- 1 - 主文 被告人を懲役13年に処する。 未決勾留日数中150日をその刑に算入する。 高松地方検察庁で保管中の大麻3袋(令和6年高松地検領第336号符号1、2及び6)をいずれも没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、特定少年であるが第1 みだりに、令和6年3月14日頃、高松市(住所省略)被告人方居宅において、大麻である大麻草4.435g(令和6年高松地検領第336号符号1、2及び6はその鑑定残量)を所持した第2 令和6年6月13日午後7時54分頃から同日午後8時1分頃までの間に、高松市(住所省略)株式会社A西側路上において、B(当時19歳)に対し、同人が同日に被告人から借りた仕事道具を仕事現場に忘れてきたことなどに腹を立て、右手に持った短刀(刃体の長さ約13.6cm)を示しながら、「謝るのが先ちゃうんか」などと言い、前記Bの生命、身体に危害を加えかねない気勢を示し、もって凶器を示して脅迫した第3 前記第2に続いて、前記第2の日時場所において、身の危険を感じた前記Bから正対した状態で両手首付近をつかまれ、両手を後方へと強く押されたのに対して、右手に前記短刀を持ったままその先端を同人の胸腹部に向けた状態で強く押し返し、殺意をもって、その状態を継続し、両者の力が拮抗して両手が震える状況がしばらく続いた後、前記Bの左手の力が緩んだ際、右手に持った前記短刀を同人の左胸部に1回突き刺さるに至らせ、よって、令和6年6月13日午後9時33分頃、香川県木田郡(住所省略)C病院において、同人を左胸部刺切創に伴う心損傷に続発した出血性ショックにより死亡させた第4 前記第2の日時場所において、業務その他正当な理由による場合でないのに、- 2 -前記短刀1本を )C病院において、同人を左胸部刺切創に伴う心損傷に続発した出血性ショックにより死亡させた第4 前記第2の日時場所において、業務その他正当な理由による場合でないのに、- 2 -前記短刀1本を携帯した。 (証拠の標目)(略)(事実認定の補足説明)判示第3について、被告人は、暴行に及んで被害者に傷害を負わせ、その結果死亡させた事実を認めるものの、殺意はなかった旨供述する。当裁判所が被告人の殺意を認定した理由は、次のとおりである。 本件で凶器となった短刀は、刃体の長さ約13.6cm、刃先の長さ約6.8cmの非常に鋭利な刃物であり、殺傷能力の高いものである。被告人も本件短刀の性状は認識していた。 被告人は、短刀が被害者に刺さった経緯につき、短刀を順手で右手に持ち、被害者に詰め寄ったところ、自身の両手首付近を被害者から両手でつかまれ、自身の後方下側に向かって力を加えられたため、被害者から加えられたのとは反対方向に、すなわち前方上側に向けて押し返すように被害者と同程度の力を加え、被告人の手が腰の高さくらいまで上がり、短刀の先端と被害者の胸腹部が25cm程度の距離で更に力を加え続けたところ、力が拮抗して手がぶるぶると震えた、この状態が5から10秒程度続いたところで、突然被害者の手の力が緩み、自身の右手が力を加えていた方向に走って、被害者の「痛い」という声が聞こえた、というのである。 被告人の供述は、この限度では、創傷の部位や程度等の客観的な証拠と整合し、関係者の供述とも大きな矛盾はなく、信用することができる(検察官も、外形的事実については、被告人の供述を前提としている。)。 被告人が被害者に両手首付近をつかまれて押され、これを押し返して拮抗状態になった際、被害者は自らの身を守るために強い力を加えていたことは明らかであり、 ついては、被告人の供述を前提としている。)。 被告人が被害者に両手首付近をつかまれて押され、これを押し返して拮抗状態になった際、被害者は自らの身を守るために強い力を加えていたことは明らかであり、被告人らの手が震える状態であったことからすると、被告人も、被害者の力に応じて相当強い力を加えたと考えられる。現に、短刀は、被害者の左胸部にほぼ水平に刺さり、被害者の心臓を貫通し、刃先が肺に達して、刃体の大部分である約11c- 3 -mの深さまで刺さっている。このように、被告人は、被害者から両手首付近をつかまれて押されたのに対し、右手に短刀を持ったままその先端が被害者の胸腹部を向いた状態で、近距離から、相当強度の力を加えたと認められる。そして、被告人も、短刀から手を放す、先端の方向をそらすなどはせず、短刀の先端が被害者の胸腹部に向いた状態のまま、被害者の力が緩むまで強い力を加え続けている。至近距離でこのような強い力をかけ続ければ、短刀が被害者の胸腹部に突き刺さって生命維持に必要な臓器を損傷させ、被害者が死に至る危険性があることは明らかであるから、被告人もこのことは認識していたと認められる。被告人は、それでもなお、短刀を持ったままその手に相当強い力を加え続けていたのであるから、被害者に両手首付近をつかまれ、これを両手で強く押し返す状態を継続した時点においては、被害者が死ぬ危険性がある行為をそれと分かってあえて行い、被害者が死ぬかもしれないがそれでも構わないとの認識、すなわち殺意があったと認められる。 