平成24年5月23日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(行ケ)第10450号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成24年4月25日判決原告株式会社白水館同訴訟代理人弁護士小関敏光朴憲洙中根紀裕正木健司野中光夫泉希望子室田真宏宮 﨑 真由油田弘佑同弁理士樋口武尚柘植千咲被告株式会社健遊館同訴訟代理人弁護士水野健司同弁理士足立勉小早川俊一郎 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が無効2011-890018号事件について平成23年11月21日に した審 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が無効2011-890018号事件について平成23年11月21日に した審決を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告の下記1の本件商標に係る商標登録を無効にすることを求める原告の下記2の本件審判請求について,特許庁が同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4のとおりの取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。 1 本件商標(甲20。枝番を含む。特に断らない限り,以下同じ。)商標登録番号:第5381652号商標の構成:健遊館(標準文字)指定役務:別紙指定役務目録記載のとおり商標登録出願日:平成22年8月9日登録査定日:平成22年11月16日設定登録日:平成23年1月7日 2 特許庁における手続の経緯原告は,平成23年2月25日,特許庁に対し,本件商標の指定役務中,第35類,第36類及び第44類について,本件商標の登録を無効にすることを求めて審判を請求した。特許庁は,これを無効2011-890018号事件として審理し,同年11月21日,本件審判請求が成り立たないとする本件審決をし,その謄本は,原告に対し,同年12月1日,送達された。 3 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,要するに,本件商標の出願当時,原告が使用していた「健遊館」なる標章(以下「原告使用標章」という。)が,原告の業務に係る役務を表示する商標として,需要者及び取引者の間に広く認識されていたものとはいえないので,原告の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがあるとはいえないから,本件商標登録は,商標法4条1項15号の規定に違反してされ る商標として,需要者及び取引者の間に広く認識されていたものとはいえないので,原告の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがあるとはいえないから,本件商標登録は,商標法4条1項15号の規定に違反してされたものではなく,また,不正の目的で使用するものとも認められないから,同項19号に該当するものでもな い,というものである。 4 取消事由(1) 商標法4条1項15号該当性に係る判断の誤り(取消事由1)(2) 商標法4条1項19号該当性に係る判断の誤り(取消事由2)第3 当事者の主張 1 取消事由1(商標法4条1項15号該当性に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 原告使用標章の周知性についてア本件審決は,「高齢者専用賃貸住宅の貸与」事業の特質を全く考慮せず,平成22年6月19日に岐阜県加茂郡白川町(以下,それぞれ「加茂郡」「白川町」ということがある。)に原告が開設した高齢者専用賃貸住宅「健遊館」(以下「本件施設」という。)の施設名称と原告使用標章とを区別した上で,同施設を紹介した新聞記事(甲2,3,9。以下,総称して,「本件新聞記事」という。)を過少評価し,原告使用標章の周知性を否定したものであって,明らかに誤りである。 イ 「建物の貸与」事業(第36類)では,個別具体的な役務内容の主要部分は,貸与する建物自体により決定される。特に,「高齢者専用賃貸住宅の貸与」事業では,役務の需要者及び取引者,つまり「終の棲家」として住宅を賃借する高齢者は,当該住宅の設備,貸与に付随して提供されるサービスの内容について,重大な関心を有するものである。高齢者専用賃貸住宅は,画一的な大量生産品ではないから,設備及びサービスの内容は,一般的に,個々の建物,室内,備品及び周辺環境により決せられるものである。そのため,需要者 な関心を有するものである。高齢者専用賃貸住宅は,画一的な大量生産品ではないから,設備及びサービスの内容は,一般的に,個々の建物,室内,備品及び周辺環境により決せられるものである。