平成13(行ウ)6 交付金決定処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年1月20日 神戸地方裁判所
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判決文本文28,285 文字)

主文 1 交付金決定処分取消請求について(1) 原告の主位的請求の訴えを却下する。 (2) 原告の予備的請求を棄却する。 2 交付金請求について原告の交付金請求の訴えを却下する。 3 訴訟費用の負担訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(請求の趣旨)(1) 交付金決定処分取消請求ア主位的請求被告が平成12年12月18日付けで原告に対してした交付金決定処分のうち,5091万8890円を超え25億3856万3458円に達するまでの金額についての却下処分を取り消す。 イ予備的請求被告が平成12年12月18日付けで原告に対してした交付金決定処分のうち,5091万8890円を超え5億4610万9984円に達するまでの金額についての却下処分を取り消す。 (2) 交付金請求被告は,原告に対し,金25億3856万3458円,及びこれに対する平成13年3月27日から完済まで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告(請求の趣旨に対する答弁)(1) 本案前の答弁原告の訴えをいずれも却下する。 (2) 本案の答弁原告の請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要 1 事案の骨子(1) 平成12年8月23日付け交付金請求原告は,平成12年8月23日,被告に対し,本州四国連絡橋の建設に伴う一般旅客定期航路事業等に関する特別措置法(以下「法」という。)11条1号交付金(以下「1号交付金」という。)として5億4610万9984円,法11条3号交付金(以下「3号交付金」という。)として25億5865万4825円を請求した(甲1,以下「平成12年8月23日 号交付金(以下「1号交付金」という。)として5億4610万9984円,法11条3号交付金(以下「3号交付金」という。)として25億5865万4825円を請求した(甲1,以下「平成12年8月23日付け交付金請求」という。)。 (2) 本件交付金決定これに対し,被告は,平成12年12月18日,1号交付金として5091万8890円のみを認め,3号交付金は1円も認めない旨の決定(以下「本件交付金決定」という。)をした(甲2)。 (3) 本訴請求本件は,原告が,1号交付金として25億3856万3458円を請求することができ,本件交付金決定処分は違法であると主張して,被告に対し,次の各裁判を求めた事案である。 ア本件交付金決定処分取消請求(ア) 主位的請求本件交付金決定処分のうち,5091万8890円を超え25億3856万3458円(原告が1号交付金の請求をできる金額)に達するまでの金額についての却下処分を取り消す。 (イ) 予備的請求本件交付金決定処分のうち,5091万8890円を超え5億4610万9984円(原告が平成12年8月23日付け交付金請求で1号交付金として請求した金額)に達するまでの金額についての却下処分を取り消す。 イ本件交付金請求被告は,原告に対し,1号交付金25億3856万3458円,及びこれに対する平成13年3月27日(訴状送達の日の翌日)から完済まで年5分の割合による遅延損害金を支払え。 2 前提事実(括弧に証拠の摘示のない事実は,争いのない事実である。)(1) 当事者ア原告は,一般自動車輸送事業,一般旅客の海上輸送及び海上運送業,倉庫業等を目的とする株式会社であり,本州四国連絡橋(明石・鳴門ルー 事実は,争いのない事実である。)(1) 当事者ア原告は,一般自動車輸送事業,一般旅客の海上輸送及び海上運送業,倉庫業等を目的とする株式会社であり,本州四国連絡橋(明石・鳴門ルート)の開通により,A・B間の一般旅客定期航路事業を廃止した。 イ被告は,本州と四国の連絡橋に係る有料の道路及び鉄道の建設及び管理を総合的かつ効率的に行うことを目的とし,本州四国連絡橋公団法1,2条に基づき設立された特殊法人である。 (2) A旧フェリー基地による営業原告は,昭和53年から,兵庫県A市a浜1丁目2番地をA側フェリー基地とし,兵庫県B郡B町b島を淡路島側フェリー基地として,両基地間を往復する,A・B間の一般旅客定期航路事業(カーフェリーによる海上運送事業)を営んでいた。 (3) A旧フェリー基地の移転計画昭和63年5月ころになると,港内の原告のフェリー運航基準経路とパージ船(約100隻)の停泊位置が競合するようになった。また,同港に停泊しているプレジャーボート1200隻のうちの小型ヨットや浜を利用したウインドサーフィンの利用範囲と,原告のフェリー運航基準経路とが競合し,フェリーの円滑な運行に障害を来すようになってきた。さらに,フェリー乗り場に隣接して設置されている駐車場は規模が小さく,盆暮れや観光シーズンには,終日約2キロメートルの乗船待ち車両が道路にあふれ,一般車両の通行等の障害となっていた。 このような事態を解決するために,原告は,兵庫県A市a浜2丁目21-3番地外に接する兵庫県所有地先の公有水面を埋め立て,そこに従来のフェリー基地を移転させる計画を立て,平成元年7月10日,兵庫県知事(港湾管理者)に対し,公有水面埋立法2条1項に基づき公有水面埋立免許を出願し,同年12月5日,その 有水面を埋め立て,そこに従来のフェリー基地を移転させる計画を立て,平成元年7月10日,兵庫県知事(港湾管理者)に対し,公有水面埋立法2条1項に基づき公有水面埋立免許を出願し,同年12月5日,その免許を受けた(甲4,乙7,乙8)。 (4) A新フェリー基地建設工事の内容ア原告は,その後,公有水面埋立工事等を行い,平成4年3月末,その工事を完成させ,当該埋立の竣工認可を受け,免許条件により公共移管した土地を除き,埋立地の所有権を取得した。そして,原告は,埋立地及びそれに隣接する兵庫県所有の土地の払い下げを受け,従来のA側のフェリー基地をそこに移転し,A・B間の一般旅客定期航路事業のA側のフェリー基地として使用を始めた(甲3,乙7,8,9)。 イ原告が本件訴訟で交付金請求の対象としているのは,原告が,兵庫県知事から公有水面の埋立免許を得るにあたり,工事を行うことが条件となっていた(甲4)次の各工事費用について,税務上繰延資産として処理されているものである。以下,次の①ないし⑩の工事を「本件各工事」又は工事①ないし⑩」といい,次の①ないし⑩の工事により設置された施設等を「本件各施設」又は「施設①ないし⑩」という。 ① -2.2物揚場築造工事(別紙図面(1)の赤色部分)-別表(1)の①・F欄の金額② 防潮堤用地工事(別紙図面(1)の青色部分)-別表(1)の②・F欄の金額③ 防潮護岸復旧工事(別紙図面(2)(3)の緑色部分)-別表(1)の③・F欄の金額④ -5.5岸壁防潮堤築造(別紙図面(1)の桃色部分)-別表(1)の④・F欄の金額⑤ 防潮ゲート設置工事(別紙 別表(1)の③・F欄の金額④ -5.5岸壁防潮堤築造(別紙図面(1)の桃色部分)-別表(1)の④・F欄の金額⑤ 防潮ゲート設置工事(別紙図面(1)の黄色部分)-別表(1)の⑤・F欄の金額⑥ 帰属植栽工事-別表(1)の⑥・F欄の金額⑦ 基地外付帯道路植栽工事-別表(1)の⑦・F欄の金額⑧ A.B護岸築造工事(別紙図面(1)(2)(3)の紫色部分)-別表(1)の⑧・F欄の金額⑨ 航路浚渫工事(別紙図面(3)の浚渫工部分)-別表(1)の⑨・F欄の金額⑩ 管理道路工事(別紙図面(1)の黄緑部分)-別表(1)の⑩・F欄の金額⑪ 合計-別表(1)の合計・F欄の金額(5) 兵庫県への無償移管と工事費用の繰延資産化原告は,平成4年4月11日,本件各施設等を兵庫県に贈与(無償移管)し,その工事費用総額43億1639万6631円(別表(1)の合計・A欄)について,税務上の繰延資産として処理し,原告の固定資産台帳に総額9億2832万0337円(別表(1)の合計・B欄)と圧縮記帳した(乙10の1)。 なお,本件各工事費用の内訳は,別表(1)の①ないし⑩・A欄記載のとおりであり,圧縮記帳後の内訳は,別表(1)の①ないし⑩・B欄記載のとおりである。 (6) A新フェリー基地の廃止平成10年4月5日に本州四国連絡橋(明石・鳴門ルート)が開通した。 