令和5刑(わ)258 業務上横領

裁判年月日・裁判所
令和5年9月6日 東京地方裁判所
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判決文本文2,074 文字)

令和5年9月6日東京地方裁判所刑事第8部宣告令和5年刑(わ)第258号業務上横領被告事件 主文 被告人Aを懲役5年6月に、被告人Bを懲役3年に処する。 被告人Aに対し、未決勾留日数中30日をその刑に算入する。 被告人Bに対し、この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 理由 (犯罪事実)被告人Aは、社会福祉法人C(以下、「C」という。)の理事長としてCを代表するとともに、Cの資産を管理するなどの職務に従事していたもの、被告人Bは、医療法人社団DEクリニックの院長を務めていたものであるが、共謀の上、被告人Aが、株式会社F銀行G支店に開設されたC名義の普通預金口座の預金をCのため業務上預かり保管中、別表記載のとおり(別表省略)、平成30年7月31日から令和3年4月30日までの間、31回にわたり、いずれも東京都千代田区ab丁目c番d号Hビルにおいて、ほしいままに、事情を知らない経理事務担当者に、インターネットバンキングを利用して、前記口座から株式会社I銀行J支店に開設されたEクリニックB名義の普通預金口座に現金合計5億6833万3323円を振込入金させて横領した。 (量刑の理由) 1 被告人両名は、社会福祉法人を経営する立場(経営権)を有償で譲渡することが法令上想定されておらず、資金の法人外への流出が許されていないにもかかわらず、Cの経営権を被告人Bが被告人Aに総額42億円で譲渡し、そのうち22億円については10年以内に分割で支払う旨の契約を締結した。本件は、その分割払いの一環として、被告人両名が共謀の上、被告人Aが業務上保管していたCの預金口座から被告人Bの預金口座に現金合計5億6800万円余りを振込送金 して横領したという事案である。 2 本件の横領額は前記 して、被告人両名が共謀の上、被告人Aが業務上保管していたCの預金口座から被告人Bの預金口座に現金合計5億6800万円余りを振込送金 して横領したという事案である。 2 本件の横領額は前記のとおり極めて多額であって被害結果は大きく、Cの資金繰りが悪化して民事再生を余儀なくされた一因ともなっている。 被告人両名は、社会福祉法人の資金を法人外に流出させることが法令上許されないものであることを知りながら、被告人AはCの内部留保金を自分が経営する法人グループの資金繰りに利用することも考え、被告人Bは自らが設立して運営してきたCを売却して経済的利益を得ようと企て、本件犯行に至ったものであり、いずれの犯行動機にも酌量の余地は乏しい。 また、本件支払いを正当化するため、C傘下の各施設が被告人Bが院長を務めるEクリニックに医療協力等を委託する旨の実態を十分に伴わない契約書を作成している点でも犯行態様は芳しくない。 被告人Aは、Cの理事長の立場を利用して、業務上保管する預金口座を私物化し、ほしいままに、事情を知らない経理事務担当者に指示して振込送金をさせたものであり、本件犯行を主導したものといえ、その刑事責任は非常に重い(なお、被告人Aの弁護人は、Cの経営権譲渡を主導的に進めたのは被告人Bであり、具体的な譲渡スキームも仲介ブローカーが調整したものであるから、被告人Aが本件犯行を主導したとはいえないと主張する。しかし、被告人Aは、具体的な譲渡スキームの内容を十分に認識した上で譲渡に係る契約を締結したものであり、本件横領行為の実現には理事長であった被告人Aによる送金指示が不可欠であったことは明らかであるから、前記主張は採用できない。)。 被告人Bも、本件犯行の前提となるCの経営権譲渡に積極的に関わり、本件犯行では、業務上占有者の身分がなか 人Aによる送金指示が不可欠であったことは明らかであるから、前記主張は採用できない。)。 被告人Bも、本件犯行の前提となるCの経営権譲渡に積極的に関わり、本件犯行では、業務上占有者の身分がなかったとはいえ、自らの経済的利益のために犯行に関与したもので、その刑事責任は相応に重い。 3 他方、被告人Bは、自己が代表を務める会社から資金を借り入れ、本件横領額に遅延損害金9100万円余りを加えた約6億6000万円を被害弁償としてCの清算法人に支払っている。そして、被害弁償の原資は被告人Bが出捐したとは いえ、本件被害が回復されたことは、被告人Aとの関係でも斟酌すべきである。 このほか、被告人両名とも本件を認めて反省の言葉を述べており、いずれも前科前歴がないことなど、酌むべき事情も認められる。 4 以上によれば、被告人Aについては、酌むべき事情を十分に考慮しても相当期間の実刑に処すことが避けられないが、被告人Bについては、業務上占有者の身分がなく、単純横領罪の刑が科されることに加えて、斟酌すべき事情を考慮し、社会内で更生する機会を与えるのが相当であると判断した。 (求刑被告人Aにつき懲役8年、被告人Bにつき懲役4年)令和5年9月6日東京地方裁判所刑事第8部 裁判官染谷武宣 (別表省略)

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