- 1 - 主文 本件控訴を棄却する。 原判決を次のとおり変更(一部取消し)する。 (1)本件訴えのうち,被控訴人がAに対し,15万7500円(本件訴訟に関する弁護士への着手金)及びこれに対する平成21年4月17日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員の支払を請求することを求める部分並びに被控訴人に対し,1930万5000円(平成21年4月9日付け補助金交付指令書(尼崎市指令(尼人権)第○号)に基づく第2期分の補助金)の支出差止めを請求する部分を,いずれも却下する。 (2)控訴人のその余の請求を棄却する。 控訴人が当審で追加した訴え(被控訴人がAに対し,15万7500円(本件訴訟の控訴審に関する弁護士への着手金)及びこれに対する平成21年4月17日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員の支払を請求することを求めるもの)を却下する。 訴訟費用は,1審,2審を通じ,控訴人の負担とする。 事実 及び理由 第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人は,Aに対し,3億1096万円及びこれに対する平成21年4月17日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員の支払を請求せよ。 被控訴人は,社団法人B協会に対し,被控訴人の平成21年4月9日付け補助金交付指令書(尼崎市指令(尼人権)第○号)に基づく第2期分1930万5000円の支出をしてはならない。 第2事案の概要- 2 -本件は,尼崎市の住民である控訴人が,尼崎市長たるAがした社団法人B協会(以下「本件協会」という。) ○号)に基づく第2期分1930万5000円の支出をしてはならない。 第2事案の概要- 2 -本件は,尼崎市の住民である控訴人が,尼崎市長たるAがした社団法人B協会(以下「本件協会」という。)に対する平成15年度から平成21年度までの補助金の交付決定について,同交付決定が憲法89条,地方自治法(以下「地自法」という。)138条の2及び同法232条の2に違反しているとして,被控訴人に対し,同法242条の2第1項4号に基づいて,Aに対して尼崎市が支出した補助金相当額及び被控訴人代理人に対する本件訴訟に係る着手金相当額並びにこれらに対する年14.6パーセントの割合による遅延損害金の損害賠償を請求することを求めるとともに,同項1号に基づいて,本件協会に対する平成21年度第2期分の補助金の支出の差止めを求める住民訴訟である。 原審は,損害賠償を請求することを求める訴訟のうち,平成15年度ないし平成20年度の補助金支出については監査請求期間を徒過したとして却下し,その余の損害賠償請求及び差止め請求については,地自法232条の2,138条の2,憲法89条のいずれにも違反しないとして,棄却した。 控訴人は,これを不服として控訴し,当審において,被控訴人代理人に対する本件控訴事件に係る着手金相当額15万7500円の損害賠償を請求することを求める訴えを追加した(以下,被控訴人訴訟代理人弁護士に対する本件訴訟(一審及び控訴審を含む。)に係る着手金の支出に係る訴えを「本件着手金に係る訴え」という。)。 争いのない事実等,争点及び争点に関する当事者の主張については,次のとおり,当審における当事者の補充的主張を付加するほか,原判決「第2事案の概要」の1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。 当審における補充的主張(1)控訴人ア は,次のとおり,当審における当事者の補充的主張を付加するほか,原判決「第2事案の概要」の1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。 当審における補充的主張(1)控訴人ア本件各交付決定の違法性Cセンターの電話は昭和50年ころから,Dセンターの電話は昭和49- 3 -年から,E協会の電話は昭和48年ころから使用されているが,これらは,いずれも地域委員会に組織替えされる前であり,F支部の電話をそのまま使用している。したがって,本件協会とFは同一性があるから,本件各交付決定は,憲法89条,地自法138条の2,232条の2に違反する。 イ当審で追加した請求について被控訴人は,弁護士Gに対し,被控訴人の平成22年3月19日付け支出命令書に基づいて「いわゆるH控訴事件(21補助金)に係る着手金」15万7500円を支出しており,これは,違法である。 (2)被控訴人ア本件各交付決定の違法性本件協会の行う人権啓発活動の中には,地域委員会と連携しているものがあるが,各地域委員会がどのような電話番号を利用しているかが本件各交付決定の違法性に影響することはない。なお,各地域委員会は,いずれも,尼崎市が設置した別表1記載の施設の一部に使用許可を得て,事業を行っているが,控訴人主張に係る電話番号は,いずれも尼崎市が電信電話会社と契約して設置し,各地域委員会の電話使用料に応じて,各地域委員会から実費額の弁償を受けているものである。 イ当審で追加した請求について(ア)訴えの適法性被控訴人が平成22年4月9日,被控訴人訴訟代理人弁護士に対する本件訴訟に係る控訴審での着手金として15万7500円を支出したことは認めるが,これについては適法な住民監査請求を前置していないので,不 控訴人が平成22年4月9日,被控訴人訴訟代理人弁護士に対する本件訴訟に係る控訴審での着手金として15万7500円を支出したことは認めるが,これについては適法な住民監査請求を前置していないので,不適法である。 (イ)着手金支払の違法性地方自治法232条1項に基づいて尼崎市が本件訴訟の事務を処理するために必要な経費として適正に支出したものである。 - 4 -第3当裁判所の判断 当裁判所は,平成20年度までの補助金の支出については,監査請求期間が徒過しており,損害賠償請求をすることを求める訴えは不適法であり,平成21年度分の補助金の交付決定は違法であるとは認められず,本件着手金に係る訴えは,いずれも,監査請求を経ておらず,不適法であり,却下を免れないと判断する。 その理由は,次のとおり改めるほか,原判決「第3当裁判所の判断」の1及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。 9頁2行目から10頁1行目までを次のとおり改める。 「被控訴人は,被控訴人訴訟代理人弁護士に対する本件訴訟(1審における訴訟及び控訴審における訴訟)に係る着手金の支出に関して損害賠償の請求をすることを求める訴えは,適法な監査請求を前置しておらず不適法である旨主張する。 この点について,原審は,本件監査請求の対象が,平成15年度ないし平成21年度の各年度における被控訴人の本件協会に対する補助金支出であり,監査請求に続いてなされた住民訴訟において,同一の不法行為に基づく損害を追加することは,対象とする財務会計行為又は怠る事実が同一であると解される以上,監査請求前置の要件を欠くものとはいえないと判断する。 しかしながら,本件監査請求に係る財務会計行為は,被控訴人の本件協会に対する補助金の各支出行為であるところ, が同一であると解される以上,監査請求前置の要件を欠くものとはいえないと判断する。 しかしながら,本件監査請求に係る財務会計行為は,被控訴人の本件協会に対する補助金の各支出行為であるところ,弁護士報酬(着手金)の支出は,本件各交付決定が争われたことに由来するとはいえ,報酬の支払を命じる別個独立の財務会計行為に基づくものであって,補助金の支出と同一の財務会計行為によって生じた支出であるとはいえない。もちろん,当該監査請求に係る行為から派生し,又はこれを前提として後続することが当然に予想される行為であれば,監査請求が前置されていると解する余地もあるが,弁護士報酬の支払義務は,住民訴訟が提起され,弁護士に訴訟事件を依頼して初め- 5 -て,支払義務が生じ,しかも,その金額についても,自動的に決まるものではなく,弁護士との間の合意を前提として,決定されるものであるから,監査請求に係る補助金の各支出行為から派生したり,当然に後続して生じるものと解することはできない。しかも,実質的にも,地方公共団体が,弁護士に依頼して住民訴訟に応訴したのが相当か,報酬金額が相当かについて,住民訴訟の対象である財務会計行為とは別に,監査の機会が与えられるべきである。 したがって,本件訴訟に関する弁護士への着手金に係る訴えは,適法な監査請求を経ておらず,不適法であり,却下を免れない(なお,仮に,この訴えが適法である場合には,上記各着手金はいずれも本件訴訟の事務を処理するために必要であると解されるから,その支出は違法ではない。)。」 補足説明(1)本件訴えの適法性(争点(1))控訴人は,当審においても,本件協会に対する補助金の交付は,継続的になされているから,いまだ監査請求期間は徒過していない旨主張する。 しかしながら,継続 本件訴えの適法性(争点(1))控訴人は,当審においても,本件協会に対する補助金の交付は,継続的になされているから,いまだ監査請求期間は徒過していない旨主張する。 しかしながら,継続的行為とは,当該行為が継続していることを要するところ,補助金の交付は,その交付がなされれば,終了し,毎年度それが繰り返されていたとしても,その都度,補助金の必要性・公益性を判断し,議会の予算の議決手続等を踏んでなされるものであって,継続的行為に当たらない。 したがって,平成15年度ないし平成20年度の本件各交付決定については,監査請求期間が徒過しており,適法な監査請求を経ていないから,上記各決定が違法であることを理由とする損害賠償請求を求める訴えは不適法である。 (2)平成21年度の交付決定の違法性(争点(2))控訴人は,この点に関し,当審において,地域委員会のうちの「I委員会」,- 6 -「J委員会」等が,X委員会やY協会等に組織替えされる前である昭和49年ないし昭和50年ころから,同じ電話番号を使用し,それが,F支部の電話である旨主張する。しかし,これら地域委員会が使用している電話がF支部の電話であることを裏付ける証拠はないから,この点に関する控訴人の主張は採用できず,本件各交付決定が,地自法138条の2,232条の2に反するとはいえない。 また,控訴人は,当審においても,本件各交付決定に係る補助金の支出が憲法89条後段に反すると主張しているが,同条後段に違反するのは,公金が支出された事業が慈善,教育若しくは博愛の事業であり,かつ,その事業が公の支配に属しない場合であることを要するところ,本件協会が,その組織や事業の運営状況に照らし,公の支配に属していることは原判決のとおりであるから,本件各交付決定が 愛の事業であり,かつ,その事業が公の支配に属しない場合であることを要するところ,本件協会が,その組織や事業の運営状況に照らし,公の支配に属していることは原判決のとおりであるから,本件各交付決定が憲法89条後段に違反するとはいえない。 