傷病について,初めて医師又は歯科医師の診察を受けた日をいい,同一傷病であっても,旧症状が社会的に治癒したと認められた場合には,再発後の診療日をいうとされている。 しかるところ,精神障害の中には,うつ病などのように極めて多様な,非特異的な症状を呈するものもあり,ある診察日が当該精神障害の初診日に当たるのか,それとも他の疾患に付随した愁訴にすぎないなどの理由から初診日に当たらないのかの判断は,身体障害の場合に比して著しく困難を伴う。また,発病後,一定期間,症状が緩解した後,再び症状が増悪した場合,旧症状が治癒した後に再発したのか,疾病の継続の中での症状の推移にすぎないとみるべきなのかを客観的に判断することも容易ではない。 以上のとおり,精神障害につ 状が緩解した後,再び症状が増悪した場合,旧症状が治癒した後に再発したのか,疾病の継続の中での症状の推移にすぎないとみるべきなのかを客観的に判断することも容易ではない。 以上のとおり,精神障害について初診日の認定には,あいまいさ,困難さを伴うことから,本件併給調整規定に基づく支給停止という不利益処分を行う基準もあいまいであって,この点からも本件併給調整規定は不合理なものであるといわざるを得ない。 (被告の主張)ア併給調整規定の合憲性判断基準憲法14条1項は,絶対的な法の下の平等を保障したものではなく,合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって,各人に存する経済的,社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは,その区別が合理性を有する限り,何ら上記規定に違反するものではないと解される。 ところで,本件併給調整規定は,憲法25条の規定の趣旨を実現するための社会保障制度の一つである国民年金制度の中の一規定であるから,争点(1)で述べたとおり,具体的にどのような併給調整規定を設けるか否かの選択決定は,多方面にわたる複雑多様な,しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする。すなわち,憲法25条の規定の趣旨にこたえて,併給調整につき具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は,立法府の広い裁量に委ねられているのであるから,それが著しく合理性を欠き明らかに立法府の裁量の逸脱,濫用と見ざるを得ないような場合を除き,裁判所が審査判断するのに適しない事柄といえる(堀木訴訟判決)。 そうであれば,このように立法府の政策的,技術的裁量に基づく判断に委ねられている分野において,憲法14条1項の合憲性に関する司法審査を行う場合においても,かかる立法府の裁量を尊重すべきであることは,憲法25条 ば,このように立法府の政策的,技術的裁量に基づく判断に委ねられている分野において,憲法14条1項の合憲性に関する司法審査を行う場合においても,かかる立法府の裁量を尊重すべきであることは,憲法25条適合性を検討する際と異ならず,それゆえ,当該立法の内容が著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ないような場合でない限り,憲法14条違反とならないと解するのが相当である(堀木訴訟判決,最高裁判所昭和57年12月17日第二小法廷判決・裁判集民事137号601頁参照)。 イ本件併給調整規定の合理性本件併給調整規定の立法過程及び立法趣旨並びにその合理性については,争点(1)において述べたとおりであり,同規定には合理性があり,憲法14条違反となるものではない。 ウ原告の主張に対する反論(ア) 初診日の時期による所得保障の必要性の比較原告は,20歳前障害者は,生活条件が極めて厳しく,能力は全面的に喪失又は制限されており,所得保障の必要性が大きいから,所得保障の要請が切実で効果のある者に集中すべきものであれば,20歳前障害を受けた障害者こそ,その必要性が大きい旨主張する。 しかしながら,障害による生活条件の厳しさや能力の喪失,制限は,20歳前障害者の方が20歳後障害者より大きいとは直ちには断定できないと思料され,原告の主張はそもそも根拠がない。 また,被告の「所得保障の要請が切実で効果のある者に集中すべき」との論は,あくまで,国民年金制度が社会保険方式を採用し,その本則は拠出型の年金制度であることを踏まえた上で,所得保障の観点からする公的扶助的色彩の強い社会保障推進のための政策的な配慮に基づく本件障害基礎年金をどのような者に支給すべきかという観点からのものであり,単に「所得保障の必要性」という観点からのものではない。したがって,原告の 的色彩の強い社会保障推進のための政策的な配慮に基づく本件障害基礎年金をどのような者に支給すべきかという観点からのものであり,単に「所得保障の必要性」という観点からのものではない。したがって,原告の主張は,被告の主張を正解しないものである。 なお,障害者に対する所得保障をどのように実現するかは,何も国民年金制度だけで取り扱うべきものではなく,生活保護法を中心とする公的扶助法,身体障害者福祉法や国民健康保険法その他の医療保険法等の各法制度に基づく諸施策の総合によって実現されるものであることは前記のとおりである。 (イ) 精神遅滞,自閉症障害に対する差別的取扱い原告は,精神遅滞又は自閉症を負った障害者は,ほとんどが本件併給調整規定により本件障害基礎年金の支給を停止される運命にあり,本件併給調整規定は,特定の障害がある障害者に対する差別的取扱いをもたらすから,本件併給調整規定には合理性がないとも主張する。 原告の上記主張は,精神的遅滞や自閉症障害を負った障害者とそれ以外の障害者との取扱いに差異を設けるべきことをいうものであるが,かかる差異を設けること自体が,いわゆる「逆差別」を生む懸念も指摘できる。 第3 当裁判所の判断 1 争点に対する判断枠組みについて(1) 法令の合憲性審査の判断基準ア憲法25条は,国権の作用について,一定の目的を設定しその実現のための積極的な発動を期待するという性質を有する規定である。しかも,被告の主張するとおり,この規定にいう「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは,極めて抽象的・相対的な概念であって,その具体的内容は,その時々における文化の発達の程度,経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに,この規定を現実の立法として具体化するに当たっては,国の財政 その時々における文化の発達の程度,経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに,この規定を現実の立法として具体化するに当たっては,国の財政事情を無視することができず,また多方面にわたる複雑多様な,しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とすることは否定できない。