令和6(ワ)19 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年12月5日 熊本地方裁判所
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判決文本文15,408 文字)

主文 1 原告らの主位的請求をいずれも棄却する。 2 被告Aは、別紙2請求認容額一覧表の各原告に対し、同表の各原告に対応する「認容額」欄記載の各金員及びこれに対する「起算日」欄記載の各日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 3 原告番号1ないし原告番号8及び原告番号13のその余の予備的請求並びに原告番号9及び原告番号14の予備的請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、原告らと被告組合との間においては、全部原告らの負担とし、原告番号1ないし原告番号8及び原告番号13と被告Aとの間においては、これを5分し、その4を被告Aの負担とし、その余を原告番号1ないし原告番号8及び 原告番号13の負担とし、原告番号9及び原告番号14と被告Aとの間においては、原告番号9及び原告番号14の負担とする。 5 この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主位的請求被告らは、別紙3-1主位的請求額一覧表(以下「主位的請求額一覧表」という。)の各原告に対し、連帯して、主位的請求額一覧表の各原告に対応する「請求額」欄記載の各金員及び「内金」欄記載の各金員に対する「起算日」欄記載の各日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 2 予備的請求被告Aは、別紙3-2予備的請求額一覧表(以下「予備的請求額一覧表」という。)の各原告に対し、予備的請求額一覧表の各原告に対応する「請求額」欄記載の各金員及び「内金」欄記載の各金員に対する「起算日」欄記載の各日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は、原告らが被告らに対し、以下の請求をする事案である。 (1) 主位的請求(被告らに対する不法行為に基づく損害賠 まで年3%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は、原告らが被告らに対し、以下の請求をする事案である。 (1) 主位的請求(被告らに対する不法行為に基づく損害賠償請求)原告らが、被告組合の代表理事長と称する被告Aから、数代前の先祖が財の因縁のため苦しんでおり、財の因縁を断ち切るためにはお金を出して供養するしかないなどとして家系図作成契約や代理店契約の締結を勧誘さ れ(以下、この勧誘行為を「本件勧誘行為」という。)、上記各契約に基づき家系図作成代金又は権利金を支払ったことについて、本件勧誘行為は原告らの意思決定の自由を侵害し、公序良俗に反するものとして不法行為に当たると主張して、民法709条、719条に基づき、主位的請求額一覧表の各原告に対応する「請求額」欄記載の各損害賠償金及び「内金」欄 記載の各金員に対する「起算日」欄記載の各日(不法行為の日である家系図作成代金若しくは権利金の交付日又は訴状送達日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の連帯支払を求める請求である。 (2) 予備的請求(被告Aに対する不当利得返還請求)原告らが、被告Aから、本件勧誘行為を受けて家系図作成契約又は代理 店契約を締結し、家系図作成代金又は権利金を支払ったことについて、詐欺を理由に上記各契約を取り消すとの意思表示をしたなどと主張して、民法703条、704条に基づき、予備的請求額一覧表の各原告に対応する「請求額」欄記載の各利得金及び「内金」欄記載の各金員に対する「起算日」欄記載の各日(被告Aによる家系図作成代金又は権利金受領日の翌日) から支払済みまで民法所定の年3%の割合による法定利息の支払を求める請求である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論 による家系図作成代金又は権利金受領日の翌日) から支払済みまで民法所定の年3%の割合による法定利息の支払を求める請求である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者(争いのない事実) ア被告組合は、塗料の製造販売、各種防災まちづくり及び関連イベント事 業等を目的とする有限責任事業組合である。 