それに伴い,原告は,同年9月1日,A・B間の一般旅客定期航路事業を廃止し,A新フェリー基地を廃止した(この廃止された日を,以下「実施日」という。)。 3 関係法令及びその内容(1) 関 た。 それに伴い,原告は,同年9月1日,A・B間の一般旅客定期航路事業を廃止し,A新フェリー基地を廃止した(この廃止された日を,以下「実施日」という。)。 3 関係法令及びその内容(1) 関連法令本州四国連絡橋の建設に伴う一般旅客定期航路事業等に関する特別措置法(法),本州四国連絡橋の建設に伴う一般旅客定期航路事業等に関する特別措置法施行令(以下「法施行令」という。),及び本州四国連絡橋公団が交付する一般旅客定期航路事業廃止等交付金に関する省令(以下「交付金省令」という。)が,本件交付金に関係する法令である。 (2) 交付金の請求及び交付手続等ア航路指定運輸大臣は,本州四国連絡橋の供用に伴い影響を受ける航路について,当該供用が開始される一般国道又は鉄道施設の区間ごとに,これに係る規模縮小等航路等を指定する(法4条1項)。 イ実施計画指定された規模縮小等航路等において一般旅客定期航路事業を営む者が,本州四国連絡橋の供用に伴い余儀なくされることとなる事業規模の縮小等を行おうとするときは,それぞれ当該事業について,その実施に関する計画(以下「実施計画」という。)を作成し,これを運輸大臣に提出して,その認定を受けることができる(法5条1項)。 ウ交付金の交付法5条1項によって認定を受けた者で,実施計画に従って事業規模の縮小等を行ったものに対し,一般旅客定期航路事業廃止等交付金を交付することができる(法10条)。 エ交付金の請求及び交付手続法10条の規定により交付金の交付を受けようとする者は,実施計画の認定を受けた日から起算して6月を経過するまでに,交付金省令で定めるところにより,被告に対し,交付の請求をしなければならない(法12条1項)。 交付金の交付を受けようとする者は,実施計画の認定を受けた日から起算して6月を経過するまでに,交付金省令で定めるところにより,被告に対し,交付の請求をしなければならない(法12条1項)。 被告は,特にやむを得ない理由があると認めるときは,交付金省令で定めるところにより,前項の請求の期限を延期することができる(法12条2項)。 被告は,法12条1項の請求があったときは,これを審査し,交付金の額の算定の基礎となる事実があったことを確認した上,その交付すべき交付金額を決定し,これを当該交付の請求をした者に通知しなければならない(法12条3項)。 (3) 交付金の額ア法11条法10条の規定による交付金の額は,実施計画に従って行われる事業規模の縮小等に伴い必要となる次の各号に掲げる費用に相当する額として,政令で定めるところにより算定した金額の合計額とする(法11条柱書)。 (ア) 法11条1号船舶その他の事業の用に供する資産で政令で定めるものの減価をうめるために要する費用(以下「1号交付金」という。)。 (イ) 法11条3号事業の円滑な転換又は残存する事業の適正な経営を計るために必要な費用(以下「3号交付金」という)。 イ 1号交付金の対象資産(ア) 法施行令3条法11条1号の政令で定める資産は,交付金の交付を受けようとする者が,事業規模の縮小等の際に当該事業の用に供しており(供用要件の充足),かつ,当該事業規模の縮小等により不要となる(不要要件の充足)船舶,建物,構築物その他の固定資産で交付金省令で定めるもの(以下「特定事業用資産」という。)とする。 (イ) 交付金省令1条a 法施行令3条の交付金省令で定める固定資産は 充足)船舶,建物,構築物その他の固定資産で交付金省令で定めるもの(以下「特定事業用資産」という。)とする。 (イ) 交付金省令1条a 法施行令3条の交付金省令で定める固定資産は,船舶,建物,構築物,車両,機械及び装置,工具,器具及び備品,建設仮勘定並びに無形固定資産とする。 b そして,被告の業務部長が,昭和58年5月23日付け・業業一第6号・一般旅客定期航路事業廃止等交付金交付事務の取扱いについて(通知)で,被告の各建設局長宛に,「岸壁,道路等の公共施設の設置等に要する費用の負担金等について,税務上繰延資産として処理されている場合は,無形固定資産として取り扱う。」旨を通知している(以下,同通知〔乙5〕を「業務部長通知」という。)。 ウ 1号交付金の算定基準(ア) 1号交付金の費用に相当する額は,特定事業用資産ごとに当該資産の価額から交付金省令で定めるところにより算定した当該資産の処分価額を控除した額を合計した金額とする(法施行令5条1項)。 (イ) 法施行令5条1項の特定事業用資産の価額は,一般旅客定期航路事業を営む者が法人である場合には,当該法人の事業規模の縮小等を行った日(実施日)の属する事業年度の前事業年度の末日(以下「基準日」という。)以前に取得した特定事業用資産については,当該特定事業用資産につき,基準日における帳簿価額から同日後事業規模の縮小等を行った日(実施日)までの期間に対応する償却額を控除した額とする(法施行令5条2項1号)。 エ 3号交付金について3号交付金は,次の(ア)ないし(イ)と(ウ)の額を合計した金額とする(法施行令7条1項1号及び2号)。 (ア) 指定規模縮小等航路につき事業を廃止した場合には,当該事業に係 3号交付金は,次の(ア)ないし(イ)と(ウ)の額を合計した金額とする(法施行令7条1項1号及び2号)。 (ア) 指定規模縮小等航路につき事業を廃止した場合には,当該事業に係る営業収益の年額から営業収益の年額を控除した額に2を乗じて得た額(イ) 指定規模縮小等航路につき事業の廃止以外の事業規模の縮小等を行った場合には,当該事業に係る営業収益の年額のうち,当該事業規模の縮小等を行った部分に対応する年額として,輸送能力,運航状況等を勘案して被告が定めるところにより算定した額に2を乗じて得た額(ウ) 転換後の事業又は残存する事業の用に供する資産の確保のために必要な費用の額のうち,事業規模の縮小等により不要となる資産をこれらの事業に転用するための改造に要した費用の額,及びその他の特に必要な費用の額として交付金省令で定める費用の額を合計した額 4 原告の交付金請求,被告の交付金決定,原告の本訴請求(1) 原告の平成12年8月23日付け交付金請求次の事実は,当事者間に争いがない。 ア原告の平成12年8月23日付け交付金請求原告は,実施計画の認定(法5条1項)を受け,請求期限の延期(法12条2項)を3度にわたり受けたうえ,その期限内である平成12年8月23日,被告に対し,1号交付金として5億4610万9984円,3号交付金として25億5865万4825円,以上合計31億0476万4809円の交付金請求をした(甲1)。 イ 1号交付金の請求額原告は,平成4年4月11日,本件各工事費用を税務上の繰延資産として圧縮記帳したが,それが,無形固定資産に該当するとして,圧縮記帳後の価額9億2832万0337円(別表(1)の合計・B欄)から,基準日(平成10年3月3 11日,本件各工事費用を税務上の繰延資産として圧縮記帳したが,それが,無形固定資産に該当するとして,圧縮記帳後の価額9億2832万0337円(別表(1)の合計・B欄)から,基準日(平成10年3月31日)までの期間の減価償却額を控除した5億7122万1067円(別表(1)の合計・C欄)から,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)までの減価償却額2511万1083円(別表(1)の合計・D欄)を控除した価額5億4610万9984円(別表(1)の合計・E欄)が1号交付金額になるとして,同額を請求した。 ウ 3号交付金の請求額原告は,圧縮記帳前の本件各工事費用総額43億1639万6631円(別表(2)の合計・A欄)について,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)における時価を31億0476万4809円(別表(2)の合計・G欄)とし,そこから,1号交付金額である5億4610万9984円(別表(2)の合計・E欄)を控除した25億5865万4825円(別表(2)の合計・H欄)が3号交付金額になるとして,同額を請求した。 (2) 被告の本件交付金決定被告は,原告の1号交付金請求のうち,税務上繰延資産化した工事⑨(航路浚渫工事)の工事費用について,基準日(平成10年3月31日)における簿価である5692万3108円(別表(1)の⑨・C欄)から,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)までの減価償却額600万4218円(別表(1)の⑨・D欄)を控除した5091万8890円(別表(1)の⑨・E欄)を限度として,これを認めた。 (3) 原告の本訴請求ア交付金決定処分取消請求(ア) 主位的請求原告は,本件各工事費用総額43億1639万6631円(別 ⑨・E欄)を限度として,これを認めた。 (3) 原告の本訴請求ア交付金決定処分取消請求(ア) 主位的請求原告は,本件各工事費用総額43億1639万6631円(別表(1)の合計・A欄)について,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)における簿価(圧縮記帳前)は25億3856万3458円(別表(1)の合計・F欄)が妥当であり,1号交付金として25億3856万3458円を請求できるとして,被告に対し,本件交付金決定処分につき,被告が認めた5091万8890円を超え25億3856万3458円に達するまでの金額について,却下処分を取り消すことを求めている。 (イ) 予備的請求原告は,本件各工事費用総額43億1639万6631円(別表(1)の合計・A欄)について,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)における簿価は25億3856万3458円(別表(1)の合計・F欄)が妥当であり,1号交付金として25億3856万3458円を請求できることを前提に,被告に対し,本件交付金決定処分につき,被告が認めた5091万8890円を超え,5億4610万9984円(原告が平成12年8月23日付け交付金請求中で1号交付金として請求した金額)に達するまでの金額について,却下処分を取り消すことを求めている。 イ交付金請求原告は,本件各工事費用総額43億1639万6631円(別表(1)の合計・A欄)について,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)における簿価は25億3856万3458円(別表(1)の合計・F欄)が妥当であり,1号交付金として25億3856万3458円を請求できるとして,被告に対し,25億3856万3458円の支払を求めている。 る簿価は25億3856万3458円(別表(1)の合計・F欄)が妥当であり,1号交付金として25億3856万3458円を請求できるとして,被告に対し,25億3856万3458円の支払を求めている。 5 争点本件の争点は,本件各訴えの適法性と,原告が被告に対し請求できる交付金額であり,具体的には次の6点である。 (1) 本件各訴えの適法性ア争点(1)本件交付金決定は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか。 イ争点(2)本件交付金決定に処分性が認められるとしても,本件交付金決定処分取消しの訴えは,取消しの対象となる行政処分が存在する適法な訴えか。 ウ争点(3)本件交付金請求の訴えは適法か。 (2) 原告が被告に対し請求できる交付金額ア争点(4)本件各施設等が法施行令3条所定の「事業供用要件」及び「不要要件」を充足するか。 イ争点(5)法施行令5条2項1号の帳簿価額の意義ウ争点(6)原告が被告に対し請求できる交付金額は幾らか。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)(本件交付金決定の処分性の有無)(1) 被告の主張交付金決定は,抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。その理由は,次のとおりである。 ア基本的視点交付金決定が行政処分に当たるか否かについては,その根拠法規の文言,趣旨,支給通知の規定の有無,不服申立てに関する規定の有無及び内容等を検討して判断すべきである。 イ法令の内容交付金の法的性格は,助成金ないし補助金であり,その交付をめぐる被告と事業者たる原告との法律関係は,元来,非権力的な関係である。そして,交付金の請求手 すべきである。 イ法令の内容交付金の法的性格は,助成金ないし補助金であり,その交付をめぐる被告と事業者たる原告との法律関係は,元来,非権力的な関係である。そして,交付金の請求手続及び交付手続等に関する法,法施行令及び交付金省令のいずれにも,交付金交付が行政処分であることを前提とした用語は使用されていないし,行政不服審査規定も存在しない。 ウ被告の地位交付金決定をする被告は特殊法人であり,一般的に行政庁としての地位を有するものではないから,例外的に行政庁としての立場で権力的な行政を行う場合には,その旨の明文の根拠規定が置かれるのが一般的であるところ,法,法施行令及び交付金省令のいずれにも,それをうかがわせる規定はない。 (2) 原告の主張本件交付金決定は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。その理由は,次のとおりである。 ア基本的視点交付金決定処分が行政処分と認められるか否かについては,本件交付金決定に関係する法令の解釈により分析するほかなく,法令の解釈に際しては,交付金決定の根拠規定の文言や趣旨,その通知や不服申立てに関する規定の有無,内容等を総合的に検討すべきである。 イ実施計画と交付金交付の関係交付金の交付を受けられる事業者は,実施計画に従って一般旅客定期航路事業の縮小等を行った者であり,この者に交付される交付金は,運輸大臣による実施計画の認可という行政処分によって発生した法的利益を具体的な形に実現するという意味があり,運輸大臣の認可と交付金の交付は一体的なものと捉えるべきであるから,交付金の交付は行政処分といえる。 ウ交付金規定の文言本州四国連絡橋公団一般旅客定期航路事業廃止等交付金規程(以下「交付金規程」という。)30条 体的なものと捉えるべきであるから,交付金の交付は行政処分といえる。 ウ交付金規定の文言本州四国連絡橋公団一般旅客定期航路事業廃止等交付金規程(以下「交付金規程」という。)30条,31条,35条等には,受理,審査,決定,通知及び交付決定の取消しという文言が使われており,特に,交付決定の取消し等の規定は,補助金適正化法17条及び18条と似た体裁となっていて,これらの規定は,交付金の交付が行政処分であることを念頭においているといえる。 エ救済方法事業者の交付金交付請求は,実施計画認定の日から6月を経過するまでにしなければならず(法12条1項),実施計画認定後短期間で交付金交付に関する法律関係を処理させようとしており,交付金交付にかかる紛争についても,同様に早期決着を図ることが望ましいから,出訴期間の制限のある行政訴訟において交付金に関する決定を争うことができるとすることが,立法者の意思に合致する。 2 争点(2)(取消しの対象となる行政処分の存否)(1) 被告の主張仮に本件交付金決定に処分性が認められるとしても,本件交付金決定処分取消しの訴えは,主位的請求,予備的請求ともに取消しの対象となる行政処分が存在しないので,不適法な訴えである。その理由は,次のとおりである。 ア原告が本件交付金決定処分取消訴訟で主張する1号交付金25億3856万3458円は,原告が平成12年8月23日付け交付金請求で主張した1号交付金5億4610万9984円,3号交付金25億5865万4825円(合計31億0476万4809円)の交付金請求とは全く別個の請求である。 イそれゆえ,被告は,原告が本訴で請求している1号交付金請求について,却下処分をしていないので,原告は,結局,存在していない却下処分 476万4809円)の交付金請求とは全く別個の請求である。 イそれゆえ,被告は,原告が本訴で請求している1号交付金請求について,却下処分をしていないので,原告は,結局,存在していない却下処分に対する取消しを求めていることとなり,本件交付金決定処分取消しの訴えは,主位的請求,予備的請求ともに不適法な訴えである。 (2) 原告の主張ア取消しの対象となる行政処分の存在(ア) 主位的請求a 原告は,平成12年8月23日付け交付金請求では,31億0476万4809円の交付金請求(すなわち,1個の交付金請求)をした。上記交付金請求書(甲1)の内訳欄に記載した1号交付金,3号交付金の記載は,上記交付金請求に当たり,交付金申請の理由として,あえていずれかの各号に振り分けたものに過ぎない。 これに対し,被告は,5091万8890円の限度で認め,その余を却下する旨の本件交付金決定(すなわち,1個の交付金決定)をした。 