平成13(ワ)13444 割増手当請求

裁判年月日・裁判所
平成15年5月27日 東京地方裁判所
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判決文本文19,337 文字)

平成13年(ワ)第13444号割増手当請求事件平成15年5月27日判決言渡 主文 1 被告は,原告に対し,809万4977円及びうち405万5202円に対する平成12年6月28日から,うち23万2447円に対する同年7月26日から,うち326万8233円に対する同年9月16日から,うち21万5288円に対する同月26日から,うち5万3988円に対する同年10月26日から,いずれも支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを5分し,その2を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 4 この判決は,第1項及び第3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,4024万4729円及びうち1070万0893円に対する平成12年6月28日から,うち23万2447円に対する同年7月26日から,うち803万1720円に対する同年9月16日から,うち21万5288円に対する同月26日から,うち5万3988円に対する同年10月26日から,いずれも支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員並びに1923万5336円に対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本訴請求の概要本件は,被告の従業員(マンション管理員)であった故A(以下「A」という。)及びその相続人である原告(以下,Aと原告を併せて「原告ら」ともいう。)が,被告に対し,雇用契約及び労働基準法,商法,賃金の支払の確保等に関する法律(以下「賃確法」という。),民法に基づいて,以下のとおり,A分と原告分の各割増手当(残額),各付加金,各遅延損害金の総合計額の支払を求めた事案である。 (1) A分ア賃金支払請求権に基づく平成9年4月1日か 法」という。),民法に基づいて,以下のとおり,A分と原告分の各割増手当(残額),各付加金,各遅延損害金の総合計額の支払を求めた事案である。 (1) A分ア賃金支払請求権に基づく平成9年4月1日から平成12年6月27日までの未払割増手当分1093万4340円イ上記未払分のうち平成9年4月1日から平成12年5月31日までの未払割増手当1070万0893円に対する各支払期日から退職日である同年6月27日までの商法の定める年6パーセントの割合による遅延損害金97万0415円ウ上記未払分のうち平成9年4月1日から平成12年5月31日までの未払割増手当1070万0893円に対する退職日の翌日である平成12年6月28日から,うち同月1日から同月27日までの未払割増手当分23万3447円に対する支払期日の翌日である同年7月26日から,各支払済までの賃確法6条の定める年14.6パーセントの割合による遅延損害金エ労基法114条に基づく付加金1093万4340円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済まで民法の定める年5パーセントの割合による遅延損害金(2) 原告分ア賃金支払請求権に基づく平成9年4月1日から平成12年9月15日までの未払割増手当分830万0996円イ上記未払分のうち平成9年4月1日から平成12年7月31日までの未払割増手当803万1720円に対する支払期日から退職日である同年9月15日までの商法の定める年6パーセントの割合による遅延損害金80万3640円ウ上記未払分のうち平成9年4月1日から平成12年7月31日までの未払割増手当803万1720円に対する退職日の翌日である同年9月16日から,うち同月1日から同月15日の未払割増手当21万5288円に対する支払期日の翌日である同月26日から,うち同月1日から同月15日ま 手当803万1720円に対する退職日の翌日である同年9月16日から,うち同月1日から同月15日の未払割増手当21万5288円に対する支払期日の翌日である同月26日から,うち同月1日から同月15日までの未払割増手当5万3988円に対する支払期日の翌日である同年10月26日から,各支払済までの賃確法6条の定める年14.6パーセントの割合による遅延損害金エ労基法114条に基づく付加金830万0996円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済まで民法の定める年5パーセントの割合による遅延損害金 2 争いのない事実等(証拠によって認定した事実は,末尾に証拠を示した。証拠の示されていない部分は争いのない事実である。)(1) 当事者ア被告は,昭和61年3月3日に設立されたビル環境衛生管理,ビル等の警備,マンションの総合管理,建築工事の請負・調査等を事業内容とする資本金3000万円の株式会社(株式会社B組の子会社である。)であり,東京都新宿区の本社のほか札幌及び仙台に営業所を有し,従業員は約190名である。 被告は,東京都北区ab丁目c番d号所在のマンション「BQa」(以下単に「本件マンション」という)の管理組合(以下「管理組合」という。)から,同マンションの管理業務の委託を受けている。同マンションは,昭和49年に竣工した13階建て鉄筋コンクリート造り延床面積11,022.40㎡のマンションであり,1階及び2階はB不動産株式会社が所有し,スーパーなどの店舗及び会社事務所に賃貸し,3階から13階までは住戸部分であり,すべて分譲している。 