- 1 -主文 原判決を次のとおり変更する。 (1)本郷税務署長が被控訴人に対し,平成10年12月18日付けでした,被控訴人の平成6年10月1日から平成7年9月30日までの事業年度に係る法人税の更正処分のうち,納付すべき税額83億7035万5400円を超える部分及び過少申告加算税の賦課処分のうち12億0082万6500円を超える部分を取り消す。 (2)被控訴人のその余の請求を棄却する。 訴訟の総費用は,これを5分し,その1を控訴人の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1当事者の求める裁判 控訴の趣旨(1)原判決を取り消す。 (2)被控訴人の請求をいずれも棄却する。 (3)訴訟の総費用は被控訴人の負担とする。 控訴の趣旨に対する答弁(1)本件控訴を棄却する。 (2)控訴費用は控訴人の負担とする。 第2事案の概要被控訴人は,100%出資の外国子会社aを設立した。その後,同社は,増資して新株全部を被控訴人の関連会社bに著しく有利な価額で割り当てたところ,本郷税務署長は,被控訴人保有のa株式の資産価値をbに移転させたものであり,移転した資産価値相当額はbに対する寄附金に当たるとして,平成10年12月18日付けで,被控訴人の平成7年9月期の法人税について更正(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税賦課決定(以下「本件- 2 -賦課決定処分」といい,本件更正処分と本件賦課決定処分を併せて,以下「本件各処分」という。)をした。本件は,被控訴人が本件各処分の取消しを求める事案である。 本件訴訟の経過(1)原審は,被控訴人の保有する資産価値がbに移転したとしても,それはaとb間の行為であり,被控訴人はbに対して何らの行為もしておらず,法人税法(以下「法」という。)22条2項(無 件訴訟の経過(1)原審は,被控訴人の保有する資産価値がbに移転したとしても,それはaとb間の行為であり,被控訴人はbに対して何らの行為もしておらず,法人税法(以下「法」という。)22条2項(無償による資産の譲渡又はその他の取引)にも法132条1項1号(同族会社の行為計算否認)にも該当しないとして,被控訴人の求める限度で本件各処分を取り消した。 (2)差戻前の控訴審は,被控訴人の請求を棄却すべきものと判断した。その要旨は,①増資により法22条2項に規定する事実が生じたものであり,②aの資産を時価純資産価額方式(法人税等相当額を控除しないもの)で評価して,bへ移転した資産価値を算定すべきであるとするものである。 (3)上告審判決は,上記(2)の①の判断は是認することができるが,同②の資産評価方法の判断については以下のとおりの問題があり,これについて更に審理を尽くすべきであるとして,本件を当審に差し戻した。 アa保有のc株式の評価については,特段の事情がない限り,取引通念上,純資産価額方式によるときには法人税等相当額を控除するべきであるのに,差戻前の控訴審はその点の検討をしていない。 イc及びd(a保有株式)保有のe株式の評価並びにa保有のf株式の評価については,配当還元方式を採用する余地があるところ,差戻前の控訴審はその点の検討をしていない。また,f株式を純資産価額方式で評価するとした場合,アと同様の問題を究明するべきである。 争いのない事実等(1)関係する法人と役員等被控訴人(旧商号・株式会社g)は,図書及び雑誌の出版並びに販売等を- 3 -目的とし,財団法人h(言語及び言語に係わる文化の理解と普及を目的として昭和54年11月設立。平成7年2月15日当時,被控訴人の発行済株式の内25万0880株(49.6%)を保有する を- 3 -目的とし,財団法人h(言語及び言語に係わる文化の理解と普及を目的として昭和54年11月設立。平成7年2月15日当時,被控訴人の発行済株式の内25万0880株(49.6%)を保有する筆頭株主),財団法人i等を主要株主とする法2条10号所定の同族会社である。 aは,平成3年9月4日,被控訴人の100%出資により,bは,平成7年2月13日,hの100%出資により,それぞれオランダにおいて設立された株式会社である。 平成7年2月当時の上記各法人の役員の概要は,下表のとおりである。 jk被控訴人取締役相談役代表取締役h理事長評議員a代表取締役代表取締役b取締役取締役(2)aの設立と出資金aは,設立時,被控訴人から,下記の現物(簿価)及び現金1億0600万円,計16億5000万円相当(計2200万ギルダー。1ギルダー75円換算による。)全額の出資を受け,資本金を20万ギルダー(同1500万円相当)とし,株式200株(1株1000ギルダー。額面総額20万ギルダー)を発行し,資本金の額を超える2180万ギルダー(同16億3500万円相当)を資本準備金とした。(甲1,乙61)種類等受入価額等f株式3559株11億0500万円出資c株式15万株4億3900万円現金1億0600万円(3)設立に伴う現物出資の課税の繰り延べ- 4 -被控訴人は,平成10年法律第24号による改正前の法51条1項に基づき,同条項に規定する特定出資に当たる上記(2)の現物出資について,出資時の帳簿価額と時価との差額邦貨換算約81億3400万円を圧縮記帳し,課税の繰延べを受けた。(甲1,乙61)帳簿価額時価f株式3559株11億0574万5228円86億3472万4794円c株式15万株4億3956万2983 1億3400万円を圧縮記帳し,課税の繰延べを受けた。(甲1,乙61)帳簿価額時価f株式3559株11億0574万5228円86億3472万4794円c株式15万株4億3956万2983円10億4430万円合計15億4530万8211円96億7902万4794円(4)本件増資(下記の増資をいう。以下同じ。)aは,平成7年2月13日,株主総会において,300万ギルダー増資し,発行する3000株(本件増資新株。1株の額面金額1000ギルダー)全部を303万0303ギルダー(1株当たり1010.1ギルダー)でbに割り当てる旨の決議(本件増資決議)をし,払込みを受けて同社に株式を発行し(以下「本件新株発行」という。),3万0303ギルダーを資本準備金に組み入れ,同年4月20日,300万ギルダーについての本件増資の登記手続をした。(甲184)(5)本件各処分の経緯等被控訴人は,平成6年10月1日から平成7年9月30日までの被控訴人の事業年度(以下「平成7年9月期」という。)の法人税について,同年12月27日,青色申告書を提出して確定申告をした。その内容は,別紙2の番号①,⑩記載のとおりである。 これに対し,本郷税務署長は,平成7年9月期の法人税について,平成10年12月18日付けで,本件各処分をした。その内容は,別紙2記載のとおりである。 被控訴人は,平成11年2月5日,本件各処分について国税不服審判所長- 5 -に対する審査請求をしたが,3か月が経過しても裁決がされなかった。 (6)国税庁長官の発出した昭和44年5月1日付け直審(法)25「法人税基本通達」(平成12年課法2-7による改正前のもの。以下同じ。)9-1-14(4)は,「売買実例のあるもの」,「公開途上にある株式で,当該株式の上場又は登録に際して株式の公 直審(法)25「法人税基本通達」(平成12年課法2-7による改正前のもの。以下同じ。)9-1-14(4)は,「売買実例のあるもの」,「公開途上にある株式で,当該株式の上場又は登録に際して株式の公募又は売出が行われるもの」,「売買実例のないものでその株式を発行する法人と事業の種類,規模,収益の状況等が類似する他の法人の株式の価額があるもの」に該当しない非上場株式で気配相場のないものにつき,法(平成17年法律第21号による改正前のもの)33条2項の規定を適用する場合の事業年度終了の時における当該株式の価額は,「当該事業年度終了の日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」によるものとしている。そして,同通達9-1-15は,法人が非上場株式で気配相場のないもの(売買実例があるものなどを除く。)について同項の規定を適用する場合において,事業年度終了の時における当該株式の価額につき,国税庁長官の発出した昭和39年4月25日付け直資56,直審(資)17「財産評価基本通達」の178から189-6までの例によって算定した価額によっているときは,課税上弊害がない限り,所定の条件を付してこれを認めるものとし,この条件の一つとして,財産評価基本通達(平成12年課評2-4,課資2-249による改正前のもの)185本文に定める1株当たりの純資産価額の計算に当たり,当該株式の発行会社が有する土地を相続税路線価ではなく時価により評価するものとしている。 (7)取引相場のない株式の価額について,財産評価基本通達(平成10年課評2-10,課資2-264による改正前のもの)178本文,179は,評価しようとする株式の発行会社(以下「評価会社」という。)