主文 一審原告(被控訴人兼控訴人)の本件控訴を棄却する。原判決を次の通り変更する。一審被告(控訴人兼被控訴人)は一審原告(被控訴人兼控訴人)に対し、金九〇〇万〇七六三円及び内金六五五万二七六三円に対する昭和四五年三月一七日以降内金一七四万八〇〇〇円に対する昭和四九年一〇月一九日以降右各支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。一審原告(被控訴人兼控訴人)のその余の請求(当審で拡張された部分を含む)を棄却する。訴訟費用は、第一、二審を通じこれを三分し、その二を一審原告(被控訴人兼控訴人)の負担とし、その余を一審被告(控訴人兼被控訴人)の負担とする。この判決は金員の支払を命じた部分に限り仮りに執行することができる。事実 一審原告(被控訴人兼控訴人、以下単に一審原告という)代理人は、当審で一部請求を拡張し、「原判決を次の通り変更する。一審被告(控訴人兼被控訴人、以下単に一審被告という)は一審原告に対し、金三〇一七万二五三〇円、及び、内金一二七一万九八七八円に対する昭和四五年三月一七日以降、内金一五九五万二六五二円に対する昭和四九年一〇月一九日以降右各支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審共一審被告の負担とする。」との判決、並びに、仮執行の宣言を求め、一審被告の控訴につき、「本件控訴を棄却する。控訴費用は一審被告の負担とする。」との判決を求めた。一審被告代理人は、「原判決中一審被告の敗訴部分を取消す。一審原告の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審共一審原告の負担とする。」との判決を求め、一審原告の控訴及び当審で拡張された請求につき、「本件控訴を棄却する。当審で拡張された一審原告の請求を棄却する。控訴費用 求を棄却する。訴訟費用は第一、二審共一審原告の負担とする。」との判決を求め、一審原告の控訴及び当審で拡張された請求につき、「本件控訴を棄却する。 代理人は、「原判決中一審被告の敗訴部分を取消す。一審原告の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審共一審原告の負担とする。」との判決を求め、一審原告の控訴及び当審で拡張された請求につき、「本件控訴を棄却する。当審で拡張された一審原告の請求を棄却する。控訴費用 求を棄却する。訴訟費用は第一、二審共一審原告の負担とする。」との判決を求め、一審原告の控訴及び当審で拡張された請求につき、「本件控訴を棄却する。当審で拡張された一審原告の請求を棄却する。控訴費用は一審原告の負担とする。」との判決を求めた。当事者双方の法律上事実上の主張、提出援用した証拠、認否は、次に訂正付加する外は、原判決事実摘示(但し、原判決六枚目表五行目から同一〇枚目表一行目までの部分、及び、同一三枚目表一行目の「同(二)(1)の事実中」とある部分から同表一〇行目までの部分は除く)の通りであるから、これを引用する。但し、原判決一四枚目裏七行目から八行目にかけて「同A」とある部分は削る。(一審原告の主張)一一審原告の蒙つた損害(1) 逸失利益金一〇六七万二五三〇円本件事故により一審原告が現在罹患している外傷性分裂様状態及び外傷性痴呆の症状は、今後も完治する見込がなく、又、仮りに将来多少病状が回復したとしても、後遺障害が残り、その程度は、労災補償保険法施行規則別表障害等級第三級の三に該当し、今後一切就労不能であつて、その労働能力の一〇〇パーセントを喪失した。しかして、一審原告は、本件事故当時満二〇才の男子であつて、本件事故がなければ今後少なくとも六五才までの四五年間は稼働可能であつたところ、昭和四三年度の賃金構造基本統計調査報告によれば、満二〇才の男子の平均給与は月額金四万二五〇〇円、年額五一万円であるから、これにホフマン係数を乗じてその現在価額を算出すると、一審原告の逸失利益の合計額は、金一一八四万七三〇〇円となる。これに対し、一審原告は、本件事故後昭和四六年一月三一日までの間に休業補償給付金七五万八六七〇円の支給を受け、また、それ以後長期傷病補償給付金四一万六一〇〇円の支給を受けているから、右逸失利益か 。これに対し、一審原告は、本件事故後昭和四六年一月三一日までの間に休業補償給付金七五万八六七〇円の支給を受け、また、それ以後長期傷病補償給付金四一万六一〇〇円の支給を受けているから、右逸失利益から右合計金一一七万四七七〇円を控除すると、一審原告の残存逸失利益の額は金一〇六七万二五三〇円となる。 七〇円の支給を受け、また、それ以後長期傷病補償給付金四一万六一〇〇円の支給を受けているから、右逸失利益か 。これに対し、一審原告は、本件事故後昭和四六年一月三一日までの間に休業補償給付金七五万八六七〇円の支給を受け、また、それ以後長期傷病補償給付金四一万六一〇〇円の支給を受けているから、右逸失利益から右合計金一一七万四七七〇円を控除すると、一審原告の残存逸失利益の額は金一〇六七万二五三〇円となる。なお、労災保険から支給される長期傷病補償給付金のうち、将来支給される分については、一審原告の逸失利益からこれを控除すべきではないから(最判・昭和四六年一二月二日、判例時報六五六号九〇頁参照)、右の点に関し、原審でなした一審原告の主張は撤回する。また、本件事故当時の一審原告の収入を一日金九五〇円、一ケ月金二万八五〇〇円とすることは、当時の同年令の男子の平均収入と比較して僅少に過ぎるし(労災保険が一審原告の日収を金九五〇円としたのは、基本給だけを取り上げ、手当等はすべて控除したものである)、かつ、その将来の収入も当然に上昇すると考えられるから、一審原告の四五年間の逸失利益を算出するに当り、その収入を一日金九五〇円として計算することは、公平に反するし、一審原告に酷である。したがつて、一審原告の収入は、前記の通り、月収金四万二五〇〇円として計算すべきであつて、この点に関する一審原告の原審における主張も右の通り改める。(2) 付添看護料金五〇〇万円一審原告は、本件事故による前記病傷害のため、本件事故後から現在まで入院しており、今後もかなり長期の入院生活が考えられるし、また、将来仮りに退院したとしても一審原告の症状からみて、その生存中は、少なくとも家族のうち一人は一審原告のために付添看護が必要であるところ、一審原告が生命表の範囲内で生存するとすれば、その付添看護費用は、一日金一〇〇〇円として、合計金五〇〇万円を下らないのであつて、右は本件事故に うち一人は一審原告のために付添看護が必要であるところ、一審原告が生命表の範囲内で生存するとすれば、その付添看護費用は、一日金一〇〇〇円として、合計金五〇〇万円を下らないのであつて、右は本件事故による損害である。(3) 慰籍料金一三〇〇万円一審原告は、本件事故により、原判決事実摘示請求原因二、及び五の(一)に記載の通りの傷害を受け、今後生存するも廃人に等しい状態にあり、また、その家族は、さしたる収入もないのに、長期間に亘つて一審原告の世話をしなければならない状態にあるところ、右家族が個有の慰籍料を請求していないことや一審原告は水俣病患者と同一の状態にあること等を考慮すると、一審原告が本件事故によつて蒙つた精神的苦痛が慰籍さるべき額は金一三〇〇万円をもつて相当というべきである。 求原因二、及び五の(一)に記載の通りの傷害を受け、今後生存するも廃人に等しい状態にあり、また、その家族は、さしたる収入もないのに、長期間に亘つて一審原告の世話をしなければならない状態にあるところ、右家族が個有の慰籍料を請求していないことや一審原告は水俣病患者と同一の状態にあること等を考慮すると、一審原告が本件事故によつて蒙つた精神的苦痛が慰籍さるべき額は金一三〇〇万円をもつて相当というべきである。(4) 弁護士費用金一五〇万円一審原告は、母Bを通じ、本件訴訟を追行するため、弁護士武田博、同武田安紀彦に訴訟委任をしたが、その際、着手金及び報酬金として、第一、二審を通じ、合計金一五〇万円を支払う旨約した。