イ被告Aは、被告組合の組合員であり、被告組合の代表理事長と自称している。 (2) 家系図作成契約の締結等(争いのない事実、甲ロ1、ハ1、ニ1、ヘ1、リ1、ワ1、カ1、弁論の全趣旨) 被告Aは、原告らから、自身や親族の健康上の問題等についての相談を受け、その姓名判断を行うなどするとともに、その先祖に問題があるなどと申し向けて家系図の作成を勧め、各原告から、それぞれ家系図作成の依頼を受けた(以下「本件家系図作成契約」という。)。各原告は、それぞれ、被告Aに対し、別紙4支払額一覧表(以下「支払額一覧表」という。)の「家系 図作成代金」欄記載の各金員を、遅くとも支払額一覧表の「家系図作成代金支払日」欄記載の各日に支払った(なお、本件家系図作成契約の相手方が被告A個人であるか被告組合であるかは、当事者間に争いがある。)。 (3) 代理店契約の締結等(争いのない事実、甲全1、全2、甲ロ3、ハ2、ニ2、ホ1、チ1、ワ3) 被告Aは、原告番号1ないし原告番号8及び原告番号13(以下、併せて「原告番号1ほか8名」という。)に対し、被告組合が行うとする事業(健康事業、住環境事業、冠婚葬祭事業及び飲食事業等その内容は多岐にわたる。)の代理店となることを勧誘し、原告番号1ほか8名は、被告組合又は被告A(本件代理店契約の相手方が被告A個人で うとする事業(健康事業、住環境事業、冠婚葬祭事業及び飲食事業等その内容は多岐にわたる。)の代理店となることを勧誘し、原告番号1ほか8名は、被告組合又は被告A(本件代理店契約の相手方が被告A個人であるか被告組合であるかは、 当事者間に争いがある。)との間で、それぞれ、ありえん代理店契約なる代理店契約(以下「本件代理店契約」といい、本件家系図作成契約と併せて「本件各契約」ということがある。)を締結した。原告番号1ほか8名は、それぞれ、被告組合又は被告Aに対し、支払額一覧表記載の「権利金」欄記載の各金員を、遅くとも支払額一覧表の「権利金支払日」欄記載の各日に支 払った。 (4) 本件家系図作成契約又は本件代理店契約の解除又は取消しの意思表示(当裁判所に顕著な事実)ア原告番号1ないし原告番号9の被告らに対する第1事件の訴状は令和6年2月26日に、原告番号13及び原告番号14の被告らに対する第2事件の訴状は同年12月11日に、被告らにそれぞれ送達された。 イ原告番号1ないし原告番号9は、第1事件の訴状及び令和6年10月4日送達の原告第3準備書面において、被告らに対し、本件家系図作成契約及び本件代理店契約につき、いずれも消費者契約法4条3項8号及び民法96条1項に基づく取消しの意思表示を、更に本件代理店契約につき、特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)40条1項に基づく解 除の意思表示及び民法95条1項1号に基づく取消しの意思表示をした。 ウ原告番号13及び原告番号14は、第2事件の訴状において、被告らに対し、本件家系図作成契約及び本件代理店契約につき、いずれも民法96条1項に基づく取消しの意思表示を、本件代理店契約につき、更に特商法40条1項に基づく解除の意思表示をし(原告番号13)、 被告らに対し、本件家系図作成契約及び本件代理店契約につき、いずれも民法96条1項に基づく取消しの意思表示を、本件代理店契約につき、更に特商法40条1項に基づく解除の意思表示をし(原告番号13)、本件家系図作 成契約につき、消費者契約法4条3項8号に基づく取消しの意思表示をするとともに、原告番号13につき、更に消費者契約法4条1項1号及び2号に基づき本件代理店契約を取り消すとの意思表示をした。 3 主要な争点(1) 主位的請求 本件各契約に係る勧誘行為が、原告らの意思決定の自由を侵害し、公序良俗に反するものとして、不法行為に当たるか(争点1)(2) 予備的請求ア本件各契約共通のもの(ア) 被告Aの勧誘行為が消費者契約法4条3項8号に該当するか (争点 2。ただし、第2事件においては、本件家系図作成契約との関係での み同号に基づく取消しの意思表示がされている。)(イ) 被告Aの勧誘行為が欺罔に当たるか(民法96条1項該当性。争点3)イ本件代理店契約のみに関するもの(ア) 本件代理店契約の締結が特商法40条1項に該当するか(争点4) (イ) 本件代理店契約の締結につき、民法95条1項1号に該当する事由があるか(争点5)(ウ) 原告番号13が、被告Aから、不実告知又は断定的判断の提供を受けたか(消費者契約法4条1項1号及び2号該当性。