主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1請求被告は,原告らに対し,それぞれ金7510万3974円及びこれに対する平成10年9月18日(以下,平成10年の日付については,月日のみをもって記載することがある。)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,岩手県立久慈病院(以下「久慈病院」という。)消化器内科において急性肝炎の診断により入院治療を受けたC(以下「C」という。)が,劇症肝炎によって死亡したことから,Cの両親である原告らが,久慈病院を開設する被告〔注,岩手県〕に対し,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。 前提となる事実(争いのない事実は証拠を掲記しない。)・当事者アCは,昭和52年4月28日に生まれた原告らの間の男子であり,9月18日当時,日本歯科大学3学年に所属していた。 イ被告は,岩手県久慈市a町第b地割c番において,久慈病院を開設しており,D医師(以下「D医師」という。)を雇用していた。 ウ D医師は,昭和57年3月に岩手医科大学医学部を卒業し,同年11月に医師として登録した内科医である。D医師は,同年10月に岩手医科大学第一内科(副手),昭和60年6月に同大学高次救急センター(助手),同年9月に同大学第一内科(副手),平成5年7月に同大学附属花巻温泉病院内科(助手),平成6年11月に同大学第一内科(助手)にそれぞれ勤務した後,平成10年1月から,岩手県立久慈病院消化器科に科長として勤務していた。なお,同大学第一内科は,消化器科の治療及び研究をしており,特に,劇症肝炎を含む肝臓病に関しては全国でも有数の研究及び診療機関であって,D医師は,同科に在職中,消化器科一般の臨床に従事しながら,特に肝胆膵疾患を中心 科は,消化器科の治療及び研究をしており,特に,劇症肝炎を含む肝臓病に関しては全国でも有数の研究及び診療機関であって,D医師は,同科に在職中,消化器科一般の臨床に従事しながら,特に肝胆膵疾患を中心とした超音波診断学及び消化管を中心とした消化器病学を専門に研究していた。 ・久慈病院における診療経過ア Cは,8月18日ころから,食欲不振や吐き気を感じ,また,同月24日ころには,黄疸が見られるなど体調が悪化した。そのため,Cは,同日,久慈市内のE内科を受診したところ,黄疸の原因の精査をするため,久慈病院を紹介された。Cは,同日,久慈病院消化器内科を受診したところ,診察をしたD医師から,急性肝炎により1か月の入院加療が必要であるとの診断を受け,同日,久慈病院に入院した。その際のCの状態は,皮膚及び眼球の黄染が顕著で,全身に倦怠感があり,食欲不振を訴えていた。 イ Cは,8月25日,久慈病院5階の個室に移ったが,Cの皮膚や眼球の黄疸に変化はなかった。 ウ Cは,8月28日,食欲がなく,夕食後には嘔吐があり,黄疸も改善しなかった。また,D医師は,原告らに対し,「C君は,A型でもB型でもC型でもないようです。7月ころ,タイのみやげ物を食べたそうなので,A型急性肝炎の可能性はあると思いますが,まだピークが来ていないので出ていないかもしれません。今日からGI療法を始めますが,もし,劇症肝炎の可能性が出るようなら久慈病院では医師の数が足りないので,血漿交換をしたりするために岩手医大へ転送することもあります。ただし,これは宝くじに当たるような確率です。」などと説明した。そして,D医師は,同日,Cに対し,グルカゴン・インシュリン療法(GI療法)を開始したが,同月29日,これを中止した。 エ Cは,8月31日及び9月1日には食欲が回復し,夕食及び朝食を半分以 明した。そして,D医師は,同日,Cに対し,グルカゴン・インシュリン療法(GI療法)を開始したが,同月29日,これを中止した。 エ Cは,8月31日及び9月1日には食欲が回復し,夕食及び朝食を半分以上食べた。D医師は,同日,原告A(以下「原告A」という。)に対し,「ピークを過ぎたみたいです。」などと説明した。 オ Cは,9月2日,腹部が張った状態となり,再び食欲がなくなった。 Cは,9月3日ころ,D医師から,「何型の肝炎かまだ分からないんだ。もしかしたら,G型かもしれない。三陸の久慈よりも北の方の種市町とかでよく見られるものかもしれない。」などと説明された。 カ 9月4日,Cを見舞いに行った原告Aは,D医師から,Cが今後回復する旨の説明を受けた。 キところが,原告らは,9月7日午後5時半ころ,病院からの連絡を受け,久慈病院に行ったところ,D医師から,「今日の検査の結果,血液凝固PTが18パーセントになっていました。これは40パーセントを切ると亜急性肝炎か劇症肝炎ということです。C君は,血漿交換が必要で,明日の8時半に救急車を予約しておきました。医大の方へも連絡して血漿の準備もしてもらっています。」などと説明を受けるとともに,「医大で検査をして,このPT18パーセントというのが単なる計算違いだったらいいですね。劇症肝炎であれば,救命率は10ないし30パーセントです。」などと告げられた。 ク・ 8月24日から9月7日までに行われた検査における総ビリルビン値(T-BIL),GOT,GPT,コリンエステラーゼ(ChE),総コレステロール値(T-Cho),プロトロンビン時間(PT),ヘパプラスチンテスト(HPT),アルブミン(Alb)の数値は,次のとおりである。 プロトロンビン時間(PT),ヘパプラスチンテスト(HPT),アルブミン(Alb)の数値は,次のとおりである。 │項目(単位)│T-BIL │GOT │GPT │ChE │T-Cho │PT │HPT │Alb││検査日 │(㎎/dl)│(IU/l)│(IU/l)│(IU/l)│(㎎/dl)│(%) │(%) │(g/dl)││8月24日 │8.4 │1577 │2974 │250 │117 │- │- │-││8月25日 │9.7 │1774 │3148 │- │- │- │- │4.1││8月26日 │- │- │- │- │- │69 │61 │-││8月27日 │13.1 │2139 │3238 │- │- │- │- │-││8月30日 │18.7 │2576 │3562 │- │- │57 │- │-││8月31日 │21.8 │2983 │3850 │183 │99 │72 │50 │3.8││9月 3日 │24.7 │2392 │3178 │132 │91 │- │- │3.3││9月 7日 │28.3 │1487 │1904 │94 │89 4.7 │2392 │3178 │132 │91 │- │- │3.3││9月 7日 │28.3 │1487 │1904 │94 │89 │18 │36 │2.7│・また,各検査の意義については,以下のとおりである(甲21ないし23)。 a 総ビリルビン値肝疾患の兆候である黄疸を起こす色素がビリルビンである。ビリルビンは赤血球に含まれるヘモグロビンがヘムに代謝され,最終的にはビリルビンに変化し,肝でのグルクロン酸抱合の後,胆汁となって胆管から排泄される。ビリルビンは,このグルクロン酸抱合の代謝を受ける前の間接型ビリルビンと抱合を受けた後の直接型ビリルビンという二つの状態があり,この両者を合わせて総ビリルビンという。 正常値は,0.2ないし1.1mg/dlであるが,実際には,2.0ないし3. 0mg/dlにならないと臨床的な黄疸としては認められない。 bGOT,GPTいずれも,組織の障害の際に血中に逸脱する酵素である。GPTは,肝細胞の中に特に多く含まれており,肝細胞が壊れたときに高くなる性質がある。GOTは,肝細胞のみならず,筋肉や肺や腎臓の障害でも高くなる。数値が高いほど肝臓の壊れ具合が強い。 GOTの正常値は13ないし38IU/lであり,GPTの正常値は6ないし37IU/lである。 c コリンエステラーゼ肝で生産される蛋白で,肝での蛋白代謝や全身の栄養状態の指標となり得る。肝硬変や劇症肝炎などによる肝機能の低下があれば,低値となる。 正常値は,186ないし490IU/lである。 d 総コレステロールコレステロールは,肝臓で作られる物質であるため,肝障害が進むとその数値が下がる。総コレステロールとは,遊離型コレステロールとエステル型コレステロール いし490IU/lである。 d 総コレステロールコレステロールは,肝臓で作られる物質であるため,肝障害が進むとその数値が下がる。総コレステロールとは,遊離型コレステロールとエステル型コレステロールの両者を併せたものである。 正常値は,150ないし220mg/dlである。 e プロトロンビン時間プロトロンビンは,グロブリンの一種で,ビタミンKの存在下に肝細胞で産生され,凝固過程で重要な役割を果たす凝固蛋白である。血液凝固因子は,血液の中での寿命が非常に短く,肝臓が強く障害されると,プロトロンビンは急激に作られなくなって減少し,慢性的に長い時間をかけて徐々に肝臓が傷められた場合にも,徐々に減っていく。 肝での合成能力が低下すると,凝固因子が欠乏状態になり,プロトロンビン時間の延長をきたす。一方,劇症肝炎などで,いったん肝機能が回復に転じたときには,凝固能の明らかな改善を検出することができる。 判定基準値は75パーセント以上である。 f ヘパプラスチンテスト肝で合成される種々の血液凝固因子を総合的に評価する検査である。肝硬変や劇症肝炎などでは,凝固能低下(パーセントの低下)が起こる。 判定基準値は,80パーセントから150パーセントである。 g アルブミン肝で合成するヒトに特有な蛋白で,血漿滲透圧を維持したり,血液中の種々の物質を運搬する役割をもつ。肝硬変や劇症肝炎などの肝機能の低下した状態では,アルブミン合成能力が低下するため,血清アルブミン値が低下する。 判定基準値は,4.4ないし5.4g/dl(年齢によって正常値がやや異なる。)である。 ・転院後の経過ア Cは,9月8日,岩手医科大学附属病院(以下「岩手医大病院」という。)へ転院した。 Cは,同日,同病院において,急性肝炎(重症型)との診断を受けた。そして,同日中に血漿交換療法が実 後の経過ア Cは,9月8日,岩手医科大学附属病院(以下「岩手医大病院」という。)へ転院した。 Cは,同日,同病院において,急性肝炎(重症型)との診断を受けた。そして,同日中に血漿交換療法が実施され,同月9日にも血漿交換がされた。しかし,Cは,同月10日朝から意識障害が始まり,劇症肝炎(亜急性型)との診断がされた。 イ Cは,同月13日早朝,生体肝移植を受けるため,信州大学医学部付属病院(以下「信州大学病院」という。)へ搬送されたが,適当なドナーが見つからないまま,同月18日午前0時7分,死亡した(甲12)。 争点 ・ D医師がCの肝炎の劇症化につき十分な防止措置をとったか否か・D医師が8月31日の時点において,Cを劇症肝炎の治療を専門とする病院に転院させるか,あるいは,劇症肝炎の治療を行うべきであったか否か・ D医師が9月3日の時点において,Cを劇症肝炎の治療を専門とする病院に転院させるか,あるいは,劇症肝炎の治療を行うべきであったか否か・ D医師が8月31日以降も血液凝固系検査及び画像検査等を行うべきであったか否か・D医師の上記注意義務違反と結果との間の相当因果関係の有無・原告らの損害額 争点に対する当事者の主張・争点・(劇症化予防義務違反)についてア原告らの主張・Cの急性肝炎は,久慈病院へ入院した当初から重症例であり,入院後も重症化が進行していることが明らかであった。それにもかかわらず,D医師は,劇症化防止に必要な安静管理や治療を行わなかった。 ・急性肝炎の劇症化についてa 急性肝炎治療の要点について急性肝炎は,C型肝炎を除き,本来自然に治癒する傾向の強い疾患であり,通常は自然経過を観察しつつ,保存的対症療法を行えば,発症後1週間もすれば自然に治癒していくものである。したがって,急性肝炎の治療は,安 炎は,C型肝炎を除き,本来自然に治癒する傾向の強い疾患であり,通常は自然経過を観察しつつ,保存的対症療法を行えば,発症後1週間もすれば自然に治癒していくものである。したがって,急性肝炎の治療は,安静及び食事療法が主体となる。 急性肝炎の生命予後は,重症化,劇症化しない限り,極めて良好である。しかし,通常の急性ウイルス肝炎は,1ないし2パーセントの確率で重症化し,劇症肝炎に移行する。劇症肝炎の生存率は30パーセント前後であるが,亜急性型の場合の生存率は10ないし20パーセントと著しく予後不良である。 このように,劇症肝炎が発症すると手遅れとなる場合が極めて多いことから,急性肝炎の治療の基本は,劇症肝炎への移行を防止することであり,これに対する注意だけが大事なことであるとされている。 このような急性肝炎の治療ないし検査の在り方は,Cが久慈病院に入院した平成10年8月の時点において,数え切れないほどの研究成果や,臨床現場における実際的取組が報告ないし文献化されていたのであり,当時の医療水準において,急性肝炎の劇症化や,劇症肝炎による死亡を阻止できたのである。 b それにもかかわらず,D医師は,実際にそのようなことは起こるはずがないといった安易かつ緊張感を欠く態度に終始し,急性肝炎の劇症化防止に必要な措置を何ら講じなかった。このことは,D医師が,原告らに対し,肝炎の劇症化の可能性につき,「宝くじに当たるような確率です。」と述べたことなどに現れている。 ・劇症化傾向と劇症化防止措置の必要性についてaGPT値における劇症化傾向と劇症化防止措置の必要性について・GPT1000IU/lという状態が3日間継続すると,肝臓は約2000グラム壊死する計算となり,それだけで劇症肝炎の状態になってしまう。もっとも,通常の肝炎の症例では肝細胞の再生が行われる( て・GPT1000IU/lという状態が3日間継続すると,肝臓は約2000グラム壊死する計算となり,それだけで劇症肝炎の状態になってしまう。もっとも,通常の肝炎の症例では肝細胞の再生が行われる(通常の急性肝炎の場合,入院後の翌日ないし翌々日には,GOT値,GPT値は軽快し始める。)ので,GPT値1000IU/l以上のすべてが劇症化するわけではないが,GPT値,GOT値が低下しない場合,すなわち,肝細胞の再生がうまく機能しない場合は,劇症肝炎に移行することになる。したがって,GPT値,GOT値の推移を毎日,あるいは,少なくとも頻繁に測定し,慎重に観察することが重要である。 ・特に,GPT1000IU/l以上が5ないし7日間持続し,かつ下降傾向を示さない場合は,患者は大変危険な状態に置かれることになるから,直ちに,副腎皮質ホルモンを投与するなどして,肝細胞破壊の進行を食い止めることが必要である。 bCの場合Cは,入院当初から一貫してGPTが1000IU/lを超える急性肝炎の重症例であった。すなわち,Cは,8月24日の入院時点で,既にGPT値が2974IU/l,GOT値が1577IU/lであったが,その後,いずれも上昇し続け,7日後の8月30日には,GPT3562IU/l,GOT2576IU/lとなった。そして,同月31日には,それぞれ3850IU/l,2983IU/lと更に上昇しており,下降傾向は見られなかった。 このように,Cは,久慈病院入院後1週間で,急激に肝細胞が破壊されたのである。 cD医師の過失したがって,D医師としては,Cに対して副腎皮質ホルモンを投与するなどして肝細胞壊死の進行を防止すべきであったのに,全く何の措置も行わなかったのであり,その結果,Cの肝炎は劇症化したのである。 ・安静管理の不十分a安静管理の必 して副腎皮質ホルモンを投与するなどして肝細胞壊死の進行を防止すべきであったのに,全く何の措置も行わなかったのであり,その結果,Cの肝炎は劇症化したのである。 ・安静管理の不十分a安静管理の必要性急性肝炎は,肝細胞の壊死による低血糖に対処しつつ,安静仰臥を確保し,肝血流量を増加させ,肝の負担を軽減し,肝細胞の回復を促進することが必要不可欠である。特に,GPT値1000IU/l以上が何日も続く危険な状態のときには,トイレ,洗面も含め,歩行,運動等による肝血流の減少を絶対的に回避する必要があり,このような場合には,トイレ,洗面もベッド上で行わせるなどして,ベッド上で絶対安静を確保しなければならない。 bCの場合・したがって,Cは,入院当初から一貫してGPT値が1000IU/lを超える異常な高値を示していたから,入院直後の時点において,ベッド上での絶対安静にすることが必要であった。 ・それにもかかわらず,D医師は,Cに対し,歩行や部屋から出ることを禁止するなどの明確な安静の指示をせず,トイレに行くことや,洗面,シャワーを行うことを許した。看護師も,入院直後に院内歩行を注意したぐらいであった。 なお,D医師の入院指示書(乙1の4)には,安静度につき,トイレ洗面のみ可,入浴についてシャワー可との記載があるが,GPT値が2974IU/l,GOT値が1577IU/lというCの入院時の病状からすれば,トイレやシャワーも禁止されなければならなかったから,その指示は全く不十分であった。 ・被告は,D医師がCの入院時に,安静度としてトイレ,洗面のみを許可し,安静を指示したと主張する。しかし,Cは,入院直後,原告両名と一緒に病院1階の売店に湯飲み茶碗を買いに行っているのであるが,「トイレ,洗面以外は安静に」といった明確な指示がなされていたとすれば, ,安静を指示したと主張する。しかし,Cは,入院直後,原告両名と一緒に病院1階の売店に湯飲み茶碗を買いに行っているのであるが,「トイレ,洗面以外は安静に」といった明確な指示がなされていたとすれば,Cがそのような行動をとることはなかったはずである。 