二よつて、一審原告は、当審で一部請求を拡張し、一審被告に対して、右一の(1)ないし(4)の合計金三〇一七万二五三〇円、及び、内金一二七一万九八七八円に対する本件訴状送達の翌日である昭和四五年三月一七日以降、内金一五九五万二六五二円に対する一審原告提出の昭和四九年一〇月一五日付請求の趣旨原因訂正申立書が一審被告に送達された日の翌日である昭和四九年一〇月一九日以降右各支払済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。(一審被告の答弁及び主張)一前記逸失利益及び慰籍料に関する一審原告の主張のうち、一審原告が本件事故当時満二〇才の男子であつたこと、一審原告がその主張の如き休業補償給付金及び長期傷病補償給付金の支払を受け 答弁及び主張)一前記逸失利益及び慰籍料に関する一審原告の主張のうち、一審原告が本件事故当時満二〇才の男子であつたこと、一審原告がその主張の如き休業補償給付金及び長期傷病補償給付金の支払を受けたことは認めるが、その余は争う。また、付添看護料及び弁護士費用に関する一審原告の主張事実は不知、なお、本件事故後一審原告の入院していた病院はすべて完全看護の病院である。二 (本件事故に対する責任の有無)(1) 本件ワイヤロープは、民法七一七条にいう「土地の工作物」には該当しない。すなわち、本件ワイヤロープは、専ら本件クレーンの効用を発揮するためにのみ使用されるものではないのであつて、右ワイヤローブ自体は、クレーンから完全に分離されており、自動車等の修理全般や自動車ブルドーザーの移動等にも用いられていたものである。ちなみに、本件クレーンは、ワイヤローブを除外しても、それ自体広範囲に作動させ、その効用を発揮し得るものである。 、民法七一七条にいう「土地の工作物」には該当しない。すなわち、本件ワイヤロープは、専ら本件クレーンの効用を発揮するためにのみ使用されるものではないのであつて、右ワイヤローブ自体は、クレーンから完全に分離されており、自動車等の修理全般や自動車ブルドーザーの移動等にも用いられていたものである。ちなみに、本件クレーンは、ワイヤローブを除外しても、それ自体広範囲に作動させ、その効用を発揮し得るものである。(2) 次に、本件ワイヤロープの設置、保存に瑕疵はない。すなわち、通常ワイヤロープに瑕疵があるというのは、(イ)小さ過ぎるシープ、(ロ)ドラムヘの乱巻き、(ハ)キンク、(ニ)腐蝕等を指すものであり、右はワィヤロープの摩耗の程度、断線の有無、腐蝕の程度(赤さび)、保油の程度、形くずれ等において見分けられるものであるところ、本件ワイヤロープは右状態にはなかつたもので、本件ワイヤロープ自体には何等の瑕疵もなかつたのである。(3) また、ワイヤロープの点検についても、一審被告の会社では、一ヶ月に一度は必ず職長が工場内全部のワイヤロープの点検をし、粗悪になつたものは廃棄処分にする等の措置を講じており、従業員に対しても、その旨徹底させていたものであるし、ワイヤロープの補充も行つて常時新品と交換し、作業に必要な程度の量は保有して プの点検をし、粗悪になつたものは廃棄処分にする等の措置を講じており、従業員に対しても、その旨徹底させていたものであるし、ワイヤロープの補充も行つて常時新品と交換し、作業に必要な程度の量は保有していたのである。これを要するに、一審被告の工場内においては、十分な注意をもつて、ワイヤロープの点検、整備、補充に当つていたものであつて、右の点についても、一審被告に帰責の前提となるような行為(作為、不作為)はない。三 (因果関係の有無)一審原告が現在罹患している外傷性分裂様状態及び外傷性痴呆症状と本件事故との間には、相当因果関係はない。すなわち、不法行為の領域においても、原因と結果との間には、相当因果関係の存在が必要とされるものであるところ、一審原告の前記症状は、一審原告のもつ特異的性格、体質に起因するものであつて、社会経験上客観的な予見可能性の範囲外で生じたものといわざるを得ず、右相当因果関係は否定さるべきである。このことは、一審原告の症状は、本件事故により外傷が生じた場合に通常起りうるものとはいえず、右症状にならない場合の方が多いこと、右症状になるものは、自衛隊員の臨床事例にあつても二パーセント程度に過ぎないこと、結局右症状の原因は明確となし得ないものであつて、右症状は、一審原告の非常に神経質な病前の性格、気質に関係があるというの外はないこと、等に照らして明らかであるといわなければならない。 るべきである。このことは、一審原告の症状は、本件事故により外傷が生じた場合に通常起りうるものとはいえず、右症状にならない場合の方が多いこと、右症状になるものは、自衛隊員の臨床事例にあつても二パーセント程度に過ぎないこと、結局右症状の原因は明確となし得ないものであつて、右症状は、一審原告の非常に神経質な病前の性格、気質に関係があるというの外はないこと、等に照らして明らかであるといわなければならない。四 (逸失利益について)(1) 一審原告は、逸失利益の算定の基礎に、昭和四三年度の賃金構造基本統計調査報告に基づく算出方法を用いているが、右の点に関する一審原告の主張は、次に述べる通り失当である。すなわち、逸失利益の算出が不能もしくは困難な事例においては、一審原告の右主張も意味があるといえようが、本件においては、一審原告は、本件事故当時日額金 る一審原告の主張は、次に述べる通り失当である。すなわち、逸失利益の算出が不能もしくは困難な事例においては、一審原告の右主張も意味があるといえようが、本件においては、一審原告は、本件事故当時日額金九五〇円の給与を得ていたもので、右給与を基準にして明確にその逸失利益を算定し得るから、右給与を基礎にして、逸失利益を算出すべきである。もし、一審原告主張の如く、賃金構造基本統計調査報告に基づく平均賃金を基礎として逸失利益を算出するとすれば、結局、如何なる場合でも、被害者が事故当時及びその後従事し、又は従事し得た職業・収入等を問題とすることなく、すべて平均賃金を基礎として逸失利益を算出することとなり、却つて公平の原則に反し、不合理な結果を招くことになるからである。(2) 次に、一審原告は、労働者災害補償保険法に基づく長期傷病補償給付金として、昭和四六年二月以降昭和四八年一〇月まで、年額金二〇万八〇五〇円の割合による金員を、また、同年一一月以降同四九年一〇月まで年額金二三万〇八八一円を、それぞれ支給されており、右補償給付金は、今後も右同額が支給されることになつているし、また、厚生年金法に基づく厚生年金保険の障害年金として、昭和四六年一一月から同四八年一〇月まで年額金一一万八二五六円を、同四八年一一月から同四九年一〇月まで年額金二四万一四四七円をそれぞれ支給されており、右年金は今後も右同額が支給されることになつているところ、労災保険制度等は、保険給付の原因である事故が発生した場合、当該被害労働者の損害補填のために補償が行われるのであつて、長期傷病補償給付金等は損害賠償の性質を有するから、前記一審原告の支給を受け又は今後受くべき長期傷病補償給付金及び厚生年金保険の障害年金は、一審原告主張の逸失利益から当然控除すべきである。 二四万一四四七円をそれぞれ支給されており、右年金は今後も右同額が支給されることになつているところ、労災保険制度等は、保険給付の原因である事故が発生した場合、当該被害労働者の損害補填のために補償が行われるのであつて、長期傷病補償給付金等は損害賠償の性質を有するから、前記一審原告の支給を受け又は今後受くべき長期傷病補償給付金及び厚生年金保険の障害年金は、一審原告主張の逸失利益から当然控除すべきである。もつとも、一審原告は、原 金等は損害賠償の性質を有するから、前記一審原告の支給を受け又は今後受くべき長期傷病補償給付金及び厚生年金保険の障害年金は、一審原告主張の逸失利益から当然控除すべきである。もつとも、一審原告は、原審で前記長期傷病補償給付金のうち将来支給さるべき分についても、逸失利益から控除すべきことを認めながら、当審でこれを控除すべきではないとしてその主張を改めたが、右は自白の撤回に当るところ、一審原告の右自白の撤回には異議がある。