差止め請求について控訴人が求めている,平成21年4月9日付け補助金交付指令書(尼崎市指令(尼人権)第○号)に基づく第2期分1930万5000円の支出差止めを求める部分は,原審において控訴人が損害賠償請求の義務付け訴訟の請求として求めている3億1080万2500円の中に含まれ重複しており,かつ上記第2期分の1930万5000円が支払済みであることは明らかであるから(弁論の全趣旨),この点に関する控訴人の請求は不適法として却下を免れない。 よって,原判決主文のうち,第1審手続のために被控訴人代理人弁護士に支払われた着手金15万7500円の損害賠償請求を棄却した部分及び平成21年4月9日付け補助金交付指令書(尼崎市指令(尼人権)第○号)に基づく第2期分1930万5000円の支出差止めを棄却した部分を取消し,いずれも却下するほかは,原判決は相当であるから,控訴を棄却することとし,控訴人が当審で追加した,控訴審手続のため被控訴人代理人弁護士に支払われた着手- 7 -金15万7500円の損害賠償請求については,不適法であるから却下することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第7民事部裁判長裁判官永井ユタカ 裁判官吉田 肇 裁判官舟橋恭子 (原裁判等の表示)主文 本件訴えのうち,被告がAに対し2 肇 裁判官舟橋恭子 (原裁判等の表示)主文 本件訴えのうち,被告がAに対し2億7203万4000円及びこれに対する平成21年4月17日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員の請求をすることを求める部分を却下する。 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1請求 被告は,Aに対し,3億1080万2500円及びこれに対する平成21年4月17日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員の支払を請求せよ。 被告は,社団法人B協会に対し,被告の平成21年4月9日付け補助金交付- 8 -指令書(尼崎指令(尼人権)第○号)に基づく第2期分1930万5000円の支出をしてはならない。 仮執行宣言第2事案の概要本件は,尼崎市の住民である原告が,尼崎市長たるAがした社団法人B協会(以下「本件協会」という。)に対する平成15年度から平成21年度までの補助金の交付決定について,同交付決定が憲法89条,地方自治法(以下「地自法」という。)138条の2及び同法232条の2にそれぞれ違反しているなどとして,被告に対し,同法242条の2第1項4号に基づいて,Aに対して尼崎市が支出した補助金相当額及び被告代理人に対する本件訴訟に係る着手金相当額並びにこれらに対する年14.6パーセントの割合による遅延損害金の損害賠償を請求することを求めるとともに,同項1号に基づいて,本件協会に対する平成21年度第2期分の補助金の支出の差止めを求める住民訴訟である。 争いのない事実等(1)当事者等(弁論の全趣旨)ア原告は,尼崎市の住民である。 ,同項1号に基づいて,本件協会に対する平成21年度第2期分の補助金の支出の差止めを求める住民訴訟である。 争いのない事実等(1)当事者等(弁論の全趣旨)ア原告は,尼崎市の住民である。 イ被告は,尼崎市の長である。 ウAは,遅くとも平成15年4月8日以降,尼崎市長の地位にある者である。 (2)公金の支出アAは,尼崎市長として,本件協会に対し,以下の各「年月日」欄記載の日に,各「金額」欄記載の補助金を交付する旨の決定をした(甲6,7,弁論の全趣旨。以下「本件各交付決定」という。)。 年月日金額- 9 -平成15年4月8日4845万2000円平成16年4月6日4637万円平成17年4月1日4472万8000円平成18年4月1日4472万8000円平成19年4月5日4472万8000円平成20年4月8日4302万8000円平成21年4月9日3861万1000円イ尼崎市は,平成15年度ないし平成20年度において,各年度の本件各交付決定に基づく補助金として,本件協会に対して,合計2億7203万4000円を支払い,平成21年4月17日,平成21年度の交付決定に基づく第1期分の補助金として,1930万6000円を支払った(甲2ないし7,弁論の全趣旨)。 ウAは,尼崎市長として,同年7月17日,本件訴訟の被告訴訟代理人弁護士に対し,本件訴訟に係る着手金として15万7500円を支出した(争いがない。)。 (3)監査請求原告は,同年4月30日,尼崎市監査委員に対し,平成15年度ないし平成21年度の各年度における本件協会に対する補助金支出(各年度ごと て15万7500円を支出した(争いがない。)。 (3)監査請求原告は,同年4月30日,尼崎市監査委員に対し,平成15年度ないし平成21年度の各年度における本件協会に対する補助金支出(各年度ごとに金額を明記)が違法な財務会計上の行為に該当するとして,尼崎市長個人及び本件協会会長個人に対して上記各支出に係る補助金相当額の金員を請求することを求める住民監査請求を行った(甲1の2。以下「本件監査請求」という。)。 尼崎監査委員らは,同年5月12日,本件監査請求は住民監査請求の要件が整っていないため,監査の対象としないとの決定をした(甲37)。 原告は,そのころ,上記監査結果通知書を受領した(弁論の全趣旨)。 - 10 -(4)本訴提起原告は,平成21年5月14日,本件各交付決定に係る補助金支出がAの尼崎市に対する不法行為に当たるとして,Aに対する同補助金相当額の損害賠償請求及びこれに対する附帯請求の義務付けを求めて本件訴訟を提起した(当裁判所に顕著)。 (5)原告は,平成21年8月10日受付けの同月9日付け準備書面において,Aに対して請求すべき金額につき「Aが弁護士に支払った157500円を(中略)増額する。」とする申立てをした(当裁判所に顕著)。 争点 (1)本件訴えの適法性(適法な監査請求が前置されているか)(2)本件各交付決定の違法性 争点に関する当事者の主張(1)原告の主張ア争点(1)(本件訴えの適法性)について(ア)地自法242条2項本文は,財務会計上の行為のあった日又は終わった日から1年を経過したときは監査請求をすることができない旨定めるところ,上記行為のあった日とは一時的行為のあった日を,上記行為の終わった日とは継続的行為についてその行為が終わった日をそれぞれ意味する。本件協会(改組前の各団体も含む をすることができない旨定めるところ,上記行為のあった日とは一時的行為のあった日を,上記行為の終わった日とは継続的行為についてその行為が終わった日をそれぞれ意味する。本件協会(改組前の各団体も含む。)は,昭和38年度から同和事業協議金補助金を受領しており,さらに,昭和45年度から現在に至るまで補助金を受領しており,継続的行為が現在も続いている。したがって,監査請求期間の適用はない。仮に監査請求期間の適用があるとしても,1年の監査請求期間より遅れて監査請求したことに正当な理由があることは明らかである。 (イ)被告訴訟代理人弁護士に対する本件訴訟に係る着手金の支出に係る訴えは,適法な監査請求を前置しておらず不適法であるとの被告の主- 11 -張は争う。 イ争点(2)(本件各交付決定の違法性)について(ア)本件協会の会長K等その役員はFの役員であること,役員の出身母体である婦人会は「F婦人会」というのが正しく,また,Fの構成員に子どもがいるのでPTAはFの一員であること,役員の出身母体の一つであるL委員会の事務室には,Fが支援するいわゆるM事件の元被告人とN協会元会長が並んだ写真が掲示されていること,本件協会の出身母体の一つであるE協会が,M事件の再審を求める市民集会,第○回全国解放保育研究集会(香川県),部落解放研究第○回兵庫県集会(神戸),部落解放研究第○回全国集会(以上平成○年度)に構成員を出席させるなどし,他の出身母体からも同一の集会等に出席していることなどの点に照らし,本件協会の実体は,F兵庫県連合会の所属する7支部であり,本件協会が公の支配に属さないことは明らかであるから,本件各交付決定は憲法89条後段に違反する。 (イ)加えて,本件協会は会員から会費を徴収し,収益事業を行っているから営利目的の団体であること,本件 件協会が公の支配に属さないことは明らかであるから,本件各交付決定は憲法89条後段に違反する。 (イ)加えて,本件協会は会員から会費を徴収し,収益事業を行っているから営利目的の団体であること,本件協会の現在の会長が公職選挙法違反で起訴猶予となっていること,本件協会に対する補助金の使途について詳細な領収書がないため不明であること,地自法232条の2の公益上の必要性は当該地方公共団体の財政上の余裕の程度を勘案しなければならないところ,尼崎市は平成21年度末見込みで市債残高2418億円(市民一人当たり約52万3000円)であることからすれば,本件協会に補助金を支出することは公益上の必要性がないことも明らかであるから,本件各交付決定は地自法232条の2及び地自法138条の2に違反する。 (2)被告の主張ア争点(1)(本件訴えの適法性)について- 12 -(ア)本件協会に対する補助金は,各年度における尼崎市議会の予算の議決を経て,地自法232条の2に基づき支出されるものであるから,その交付決定は各年度ごとに別個独立の財務会計上の行為であって,これに対する監査請求期間も個別に進行する。 したがって,平成15年度ないし平成20年度の本件交付決定については,当該交付決定があった日から1年経過後に本件監査請求がなされたものであるから,この部分については,すでに地自法242条2項本文所定の監査請求期間を経過しており不適法な訴えである。 原告は,この点に関し,同項ただし書所定の「正当な理由」がある旨主張するが,本件交付決定の事実は,各年度ごとに尼崎市の予算に計上されており,特に尼崎市の住民に隠れて秘密裏に行われていたといった事情はないから,尼崎市の住民が相当の注意を尽くせば容易に知りえた事実であって,上記「正当な理由」は認められない。 (イ) 算に計上されており,特に尼崎市の住民に隠れて秘密裏に行われていたといった事情はないから,尼崎市の住民が相当の注意を尽くせば容易に知りえた事実であって,上記「正当な理由」は認められない。 (イ)被告訴訟代理人弁護士に対する本件訴訟に係る着手金の支出に係る訴えは,適法な監査請求を前置しておらず不適法である。 イ争点(2)(本件各交付決定の違法性)について(ア)尼崎市は,本件協会に対し,その設立以降,補助金を交付してきたが,その目的及び趣旨は,主として,①尼崎市が本来行うべき人権啓発事業を本件協会が尼崎市に代わって行っている点,及び②本件協会独自の収入のみでは人権啓発事業の遂行が困難である点に基づくものである。 本件協会に対する補助金の交付を含めた予算案は,本件協会に対する補助金の額を表示した項目が記載された予算説明書を用いた被告(尼崎市長)による尼崎市議会議員への説明を経て,尼崎市議会が十分に審議したうえで議決されたものであり,決算内容についても同様に尼崎市議会において十分審議され,その決算の認定を受けている。 - 13 -本件協会の役員として尼崎市議会議員が会務の運営に関与し,尼崎市副市長等が参与として参画していることに加え,尼崎市においては,交付した補助金がその交付指令中の補助条件に従って本件協会の事業費として適正に支弁されたかどうかを厳密に点検・確認する体制がとられている。 本件協会とF兵庫県連合会の各支部とは,同和問題の解決という点で設立目的が一部共通するものの,組織構成及び会計等を異にしており,両者に同一性はない。 以上のとおり,本件協会の性格,補助金支出の目的・趣旨,補助金支出による効果,補助金の支出手続及び事後の検査体制等の諸点において,本件各交付決定につき,公益上の必要性に関する市長個人(A)の判断に法令上許容 り,本件協会の性格,補助金支出の目的・趣旨,補助金支出による効果,補助金の支出手続及び事後の検査体制等の諸点において,本件各交付決定につき,公益上の必要性に関する市長個人(A)の判断に法令上許容された裁量権の逸脱又は濫用はないから,市長個人(A)について地自法138条の2及び232条の2に違反する行為がある旨の原告の主張は理由がない。 (イ)本件協会に対する補助金は,本件協会の人権啓発事業に対する補助であり,慈善・教育・博愛の事業に対する補助ではないのであって,憲法89条後段はそもそも問題とならない。 仮に,本件協会の人権啓発事業が慈善・教育・博愛の事業のいずれかに該当するとしても,本件協会は,尼崎市が本来行うべき人権啓発事業を尼崎市に代わって行っているものであり,市議会議員が役員となるほか,副市長等の要職者が参与として会務の執行について審議している団体であるから,本件協会が行う人権啓発事業の運営などについて尼崎市が影響を与え,仮に,補助金にかかる事業が,公の利益に沿わない場合が生じたとしても,尼崎市においてこれを是正する途が確保され,公の財産の濫費を防止しうるものというべきである。したがって,上記関与をもって憲法89条後段の「公の支配」に属するものということができ- 14 -るから,本件各交付決定が憲法89条後段に違反するとはいえない。 第3当裁判所の判断 本件訴えの適法性(争点(1))(1)平成15年度ないし平成20年度の本件各交付決定について本件各交付決定のうち平成20年4月8日までにされた平成15年度ないし平成20年度の各交付決定については,当該決定があった日からそれぞれ1年経過した後である平成21年4月30日に本件監査請求がされているから,地自法242条2項本文所定の監査請求期間を経過している。 この点,原 度の各交付決定については,当該決定があった日からそれぞれ1年経過した後である平成21年4月30日に本件監査請求がされているから,地自法242条2項本文所定の監査請求期間を経過している。 この点,原告は,本件協会に対する補助金が毎年度継続的に支出されていることから,同協会に対する補助金の支出は継続的行為であり,監査請求期間の起算日は到来していない旨主張するが,補助金の交付決定(支出負担行為)が複数回あれば,それぞれが独立した別個の財務会計上の行為であり,この点は,特定の相手方に対する補助金支出が長期間継続的になされていても別異に解する理由はない。また,原告は,本件協会に対する補助金支出が継続的になされていることをもって,監査請求期間を経過したことにつき同項ただし書の「正当な理由」がある旨主張するが,上記継続的支出がされていたからといって,監査請求期間内に監査請求をするに足りる程度に監査請求の対象たる財務会計上の行為の存在及び内容を知ることができなかったなどということはできないからから,上記「正当な理由」があるとは認められない。 よって,本件訴えのうち,平成15年度ないし平成20年度の本件各交付決定の違法を理由に損害賠償請求することを求める訴えは,適法な監査請求を経ておらず,不適法である。 なお,本件監査請求に対し,尼崎市監査委員は,前記のとおり,監査請求の要件が整っていないため監査の対象としないとの決定をした。その論旨はにわかに理解し難いが,本件協会と原告の主張するF7団体の同一性につき- 15 -地自法242条1項所定のいわゆる事実を証する書面の添付がないというものか,または,本件監査請求が請求の特定を欠くというものではないかと解される(甲37)。しかし,証拠(甲1の2)によると,原告は,尼崎市監査委員に対し,上記同一性を証する書 書面の添付がないというものか,または,本件監査請求が請求の特定を欠くというものではないかと解される(甲37)。しかし,証拠(甲1の2)によると,原告は,尼崎市監査委員に対し,上記同一性を証する書面として,本件協会の会長がFの構成員であることを示すと原告が考える書面を添付したことが認められ,これがおよそ事実を証する書面としての適格性を有しないことを認めるべき証拠はない。また,本件監査請求の内容は,前記第2の1(3)のとおりであり,請求の特定に何ら問題はない。 (2)本件訴訟に係る着手金の支出被告は,被告訴訟代理人弁護士に対する本件訴訟に係る着手金の支出に係る損害賠償の請求をすることを求める訴えは,適法な監査請求を前置しておらず不適法である旨主張する。 本件監査請求の対象は,平成15年度ないし平成21年度の各年度における被告の本件協会に対する補助金支出及びこれが違法(不法行為の趣旨と解される。)であることを理由とする市長個人(A)等に対する損害賠償請求権の不行使であり,本訴における当初の請求もAに対する上記損害賠償請求等の義務付けを求めるものであったが,原告は,その後,上記着手金相当額を請求すべき額に加える旨の申立てをした。