平成15年8月5日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成11年(ワ)第359号損害賠償請求事件口頭弁論の終結の日平成15年5月26日 主文 1 被告らは,原告に対し,連帯して7260万2822円及びうち3003万4715円に対する昭和62年9月6日から,うち4256万8107円に対する平成元年6月7日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は,被告らの負担とする。 3 この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1) 主文1,2項と同旨(2) 仮執行の宣言 2 被告A(1) 原告の被告Aに対する請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は,原告の負担とする。 3 被告B(1) 原告の被告Bに対する請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は,原告の負担とする。 第2 事案の概要 1 事案の要旨原告は,(1)被告らが,被告Bを保険契約者,C(現姓はC2。以下「C」という。)を被保険者とする生命保険契約につき,同人が急性砒素中毒に罹患し入院したことを奇貨として,同人と共謀の上,同人の症状が,実際には手足を動かすことができ常時要介護の状態にはなく,かつ回復可能性を否定できないものであったにもかかわらず,手足が全く動かない状態で症状が固定したことを装い,医師をして内容虚偽の障害診断書を発行させ,これを原告に交付し,原告をして,被告らに対し,高度障害保険金3003万4715円を支払わせこれを詐取したとして,被告らに対し,共同不法行為による損害賠償請求権に基づき,連帯して前記3003万4715円及びこれに対する原告が被告らに対し高度障害保険金を支払った日の後である昭和62年9月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,(2) 記3003万4715円及びこれに対する原告が被告らに対し高度障害保険金を支払った日の後である昭和62年9月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,(2)被告らが共謀の上,被告Bを保険契約者兼被保険者とする生命保険契約につき,被告Bが急性砒素中毒に罹患し入院治療を受けたことを奇貨として,被告Bがこれにより身体が全く動かせなくなったと装い,医師をして内容虚偽の障害診断書を発行させ,これを原告に交付し,原告をして,被告らに対し,高度障害保険金5020万0590円を支払わせこれを詐取したとして,被告らに対する共同不法行為による損害賠償請求権に基づき,連帯して前記金員のうち4256万8107円及びこれに対する原告が被告らに対し高度障害保険金を支払った日の後である平成元年6月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 これに対し,被告らは,原告に対する詐欺の事実を否認するなどして,争っている。 2 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,証拠(甲1ないし5,12,14,15,17の1ないし3,18の1・2,23,27,28,41ないし48)及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。 (1) 当事者等原告は,生命保険業を営む相互会社である。 被告らは夫婦である。 Cは,被告Bが経営する白アリ駆除業者の従業員として稼働していた。 (2) 原告C間の保険契約の締結並びに保険契約者及び保険金受取人の変更Cは,原告との間で,昭和61年7月26日,下記の内容の生命保険契約を締結した(以下「本件第1保険」という。)。 ア保険証券番号 8608組第021029号イ保険種類新・特別終生安泰保険(S60)ウ保険契約者及び被保険者 Cエ死亡保険金受取人 D(Cの母 (以下「本件第1保険」という。)。 ア保険証券番号 8608組第021029号イ保険種類新・特別終生安泰保険(S60)ウ保険契約者及び被保険者 Cエ死亡保険金受取人 D(Cの母,以下「D」)オ高度障害保険金受取人被保険者カ死亡及び高度障害保険金額 3000万円キ特約傷害特約(S58),災害入院特約(S56),疾病特約(S56),災害割増特約(S58)ク保険料月額2万0565円ケ高度障害保険金の支給対象となる高度障害状態の一つは,「中枢神経系,精神又は胸腹部臓器に著しい障害を残し,終身常に介護を要するもの」で,「『常に介護を要するもの』とは,食物の摂取,排便・排尿・その後始末,衣服着脱,起居,歩行,入浴のいずれもが自分ではできず,常に他人の介護を要する状態をいう。」というものである。 Cは,原告に対し,昭和62年1月13日ころ,本件第1保険につき,保険契約者及び死亡保険金受取人をいずれも被告Bに変更するとともに登録印を変更する旨の請求をし,原告は,この各変更請求に応じてこれらを変更し,本件第1保険の保険証券にその旨の裏書をした。 (3) 本件第1保険に基づく保険金の請求と支払被告Aは,原告に対し,昭和62年9月3日,請求者がC名義,保証人が同人の妻であるE名義の高度障害保険金請求書をC及びEの各印鑑登録証明書,戸籍抄本及び本件第1保険の保険証券と併せて提出した。この請求書によれば,保険金の受取方法は,株式会社F銀行紀ノ川支店のC名義の普通預金口座(口座番号245153,以下「本件第1預金口座」という。)への振込とされていた。 原告は,Cに対し,同月5日,本件第1保険契約に基づく高度障害保険金3000万円,配当金1万4150円及び保険料戻し金2万0565円の合計3003万4715円を支払うこ う。)への振込とされていた。 原告は,Cに対し,同月5日,本件第1保険契約に基づく高度障害保険金3000万円,配当金1万4150円及び保険料戻し金2万0565円の合計3003万4715円を支払うこととし,これを本件第1預金口座に振り込む手続を取った。 上記金員は,同月8日ころ,本件第1預金口座宛て着金した。 (4) 原告被告B間の保険契約の締結被告Bは,原告との間で,昭和61年11月12日,下記の内容の生命保険契約を締結した(以下「本件第2保険」という。)。 ア保険証券番号 8612組第078902号イ保険種類新・特別終生安泰保険(S60)ウ保険契約者及び被保険者被告Bエ死亡保険金受取人被告Aオ高度障害保険金受取人被保険者カ死亡及び高度障害保険金額 5000万円キ特約傷害特約(S58),災害入院特約(S56),疾病特約(S56)ク保険料月額5万7030円ケ高度障害保険状態の定義は,本件第1保険におけるものと同じである。 (5) 本件第2保険に基づく保険金の請求と支払被告らは,本件第2保険に基づく高度障害保険金請求書を作成し,被告Aにおいて,原告に対し,昭和63年11月13日,同請求書を提出した。同請求書によれば,保険金の受取方法は,G銀行和歌山支店の被告B名義の普通預金口座(以下「本件第2預金口座」という。)への振込によることとされていた。 原告は,同月21日ころ,被告Bの上記請求を相当と認め,本件第2保険に基づく高度障害保険金5000万円,戻し保険料23万1103円,積立配当金2万8300円及び保険料立替金利息戻し893円の合計5026万0296円から保険料積立金5万9706円を控除した5020万0590円を被告Bに支払うことを決定した。ただし,この当時,被告Bの原告に対する保険金請求権 保険料立替金利息戻し893円の合計5026万0296円から保険料積立金5万9706円を控除した5020万0590円を被告Bに支払うことを決定した。ただし,この当時,被告Bの原告に対する保険金請求権のうち2863万1173円については,仮差押えがされていたことから,原告は,被告Bに対し,同月26日,この仮差押額を控除した2156万9417円を本件第2預金口座に振込送金する方法で支払う手続をとり,その後,前記仮差押命令申立事件の申立てが取り下げられたことから,平成元年6月6日,残額(前記仮差押債権額に相当)2863万1173円を支払う手続をとり,いずれも,その日のうちに,本件第2預金口座に着金した。 3 争点及びこれに関する当事者の主張(1) 本件第1保険に基づく高度障害保険金の請求及び支払に際し,被告らが,原告に対し,詐欺の共同不法行為を行ったか。 被告らの共同不法行為が認められる場合の被告らが支払うべき賠償額(原告の主張)Cは,砒素を摂取したことにより急性砒素中毒となり,H病院,和歌山赤十字病院(当時の名称),I病院,和歌山赤十字病院と順次入院した。Cは,一命をとりとめ,実際には手足を動かすことができる状態であり,終身常時要介護の状態にはなく,回復可能性も否定できない状態にあった。 しかしながら,被告らは,Cと共謀して,同人が全く手足を動かすことができない状態となり,かつ,その症状が固定しているかのように装うこととし,担当医を始めとする関係第三者に対して全く手足を動かすことができない状態が固定したとの症状を装い続けて,医師らを欺き,その旨内容虚偽の障害診断書を発行させた。そして,被告らは,この内容虚偽の障害診断書を原告に提出し,原告をしてCが手足を全く動かすことのできない状態で症状が固定したと誤信させ,また,原告が差し向けた調査 内容虚偽の障害診断書を発行させた。そして,被告らは,この内容虚偽の障害診断書を原告に提出し,原告をしてCが手足を全く動かすことのできない状態で症状が固定したと誤信させ,また,原告が差し向けた調査員に対しても,Cの症状を装い続けて,原告をして本件第1保険に基づく高度障害保険金支払義務が発生しているものと誤信させた上,その履行を請求し,よって原告に,高度障害保険金等の支払名下に前記3003万4715円を出金させた。 以上のとおり,被告らは,Cと共謀の上,原告がCに対し高度障害保険金支払義務を負う状況になかったにもかかわらず,これをあるかのように装う詐欺行為をして,原告に支払義務のない3003万4715円を支払わせたのであるから,被告らは,原告に対し,共同不法行為による損害賠償義務に基づき,連帯して3003万4715円を支払うべきである。 (被告Bの主張)事実関係は否認し,主張は争う。 被告Bは,被告A及びCと共謀して高度障害保険金を詐取した事実はない。 (被告Aの主張)ア被告Aが被告B及びCと共謀して高度障害保険金を詐取したとの点は否認する。 イ Cは,原告以外の保険会社から高度障害保険金2000万円を受領していること,被告らがCに砒素を服用させたのではないことに照らすと,原告からの保険金の受領に当たり,Cが相当程度関与していることは明らかであり,被告らのみが全額について損害賠償責任を負ういわれはないというべきである。 (2) 本件第2保険に基づく高度障害保険金の請求及び支払に際し,被告らが,原告に対し,詐欺の共同不法行為を行ったか。 被告らの共同不法行為が認められる場合の被告らが支払うべき賠償額(原告の主張)被告Bは,昭和63年3月ころ,砒素を摂取したことから急性砒素中毒に罹患し,同年4月1日から同年5月19日までJ病院に,同日か の共同不法行為が認められる場合の被告らが支払うべき賠償額(原告の主張)被告Bは,昭和63年3月ころ,砒素を摂取したことから急性砒素中毒に罹患し,同年4月1日から同年5月19日までJ病院に,同日から同年7月21日まで和歌山県立医科大学附属病院(以下「医大病院」という。)に,同日から同年9月23日までJ病院に入院した。同被告は,その間一時的に上下肢とも動かすことができない状態にまで陥ったが,医大病院入院中には,病室内を1人で歩いたり,自分でライターを使用してたばこに火をつけてたばこを吸うことができる状態にまで回復していた。 このように,被告Bの障害状態は,終身常時要介護状態という高度障害保険金支払事由に該当するものではなかったにもかかわらず,被告らは,共謀して,被告Bが終身常時要介護状態に該当していると装い,原告から高度障害保険金を詐取しようと企て,被告Bにおいて,医師や看護師に対し,自己の身体が全く動かない演技を続け,被告両名において,関係者らに対し,こもごも被告Bの身体が全く動かないよう口裏合わせをするよう依頼し,被告Bが昭和63年9月23日にJ病院を退院し自宅に戻った後も,被告両名は,周囲の者らに対し,こもごも被告Bが動けることを口外しないよう依頼し,J病院の医師を欺き,被告Bが多発性神経障害に罹患し,上下肢とも完全弛緩性麻痺の状態にあり,手指,足指とも自動運動全く不能,四肢関節とも自動運動全く不能,起座,起立不能で全面介助を要し,回復可能性は少なく,症状の固定時期は同年7月21日ころとする同年9月20日付けJ病院医師作成の内容虚偽の障害診断書を入手した。そして,被告らは,同月下旬ころ,上記のとおり内容虚偽の障害診断書を,原告に提出し,被告Bが高度障害状態になったと偽った。 原告の調査員は,被告A,J病院院長らに面接するなどして所 診断書を入手した。そして,被告らは,同月下旬ころ,上記のとおり内容虚偽の障害診断書を,原告に提出し,被告Bが高度障害状態になったと偽った。 