(3) なお、一審原告の入院中の治療費、入院費はすべて労災保険から支払われているのであつて、右入院中の一審原告の生活費は、結局労災保険でまかなわれているところ、その他に一審原告は、前記の如く、長期傷病補償給付金として年額金二三万〇八八一円を、また、厚生年金保険の障害年金として年額金二四万一四四七円を支給されているから、生活費の外に、右合計年額金四七万二三二八円の純収入を得ていることになるが、右の点は、その逸失利益の算定に当つて当然斟酌さるべきである。五 (慰籍料について)一審原告主張の慰藉料額は、高きに過ぎる。すなわち、交通事故等最近の損害賠償請求事件にあつては、慰藉料額は、定額化されており、死亡事故にあつても、その額は通常金四〇〇万円をもつて限度とされており、しかも右は、一家の生計の中心であつた者に対する額である。このように、慰藉料の定額化が一般化され、これに基づいて裁判が運用されている現今において、一審原告主張の如き多額の慰藉料額を認めることは、公平の原則に反することになる。なお、慰藉料請求権の認められる要件、効果は、その法的性質に照らし、財産的損害賠償請求権とは異るから、慰藉料の補償的(補完的)作用を重視して、いわば財産的損害が多く認められないからといつて、慰藉料額を多額に認めることはできないものというべき 、その法的性質に照らし、財産的損害賠償請求権とは異るから、慰藉料の補償的(補完的)作用を重視して、いわば財産的損害が多く認められないからといつて、慰藉料額を多額に認めることはできないものというべきである。 その法的性質に照らし、財産的損害賠償請求権とは異るから、慰藉料の補償的(補完的)作用を重視して、いわば財産的損害が多く認められないからといつて、慰藉料額を多額に認めることはできないものというべき 、その法的性質に照らし、財産的損害賠償請求権とは異るから、慰藉料の補償的(補完的)作用を重視して、いわば財産的損害が多く認められないからといつて、慰藉料額を多額に認めることはできないものというべきである。六 (過失相殺)本件事故の発生については、一審原告にも過失がある。すなわち、(1) 一審被告は、本件シヨベル車のバケツト吊り上げ用のワイヤロープとして、その目的の重量、使用の目的等に応じ、各種のものをとり揃えて備付けており、しかも、常にこれらの重量目的に適応する強度なものを使用するよう一審原告ら従業員を指導していたのであつて、具体的な作業に当り、そのいずれを使用するかという選択は、作業に従事する各自が当該作業の種類、程度に応じてこれに適合するものを選択して使用することになつていたのである。したがつて、仮りに、本件ワイヤロープに一審原告主張の如き瑕疵があつたとするならば、本件作業に当り、一審原告がそのワイヤロープの選択を自ら誤つた過失があるといわなければならない。(2) 次に、一審原告は、本件作業に当り、クレーン操作によるクレーンの上下動を看視し、作業者に必要な指示を与えるべき立場であつたから、バヶツトを吊り上げ過ぎないように絶えず看視し、適宜これを停止すべき義務があつたのに、これを怠り、バケツト及び本体シヨベルドーザーが不当に吊り上げられるのを停止させなかつたため、本件ワイヤロープが切断したものと思われる(本件ワイヤローブに瑕疵がなかつた以上、右切断の原因は本体の吊り上げと推認し得る)。(3) また、一審被告は、日頃から、事故防止及び安全教育として、物品は毀してもよいから機械の下には絶対入らないよう教育していたところ、一審原告は一審被告の平素の右指導を無視して本件バケットの下部に立入つたために、本件受傷を招いたものであ 止及び安全教育として、物品は毀してもよいから機械の下には絶対入らないよう教育していたところ、一審原告は一審被告の平素の右指導を無視して本件バケットの下部に立入つたために、本件受傷を招いたものである。以上の通り一審原告には、ワイヤロープの選択を誤り、一審被告の事故防止並びに安全教育指導を無視して本件作業を行つた点に過失があるから、本件事故による損害賠償額を定めるに当つては、右一審原告の過失を斟酌すべきである。 教育として、物品は毀してもよいから機械の下には絶対入らないよう教育していたところ、一審原告は一審被告の平素の右指導を無視して本件バケットの下部に立入つたために、本件受傷を招いたものである。以上の通り一審原告には、ワイヤロープの選択を誤り、一審被告の事故防止並びに安全教育指導を無視して本件作業を行つた点に過失があるから、本件事故による損害賠償額を定めるに当つては、右一審原告の過失を斟酌すべきである。なお、一審原告の前記傷病が本件事故に基因するものであるとしても、その因果関係は希薄なものであるから、この点も併せ斟酌さるべきである。(右一審被告の主張に対する一審原告の答弁及び主張)一前記一審被告の主張事実中、一審原告が、長期傷病補償給付金及び厚生年金保険の障害年金として、本件事故後及び昭和四六年一一月から昭和四九年一〇月分まで一審被告主張の通りの金額を現実に支給されたことは認めるが、その余は争う。二本件ワイヤロープは、玉掛用ワイヤロープであつて、本件クレーンを使用して重量物を吊り上げる場合には不可欠のものであつたから、仮りに、右ワイヤロープが他の用途に使用されることがあつたとしても、本件ワイヤロープと本件クレーンとは一体をなしていたものである。三一審原告の現在の症状は、同原告の持つ特異的性格体質に起因するものではなく、外傷による脳の器質障害に基づくものである。そして、一般に脳に外傷を受ければ脳の器質障害が生じ、これによつて外傷性痴呆等外傷による精神的障害の生ずることは、十分に予見可能性のあることであるから、本件事故と一審原告の現在の症状との間には相当因果関係がある。四一審原告が今後支給を受ける長期傷病補償給付金を逸失利益から控除するか否かは、専ら法律的判断に基づくものであつて裁判所の専権に属し、当事者の 一審原告の現在の症状との間には相当因果関係がある。四一審原告が今後支給を受ける長期傷病補償給付金を逸失利益から控除するか否かは、専ら法律的判断に基づくものであつて裁判所の専権に属し、当事者の主張に拘束されるものではないから、一審原告が右控除を認めたからといつて、それが裁判上の自白になるものではない。したがつて、右の点に関する主張を徹回することは自由である。次に、厚生年金保険の障害年金は、労働者が自己の受くべき給与から毎月掛金を支払つていくものであるから、逸失利益からこれを控除すべきではない。 を逸失利益から控除するか否かは、専ら法律的判断に基づくものであつて裁判所の専権に属し、当事者の主張に拘束されるものではないから、一審原告が右控除を認めたからといつて、それが裁判上の自白になるものではない。したがつて、右の点に関する主張を徹回することは自由である。次に、厚生年金保険の障害年金は、労働者が自己の受くべき給与から毎月掛金を支払つていくものであるから、逸失利益からこれを控除すべきではない。五慰藉料は相対的なものであるところ、本件事故は交通事故とは異る特殊なものであるから、交通事故の場合と同一に考えるのは相当でない。また、一審原告は、本件事故によつてでは、一瞬にしてその生命を失つた場合よりも大なる精神的苦痛を受けたものというべきであるし、さらには一審被告が本件事故直後直ちに誠意ある態度で示談交渉をもたなかつたこと等からすれば一審原告主張の慰藉料額は必ずしも高きに過ぎるものではない。六本件事故の発生については一審原告には何等の過失もない。本件事故の際に、一審被告主張の如く、本件シヨベル車の本体が吊り上げられたことはなかつたし、また、本件事故前に一審原告の従事していた作業は、シヨべル車のバケツトのリフトアームをワイヤロープで吊り上げた下にかなり高い支持台を移動させてこれに当て、バケツトを固定させる作業をしていたものであるから、その作業の性質上、一審原告はバケツトの下に立入らなければならなかつたのである。したがつて一審原告には一審被告主張の如き過失はない。(証拠)(省略) 理由 一原判決事実摘示請求原因一、二の事実(原判決二枚目表一〇行目から同三枚目表末行目までに記載の事実)はいずれも当事 審被告主張の如き過失はない。