令和3(行ウ)6 公務外災害認定処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年3月7日 青森地方裁判所
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判決文本文46,715 文字)

主文 1 本件訴えのうち、地方公務員災害補償基金青森県支部長に対し公務災害認定の義務付けを求める部分を却下する。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 地方公務員災害補償基金青森県支部長(以下「処分行政庁」という。)が、原告に対して、平成30年3月19日付けで行った地方公務員災害補償法に基づく公務外災害認定処分を取り消す。 2 処分行政庁は、原告に対し、平成29年5月16日付けでした公務災害認定請求について、地方公務員災害補償法に基づき公務災害と認定せよ。 第2 事案の概要等 1 本件は、青森県警察本部(以下「県警本部」という。)交通部交通企画課(以下「交通企画課」という。)の課長補佐(階級は警部)として勤務していた警察官である亡A(当時55歳。以下「亡A」という。)が、平成28年7月5日に自死したことにつき、亡Aの妻である原告が、亡Aは、上司である交通部管理官(警視)らからいじめを受け、業務負担の軽減がないまま長時間の時間外勤務に従事するなどし、担当していた事業案が課内で却下されたため、うつ病を発症・悪化させて自死したものであり、公務災害に該当すると主張して、処分行政庁である被告の青森県支部長に対し、地方公務員災害補償法(以下「法」という。)に基づき、公務災害認定請求をしたところ、処分行政庁が、法24条2項及び45条1項に基づいて公務外の災害である旨の処分をしたことから、被告に対し、この処分の取消し及び公務災害認定処分の義務付けを求めた事案である。 2 関係法令等の定め法(地方公務員災害補償法)、地方公務員災害補償法施行規則(以下「規則」と いう。)、被告の行政基準である「精神疾患等の公務災害の認定に けを求めた事案である。 2 関係法令等の定め法(地方公務員災害補償法)、地方公務員災害補償法施行規則(以下「規則」と いう。)、被告の行政基準である「精神疾患等の公務災害の認定について」(平成24年3月16日地基補第61号。第3次改正令和6年3月22日地基補第132号。以下「認定基準」という。乙40)及び「「精神疾患等の公務災害の認定について」の実施について」(平成24年3月16日地基補第62号。第3次改正令和6年3月22日地基補第133号。以下「運用基準」という。乙41)のうち、本件に関する部分の概要は、別紙(関係法令等の定め)のとおりである。 3 前提事実(争いがない事実、後掲証拠及び弁論の全趣旨により認められる。)⑴ 当事者等ア原告は、昭和63年に亡A(昭和▲▲年▲月生)と婚姻した妻であり、亡Aの「遺族」(法25条2項)に当たる。(甲3)イ亡Aは、昭和58年4月に青森県警察(以下「青森県警」という。)に採用され、平成26年4月から平成28年3月まで、むつ署(以下、警察署を「署」という。)の交通課長として勤務した後、同年4月1日から、県警本部の交通企画課課長補佐(階級は警部)として勤務していたが、その後、うつ病にり患し、同年7月5日未明、自宅で自死した。(争いがない)ウ平成28年4月から亡Aが自死するまでの交通企画課の人員配置は、課長が警視B(以下「B課長」という。)、次長(交通部管理官)が警視C(以下「C管理官」という。)、交通企画官兼交通事故分析官兼高齢者交通安全対策室長が警視D(以下「D企画官」という。)であり、交通企画官の下に、企画係担当の課長補佐(以下「企画担当補佐」という。)1名(警部)と安全教育係及び事故分析係担当の課長補佐(以下「安全担当補佐」という。)1名(亡A)が置か 官」という。)であり、交通企画官の下に、企画係担当の課長補佐(以下「企画担当補佐」という。)1名(警部)と安全教育係及び事故分析係担当の課長補佐(以下「安全担当補佐」という。)1名(亡A)が置かれており、安全教育係は係長が警部補E(以下「E係長」という。)、主任が巡査部長F(以下「F主任」という。)であった。なお、以下では、県警本部長を「本部長」、県警本部交通部長を「交通部長」という。(乙32、弁論の全趣旨)⑵ 本件訴訟に至る経緯 ア原告は、亡Aが自死したことが公務上の災害に当たると主張して、処分行政庁に対し、平成29年5月16日付けで、公務災害の認定を請求したところ、処分行政庁は、平成30年3月19日付けで、公務外の災害と認定する処分(以下「本件処分」という。)をした。原告は、同月23日、本件処分がされたことを知った(争いがない。被告準備書面⑵)。(甲1、26)イ原告は、裁決庁である被告の青森県支部審査会に対し、平成30年6月23日、本件処分を取り消すとの裁決を求める審査請求をした。裁決庁は、令和3年3月31日付けで、同審査請求を棄却した。(甲2、弁論の全趣旨)ウ原告は、令和3年8月18日、被告に対し、本件処分の取消し及び公務災害認定処分の義務付けを求める訴えを提起した。 第3 争点及び争点に対する当事者の主張本件の争点は、亡Aがうつ病を発症して自死したことにつき公務起因性が認められるか否かである。 (原告の主張) 1 亡Aのうつ病の発症時期と公務起因性の判断対象についてうつ病を発症して自死した場合の公務起因性を判断する上では、自死までの事実経過は全て考慮すべきである。また、医学的意見によれば、亡Aは平成28年「5月頃」にうつ病を発症したとされているところ、認定基準(対象疾病発症前の た場合の公務起因性を判断する上では、自死までの事実経過は全て考慮すべきである。また、医学的意見によれば、亡Aは平成28年「5月頃」にうつ病を発症したとされているところ、認定基準(対象疾病発症前の概ね6か月の間に業務により強度の精神的又は肉体的負荷を受けた)を踏まえるとしても、発症時期を5月31日までに限定する趣旨とはいえず、前後の月を含めるのが通常の読み方であるから、亡Aが自死した同年7月5日の前日から概ね6か月の出来事を考慮すべきである。さらに、亡Aのうつ病が重症化したことについては、業務による精神的負荷によって自然的経過を超えて著しく悪化したものであり、悪化部分について公務起因性が認められる。 2 亡Aが受けた精神的負荷亡Aは、業務負担が軽減されることなく、孤立した状態で長時間勤務を余儀な くされた上、上司及び部下からいじめを受け、担当した事業案が却下された。これらの出来事は、単独でも強度の精神的負荷を与える事象(規則別表第一の九)に当たるものであり、これらを総合考慮すれば優に公務起因性が認められる。 ⑴ 交通企画課における職務内容について交通企画課課長補佐として異動後の亡Aの業務は、デスクワークが中心となり、県警本部には一線署とは異なる責任の重さがあるなど、それまでのむつ署における業務とは異質であった。亡Aが担当した安全教育係は、年度当初が繁忙期に当たり、亡Aは、慣れない仕事に追われて業務の遅滞も生じた。これらは、運用基準の別表である業務負荷の分析表(乙41の別表)における「専門知識を必要とする業務に未経験者として従事した」、「業務を一任されて一定の成果を要求された」の例示にも当たり、認定基準の「人事異動等による、急激かつ著しい職務内容の変化を伴う業務に従事したと認められる場合」に該当し、強度の精神 として従事した」、「業務を一任されて一定の成果を要求された」の例示にも当たり、認定基準の「人事異動等による、急激かつ著しい職務内容の変化を伴う業務に従事したと認められる場合」に該当し、強度の精神的負荷を与えるものであった。 ⑵ 重点枠事業及び事業案の却下について重点枠事業は、青森県が抱える問題に対処するため特別の予算が充てられる重要施策であり、亡Aは、知識・経験がないまま、厳格な期限設定の下、交通企画課の担当者として事業案を企画・立案することが求められ、本部長に対する説明も予定されるなど、強い精神的負荷がかかっていた。平成28年4月下旬以降、交通企画課において事業案の検討会が月に数回開催されたが、亡Aは、上司らの質問に回答できず、亡Aの事業案は繰り返し修正が求められた。亡Aは、期限に遅れつつも作業を進め、同年6月29日の検討会において亡Aの事業案は概ね承認された。ところが、同年7月4日の検討会において亡Aの事業案は予算が高すぎるとの理由で突如却下された。この時点で本部長に対する説明等のスケジュールに間に合わないことが確定し、亡Aは強い精神的打撃を受け、翌5日に自死した。以上の経過は、業務負荷の分析表に例示されている「責任ある地位に就いたが職責を果たせなかった」にも当たるものであり、強度の 精神的負荷を受けた場合に当たるというべきである。 ⑶ C管理官による嫌がらせやいじめについてC管理官は、亡Aに対し、①亡Aが決裁に上げた書類につき恣意的に決裁を止めて繰り返し修正を求める、②「はやぐ調べろ」などと頻繁に怒鳴ったりして理不尽な叱責を行う、③国民安全の日の企画につき例年は企画をしていないのに亡Aが企画していないことについては殊更に批判した、④時間外手当の支給やボーナスの査定で亡AとF主任との間で差別的な取扱い て理不尽な叱責を行う、③国民安全の日の企画につき例年は企画をしていないのに亡Aが企画していないことについては殊更に批判した、④時間外手当の支給やボーナスの査定で亡AとF主任との間で差別的な取扱いをする、などした。 これらは、業務負荷の分析表における「上司等からパワーハラスメントを受けた」、「上司との間でトラブルがあった」の例示にも当たり、認定基準の「職場でひどい嫌がらせ、いじめ又は暴行を執拗に受けたと認められる場合」に該当し、強度の精神的負荷を与えるものであった。 ⑷ F主任の不協力についてF主任は、前年度も安全教育係で勤務し、安全教育係の業務に通じていたため、交通企画課が初めての亡AにとってF主任の協力が得られなければ業務を円滑に行うことが困難であった。しかるにF主任は、亡Aに対し、業務を遂行する上で必要な情報を教えず、亡Aは職場で孤立した。これらは、業務負荷の分析表における「上司等からパワーハラスメントを受けた」、「部下との間でトラブルがあった」の例示にも当たり、認定基準の「職場でひどい嫌がらせ、いじめ又は暴行を執拗に受けたと認められる場合」に該当する。 ⑸ 時間外勤務について被告が主張する時間外勤務(後掲の表2)は、亡Aの時間外勤務の申告に基づいて集計されたものであるが、①早出残業(むつ署では午前7時10分頃に出勤して1時間20分の早出残業、交通企画課では午前7時30分頃に出勤して1時間の早出残業)、②終業時刻後も申告の有無にかかわらず恒常的に2時間程度残業していた、③申請なく休日出勤した日があることが、いずれも考慮外とされている点で、亡Aの勤務実態が反映されていない。これらを考慮した 場合の時間外勤務は表1のとおりとなり、このように長時間の時間外勤務は強度の精神的負荷を与えた。さらに、亡Aが自死の直前 れている点で、亡Aの勤務実態が反映されていない。これらを考慮した 場合の時間外勤務は表1のとおりとなり、このように長時間の時間外勤務は強度の精神的負荷を与えた。さらに、亡Aが自死の直前に14日間にわたり連続勤務をしたことも強い精神的負荷を与えたものというべきである。 (表1)期間時間外勤務時間数平成28年1月116時間00分平成28年2月144時間30分平成28年3月103時間45分平成28年4月94時間45分平成28年5月97時間00分平成28年6月81時間15分(被告の主張) 1 亡Aのうつ病の発症時期と公務起因性の判断の対象について医学的意見を踏まえると、亡Aは、平成28年4月19日以降に不適応状況に陥り、同年5月頃に中等度のうつ病を発症し、同年6月頃に重症度うつ病へと症状が進行したと認められる。認定基準によれば、対象疾病発症前の概ね6か月の間に、業務により強度の精神的又は肉体的負荷を受けたことが認められることが公務起因性を認める上での要件の一つとなっているから、亡Aがうつ病を発症したと認められる同年5月末までの出来事が判断の対象となる。その後の出来事については、公務外で発症した対象疾病が強度の業務負荷によって自然経過を超えて著しく悪化したと医学的に判断されるかどうかという観点から、その悪化した部分につき公務起因性を判断すべきである。 2 亡Aが受けた精神的負荷原告の主張する出来事は、いずれも強度の精神的負荷を与える事象(規則別表第一の九)といえず、これらを総合評価したとしても公務起因性は認められない。 ⑴ 交通企画課における職務内容について 亡Aは、むつ署から交通企画課へ異動し、デスクワーク中心の企画立案業務に従事したところ、交通 合評価したとしても公務起因性は認められない。 ⑴ 交通企画課における職務内容について 亡Aは、むつ署から交通企画課へ異動し、デスクワーク中心の企画立案業務に従事したところ、交通企画課では、それまでの一線署の交通課での経験を十分に生かすことができたし、かつては県警本部での勤務経験もあり、一線署の交通課長として管理・企画業務も経験していたから、急激かつ著しい職務内容の変化を伴う業務に従事したとはいえない。また、亡Aは業務が滞っていたが、上司らの判断によって重点枠事業に専念できるように業務の一部が軽減されてもいた。したがって、強度の精神的負荷を与える事象とはいえない。 ⑵ 重点枠事業及び事業案の却下について重点枠事業は、一部をE係長が担当していたし、その余の亡Aが担当していた事業案についても、自動車学校の企画をそのまま用いたものであるなど負担が重かったとはいえない。交通企画課内で検討会が開かれたのは、亡Aを支援して事業案を進めるためであり、亡Aが責任を追及される場であったわけではない。