原告の調査員は,被告A,J病院院長らに面接するなどして所要の調査をしたが被告両名の偽装工作を見抜くことができず,食事は介助者がスプーンで食べさせないと自力では摂取できず,大小便とも介護者が便座を使って排泄させており自力では不可能,後始末も自力では不可能,就寝時はおしめを使用しており,日常生活動作は寝たきりで寝返りも自分では不可能との調査結果であったため,原告は,被告Bが高度障害にあるものとの誤信を深めた。 被告両名は,以上の原告の誤信に乗じて,被告Bに関する高度障害保険金請求をし,原告は,その支払義務がないにもかかわらず,支払義務があると誤信し,前記5020万0590円を出金した。 以上のとおり,被告両名は,共謀の上,原告が被告Bに対し高度障害保険金支払義務を負う状況になかったにもかかわらず,これをあるかのように装う詐欺行為をして,原告に支払義務のない5020万0590円を支払わせたのであるから,被告らは,原告に対し,共同不法行為による損害賠償義務に基づき,連帯して前記金員のうち4256万8107円を支払うべきである。 (被告Bの主張)事実関係は否認し,主張は争う。 被告Bの昭和63年9月ころの病状は,原告調査員の調査のとおりであり,被告Bは,何らの偽装工作もしていない。 (被告Aの主張)ア事実関係は否認し,主張は争う。 イ本件第2保険に関する保険金請求は,被告Bの主導で行われたものであり,被告Aが,全額について損害賠償責任を負う理由はないというべきである。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(本件第1保険に関する保険金請求の詐欺行為該当性等)について(1) 前提事実(2),(3)のほか,証拠 額について損害賠償責任を負う理由はないというべきである。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(本件第1保険に関する保険金請求の詐欺行為該当性等)について(1) 前提事実(2),(3)のほか,証拠(甲2ないし14,23,27ないし29,30の1・2,31ないし46)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア Cは,昭和59年当時,株式会社K(以下「K」という。)に勤務していたところ,同年7月,L生命保険相互会社(以下「L生命」という。)との間で死亡保険金を2000万円とする生命保険契約を締結した(以下「本件外保険」という。)。Cの母親であるDが,この生命保険を管理していた。Cは,このほかにもう1口の生命保険契約を締結していたが,保険料負担が大きかったことなどから,これを解約した。 イ Cは,被告Bからの勧誘を受けて,昭和61年6月,Kを退職し,被告B経営にかかる白アリ駆除業であるB工芸に勤めることとなった。 ウ Cは,昭和61年7月初めころ,被告両名から,①働いている従業員が入院して仕事ができなくなったときに,入院給付金から給料を支払う経営者保険に入ってもらいたい,②保険料は被告らにおいて支払う,③被告Aの母親が原告の保険外交員をしており,Cが保険に入ればその母親の成績になる等の説明を受け,本件第1保険にかかる生命保険契約申込書の契約者欄(C),被保険者欄(C),死亡保険金受取人欄(D)を記入するとともに,通信欄に被告両名の指示を受けて,被告B方と記載したが,自ら押印はしなかった。Cは,保険金,入院給付金等の金額については説明を受けていなかった。 被告Aは,母親のMに対し,同年7月7日,上記生命保険契約申込書を交付し,同月26日,原告とCとの間で,本件第1保険にかかる生命保険契約(死亡及び高度障害保険金額3000万円)が締結さ いなかった。 被告Aは,母親のMに対し,同年7月7日,上記生命保険契約申込書を交付し,同月26日,原告とCとの間で,本件第1保険にかかる生命保険契約(死亡及び高度障害保険金額3000万円)が締結された。 Cは,契約締結後,本件第1保険の保険料(月額2万0565円)を一度も支払っていなかった。 エ Cは,昭和62年1月ころ,被告両名から,保険料を支払っているので受取人の氏名を変更させてもらうと告げられ,本件第1保険にかかる名義変更・訂正請求書兼改印届(以下「名義変更請求書」という。)の請求者欄及び被保険者欄に署名したが,変更理由については記載しなかった。 被告Aは,原告和歌山支社河西支部のNに対し,同年1月13日,名義変更請求書及び従業員を被保険者とする生命保険を雇用者が掛ける場合に保険金の全部又は相当部分を従業員に対する将来の退職金又は弔慰金の支払に充当する旨を契約者(雇用主)と被保険者(従業員)との間で同意するための書式である「生命保険契約付保に関する規定」と題する書面(C及び被告Bの署名のあるもの)を提出し,原告は,これを受けて,同月21日付けで,本件第1保険にかかる契約者及び死亡保険金受取人を被告Bに変更した。 なお,この当時,原告において,雇用主が従業員を被保険者として新規に生命保険を掛ける場合には,死亡保険金は2000万円が上限とされていたが,名義変更の場合にはそのような制限がなかったため,名義変更後も本件第1保険の死亡保険金の額は変更されなかった。 オ昭和62年2月15日以降,Cに生じた病変及び治療の経過は,概ね以下のとおりである。 (ア) Cは,昭和62年2月15日午前3時ころより腹痛,吐き気,嘔吐があり,その後下痢をするようになったとの主訴で,同日午前9時10分ころ,救急車でH病院に搬送された。担当医師は,Cの症状を急性 (ア) Cは,昭和62年2月15日午前3時ころより腹痛,吐き気,嘔吐があり,その後下痢をするようになったとの主訴で,同日午前9時10分ころ,救急車でH病院に搬送された。担当医師は,Cの症状を急性腸炎と診断し,同人に対し,制吐剤,抗生物質,ビタミン等の24時間継続の点滴処置をとった。 Cは,その後,同月20日までH病院に入院し治療を受け,同日退院した。 (イ) Cは,昭和62年2月27日午後7時40分過ぎころ,嘔吐,倦怠感,咳の主訴で,再度H病院に来院し,診察を受けた。Cは,前記主訴のほか,4,5日前から手足にしびれがあることや指先の細かな動きができないという巧緻障害があるとも述べていたが,担当医師は,Cに同行した家族の話も聴取した上で,Cの症状を風邪の初期症状と判断し,同人に風邪薬と精神安定剤を処方した。 (ウ) Cは,昭和62年3月4日,両手両足のしびれの強化,箸がつかみにくく,ボタンをかけにくい,両下肢は足の付け根から足先の辺りまで力が入らない,嚥下障害との主訴で,O胃腸・消化器科(以下「O病院」という。)において診察を受けた。O病院における診察の結果,Cには,膝蓋腱反射の低下,握力の低下がみられ,また,歩行が不安定で足先に力が入らずスリッパが脱げるといった症状もあった。