b 原告は,被告に対し,1号交付金として25億3856万3458円を請求することができる。 そこで,原告は,本件交付金決定処分取消訴訟を提訴し,本件交付金決定のうち,5091万8890円を超え25億3856万3458円に達するまでの金額についての却下処分の取り消しを求めているものである。 それゆえ,原告の主位的請求は,取消しの対象となる行政処分が存在し,適法な訴えである。 (イ) 予備的請求a 仮に,次のとおり,平成12年8月23日付け交付金請求は2個の請求であり,本件交付金決定は2個の決定であったと仮定しよう。 (a) 原告は,本件各工事費用の無形固定資産に係る交付金として とおり,平成12年8月23日付け交付金請求は2個の請求であり,本件交付金決定は2個の決定であったと仮定しよう。 (a) 原告は,本件各工事費用の無形固定資産に係る交付金として,1号交付金として5億4610万9984円を請求し,3号交付金として25億5865万4825円を請求をした(すなわち,2個の交付金請求をした)。 (b) これに対し,被告は,1号交付金請求については,一部認容(5091万8890円分)し,その余(4億9519万1094円分)を却下し,3号交付金請求については,全部(25億5865万4825円)を却下した。 b この場合でも,原告は,被告に対し,1号交付金25億3856万3458円を請求することができるのであるから,1号交付金に関する交付金決定のうち,5091万8890円を超え5億4610万9984円に達するまでの金額(原告が1号交付金として請求していた金額)について,却下処分の取り消しを求めることができる。 すなわち,本件交付金決定処分取消しの訴え(予備的請求)は,取消しの対象となる行政処分が存在することが明らかであり,適法な訴えである。 イ禁反言違反(ア) 被告の行政指導原告が,本件各工事費用の無形固定資産に係る交付金について,1号交付金と3号交付金に振り分けて請求したのは,次の理由からである。 a 原告の総務部次長であったCは,被告業務部業務企画課課長代理であったDから,1号交付金額は,交付金規程20条1号の書式の指示どおりに圧縮記帳後の帳簿価額を記載すべきであり,これ以外の記載であれば,交付金交付請求書自体を受理しないと言われた。 そこで,原告は,1号交付金として 交付金規程20条1号の書式の指示どおりに圧縮記帳後の帳簿価額を記載すべきであり,これ以外の記載であれば,交付金交付請求書自体を受理しないと言われた。 そこで,原告は,1号交付金として,圧縮記帳後の帳簿価額に基づいた請求をすることとした。 b さらに,Cは,Dから,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)の時価額と圧縮記帳後の帳簿価格の差額については,3号交付金として請求して欲しいと言われた。 そこで,原告は,Dの指導のとおりに,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)の時価額と圧縮記帳後の帳簿価格の差額については,3号交付金の請求をした。 (イ) 被告の行政指導に反する主張-禁反言違反ところが,被告は,本訴において,従前の行政指導と矛盾する主張を行い,原告が,1号交付金について,5091万8890円を超えて25億3856万3458円に達するまでの取消しを求めるのは,存在しない行政処分について取消しを求めるものであり,不適法だと主張するに至った。このような,被告の主張は,禁反言の法理に反し許されない。 3 争点(3)(本件交付金請求の訴えの適法性)(1) 被告の主張本件交付金請求の訴えは,次のとおり不適法な訴えである。 ア関連請求に当たらない本件交付金請求は,行政事件訴訟法16条1項にいう取消訴訟の関連請求には該当しないので,本件交付金決定処分取消しの訴えと併合・審理することはできない。よって,本件交付金請求の訴えは不適法である。 イ交付金の請求手続を経ていない法12条1項は,交付金の交付を受けようとする者は,実施計画の認定を受けた日から起算して6月を経過する日までに交付の請求をしなければならない旨 る。 イ交付金の請求手続を経ていない法12条1項は,交付金の交付を受けようとする者は,実施計画の認定を受けた日から起算して6月を経過する日までに交付の請求をしなければならない旨規定し,同条3項は,交付の請求があったときは,被告において,請求の審査及び交付金の額の算定の基礎となる事実の確認を行ったうえで,交付金の額を決定し,これを通知すべき旨規定している。 そして,前記2(1)のとおり,原告が本訴で主張している交付金請求は,原告が平成12年8月23日付け交付金請求で請求していた交付金とは異なるから,原告は,改めて被告に交付金請求をし,その審査を経なければならないが,原告は,その請求をしておらず,審査も経ていないから,本件交付金請求の訴えは不適法である。 ウ請求期間の徒過仮に,上記ア,イの主張が認められなくても,本件交付金請求は,法12条2項の規定による請求期限を徒過しているので,本件交付金請求の訴えは不適法である。 (2) 原告の認否被告の上記(1)の主張は争う。 4 争点(4)(事業供用要件,不要要件の充足の有無)(1) 被告の主張1号交付金の対象資産に該当するには,事業規模の縮小等の際に事業者により当該事業の用に供されていたこと(事業供用要件),及び当該事業規模の縮小等により不要となること(不要要件)が必要である(法施行令3条)。ところが,本件各施設は,次のとおり,施設⑨(航路浚渫)以外は,いずれも,事業供用要件及び不要要件を充足しない。 ア施設①(ー2.2物揚場)小型作業船10隻程度を収容するための公共施設であり,これは,港内の小型船船だまりの不足に対処するものであって,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)において 2物揚場)小型作業船10隻程度を収容するための公共施設であり,これは,港内の小型船船だまりの不足に対処するものであって,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)において,原告の一般旅客定期航路事業の用に供されていたものではないから,事業供用要件を充たさず,また,不要要件も充たさない。 イ施設②ないし⑤,⑧,⑩(防潮堤,防潮護岸,ー5.5岸壁防潮堤,防潮ゲート,A.B護岸及び管理道路)防潮堤及びー5.5岸壁防潮堤は,異常気象時における高潮被害から埋立地及び後背地を防護するための施設であり,防潮護岸は,異常気象時における高潮被害から後背地等を防護するための施設であり,防潮ゲートは,防潮堤の一部をなすものであり,A.B護岸は,民間企業等の立地する後背地を海水の浸食等から防護するための公共施設であり,防潮堤の管理道路は,防潮堤の管理を遺漏なく行い,防潮堤の有する防災機能を十全に発揮させるために設置されたものである。 上記いずれの施設も,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)において,原告の一般旅客定期航路事業の用に供されていたものではないから,事業供用要件を充たさず,また,不要要件も充たさない。 ウ施設⑥,⑦(帰属植栽及び基地外付帯道路植栽)いずれも施工場所,施工内容及び施工の経緯が明確でなく,その目的は環境整備のためと思料されるが,いずれにしても,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)において,原告の一般旅客船定期航路事業の用に供されていたものではないから,事業供用要件を充たさず,また,不要要件も充たさない。 (2) 原告の主張ア事業供用要件の解釈被告は,繰延資産については,事業供用要件を限定的に解釈している のではないから,事業供用要件を充たさず,また,不要要件も充たさない。 (2) 原告の主張ア事業供用要件の解釈被告は,繰延資産については,事業供用要件を限定的に解釈しているが,法令その他通達によっても,そのように限定的に解釈すべき根拠はない。また,公共施設がもっぱら事業者の事業のみに使用されるような事態はほとんど考えられず,そのように限定的な解釈をすると,公共施設の設置のための費用を税務上の繰延資産としても,それが,事業供用要件を充足することはなく,繰延資産を無形固定資産とする意味がない。 イ埋立免許との関係原告は,本件各工事を行うことを条件に埋立免許を取得したのであり,埋立免許を取得することは,原告がフェリー基地を移転させるのに必要不可欠であったから,これらの工事費用(無形固定資産)は,原告がフェリー基地を移転し,同所においてフェリー事業を営むために支出した費用と認められ,いずれも,事業供用要件を充たしている。 