そのため,需要者及び取引者としては,実際に提供を受ける役務の内容について,当該住宅と一体不可分のものとして理解するものである。 ウ本件新聞記事には,原告使用標章が記載されているのみならず,「高齢者専用賃貸住宅」が「開設」「オープン」したことが紹介されており,原告使用標章及びその役務の関係が強調されているものと解されるから,原告使用標章が格別強調されているものではないとした本件審決の判断は誤りである。 本件新聞記事によると,原告は,平成22年6月末日までには原告使用標章の使用を開始していたものであり,同標章は,岐阜県及びその周辺地域(愛知県などの東海地方)の需要者及び取引者において周知となっていたことは明らかである。 また,そのほかの書証(甲6,7,23~25)からしても,原告使用標章の周知性は,「混同を生ずるおそれ」を認めるに十分なものである。 エ本件審決は,原告使用標章の周知性を判断する際,周知性に係る地域的範囲並びに需要者及び取引者について全く検討しなかった。 周知性は,あくまで混同を生ずるおそれを判断する1要素であり,他の要素をも含めて総合的に判断される相対的なものであるから,必ずしも全国的な周知性が要求されるものではないし,「少なくとも数県単位で著名性が必要である」ということもできない。需要者及び取引者についても,指定役務の取引実態に応じて認定されるべきものであって,役務の種類及び性質により異なるものである。 原告使用標章に係る「高齢者専用賃貸住宅」の入居者は,法定の諸条件を満たした建造物に入居することになるが,入居者としては,今まで されるべきものであって,役務の種類及び性質により異なるものである。 原告使用標章に係る「高齢者専用賃貸住宅」の入居者は,法定の諸条件を満たした建造物に入居することになるが,入居者としては,今までの生活環境を完全に失わないようにするために,従前の住居の近くを選択するものであるし,入居者に家族がいる場合,面会に便利な比較的交通の便の良いところを選択するものである。 そうすると,「高齢者専用賃貸住宅」に係る需要者及び取引者は,入居希望者及びその家族であると解すべきことになるし,その地域的範囲は一般的な総合病院に通院,入院できる距離程度において判断されるべきものである。本件において,原告使用標章の周知性の有無は,本件施設の所在地である加茂郡あるいは白川町を中心とする地域について判断すべきであり,地域的範囲外にまで本件施設の存在を周知させる必要はない。また,多数の入居希望者全員が入居できるわけではないから,採算が確保できる通常の入居者数に短期に到達したことをもって周知性を認めれば足りる。しかも,「高齢者専用賃貸住宅」は,空室が生じたときに広告,宣伝を行えば足りるから,満室であれば,当該住宅に係る標章は広く普及されていると解すべきである。実際,本件施設は,平成22年6月の入居開始から僅か2か月後の本 件商標の登録出願時である同年8月において,36室中22室に入居者があり(入居率約60%),原告使用標章は,急速に周知性を獲得したものといえる。特に,本件施設は,医療連携型の高齢者専用住宅であることから,注目を浴びている。 このような事情を考慮すれば,原告使用標章の周知性については,1つの県あるいは同県内の主要な地域の1つにおいて認められれば十分である。しかも,原告使用標章については,本件新聞記事等を契機として,多数の問合せがあるなど,本件 ,原告使用標章の周知性については,1つの県あるいは同県内の主要な地域の1つにおいて認められれば十分である。しかも,原告使用標章については,本件新聞記事等を契機として,多数の問合せがあるなど,本件商標の登録出願時には,既に,少なくとも岐阜県及びその周辺地域(愛知県などの東海地方)において周知となっていたものである。 (2) 他人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれの有無商標法4条1項15号における「混同を生ずるおそれ」の判断は,当該他人の標章の周知度(広告,宣伝等の程度又は普及度),当該標章が創造標章か否か,当該標章がハウスマークか否か,企業における多角経営の可能性,商品間,役務間又は商品と役務間の関連性等,その他の要素も加えて総合的に検討すべきでものである。 本件において,原告が原告使用標章の使用を開始し,かつ,同標章が本件新聞記事等により周知となった直後に,被告が,原告の行う役務と同一又は類似する役務を指定役務として,原告使用標章と同一の本件商標を登録出願したものであって,「他人の標章が周知に至った時期」と「出願の時期」とが近接しているものである。 そのため,需要者及び取引者からすると,混同が生じやすいものと解するのが合理的である。特に,原告使用標章は,本件新聞記事が掲載された平成22年6月20日及び同年7月16日の間のいずれかの時期に周知となったと解されるところ,本件商標の登録出願は同年8月9日であること,被告は,出願の翌日に,原告に対して警告書(甲1。