同病院の担当医師は,これらの症状から,Cがギラン・バレー症候群に罹患している疑いがあり,詳しい検査及び治療が必要であると判断し,Cに対し,和歌山赤十字病院(当時の名称)を紹介した。 (エ) Cは,昭和62年3月4日,O病院の紹介を受けて,和歌山赤十字病院を受診し,脳神経系に異常はないものの,下肢の腱反射がなく,徒手筋力検査(5を正常として0から5段階)の結果は,左右の前脛骨筋と大腿四頭筋は5マイナス,左右の上腕二頭筋及び上腕三頭筋がいずれも3であり,左右両腕 経系に異常はないものの,下肢の腱反射がなく,徒手筋力検査(5を正常として0から5段階)の結果は,左右の前脛骨筋と大腿四頭筋は5マイナス,左右の上腕二頭筋及び上腕三頭筋がいずれも3であり,左右両腕の肘から先,左右両足の膝から下にしびれがあり痛覚がなく,膝立て,離握手はできるものの力が入りにくい状態であった。担当医師は,Cがギラン・バレー症候群の疑いがあるほか,同人がみぞおちの痛みも訴え,貧血傾向も認められることから,胃潰瘍等の消化器系疾患の疑いもあるとみて,同人を入院の上検査する必要があると判断し,同人は,同日,同病院に入院した。 Cは,同月5日,同病院神経科の回診において,脳神経系は正常,運動系は握力低下,上腕二頭筋,上腕三頭筋,大腿四頭筋,大腿屈筋の筋力が左右とも4マイナス,前頸骨筋,腓腹筋が左右とも4プラス,腱反射については,足首にはほとんどなく,その余の部分はやや弱く,四肢の知覚系は触覚,痛覚,温度覚とも正常範囲であった。また,Cは,同日,看護師に対し,手足のしびれが強くなっている旨訴えており,体温計を持つことができないこともあった。Cの状態は,その後,断続的に手足のしびれや痛みがあり,その程度は次第に強くなっている旨訴えていた。 Cは,同月9日の検査において,下肢の腱反射は全くなく,徒手筋力テストにおいても,大腿四頭筋,前脛骨筋,上腕二頭筋,上腕三頭筋が左右いずれも3となり,四肢の筋力低下が進行していた。また,同人の筋肉を押すと痛みがあった。そこで,担当医師は,Cにおいて慢性のギラン・バレー症候群が進行していると判断し,同人に対しステロイド投与による治療をすることとした。 同月11日におけるCの状態は,四肢の疼痛が持続し,特に拇指痛が強くなっており,徒手筋力テストにおいて,筋力が3マイナスとわずかに低下し,しびれ感に加えて テロイド投与による治療をすることとした。 同月11日におけるCの状態は,四肢の疼痛が持続し,特に拇指痛が強くなっており,徒手筋力テストにおいて,筋力が3マイナスとわずかに低下し,しびれ感に加えて,両下肢に触覚低下,痛覚低下等の知覚低下が生じていた。 同月13日におけるCの状態は,下肢の触覚低下が顕著となった。また,Cは,上肢の拇指は根本から先端までしびれがあるとともに痛みがあり,他の指にも痛みがあり,下肢は触れられると激痛が走ると訴えていた。 Cは,同月18日に行われた回診において,しびれ感が大腿部にまで及んできた旨訴えた。そして,同人において,大腿部とふくらはぎに筋肉痛が認められ,膝蓋腱,上腕二頭筋,上腕三頭筋における腱反射がいずれも低下し,末梢神経障害が進行している状態にあった。 Cは,同月23日以降,しびれ感は持続するものの,筋肉痛は軽快し,ゆっくりとした膝立運動や上半身挙上ができるようになり,指を折ることも少しできるようになったが,同年4月に入ると,手足の感覚鈍麻や筋肉を握ったときの痛みが強まった。 Cは,同月6日以降,足の痛みが同年3月初旬ころの痛みにまで軽減し,時折強い痛みを訴えることはあったものの,全体的に大きな悪化はなかった。 Cは,同月18日以降,痛み及び筋力に若干の改善はあったものの,なお筋力低下は著明であり,同月25日ころ,仰向けの姿勢で足をまっすぐに伸ばせない等の関節の拘縮が起こりつつあった。そこで,担当医師は,Cにとって血漿交換治療が適切であると判断し,同人をI病院に転院させることとし,Cは,同月28日,同病院に転院した。この当時のCの状態は,運動機能は徒手筋力テストでは2プラスないし3プラスであり,筋肉の萎縮が著明で,特に下肢の筋肉の萎縮が著明であり,腱反射は低下し,手足が適切に動かせないため運動失調につ した。この当時のCの状態は,運動機能は徒手筋力テストでは2プラスないし3プラスであり,筋肉の萎縮が著明で,特に下肢の筋肉の萎縮が著明であり,腱反射は低下し,手足が適切に動かせないため運動失調についての評価は不能であり,触覚は下肢では著明に低下し,上肢では低下しており,知覚異常,知覚過敏が認められ,把握痛のため膝の関節を伸ばすことができないというものであった。 (オ) Cは,昭和62年4月28日のI病院転院当時,首,肩,腕は動かせたものの,手足は全く動かせない状態であった。深部腱反射は低下から消失しており,知覚系では,肩及び大腿部付け根以遠において遠位優位の表在覚の低下,振動覚の低下があり,手首及び膝以遠において位置覚の著明な低下が認められた。 担当医師は,Cの症状が,発症以来入院治療が続けられ相当の期間を経ているにもかかわらず,明らかな進行も改善もない比較的固定した状態であったことから,リハビリを中心とした治療を行うこととし,同年5月1日からリハビリ治療が開始された。 Cは,同年6月中旬ころ,肘の動きは改善され,動き及び筋力は以前程度に戻ったが,手先は動かず,下肢の筋力には変化がなく,手指や足趾のしびれがあると述べていた。担当医師は,同年6月下旬ころ,Cにリハビリ病院への転院を勧めるようになった。 Cの同年8月中旬ころの時点における状態は,軽度軽快し,車いすで1人で移動できるようになったが,車いすに1人で移動することはできず,ボール状の道具の付いたスプーンを手でつかんで食事をすることはかろうじてでき,排尿便の後始末はできず,筋力は三角筋,腸腰筋でほぼ5,肘及び膝屈伸が2ないし3,手首,手指が1ないし2,足首及び足趾が0であり,知覚については,手首以下,膝以下ですべての知覚について重度の障害が残っており,自発痛が軽減しただけであり,拘 筋でほぼ5,肘及び膝屈伸が2ないし3,手首,手指が1ないし2,足首及び足趾が0であり,知覚については,手首以下,膝以下ですべての知覚について重度の障害が残っており,自発痛が軽減しただけであり,拘縮傾向は見られなくなったというものであった。 (カ) Cは,昭和62年8月15日に和歌山赤十字病院に再転院し,同月25日から同年9月26日まで,同病院においてリハビリ治療を受け,同年10月15日から同年12月4日まで,Pリハビリテーションセンターに入院した。 Cの同センター退院当時の状態は,両松葉杖に両下肢装具装着で室内移動はできるものの,松葉杖,下肢装具なしでは移動が困難であり,着替えをする際ファスナーをつかむことができず,片手で布を固定しながら引っぱることが困難であり,靴下を足先に引っかけることができず他人に履かせてもらう必要があるというものであった。 (キ) Cは,Pリハビリテーションセンター退院後も同センターに通院し,リハビリ治療を受けた。Cは,同センター入院当初において,右10キログラム,左8キログラムであった握力が,昭和63年8月には右23キログラム,左18キログラムに回復し,杖なしで起立することもできるようになり,平成3年ころには,しびれ感は持続するものの,日常生活にあまり支障がない程度にまで回復し,下肢装具なしで歩行も可能となっていた。 (ク) 九州大学医学部衛生学講座Qは,平成10年8月27日及び同年9月15日,Cを診察し,また,CのH病院,和歌山赤十字病院,I病院,Pリハビリテーションセンターにおける同人の診療録,検査結果等を参照し,同年12月18日付けで,同人が昭和62年2月15日以降砒素中毒に罹患しているとの意見書を作成し,和歌山地方検察庁検察官に提出した。 カ被告Aは,昭和62年4月1日,C名義の本件第1預金口座を開設 同年12月18日付けで,同人が昭和62年2月15日以降砒素中毒に罹患しているとの意見書を作成し,和歌山地方検察庁検察官に提出した。 カ被告Aは,昭和62年4月1日,C名義の本件第1預金口座を開設した。被告Aは,その後も本件第1預金口座を管理していた。 被告Aは,原告(和歌山支社河西支部長R取扱い)に対し,同年5月1日,C名義の入院給付金請求書を提出し,原告は,同月8日,本件第1預金口座に,同年3月4日から同年4月28日まで56日分の入院保険金28万円を本件第1預金口座に振り込んだ。 被告Aは,原告(和歌山支社)に対し,同年7月4日,C名義の入院給付金請求書を提出し,原告は,同月9日,64日分の入院保険金32万円を本件第1預金口座に振り込んだ。 キ(ア) 被告両名は,原告に対し,昭和62年5月30日ころ,Cが身体障害者福祉法別表に掲げる身体障害1級に該当する旨記載された和歌山赤十字病院医師S及びT作成の同月28日付け身体障害診断書・意見書を提出するとともに本件第1保険にかかる高度障害保険金の請求の申し出をし,同年6月11日ころ,I病院医師U作成の同年5月21日付け障害診断書を提出した。U作成の前記障害診断書には,Cの回復可能性について,「皆無ではないが乏しい。現在は徐々に軽度の改善を示している。」との記載があった。 原告が,株式会社Vリサーチセンター(以下「Vリサーチセンター」という。)に対し,Cへの高度障害保険金支払の可否を判断するための必要事項について確認依頼したところ,Vリサーチセンターは,原告に対し,同年6月15日,Cの状態につき,身体障害の等級は2級の判断であり,回復可能性については現段階では判断できず,症状固定日は不明であるとのUからの回答を得たとの確認報告書を提出した。原告は,この確認報告書の提出を受け,同月19日,現 体障害の等級は2級の判断であり,回復可能性については現段階では判断できず,症状固定日は不明であるとのUからの回答を得たとの確認報告書を提出した。原告は,この確認報告書の提出を受け,同月19日,現時点ではCの症状は高度障害保険金の支払対象外であるが,3か月後においても同人の症状に改善がない場合には,再度障害診断書を提出してもらった上で判断することとした。 (イ) 被告Bは,原告から現時点ではCに対し高度障害保険金を支払うことができないとの連絡を受けると,当時I病院に入院していたCを訪問し,診断書に「現在は徐々に軽度の改善を示している。」と書かれていたことから高度障害保険金の支払がされなかった旨を怒鳴るように話し,その後も,Cに対し,電話等で,頻繁に,I病院では無理なので,和歌山赤十字病院のTに診断書を書いてもらうよう要求した。 被告Bは,Cが和歌山赤十字病院に再度転院した同年8月15日以降,同人に対し,①医師に手足が動かないと言い,医師や看護師が来たら精神的に落ち込んでいる振りをし,同情を引いて診断書を書いてもらえ,②高度障害保険金は出るか出ないかのいずれかしかないから,I病院の支払や今後の生活のために金が必要であるなら,言うとおりに従え,等と申し向けた。この当時,Cは,前記オ(オ)認定のとおり,ボール状の道具を取り付けたスプーンでどうにか食事ができる状態であり,車いすに移動はできないが,車いすに座っていれば車いすによって少し移動ができる状態であったにもかかわらず,体を思うように動かせない状態で,また,経済的にも苦しく,将来について不安が大きかったことから,被告Bの指示に従い,Tに対し,手足が動かない旨告げた。Tは,Cの症状につき,四肢麻痺は不変であり,食物の摂取は介助がなければ不可能,排便排尿は自力では不可能,衣服着脱,起居,歩行 かったことから,被告Bの指示に従い,Tに対し,手足が動かない旨告げた。Tは,Cの症状につき,四肢麻痺は不変であり,食物の摂取は介助がなければ不可能,排便排尿は自力では不可能,衣服着脱,起居,歩行,入浴については,寝返り,ベッド上の小移動のみ自力で可能,四肢に遠位部優位の知覚障害があり,日常生活上はほぼ全介助の状態であり,現在症状の改善傾向が認められず,症状は固定したと認められ,終身ほぼ全介助を要すると記載した同月22日付け障害診断書を作成した。 被告らは,原告に対し,T作成の上記同月22日付け障害診断書を送付し,原告は,同診断書から,Cの症状が同月22日には高度障害状態で症状固定したと認定した。 (ウ) 被告Aは,原告に対し,同年9月3日,C名義(保証人はE名義)の保険金支払請求書(高度障害)を提出し,原告は,同月5日,高度障害保険金3000万円,配当金1万4150円及び同年8月分の保険料返還金2万565円(合計3003万4715円)を本件第1預金口座に出金し,同月8日ころ,前記金員が本件第1預金口座に振り込まれた。 ク Cは,本件外保険に基づく入院給付金として,L生命から60万円を受領し,昭和62年8月22日付けのT作成の障害診断書をL生命に送付し,同社から本件外保険の高度障害特約による高度障害給付金2000万円を受領した。 ケ Cは,被告Bから毎月の給与として月額約14万円を受領していたところ,昭和62年9月中旬ころ,同被告から,①CはB工芸を退職し,今後同被告に一切の金銭的な要求をしない,②同被告は,Cに対し,退職金として税込みで100万円を支払う旨の念書に署名するよう求められ,これを了承し,Eがこれに署名し,Cは,同被告から,100万円から税金相当額を差し引いた額の現金の給付を受けた。 (2) 前記(1)オ(オ),(キ),キ( 万円を支払う旨の念書に署名するよう求められ,これを了承し,Eがこれに署名し,Cは,同被告から,100万円から税金相当額を差し引いた額の現金の給付を受けた。 (2) 前記(1)オ(オ),(キ),キ(イ)認定のとおり,Cは,昭和62年8月中旬ころの時点で,ボール状の道具を取り付けたスプーンを利用することにより自力で食事を摂ることができ,車いすに座っている状態であれば,少しは車いすを動かして移動することができたのであるから,高度障害状態(前提事実(2)ケ)にあるということはできなかったし,同人の症状は当時改善傾向にあり,現にその後も改善傾向にあったにもかかわらず,Cは,被告Bの指示に従い,和歌山赤十字病院のTに対し,手足が動かない旨告げて,同人にCの症状は終身ほぼ全介助を要する状態である旨の内容虚偽の障害診断書を作成させ,これを原告に提出して,原告にCの症状が終身全介助を要する高度障害状態にあると誤信させ,本来支払義務のない高度障害保険金,配当金及び同年8月分の保険料返還金(以下「高度障害保険金等」という。)の合計3003万4715円を支出させたのであり,このような被告B及びCの行為が,原告に対する詐欺の共同不法行為に該当することは明らかである。 そして,前記(1)ウ,エ,カ,キ(ア),(ウ)認定のとおり,Cが本件第1保険に加入する際及び同人が本件第1保険の保険契約者及び死亡保険金受取人を変更するに当たっては,被告両名が主導しCが被告両名に従って申込書等に署名をしていたこと,Cは本件第1保険にかかる保険料を支払っていなかったこと,昭和62年5月30日ころに本件第1保険にかかる高度障害保険金の請求の申し出をし,原告がCに対する高度障害保険金の支給をしないこととした後の同年9月3日に,T作成の昭和62年8月22日付け障害診断書を原告に送付したの 日ころに本件第1保険にかかる高度障害保険金の請求の申し出をし,原告がCに対する高度障害保険金の支給をしないこととした後の同年9月3日に,T作成の昭和62年8月22日付け障害診断書を原告に送付したのは被告両名であること,本件第1保険にかかる入院給付金,高度障害保険金等が振り込まれた本件第1預金口座を開設及び管理し,原告に対し本件第1保険にかかる入院給付金及び高度障害保険金の請求をしたのは被告Aであることに照らすと,被告Aが,被告B及びCの前記詐欺の共同不法行為について全く知らなかったとは到底考えられず,被告Aも被告B及びCの原告に対する前記詐欺の共同不法行為に加担していたものと推認される。 以上により,被告らは,原告に対し,共同不法行為による損害賠償義務に基づき,連帯して上記高度障害保険金等合計3003万4715円の支払義務を負うべきである。 (3)ア被告両名は,Cと共同して原告から高度障害保険金等を詐取したことを否認する。そして,証拠(甲57,59)には,被告BがCに対して症状を偽るよう指示したことはないとの被告Bの供述記載がある。 しかし,被告Bの前記供述記載には,Cが本件第1保険に加入する経緯についてあいまいな供述に終始する部分や本件第1保険の保険料の負担について変遷している部分があり,全体としても採用することができない。そして,他に前記認定を覆すに足りる証拠はない。 イ被告Aは,本件第1保険にかかる高度障害保険金の受領に当たっては,Cが相当程度関与しており,被告らのみが全額につき損害賠償責任を負う理由がない旨主張する。そして,前記(1)ク認定のとおり,Cは,Tの作成した障害診断書をL生命に提出して,同社から高度障害保険金2000万円の支払を受けている。 しかしながら,共同不法行為に基づく損害賠償義務(民法719条1項前段)は )ク認定のとおり,Cは,Tの作成した障害診断書をL生命に提出して,同社から高度障害保険金2000万円の支払を受けている。 しかしながら,共同不法行為に基づく損害賠償義務(民法719条1項前段)は,いわゆる不真正連帯債務と解されるから,原則として債務者らは,全額についての賠償義務を負うものである。また仮に,被告Aの主張を,信義則による損害賠償責任の限定ないし軽減を求める趣旨であると解しても,前記認定のとおり,Cの本件第1保険への加入並びに死亡保険金受取人及び契約者の変更手続が被告両名の主導で行われたこと,Cの症状の偽装は被告Bの指示で行われたこと,保険金の請求や保険金が振り込まれた本件第1預金口座の管理は被告Aが行っており,Cは何ら関与していないこと,本件第1保険にかかる高度障害保険金は,その大部分を被告両名が費消し,Cには高々100万円弱の退職金として被告Bから支払われたのみであることに照らすと,たとえ,CがL生命から高度障害保険金を受領していたとしても,信義則上,被告両名の損害賠償責任を限定することを認めることは到底できないというべきである。したがって,被告Aの主張は採用することができない。 (4) 以上の次第で,被告両名は,原告に対し,本件第1保険に基づく高度障害保険金等合計3003万4715円を詐取した共同不法行為による損害賠償義務に基づき,上記3003万4715円及びこれに対する原告が高度障害保険金の出金手続をし原告において損害が発生した日の後である昭和62年9月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある。 2 争点(2)(本件第2保険に関する保険金請求の詐欺行為該当性等)について(1) 前提事実(4),(5)のほか,証拠(甲15,16の1・2,17の1ないし3,27,47ないし52,5 務がある。 2 争点(2)(本件第2保険に関する保険金請求の詐欺行為該当性等)について(1) 前提事実(4),(5)のほか,証拠(甲15,16の1・2,17の1ないし3,27,47ないし52,54ないし57,59,60)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア被告Aは,Rに対し,昭和61年秋ころ,被告Bを被保険者として死亡保険金1億円の生命保険に加入したいと申し入れた。Rは,Mが原告の優秀な外交員であり,Mに内密にBを被保険者とする生命保険契約を締結すると,後日Mとの間でトラブルになるのを嫌い,しばらく放置していたが,被告Aから再度被告Bを被保険者とする生命保険契約締結の申入れがあり,Mとの関係を気にする必要はない旨告げられたことから,新人の保険外交員であったN及びWの2名に取り扱わせ,被保険者B,普通死亡保険金額1億円,災害死亡保険金額2億円の生命保険契約書に被告Bの署名をもらい,申込手続をした。 ところが,原告本社は,普通死亡保険金額を5000万円とすべきであると判断したことから,R及びNにおいて,被告両名に意思確認をした上,最終的に,同年11月12日,普通死亡保険金額5000万円,災害死亡保険金額6000万円とする本件第2保険契約を締結した。 本件第2保険は,昭和62年6月1日失効したが,同年10月12日,その効力が復活した。 