(証拠)(省略) 理由 一原判決事実摘示請求原因一、二の事実(原判決二枚目表一〇行目から同三枚目表末行目までに記載の事実)はいずれも当事者間に争いがない。二 (本件ワイヤロープの工作物性について)一審原告は、本件ワイヤロープは、一審被告の工場内に設置されたクレーンの付属物で、これと一体をなしているから民法七一七条の土地の工作物に該当すると主張するので、以下この点について判断する。原審証人C、同D、同E、同F、原審及び当審証人Gの各証言、原審における検証の結果によれば、本件ワイヤロープは、鋼鉄で作られた直径一センチメートル、長さ二メートルのもので、その両端のワサと呼ばれる部分は、直径約一〇センチメートルの輪になつていること、そして本件ワイヤロープは、他の同種類のワイヤロープや太さ等の異る異種類のワイヤロープと共に、平素から一審被告方の工場の備品として右工場内に置かれていたものであるが、右ワイヤロープは、工場建物に固定して取り付けられていたものではなく、これを使用していないときは、作業員が自由に持ち運べるようになつていたこと、したがつて、本件ワイヤロープは、未使用の状態でこれを独立の物として考察すれば、動産であつていわゆる土地の工作物には当らないこと、以上の如き事実が認められ、右認定に反する証拠はない。 共に、平素から一審被告方の工場の備品として右工場内に置かれていたものであるが、右ワイヤロープは、工場建物に固定して取り付けられていたものではなく、これを使用していないときは、作業員が自由に持ち運べるようになつていたこと、したがつて、本件ワイヤロープは、未使用の状態でこれを独立の物として考察すれば、動産であつていわゆる土地の工作物には当らないこと、以上の如き事実が認められ、右認定に反する証拠はない。<要旨>しかしながら、民法七一七条にいわゆる土地の工作物とは、地上・地下に人工を加えて作つた物それ自体</要旨>の外、その設置の方法・用途等からこれと一体をなして工作物としての機能を果しているものも包含するものと解すべく、したがつて、工場建物それ自体ばかりでなく、工場建物の内部に設けられた天井、床、階段、エレベーター等の外、さらには、工場建物内に設置されてこれと一体をなし 能を果しているものも包含するものと解すべく、したがつて、工場建物それ自体ばかりでなく、工場建物の内部に設けられた天井、床、階段、エレベーター等の外、さらには、工場建物内に設置されてこれと一体をなしている機械設備及び右機械設備に付属しこれと一体をなして使用されている付属品等も包含するものと解するのが相当であるところ、これを本件についてみるに、前記当事者間に争いのない原判決事実摘示請求原因一、二に記載の各事実に、原審証人C、同D、同E、同F、原審及び当審証人G(但し、後記信用しない部分は除く)の各証言、原審における一審原告本人尋問の結果、検証の結果、並びに、弁論の全趣旨を綜合すると、次の如き事実を認めることができる。すなわち、(1)、本件事故は、縦約一五メートル、横約二七・六メートル、高さ約一一メートルの一審被告方の鉄骨造平家建工場内で起きたものであるところ、右工場内には、高さ約八・五メートルの天井に走行型三屯クレーン(本件クレーン)と同五屯クレーンとが設置されており、右各クレーンを用いて、トラクタシヨベル車等の特殊自動車の一部分を吊り上げるなどして、その修理整備等の作業が行なわれていたこと、なお、右クレーンは、前記工場建物と一体をなす土地の工作物であること、(2)、一方、本件ワイヤロープ等のワイヤロープは、主として、右クレーンて特殊自動車の一部分等いわゆる重量のあるものを吊り上げる際に使用されていたものであつて、右重量のある物を吊り上げる際には、クレーンに取り付けられているクレーンーケーブルの先端のフック(円い鍵状の金具)にワイヤロープの先端のワサを引掛けて、目的物を吊り上げることにしていたものであること、そして右クレーンで物を吊り上げる場合には、その目的物が直接クレーンケーブルのフツクに掛けれるような構造になつていない限り必ずワイヤ 分等いわゆる重量のあるものを吊り上げる際に使用されていたものであつて、右重量のある物を吊り上げる際には、クレーンに取り付けられているクレーンーケーブルの先端のフック(円い鍵状の金具)にワイヤロープの先端のワサを引掛けて、目的物を吊り上げることにしていたものであること、そして右クレーンで物を吊り上げる場合には、その目的物が直接クレーンケーブルのフツクに掛けれるような構造になつていない限り必ずワイヤ ワサを引掛けて、目的物を吊り上げることにしていたものであること、そして右クレーンで物を吊り上げる場合には、その目的物が直接クレーンケーブルのフツクに掛けれるような構造になつていない限り必ずワイヤロープが必要であつたこと、(3)、次に一審原告は、本件事故前に、訴外E、同Fらと共に三菱BS13型トラクタシヨベル車(本件シヨベル車)の点検修理をしていたのであるが、右点検修理の必要から右シヨベル車のバケツトの部分(重量約一五〇〇キログラム)を吊り上げるため、前記谷岡が一審原告の適宜取り出してきた本件ワイヤロープを右バケツトのリフトアームに掛けた上、その両端のワサを本件三屯クレーンのクレーンケーブルの先端のフツクに引掛け、Fが本件クレーンを作動させて前記バケトを吊り上げた際に、本件ワイヤロープが切れ、右バケツトが一審原告の頭上に落下して本件事故が起きたこと、(4)、右トラクタシヨベル車のバケツトは、本件クレーンに取りつけられていたクレーンヶーブルの先端のフツクに直接引掛けてこれを吊り上げるような構造にはなつていなかつたので、本件クレーンを用いて右シヨベル車のバケツトを吊り上げるためには、必ず本件のようなワイヤロープが必要であつたこと、以上の如き事実が認められ、右認定に反する原審及び当審証人Gの証言はたやすく信用できず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。してみれば、本件ワイヤロープは、平素から主として、土地の工作物である本件クレーンを用いて重量のある物を吊り上げる場合に使用されていたものであり、かつ、本件事故当時も、現実に本件シヨベル車のバヶツトを吊り上げる際の必需品として、本件クレーンに取り付けられていたクレーンケーブルの先端のフックに引掛けて右バケツトを吊り上げる用途に供せられていたもので、本件クレーンの付属物としてこれと一体となつて利 吊り上げる際の必需品として、本件クレーンに取り付けられていたクレーンケーブルの先端のフックに引掛けて右バケツトを吊り上げる用途に供せられていたもので、本件クレーンの付属物としてこれと一体となつて利用され工作物としての機能を果していたものというべきであるから、本件事故当時においては、本件ワイヤロープは土地の工作物である本件クレーンの一部を構成するものとして土地の工作物に該当すると解するのが相当である。 り上げる際の必需品として、本件クレーンに取り付けられていたクレーンケーブルの先端のフックに引掛けて右バケツトを吊り上げる用途に供せられていたもので、本件クレーンの付属物としてこれと一体となつて利用され工作物としての機能を果していたものというべきであるから、本件事故当時においては、本件ワイヤロープは土地の工作物である本件クレーンの一部を構成するものとして土地の工作物に該当すると解するのが相当である。一審被告は、本件ワイヤロープは、本件クレーンの効用を発揮するためにのみ使用されるものではなく、自動車やブルドーザーの移動等他の用途にも用いられていたこと等を前提にして、本件ワイヤロープは、土地の工作物ではないと主張しているが、前記認定の如く、本件ワイヤロープは、平素から主として、本件クレーンと一体となつて重量のある物を吊り上げる用途に供されていたものであり、かつ、本件事故当時も、現実に右と同一の用途に供されていたものであるから、本件ワイヤロープが、一審被告主張の如く偶々他の用途に供されることがあつたからといつて、本件事故当時において、本件ワイヤロープが本件クレーンと一体をなす土地の工作物であるとの前記認定を左右するものではない。