イ原告(昭和15年2月26日生まれの女性である。)とA(昭和23年7月16日生まれの男性である。)は昭和60年9月18日に婚姻した。 Aは平成12年6月27日死亡し,同人の被告に対する賃金支払請求権を原告が相続 5年2月26日生まれの女性である。)とA(昭和23年7月16日生まれの男性である。)は昭和60年9月18日に婚姻した。 Aは平成12年6月27日死亡し,同人の被告に対する賃金支払請求権を原告が相続する旨の遺産分割協議が成立した。 (甲5,甲7の1ないし17,甲8の1ないし3,甲9の1ないし3)。 (2) 原告らと被告との雇用契約等ア原告らは,平成9年3月1日,被告に本件マンションの管理員として採用され(以下「本件契約」という。),同月10日以降,本件マンションにて,住み込みの管理員として,平成12年9月14日まで(Aについては同年6月27日まで)勤務した。 イ被告は,原告らに対し,本件契約に基づき,毎月の賃金支払日に,別表「賃金および割増基準額」の各「賃金月額」欄記載の賃金のほか,割増手当へ充当する趣旨で,同表の各「特別手当」欄記載の特別手当を支払っていた。 ウ原告らの基準内賃金(本給+加給),当該年度の1か月平均の所定労働時間及び割増基準額(基準内賃金/当該年度の1か月平均の所定労働時間)は,別紙1「賃金および割増基準額」の「賃金月額」,「月平均所定労働時間」及び「割増基準額」各欄記載のとおりである。 (3) 未払賃金請求の経緯等ア原告は,被告に対し,平成13年5月14日付通知書(甲10)をもって未払賃金全額の請求を催告し,同通知書は同日被告に送付されたが,被告は,その支払義務はないとして,支払を拒絶した。 イ被告は,本件第1回口頭弁論期日において,答弁書を陳述し,原告の請求中,本件について催告がなされた平成13年5月14日から2年以上前に原告らが就労したことにより発生したと主張する未払割増手当請求権について2年の短期消滅時効(労働基準法115条)を援用する旨の意思表示をした。 (4) 被告の就業規則等の規定(甲3,乙27)ア被告 原告らが就労したことにより発生したと主張する未払割増手当請求権について2年の短期消滅時効(労働基準法115条)を援用する旨の意思表示をした。 (4) 被告の就業規則等の規定(甲3,乙27)ア被告の就業規則における所定労働時間の定め(ア) 所定労働時間は,1日8時間(始業午前9時,終業午後6時,休憩時間正午から午後1時までの1時間)である(25条,26条)。 (イ) 法定休日は,1週につき1日である(28条)。 法定外休日は,①法定の祝日,②法定の祝日が日曜日に当たるときはその翌日,③5月4日(但し,法定休日ないし法定の祝日が日曜日に当たるときのその翌日を除く),④土曜日,⑤夏期(8月14~16日,この内の1日が日曜日にあたるときは,8月17日を加える),⑥年末年始(12月30~1月3日),⑦その他会社が臨時に定めた日である(28条)。 なお,休日勤務をした場合には振替を認めることができる(29条)。 イ被告の給与規則における時間外労働に対する賃金支払の定め(ア) 時間外労働に対する賃金(「割増手当」と呼称されている。)は,当月分の月俸(職員については本給及び加給の合計額)を当該年度の1か月平均所定労働時間数で除した割増基準額に,次の各割増率を乗じた割合により算出される金額とされている(27条)。 ① 就労日における所定労働時間を超えた労働25パーセント② 法定休日の労働35パーセント③ 法定休日以外の休日労働 25パーセント(イ) 被告における賃金は,基準内賃金については毎月末日締めの当月25日払いとされ,前記(ア)の割増手当も毎月末日締めの翌月25日払いとされている(4条)。 2 争点(1) 原告らの時間外実労働時間(2) 原告らの未払残業手当の額(3) 被告の消滅時効の援用の可否(4) 付加金 ア)の割増手当も毎月末日締めの翌月25日払いとされている(4条)。 2 争点(1) 原告らの時間外実労働時間(2) 原告らの未払残業手当の額(3) 被告の消滅時効の援用の可否(4) 付加金支払義務の存否 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)について(原告の主張)ア原告らは,平成9年3月10日から,Aは平成12年6月26日までの各日,原告は同年9月15日までの各日就労し,その労働時間は,平成9年4月1日以降については,別紙2「労働時間(各年月)」の各「総労働時間」欄記載のとおりであり,うち所定時間外労働時間は,同表の「所定外労働時間」欄記載のとおりである。 これらは概ね管理日報に基づいているが,管理日報は被告の指示に基づいて作成したものであり,その記載には信用性があるというべきである。 イ原告らが所定労働時間外に現実に従事した業務は,少なくとも以下のとおりであり,いずれも被告の指揮監督の下にされたものである。 (ア) 全日(平日,土曜,日曜・祝日をいう。以下,同様とする。)の午前9時以前の時間帯の業務①「ゴミ置き場開錠」午前7時にゴミ置き場の扉を開錠する。 ②「ボイラー始動」午前8時20分ころにテナント冷暖房装置(ボイラー)の始動をしていた。 ③「管理員室照明点灯」午前7時に管理員室の照明を手動で点灯させ,いつでも居住者やテナントのリクエストに対応できるように待機を開始する。 ④「駐車依頼」,「工事業者鍵の預り」駐車依頼,工事業者との間で,居住者の鍵の受け渡しなどの業務を不定期に実施した。 (イ) 全日の午後6時以降の時間帯の業務①「ゴミ置き場施錠」,「巡回」午後9時から午後9時30分まで,ゴミ置き場を施錠し,その後,午後10時まで約30分間本件マンションの内外を巡回をしていた(無断駐車防止のために午後9 の時間帯の業務①「ゴミ置き場施錠」,「巡回」午後9時から午後9時30分まで,ゴミ置き場を施錠し,その後,午後10時まで約30分間本件マンションの内外を巡回をしていた(無断駐車防止のために午後9時以降の巡回を余儀なくされていた。)