以下「本件警告書」という。)を送付していることなどからすると,原告使用標章の存在を確認し,被告自らは「老人の養護」事業しか行っていないにもかかわらず,原告の現在の事業に係る役務について商標を確保するため,被告が後追い的に登録出願したことは明らかである。 本件施設は,原告に を確認し,被告自らは「老人の養護」事業しか行っていないにもかかわらず,原告の現在の事業に係る役務について商標を確保するため,被告が後追い的に登録出願したことは明らかである。 本件施設は,原告に関連する医療法人白水会(以下「原告関連法人」という。) 理事長の提唱する「しらとぴあ構想(健康人も集う健康維持管理ランド)」に属する施設であることから,同構想のシンボルのハウスマークである原告使用標章を施設名称として用いたものである。同標章は,同構想において今後も継続して多角的に展開することが予定されているものである。 したがって,原告の業務に係る役務と本件商標とが混同を生ずるおそれがあることは明らかである。 (3) 小括以上からすると,本件商標の登録出願当時,本件商標は,原告使用標章を使用して高齢者専用賃貸住宅事業を行っていた原告の業務に係る役務と混同を生ずるおそれが認められるものであり,商標法4条1項15号に掲げる商標に該当するものというべきである。 〔被告の主張〕(1) 原告使用標章の周知性についてア本件新聞記事に記載された「健遊館」の文字は,読者の注目を集める「見出し」ではなく,記事の中に施設名称として記載されているにすぎない。紙面において記事が占める割合もそれ程大きくなく,目立たない位置に小さく掲載されているにすぎず,読者が記事自体に気付かなかったり,気付いても「健遊館」の標章の内容まで直ちに理解できるものでもない。施設開設に係る記事にしては,3紙に掲載されたにすぎず,岐阜県の中心部からも離れ,人口も非常に少なく,発行部数も少ない地方紙等の「地域版」の目立たない記事に,施設名称としての「健遊館」の文字が記載されていたとしても,原告使用標章が周知となったということはできない。 原告が提出するその余の書証(甲4 部数も少ない地方紙等の「地域版」の目立たない記事に,施設名称としての「健遊館」の文字が記載されていたとしても,原告使用標章が周知となったということはできない。 原告が提出するその余の書証(甲4~7,21~25)についても,発行日,発行部数,頒布場所,頒布方法,ウェブサイトのアクセス数等が不明であったり,頒布回数及び数量が少なく,頒布された地域も限定されたものであったり,客観的な資料ではないなど,原告使用標章の周知性を基礎付けるものではない。 イ高齢者専用賃貸住宅を全国展開する企業等も存在すること,高齢者は,環境, 気候,物価水準等を考慮して他の地域に移住することも多いことからすると,原告使用標章について,1つの県あるいは同県内の主要な地域の1つにおいて周知性が認められれば足りるというものではない。しかも,本件施設の所在地である白川町,加茂郡は岐阜県の主要な地域でもないから,このような地域に,僅か36部屋の本件施設が建設され,本件商標の登録出願時に22部屋が入居に至っていたことをもって,原告使用標章が周知性を獲得していたとは到底いえないものである。 (2) 他人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれの有無原告使用標章が周知ではない以上,商標法4条1項15号の「混同を生ずるおそれ」を判断する際,「他人の標章が周知に至った時期」と「出願の時期」との近接性を含めた諸要素を検討すべきとする原告の主張は,その前提自体が誤りである。 (3) 小括以上からすると,本件商標は,他人の役務と混同を生ずる余地はないから,商標法4条1項15号に掲げる商標に該当しないとした本件審決の判断は相当である。 2 取消事由2(商標法4条1項19号該当性に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 「不正の目的」に関する認定の是非ア被告は る商標に該当しないとした本件審決の判断は相当である。 2 取消事由2(商標法4条1項19号該当性に係る判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 「不正の目的」に関する認定の是非ア被告は,本件商標のほか,以下の登録商標(甲30。以下「被告別件商標」という。)を有している。 商標登録番号:登録第4797745号商標の構成:健遊館(標準文字)指定役務:第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,会議室の貸与,展示施設の貸与,布団の貸与,業務用加熱調理機械器具の貸与,業務用食器乾燥機の貸与,業務用食器洗浄機の貸与,加熱器の貸与,調理台の貸与,流し台の貸与,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,タオルの貸与」 商標登録出願日:平成15年12月1日設定登録日:平成16年8月27日イ本件商標は,第35,36,39,44類の4区分について登録出願したものであるが,「高齢者専用賃貸住宅の貸与」については,指定役務「建物の貸与」「建物の管理建物の貸借の代理又は媒介」に該当する。