そして,原告は,フェリー事業を廃止し,冷凍倉庫事業に転業したのであるから,不要要件も充足している。 ウまとめしたがって,本件各施設を設置するのに要した費用(無形固定資産)は,いずれも事業供用要件,不要要件を充足する。 5 争点(5)(帳簿価格の意義)(1) 被告の主張法施行令5条2項1号には,基準日における帳簿価額から事業規模の縮小等を行った日(実施日)までの償却額を控除した額が1号交付金の額となると規定しており,同条にいう帳簿価額とは,会計帳簿に記載された価額をいうものである。したがって,本件においては,基準日における圧縮記帳後の価額から事業規模の縮小等を行った日(実施日)までの償却額を控除した額が1号交付金の額となる。 (2) 原告 載された価額をいうものである。したがって,本件においては,基準日における圧縮記帳後の価額から事業規模の縮小等を行った日(実施日)までの償却額を控除した額が1号交付金の額となる。 (2) 原告の主張1号交付金は,一般旅客定期航路事業者の投下資本の未回収部分を填補する目的で設けられたものであるから,投下資本の未回収部分を最もよく表しているのは,基準日における取得価額(投下資本)から事業規模の縮小等を行った日(実施日)までの償却額を控除し,その残存した価額である。したがって,圧縮記帳前の工事費用額が法施行令5条1項2号のいう帳簿価額であり,その価額から事業規模の縮小等を行った日(実施日)までの償却額を控除した価額が1号交付金額となる。 6 争点(6)(交付金額)(1) 被告の主張ア本件各施設のうち,事業供用要件,不要要件を充足するのは,施設⑨(航路浚渫)のみである。 イしたがって,原告が交付金請求をできるのは,工事⑨(航路浚渫工事)の工事費用について,基準日(平成10年3月31日)における簿価である5692万3108円(別表(1)の⑨・C欄)から,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)までの減価償却額600万4218円(別表(1)の⑨・D欄)を控除した5091万8890円(別表(1)の⑨・E欄)のみである。 ウよって,被告が,原告の平成12年8月23日付け交付金請求に対し,5091万8890円のみを認める旨の決定(甲2,本件交付金決定)をしたのは適法である。 (2) 原告の主張ア本件各施設の設置工事費用の全てが,事業供用要件,不要要件を充足する。 イ本件各工事費用総額43億1639万6631円(別表(1)の合計・A欄)について,事 2) 原告の主張ア本件各施設の設置工事費用の全てが,事業供用要件,不要要件を充足する。 イ本件各工事費用総額43億1639万6631円(別表(1)の合計・A欄)について,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)における簿価(圧縮記帳前)は,25億3856万3458円(別表(1)の合計・F欄)が妥当であり,原告は,被告に対し,1号交付金として25億3856万3458円を請求できる。 ウしたがって,本件交付金決定処分のうち,被告が認めた5091万8890円を超え25億3856万3458円に達するまでの金額についての却下処分は違法である。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件交付金決定の処分性の有無)の検討(1) 交付金の請求及び交付手続等前記第2の3(2)(航路指定,実施計画,交付金の交付,交付金の請求及び交付手続)記載のとおり。 (2) 交付手続の意味このような,交付金に関する制度の仕組みにかんがみれば,一般旅客定期航路事業を営む者が上記所定の交付要件を具備するときは,所定の交付金の交付を受けることができるという抽象的な地位が与えられ,その者が具体的に交付金の交付を受けるためには,被告に交付金の申請をし,所定の交付要件を具備していることの確認を受けなければならず,被告の交付金決定によって初めて具体的な交付金請求権を取得するものである。 (3) 判断そうすると,被告の行う交付金の交付又は不交付の決定は,法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり,上記事業者の上記権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものと解するのが相当である。 以上は,労働者災害補償保険法2 う公権力の行使であり,上記事業者の上記権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものと解するのが相当である。 以上は,労働者災害補償保険法23条1項2号に基づく労働福祉事業である労災就学援護費の支給に関して,労働基準監督署長が行う同援護費の支給又は不支給の決定は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解した,最高裁平成15年9月4日判決・裁判所時報1347号1頁の趣旨に徴して明らかというべきである。 (4) まとめよって,本件交付金決定には処分性が認められる。 2 争点(2)(取消しの対象となる行政処分の存否)の検討(1) 主位的請求の検討ア取消しの対象となる行政処分の存否の検討(ア) 原告の主張原告は,次のとおり主張する。 a 原告の平成12年8月23日付け交付金請求は,31億0476万4809円の交付金請求(すなわち,1個の交付金請求)をしたものであり,交付金請求書(甲1)の内訳欄に記載した1号交付金,3号交付金の記載は,交付金請求に当たり,交付金申請の理由として,あえていずれかの各号に振り分けたものに過ぎない。 そして,被告は,原告の平成12年8月23日付け交付金請求に対し,5091万8890円の限度で認め,その余を却下する旨の本件交付金決定(すなわち,1個の交付金決定)をした。 b 原告は,被告に対し,1号交付金として25億3856万3458円を請求することができる。 そこで,原告は,本件交付金決定取消訴訟(主位的請求)で,本件交付金決定のうち,5091万8890円を超え25億3856万3458円に達するまでの金額についての却下処分の取り消しを求めている そこで,原告は,本件交付金決定取消訴訟(主位的請求)で,本件交付金決定のうち,5091万8890円を超え25億3856万3458円に達するまでの金額についての却下処分の取り消しを求めているものである。 それゆえ,原告の主位的請求は,取消しの対象となる行政処分が存在し,適法な訴えである。 (イ) 検討a 1号交付金と3号交付金の相違(a) 1号交付金1号交付金は,「船舶その他の事業の用に供する資産で政令で定めるものの減価をうめるために要する費用」に相当する額として算定される交付金である(法11条1号)。 1号交付金の対象は,事業規模の縮小等の際に当該事業の用に供しており,かつ,当該事業規模の縮小等により不要となる船舶,建物,構築物,車両,機械及び装置,工具,器具及び備品,建設仮勘定並びに無形固定資産である(法施行令3条,交付金省令1条)。 そして,業務部長通知(乙5)で,「岸壁,道路等の公共施設の設置等に要する費用の負担金等について,税務上繰延資産として処理されている場合は,無形固定資産として取り扱う。」旨を定めている。 (b) 3号交付金3号交付金は,「事業の円滑な転換又は残存する事業の適正な経営を図るために必要な費用」に相当する額として算定される交付金である(法11条3号)。 3号交付金は,①「従前の営業利益を基準とする額」(法施行令7条1項1号)と,②「転換後の事業又は残存する事業の用に供する資産の確保のために必要な費用の額のうち,事業規模の縮小等により不要となる資産をこれらの事業に転用するための改造に要した費用,及びその他の特に必要な費用」(法施行令7条 又は残存する事業の用に供する資産の確保のために必要な費用の額のうち,事業規模の縮小等により不要となる資産をこれらの事業に転用するための改造に要した費用,及びその他の特に必要な費用」(法施行令7条1項2号)を対象としているものである。 (c) 1号交付金と3号交付金の相違このように,1号交付金と3号交付金とでは,その交付金の目的・対象を異にしており,繰延資産(本件各工事費用)はそもそも3号交付金の対象とはならない。 