平成15(行ウ)2 公文書一部非公開決定取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年10月28日 那覇地方裁判所
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判決文本文5,232 文字)

平成15年(行ウ)第2号公文書一部非公開決定取消請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告が,原告に対し,平成14年8月1日付けでした公文書である「浦添市ab丁目c-deマンション駐車場内で,平成12年5月8日月曜日の午前8時に引き取った猫の記録」のうち,別紙業務日報(省略)の黒塗り部分を非公開とするとの決定を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,原告が,浦添市情報公開条例(平成11年条例第16号,以下「本条例」という。)に基づいて,被告に対し,情報公開請求をしたところ,被告が当該文書を公開したものの,その一部を黒塗りにして非公開とする決定を行ったことから,原告がその取消しを求めた事案である。 2 前提事実(証拠を掲記しない事実は,当事者間に争いがないか,当裁判所に顕著な事実である。)(1) 原告は,被告に対し,平成14年7月24日,本条例に基づき,公文書である「浦添市ab丁目c-deマンション駐車場内で,平成12年5月8日月曜日の午前8時に引き取った猫の記録」の公開を求めた。 (2) 本条例7条2号には次のような規定がある。 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが,公にすることにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし,次に掲げる情報を除く。 ア法令又は条例の規定により,何人でも閲覧することができる情報イ人の生命,健康,生活又は財産を保護するため により,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし,次に掲げる情報を除く。 ア法令又は条例の規定により,何人でも閲覧することができる情報イ人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報ウ (省略)エ公にすることを目的として作成し,又は取得した情報オ当該個人が公務員(地方公務員法(昭和25年法律第261号)第2条に規定する地方公務員及び国家公務員法(昭和22年法律第120号)第2条第1項に規定する国家公務員)である場合において,当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは,当該情報のうち,当該公務員の氏名,職及び当該職務遂行の内容に係る部分(3) 被告は,原告に対し,平成14年8月1日,別紙業務日報(以下「本件記録」という。)を同月9日に一部公開する決定をしたが,同記録の黒塗り部分は,個人に関する情報の記載があり,住所と氏名から特定の個人が識別できるから,本条例7条2号に規定された非公開情報に該当するとして,これを非公開とするとの決定をした(以下,この決定を「本件一部非公開決定」といい,非公開部分を「本件非公開部分」という。)(甲1)。 (4) 原告は,被告に対し,平成14年8月9日,本件一部非公開決定により,原告の欲する情報(引き渡した人の名前,電話番号,住所)が得られないとして,行政不服審査法6条に基づき,本件一部非公開決定に対する不服申立(異議申立て)をした。 (5) 被告は,上記異議申立てについて浦添市情報公開及び個人情報保護審査会への諮問を経た上で,原告に対し,平成14年12月3日,この異議申立てを棄却するとの決定をした。 (6) 原告は,平成15年2月10日,上記棄却決定が不服であるとして,本件訴えを提起した。 3 争点本件非公開部分に記載された情報は 14年12月3日,この異議申立てを棄却するとの決定をした。 (6) 原告は,平成15年2月10日,上記棄却決定が不服であるとして,本件訴えを提起した。 3 争点本件非公開部分に記載された情報は,本条例の7条2号に規定する非公開情報に該当する情報か否か。 4 争点に関する当事者の主張(被告の主張)本件非公開部分である本件記録の1枚目No1,2,3,5,10及び同2枚目No1ないし9の各黒塗り部分には,いずれも個人の氏と住所の地番が記載されており,同1枚目,2枚目の「業務責任者」欄の黒塗り部分には,被告から不要犬・猫等の引き取りや路上に放置された犬猫等の死体を処理する業務を受託している民間業者の業務責任者の氏の印影が記載されている。そして,これらの情報は,個人に関する情報であって,その記載された住所と氏名により,又は,個人の氏と業務上の地位が結合することにより,特定の個人を識別することができるから,本条例7条2号に規定された非公開情報に該当する。また,上記各情報は,同号但書に規定された例外的な公開情報にも該当しない。 なお,本件記録には,eマンションにおいて猫が捕獲されたとの事実は記載されていない。 (原告の主張)本件記録の1枚目No1,2,3,5,10及び同2枚目No1ないし9の各黒塗り部分に個人の氏と住所の地番が記載されていることは認める。 原告の飼い猫が,平成12年5月8日の朝,行方不明となったが,同月17日に行政に問い合わせたところ,同月8日午前8時ころ,浦添市ab丁目c-deマンションの駐車場において,原告の飼い猫と思われる猫が,何者かによって箱に入れられて行政側に引き渡され,既に処分済みであると知らされた。原告は,同日朝,原告宅の近くで奇声を聞いており,その際に何者かによって原告の飼い猫が捕獲されたと考えられる る猫が,何者かによって箱に入れられて行政側に引き渡され,既に処分済みであると知らされた。原告は,同日朝,原告宅の近くで奇声を聞いており,その際に何者かによって原告の飼い猫が捕獲されたと考えられる。原告は,その何者かについて思い当たる人物がおり,本件非公開部分に記載された情報の公開を受けることによって,原告の飼い猫と思われる猫を行政側に引き渡した人物の氏名,住所等を確認したい。 また,本件非公開部分に記載された情報は,本条例7条2号但書ア,イ,エ又はオに該当するから,本件非公開部分に記載された情報によって特定の個人を識別することができるとしても,非公開情報とはならない。 