争点6) 4 主要な争点に関する当事者の主張要旨 (1) 主位的請求に関する争点(争点1〔本件各契約に係る勧誘行為が、原告らの意思決定の自由を侵害し、公序良俗に反するものとして、不法行為に当たるか〕について)【原告ら】ア原告らの意思決定の自由の侵害 (ア) 本件各契約は、原告らが、被告Aから、原告らの意思決定の自由を を侵害し、公序良俗に反するものとして、不法行為に当たるか〕について)【原告ら】ア原告らの意思決定の自由の侵害 (ア) 本件各契約は、原告らが、被告Aから、原告らの意思決定の自由を侵害する内容の勧誘(本件勧誘行為)を受けて締結したものである。 すなわち、①本件家系図作成契約は、被告Aから、原告らの抱える問題等が先祖の因縁を原因とするものであり、その原因を解明するためには家系図の作成が必要であるなどとして、その必要があるものと誤 信させられて締結した。②本件代理店契約は、被告Aから、家系図を作成した原告番号1ほか8名に対し、「数代前の先祖が財の因縁のために苦しんでいる。」、「財の因縁を断ち切るためにはお金を出して供養するしかない。」などと科学的根拠に乏しい言辞を申し向けられ、更にその不安をあおられることにより本件代理店契約の締結を勧誘さ れて締結した。このように、被告Aの本件勧誘行為は、原告らの意思 決定の自由を侵害するものである。 (イ) 原告番号13は、上記に加え、被告Aから、本件代理店契約の勧誘に際し、実態とは異なり、本件代理店契約を締結すれば、確実に莫大な利益が得られ、損をすることはないかのような説明を受け、不実告知ないし断定的判断の提供を受け、本件代理店契約を締結したもので あり、その意思決定の自由を侵害された。 イ手段・方法の違法性の強度(公序良俗違反)本件各契約に係る勧誘方法は前記アのとおりである。そして、家系図の作成に当たっては10ないし100万円を、代理店契約に当たっては300万円もの高額な金銭を要求するものであることからすると、本件勧誘行 為は公序良俗に反し、その違法性の程度も強いというべきである。 ウ被告組合は、被告Aの指示によって又は被告組合自身の 0万円もの高額な金銭を要求するものであることからすると、本件勧誘行 為は公序良俗に反し、その違法性の程度も強いというべきである。 ウ被告組合は、被告Aの指示によって又は被告組合自身の意思決定として、本件各契約の名宛人となり、被告Aの不法行為に加担した。したがって、被告組合は、被告Aと連帯して不法行為責任を負う。 【被告ら】 ア被告Aが、原告らから、自身や家族の病気、死去につき相談を受け、家系図作成の勧誘に際し、色情因縁、殺生因縁との表現を用いたこと、代理店契約の勧誘の際、「数代前の先祖が財の因縁のために苦しんでいる。」、「財の因縁を断ち切るためにはお金を出して解放するしかない。」と述べたことがあること(ただし、「供養」するしかないと述べたことはな い。)、被告Aが原告らから、家系図作成代金又は権利金を受け取ったことは認め、その余は、否認若しくは争う。 イ本件各契約は、被告Aが個人的に締結した。本件代理店契約の締結の際、被告組合の名称を用いたのは、被告Aの肩書として用いたにすぎない。 ウ本件各契約は、原告らからの希望により締結したものであり、現に原告 らの中には、自発的に、本件各契約の締結を希望する者を紹介する者も存 在した。確かに、被告Aが本件代理店契約の説明会(以下「本件代理店説明会」という。)を開催したことはあるも、その際、姓名判断や家系図作成の話をしていないし、原告らの悩みをあおり代理店契約の締結が必要であるなどと勧誘したことはない。また、被告Aは、本件代理店契約を締結する際、契約の締結を希望する者に対し、改めて1時間程度かけて説明を し、納得を得た上で代理店契約を締結しているから、原告らについてその意思決定の自由が侵害されたことはなく、公序良俗に反するものということも 締結を希望する者に対し、改めて1時間程度かけて説明を し、納得を得た上で代理店契約を締結しているから、原告らについてその意思決定の自由が侵害されたことはなく、公序良俗に反するものということもできない。 (2) 予備的請求に関する争点ア本件各契約共通のもの (ア) 争点2(被告Aの勧誘行為が消費者契約法4条3項8号に該当するか)について【原告ら】本件各契約締結の勧誘状況や締結の経緯等は、争点1における原告らの主張のとおりである。本件勧誘行為においては、なぜ家系図の作成 や本件代理店契約が、原告らの健康上の問題等の解決に効果があるのかは合理的に実証されていない。