したがって,憲法25条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は,立法府の広い裁量に委ねられており,それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ないような場合を除き,裁判所が審査判断するのに適しない事柄であると解するのが相当である(堀木訴訟判決,障害福祉年金の国籍条項及び国民年金制度発足後に帰化した者に対して同年金を支給しないことが憲法25条に違反するかが争われた最高裁判所平成元年3月2日第一小法廷判決・集民156号271頁参照)。 イまた,憲法14条は,絶対的な法の下の平等の実現を保障したものではなく,合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって,各人に存する経済的,社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは,その区別が合理性を有する限り,何ら憲法14条1項の規定に違反しないと解される。 そして,本件は,憲法25条の趣旨を実現するために設けられた社会保障制度の一つである国民年金法と労災保険法に基づく各受給権の併給調整規定が問題となっているから,これらに基づく具体的な取扱いが差別に当たるか,差別に当たるとしても合理的理由がないかを判断するに当たっては,上記アで述べたと同様,多方面にわたる複雑多様な,しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであり,したがって,憲法14条の合憲性に関する ないかを判断するに当たっては,上記アで述べたと同様,多方面にわたる複雑多様な,しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであり,したがって,憲法14条の合憲性に関する司法審査においても,事項の性格を反映した立法府の広い裁量権を前提として,それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ないような場合を除き,裁判所が審査判断するのに適しない事柄であると解される(恩給法に基づく増加非公死扶助料と老齢福祉年金の併給調整が憲法14条に違反するかが争われた岡田訴訟に関する最高裁判所昭和57年12月17日第二小法廷判決・集民137号601頁,障害福祉年金と老齢福祉年金の併給調整が憲法14条に違反するかが争われた森井訴訟に関する最高裁判所昭和57年12月17日第二小法廷判決・集民137号635頁参照)。 (2) 堀木訴訟判決の射程この点について,原告は,本件は堀木訴訟とは事案を異にする旨主張するところ,確かに,堀木訴訟は,昭和48年法律第93号による改正前の児童扶養手当法上の児童扶養手当と障害福祉年金との併給調整規定の合憲性が問題となった事案であり,本件とは併給調整の対象とされた受給権の種類が異なっている。 しかしながら,憲法25条を具体化する過程で種々の文化的,経済的,社会的条件を反映させる必要があり,それ故に,立法を担当する立法府が高度の専門技術的,政策的判断が求められることについては,堀木訴訟においても本件においても共通である。現に,社会保障関係の立法の憲法25条等の適合性が問題となった事案について,堀木訴訟判決の後の最高裁判所の裁判例の多くが堀木訴訟判決を引用しており,その意味において,堀木訴訟判決で示された憲法25条等の適合性に関する判断基準は,既に判例理論として確立しているというべきである。 訟判決の後の最高裁判所の裁判例の多くが堀木訴訟判決を引用しており,その意味において,堀木訴訟判決で示された憲法25条等の適合性に関する判断基準は,既に判例理論として確立しているというべきである。 したがって,本件に堀木訴訟判決で示された判断枠組みを適用すべきでない旨の原告の上記主張は,採用できない。 2 争点(1)(本件併給調整規定の憲法25条適合性)について(1) 憲法25条と年金による生活保障ア原告は,本件併給調整規定の違憲性主張の前提として,憲法25条は,障害者について「年金による所得保障」を保障している旨主張する。 確かに,障害者は,その障害ゆえに就労できない者が極めて多く,また,仮に就労できたとしても,健常者と同水準の収入を得ることができる者は極めて少数にとどまっている現状がある一方,軽度重度を問わず,介護や日常家事援助の必要,タクシーでの移動,補装具・自助具の使用等,障害ゆえの各種支出が増大する傾向があることは否定できず,このような障害者に対して,何らかの所得保障措置が講じられるべきことは,憲法25条の要請であるとも考えられる。 しかしながら,憲法25条は,障害者に対する所得保障を年金方式として講ずることを規定しているわけではなく,所得保障の方策としては,生活保護を含めた様々なものがあり得る(生活保護法に基づく保護には,介護扶助も含まれており,同法が障害者に対する所得保障について一定の配慮をしていることは明らかである。)から,同条の文言から直ちに障害者に対して「年金による所得保障」が保障されていると解することはできない。ちなみに,平成16年法律第80号による改正前の障害者基本法20条の規定も,障害者に対して抽象的な所得保障を求めているにとどまり,年金を支給すべき旨を具体的に定めた規定とは解されない。また,世界人権宣言, ,平成16年法律第80号による改正前の障害者基本法20条の規定も,障害者に対して抽象的な所得保障を求めているにとどまり,年金を支給すべき旨を具体的に定めた規定とは解されない。また,世界人権宣言,「障害者の権利宣言」,「障害者の機会均等化に関する基準規則」等の趣旨も同様である上,そもそも,これらは国内において直接法的効力を有するものではないので,原告の上記主張を根拠づけるものとはいえない。 イこの点について,原告は,①生活保護制度そのものが,要保護状態が長期にわたって継続する障害という事故の特性になじみにくく,②給付を受けるに当たっては補足性の原理に基づく資産調査を経なければならず,そのために,家計や家族関係等のプライバシーの暴露を余儀なくされることとなり,また,それに伴うスティグマを生じやすく,③障害者加算制度も生活保護制度の一環である以上,その対象者は生活困窮の状態にある障害者に限られるなどの問題点を指摘する。 なるほど,生活保護法は,保護の実施機関が,必要があれば要保護者の資産状況,健康状態その他の事項を調査し(28条),常に被保護者の生活状態を調査し,保護の変更を必要とするときはその旨の決定を行い(25条2項),被保護者に対して,生活の維持,向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる(27条1項)旨規定しており,保護を受けようとする者が一定の受忍を強いられることは否定できず,また,その運用いかんによっては,障害者の福祉の増進(障害者基本法4条)の観点からの問題が生じ得ないものではないとも考えられる。 