。 ②「ボイラー停止」テナント冷暖房装置(ボイラー)の停止を午後6時以降に行っていた(平日は午後8時,休日の多くは午後6時)。 ③「管理員室照明消灯」午後10時に管理員室の照明を手動で消灯した。 ④「無断駐車」無断駐車を発見し,その後,警告,移動要請などの手続をとる業務を不定期に実施した(本件マンションの住人から頻繁に要求されていた。)。 ⑤「宅配便等の受け取り」居住者不在の場合の書留郵便,宅配便の受け取り,保管,居住者への交付業務を実施した。 ⑥「駐車依頼」,「工事業者鍵の預り」前記(ア)④と同じ。 (ウ) 所定労働日以外(休日)で,午前9時から午後6時までの時間帯にした業務①「ゴミ置き場清掃・整理」ごみ置き場の整理・清掃を不定時に実施した。 ②「リサイクル整理」ごみ置き場の中のリサイクルごみの整理を不定時に実施した。 ③「ボイラー使用」テナント冷暖房装置(ボイラー)を休日日中について作動させる業務をした。 ④「駐車依頼工事業者鍵の預り」業務内容については,前記(ア)④に同じ。 休日日中について駐車依頼,工事業者との間で居住者の鍵の受け渡しなどを行った回数を記載した。 ⑤「巡回」業務内容については,前記(イ)①の巡回に同じ。 休日日中について建物内外について巡回を行った回数を記載した。 ⑥「宅配便等の受け取り」前記(イ)⑤に同じ。 ウ以上のような業務については,実作業への従事がその必要が生じた場合に限られるとしても、その必要が生じることが皆無に等しいなど実質的に就労義務がないと認める 便等の受け取り」前記(イ)⑤に同じ。 ウ以上のような業務については,実作業への従事がその必要が生じた場合に限られるとしても、その必要が生じることが皆無に等しいなど実質的に就労義務がないと認めることができるような事情も存しないのであるから、本件所定労働時間外の業務は全体として労働からの解放が保障されているとはいえず、労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価することができる。 したがって、原告らの午前7時(管理人室照明点灯,ゴミ置き場開鍵)から午後10時(巡回後,管理人室照明消灯)までの時間は不活動時間も含めて被告の指揮命令下に置かれているものであり、上記時間は労基法上の労働時間に当たるというべきである。 (被告の主張)ア原告は,原告らの所定労働時間について,「平日」と「休日」に分け,土曜日を「休日」に含め,土曜日の午前9時から午後6時までの業務を休日ないし時間外労働としているが,被告は,原告らに対し,土曜日については,原告らのうちいずれか1名が業務を行い,業務を行った者については,翌週の平日のうち1日を振替休日とする包括的な休日振替措置をなしていたのであり,土曜日の午前9時から午後6時までの業務は休日ないし時間外労働ではない。 また,原告の指摘する時間外就労の事実は,概ね管理日報に基づくものであるが,管理日報の記載は,管理組合に対する対策として記載されたものであり,必ずしも原告らが現実に行なった行為が記載されているわけではないから,不正確かつ恣意的な指摘である。 イ原告らが,時間外に就労したと主張する各業務については,以下のとおりであり,被告の指示していない業務であるか,被告の指示した業務てあっても極めて短時間で終えることのできる業務で,その多くは具体的な「労働」としての実体を有していないと評しうるものである。 (ア) 全日の り,被告の指示していない業務であるか,被告の指示した業務てあっても極めて短時間で終えることのできる業務で,その多くは具体的な「労働」としての実体を有していないと評しうるものである。 (ア) 全日の午前9時以前の時間帯の業務について①「ゴミ置き場開錠」ゴミ置き場の扉開錠は,平日においては,清掃員が開錠しており,原告らはこれを行っていなかった。 ②「ボイラー始動」被告が原告らに対して指示した業務であるが,この業務に要する時間は5分程度(移動時間含む)に過ぎない。 ③「管理員室照明点灯」被告が原告らに対してこれを行うよう原告らに指示していたが,これは,防犯上の観点から,原告らの居住場所である管理員居宅に隣接する管理員室の照明を点灯するという極めて軽易かつ短時間(所要時間は数秒に過ぎない)に行われるものであって,消灯まで管理員室に常駐することや管理人としての業務を管理員室で行なうことまで義務づけたものではなく,具体的労働性に欠け,労働基準法が規制の対象とする「労働」と評価しうる実体はない。 ④「駐車依頼」,「工事業者鍵の預り」駐車依頼については,平日の就業時間内には原告らが対応すべき業務であるが,被告は,時間外におけるかかる業務への対応は指示していないのであり,原告らが所定労働時間外に現実に前記の行為を行ったとしても,当該行為はマンションの住人としての個人的なサービスに類するものにすぎず,これを行った時間は,労働基準法でいうところの労働時間には該当しない。 また,「工事業者の鍵の預り」も,居住者の鍵の受渡については,被告は原告らに対して,トラブルの原因になるので居住者の鍵を預からないよう指示していたものであり,業務性を有せず,労働時間となるものではない。 (イ) 全日の午後6時以降の時間帯の業務について①「ゴミ置き場施錠」,「巡回」 の原因になるので居住者の鍵を預からないよう指示していたものであり,業務性を有せず,労働時間となるものではない。 (イ) 全日の午後6時以降の時間帯の業務について①「ゴミ置き場施錠」,「巡回」ゴミ置き場の施錠については,これを「労働」と評価しうる実体がなく,業務に該当しない。 また,建物内外の巡回は,被告が原告らに対して指示した業務ではない。