b 平成12年8月23日付け交付金請求,本件交付金決定の個数それゆえ,次のとおり,原告の平成12年8月23日付け交付金請求は2個の請求であり,被告の本件交付金決定も2個の決定であるといえる。 (a) 原告は,平成12年8月23日付け交付金請求で,1号交付金として5億4610万9984円の請求,3号交付金として25億5865万4825円の請求(すなわち,2個の交付金請求)をした。 (b) これに対し,被告は,本件交付金決定で,1号交付金請求については,一部認容(5091万8890円分)し,その余(4億9519万1094円分)を却下し,3号交付金請求については,全部(25億5865万4825円)を却下した(すなわち,1号交付金請求に対する交付金決定と,3号交付金請求に対する交付金決定の2個の交付金決定をした)。 c まとめところが,原告は,被告の交付金決定は1個の交付金決定であることを前提に(このような交付金決定は存在しない。),5091万8890円を超え25億3856万3458円に達するまでの金額についての却下処分の取り消しを求めているのであり,原告の主位的請求は,存在しない行政処分の取消しを求め 決定は存在しない。),5091万8890円を超え25億3856万3458円に達するまでの金額についての却下処分の取り消しを求めているのであり,原告の主位的請求は,存在しない行政処分の取消しを求める訴えであるから,不適法であるといわざるを得ない。 イ禁反言違反の検討(ア) 原告の主張原告は,次のとおり主張する。 a 被告の行政指導原告が,本件各工事費用の無形固定資産に係る交付金について,1号交付金と3号交付金に振り分けて請求したのは,次の理由からである。 (a) 原告の総務部次長であったCは,被告業務部業務企画課課長代理であるDから,1号交付金額は,交付金規程20条1号の書式の指示どおりに圧縮記帳後の帳簿価額を記載すべきであり,これ以外の記載であれば,交付金請求書自体を受理しないと言われた。 そこで,原告は,1号交付金として,圧縮記帳後の帳簿価額に基づいた請求をすることとした。 (b) さらに,Cは,Dから,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)の時価額と圧縮記帳後の帳簿価格の差額については,3号交付金として請求して欲しいと言われた。 そこで,原告は,Dの指導のとおりに,実施日の時価額と圧縮記帳後の帳簿価格の差額については,3号交付金の請求した。 b 被告の行政指導に反する主張-禁反言違反ところが,被告は,本訴において,従前の行政指導と矛盾する主張を行い,原告が,1号交付金について,5091万8890円を超えて25億3856万3458円に達するまでの取消しを求めるのは,存在しない処分について取消しを求めるものであり,不適法だと主張するに至った。このような,被告の主張は,禁 ,5091万8890円を超えて25億3856万3458円に達するまでの取消しを求めるのは,存在しない処分について取消しを求めるものであり,不適法だと主張するに至った。このような,被告の主張は,禁反言の法理に反し許されない。 (イ) 検討a 被告は原告主張の行政指導をしていない証拠(乙38~40)によると,次の事実が認められ,被告は原告主張の行政指導をしていない。 (a) Dを含め,被告側の関係者が,Cを始めとする原告担当者に対し,本件各工事費用(繰延資産)について,3号交付金の対象となると話したことはない。 (b) まして,被告側の関係者が,原告担当者に対し,本件各工事費用(繰延資産)の交付金を,あらかじめ1号交付金と3号交付金とに分けて請求するよう,指示あるいは指導したことは全くない。 b 上記認定の根拠(a) 法11条,法施行令3条,同7条及び交付金省令1条によれば,1号交付金と3号交付金の対象となる資産は異なり,1号交付金の対象となる無形固定資産は,3号交付金の対象資産にはならないから,DがCに対し,3号交付金の対象資産とならない上記無形固定資産(本件各工事費用=繰延資産)中の時価額と圧縮記帳後の帳簿価格との差額について,3号交付金の請求をするような行政指導をすることなど,考えられないことである。 (b) 原告は,平成12年8月23日付け交付金請求(甲1)を行う前の平成12年3月17日付け要請書(乙11の1)の中で,業務部長通知(乙5)を引用して,税務上の繰延資産が無形固定資産として1号交付金の対象となる資産に該当するとしたうえで,圧縮記帳後の価額5億7100万円が基準日の簿価になるとして,これをもとに1 ,業務部長通知(乙5)を引用して,税務上の繰延資産が無形固定資産として1号交付金の対象となる資産に該当するとしたうえで,圧縮記帳後の価額5億7100万円が基準日の簿価になるとして,これをもとに1号交付金を請求すると記載している。 そして,基準日の簿価である5億7100万円から実施日までの減価償却額(2511万1083円)を控除した額は,原告が1号交付金額として平成12年8月23日付け交付金請求書に記載した繰延資産の価額(5億4610万9984円)とほぼ合致する。 それゆえ,原告が,平成12年8月23日付け交付金請求(甲1)を行う前に,1号交付金と3号交付金の合計額を圧縮記帳前の価額31億476万4809円として請求する意思を有していたなどということも,考えられないことである。 (c) 以上のことからすれば,Dが,Cに対し,実施日の時価額と圧縮記帳後の帳簿価格の差額については,3号交付金として請求するように行政指導したなどということは,およそ考えられないことである。 c まとめ以上の次第で,被告が,原告に対し,原告主張の行政指導をしたものとは認められないので,原告主張の禁反言違反はその前提を欠き理由がない。 (2) 予備的請求の検討ア原告の平成12年8月23日付け交付金請求原告は,平成12年8月23日付け交付金請求の中で,被告に対し,1号交付金5億4610万9984円の請求をしている(甲1)。これを詳しく説明すると,次のとおりである。 原告は,平成4年4月11日,本件各工事費用を税務上の繰延資産として圧縮記帳をしたが,それが無形固定資産に該当するとして,圧縮記帳後の価額9億2832万0337円(別表(1)の合計・B欄)から基準 原告は,平成4年4月11日,本件各工事費用を税務上の繰延資産として圧縮記帳をしたが,それが無形固定資産に該当するとして,圧縮記帳後の価額9億2832万0337円(別表(1)の合計・B欄)から基準日(平成10年3月31日)までの期間の減価償却額を控除した5億7122万1067円(別表(1)の合計・C欄)から,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)までの減価償却額2511万1083円(別表(1)の合計・D欄)を控除した価額5億4610万9984円(別表(1)の合計・E欄)が1号交付金額になるとして,同額を請求したものである(甲1)。 イ被告の本件交付金決定被告は,上記原告の1号交付金5億4610万9984円の請求に対し,その一部(5091万8890円分)を認容し,残部(5091万8890円を超え5億4610万9984円に達するまでの分)を却下している(交付金請求を認めなかった。甲2)。これを詳しく説明すると,次のとおりである。 被告は,原告の1号交付金請求のうち,税務上繰延資産化した工事⑨(航路浚渫工事)の費用について,基準日(平成10年3月31日)における簿価である5692万3108円(別表(1)の⑨・C欄)から,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)までの減価償却額600万4218円(別表(1)の⑨・D欄)を控除した5091万8890円(別表(1)の⑨・E欄)を限度として,交付金請求を認めたが,それ以外の工事費用の繰延資産(工事①ないし⑧⑩の費用)については,交付金請求を認めなかった(甲1,2)。 ウ原告の本件交付金決定処分取消請求中の予備的請求そこで,原告は,本件交付金決定処分取消訴訟を提起し,その予備的請求の中で,税務上繰延資産化した本件各工事費用総 った(甲1,2)。 ウ原告の本件交付金決定処分取消請求中の予備的請求そこで,原告は,本件交付金決定処分取消訴訟を提起し,その予備的請求の中で,税務上繰延資産化した本件各工事費用総額43億1639万6631円(別表(1)の合計・A欄)について,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)における簿価は25億3856万3458円(別表(1)の合計・F欄)が妥当であり,1号交付金として25億3856万3458円を請求できることを前提に,被告に対し,本件交付金決定処分につき,被告が認めた5091万8890円を超え,5億4610万9984円(原告の平成12年8月23日付け交付金請求中の1号交付金分)に達するまでの金額について,却下処分を取り消すことを求めている。 