を大会社,中会社 い株式の価額について,財産評価基本通達(平成10年課評2-10,課資2-264による改正前のもの)178本文,179は,評価しようとする株式の発行会社(以下「評価会社」という。)を大会社,中会社,小会社に区分し,類似業種比準価額による評価(以下「類似業種比準- 6 -方式」という。),1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)による評価等を定めているが,同通達178ただし書,財産評価基本通達(平成15年課評2-15,課資2-5,課審5-9による改正前のもの)188,財産評価基本通達(平成12年課評2-4,課資2-249による改正前のもの)188-2は,「同族株主以外の株主等が取得した株式」については,配当還元価額による評価(以下「配当還元方式」という。)によるものとしている。 (8)財産評価基本通達(平成12年課評2-4,課資2-249による改正前のもの)185は,上記の1株当たりの純資産価額を,課税時期における各資産を同通達に定めるところにより評価した価額の合計額から課税時期における各負債の金額の合計額及び財産評価基本通達(平成10年課評2-5,課資2-240による改正前のもの)186-2により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額(以下「法人税額等相当額」という。)を控除した金額を課税時期における発行済株式数で除して計算した金額とすると定めている。そして,同通達186-2は,法人税額等相当額を,「課税時期における各資産をこの通達の定めるところにより評価した価額の合計額(中略)から課税時期における各負債の金額の合計額を控除した金額」から「各資産の帳簿価額の合計額(中略)から課税時期における各負債の金額の合計額を控除した金額」を控除した残額に51%を乗じて計算した金額とすると定めている。また,財産評価 の合計額を控除した金額」から「各資産の帳簿価額の合計額(中略)から課税時期における各負債の金額の合計額を控除した金額」を控除した残額に51%を乗じて計算した金額とすると定めている。また,財産評価基本通達(平成11年課評2-12,課資2-271による改正前のもの)186-3は,評価会社について上記の1株当たりの純資産価額を算定するに当たって,評価会社が取引相場のない株式を保有する場合には,同株式の1株当たりの純資産価額の算定において法人税額等相当額を控除しないことを定めている。 (9)財産評価基本通達(平成15年課評2-15,課資2-5,課審5-9による改正前のもの)188(1)は,配当還元方式により評価すべき「同族株主- 7 -以外の株主等が取得した株式」の一つとして,「同族株主のいる会社の株主のうち,同族株主以外の株主が取得した株式」を挙げ,この同族株主とは,評価会社の株主のうち,株主の1人及びその同族関係者(法人税法施行令(平成15年政令第131号による改正前のもの)4条に規定する特殊の関係のある個人又は法人をいう。以下同じ。)の有する株式の合計数がその会社の発行済株式数の30%(評価会社の株主のうち,株主の1人及びその同族関係者の有する株式の合計数が最も多いグループの有する株式の合計数が,その会社の発行済株式数の50%以上である会社にあっては,50%)以上である場合におけるその株主及びその同族関係者をいうものとされている。 争点 (1)法22条2項の適用についてア控訴人の主張(ア)本件増資は,被控訴人,a及びbの合意に基づき,a株式の資産価値を分割し,対価を得ることなくその資産価値の一部を被控訴人からbに移転させたものにほかならないから,法22条2項の無償による資産の譲渡又はその他の取引及び法37条2項の寄附金 づき,a株式の資産価値を分割し,対価を得ることなくその資産価値の一部を被控訴人からbに移転させたものにほかならないから,法22条2項の無償による資産の譲渡又はその他の取引及び法37条2項の寄附金に該当する。 すなわち,被控訴人は,aの100%株主として,本件増資により,自らの意思に基づき,被控訴人の保有するa株式の資産価値の大半をbに取得させた。一方,bは,本件増資の結果,a資産の帳簿価額(当時約2515万ギルダー)の約12%,時価相当額(約2億7296万ギルダー)の約1%に相当する303万0303ギルダーの増資払込みによって発行済株式総数3200株の93%を超える3000株を取得した。 (イ)後記被控訴人の主張に対する反論①資産の譲渡に関する主張について法22条2項が,法人の有償又は無償による資産の譲渡等に係る収- 8 -益を益金に算入する旨定める趣旨は,法人が管理支配権を行使して資産価値を他に移転し,資産が法人の支配を離脱し,他に移転する際,これを契機として顕在化した資産の経済的価値の担税力に着目して清算課税しようとするもので,上記規定は,いわゆるキャピタル・ゲインに対する課税を定めるものである。 資産の譲渡又はその他の取引とは,法人が資産に対する管理支配権を行使してその資産価値の全部又は一部を他に移転すること,すなわち所得を構成する資産の増加を認識すべき一切の場合を意味し,法律行為的な取引に限定されない。 法22条2項,3項及び5項は,資本等取引を課税所得から除外し,会社の共同所有者である株主が拠出した資本を会社が利用したことによる資産の増減のみを所得計算に用い,会社と株主との間の出資や利益配当に基づく会社の純資産の増減に対しては課税しないことを明らかにしている。 ②法施行令119条の11について平成12年の法人 による資産の増減のみを所得計算に用い,会社と株主との間の出資や利益配当に基づく会社の純資産の増減に対しては課税しないことを明らかにしている。 ②法施行令119条の11について平成12年の法人税法改正により期末に計上される有価証券の評価に関する規定が設けられ,これに伴い,上記施行令の規定が設けられ,資産の譲渡がされないものの,保有目的のみが変わった場合のみなし譲渡についての課税が設けられたが,資産を社外に流出させた本件には関わりを有しない。 ③新株の有利発行に関する主張について資金調達のための新株の有利発行は,これにより,旧株主の有する会社資産に対する割合的持分の移転が生じても,迅速な資金調達のためであり,経済的合理性を欠くとはいえず,これについては,無償取引に係る収益として移転した資産価値が益金に計上される一方で,上記の割合的持分の移転に伴う損金算入が否認されず,課税所得が生じ- 9 -ない。これに対し,本件増資は,旧株主と新株主の持株割合を1対15,出資比率を99対1とし,無償で企業譲渡を行うもので,経済的合理性を欠き,移転に伴う損金算入は認められず,寄附金に該当する。 ④法51条の改正経緯に関する主張について本件と法51条改正とは直接関係がない。すなわち,aの資産が増加すれば,同社株式に係る含み益は増加し,法51条の圧縮記帳がなければ含み益が生じないということはないし,含み益が生じていれば,法51条の改正後に本件増資が行われても,本件と同じ問題が生ずる。 ⑤二重課税の主張について被控訴人に対する課税はキャピタル・ゲインによるものであるのに対し,bの益金は受贈益であり,このような事態は,資産の無償譲渡の場合に常に生じ,憲法29条に違反するものではない。 ⑥いわゆるB株について被控訴人の主張するオランダの税務当局に るものであるのに対し,bの益金は受贈益であり,このような事態は,資産の無償譲渡の場合に常に生じ,憲法29条に違反するものではない。 ⑥いわゆるB株について被控訴人の主張するオランダの税務当局によるタックス・ルーリングは,税法の具体的取扱についての承認であって,背景となった具体的事実の法律的効果を承認するものでなく,また,定款変更についての記述は瑕疵に気付いて将来に向かって変更するというのに止まるものである。 イ被控訴人の主張(ア)本件増資により,資産価値の移転はない。 ①そもそも,キャピタルゲインへの課税は,株主が会社に対する管理支配権を行使したかどうかではなく,当該キャピタルゲインが株主に帰属したか否かによるものであるが,本件増資においては,被控訴人の保有する旧株式200株についてのキャピタルゲインの全部又は一部が,抽象的所有権に止まったまま利得が実現されることなく,失われたのであって,未だ実現していない利得に課税されるべきではない。 - 10 -②法22条2項は,すべての無償による資産の譲渡又はその他の無償取引から必ず益金が発生する旨を規定しているのではなく,同条4項の「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って益金を計算するに際し,「無償による資産の譲渡」又は「その他の無償取引」から益金が発生する場合があり得ることを規定しているにすぎないところ,会計学上,利益の実現があったといえるためには「資産」の移転がなければならないとされており,「資産価値」の移転だけでは,利益の実現が生じたことにはならない。 ③法22条2項の「取引」について税法上格別の規定がない以上,その意味は,一般私法におけるのと同じと解すべきである。そして,法人税法は法人単位で課税しているから,aが出資資産を管理処分する行為は,株主である被 項の「取引」について税法上格別の規定がない以上,その意味は,一般私法におけるのと同じと解すべきである。そして,法人税法は法人単位で課税しているから,aが出資資産を管理処分する行為は,株主である被控訴人自身の割合的持分の管理処分とは評価されないはずであるし,被控訴人保有のa株式は,本件増資によって譲渡されてもいない。 (イ)法施行令119条の11について増資等による持株比率の変化は,法22条2項にいう資産の譲渡その他の取引に当たらないとされてきたが,平成12年の法施行令119条の11の創設により,初めて,それに当たるとみなされることになったのであって,同条創設前の本件増資による持株比率の変化についての課税は,租税法律主義に反するというべきである。なお,同条創設後においても,本件増資により,被控訴人の株式保有割合は,20%未満(100%から6.25%)となり,「満期保有目的等有価証券」から「その他の有価証券」に区分変更されるものの,課税対象とはならない。 (ウ)新株の有利発行について①新株の有利発行により旧株式の含み益が減少しても,減少した含み- 11 -益が実現されたものとして旧株式の帳簿価格を評価換えし,評価益が計上されることはない。 ②控訴人の主張する会計処理方法を法22条4項の会計処理の基準と解することは,広く一般社会において確立した会計慣行を排除するもので,憲法84条,30条に反し,また,被控訴人だけに課税するもので,憲法14条1項に違反する。 ③第三者有利発行の場合,法施行令38条1項2号に基づき,新株主が,払込価額と時価との差額を受贈益として課税されるのであり,本件においても,新株主にのみ課税され,法22条2項により旧株主には課税されないと解釈すべきである。 (エ)所得税法施行令84条について所得税法施 と時価との差額を受贈益として課税されるのであり,本件においても,新株主にのみ課税され,法22条2項により旧株主には課税されないと解釈すべきである。 (エ)所得税法施行令84条について所得税法施行令84条は,新株主が有利な発行価額により新株等を引き受ける権利は,旧株主からではなく,新株の発行会社から与えられると規定しているところ,第三者有利発行の際,所得税法上,新株主が新株の時価と払込価額の差額につき受贈益として課税されることとの対比からしても,新株等は旧株主の被控訴人からではなく,新株発行会社のaから新株引受人のbに与えられたものと解すべきである。本件増資については,憲法84条の租税法律主義の要請を充たすべきで,旧株主である被控訴人に対して法22条2項により課税することはできない。 (オ)法51条の改正経緯について従前,特定現物出資により設立された海外子会社が第三者有利発行を行った場合,当該出資資産の含み益に対して課税されず,平成10年の改正により課税されるようになった。上記改正前にされた本件増資につき,改正後と同じ結果となる課税を認めることは,改正経過を無視し,法22条2項及び4項の解釈を誤るもので,憲法14条に違反する(適用違憲)。 - 12 -(カ)譲受人との二重課税について控訴人の解釈によれば,法人間の資産の無償譲渡につき,譲渡法人には時価から取得原価及び寄附金の損金算入限度額を控除した金額に課税され,両者に対する課税総額は,その担税力の総額である譲渡益相当額を超え,私有財産権を保障した憲法29条に違反する。 (キ)いわゆるB株について本件増資新株は,額面金額の価値しか有しないB株(種類株)であり,残余財産分配請求権が額面金額(払込金額)に限られ,被控訴人の有していたa株式の資産価値(含み益)は,本件増資により ゆるB株について本件増資新株は,額面金額の価値しか有しないB株(種類株)であり,残余財産分配請求権が額面金額(払込金額)に限られ,被控訴人の有していたa株式の資産価値(含み益)は,本件増資によりbに移転しない。 すなわち,被控訴人,a及びbの三社は,本件増資時から,bの保有するa株式を額面金額の価値しかないB株とするとの共通の認識を有していた。ただ,aは,本件増資に際し,定款を変更してB株を創設すべきところ,事務手続上の過誤により,定款変更をせず,平成8年春,代表取締役のlがこれに気付き,上記三社は,平成9年7月28日,増資時から想定していたとおりの定款変更を確認する合意をし,平成10年3月10日,定款変更がされた。そして,増資新株は,オランダ税務当局によるタックス・ルーリングによっても,B株と認められている。 (2)法132条1項1号の適用についてア控訴人の主張本件増資決議における議決権の行使は,法132条1項1号の行為に当たる。 本件において,被控訴人は,新株引受権を取得し,これをbに額面額で譲渡したのと同様の経済的効果を生じさせた。このような場合,通常の経済人として採るべき合理的行為は,bから相当対価を受領することであるところ,相当対価を受領しない本件増資によって,被控訴人の法人税負担は不当に減少している。 - 13 -イ被控訴人の主張(ア)違法な租税回避行為を行い得るのは,同族会社に限られず,非同族会社の同種行為の方が,容易にはなし得ない行為,計算を敢えて行うという点で,より悪質であり,行為,計算の否認の対象を,同族会社等のそれに限定する法132条1項1号は,憲法14条に違反する。 (イ)法132条1項1号は,税務署長が法人税の負担を不当に減少させると判断した場合,裁量で課税できると定め,客観的,合理的基準によ 等のそれに限定する法132条1項1号は,憲法14条に違反する。 (イ)法132条1項1号は,税務署長が法人税の負担を不当に減少させると判断した場合,裁量で課税できると定め,客観的,合理的基準により課税される保障がなく,租税法律主義,課税要件明確主義を定めた憲法84条,30条に違反する。 (ウ)株式の第三者有利発行の際,旧株主には課税されず,平成10年の法51条改正前には,圧縮記帳された現物出資に係る資産の含み益に対し,結果的に日本国の課税権が及ばなかったことなどの事情からみると,本来課税できない被控訴人の行為,計算にのみ法132条1項1号を適用した本件更正処分は,憲法14条に違反する。 (エ)本郷税務署長は,被控訴人の法人税負担が最も重くなる行為,計算を恣意的に設定して課税しており,本件更正処分は,課税要件明確主義をその内容の一つとする租税法律主義を定めた憲法84条,30条に違反する。 (オ)bは,増資の対価を支払うなら,被控訴人にではなく,保有株の価値を高めるためにaに払い込むものであるから,控訴人の主張は,法132条1項1号の前提を欠くものである。 (3)bへの移転資産の額についてア控訴人の主張(ア)気配相場のない非上場株式の価額評価の方法について,法人税基本通達9-1-14及びその特例として同9-1-15が定められているところ,aの株式は,独立当事者間の適当な売買実例がないこと,株式- 14 -公開途上にはなく,公募等の価格がないこと,同社と事業の種類や収益の状況等において類似する法人がないことから,本郷税務署長は,上記通達9-1-14(4)に基づき,時価純資産価額方式(資産負債を時価評価して純資産価額を算出し,1株当たりの価額を算出する方法)により評価した。 aの資産の大部分を占めるf株式及びc株式も,本件 記通達9-1-14(4)に基づき,時価純資産価額方式(資産負債を時価評価して純資産価額を算出し,1株当たりの価額を算出する方法)により評価した。 aの資産の大部分を占めるf株式及びc株式も,本件増資当時非上場であるから,同税務署長は,同様に評価することとし,被控訴人の依頼により株式会社m(以下「m」という。)が平成7年3月1日現在で時価純資産価額方式により評価したf株式に係る株式評価書,被控訴人の提出に係るc株式の1株当たりの純資産価額の計算明細書(2),f及びc2社についての平成6年3月期の決算書,所有土地につき平成7年度の路線価の0.8で割り戻した価額(地価公示価額と同水準の価額とするため),保有する投資有価証券の平成7年2月15日の終値(上場株式),又は同年1月16日から同年2月15日までに取引のあった日の終値と気配相場の平均価額との合計額をその合計日数で除した平均価額(店頭登録株式)を基礎に評価した。上記により評価すると,aの純資産価額は,別紙の1記載のとおり,f株式188億5914万1000円,c株式82億5000万円となり,その他の資産,負債を加減すると,別紙1の5及び6記載のとおりとなる。そして,これに基づいて,本件両処分の基礎となる被控訴人の所得金額,税額等を算定すると,別紙の2のとおりとなる。 (イ)被控訴人は,①平成7年3月13日,f株式1242株を1株540万円で株式会社n(被控訴人100%出資の子会社)に売却した際,mによる同株式の時価純資産価額方式による評価(甲231)に沿い,法人税等相当額を控除することなく売買代金額を算定したほか,②同年9月29日,o株式会社株式78万株を1株510円でo株式会社αに- 15 -売却した際,③平成8年9月30日,株式会社p株式400株を1株266万1000円,株 売買代金額を算定したほか,②同年9月29日,o株式会社株式78万株を1株510円でo株式会社αに- 15 -売却した際,③平成8年9月30日,株式会社p株式400株を1株266万1000円,株式会社q株式200株を1株290万9000円で株式会社rに売却した際,④同日,株式会社r株式4300株を1株28万8000円でo株式会社から取得した際も,同様の評価方法に基づいて代金を算定し,その際法人税等相当額を控除することがなく,これらの売買対象株式は気配相場のない非上場のものであった。また,⑤被控訴人の主要株主のiは,平成7年3月24日,f株式335株を1株540万円でnに売却した際,①と同様の評価に沿い,法人税等相当額を控除することなく売買代金額を算定した。 このように,被控訴人は,本件増資のころ,気配相場のない非上場株式の取引に当たり,法人税等相当額を控除しないで算定した純資産価額を正当な時価であるとの認識を有していたことが明らかであって,この認識は,本件増資当時,被控訴人の100%出資にかかるaにおいても,c株式及びf株式の評価の認識に当たって同様であったということができる。 (ウ)①cは,昭和32年のe設立に関与し,本件増資当時はc代表取締役のs及び取締役の上記jがeの取締役の地位にあった。また,cは,平成6年3月31日現在では株主8社の一員としてd(cの100%出資のオランダ法人)とともにeの31.8%の持株割合があり,筆頭株主グループに次ぐ株主グループであり,その後平成7年3月の第三者割当増資に伴い,株主50名の一員として28.4%の持株割合となった。cは,取締役会において,同業のeの経営方針について協議し,上記増資に当たっても,上記s及びjが時価純資産価額に準拠した価額で,しかも,法人税等相当額を控除しない前提の代金 4%の持株割合となった。cは,取締役会において,同業のeの経営方針について協議し,上記増資に当たっても,上記s及びjが時価純資産価額に準拠した価額で,しかも,法人税等相当額を控除しない前提の代金額でe株式の割当てを受けていた。 このように,c及びdは,少なからぬe株式を保有している上,そ- 16 -の事業経営に影響力を持つ株主であるというべきであるから,e株式について単に配当を期待して保有しているものということはできず,その評価について配当還元方式を採用することは不適当であり,時価純資産価額方式によるべきである。 ②また,本件増資当時,上記jがfの取締役の地位にあり,平成7年3月31日現在のfの株主のうちa及びその同族関係者の持株割合は,21.4%で,筆頭株主に次ぐ株主グループであった。a保有のf株式は,その後,d(1株につき805万円)を経てn(1株につき約812万9000円)に譲渡されたが,同社は,(イ)の①,⑤のとおり,時価純資産価額方式に近似した価額でf株式を取得している。 このように,被控訴人の100%子会社のaは,少なからぬf株式を保有している上,その後の関係会社への譲渡価額が配当還元方式による価額に比して著しく高額なものであることやfの事業内容にも照らせば,同社株式についてaが単に配当を期待して保有しているものということはできないから,その評価について配当還元方式を採用することが不適当であり,時価純資産価額方式によるべきことは,①と同様である。 (エ)被控訴人は,法人税基本通達9-1-14又はその特例としての同9-1-15のいずれかを納税者が自由に選択できると主張する。しかし,後者の通達は,財産評価基本通達に定める評価方式の例によって算定しているときは,課税上の弊害がない場合に限り,これを是認するというもので 15のいずれかを納税者が自由に選択できると主張する。しかし,後者の通達は,財産評価基本通達に定める評価方式の例によって算定しているときは,課税上の弊害がない場合に限り,これを是認するというもので,課税上弊害がある場合には,前者が適用されるものである。 f及びcは,含み益を有する土地を所有しているから,市場価格ではなく路線価で評価することは株式の評価に関する課税上の弊害が生じる。 (オ)被控訴人は,f及びcの株式の評価については類似業種比準方式によるべきで,上場している類似企業であるt及びuに比準して評価すべ- 17 -きである旨主張する。しかし,対象会社とt及びuとは類似法人には当たらない。 (カ)被控訴人は,清算所得に対する法人税額等の控除を主張する。しかし,時価純資産価額方式は企業の継続を前提とした客観的交換価値を求める趣旨のものであり,これによることは妥当ではない。なお,財産評価基本通達は,時価純資産価額方式により評価する場合に上記控除をする旨定めるが,これは,個人が資産を直接保有する場合と間接保有する場合との違いにより価値が異ならないように評価の均衡を図る必要があるためである。 イ被控訴人の主張(ア)法人税基本通達9-1-14と同9-1-15のうち,本件においては被控訴人に有利な後者を適用し,f株式及びe株式(c保有)の価額は配当還元方式,c株式及びd株式(cが保有する外国株式)は時価純資産価額方式を基礎として,aの資産価額を算定すべきである。これによれば,被控訴人の有価証券に係る利益の計上もれは24億4048万0973円,法人税額は,7億8886万9800円となる。 (イ)f株式の評価を類似業種比準方式,e株式を配当還元価額方式,d株式及びc株式を時価純資産価額方式により,評価し,aの資産価額を算定すると,被控 ,法人税額は,7億8886万9800円となる。 (イ)f株式の評価を類似業種比準方式,e株式を配当還元価額方式,d株式及びc株式を時価純資産価額方式により,評価し,aの資産価額を算定すると,被控訴人の有価証券に係る利益の計上もれは69億0079万7722円,法人税額は,24億4058万1000円となる。 (ウ)また,f及びe株式は,類似業種比準方式により評価すべきで,これによりd株式及びc株式を評価し,aの資産価額を算定すると,被控訴人の有価証券に係る利益の計上もれは85億4259万4598円,法人税額は,30億4855万9100円となる。 (エ)なお,aの保有株式をすべて時価純資産価額方式により評価する場合,日本法人ではないdを除き,清算所得に対する法人税額等(本件増- 18 -資当時51%。財産評価基本通達185,186-2)を控除すべきである。これによると,被控訴人の有価証券に係る利益の計上もれは177億8465万6680円,法人税額は,64億7101万0100円となる。 (オ)控訴人がア(イ)①で主張する株式の売買は認めるが,同株式の株式会社nへの売却は,同族関係者間の「相対売買」であり,その取引の結果は,被控訴人が保有していたfの株式をdの株式と等価交換したのに等しく,当事者間で当該株価が通常の取引に通用する適正な時価という認識はなかった。また,控訴人がア(イ)②以下で主張する株式の譲渡は,本件と関係がない。その上,o株式会社,株式会社q,株式会社rの各株式は,いずれも時価純資産価額が簿価純資産価額を下回っていて評価差額が生じない実態にあり,株式会社pについても,時価純資産価額が簿価純資産価額とほぼ同額になっており,これらの株式の評価に当たり法人税相当額を控除するかどうかは,その評価にまったく影響を与えないもので 生じない実態にあり,株式会社pについても,時価純資産価額が簿価純資産価額とほぼ同額になっており,これらの株式の評価に当たり法人税相当額を控除するかどうかは,その評価にまったく影響を与えないものである。これらの株式の相対売買における株式の評価に当たっては,法人税相当額を控除するかどうかは重要な事項ではないから,上記株式の売買において,当事者が取引の対象である株式の評価につき法人税相当額を控除すべきでないと認識していたということはできない。 (4)その余の争点についてア被控訴人の主張(ア)控訴人の主張は,時機に後れたものである。 控訴人は,本件更正処分(平成10年12月18日付)の法的根拠として法132条1項1号を主張していたが,平成13年7月30日の原審第6回口頭弁論期日において,法22条2項を主位的に,法132条1項1号を予備的に主張する旨を明らかにした。同主張は,故意又は重過失により時機に後れて提出したものであり,本件訴訟の完結を遅延さ- 19 -せることは明白である。民訴法157条1項の適用は原審における訴訟手続の経過をも通観して判断すべきであり,原審における口頭弁論の終結直前になって更正処分の法的根拠の主張を変更することは,訴訟上の信義則に反する。 (イ)本件更正処分は,下記の点で,法130条2項に定める理由附記に不備がある。 ①本件増資により,被控訴人保有のa株式200株の含み益をbに移転させたと認定した根拠を,帳簿書類以上の信憑性のある資料を摘示して説明していない。 ②被控訴人がbから旧株の滅失価値相当額を受領したと認定したことにつき,資料の摘示を欠く。 ③被控訴人が,bから旧株の滅失価値相当額を受領したと認定しながら,他方で,対価を得ずにbに対して本件利益を贈与したと認定し,理由齟齬がある。 ④法13 認定したことにつき,資料の摘示を欠く。 ③被控訴人が,bから旧株の滅失価値相当額を受領したと認定しながら,他方で,対価を得ずにbに対して本件利益を贈与したと認定し,理由齟齬がある。 ④法132条1項1号により否認の対象とされた行為として,「資産価値の減少を防止する行為を行わなかったこと」,「何らかの対価を得なかったこと」,「bのために本件増資決議を行ったこと」及び「本件利益を流出させた行為」の4行為(計算)が挙げられているが,否認の対象がその全部であるのか,一部であるのか,株主としての議決権行使又はaの株主総会の行為が被控訴人の行為,計算として否認の対象となるかが,一義的に明らかでない。 (ウ)更正処分の理由の差替えを許容すると,税務署長は,取消請求をした納税者に対しては,期間経過後,新たに更正処分と同じ行為を行うことができ,それ以外の納税者に対してはそれができず,著しく不合理な差別で,憲法14条1項に反する。 (エ)法22条2項と法132条1項1号とは,適用される社会生活事実- 20 -が同一でも,適用条文,構成要件,攻撃防御方法を異にする別個の処分である。本件増資決議は平成7年2月13日にされたが,平成13年7月30日(原審第6回口頭弁論期日)に至り,本件更正処分の根拠として法22条2項を追加主張することは,更正等の期間経過後に新たな処分をするのと異ならず,更正期間経過の利益を奪い,被控訴人に不利益を与え,法130条2項の趣旨に反し,許されない。 (オ)更正処分に期間制限が設けられていること,国税通則法26条が数次の更正処分がされることを予定していることに照らせば,更正処分の理由の差替え及びその基礎にあるいわゆる総額主義の考え方は正当ではない。納税者には抗告訴訟を要求して不当利得返還訴訟の途を封じながら,税務署長に がされることを予定していることに照らせば,更正処分の理由の差替え及びその基礎にあるいわゆる総額主義の考え方は正当ではない。納税者には抗告訴訟を要求して不当利得返還訴訟の途を封じながら,税務署長には理由の差替えを許すことは,不公平である。個別の取引事実に基づくことなく,税額を確定する総額主義の見解は,憲法30条,84条に違反する。理由の差替えは,憲法31条の適正手続保障の見地に照らし,認められるべきではない。 イ控訴人の主張(ア)控訴人の主張は,時機に後れたものでない。 控訴人は,a株式の価値の一部をbに移転する行為に対する課税の法的根拠につき,当初,法132条1項1号を主張していたが,後に法22条2項の主張を追加した。しかし,法22条2項の課税要件事実は法132条1項1号の課税要件事実に包含されているので,上記新主張は,時機に後れた攻撃防御方法には当たらない。 (イ)本件更正処分は,書類に記載された事実自体を否認するいわゆる帳簿否認ではないから,理由附記に当たり帳簿の記載以上に信憑力のある資料を摘示する必要はない。 (ウ)本件増資により,被控訴人保有のa株式の価値の一部がbに贈与されたのであり,これについては,法22条2項による課税が可能である- 21 -とともに,被控訴人が同族会社であることなどの事実を付加すると,法132条1項1号に基づく課税も可能となる。したがって,控訴人は,法132条1項1号の適用を主張し,法22条2項に基づく課税についての法的主張を追加したにすぎず,理由の差替えには当たらないし,該当するとしても,許される場合である。 第3当裁判所の判断 本件においては,a,c及びdが保有していた株式について,法22条2項の適用の可否が主要な争点の一つであるから,まず,これについて検討する。 (1)本件におい 場合である。 第3当裁判所の判断 本件においては,a,c及びdが保有していた株式について,法22条2項の適用の可否が主要な争点の一つであるから,まず,これについて検討する。 (1)本件においては,前記争いのない事実等記載のとおり,(1)j及びkが同族会社である被控訴人とその関係法人(a,b及びh)の代表取締役,理事長,取締役等に就任し,同財団が被控訴人の株式の約50%,被控訴人がaの株式の100%を保有し,同財団の100%出資により,本件増資決議の日の平成7年2月13日,bが設立されていたところ,(2)本件増資により,aの全株式200株を保有していた被控訴人の持株割合が100%から6. 25%(16分の1)に減少したのに対し,bのそれは93.75%(16分の15)となった。そして,(3)甲1,乙2,3,15によると,aは,持株会社としての活動,融資,投資等を目的とするが,平成3年に設立されてから本件増資時の平成7年までは事業所を有せず,従業員のいないいわゆるペーパーカンパニーであったことが認められる。 上記事実によれば,被控訴人は,aに対する持株割合を激減させ,bの持分割合を93.75%とすることによって,aの株式200株に表章されていた同社の資産価値の大部分を対価を得ることなく,bに移転させることを意図したものということができ,そして,上記事実関係に基づけば,本件新株発行は,被控訴人,a,h及びbの各役員が意思を相通じて行ったものと推認することができるから,bとしても,被控訴人の上記のような意図を了解して,上記資産の移転を受けたものということができる。 - 22 -そこで,aの株式に表章された資産価値は,被控訴人において支配し,処分することができたところ,被控訴人は,このような利益をbとの合意に基づいて同社に移転したものという うことができる。 - 22 -そこで,aの株式に表章された資産価値は,被控訴人において支配し,処分することができたところ,被控訴人は,このような利益をbとの合意に基づいて同社に移転したものということができる。すると,この資産価値の移転は,被控訴人が意図し,bが了解したところが実現したものということができるから,法22条2項の取引,すなわち「無償による資産の譲渡」に当たるということができる。 (2)その他,被控訴人の法22条2項の適用についての主張についてア法施行令119条の11について上記規定は,平成12年の法人税法改正により期末に計上される有価証券の評価に関する規定が設けられたことに伴って設けられたものであり,資産の譲渡がされないが,保有目的のみが変わった場合のみなし譲渡についての課税が設けられたものであって,本件に適用されるものではないから,上記規定が設けられたことによって,本件課税が租税法律主義に反することにはならないというべきである。 イ新株の有利発行との関係について本件増資は,旧株主と新株主の持株割合を1対15,出資比率を99対1とし,無償で資産の譲渡を行うものであって,経済的合理性を欠き,資金調達のための新株の有利発行と異なるから,本件増資につき法22条2項を適用しても,憲法84条,30条,14条に違反すると解することはできない。 ウ所得税施行令84条との関係について本件においては,新株引受権自体は,aからbに付与されることを前提として,本件増資,新株発行により,被控訴人とbとの合意により,被控訴人とbにaの株式に表章された資産価値が移転した点を捉えて法22条2項が適用されるのであるから,憲法84条に違反するものではない。 エ法51条の改正経緯について- 23 -本件は,aの含み益に対する課税ではないから 章された資産価値が移転した点を捉えて法22条2項が適用されるのであるから,憲法84条に違反するものではない。 エ法51条の改正経緯について- 23 -本件は,aの含み益に対する課税ではないから,法51条とは関係がなく,したがって,憲法14条も関係がないというべきである。 オ二重課税について被控訴人に対する課税はキャピタル・ゲインによるものであり,他方,bに対する課税は受贈益であり,このような事態は,資産の無償譲渡の場合に常に生じ得るのであって,憲法29条に違反すると解することはできない。 カB株について被控訴人は,被控訴人,a及びbとの間で,本件増資時からbが取得する株式はいわゆるB株とするとの共通の認識があった旨主張する。しかし,乙15によれば,本件増資当時のaの定款には株式に種類が定められておらず,本件増資に際し,資本金の増額について定款の変更がされたものの,種類株を設けることについては,定款の変更がなされていないことが認められるから(甲6によっても,本件増資に当たり,種類株を設けることについての定款変更がされなかったことを窺うことができる。),bの取得した株式が増資当時定めのなかったB株であると認めることはできない。 なお,被控訴人は,a及びbとの間で,平成9年7月28日,本件増資時から想定していた定款変更を確認する合意をし,平成10年3月10日,これを具体化した定款変更がされたと主張するが,本件増資より事後に種類株を設ける旨の定款の変更がされても,これによって既に発行された株式の表章する権利内容に変更を生じないことは明らかである。 