この点,「看護計画」(乙1の9)におけるシャワー可との指示の記載は抹消されており,「退院時サマリー」(乙3の7)には,「かくれてシャワーしているようす」とCに責任を転嫁するような記載がされている。しかし,Cがシャワーを使っていたのはナースセンターの隣の病室であり,しかも,シャンプー,ボディーシャンプー,髭剃り等シャワー用品も,洗面器に入れた状態で,常時病室に置いていた。それにもかかわらず,CがD医師や看護師から注意されたことはなかったのである。 ・ GI療法についてaD医師は,Cに対してGI療法を行ったが,これは,Cに必要な治療方法ではなかった。 すなわち,GI療法は,急性肝炎ではなく,劇症肝炎に対する特殊療法の一つとして位置付けられており,しかも,GI療法には吐き気,嘔吐,低カリウム血症,低血糖などの副作用があるため,電解質や血糖を測定して十分に注意を払う必要があるが,D医師は,それらの測定を何らしなかった。 また,GI療法は,既に有効性がないことが明らかとなっている。 bこのように,久慈病院における診療体制は,各診療行為の位置付けすら不十分であって,おざなりな面が強く,内部の意思疎通も不十分であった。そのような背景の下,D医師のCに対する医療行為もおざなりにされたものである。 c なお,D医師は,Cを岩手医大病院に転院させる際の「診療情報提供書」(乙1の13)において,「GI療法は本人が……拒否したため,中止してしまいました」と述べているが,本当に有効な治療方法であれば,本人が嫌がったと ,Cを岩手医大病院に転院させる際の「診療情報提供書」(乙1の13)において,「GI療法は本人が……拒否したため,中止してしまいました」と述べているが,本当に有効な治療方法であれば,本人が嫌がったとしてもきちんと説得して実施するのが専門家である医師の責任というべきである。 ・劇症肝炎のメカニズムが未解明であることについてa 被告は,急性肝炎が劇症化するメカニズムや,その確実な予知方法が未解明であったことを根拠として,D医師が劇症化防止を含む急性肝炎の適切な治療を行わなかったことが,当時の医療水準として許容されるかのような主張をする。 b しかしながら,急性肝炎劇症化のメカニズム等が未解明であることと,劇症肝炎を回避しつつ急性肝炎の適切な治療を行うこととは全く別の問題であって,平成10年8月の時点において,劇症肝炎に関する医療水準として,おおむね前記のとおりの治療方針,治療方法等が確立していた。 劇症肝炎対策としては劇症化の予知と予防が重要であり,プロトロンビン時間40パーセント以下及び肝性昏睡Ⅱ度以上という診断基準にとらわれていると,脳症が出現していない間にも肝不全状態が進行し,脳症出現時には既に肝細胞壊死が広範になってしまうケースを見逃すこともあるので,一般の急性肝炎と違う経過をたどったらまず劇症肝炎を疑うべきなのである。 c 本件では,被告がこのような急性肝炎治療の基本に見合った安静管理,各種検査を行ったのかどうか,さらには,被告のCに対する病状判断が適切だったのかどうかが問題となっているのであって,劇症肝炎発症のメカニズムが解明し尽くされていないこと等を持ち出して医学の限界を云々するのは,悪質な議論のすり替えである。被告自身,劇症肝炎の可能性が出るようなら岩手医大病院へ転送することを当然の前提としていた。本件は,D医師がCに劇症肝炎 いないこと等を持ち出して医学の限界を云々するのは,悪質な議論のすり替えである。被告自身,劇症肝炎の可能性が出るようなら岩手医大病院へ転送することを当然の前提としていた。本件は,D医師がCに劇症肝炎の可能性が出ていることを見落とした(あるいは,気づくのが致命的に遅かった)ことにより引き起こされた医療過誤事件であり,急性肝炎の劇症化のメカニズムが未解明であることとか,医学が万能でないことなどとは全く無関係である。 イ被告の主張・ D医師は,Cの肝炎の劇症化防止に必要な安全管理及び治療を行っていたから,この点に関し,D医師に過失はない。 ・急性肝炎の劇症化についてa急性肝炎治療の要点について急性ウィルス性肝炎は,そのうちの一部(0.5ないし1パーセントと推定されるとする文献(甲14)もある。)が重症化して劇症肝炎に移行することになるが,劇症肝炎が発症すると手遅れとなる場合が多いことから,急性肝炎患者の治療に当たる医師は,常にそのことを念頭に置いて注意深い観察を行うことが必要である。 しかし,劇症肝炎,特に亜急性型は,その成因,劇症化以前の予知,発症予防法,発症後の治療などがすべて,十分には解明ないし確立されていない。これらに関して,諸家が独自の見解を述べているが,科学的根拠に基づいて,その有用性や効果が確認されている方法はないのである。 bD医師は,入院当初から,Cの肝炎が劇症化する可能性を念頭に置いて診療していた。急性肝炎の劇症化率は0.5ないし1パーセント程度であるが,少ない確率でも劇症化が起こり得ることが念頭にあったからこそ,D医師は,劇症化の兆候も全く見られなかった8月28日の時点で,あえて原告らに対する病状説明において「宝くじに当たるような確率であるが,劇症化する」と説明したのである。劇症化について,何ら考慮していなければ 劇症化の兆候も全く見られなかった8月28日の時点で,あえて原告らに対する病状説明において「宝くじに当たるような確率であるが,劇症化する」と説明したのである。劇症化について,何ら考慮していなければ,そもそも劇症化の可能性について説明していない。 ・劇症化傾向と劇症化防止措置の必要性についてaGPT値における劇症化傾向と劇症化防止措置の必要性について・肝炎の存在を知り,その経過を知るための指標として,一般的にGOT値,GPT値が用いられる。しかし,これらが増加するということは,それ自体肝炎の必須の症状であり,劇症化の兆候ではないし,これらが高値であることも,単純に肝炎の劇症化,重症化を意味するものではない。急性肝炎の症例でも,GOTが最高9872IU/l,GPTが最高7627IU/l程度まで上昇するものがある。 むしろ,これらが高値であるということは,これらの細胞を放出できる「生きた」肝細胞が多いということを意味する。 ・また,通常の急性肝炎であっても,GOT値,GPT値の増加開始から極期(最も肝炎の程度がひどい時期)までの期間が半月から1か月程度かかることは珍しくない。 ・肝炎が治癒する過程において,GOT値,GPT値は極期の後に下がる。このことは,肝細胞の破壊が止まり,肝機能が改善することの最大かつ最も早い指標の一つである。 bCの場合・久慈病院入院時のCの状態は,GOT,GPTは高値であったが,プロトロンビン時間,ヘパプラスチンテストなどは正常であり,軽症ではないにしても,通常の急性肝炎と考えて全く矛盾のない所見であり,特に劇症化を疑うべき状態ではなかった。 仮に,GOT,GPTの上昇が若干遷延している印象があったとしても,極めて多岐にわたる急性肝炎の経過の一つとして全く自然であり,重症化を想起しなければならないとい 症化を疑うべき状態ではなかった。 仮に,GOT,GPTの上昇が若干遷延している印象があったとしても,極めて多岐にわたる急性肝炎の経過の一つとして全く自然であり,重症化を想起しなければならないということではなかった。 ・なお,原告らは,甲19を根拠として,GOT値,GPT値が1000IU/l以上の場合にはステロイド(副腎皮質ホルモン)を使用すべきであったと主張する。 しかし,急性肝炎に対するステロイド治療の必要性及び有効性について定まった見解はなく,一般的にその効果が認められて使用されているというわけではない。逆に,急性ウイルス肝炎は免疫機序で治癒するので,特にB型については,ステロイドが抗体産生を抑え,病気を遷延させるので禁忌である。ステロイドは肝炎ウイルスの持続感染を助長するので,通常は禁忌であり,やむを得ず使用する場合もあるが,その方法や是非についての一定の指針はない。Cに関しても,ステロイドを投与していさえすれば改善したとする根拠はない。 cD医師の過失以上のとおり,Cは特に肝炎の劇症化が疑われる状態ではなかったから,D医師が副腎皮質ホルモンを投与するなどしなかったことに過失はない。 ・安静管理の不十分との主張についてa安静管理の必要性急性肝炎の治療の基本は安静及び食事療法であるが,その安静度につき統一した見解はない。一般的に要求されるのは,おおむねトイレ,洗面,食事以外は安静にするというものであり,原告らが主張するように,「GPT値が1000IU/lを超えるような重症事例ではトイレ,洗面もベッド上で行わせる必要がある」というわけではない。 bCの場合・久慈病院がCの入院後に指示した安静内容は,「トイレ,洗面のみ歩行可,ベッド上清拭」である(乙1の4,9,同3)。看護目標としても「臥床安静の必要性を理解でき,不自 わけではない。 bCの場合・久慈病院がCの入院後に指示した安静内容は,「トイレ,洗面のみ歩行可,ベッド上清拭」である(乙1の4,9,同3)。看護目標としても「臥床安静の必要性を理解でき,不自由なく療養できる」ことをあげ(乙1の9・2丁目「看護目標#3」),安静を保たせるために下膳・配膳を介助し(同・1丁目左上,2枚目「計画9」),枕元にガーグルベースン(うがい用に使用するもの),ティッシュ,タオルを準備した(同・2丁目「計画6」)。 なお,D医師は,入院当初,「シャワー可」としたものの,同日あるいは翌日のうちに安静度を強化した方がよいと考え,「ベッド上清拭」に変更し,その旨看護師に指示した。そのため,看護計画(乙1の9)では,「シャワー可」が消されて「B・B」(ベッド上清拭)とされたのである。この変更の時期が入院後間もなくであることは,看護計画(乙1の9)の「計画」,「問題点」欄に,ベッド上安静を前提とした記載が見られることからも明らかである。 ・また,久慈病院では,入院後も指示どおりの安静度が保たれているかにつき,注意して観察,指導を行っていた。例えば,Cの医療記録(乙1の10)には,8月24日の欄に「エレベーターで下に行ったりしているため安静について説明」,同月28日の欄に「TELかけようと廊下歩行しているため安静について再度説明する」,「安静について話してみる」との記載があり,また,原告B(以下「原告B」という。)も,Cが「昨日病室から出て歩いていたのは悪いと,看護婦さんから注意された」(甲18)ことを認めている。 ・D医師も看護師も,Cがシャワーを使っていることを何ら承知又は認容していない。Cは,理解力にたけた成人であるから,久慈病院が安静及びシャワーの禁止を説明したことで協力が得られると期待したとしても,責められるべき 師も,Cがシャワーを使っていることを何ら承知又は認容していない。Cは,理解力にたけた成人であるから,久慈病院が安静及びシャワーの禁止を説明したことで協力が得られると期待したとしても,責められるべきことではない。 ・急性肝炎の治療についてa 久慈病院は,通常一般に行われる急性肝炎の治療である補液・点滴を行うとともに,GI療法を行った。 bGI療法について・GI療法は,肝再生促進を目的として実施される治療法であり,肝細胞が壊死する病態に用いられる。劇症肝炎だけでなく,急性肝炎や非代償性肝硬変などでも施行される。GI療法を劇症肝炎発症以前に行うことで,肝臓に何らかの悪影響を与えるという知見はない。 原告らがGI療法を劇症肝炎の治療法と認めるのであれば,久慈病院は結果的に劇症肝炎に対する治療を早期に行ったことになるから,何ら責められるべきことはない。 ・久慈病院では,GI療法施行時に電解質及び血糖の測定をしていない。GI療法の副作用として低血糖や低カリウム血症があるが,これらを回避するためにブドウ糖濃度が高く(10パーセント),カリウムなどの電解質が含まれている維持輸液(フィジオゾール3号)を用い,グルカゴンは1ミリグラム(基本は2ミリグラムである。),速効性インスリンを10単位(基本は20単位である。)として施行した。 ・GI療法の副作用として嘔気・嘔吐はよく知られるところであり,特に肝性昏睡Ⅱ度より軽度の場合には生じやすいといわれている。Cの場合,同療法による嘔気が激しく,補液速度を遅くしても症状は改善しなかった。 嘔気が抑えられない場合,経口摂取ができないため,肝臓に栄養を与えることができない。制吐剤を与えたとしても,通常の薬剤は肝臓で代謝されるため,肝臓に更に負担がかかることになるため,D医師は,それよりもGI療法を中止する 合,経口摂取ができないため,肝臓に栄養を与えることができない。制吐剤を与えたとしても,通常の薬剤は肝臓で代謝されるため,肝臓に更に負担がかかることになるため,D医師は,それよりもGI療法を中止する方が適切と考え,同療法を中止した。 この点,原告らは,よい治療法ならば無理にでも強行すべきであると主張する。しかし,一般的に,臨床医学において,「絶対的によい」治療法はなく,どのような治療法も,望ましい作用と,望ましくない作用を併せ持つのであり,望ましくない作用が望ましい作用を上回ると評価される場合には,これを中止すべきことこそが医師の注意義務である。したがって,D医師の上記措置は適切なものであり,原告らの上記主張は,現実の臨床医学の状況においては当てはまらない。 ・争点・(8月31日における転院義務等の違反の有無)についてア原告らの主張・急性肝炎の劇症肝炎への移行についてa 急性肝炎治療の要点について・前記のとおり,急性肝炎の治療の基本は,劇症肝炎への移行を防止することであり,極期を過ぎたか否か,すなわち,重症化ないし劇症化するかどうかを見極めることが最も重要である。したがって,医師としては,重症化及び劇症化への移行の可能性を常に留意しながら,注意深く観察し,劇症化の兆候を早期に捉え,対処しなければならない。 ・劇症化が疑われた場合の措置もし,肝炎の劇症化が疑われれば,低血糖を防止するため,静脈路を確保し,消化管出血などの合併症対策を早期に行い,集中治療の可能な専門施設へ直ちに紹介しなければならない。すなわち,劇症肝炎では,肝機能不全により重症の低血糖,電解質異常及び血液凝固異常が起こるので,集中治療室における厳重な全身管理が必要であり,適切な全身管理の有無が劇症肝炎の予後を左右する。したがって,劇症肝炎の可能性が疑われた場合 より重症の低血糖,電解質異常及び血液凝固異常が起こるので,集中治療室における厳重な全身管理が必要であり,適切な全身管理の有無が劇症肝炎の予後を左右する。したがって,劇症肝炎の可能性が疑われた場合,三次医療機関,特に劇症肝炎の治療を専門とする病院へ可能な限り速やかに転院させなければならない。 なお,劇症化が疑われる場合には,その治療方法として,厳重な全身管理,肝機能の維持・代償(人工肝補助療法等),肝細胞破壊進展の阻止(インターフェロンやステロイド投与等)を集中的に行うべきである。 b 急性肝炎における劇症化の発見方法文献等によれば,劇症化を疑うべき目安については,次のとおりであり,おおむね見解の一致が見られる。 ・悪心,嘔吐及び全身倦怠感の増悪,問診の必要性通常の急性肝炎では,一般に,発黄後自覚症状が軽減し,食欲も回復するが,劇症肝炎では,むしろ,食欲不振,悪心,嘔吐及び全身倦怠感が増悪する。したがって,劇症肝炎の鑑別診断には,詳細かつ慎重な問診によって,発黄後も食欲不振,全身倦怠感等の症状が持続していないかどうかに注意する必要がある。 ・各種検査成績また,肝炎の劇症化の兆候は,次のような検査成績に現れるため,早期診断のためには,これらの数値を注意深くチェックすることが必要不可欠である。 ① 著しい高ビリルビン値ビリルビン値が20mg/dl以上で,GOT値,GPT値がそれぞれ2000IU/l以上を示す場合,又は,GPT及びGOT1000IU/l以上が3ないし5日以上続くと,急性肝炎の重症例とされている。 ② ビリルビン値上昇に反するGOT値,GPT値の低下③ プロトロンビン時間の著しい延長劇症肝炎の場合,プロトロンビン時間は40パーセントを切る。 ④ ヘパプラスチンテスト値,コリンエステラーゼ値及びコレステロール値の著しい低下凝 ,GPT値の低下③ プロトロンビン時間の著しい延長劇症肝炎の場合,プロトロンビン時間は40パーセントを切る。 ④ ヘパプラスチンテスト値,コリンエステラーゼ値及びコレステロール値の著しい低下凝固系検査は,肝予備能を最も敏感に反映するため,肝炎の重症度判定に最も重要である。 ・その他の症状等上記のほか,意識障害(ただし,抑うつないし躁状態,睡眠リズムの変化等の軽いものも含まれる。),腹水,肝濁音界の縮小,肝萎縮なども急性肝炎の劇症化の目安である。 ・急性肝炎の原因さらに,非A型,非B型及び非C型の各急性肝炎は,ウイルス排除が強く,肝炎が進行性であり,劇症化する確率が高いから,特に注意する必要がある。 ・ Cの肝炎における劇症化の兆候a 悪心,嘔吐及び全身倦怠感の増悪Cは,8月22日に発黄した後,同月24日に久慈病院に入院してD医師の治療を受けるようになったが,その後も一貫して,食欲不振,吐き気及び全身倦怠感を訴え続けており,その症状は増悪しつつあった。 b 各種検査成績について・ Cは,8月31日の時点で,総ビリルビン値が21.8mg/dl,GOT値が2576IU/l,GPT値が3562IU/lであり,急性肝炎の重症例に該当していた。 ・また,Cの8月26日から同月31日へのヘパプラスチンテスト値,コリンエステラーゼ値及びコレステロール値の推移を見ると,ヘパプラスチンテスト値は,61パーセントから50パーセントへ,コリンエステラーゼ値は250IU/lから183IU/lへ,コレステロール値は117mg/dlから99mg/dlへと,それぞれ著しく低下しており,8月31日の時点におけるCの検査結果は,急性肝炎の劇症化の兆候を明らかに示していた。 ・さらに,Cの肝炎は,非A型,非B型及び非C型のウイルス性急性肝炎であったから,劇症 ぞれ著しく低下しており,8月31日の時点におけるCの検査結果は,急性肝炎の劇症化の兆候を明らかに示していた。 ・さらに,Cの肝炎は,非A型,非B型及び非C型のウイルス性急性肝炎であったから,劇症肝炎亜急性型になる可能性が高かった。 c その他の症状について腹水,肝濁音界の縮小,肝萎縮については,D医師が必要な検査を怠ったため,正確に把握されていなかった。 d8月31日における転院義務以上のようなCの症状及び各種検査結果によれば,Cの肝炎は劇症化が疑われる典型例であったから,D医師は,遅くとも8月31日には,Cの肝炎の劇症化を当然に疑って,転院等の必要な措置をとるべきであった。 eD医師の過失それにもかかわらず,D医師は,漫然とこれらの兆候を見落としたばかりか,9月4日には,Cの急性肝炎が回復の見通しにあるとの誤った診断をした上で,9月7日にプロトロンビン時間が18パーセントに低下するまで,Cの肝炎の劇症化に気づかなかったのである。 ・被告の主張に対する反論a プロトンビン時間の上昇と食欲の回復等・被告は,8月31日以降のCの症状を捉え,急性肝炎の増悪を示唆する所見はなく,かえって,改善を示す兆候があったと主張する。 ・プロトロンビン時間について確かに,Cのプロトロンビン時間は,8月31日に一時的に72パーセントまで上昇している。しかし,このことと,Cの自覚症状に関するいくつかの訴え以外,肝炎の改善を示す兆候はなく,むしろ,それ以外のすべての指標は,急性肝炎の重症化ないし劇症化を示していた。 すなわち,8月31日までにGOT値,GPT値は2000IU/l以上となっており,総ビリルビンも20mg/dl以上になっていた(正常値は,0.2ないし1.1mg/dlである。)。また,コリンエステラーゼ(基準値は,203ないし450IU T値は2000IU/l以上となっており,総ビリルビンも20mg/dl以上になっていた(正常値は,0.2ないし1.1mg/dlである。)。また,コリンエステラーゼ(基準値は,203ないし450IU/lである。)は8月24日の250IU/lから183IU/lへ移行し,総コレステロール(基準値は,130ないし250mg/dlである。)は,同日の117mg/dlから99mg/dlへ,ヘパプラスチンテスト(判定基準値は,80ないし150パーセントである。)は,同月26日の61パーセントから50パーセントへ,それぞれ低下していた(アルブミンも低下していた。)。このうち,ヘパプラスチンテストは,プロトロンビン時間よりも肝炎による凝固因子の低下を鋭敏に反映するものであるから,Cの肝予備能は,入院後一貫して低下していたものと考えられる。 D医師は,これらの検査数値のすべてに目をつぶり,プロトロンビン時間の一時的上昇のみをもって,極めて安易にCの肝炎を回復するものと判断したのである。 なお,8月31日のプロトロンビン時間の測定値72パーセントは,8月26日から30日までの同検査数値の推移(69パーセントから57パーセントへ)や,8月31日時点でのヘパプラスチンテストの結果と矛盾する数値であることからすれば,一時的な異常値か,何らかの測定ミスによるものと考えられる。 ・Cの食欲及び食事摂取量についてⅰ他方,Cは,8月31日(及び9月1日),食欲が回復してだるさも軽減したかのごとく述べたようである。しかし,これは,グルカゴン・インシュリン点滴が中止されたことによる一時的なものにすぎず,Cの食事摂取量は,次の表記載のとおり,依然として少量であり,9月1日に原告Bが持ってきたちらし寿司を少し食べたりしたものの,同月2日の昼食以降は,ほとんど食事を口にしない状 る一時的なものにすぎず,Cの食事摂取量は,次の表記載のとおり,依然として少量であり,9月1日に原告Bが持ってきたちらし寿司を少し食べたりしたものの,同月2日の昼食以降は,ほとんど食事を口にしない状態が続いた。 │ │朝 │昼 │夜 │看護記録の記載 ││8月31日│3口 │3分の1 │2分の1 │ ││9月1日 │ │ほとんど食│5分の1弱│ ││ │ │べず │ │ ││9月2日 │ │副食の2分│副食の2分│胃がもたれて何か張って││ │ │の1 │の1 │いるようです ││ │ │ │ │腹が張った感じがあり夜││ │ │ │ │もよく眠れない ││9月3日 │2分の1 │5分の1 │なし │昼はお腹がいっぱいで食││ │ │ │ │べれなかった ││ │ │ │ │夕食摂取していず ││ │ │ │ ││ │ │ │ │夕食摂取していず ││ │ │ │ │胃の調子が悪くて食べた││ │ │ │ │くない ││ │ │ │ │表情悪く臥床している ││9月4日 │なし │サンドイッ│少量 │昼食全く摂取せず ││ │ │チ2個 │ │食べたい気はあるが,食││ │ │ │ │べると入っていかない ││9月5日 │パン3個 │主食2分の│3分の1 │朝おそくまで寝ている ││ │ │1,副食4│ │ ││ │ │分の1 │ │ ││9月6日 │なし │少量 │少量 │朝はだるいです ││ │ │ │ │食欲(-) ││ │ │ │ │全身だるくて熱いですネ││ │ │ │ │ぐったりしている │なお,被告は,Cが9月2日の朝食に,ロールパン3個と牛乳を摂取した旨主張するが,Cは同日, │ │ │ │ぐったりしている │なお,被告は,Cが9月2日の朝食に,ロールパン3個と牛乳を摂取した旨主張するが,Cは同日,原告Bに対し,「ロールパンもおいしくない」と言っていたのであって,ロールパン3個すべてを食べたとは考えられない。また,Cは牛乳が嫌いであり,冷蔵庫にあった牛乳は原告Bが自宅に持ち帰っていたから,Cは飲んでいない。 ⅱD医師が,8月31日前後においてCの食欲がそれほど回復したわけではないことを把握することは容易であった。すなわち,Cは,8月30日の夜に,原告Bが持ち込んだ串団子を一本食べてはいるが,その後,「串団子を食べたらいつもより下りていかない,失敗した」と述べたし,同月31日には,「食欲はまずまずです」とは言いながら,朝3口,昼3分の1,夜2分の1しか食べていなかった。 さらに,9月1日には,「お腹いっぱい食べました」となっているが(この「お腹いっぱい」という表現は,量を意味しているものではない。),その後は,胃がもたれて食べられない状態となっていたのである(乙1の10)。 したがって,D医師は,客観的な食事の摂取量に注意しつつ,より慎重な問診を実施するなどして,Cの症状を正確に把握するように務めていれば,Cの食欲不振が決して回復に向かっていたわけでないことに容易に気づいたはずである。 ⅲ 被告は,Cの吐き気・嘔吐の症状につき,GI療法の副作用によるものと主張するが,Cは,GI療法中止後の9月4日にも吐き気を訴えており,GI療法と関係なく,入院期間中ほぼ一貫して吐き気の症状は続いていたのである。 b 診断と転院時期との関係について・被告は,劇症肝炎と「診断」された時点で転院すべき義務が発生することを前提として,Cは9月7日の時点で劇症肝炎を ほぼ一貫して吐き気の症状は続いていたのである。 b 診断と転院時期との関係について・被告は,劇症肝炎と「診断」された時点で転院すべき義務が発生することを前提として,Cは9月7日の時点で劇症肝炎を発症していなかったから,D医師にはその時点で転院させるべき義務はなかったと主張する。 ・劇症肝炎の診断基準は,「肝炎のうち症状発現後8週間以内に高度の肝機能障害に基づいて肝性昏睡Ⅱ度以上の脳症を来たし,プロトロンビン時間40%以下を示すものとする。そのうちには発病後10日以内に脳症が発現する急性型とそれ以後に発現する亜急性型がある」(甲14)とされている。岩手医大病院に転院する段階において,CにⅡ度以上の肝性昏睡は生じていなかったから,劇症肝炎の診断基準は満たされていなかったとみるべきであろう。 しかし,この診断基準が満たされていたかどうかということと,劇症肝炎の一部の症状が発現していたかどうかということは,別の次元のことである。診断基準とは,確定的な診断をするための基準であって,それをまだ全部満たしていなかったからといって,その患者に出ている症状が,その疾患とは無関係ということにはならない。 確かに,上記診断基準に従う限り,転院時においてCを劇症肝炎と診断することはできなかったであろうが,Cを「劇症肝炎の疑い」と診断することは可能であった。確定的な診断ができないからといって,劇症肝炎の症状,あるいはその予兆を無視してよいということにはならないのである。 ・また,転院すべき時期の基準となる劇症肝炎の「診断」とは,診断基準に合致するという意味の確定診断のことを指しているわけではない。このことは,被告の引用する文献(甲14)が,「劇症肝炎早期診断の手がかり」を掲げ,いかに早期に劇症肝炎を把握するかを強調している(60頁)ばかりでなく,その論述の趣 のことを指しているわけではない。このことは,被告の引用する文献(甲14)が,「劇症肝炎早期診断の手がかり」を掲げ,いかに早期に劇症肝炎を把握するかを強調している(60頁)ばかりでなく,その論述の趣旨が,確定診断を待っていては救命できないことを前提に,いかにして劇症肝炎化を早期に把握して救命するかという点に置かれていることからみても,明らかである。 cCの急性肝炎の重症化の時期について被告は,Cの急性肝炎が重症化したのは9月7日の時点である旨主張する。 急性肝炎の重症例については,明確な定義はないが,一般に,総ビリルビン値が20mg/dl以上,GOT値,GPT値が2000IU/l以上で,自覚症状が強いことがその目安となっている。 Cについては,食欲不振や,全身倦怠感等の自覚症状は,入院当初から強度なものがあり,8月31日には,総ビリルビン値が21.8mg/dl,GOT値が2392IU/l,GPT値が3850IU/lとなっていたから,この時点で,既に劇症化の疑いのある重症急性肝炎であったと見るべきである。 ・久慈病院に求められる医療水準について久慈病院は,自ら発行するパンフレットにおいて,「7万2000人の医療圏で唯一の中核的総合病院」と標榜するものである以上,単なる一般の開業医,臨床医よりも高い注意義務が要求される。このことは,久慈病院に「総合血液検査システム」も備え付けられており,容易に血液検査を実施できる体制であったことからもいえる。 イ被告の主張・急性肝炎の劇症化への移行についてa 劇症肝炎治療の要点について急性肝炎の治療に当たり,劇症化するかどうかを見極めることが重要であり,肝炎の劇症化が疑われれば,集中治療の可能な三次医療機関,特に劇症肝炎の治療を専門とする病院へ可能な限り速やかに転院させなければならないことは,原告 り,劇症化するかどうかを見極めることが重要であり,肝炎の劇症化が疑われれば,集中治療の可能な三次医療機関,特に劇症肝炎の治療を専門とする病院へ可能な限り速やかに転院させなければならないことは,原告らの主張のとおりである。 b 急性肝炎における劇症化の発見方法・悪心,嘔吐及び全身倦怠感の増悪,問診の必要性確かに,急性肝炎の過中に劇症肝炎に移行する場合の予知に役立つ所見として,黄疸出現後の全身倦怠感,消化器症状の悪化が挙げられることもある。 しかし,急性肝炎の経過中に劇症化する場合,その兆候となるものは,黄疸出現後に全身倦怠感が生じたり,心窩部不快感及び悪心などの消化器症状が悪化したりすることではなく,これらの悪化に加え,更に重症感がみられること,並びに血清ビリルビンが30mg/dl以上及びプロトロンビン時間が40パーセント以下であることである。 すなわち,急性肝炎であっても,黄疸出現と同時期に食欲不振,全身倦怠感,吐き気,嘔吐等の症状が出現するから,これらの全身倦怠感,消化器症状などの症状から特別に劇症化を疑わなければならないのは,これらの症状が黄疸出現後も継続するだけでなく,他覚的にも明らかな程度に悪化(重症化)した場合に限られる。また,そもそも,自他覚症状のみで急性肝炎の劇症化を正確に予知することはできない。 したがって,食欲不振の程度やその他全身状態(重症度)を考慮せずに,単純に黄疸が出現したのに食欲不振が改善しないとの一事をもって,直ちに劇症化の兆候があるということはできない。 ・各種検査成績,諸症状についてⅰ確かに,原告らが主張するような,① 著しい高ビリルビン値,② ビリルビン値上昇に反するGOT値及びGPT値の低下,③ プロトロンビン時間の著しい延長,④ ヘパプラスチンテスト値,コリンエステラーゼ値及びコレステロール するような,① 著しい高ビリルビン値,② ビリルビン値上昇に反するGOT値及びGPT値の低下,③ プロトロンビン時間の著しい延長,④ ヘパプラスチンテスト値,コリンエステラーゼ値及びコレステロール値の著しい低下等の諸検査結果や,意識障害,腹水,肝濁音界の縮小及び肝萎縮といった症状は,劇症肝炎早期診断の手掛かりないし目安にはなり得る。 しかし,急性肝炎の患者の場合,これらの検査値は,多少なりとも異常値を示し,腹水,肝萎縮以外の症状も,程度を別にすれば急性肝炎でも見られるものであるから,これらの所見がすぐさま劇症肝炎の兆候となるものではない。これらの兆候があった場合にすべて「専門病院」に転院しなければならないとしたら,地方の総合病院で診療可能な急性肝炎はほとんどなくなることになる。 ⅱ総ビリルビン20mg/dl以上,GOT及びGPTが2000IU/l以上が重症であることは争う。 ⅲアルブミン,コリンエステラーゼ及びコレステロールは,食事の影響を強く受けるため,一般的に肝予備能の指標,肝炎悪化の兆候の指標とはされていない。 ⅳ肝予備能の指標としては,一般的にプロトロンビン時間が用いられる。 原告らは,プロトロンビン時間につき,その日の測定条件などによって動揺することがあり,プロトロンビン時間の推移のみに重きをおくのは危険であると主張するが,誤差があるのはすべての生化学的検査の結果も同様である。臨床の現場では,これらすべての検査結果を,ある程度の誤差を含んでいるものとして,評価判断するのであり,確認のためだけに1日に2度ないし連日同じ検査をしたり,あるいは,検査結果を無視したりするようなことは行われていない。 ・急性肝炎の原因原告らは,A型,B型及びC型と確認されない肝炎について,ウィルス排除が強く,肝炎が進行性で劇症化確率が高いと主張する いは,検査結果を無視したりするようなことは行われていない。 ・急性肝炎の原因原告らは,A型,B型及びC型と確認されない肝炎について,ウィルス排除が強く,肝炎が進行性で劇症化確率が高いと主張するが,そのような認識は一般的でない。 ・ Cの肝炎における劇症化の兆候a 悪心,嘔吐及び全身倦怠感の増悪Cは,入院後一貫して食欲不振,吐き気などを訴え続けたわけではないし,その症状が増悪しつつあったわけでもない。D医師は,Cの肝炎が劇症化することをも念頭において問診,検査等を行っていたが(乙1),食欲不振などのCの症状は,特に重症化ないし劇症化を疑わせるものではなかった。 ・食事摂取量,食欲等についてⅰ Cの食欲,食欲及び摂食状況等は,別紙「食事・症状一覧表」のとおりであって,入院後岩手医大病院に転院するまでの間,「一貫して悪化していた」とか,「増悪し続けた」というわけではない。 すなわち,上記別紙中の「朝食」,「昼食」,「夕食」及び「その他」の欄は,看護師が毎食後の見回りの際にC本人から聴取した食事摂取量をそのまま記載した看護カルテ(温度板,乙1の10)から,そのまま抜粋したものであり,同記載は,原則として毎食後にされるため,その内容の信用性は高い。また,同別紙中の「医師の観察所見」欄は,特に全身状態に注意していたD医師によって記載されたカルテ(乙1の6)の記載から抜粋したものであり,「看護師観察所見」欄も,カルテ(乙1の10)から抜粋したものである。 これによれば,Cの摂食量は8月28日及び同月29日ころ,特に減少した印象を受ける。しかし,これは,8月28日ころから施行したGI療法の副作用によるものであり,少なくとも8月31日ころからは回復傾向を示している(なお,D医師は,食欲不振等の症状が増悪した8月30日に緊急採血を行っている。)。ま ,8月28日ころから施行したGI療法の副作用によるものであり,少なくとも8月31日ころからは回復傾向を示している(なお,D医師は,食欲不振等の症状が増悪した8月30日に緊急採血を行っている。)。また,9月2日は,朝食としてロールパン3個及び牛乳(本人説明),夕食に副食の2分の1をとり,胃もたれ感を訴えるなど不安定な状況であったが,その後の摂取量は回復し,「食欲不振」,「嘔気嘔吐」の症状はほとんど見られず,明らかに悪化しているとか,減少しているというような状況ではなかった。9月5日ころも,8月28日及び29日に比べれば,相当程度摂食量は増加しており,9月7日には,Cは朝食を全量摂取した。 以上のとおり,摂食量及び食欲等に関するCの訴えを総合的に見ると,入院後いったんは悪化したものの,少なくとも8月31日ころには改善し,その後も改善傾向にあった。 ⅱ 通常の急性肝炎でも,肝機能悪化の極期を過ぎれば,直ちに食欲,摂食量及び諸検査結果が,健常時と同等にまで回復するわけではない。完全に肝炎が沈静化するまでは,ある程度の期間の間に多少の変動を見せながら,症状が軽快していくのが通常である。つまり,極期を過ぎれば食欲不振が消失するというわけではなく,ときには食欲不振を訴えながら,全体として徐々に改善していくのである。 