エまとめ以上によると,原告の平成12年8月23日付け交付金請求中の1号交付金請求の対象と,原告の本件交付金決定処分取消請求中の予備的請求の対象とは,いずれも税務上繰延資産化した本件各工事費用(無形固定資産)であり,同一であることが認められるので,本件交付金決定処分取消訴訟中の予備的請求は,取消しの対象となる行政処分が存在することが認められる。 そして,原告は,被告が本件交付金決定の中で却下した処分(5091万8890円を越え5億4610万9984円に達するまでの交付金を認めなかった処分)の取消しを求めているのであるから,本件交付金決定処分取消しの訴え(予備的請求)は適法な訴えである。 3 争点(3)(交付金請求の適法性)の検討(1) 前記1(争点(1)-本件交付金決定の処分性の有無の検討)で検討したとおり,交付金の交付又は不交付の決定は行政処分であり,処分取消訴訟の対象となる。そのため,交付金の交付に係る争訟につ (1) 前記1(争点(1)-本件交付金決定の処分性の有無の検討)で検討したとおり,交付金の交付又は不交付の決定は行政処分であり,処分取消訴訟の対象となる。そのため,交付金の交付に係る争訟については,取消訴訟の排他的管轄に服することになり,交付決定に無効となる瑕疵がある場合を除き,処分取消しの訴えによらずに,その処分の内容の実現(交付金の交付)を直接訴訟で求めることはできない。具体的な交付金請求権は,被告の交付金交付決定ないしは交付金不交付決定に対する取消訴訟の確定によって初めて発生するものである。 (2) したがって,原告の本件交付金請求訴訟は,取消訴訟の排他的管轄に反する不適法な訴えであり,却下を免れない。 4 争点(4)(事業供用要件及び不要要件)の検討(1) はじめに原告は,公有水面の埋立免許を兵庫県知事から得るにあたり,本件各工事を行うことが条件となっており,平成4年3月末までに本件各工事を完成させ,同年4月11日,本件各工事によって完成させた本件各施設を兵庫県に贈与(無償移管)し,本件各工事費用については,税務上の繰延資産として処理し,原告の固定資産台帳等に圧縮記帳をした(前記第2の2(4)(5))。 そして,法11条1号,法施行令3条,交付金省令1条,業務部長通知(乙5)により,上記繰延資産が1号交付金の対象となる無形固定資産に該当するものとされている。 この趣旨は,自らの事業の必要に基づき公共施設の設置等の費用を負担した一般旅客定期航路事業者が,その公共施設が上記事業者の所有でなくなっている場合であっても,当該公共施設をもっぱら利用し,1年以上にわたり費用支出の効果を受けている場合には,単に,その公共施設が事業者の固定資産に該当しないとして,交付金交付の審査から除外せずに,1号交 る場合であっても,当該公共施設をもっぱら利用し,1年以上にわたり費用支出の効果を受けている場合には,単に,その公共施設が事業者の固定資産に該当しないとして,交付金交付の審査から除外せずに,1号交付金の対象資産に含め,例外的に救済しようというものである。 このように,税法上認められた繰延資産についても,政策的な配慮から,業務部長通知(乙5)により,特定事業用資産となりうる資産(無形固定資産)として認めたとはいっても,業務部長通知はあくまでも法,法施行令,交付金省令の範囲内における運用の方針である以上,無形固定資産として取り扱うことが認められる繰延資産が本件交付金の対象となるためには,法施行令3条が定める事業供用要件及び不要要件を充足しなければならないことは当然である。 したがって,上記繰延資産(本件各施設)についても,法施行令3条が定める事業供用要件及び不要要件を充足するか否かを検討することとなる。 (2) 本件各工事の内容本件各工事の内容は,次のとおりである。 ア工事① -2.2物揚場築造工事(別紙図面(1)の赤色部分)埋立によってできたフェリー施設用地(別紙図面(1)の乙部分)と小型船たまり(別紙図面(1)の丙部分)とが接するふ頭に,小型作業船10隻程度を対象とした-2メートル物揚場を300メートルにわたって築造する工事である(乙7の24,53頁,乙8の52頁)。 イ工事② 防潮堤用地工事(別紙図面(1)の青色部分)埋立によってできたフェリー施設用地(別紙図面(1)の乙部分)の外周に,防潮堤を整備する工事である(乙8の71頁)。 ウ工事③ 防潮護岸復旧工事(別紙図面(2)(3)の緑色部分)埋立地(別紙図面(3)の甲乙の埋立工部分)は防潮堤に囲まれた水面貯 周に,防潮堤を整備する工事である(乙8の71頁)。 ウ工事③ 防潮護岸復旧工事(別紙図面(2)(3)の緑色部分)埋立地(別紙図面(3)の甲乙の埋立工部分)は防潮堤に囲まれた水面貯木場内にできることから,埋立てに関する工事を施行するためには,まず,既設の防潮堤の撤去が必要であり,埋立地が完成後にその撤去した既設の防潮護岸を復旧させる工事である(乙8の47,52,72頁)。 エ工事④ -5.5岸壁防潮堤築造(別紙図面(1)の桃色部分)新設されるフェリーふ頭部分に設けられる防潮堤の築造工事である(乙7の28頁)。 オ工事⑤ 防潮ゲート設置工事(別紙図面(1)の黄色部分)工事④によって築造された防潮堤の一角に,防潮堤の一部として可動する施設の設置工事である(乙8の55,64頁)。 カ工事⑥ 帰属植栽工事キ工事⑦ 基地外付帯道路植栽工事ク工事⑧ A.B護岸築造工事(別紙図面(1)(2)(3)の紫色部分)上記埋立が既設の防潮堤を一部撤去して行われることから,小型船船たまり(別紙(1)(2)の丙部分)の一部について,後背地を海水の浸食等から防護するための護岸工事である(乙8の51,55頁)。 ケ工事⑨ 航路浚渫工事(別紙図面(3)の浚渫工部分)フェリー入出港時に操船水域を確保するため必要となる-5.5メートル泊地浚渫工事である(乙8の64頁)。 コ工事⑩ 管理道路工事(別紙図面(1)の黄緑部分)防潮堤の管理を遺漏なく行うための道路設置工事である(弁論の全趣旨)。 (3) 事業供用要件及び不要要件の検討ア施設①(ー2.2物揚場)の検討ー2.2物揚場(別紙図面(1)の赤色部分)は,港内は小型船船だまりが不 工事である(弁論の全趣旨)。 (3) 事業供用要件及び不要要件の検討ア施設①(ー2.2物揚場)の検討ー2.2物揚場(別紙図面(1)の赤色部分)は,港内は小型船船だまりが不足していることから,港湾活動の円滑化,港内航行の安全に資するため,小型作業船10隻程度を収容するための施設である(乙7の29頁)。 そして,ー2.2物揚場は,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)において,原告の旅客船定期航路事業の用に供されていたものではないから,事業供用要件を充たさない。 また,原告は,一般旅客定期航路事業廃止後も,当該埋立地において,転換後の事業である冷蔵冷凍倉庫事業を営むことにしているが,原告にとって,ー2.2物揚場の役割は,一般旅客定期航路事業廃止後も基本的に変化はなく,不要要件も充たさない。 イ施設②ないし⑤,⑧,⑩(防潮堤,防潮護岸,ー5.5岸壁防潮堤,防潮ゲート,A.B護岸及び管理道路)の検討(ア) 防潮堤(別紙図面(1)の青色部分)及びー5.5岸壁防潮堤(別紙図面(1)の桃色部分)は,異常気象時における高潮被害から埋立地及び後背地を防護するための施設である(乙8の71・72頁)。 防潮護岸(別紙図面(2)(3)の緑色部分)は,既設の防潮護岸を撤去した後それを復旧させたものであり,異常気象時における高潮被害から後背地等を防護するための施設である(乙8の71・72頁)。 防潮ゲート(別紙図面(1)の黄色部分)は,防潮堤の一部をなすものであり,防潮堤の一角に設けられた可動施設で,異常気象時に閉鎖し,防潮堤の一部として,高潮被害から埋立地及び後背地を防護するための施設である(乙8の71・72頁)。 A.B護岸(別紙図面(1)(2)(3 一角に設けられた可動施設で,異常気象時に閉鎖し,防潮堤の一部として,高潮被害から埋立地及び後背地を防護するための施設である(乙8の71・72頁)。 