亡A及びE係長が担当していた事業案が却下されたことについても、職業人であれば企画案が却下されることは通常あり得ることである。したがって、強度の精神的負荷を与える事象とはいえない。 ⑶ C管理官による嫌がらせやいじめについてC管理官は、亡Aの決裁伺いに不足があったことから、必要な修正を求めたにすぎず、理由もなく決裁を止めたことはない。業務が滞っていた亡Aの仕事の進め方等について指導することもあったが、理不尽な叱責や不当な批判をしたり、怒鳴ったり人格を否定するような言動をしたりしたことはない。また、C管理官がF主任を評価していたことは事実であるが、B課長らも同様の評価をしていたのであり、C管理官が亡Aを差別的に取り扱ったことはな 怒鳴ったり人格を否定するような言動をしたりしたことはない。また、C管理官がF主任を評価していたことは事実であるが、B課長らも同様の評価をしていたのであり、C管理官が亡Aを差別的に取り扱ったことはない。したがって、強度の精神的負荷を与える事象とはいえない。 ⑷ F主任の不協力についてF主任は、亡Aの負担を軽減するため、亡Aの業務の多くを担当することとなって多忙を極めていた。亡Aからの質問に簡潔にしか答えなかったことはあ るが、殊更に無視したり意図的に回答しなかったりしたことはない。 ⑸ 時間外勤務について亡Aの時間外勤務時間は、届出があったものを考慮し(届出のない残業は考慮すべきでない。)、届出のあった時間外勤務を集計して総勤務時間数を算出したものから週当たり40時間を差し引いて求めると、表2のとおりとなる(処分行政庁の認定と同じである。甲1[27頁])。亡Aは、平成28年5月頃にうつ病を発症したところ、表2によると、認定基準のうち、「発症直前の1か月に概ね160時間を超えるような、又は発症直前の3週間に概ね120時間以上の時間外勤務」、「発症直前の連続した2か月間に1月当たり概ね120時間以上の、又は発症直前の連続した3か月間に1月当たり概ね100時間以上の時間外勤務」、「発症直前の1か月以上の長期間にわたって、質的に過重な業務を行ったこと等により、1月当たり概ね100時間以上の時間外勤務」のいずれにも該当せず、強度の精神的負荷を与える事象とはいえない。 (表2)期間時間外勤務時間数平成28年1月3日~同年2月1日70時間30分平成28年2月2日~同年3月2日139時間15分平成28年3月3日~同年4月1日50時間00分平成28年4月2日~同年5月1日58時間45分 日~同年2月1日70時間30分平成28年2月2日~同年3月2日139時間15分平成28年3月3日~同年4月1日50時間00分平成28年4月2日~同年5月1日58時間45分平成28年5月2日~同年5月31日60時間45分平成28年6月1日~同年6月30日78時間15分第4 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実、後掲証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる(以下では、平成28年中の年月日については年の表記を省略することがある。)。 ⑴ 亡Aの青森県警における勤務歴は次に掲げるとおりであり、最初に配属され た八戸署外勤課での勤務を除けば、全てが一線署又は県警本部の交通畑での勤務であった。(前提事実⑴イ、甲1、2、26[41頁]、乙31、弁論の全趣旨)昭和58年4月青森県巡査拝命同年10月八戸署外勤課昭和60年4月八戸署交通第二課昭和63年4月八戸署交通第一課平成元年4月五所川原署交通課平成4年4月蟹田署交通係平成5年4月野辺地署交通課(任巡査部長)平成7年4月県警本部交通部交通指導課指導取締り係平成10年4月青森署交通第一課平成14年4月八戸署交通第一課平成16年4月五所川原署交通課(任警部補)平成18年4月青森署交通第一課平成20年4月県警本部交通部運転免許課行政処分係平成25年4月野辺地署交通課長(任警部)平成26年4月むつ署交通課長兼運転免許課むつ自動車運転免許試験場長平成28年4月1日県警本部交通部交通企画課課長補佐平成28年7月5日自死⑵ むつ署における亡Aの勤務状況等ア亡Aは、平成26年4月1日から平成28年3月31日まで、むつ署交通課長兼県警本部交通部運転免 本部交通部交通企画課課長補佐平成28年7月5日自死⑵ むつ署における亡Aの勤務状況等ア亡Aは、平成26年4月1日から平成28年3月31日まで、むつ署交通課長兼県警本部交通部運転免許課むつ自動車運転免許試験場長として勤務し(階級は警部)、この間、青森市内の自宅に妻である原告を残しての単身赴任であった。当時のむつ署長は、警視B(後に交通企画課長として亡Aと同じ頃に県警本部に転出するB課長)であり、亡Aとは従前から懇意の間柄で あった。(乙36、証人B、原告本人、弁論の全趣旨)イ亡Aの担当業務は、交通課長としては、業務管理全般(署長等の補佐、本部主管課・各課との連絡調整、課員勤務調整、事件・事故指揮、課員への指示・教養)、関係機関団体等との連絡調整、安全講話の実施、会合・イベントへの参加、報道依頼作業等であり、むつ自動車運転免許試験場長としては、運転免許更新、運転免許試験等の業務管理であったが、交通課長としての業務が主であった。(乙36、弁論の全趣旨[被告準備書面⑸の別紙1])ウ亡Aは、定年までむつ署での勤務を希望していたが、平成28年3月10日頃、県警本部交通企画課課長補佐への異動が内示された。亡Aは、3月末に青森市内の自宅に引っ越して単身赴任を解消し、同年4月1日付けで異動した。この異動は、一般的にいえばいわゆる栄転であった。他方、むつ署長であったBは、同年3月下旬、交通企画課長として亡Aより先に県警本部に異動した。(乙36、証人B[4頁]、原告本人、弁論の全趣旨)⑶ 交通企画課の人員等ア県警本部交通部には、交通企画課、交通規制課、交通指導課、運転免許課、交通機動隊及び高速道路交通警察隊があり、交通企画課は、交通部の筆頭課に位置付けられている。平成28年4月当時の交通企画課の人員は、課長 部交通部には、交通企画課、交通規制課、交通指導課、運転免許課、交通機動隊及び高速道路交通警察隊があり、交通企画課は、交通部の筆頭課に位置付けられている。平成28年4月当時の交通企画課の人員は、課長が警視B(B課長)、次長(交通部管理官)が警視C(C管理官)、交通企画官兼交通事故分析官兼高齢者交通安全対策室長が警視D(D企画官)であり、その下に、いずれも警部である企画担当補佐1名と安全担当補佐(安全教育係及び事故分析係担当)である亡Aがおり、安全教育係の係長が警部補E(E係長)、主任が巡査部長F(F主任)であった。(前提事実⑴ウ、乙31、32、36、証人B、弁論の全趣旨)イ亡Aの上司について(ア) B課長については上述のとおりである。 (イ) C管理官は、亡Aより1年後れて青森県警に採用され、採用年次上は亡 Aが先輩に当たる。C管理官と亡Aは、初任地がいずれも八戸署であってその頃から面識があった。C管理官は、交通企画課を含めて交通畑での経験が長く、平成28年3月に交通企画課の次長(交通部管理官)となり、同年4月1日に交通企画課に異動してきた亡Aの上司(階級も上位)となった。(乙36、弁論の全趣旨[被告準備書面⑴14頁])ウ亡Aの部下(安全教育係)について(ア) E係長(警部補)は、平成28年4月1日に交通企画課に異動し、係長として着任した。なお、同人は、平成23年度に安全教育係の主任として勤務したことがある。(乙37、証人E[26頁]、弁論の全趣旨)(イ) F主任(巡査部長)は、前年度も安全教育係の主任として勤務していた。 (甲26[161頁]、弁論の全趣旨)⑷ 亡Aが、安全担当補佐として担うこととされていた業務は、以下のとおりである。(乙33、弁論の全趣旨[被告準備書面⑸の別紙1])ア安全教育 務していた。 (甲26[161頁]、弁論の全趣旨)⑷ 亡Aが、安全担当補佐として担うこととされていた業務は、以下のとおりである。(乙33、弁論の全趣旨[被告準備書面⑸の別紙1])ア安全教育係関係(ア) 新規重点枠事業の予算に関する企画・立案重点枠事業とは、青森県の基本計画に基づき、青森県が抱える問題等に対応するため、特別に予算が編成され、事業年度を2年として実施される事業であり、県警本部を含む県の各組織において企画・立案及び実施がされるものである。なお、平成28年度の新規事業の企画・立案(以下、新規事業の企画案を「事業案」ともいう。)は、安全教育係が担当することになっていた。(乙8~10、弁論の全趣旨[被告準備書面⑵])(イ) 2年目の重点枠事業の予算執行(ウ) 挨拶文作成、表彰団体関係挨拶文作成は、行事等に出席する本部長や交通部長の挨拶文を起案する業務である。担当の課長補佐が起案した挨拶文は、主にC管理官が文面や決裁資料等の内容を点検し、必要に応じて修正を指示した上で、C管理官 の決裁を経てほぼ完成したものがB課長の決裁に付されていた。(乙34~36、証人B[7~9頁]、弁論の全趣旨)(エ) 各イベント日程調整・派遣要員手配(オ) 通達・事務連絡文書の起案(カ) その他安全教育係関係全般イ事故分析係関係交通事故の分析と交通事故統計に関すること⑸ 平成28年4月の亡Aの業務等についてア安全教育係の業務は、例年4月に交通安全運動が実施されるなど、年度初めは多忙になるところ、亡Aは、4月の全国交通安全運動の定期大会や関係団体の総会等における本部長や交通部長の挨拶文を起案した際、その決裁過程でC管理官から度々修正を指示され、完成までに通常よりも長い時間を要した。本 ろ、亡Aは、4月の全国交通安全運動の定期大会や関係団体の総会等における本部長や交通部長の挨拶文を起案した際、その決裁過程でC管理官から度々修正を指示され、完成までに通常よりも長い時間を要した。本部長の挨拶文は、前年度の挨拶文を踏襲すれば足りるというものではなく、県知事の挨拶文との重複を避けるための下調べをしたり、挨拶文の内容が正しいか否かを判断するための決裁資料を添付したりすることが必要となるが、B課長からみても亡Aはその点に不足があることが多く、C管理官の指導を受けがちであった(もっとも、C管理官は、企画担当補佐の起案に対しても度々修正を指示していた。)。亡Aは、他の本来業務に時間を十分に割くことができず、自身の業務が滞っており、これをD企画官、E係長、F主任が肩代わりすることも多かった。(甲9の7[当時の交通企画課員からの聴取結果。被聴取者はE係長と推認される。]、9の8[同。被聴取者はF主任と推認される。]、乙29の1[当時の交通企画課員が本部長宛てに作成した上申書。作成者はB課長と推認される。]、29の2[同。作成者はC管理官と推認される。]、29の3[同。作成者はD企画官と推認される。]、29の9[同。作成者はE係長と推認される。]、29の10[同。作成者はF主任と推認される。]、36、37、証人E、証人B[7~10、38頁]、 弁論の全趣旨)イ亡Aは、後輩であるC管理官が交通企画課では上司となって指示・指導を行うことに複雑な思いを抱いており、そうした思いを日々の予定を記載したダイアリー(以下「ダイアリー」という。)に記載していた。また、E係長からみても、C管理官と亡Aとは互いに牽制している様子があった。例えば、C管理官が、亡Aに対し、①F主任をして一人で自動車を運転させて出張させようとした判断を咎め う。)に記載していた。また、E係長からみても、C管理官と亡Aとは互いに牽制している様子があった。例えば、C管理官が、亡Aに対し、①F主任をして一人で自動車を運転させて出張させようとした判断を咎めたり(ダイアリーに「Fが大鰐に行くに際し、管理官がどなる」(4月19日)との記載がある。最終的にはC管理官の指示により亡AとF主任の二人で出張した。甲26[114頁])、②表彰基準について調べるように指示したり(ダイアリーに「表彰すぐ調べろ~何んと言う頭ごなし管理官課長が居ない時に限ってどなるイジメ」(4月21日~22日)との記載がある。)した際に、亡Aはこれを一方的ないし理不尽に感じるなどして快く思っていなかった。(甲12、26、乙29の2・10、37、証人E、弁論の全趣旨)ウ D企画官の声掛けにより、過去に交通企画課で重点枠事業の企画・立案を担当した経験がなく、また、業務が滞りがちでもあった亡Aを支援する目的で、交通企画課内の検討会(以下「課内検討会」という。)が設けられることになり、4月下旬、初回の課内検討会が開催された(初回の開催時期は、甲9の7、乙26、証人E[30~31頁]及び弁論の全趣旨により4月下旬と認める。証人B[15頁]が5月としているのは何らかの勘違いによるものと考えられる。)。その際、亡Aは、むつ署で勤務していた当時に考えていたパトレーバーやテレビコマーシャルの事業案を示したところ、予算を使ってまでやる事業ではないとの上司らの判断により、いずれも不採用とされた。 (甲9の7・14[当時の高齢者交通安全対策係員からの聴取結果]、乙26、36、37、証人E、証人B、弁論の全趣旨)エ亡Aは、4月下旬、重点枠事業の企画・立案の参考とするため、全国の警 察本部から送付される資料(申報)を調査した。E係長が ]、乙26、36、37、証人E、証人B、弁論の全趣旨)エ亡Aは、4月下旬、重点枠事業の企画・立案の参考とするため、全国の警 察本部から送付される資料(申報)を調査した。E係長がこの調査を手伝ったことをきっかけとして、5月の連休明け以降、E係長もその企画・立案に加わった。(甲9の7、乙37、証人E、弁論の全趣旨)オ原告からみて、亡Aは、原告に対し、不眠が続いていて疲れやすくなっていると話す一方で、年度当初には原告に意見を求めるなど仕事に対してやる気も見せていた。