- 1 -平成21年11月18日判決言渡東京簡易裁判所平成20年(ハ)第34795号保証金返還請求事件口頭弁論終結日平成21年9月28日判決主文 被告は,原告に対し,金120万円及びこれに対する平成17年6月9日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は被告の負担とする。 この判決は,仮に執行することができる。 事実 第1当事者の求めた裁判 請求の趣旨主文同旨 請求の趣旨に対する答弁(1)原告の請求を棄却する。 (2)訴訟費用は原告の負担とする。 (3)仮執行免脱宣言第2当事者の主張 請求原因(1)原告は,訴外株式会社A(以下「A」という。)との間で,平成7年5月26日,同社の経営する「Bクラブ」(以下「Bクラブ」という。)への入会契約を締結し,同社に,個人正会員資格保証金(以下「保証金」という。)として金120万円を,据置期間- 2 -10年,同期間経過後退会する際は原告の請求により返還するとの約定で預託し,もって,前同日同クラブの個人正会員資格を取得した。 (2)Aは,訴外株式会社C(以下「C」という。)に対し,平成13年9月ころ,Bクラブの営業を譲渡した。 (3)原告は,Cに対し,平成17年6月1日到達の内容証明郵便をもって,Bクラブ退会の意思表示をすると共に,内容証明郵便到達後1週間以内に保証金120万円の返還を求めた。 (4)Cは,被告に対し,遅くとも平成20年6月13日までに,Bクラブの営業を譲渡し,若しくは訴外有限会社D(以下「D」という。)を経由して営業譲渡類似の経営移転をした。 (5)被告は,「Bクラブ」の名称を続用してBクラブの営業を継続している。 (6)よって,原告は,被告に対し,会社法22条1項を類推適用して保証金返還請求権に して営業譲渡類似の経営移転をした。 (5)被告は,「Bクラブ」の名称を続用してBクラブの営業を継続している。 (6)よって,原告は,被告に対し,会社法22条1項を類推適用して保証金返還請求権に基づき,金120万円及びこれに対する支払期限の日の翌日である平成17年6月9日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払いを求める。 請求原因に対する認否(1)請求原因(1)ないし(3)は不知。 (2)請求原因(4)は否認する。Cは,訴外E株式会社(以下「E」という。)から同社が所有していた福岡県田川郡a町bc番外所在の322筆の土地とその土地上の建物(以下「本件不動産」という。)を借り受けてBクラブを営業していたが,平成17年11月21日,EがDに本件不動産を売却し,それに伴いCがBクラブの- 3 -運営から撤退したために,DがBクラブの営業権も取得したが,Dはゴルフクラブの営業に習熟していないのでゴルフクラブの営業を専門に行っていた被告にBクラブの営業を委託したものである。 (3)請求原因(5)は認める。 理由 請求原因(5)は当事者間に争いがない。 成立に争いがない甲第1号証の1,第2,第3号証によれば,請求原因(1)が認められる。 前掲甲第1号証の1,成立に争いがない第4,第5号証によれば,請求原因(2)が認められる。 成立に争いがない甲第6号証の1,2によれば,請求原因(3)が認められる。 請求原因(4)について検討する。 (1)成立に争いがない乙第1ないし第4号証及び証人Fの証言を総合すると,Bクラブの営業がCから被告に代わった経緯について,次の各事実が認められる。 アCはE等(ゴルフ場用地のうち土地の9割はEが所有していたが,残りは他の地権者の所有であった。)から本件不動産等 ると,Bクラブの営業がCから被告に代わった経緯について,次の各事実が認められる。 アCはE等(ゴルフ場用地のうち土地の9割はEが所有していたが,残りは他の地権者の所有であった。)から本件不動産等を賃借してBクラブを営業していたところ,平成13年頃E所有の本件不動産について競売開始の申し立てがなされ,同年11月16日d地方裁判所e支部が競売開始決定をし,更に平成14年7月頃Eが破産開始決定を受けた。 イCはEの破産管財人からBクラブの経営から撤退して本件不動産を明け渡すように要求されたので,Bクラブの理事会は,本件- 4 -不動産の競売を阻止しクラブを存続するため,Eの債権者から被担保債権を買い取り,Eから本件不動産を買い取ってくれるスポンサーを捜すことにした。 ウBクラブの理事会では,当時,CがEに地代や家賃を滞納したり収益を上げられない状況を見ていたので,スポンサーがついた後は別の運営会社にBクラブを運営させて再建しようという意見が大勢を占めるようになった。 エ訴外株式会社G(以下「G」という。)がスポンサーを引き受け,被担保債権と本件不動産を買い取り,平成17年6月2日競売申立を取り下げたが,自社ではBクラブの運営に関与しないことにして,本件不動産をDに転売し,平成17年12月8日,中間を省略してEからDに直接本件不動産の所有権移転登記がなされた。 オGは,主にゴルフクラブを巡る債権の買い取りや転売等の営業活動をしている会社でゴルフ場を経営する被告とは協力関係にあったため,Bクラブの理事会とDに被告を紹介し,理事会も被告による経営を受け入れ,Dも自らBクラブを経営する意図がなかったのでこれを受け入れた。 