よつて右一審被告の主張は失当である。三 (本件ワイヤロープの瑕疵)そこで次に、本件ワイヤロープの設置又は保存に瑕疵があつたか否かについて判断するに、本件事故は、前述の通り、本件クレーンに取り付けられたクレーンケーブルの先端のフツクに本件ワイヤロープを引掛け、本件シヨベル車のバケツトを吊り上げた際に、本件ワイヤロープが突然切断して起きたものであるところ、原審証人C、同E、同Gの各証言、原審における検証の結果によれば、本件ワイヤロープのような直径一センチメートルの鋼鉄製のワイヤロープは、通常は重さ約三屯ないし が突然切断して起きたものであるところ、原審証人C、同E、同Gの各証言、原審における検証の結果によれば、本件ワイヤロープのような直径一センチメートルの鋼鉄製のワイヤロープは、通常は重さ約三屯ないし五屯程度の物を吊り上げても切断するようなことはないこと、本件ショベル車のバケツトの部分の重さは二屯もなく、本件ワイヤロープが通常の品質さえ備えていれば、右バケツトの部分を吊り上げてもその途中で切断するようなことはないことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。 の各証言、原審における検証の結果によれば、本件ワイヤロープのような直径一センチメートルの鋼鉄製のワイヤロープは、通常は重さ約三屯ないし五屯程度の物を吊り上げても切断するようなことはないこと、本件ショベル車のバケツトの部分の重さは二屯もなく、本件ワイヤロープが通常の品質さえ備えていれば、右バケツトの部分を吊り上げてもその途中で切断するようなことはないことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。してみれば、本件ワイヤロープが前記の如く本件シヨベル車のバケツトの部分を吊り上げたことにより切断したことは、他に特段の事情が認められない限り、本件ワイヤロープがその本来具備しているべき通常の品質、性質を備えておらず、したがつてその設置又は保存に瑕疵があつたものというべきところ、本件における全証拠によるも、右特段の事情を認めることはできない。もつとも、原審証人G、同Hの各証言中には、一審原告らが本件シヨベル車のバケツトの部分を吊り上げた際に、その本体である本件シヨベル車の部分まで吊り上げたとの事実を窺わせる趣旨の証言があるが、右各証言は、原審証人D、同E、同Fの各証言等に照らしてたやすく信用できないものというべきである。次に、一審被告は、通常ワイヤロープに瑕疵があるというためには、(イ)小さ過ぎるシープ、(ロ)ドラムの乱巻き、(ハ)キンク、(ニ)腐蝕等の欠陥のあることが必要であるのに、本件ワイヤロープには右の如き欠陥はなかつたから、何等の瑕疵もないと主張しているところ、本件ワイヤロープには、右一審被告主張の如き具体的な欠陥があつたことは認定できないけれども、前述の如く本件ワイヤロープは通常は三屯以上の物を吊り上げても切断しないのに、右三屯に満たない本件シヨベル車のバケツトを吊り は、右一審被告主張の如き具体的な欠陥があつたことは認定できないけれども、前述の如く本件ワイヤロープは通常は三屯以上の物を吊り上げても切断しないのに、右三屯に満たない本件シヨベル車のバケツトを吊り上げて切断したことは、他に特段の事情がない限り、本件ワイヤロープには、当時通常備えているべき品質、性質を備えておらず、何等かの瑕疵があつたものと認むべきであり、また、右瑕疵を具体的に特定して認定できない場合であつても、なお、民法七一七条にいわゆる土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があると認めることは妨げないと解すべきであるから、右一審被告の主張は失当である。 屯に満たない本件シヨベル車のバケツトを吊り上げて切断したことは、他に特段の事情がない限り、本件ワイヤロープには、当時通常備えているべき品質、性質を備えておらず、何等かの瑕疵があつたものと認むべきであり、また、右瑕疵を具体的に特定して認定できない場合であつても、なお、民法七一七条にいわゆる土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があると認めることは妨げないと解すべきであるから、右一審被告の主張は失当である。なお、以上の外、一審被告の主張する諸事情は、いずれも本件ワイヤロープの設置又は保存に瑕疵があるとの前記認定を妨げるものではないから、右瑕疵がないとの点に関する一審被告の主張はいずれも理由がない。四 (責任)次に、本件ワイヤロープ及び本件クレーンは、一審被告の占有し所有するものであることは弁論の全趣旨から明らかであるから、一審被告は一審原告に対し、民法七一七条に基づき、本件事故によつて一審原告の蒙つた損害を賠償すべき義務があるといわなければならない。五 (損害)そこて、本件事故によつて一審原告の蒙つた損害額について判断する。(1) 逸失利益金五五万二七六三円(Ⅰ) 一審原告が本件事故のため脳挫傷、頸椎骨折、左橈骨々折、右大腿骨々折等の傷害を受け、本件事故当日から昭和四三年八月二〇日まで、大阪市a区所在の首藤病院に入院してその治療を受けたこと、昭和四七年三月二一日から同年四月二〇日までの間、及び、同年五月二六日から現在に至るまで、愛媛県八幡浜市内の八幡浜医師会立双岩病院に入院していることは当事者間に争いがなく、また、原審証人Iの証言(第一回)により成立の認め得る甲第一号証、原 での間、及び、同年五月二六日から現在に至るまで、愛媛県八幡浜市内の八幡浜医師会立双岩病院に入院していることは当事者間に争いがなく、また、原審証人Iの証言(第一回)により成立の認め得る甲第一号証、原審証人Jの証言により成立の認め得る甲第四、五号証、成立に争いのない甲第六号証、原審証人I(第一、二回)、同J、原審(第一、二回)及び当審証人Bの各証言、原審でなされた八幡浜医師会立双岩病院に対する調査嘱託の結果を綜合すると、次の如き事実が認められる。すなわち、一審原告は、(イ)前記首藤病院を退院してから昭和四四年一月二八日までの間と同年三月一八日から同月三一日までの間、愛媛県東宇和郡b町所在の野村病院に入院し、(ロ)昭和四四年一月二九日から同年三月一七日までの間山口県宇部市の山口医大病院に入院し、(ハ)さらに昭和四四年四月一日から同四七年三月二一日までの間愛媛県東宇和郡c町の宇和病院に入院し、右各病院において本件事故によつて受傷した前記傷害の治療を受けたこと、そして一審原告は、前記宇和病院に入院していた当時は、強度の頭痛や耳鳴り等を訴えていたのであるが、その後精神異常をきたし、外傷性分裂症様状態及び外傷性痴呆に罹患したため、前記の如く、昭和四七年三月二一日から同年四月二〇日まで双岩病院に入院してその治療を受け、右精神的疾患は一応治療したので、宇和病院に戻つたこと、しかし、その後再び前記精神的疾患が悪化したので、同年五月二六日以降再び右双岩病院に入院し、以後引き続き現在まで同病院に入院して右精神的疾患の治療を受けているが、右精神的疾患は今後も治癒する見込がなく、現在のその程度は、一審原告の肉親さえも識別でき難いような状況にあること、そして仮りに右症状が回復したとしても、せいぜい労働者災害補償保険法施行規則別表障害等級表第三級の三に該当する身体 に戻つたこと、しかし、その後再び前記精神的疾患が悪化したので、同年五月二六日以降再び右双岩病院に入院し、以後引き続き現在まで同病院に入院して右精神的疾患の治療を受けているが、右精神的疾患は今後も治癒する見込がなく、現在のその程度は、一審原告の肉親さえも識別でき難いような状況にあること、そして仮りに右症状が回復したとしても、せいぜい労働者災害補償保険法施行規則別表障害等級表第三級の三に該当する身体 込がなく、現在のその程度は、一審原告の肉親さえも識別でき難いような状況にあること、そして仮りに右症状が回復したとしても、せいぜい労働者災害補償保険法施行規則別表障害等級表第三級の三に該当する身体障害を残すこと、したがつて、一審原告は、本件事故直後からその生涯に亘つて、一〇〇パーセントの稼働能力を失い、一生涯全く働くことができないこと、以上の如き事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。