(甲29、乙2、原告本人、弁論の全趣旨)⑹ 平成28年5月の亡Aの業務等についてア亡Aは、5月の連休の頃、B課長に対し、仕事が全然できないと立ち話で相談したところ、B課長は、配属されたばかりだから仕方がない、慣れれば大丈夫と声をかけて励ました。また、亡Aは、5月17日、D企画官との面談において、「仕事がわからず不安でなりません。自分自身全くついていっていないと悩んでおります。」と述べたところ、D企画官は、仕事に不安があることは承知した、新規事業と安全教育係を中心に進めてくれればよい、10の仕事を覚えるのでなく1でも2でも覚えてこなしていければそれで構わない旨を助言した。これらと前後して、B課長、D企画官らが相談し、5月以降、亡Aがなるべく重点枠事業に専念できるようにするため、亡Aが担当すべき業務のうち、事故分析係の業務の全部をD企画官が肩代わりし、安全教育係の業務の一部を引き続きE係長及びF主任が引き受けるなどして亡Aの業務の負担軽減を図った。(甲7、乙29の1・3、32、36、37、証人E、証人B、弁論の全趣旨)このような亡Aの負担軽減が図られた結果、部下であるE係長やF主任の業務量は増大した。F主任は、B課長からみても亡Aの業務も負担 、乙29の1・3、32、36、37、証人E、証人B、弁論の全趣旨)このような亡Aの負担軽減が図られた結果、部下であるE係長やF主任の業務量は増大した。F主任は、B課長からみても亡Aの業務も負担することになって手一杯の様子であった。B課長が、亡Aに対し業務を直接指示したが、亡Aがこれに難色を示したため、D企画官、E係長又はF主任が代わりに担当したこともあった。(甲9の7・8、乙29の1・3、36、37、証人E、証人B、弁論の全趣旨) イ亡Aは、5月10日、E係長とともに県警本部警務部警務課(以下「警務課」という。)による重点枠事業(新規事業)の事前説明会に出席した。平成28年度の作業スケジュールは、概ね次のとおりであった。(乙11、20、25[4枚目]、31、証人E[2頁]、弁論の全趣旨)5月上旬警務課から重点枠事業の事業策定方策提出書の提出依頼6月3日各課から警務課に事業策定方策提出書を提出6月第2週警務課による事業策定方針聞き取りその後の6月中事業策定方針につき、本部長に対するレクチャー(以下「本部長レクチャー」という。)7月中旬事業案を警務課に提出7月下旬提出した事業案につき、本部長レクチャー(各所属長から本部長への説明。乙25の4枚目)8~9月頃最終的な事業案を警務課に提出9月~ 青森県に県警本部の事業案を提出、その後にヒアリングなどウ 5月以降の課内検討会は、B課長、C管理官、D企画官、亡Aのほか、適宜、E係長らが参加し、1回当たり約2時間で、月に3回程度、亡AやE係長が事業案を説明し、参加者からの指摘を踏まえて次回までに事業案を修正するとの流れで実施された。亡A及びE係長は、課内検討会での指摘を踏まえ、以下の2つの事業を柱とする事業案を企画・立案した。(乙6、3 事業案を説明し、参加者からの指摘を踏まえて次回までに事業案を修正するとの流れで実施された。亡A及びE係長は、課内検討会での指摘を踏まえ、以下の2つの事業を柱とする事業案を企画・立案した。(乙6、37、証人E[3~4頁]、弁論の全趣旨)(ア) スマートサイクリスト事業① 自動車セーフティーリーダー養成② 自転車安全教本の作成③ スマートフォンアプリの開発及びタブレットの利活用なお、上記③のスマートフォンアプリに関する部分については、亡Aから自分はアプリに詳しくないと申出があったため、部下であるE係長 が事業案の作成を担当した。(甲9の7、乙37、証人E)(イ) ストップ飲酒運転広報事業① 飲酒運転ストップ広報用DVDの作成と配布② 飲酒運転ストップキャンペーン③ 大型広報活動エ B課長は、5月25日、亡Aを励ます意味を込めてむつ署当時の同僚を集めて同期会を開催した。これに参加した亡Aは、B課長からみて楽しんでいる様子であり、帰り際に「おもしぇがったね。」と話していた。もっとも、亡Aは、原告に対しては、同期会に行きなくないと話していた。(甲26[112頁]、乙29の1、36、証人B)オ原告からみて、亡Aは、気が沈む、落ち込んだ気分になる、仕事に出たくない、何を見ても興味がわかないと話すことがあり、いらいらして今までになく家族に当たる、言動がおかしい、話がまとまらないと感じられた。亡Aは、ダイアリーにも、「顔が鬼でズナル課長がいない時イジメ」(5月10日)と記載し、C管理官の言動を理不尽として快く思っていなかった。(甲12、26[25~26頁]、29、乙2、原告本人)⑺ 平成28年6月の亡Aの業務等についてア亡Aは、6月3日、警務課に対し、事業案の概要(上記⑹ウ)を記載した事 思っていなかった。(甲12、26[25~26頁]、29、乙2、原告本人)⑺ 平成28年6月の亡Aの業務等についてア亡Aは、6月3日、警務課に対し、事業案の概要(上記⑹ウ)を記載した事業策定方策提出書を提出し(乙6、20)、E係長とともに事業案の詳細や予算規模を検討する作業に入った。亡Aは、課内検討会において、上司らから質問された際に回答できずにしどろもどろになることが多く、E係長は、自身が答えられるものについては代わりに説明していた。また、亡Aは、課内検討会が終わる度に、疲れた様子で、E係長に対し、「なんとか生きながらえだじゃ~」などと愚痴をこぼしていた。(甲26[119頁]、乙36、37[7頁]、証人E、証人B、弁論の全趣旨)イ亡Aは、交通企画課の担当者として、重点枠事業の事業案につき、6月中 の本部長レクチャーに臨席する予定であった(その際、亡Aが単独で臨席して説明するのか、それともB課長が主として説明して亡Aは同席するのかについては争いがあるが、いずれにせよ亡A自身が本部長レクチャーに臨席して対応しなければならなかったことには変わりがない。)。しかし、交通企画課としての事業案の策定が間に合わなかったため、6月中に予定されていた本部長レクチャーは、翌月8日に延期された。(甲12[12枚目]、乙25[4枚目]、証人E[30、51、52頁]、弁論の全趣旨)ウ 6月29日の課内検討会(E係長は欠席した。以下「6月29日の課内検討会」という。)において、亡AとE係長が企画した事業案のうち、スマートフォンアプリの開発案(前記⑹ウ(ア)③に係るもの。以下「本件アプリ案」という。)は、同日の時点では、予算(委託費)を約880万円とする業者の見積書に基づくものであったところ、B課長、C管理官、D企画官らはこれに 開発案(前記⑹ウ(ア)③に係るもの。以下「本件アプリ案」という。)は、同日の時点では、予算(委託費)を約880万円とする業者の見積書に基づくものであったところ、B課長、C管理官、D企画官らはこれに好意的な意見を述べた。この見積書は、6月27日に業者から提出されたもので(甲26[162頁])、見積額は付加機能を追加しない前提で予算が約880万円の内容のものであった。6月29日の課内検討会では、付加機能を追加する方向の話も出ていたが(甲9の7[2頁])、予算を含む具体的内容は次回に検討するものとされた(乙36[8頁]、証人B[16~17、27~28頁])。もっとも、上司らは、付加機能の追加については、上記の見積書の備考欄に付加機能(カロリー計算、シミュレーター)を追加する場合の見積額が記載されていることをよく見ずにこれを追加する方向の話をしていたとみられる(甲9の7[2頁])。亡Aは、同日の課内検討会における上司らの好意的な反応を受けて、付加機能を追加する前提で本件アプリ案の方向性が概ね承認されたと受け止め、欠席したE係長に対しその旨を伝えた(証人E[14頁])。亡AとE係長は、本件アプリ案に付加機能を追加することとし、E係長は、6月30日、新たな見積書(付加機能を追加し、見積額を約1572万円とするもの。甲26[162頁])を徴した上で、本件ア プリ案について、予算を約880万円とする当初の内容から、付加機能を追加した上で予算を約1572万円とする内容へと修正した。(甲9の7、乙28の1~4、36、37、証人E、証人B、弁論の全趣旨)エ警務課は、6月7日頃、亡Aに対し、6月27日の週くらいに、交通企画課の事業案についてのポンチ絵及び事業詳細説明を提出するように依頼していた。これに対し、亡Aは、「6月は今年度の重点枠 趣旨)エ警務課は、6月7日頃、亡Aに対し、6月27日の週くらいに、交通企画課の事業案についてのポンチ絵及び事業詳細説明を提出するように依頼していた。これに対し、亡Aは、「6月は今年度の重点枠事業(道の駅でのキャンペーン)があり忙しいけど何とかやってみます。」と応じ、警務課は、上記の提出期限を6月末まで延長していた(ダイアリーの6月30日の欄にも「重点〆切」と目立つように赤字で記載されている。)。そうしたところ、亡Aは、6月29日又は30日になって、警務課に対し、「ある程度出来ていて、ちょうど交通部長が出張で決裁がもらえない。場合によっては7月4日をすぎる。」旨を連絡した。(甲12、26[166頁]、乙20)オ亡Aは、6月下旬、原告に対し、「管理官はパワハラだ。死にたい。」と話し、これに驚いた原告が「管理官と合わないの?」と聞き返したところ、亡Aが「やるしかないべ。」と返事をしたことがあった。また、亡Aは、ダイアリーにも、「オメだち何ももってこねで!~スマホもねえのに!そんなことを言うな!管理官」(6月2日)、「安全て何に!春から見ているが何もなされていない。管理官言いたい放題」(6月8日)と記載し、C管理官の言動に対する反発その他の負の感情を更に強めていたとみられる。もっとも、C管理官が、6月末頃、亡Aの席に来て、挨拶文が今までで一番良かったなどと笑顔で褒めたことがあり、亡Aが、E係長に対し、珍しい、ああいうところもあるんだと話したこともあった。(甲12、26[25~27頁]、29、乙29の9、37[9頁]、原告本人、弁論の全趣旨)⑻ 平成28年7月の亡Aの業務等についてア亡Aは、B課長及びD企画官から、7月2日㈯に予定されていた道の駅の交通安全キャンペーン(重点枠事業に係る既存事業の執行)への出席を見合 旨)⑻ 平成28年7月の亡Aの業務等についてア亡Aは、B課長及びD企画官から、7月2日㈯に予定されていた道の駅の交通安全キャンペーン(重点枠事業に係る既存事業の執行)への出席を見合 わせて新規事業の作業を進めるようにとの助言を受けたが、これに出席した。 また、翌3日㈰の休日には、亡Aは、原告と一緒に趣味であるマラソンの応援をしに外出したり久しぶりの外食をしたりして家族との時間を過ごした。 (甲26[18頁]、29、乙20、29の1・3、原告本人)イ亡Aは、7月4日㈪の午前中、B課長とともに、交通安全高齢者自転車青森県大会に出席した。その日に課内検討会の開催は予定されていなかったが、亡Aは、同大会に出席した後、B課長に対し、その日の午後に課内検討会を開催することを自ら要請し、B課長はこれを了承した。E係長は、その日午後に帰宅する予定であったが、課内検討会に出席するようにとの亡Aからの求めを受け、予定を変更してこれに出席することにした。(乙29の1・3、36、37、証人E、証人B、弁論の全趣旨)ウ 7月4日㈪午後、B課長、C管理官、D企画官、亡A、E係長らが参加して、急遽、課内検討会が開催された(以下「7月4日の課内検討会」という。)。 亡A及びE係長は、補足説明や想定問答を準備した上で、本件アプリ案が最終決定されるつもりで同日の課内検討会に臨んだ。しかし、D企画官から、本件アプリ案(付加機能を追加して予算を約1572万円に修正したもの)は、従前の課内検討会で検討された事業案(予算を約880万円とするもの)と比べて予算が高すぎるとの意見が出され(この点を最初に指摘したのがD企画官であったことにつき証人E[17頁])、更にB課長やC管理官も費用対効果の観点からこの意見に同調した。その際、D企画官が、クラウドサー 算が高すぎるとの意見が出され(この点を最初に指摘したのがD企画官であったことにつき証人E[17頁])、更にB課長やC管理官も費用対効果の観点からこの意見に同調した。その際、D企画官が、クラウドサービスを利用して交通事故情報を公表するアプリを利用する事業(予算は5年リース料の約280万円(乙28の5[5頁])。甲9の7[2枚目]、証人E[17頁]及び証人B[31頁]が約60万円としているのは年間額(甲26[163頁])をいう趣旨と解される。)の案を初めて提示したところ、費用対効果の観点も踏まえるとD企画官が提示したこちらの事業案(以下「D案」という。)の方がよいということになり、その場でD案が採用され、本件アプ リ案と差し替えられた。D案は、7月1日に(甲26[169頁])業者がPRのためにD案で採用されたアプリを事故分析係に持ち込んだ際、交通事故分析官でもあるD企画官及びE係長とは別の係長が対応したものであり(甲26[163、175頁])、7月4日の課内検討会では、今から亡Aが対応するのは難しかろうとのB課長の判断により(乙29の1)、事故分析係が事業案の作成を担当することになった(事故分析係は、本来、安全担当補佐の担当であるが、亡Aの負担軽減のためにD企画官が事故分析係の業務を肩代わりしていたことは前述のとおりである。)。本件アプリ案が不採用とされた際、これを担当していたE係長(前記⑹ウ(ア)③)もショックであったが、亡Aは、E係長からみても非常にショックを受けており、その他の事業案に関する質問に対してもまともに答えられない状態であった。他の事業案についても上司らから一部見直しが求められ、交通企画課における事業案全体の最終決定は見送られた。(甲9の7、26、乙28の1・4・5、29の1・3、36、37、証人E、証人 状態であった。