しかしながら,前記のとおり,限りある財源に基づいて制度を設計し,かつ,運用するという制約の下においては,生活保護を与えるべき要件該当性について厳格な審査を実施することはやむを得ないというべきであり,また,保護 ,前記のとおり,限りある財源に基づいて制度を設計し,かつ,運用するという制約の下においては,生活保護を与えるべき要件該当性について厳格な審査を実施することはやむを得ないというべきであり,また,保護の水準をそれ程高くすることができないことも一概に不合理であるとはいえず,結局,現行の生活保護制度が憲法25条の要請に沿ったものとして機能していることは否定できないから,憲法25条が「年金による所得保障」を保障するものではないとの前記判断を覆すことはできない。 (2) 障害者に関する年金制度の変遷国民年金法,労災保険法については,制定当初から今日に至るまでの間に幾多の改正が行われ,その制度は大きく変貌を遂げているが,第2の2の関係法令(抜粋)を基に,本件の争点を判断するのに必要な限度でその概要を示せば,以下のとおりである(乙1ないし12)。 ア制定当時の国民年金法(昭和34年法律第141号)の概要(ア) 障害年金及び障害福祉年金制度a 創設された国民年金制度の概要国民年金制度は,日本国憲法第25条第2項に規定する理念に基き,老齢,廃疾又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し,もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とするもの(1条)として設けられ,被保険者については,日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の日本国民とされ(7条1項),被用者年金各法の被保険者又は組合員などの例外を除き(7条2項),国民年金の被保険者資格を当然に取得するものとされた(ただし,経過措置による適用除外がある。)。 被保険者は,原則として保険料の納付義務を負担するものとされた(88条1項)が,例外的に,障害年金又は母子福祉年金の受給権者,生活保護法による生活扶助を受けているときなどは保険料納付義務を当然に免 被保険者は,原則として保険料の納付義務を負担するものとされた(88条1項)が,例外的に,障害年金又は母子福祉年金の受給権者,生活保護法による生活扶助を受けているときなどは保険料納付義務を当然に免除され(89条),また,所得がないとき,地方税法上の障害者や寡婦であって年間所得が13万円以下であるとき,その他保険料の納付が著しく困難であるときなどは,申請に基づいて保険料の納付義務を免除されることができた(90条)。 国民年金法に基づく給付は,老齢年金,障害年金,母子年金,遺児年金及び寡婦年金とされた(15条)が,これらを受給するためには,一定の保険料の拠出を要件としていた(26条,30条,37条,42条,49条)。 b 障害年金の概要(a) 障害年金は,疾病にかかり,又は負傷し,かつ,下記のいずれかの要件に該当する者が,その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病の障害認定日において,その傷病により別表(視力,聴力,上下肢・体幹の機能上の障害及びこれと同程度の身体障害などの外部障害であって,程度によって1級と2級に分かれる。)に定める程度の障害の状態にあるときに,その者に支給するものとされた(30条。なお,その後の法改正により,順次,内的障害や精神障害についても支給対象とされるようになった。)。 「1 当該傷病についてはじめて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において被保険者であつた者については,初診日の前日において次のいずれかに該当したこと。 イ初診日の属する月の前月までの被保険者期間に係る保険料納付済期間が15年以上であるか,又はその保険料納付済期間が5年以上であり,かつ,その被保険者期間のうち保険料免除期間を除いたものの3分の2以上を占めること。 ロ初診日の属する月前における直近の基準月(略)の前月まで引 であるか,又はその保険料納付済期間が5年以上であり,かつ,その被保険者期間のうち保険料免除期間を除いたものの3分の2以上を占めること。 ロ初診日の属する月前における直近の基準月(略)の前月まで引続き3年間被保険者であり,かつ,その期間のすべてが保険料納付済期間又は1年6箇月をこえない保険料免除期間で満たされていること。 ハ初診日の属する月の前月までの被保険者期間につき,第26条各号(注:老齢年金の支給要件)のいずれかに該当していること。 2 初診日において被保険者でなかった者については,初診日において65歳未満であり,かつ,初診日の前日において第26条各号のいずれかに該当したこと。」(b) 障害年金の額は,初診日の属する月の前月までの被保険者期間に係る初診日の前日における保険料納付済期間に応じて定められており,保険料納付済期間が26年未満の者は2万4000円,26年以上27年未満の者は2万5200円と,保険料納付期間が1年増すごとに1200円あて増額され,40年の者は4万2000円とされた(33条1項)。 なお,障害の程度が別表に定める1級に該当する者については,前述の金額に一律6000円が加算された(同条2項)。 併給の調整については,障害年金の受給者についてさらに障害年金を支給すべき事由が生じたときは,前後の廃疾を併合した廃疾の程度による障害年金を支給するとされる(31条1項)とともに,「障害年金は,その受給権者が当該傷病について,労働基準法(略)又は国家公務員災害補償法(略)の規定による障害補償,労働者災害補償保険法(略)の規定による障害補償費その他政令で定める法令によるこれらに相当する給付を受けることができるときは,6年間,その支給を停止する。」(36条)とされたが,他の公的年金や社会保険給付との併給調整規定は設けられ よる障害補償費その他政令で定める法令によるこれらに相当する給付を受けることができるときは,6年間,その支給を停止する。」(36条)とされたが,他の公的年金や社会保険給付との併給調整規定は設けられなかった。 なお,国庫は,障害年金を含む国民年金事業に関する費用(ただし,福祉年金の給付に要する費用,事務の執行に要する費用を除く。)のうち2分の1を負担することとされた(85条1項)。 c 障害福祉年金の概要(a) これに対して,障害福祉年金は,障害年金の特例に位置づけられた(同法第3章第5節表題参照)。