イ(ア) 被告Bは,昭和63年3月14日,3日前に嘔吐,頭痛,鼻づまりがあり,今も吐き気がするという主訴で,O病院を受診した。担当医師は,被告Bの症状を急性胃腸炎と考え,同被告に点滴を投与し,制吐剤等の胃腸薬を処方し,被告Bは帰宅した。 被告Bは,同月15日,16日と同病院に通院し,同月16日には症状が軽減した。しかし,被告Bは,同月26日,体がだるくて起きあがれない等と訴え,同病院を受診 等の胃腸薬を処方し,被告Bは帰宅した。 被告Bは,同月15日,16日と同病院に通院し,同月16日には症状が軽減した。しかし,被告Bは,同月26日,体がだるくて起きあがれない等と訴え,同病院を受診し,胃腸薬等の処方を受けた。被告Bは,嘔吐,腹痛,咳の主訴で,同病院から,同月28日には整腸剤,抗生物質等の投薬を受け,同月29日には胃腸薬等の点滴投与を受けるとともに,胃薬の処方を受けた。 (イ) 被告Bは,昭和63年4月1日夜,吐き気,嘔吐,腹痛等の主訴で,J病院に入院した。 被告Bは,同月5日には,2日ないし4日前から両手や両下肢にしびれ感があり,両下肢は力が入りにくく,立つとふらつく等と,同月7日には,4日前より手がしびれ,歩くとふらつくと,同月8日には,下肢に力が入りにくく,手先がしびれる等と訴えた。同日行われた検査では,膝蓋腱反射の低下及び下肢屈筋の筋力の低下が認められたことから,被告Bは,同月10日,和歌山赤十字病院整形外科担当医師の診察を受けたところ,上肢には両手関節より末梢,下肢には両足関節より末梢に手袋靴下状の知覚障害が認められたが,上肢下肢の筋力は正常であり,ギラン・バレー症候群の疑いがあるとされた。 被告Bは,同月14日,脳神経科の専門医の診察を受けたところ,頭部の神経について病的変化は認められなかったが,自分の指で自分の鼻を指すことができず,手袋靴下状の知覚鈍麻,知覚異常が認められ,握力は右が38キログラム,左が37キログラムであり,片足起立は右足ではできず,左足では可能ながら不安定であった。 被告Bは,同月18日,看護師に対し,両手両足のしびれが強くなってきており,痛みがあり,歩行するのも困難で,段差のあるところでは転倒しそうになる旨訴えた。 被告Bは,同月28日,担当医師に対し,手のしびれにより,ボタンをはめに 対し,両手両足のしびれが強くなってきており,痛みがあり,歩行するのも困難で,段差のあるところでは転倒しそうになる旨訴えた。 被告Bは,同月28日,担当医師に対し,手のしびれにより,ボタンをはめにくくなり,箸を落としたり,薬の袋を手で開披することができない旨訴えた。 被告Bは,同年5月2日ころ,中等度の手足のしびれがあり,ベッドから降りるのが大変である等と述べていたが,理学療法士がリハビリが可能であるかどうかを検査したところ,肩の僧帽筋は正常,三角筋は正常よりやや落ちる程度,上腕二頭筋及び上腕三頭筋は良好,橈側手根屈筋群及び橈側手根伸筋群は正常よりやや落ちる程度,握力は右が20キログラム,左が21キログラムであり,上肢の徒手筋力テスト中,上腕内側から前腕全面手掌にかけ力を入れるとしびれ,激痛を感じ脱力につながっていると思料された。下肢の徒手筋力テストは,痛みが激しいためできなかった。車いすからベッドへの移動は,足底のしびれや下肢全体のしびれのため立位がとれず,平行移動でなんとか可能な程度であった。 被告Bは,同月10日,脳神経科の専門医の診察を受けたところ,握力は右が5キログラム,左が3キログラム,歩行不能,感覚系は両手とも拇指示指感覚過敏,前腕部及び膝下部知覚減退,足裏では刺激で電気が当たったような痛み,位置覚は両手足ともなし,徒手筋力テストは,左肩2,右肩3,左上腕二頭筋2,右上腕二頭筋3,上腕三頭筋,大腿四頭筋,腓腹筋,前脛骨筋及び足伸筋は左右いずれも2であった。 (ウ) 被告Bは,昭和63年5月19日,医大病院に転院し,同年7月21日,自らの希望で,医大病院を退院し,再度J病院に入院することとなった。 (エ) 被告Bは,昭和63年7月21日にJ病院に再度転院した際,四肢の痛みやしびれを訴えていた。 被告Bは,同月25日,理学療法 自らの希望で,医大病院を退院し,再度J病院に入院することとなった。 (エ) 被告Bは,昭和63年7月21日にJ病院に再度転院した際,四肢の痛みやしびれを訴えていた。 被告Bは,同月25日,理学療法士の検査を受けたところ,同被告の状態は,四肢の随意運動はできなかったが,頸部と体幹部の筋肉に異常はなく,徒手筋力テストの結果からみると座位が取れるとは考え難いものの一応座位を取ることができ,関節可動域の制限はなく,運動痛はあり,筋萎縮が全般的に認められるものの顕著ではないというものであった。 被告Bは,同病院においてリハビリを継続していたが,同年8月1日のリハビリ中に理学療法士とトラブルになり,リハビリを拒否し,その後もリハビリをせず,希望により,同年9月23日退院した。 同病院J医師は,被告Bの症状について,手指,足趾及び四肢関節の自動運動は全く不可能であり,上下肢とも完全弛緩性麻痺の状態で,起座・起立不能で全面介助を要する状態にあり,回復の可能性はない,症状固定時期は同年7月21日ころであると記載した同年9月20日付け障害診断書を作成し,被告らに交付した。 ウ被告らは,原告に対し,昭和63年9月22日ころ,J作成の同月20日付け障害診断書を提出するとともに,本件第2保険に基づく高度障害保険金の請求を申し出た。原告の調査員は,同年10月8日,被告Aと面接し,同被告から,被告Bにずっと付き添って介護してきた,被告Bの状態は,全くの寝たきりで寝返りをうつことができず,食事をスプーンで食べさせている状況で,入浴にも介助が必要である,これ以上回復の見込みはないといわれている等の回答を得た。また,原告の調査員は,同月13日,Jと面接し,同人から,被告Bは,回復の可能性は現在の医学では望みがないとの回答を得た。原告の調査員は,被告Bが,食事は介助者が ないといわれている等の回答を得た。また,原告の調査員は,同月13日,Jと面接し,同人から,被告Bは,回復の可能性は現在の医学では望みがないとの回答を得た。原告の調査員は,被告Bが,食事は介助者がスプーンで食べさせないと自力では摂取できず,大小便とも介助者が便座を使って排泄させており自力では不可能であり,後始末も自力では不可能であり,就寝時にはおしめを使用しており,日常生活動作では寝たきりであり,寝返りも自力では不可能であり,同被告が終身常時要介護の状態にあるものと判断し,その旨を被告らに伝えた。 