カそこで,平成17年11月20日ごろまでに,Bクラブの理事会,C,D,被告の4者間で協議が整い,CはE及び他 による経営を受け入れ,Dも自らBクラブを経営する意図がなかったのでこれを受け入れた。 カそこで,平成17年11月20日ごろまでに,Bクラブの理事会,C,D,被告の4者間で協議が整い,CはE及び他の地権者との本件不動産等の賃貸借契約を合意解除してBクラブの経営から撤退し,被告はD及び他の地権者との間で本件不動産等を新たに賃貸借契約してゴルフ場開設届けを出し,Bクラブの経営を始めた。 - 5 -キ被告は,Dとは本件不動産の賃貸借契約書を交わしただけであって,ゴルフ場営業についての業務委託契約書は交わしていない。 (2)成立に争いがない甲第9号証の1ないし3,前掲乙第4号証及び証人Fの証言を総合すると,被告がBクラブの営業を開始するに当たってとった措置として,次の各事実が認められる。なお,上記証人の被告のとった営業交代の公示措置に関する証言部分は採用できない。 ア被告は,理事会からの強い要望によって,Bクラブの名称をそのまま継続使用することにした。 イ被告は,CがBクラブのコース及び施設管理を委託していた訴外有限会社Hに引き続きコース及び施設管理を委託し,同社がBクラブに備え付けた機械装置,運搬車両,什器備品等をそのまま使用してBクラブの運営を開始した。 ウ被告は,Bクラブの運営事務をしていたCの従業員の殆どをそのまま再雇用した。 エ被告は,Cとの間で,Cから個々のクラブ会員に対して運営会社が変わる旨通知することを取り決めたが,実際に通知されたかどうか被告は確認しておらず,会員から被告への問い合わせも何件かあった。 オ被告は,Bクラブの運営を開始するにあたって,個々の会員について在籍確認を行っておらず,既に退会した原告に対しても漫然とBクラブの名称を用いて平成19年度会費の徴収案内を行った。 (3)預託金会員制のゴル クラブの運営を開始するにあたって,個々の会員について在籍確認を行っておらず,既に退会した原告に対しても漫然とBクラブの名称を用いて平成19年度会費の徴収案内を行った。 (3)預託金会員制のゴルフクラブの名称がゴルフ場の営業主体を表- 6 -示するものとして用いられている場合において,ゴルフ場の営業が譲渡され,譲渡人が用いていたゴルフクラブの名称を譲受人が継続して使用しているときは,特段の事情がない限り,商法26条1項(現行会社法22条1項)の類推適用により譲受人は会員に対し預託金の返還義務を負う(最高裁判所平成16年2月20日第二小法廷判決)。本件においては,Cと被告の間には直接営業譲渡契約が締結された事実は認められないのであるから,上記法理がそのまま当てはまるものではない。しかし,会社法22条1項は外部的に同一の営業が継続しているように見える場合には債権者はそのまま営業が引き継がれていると見るのが通常であるので取引相手を保護するために営業の譲受人に債権者に対して譲渡人と共に不真正連帯債務者としての責任を負わす旨の規定であるから,その適用を外部から必ずしも明らかでない営業譲渡契約が締結された場合のみに限定するべきではない。本件について検討するに,上記(1)で各認定したところによれば,ゴルフクラブ理事会が存続している場合には,ゴルフ場の用地及び建物の大部分を所有する者が交代したことによって必ずしもそれに依存していたゴルフ場運営会社が交代しなければならない必然性はない(新たな所有者との間で賃貸借契約を交わせばよいのである。)が,ゴルフクラブ理事会の強い意向により運営会社の交代が行われたというのが実態であり,受け皿となった実質的な営業者はDではなく被告であって,Cと被告との間で実質的な事業引継の打合せはなされており,外観的に見 クラブ理事会の強い意向により運営会社の交代が行われたというのが実態であり,受け皿となった実質的な営業者はDではなく被告であって,Cと被告との間で実質的な事業引継の打合せはなされており,外観的に見れば営業譲渡があった場合と区別することはできない。そして,上記(2)で各認定したところによれば,被告は,理事会の意向に従って名称,従業員,- 7 -メンテナンス会社をそのまま維持して自らCの営業を引き継いだような外観を作出し,Cの杜撰なクラブ管理事務をそのまま引き継いで漫然と営業を続け,個々のクラブ会員に対しCとの間で債権債務は引き継いでいない旨の積極的な周知措置をとる等の特段の事情も認められないのであるから,会社法22条1項の類推適用による責任を負うものと解すべきである。 (4)以上によれば,Cと被告との間で営業譲渡類似の経営移転がなされたという意味において請求原因(4)が認められる。 結論 以上によれば,原告の請求は理由があるからこれを認容し,訴訟費用の負担につき民訴法61条を,仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用し,仮執行免脱の宣言は相当ではないのでこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。 東京簡易裁判所民事第5室裁判官伊藤正二
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