すなわち,障害福祉年金は,疾病にかかり又は負傷し,かつ,下記のいずれかの要件に該当する者が,障害認定日にその傷病により別表に定める1級に該当する障害の状態にあるときは,その者が日本国民でないとき又は日本国内に住所を有しないときを除き,その者に障害福祉年金を支給するものとされた(56条1項。なお,その後の法改正により,障害福祉年金の支給対象は2級を含むように拡大された。)。 「1 初診日において被保険者であつた者については,初診日の前日において次のいずれにも該当しなかつたこと。 イ初診日の属する月の前月までの被保険者期間のうち保険料免除期間を除いたものが5年以上である場合においては,その期間のうちの保険料納付済期間が,その期間の3分の2に満たないこと。 ロ初診日の属する月前における直近の基準月の前月まで引き続く3年間(その者が20歳に達した後の期間に限る。)が,保険料納付済期間又は保険料免除期間で満たされていないこと。 2 初診日において被保険者でなかつた者については,初診日において65歳未満であり,かつ,初診日の前日において,第53条第1項に規定する老齢福祉年金の支給要件(注:保険料免除期間又は保険料免除期間と保険料納付済期間とを合算 でなかつた者については,初診日において65歳未満であり,かつ,初診日の前日において,第53条第1項に規定する老齢福祉年金の支給要件(注:保険料免除期間又は保険料免除期間と保険料納付済期間とを合算した期間が30年を超えること)に該当したこと。」また,初診日において20歳未満であった者が,障害認定後に20歳に達したときは20歳に達した日において,障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日において,別表に定める1級に該当する障害の状態にあるときにも,その者に障害福祉年金を支給するものとされた(57条)。 (b) 障害福祉年金の額は,一律1万8000円とされた(58条)。 併給調整については,障害福祉年金等の福祉年金は,受給権者が公的年金各法に基づく年金たる給付を受けることができるときは,その該当する期間,その支給を停止される(ただし,福祉年金の額がその公的年金の額を超えるときは,その超える部分の支給は停止しない。)こととされる(65条1項1号,3項。もっとも,当時,労災保険法は年金形式の給付を採用していなかったことから,同法に基づく給付は併給調整の対象とされることがなかった。)とともに,受給権者が前年において原則として13万円を超える所得を有したときには,その年の5月から翌年の4月まで支給を停止された(65条4項)ほか,受給権者の配偶者ないし扶養義務者で当該受給権者の生計を維持する者の所得が一定水準以上であれば,支給を停止された(66条4項,5項)。 なお,障害福祉年金の財源は,すべて国庫により賄われることとされた(85条2項)。 (イ) 拠出制の基本原則を巡る議論ところで,国民年金法の制定に当たって,国民年金制度の基本的な建前を拠出制とするか非拠出制とするか,あるいはこれらを併用したものとするかについて議論が重ねられ 。 (イ) 拠出制の基本原則を巡る議論ところで,国民年金法の制定に当たって,国民年金制度の基本的な建前を拠出制とするか非拠出制とするか,あるいはこれらを併用したものとするかについて議論が重ねられた。その際に,拠出制及び非拠出制には,それぞれ長所と短所を持っていることから,我が国の社会事情なり経済事情からみて,いずれの方式がより適切であるかという観点から検討がされた。 その結果,①老齢,身体障害や夫の死亡という事態に対しても,あらかじめ所得能力のあるうちに自らの力でできるだけの備えをすることは,生活態度として当然であり,社会経済生活はこのような自己責任の原則を基盤に成り立っているから,本格的な国民年金制度を発展させようとするならば,拠出制を基本とすることは社会の側からみても有意義であると考えられたこと,②非拠出制を建前とすると,その財源を国の一般財源に求めざるを得ない関係上,財政支出の急激な膨張が避けられず,特に我が国のように老齢人口が将来急激に増加していくことが予想される状況下においては,将来の国民に過重な負担を負わせる結果ともなり,それを避けようとすれば,年金額などの制度の内容は,社会保障制度の名に値しないほどに不十分なものとならざるを得ないのに対し,拠出制を建前とし,積立式を採るとすれば,それによって生ずる利子によって制度の内容充実が期待でき,また積立金の投資による国民所得の増加ひいては受給者の生活の安定も期待できること,③年金制度そのものに安定性と確実性が備わっていることが最も必要とされるところ,非拠出制を建前とすると,その支出を賄うための収入がその時々の財政及び経済の諸事情の影響を受けやすく,場合によっては突発的な財政需要激増のために年金額をにわかに引き下げなければならないようなことが起きかねないことなどの理由から,国民年 ための収入がその時々の財政及び経済の諸事情の影響を受けやすく,場合によっては突発的な財政需要激増のために年金額をにわかに引き下げなければならないようなことが起きかねないことなどの理由から,国民年金制度は拠出制を基本として制度設計されることとなった。 他方,現在の老齢者,身体障害者及び母子にも年金的保護を及ぼす必要性があること,貧困のため保険料を拠出することのできなかった者に対しても対応する必要があること,公的扶助の制度は,全体として収入水準が最低生活水準にくぎ付けされるという欠陥を持っていることなどの理由から,非拠出制を経過的及び補完的に存置することとされた。 (ウ) 障害福祉年金と公的年金給付との併給調整上記(ア)c(b)のとおり,障害福祉年金の受給権者が他の公的年金制度による年金たる給付を受けることができるときは,その期間中,原則としてその支給を停止する(ただし,福祉年金の額が公的年金制度による年金たる給付の額を超えるときは,その超える部分については支給を停止しない。)こととされた。 このような措置が採られた理由は,国民年金制度は,本来他の公的年金制度によって保障されない者に対する所得保障制度であるから,現実に他の公的年金制度によって守られている者に障害福祉年金を支給することはその趣旨に反するし,また実際上の必要性にも乏しいということと,一般に他の公的年金制度においても国は相当の負担をしており,これに併せて障害福祉年金を支給するとすれば,国の負担が重複することになるなどの点にあった。 イ昭和40年の労災保険法・国民年金法改正に伴う併給調整労災保険法の制定当初は,療養3年経過後は一時金たる打切補償費を支給して補償を打ち切る給付体系を採っていた。しかし,これでは長期傷病者の大半を占めるけい肺労働者の保護を全うすることができないこ 調整労災保険法の制定当初は,療養3年経過後は一時金たる打切補償費を支給して補償を打ち切る給付体系を採っていた。