被告は,午後9時に無断駐車の有無を確認して,発見した場合には無断駐車の車体に貼り紙を貼るよう指示していたが,それ以外に館内外の巡回を行うことについては,なんら指示をしていない。 なお,無断駐車の確認及び発見後の対応に要する時間は5分程度である。 ②「ボイラー停止」被告が原告らに対して指示した業務であるが,この業務に要する時間は,ボイラーの停止並びに冷房の運転開始及び停止については,それぞれ1分程度(移動時間含む)に過ぎない。 ③「管理員室照明消灯」被告が原告らに対してこれを行うよう原告らに指示していたが,これは,「管理員室照明点灯」と同様,具体的労働性に欠け,労働基準法が規制の対象とする「労働」と評価しうる実体はない(なお,原告らは午後10時に消灯を行うことはなく,殆どが午後9時30分頃であった)。 ④「無断駐車」無断駐車点検は被告において原告らに対して指示した業務であるが,これは,被告が原告らに指示していた午後9時の駐車場確認業務の一環に過ぎない。 また,発見した場合の対応までが一連の業務であり,点検と発見は別個独立の業務ではなく,一つの業務に過ぎない。 ⑤「宅配便等の受け取り」居住者不在の場合の書留郵便,宅配便の受け取り,保管,居住者への交付業務は,平日の就業時間内には原告らが対応すべき業務であるが,被告は,時間外におけるかかる業務への対応は指示していないのであり,原告らが所定労働時間 の書留郵便,宅配便の受け取り,保管,居住者への交付業務は,平日の就業時間内には原告らが対応すべき業務であるが,被告は,時間外におけるかかる業務への対応は指示していないのであり,原告らが所定労働時間外に現実に前記の行為を行ったとしても,当該行為はマンションの住人としての個人的なサービスに類するものにすぎず,これを行った時間は,労働基準法でいうところの労働時間には該当しない。 ⑥「駐車依頼工事業者鍵の預り」前記(ア)④と同じ。 (ウ) 所定労働日以外(休日)で,午前9時から午後6時までの時間帯にした業務について①「ゴミ置き場清掃・整理」被告は,原告らに対して,ごみ置き場の整理・清掃を休日に行うよう指示したことはないから,仮に原告らが,休日に前記行為を行ったとしても,それらは,原告らの自発的意思に基づいてなされたもの,あるいはマンションの住人としての個人的サービスに類するにすぎず,休日労働に該当しない。 ②「リサイクル整理」被告は,原告らに対して,ごみ置き場の中のリサイクルごみの整理を休日に行うよう指示したことはないから,仮に原告らが,休日にかかる行為を行ったとしても,それらは,原告らの自発的意思に基づいてなされたものにすぎず,休日労働には該当しない。 ③「ボイラー使用」被告が原告らに対して指示した業務であるが,この業務に要する時間は,ボイラー始動については5分程度(移動時間含む),ボイラーの停止並びに冷房の運転開始及び停止については,それぞれ1分程度(移動時間含む)に過ぎない。 しかも,日・祝日には,原則として行なわれていなかった。 ④「駐車依頼工事業者鍵の預り」前記(ア)④に同じ。 ⑤「巡回」前記(イ)①の巡回に同じ。 ⑥「宅配便等の受け取り」前記(イ)⑤に同じ。 ウ本件においては,被告は,管理委託契約上時間外及び休日にお 依頼工事業者鍵の預り」前記(ア)④に同じ。 ⑤「巡回」前記(イ)①の巡回に同じ。 ⑥「宅配便等の受け取り」前記(イ)⑤に同じ。 ウ本件においては,被告は,管理委託契約上時間外及び休日において原告らに行わせなければならない契約上の義務を負っておらず,そのため,被告は原告らに対して,時間外及び休日の行動について,特定の時刻に行うべき一定の業務(午前8時30分,午後8時の冷暖房の運転・停止,午後9時の駐車場確認。なお,仮に,管理員室の電気の点消灯,ゴミ置き場の扉の開施錠が労働時間であるとした場合における当該業務を含む。)以外に一切の制約を設けていないから,原告らは,前記業務以外には「労働からの解放が保障されている」のであり,時間外及び休日における不活動時間が労働時間に該当することはない。 したがって,原告が労働時間に該当すると主張する平日午前7時から午前9時まで及び午後6時から午後10時まで並びに休日午前7時から午後10時までの時間は,冷暖房のスイッチの入切に要する時間及び午後9時の駐車場の確認を除き,労働時間に該当しない。 (2) 争点(2)について(原告の主張)原告らが支払いを受けるべき月毎の割増手当(割増基準額×割増率)は,別紙2「労働時間(各年月)」下段の表の「時間外賃金」合計欄各記載のとおりである。 したがって,原告らが支給を受けるべき割増手当は,Aについては別紙3の1「A所定外賃金計算書」の「未払額合計」欄記載の金額であり,原告については別紙3の2「C所定外賃金計算書」の「未払額合計」欄記載金額である(請求金額は,これらに対する遅延損害金を加えた金額である。)。 (被告の主張)原告らが従事した時間外及び休日労働時間数を正確に算定することはできないものの,もっとも多く見積もっても平均して1日30分を超えることはなく,時 る遅延損害金を加えた金額である。)。 (被告の主張)原告らが従事した時間外及び休日労働時間数を正確に算定することはできないものの,もっとも多く見積もっても平均して1日30分を超えることはなく,時間外及び休日業務は原告ら両名のうち1名のみがこれを行うものであるから,両名がこれを半分ずつ分担したと仮定すると,1名につき1か月(30日として,全ての日・祝日について業務を行ったと仮定した場合)の時間外及び休日労働時間数は,7時間30分程度(時間外6時間30分,休日1時間)になる。 平成12年度におけるAの割増基準額は906円(時間外割増手当1132円,休日割増手当1223円),原告の割増基準額は647円(時間外割増手当808円,休日割増手当873円)であるところ,時間外及び休日労働時間数が上記のとおりであったと仮定して労働基準法所定の割増率にて計算した額は,Aについて金8581円(時間外7358円,休日1223円),原告について金6125円(時間外5252円,休日873円)となり,特別手当の額(Aについて月額金1万5000円,原告について月額金1万円)を下回っている。 