(Ⅱ) ところで、一審被告は、一審原告の罹患した前記外傷性分裂様状態及び外傷性痴呆は、一審原告のもつ特異性格及び体質に起因するものであるから、本件事故と相当因果関係はないと主張するが、一審原告が本件事故前から前記精神的疾患に罹るような病的素質ないしは異常な性格、体質を有していたことを認め得るような適確な証拠はないのみならず、原審証人Jの証言によれば、一審原告の前記精神的疾患は、一審原告が本件事故によつてその頭部に外傷を受けたために、脳の細胞に変性が起こり、否可逆性の知能障害を起こしたことによるものであつて、一審被告主張の如き一審原告の異常性格や体質等がその原因とはなつていないことが認められる。してみれば、一審原告の前記精神的疾患と本件事故との間には相当因果関係があるものというべきであつて、右因果関係がないとの一審被告の主張は理由がない。(Ⅲ) 次に、一審原告が本件事故当時一審被告方に勤務し、平均賃金として日額金九五〇円、月額金二万三七五〇円(一ケ月の就労日数は二五日)の収入を得ていたことは、弁論の全趣旨によつて認められるところ、その後我が国の一般物価及び労働者の賃金がかなり上昇したことは公知の事実であり、又、成立に争いのない甲第八号証及び弁論の全趣旨によれば、本件事故を原因として、労災保険から一審原告に対して支給される長期傷病補償給付金が 価及び労働者の賃金がかなり上昇したことは公知の事実であり、又、成立に争いのない甲第八号証及び弁論の全趣旨によれば、本件事故を原因として、労災保険から一審原告に対して支給される長期傷病補償給付金が昭和四八年一一月一日以降増額され、右同日以降一審原告の収入を従前に比し六九パーセント増加したものとして計算されることになつたことが認められるのであつて、以上の如き諸事実からすれば、他に特段の反証のない本件においては、一審原告は、本件事故に遭遇しなければ、その後の賃金の上昇により少なくとも昭和四八年一一月以降は、一ケ月前記金二万三七五〇円よりも六九パーセント多い金四万〇一三七円程度の収入を得られたものと認めるのが相当である。 額され、右同日以降一審原告の収入を従前に比し六九パーセント増加したものとして計算されることになつたことが認められるのであつて、以上の如き諸事実からすれば、他に特段の反証のない本件においては、一審原告は、本件事故に遭遇しなければ、その後の賃金の上昇により少なくとも昭和四八年一一月以降は、一ケ月前記金二万三七五〇円よりも六九パーセント多い金四万〇一三七円程度の収入を得られたものと認めるのが相当である。次に、一審原告が本件事故当事満二〇才の男子であつたことは当事者間に争いがないから、本件事故のあつた昭和四二年当時を基準とした各種の統計によれば、一審原告は、本件事故後少なくとも四三年間は稼働して前述の収入を得られたものというべきところ、前述の如く本件事故のため全く働くことができなくなり、右の得べかりし利益を喪失したものというべく、右一審原告の逸失利益の現在価額を、ホフマン方式により年五分の中間利息を控除して計算すると、その額は、別紙計算書(一)の通り、金一〇七二万六七三二円となる(但し、一審原告が年五分の割合による遅延損害金を求めている以前の昭和四五年二月までに生じた逸失利益については、右中間利息は控除しない。)。一審原告は、右逸失利益を算定するに当つては、昭和四三年度の賃金構造基本統計調査報告に基づく満二〇才の男子の平均給与額月額金四万二五〇〇円を基準とすべきであると主張するが、本件事故当時一審原告は、前述の通り、一審被告から現実に月額約金二万三七五〇円の給与を受けていたに過ぎないのであつて、一審原告に右以上の収入があ 額金四万二五〇〇円を基準とすべきであると主張するが、本件事故当時一審原告は、前述の通り、一審被告から現実に月額約金二万三七五〇円の給与を受けていたに過ぎないのであつて、一審原告に右以上の収入があつたことを認め得る証拠はなく、したがつて一審原告が本件事故に遭遇せず、従前通り稼働していたとしても、右一ケ月金二万三七五〇円以上の収入を得ることはできなかつたものというべきであるから、一審原告の逸失利益を算定するに当つては、まず、本件事故当時現実に得ていた金二万三七五〇円を基準とすべきであつて、一審原告主張の如く、満二〇才の男子の平均賃金月額金四万二五〇〇円を基準とすべきではなく、このことは、将来一審原告の収入の上昇が見込まれたとしても差違はないと解すべきである(将来の収入の上昇分については、前述のように、本件事故当時の現実の収入を基礎にして別途の方法により考慮すべきである。 、一審原告の逸失利益を算定するに当つては、まず、本件事故当時現実に得ていた金二万三七五〇円を基準とすべきであつて、一審原告主張の如く、満二〇才の男子の平均賃金月額金四万二五〇〇円を基準とすべきではなく、このことは、将来一審原告の収入の上昇が見込まれたとしても差違はないと解すべきである(将来の収入の上昇分については、前述のように、本件事故当時の現実の収入を基礎にして別途の方法により考慮すべきである。)。(Ⅳ) 次に、一審原告が労災保険から本件事故後昭和四六年一月三一日までの間に休業補償給付金として金七五万八六七〇円の支給を受け、また長期傷病補償給付金として昭和四六年二月以降昭和四八年一〇月まで年額金二〇万八〇五〇円の割合による金員を、昭和四八年一一月から同四九年一〇月までの分として金二三万〇八八一円を、それそれ支給されたこと、以上の事実についでは当事者間に争いがなく、またさらに、今後も長期傷病補償給付金として年額金二三万〇八八一円の支給を受け得ることになつていることは弁論の全趣旨によつてこれを認めることができる。しかして、本件事故は、一審被告に雇用されていた一審原告が一審被告の業務に従事中発生したものであつて、一審原告の前記負傷が業務上のものであることは、前記認定の諸事実から明らかであるから、労働基準法八四条の規定に照らし、一審原告がこれまでに労災保険から支給を 被告の業務に従事中発生したものであつて、一審原告の前記負傷が業務上のものであることは、前記認定の諸事実から明らかであるから、労働基準法八四条の規定に照らし、一審原告がこれまでに労災保険から支給を受けた休業補償給付金及び長期傷病補償給付金を前記一審原告の逸失利益から控除すべきは勿論、将来給付を受くべき長期傷病補償給付金についても、ホフマン方式により年五分の中間利息を控除してその現在価額を算出した上、これを一審原告の逸失利益から控除すべきであると解するのが相当である。一審原告引用の最高裁判所の判決は、第三者の不法行為にかかるものであつて、本件と事案を異にするものであり、右将来支給を受くべき給付金は、これを逸失利益から控除すべきではないとの一審原告の主張は採用できない。なお、右将来支給される長期傷病補償給付金を逸失利益から控除すべきか否かは法律問題であつて、この点につきいわゆる裁判上の自白が成立する余地はないから、右の点に関する一審原告の主張の訂正が裁判上の自白になるとの一審被告の主張は失当である。 者の不法行為にかかるものであつて、本件と事案を異にするものであり、右将来支給を受くべき給付金は、これを逸失利益から控除すべきではないとの一審原告の主張は採用できない。なお、右将来支給される長期傷病補償給付金を逸失利益から控除すべきか否かは法律問題であつて、この点につきいわゆる裁判上の自白が成立する余地はないから、右の点に関する一審原告の主張の訂正が裁判上の自白になるとの一審被告の主張は失当である。そして一審原告がその稼働可能な期間中の昭和四六年二月一日から昭和八五年五月末日までの間に給付を受け又は受け得べき長期傷病補償給付金の昭和四五年三月現在の現在価額をホフマン方式により年五分の中間利息を控除して計算すると、その額は、別紙計算書(二)の通り、金四七五万九一三二円となるから、これを前記逸失利益から控除すべきである。