しかし,これでは長期傷病者の大半を占めるけい肺労働者の保護を全うすることができないことが明らかであったため,昭和30年7月に制定されたけい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法や,昭和33年に制定されたけい肺及び外傷性せき髄障害の療養等に関する臨時措置法により,補償期間が延長される措置が講じられた。その後,労災保険法は,昭和35年に一部改正され,けい肺及び外傷性せき髄障害に限らず,潜水病,放射線障害,頭部外傷等類似の重篤な業務上の傷病にかかった者及び両手,両足の切断,両眼失明等重度の身体障害を存する者に対して必要な補償を行うため,これらの者に対する従来の一時金による打切補償費又は損害補償費に代えて長期給付を行うこととされた。 これらの改正を踏まえて制定された昭和40年法律第130号によって,障害補償の年金の範囲が第1級から第7級までに拡大され,遺族補償が原則として年金化された(同法16条,16条の2,16条の6)。 それに伴い,国民年金法も改正され,労災保険法の規定による年金たる給付を受けることができるときには,他の公的年金給付を受けるときと同様に,福祉年金との併給調整がされることとなった(65条1項1号)。 ウ昭和48年の労災保険法改正による通勤災害保護制度の導入交通事情等の変化に伴い,労働者が通勤の途中において災害を被ることが多くなってきたため,通勤災害についても,より手厚い保護を望む声が強くなってきた。そこで,昭和48年法律第85号により労災保険法が改正され,通勤災害を被った労働者に対し,業務災害を被った労働者と同等の保護を与えることとされた(同法7条1項2号,2項)。すなわち,労働者が通勤災害により死亡した場合, 第85号により労災保険法が改正され,通勤災害を被った労働者に対し,業務災害を被った労働者と同等の保護を与えることとされた(同法7条1項2号,2項)。すなわち,労働者が通勤災害により死亡した場合,当該労働者の遺族に対し,遺族年金又は遺族一時金が支給されることとなった(同法21条4号,22条の4)。 なお,上記の改正の際,国民年金法は特に改正されていないが,「労災保険法の規定による年金たる給付」には通勤災害による遺族年金も含まれるため,これと障害福祉年金との間でも併給調整がされることとなった。 エ昭和60年の国民年金法改正昭和60年法律第34号による改正により,それまでの障害年金及び障害福祉年金は,障害基礎年金に一本化され,障害年金に比べてかなり低額であった障害基礎年金の支給額が引き上げられ,同一等級の障害の間では同一の支給額とされた。また,本人以外の所得制限条項が削除された。 他方,従来の障害福祉年金に相当する初診日が20歳前の者に対する本件障害基礎年金については,改正前と同様に,公的年金給付や労災保険法の規定による年金たる給付との間の併給調整規定が残置された。その理由として,①比較的高率の国庫負担が行われること,②本人が保険料を納付していないことなどが挙げられている。 なお,国庫は,基礎年金の給付に要する費用の総額等の3分の1に相当する額を負担する(85条1項1号)が,20歳前障害に係る障害基礎年金(30条の4)については,その給付に要する費用の100分の40を負担することとされた(85条1項3号)。 (3) 本件併給調整規定の合理性の有無以上を前提に,憲法25条との関連で,本件併給調整規定の合理性の有無について判断する。 ア本件障害基礎年金と他の公的年金給付との併給調整規定を置くことの合理性の有無(ア) 制定当初の国民年金法に 以上を前提に,憲法25条との関連で,本件併給調整規定の合理性の有無について判断する。 ア本件障害基礎年金と他の公的年金給付との併給調整規定を置くことの合理性の有無(ア) 制定当初の国民年金法における障害福祉年金と併給調整我が国の国民年金制度が,拠出制を基本としつつ,経過的措置あるいは補完的なものとして非拠出制を存置するとされたのは,上記(2)ア(イ)のような検討を経た結果であって,その基本的制度設計は何ら合理性を欠くものとは認められない。 このような国民年金制度の基本構造に照らせば,昭和60年改正前の障害福祉年金は,保険料という制度維持に欠かせない拠出を伴わず,国庫に財源の全部を依存するものであったから,制度全体の中では補完的なものとして位置づけられ,極めて社会福祉的色彩の濃い制度であったといわざるを得ない(障害福祉年金の給付額が,障害年金のそれと比較してかなり低額であったことは,その裏返しと考えられる。)。 そうだとすると,国庫に財源のすべてを求める非拠出制年金については,①所得保障の要請がより切実で,かつ,効果のある者に集中するのが相当であること,②およそ公的年金給付には何らかの形で国庫負担が伴うのが通常であり,国家財政上,国庫負担の重複を避けるという配慮はやむを得ないことなどを考慮し,他の公的年金給付との併給調整を行うこと自体が著しく合理性を欠くものとは認められない。 (イ) 昭和60年改正による障害基礎年金の位置づけところで,国民年金法の昭和60年改正により,従来の障害福祉年金と障害年金とが障害基礎年金に一本化され,同一の支給額とされたほか,本人以外の所得制限条項も削除されるなど,その内容が,憲法25条や障害者基本法の趣旨,精神を一層増進せしめるものであったことは疑いを容れない(なお,それ以前の法改正により,制定当初は支 されたほか,本人以外の所得制限条項も削除されるなど,その内容が,憲法25条や障害者基本法の趣旨,精神を一層増進せしめるものであったことは疑いを容れない(なお,それ以前の法改正により,制定当初は支給事由とされなかった内部障害や精神障害も支給の対象となり得るようになった。)。 しかしながら,拠出制を原則とする国民年金制度の下において,20歳前障害に係る本件障害基礎年金が非拠出制の年金であることは,昭和60年改正によっても何ら変更されておらず(同改正によって,その財源が,他の基礎年金よりは高い割合とはいうものの,全額を国庫に依存するものでなくなったことは前記のとおりであるが,だからといって,受給者からの拠出がないという性格が否定されるものではない。),その根本において,社会福祉的な性質は障害福祉年金と異なるところはないといわざるを得ない。 そうすると,昭和60年改正前と同様,①年金の財源を所得保障の要請がより切実で,かつ,効果のある者に集中すべきであること,②国家財政上,何らかの形で国庫負担が伴うのが通常の公的年金の重複受給を避けてもやむを得ないことなどの考慮は,同改正後においても妥当すると考えられる。したがって,昭和60年改正による変更点を考慮しても,本件障害基礎年金と他の公的年金給付との併給調整規定を残したことが著しく不合理であると認めることはできない。 (ウ) 原告の主張の検討この点につき,原告は,①保険事故の重複により稼得能力の低下の程度が加重しており,併給の必要性があること,②国民年金制度は憲法の定める生存権原理に立脚しており,昭和60年改正によって20歳後障害者に係る障害基礎年金も非拠出制年金に近くなったから,拠出の原則は補完的なものにとどまり重視すべきではないこと,③そもそも,障害基礎年金は,月額約6万7000円であって, 年改正によって20歳後障害者に係る障害基礎年金も非拠出制年金に近くなったから,拠出の原則は補完的なものにとどまり重視すべきではないこと,③そもそも,障害基礎年金は,月額約6万7000円であって,これだけでは生活保護基準にすら満たず,併給調整によって障害者の人間的な生活の維持を著しく困難にさせることなどを主張する。 a まず,①について検討するに,なるほど,同一人に複数の保険事故(本件では障害と扶養親族の死亡)が生ずることによって,同人の有する稼得能力の低下が加重され得ることは否定できず,この意味で,少なくとも低下の程度に応じた割合的な支給停止措置を採用することも制度論としては十分に考えられよう。 しかしながら,これら複数の保険事故による稼得能力低下の加重の程度は,障害の種別や程度,扶養親族による扶養の程度,その者の資産の有無等に応じて,相当に異なるものであり,少なくとも低下の程度が単純に加算されるものではないと考えられる(ちなみに,本件においても,原告は,妹のAのほかに同居の父母からの援助を受けていたものであり,かつ,稼働による一定の収入を得ていたことは原告の自認するところであり,これにAの労働基準法12条所定の平均賃金が4376円8銭にすぎなかったこと(甲5の1)を考慮すると,Aの死亡に伴う原告の稼得能力の低下が果たしてどの程度のものであったかは,推測に難くない。)。 また,前記のとおり,憲法25条は「年金による生活保障」を保障するものではなく,これを具体化するに当たっては,生活保護その他の諸施策を総合することによって実現されるべきものであるから,稼得能力の低下分をすべて公的年金によって補償しなければ著しく不合理であるとまではいえない。 b 次に,②について検討するに,国民年金制度が,私保険のように完全な保険原理に立脚しているも あるから,稼得能力の低下分をすべて公的年金によって補償しなければ著しく不合理であるとまではいえない。 b 次に,②について検討するに,国民年金制度が,私保険のように完全な保険原理に立脚しているものではなく,現に昭和60年改正によって,憲法25条の趣旨,精神を一層押し進める内容となっていることは前記のとおりである。しかしながら,国民年金制度が,同改正後も保険原理を放棄しておらず,拠出制を基本としていることも,保険料の納付義務(88条)や各種給付の支給要件(26条,30条,37条,49条)に関する規定などに照らせば明らかである。したがって,制度全体の中で,非拠出制である本件障害基礎年金を補完的なものと位置づけ,これを反映した扱いをすることが,直ちに不合理であるということはできない。 c さらに,③について検討するに,原告の主張は,ひっきょう,現在の障害基礎年金の支給水準(の低さ)を批判するものであるところ,確かに,今日の物価水準において,収入が月額約6万7000円程度の年金だけであるならば,最低限度の生活を維持するのも困難であることは理解できないものではない(もっとも,このことは障害基礎年金だけに当てはまるものではなく,他の年金についても同様である。)が,繰り返し述べているとおり,そもそも憲法25条の具体化を国民年金制度だけに委ねるべきではなく(もともと,非拠出制の年金は,所得の一部を保障するものと位置づけられている。),生活保護その他の諸施策を総合することによって実現すべきものであり,かつ,諸施策の立法化に当たっては,国家の財政状態等の諸条件からの制約を受けることもやむを得ないというべきであるから,本件障害基礎年金の支給額の低さをもって,本件併給調整規定の違憲性を基礎づけることはできない。 (エ) 小括以上のとおり,本件障害基礎年 件からの制約を受けることもやむを得ないというべきであるから,本件障害基礎年金の支給額の低さをもって,本件併給調整規定の違憲性を基礎づけることはできない。 (エ) 小括以上のとおり,本件障害基礎年金と他の公的年金給付との併給調整規定を置くこと自体が著しく合理性を欠き,立法者に与えられた裁量を明らかに逸脱・濫用したものとはいえない。 イ労災給付(遺族年金)を併給調整の対象とすることの合理性(ア) 立法の経緯に基づく検討前記のとおり,制定当初の国民年金法は,障害福祉年金につき,労災保険法による給付を併給調整の対象としていなかったのに対し,昭和40年法律第130号による改正に伴って,労災保険法による年金給付との併給調整を行うようになったものである。もっとも,上記改正前の労災保険法に基づく給付が併給調整の対象とされなかったのは,同法が一時金中心の補償体系を採用しており,障害福祉「年金」との併給調整になじまなかったからと考えられる(現在でも,恩給法に基づく一時恩給,一時扶助料,厚生年金保険法に基づく障害手当金などの一時金として給付されるものは,併給調整の対象とされていないことにつき国民年金法36条の2第1項1号参照)。そうすると,労災保険法の上記改正に伴い,労災給付が大幅に年金化され(遺族補償については,一時金補償は例外的なものに位置づけられた。),他の公的年金給付と共通の性質を有するようになって,併給調整になじむようになった以上,非拠出制年金である障害福祉年金又はこれを引き継ぐ本件障害基礎年金との併給調整の対象とされたことが著しく不合理であるとはいえない。 (イ) 原告の主張の検討この点についても,原告は,①労災保険法に基づく年金たる給付は,使用者団体責任に基づくものであって,社会保障たる性質を有していないから,二重の社会保障の関係に はいえない。 (イ) 原告の主張の検討この点についても,原告は,①労災保険法に基づく年金たる給付は,使用者団体責任に基づくものであって,社会保障たる性質を有していないから,二重の社会保障の関係に立たないこと,②労災保険法に基づく年金たる給付の財源の大半は使用者からの保険料であって,国庫の負担の重複の問題は生じないこと,③労災保険法に基づく遺族年金は扶養料としての性質を有するから,併給調整の必要はないことなどを主張する。 a まず,①について検討するに,労災保険法は,使用者を加入者とし政府を保険者とする強制加入制度によって,労災に基づく補償を迅速かつ公正に実施するために制定され,その制度の根本は,使用者の団体責任に基づき,業務災害によって損傷した労働能力を回復,填補するためのものであることは原告の指摘するとおりであると考えられる。 しかし,他方で,昭和40年法律第130号による改正後の労災保険法の規定を通覧すると,保険給付の中に障害補償年金や遺族補償年金などの年金が導入され(15条,16条),これらの年金や長期傷病補償給付について勤労統計における全産業労働者の平均賃金とのスライド制が設けられ(同法改正附則41条1項),また,特別加入制度が導入される(第4章の4)など,労災保険制度は,労災にあった労働者等に対する生活保障という性格が色濃くなっており,国家の運営する社会保障制度としての側面を有するに至ったことも否定できない。 