このような勧誘は、原告らに対し、霊感その他の合理的に立証することが困難な特別な能力による知見として、当該消費者又はその親族の生命、身体、財産その他重要な事項について、そのままでは現在生じ、若しくは将来生じ得る重大な不利 益を回避することができないとの不安をあおり、又はそのような不安を抱いていることに乗じて、その重大な不利益を回避するためには、当該消費者契約を締結することが不可欠である旨を告げるものであり、この勧誘を受けた原告らは困惑させられ、本件家系図作成契約又は本件代理店契約を締結した。したがって、原告番号1ないし原告番号8 は、被告らに対し、消費者契約法4条3項8号に基づき、本件代理店 契約を取り消す旨の、また、原告らは、同号に基づき、本件家系図作成契約を取り消す旨の意思表示をした。 【被告A】原告らの主張は、否認若しくは争う。 本件各契約締結の勧誘状況や締結の経緯等は、争点1における被告 らの主張のとおりである。したがって、被告Aは、消費者契約法4条3項8号に該当する行為をしたとはいえず 主張は、否認若しくは争う。 本件各契約締結の勧誘状況や締結の経緯等は、争点1における被告 らの主張のとおりである。したがって、被告Aは、消費者契約法4条3項8号に該当する行為をしたとはいえず、原告らが被告Aの勧誘行為により困惑したこともない。また、被告Aが家系図の作成に際して本件勧誘行為を行ったとしても、姓名判断や家系図の作成に当たっては、霊感等の特別な能力を要するものではないし、作成した家系図か ら対象者の抱える問題の原因を読み解くこと及び実際に問題を解決することは、実績に基づいた知識や経験によるものである。 (イ) 争点3(被告Aの勧誘行為が欺罔に当たるか〔民法96条1項該当性〕)について【原告ら】 本件各契約締結の勧誘状況や締結の経緯等は、争点1における原告らの主張のとおりである。被告Aは、霊感その他の合理的に立証することが困難な特別な能力による知見に基づいて原告らを欺罔し、錯誤に陥らせて本件各契約を締結させた。したがって、原告らは、被告らに対し、民法96条1項に基づき、本件各契約を取り消すとの意思表 示をした。 【被告A】原告らの主張は、否認若しくは争う。 本件各契約締結の勧誘状況や締結の経緯等は、争点1における被告らの主張のとおりである。したがって、被告Aが、本件各契約締結の勧 誘に際し、原告らを欺罔して錯誤に陥らせたとはいえない。 イ本件代理店契約のみに関するもの(ただし、この項において、原告らとは、原告番号1ほか8名を指す。)(ア) 争点4(本件代理店契約の締結が特商法40条1項に該当するか)について【原告ら】 本件代理店契約は、いわゆる連鎖販売取引(特商法33条1項)に該当する。原告らは、被告Aに対し、特商法40条1項に基づき、本件代理店契約 商法40条1項に該当するか)について【原告ら】 本件代理店契約は、いわゆる連鎖販売取引(特商法33条1項)に該当する。原告らは、被告Aに対し、特商法40条1項に基づき、本件代理店契約を解除する旨の意思表示をした。なお、原告らは、特商法37条2項の書面を受領していないから、本件において特商法40条1項所定の起算日は到来していない。 【被告A】原告らの主張は、否認若しくは争う。 (イ) 争点5(本件代理店契約の締結につき、民法95条1項1号に該当する事由があるか)について【原告ら】 原告らは、本件代理店契約の相手方が被告組合であると認識して締結した。本件代理店契約の相手方が被告Aであるとすると、原告らには契約の相手方という重要な事柄について錯誤がある。したがって、原告らは、被告Aに対し、民法95条1項1号に基づき、本件代理店契約を取り消すとの意思表示をした。 【被告A】原告らの主張は、否認若しくは争う。 本件代理店契約は、もともと被告A個人との間で締結された契約であり、原告らについて、契約の相手方に関する錯誤はない。 (ウ) 争点6(原告番号13が、被告Aから、不実告知又は断定的判断の 提供を受けたか〔消費者契約法4条1項1号及び2号該当性〕)につ いて【原告番号13】原告番号13は、被告Aから、本件代理店契約の勧誘に際し、実態とは異なり、本件代理店契約を締結すれば、確実に莫大な利益が得られ、損をすることはないかのような説明を受けた。この勧誘は、不実 告知又は断定的判断の提供に当たることから、原告番号13は、消費者契約法4条1項1号及び2号に基づき、本件代理店契約を取り消すとの意思表示をした。 【被告A】原告らの主張は、否認若しくは争う 告知又は断定的判断の提供に当たることから、原告番号13は、消費者契約法4条1項1号及び2号に基づき、本件代理店契約を取り消すとの意思表示をした。 