他の事業案についても上司らから一部見直しが求められ、交通企画課における事業案全体の最終決定は見送られた。(甲9の7、26、乙28の1・4・5、29の1・3、36、37、証人E、証人B、弁論の全趣旨)エ亡Aは、7月4日の課内検討会の後、E係長に対し、「無理だべ、やってられねえ、今まで何回も検討会をやっているのに何で今言うんだ、これまでで指摘することができたはずだ、はめられた、もう間に合わねえ。」というようなことを話していた。E係長としては、警務課への提出期限までまだ1週間程度あり(前記⑹イ)、これから見直しを検討しても十分間に合うと思っていた。(甲26[120頁]、乙37、証人E[49頁])亡Aは、7月4日の課内検討会の後、ダイアリーに「今日は本当に頭にきたと管理官。オマエがきちんと教えないからこうなるんだ。これで良いと言ったじゃないか?話しがちがう。知っていてわざと教えてくれない。まるでFと同じだ。ちくしょう!うらんでやるC。Fうらんでやる!皆休めば良いじゃん!オレはあの世で仕事をしている!」と記載した。(甲12)オ亡Aは、7月5日の未明、自宅内の自室において自死(縊死)した。亡A は、7月2日から4日夜にかけて、原告からみても自死するような予兆を特別に感じさせるようなものはなかった。(前提事実⑴イ、甲26[3、17~20、82、106~107頁]、原告本人、弁論の全趣旨)カ亡Aの死亡後、①職場のデスクに入っていた遺書(家族に宛て、家族への感謝が綴られたもの)、②通勤リュックの内ポケットに入っていた遺書(家族に宛て、家族への思いとともに、C管理官のパワハラやF主任を許せないとするもの)、③職場のパソコンにデータとして入っていた遺書(交通企画課員に宛て、B課長を含む同僚への感謝とともに、C た遺書(家族に宛て、家族への思いとともに、C管理官のパワハラやF主任を許せないとするもの)、③職場のパソコンにデータとして入っていた遺書(交通企画課員に宛て、B課長を含む同僚への感謝とともに、C管理官の言動への不満を顕わにするもの)が発見された。③の遺書には、C管理官の言動に関し、次のように記載されていた。(甲13の1~3、弁論の全趣旨)(ア) 「怒られ、怒鳴られ、必死で我慢しました。馬鹿野郎C、何が頭にきただと。4月から安全の仕事をしていないだと。配慮がないだと。みんなおまえがわるいじゃないか。なぜ意地悪をするんだ。」、「人には得て不得手があってしかるべきであるが、なぜ、そんなに怒らなければならないのか。 いじめのなにものでもない。」(イ) 「メンコは高く評価し、かわいくない者はいじめる。時間外の手当もそのとおりである。むつ署と交通企画課の手取りでは10万円は違う。月々の手当5万円程度、きちんとした金額なのかわからない。メンコのFについて登録されていないと、補佐がきちんと確認しているかと確認する有様である。これでよくも交通部管理官だと。ボーナス査定も何でFみたいなやつを高く評価しなければならないのか疑問である。」(判決注:「メンコ」とは、津軽弁で“かわいい子”といった程度の意味合いである。)(ウ) 「仕事をやっても、やっても、また、仕事。減るどころか、増えていく。 全く身動きができない。」、「決裁を持って行っても、管理官のところで必ずとまる。Fは、昨年はこのようにしたと必ず言う。」、 「管理官は、なんで、今年はやらないの。おまえもこれまでやってきていなかったじゃねえ か。」、「7月1日の「安全の日」、今まで何もやってきていなかったじゃねえか。俺だけ悪者ではない。おまえも悪い。」⑼ 新規事業のその後の帰趨に これまでやってきていなかったじゃねえ か。」、「7月1日の「安全の日」、今まで何もやってきていなかったじゃねえか。俺だけ悪者ではない。おまえも悪い。」⑼ 新規事業のその後の帰趨について亡Aの死亡後、交通企画課の重点枠事業の事業案のうち、本件アプリ案を差し替えた後のD案については、事故分析係が原案を完成させ、その余の事業案は、E係長が原案を完成させた上で、B課長が事業案全体を本部長に説明したところ、D案については、そのようなアプリは誰も使わないだろう、これは要らないとの本部長の判断により、結局却下されてしまった。(乙17、18、28の5~10、36、37、証人E、証人B[19頁])⑽ 亡Aの勤務時間等についてア所定勤務時間日勤勤務は、原則として、月曜日から金曜日の午前8時30分から正午まで、午後1時から午後5時15分までの合計7時間45分(休憩時間は1時間)である。また、宿日直勤務のうち、宿直勤務は、原則として、午後5時15分から翌日午前8時30分まで(仮眠時間は約6時間又は約5時間)、日直勤務は、原則として、午前8時30分から午後5時15分までである。 (甲1、乙38、弁論の全趣旨)イむつ署における勤務状況等(甲10の1、11、20、29[2頁]、乙7、証人B、原告本人[3頁]、弁論の全趣旨)(ア) 亡Aは、官舎から徒歩で通勤し(片道5分程度)、時間外勤務の届出の有無にかかわらず平日は早出残業をすることが多かった。届出がない出勤日においても多くの日で恒常的に午前7時台にパソコンにログインされており(弁論の全趣旨[被告準備書面⑷の別紙])、その上で、同僚の供述(甲9の13)も踏まえると、亡Aは、早出残業をするときには、多少のばらつきはあるが概ね午前7時10分頃に出勤していたと認められる。 (イ 論の全趣旨[被告準備書面⑷の別紙])、その上で、同僚の供述(甲9の13)も踏まえると、亡Aは、早出残業をするときには、多少のばらつきはあるが概ね午前7時10分頃に出勤していたと認められる。 (イ) 亡Aは、残業するときには、概ね午後8時台に退勤していた(具体的な 退勤時刻は乙7のとおり)。この点、時間外勤務の届出の有無及び内容とパソコンのログアウトの時刻が概ね整合していることに鑑みると、亡Aは、終業後については時間外勤務の届出を概ね励行していたと認められる。 (ウ) むつ署における宿日直勤務は、月に5回程度であった。 ウ交通企画課における勤務状況等(甲9の7、10の2、11、20、乙7、証人E、証人B、原告本人、弁論の全趣旨)(ア) 亡Aは、自宅から自転車で通勤し(片道30分かからない距離。甲26[12頁])、時間外勤務の届出の有無にかかわらず平日は早出残業をすることが多かった。届出がない出勤日においても多くの日で恒常的に午前7時台にパソコンにログインされており(甲2[38~39頁])、その上で、同僚の供述(甲9の9~14)も踏まえると、早出残業をするときには、多少のばらつきはあるが概ね午前7時30分頃に出勤していたと認められる。 (イ) 亡Aは、平日に残業するときには、概ね午後8時台に退勤していた。亡Aは、勤務日は時間外勤務の届出をした上でほぼ連日午後8時台に退勤しており(具体的な退勤時刻は甲20、乙7)、退勤状況は同僚の供述(甲9の9~14)によって概ね裏付けられることに鑑みると、亡Aは、むつ署におけるのと同様に、終業後については、時間外勤務の届出を概ね励行していたと認められ、届出外の時間外勤務があると認めるに足りない。 (ウ) 亡Aが休日出勤の届出をしたのは、合計15日(4月10日・16日・17日・24 終業後については、時間外勤務の届出を概ね励行していたと認められ、届出外の時間外勤務があると認めるに足りない。 (ウ) 亡Aが休日出勤の届出をしたのは、合計15日(4月10日・16日・17日・24日、5月1日・5日・15日・22日・29日、6月5日・12日・19日・25日・26日及び7月2日)であるところ(甲10の2、20、乙7)、これ以外に休日出勤があったと認めるに足りる証拠はない(原告は、ダイアリーによればこれ以外にも休日出勤があったとし、4月29日及び6月11日を例として挙げるが、その数は多くない上に、ダイアリーの記載によっても亡Aが現実に出勤したかどうかは必ずしも判 然としないことに鑑みると、上記判断は変わらない。)。また、休日出勤については、平日とは異なり、恒常的に午前7時30分に出勤していたと認めるに足りる証拠はないから、亡Aの届出内容に基づいて時間外勤務を認めるのが相当である(具体的な出退勤時刻は甲20及び乙7のとおりと認められる。)。 (エ) 交通企画課における宿日直勤務は、月に1、2回であった。 2 公務起因性についての判断枠組み地方公務員等の職員の疾病等を公務上のものと認めるためには、公務と疾病等との間に相当因果関係が認められることが必要である(最高裁昭和50年(行ツ)第111号同51年11月12日第二小法廷判決・集民第119号189頁)。 そして、法に基づく補償制度が、労災保険制度同様、危険責任の法理に基づく制度であることからすれば、上記の相当因果関係を認めるためには、当該疾病等の結果が、当該公務に内在又は通常随伴する危険が現実化したものと評価し得ることが必要である(最高裁平成6年(行ツ)第24号同8年1月23日第三小法廷判決・集民第178号83頁、最高裁平成4年(行ツ)第70号同8年3月5日 又は通常随伴する危険が現実化したものと評価し得ることが必要である(最高裁平成6年(行ツ)第24号同8年1月23日第三小法廷判決・集民第178号83頁、最高裁平成4年(行ツ)第70号同8年3月5日第三小法廷判決・集民第178号621頁)。現在の医学的知見によれば、精神疾患発症の機序について、環境由来の心理的負荷(ストレス)と、個体側の反応性・脆弱性との関係で決まるというストレス-脆弱性理論が合理的であるというべきところ、ストレス-脆弱性理論によれば、環境由来のストレスが非常に強ければ、個体側の脆弱性が小さくても精神疾患を発症するし、逆に、個体側の脆弱性が大きければ、ストレスが小さくても破綻が生じるとされる。このようなストレス-脆弱性理論に加え、上記のとおり、法に基づく補償制度が危険責任の法理に基づく制度であることを踏まえれば、職員の精神疾患発症の公務起因性の判断においては、公務による精神的負荷が、当該職員と同程度の年齢、経験を有する同僚職員又は同種職員であって、日常業務を支障なく遂行することができる者(平均的職員)を基準として、社会通念上客観的にみて、精神疾患を発症させる 程度に強度であるといえる場合に、精神疾患発症の結果は当該公務に内在又は通常随伴する危険が現実化したものとして、公務と精神疾患発症との間に相当因果関係を認めるのが相当である。そして、被告は、精神疾患の公務起因性を判断するための基準として認定基準及び運用基準を策定しているところ、これらは、行政処分の迅速かつ画一的な処理を目的として定められたものであり、裁判所を法的に拘束するものではないものの、専門家の検討を踏まえて策定されたものであってその内容等に照らしても合理性を有するものといえることに鑑み、精神疾患発症の公務起因性の有無については、認定基準及び運用基準 に拘束するものではないものの、専門家の検討を踏まえて策定されたものであってその内容等に照らしても合理性を有するものといえることに鑑み、精神疾患発症の公務起因性の有無については、認定基準及び運用基準の内容を参考にしつつ、個別具体的な事情を総合的に考慮して判断するのが相当である。 3 亡Aがうつ病を発症した経過及び判断の対象について⑴ 亡Aは、一線署の交通課で勤務した経歴が長く、県警本部の交通指導課及び運転免許課に勤務した経験もあり、定年までむつ署交通課長として全うすることを望んでいたが、平成28年4月1日付けで交通企画課課長補佐への異動となり、周囲から栄転と受け止められた。むつ署における業務はそれなりに多忙であったが、上司である署長は懇意にしていたB課長であったし、交通課長として自ら差配できる立場にあって、自身もむつ署での勤務の継続を希望し、精神的・肉体的に疲弊していたことはうかがえないことに鑑みると、単身赴任であることによる負担はあったであろうことを考慮しても、むつ署の勤務がその後の異動後のうつ病の発症につながったとは認められない。(その意味で、異動後の交通企画課における時間外勤務時間とは異なり、むつ署における時間外勤務時間について仔細に検討するまでの必要はないというべきである。)⑵ 亡Aは、交通企画課に異動するに際し、B課長や家族に対し、交通企画課への異動について不安を吐露しており、同じ交通畑であるとはいえ、交通部の庶務全般を担う交通企画課において、課長補佐として各種の企画業務を担当することについては、交通企画課に勤務した経験がないこともあって、不安ないし苦手意識を抱いていた。亡Aにとって、交通企画課長として懇意にするB課長 が就いたことは心強かったはずであるが、かつての後輩であるC管理官が上司であることには こともあって、不安ないし苦手意識を抱いていた。亡Aにとって、交通企画課長として懇意にするB課長 が就いたことは心強かったはずであるが、かつての後輩であるC管理官が上司であることには、当初から複雑な思いを抱いていた。そして、実際に交通企画課の安全担当補佐として着任してみると、年度当初は交通安全関連の施策で多忙となる部署であることに加え、上記の苦手意識とも相俟って、業務全般を滞らせることとなり、B課長及びD企画官に業務を進める上での不安について相談し、部下らの負担増と引き換えに業務軽減が図られたものであり、C管理官からは種々指導を受けるとともに、重点枠事業の事業案に関しては上司らから都度指摘を受けるなどし、C管理官との関係性については、お互いに牽制する様子がみられた上に、亡AがC管理官の言動に対する不満や怒りをダイアリーに記載し続けていたことに鑑みれば、亡Aは、4月以降、自身の業務の進め方やC管理官やF主任らとの関係性に思い悩むなどして、精神的・肉体的な疲弊を次第に強めていったものと認められる。 ⑶ そして、上記⑵の経過に加え、ダイアリーには、「Fが大鰐に行くに際し、管理官がどなる」(4月19日)、「表彰すぐ調べろ~何んと言う頭ごなし管理官課長が居ない時に限ってどなるイジメ」(4月21日~22日)、「顔が鬼でズナル課長がいない時イジメ」(5月10日)、「オメだち何ももってこねで! ~スマホもねえのに!