被告別件商標は,第43類を指定役務とするところ,被告の業務であるデイサービスは,指定役務「老人の養護」に該当するが,同役務は,「高齢者専用賃貸住宅の貸与」を含む「建物の貸与」とは非類似であるから,「高齢者専用賃貸住宅の貸与」が同商標の権利範囲に属することはあり得ない。 ウ本件警告書に,「最近のマスコミ報道によりますと,貴会は高齢者専用賃貸住宅「健遊館」を建設され」と記載されていることからすると,被告は,本件商標の登録出願前において,原告使用標章の存在を確認しながら,「高齢者専用賃貸住宅」の役務及び類似役務として推定される役務を 貸住宅「健遊館」を建設され」と記載されていることからすると,被告は,本件商標の登録出願前において,原告使用標章の存在を確認しながら,「高齢者専用賃貸住宅」の役務及び類似役務として推定される役務を含む本件商標について登録出願した翌日,原告に対して本件警告書を送付したものということができる。 しかも,被告は,本件商標の指定役務について,原告の業務である「高齢者専用賃貸住宅の貸与」を指定役務として登録出願しておきながら,「高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。)」を除外しているから,自らの業務に近いと思われる同役務について,本件商標及び被告別件商標のいずれにおいても,権利を有していないものということになる。このことは,被告が,原告への警告のみを目的として,本件商標について登録出願したことを意味するものである。 原告が本件使用標章を使用していることは,本件新聞記事等から明らかである。 被告は,同標章について権利化し,使用すれば出所の誤認混同が生じることを認識しながらも,本件警告書において,「健遊館」なる商標は,被告の営業を表示するものとして周知であるから,不正競争防止法に違反するものであると主張したものであって,これは,正当な競争原理を阻害するものである。被告は,「高齢者専用賃貸住宅の貸与」又はその類似役務に係る事業を行っておらず,被告において「健 遊館」なる標章が当該役務において周知性を獲得していることはあり得ないことや,本件警告書の記載内容からすると,被告が,不正の利益を得る目的,原告に損害を加える目的で,本件商標を使用する意思を有していることは明らかである。 エしたがって,被告には,商標法4条1項19号の「不正の目的」が認められる。 (2) 小括以上からすると,本件商標は,商標法4条1項19号に掲げる商標に該 有していることは明らかである。 エしたがって,被告には,商標法4条1項19号の「不正の目的」が認められる。 (2) 小括以上からすると,本件商標は,商標法4条1項19号に掲げる商標に該当するものというべきである。 〔被告の主張〕(1) 「不正の目的」に関する認定の是非ア原告使用標章が周知性を有するものではないことは,取消事由1において先に述べたとおりである。したがって,「不正の目的」について検討するまでもなく,原告の主張はその前提自体が誤りである。しかも,以下のとおり,被告には「不正の目的」が認められないことも明らかである。 イ原告は,「高齢者専用賃貸住宅の貸与」は,被告の行う介護事業とは全く異なる事業であるなどと主張するが,「介護事業」の役務の対象となる「老人」の住居等が将来問題になるであろうことは容易に認識可能であり,業務の拡大に伴い,「健遊館」の文字からなる被告別件商標のほかに,関連性がある業務について本件商標を登録出願することは不自然ではない。被告は,「健遊館」という名称の施設をフランチャイズとしても運営していること,被告の施設では入浴施設であった施設を利用している店舗も多いことから,本件商標につき,第35類「高齢者用入所施設事業の管理及び運営」及び第44類「介護」「入浴施設の提供」を指定役務とした。被告は,本件商標について,自己の業務に使用し,あるいは近い将来使用する意思に基づいて出願したものであり,不正の目的をもって出願したものではない。 新事業の開始には猶予期間が必要であり,被告が第36類「高齢者専用賃貸住宅の賃貸」に係る事業を行っていないからといって,直ちに不正目的が認められるもの ではない。ましてや,被告は,関東地区及び中部地区において,「健遊館」という名称の営業施設を次々に開設してお 宅の賃貸」に係る事業を行っていないからといって,直ちに不正目的が認められるもの ではない。ましてや,被告は,関東地区及び中部地区において,「健遊館」という名称の営業施設を次々に開設しており,「健遊館」なる標章は,むしろ被告の周知標章というべきである。