【被告A】原告らの主張は、否認若しくは争う。 第3 当裁判所の判断 1 主位的請求に対する判断(争点1〔本件各契約に係る勧誘行為が、原告らの意思決定の自由を侵害し、公序良俗に反するものとして、不法行為に当たるか〕)について(1) 本件代理店契約について ア(ア) 原告番号1ほか8名が、被告Aから、被告組合が行うとする事業の代理店となることを勧誘されたことは、前記前提事実のとおりである。 そして、原告番号1ないし原告番号8は、それぞれ、被告Aから、本件代理店契約締結の際、科学的根拠に乏しい言辞を申し向けられ、更に不安をあおられ、意思決定の自由を侵害する勧誘行為を受けた旨の 主張をするも、これを認めるに足りる証拠はない。また、原告番号13は、被告Aから、本件代理店契約締結の際、不実告知又は断定的判断の提供を受けたとも主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。 したがって、上記原告らの主張は採用できない。 (イ) この点について、証拠(甲全7の1及び2)及び弁論の全趣旨によ れば、被告Aが、令和5年5月開催の本件代理店契約に関する説明会 の際、その参加者に対し、「先祖は加害者がほとんど、加害者なんです。加害者だとすれば被害者がいるでしょう。被害者が恨むわけです。 あなたの幸せを邪魔するんです。(中略)そのために家系図つくったの。」、「姓名判断、家系図、全部解けます。解けるんです。原因がわかるの。(中略)先祖を解放するのもこれ。これで人生ががらっと 変わっていく。」、「300でしょう、(中略)本当の意味は先祖の解放です。300万で先祖を、( 全部解けます。解けるんです。原因がわかるの。(中略)先祖を解放するのもこれ。これで人生ががらっと 変わっていく。」、「300でしょう、(中略)本当の意味は先祖の解放です。300万で先祖を、(中略)解放できます」などと述べたことがあることは認められる。しかし、被告Aの上記言動は、飽くまで、令和5年5月開催の説明会における説明にすぎず(しかも、上記言動部分は、長時間にわたる説明中、比較的短時間にとどまるもので あり〔甲全7の1及び2〕、当該部分が本件代理店契約締結の決定的な事由となり得るものとみることは困難である。)、本件において、原告番号1ほか8名が、それぞれ、上記のような説明を受けたことを認めるに足りる証拠はなく、このことは、独立行政法人国民生活センターに寄せられた相談事例(甲全6)によっても覆らない。そもそも 原告番号1ほか8名は、それぞれ、本件代理店契約締結の勧誘の際、被告Aからいかなる勧誘を具体的にされたか等についての主張立証を一切していない。また、原告番号1ほか8名は、本件代理店契約の締結以前に、本件家系図作成契約を締結の上、作成された家系図の交付を受け又は受けたことがうかがわれるも(前記前提事実(2)、甲ロ1、 ハ1、ニ1、ヘ1、リ1、ワ1、カ1)、本件家系図作成契約の締結時期と本件代理店契約の締結時期との間には、数か月前後若しくは2年強もの期間が空いており、本件家系図作成契約の締結時の状況いかんが直ちに本件代理店契約の締結に重大な影響を与えたなどとみることは困難である。現に原告らの中には、原告番号9及び原告番号14 のように、本件家系図作成契約を締結するも、本件代理店契約を締結 していない者もいること、原告番号8のように、本件家系図作成契約の締結と本件代理店契約の締結との間に2 原告番号14 のように、本件家系図作成契約を締結するも、本件代理店契約を締結 していない者もいること、原告番号8のように、本件家系図作成契約の締結と本件代理店契約の締結との間に2年強もの期間が空いている者もいること等からすると、仮に、被告Aが、本件家系図作成契約を締結した者を中心に本件代理店契約の締結を勧誘したとしても、原告番号1ほか8名が主張するような、本件家系図作成契約と本件代理店 契約が一体であって、本件家系図作成契約の締結をもって本件代理店契約の締結を余儀なくされたなどということもできない。 イまた、原告番号1ほか8名は、本件代理店契約に係る被告Aの勧誘行為について、公序良俗に反する旨の主張をする。しかし、そもそも原告番号1ほか8名は、それぞれ、本件代理店契約締結の勧誘の際、被告Aからい かなる勧誘を具体的にされたか等についての主張立証を一切していないことは、前記説示のとおりである。そして、前記アの説示に照らせば、本件代理店契約の締結過程に公序良俗に反するような事情があったとまで認めることは困難である。