以上の通常の急性肝炎の経過をCの食欲及び摂食状況にあてはめると,9月7日以前の症状は,通常の急性肝炎の経過に全く合致する。 ⅲ なお,久慈病院では,Cの通常の摂食状況につき,入院時の事情聴取により把握しており,それによれば1日2回,朝食抜きであった(乙1の2)。 ・全身倦怠感等について温度板(乙1の10)によれば,8月31日には「昨日よりはだるさも良い」,9月1日夜には「だるさも取れました」とあり,9月1日には医師カルテにも「全身疲労 た(乙1の2)。 ・全身倦怠感等について温度板(乙1の10)によれば,8月31日には「昨日よりはだるさも良い」,9月1日夜には「だるさも取れました」とあり,9月1日には医師カルテにも「全身疲労感改善している」との記載があるから,8月31日から9月1日には,食欲のみならず,疲労感も改善されていた。だるさや疲労感に関しては,その後はしばらく,看護カルテ等に記載はないが,これは,症状を聴取する際,本人がだるさや疲労感を訴えなかったからであり,少なくとも「悪化」は読みとれない。その後,9月5日に,「だるいのも少しはよい(昼)」との改善を裏付ける訴えの記載があるが,だるさを再度訴えたのは,9月6日朝である。 発疹は,8月28日ころから出現したが,食欲等全身状態の症状の改善に伴い,9月2日以降は改善傾向にあった。発疹が肝炎と何らかの関連を有するものとすれば,発疹改善も改善傾向を裏付ける事情の一つとすべきである。 以上のとおり,食欲以外の全身症状に関しても,8月31日から改善傾向,9月1日には明らかな改善を示し,その他少なくとも9月6日までは,改善傾向は継続していた。 ・意識状態について原告らは,9月2日(日勤)にCに見られた「夜も良く眠れない」(乙1の10)などの症状を取り上げ,このころからCが肝性昏睡Ⅰ度であったかのような主張をするが,Cには少なくとも転院まで肝性昏睡Ⅰ度に相当するような意識状態の「異常」はなかった。 すなわち,肝性昏睡Ⅰ度と評価する症状の一つは,睡眠覚醒リズムの逆転であり,単に一晩眠れないことを意味するのではない。久慈病院では,Cの入院中,医師及び看護師らが一日中Cを観察したが,特段の意識・精神状態の異常は観察されなかった。従前のCを一番知悉している原告らも,久慈病院入院中には,Cの精神状態に何ら異常を認めていない。原告ら 入院中,医師及び看護師らが一日中Cを観察したが,特段の意識・精神状態の異常は観察されなかった。従前のCを一番知悉している原告らも,久慈病院入院中には,Cの精神状態に何ら異常を認めていない。原告らが9月7日の昼にCを見舞った際も,Cは,CDを聴きたい,どこそこのブドウパンを食べたいなどと述べるなど,外見,様子においてそれ以前と変化をうかがわせる事情はなかった。 b 諸検査成績・原告らは,8月26日から同月31日までのヘパプラスチンテスト値,並びに同月24日から同月31日までのコリンエステラーゼ値及びコレステロール値が著しく低下したと主張するが,これらの低下が著しいものと評価することはできない。コリンエステラーゼ値及びコレステロール値(さらにアルブミン値)は,摂食量減少,肝炎自体による消耗などのために低下したと評価すべきである(そもそも,前記のとおり,これらの低下は,肝炎の劇症化,悪化の兆候ではない。)。 また,8月31日のヘパプラスチンテスト値50パーセントという数値は,いわゆる重症な肝炎を疑わせるものではない。これは,肝再生能の指標として十分な高値であり,一般的に十分な肝の予備能を示す値だった。数日前の値と比べて「低下」したことを殊更に取り上げて評価するのは,一般的専門医として常識的な判断ではない。 ・プロトロンビン時間の著しい延長Cは,肝炎の重症度判定に重要な血液凝固因子の一つであるプロトロンビン時間の値が72パーセントという全くの正常値であっただけでなく,8月30日の数値である57パーセントと比べて上昇(改善)していた。さらに,前記のとおり,他に悪化を思わせる所見はなく,むしろ改善の兆候も見られていた。したがって,同月31日の時点で,Cの急性肝炎が劇症化していなかったこと,及び劇症化の傾向もなかったことは疑いようがなく,その とおり,他に悪化を思わせる所見はなく,むしろ改善の兆候も見られていた。したがって,同月31日の時点で,Cの急性肝炎が劇症化していなかったこと,及び劇症化の傾向もなかったことは疑いようがなく,そのように判断したD医師に責められるべき点はない。 c その他の症状について腹水,肝萎縮は触診で検査することが可能であり,D医師は,連日回診で触診を行い,その結果をカルテに記載している。なお,機器による検査をしていなければ検査をしていないというのは,機械を偏重した考え方であり,妥当でない。 d 8月31日における転院義務とD医師の過失について・転院をさせるべき時期について甲14によれば,劇症肝炎の診断がされた場合,可能な限り速やかに,特に劇症肝炎の治療を専門とする病院へ転院させることが望ましい(絶対ではない。)とされている。 ・8月31日の所見では,Cの肝炎には劇症化の兆候が全くなかった。また,このころ,Cに特別な自覚症状の悪化はなく,むしろ,GI療法の中止とともに,嘔気等の症状は改善していた。 したがって,8月31日の時点で,Cを専門病院に転院させる必要はなかった。 ・それどころか,Cは,9月7日の時点において,プロトロンビン時間が40パーセントを切ったものの,脳症の発現はなく,劇症肝炎の診断基準を満たしてはいなかった。Cが脳症を発症したのは,岩手医大病院へ転送された後の9月10日であるから(甲11),Cが劇症肝炎を発症したのは同日であって,それ以前の9月8日及び9日の時点では,未だ急性肝炎の状態であった。 ・それにもかかわらず,D医師は,9月7日にCのプロトロンビン時間が40パーセントを切ったことから,劇症化を予想して,Cを直ちに劇症肝炎の治療を専門とする岩手医大病院に転院させたのであるから,D医師のCに対する観察と対処は,適切であった にCのプロトロンビン時間が40パーセントを切ったことから,劇症化を予想して,Cを直ちに劇症肝炎の治療を専門とする岩手医大病院に転院させたのであるから,D医師のCに対する観察と対処は,適切であった。 ・争点・(9月3日における転院義務等の違反の有無)についてア原告らの主張・仮に,D医師に8月31日の時点における転院義務等の違反が認められなかったとしても,Cには,9月3日の時点で明らかに劇症化の兆候が現れていたから,どんなに遅くとも,D医師は,その時点でCを転院させるべきであった。 ・ Cに現れた肝炎の劇症化の兆候a 総ビリルビン値,GOT値及びGPT値の推移Cの8月31日から9月3日への総ビリルビン値,GOT値及びGPT値の推移をみると,総ビリルビン値は21.8mg/dlから24.7mg/dlへと上昇したのに対し,GOT値は2983IU/lから2392IU/lへ,GPT値は3850IU/lから3178IU/lへと,それぞれ著しく減少しており,明らかに肝炎の劇症化の兆候を示していた。 したがって,この結果からすれば,Cの肝炎の劇症化は,もはや疑いようもないくらいに明らかであった。 bコリンエステラーゼ及び総コレステロールの検査数値の推移また,9月3日におけるCのコリンエステラーゼ及び総コレステロールの検査数値は,8月31日のそれよりも更に低下していた。 したがって,Cの肝炎の劇症化傾向は,ますます明らかであった。 ・以上によれば,D医師としては,どんなに遅くとも,9月3日の時点において,これらの検査結果を慎重に検討した上で,Cの肝炎の劇症化を疑い,集中治療が可能な岩手医大病院等へ転院すべきであった。 ・ D医師の過失それにもかかわらず,D医師は,その時点で上記兆候を見落とし,Cを転院させなかったばかりか,9月4日の時点において, 化を疑い,集中治療が可能な岩手医大病院等へ転院すべきであった。 ・ D医師の過失それにもかかわらず,D医師は,その時点で上記兆候を見落とし,Cを転院させなかったばかりか,9月4日の時点において,Cの肝炎が回復するとの見通しを立てるなど誤った診断を行い,Cが適切な劇症肝炎の治療を受ける機会を失わせたのであるから,この点に関するD医師の過失は明らかである。 イ被告の主張・ 9月3日の時点においても,劇症肝炎の兆候はなく,D医師がCを転院させなかったなどことについて過失はない。 ・ Cに現れた肝炎の劇症化の兆候a 総ビリルビン値,GOT値及びGPT値の推移9月3日に行ったCのGOT,GPTは,前回採血時より減少していたが,これらの値が,8月31日から9月3日までの間で,著しい高値から「急速に著明な」低下を示したとは評価することはできない。また,急性肝炎の経過中に劇症肝炎に移行する際の参考所見として,30mg/dl以上のビリルビンの高値が挙げられているが,Cのビリルビン値は,9月7日の段階においても,30mg/dlを超えることはなかった。 さらに,原告も認めるとおり,急性肝炎の回復期では,ビリルビンが上昇するにもかかわらずGOT,GPTが低下する。Cの場合も8月31日以降同様の現象が見られた。 bコリンエステラーゼ及び総コレステロールの検査数値の推移肝炎が極期を迎えて回復過程に入り,GOT,GPTが減少しても,他の指標が直ちに改善しないこと,例えばビリルビンが減少せず,むしろ増加することは珍しくない。アルブミン・コリンエステラーゼ等が肝再生能の指標となるという見解に立っても,通常の急性肝炎の場合,これらの極期の後の回復は,GOT,GPTより遅れるか,あるいは,GOT,GPT,それからビリルビンが下がってくる過程でほとんどすぐ戻ってくる 指標となるという見解に立っても,通常の急性肝炎の場合,これらの極期の後の回復は,GOT,GPTより遅れるか,あるいは,GOT,GPT,それからビリルビンが下がってくる過程でほとんどすぐ戻ってくるとされている。以上のことから,9月3日にGOT,GPTが低下して,なおアルブミン等が同時に回復を示さないことは,通常の急性肝炎の回復過程に合致する。 ・ D医師は,9月3日の時点でも,Cの検査結果,食欲等が,全く通常の急性肝炎の経過,つまりプロトロンビン時間が回復し,GOT,GPTが回復し,食欲が回復するという経過に全く合致していたので,極期が過ぎたと判断し,次のプロトロンビン時間の検査を月曜日(9月7日)に実施することとした。このようなD医師の判断及び処置は,通常の肝臓専門医の判断及び処置として全く一般的なものであり,不適切であったとはいえない。 ・原告らは,この時点のコリンエステラーゼなどがさらに減少していたのを無視したと主張するが,そもそもコリンエステラーゼ等を肝機能の直接的な指標とすることは一般的な見解ではない。栄養状態が十分に回復するには相当の期間が必要であるし,コリンエステラーゼ等は栄養状態を反映しているのであろうことから,引き続き数日経過を見て,次回の採血(9月7日)で再検しようという判断は,全く適切なものであった。 ・争点・(検査義務違反の有無)についてア原告らの主張・急性肝炎については,慎重な問診をするとともに,血液凝固系や画像診断等の検査を経時的に行い,劇症化の傾向が現れているかどうかを慎重に観察し,肝炎の劇症化を正確に予知するように務めることが最も重要である。しかし,D医師は,画像診断については8月28日から,凝固能検査については8月31日から,いずれも9月7日までの間,行わなかった。D医師が,そのような検査をし 知するように務めることが最も重要である。しかし,D医師は,画像診断については8月28日から,凝固能検査については8月31日から,いずれも9月7日までの間,行わなかった。D医師が,そのような検査をしていれば,9月7日よりもっと早く,プロトロンビン時間を始めとする各種データの異常を把握でき,速やかに劇症化防止治療や,転院等の適切な処置がとれたはずであった。 ・凝固系検査についてa凝固系検査の重要性について肝炎の重症度判定に最も重要なものは,肝予備能を最も敏感に反映する凝固系検査であり,特に,プロトロンビン時間は,肝炎の劇症化の指標としては,最も客観的なものである。 したがって,医師としては,急性肝炎の治療に当たり,重症化及び劇症化を常に念頭に置き,病初期においては,プロトロンビン時間及びヘパプラスチンテストの測定を毎日行い,極期を過ぎたか否かを判定すべきであるし,急性肝炎の経過中,発黄後も悪心,嘔吐,食欲不振及び全身倦怠感などの症状が増悪した場合には,経時的にプロトロンビン時間を測定し,劇症化への移行の可能性を注意深く観察すべきである。 bCの場合・入院時の検査結果とその後の経過Cは,入院時に既にGOT値,GPT値が1000IU/l以上という危険な状態にあり,なおかつ,入院4日目の8月27日までにこれらの数値が低下するどころか,著しく増加していた(通常の急性肝炎では,入院の翌日か翌々日には,GOT値,GPT値は軽快し始める。)。 また,Cは,8月22日に発黄した後,食欲不振,全身倦怠等の症状が現れ,久慈病院入院後もほぼ一貫してその症状が継続していた。 このように,Cの急性肝炎は,通常のものとは全く異なった経過をたどっていたのであるから,医師としては,特に,重症化ないし劇症化を疑い,凝固系検査を毎日実施する必要性が非常に高かった が継続していた。 このように,Cの急性肝炎は,通常のものとは全く異なった経過をたどっていたのであるから,医師としては,特に,重症化ないし劇症化を疑い,凝固系検査を毎日実施する必要性が非常に高かった。 ・8月31日の時点での検査結果さらに,Cの急性肝炎は,8月31日の時点で,GOT値,GPT値2000IU/l以上,総ビリルビン値20mg/dl以上で,自覚症状も強いという症例になっていた。また,Cのヘパプラスチンテスト値は,8月26日の61パーセントから50パーセントへと低下していた。このように,Cの急性肝炎は,明らかに重症化,劇症化の傾向を示していた。 このような重症例の場合,凝固系検査,特にプロトロンビン時間については,毎日あるいは1日2回測定する必要があった。 ・D医師の過失それにもかかわらず,D医師は,Cの入院期間中,ヘパプラスチンテストの測定については3回(8月26日,同月31日,9月7日),プロトロンビン時間の測定については4回(8月26日,同月30日,同月31日,9月7日)しか行わなかったのであり,しかも,8月31日にプロトロンビン時間が改善したとの一事をもって,Cの肝炎が回復すると安易かつ軽率に決めつけ,9月7日までの間,これらの測定を1度もしなかった。そして,D医師が7日ぶりにプロトロンビン時間を測定した9月7日の時点では,その測定値は既に18パーセントまで低下していた。 D医師は,この時点で,あわててCを岩手医大病院へ転院させたが,もはや手遅れであったことは,その後の経過からみて,明らかである。 8月31日にCの肝炎が回復するとしたD医師の判断が誤診であることは明らかであるが,仮に,同日のプロトロンビン時間の改善をもってCの肝炎が回復すると判断したことがやむを得ないことであったとしても,D医師は,その判断が正しいかど としたD医師の判断が誤診であることは明らかであるが,仮に,同日のプロトロンビン時間の改善をもってCの肝炎が回復すると判断したことがやむを得ないことであったとしても,D医師は,その判断が正しいかどうかを確かめるため,8月31日以降も,慎重に各種検査を継続すべきであったのである。 ・画像診断についてa画像診断の重要性について肝臓の検査で最も重要なものの一つは画像診断である。すなわち,急性肝炎の劇症化を防止するためには,腹水,肝萎縮等の劇症化の兆候が現れていないかどうかを慎重かつ経時的に検査していくことが必要不可欠であり,画像診断は,そのために最も有効な検査である。 しかし,D医師は,Cに対し,8月25日にエコー検査を行い,同月28日にCT検査を行っただけで,転院前日の9月7日までの10日間,一切画像診断を行わなかった。 bこの点,被告は,D医師が,9月5日の時点で触診によって肝萎縮が生じていないことを確認したかのような主張をするが,触診だけで,正確に肝臓の状態を把握できないことはいうまでもない。 cなお,被告は,D医師が9月4日の回診時にCを触診し,その結果を踏まえて,同日,原告Aに対し,Cの病状を説明した旨主張する。しかし,原告AがD医師から同説明を受けたのは,同日の午前9時のことであり,D医師は,それ以前にCの診察をしたことはなく,Cの触診を済ませていたことはあり得ない。 ・以上によれば,被告がCの急性肝炎の劇症化を防止するために必要な検査義務を尽くしていなかったことは明らかである。 もし,D医師が,そのような慎重な検査をしていれば,9月7日よりもっと早く,プロトロンビン時間を始めとする各種データの異常を把握でき,速やかに劇症化防止治療や,転院等の適切な処置がとれたはずであった。 イ被告の主張・ D医師がCに対して行った, 9月7日よりもっと早く,プロトロンビン時間を始めとする各種データの異常を把握でき,速やかに劇症化防止治療や,転院等の適切な処置がとれたはずであった。 イ被告の主張・ D医師がCに対して行った,診察,検査等は,適切であって,原告らが主張するような凝固系検査,画像検査の実施についても問題はなかった。 ・凝固系検査についてa 凝固系検査の一般的実施方法について・原因不明の急性肝炎患者に対して行うべき検査の種類と頻度については一義的には定められておらず,病態により異なる。入院時には,肝臓に限らず他の一般状態を知る上で,GOT,GPT,アルブミンその他検査し得る項目をほとんど検査することが多いであろうが,肝炎と診断がついた後には,基本的にGOT・GPTを中心に経過を見て,しかも,その回数も適宜行うものとされるのが一般的である。 