そこで,次にaの資産額について検討する。 (1)甲249によれば,本件増資当時,①aは,f株式3559株及びc株式15万株を保有するほか,別紙1の3,4記載の額の資産及び負債があるこ ある。 そこで,次にaの資産額について検討する。 (1)甲249によれば,本件増資当時,①aは,f株式3559株及びc株式15万株を保有するほか,別紙1の3,4記載の額の資産及び負債があること,②上記cは,e株式1万0020株とd株式200株を保有し,dは,e株式4500株を保有していることが認められる。 - 24 -(2)ところで,国税庁長官の発出した昭和44年5月1日付け直審(法)25「法人税基本通達」(平成12年課法2-7による改正前のもの)9-1-14(4)は,「売買実例のあるもの」,「公開途上にある株式で,当該株式の上場又は登録に際して株式の公募又は売出が行われるもの」,「売買実例のないものでその株式を発行する法人と事業の種類,規模,収益の状況等が類似する他の法人の株式の価額があるもの」などに該当しない非上場株式で気配相場のないものにつき,法(平成17年法律第21号による改正前のもの)33条2項の規定を適用する場合の事業年度終了の時における当該株式の価額は,当該事業年度終了の日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額によるものとしている。上記通達の定める非上場株式の評価方法は,相続又は贈与における財産評価方法として一般的に合理性を有し,課税実務上も定着しているところである。しかし,このような評価方法を無条件で法人税課税において採用すると弊害が生ずるので,同通達9-1-15は,財産評価基本通達の定める非上場株式の評価方法を,1株当たりの純資産価額の計算に当たって株式の発行会社の有する土地を相続税路線価でなく,時価で評価するなどの条件を付して採用することにしている。そして,財産評価基本通達(平成12年課評2-4,課資2-24 たりの純資産価額の計算に当たって株式の発行会社の有する土地を相続税路線価でなく,時価で評価するなどの条件を付して採用することにしている。そして,財産評価基本通達(平成12年課評2-4,課資2-249による改正前のもの)185が定める1株当たりの純資産価額の算定方式を法人課税においてそのまま採用すると,相続税等との性質の違いにより課税上の弊害が生ずる場合には,これを解消する修正を加えるべきであるが,このような修正をした上で同通達所定の1株当たりの純資産価額の算定方法にのっとって算定された価額は,一般に通常の取引における当事者の合理的意思に合致するものとして,法人税基本通達(平成12年課法2-7による改正前のもの)9-1-14(4)にいう「1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」に当たるというべきである。以上のよう- 25 -な同通達9-1-14(4),9-1-15の定めは,法人の収益の額を算定する前提として株式の価額を評価する場合においても,合理性を有するものとして妥当すると解することができる。 そこで,次項以下において,このような前提で,c株式,e株式,f株式の評価方法について検討する。 (3)c株式の評価方法について財産評価基本通達(平成12年課評2-4,課資2-249による改正前のもの)185は,企業の継続を前提とした場合においても,1株当たりの純資産価額の算定に当たり法人税額等相当額を控除することとしており,これは,平成7年2月当時において,一般に通常の取引における当事者の合理的意思に合致するものとして,法人税基本通達(平成12年課法2-7による改正前のもの)9-1-14(4)にいう「1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」に当たるというべきである。そして,このような価 法人税基本通達(平成12年課法2-7による改正前のもの)9-1-14(4)にいう「1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」に当たるというべきである。そして,このような価額によって株式の価額を評価し,これを前提に法人の収益の額を算定することは,法人税法の解釈として合理性を有するといい得る。そこて,本件においては,関係法人がc株式について法人税等相当額を控除しない方式で評価する方が適切であると認識していたことを窺い知る証拠はないから,cの1株当たりの純資産価額の評価においては,法人税額等相当額を控除すべきである。 (4)c及びdが保有するe株式の評価方法について甲159の③,249,乙86及び弁論の全趣旨によれば,平成7年2月当時,e株式は,非上場株式であり,気配相場や独立当事者間の適当な売買実例がなく,その公開の途上になく,同社と事業の種類や収益の状況等において類似する法人がなかったと認められる。次に,甲156,159の③,249及び弁論の全趣旨によれば,平成7年2月当時におけるc及びその同族関係者に当たるdのeの株式の持株割合は,28.4%ないし31.8%- 26 -であり,他方その筆頭株主の持株割合は,51.1%ないし45.6%であることが認められる。すると,c及びdは,財産評価基本通達(平成15年課評2-15,課資2-5,課審5-9による改正前のもの)188(1)の同族会社に当たらず,c及びdが保有するe株式は,同通達188(1)にいう「同族株主のいる会社の株主のうち,同族株主以外の株主が取得した株式」に当たるから,同通達188,財産評価基本通達(平成10年課評2-5,課資2-240による改正前のもの)186-2においては,配当還元方式により評価すべきこととなる。 しかし,c及びdが保有するe株式 当たるから,同通達188,財産評価基本通達(平成10年課評2-5,課資2-240による改正前のもの)186-2においては,配当還元方式により評価すべきこととなる。 しかし,c及びdが保有するe株式の割合は,28.4%ないし31.8%であることからすると,c及びdが単に配当を期待してe株式を保有していたといえないこともあり,このような場合には,同株式を配当還元方式によって評価することが著しく不合理な結果を生じさせるなど課税上の弊害をもたらす場合もあると考えられる。 そこで,e株式を配当還元方式によって評価することが著しく不合理な結果を生じさせないかどうかについて検討すると,甲151,159の③,249,乙71,乙85ないし87,弁論の全趣旨によれば,(ア)cは,eの設立に関与し,筆頭株主に次ぐ株主グループとして,cの代表取締役のs及び取締役のjが取締役に就任していたこと,(イ)平成7年3月のeの第三者割当増資の際,上記s及びjが株式の割当てを受けたこと,(ウ)cでは,同業のeの経営方針について取締役会で協議をするなど,同社の事業経営に関心を有していたといい得ること,(エ)e株式を配当還元方式で評価すると1株につき約6万円であるのに対し,時価純資産価額方式で評価すると265万円であること,(オ)被控訴人は,本件増資のころ,そのメディア事業の一環として,100%出資の株式会社nを設立し,テレビ・ラジオ等の情報媒体の企画・制作及び販売等を事業目的としていたことが認められる。 このような事実によると,eの28.4%ないし31.8%の持株割合が- 27 -あり,筆頭株主グループに次ぐ株主グループであったc及びdが単に配当を期待してe株式を保有していたと解することは相当でなく,c及びdは,eの事業経営につき上記持株割合に基づく影響力を有していたと -あり,筆頭株主グループに次ぐ株主グループであったc及びdが単に配当を期待してe株式を保有していたと解することは相当でなく,c及びdは,eの事業経営につき上記持株割合に基づく影響力を有していたと推認するの相当である。そして,本件増資当時,aが被控訴人の100%出資のいわゆるペーパーカンパニーであったことは,前記第3の1記載のとおりである。したがって,c及びdが保有していたe株式を配当還元方式によって評価すると著しく不合理な結果を生じさせて課税上の弊害をもたらすということができ,そして,上記のようにe株式は非上場株式であり,気配相場や独立当事者間の適当な売買実例がなく,その公開の途上になく,同社と事業の種類や収益の状況等において類似する法人がなかったと認められるから,上記e株式は時価純資産価額方式で評価するのが相当である。なお,上記のようにcの純資産価額の算定において法人税額等相当額を控除するから,eの純資産価額については,重ねて法人税額等相当額を控除することなく,これを算定すべきである。 (5)aが保有するf株式の評価方法について甲154の①②,249及び弁論の全趣旨によれば,平成7年2月当時,f株式は,非上場株式であり,気配相場や独立当事者間の適当な売買実例がなく,その公開の途上になく,同社と事業の種類や収益の状況等において類似する法人がなく,そして,上記当時におけるa及びその同族関係者のf株式の持株割合は,21.4%であり,他方その筆頭株主の持株割合は,38. 