このことは、本件代理店契約の権利金が300万円であることを考慮しても左右されない。上記原告らの主張は採用できない。 ウしたがって、本件代理店契約につき、原告番号1ほか8名が主張する被告Aの不法行為を認めることはできず、その成立を前提とする被告組合との共同不法行為の成立についても認めることはできない。 (2) 本件家系図作成契約についてア前記前提事実のとおり、被告Aは、原告らから、自身や親族の健康上の 問題等についての相談を受けてその姓名判断を行うなどして、当該原告に対し、その先祖に問題があるなどと申し向けて家系図の作成を勧め、原告らとの間で、本件家系図作成契約を締結した(本 の健康上の 問題等についての相談を受けてその姓名判断を行うなどして、当該原告に対し、その先祖に問題があるなどと申し向けて家系図の作成を勧め、原告らとの間で、本件家系図作成契約を締結した(本件家系図作成契約の締結は、被告A個人との間で締結されたものと認められ、これが被告組合との間でされたものと認めるに足りる証拠はなく、共同不法行為をいう原告ら の主張は、前提を欠く。)。しかし、このことから直ちに、原告らが、そ れぞれ、被告Aの上記勧誘行為により困惑させられるなどして、その意思決定の自由を侵害されたとまで認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。そもそも原告らは、それぞれ、本件家系図作成契約締結の際、被告Aからいかなる勧誘を具体的にされたかについての主張立証をしておらず、原告らが主張する内容の勧誘等により困惑させられて本件 家系図作成契約を締結したことを認めることはできない。 これに加え、原告らは、前記認定のとおり、被告Aから、本件家系図作成契約に基づいて作成された家系図の交付を受け又は受けたことがうかがわれる上、本件家系図作成契約に係る代金は、著しく高額とまではいえない。これらのことからすると、本件家系図作成契約に係る勧誘が、公序良 俗に反する違法な勧誘であったとまで認めることは困難である。 イしたがって、本件家系図作成契約につき、原告らが主張する被告Aの不法行為を認めることはできず、その成立を前提とする被告組合との共同不法行為の成立についても認めることはできない(そもそも本件家系図作成契約が被告組合との間で締結されたものと認められないことは、前記認定 説示のとおりである。)。 (3) 以上によれば、原告らの主位的請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がな が被告組合との間で締結されたものと認められないことは、前記認定 説示のとおりである。)。 (3) 以上によれば、原告らの主位的請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がない。 2 予備的請求に対する判断(1) 本件代理店契約について ア争点4(本件代理店契約の締結が特商法40条1項に該当するか)について(ア) 被告Aは、本件代理店契約に係る権利金について、自身が個人的に受領した旨を認め、原告番号1ほか8名は、これを自己に有利に援用している。そうすると、予備的請求においては、本件代理店契約に基づいて 権利金を取得した者が被告Aであることは当事者間に争いがなく、仮に、 本件代理店契約が特商法40条1項の規定により解除された場合、権利金に相当する金員の利得者は、被告Aである。 (イ) 前記前提事実に加え、証拠(甲全5、甲ロ3、ハ2、ニ2、ホ1、チ1、ワ3)及び弁論の全趣旨によれば、①本件代理店契約は、被告組合が行うとする事業を、割り当てられた特定の地域内において、被告組合 の代理店として運営する権利を得ることができることを内容とする契約であること、②被告Aが、原告番号1名ほか8名との間で、本件代理店契約の締結に際して用いた又は用いたと推認される代理店契約書には、ⓐ代理店となる者は、ありえん代理店業務を行う権利金として300万円を支払わなければならない旨、ⓑ代理店契約者が、新規に被告組合の 代理店となることを希望する者(以下「代理店候補者」という。)を被告組合に紹介し、当該代理店候補者が本件代理店契約を締結した場合及び代理店契約者が割り当てられた地域内において既存の代理店の紹介を経ていない代理店候補者が本件代理店契約を締結した場合に、被告組合から50万円を新規代理店 理店候補者が本件代理店契約を締結した場合及び代理店契約者が割り当てられた地域内において既存の代理店の紹介を経ていない代理店候補者が本件代理店契約を締結した場合に、被告組合から50万円を新規代理店報酬として受け取ることができる旨、ⓒ被告 組合は、代理店となる者に対し、被告組合の事業についての知識・ノウハウを提供し、代理店となる者は、割り当てられた地域内において、被告組合の行う事業を経営することができる旨が定められていることが認められる。