したがって,原告らの時間外ないし休日労働に対する割増手当に相当する額は全て支払済みであり,未払割増手当はない。 (3) 争点(3)について(被告の主張)原告の請求中,本件について催告がなされた平成13年5月14日から2年以上前に原告らが就労したことにより発生したと主張する未払賃金請求権は,短期消滅時効(労働基準法115条)が完成し,これにより消滅したから,被告は,前記消滅時効を援用する。 なお,被告は原告らより割増手当の請求を受けたことはなく,原告らに対して,割増手当請求の不行使を助長する如き欺罔行為・態度に出たことはない。 (原告の主張)被告は原告の残業手当請求に対して る。 なお,被告は原告らより割増手当の請求を受けたことはなく,原告らに対して,割増手当請求の不行使を助長する如き欺罔行為・態度に出たことはない。 (原告の主張)被告は原告の残業手当請求に対して,所定労働時間を超えて就労することは「以前から続いている慣習」であり,原告らは割増手当なしに所定外労働に従事する義務がある旨の誤った教示をしたため,原告らは割増手当請求が遅れたものである。 このように,被告は原告らに対して,割増手当請求の不行使を助長する如き疑罔行為・態度に出たものであり,このような状況下においては,原告らの割増手当請求権の権利行使の遅延は「権利の上に眠っていたもの」とは評価されず,かつ,被告は自ら原告らの権利不行使を助長していたものであり,被告の消滅時効の援用は信義則に反し,権利の濫用として許されないというべきである。 (4) 争点(4)について(原告の主張)割増手当の未払は,労働基準法37条違反でもあるから,同法114条により,未払分と同額の付加金を請求する。 (被告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)に対する判断(1) 証拠(甲14,16,19,24,25,26,27,28,29,乙13,19,証人J,同I,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア本件マンションの管理委託契約被告は,本件マンションの管理組合との間で事務管理業務,管理員業務,清掃業務,設備管理業務を内容とする管理委託契約を締結していた。 この管理委託契約により被告が受託した管理員業務の内容は,以下のとおりである。 (ア)「受付等の業務」①外来者の応接,居住者との応対,電話の接受,不在者の郵便物,品物等の受渡及び拾得物の取扱②共用部分にかかる鍵の保管及び貸し出し並びに管理用備品の管理③通知事項の掲示並びに入居者 )「受付等の業務」①外来者の応接,居住者との応対,電話の接受,不在者の郵便物,品物等の受渡及び拾得物の取扱②共用部分にかかる鍵の保管及び貸し出し並びに管理用備品の管理③通知事項の掲示並びに入居者及び退出者の届出の受理④官公庁との連絡及び粗大ゴミ収集の申込み(イ)「点検業務」①建物,諸設備及び諸施設の点検②照明の点灯及び消灯並びに管球類の点検③諸設備の運転及び作動状況の点検並びにその記録④各種警報装置の点検(ウ)「立会業務」①諸設備の保守点検の際の立会②共用部分の営繕工事の立会③清掃業務の立会④ゴミ収集の際の立会(エ)「報告連絡業務」①定時報告及び緊急時の連絡②日誌の記録(オ)「管理補助業務」①防火管理業務の補助②未収入金督促業務の補助また,同管理委託契約においては,管理員業務の実施態様について,管理員業務は住み込みの管理員によって行われること,執務時間は午前9時から午後6時,休日は日曜,祝日及び管理員の有給休暇(忌引,夏期休暇及び年末年始休暇を含む),執務場所は管理員室と定められていた。 イ面接及び説明会における指示(ア) 面接時の説明被告は,平成9年1月24日に原告らを含む5組の応募者を面接し,被告のK取締役総務部長,L取締役業務部長,M総務部次長,N総務部課長代理(以下「N」という)が面接を担当し,会社概要,就業規則・給与規則を説明するとともに,業務内容を説明した。 (イ) 説明会における指示被告は,平成9年3月3日及び同月4日,原告らに対して,労働条件,業務内容について詳細に説明する採用手続日を設定した。 被告のNは,平成9年3月3日午前9時から午前11時まで,原告らに対して,被告就業規則,給与規則の説明を行い,給与等の条件,住み込みに関する条件並びに所定労働時間,土曜日の休日振替措置及び休日につ 被告のNは,平成9年3月3日午前9時から午前11時まで,原告らに対して,被告就業規則,給与規則の説明を行い,給与等の条件,住み込みに関する条件並びに所定労働時間,土曜日の休日振替措置及び休日について説明し,原告らの承諾を得た。 被告のD課長(以下「D」という)及びE課長代理は,平成9年3月3日午後1時から午後5時まで及び翌3月4日午前9時から午後5時まで,原告らに対して,管理員業務マニュアル(甲14)の各項目を読み上げて説明するとともに,時間外の業務として,冷暖房の運転,停止業務があること,理事会への出席があることを説明した(但し,結局,理事会への出席はしないこととなった)。また,午前7時と午後9時のゴミ置き場の開閉,午前7時と午後10時の管理員室の照明の点消灯について指示した。 被告は,原告らに対して,平成9年3月3日の説明会の時に高層住宅管理業協会の作成したマニュアル(甲14)を使用して説明したが,併せて「BQマニュアル」(甲16)も交付した。 