上記申立ては,上記補助金支出というAの不法行為による損害として新たに上記着手金の支出を加えるもので請求の拡張に当たるが,新たな財務会計行為又は怠る事実等に係る訴えを訴訟の対象に加える訴えの追加的変更ではないと解される。 本件のように当該職員の違法な公金支出及びこれに基づく当該職員に対する損害賠償請求権の不行使を監査請求の対象としていた場合,後続の住民訴訟において,同一の不法行為による損害であるが監査請求段階では主張しなかった損害についての賠償請求の義務付けを求めることは,対象とする財務会計行為又は怠る事実が監査請 象としていた場合,後続の住民訴訟において,同一の不法行為による損害であるが監査請求段階では主張しなかった損害についての賠償請求の義務付けを求めることは,対象とする財務会計行為又は怠る事実が監査請求と訴訟とで異ならないと解される以上,- 16 -監査請求前置の要件を欠くものとはいえず許されると解すべきである。 本件において,仮に上記補助金支出がAの不法行為に当たるとした場合,被告が本訴における応訴のため支出した弁護士費用が上記不法行為と相当因果関係のある損害とはいえるかは疑問ではあるが,相当因果関係が認められないとしてもこれは本案の問題であり,訴えの適法性が否定されるものではないと解される。 したがって,上記請求拡張に係る被告訴訟代理人弁護士に対する本件訴訟に係る着手金の支出に係る損害賠償の請求をすることを求める訴え部分は適法であり,被告の主張は採用できない。 平成21年度の交付決定の違法性(争点(2))(1)本件協会について後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア沿革等(乙1,4ないし6,弁論の全趣旨)(ア)尼崎市内の同和地区8地区の代表によって,昭和23年5月に結成された「O会」は,昭和25年度,尼崎市から同和関係団体としては初めて助成費を受けるなどし,昭和28年2月,「P協議会」に改組された。 (イ)昭和44年に制定された同和対策事業特別措置法において各地方公共団体に各施策の実施が求められたことを受け,尼崎市長から諮問を受けた尼崎市地区改善対策審議会は,昭和45年1月17日付けで,同審議会答申を作成した。同答申は,同和地区住民は,現在においても憲法で保障された基本的人権が著しく侵害され,経済的・社会的・文化的に低位の状態に置かれ,部落差別が根強く実在しており,国のみならず地方公共団体も 作成した。同答申は,同和地区住民は,現在においても憲法で保障された基本的人権が著しく侵害され,経済的・社会的・文化的に低位の状態に置かれ,部落差別が根強く実在しており,国のみならず地方公共団体も部落差別解消のため同和問題に対し積極的な施策を行うべき責務があるなどとし,行財政体制の整備について,現況の問題点,基本方針のほかに,同和対策連絡協議会(仮称),同和対策室(仮称),- 17 -地区総合センター(仮称)等の設置,及び同和対策促進協議会(仮称)の助成等の具体的施策を掲げていた。 (ウ)尼崎市は,同市における同和問題の解消のため,同和対策事業を行う組織として地区改善対策室(上記答申後は「同和対策室」と改称。その後「人権啓発室」を経て平成21年度から「人権課」)等を置き,各種の同和対策事業を行っていた。昭和45年4月,上記答申を受け,「P協議会」は,上記同和対策室等のほかに尼崎市における同和対策事業を促進する組織として位置づけられ,「Q協議会」となり,また,各地域の事業団体として「R協議会」が設立された。 (エ)「Q協議会」は,昭和48年10月,「S連絡会」に,昭和53年4月,地区代表の外に市民の中から同和問題についての見識や経験を持つ者及び市議会の代表も加えて運営する「T協議会」にそれぞれ組織替えされ,これに伴い,「R協議会」は,昭和48年,「U連絡会」に,昭和53年,「U協議会」にそれぞれ組織替えされた。 (オ)「T協議会」は,昭和56年10月,「S協会」に組織替えされ,これに伴い,「U協議会」も,「V協会」に組織替えされた。「S協会」は,昭和57年7月,「社団法人W協会」に組織替えされ,その下部組織であった各「V協会」は,従来の下部組織から地域の自主的な組織としての任意の団体に移行した。 (カ)尼崎市同和対策審議会は, 会」は,昭和57年7月,「社団法人W協会」に組織替えされ,その下部組織であった各「V協会」は,従来の下部組織から地域の自主的な組織としての任意の団体に移行した。 (カ)尼崎市同和対策審議会は,平成14年3月31日の地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の失効を控え,尼崎市長より平成12年3月27日付けで同和問題解決に向けた施策の今後のあり方について諮問を受け,平成13年12月28日付けで,本件協会の前身である「社団法人W協会」について,従前の取り組みの経緯を踏まえつつ,広く市民の一層の理解と協力を得る方向で検討し,同和問題を含む幅広い人権問題の解決に向けた人権啓発団体としての機能が- 18 -発揮できるよう支援することを期待する旨の答申をした。 (キ)その後,「社団法人W協会」は,平成14年7月,本件協会に名称変更され,各「V協会」も「X委員会」や「Y協会」の名称からなる人権啓発団体(以下「地域委員会」という。)に組織替えされている。 