特に,本件のような通勤災害については,本来的には使用者責任になじまないものであるが(そうであるがゆえに,昭和48年法律第85号による改正以前においては,労災保険法は通勤災害を労災補償の対象としていなかった。),通勤は労働者が労務を提供するための不可欠な行為であり,単なる私的行為とは異なったものであること,通勤災害は, 号による改正以前においては,労災保険法は通勤災害を労災補償の対象としていなかった。),通勤は労働者が労務を提供するための不可欠な行為であり,単なる私的行為とは異なったものであること,通勤災害は,社会全体の立場からみると,産業の発展,通勤の遠距離化等のためにある程度不可避的に生ずる社会的な危険となっており,労働者の私生活上の損失として放置されるべきではなく,社会的な保護制度を創設すべきであることなどが考慮された結果,業務災害と同一の給付の対象とされたものであって,社会保障としての性格が濃厚であるといわざるを得ない。 そうすると,労災保険法に基づく給付の本質が使用者の団体責任に基づくものであるとしても,社会保障としての性格を否定することは相当でないから,後者の側面に着目した上で,国民年金制度などの他の社会保障制度に基づく給付とを調整することが,直ちに不合理であるとはいえない。 b 次に②について検討するに,原告は,労災保険法上の給付の財源の大部分が使用者の支払う保険料によって賄われていることを理由に,国庫の負担の重複は生じていないと主張するところ,弁論の全趣旨によれば,同財源に占める国庫からの補助金の割合はわずかなものにすぎないと認められる。 しかしながら,労災保険法上の給付の財源の大部分が使用者の支払う保険料によって賄われるものであったとしても,現に国庫が労災保険法32条に基づく補助を行っている以上,障害福祉年金(あるいは昭和60年改正後の本件障害基礎年金)と労災保険法上の給付との間に国庫の重複が生じることは否定できない。また,使用者の支払う保険料を主財源とする給付であったとしても,現に給付を受ける以上,社会保障制度全体としてはその負担が重複していることは明らかであり,非拠出制の本件障害基礎年金給付との重複支給を避け,その負担の 払う保険料を主財源とする給付であったとしても,現に給付を受ける以上,社会保障制度全体としてはその負担が重複していることは明らかであり,非拠出制の本件障害基礎年金給付との重複支給を避け,その負担の軽減を図ることが著しく不合理といえないことは前記のとおりである。 c さらに③について検討するに,労災給付たる遺族年金は,労働者の死亡の当時,その収入によって生計を維持していた遺族に対して,その援護のために支給されるものであるから,遺族の被扶養利益の喪失の填補たる性質を有していることは否定できず,労災発生前における収入を確保させるとの観点からは,前記のとおり,少なくとも上記喪失の限度で併給を認めることも十分に検討に値すると考えられる。 しかしながら,このような割合的併給調整を行うためには,扶養義務者等による扶養の状況を十分に調査,把握する必要があるところ,このような作業は必ずしも容易ではないと考えられる(必要な調査を実施する結果,労災給付としての遺族年金の支給要件の認定が円滑に行われないという事態も予想される。)上,ア(ウ)aで述べたと同様,そもそも憲法25条は「年金による生活保障」を保障するものではなく,その具体化は,生活保護その他の諸施策を総合することによって実現されるべきものであるから,被扶養利益の喪失分をすべて公的年金によって補償しなければ著しく不合理であるということはできない。 ウ本件処分後の国民年金法改正の検討なお,原告は,平成16年法律第104号による国民年金法の改正によって,障害基礎年金と老齢厚生年金の併給が可能となり,これには20歳前障害と20歳後障害とで差異は設けられていないこと,本件障害基礎年金の支給停止事項について未決勾留者等が除外されたことなどを指摘するところ,これらの改正点が,憲法25条の趣旨をさらに増進せしめ 歳前障害と20歳後障害とで差異は設けられていないこと,本件障害基礎年金の支給停止事項について未決勾留者等が除外されたことなどを指摘するところ,これらの改正点が,憲法25条の趣旨をさらに増進せしめるものであることは明らかである。 しかし,平成16年法律第104号による国民年金法の改正は本件処分後に行われたことが明らかである上,そもそも,このような改正が行われたからといって,本件障害基礎年金の非拠出制年金としての性格が変貌したとか,本件併給調整規定を存続させることが矛盾するという関係に立つものとはいえないから,これをもって本件併給調整規定の不合理性を基礎づけることはできない。 (4) 小括以上の検討結果によれば,本件併給調整規定は,著しく合理性を欠き,立法府の立法裁量権を明らかに逸脱,濫用したものとはいえないから,憲法25条に違反するとの原告の主張は採用できない(もっとも,このことは,例えば,本件障害基礎年金の受給権者が他の年金たる給付を受けることができるようになった場合,当該給付の種類ごとに稼得能力の低下の程度を類型化し,その程度ごとに応じた割合の限度で支給停止を行うにとどめるような立法が,憲法25条の趣旨をさらに増進させるものであることを否定するものではない。)。 3 争点(2)(本件併給調整規定の憲法14条適合性)について(1) 本件併給調整規定の合理性の有無次に,憲法14条との関連で,本件併給調整規定の合理性の有無について判断する。 ア本件併給調整規定によれば,20歳後障害に係る障害基礎年金を受給している者については,年金たる労災給付との間で併給調整が行われず,両者の給付を同時に受給できるのに対して,20歳前障害に係る本件障害基礎年金を受給している者については,本件併給調整規定により年金たる労災給付との間で併給調整が行われ 付との間で併給調整が行われず,両者の給付を同時に受給できるのに対して,20歳前障害に係る本件障害基礎年金を受給している者については,本件併給調整規定により年金たる労災給付との間で併給調整が行われ,原則として本件障害基礎年金の支給が停止されることになるから,同規定は,初診日が20歳の前後で取扱いに区別を設けるものであることが明らかである。 しかしながら,20歳後障害者は,既に20歳に達した時点で国民年金の被保険者資格を取得し(8条1号),かつ,現実に保険料の納付義務を負担している(88条1項)から,その被保険期間中の保険事故(傷病)の発生に対して所定の給付を受けることは保険制度として当然であり,このことは,同時に他の公的年金の受給資格を取得したとしても,基本的には変わらないと考えられるのに対し,20歳前障害者については,保険料の納付義務を負うことはあり得ない(89条1項1号)から,保険制度そのものによって受給を根拠づけることはできないという相違があるところ,2(3)で検討したとおり,①年金の財源を所得保障の要請がより切実で,かつ,効果のある者に集中すべきであること,②国家財政上,何らかの形で国庫負担を伴うのが通常の公的年金の重複受給を避けるのはやむを得ないことなどを考慮すると,20歳前障害者についてのみ併給調整を行うことは,著しく合理性を欠くといえないと解される。 