本件警告書は,原告による本件施設との誤認混同を防止し,被告の周知標章の信用の毀損,希釈化等を防ぐため,やむなく送付したにすぎない。 (2) 小括以上からすると,本件商標が商標法4条1項19号に掲げる商標に該当しないとした本件審決の判断は相当である。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(商標法4条1項15号該当性に係る判断の誤り)について(1) 原告使用標章の周知性について原告は,原告使用標章が周知であることを前提として,本件商標は,原告の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがあると主張する。 そこで,まず,原告使用標章の周知性について検討する。 ア本件新聞記事について(ア) 平成22年6月20日付け岐阜新聞(中濃地域版。甲2)には,「高齢者専用の住宅開設医療法人白水会白川町が家賃一部助成」との見出しにより,本件施設の開設に係る記事が掲載されている。同記事には,「医療法人白水会が運営する高齢者専用賃貸住宅「健遊館」の開設記念式典」に関する記載及び本件施設の見学に関する写真が掲載されており,「健遊館」の文字が2か所記載されている。 (イ) 平成22年6月20日付け中日新聞(中濃版。甲3)には,「高齢者に安心,憩い白川で初めて専用賃貸住宅完成し式典」との見出しにより,本件施設の開設に係る記事が掲載されている。同記事には,「白川町坂ノ東に同町初の高齢者専用賃貸住宅(高専賃)「健遊館」が完成」したことに関する記載及び本件施設の外観の写真が掲載されており,「 より,本件施設の開設に係る記事が掲載されている。同記事には,「白川町坂ノ東に同町初の高齢者専用賃貸住宅(高専賃)「健遊館」が完成」したことに関する記載及び本件施設の外観の写真が掲載されており,「健遊館」の文字が2か所記載されている。 (ウ) 平成22年7月16日付け朝日新聞(岐阜版。甲9)には,「看護支援付き在宅・施設の中間増える高齢者専用住宅」との見出しにより,岐阜県内におい て高齢者専用賃貸住宅が増加している旨の記事が掲載されている。同記事には,白川町に開設された「高齢者専用賃貸住宅などが入った施設「健遊館」」に関する記載及び本件施設の部屋の写真が掲載されており,「健遊館」の文字が2か所記載されている。もっとも,同記事は,本件施設のみを取材した記事ではない。 イ本件施設のパンフレットについて(ア) 「健遊館のご案内」と題するパンフレット(甲4)には,本件施設の概要,入居費用,入居までの手続,入居後の生活例等が記載されている。 (イ) 「健遊館のご案内」と題するパンフレット(甲5)には,本件施設に係る入居準備の案内,くらしのしおり,周辺案内,本件施設の概要,平成22年度のごみ収集日程表,避難経路等が記載されている。 (ウ) 本件施設の開設に関する新聞折り込みチラシ(甲6)には,「入居予約中健遊館 2010年春オープン!!」という見出しとともに,本件施設及び周辺の医療機関に関する情報や本件施設の賃料等が記載されている。 ウインターネット及び雑誌記事等について(ア) 財団法人高齢者住宅財団のウェブページ(甲7)には,平成20年5月19日に本件施設が登録され,岐阜県における高齢者専用賃貸住宅14件のうちの1件として紹介されている。 (イ) 平成22年6月発行の「高齢者の住まいと生活の情報誌創美東海 には,平成20年5月19日に本件施設が登録され,岐阜県における高齢者専用賃貸住宅14件のうちの1件として紹介されている。 (イ) 平成22年6月発行の「高齢者の住まいと生活の情報誌創美東海版」(甲21)には,本件施設が開設されたことが紹介されている。もっとも,同記事は,本件施設が原告関連法人により運営されているものとして紹介している。 なお,同雑誌は,約1万5000部発行され,愛知(配布量全体の約3分の2),岐阜(同約6分の1)及び三重(同約6分の1)の各県の病院(約350か所),包括支援センター(約300か所),居宅介護支援事業所(約3000か所),有料老人ホーム(約400か所),名古屋市内の各区役所のほか,介護専門員等に配布されているものである(甲23)。 (ウ) 平成21年10月発行の「有料老人ホーム・高齢者住宅ガイド住まいる ケア東海版第6号」及び平成22年1月発行の同第7号には,本件施設が平成22年5月開設予定として紹介されている。平成22年5月発行の同第8号にも,本件施設が紹介されている(甲22)。 なお,同雑誌は,それぞれ約6万部発行され,名古屋市内を中心とした愛知,岐阜,三重及び静岡の各県の居宅介護支援事業所,包括支援センター,老人保健施設,病院,老人ホームの利用予定者等に対して送付されているものである(甲23)。 (エ) 平成22年8月5日付け高齢者住宅新聞には,「白水会複合型高専賃オープン救急病院と隣接」との見出しにより,原告関連法人が経営する白川病院が本件施設を開設し,同施設の運営は原告が行っている旨の記事が掲載されている。 