そんなことを言うな!管理官」(6月2日)、「安全て何に!春から見ているが何もなされていない。管理官言いたい放題」(6月8日)と記載され(認定事実⑸イ、⑹オ、⑺オ)、亡Aには、5月頃、気が沈む、仕事に出たくない、いらいらして今までになく家族に当たる、言動がおかしいなどの様子がみられ(認定事実⑹オ)、6月下旬には希死念慮の言 記載され(認定事実⑸イ、⑹オ、⑺オ)、亡Aには、5月頃、気が沈む、仕事に出たくない、いらいらして今までになく家族に当たる、言動がおかしいなどの様子がみられ(認定事実⑹オ)、6月下旬には希死念慮の言動がみられた(認定事実⑺オ)ことを総合考慮した上で、医師の医学的意見(乙1、30)を踏まえれば、亡Aは、4月19日以降に不適応状況に陥り、5月頃に中等度のうつ病(ICD-10の分類でいう「F32 うつ病エピソード」)を発症し、6月頃に重症度うつ病へと症状が進行したと認めるのが相当である。 ⑷ ところで、規則1条の2は、公務上の災害の範囲は、公務に起因する負傷、 障害及び死亡並びに別表第一に掲げる疾病とすると定めた上で、規則別表第一の九は、「人の生命にかかわる事故への遭遇その他強度の精神的又は肉体的負荷を与える事象を伴う業務に従事したため生じた精神及び行動の障害並びにこれに付随する疾病」と定めている。この点、認定基準によれば、公務起因性が肯定されるための必要条件として、「対象疾病発症前の概ね6か月の間に、業務により強度の精神的又は肉体的負荷を受けたことが認められること」が掲げられているところ、被告は、亡Aがうつ病を発症したのが平成28年5月頃と認められる以上、公務起因性を検討するに当たって6月以降の経過を考慮すべきではないと主張する。しかし、客観的な資料から発症日を具体的に特定し得る場合であればともかく、発症時期を一定の幅をもって把握すべき場合においては、特定の始点で判断の基礎を截然と分断して公務起因性を判断することは、いささか硬直的である上に判断上の困難を伴う場合がある。本件においては、認定基準の考え方そのものは合理的であるとしても、亡Aがうつ病を発生したと考えられる時期は、上記⑶を踏まえて平成28年5月頃から6月頃に掛けて ある上に判断上の困難を伴う場合がある。本件においては、認定基準の考え方そのものは合理的であるとしても、亡Aがうつ病を発生したと考えられる時期は、上記⑶を踏まえて平成28年5月頃から6月頃に掛けての時期と一定の幅をもって認めるのが相当であり、亡Aが交通企画課に異動した同年4月から遅くともうつ病を発症したと認められる概ね6月末までの出来事をもって公務起因性の判断の基礎とすることが相当である。 ⑸ もっとも、認定基準によれば、「業務により強度の精神的又は肉体的負荷を受けたこと」とは、人の生命にかかわる事故への遭遇、又は、その他強度の精神的又は肉体的負荷を与える事象を伴う業務に従事したことをいい、例えば、一定の長時間の時間外勤務のほか、「機構・組織等の改革又は人事異動等による、急激かつ著しい職務内容の変化を伴う業務に従事したと認められる場合」、「職場でひどい嫌がらせ、いじめ又は暴行を執拗に受けたと認められる場合」等に該当するときは、その他強度の精神的又は肉体的負荷を与える事象を伴う業務に従事したことに該当する事象があったものと判断することができるが、この際、被災職員が、その出来事及び出来事後の状況を主観的にどう受け止め たかによって判断するのではなく、同じ事態に遭遇した場合、同種の職員(被災職員と職種、職、業務経験等が同等程度の職員)が一般的にその出来事及び出来事後の状況をどう受け止めるかという観点から判断すべきものと定めているところ、上記⑷のようにうつ病の発症時期を一定の幅をもって認める場合には、発症後における被災職員の出来事及び出来事後の状況の主観的な受け止めないし反応が、同種の職員と比べて過剰となり易いことにも鑑みた上で、上記の幅をもった期間内における出来事を適切に評価することが相当である。 ⑹ さらに、認定基準は、発 来事後の状況の主観的な受け止めないし反応が、同種の職員と比べて過剰となり易いことにも鑑みた上で、上記の幅をもった期間内における出来事を適切に評価することが相当である。 ⑹ さらに、認定基準は、発症後の業務による精神的負荷の取扱いに関し、①既に公務外で精神疾患を発症して治療が必要な状態にある者については、極めて強い業務負荷を生じさせる出来事が認められる場合であって、その出来事の後概ね6か月以内に対象疾病が自然経過を超えて著しく悪化したと医学的に認められる場合は、その出来事が悪化の原因であると推認して、悪化した部分について公務起因性を認める、②また、極めて強い業務負荷を生じさせる出来事がなくとも、悪化の前に強度の業務負荷が認められる場合には、当該業務負荷、被災職員の個体側要因と業務以外の負荷、悪化の態様やこれに至る経緯等を十分に検討し、強度の業務負荷によって対象疾病が自然経過を超えて著しく悪化したものと医学的に判断されるときには、悪化した部分について公務起因性を認めるものとすると定めているところ、亡Aが自死する直前である7月1日から4日の出来事については、遅くとも6月末までに発症していたうつ病が「自然経過を超えて著しく悪化した」と認められるか否かという観点から、これを当該悪化した部分についての公務起因性の判断の基礎とすべきである。 4 亡Aが交通企画課に異動した4月1日から6月末までの出来事について⑴ 認定基準の「人事異動等による、急激かつ著しい職務内容の変化を伴う業務に従事したと認められる場合」(別紙第3の3⑴ア(ア)⑨)又はこれに準ずるような業務負荷があったと認められる場合(同⑫)に相当する出来事があったかについて ア亡Aは、交通企画課に異動するまで、30年以上にわたり、交通関係の分野において、一線署では交通 うな業務負荷があったと認められる場合(同⑫)に相当する出来事があったかについて ア亡Aは、交通企画課に異動するまで、30年以上にわたり、交通関係の分野において、一線署では交通課長(警部)としてそれなりに管理・企画業務も経験し、警察官としてのキャリアを積んでいたところ(認定事実⑴)、交通企画課に異動してからは、交通取締りや事故処理の現場からは離れ、安全担当補佐として専ら交通安全関係の企画・立案(重点枠事業、挨拶文作成、表彰関係、イベント関係、通達・事務連絡文書の起案等)を担当することになった(認定事実⑷)。亡Aは、交通企画課への異動に際し、家族や親しい同僚には不安を漏らしており、交通企画課に異動してからは、B課長からみても決裁伺いに不足があり(認定事実⑸ア)、業務を大きく停滞させていたことに鑑みれば、交通企画課の安全担当補佐としての業務を苦手とし、そのことに対する精神的負荷はあったと認められる。もっとも、交通企画課で亡Aが担当した業務は引き続き交通関係の分野であることに加えて、かつては県警本部(交通指導課に3年、運転免許課に5年)での勤務経験もあり、一線署では交通課長として交通取締りや事故処理のみならず、管理職としての業務管理やイベントの企画・立案にも関わっていたから、分野が全く異なる業務にいきなり就いたわけではない。無論、県警本部であるが故の一線署とは性質の異なる重責感はあったと考えられるが、警部という階級に相応の責任の重さともいえるし、交通企画課課長補佐は、亡Aのようなキャリアを有する平均的職員(当該職員と同程度の年齢、経験を有する同僚職員又は同種職員であって、日常業務を支障なく遂行することができる者。以下同じ)にとって、配置されることが十分にあり得る役職であったともいえる。そうすると、交通企画課への異動後 齢、経験を有する同僚職員又は同種職員であって、日常業務を支障なく遂行することができる者。以下同じ)にとって、配置されることが十分にあり得る役職であったともいえる。そうすると、交通企画課への異動後はデスクワークが中心になったことや署長名の文書と本部長名の文書とでは起案する際の重みが格段に違うなどの原告が指摘する事情を考慮しても、平均的職員がどのように受け止めるかという観点(前記3⑸)から判断すれば、「人事異動等による、急激かつ著しい職務内容の変化を伴う業務に従事した」又はこれに準ずるものとは評価し難い。 イまた、亡Aは、初めて担当する重点枠事業の事業案の企画・立案に従事していたほか(この点については項を改めて述べる。)、挨拶文の作成を含む決裁伺いについてC管理官から修正を求められたり指導されたりする中で(これが嫌がらせやいじめに当たるのかについても項を改めて述べる。)、本来担当すべき業務が大きく停滞したため、B課長、C管理官、D企画官らの判断により、亡Aが事業案になるべく専念できるように亡Aの業務を一定程度軽減し、その分を上司であるD企画官や部下であるE係長及びF主任が肩代わりしていた(認定事実⑸ア、⑹ア)。このように亡Aの業務について一定の軽減措置が現に講じられていたことは、仮にそのことによって亡Aのプライドを傷付けた側面があった可能性があったとしても(甲9の1)、平均的職員からみて業務の過重性を判断するに際しては、それなりに考慮しなければならない事情というべきである。 ウその上で、重点枠事業の新規事業の企画・立案についてみると、重点枠事業は青森県の重要施策であって、県警本部の各課は警務課から示されたスケジュールに従い、5月頃から9月頃までの間に事業策定方策提出書の提出、事業詳細説明等の提出、本部長レクチャー いてみると、重点枠事業は青森県の重要施策であって、県警本部の各課は警務課から示されたスケジュールに従い、5月頃から9月頃までの間に事業策定方策提出書の提出、事業詳細説明等の提出、本部長レクチャー、警務課への最終事業案の提出までを行うことになっており(認定事実⑷ア、⑹イ、⑺エ)、予算に関する考慮も必要になることから、亡Aのように新規事業を企画・立案した経験がなく年度当初にその担当として着任した場合には、直ちにその作業に取り掛からなければならないこともあって、それなりに負担の大きい業務であったと認められる。もっとも、亡Aについては、他の業務については負担軽減措置が講じられていた上に(認定事実⑸ア、⑹ア)、亡Aを支援する目的で課内検討会が開かれており(認定事実⑸ウ)、E係長と二人で新規事業を分担していたこと(認定事実⑹ウ)に鑑みれば、上司らの関与の下で、交通企画課全体として一定のサポートがされていたと認められる。また、警務課から示された新規事業のスケジュールについても、亡Aの要請を踏まえて期限が柔軟に 再設定されてもいた(認定事実⑺イエ)。以上のことからすると、新規事業の企画・立案が亡Aにとって相当に荷が重い作業であったことは否定できないものの、平均的職員が新規事業の企画・立案をどのように受け止めるかの観点から判断すれば、業務負荷の分析表で過重な負荷となる可能性のある業務例として例示されている「これまで経験したことのないような高度な企画、立案業務又は予算、事業のとりまとめ調整業務に従事することとなった場合」等に当たるともいえず、「人事異動等による、急激かつ著しい職務内容の変化を伴う業務に従事した」又はこれに準ずるものとは評価し難い。 ⑵ 認定基準の「職場でひどい嫌がらせ、いじめ又は暴行を執拗に受けたと認められる場合」(別 人事異動等による、急激かつ著しい職務内容の変化を伴う業務に従事した」又はこれに準ずるものとは評価し難い。 ⑵ 認定基準の「職場でひどい嫌がらせ、いじめ又は暴行を執拗に受けたと認められる場合」(別紙第3の3⑴ア(ア)⑩)又はこれに準ずるような業務負荷があったと認められる場合(同⑫)に相当する出来事があったかについてア C管理官によるいじめをいう点について(ア) 挨拶文等の決裁が通らないことについて亡Aは、平成28年4月以降、安全担当補佐として本部長らの挨拶文等を起案した際、決裁過程でC管理官から度々修正を指示されていたところ(認定事実⑸ア)、遺書に「決裁を持って行っても、管理官のところで必ずとまる。」と記載していたこと(認定事実⑻カ(ウ))に鑑みても、C管理官が決裁過程で修正を指示することを嫌がらせやいじめと捉えていたことが認められる。しかし、亡Aの決裁伺いは、亡Aが懇意にしていたB課長からみても不足があったというのであり(詳細は認定事実⑸ア)、そのような決裁伺いについて、C管理官が決裁をB課長に上げるに際し、起案者に対して決裁の不足を指摘して修正を求めることに問題があるとはいえず、C管理官は、安全担当補佐である亡Aに対してのみならず、企画担当補佐の起案に対しても度々修正を指示していたというのであるから、亡Aのみを狙い撃ちにした不公平な指導であったとも認められない。また、亡Aは、交通企画課での勤務は初めてであったが、県警本部(交通指導課及 び運転免許課)での勤務経験はあり、一線署では交通課長としてそれなりに管理・企画業務も経験していたこと(認定事実⑴)に鑑みると、そのような経歴を有する警部クラスの部下に対する指導として不当に高い要求水準であったともいえない。それにもかかわらず、亡Aが決裁過程におけるC管理官に 務も経験していたこと(認定事実⑴)に鑑みると、そのような経歴を有する警部クラスの部下に対する指導として不当に高い要求水準であったともいえない。それにもかかわらず、亡Aが決裁過程におけるC管理官による修正の指示を嫌がらせやいじめと捉えていた背景には、かつては後輩であったC管理官が上司になったことに対する複雑な思いや、C管理官との間で牽制し合うなどして互いにやりにくさを感じていたことがあったと考えられるが、平均的職員がC管理官による修正の指示をどのように受け止めるかという観点(前記2)から判断すれば、「ひどい嫌がらせ、いじめ…を執拗に受けた」とは評価し難い。 (イ) ダイアリーの「Fが大鰐に行くに際し、管理官がどなる」(4月19日)及び遺書の「配慮がないだと。」との記載は、亡AがF主任一人で運転させて出張させようとした際、C管理官がその判断を咎め、配慮がない旨を述べたときに関するものと認められる(認定事実⑸イ、甲26[114、132頁]、乙29の10)。しかし、C管理官が亡Aの当該判断を咎めた理由は、事故防止ないし危機管理の観点から問題があるという、警察組織であることに照らせば相応に了解可能なものであったと認められるし、亡Aとしてもこの点に関するC管理官の指導を受け入れてF主任と二人で出張したというのであるから、亡Aがこれを嫌がらせやいじめと受け止めた可能性は否定できないとしても、平均的職員からみて、「ひどい嫌がらせ、いじめ…を執拗に受けた」とは評価し難い。 (ウ) ダイアリーの「表彰すぐ調べろ~何んと言う頭ごなし管理官課長が居ない時に限ってどなるイジメ」(4月21日~22日)との記載(認定事実⑸イ)は、寄付を申し出た団体に感謝状を授与することになった際、C管理官が感謝状の授与に関する調査を課員らに指示したときの言動に関するもの ってどなるイジメ」(4月21日~22日)との記載(認定事実⑸イ)は、寄付を申し出た団体に感謝状を授与することになった際、C管理官が感謝状の授与に関する調査を課員らに指示したときの言動に関するものと認められる(甲26[114頁])。この記載からすれば、亡Aが頭 ごなしに指示されたと感じ、これを嫌がらせやいじめと受け止めた可能性は否定できないが、表彰に関して必要な調査を部下に求めることには問題があるとはいえず、仮に粗野な物言いがあったとしても、平均的職員からみて、「ひどい嫌がらせ、いじめ…を執拗に受けた」とは評価し難い。 (エ) ダイアリーの「オメだち何ももってこねで!~スマホもねえのに!そんなことを言うな!管理官」(6月2日)との記載(認定事実⑺オ)は、C管理官の指示によりその場で調べ物をした際、他の課員らは私物のスマートフォンで検索を始めたのに対し、スマートフォンを所持していなかった亡Aがそのような方法による検索に着手しないでいたところ、C管理官が、亡Aに対し、みんなが調べているときに何で調べないのかを問うたときに関するものと認められる(甲26[116頁])。亡Aがこれを嫌がらせやいじめと受け止めた可能性はあるが、課員らに対して一斉に調査に取り掛かることを求めることに問題があるとはいえないし、亡Aがうつ病を発症する中で、かつての後輩であったC管理官の言動に過剰に反応した側面があることを否定できず、平均的職員からみて、「ひどい嫌がらせ、いじめ…を執拗に受けた」とは評価し難い。 (オ) 遺書の「管理官は、なんで、今年はやらないの。おまえもこれまでやってきていなかったじゃねえか。」、「7月1日の「安全の日」、今まで何もやってきていなかったじゃねえか。」との記載(認定事実⑻カ(ウ))は、亡Aが、7月1日の「国民安全の日」に 。おまえもこれまでやってきていなかったじゃねえか。」、「7月1日の「安全の日」、今まで何もやってきていなかったじゃねえか。」との記載(認定事実⑻カ(ウ))は、亡Aが、7月1日の「国民安全の日」に関する決裁を求めた際、C管理官から今年は何もやらないのかと問われ、前年度は何もやらなかったと説明したところ、C管理官が、亡A及びF主任に対し、何もしないのはおかしいから各署へ「安全の日」を周知する事務連絡を発出するようにと指示したときの言動に関するものと認められる(甲26[121~122、136~137頁]、乙29の10、証人B[35~36頁])。亡Aは、C管理官が今年は何もやらないのかと問うたことを嫌がらせやいじめと受け止めた 可能性はあるが、前年度に施策を講じていたかどうかにかかわらず、当該年度として施策を講じるか否かを当該年度の担当者に確認することに問題があるとはいえないし、当該年度も施策を講じることなく各署に事務連絡を発出しただけで終わっているのであるから、平均的職員からみて、「ひどい嫌がらせ、いじめ…を執拗に受けた」とは評価し難い。 (カ) 遺書の「4月から安全の仕事をしていないだと。」の記載(認定事実⑻カ(ア))は、C管理官が、時期は判然としないものの、亡A及び安全教育係に対し、「安全でやるべき仕事があるだろう。挨拶文だけが仕事ではない。 そろそろ考えて仕事をやること。」と指導したときの言動に関するものと認められる(甲26[132頁]、乙29の2)。亡Aは、これを自分への当て付けと受け取るなどして嫌がらせやいじめと受け止めた可能性は否定できず、また、挨拶文に特に言及していることからすれば亡Aを念頭に置いた発言であったであろうこともうかがえる。しかし、全体として業務が滞っている係及び課長補佐に対する一般的な指導の めた可能性は否定できず、また、挨拶文に特に言及していることからすれば亡Aを念頭に置いた発言であったであろうこともうかがえる。しかし、全体として業務が滞っている係及び課長補佐に対する一般的な指導の内容として問題があるとはいえないし、亡Aがうつ病を発症する中で過剰に反応した側面があることを否定できず、平均的職員からみて、「ひどい嫌がらせ、いじめ…を執拗に受けた」とは評価し難い。 (キ) 遺書の「メンコは高く評価し、かわいくない者はいじめる。時間外の手当もそのとおりである。むつ署と交通企画課の手取りでは10万円は違う。 月々の手当5万円程度、きちんとした金額なのかわからない。メンコのFについて登録されていないと、補佐がきちんと確認しているかと確認する有様である。」、「ボーナス査定も何でFみたいなやつを高く評価しなければならないのか疑問である。」の記載(認定事実⑻カ(イ))は、亡Aの手取額がむつ署での手取額よりも減った一方で、C管理官がF主任を時間外手当や賞与の査定面で優遇しているとして、そのような差別的な対応に対する不満をいう趣旨であると認められる。しかし、F主任に対する評価は、 C管理官の一存で決定するものではなく、D企画官及びB課長らもF主任を評価していたというのであるし(甲2[25、26頁]、乙29の3、37、証人B[19頁])、F主任の時間外勤務の登録状況をF主任の直属の上司に当たる亡Aに確認することに問題があるともいえず(乙29の13)、C管理官がF主任を評価したことが亡Aに対する嫌がらせやいじめに当たるとするのは、客観的にみていささか無理がある。また、亡Aの手取額が減少したことについても、一線署と県警本部の勤務では当直の回数が異なり(認定事実⑽)、月々の手取額が違ってくるのは当然だというのであり(証人B[3頁 的にみていささか無理がある。また、亡Aの手取額が減少したことについても、一線署と県警本部の勤務では当直の回数が異なり(認定事実⑽)、月々の手取額が違ってくるのは当然だというのであり(証人B[3頁])、C管理官が亡Aの時間外勤務を殊更に登録しなかったと認めるに足りる証拠もない以上、亡Aの手取額が減った理由がC管理官の差別的な対応にあったとすることにも無理がある。それにもかかわらず、亡AがC管理官による差別的な対応があったと受け止めた背景としては、亡Aがうつ病を発症する中で、かつての後輩であったC管理官の種々の言動に過剰に反応した側面があることを否定できないのであって、平均的職員からみて、「ひどい嫌がらせ、いじめ…を執拗に受けた」とは評価し難い。 (ク) ダイアリー及び遺書には、以上で検討したほかにも、C管理官が亡Aを怒鳴ったりいじめたりしたとする記載が散見される。この点、C管理官は、地声が大きく部下を指導するときに厳しい口調になることがあり(乙29の1、36[9頁]、37、証人B[34頁])、時に粗野な物言いをする性質がうかがえるエピソードもあるが(上記(ウ)(エ))、証人E及び証人Bは、C管理官が亡Aを怒鳴ったりいじめたりしたことについては否定しており(この点は原告訴訟代理人による反対尋問においても一貫している。)、C管理官が警務部監察課による聴取調査においてそのような事実については否定している中で、原告が本訴訟においてC管理官の証人申請を敢えて行っていない(原告本人[38頁]、弁論の全趣旨)ことにも鑑みると、 C管理官の一連の言動は、時に粗野な物言いはあったとしても、指導の内容面で不当なものであったとは認められず、平均的職員からみて、「ひどい嫌がらせ、いじめ…を執拗に受けた」とは評価し難い。 (ケ) 以上によれ 一連の言動は、時に粗野な物言いはあったとしても、指導の内容面で不当なものであったとは認められず、平均的職員からみて、「ひどい嫌がらせ、いじめ…を執拗に受けた」とは評価し難い。 (ケ) 以上によれば、業務負荷の分析表で過重な負荷となる可能性のある業務例として例示されている「上司等による、人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃等が、執拗に行われた場合」、「周囲からも客観的に認識されるような激しい対立が上司等との間に生じ、その後の業務に大きな支障を来した場合」等に当たるともいえず、認定基準の「職場でひどい嫌がらせ、いじめ又は暴行を執拗に受けたと認められる場合」又はこれに準ずるような業務負荷があったと認められる場合に相当する出来事があったとは認められない。 イその他のいじめについて(ア) ダイアリーの「(C管理官が)知っていてわざと教えてくれない。まるでFと同じだ。ちくしょう!」の記載(認定事実⑻エ)や、遺書におけるF主任がC管理官からメンコとして高く評価されている旨や「何でFみたいなやつを高く評価しなければならないのか疑問である。」の記載(認定事実⑻カ(イ))からすると、亡Aは、部下であるF主任が知っていてわざと教えてくれないなど、非協力的であると感じ、F主任がC管理官から評価されていることにも反発ないし悪感情を抱いていたことが認められる。しかし、証拠(甲2[31頁]、8の5、9の7、乙37、証人E[21~22、46、52~53頁])によれば、F主任は、亡Aからの質問には聞かれたことに簡潔に答え、必要以上には答えない姿勢であったところ、これはE係長に対しても同様であったというのであり、F主任が亡Aの業務の一部を肩代わりする中で、業務を軽減された亡Aの仕事が少ないと不満に感 とに簡潔に答え、必要以上には答えない姿勢であったところ、これはE係長に対しても同様であったというのであり、F主任が亡Aの業務の一部を肩代わりする中で、業務を軽減された亡Aの仕事が少ないと不満に感じていた可能性はあるとしても(乙29の1・12)、それを超えてF主任が亡Aに対して嫌がらせやいじめをしていたと認めるに足りる証拠は ない。それにもかかわらず、亡AがF主任から嫌がらせやいじめをされていると受け止めるに至った背景としては、亡Aがうつ病を発症する中で、C管理官に対する反発ないし悪感情が嵩じ、C管理官が評価しているF主任に対しても悪感情を強めるなどして過剰に反応した側面があることを否定できないのであって、平均的職員からみて、「ひどい嫌がらせ、いじめ…を執拗に受けた」とは評価し難い。 (イ) なお、ダイアリーには、6月22日の出来事として「泣きながらかげ口~メシのたのみ方」と記載されており(甲12[21頁])、原告は、これを根拠に弁当の注文に関するいじめがあったとも主張する。しかし、亡Aは、出勤日に原告が作った弁当を毎回持参し、職場で弁当を注文することはなかったのであるから(甲9の10、26[15、98頁]、原告本人[20頁])、弁当の注文に関していじめがあったとはいえないと思われる。この点、証拠(甲26[98、106頁])によれば、原告が、気温が高くなるに際し、職場で弁当を頼むことを促したところ、亡Aが、「お弁当を頼む時間も無いし、頼み方も分からない。忙しくて仕事しながら食事を済ませている。パワハラだ。」と話したとされるが、これは、仕事が忙しいことに関して不満をいう趣旨と理解するのが自然と思われる。仮に亡Aが弁当の注文に関していじめがあったと真に感じていたとするならば、それは、うつ病を発症する中での過剰ないし病的な これは、仕事が忙しいことに関して不満をいう趣旨と理解するのが自然と思われる。仮に亡Aが弁当の注文に関していじめがあったと真に感じていたとするならば、それは、うつ病を発症する中での過剰ないし病的な反応であった可能性があり、弁当の注文に関して嫌がらせやいじめが客観的に存在したとは認められない。 (ウ) 以上によれば、F主任による不協力ないしいじめをいう点を含め、平均的職員からみて、認定基準の「職場でひどい嫌がらせ、いじめ又は暴行を執拗に受けたと認められる場合」又はこれに準ずるような業務負荷があったと認められる場合に相当する出来事があったとは認められない。 ⑶ 長時間の時間外勤務についてア亡Aの交通企画課における勤務状況等(認定事実⑽)に鑑みれば、交通企 画課における時間外勤務時間数(平成28年4月~6月)は、以下の考え方に基づいて算定するのが相当である。これによれば、表3(この部分は裁決庁の判断と同じである。甲2[39頁])のとおりになると認められる。 (ア) 出勤日について出勤日及び出退勤時刻は、被告が作成した時間外勤務集計表(退勤時刻については亡Aの届出に基づいている。)による。ただし、出勤時刻のうちパソコンのログイン時刻から早出残業をしたと認められる日については、概ね午前7時30分に早出残業したものと扱う。(甲20、乙7、39)(イ) 休日出勤について出勤日及び出退勤時刻は、被告が作成した時間外勤務集計表(休日出勤日は亡Aの届出に基づいている。)による。