プロトロンビン時間,ヘパプラスチンテストは,通常,状態のいかんにかかわらず,連日,あるいは,毎回GOT,GPT検査と共に行うべき検査ではなく,軽微な肝炎では行わないこともある類の検査である。いったんプロトロンビン時間40パーセント以下が確認された場合などは,連日採血する場合が多いであろうが,極期を過ぎた段階では,1週間に1度,あるいは,回復期では測定しないこともある。 なお,行った採血検査のうち,複数が「異常値」であるということが,肝炎の悪化兆候なのではない。問題は肝の再生能と直結した異常かどうかであり,多くが異常値ということが劇症化ないし悪化をうかがわせるものではない。 ・この点,原告らは,プロトロンビン時間,ヘパプラスチンテストについて,すべての急性肝炎の病初期において毎日測定すべきとするが,これは,急性肝炎の治療における医療水準ではない。 確かに,甲13には,プロトロンビン時間,ヘパプラスチンテストを病初期 スチンテストについて,すべての急性肝炎の病初期において毎日測定すべきとするが,これは,急性肝炎の治療における医療水準ではない。 確かに,甲13には,プロトロンビン時間,ヘパプラスチンテストを病初期に毎日測定して極期を過ぎたか否かを判定するという記載がある(71頁左段)が,他の文献等に同様の記載はなく,これが一般的な見解であるとはいえない。仮に一般的見解であったとしても,連日行うのは極期までであって,それを過ぎた段階でも毎日測定することが勧められているわけではない。急性肝炎の経過中プロトロンビン時間が一度上がって(正常に復して)から再度下がるということは,文献上ほとんど見当たらない。 bCの場合・8月31日におけるCのプロトロンビン時間は,前2回の検査に比べて上昇(改善)し,入院後最も良い値であった。D医師は,その他の検査結果,症状等を総合し,極期に達したのではないかと考えたが,その後も症状等の全身状態や触診等の理学的所見に留意が必要であるため,ある程度時間をおいた時点での経過を見るために,2日間おいた9月3日に採血をすることとした。この際,採血内容としては,一般的に肝炎の経過を見る際に指標とされるGOT,GPT及びビリルビン等とした。プロトロンビン時間,ヘパプラスチンテストに関しては,容態確認のため,1週間後程度の採血検査が適切と考えたが,まずは9月3日の採血結果(GOT,GPT)を見て,必要であればそれ以前に検査しようと考えた。 ・そして,8月31日以降,Cは,食欲,倦怠感等も改善するとともに,急性肝炎の症状の一つであると思われる8月27,8日ころから出た発疹も,9月に入って軽快したなど,全体として,急性肝炎の増悪を示唆する所見はなく,むしろ改善を示す兆候があった。 ・これらの事情からすれば,Cの肝炎は8月31日ころに極期を 27,8日ころから出た発疹も,9月に入って軽快したなど,全体として,急性肝炎の増悪を示唆する所見はなく,むしろ改善を示す兆候があった。 ・これらの事情からすれば,Cの肝炎は8月31日ころに極期を過ぎ,それ以降,改善しつつあったと考えられるのであり,少なくとも増悪しつつあったと評価すべき根拠はないのであるから,Cに対して,同日以降もプロトロンビン時間を毎日測定すべきであったとはいうことはできない。 ・画像診断についてa急性肝炎の経過中行うべき画像検査の頻度についても,容態に応じて決せられるものであり,何度が適切という指標はない。頻繁に行うべきといっても,通常週に1度,あるいはそれ以下の頻度が想定されていることがほとんどである。 bD医師は,Cに対し,8月28日にCT検査を行い,その後に採血で改善を確認するとともに,更に確認のため,CT検査を予約した(その結果,9月9日に予約された。)。D医師は,その間,毎日,触診により,Cの肝臓の腫脹,萎縮について確認した。このようなD医師の判断は,専門医として通常のものである。もちろん,経過中に再度強い嘔気,食欲不振などが出現したり,触診上の異常が感知された場合には,緊急でCT検査あるいは超音波検査を行うべきであるが,Cにはそのような事情はなかったのである。したがって,特に悪化の兆候がない同時点で,至急に超音波検査又はCT検査を行わなかったことを法的に非難するのは不適切である。 ・争点・(因果関係の存否)についてア原告らの主張・D医師は,プロトロンビン時間が40パーセントを下回れば劇症肝炎として岩手医大病院に転院させる考えであった。それまで,亜急性型劇症肝炎の救命例のなかった岩手医大病院への転院しか考えていなかったのは問題であるが,岩手医大病院においても,転院後直ちに血漿交換及び肝細胞 岩手医大病院に転院させる考えであった。それまで,亜急性型劇症肝炎の救命例のなかった岩手医大病院への転院しか考えていなかったのは問題であるが,岩手医大病院においても,転院後直ちに血漿交換及び肝細胞破壊の進行防止策(ステロイドパルス療法等)が行われており,D医師がより早期にプロトロンビン時間が40パーセント以下に低下したことを把握し,より早期にこれらの治療が開始されていれば,Cは救命されていた可能性がある。 そして,転院先が昭和大学藤が丘病院であったとすれば,確実に救命されていたはずである。 ・ D医師は,平成10年8月当時,昭和大学藤が丘病院の劇症肝炎の治療の成績が良く,同病院において患者の脳症出現前に人工肝補助療法及び抗ウイルス治療等を行っていたことを知っていた。したがって,D医師としては,劇症肝炎を疑った場合には,このような病院への転院を考えるべきであり,少なくとも,患者,家族にこのような情報を提供すべきであった。 D医師が,Cの劇症化傾向を把握した上で,原告らに昭和大学藤が丘病院の成績等についての情報を与えていれば,原告らは迷わず,同病院への転院を選択したはずであり(このことは,原告らが,Cの救命を願って,Cを生体肝移植の実施のためにヘリコプターを使って岩手医大病院から信州大学病院へ移送した事実を見ると,容易に推認できる。),そうすれば,Cは確実に救命できたはずである。 また,仮に転院先が昭和大学藤が丘病院であったとすれば,9月7日の時点で,転院の決断がされたとしても,救命されていた可能性が高い。 ・本件で,D医師は,9月7日より1日でも早く,Cの肝炎の劇症傾向を把握し,昭和大学藤が丘病院のような病院への転院等の適切な措置を講じるべきであった。そして,Cの8月31日や9月3日の検査データを見る限り,そのことをD医師に義務付けても何 く,Cの肝炎の劇症傾向を把握し,昭和大学藤が丘病院のような病院への転院等の適切な措置を講じるべきであった。そして,Cの8月31日や9月3日の検査データを見る限り,そのことをD医師に義務付けても何ら酷ではなかったのである。 ・したがって,D医師の前記過失と,Cの死亡との間には,相当因果関係がある。 イ被告の主張・仮に転院8月31日又は9月3日の時点で転院が必要であったとしても,これの時点で転院先で行うべき特別な治療はなかったから,転院すれば劇症化が阻止できたとする科学的な根拠はない。 ・劇症肝炎の特殊療法についてa 岩手医大病院では,転院した当日に血漿交換療法等を行ったが,このことは,仮に数日早く転院していれば数日早く血漿交換療法が行われたということを意味しない。 b 劇症肝炎発症前に劇症肝炎の特殊療法を行うことの効果は不明であり,早期治療は特に慎重にされなければならないとされている。 血漿交換療法は,肝臓の機能低下のために体内に蓄積し,脳症などの原因となる有害物質を体外に排泄する治療法であり,肝細胞の再生自体を促進するものではない(この意味で,同療法は,劇症肝炎の根本的な治療法ではない。)。劇症肝炎亜急性型の場合,血漿交換により一時的に脳症は改善するが,生存率には影響を与えないとされている。そして,同療法の適応があるのは,基本的に,劇症肝炎を発症した患者,すなわち,脳症が出現した患者であって,それよりも前の段階の患者に血漿交換の絶対的適応はない。 cCの場合,久慈病院と岩手医大病院の判断により,肝炎が劇症化する以前(2日前)に血漿交換が行われた。これは,劇症化を予知して,あえて一般に適応とされる段階よりも早期に,進んだ治療が行われたものであり,全国的水準からみれば,むしろ早い段階で行われたものであった。 したがって,仮に,数 換が行われた。これは,劇症化を予知して,あえて一般に適応とされる段階よりも早期に,進んだ治療が行われたものであり,全国的水準からみれば,むしろ早い段階で行われたものであった。 したがって,仮に,数日早くCのプロトロンビン時間が低下していたとしても,Cには9月10日以前に脳症が発症していない以上,転院時にはCに特殊治療の「絶対的適応」はなかった。そのため,岩手医大病院では,プロトロンビン時間18パーセント未満という状況下で転院した当初においても,血漿交換を行うかどうか,いまだ未確定な状態であり,その後の検討の結果,血漿交換療法を採用したのである。 岩手医大病院が行っている劇症肝炎の全国集計の結果では,早期治療が必ずしも有効安全とされていないことに照らせば,仮に9月8日以前に転送されたとしても,慎重に経過を見た可能性の方が高い。なお,上記全国集計の結果によれば,仮に,数日早くこれらの治療法を行ったとしても,それによって劇症化が阻止され,あるいは,予後が改善されたということについては,合理的な疑いを持たざるを得ない。むしろ副作用等の害悪の方が強く出た可能性も低くないのである。 cしたがって,原告らが主張する過失と,死亡の結果との因果関係はない。 ・昭和大学藤が丘病院への転院について原告らは,Cを昭和大学藤が丘病院へ転送すれば,確実に死の結果を回避することができた旨主張する。 しかし,平成10年当時,昭和大学藤が丘病院の成績がよいことは,F医師の会合等での発表などにより一部では知られていたが,その信頼性や,提唱される治療法の安全性等に関しては,他の研究者によって検証され,確認されてはいなかった。 劇症肝炎に関しては,昭和大学藤が丘病院に限らず,他の医療機関でも,独自の治療法を提案し,その効果を謳っている施設も少なくなく,昭和大学藤が丘病院のF 究者によって検証され,確認されてはいなかった。 劇症肝炎に関しては,昭和大学藤が丘病院に限らず,他の医療機関でも,独自の治療法を提案し,その効果を謳っている施設も少なくなく,昭和大学藤が丘病院のF医師自身,自分の提言に真っ向から反対する者もいる旨述べている。そのような状況下において,患者家族に対して昭和大学藤が丘病院に関する情報を提供することや,転院先として昭和大学藤が丘病院を選択することは,医師としての義務ではない。 したがって,そのような義務があることを前提とする原告らの相当因果関係の主張は,理由がない。 ・争点・(原告らの損害額)についてア原告らの主張・葬儀費用 120万円Cは,D医師の過失により,葬儀費用として少なくとも120万円の積極損害を被った。 ・逸失利益 1億0540万7948円Cは,死亡したことにより,その労働能力を100パーセント喪失した。Cは,死亡当時,日本歯科大学の3年生であり,卒業後は歯科医師として稼動することが確実であった。歯科医師の平均給与月額は,平成11年職種別民間給与実態調査によれば,74万5643円であり,事務・技術労働者規模計の平均賞与等は,165万6971円であるから,歯科医師の平均年収は,1060万4687円である。 C(当時21歳)は24歳から少なくとも67歳までの43年間は稼動可能であったと考えられるから,50パーセントの生活費と,新ホフマン方式により計算した年5分の割合による中間利息(43年の新ホフマン係数から3年の新ホフマン係数を控除した係数を使用)を控除すると,Cの死亡による逸失利益は,1億0540万7948円を下回ることはない。 (計算式)1060万4687円×0.5×19.8795=1億0540万7948円・慰謝料 3000万円Cは,将来母親の後を継いで歯科医 利益は,1億0540万7948円を下回ることはない。 (計算式)1060万4687円×0.5×19.8795=1億0540万7948円・慰謝料 3000万円Cは,将来母親の後を継いで歯科医師になり,人々の役に立ちたいと大いなる希望の下,日本歯科大学において,勉強に勤しんでいた。そのような有意な若者が,本件医療過誤のためにわずか21歳で命を落とすこととなったのであるから,Cの無念の死を慰謝するのに相当な金員は,3000万円を下回ることはない。 ・小計(前記・ないし・の合計) 1億3660万7948円・弁護士費用 1360万円原告両名は,原告ら訴訟代理人に本件損害賠償請求訴訟を委任し,その弁護士費用を支払うことを約した。そのうち,上記・の金額の約1割弱に相当する1360万円は,本件事故と因果関係のある損害である。 ・合計 1億5020万7948円・原告らの相続分各金7510万3974円原告らは,Cの相続人であり,上記損害賠償請求権を各2分の1ずつ相続したから,原告らは,被告に対し,各金7510万3974円の損害賠償請求権を有する。 イ被告の主張原告らの損害額に関する主張は,否認ないし争う。 第3当裁判所の判断 1 前記前提となる事実,証拠(以下にそれぞれ掲げるもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ・久慈病院における診療経過等(甲3ないし6,18,26,36,37,乙1ないし3(いずれも枝番を含む。),16ないし18,20,証人D,原告A,原告B)ア 8月24日(月曜日)・ Cは,E内科からの紹介により,8月24日,久慈病院消化器内科を受診し,D医師の診察を受けた。その際,Cは,D医師に対し,8月18日ころから全身倦怠感,食欲不振,嘔気があり,同月22日には黄疸を自覚した旨を訴えた。D医師 により,8月24日,久慈病院消化器内科を受診し,D医師の診察を受けた。その際,Cは,D医師に対し,8月18日ころから全身倦怠感,食欲不振,嘔気があり,同月22日には黄疸を自覚した旨を訴えた。D医師がCを診察したところ,眼球結膜に黄疸が見られたものの,打診及び触診をした結果,肝,脾の腫大及び腹水は認められなかった。また,肺,肝境界も,第6肋間にあり,正常範囲であった。D医師は,以上の病状及び所見から,Cを急性肝炎と診断した。 さらに,Cの急性肝炎の原因としてウイルスの可能性が最も高いと考えられたため,D医師は,A型,B型及びC型の各肝炎ウイルスと,肝炎の原因となり得るEBウイルス及びサイトメガロウイルスに関する検査を依頼するとともに,採血により,末梢血液像,肝機能その他を検査したが,原因ウイルスが特定されなかった。 そのため,D医師は,Cの肝炎が原因不明のウイルスを原因とする急性肝炎であると判断するとともに,原因不明のウイルス性肝炎から劇症化することが多いともいわれているため,劇症化の可能性も念頭に置いて経過を見ることとした。 そして,D医師は,Cに対して入院を指示するとともに,C及び看護師に対し,Cは基本的に安静にすべきであり,自室でのトイレ,洗面,シャワーのみを可とする旨の指示を与えた。ただし,D医師は,その後,一般の肝炎患者と同様の安静度を保つ必要があると考え直し,病棟において,「ベッド上安静,ベッド上清拭」との指示に改めた。 また,D医師は,看護師に対し,Cの食事療法として,肝臓食1日2000キロカロリーにするようにとの指示をした。さらに,食欲不振,嘔気症状があったことから,栄養分と水分補給のため,5パーセントグルコース液500ミリリットルの点滴を指示した。 ・ Cは,夕食を約5分の1摂取したが,看護師に対し,「あまり食欲がないで 食欲不振,嘔気症状があったことから,栄養分と水分補給のため,5パーセントグルコース液500ミリリットルの点滴を指示した。 ・ Cは,夕食を約5分の1摂取したが,看護師に対し,「あまり食欲がないです。あとは別に変わりない」などと述べた。 Cは,同日の夕方,原告らと共に,エレベーターで1階の売店に行き,湯のみ茶碗等の買い物をしたが,その後,このことを知った看護師から,安静にするよう注意をされた。 イ 8月25日(火曜日)・ Cは,8月25日の朝,看護師(深夜勤)に対し,「痛いとかそういうのはないが,時々吐き気がする」などと訴えた。 また,同日,Cは,個室が空いたことから,前記前提となる事実・イ記載のとおり,5階のナースセンターに近い個室である526号室に移った。 ・ D医師は,同日,Cに対し,超音波検査を行ったところ,肝萎縮や腹水は認められず,胆嚢の著明な萎縮と肝内胆管の描出が認められたものの,その拡張は認められなかった。D医師は,上記所見が急性肝炎の超音波像に一致するものであったが,肝内胆汁うっ滞や原発性硬化性胆管炎によるものであることも否定できないと考えた。 ・ Cは,昼食の2分の1を食べ(朝食は,超音波検査のため摂取せず),看護師(日勤)に対し,「吐き気は今はない。右の背中がほんの少しだけ痛いです。」などと訴えたほか,昨日の夕食よりも食事を摂取できた旨述べた。 また,Cは,同日昼ころに訪れた原告Bに対し,「昨日,病室から出て歩いていたのは悪いと,看護婦さんから注意された。だから,今日から僕は部屋から出てはいけないんだって。」などと話をした。 ・ Cは,夕食の3分の2を食べ,夜には,「別に何ともないです」などと述べたが,皮膚の黄染は著明であった。 ウ 8月26日(水曜日)Cは,8月26日の深夜から朝にかけて特段苦痛等を訴えることはなく,昼 Cは,夕食の3分の2を食べ,夜には,「別に何ともないです」などと述べたが,皮膚の黄染は著明であった。 ウ 8月26日(水曜日)Cは,8月26日の深夜から朝にかけて特段苦痛等を訴えることはなく,昼間も,「食事もいつもどおり摂取しました。