同記事には,本件施設のイラストが掲載されている。同新聞は,発行部数3万部とされている(甲24)。 (オ) 平成24年2月発行の「日経ヘルスケア平成24年2月号 ている旨の記事が掲載されている。 同記事には,本件施設のイラストが掲載されている。同新聞は,発行部数3万部とされている(甲24)。 (オ) 平成24年2月発行の「日経ヘルスケア平成24年2月号」には,「健康増進,住宅も手がける「医介複合体」 山間部の町で「包括的地域完結型」の理想を追求」との見出しにより,原告関連法人が本件施設を開設したことなどが記載されている(甲29)。 エ検討(ア) 本件新聞記事について本件新聞記事について,配布部数を明らかにする書証は提出されていない。本件新聞記事のうち,岐阜新聞の記事(甲2)は,新聞の名称から,岐阜県及びその周辺地域にて発行される地方紙であると推測されるところ,当該記事は,中濃地域版のみに掲載された可能性も否定できないし,岐阜県内の全ての版に掲載されたとしても,平成22年の同県の世帯数は74万5569世帯である(乙1)から,同記事が多くの世帯において閲覧されたものということはできない。中日新聞の記事(甲3)及び朝日新聞の記事(甲9)についても,同様である(朝日新聞の岐阜県における平成22年の朝刊普及率は,8.12%にすぎない。乙1)。 また,記事内容をみても,いずれも本件施設が開設されたことが紹介されている ものの,1紙については,高齢者専用住宅が増加していることに関する記事において,本件施設が取り上げられているものである。 したがって,本件新聞記事に接したものと推測される世帯数及び記事内容からすると,本件新聞記事をもって,その読者が本件施設の存在自体を認識した可能性については認められるものの,本件商標の登録出願当時,「高齢者専用賃貸住宅の賃貸」に係る役務について,原告使用標章が原告の出所を示す標章として周知となったものと解することはできない。 (イ) 本件施 いては認められるものの,本件商標の登録出願当時,「高齢者専用賃貸住宅の賃貸」に係る役務について,原告使用標章が原告の出所を示す標章として周知となったものと解することはできない。 (イ) 本件施設のパンフレットについて原告従業員作成の証明書(甲10)には,本件施設のパンフレット(甲4,5)は,平成21年11月頃作成し,本件施設が落成するまではモデルルームにおいて,落成後は本件施設内で,個人及び団体に約7000部以上配布したのみならず,白川町を中心に,岐阜県内及び愛知県内の保健所,病院,医院,公的施設の一部に合計3000部以上配布したものと記載されている。 また,本件施設の開設に関する新聞折り込みチラシ(甲6の1)は,請求書及び領収証(甲6の2・3)記載の枚数を配布したとも記載されている。同請求書及び領収証によると,同チラシは,平成21年12月26日に9万9500枚,平成22年4月29日に1万1150枚,それぞれ配布したものであるとされる。 上記記載のうち,パンフレットの配布枚数については,これを裏付けるに足りる証拠はない。しかも,本件商標の登録出願前に配布された枚数については,不明である。上記証明書記載の配布枚数を前提としても,配布枚数自体が格別多く,そのことのみをもって周知性を獲得するのに十分であるということはできないのみならず,原告の業務である「高齢者専用賃貸住宅の賃貸」に係る事業について,需要者及び取引者がどの程度存在し,そのうち本件商標の登録出願前において本件施設のパンフレットを受領し,原告使用標章を原告が使用していることを認識した需要者及び取引者がどの程度の割合存在するかは不明である。 また,新聞折り込みチラシについても,パンフレットと同様に,原告使用標章が 周知性を有することを根拠付けるものではない。 認識した需要者及び取引者がどの程度の割合存在するかは不明である。 また,新聞折り込みチラシについても,パンフレットと同様に,原告使用標章が 周知性を有することを根拠付けるものではない。 (ウ) インターネット及び雑誌記事等について本件施設が掲載されているウェブページ(甲7)については,その閲覧数等が不明である以上,当該ウェブページに本件施設が紹介されていることをもって,原告使用標章の周知性を認めることはできない。 また,本件施設は,情報誌(甲21,22),業界新聞(甲24)及び雑誌(甲29)にて紹介されたものではあるが,その発行部数,配布地域及び記事内容等からすると,原告使用標章の周知性を根拠付けるものではないことは,前記(ア)及び(イ)と同様である。 (エ) 原告使用標章の周知性の有無以上からすると,本件新聞記事,本件施設のパンフレット並びにインターネット及び雑誌記事等は,いずれも個別的に検討すると,原告使用標章の周知性を根拠付けるものではないし,これらの報道や広告等が行われたことを総合的に考慮しても,なお原告使用標章は,原告が主張する限定的な地域においてですら,「高齢者専用賃貸住宅の賃貸」に係る役務について,原告の出所を示す標章として周知となったものということはできない。 