被告Aは,原告に対し,同年11月13日,請求者被告B名義,保証人被告A名義の高度障害保険金請求書を提出し,原告は,同月17日付けで同請求書を受け付け,高度障害保険金5000万円,保険料返還金23万1103円,積立配当金2万8300円及び保険料立替利息戻し893円の合計5026万0296円から保険料立替金5万9706円を控除した5020万0590円を支払うことと決定し,同月26日,仮差押えを受けた金額を控除した2156万9417円を本件第2預金口座に振り込み,仮差押命令申立ての取下げがあったことから,平成元年6月6日,残額(前記仮差押債権額に相当)の2863万1173円を同口座に振り込んだ。 被告Bは,昭和63年10月21日,L生命から高度障害保険金等1億0014万8100円の支給を受け,同月11日,X生命保険相互会社から高度障害保険金4977万4240円の支給を受けた。 エ被告Bは,昭和63年11月4日,被告Aを同行して,失効した運転免許を復活させる手続をとった。この際,首,両腕,両手,両膝の機能確認を含む適性試験が行われ,被告Bは,これに合格した。 オ(ア) 被告Bは,Y1に対し,同被告が昭和63年に発症した病変の後遺症によって保険金を取 る手続をとった。この際,首,両腕,両手,両膝の機能確認を含む適性試験が行われ,被告Bは,これに合格した。 オ(ア) 被告Bは,Y1に対し,同被告が昭和63年に発症した病変の後遺症によって保険金を取得した際,動けないふりをしていた旨話した。 (イ) 被告Bは,Y2に対し,①平成5年初めころ,同被告が保険金総額1億円を支給されたこと,②同被告は体が少ししびれるということで入院し,検査の際,釘状のもので知覚の検査をするところ,知覚があるのにないふりをして痛かった,③病院の屋上にいた時に鳩に足をつつかれたが,近くに看護師がいたため痛みを我慢した旨話した。 (ウ) 被告Bは,Y3に対し,平成4年ころ,①病院に入院している時に手足が動くのに動かないと言って,保険金を1億円もらった,②医師が針状のもので押すので痛かったが,痛くないと言い続けた,③看護師に屋上まで連れて行ってもらった時,鳩に足をつつかれた,旨話した。 (2) 前記(1)オ認定の事実によれば,被告Bは,昭和63年9月20日当時,体を動かすことができたと認められる。しかしながら,前記(1)イ(エ),ウ認定のとおり,被告Bは,J病院に入院していた同年7月21日から同年9月23日までの間,両手足が全く動かないふりをし,Jをして同被告は全身麻痺の状態にあり,その症状には改善がみられないと誤信させ,同被告が終身常時要介護である旨の障害診断書を作成させてその交付を受け,これを原告に提出するとともに,本件第2保険契約に基づく高度障害保険金の支払を求める申し出をし,被告Aが,原告の調査員の調査において,同調査員に対し,被告Bの状態について,被告Bの状態は,全くの寝たきりで寝返りをうつことができず,食事をスプーンで食べさせている状況で,入浴にも介助が必要である,これ以上回復の見込みはないといわれている旨申 対し,被告Bの状態について,被告Bの状態は,全くの寝たきりで寝返りをうつことができず,食事をスプーンで食べさせている状況で,入浴にも介助が必要である,これ以上回復の見込みはないといわれている旨申し向けている。さらに,前記(1)ウ,エ認定のとおり,被告Bは,同年11月4日には首,両腕,両手,両膝の機能確認を含む適性試験に合格して運転免許の効力を復活させ,その手続に同行した被告Aが,同月13日に高度障害保険金の請求をしている。以上の各事実に照らすと,被告両名が,共謀の上,原告に対し,被告Bが終身常時要介護の状態ではないにもかかわらず,そうであるかのように装い,高度障害保険金を請求し,原告をして,前記請求に応じて,被告Bに対し,高度障害保険金その他合計5020万0590円を平成元年6月6日までに支給させ,もってこれを詐取したと認められる。 したがって,被告両名は,原告に対し,共同不法行為に基づく損害賠償義務として,前記5020万0590円のうち,原告が請求する4256万8107円の支払義務を負うべきである。 (3)ア被告らは,原告から高度障害保険金を詐取したとの事実を否認し,被告Bの証言記載中(甲57,59,60)中にはそれに沿う部分がある。 しかしながら,前記(1)ウないしオ認定のとおり,被告Bが,複数の第三者に対し,本件第2保険に基づく高度障害保険金の取得に当たり体が動かないふりをしていた旨を自認していること,被告Bが運転免許の効力を復活させた後に,被告Aが本件第2保険に基づく高度障害保険金の支払請求をしていることに照らすと,被告Bの前記証言記載は到底採用できず,他に,前記認定を覆すに足りる証拠はない。 イ被告Aは,本件第2保険に関する保険金請求は,被告Bの主導で行われたものであり,被告Aが全額について損害賠償責任を負う理由はない旨主 載は到底採用できず,他に,前記認定を覆すに足りる証拠はない。 イ被告Aは,本件第2保険に関する保険金請求は,被告Bの主導で行われたものであり,被告Aが全額について損害賠償責任を負う理由はない旨主張する。 しかし,前記1(3)説示のとおり,共同不法行為に基づく損害賠償義務は,不真正連帯債務と解され,債務者らは,原則として,全額についての賠償義務を負うものである。また仮に,被告Aの主張が,信義則による損害賠償責任の限定ないし軽減を求める趣旨であると解しても,前記認定のとおり,原告の調査員との面接において,被告Bの状態について常時介護が必要である旨の虚偽の回答をしていること,被告Bが運転免許の効力を復活させた後,その手続に同行していた被告Aが,そのことを認識しつつ,原告に対し,本件第2保険に基づく高度障害保険金の支払請求をしていることに照らすと,被告Aの主張は到底採用することができない。 (4) 以上の次第で,被告両名は,原告に対し,本件第2保険に基づく高度障害保険金その他合計5020万0590円を詐取した共同不法行為による損害賠償義務に基づき,上記5020万0590円のうち原告請求にかかる4256万8107円及びこれに対する原告が上記5020万0590円全額を本件第2預金口座に振り込み原告において損害が発生した日の後である平成元年6月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある。 3 結論以上により,原告の被告らに対する本件請求は全部理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 和歌山地方裁判所第二民事部裁判長裁判官礒尾正裁判官秋本昌彦裁判官成田晋司 のとおり判決する。 主文 和歌山地方裁判所第二民事部裁判長裁判官礒尾正裁判官秋本昌彦裁判官成田晋司
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