なお、本件では、被害者の手の力が急に緩むという突発的な事情が介在して被害者の胸腹部へと短刀が突き刺さるに至ったものと認められるが、被告人が短刀を持ったままその手に被害者の胸腹部方向に強い力をかける状態を続けたからこそ、被害者の力が緩んだのであって な事情が介在して被害者の胸腹部へと短刀が突き刺さるに至ったものと認められるが、被告人が短刀を持ったままその手に被害者の胸腹部方向に強い力をかける状態を続けたからこそ、被害者の力が緩んだのであって、被告人の行為によって生じた事情にほかならず、この事情をもって殺意が否定されるものではない。また、被告人が、被害者が路上に血を流して倒れていることを知った後、救命措置を講じている点も、我に返って冷静さを取り戻した後の行動として、短刀を突き刺さるに至らせた際に殺意があったことと相反する行動ではない。 以上に対し、被告人は、被害者を傷つけるつもりすらなかったと述べるが、その両手首をつかまれても、短刀を手放す、刃先をそらすなどすることなく強い力をかけ続けた行動と矛盾しており、自己の心理状態に関する被告人の供述は採用できない。 したがって、判示のとおり被告人には殺意があったと認定した。 (法令の適用)- 4 -(略)(量刑の理由)被告人は、職場の同僚である被害者が被告人から借りた仕事道具を仕事現場に忘れてきたことなどに立腹し、被害者に対し、判示第2のとおり短刀を示して脅迫して追い詰め、その末に判示第3の殺人に及んだ。被告人は、被害者から両手首をつかまれ、右手に持った短刀の先端を被害者の胸腹部に向けたまま、至近距離で、両者の力が拮抗して震えるほどの強い力で押し返した。被告人の殺意は、力で押し合う中で瞬間的に生じたものであり、強固なものではなかったと認められるほか、被告人の手首をつかんだ被害者の力が緩んだという突発的な事情が介在して短刀が被害者に突き刺さるに至ったものである。しかし、このうち後者の点については、腕力で勝る被告人が短刀を持った手に強い力をかける状態を被害者に続けたからこそ、被害者の力が緩んだのであって、これも被告人の行為 者に突き刺さるに至ったものである。しかし、このうち後者の点については、腕力で勝る被告人が短刀を持った手に強い力をかける状態を被害者に続けたからこそ、被害者の力が緩んだのであって、これも被告人の行為により生じたものであり、被告人の行為は、それ自体非常に危険性の高いものであるから、突発的な事情の介在の点は大きく酌むことまではできない。被告人は、被害者の言動に立腹したというが、その内容は、刃物を持ち出して被害者に向けることをおよそ正当化し得るものではなく、短絡的な犯行というほかない。被告人が、被害者を当初から積極的に傷つけようと考えていたとまでは認められないが、これを踏まえても、危険な刃物を使って無防備な被害者を脅迫しようと考えたこと、身の危険を感じた被害者から手首をつかんで押されると、殺意をもって刃物を持ったまま被害者を押し返し続けたことの意思決定は、厳しく非難されるものである。若く尊い命が奪われた結果は取り返しのつかない誠に重大で深刻なものであり、同僚に理不尽に刃物を向けられ、突如、死に至った被害者の恐怖や無念は計り知れない。被告人は、犯行後に救命措置を講じるなどしているものの、犯行から約1年が経過しても、遺族に対して何ら慰藉の措置を講じていないばかりか、事件後しばらくの間は、被害者の死が被害者本人の事故によるものであると偽って、被害者の両親らにも接していたのであり、被害者の両親が深い悲しみのほか、被告人への激しい憤りを示していることは当然- 5 -である。 以上の事情を踏まえると、被告人の刑事責任は相当に重く、その刑事責任は、同種事案(凶器等:刃物類、処断罪と同一又は同種の罪の件数:1件、被害者の立場:知人・友人・勤務先関係、示談又は宥恕:なし、殺意:突発的で強固ではない殺意、減軽事由:なし) の中で中程度に位置付けられる。加 (凶器等:刃物類、処断罪と同一又は同種の罪の件数:1件、被害者の立場:知人・友人・勤務先関係、示談又は宥恕:なし、殺意:突発的で強固ではない殺意、減軽事由:なし) の中で中程度に位置付けられる。加えて、判示第1のとおり、自己使用目的で決して少量ではない大麻を所持していた点も軽視はできない。 そこで、被告人が、自己の責任の大きさに真摯に向き合って内省を深めているとはいえないが、殺意を争うほかは事実関係を詳細に供述し、当公判廷において、社会復帰後に少しずつ被害弁償を継続する旨誓うなど、被告人なりに反省の言葉は述べたこと、被告人の父が、更生や被害弁償の間接的な支援をする旨申し出ていること、前科がないこと、被告人の年齢など、被告人のために酌むことができる事情も考慮し、被告人を主文の刑に処するのが相当であると判断した。 (求刑懲役16年、主文同旨の没収)令和7年6月2日高松地方裁判所刑事部 裁判長裁判官横山浩典 裁判官池内継史 裁判官安部祐希
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