イ概要等(乙8,13,弁論の全趣旨)(ア)本件協会は,定款上,尼崎市民に人権問題の啓発を推進し,同和問題をはじめとする人権問題に対する正しい認識と深い理解を広げること等により,同和問題をはじめとする人権問題の解決に寄与することを目的とする公益法人であり,①同和問題をはじめとする人権問題に関する啓発,②人権問題に関する研修,調査及び研究,③地方公共団体からの人権問題の啓発に関する業務の受託等を事業内容とし,これらの事業を行うに当たっては特定の団体の支援又は反対を目的としてはならないとされている。 (イ)本件協会は,会長1人,副会長3人,理事13人以上18人以内(会長及び副会長を含む)及び監事2人の役員を置くこと,役員は総会において選任され,その任期は2年であることがそれ いとされている。 (イ)本件協会は,会長1人,副会長3人,理事13人以上18人以内(会長及び副会長を含む)及び監事2人の役員を置くこと,役員は総会において選任され,その任期は2年であることがそれぞれ定款で定められており,平成21年度における本件協会の役員(会長及び副会長を含む理事18名,監事2名)の出身母体は,地域委員会(出身役員7名),連合婦人会(同1名),PTA連合会(同1名),民生児童委員協議会連合会(同1名),労働者福祉協議会(同1名),人権擁護委員協議会(同1名),市議会(同2名),学識経験者(同3名),その他(同3名)である。 (ウ)本件協会には参与を置くこと,参与は尼崎市副市長,尼崎市局長及び尼崎市教育長の中から総会において選任されること,参与は参与会を構成し,会務の執行について審議すること,理事会は予算及び事業計画の決定並びに決算及び事業報告の承認等の事項につきあらかじめ参与- 19 -会の意見を聞かなければならないことがそれぞれ定款で定められており,平成21年度における本件協会の参与は,尼崎市の副市長,教育長,企画財政局長,健康福祉局長,産業経済局長,都市整備局長及び他1局長の7名である。 ウ補助金交付の目的等(甲23,乙10,12,14,弁論の全趣旨)(ア)尼崎市は,同市における人権問題を解消するため,組織として同和対策室,人権啓発室及び人権課を置いてきたが,尼崎市の同和対策事業を補完する立場から,同和問題を始めとするあらゆる人権問題について広く市民及び企業等に意識の高揚を図ることを目的として,本件協会(改組前の各団体も含む。)が実施する人権啓発事業を助成するため,昭和57年度から毎年本件協会に補助金を交付するほか,人権啓発事業を委託して委託料を支払うなどしてきた。 (イ)また,本件協会の平成20年 前の各団体も含む。)が実施する人権啓発事業を助成するため,昭和57年度から毎年本件協会に補助金を交付するほか,人権啓発事業を委託して委託料を支払うなどしてきた。 (イ)また,本件協会の平成20年度の事業活動収入は約5933万円であるところ,そのうち尼崎市からの収入が約5546万円(その内訳は,「啓発映画上映業務受託収入」として約271万円,「補助金収入」として約4302万円,「施設清掃受託収入」として約421万円,「公園保護育成業務受託収入」として約552万円)と約93%を占めているのに対し,同年度の本件協会の事業活動支出は,約5863万円である。 (2)地自法232条の2及び地自法138条の2に違反するとの点についてア前記(1)で認定した本件協会の沿革,概要及び収支関係並びに補助金交付の目的等からすれば,被告が平成21年4月9日にした平成21年度の本件協会に対する補助金交付決定(以下「平成21年度決定」という。)につき,公益上の必要性を肯定した被告(A)の判断に裁量権の逸脱・濫用はないというべきである。 イ(ア)この点,原告は,大要,①本件協会の実体は,F兵庫県連合会の所- 20 -属する7支部であること,②本件協会は会員から会費を徴収し,収益事業を行っているから営利目的の団体であること,③本件協会の現在の会長が公職選挙法違反で起訴猶予となっていること,④本件協会に対する補助金の使途について詳細な領収書がないため不明であること,⑤地自法232条の2の公益上の必要性は当該地方公共団体の財政上の余裕の程度を勘案しなければならないところ,尼崎市は平成21年度末見込みで市債残高2418億円(市民一人当たり約52万3000円)であることなどを理由に本件各交付決定が地自法232条の2及び同法138条の2に違反する旨主張する。 (イ ろ,尼崎市は平成21年度末見込みで市債残高2418億円(市民一人当たり約52万3000円)であることなどを理由に本件各交付決定が地自法232条の2及び同法138条の2に違反する旨主張する。 (イ)しかしながら,①本件協会は,前記のとおり,尼崎市を補完する立場から同市における人権啓発事業を行うものであり,尼崎市議会議員が役員に就任し,尼崎市副市長,尼崎市局長及び尼崎市教育長の中から参与が選任されるなど,社会運動団体であるF各支部とは,組織,構成員,事業内容等を異にするものであって,本件協会の役員の一部がF各支部の役員と同一人であるからという理由のみで,本件協会が同盟各支部と同一であるということはできない。他に,原告は,本件協会の役員の出身母体である婦人会がFの一部門であると主張するがこれを認めるべき証拠はなく,Fの構成員の子女が小中学校等に通っているからといってPTAがFと一体であるとはいえず,本件協会の役員の出身母体の団体事務室内に同協会関係者とFが支援する元刑事被告人を写した写真が掲示されていたとしても,同協会とFの同一性まで推認させるものとはいえない。原告は,本件協会の出身母体の構成員が各種集会に出席している旨主張するが,原告主張の各種集会がすべてFの主催する集会又はその強い影響下にある集会であるのかどうかは証拠上定かでない。