この点について,原告は,高齢者専用賃貸住宅の需要者及び取引者は入居希望者及びその家族であるところ,その地域的範囲は一般的な総合病院に入通院可能な距離程度にすぎず,本件新聞記事によると,原告使用標章は当該距離(岐阜県及びその周辺地域)において周知である,本件施設は,入居開始から短期間で多くの入居者があるところ,「高齢者専用賃貸住宅」は,空室が生じた際に広告,宣伝を行えば足り,満室であれば当該住宅に係る標章は広く普及されていると解釈すべきで である,本件施設は,入居開始から短期間で多くの入居者があるところ,「高齢者専用賃貸住宅」は,空室が生じた際に広告,宣伝を行えば足り,満室であれば当該住宅に係る標章は広く普及されていると解釈すべきであることからすると,原告使用標章は,急速に周知性を獲得したといえると主張する。 しかしながら,商標法4条1項15号該当性に関し,周知性の地域的範囲について,原告の主張のとおり限定的に解することができないことは明らかであって,原告の主張はその前提自体が失当である。しかも,本件新聞記事によって本件施設が 開設された事実が報道されたことから,加茂郡あるいは白川町中心の地域において,同記事の読者が本件施設の存在自体を認識した可能性があるとしても,同記事をもって,原告の主張する極めて限定的な地域的範囲においてすら,原告使用標章が原告の役務を示す標章として周知性を獲得したものとまでいうことができないことは,先に述べたとおりである。 また,高齢者専用賃貸住宅における空室の有無は,当該施設を経営する事業主体の有する標章の周知性のみによって決せられるものではなく,当該施設が所在する地域の需要等によって変動するものであることは明らかであって,本件施設の入居率の多寡をもって,原告使用標章の周知性を根拠付けることができるものではない。 原告の主張は採用できない。 (2) 他人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれの有無ア前記(1)のとおり,原告使用標章は,周知性を有するものではない。 イ原告は,原告使用標章が本件新聞記事により周知性を獲得した時期と近接した時期に本件商標の登録出願がされていること,被告自らは「老人の養護」事業しか行っていないにもかかわらず,原告の現在の事業に係る役務について商標を確保するために後追い的に出願したこと,本件施設は した時期に本件商標の登録出願がされていること,被告自らは「老人の養護」事業しか行っていないにもかかわらず,原告の現在の事業に係る役務について商標を確保するために後追い的に出願したこと,本件施設は,「しらとぴあ構想」に属する施設であるから,同構想のシンボルのハウスマークである原告使用標章を施設名称として用いたものであり,同標章は,同構想において今後も継続して多角的に展開を行うことが予定されているものであることから,原告使用標章と本件商標とが混同を生ずるおそれがあることは明らかであるなどと主張する。 しかしながら,原告使用標章が周知性を獲得したものということができない以上,本件商標の登録出願との近接性に係る原告の主張はその前提自体が誤りである。 また,被告自らが当時行っていない事業を指定役務として本件商標を登録出願したからといって,原告の業務に係る役務との混同を生ずるおそれがあるものということはできない。 さらに,原告使用標章が原告や原告関連法人により継続的に使用されることが予 定されていたとしても,同標章が原告の役務を示す標章として周知性を獲得していないことなど,前記認定事実からすれば,本件商標の登録出願時において,本件商標が原告の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがあるものということもできない。 原告の主張は採用できない。 ウ本件において,ほかに本件商標と原告の業務に係る役務とが出所について混同を生ずるおそれがあるものと認めるに足りる事情は存在しない。 したがって,本件商標について,原告の業務に係る役務と出所について混同を生ずるおそれがあると認めることはできない。 (3) 小括以上からすると,本件商標は,商標法4条1項15号の「他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれ」のある商標に該当するものとは認められないから, るおそれがあると認めることはできない。 (3) 小括以上からすると,本件商標は,商標法4条1項15号の「他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれ」のある商標に該当するものとは認められないから,この点に関する本件審決の判断に誤りはない。 