だるくもないし,何ともないです。」などと述べたが,夜になると,「食べた後気持ち悪くなって寝ていました。吐きはしませんでした。」などと述べた。 エ 8月27日(木曜日)Cは,同日の朝食をほぼ全量摂取したが,看護師に対し,「なんかやっぱりだるいです。」と訴えた。また,黄染の増加や胃もたれが見られ,同日の昼食は主食を2口食べただけであった。 Cは,同日夕方訪れた原告Bに対し,「D先生は3時過ぎに毎日回診に来るが,まだ何型の肝炎か分からないと言っている。エコーで見たら,膵臓の働きが悪いようだと言われた。」などと述べた。また,Cは,同日の夕食の主食の2分の1と副食の3分の2を摂取した。 同日の夜,Cは,看護師(準夜勤)に対し,「吐き気は今はありません。」と述べたが,倦怠感が見られ,皮膚,眼球の黄染も著明であった。 オ 8月28日(金曜日)・ D医師は,8月28日,超音波検査で分かりにくいその他の異常がないかどうかを見るため,Cに対してCT検査を行った。この結果,肝の萎縮は見られず,肝内胆管の拡張も認められなかったほか,CT値は均一であり,重症肝炎や劇症肝炎で見られるような不均一性や腹水も認められなかった。 また,D医師は,8月27日の採血検査の結果,GOT,GPTが2100IU/l以上,3200IU/l以上と上昇していたことから,同月28日,GI療法を開始した。 さらに,D医師は,同日午後3時過ぎころ,原告らに対し,前記前提となる事実・ウ記載のとおりの説明を行った。 ・ Cは,同日,朝食につき,主食2口と味噌汁3口 とから,同月28日,GI療法を開始した。 さらに,D医師は,同日午後3時過ぎころ,原告らに対し,前記前提となる事実・ウ記載のとおりの説明を行った。 ・ Cは,同日,朝食につき,主食2口と味噌汁3口しか摂取せず,看護師に対して食欲不振を訴えたが,嘔気は見られなかった。また,Cは,D医師に対し,「具合がすぐれない。昨夜は食べられたが今朝は食べられない。」と訴えた。また,Cは,同日の昼食として,主食3口と副食(おかず)の2分の1を摂取した。 看護師は,日中,Cが電話をかけるために廊下に出ていたのを見かけたため,Cに対し,再度,安静についての説明をした(なお,看護記録の同日準夜欄にも,「安静について話してみる」との記載がされている。)。 同日夜,Cは,夕食をわずかに摂取したものの,嘔吐し,倦怠感も見られたため,注射を行った。また,このころ,Cの手,腕及び足に発疹が生じた。 カ 8月29日(土曜日)・ Cは,8月29日,朝食をほとんど摂取しなかった。 同日の午前中に,Cに対してGI療法が行われた。 D医師は,同日,休暇をとっていたところ,看護師から,Cに点滴による動悸,嘔気及び嘔吐があるとの連絡を受けた。D医師は,動悸もみられたことから,これらの症状がGI療法による可能性が高いと考え,補液速度を遅くするよう指示をした。しかし,症状の改善が見られなかったため,D医師は,肝臓に負担をかける制吐剤を投与してまで同療法を継続するよりもこれを中止するほうが好ましいと考え,同療法を中止することとした。 また,D医師は,肝炎自体の悪化がないことを確認するため,翌日(8月30日,日曜日)の緊急採血を指示し,休日病棟の担当医に対し,Cの経過を見るように依頼をした。 ・ Cは,見舞いに訪れた原告Bに対し,「昨日から始まった白い液の点滴ですごく吐き気がする。盛岡の冷麺と久 日,日曜日)の緊急採血を指示し,休日病棟の担当医に対し,Cの経過を見るように依頼をした。 ・ Cは,見舞いに訪れた原告Bに対し,「昨日から始まった白い液の点滴ですごく吐き気がする。盛岡の冷麺と久慈の松屋ベーカリーのパンが食べたい。」などと述べた。Cは,その日,昼食を主食の5分の1とグレープフルーツ,夕食はバナナを2分の1をそれぞれ摂取した。 ・同日夜,Cは元気がなく,ぐったりした様子であり,看護師(準夜勤)に対し,頭痛,食欲不振と若干の動悸を訴え,「パンだったら食べられそう」などと述べた。 キ 8月30日(日曜日)・ Cは,8月30日,看護師(深夜勤)に対し,「注射やめてから,ぱったりと吐き気も,胸の方も落ち着いた。少しなら朝食も食べられそう。」などと述べた。 ・ D医師は,同日の担当医から,採血の結果,Cのプロトロンビン時間が57パーセントであることを報告された。D医師は,同数値が入院時より低下傾向を示していたことから,肝炎の悪化を懸念して補液の増加を指示し,また,実際に悪化しているかどうかを調べるため,同日,看護師に対し,翌日(8月31日)にプロトロンビン時間及びヘパプラスチンテストの検査の指示を出した。 また,Cは,朝にパン1口を摂取し,看護師(日勤)に対しても,「特に具合悪いところはなく,今日は嘔気もいいです。」などと述べた。 ・ Cは,同日夜,串団子1串とミニトマトを食べたが,その後,看護師(準夜勤)に対し,「串団子を食べたら,いつまでも下りていかないようだ。失敗した。」などと訴えた。 ク 8月31日(月曜日)・ 8月31日朝,発疹の増加が見られ,Cは背中のかゆみを訴えた。また,Cは,朝食3口と原告Bの持参したちらし寿司を1口摂取した。 さらに,Cは,同日午前,看護師に対し,「3,4日前から発疹が出始め,なんだか増えたみたい の増加が見られ,Cは背中のかゆみを訴えた。また,Cは,朝食3口と原告Bの持参したちらし寿司を1口摂取した。 さらに,Cは,同日午前,看護師に対し,「3,4日前から発疹が出始め,なんだか増えたみたいです。手はかゆくないけど,足とか背中はかゆいです。」などと訴えた。 ・ Cは,昼食の3分の1を摂取し,午後には,「昨日よりはだるさもいい。」などと述べた。 ・ Cは,同日行った検査の結果,プロトロンビン時間が72パーセントと上昇して全くの正常値を示すとともに,ヘパプラスチンテストも50パーセントという正常範囲内の数値を示した。また,Cの嘔気も,GI療法の中止後の8月30日から同月31日にかけて収まっていた。 もっとも,CのGOT値,GPT値は,前日から若干上昇して2900IU/l台,3800IU/l台を示し,ビリルビン値も,やや増加して21.8パーセントを示したが,D医師は,ヘパプラスチンテストが正常であり,プロトロンビン時間については,その数値が正常であるのみならず,前日よりも増加していたこと,食欲が前日よりも良好となったことなどから,Cの肝炎は8月30日ころが極期であり,今後は改善するのではないかと考えた。そして,D医師は,その後の経過も十分に観察する必要があると考え,9月3日に採血検査を行う予定とし,プロトロンビン時間については,1週間後の9月7日に実施することにした。 ・ Cは,同日夕方,夕食の2分の1を摂取し,Cは,看護師(準夜勤)に対し,「食欲はまずまず。食べられました。」などと述べた。 ケ 9月1日(火曜日)・ Cは,9月1日,看護師に対し,「今日はお腹いっぱい食べました。」などと述べた(なお,証拠(甲18,乙1の10)を総合すれば,Cが食べたのは,祖母の持参したちらし寿司であったものと認められる。)。黄染は依然として見られたが, ,「今日はお腹いっぱい食べました。」などと述べた(なお,証拠(甲18,乙1の10)を総合すれば,Cが食べたのは,祖母の持参したちらし寿司であったものと認められる。)。黄染は依然として見られたが,倦怠感はいくらかよい様子であった。また,Cは,「朝食べ過ぎて胃がもたれる」などと述べ,同日の昼食は主食1口とグレープフルーツしか摂らなかった。 ・ D医師は,同日昼ころ,Cを見舞いに来た原告Aに偶然会ったことから,前記前提となる事実・エ記載のとおり,「ピークを過ぎたみたいです。けど,何型の肝炎かまだ分からないんですよね。」などと説明した。 ・ D医師は,Cの全身疲労感が改善し,食欲も良好であったことから,9月3日のデータを見た上で補液を減らそうと考えた。 ・ Cは,夕食の主食の5分の1弱と副食の2分の1を摂取し,夜には,看護師に対し,「(発赤疹は)かゆくないです。」,「だるさも取れました。」などと述べた。 コ 9月2日(水曜日)9月2日朝,Cは,嘔気,嘔吐はなかったが,看護師(準夜勤)に対し,「あまり眠れなかった。胃がもたれて何か張っているようです。」,「腹が張った感じがあり夜もよく眠れない」などと訴えた。朝食として,ロールパン3個を食べ,昼食として副食の半分を摂取した。なお,Cは,回診の際にも消化不良を訴えたため,D医師は,消化剤を処方した。 また,Cは,同日夜,下痢を訴えたが,発疹は昨日より良くなっており,腹部膨満感も消失していた。 サ 9月3日(木曜日)・ 9月3日朝,黄染は見られたものの,Cは,看護師(準夜勤)に対し,下痢の症状が消失し,吐き気もなく,発赤疹のかゆみも減少した旨述べた。 また,Cは,朝食は2分の1を摂取したが,昼食については,5分の1を摂取し,「お腹がいっぱいで食べられなかった。」などと述べた。なお,看護師は,Cが内服薬を なく,発赤疹のかゆみも減少した旨述べた。 また,Cは,朝食は2分の1を摂取したが,昼食については,5分の1を摂取し,「お腹がいっぱいで食べられなかった。」などと述べた。なお,看護師は,Cが内服薬を飲んでいなかったため,飲むよう説明をした。 ・同日に行われた採血検査の結果,CのGOT値,GPT値は若干低下し,ビリルビンは若干増加していた。また,D医師が触診したところ,肝臓の萎縮,腹水等は見られず,8月31日ころに悪化した発疹も軽快し,全体として悪化している印象が見られなかった。 そこで,D医師は,8月30日に57パーセントまで低下したプロトロンビン時間が,翌日にこれまでの最高値である72パーセントまで回復していること,GOT値及びGPT値のピークが8月31日であり,9月3日は低下してきていること,急性肝炎の回復期にはこれらの低下より10日前後遅れて総ビリルビンが下降し始める場合があり,Cの上記検査結果も肝炎の軽快を示していると考えられたこと,触診上も異常が見られなかったこと(なお,カルテに「TBil24.7↑」と記載。乙1の6・4頁)から,Cの肝炎は8月30日ころを境にして改善に向かっていると判断した。そして,D医師は,Cに特段の異常が見られなかったことから,次回の採血を9月7日にすることとした。 ・ Cは,同日の夕食を摂取せず,看護師に対し,「胃の調子が悪くて食べたくない」などと述べ,また,熱感があり,表情が悪く,臥床した状態であった。 ・なお,原告Bは,同日,岩手県立釜石病院のG副院長に電話をかけ,Cの症状について相談したところ,同副院長から,「まあ,何型か分からない場合は岩手医大に行くという手もあるけど,本人は元気なんでしょう。D先生は肝臓の方には結構詳しい先生ですよ。僕の方から電話しておきましょう。」などと言われた。 シ 9月4日 ,「まあ,何型か分からない場合は岩手医大に行くという手もあるけど,本人は元気なんでしょう。D先生は肝臓の方には結構詳しい先生ですよ。僕の方から電話しておきましょう。」などと言われた。 シ 9月4日(金曜日)・ 9月4日,Cは,看護師(準夜勤)に対し,「背中がかゆいだけです」などと述べるとともに,「点滴の後の吐き気が辛い」などと訴え(黄染は,依然として見られた。),同日朝には,微熱も訴えた。また,Cは,同日の昼食として,サンドイッチ2つと,オレンジジュースを摂取した。 ・また,同日朝,D医師は,Cの見舞いに訪れた原告Aに対し,G副院長から電話があったので話をしたいこと,今回の検査でもCの肝炎の原因が不明であり,G型肝炎の可能性が疑われること,8月31日における総ビリルビン値24.7,GOT値2983IU/l,GPT値3850IU/lという数値がピークの値であり,プロトロンビン時間が69パーセント,57パーセント,72パーセントと改善したので,今後は回復し,来週には良くなってくると思われること,触診上肝の萎縮はないが,来週あたりCT検査をしてみること,検査数値としては総タンパクがやや減少しているが,ダメージを受けた肝臓は回復してきており,抗体も出来てきているので,今後は悪化しないことなどを説明した。 ・ D医師は,同日の診療において,Cを触診したところ,肝萎縮や腹水は見られなかったことから,9月9日にCT検査の予約を入れた。 ・同日夜,Cは,夕食を少量摂取し,看護師に対して「食べたい気はあるが,食べると入っていかない。」などと述べた。また,Cは,微熱を訴え,アイスノンを使用していた。 ス 9月5日(土曜日)・ Cは,9月5日朝,遅くまで寝ていたが,朝食としてパンを3個食べた。 ・ Cは,同日昼には,看護師(日勤)に対し,「熱は下がりました 微熱を訴え,アイスノンを使用していた。 ス 9月5日(土曜日)・ Cは,9月5日朝,遅くまで寝ていたが,朝食としてパンを3個食べた。 ・ Cは,同日昼には,看護師(日勤)に対し,「熱は下がりました。だるいのも少しはいいです。」などと述べるとともに,「朝パンを食べたい。ご飯は食べられないのでどうにかなりませんか。」と述べたことから,以後,Cの朝食をパン食に変更することとした。 また,Cは,同日,見舞いに訪れた原告Bに対し,「なんだか僕ちっとも治ってるような気がしないんだよね。治っているんだったら,おしっこの色ももう少し良くなると思うんだけど。」などと述べた。 ・ Cは,同日夜,発熱が見られたが,看護師(準夜)に対し,「いつも夕方になると熱が出るから気にならない」などと述べた。 セ 9月6日(日曜日)・ Cは,9月6日朝,看護師(深夜勤)に対し,「朝はだるいです」と述べ,額に熱サマシートを張っていた。 ・また,Cは,昼には,看護師(日勤)に対し,「いつもと変わらないです」などと述べ,食欲はない(昼食は少量摂取した。)が,嘔気もない様子で,音楽を聴きながら過ごした。 このころ,Cは,見舞いに訪れた原告らに対し,「お腹が張る」などと訴えた。 ・ Cは,同日の夕食も少量しか食べず,夜には,看護師(準夜勤)に対し,「全身だるくて熱いですね」などと述べ,ぐったりした様子であり,クーリングを希望したため,看護師は,これを行った。 ソ 9月7日(月曜日)・ 9月7日朝,Cの食欲,嘔気等の自覚症状に特段の変化はなく,前日の夕方に出た熱も下がっていた。Cは,朝食を全量摂取した。 ・原告らは,同日昼ころ,Cの見舞いに訪れたところ,Cからシャトータカマツのぶどうパンを食べたいと言われたため,そのパンを買いに行ったりした(甲18)。 Cは,同日,昼食につき,「お 量摂取した。 ・原告らは,同日昼ころ,Cの見舞いに訪れたところ,Cからシャトータカマツのぶどうパンを食べたいと言われたため,そのパンを買いに行ったりした(甲18)。 Cは,同日,昼食につき,「お腹がすかず,食べたくなかった。」などと述べ,桃を2,3口食べただけであった。また,同日は,清拭する気分でないとのことで,更衣のみした。 ・ D医師は,外来診療中,看護師から,同日朝に行われた血液検査の結果,プロトンビン時間が18パーセントに,ヘパプラスチンテストが36パーセントにそれぞれ低下している旨の連絡を受けた。D医師は,Cの同日の症状として精神症状が見られず,朝食も全量摂取していたこと,ヘパプラスチンテストがなお30パーセント以上に保たれていたことから,プロトロンビン時間の低下がビタミンKの欠乏によるものとも疑ったが,今後ヘパプラスチンテストが30パーセント以下になれば明らかに肝機能の異常によるものであると考えられることから,岩手医科大学第一内科のH助教授に電話で相談をした。 その結果,D医師は,ヘパプラスチンテストが保たれているので劇症化するかは何とも言えないが,経過が長いことを考えると今後予後不良の劇症肝炎になる可能性があるので,血漿交換等の劇症肝炎に準じた治療を早期に行うのが良いとの結論に達し,翌日,Cを岩手医大病院に転院させることにした。 ・その後,D医師は,血漿交換のためにCの血液型を調べて岩手医大病院に連絡するとともに,Cに対して超音波検査を行ったところ,肝右葉の軽度の萎縮と腹水の出現が確認された。 そこで,D医師は,同日午後5時半ころ,原告らを呼び出し,前記前提となる事実・キ記載のとおり,Cの肝炎について劇症化が疑われ,岩手医大病院への転院の準備をしたことなどの説明をした。 その後,原告BがCの病室に行くと,Cは,「明日,岩 ろ,原告らを呼び出し,前記前提となる事実・キ記載のとおり,Cの肝炎について劇症化が疑われ,岩手医大病院への転院の準備をしたことなどの説明をした。 その後,原告BがCの病室に行くと,Cは,「明日,岩手医大へ行くとお風呂にも入れないと思うから,シャワーをするよ。」などと述べた。 タ 9月8日(火曜日)同日朝,Cは,「ぐっすり眠れました。」などと答え,朝食として,ぶどうパン1枚と梨2,3切れを摂取した。 Cは,同日8時半ころ,救急車で久慈病院を出発し,岩手医大病院に運ばれた。 チその他久慈病院において,看護師の患者に対するベッド上清拭は,午前中に行われていたが,Cは,久慈病院入院中,ほとんどこれを受けることなく,病室に備えられていたシャワーを浴びていた(なお,Cの「退院時サマリー」(乙3の7)には,「清拭は拒否し,かくれてシャワーをしている様子」などという記載がされている。)。なお,Cは,病室にシャンプー等を隠すことなく,置いていた。 ・岩手医大病院転院後の診療経過等(甲8ないし11,18,26,36,37,乙19,20)ア Cは,9月8日,岩手医大病院に入院時,意識は清明であったが,血液検査の結果,プロトンビン時間は15パーセントまで低下しており(なお,血液検査の詳細については,後述),CT検査により,胸腹水と肝の萎縮傾向が認められたため,急性肝炎(重症型)との診断を受けた。