A.B護岸(別紙図面(1)(2)(3)の紫色部分)は,小型船船だまりを囲む護岸であり,民間企業等の立地する後背地を海水の浸食等から防護するための公共施設である(乙7の53頁,乙9の1)。 防潮堤の管理道路(別紙図面(1)の黄緑部分)は,防潮堤の管理を遺漏なく行い,防潮堤の有する防災機能を十全に発揮させるために設置された道路である(弁論の全趣旨)。 (イ) 上記いずれの施設も,実施日(A新フェリー基地を廃止した日)において,原告の一般旅客船定期航路事業の用に供されていたものではなく,原告も上記各施設が,原告の行っていた一般旅客定期航路事業とは何ら関係がないことを自認している(乙11の2)から,事業供用要件を充たさない。 また,原告は,一般旅客定期航路事業廃止後も,当該埋立地において,転換後の事業である冷蔵冷凍倉庫事業を営むことにしているが,原告にとって,上記施設の役割は,一般旅客定期航路事業廃止後も基本的に変化はなく,不要要件も充たさない。 ウ施設⑥⑦(帰属植栽及び基地外付帯道路植栽)の検討施設⑥(帰属植栽)については,原告は,訴状でその場所を明確にせず,本件口頭弁論終結時においても明確になっておらず,施設⑦(基地外付帯道路植栽)については,訴状にその場所が記載されていたが,原告準備書面(6)には,その場所は特定することができないと記載され,本件口頭弁論終結時においてもその場所は明確になっていない。 このように,施設⑥⑦は,植栽された場所が特定されていない以上,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)において 本件口頭弁論終結時においてもその場所は明確になっていない。 このように,施設⑥⑦は,植栽された場所が特定されていない以上,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)において,原告の一般旅客定期航路事業の用に供されていたものと認めることはできず,事業供用要件を充たさず,また,不要要件も充たさない。 エ施設⑨(航路浚渫)の検討施設⑨(航路浚渫,別紙図面(3)の浚渫工部分)が事業供用要件及び不要要件を充たしていることは,当事者間に争いがない。 5 争点(5)(帳簿価額の意義)の検討(1) はじめに法施行令5条2項1号は,基準日における帳簿価額から事業規模の縮小等を行った日(実施日)までの償却額を控除した額が,1号交付金の額となると規定している。そして,この帳簿価額の意義について,被告は,会計帳簿に記載された価額をいうと主張するのに対し,原告は,圧縮記帳前の工事費用額をいうと主張する。 (2) 立法趣旨アこの点につき,原告は,1号交付金は,一般旅客定期航路事業者の投下資本の未回収部分を填補しようとするものであるから,これと最も適合するのは,基準日における時価,すなわち,圧縮記帳前の工事費用額を帳簿価額とし,同価額から実施日までの償却額を控除した額が,1号交付金額となると主張する。 イ確かに,本件交付金に関する法令の趣旨には,投下資本の未回収部分の填補という側面もある。 しかし,本州四国連絡橋の供用により,交通手段として競合する一般旅客定期航路事業が大きな影響を受けるが,これは,公共事業のために土地が取得ないし使用される場合とは異なり,交通手段の競合による事実上の影響とみるべきものであり,本来的には損失補償の対象とはならないものである。 けれども,本 が,これは,公共事業のために土地が取得ないし使用される場合とは異なり,交通手段の競合による事実上の影響とみるべきものであり,本来的には損失補償の対象とはならないものである。 けれども,本州四国連絡橋の供用により,一般旅客定期航路事業者の中には,事業の廃止や縮小を余儀なくされ,それに伴い離職者も相当数発生することが見込まれ,これらの広範かつ多大な影響を事業者のみの対応や地域経済社会の自立的な調整によって解決することが困難であることや,これを放置すると社会的な混乱を招くおそれがあること等の観点から,法によって特に助成措置として交付金を交付することとしたものである(乙2の2,乙6)。 このように,本件交付金は,損失補償金ではなく,助成金ないしは補助金に過ぎないのであり,一般旅客定期航路事業者が,一般旅客定期航路事業のために資本を投下したとしても,その投下資本のすべてを当然に被告が助成すべきであるということにはならず,その投下資本の未回収分のうち被告が交付金で助成する範囲をどの程度と規定するかは,すぐれて立法政策上の問題である。 そして,それを規定したのが,法施行令3条,5条の規定であり,同3条で対象資産の範囲を画し,同5条で費用の算定基準を設けて,助成の対象となる資産の減価の範囲を規定したのである。 ウしかも,原告が本件各工事により設置した本件各施設(護岸等)は,前記第2の2(4)(5)のとおり,公有水面埋立免許条件により,埋立竣工の際に兵庫県に贈与(無償移管)され,原告には残されていない。 すなわち,本件各施設は,そもそも基準日(平成10年3月31日)において,原告所有の資産ではなく,ましてや,本件各施設等が繰延資産となるものでもなく,原告が本件各施設を施工するために要した費用 すなわち,本件各施設は,そもそも基準日(平成10年3月31日)において,原告所有の資産ではなく,ましてや,本件各施設等が繰延資産となるものでもなく,原告が本件各施設を施工するために要した費用が,当然に繰延資産になるものでもない。あくまでも,上記費用を法人税法に定める償却方法に従って繰延経理した場合においてのみ,法人税法上これらの繰延費用が繰延資産として認められているのである。 そして,このように税法上認められた繰延資産について,特に政策的な配慮から,業務部長通知(乙5)により,特定事業用資産となりうる資産(無形固定資産)として認められたにすぎないのである。 それゆえ,本件で問題となっている本件各施設の工事費用の繰延資産については,圧縮記帳前の工事費用額を帳簿価額とし,同価額を基準とした完全な助成をする必要性に乏しいといえる。 (3) 帳簿価額の意義以上の立法趣旨からすると,法施行令5条2項1号のいう基準日における帳簿価額は,文字どおりに会計帳簿に記載されている価額と解すべきであり,基準日における会計帳簿に記載された価額(圧縮記帳後の価額)から実施日までの償却額を控除した額が,1号交付金額になると解するのが相当である。 法施行令5条2項1号が帳簿価額と規定したのは,帳簿価額は,公正な取引慣行に従って会計帳簿に記載され,客観的で信頼できる価額であるからであり,仮に実施日における時価を基準とすると,資産保有中の市場価額の変動によって交付金額に多寡が生じ,不衡平な結果が生じるが,これを帳簿価額を基準とすると,資産の時価評価を行うことに伴う手間や費用負担が不要になり,交付金算定の定型的処理が可能となる結果,事務処理が簡易,迅速化され,費用の節減が図られ,当事者双方の利益にもかなうのである。 6 争点 資産の時価評価を行うことに伴う手間や費用負担が不要になり,交付金算定の定型的処理が可能となる結果,事務処理が簡易,迅速化され,費用の節減が図られ,当事者双方の利益にもかなうのである。 6 争点(6)(交付金額)の検討以上の4(争点(4)-事業供用要件及び不要要件の検討),5(争点(5)-帳簿価額の意義の検討)によると,本件各施設のうち事業供用要件及び不要要件を充足するのは,施設⑨(航路浚渫)のみである。そして,工事⑨の費用(浚渫工事費用)については,基準日(平成10年3月31日)における圧縮記帳後の帳簿価額である5692万3108円(別表(1)の⑨・C)から,事業規模の縮小等を行った日(実施日,平成10年9月1日)までの償却額である600万4218円(別表(1)の⑨・D)を控除した5091万8890円(別表(1)の⑨・E)をもって,1号交付金額と認めるのが相当である。 それゆえ,被告の本件交付金決定(原告の1号交付金5億4610万9984円の請求に対し,5091万8890円のみを認め,その余は却下した交付金決定)は適法であり,原告の本件交付金決定処分取消請求(予備的請求)は理由がない。 第5 結論以上の次第で,原告の交付金決定処分取消請求中,主位的請求の訴えは不適法であるから却下し,予備的請求は理由がないので棄却し,原告の本件交付金請求は不適法であるから却下し,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官紙浦健二 裁判官今中秀雄 裁判官秋田志保 裁判官今中秀雄 裁判官秋田志保

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