2 取消事由2(商標法4条1項19号該当性に係る判断の誤り)について(1) 前記1において説示したとおり,原告使用標章は,原告の出所を示す標章として周知性を有するものではなく,本件商標について,登録出願当時,原告の業務に係る役務とその出所について混同を生ずるおそれを認めることができない以上,「不正の目的」の有無について検討するまでもなく,本件商標は,商標法4条1項19号に該当するものと認めることができない。 (2) 原告は,被告は,自らの業務に近いと思われる「高齢者用入所施設の提供」について商標権を取得することなく,本件商標を登録出願した翌日,本件警告書を送付しているのであるから,原告への警告のみを目的として,本件商標について登録出願したものである,本件警告書において,「健遊館」なる商標は,被告の営業を表示するものとして周知であるから,不正競争防止法に違反するものであると主張したことは,正当な競争原理を阻害するものであって,被告が,不正の利益を得る目的,原告に損害を加える目的で,本件商標を使用する意思を有していることは明らかであるなどと主張する。 しかしながら,被告は,平成13年3月に創業し,平成16年4月1日に法人成りした介護保険法に基づく通所介護事業及び介護保険法に基づく介護予防通所介護事業を主な事業とする株式会社であるところ,被告別件商標を有するのみならず,「健遊館」を社名とし,「健遊館」をその名称に含むデイサービスセンターを東京都内に28件,名古屋市等の中部地区に9件,近畿地 事業を主な事業とする株式会社であるところ,被告別件商標を有するのみならず,「健遊館」を社名とし,「健遊館」をその名称に含むデイサービスセンターを東京都内に28件,名古屋市等の中部地区に9件,近畿地区に1件,経営している(甲19)ことからすると,本件商標の登録出願は,被告の事業展開の一環としてされたものと解することができるから,本件警告書の送付時期などをもってしても,被告に「不正の目的」があったとまで,認めることはできない。 (3) 以上からすると,本件商標は,商標法4条1項19号に該当する商標とは認められないから,この点に関する本件審決の判断に誤りはない。 3 結論以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官滝澤孝臣 裁判官井上泰人 裁判官荒井章光 (別紙)指定役務目録 第35類「広告,高齢者用入所施設事業の管理及び運営,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,職業のあっせん,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,建築物における来訪者の受付及び案内,求人情報の提供」第36類「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地 割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定着物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,信用購入あっせん,ガス料金又は電気料金の徴収の代行,商品代金の徴収の代行,有価証券の売買,有価証券指数等先物取引,有価証券オプション取引,外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券先渡取引・有価証券店頭指数等先渡取引・有価証券店頭オプション取引若しくは有価証券店頭指数等スワップ取引又はこれらの取引の媒介・取次ぎ若しくは代理,有価証券等精算取次ぎ,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,商品市場における先物取引の受託,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,高齢者専用賃貸住宅の賃貸,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与, 建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」第39類「車両による輸送,自動車の運転の代行,主催旅行の実施,旅 地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」第39類「車両による輸送,自動車の運転の代行,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,他人の携帯品の一時預かり,配達物の一時預かり,倉庫の提供,駐車場の提供,車いすの貸与,自転車の貸与」第44類「美容,理容,入浴施設の提供,庭園又は花壇の手入れ,庭園樹の植樹,肥料の散布,雑草の防除,有害動物の防除(農業・園芸又は林業に関するものに限る。),介護,植木の貸与」
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