Fは,同和問題の解決等に取り組む団体とされているところ,そうであれば,同じく同和問題等の人権問題に関わる本件協会の出身母体の構成員- 21 -にF又はその末端組織の構成員が含まれ,同一人が双方の役員を兼ね,あるいは,双方から同一の集会に出席するなどの事態が生じても不自然ではない。本件協会の役員のうちFの構成員以外の者は名目的な役員にすきず,同協会は,実質的にはFの指示若しくはその方針に基づき,又は あるいは,双方から同一の集会に出席するなどの事態が生じても不自然ではない。本件協会の役員のうちFの構成員以外の者は名目的な役員にすきず,同協会は,実質的にはFの指示若しくはその方針に基づき,又はFの利益を図り若しくはその利益に反しないことを行為規範として運営されているなどの事情が認められれば別論であるが,上記の構成員の重複等の事態が生じているというだけでF(各支部)と本件協会が実質的に同一であると即断することはできない。 ②本件協会は,前記のとおり,公益法人であって,営利を目的とする活動をすることはできないが,本件協会の会員から会費を徴収することや収益を公益事業に充てるために収益を目的とする事業を行うことを理由に本件協会が営利目的の団体であるということはできず,他に,同協会が営利目的の活動をしていることを認めるに足りる証拠はない。 ③証拠(甲22)によれば,本件協会の現在の会長が県会議員であるのに盆踊大会に寄付をしたことが公職選挙法に違反するとの告発事実で原告によって告発され,起訴猶予を理由に不起訴処分となったことが認められるが,当該告発事実は上記会長個人の行為を問題とするもので本件協会とは何らの関連性も窺われないから,本件協会に対する補助金の支出が公益上の必要性を欠くことにはならない。原告は,上記盆踊大会はFの主催であるとして上記告発をしたが(甲22),これを認めるに足りる証拠はない。 ④本件協会に対する補助金の使途についての詳細な領収書がなく,使途が不明であることを認めるに足りる証拠はない。 ⑤地自法232条の2の公益上の必要性は当該地方公共団体の財政上の余裕の程度を勘案しなければならないとの点は肯認できるとしても,公益上の必要性は,社会的,経済的,地域的諸事情の下において個- 22 -々具体的な検討を要するのであって,同条が 公共団体の財政上の余裕の程度を勘案しなければならないとの点は肯認できるとしても,公益上の必要性は,社会的,経済的,地域的諸事情の下において個- 22 -々具体的な検討を要するのであって,同条が地方債残高があることから直ちに同市による補助金等の支出を一切認めない趣旨を包含したものであると解すべきではない。 原告の主張は採用できない。 (3)憲法89条に違反するとの点についてア原告は,本件協会が憲法89条後段にいう「公の支配に属しない」団体であるとして,本件各交付決定が違法である旨主張する。 イしかしながら,本件協会は,前記のとおり,尼崎市の人権啓発事業を補完する立場から,同市からの補助事業及び委託事業等を行うものである。 さらに,前記のとおり,本件協会においては尼崎市議会議員が役員に就任していること,本件協会には参与が置かれ,参与は尼崎市副市長,尼崎市局長及び尼崎市教育長の中から総会において選任されること,参与は参与会を構成し,会務の執行について審議すること,理事会は予算及び事業計画の決定並びに決算及び事業報告の承認等の事項につきあらかじめ参与会の意見を聞かなければならないことに加えて,本件各交付決定の際の補助条件として「補助対象事業の実施内容及び経理状況の報告」を義務付けたうえ,補助金の目的外使用及び補助条件違反の場合には補助金の返還を求める可能性が示されていること(甲6,7)などからすれば,本件協会が行う人権啓発事業の運営などについて尼崎市が影響を与え,仮に,補助金に係る事業が,公の利益に沿わない場合が生じたとしても,尼崎市においてこれを是正する途が確保され,公の財産の濫費を防止することが可能である。 ウそうすると,本件協会は憲法89条後段にいう「公の支配」に属するものであるから,平成21年度決定が憲法89条に違反すると てこれを是正する途が確保され,公の財産の濫費を防止することが可能である。 ウそうすると,本件協会は憲法89条後段にいう「公の支配」に属するものであるから,平成21年度決定が憲法89条に違反するとはいえない。 原告の主張は理由がない。 (4)小括- 23 -したがって,本件各交付決定が違法であるとする原告の主張はいずれも理由がなく,平成21年度決定が違法であるとは認められないから,同決定をしたAは尼崎市に対して不法行為責任を負わない。 差止め請求について平成21年度決定は,上記2のとおり,違法でないというべきであるから,同決定の違法を前提に,被告に対し,本件協会に対する平成21年4月9日付け補助金交付指令書に基づく第2期分1930万5000円の支出の差止めを求める請求も理由がない。 第4 結論 よって,本件訴えのうち,平成15年度ないし平成20年度の本件各交付決定の違法を理由にAに対して2億7203万4000円及びこれに対する平成21年4月17日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による遅延損害金の請求をすることを求める部分は不適法であるからこれを却下し,原告のその余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部裁判長裁判官佐藤明裁判官木太伸広- 24 -裁判官藪田貴史- 25 -
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