この「BQマニュアル」(甲16)は,原告らの前任の管理員であるF管理員(F管理員は,高齢になったということのほか,住民に対して余りに過剰なサービスを行っており,被告が受託している管理員業務契約の内容との乖離が著しくなってきたため,管理組合との関係でこれを是正する必要があると考え,被告から退職を要請し,平成9年1月末に退職した。)の報告に基づき,被告のDが,平成9年1月下旬から2月末ころにかけて,高層住宅管理業協会が作成している管理員マニュアル(甲14)の項目を参考にして,マニュアルの体裁に整える方法により作成したものである。その際,Dは,F管理員が行っていた行為が本来の管理員業務であるかどうかを吟味しなかった。 ウ着任後の指示(ア) 被告は,具体的な業務については,実際の勤務に就きながら,原 より作成したものである。その際,Dは,F管理員が行っていた行為が本来の管理員業務であるかどうかを吟味しなかった。 ウ着任後の指示(ア) 被告は,具体的な業務については,実際の勤務に就きながら,原告らの前任の管理員であるFの退職後,通勤で管理員をしていたG(被告は,原告らの前任の住み込み管理員であるFが平成9年1月29日付で退職したため,それ以降,同年3月31日までH株式会社に管理員業務を業務委託し,同社から通勤の管理員としてGが勤務していた。)からの引継により業務内容を把握させることとし,同年3月10日から同月31日までの間に実際に本件マンションにおいて,Gから引継を行った。 (イ) 平成9年4月以降は,原告らのみが本件マンションの管理員業務を遂行した。 もっとも,管理員の業務は,管理員室での受付等実作業に従事しない時間が多く,軽易であるから,基本的には一人で遂行することが可能であったが,一方が巡回等で管理員室外に出ている間,他の一方が管理員室で受付等の対応をする必要がある場合があることなどから,被告は,夫婦を共に管理員として採用していた。 被告は,原告らに対して,相互に業務を補完・代替・協力し合って遂行するように求めたが,その際,いずれの業務をいずれが行うかについては原告らの話し合いによる決定に任せていた。 (ウ) 原告らの上司であるD,Iらが定期的に原告らから業務に関する報告を受け,適宜指示をしていた。 もっとも,被告は,原告らに対し,現場で各業務を行う原告らの自主的判断に委ねることが適当であることから,被告はこれを原告らの自主性に委ねていた。 エ原告らの就労状況(ア) 平日(月曜日から金曜日)a 被告は,管理委託契約に従い,原告らの所定労働時間については,午前9時から午後6時(午後12時から午後1時まで休憩)とし,原告らに対し,そ エ原告らの就労状況(ア) 平日(月曜日から金曜日)a 被告は,管理委託契約に従い,原告らの所定労働時間については,午前9時から午後6時(午後12時から午後1時まで休憩)とし,原告らに対し,その時間内に後記b①ないし⑨の管理員業務を行うよう指示した。 b 原告らは,被告らの指示に従い,平成9年3月の原告らの入社時から平成12年6月まで,日常的に以下の業務を行った。 ① 管理員室での受付等の業務② コンテナの台数確認③ 水道水の点検④ 建物内外の巡回⑤ 自転車置き場の整理⑥ リサイクルごみの整理⑦ 工事業者や来訪者の駐車依頼への対応⑧ 宅配物等の受渡し⑨ 管理日報,管理業務報告書の記載c 被告は,Aが平成12年6月27日に死亡した後,被告は,翌28日から同年7月3日まで(7月2日を除く)の間,代替管理員を派遣して,管理員業務に当たらせ,その後は,株式会社Oに委託し,通勤の管理員として同社のPが月曜日から土曜日の午前9時から午後6時まで管理員業務を行った。また,被告と原告らとの間の雇用契約では,夫婦で住込み勤務することが条件とされていたが,被告は,原告の引越や再就職のことを考慮し,勤務期間を9月14日までとするとともに,日中の管理員業務については,基本的に就労義務を免除し,特別な用務や引継に必要がない限りは,自由に過ごしてよいこと,ただ,管理員室の照明の点消灯,ゴミ置き場の開閉と冷房の運転,停止については,これを行うよう指示し,原告はこれを承諾した。 このため,原告は,平成12年6月28日以降は,本件マンションの管理業務を所定労働時間内には行っていない。 (イ) 平日の午前9時以前及び午後6時以降a 被告は,原告らに対し,平日午前9時以前及び午後6時以降について,以下の業務を行うよう指示した。 ① 午前7時管理員室の照明点灯 には行っていない。 (イ) 平日の午前9時以前及び午後6時以降a 被告は,原告らに対し,平日午前9時以前及び午後6時以降について,以下の業務を行うよう指示した。 ① 午前7時管理員室の照明点灯原告らの居住場所である管理員居宅に隣接する管理員室の照明を点灯するものである。 ② 午前7時ゴミ置き場の扉の開錠,開錠の確認管理員居宅から数メートルの場所にあるゴミ置き場の扉を開錠するものである。清掃担当の武田が行うこともあったが,それでも開錠の確認は原告らがしていた。 ③ 午前8時30分テナントの冷暖房装置の運転開始ただし,冷房については6月から9月のみ,暖房については12月から3月のみの季節的業務である。 冷房については,管理員居宅から10数メートルの距離にある機械室内の冷房のスイッチを押す作業であり,暖房については機械室内の小型ボイラーを着火させ,着火を確認する作業である。 ④ 午後8時テナントの冷暖房装置の運転停止機械室内の冷暖房装置のスイッチを切る作業である。 ⑤ 午後9時無断駐車の確認及び発見後の対応管理員居宅の裏にある駐車場をみて無断駐車の確認をし,発見した場合には車両の車体に無断駐車禁止の貼り紙をする作業である。 ⑥ 午後9時ゴミ置き場の扉の施錠⑦ 午後10時管理員室の照明消灯b 原告らは,遅くとも平成9年4月1日から平成12年9月15日まで(ただし,平成12年6月28日以降は原告ひとりで),被告の指示に従い,前記aの各業務に従事した。 