そして,岩手医大病院は,Cに対し,劇症肝炎に準じた治療を行うこととし,同日中に,血漿交換療法を実施した。 イ 9月9日,Cの意識は清明であり,嘔気,嘔吐は見られなかった。Cは,同日も,血漿交換を受けた。 ウ 9月10日朝,Cに意識障害が始まり,肝性昏睡Ⅱ度となり,劇症肝炎(亜急性型)と診断され,午後には肝性昏睡Ⅲ度にまで進行した。 エ 9月11日,Cに対し,CT検査が ,同日も,血漿交換を受けた。 ウ 9月10日朝,Cに意識障害が始まり,肝性昏睡Ⅱ度となり,劇症肝炎(亜急性型)と診断され,午後には肝性昏睡Ⅲ度にまで進行した。 エ 9月11日,Cに対し,CT検査が行われ,腹水の減少は見られたが,肝萎縮は進行しており,従前の治療にもかかわらず,肝機能,凝固能は改善せず,肝性脳症もⅣ度にまで進行した。 そのため,生体肝移植が検討されることとなり,原告Bがドナーの候補者に上がった。 オ 9月12日,信州大学第一外科移植グループの医師が,岩手医大病院を訪れ,Cと原告Bを診察した上,原告Bに対し,Cの意識レベル低下の進行が速いため猶予がなく,Cの脳障害の進行によっては移植できない可能性もあり得ること,原告Bの肝臓に脂肪肝の疑いがあり,脂肪肝の場合の成功率は50パーセントであることなどを説明した。 カ Cは,9月13日早朝,肝移植をするため,原告Bらと共に,ヘリコプターで信州大学病院に移送された。 キ岩手医大病院における各種検査結果は,次のとおりである。 │項目(単位)│T-BIL │GOT │GPT │PT │Alb ││検査日 │(㎎/dl)│(IU/l)│(IU/l)│(%) │(g/dl)││9月 8日 │31.1│911 │1424│15 │2.9 ││9月 9日 │22.1│395 │615 │30 │3.5 ││9月10日 │19.7│302 │458 │29 │9月 9日 │22.1│395 │615 │30 │3.5 ││9月10日 │19.7│302 │458 │29 │3.5 ││9月11日 │22.7│282 │414 │25 │4.1 ││9月12日 │21.4│290 │415 │― │3.7 ││9月13日 │13.5│164 │215 │― │3.6 │・信州大学病院転院後の診療経過等(甲12,18,26,36,37)Cは,同月13日早朝,生体肝移植を受けるため,信州大学病院へ搬送された。 同月14日,詳細な検査の結果,原告Bの肝臓は,脂肪が多く,炎症も見られたため,移植は不可能とされた。 その後,他に適当なドナーが見つからず,Cは,同月18日午前0時7分,死亡した。 ・ D医師及び久慈病院の診療体制等について(甲24,乙18,証人D)ア久慈病院は,岩手県の北東部に位置し,7万2000人の医療圏で唯一の中核的総合病院であり,平成10年3月以降は救命救急センターを併設し,合計358床の病床を擁している。 イ D医師が行っていた入院患者の診療は,軽症患者に関しては午後の回診だけであり,重症患者に対しては朝(午前8時30分ないし午前9時ころ)と午後2時30分ころの2回の回診を行っていた。D医師は,通常,午前中に行う外来の診療を開始する前に病棟に行き,カルテや看護師の記載した記録を見たり,看護師から報告を聞いたりして,必要と思われる患者に対して回診を行っていた。 Cに対しても,同様に回診を行い,必要な場合には,午前中に診察をした。また,Cは肝疾患で テや看護師の記載した記録を見たり,看護師から報告を聞いたりして,必要と思われる患者に対して回診を行っていた。 Cに対しても,同様に回診を行い,必要な場合には,午前中に診察をした。また,Cは肝疾患であって,肝萎縮・腹水の所見が重要であることから,触診を毎日行うとともに,食欲,倦怠感などの自覚症状の変化,黄疸の変化,肝萎縮や腹水の出現に注意して回診を行った。 看護師に対しては,自覚症状の変化を中心に観察するよう指示をした。各種検査結果については,異常値にマークをした。 ウ D医師は,急性肝炎の患者に対する採血検査の頻度,回数につき,肝機能の推移を見るため1週間に2回程度の割合で肝機能検査を実施するのが適当かつ一般的と考えていた。 また,凝固因子であるプロトロンビン時間,ヘパプラスチンテストの測定に関しては,急性肝炎の診断に当たり保険診療上月4回までという制約があり,特に異常が見られた場合(この場合には,緊急採血を指示する。)以外は,1週間に1度とするなど,節目ごとの測定にならざるを得ないものと考えていた。 ・急性肝炎,劇症肝炎について(甲13,14,19ないし23,27ないし81の5,同90ないし110,113ないし117,119,120,123,乙4ないし11,21の1ないし同53の2,証人D,証人F,証人I)ア急性肝炎急性肝炎は,ウイルスが原因で主として肝臓に肝機能異常を伴った炎症が起こる状態を指すものと言われ,現在,急性肝炎を引き起こすウイルスは,A型,B型,C型及びE型があるとされている(なお,従来,薬物などによって引き起こされる肝障害も急性肝炎に含まれるとされていたが,現在では別の疾患とされている。)。 発熱,全身倦怠感,食欲不振,吐き気,嘔吐,黄疸,腹部膨満感,肝腫大などの症状が見られ,GOT,GPTの著明な上昇,総ビリルビ も急性肝炎に含まれるとされていたが,現在では別の疾患とされている。)。 発熱,全身倦怠感,食欲不振,吐き気,嘔吐,黄疸,腹部膨満感,肝腫大などの症状が見られ,GOT,GPTの著明な上昇,総ビリルビン値の上昇などの検査所見が見られる。 肝臓は極めて大きな再生力と予備力を特徴とする臓器であって,急性肝炎は,C型肝炎を除き,自然に治癒する傾向の強い疾患とされる。したがって,急性肝炎の患者に対する治療としては,絶対安静の確保と栄養補給等を行うことにより,肝臓の再生を促すことにあるとされ,これにより,多くの場合は,快方に向かうことになる(ここにいう絶対安静とは,ベッド上で安静にすることであり,シャワー,入浴等は一般に禁止するのが相当とされている。)。 急性肝炎の治療において重要なことは,慢性化や劇症化を防止することにあるといわれている。特に,急性肝炎の経過中に0.5ないし2パーセントが劇症化するとされ,劇症化した場合には予後が不良となり,いかに手厚い治療を施したとしても致命的になる症例も少なくないため,劇症化の兆候を早期に発見して,その対策を迅速に行うことが肝要とされる。ただし,上記のような急性肝炎の治療として基本的に行われている絶対安静の保持と栄養の補給を行っただけでは,肝炎の劇症化を防ぐことはできない。 なお,急性肝炎のうち,プロトロンビン時間が40パーセント以下である場合には,重症型といわれるが,この場合でも,脳症を発症して劇症肝炎と診断される症例と,脳症を発症せずに自然回復する症例とが存在する。 イ劇症肝炎・病態等我が国において,劇症肝炎とは,肝炎のうち,症状発現後8週間以内に高度の肝機能障害に基づいて肝性昏睡Ⅱ度以上の脳症を来し,プロトロンビン時間が40パーセント以下を示すものをいい,その中には,発病後10日内に脳症が発現する急性 は,肝炎のうち,症状発現後8週間以内に高度の肝機能障害に基づいて肝性昏睡Ⅱ度以上の脳症を来し,プロトロンビン時間が40パーセント以下を示すものをいい,その中には,発病後10日内に脳症が発現する急性型と,それ以後に発現する亜急性型があるとされている。なお,肝性昏睡度の内容については,別紙「肝性脳症の昏睡度分類」記載のとおりである。 劇症肝炎は,発病初日から脳症が出現して初発するものではなく,病初期には黄疸等の症状が出て急性肝炎と診断された後,暫くしてから脳症が出現し,劇症肝炎と診断されるという経過をたどる。黄疸等の初発症状の発現から脳症の発現までの期間の長短は,肝細胞破壊の速度によるものである。 劇症肝炎の発生機序については,急性肝炎の過程で劇症化を促進する何らかの別の要因が働くという考えや,ウイルスと宿主の免疫応答の関係によって発生するとする考えがあるが,現在においても未だ解明されてはいない。 急性型の場合には,ウイルス排除が早期に行われるため,肝炎の沈静化が迅速で,回復も早いのに対し,亜急性型の場合,ウイルス排除が悪く,肝炎も持続して回復が遅いとされている。そのため,一般に,急性型に罹患した患者の予後は相対的に良好であるが,亜急性型に罹患した患者の予後は相対的に不良となる。 例えば,平成5年から平成9年までの劇症肝炎の症例についての全国集計によれば,亜急性型の救命率は12.2パーセントであった(乙30,31)。また,厚生省特定疾患対策研究事業「難治性の肝疾患に関する研究」班作成に係る平成11年度研究報告書(乙30)によれば,平成10年に発症した劇症肝炎93例について調査した結果,肝移植非実施症例における救命率は,急性型51.1パーセント,亜急性型25.6パーセントであり,厚生労働省特定疾患対策研究事業「難治性の肝疾患に関する研究」班作成 症肝炎93例について調査した結果,肝移植非実施症例における救命率は,急性型51.1パーセント,亜急性型25.6パーセントであり,厚生労働省特定疾患対策研究事業「難治性の肝疾患に関する研究」班作成に係る平成12年度研究報告書(乙31)によれば,平成11年に発症した劇症肝炎128例について調査した結果,肝移植非実施症例における救命率は,急性型62.7パーセント,亜急性型29.5パーセントであり,厚生科学研究研究補助金特定疾患対策研究事業「難治性の肝疾患に関する研究」平成13年度総括・分担研究報告書(乙32)によれば,平成12年に発症した劇症肝炎113例について調査した結果,肝移植非実施症例における救命率は,急性型48.81パーセント,亜急性型17.0パーセントであった。 このような状況について,F医師は,厚生省特定疾患難治性の肝疾患調査研究班作成に係る平成10年度研究報告において,劇症肝炎亜急性型の予後について,「我々の施設のように多数の症例を経験し,高度の治療技術とノウハウを持ち,また常時患者治療に対応できるように病院自体の治療体制が整備されている病院以外を除いてその予後は維然として不良である」と指摘している(乙46)。 ・劇症肝炎に見られる症状及び検査結果と,劇症化予知の指標a 劇症肝炎患者に見られる症状は,自他覚症状としては,悪心,嘔吐,全身倦怠感の増悪,意識障害,腹水,肝濁音界の縮小,肝萎縮などであり,検査による数値としては,① 著しい高ビリルビン値,高GOT値及び高GPT値,② ビリルビン値上昇に反するGOT値,GPT値の低下,③ プロトロンビン時間及びヘパプラスチンテスト値の低下,④ コリンエステラーゼ値及びコレステロール値の著しい低下などがあるといわれている。 b このうち,自他覚症状については,多少なりとも通常の急性肝炎 ロトロンビン時間及びヘパプラスチンテスト値の低下,④ コリンエステラーゼ値及びコレステロール値の著しい低下などがあるといわれている。 b このうち,自他覚症状については,多少なりとも通常の急性肝炎で見られる症状であり,それのみで肝炎の劇症化を正確に予知することはできないといわれている。 また,検査数値のうち,高ビリルビン値,高GOT値及び高GPT値については,多少なりとも通常の急性肝炎で見られる症状であり,ビリルビン値上昇に反するGOT値及びGPT値の低下という傾向については,急性肝炎の回復期に認められる傾向でもあり,さらに,コリンエステラーゼ値及びコレステロール値の著しい低下については,これらのたんぱく合成能を示す指標が食事摂取量等によって影響される数値である。そのため,上記①,②及び④の検査数値についても,劇症化を予知するための的確な指標と解されているわけではない。 これに対し,プロトロンビン時間及びヘパプラスチンテストの血液凝固系検査については,肝臓の予備能を見る上で重要な指標とされており,劇症化の指標としてはヘパプラスチンテストの方がプロトロンビン時間よりも確実性が低いことなどから,プロトロンビン時間が,劇症化を予知する上で,最も重要かつ確実な指標と考えられている。 例えば,甲23には,「劇症肝炎などでは,凝固能低下が起こり,プロトロンビン時間の延長(パーセントの低下)をきたす。一方,劇症肝炎などでいったん肝機能が回復に転じたときには,凝固能の明らかな改善を検出することができる。」という記載が見られ,甲13では,「重症化,劇症化への移行が疑われる客観的指標は,ビリルビン値,黄疸の程度ではなく,肝予備能を最も敏感に反映する凝固系検査である。プロトロンビン時間,ヘパプラスチンテストを病初期は毎日測定し,極期を過ぎたか否かを判定する が疑われる客観的指標は,ビリルビン値,黄疸の程度ではなく,肝予備能を最も敏感に反映する凝固系検査である。プロトロンビン時間,ヘパプラスチンテストを病初期は毎日測定し,極期を過ぎたか否かを判定する。意識状態に変化が見られなくとも,凝固系が低下,上昇しない場合は重症化,劇症化を疑い,早急に専門病院に紹介することが必要である。」との指摘がある。また,甲14には,「発病初期には非重症例であっても食欲不振や嘔吐を伴うことがあるが,一般に黄疸出現後には症状は軽快する。これに対し,重症例ではこれらの症状が黄疸出現とともにむしろ増強する。臨床所見で肝炎の重症度判定に最も重用なものは,肝臓で生成される蛋白の中で半減期の短い血液凝固因子の測定である。ビリルビン抱合能は肝障害が高度となるにつれて低下し,直接型ビリルビンに対する間接型ビリルビンの占める比率が次第に大きくなる。血清中GPT,GPT値が著しい高値から急速に著明な低下を示す一方で,ビリルビン値が著増する場合にはかえって予後不良の徴候である。」と記されている。 c したがって,急性肝炎の治療に当たる医師としては,最も確実な指標であるプロトロンビン時間の低下を中心として,上記各症状,検査数値等を総合的に評価しながら,劇症化する急性肝炎とそうでない急性肝炎を判別することが要求される。 ・劇症肝炎の治療法(乙14)a 劇症肝炎の内科的治療法としては,GI療法,抗凝固線溶療法,特殊組成アミノ酸療法,人工肝補助療法(血漿交換療法と血液ろ過透析あるいは血液持続ろ過透析を組み合わせたもの),抗ウイルス療法(インターフェロン投与),副腎皮質ステロイドパルス療法,免疫抑制療法(シクロスポリンの投与)などがあり,内科的治療法が功を奏しない場合には,肝移植などが行われる。 上記内科的治療法については,少なくとも平成10 ロン投与),副腎皮質ステロイドパルス療法,免疫抑制療法(シクロスポリンの投与)などがあり,内科的治療法が功を奏しない場合には,肝移植などが行われる。 上記内科的治療法については,少なくとも平成10年8月当時,劇症肝炎に対しいずれも有意に寄与する治療法とは考えられていなかった。また,これら劇症肝炎の治療法については,副作用もあり,また,肝臓が自然治癒力のある臓器でもあることから,急性肝炎がある程度重症化した段階ですべての患者に行うべき治療法とは考えられていない(証人F。なお,乙58ないし60参照)。 なお,GI療法については,劇症肝炎の治療として効果がないとする見解(甲20,21,71)もある。 また,人工肝補助療法の開始時期については,劇症肝炎の診断基準を満たした時であり,プロトロンビン時間が40パーセントを下回った時点で,劇症肝炎が切迫している状態と考えてこれを開始する例もあるとする文献(乙15)がある。 b これら劇症肝炎の治療法については,集中治療室(ICU)などの設備がある医療機関でなければ不可能であるものもあるため,劇症肝炎と診断され,あるいはそれが疑われた段階において,その治療を専門とする医療機関に転院すべきであるとされている。 ウ我が国における劇症肝炎の診断基準及び劇症化予知に関する医学的進展昭和56年(1981年)8月に開催された犬山シンポジウムにおいて,劇症肝炎の診断基準が議論された。同シンポジウムにおいては,まず,劇症肝炎の過去の臨床データ及び病理学的所見等を基礎として作成された診断基準として,劇症肝炎を肝炎の症状発現後8週以内に高度の肝機能障害に基づいて,肝性昏睡Ⅱ度以上の脳症を来し,プロトロンビン時間40パーセント以下のものと定義する基調的な試案が示された。そして,同シンポジウムの討論の中では,プロトロンビン時間 以内に高度の肝機能障害に基づいて,肝性昏睡Ⅱ度以上の脳症を来し,プロトロンビン時間40パーセント以下のものと定義する基調的な試案が示された。そして,同シンポジウムの討論の中では,プロトロンビン時間が確かな指標になるのか疑問であり,むしろ,脳症などに関係のある肝不全を表す機能はアンモニアであるとして,プロトロンビン時間の項は削除すべきであるとの考え方,疾患の判定は総合判定によるものであって,単一のものを出すのはよくないので,プロトロンビン時間をわざわざ本文に入れることはないとの考え方など前記基調的な考え方に異論を唱える意見も出されたが,他方,肝臓の機能障害を把握するための一つの指標が必要であり,その点でプロトロンビン時間が指標として優れているとか,全国的な臨床データによれば,40パーセントくらいが数値として妥当な線ではないかと思われるという意見も出され,結論として,40パーセントであること及び肝性昏睡Ⅱ度以上であることを要件とする前記の基調的な考え方が採用され,犬山シンポジウムの診断基準になった。 その後,犬山シンポジウムの診断基準は,我が国の医学界及び医療現場において劇症肝炎の診断において極めて強い影響力を有するに至った。医師又は医療機関において患者が劇症肝炎に罹患したとの診断をする上で必要な基準として用いられるほか,そこで規定されたプロトロンビン時間と肝性脳症Ⅱ度という要件が,劇症肝炎の治療を開始したり,劇症肝炎の患者を専門病院へ移送する基準として認識されることになった。