このことからすると、被告Aは、原告番号1ほか8名に対し、被告組合の運営する又は将来運営することが予定されている事業につい て、代理店となる者に対してそのノウハウ等を提供し、代理店となる者をして特定の地域において被告組合の事業を経営させるという取引について、新規代理店報酬(特商法33条1項の規定する「特定利益」)を収受し得ることをもって誘引し、原告番号1ほか8名をして300万円の権利金の支払(同項に規定する「特定負担」)を伴う代理店契約を締 結させ、被告組合の事業に関するノウハウ等を提供して、特定の地域内 において被告組合の事業を経営させる取引をするものと認められる。したがって、本件代理店契約は、特商法33条1項の規定する連鎖販売取引に該当する。 (ウ) また、証拠(甲全5、甲ロ3、ハ2、ニ2、ホ1、チ1、ワ3)及び弁論の全趣旨によれば、被告Aが、原告番号1ほか8名との間で、連鎖 取引販売である本件代理店契約の締結に際して用いた又は用いたと推認される代理店契約書には、本件代理店契約が連鎖販売取引に該当する旨の記載はないことが認められるところ、原告番号1ほか8名については、いずれも、本件代理店契約の締結の際に、本件代理店契約の契約書以外に特商法37条2項により連鎖販売取 契約が連鎖販売取引に該当する旨の記載はないことが認められるところ、原告番号1ほか8名については、いずれも、本件代理店契約の締結の際に、本件代理店契約の契約書以外に特商法37条2項により連鎖販売取引において交付が義務付けられて いる当該連鎖販売業の概要について記載した書面を交付された事実はうかがわれない。そうすると、本件では、原告番号1ほか8名が特商法40条1項に基づいて本件代理店契約を解除する旨の意思表示をした時点において、本件代理店契約締結の日から20日が経過しているものの、クーリング・オフの起算日は未だ到来していないというべきであるとこ ろ、原告番号1ほか8名が、特商法40条1項に基づき、本件代理店契約を解除したことは、前記前提事実(4)のとおりである。 イしたがって、被告Aは、法律上の原因なく、原告番号1ほか8名からそれぞれ、支払額一覧表の「権利金」欄記載の各金員を受領して利得したから、原告番号1ほか8名に対し、同額の返還義務を負う。もっとも、その 附帯請求について、原告番号1ほか8名は、被告Aによる上記権利金の受領日の翌日からの利息の支払を求めるも、被告Aが、訴状による解除の意思表示を受けた日より前に法律上の原因の不存在につき悪意であったということはできないから、訴状送達の日より前の期間に係る民法704条に基づき利息の支払を求める部分については理由がないというべきである。 このことは、仮に、原告番号1ほか8名による消費者契約法4条3項8号 等に基づく取消しの意思表示による場合であっても同様であり、上記金額を超えない。 (2) 本件家系図作成契約についてア争点2(被告Aの勧誘行為が消費者契約法4条3項8号に該当するか)について 前記1(2)の認定説示に照らすと、被告Aが、本 、上記金額を超えない。 (2) 本件家系図作成契約についてア争点2(被告Aの勧誘行為が消費者契約法4条3項8号に該当するか)について 前記1(2)の認定説示に照らすと、被告Aが、本件家系図作成契約の勧誘に際し、原告らそれぞれに対し、消費者契約法4条3項8号に該当する行為をしたことを認めるに足りる証拠はない。 イ争点3(被告Aの勧誘行為が欺罔に当たるか(民法96条1項該当性))について 前記1(2)の認定説示に照らすと、被告Aが、本件家系図作成契約締結の際、原告らそれぞれに対し、原告らを欺罔し、錯誤に陥らせたとまで認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。 ウ以上によれば、本件家系図作成契約について、原告らの被告Aに対する不当利得返還請求はいずれも理由がない。 