(甲20、乙7、39)(表3)期間時間外勤務時間数平成28年4月2日~同年5月1日72時間24分平成28年5月2日~同年5月31日73時間19分平成28年6月1日~同年6月30日86時間39分イこれによれば、5月頃 時間数平成28年4月2日~同年5月1日72時間24分平成28年5月2日~同年5月31日73時間19分平成28年6月1日~同年6月30日86時間39分イこれによれば、5月頃から6月頃にかけてうつ病を発症したと認められる亡Aにおいて、認定基準の「発症直前の1か月に概ね160時間を超えるような、又は発症直前の3週間に概ね120時間以上の時間外勤務を行ったと認められる場合」、「発症直前の連続した2か月間に1月当たり概ね120時間以上の、又は発症直前の連続した3か月間に1月当たり概ね100時間以上の時間外勤務を行ったと認められる場合」のいずれにも該当しないほか、「発症直前の1か月以上の長期間にわたって、質的に過重な業務を行ったこと等により、1月当たり概ね100時間以上の時間外勤務を行ったと認められる場合」についても、1月当たり概ね100時間以上の時間外勤務を長期間にわたって行ったとは認められないことから該当しない。 ウ運用基準によれば、「時間外勤務等の過重性は、原則的にその原因となった出来事等の過重性と関連させて検討する(特に、1月当たり概ね80時間以上の時間外勤務等を行っていた場合や、2週間以上にわたって連続勤務を行っていたことがある場合には留意する。)」とされているところ、亡Aは、6月19日㈰から7月2日㈯まで14日間の連続勤務をしていたことが認められる(甲20)。この点は、時間外勤務の過重性を評価するに当たって留意される必要があるが、この期間は、亡Aのうつ病が重症化していたことが認められ(前記3⑶)、これにより業務効率が著しく低下したために連続勤務を要することになった可能性があることに加え、翌7月3日㈰には家族との時間を過ごしていたことにも鑑みると、上記の14日間の連続勤務の点のみをもって 、これにより業務効率が著しく低下したために連続勤務を要することになった可能性があることに加え、翌7月3日㈰には家族との時間を過ごしていたことにも鑑みると、上記の14日間の連続勤務の点のみをもって時間外勤務が過重であったと評価することはできない。 ⑷ 4月1日から6月末までの出来事についての総合評価原告が主張する急激な変化を伴う職務内容、上司及び部下からの嫌がらせやいじめ、時間外勤務については、いずれも、亡Aの主観的な受け止めとしては相当程度の精神的負荷につながったことは明らかではあるものの、その精神的負荷は、うつ病を発症したことにより過剰な反応をするようになったことが相当程度影響しているといわざるを得ないことからすると、平均的職員からみて、強度の業務負荷を与える事象があったとは認められない。 5 平成28年7月1日から同月4日までの出来事について⑴ 亡Aは、6月末の時点ではうつ病が重症化に至っていたが、6月29日の課内検討会において、本件アプリ案を含む事業案の詳細や予算の観点から検討すべき事項は残っていたものの方向性としてはB課長を含む上司らの了解が得られたこともあって(認定事実⑺ウ)、少なくとも主観的には当面の仕事の山は越えたと感じ、気持ちに多少なりとも余裕が生まれていた。このことは、上司らから出席を見合わせて事業案の作業を進めるようにとの助言を受けたがこれを容れずに7月2日㈯の交通安全キャンペーンに出席したことや、7月3 日㈰に原告と出掛けるなどして家族との時間を過ごしていること(認定事実⑻ア)からもうかがえる。 ⑵ しかるところ、亡Aは、7月4日の課内検討会において、本件アプリ案を含む事業案が最終決定されるつもりで事前準備をして臨んだにもかかわらず、予算が高すぎるという少なくとも亡Aにとっては予期しな ⑵ しかるところ、亡Aは、7月4日の課内検討会において、本件アプリ案を含む事業案が最終決定されるつもりで事前準備をして臨んだにもかかわらず、予算が高すぎるという少なくとも亡Aにとっては予期しない上司らの判断により、本件アプリ案の全体が不採用となり、その場で提案されたD案に急遽差し替えられるという事態となり、かなりのショックを受けている(認定事実⑻ウ)。 このことは、亡Aとともに事業案を担当したE係長の証言によっても裏付けられている上に、ダイアリー及び遺書の記載(認定事実⑻エカ)からも認められる。7月4日の課内検討会において本件アプリ案が不採用とされたことが、亡Aが自死した直接的な契機になったことは明らかである。 ⑶ この点、本件アプリ案は、B課長も参加した6月29日の課内検討会において、予算については検討未了であって予算を含む詳細は引き続き検討することになっていたから(認定事実⑺ウ)、B課長が出席する次の課内検討会(7月4日の課内検討会がこれに当たる。)では、予算を含めた詳細が検討されることは予定されていたことであり、予算や費用対効果の観点から本件アプリ案の修正が求められる可能性があることは、客観的には想定の範囲内であったといわざるを得ない。それにもかかわらず、亡Aにおいて、本件アプリ案が7月4日の課内検討会において最終決定されることを期待した背景としては、6月29日の課内検討会において、付加機能を追加しない場合の予算が約880万円であるのに対し、付加機能を追加すると予算が約1572万円に増大することが明示的な検討の対象とされることなく(当時、この点を上司らが明示的に問題視したこともなければ、亡Aから問題点として積極的に説明したこともなかった。)、付加機能を追加することもあり得る前提で本件アプリ案の方向性を了承したために(認定事 当時、この点を上司らが明示的に問題視したこともなければ、亡Aから問題点として積極的に説明したこともなかった。)、付加機能を追加することもあり得る前提で本件アプリ案の方向性を了承したために(認定事実⑺ウ)、亡Aが、予算いかんにかかわらず本件アプリ案に付加機能を追加する方向で承認される見込みが高いと誤解したということが あったと考えられる。そして、この誤解した内容で欠席したE係長に伝えた可能性がある(認定事実⑺ウ)。その意味で、亡Aが7月4日の課内検討会で本件アプリ案の最終決定を期待したことは、亡A自身の誤解に基づくものではあったが、一連の経過からすれば全く理由がないものではなかったと認める余地がある。 ⑷ そして、亡Aは、7月4日の課内検討会において、予算が高すぎるとのそれまでは明示的に指摘されてはいなかった理由で本件アプリ案の全体が不採用とされ、その場で初めて知らされたD案と急遽差し替えられた原因には、C管理官による嫌がらせやいじめがあったと確信し、C管理官に対する激しい怒りないし恨みを再燃させてもはや抑え切れなくなった。このことは、亡Aが、7月4日の課内検討会の後、E係長に対し、「無理だべ、やってられねえ、今まで何回も検討会をやっているのに何で今言うんだ、これまでで指摘することができたはずだ、はめられた、もう間に合わねえ。」などと話していたことや、ダイアリーに「今日は本当に頭にきたと管理官。オマエがきちんと教えないからこうなるんだ。これで良いと言ったじゃないか?話しがちがう。知っていてわざと教えてくれない。まるでFと同じだ。ちくしょう!うらんでやるC。Fうらんでやる!皆休めば良いじゃん!オレはあの世で仕事をしている!」と記載していたこと(認定事実⑻エ)からも明らかである。 ⑸ しかしながら、本件の全証拠を総合して 。ちくしょう!うらんでやるC。Fうらんでやる!皆休めば良いじゃん!オレはあの世で仕事をしている!」と記載していたこと(認定事実⑻エ)からも明らかである。 ⑸ しかしながら、本件の全証拠を総合しても、7月4日の課内検討会において、予算が高すぎるとの理由で本件アプリ案が不採用とされたことが、C管理官による嫌がらせないしいじめであったと認めるには足りない。本件アプリ案が不採用とされた経過は、客観的にみれば、6月29日の課内検討会において付加機能を追加することを含めた検討はされたが、付加機能を追加した場合の予算については検討されておらず(このことはB課長の証言から明らかである。)、本件アプリ案に付加機能を追加した結果、予算が当初の約880万円から約1572万円に増加し、7月4日の課内検討会において増加後の予算が初めて示 されたところ、費用対効果の観点から再検討が必要になり、D企画官が7月1日に偶々業者が事故分析係に持ち込んだアプリの説明を受けていたことから、当該アプリの案(D案)を提示したところ、本件アプリ案と比較してかなり割安(約280万円)であったこともあって、B課長、C管理官らがD案の採用にその場で一挙に傾いたという経過である。この点、6月29日の時点でD案はそもそも存在していなかったから、同日の課内検討会において本件アプリ案の方向性が了承されたことが、C管理官の嫌がらせやいじめによるものであったと認める余地はない。また、7月4日の課内検討会において予算が高すぎると最初に指摘し、D案を提示したのはD企画官であり、D企画官が数日前にD案に係るアプリの説明を業者から受けていた経緯に不自然なところはないのであって(認定事実⑻ウ)、D案がその場で提示されるまでの過程においてC管理官による嫌がらせやいじめ(遺書に記載があるように にD案に係るアプリの説明を業者から受けていた経緯に不自然なところはないのであって(認定事実⑻ウ)、D案がその場で提示されるまでの過程においてC管理官による嫌がらせやいじめ(遺書に記載があるようにC管理官が亡Aを「はめた」であるとか「知っていてわざと教えてくれない」など)が介在したと認めるに足りる証拠はない。 ⑹ このように本件アプリ案が不採用とされたことに関し、客観的にはC管理官による嫌がらせやいじめが存在したとは認められないにもかかわらず、亡AがC管理官による嫌がらせやいじめがあったと確信し、C管理官に対する激しい怒りないし恨みを再燃させて抑え切れなくなった原因としては、亡Aがうつ病が重症化する中で、亡Aからすれば予期しない理由により本件アプリ案が不採用になったため、交通企画課に異動して以降、C管理官から種々の嫌がらせやいじめがあると受け止め続けてきたことと相俟って、交通企画課に異動してからのあらゆる問題の根源をC管理官に求めてしまったことによるものと推認される。しかし、このような本件アプリ案が不採用とされた原因についての亡Aの受け止めは、客観的な事実経過とは明らかに異なっており、平均的職員が亡Aと同様の受け止めをするであろうとは認められず、むしろ自らが担当した企画案が費用対効果を理由として不採用とされることは、職務上、一般的にあ り得ることであって特異な出来事とはいえない。そうすると、7月4日の課内検討会において本件アプリ案が不採用とされたことが、亡Aが自死した直接的な契機になったことは明らかであるものの(前記⑵)、これは亡Aのうつ病が重症化したことにより、客観的に存在したとは認められないC管理官による嫌がらせやいじめによって本件アプリ案が不採用とされたものと亡Aが確信したことに起因するといわざるを得ず、これに は亡Aのうつ病が重症化したことにより、客観的に存在したとは認められないC管理官による嫌がらせやいじめによって本件アプリ案が不採用とされたものと亡Aが確信したことに起因するといわざるを得ず、これによってうつ病の程度が更に悪化したことについては、全体として、認定基準が定める「強度の業務負荷によって対象疾病が自然経過を超えて著しく悪化したものと医学的に判断されるとき」(前記3⑹)に当たらないというべきである。 ⑺ 以上によれば、7月1日から同月4日までの出来事によって亡Aのうつ病の程度が更に悪化したことについて、公務起因性を認めることはできない。 6 本件処分の適法性原告が主張する各出来事は、平均的職員(当該職員と同程度の年齢、経験を有する同僚職員又は同種職員であって、日常業務を支障なく遂行することができる者)を基準とした場合において(前記2)、いずれも強度の精神的負荷を与える事象(規則別表第一の九)とはいえず、これらを総合評価した場合であっても、亡Aがうつ病を発症して自死したことにつき、公務起因性があるとは認められないから、公務外の災害と認定した本件処分に違法があるとはいえない。 第5 結論以上によれば、本件処分の取消請求は理由がないから棄却し、公務災害認定処分の義務付けを求める訴えは不適法であるから却下することとし、訴訟費用の負担について行訴法7条、民訴法61条を適用して、主文のとおり判決する。 青森地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官工藤哲郎 裁判官三塚祐太郎 裁判官鈴木祥平 別紙 関係法令等の定め 第1 法( 裁判官三塚祐太郎 裁判官鈴木祥平 別紙 関係法令等の定め 第1 法(地方公務員災害補償法)の定め 1 基金(地方公務員災害補償基金)は、補償の事由が生じた場合に、法に定めるところにより、補償を受けるべき職員若しくは遺族又は葬祭を行う者に対し、補償を行う(24条1項)。基金は、定款の定めるところにより、従たる事務所(4条)の長に補償を行なわせることができる(同条2項)。 2 基金の行う補償の種類としては、遺族補償(25条1項6号)、葬祭補償(同7号)等がある。これらの補償は、当該補償を受けるべき職員若しくは遺族又は葬祭を行う者の請求に基づいて行う(同条2項)。 3 職員(常時勤務に服することを要する地方公務員など。2条1項)が公務上死亡し、又は通勤により死亡した場合においては、遺族補償として、職員の遺族に対して、遺族補償年金又は遺族補償一時金を支給する(31条)。 4 基金は、法の規定による補償を受けようとする者から補償の請求を受けたときは、その補償の請求の原因である災害が公務又は通勤により生じたものであるかどうかを速やかに認定し、その結果を当該請求をした者及び当該災害を受けた職員の任命権者に通知しなければならない(45条1項)。 