- 1 -主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実 及び理由第1当事者の求める裁判 控訴人ら( )原判決を取り消す。 ( )被相続人D相続人A(以下「A」という)が被控訴人に対し法定相続 。 分2分の1を譲渡する旨の別紙平成17年□月□日付け相続分譲渡証書(以下「本件証書」という)が無効であることを確認する。 。 ( )被控訴人が被相続人Dの6分の1を超える相続持分権を有しないことを 確認する。 ( )訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 被控訴人主文同旨第2事案の概要等 事案の概要本件は,控訴人らが被控訴人に対し,Aが被控訴人に対してなした被相続人Dに係る法定相続分2分の1を譲渡する旨の本件証書が無効であることの確認を求めるとともに,被控訴人が被相続人Dの相続につき6分の1を超える相続持分権を有しないことの確認を求めた事案である。 原判決は,控訴人らの上記訴えは,いずれも訴えの利益を欠き,不適法であるとしてこれらを却下し,控訴人らはこれを不服として控訴した。 当事者間に争いのない事実当事者間に争いがない事実は,原判決「第2事案の概要」の「1当事者間に争いがない事実」のとおりであるからこれを引用する。 - 2 - 争点及び当事者の主張( )本件の各訴えについて,確認の利益があるかどうか(争点1) ア控訴人らの主張(ア)確認訴訟の対象となり得る訴訟物は,自己の現在の権利又は法律関係の存否であるのが原則であるが,他人間の法律関係を対象とする確認の訴えも,それによって被控訴人との関係で控訴人の法的地位の安定を結果する場合には,確認の利益が認められる。なお,最高裁判所も他人間の売買の無効確認の利益を認めている(最高裁昭和30年 象とする確認の訴えも,それによって被控訴人との関係で控訴人の法的地位の安定を結果する場合には,確認の利益が認められる。なお,最高裁判所も他人間の売買の無効確認の利益を認めている(最高裁昭和30年12月26日判決。 )ここでいう控訴人の法的地位の安定とは,具体的には,控訴人の地位に対する危険・不安が現実に存在し,他人間の法律関係の存否を確認することが,その危険・不安を除去するのに適切であると考えられる場合をいう。 学説上も,確認請求の実益については,事実上の利益ないし期待でも足りるというのが一般的な理解である。 (イ)遺産分割は,法定相続分を基礎としながらも,それに諸条件を考慮して,さらには特別受益の有無,寄与分の有無をも判断して,具体的相続分ないし具体的分割方法を協議ないし決定する手続であり,これらを完全に無視し,法定相続分の増減変動が生じないので確認の利益を欠くという判断は失当である。 本件では,平成17年□月□日付けの相続分譲渡(以下「本件相続,分譲渡」という)によって,Aが相続人でなくなったとして,被相続。 人Dに係る遺産分割調停事件について脱退届を提出し,相続人の範囲に,,ついて当事者間に争いが生じておりこの前提問題が解決されなければ紛争の最終的解決に至らない。最高裁判所も具体的財産が遺産に含まれることの確認請求については,前提問題に関する紛争の終局的解決を図- 3 -る見地から,訴えの利益を認めている(最高裁昭和61年3月13日判決・民集40巻2号389頁。 )本件では,本件証書の無効及び被控訴人が被相続人Dの6分の1を超える相続持分権を有しないことを確認することで,相続人の範囲についての控訴人被控訴人間の紛争を終局的に解決し,これは遺産分割をなすことの前提問題として必要不可欠であるから,上記判決の射程は本 1を超える相続持分権を有しないことを確認することで,相続人の範囲についての控訴人被控訴人間の紛争を終局的に解決し,これは遺産分割をなすことの前提問題として必要不可欠であるから,上記判決の射程は本件にも当然に及ぶべきである。 また,本件紛争は,Aについて相続が発生したような場合には,同人の遺産の範囲についての紛争となるものであり,その時点では,証拠が散逸するとともに,本来Aが相続すべきであった財産が処分されているおそれもあり,確認訴訟の紛争予防的機能からみても,確認の利益を認めるべきである。 (ウ)その他,本件を不適法とした場合には,不正が放置されることになり,著しく妥当性,合理性が欠けること,行政事件訴訟法が改正され,確認の利益についての実益を事実上の利益ないし期待でも足りることを裏付けることになっていることを考慮すれば,本件に確認の利益を認めるべきである。 イ被控訴人の主張本件各訴えは,Aと被控訴人という他人間の法律関係の確認であり,控訴人らの相続分は本件証書によって何らの変更も生じず,他人間の法律関係を控訴人・被控訴人間で確認することについての法律上の利益を欠いているから,いずれも訴えの利益がない。 ( )本件証書を作成する際にAに意思能力があったか(争点2) ア控訴人らの主張Aは,平成13年ころより重度の痴呆状態にあり,同年5月から現在まで介護老人施設に入所中で,本件証書が作成された平成17年□月□日当- 4 -時,意思能力及び判断能力を欠如していた。 イ被控訴人の主張Aは,介護老人施設に入所していたが日常動作が不自由であったためであって重度の痴呆状態にあったわけではなく,本件証書が作成された平成17年□月□日当時,意思能力及び判断力を有していた。 第3当裁判所の判断 争点1(本件各訴えの確認の利益の有 由であったためであって重度の痴呆状態にあったわけではなく,本件証書が作成された平成17年□月□日当時,意思能力及び判断力を有していた。 第3当裁判所の判断 争点1(本件各訴えの確認の利益の有無)に対する判断( )相続持分権不存在確認の訴えの利益について ア民事上の確認訴訟の適法性の要件としては,原則として,現在の権利又は法律関係であること,即時確定の利益があることを要すると解される。 イ本件訴えにおいて,控訴人らが求めているところの確認の対象が具体的相続分をいうのか,法定相続分をいうのかは必ずしも明らかでないが,具体的相続分は遺産分割手続における分配の前提となるべき計算上の価額又はその価額の遺産の総額に対する割合を意味するものであって,それ自体を実体法上の権利関係であるということはできず,遺産分割審判事件における遺産の分割や遺留分減殺請求に関する訴訟事件における遺留分の確定等のための前提問題として審理判断される事項であり,上記のような事件を離れて,これのみを別個独立に判決によって確認することが紛争の直接かつ抜本的解決のため適切かつ必要であるということはできない(最高裁平成12年2月24日第一小法廷判決・民集54巻2号523頁参照。 )したがって,控訴人らが,本件訴えにおいて,具体的相続分の不存在確認を求めているのであれば,現在の権利又は法律関係を対象とするものということができないから,確認の利益を欠くものと解するべきである。 ウ次に,控訴人らが求める確認の対象が法定相続分の不存在確認であるというのであれば,イに述べた点が直ちに妥当するものではないが,控訴人らは本件相続分譲渡の効力を問題としているところ,それはAと被控訴人- 5 -の間の問題であって,控訴人らの相続分には何らの変動ももたらさないのであるから,控訴人ら 妥当するものではないが,控訴人らは本件相続分譲渡の効力を問題としているところ,それはAと被控訴人- 5 -の間の問題であって,控訴人らの相続分には何らの変動ももたらさないのであるから,控訴人らに即時確定の利益があるとはいえず,確認の利益を欠くものと解するべきである。 ( )本件証書の無効確認の訴えの利益について 証書真否確認の訴えについても即時確定の利益が必要であり,書面が真正に成立したか否かが確認されたとしても控訴人らの権利又は法律上の地位に存する危険又は不安定が除去解消されることにならない場合は,書面の真否の確認を求める訴えは,訴えの利益を欠くものと解される。 控訴人らが問題とする本件証書はAの被控訴人に対する本件相続分譲渡に関するものであるが,相続分譲渡は要式行為でもなく,本件相続分譲渡の効力に関する紛争が,本件証書の真否確認によって,直ちに解決するものとは考えられないから,上記訴えは確認の利益を欠き,不適法として却下すべきである。 ( )小括 そうだとすれば,その余の争点について判断するまでもなく,本件各訴えは訴えの利益を欠くものであるから,いずれも却下すべきである。 控訴人らの主張について( )控訴人らは,他人間の法律関係を対象とする確認の訴えも適法であり, ,,確認訴訟の実益については事実上の利益ないし期待でも足りる等と主張し他人間の法律関係を対象とする確認の訴えも適法である場合があることは被控訴人も争わないところである。 しかしながら,即時確定の利益については,少なくとも,法律関係等の確認によって,提訴者の法律上の地位に現に生じている不安ないし危険を除去することができる場合でなければ,これを認めることはできないというべきであり(最高裁平成11年1月21日第一小法廷判決・民集53巻1号1頁等参照, の法律上の地位に現に生じている不安ないし危険を除去することができる場合でなければ,これを認めることはできないというべきであり(最高裁平成11年1月21日第一小法廷判決・民集53巻1号1頁等参照,無限定に事実上の利益ないし期待でも足りると解することはでき)- 6 -ず,控訴人らの主張は採用できない。 ( )控訴人らは,本件では本件相続分譲渡によって,相続人の範囲について 当事者間に争いが生じており,この前提問題が解決されなければ,紛争の最終的解決に至らない等と主張する。 しかしながら,相続人の範囲についての紛争解決をもって即時確定の利益を基礎づけることができると解するとしても,本件の相続分不存在確認の訴えにおいては,Aが相続人であるかどうかは,判決主文において確定されるものではなく,既判力をもって,相続人の範囲について紛争が解決されるものではないから,控訴人主張の事情をもって,即時確定の利益を基礎づけるということはできない。 また,遺産分割審判等の前提問題として,相続人の範囲を確定するためには,共同相続人全員が当事者として関与し,その間で合一に確定するのでなければ,紛争解決は図られないと解される(最高裁平成16年7月6日第三小法廷判決・民集58巻5号1319頁参照)ところ,本件においては,相続人の一部が当事者となっているにすぎず,本件相続分譲渡の当事者であるAすら当事者となっていないのであって,仮に実体判断をしたところでAにその効力が及ぶとは考えられないのであり,到底共同相続人間での確定を図るに至らないものであることが明らかである。 控訴人らは遺産確認の訴えの利益が認められていることに言及するが,同訴えは,既判力をもって,具体的財産が相続財産に帰属するかどうかを確定し得るものであり,かつ,その訴えは固有必要的共同訴訟であって,共 訴人らは遺産確認の訴えの利益が認められていることに言及するが,同訴えは,既判力をもって,具体的財産が相続財産に帰属するかどうかを確定し得るものであり,かつ,その訴えは固有必要的共同訴訟であって,共同相続人全員が当事者として関与した場合に限って適法とされるものであって,これらのことに照らしても,遺産確認の訴えの利益が認められていることをもって,本件の訴えが適法であることの論拠とすることは到底できないというべきである。 ( )さらに,控訴人らは,Aについて相続が発生した場合の紛争を予防する - 7 -ためにも,確認の利益を認めるべきである等と主張するが,推定相続人としての利益が害されるおそれをもって,権利又は法律的地位に危険又は不安が,,生じ確認判決をもつてこれを除去するに適する場合に当たるとはいい難く即時確定の利益を有するものとは認められない(最高裁昭和30年12月26日第三小法廷判決・民集9巻14号2082頁参照。 )( )その他,控訴人は,事案の具体的妥当性や,行政事件訴訟法の改正等を 論拠として,確認の利益が認められるべきであるというが,いずれも失当であるといわざるを得ない。 結論 以上によれば,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第4民事部裁判長裁判官牧弘二裁判官川久保政徳裁判官増田隆久別紙省略
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