(Ⅴ) 次に、一審原告が厚生年金法に基づく厚生年金保険の障害年金として、昭和四六年一一月から同四八年一〇月まで年額金一一万八二五六円を、同四八年二月一日から同四九年一〇月末日まで年額金二四万一四四七円を、それぞれ支給されていることは、当事者間に争いがなく、また、右年金は今後も支給されることになつていることは、弁論の全趣旨に 円を、同四八年二月一日から同四九年一〇月末日まで年額金二四万一四四七円を、それぞれ支給されていることは、当事者間に争いがなく、また、右年金は今後も支給されることになつていることは、弁論の全趣旨によつてこれを認めることができる。ところで厚生年金制度は、元来労働者が老令、癈疾となり、又は死亡した場合等に、当該労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とするものであって(厚生年金法一条参照)、厚生年金保険の障害保険は、一定の事業所に使用されている者が被保険者であつた間に、疾病にかかり、又は負傷したため、癈疾の状態になつた場合に、その癈疾の程度に応じて支給されるものであるから(同法四七条参照)、右障害年金は、実質的には被保険者である労働者が疾病又は負傷により癈疾の状態となつて働けず、そのために収入が得られなくなつた場合の損失を保障する機能を果たすものと解すべきであるし、また、その保険料も各被保険者と事業主とがそれぞれ保険料額の二分の一ずつを負担することになつているのであつて(同法八二条参照)、本件では、反証のない限り、被保険者である一審原告とその雇主である一審被告とが各二分の一の保険料を負担していたものと認むべきである。 ある労働者が疾病又は負傷により癈疾の状態となつて働けず、そのために収入が得られなくなつた場合の損失を保障する機能を果たすものと解すべきであるし、また、その保険料も各被保険者と事業主とがそれぞれ保険料額の二分の一ずつを負担することになつているのであつて(同法八二条参照)、本件では、反証のない限り、被保険者である一審原告とその雇主である一審被告とが各二分の一の保険料を負担していたものと認むべきである。したがつて、本件の如く使用者の業務に従事中起きた事故による負傷に基づき右障害年金の支給を受けながら右同一事故による労働能力喪失を理由として、右使用者に逸失利益の賠償を求めることは、右厚生年金制度の目的、障害年金の機能、その他衡平の原則等に照らし、許されないものと解するのが相当である。よつて、一審原告の既に支給を受けた右障害年金については勿論、将来支給を受くべき障害年金についても、その現在価額を算出して、これを前記逸失利益から控除すべきであると解すべきところ、一審原告の稼働可能期間である昭和四六年一一月から けた右障害年金については勿論、将来支給を受くべき障害年金についても、その現在価額を算出して、これを前記逸失利益から控除すべきであると解すべきところ、一審原告の稼働可能期間である昭和四六年一一月から昭和八五年五月までの右障害年金の昭和四五年三月現在の現在価額を、ホフマン方式により年五分の中間利息を控除して計算すると、その額は、別紙計算書(三)の通り、金四六五万六一六七円となるから、これを前記逸失利益から控除すべきである。(Ⅵ) よつて、一審原告の前記逸失利益金一〇七二万六七三二円から、一審原告が既に給付を受け又は今後受け得べき休業補償金七五万八六七〇円、長期傷病補償給付金四七五万九一三二円、厚生年金保険の障害年金四六五万六一六七円、以上合計金一〇一七万三九六九円を控除すると、その残額は金五五万二七六三円となり、これが一審原告の請求し得べき逸失利益である。なお、一審被告は、一審原告の入院中、治療費、入院費は、すべて労災保険から支払われており、右入院中の一審原告の生活費は結局労災保険から支払われていることになるので、逸失利益の算定に当つては、右の点を考慮すべきであると主張するが、一審原告の右入院中に要する生活費として労災保険から現実に支払われた金額については何等の立証がないのみならず、右入院中は、一般生活費の外、入院雑費等の費用を要すると推認されるから(入院雑費の請求はない)、他に立証のない本件においては、一審原告がその生活費相当額を利得することになるとは認め難く、右の点に関する一審被告の主張は採用し難い。 、逸失利益の算定に当つては、右の点を考慮すべきであると主張するが、一審原告の右入院中に要する生活費として労災保険から現実に支払われた金額については何等の立証がないのみならず、右入院中は、一般生活費の外、入院雑費等の費用を要すると推認されるから(入院雑費の請求はない)、他に立証のない本件においては、一審原告がその生活費相当額を利得することになるとは認め難く、右の点に関する一審被告の主張は採用し難い。(2) 付添看護料金一七四万八〇〇〇円前記(1)に認定の事実及び当審証人Bの証言によれば、一審原告は、本件事故直後から現在に至るまで、前述の各病院に入院して本件事故によつて受けた傷害等の治療を受けているところ、その間において 〇〇円前記(1)に認定の事実及び当審証人Bの証言によれば、一審原告は、本件事故直後から現在に至るまで、前述の各病院に入院して本件事故によつて受けた傷害等の治療を受けているところ、その間においてその付添看護が必要であつたこと、そして前記首藤病院に入院していた昭和四二年六月八日(入院の翌日)から同四三年八月二〇日までの四四〇日(昭和四三年は閏年)、野村病院に入院していた昭和四三年八月二一日から同四四年一月二八日まで、及び同年三月一八日から同月三一日までの合計一七五日間、山口医大病院に入院していた昭和四四年一月二九日から同年三月一七日までの四八日間、宇和病院に入院していた昭和四四年四月一日から昭和四七年三月二一日までの一〇八五日間(昭和四七年は閏年)、以上合計一七四八日間は、一審原告の母Bがその付添看護をしたこと、なお、一審原告が前記首藤病院に入院した当初の四〇日間は、労災保険により別に一人の付添看護が付けられていたが、当時の一審原告の症状が極めて重かつた状態に照らして、二人の付添看護人を付けることは必ずしも不当とはいえないこと、また、一審原告が双岩病院に入院した後は、同病院の性質上完全看護であつて、これに要する費用は労災保険から支払われており、一審原告の母Bは特にその付添看護をしていないこと、以上の如き事実が認められ、右認定に反する証拠はない。しかして一審原告の母Bが付添看護をした付添看護料は、他に特段の反証のない本件においては、一日金一〇〇〇円と認めるのが相当であるから、右付添看護料の合計額は金一七四万八〇〇〇円となる。なお、以上に認定した以外に、一審原告の付添看護を要し、又は、今後要することについては、これを認め得る適確な証拠がないから、付添看護料についての右認定の限度を超える一審原告の主張は失当である。 、右認定に反する証拠はない。しかして一審原告の母Bが付添看護をした付添看護料は、他に特段の反証のない本件においては、一日金一〇〇〇円と認めるのが相当であるから、右付添看護料の合計額は金一七四万八〇〇〇円となる。なお、以上に認定した以外に、一審原告の付添看護を要し、又は、今後要することについては、これを認め得る適確な証拠がないから、付添看護料についての右認定の限度を超える一審原告の主張は失当である。(3) 慰藉料金六〇〇 以外に、一審原告の付添看護を要し、又は、今後要することについては、これを認め得る適確な証拠がないから、付添看護料についての右認定の限度を超える一審原告の主張は失当である。(3) 慰藉料金六〇〇万円上記認定の通り、一審原告は、本件事故により前述の如き重傷を受け、これが原因で外傷性分裂症様状態及び外傷性痴呆の精神的疾患に罹り、現在も入院治療を受けているばかりでなく、今後も右精神的疾患が回復する見込はほとんどなく、生涯不具癈疾の身として送らなければならないこと、一審原告は本件事故当時満二〇才の健康な男子であつたこと、その他本件事故の態様、事故後の状況等諸般の事情を綜合すると、一審原告は本件事故のため多大の精神的苦痛を受けたものというべく、右精神的苦痛が慰藉さるべき額は金六〇〇万円をもつて相当と認むべきであつて、これを超える一審原告の主張は失当である。