原告は,憲法21条で保障された表現の自由,知る権利に基づき,又は憲法13条で保障された自己情報開示請求権に基づき,本件非公開部分に記載された情報の開示を求める権利がある。 第3 当裁判所の判断 1 本件非公開部分のうち,本件記録の1枚目No1,2,3,5,10及び同2枚目No1ないし9の各黒塗り部分には,いずれも個人の氏と住所の地番が記載されていることは,当事者間に争いがなく,弁論の全趣旨によれば,同1枚目,2枚目の「業務責任者」欄の各黒塗り部分には,平成12年5月8日に不要犬・猫等の引き取りや路上に放置された犬猫等の死体を処理する業務を浦添市からの委託契約に基づき行っていた民間の事業者における業務責任者の氏の印影が記載されていることが認められる。 そして,上記個人の氏,住所の地番の記載は,まさしく特定の個人を識別することができる情報であり,上記業務責任者の氏の印影も同日の当該業務の責任者であるという業務上の地位と相まって特定の個人を識別することができる情報であるから,これらの情報は,いずれも本条例7条2号に規定する「個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名 該業務の責任者であるという業務上の地位と相まって特定の個人を識別することができる情報であるから,これらの情報は,いずれも本条例7条2号に規定する「個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」に該当し,同号但書に規定された例外的に非公開となし得ない情報に該当しない限り,非公開情報となる。 2 そこで,さらに,上記各情報が本条例7条2号但書ア,イ,エ,オに規定された情報に該当するかについて検討する。 (1) まず,同号但書アについては,本件非公開部分に係る情報を「何人でも閲覧することができる情報」として規定した法令又は条例は存在しないから,同号但書アを適用すべき前提を欠く。 (2) 次に,同号但書イについて検討する。原告が公開を求めている本件非公開部分には,上記不要猫の引き取り等の業務を行っていた民間の事業者の業務責任者が記載した捕獲場所に関連する個人の氏と住所,上記業務を行っていた民間の事業者の業務責任者の氏の印影が記載されており,前者にはその中に原告の飼い猫の捕獲場所に関する情報も含まれている可能性が高い。そうすると,当該情報は,原告の生活,財産に関連する情報であるとは言える。それでは,さらに,当該情報が原告の生活,財産を保護するため公にすることが必要であると認められる情報といえるか検討する。 甲3,乙2の1,弁論の全趣旨によれば,原告は平成12年5月8日に原告の飼い猫が行方不明になったことに関し不信を抱いており,本件非公開部分に記載された情報の公開を受けることによって,原告の飼い猫を,浦添市から委託契約に基づき不要猫の引き取り等の業務を行っていた業者に引渡した人物の氏名,住所等を確認した上,同人に対し損害賠償請求をすることを考えていることが認められる。 そうす 原告の飼い猫を,浦添市から委託契約に基づき不要猫の引き取り等の業務を行っていた業者に引渡した人物の氏名,住所等を確認した上,同人に対し損害賠償請求をすることを考えていることが認められる。 そうすると,本件情報の公開は原告の私益を守る手段になる可能性はあるものの,それを超えた公益的な目的があるとは認めがたい。ところで,同号但書イは,個人情報であっても,例外的に公益上の見地から公開が義務づけられる「人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」については非公開とできないと規定しているものであるから,当該情報は,それには当たらないものと解する。 (3) さらに,同号但書エについては,甲2の1・2,甲5の2及び弁論の全趣旨によれば,本件記録は,被告から不要犬・猫等の引き取りや路上に放置された犬猫等の死体を処理する業務を受託している民間の事業者が委託契約に基づき日々の業務の成果を被告に報告するために作成し,提出したものであることが認められるから,本件非公開に係る情報が同号但書エに規定された情報に該当するとは認められない。 (4) 最後に,同号但書オについては,上記のとおり,本件記録に記載された不要犬・猫等の引き取りや路上に放置された犬猫等の死体を処理する業務を担当しているのは被告からの受託業者である民間の事業者であって,同条項所定の公務員であるとは認められないから,前記各情報は同号但書オに規定された情報に該当しない。 (5) 以上によれば,本件非公開に係る情報は,同号但書ア,イ,エ,オのいずれにも該当せず,本条例7条2号に規定された非公開情報に該当する。 3 なお,原告は,原告には憲法21条で保障された表現の自由,知る権利に基づき本件非公開部分に記載された情報の開示を求める権利があると主張するが,表現の自 7条2号に規定された非公開情報に該当する。 3 なお,原告は,原告には憲法21条で保障された表現の自由,知る権利に基づき本件非公開部分に記載された情報の開示を求める権利があると主張するが,表現の自由は自ら積極的に表現することに関する自由であって情報の開示を求める権利ではなく,また,国民の知る権利は未だ抽象的な権利であって,具体的な法律や条例なくして直接具体的な行為を請求できる具体的請求権ではないから,原告の主張は採用できない。本条例は知る権利を具体的に保障するために制定されたものであるところ(本条例1条),原告が本条例に基づき本件非公開部分に記載された情報の開示を請求することはできないことは前記のとおりである。 また,原告は,憲法13条で保障された自己情報開示請求権に基づき本件非公開部分に記載された情報の開示を求める権利があるとも主張するが,原告が開示を求めている情報は,原告の自己情報ではないから,そもそも前提を欠き,その余について検討するまでもなく,原告の主張は採用できない。 4 よって,本件非公開部分を非公開とした被告の本件一部非公開決定は適法であって,原告の請求は理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 那覇地方裁判所民事第2部裁判長裁判官窪木稔裁判官鈴木博裁判官高松みどり

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