3%であることが認められる。すると,a及びその同族関係者は,財産評価基本通達(平成15年課評2-15,課資2-5,課審5-9による改正前のもの)188(1)の同族会社に当たらず,a及びその同族関係者が保有するf株式は,同通達188(1)にいう「同族株主のいる会社の株主 通達(平成15年課評2-15,課資2-5,課審5-9による改正前のもの)188(1)の同族会社に当たらず,a及びその同族関係者が保有するf株式は,同通達188(1)にいう「同族株主のいる会社の株主のうち,同族株主以外の株主が取得した株式」に当たるから,同通達188,財産評価基本通達(平成10年課評2-5,課資2-240による改正前のもの)18- 28 -6-2においては,配当還元方式により評価すべきこととなる。 しかし,a及びその同族関係者が保有するf株式の割合が21.4%であることからすると,aが単に配当を期待してf株式を保有していたといえないこともあり,このような場合には,同株式を配当還元方式によって評価することが著しく不合理な結果を生じさせるなど,課税上の弊害をもたらす場合もあると考えられる。 そこで,f株式を配当還元方式によって評価することが著しく不合理な結果を生じさせないかどうかを検討すると,前記争いのない事実等,甲249及び弁論の全趣旨によれば,(ア)本件増資当時,aとその同族関係者は,筆頭株主グループに次ぐ株主グループとして,その代表取締役のjが取締役に就任していたこと,(イ)f株式を配当還元方式で評価すると1株につき8万円であるのに対し,時価純資産価額方式で評価すると526万9384円であることが認められる。そして,本件増資のころ,(ウ)被控訴人が,メディア事業の一環として,テレビ・ラジオ等の情報媒体の企画・制作及び販売等を事業目的とする100%出資の会社を設立したこと,(エ)aが被控訴人の100%出資のいわゆるペーパーカンパニーであったことは,前記のとおりである。加えるに,被控訴人が平成7年3月13日にfの株式1242株を1株540万円で株式会社n(被控訴人が100%出資の子会社)に売却したことは,当事者間に争い パニーであったことは,前記のとおりである。加えるに,被控訴人が平成7年3月13日にfの株式1242株を1株540万円で株式会社n(被控訴人が100%出資の子会社)に売却したことは,当事者間に争いがなく,甲1,231,乙75ないし82によれば,上記f株式の売買に当たり,被控訴人と株式会社nは,mによる同株式の時価純資産価額方式による評価に沿い,法人税等相当額を控除することなく売買代金額を算定したこと,さらに,被控訴人は,①平成7年9月29日,o株式会社株式78万株を1株510円でo株式会社αに売却した際,②平成8年9月30日,株式会社p株式400株を1株266万1000円,株式会社q株式200株を1株290万9000円で株式会社rに売却した際,③同日,株式会社r株式4300株を1株28万8000円でo株式会社か- 29 -ら取得した際も,mによる株式評価に沿い法人税等相当額を控除することなく売買代金額が算定されことが認められる。 以上のような事実によれば,aが単に配当を期待してf株式を保有していたと解するのは相当ではなく,aは,fの事業経営につき上記持株割合に基づく影響力を有していたと推認するのが相当であり,しかも,被控訴人と株式会社nは,平成7年3月13日にfの株式1242株を1株540万円で売買したのは,同株式を配当還元方式で評価するよりも時価純資産価額方式(法人税等相当額を控除しない。)による方が適切であることを認識していたものということができ,被控訴人の100%出資の子会社であるaも同様の認識であったと推認することができる。したがって,f株式を配当還元方式で評価すると著しく不合理な結果を生じさせて課税上の弊害をもたらすということができ,そして,上記のように,f株式は非上場株式であり,気配相場や独立当事者間の適当な売買実例が て,f株式を配当還元方式で評価すると著しく不合理な結果を生じさせて課税上の弊害をもたらすということができ,そして,上記のように,f株式は非上場株式であり,気配相場や独立当事者間の適当な売買実例がなく,その公開の途上になく,同社と事業の種類や収益の状況等において類似する法人がなかったから,同社の株式は時価純資産価額方式によって評価するのが相当である。 (6)なお,甲249及び弁論の全趣旨によれば,d株式も法人税額等相当額を控除せず,時価純資産価額方式で評価するのが相当であると認められる。 (7)ところで,被控訴人は,f株式とe株式は類似業種比準方式によって評価するべきであると主張する。しかし,本件全証拠によっても,上記2社と類似する法人といい得るような法人は認められない。また,被控訴人は,dを除き清算所得に対する法人税額等の控除を主張するが,本件においては,企業の継続を前提とした価値を求めるべきものであるから,清算所得に対する法人税額等を控除しないのが相当である。 被控訴人の納付すべき金額(1)甲249によれば,平成7年2月当時,①aは,f株式3559株及びc株式15万株及び別紙1の3,4記載の額の資産及び負債があること,②c- 30 -は,e株式1万0020株及びd株式200株を保有し,dは,e株式4500株を保有していることが認められる。 そして,上記1及び2によれば,上記各株式の評価方法は,c株式については,法人税額等相当額を控除して純資産価額方式に,d株式,e株式及びf株式については,いずれも法人税額等相当額を控除せずに純資産価額方式によるべきであるから,上記2の事実,甲249及び弁論の全趣旨によれば,その価額は次のとおりとなる。 e株式1株265万円(1万0020株265億5300万円)d株式1株 価額方式によるべきであるから,上記2の事実,甲249及び弁論の全趣旨によれば,その価額は次のとおりとなる。 e株式1株265万円(1万0020株265億5300万円)d株式1株5496万2051円(200株109億9241万0200円)c株式1株3万0948円(15万株46億4220万円)f株式1株529万9384円(3559株188億6050万7656円)(2)被控訴人は,本件増資前,aの全株式200株の表章する別紙1の5記載の資産を保有していたが,本件増資の結果,同社の発行済株式3200株のうち200株の株主となり,その余の資産を喪失する一方,前記争いのない事実等(3)(4)記載のとおり,bが303万0303ギルダー(1億7627万2725円相当)を払い込み,aの資産(別紙1の6記載)の3200分の3000を取得したものである。 そこで,上記(1)及び甲249によれば,本件増資後のaの資産は,f株式188億6050万7656円,c株式46億4220万円,その他の資産1億8750万2968円,合計236億9021万0624円であり,負債が34万1749円であることが認められる。したがって,aの純資産価額は,資産合計額から負債を控除した236億8986万875円に本件増- 31 -資払込額1億7627万2725円を加えた238億6614万1600円となる。 そして,aの資産価値のうち,3200株分の3000株相当額からbの本件増資払込額1億7627万2725円を控除した残額221億9823万5025円が被控訴人からbに移転したというべきであり,被控訴人は,本件事業年度において,同額の収益を得るとともに,bに対して同額の寄附金を支出したこととなる。 したがって,被控訴人の納付すべき税額は,別紙3のと 控訴人からbに移転したというべきであり,被控訴人は,本件事業年度において,同額の収益を得るとともに,bに対して同額の寄附金を支出したこととなる。 したがって,被控訴人の納付すべき税額は,別紙3のとおり83億7035万5400円となる。また,これに対する過少申告加算税を国税通則法65条1,2項に従って算出すると,12億0082万6500円となる。 その余の争点について(1)法132条1項1号の適用について以上によれば,本件においては,法132条1項1号を適用する場合に当たらない。 (2)被控訴人は,控訴人の法22条2項に関する主張が民訴法157条1項に反するなどとして,許されないと主張する。 そこで検討すると,本郷税務署長は,平成10年12月18日本件両処分をした際,本件増資により被控訴人とbの持株割合に変化を生じた事実(本項において「対象事実」という。)が課税要件を満たすとし,審査請求及び本件訴訟(平成12年3月24日提起)において,同族会社における行為計算の否認(法132条1項1号)を主張しながら,平成13年7月30日(原審第6回口頭弁論期日)になって,無償による資産の譲渡等(法22条2項)を主張するに至った。以上は,争いのない事実等か,記録上明らかな事実である。 