イこの点について,原告は,憲法14条との関連で,①初診日が20歳未満の者の方がより所得保障の必要性があること,②本件障害基礎年金と20歳後障害者の障害基礎年金との間で性質に差異はないこと,③本件併給調整規定は特定の種類の障害者に対する差別的取扱いを内包すること,④精神障害については初診日の認定判断が困難であって,差を設けることは合理的でないことなどを主張するので,以下にお いこと,③本件併給調整規定は特定の種類の障害者に対する差別的取扱いを内包すること,④精神障害については初診日の認定判断が困難であって,差を設けることは合理的でないことなどを主張するので,以下において検討する。 (ア) まず,原告は,①の主張の根拠として,20歳前障害者の多くは回復が困難であり,とりわけ精神障害者の経済的自立の道が険しいことを指摘するところ,かかる指摘自体は首肯できないものではない(その意味で,前記のとおり,精神障害者にも障害基礎年金を支給する途を開いた改正は,憲法25条や障害者基本法の趣旨をさらに増進するものであった。)。 しかしながら,仮に20歳後障害者が障害状態から回復したときは,障害基礎年金の受給権を喪失することになっており(36条2項),また,一般に,稼得能力の低下は障害の程度に比例すると考えられる(ちなみに,国民年金法は,障害等級1級の者に対する障害基礎年金の額は障害等級2級の者のそれの1.25倍としている(33条2項)ことからも明らかなとおり,基本的に障害の程度に応じた給付額を定め,同一級の障害者であれば,初診日が20歳未満の場合と初診日が20歳以後の場合とで,給付額に差異を設けていない。)から,一概に20歳前障害者が20歳後障害者よりも所得保障の必要性が高いとはいえず,上記主張は採用できない。 (イ) 次に,原告は,②の主張を裏付ける事情として,本件障害基礎年金と20歳後障害に係る障害基礎年金との間で給付の内容に差異がないこと,後者については拠出要件は大幅に緩和され,全く保険料を納入しなくとも支給されることがあり得ることなどを指摘する。 確かに,昭和60年法改正により,従来の障害年金と障害福祉年金が同一の障害基礎年金という名称で規定されるようになり,障害等級が同一であるなど,支給条件が同一であれば,同一の 得ることなどを指摘する。 確かに,昭和60年法改正により,従来の障害年金と障害福祉年金が同一の障害基礎年金という名称で規定されるようになり,障害等級が同一であるなど,支給条件が同一であれば,同一の年金額が支給されることとなり,また,20歳後障害に係る障害基礎年金の支給要件のうち拠出要件については「当該被保険期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該保険料納付期間の3分の2」以上で足りることとなって従前の要件よりも大幅に緩和されたことは,前記のとおりである。 しかし,障害福祉年金と比較して給付内容が引き上げられ,一本化されたからといって,国民年金法が保険原理を放棄したわけではなく,現に20歳後障害に係る障害基礎年金の支給要件には拠出要件が残されており,その意味で拠出制の年金制度としての基本構造はなお失われていない。もっとも,20歳に達して被保険者となった日から1か月以内に障害の初診日がある場合は,現実には保険料の納付がなくとも障害基礎年金が支給されることになるが,この場合でも,20歳に達したことによって観念的には保険料の納付義務を負い,ただ,保険料が1か月単位で定められ,その納期限が後払とされている(91条)という手続的,技術的原因で,上記のような結果が生じ得るにすぎないと考えられるから,このような例外的な現象を理由に,拠出制の年金としての性格が失われ,その結果,非拠出制の本件障害基礎年金と20歳後障害基礎年金とが同質のものになったということはできない。 (ウ) 続いて③について検討するに,原告は,本件併給調整規定は,ほぼすべてが初診日を20歳前に迎えることとなる特定の種類の障害者(知的障害,自閉症の障害者等)に対する差別的取扱いを内包する旨主張する。 確かに,アメリカ精神医学会によって作成され,我が国の臨床現場で すべてが初診日を20歳前に迎えることとなる特定の種類の障害者(知的障害,自閉症の障害者等)に対する差別的取扱いを内包する旨主張する。 確かに,アメリカ精神医学会によって作成され,我が国の臨床現場でも広く用いられているDSM-Ⅳ(甲6)によれば,精神遅滞の診断基準の項目に「C.発症は18歳未満である。」,自閉症の診断基準の項目に「B.3歳以前に始まる,以下の領域の少なくとも一つにおける機能の遅れまたは異常(以下略)」とあることが認められ,これによれば,特定の種類の精神障害を有する者のほぼすべての初診日が20歳未満であることは否定できない。 しかし,本件併給調整規定が特定の精神疾患などをねらい打ちにしているものではないことは,その文言からも明らかであり,特定の種類の精神障害を差別するものとはいえない。 (エ) さらに,④について検討するに,果たして原告の主張するように,精神障害の場合に初診日の認定・判断が困難であるかは疑問の余地があるが,仮に本件併給調整規定の適用の前提としての初診日が20歳前か20歳以後かが争われた場合,同規定は,障害基礎年金の支給要件(30条)を満たした者の受給権に対する例外的制約をもたらすものであるから,その主張立証責任は被告にあるというべきであり(もっとも,原告のように,20歳に達した日の属する月の翌月から障害基礎年金の支給を受けている者については,30条の支給要件からみて,20歳後障害が問題となることはあり得ない。),これによって精神障害者に不当な不利益を負わすものとはいえないから,同規定が不合理であるとはいえない。 (2) 小括よって,本件併給調整規定は憲法14条に違反しているとはいえない。 4 結論以上の次第で,原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法 (2) 小括よって,本件併給調整規定は憲法14条に違反しているとはいえない。 4 結論以上の次第で,原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部裁判長裁判官加藤幸雄裁判官舟橋恭子裁判官尾河吉久別表添付省略

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る