もっとも,平成9年4月1日から同月9日までの午前7時の点灯及び午後10時の消灯はしておらず,午前7時の点灯及び午後10時の消灯を完全に励行したのは,同年5月14日以降であった。 また,原告らは,管理員室に在室するのは午前9時から午後6時までであり,それ以外の時間及び休日につい ておらず,午前7時の点灯及び午後10時の消灯を完全に励行したのは,同年5月14日以降であった。 また,原告らは,管理員室に在室するのは午前9時から午後6時までであり,それ以外の時間及び休日については,「本日の受付は終了しました」との札を出し,管理員室の窓口を閉じて隣の居室にいたが,住民からのインターホンによる呼び出しには応じていた。また,居住者不在の場合の書留郵便,宅配便の受取り,保管,居住者への交付もしていた。 (ウ) 土曜日における勤務a 被告の就業規則上,土曜日は休日とされているが,被告と管理組合との業務委託契約上は業務を行うことになっていたため,被告は,土曜日は,原告らのいずれか一人が業務を行い,業務を行った者については,翌週の平日のうち1日を振替休日とすることとし(以下「土曜日の休日振替措置」という。),原告らの承認を得ていた。 被告の業務指示は,原則として上記(ア)及び(イ)で述べた平日と同様である。但し,土曜日の勤務は1名で行うため,巡回等で管理員室を空ける場合に他方が待機する必要はないこと,冷暖房運転の停止時刻が午後6時であることが異なる。 b しかし,原告らは,実際は,業務の性質が平日の業務と余り変わらないものであることや住民の要望もあったため,平成9年4月1日から平成12年9月15日まで(ただし,平成12年6月28日以降は原告ひとりで)の原告らの土曜の勤務状況は,平日の勤務状況とほとんど変わらない状況であった。 (エ) 日曜・祝日における指示内容a 被告は,日曜・祝日は,原告らの休日であることから,被告は,上記(イ)記載の各事項について指示した以外には,原告らに対して,一切業務を行うよう指示していなかった。また,年末年始の休日(12月30日から1月3日)や夏期休暇(8月14日から16日),ゴールデンウィーク中の休日も同様 について指示した以外には,原告らに対して,一切業務を行うよう指示していなかった。また,年末年始の休日(12月30日から1月3日)や夏期休暇(8月14日から16日),ゴールデンウィーク中の休日も同様であり,やむを得ず仕事をした場合は代休をとるよう指示していた。 b しかしながら,原告らは,実際は,業務の性質が平日の業務と余り変わらないものであることや住民の要望(平日に代休をとろうとしても住民の要望に応えざるを得なくなる。)もあったため,平成9年4月1日から平成12年9月15日まで(ただし,平成12年6月28日以降は原告ひとりで)の原告らの日曜・祝日の勤務状況は,平日の勤務状況とほとんど変わらない状況であった。 以上の事実が認められる。なお,被告は管理日報の記載の信用性を争っているが,この管理日報は被告に指示で作成し,これに被告担当者の方で報告について決裁をしている以上,記載されている所要時間及び平成12年1月27日の午前5時30分から5分間の連絡はともかく,それ以外は原告らの就労実態を示すものとして採用するのが相当である。 (2) 以上の認定事実及び前記第2の2の事実を踏まえて判断する。 ア労基法32条の労働時間(以下「労基法上の労働時間」という。)とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい,実作業に従事していない時間(以下「不活動時間」という。)が労基法上の労働時間に該当するか否かは,労働者が不活動時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである。 そして,不活動時間において,労働者が実作業に従事していないというだけでは,使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず,当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて,労働者が使用者の指揮命令下 において,労働者が実作業に従事していないというだけでは,使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず,当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて,労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。 したがって,不活動時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。そして,当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には,労働からの解放が保障されているとはいえず,労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である。 イ原告らは,前記のとおり,全日にわたって,午前7時(管理人室照明点灯,ゴミ置き場開鍵)から指示業務を開始し,午後10時(巡回後,管理人室照明消灯)で指示業務を終えている。 この間,住み込みの管理員として,その労働密度はともかく,指示業務に従事しており(土曜や休日についても,平日と勤務状況に変化がなかったのであるし,原告らが相互に業務を補完・代替・協力し合って遂行するよう被告も求めていた以上,土曜や休日についても,平成12年6月27日までは原告ら2名が従事したものと扱うのが相当である。),また,代休取得もしていない(被告が代休をとるよう指示していたとしても,原告らが代休をとらない限り,休日扱いにはできない。)。