ところで,上記両規定による課税要件は,対象事実は共通であるものの,それが,①資産の譲渡等に該当するものであるか(法22条2項),②資産- 32 -の譲渡等に当たるかどうかはともかく,行為計算として否認されるべきものであるか(法132条1項1号)との点において,課税要件を異にしているから,控訴人の主張するような専ら法的な主張の相違ということができないことは明らかである。もっとも,これら両規定は,対象事実によって被控訴人が資産又は資産価値を失い,これをbが取得する 異にしているから,控訴人の主張するような専ら法的な主張の相違ということができないことは明らかである。もっとも,これら両規定は,対象事実によって被控訴人が資産又は資産価値を失い,これをbが取得するに至ったと評価し得るとする点では要件を共通にし,資産等の喪失及び取得が両社の合意に基づくのか(法22条2項),合意を問うまでもなく,被控訴人の意思に基づくのか(法132条1項1号),さらに,後者については被控訴人が同族会社であることにより,課税要件が決せられる点において異なるものである。そして,本件においては,本件両処分以来,対象事実そのものは当事者双方に明確であり,対象事実をどのように評価するかが論争の中心であったということができる。そうすると,本件両処分の前提となるべき重要な対象事実が当初から明らかとなっている本件の審理経過にかんがみると,控訴人による法22条2項に基づく課税の主張は,本件訴訟の完結を遅延させるものでなく,時機に後れた攻撃防御方法には当たらないというべきである。もとより,上記のうち一方の規定に基づく課税要件を主張することが,他方の規定に基づいて課税できないことの自白になる筋合いのものでもない。 (3)被控訴人は,本郷税務署長には本件更正処分に当たり法130条2項違反があると主張する。 甲249によれば,控訴人は,本件更正処分の理由として,被控訴人の備付けの帳簿類に基づき,有価証券に係る利益の計上もれを指摘し,被控訴人が,保有するa株式に生じていた経済的利益(本件利益)を何らの対価を得ることなくbに移転させて社外に流出させたことは営利を目的とする法人が選択する行為としては不自然,不合理な行為であること,被控訴人が同族会社で,bも被控訴人と人的,資本的に密接な関係にある法人であることから成し得た行為で,営利を目的とする法人 営利を目的とする法人が選択する行為としては不自然,不合理な行為であること,被控訴人が同族会社で,bも被控訴人と人的,資本的に密接な関係にある法人であることから成し得た行為で,営利を目的とする法人として合理的に行動すれば,本件増- 33 -資決議に際し,既存株主として,bから少なくとも喪失利益相当額に見合う対価を受領するべきであるとし,本件利益の社外流出は被控訴人の利益として計上すべきであったとして,法132条1項1号(同族会社の行為又は計算の否認)の規定により課税する旨明らかにしている。 法130条2項が青色申告にかかる法人税申告について更正をする場合に理由を付記すべきものとしているのは,法が,青色申告制度を採用し,青色申告に係る所得の計算については,それが法定の帳簿書類による正当な記載に基づくものである以上,帳簿の記載を無視して更正されることがないことを納税者に保障した趣旨にかんがみ,処分庁の判断の慎重,合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,更正の理由を知らせて不服申立ての便宜を与える趣旨に出たものである。したがって,帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正する場合,帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示することを要しないし,前記理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り,法の要求する更正理由の付記として欠けるところはない。 本件についてこれをみると,本件更正処分は,帳簿の記載事実を否認することなく,これを前提とし,被控訴人が何らの対価を得ることなく保有する資産価値をbに移転させたとして,法132条1項1号を根拠としたことを示す趣旨が明らかであり,帳簿の記載以上の資料を摘示することを要しないし,処分理由の記載としても,不備はない。 被控訴人のこの点についての主張は,理由がない。 (4)被控訴人は 号を根拠としたことを示す趣旨が明らかであり,帳簿の記載以上の資料を摘示することを要しないし,処分理由の記載としても,不備はない。 被控訴人のこの点についての主張は,理由がない。 (4)被控訴人は,本訴における控訴人の理由の差替え等が許されないと主張する。 しかし,前示(1)のとおり,法22条2項及び法132条1項1号の規定の課税要件の関係及び本件事実関係にかんがみると,本件においては,本件更正処分における課税の根拠につき,訴訟に至って前者の要件を追加的に変更- 34 -し,更正の理由を変更することも許容されると解すべきである。それ故,被控訴人は,更正処分の理由の差替えについて,るる主張するが,いずれも理由がなく,また,総額主義が憲法14条1項,30条,31条又は84条に違反するとの主張も,採用することができない。 以上によれば,本件更正処分は,納付すべき税額83億7035万5400円の限度で,本件賦課決定処分は12億0082万6500円の限度で正当でるが,これらを超える部分はいずれも違法というべきである。 第4結論よって,原判決を変更し,本件更正処分のうち納付すべき税額83億7035万5400円を超える部分及び本件賦課決定処分のうち12億0082万6500円を超える部分を取り消し,その余の本件請求を棄却することとし,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民訴法67条2項,61条,64条を適用して,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第24民事部裁判長裁判官大喜多啓光裁判官園部秀穗裁判官菅原崇- 35 -(別紙) aの資産の評価額│項目価額 f株式の価額(1株当たり)188億5914万1000円(529万9000円) c株式の価額(1株当たり)82億5000万円(5万5000円 別紙) aの資産の評価額│項目価額 f株式の価額(1株当たり)188億5914万1000円(529万9000円) c株式の価額(1株当たり)82億5000万円(5万5000円) その他の資産価額1億8750万2968円 その他の負債価額34万1749円 純資産価額(増資前)272億9630万2219円 純資産価額(増資後)274億7257万4944円 本件更正処分等の基礎となる数額項目番号金額申告所得金額①0円有価証券に係る利益の計上もれ②255億7926万6285円│加算寄附金の損金不算入額③252億5952万5456円│加算金額合計(②+③)④508億3879万1741円│寄附金として損金に算入すべき金額⑤255億7926万6285円│減算繰越欠損金の当期控除額⑥3億0632万1105円│減算金額合計(⑤+⑥)⑦258億8558万7390円│差所得金額(①+④-⑦)⑧249億5320万4351円│⑧についての法人税額⑨93億5745万1500円│被控訴人の確定申告に係る法人税額⑩2億6494万2300円│本件更正処分に係る法人税額(⑨+⑩)⑪96億2239万3800円│本件賦課決定処分に係る過少申告加算税額⑫13億8863万2500円│- 36 - 被控訴人の納付すべき税額単位:円金額項目確定申告における課税所得金額① 有価証券に係る利益の計上もれ額②22,198,235,025加算金額(別紙13の③の金額) 課税所得金額寄附金の損金不算入額③21,920,757,087(注1)減算金額寄附金の損金算入額④22,198,235,025損金の額に算入される欠損金額⑤306,32 額) 課税所得金額寄附金の損金不算入額③21,920,757,087(注1)減算金額寄附金の損金算入額④22,198,235,025損金の額に算入される欠損金額⑤306,321,105課税所得金額(①+②+③-④-⑤)⑥21,614,435,982 課税所得金額に対する法人税額⑦8,105,413,125(注2) 課税土地譲渡利益金額に対する法人税額⑧299,700,000 法人税額から控除される所得税額⑨34,757,636 納付すべき税額(⑦+⑧-⑨)⑩8,370,355,400(注3)(注1)法人税法37条(平成10年法律24号改正前のもの。)の規定に基づいて寄附金の損金算入限度額を再計算した結果,新たに生じた寄附金の損金不算入額である。 (注2)⑥欄の金額に法人税法66条(平成10年法律24号改正前のもの)に規定する税率を乗じたものである。 (注3)100円未満の端数は切り捨て
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