なお、一審被告は、最近の交通事故等の損害賠償事件の慰藉料は定額化されており、一家の生計の中心である者の死亡事故でも金四〇〇万円を限度とされているから、これを超えて慰藉料額を認めることは高きに過ぎると主張しているが、本件事故は、一審被告の工場内で起きた労働災害による事故であつて交通事故ではないし、また前述の如き一審原告の受けた傷害の程度、後遺症の程度等を考慮するときは、交通事故による損害賠償事件で一般的に認められる慰藉料額に拘束されることなく、これを超えて慰藉料を認めることは何等差支えないというべきであるから、右一審被告の主張は失当である。(4) 弁護士費用金七〇万円当審証人Bの証言並びに弁論の全趣旨によると、一審被告は一審原告に対し、本件事故による損害の賠償を任意にしょうとしなかつたので、一審原告は弁護士武田博(本訴が当審に係属中死亡)に委任して本訴を提起追行し、その後同武田安紀彦 論の全趣旨によると、一審被告は一審原告に対し、本件事故による損害の賠償を任意にしょうとしなかつたので、一審原告は弁護士武田博(本訴が当審に係属中死亡)に委任して本訴を提起追行し、その後同武田安紀彦に訴訟委任をして本件訴訟を追行したこと、そして一審原告は右両弁護士に着手金及び報酬を併せて金一五〇万円を支払う旨約していることが認められるところ、以上の事実に、本件訴訟の複雑難易の程度、一審原告の本訴請求のうち本訴で認容される認容額等を考慮すると、右弁護士費用のうち金七〇万円を以て本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当であつて、右を超える一審原告の主張は失当である。 し、その後同武田安紀彦に訴訟委任をして本件訴訟を追行したこと、そして一審原告は右両弁護士に着手金及び報酬を併せて金一五〇万円を支払う旨約していることが認められるところ、以上の事実に、本件訴訟の複雑難易の程度、一審原告の本訴請求のうち本訴で認容される認容額等を考慮すると、右弁護士費用のうち金七〇万円を以て本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当であつて、右を超える一審原告の主張は失当である。六 (過失相殺の主張について)一審被告は本件事故の発生については、一審原告にも過失があつたと主張するが、右主張事実を窺わせる趣旨の原審証人H、原審及び当審証人Gの各証言はたやすく信用できず、他に一審原告の過失を認め得る証拠はない。もつとも、(1)本件ワイヤロープは、本件シヨベル車のバケツトを吊り上げる作業に使用するため、一審原告が選択して持参し、これを訴外Eが本件クレーンに掛けて使用したものであることは、さきに認定した通りであるけれども、原審証人C、同E、同F、同G(但し、前記信用しない部分は除く)の各証言、原審における一審原告本人尋問の結果、並びに、検証の結果によれば、本件ワイヤロープは、通常の品質性質さえ備えていたならば、本件シヨベル車のバケツトを充分吊り上げることができ、途中で切断するようなものではなかつたし、また、本件ワイヤロープには当時瑕疵があつたけれども、一審被告の作業員が通常の注意をもつてこれを調査しても、外見的にはその瑕疵を発見し得ないような状況にあつたことが認められるから、一審原告が本件ワイヤロープを選択して持参したことに何等の過失もないとい 審被告の作業員が通常の注意をもつてこれを調査しても、外見的にはその瑕疵を発見し得ないような状況にあつたことが認められるから、一審原告が本件ワイヤロープを選択して持参したことに何等の過失もないというべきである。(2)次に、原審証人C、同E、同F、原審における検証の結果によれば、一審原告は、本件事故当時訴外Fの行つていた本件クレーン操作によるクレーンの上下動を看視し、右Fに必要な指示を与える立場にあつたことが認められるけれども、一審被告主張の如く本件シヨベル車のバケツト及び本件シヨベル車の本体が不当に高く吊り上げられたことを窺わせる趣旨の原審証人G、同Hの各証言はたやすく信用できず、他に右事実を認め得る証拠はないから、一審原告がクレーンの上下動の看視を怠り、これを停止させなかつたことを理由に、一審原告に過失があるとは認め難い。 作によるクレーンの上下動を看視し、右Fに必要な指示を与える立場にあつたことが認められるけれども、一審被告主張の如く本件シヨベル車のバケツト及び本件シヨベル車の本体が不当に高く吊り上げられたことを窺わせる趣旨の原審証人G、同Hの各証言はたやすく信用できず、他に右事実を認め得る証拠はないから、一審原告がクレーンの上下動の看視を怠り、これを停止させなかつたことを理由に、一審原告に過失があるとは認め難い。(3)なお、一審被告は、一審原告が本件事故前に本件シヨベル車のバケットの下部に立入つた点をとらえて一審原告に過失があると主張するが、原審証人C、同E、同Fの各証言、原審における一審原告本人尋問の結果、検証の結果、並びに、弁論の全趣旨によれば、本件事故当時、一審原告は、右バケツトのリフトアームに支持台を当てようとしていたものであつて、右作業内容に照らし、一審原告が右バケツトの下部に立入つたことは何等不当ではなく、むしろ必要なことであつたことが認められるから、一審原告が右バケツトの下部に入つたことをとらえて、一審原告に過失があるとはいい難い。したがつて、本件事故の発生につき一審原告にも過失があつたとの一審被告の主張は失当である。なお、一審原告の前記症状と本件事故との因果関係が希薄であるからといつて(相当因果関係のあることは前記の通り)、一審被告主張の如く、本件損害賠償額を定めるにつきこれを斟酌すべき法律上の根拠はない る。なお、一審原告の前記症状と本件事故との因果関係が希薄であるからといつて(相当因果関係のあることは前記の通り)、一審被告主張の如く、本件損害賠償額を定めるにつきこれを斟酌すべき法律上の根拠はないから、この点に関する一審被告の主張も失当である。七 (結論)以上の理由により、一審原告の本訴請求は、一審被告に対し、前記五の(1)ないし(4)の合計金九〇〇万〇七六三円、及び、内金六五五万二七六三円に対する本件訴状送達の翌日であることが記録上明らかな昭和四五年三月一七日以降、内金一七四万八〇〇〇円に対する一審原告提出の昭和四九年一〇月一五日付請求の趣旨原因訂正の申立書が一審被告に送達された翌日であることが記録上明らかな昭和四九年一〇月一九日以降右各支払済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で正当であるが、その余は失当である。よつて、原判決中、一部一審原告の請求を棄却した部分は相当であつて一審原告の本件控訴は理由がないからこれを棄却し、また、原判決中前述の限度を超えて一審原告の請求を認容した部分は一部不当であるからこれを変更して一審原告の本訴請求を右の限度で認容し、その余の請求(当審で拡張された部分を含む)は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用につき民訴法九六条九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文の通り判決する。 、一部一審原告の請求を棄却した部分は相当であつて一審原告の本件控訴は理由がないからこれを棄却し、また、原判決中前述の限度を超えて一審原告の請求を認容した部分は一部不当であるからこれを変更して一審原告の本訴請求を右の限度で認容し、その余の請求(当審で拡張された部分を含む)は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用につき民訴法九六条九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文の通り判決する。(裁判長裁判官秋山正男裁判官後藤勇裁判官磯部有宏)別紙<記載内容は末尾1添付>
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