令和6年4月26日宣告令和5年第194号殺人被告事件 主文 被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中150日をその刑に算入する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は、平成31年、A(以下「被害者A」という。)及びその前夫との間の子であるB(以下「被害者B」という。)と同居を開始し、令和3年8月、被害者Aと婚姻するとともに、被害者Bを養子とした。被告人は、同年10月に被害者Aとの間でお互いが包丁を持ち出す大喧嘩になった際、被害者Aが被告人の両親が祀られている仏壇の小物を床にばらまいたことを根に持ち、今後何かあれば被害者Aを殺害しようという気持ちを抱くとともに、被害者Aを殺害した場合には被害者Bも殺害して自殺することに決め、同年11月、殺害に用いるためのペティナイフ(以下「本件ペティナイフ」という。)を購入して被告人方に保管した。被告人は、その後も被害者両名と同居し、令和5年3月頃には被害者Aの妊娠が判明したこともあり、幸せな家庭生活を期待していたが、同年8月8日、被害者Aとの間で口論になり、顔に水をかけられたり、被告人が大切にしていた飼い犬が邪魔で旅行にも行けない旨罵られたりしたため、本件ペティナイフをズボンのポケットに隠し持ち、さらに、被害者Aが、たばこを吸いながら胎児を堕ろすなどと言ったり、ティッシュに火をつけたりした後、上記仏壇に飾られている被告人の両親の写真に点火しようとしたことから、被害者両名を殺害する意思を固めた。 (罪となるべき事実)被告人は、令和5年8月8日午後11時38分頃から同月9日午前0時49分頃までの間に、大分市ab 番地c 被告人方において、 第1 被害者A(当時38歳)に対し、殺意をもって、右手に持った本件ペティナイフで、その背部及び胸部を 38分頃から同月9日午前0時49分頃までの間に、大分市ab 番地c 被告人方において、 第1 被害者A(当時38歳)に対し、殺意をもって、右手に持った本件ペティナイフで、その背部及び胸部を突き刺し、よって、その頃、同所において、被害者Aを胸部刺創に基づく失血により死亡させ、第2 立て続けに、被害者B(当時9歳)に対し、殺意をもって、右手に持った本件ペティナイフで、その胸部を突き刺し、よって、その頃、同所において、被害者Bを胸部刺切創に基づく失血により死亡させた。 (量刑の理由)被害者2名の生命が現実に侵害された結果それ自体で極めて重い評価が導かれる上、被告人は、強固な殺意に基づき、あらかじめ用意していた殺傷力の高い凶器で、心臓を狙い、立て続けに無防備な被害者2名の胸部等を突き刺して殺害したのであり、その生命無視の態度は強いといえるし、判示の経緯に照らすと、突発的な犯行とは評価できない。動機について、被害者Aの粗暴な言動が原因となった面はあり、本件は、被告人においてそれまで我慢してきた気持ちが耐え切れなくなり爆発して実行された犯行であるが、殺害という方法を選択したことは短絡的といわざるを得ず、強い非難を免れない。特に、被害者Aを殺害した場合には被害者Bも殺害して自殺することに決めていたなどという理由で何ら落ち度のない被害者Bを殺害したことは、あまりに身勝手・理不尽であり、酌量の余地はない。本件の深刻な被害状況を前提にすると、遺族が厳重処罰を求めていることは、十分理解できる。 以上によれば、本件は、同種事案(配偶者(内縁を含む)又は子を被害者とする殺人の単独犯で、処断罪と同一又は同種の罪の件数が2~4件のもの)の中で、非常に重い部類に属するというべきである。 その上で、被告人の犯行後自殺を図るまでの行動からは被害者両 又は子を被害者とする殺人の単独犯で、処断罪と同一又は同種の罪の件数が2~4件のもの)の中で、非常に重い部類に属するというべきである。 その上で、被告人の犯行後自殺を図るまでの行動からは被害者両名を真に悼んでいた心情がうかがわれないし、捜査段階から一貫して犯行を認めているものの、遺族に対して慰謝の措置を講じておらず、反省が十分に深まっているとはいい難いこと、その他、前科前歴がないことや、年齢・健康状態も考慮し、主文の刑に処するのが相当であると判断した。 (求刑:無期懲役、弁護人の科刑意見:有期懲役)令和6年4月30日大分地方裁判所刑事部 裁判官辛島靖崇 裁判官北島聖也 裁判官山西健太
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