5 基金の従たる事務所の長が行う補償に関する決定に不服がある者は、地方公務員災害補償基金支部審査会(以下「支部審査会」という。)に対して審査請求をし、その裁決に不服がある者は、更に審査会に対して再審査請求をすることができる(51条2項)。また、51条1項又は2項に規定する処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する審査会又は支部審査会の裁決を経た後でなければ、提起する 対して再審査請求をすることができる(51条2項)。また、51条1項又は2項に規定する処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する審査会又は支部審査会の裁決を経た後でなければ、提起することができない(56条)。 第2 規則(地方公務員災害補償法施行規則)の定め公務上の災害の範囲は、公務に起因する負傷、障害及び死亡並びに別表第一に掲げる疾病とする(1条の2)。別表第一の九は、「人の生命にかかわる事故への遭遇その他強度の精神的又は肉体的負荷を与える事象を伴う業務に従事したため生じた精神及び行動の障害並びにこれに付随する疾病」と定めている。 第3 認定基準の概要(乙40、弁論の全趣旨) 1 対象疾病等⑴ 対象疾病認定基準で対象とする疾病(以下「対象疾病」という。)は、疾病及び関連保健問題国際統計分類第10回改訂版(以下「ICD-10」という。)第Ⅴ章「精神及び行動の障害」に分類される精神疾患であって、器質性のもの及び有害物質に起因するものを除くものとする。 ⑵ 業務との関連で発症する可能性のある精神疾患対象疾病のうち、業務に関連して発症する可能性のある精神疾患は、主としてICD-10のF2からF4までに分類される精神疾患である。 なお、ここでいうICD-10の“F2”は、「F20-29 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」であり、“F3”は、「F30-39 気分[感情]障害」であり(F32はうつ病エピソード)、“F4”は、「F40-48 神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害」である。 ⑶ 疾患名等の判断疾患名等については、公務災害認定請求時における疾患名等にこだわらず、被災職員に係る具体的な病態等に関する事実関係により、医学的に判断する。 2 認定要件公務が原因 る。 ⑶ 疾患名等の判断疾患名等については、公務災害認定請求時における疾患名等にこだわらず、被災職員に係る具体的な病態等に関する事実関係により、医学的に判断する。 2 認定要件公務が原因で精神疾患を発症したとして公務災害認定請求があった事案においては、当該精神疾患が対象疾病に該当し、かつ、次の要件を何れも満たして発 症したときに、規則別表第一の九に該当する疾病として取り扱う。 ⑴ 対象疾病発症前の概ね6か月の間に、業務により強度の精神的又は肉体的負荷を受けたことが認められること。 ここで、「業務により強度の精神的又は肉体的負荷を受けたこと」とは、①「人の生命にかかわる事故への遭遇」、又は、②「その他強度の精神的又は肉体的負荷を与える事象」を伴う業務に従事したことをいう。 ⑵ 業務以外の負荷及び個体側要因により対象疾病を発症したとは認められないこと。 3 認定要件の検討精神疾患事案に係る対象疾病が、前記2の認定要件に該当するものか否かを判断するため、次の⑴から⑶までのとおり検討を行うものとする。 ⑴ 業務による負荷の検討ア具体的な検討方法(ア) 業務による精神的又は肉体的負荷(以下「業務負荷」という。)について、前記2⑴の①(人の生命にかかわる事故への遭遇)又は②(その他強度の精神的又は肉体的負荷を与える事象)の事象の有無を判断するため、対象疾病発症前の概ね6か月の間に、対象疾病の発症に関与したと考えられる業務による出来事(対人関係のトラブルを含む。)として、具体的にどのようなものがあったのかを把握し、その出来事に対応した適当な着眼事項に基づいて分析した上で、その負荷の強さを検討する。上記の検討の結果、その出来事が次に掲げる場合(前記2⑴の①「人の生命にかかわる事故への遭遇」に関する記載は省略す の出来事に対応した適当な着眼事項に基づいて分析した上で、その負荷の強さを検討する。上記の検討の結果、その出来事が次に掲げる場合(前記2⑴の①「人の生命にかかわる事故への遭遇」に関する記載は省略する。)に該当するときは、前記2⑴の①又は②に該当する事象があったものと判断できることとする。 (その他強度の精神的又は肉体的負荷を与える事象について)①~③、⑦、⑧及び⑪(省略)④ 発症直前の1か月に概ね160時間を超えるような、又は発症直前 の3週間に概ね120時間以上の時間外勤務を行ったと認められる場合(手待時間が多い等の勤務密度が特に低い場合を除く。)⑤ 発症直前の連続した2か月間に1月当たり概ね120時間以上の、又は発症直前の連続した3か月間に1月当たり概ね100時間以上の時間外勤務を行ったと認められる場合⑥ 発症直前の1か月以上の長期間にわたって、質的に過重な業務を行ったこと等により、1月当たり概ね100時間以上の時間外勤務を行ったと認められる場合⑨ 機構・組織等の改革又は人事異動等による、急激かつ著しい職務内容の変化を伴う業務に従事したと認められる場合⑩ 職場でひどい嫌がらせ、いじめ又は暴行を執拗に受けたと認められる場合⑫ ①から⑪までに準ずるような業務負荷があったと認められる場合(イ) 業務負荷の判断基準とする職員業務負荷を受けたことが認められるか否かは、被災職員が、その出来事及び出来事後の状況を主観的にどう受け止めたかによって判断するのではなく、同じ事態に遭遇した場合、同種の職員が一般的にその出来事及び出来事後の状況をどう受け止めるかという観点から判断する。この「同種の職員」は、被災職員と職種、職、業務経験等が同等程度の職員をいう。 ⑵ 業務以外の負荷及び個体側要因の検討ア業務 出来事及び出来事後の状況をどう受け止めるかという観点から判断する。この「同種の職員」は、被災職員と職種、職、業務経験等が同等程度の職員をいう。 ⑵ 業務以外の負荷及び個体側要因の検討ア業務以外の負荷の検討(省略)イ個体側要因の検討精神疾患の既往歴、社会適応状況における問題(過去の学校生活、職業生活等における適応に困難が認められる場合)、アルコール等依存症、性格傾向における偏り(ただし、社会適応状況に問題がない場合を除く。)が認めら れる場合には、それらの個体側要因が対象疾病を発症させるおそれのある程度のものと医学的に認められるか否かについて検討する。 ⑶ 公務起因性についての考え方被災職員が対象疾病を発症し、かつ、上記⑴及び⑵の検討の結果、次のア又はイに該当する場合は、前記2の認定要件を満たすものとする。 ア業務による強度の精神的又は肉体的負荷(以下「強度の業務負荷」という。)が認められ、かつ、業務以外の負荷及び個体側要因が特段認められない場合イ強度の業務負荷が認められ、かつ、業務以外の負荷及び個体側要因の両方又はそのいずれかが認められるものの、それらが明らかに対象疾病の発症の有力な原因となったとは認められない場合 4 精神疾患の悪化と症状安定後の新たな発症⑴ 精神疾患の悪化の公務起因性既に公務外で精神疾患を発症して治療が必要な状態にある者については、極めて強い業務負荷を生じさせる出来事(例えば前記3⑴ア(ア)④に該当するような極めて過重な時間外勤務への従事等)が認められる場合であって、その出来事の後概ね6か月以内に対象疾病が自然経過を超えて著しく悪化したと医学的に認められる場合は、その出来事が悪化の原因であると推認して、悪化した部分について公務起因性を認めるものとする。また、極めて 来事の後概ね6か月以内に対象疾病が自然経過を超えて著しく悪化したと医学的に認められる場合は、その出来事が悪化の原因であると推認して、悪化した部分について公務起因性を認めるものとする。また、極めて強い業務負荷を生じさせる出来事がなくとも、悪化の前に強度の業務負荷が認められる場合には、当該業務負荷、被災職員の個体側要因(悪化前の精神疾患の状況)と業務以外の負荷、悪化の態様やこれに至る経緯(悪化後の症状やその程度、出来事と悪化との近接性、発症から悪化までの期間など)等を十分に検討し、強度の業務負荷によって対象疾病が自然経過を超えて著しく悪化したものと医学的に判断されるときには、悪化した部分について公務起因性を認めるものとする。 ⑵ 症状安定後の新たな発症(省略) 5 治ゆ等の取扱い(省略) 6 自殺の公務起因性の考え方精神疾患が原因で自殺したとして公務災害認定請求のあった事案においては、①公務と精神疾患との間に相当因果関係が認められ、かつ、②当該精神疾患と自殺との間に相当因果関係が認められるときに、自殺についての公務起因性を認めるものとする。すなわち、ICD-10のF0からF4までに分類される多くの精神疾患では、その病態としての自殺念慮が出現する蓋然性が高いと医学的に認められる。そのため、公務に起因して精神疾患を発症した者が自殺を図った場合には、当該精神疾患によって正常の認識、行為選択能力が著しく阻害され、又は自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で自殺が行われたものと推定し、原則として、自殺についての公務起因性が認められる。 7 認定の手続理事長は、医学専門家から精神疾患の疾患名、発症時期、発症機序、鑑別診断等に関する医学的知見を徴するものとする。 第4 運用基準の概要(乙 についての公務起因性が認められる。 7 認定の手続理事長は、医学専門家から精神疾患の疾患名、発症時期、発症機序、鑑別診断等に関する医学的知見を徴するものとする。 第4 運用基準の概要(乙41、弁論の全趣旨) 1 疾患名等の判断被災職員に係る具体的な病態等に関する事実関係により医学的に判断すべき事柄には、対象疾病の発症時期も含まれる。 2 業務負荷の検討⑴ 業務負荷について認定基準の前記第3の3⑴アの趣旨を踏まえて検討するため、業務負荷の分析表(乙41の別表。以下「業務負荷の分析表」という。)を積極的に活用する。 ⑵ 強度の業務負荷を与える事象の例ア前記3⑴ア(ア)に掲げた例は、認定基準の明確化及び具体化の観点から強 度の業務負荷を与える事象に該当する場合を示したものである。 また、対象疾病発症前の概ね6か月の間において、強度の業務負荷を与える事象には該当しないが相当程度の負荷があると認められる出来事が複数存在する場合には、それらの出来事の関連性、時間的な近接の程度、数及び各出来事の内容(負荷の強弱)等を総合的に判断することにより、全体として強度の業務負荷を与える事象となる可能性があるので、留意する。 イ前記3⑴ア(ア)のうち、④及び⑤は時間外勤務の過重性のみで強度の業務負荷が認められる場合であり、これらに示された時間外勤務の時間数に満たない場合であっても強度の業務負荷が認められるときがあるので留意する。 ⑤で示された時間外勤務の時間数は、時間外勤務の業務内容が通常その程度の時間数を要するものである必要がある。⑥の「質的に過重な業務を行ったこと等」に該当するものを例示すると、制度の創設等に携わったこと、繁忙部署に異動したこと、組織の合理化等により自ら処理すべき業務が大きく増加したこと、業務の失敗 ある。⑥の「質的に過重な業務を行ったこと等」に該当するものを例示すると、制度の創設等に携わったこと、繁忙部署に異動したこと、組織の合理化等により自ら処理すべき業務が大きく増加したこと、業務の失敗に対応したこと、限られた期間内に大量の作業を行う必要が生じたために当該作業に従事したこと等が挙げられる。 ⑶ 時間外勤務等ア時間外勤務を評価する場合には、命令を受けて行った勤務のほか、それ以外の業務に関する活動についても、その必要性、内容、時間等を在庁記録や同僚証言等の客観的な根拠によって判断できるものは、個別事案ごとに精査の上、業務負荷の評価の対象にすることができる。時間外勤務の時間数を指標にしているものは、勤務を行った時間及び当該活動を行った時間のうち、1週当たり40時間(1日当たり8時間)を超える時間を対象とする。 イ時間外勤務等の過重性は、次のとおり検討する。 (ア) 時間外勤務等の過重性の検討に当たっては、時間外勤務等の時間数だけでなく、その必要性、勤務密度及び内容を考慮する。また、時間外勤務等の時間帯、不規則性、勤務間インターバルの状況、実質的な睡眠時間の確 保等の状況も、必要に応じて考慮する。 (イ) 時間外勤務等の過重性は、原則的にその原因となった出来事等の過重性と関連させて検討する(特に、1月当たり概ね80時間以上の時間外勤務等を行っていた場合や、2週間以上にわたって連続勤務を行っていたことがある場合には、留意する。)。当該出来事等の過重性については、その内容に応じ、業務負荷の分析表の「着眼する要素」を参考にする(したがって、例えば、制度の創設等に携わった場合には、業務の難易度、業務の処理期限の有無、責任の軽重等の状況を考慮する。)。ただし、時間外勤務等の過重性のみで強度の業務負荷が認められることも する(したがって、例えば、制度の創設等に携わった場合には、業務の難易度、業務の処理期限の有無、責任の軽重等の状況を考慮する。)。ただし、時間外勤務等の過重性のみで強度の業務負荷が認められることもあるので留意する。 (ウ) 時間外勤務等の時間数の増加は精神疾患の発症による勤務能率の低下に伴うものであることもあり得ることから、精神疾患の発症の時期と時間外勤務等の時間数の増加の関係についても留意する。 以上

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