第4 結論よって、原告らの主位的請求は、理由がないからこれをいずれも棄却し、原告らの予備的請求のうち、原告番号1ないし原告番号8及び原告番号13につき、主文第2項の限度で理由があるからこの限度でいずれも認容し、同人らのその余の予備的請求並びに原告番号9及び原告番号14の予備的請求につき、 理由がないからこれをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 熊本地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官野々垣隆樹 裁判官池上裕康 裁判官溝口淳弥 別紙1当事者目録(省略) 別紙2請求認容額一覧表原告番号原告名認容額起算日 B300万円令和6年2月26日300万円令和6年2月26日 C300万円令和6年2月26 別紙2請求認容額一覧表原告番号原告名認容額起算日 B300万円令和6年2月26日300万円令和6年2月26日 C300万円令和6年2月26日 D300万円令和6年2月26日 E300万円令和6年2月26日 F300万円令和6年2月26日 G300万円令和6年2月26日 H300万円令和6年2月26日 I600万円令和6年2月26日 K300万円令和6年12月11日 別紙3-1主位的請求額一覧表原告番号原告名請求額内金起算日 B693万円30万円令和3年9月30日300万円令和4年2月28日300万円令和4年3月31日63万円令和6年2月26日 C363万円30万円令和3年12月31日300万円令和4年2月28日33万円令和6年2月26日 D363万円30万円令和3年8月31日300万円令和4年3月31日33万円令和6年2月26日 E363万円30万円令和3年9月30日300万円令和4年3月31日33万円令和6年2月26日 F366万3000円33万円令和3年8月31日300万円令和4年2月28日33万3000円令和6年2月26日 G363万円30万円令和3年12月31日300万円令和4年4月30日33万円令和6年2月26日 H456万5000円15万円令和3年5月31日300万円令和4年1月31日 和3年12月31日300万円令和4年4月30日33万円令和6年2月26日 H456万5000円15万円令和3年5月31日300万円令和4年1月31日 100万円令和4年9月30日41万5000円令和6年2月26日 I671万円10万円令和元年10月31日600万円令和4年2月28日61万円令和6年2月26日 J16万5000円15万円令和2年9月30日1万5000円令和6年2月26日 13 K363万円30万円令和3年12月31日300万円令和4年1月31日33万円令和6年12月11日 14 L33万円30万円令和3年9月30日3万円令和6年12月11日 別紙3-2予備的請求額一覧表原告番号原告名請求額内金起算日 B630万円30万円令和3年10月1日300万円令和4年3月1日300万円令和4年4月1日 C330万円30万円令和4年1月1日300万円令和4年3月1日 D330万円30万円令和3年9月1日300万円令和4年4月1日 E330万円30万円令和3年10月1日300万円令和4年4月1日 F333万円33万円令和3年9月1日300万円令和4年3月1日 G330万円30万円令和4年1月1日300万円令和4年5月1日 H415万円15万円令和3年6月1日300万円令和4年2月1日100万円令和4年10月1日 I610万円 1日300万円 令和4年5月1日 H415万円 15万円 令和3年6月1日 300万円 令和4年2月1日 100万円 令和4年10月1日 I610万円 10万円 令和元年11月1日 600万円 令和4年3月1日 J15万円 15万円 令和2年10月1日 K330万円 30万円 令和4年1月1日 300万円 令和4年2月1日 L30万円 30万円 令和3年10月1日 別紙4支払額一覧表 原告番号 家系図作成代金 家系図作成代金支払日 権利金 権利金支払日 30万円 令和3年9月30日 300万円 令和4年2月28日 300万円 令和4年3月31日 30万円 令和3年12月31日 300万円 令和4年2月28日 30万円 令和3年8月31日 300万円 令和4年3月31日 30万円 令和3年9月30日 300万円 令和4年3月31日 33万円 令和3年8月31日 300万円 令和4年2月28日 30万円 令和3年12月31日 300万円 令和4年4月30日 15万円 令和3年5月31日 300万円 令和4年1月31日 100万円 令和4年9月30日 10万円 令和元年10月31日 600万円 令和4年2月28日 15万円 令和2年9月30日 30万円 令和3年12月31日 300万円 令和4年1月31日 30万円 令和3年9月30日 30万円 令和3年9月30日

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