また,原告らは,被告が直接申し送りしていない住民要望(時間外の宅急便等の受渡)に応えているが,これも「BQマニュアル」に記載されており,被告の所定業務であると見るのが相当である(被告は,同マニュアルを参考のために渡したとするが,被告が作成し,特にその記載に従わないよう禁止して原告らに渡したものでない以上,原告らがこれに従った業務をしたとしても,これを被告に指示していない業務に従事したものでないと 考のために渡したとするが,被告が作成し,特にその記載に従わないよう禁止して原告らに渡したものでない以上,原告らがこれに従った業務をしたとしても,これを被告に指示していない業務に従事したものでないということはできない。)。 そして,各指示業務は,断続的であり,その各所要時間が短いけれども,原告らはそれを遂行するため,当該遂行場所に出向いていたのであるし,その間も住民要望に応えるという役務の提供を求められており,通勤の管理員と比較するときは,個人的な生活時間という側面も併せ持つ住み込みの管理員であることを考慮しても,各指示業務間の時間は,次の業務を開始するまで滞留することが命ぜられた状態と同視すべきであり,その間は被告の指揮命令下に置かれていると認めるのが相当である(これに反し,個別の所要時間を検討すべきとする被告の主張は,採用できない。)。 したがって,原告らは,少なくとも,平成9年5月14日から平成12年9月15日まで,平成12年1月27日の午前5時30分から午後7時までを除き,別紙2「労働時間(各年月)」記載のとおりの時間外労働に従事した(平成12年6月28日から同年9月15日までは原告ひとりで従事した)ものと認めるのが相当である。 2 争点(2)及び(3)に対する判断(1) 原告らの前記1の所定外労働時間に対する割増手当は,特別手当の支払により一部弁済され,かつ一部については労働基準法による2年の消滅時効期間が徒過し,被告がこの消滅時効を援用する旨の意思表示をしているから,原告の請求できる未払割増手当は,平成11年4月分以降のもののみである(被告は平成13年5月14日から2年以上前のものについて消滅時効が成立すると主張するが,被告における割増手当は毎月末日締めの翌月25日払いとされていおり,平成11年4月分の割増手当の支払日は同年5 (被告は平成13年5月14日から2年以上前のものについて消滅時効が成立すると主張するが,被告における割増手当は毎月末日締めの翌月25日払いとされていおり,平成11年4月分の割増手当の支払日は同年5月25日であり,同年5月分の割増手当の支払日は同年6月25日であり,それぞれ当該日払日が「権利ヲ行使シ得ル時」であり,平成13年5月14日時点では,いずれもまだ2年の消滅時効期間が完成していないのであるから,被告の前記主張は採用できない。)。 (2) 被告は,「所定労働時間を超えて就労することは以前から続いている慣習であり,原告らは割増手当なしに所定外労働に従事する義務がある」旨の誤った教示をしたことを認めるに足りる証拠はなく,仮にそのようなことがあったとしても,被告が割増手当の請求を妨害したようなことはないから,被告の消滅時効に関する主張が信義則違反であるとはいえない。 (3) そうすると,原告らが被告に請求できる未払割増手当の額は,平成11年4月から平成9月分のものであり,別紙4「認定表」の未払額欄のとおりである。 3 争点(4)に対する判断被告は,原告らに積極的に時間外労働を求めたわけではないこと,一定の割増手当相当分(特別手当)を支払っていることから,付加金の支払を認めるまでの悪質性はない。 したがって,原告の被告に対する付加金請求には理由がない。 4 結語以上の次第であり,原告の本訴請求は,A分の平成11年4月1日から平成12年6月27日までの未払割増手当分428万8649円及びうち平成11年4月1日から平成12年5月31日までの未払割増手当405万5202円に対する各支払期日から退職日である平成12年6月27日までの商法の定める年6パーセントの割合による遅延損害金13万3086円並びにうち平成11年4月1日から平成12年5月31日までの 5万5202円に対する各支払期日から退職日である平成12年6月27日までの商法の定める年6パーセントの割合による遅延損害金13万3086円並びにうち平成11年4月1日から平成12年5月31日までの未払割増手当分405万5202円に対する退職日の翌日である平成12年6月28日から,うち同月1日から同月27日までの未払割増手当分23万3447円に対する支払期日の翌日である同年7月26日から各支払済までの賃確法6条の定める年14.6パーセントの割合による遅延損害金,原告分の平成11年4月1日から平成12年9月15日までの未払割増手当分353万7509円及びうち平成11年4月1日から平成12年7月31日までの未払割増手当326万8233円に対する支払期日から退職日である同年9月15日までの商法の定める年6パーセントの割合による遅延損害金13万5733円並びにうち平成11年4月1日から平成12年7月31日までの未払割増手当326万8233円に対する退職日の翌日である同年9月16日から,うち同年8月分の未払割増手当21万5288円に対する支払期日の翌日である同年9月26日から,うち同月1日から同月15日までの未払割増手当5万3988円に対する支払期日の翌日である同年10月26日から,各支払済までの賃確法6条の定める年14.6パーセントの割合による遅延損害金の限度で理由があるから認容することとし,その余の部分については理由がないから棄却することとする。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第19部裁判官鈴木拓児

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