また,劇症化を判断するための検査値として,プロトロンビン時間40パーセント以下という数値基準がとりわけ重視される結果になり,劇症化の予知についてもプロトロンビン時間が40パーセント以下という値を基準としてこれを行うことが一般的であった。 他方,劇症肝炎亜急性型など セント以下という数値基準がとりわけ重視される結果になり,劇症化の予知についてもプロトロンビン時間が40パーセント以下という値を基準としてこれを行うことが一般的であった。 他方,劇症肝炎亜急性型など経過の緩やかな肝不全の症例の場合,プロトロンビン時間が40パーセント以下になっても肝性脳症が発現することなく経過し,脳症の出現時には既に不可逆的な肝細胞破壊が進行しているという例が存在し,その段階で劇症肝炎に対する治療を施したとしてももはや手遅れになっていることも少なくなかった。そして,その点が,劇症肝炎亜急性型の救命率が低いことの大きな理由であると考えられた。 そこで,昭和大学藤が丘病院のF医師らは,同医師が多数の劇症肝炎患者や急性肝炎重症型の患者を救命したという臨床経験に基づいて,プロトロンビン時間等の凝固能のみならず,たんぱく合成能などを表す指標を総合的に捉え,劇症化以前に治療を行うことの重要性を指摘し,厚生省特定疾患難治性の肝疾患調査研究班作成に係る平成7年度研究報告において,劇症化を予知するための予知式(与芝の予知式)を提言した。F医師によれば,ウイルスを原因とする急性肝炎において,HBVキャリアの急性発症,C型,非A,非B,非C型であり,急激にビリルビンが上昇し,プロトロンビン時間だけでなく,アルブミン,コリンエステラーゼ値,コレステロール値などの肝の合成能の全般的低下が見られる場合には劇症化の危険があるとされ,それを基に作成された予知式を適用して劇症化の可能性が認められる患者に対しては,早期に劇症肝炎の特殊治療を行うべきであるとされている。 この予知式に対し,厚生省特定疾患対策研究事業「難治性の肝疾患に関する研究」の研究班において,その有用性の検証,研究等が行われるとともに,武藤の式の応用式や岩手医科大学第一内科によって作成され る。 この予知式に対し,厚生省特定疾患対策研究事業「難治性の肝疾患に関する研究」の研究班において,その有用性の検証,研究等が行われるとともに,武藤の式の応用式や岩手医科大学第一内科によって作成された予知式などとの比較検討などがされているが,現在においても最終的な結論は出されていない。 F医師自身も,学会,論文,書籍及びホームページ等において発表したり,全国の医療機関に信書を送付するなどして,上記知見の周知を図っているが,現時点においても,その知見に基づいて治療を行っている医療機関は多数を占めるに至っていないという現状にある。このような状況について,F医師は,急性肝炎の経過中に肝炎が劇症化する危険性が存在し,劇症化した場合には手遅れになることも少なくないにもかかわらず,どのような場合に劇症化するのかの判別について十分な医療教育がされず,医学界においても必要な手段を講じてこなかったのではないかとの意見を持ち,その考えを発表するなどしてきた。例えば,甲58では,「いままでは急性肝炎として入院した患者が,その時点で重症化するかどうかをどのように見抜くかの訓練を受けておりませんでした」,「最初には患者さんは急性肝炎の診断で,小中規模の一線病院に入院されますので,そのレベルの病院でプライマリケアとして,この問題の認識を深くしていただくと,もっとよくなると思います」との指摘がされ,甲31では,「以上のことは,通常の急性肝炎のなかにまぎれ込んでいる劇症化の危険を持つ急性肝炎の判別という,いわゆるプライマリケアの問題であり,こと人の生死にかかわる問題ですから,医師会などで十分に教育すべきですし,プライマリケア学会や肝臓学会でも関心をもつ必要があるのにほとんど手が打たれていません」との指摘がされている。 なお,与芝の予知式は,当初,プロトロンビン時間が4 医師会などで十分に教育すべきですし,プライマリケア学会や肝臓学会でも関心をもつ必要があるのにほとんど手が打たれていません」との指摘がされている。 なお,与芝の予知式は,当初,プロトロンビン時間が40パーセントまで低下した時点で適用するものとされていたが,平成11年に行われた厚生省特定疾患難治性の肝疾患調査報告班報告(平成10年度の研究報告)において,プロトロンビン時間が60パーセントに低下した時点で同予知式を適用するものと改められた。 さらに,平成13年に発行された文献では,「一般肝機能検査とともにプロトロンビン時間を測定し,40%以下の症例は肝性脳症が認められなくても肝臓病専門医のいる二次・三次医療機関への移送を考慮する」との治療指針が示されている(乙51)。 争点・(劇症化予防義務違反)について・原告らは,D医師(及び看護師)がCの肝炎の劇症化防止に必要な措置をしなかったと主張する。 ア前記認定のとおり,急性肝炎の治療は,絶対安静の確保と栄養補給とされているところ,本件において,栄養補給については,補液等により行われていたことが認められる。 また,安静については,看護師からCに対し,病室から出ていた際,安静にするよう注意をされていた事実があることなどからみて,Cが安静の必要性について一定の指示,説明を受けていたことを認めることができる。 これに対し,急性肝炎の場合に禁止されるべきシャワーについてみると,Cは,病室内に設置されていたシャワーを随時使用していたのであって,このことは,「退院時サマリー」(乙3の7)に,「ベッド上清拭を拒否し,かくれてシャワーをしている様子」という記載がされていること,Cの病室がナースステーションの近く位置していたこと,Cがシャワーに必要な用具を病室内に置いていたことなどからみて,久慈病院の看護師は ,かくれてシャワーをしている様子」という記載がされていること,Cの病室がナースステーションの近く位置していたこと,Cがシャワーに必要な用具を病室内に置いていたことなどからみて,久慈病院の看護師はCが病院内のシャワーを使用していることに気づいていたものと推認することができる。この点,D医師が入院後のある時点で,看護師に対し,シャワーを禁止するよう指示した事実は認められるものの,Cが岩手医大病院に転院が決まった段階においてもなおシャワーを浴びようと考えていたことなどからみて,そのことが久慈病院の看護師に周知されていなかったか,あるいは,看護師において黙認していたものと解される。 そうすると,久慈病院のCに対する安静確保は,急性肝炎患者に対するものとして,必ずしも十分なものであったとはいえないと考えられる。 イしかしながら,前記認定のとおり,急性肝炎の通常の治療を行っていたとしても,劇症化を防止し得るというわけではない(そうであるからこそ,劇症化以前に劇症肝炎の特殊療法を行うべきであるという考えが検討されている。)のであって,劇症化の発生機序が未だ解明されていないことも併せて考えれば,仮に,久慈病院がCに対しシャワーの禁止を徹底させていたからといって,Cの肝炎の劇症化を防止することができたと解することはできない。また,久慈病院は,Cに対し,安静の必要性について一定の指示・説明はしていたのである。すると,看護師がベッド上清拭を拒んでいたCに対し,シャワーの使用を黙認したような事実があったとしても,劇症化を予防すべき注意義務に違反する行為があったものとまでは認めることができない。 ・また,原告らは,CのGOT値及びGPT値が1週間以上1000IU/lを超えていたから,直ちに,副腎皮質ホルモンを投与するなどして,肝細胞の壊死を阻止する処置を とまでは認めることができない。 ・また,原告らは,CのGOT値及びGPT値が1週間以上1000IU/lを超えていたから,直ちに,副腎皮質ホルモンを投与するなどして,肝細胞の壊死を阻止する処置をすべきであった旨主張する。 しかし,Cの場合,それらが1000IU/lを超える状態が1週間以上続いたものの,劇症肝炎の最も重要な指標と考えられているプロトロンビン時間やヘパプラスチンテストなどの血液凝固能が余り低下していなかったこと,通常の急性肝炎においても,GOT値及びGPT値が1000IU/lを超える場合が見られないわけではないこと,原告らが上記主張の根拠として提出する文献(甲19)のほか,同様の知見を述べる文献等は証拠上提出されていないのみならず,かえって,同文献の中で,副腎皮質ホルモンの投与につき,「特にB型については,副腎皮質ホルモンは抗体産生を押さえ,病気を遷延させるので禁忌であると教科書に記載されている」と記載されているとおり,同療法が必ずしも一般的に推奨されている治療法とは認められないこと,D医師は,前日の血液検査の結果GOTが2139IU/l,GPTが3238IU/lとなった8月28日の段階で,肝再生を目的としてGI療法を行っているのであって,何ら処置をとらなかったわけではなく(なお,同療法は,平成10年8月当時,急性肝炎,劇症肝炎等の治療に有効性がないと確定的に考えられていたわけではない。),その中止に当たっても,翌日に緊急採血を行っていたことなどの事情が認められるのであり,これらの事情からすれば,D医師がCに対し,副腎皮質ホルモン投与等による肝細胞壊死の防止治療をしなかったからといって,医師としての診療に不適切な点があったと認めることはできない。 ・以上によれば,原告らの上記主張は,採用することができない。 争点・( ン投与等による肝細胞壊死の防止治療をしなかったからといって,医師としての診療に不適切な点があったと認めることはできない。 ・以上によれば,原告らの上記主張は,採用することができない。 争点・(8月31日における転院義務等の違反の有無)について・原告らは,Cには劇症肝炎の各種兆候が見られたことを前提として,D医師には,8月31日の時点で,劇症化を前提に,専門病院にさせるか,劇症肝炎の特殊治療を行うべきであったと主張するので,この点について検討する。 ・ア一般に,医師に対していかなる注意義務が要求されるのかについてみると,人の生命及び健康を管理すべき業務(医業)に従事する者には,その業務の性質に照らし,危険防止のために実験上必要とされる最善の注意義務を要求されるのであり(最高裁昭和31年(オ)第1065号同36年2月16日第一小法廷判決・民集15巻2号244頁参照),具体的な個々の案件において,債務不履行又は不法行為をもって問われる医師の注意義務の基準となるべきものは,一般的には診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準であると解される(最高裁昭和54年(オ)第1386号同57年3月30日第三小法廷判決・裁判集民事135号563頁,最高裁昭和57年(オ)第1127号同63年1月19日第三小法廷判決・裁判集民事153号17頁参照)。そして,この臨床医学の実践における医療水準は,全国一律に絶対的な基準として考えるべきものではなく,診療に当たった当該医師の専門分野,所属する診療機関の性格,その所在する地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮して決せられるべきものであるが(最高裁平成4年(オ)第200号同7年6月9日第二小法廷判決・民集49巻6号1499頁参照),医療水準は,医師の注意義務の基準(規範)となるものであるから,平均的医 慮して決せられるべきものであるが(最高裁平成4年(オ)第200号同7年6月9日第二小法廷判決・民集49巻6号1499頁参照),医療水準は,医師の注意義務の基準(規範)となるものであるから,平均的医師が現に行っている医療慣行とは必ずしも一致するものではなく,医師が医療慣行に従った医療行為を行ったからといって,医療水準に従った注意義務を尽くしたと直ちにいうことはできない(最高裁平成4年(オ)第251号同8年1月23日第三小法廷判決・民集50巻1号1頁参照)。 イそこで,上記基準を前提に,平成10年8月当時,肝炎の劇症化と治療,転院等について,医師又は医療機関が従うべき医療水準がいかなるものであったのかについて検討する。 平成10年8月当時,劇症肝炎を発症したか否かについては,犬山シンポジウムの診断基準が広く医療機関に浸透していたが,劇症肝炎の発症の機序は医学的に未だ解明されていなかった(現時点においても,その発症機序の詳細は不明である。)。その状況下において,劇症肝炎に対する臨床上の治療方針としては,急性肝炎の治療経過中に劇症化の兆候を早期に発見し,その対策を迅速に行うべきであるとの考え方が既に示されていたのであり,急性肝炎の治療に当たっている医師としては,劇症肝炎であるとの確定的な診断がされる以前の段階であっても,肝炎の劇症化を疑うに足りる合理的な根拠が認められる場合には,当該患者について転院をも含めた劇症化に対する対策を講じる必要があるものと認知されていたというべきである。 そして,劇症化の予知については,当時,一般的な医療機関の臨床の現場において,犬山シンポジウムの診断基準が極めて強い影響力を有していたこともあり,プロトロンビン時間が肝炎の劇症化を見極める最も明確な基準であると考えられていた。それ以外の指標については,肝炎の劇症化 おいて,犬山シンポジウムの診断基準が極めて強い影響力を有していたこともあり,プロトロンビン時間が肝炎の劇症化を見極める最も明確な基準であると考えられていた。それ以外の指標については,肝炎の劇症化の機序が解明されていないことや,患者の症状や検査結果が通常の急性肝炎においても見られるものであったり,食事摂取量等の要因に影響されるものであったりすることから,劇症化を判別するための的確な指標として確立してはいなかった。そのため,プロトロンビン時間が40パーセント以下になった時点以降において劇症化を疑うというのがほぼ支配的な考え方であった。また,劇症化を予知するための診断方法については,上記のとおりプロトロンビン時間の検査数値を最も重要な指標として捉えることを前提とし,それに加えて,食欲不振,吐き気,嘔吐,全身倦怠感,意識障害,腹水,肝濁音の縮小及び肝萎縮などの自他覚症状,並びにヘパプラスチンテスト,GOT,GPT,総ビリルビン,コリンエステラーゼ及び総コレステロールなどの検査値をも参考にして,劇症化の兆候があるか否かを見極めるという方法が広く採用されていた。 もっとも,劇症化の予知を行うに当たり,上記の各指標をどのように解釈し,いかなる基準に基づいて判定するのが最も優れているのかについては,その当時から医学上の見解が分かれていた(現時点においても同様の状況にある。)。例えば,厚生省特定疾患難治性の肝疾患調査研究班作成に係る平成9年度研究報告書(乙38)及び同平成10年度研究報告書(乙40)によれば,急性肝炎重症型の劇症化予測について,与芝の式,武藤の式の応用式及び岩手医科大学が作成した予知式が,それらの精度及び有用性の観点から比較検討されている。いずれにしても,劇症化の予知に当たり,与芝の式を採用すべきであるということが当時の医療水準にな の式の応用式及び岩手医科大学が作成した予知式が,それらの精度及び有用性の観点から比較検討されている。いずれにしても,劇症化の予知に当たり,与芝の式を採用すべきであるということが当時の医療水準になっていたわけではない。 また,平成10年8月当時において,劇症肝炎亜急性型のうち肝移植非実施例における救命率は30パーセントを超えてはいなかったのであり,その後の平成13年の調査では前年の劇症肝炎亜急性型の発症例のうち肝移植非実施例の救命率が17パーセントに下がることもあったのであって,劇症肝炎亜急性型の救命率は必ずしも高くはなかった。F医師が劇症化の判別について十分な医療教育が行われてこなかったという現状認識を示していることからも分かるとおり,全国一般の臨床現場において,急性肝炎の治療に当たり劇症化の兆候があるか否かを的確に見極め,高い救命率を維持し得るような劇症化の予知方法が十分に確立している状況にはなかったものであり,そのため,犬山シンポジウムの診断基準に該当する時点まで劇症化を予知することができず,結果として,手遅れになる症例が存在した。F医師は,厚生省特定疾患難治性の肝疾患調査研究班作成に係る平成7年度研究報告において,プロトロンビン時間が40パーセント以下になった場合には肝性脳症Ⅱ度になる前であっても劇症化を予知すべきであることを強調する見解を発表しているが,そのような発表をしたのも,同医師が上記の救命率の低さを憂慮し,臨床の現場における劇症化の予知についての実情を改める必要性を感じたからである。 さらに,劇症肝炎に対する特殊治療については,副作用もあることなどから,早期にかつ広い範囲で行えば足りるという見解は一般に採用されていなかった。 ・上記医療水準に照らして,D医師の行った治療等が不適切なものであったか否かについて検討する。 ,副作用もあることなどから,早期にかつ広い範囲で行えば足りるという見解は一般に採用されていなかった。 ・上記医療水準に照らして,D医師の行った治療等が不適切なものであったか否かについて検討する。 D医師は,Cの入院後,Cに対し,急性肝炎の治療として安静確保と補液を行うとともに,血液凝固能検査,触診,超音波検査,CT検査などにより,Cの肝臓の状態,腹水等について診察し,回診及び看護師を通じて,毎日,Cの症状,食事摂取量等を把握していた。また,前日の血液検査の結果GOT値が2139IU/l,GPT値が3238IU/lとなった8月28日にGI療法を開始しており,それによってCの食欲は低下したが(GI療法は,嘔気,嘔吐を来すことがあるとされている(甲13)。),同月29日に同療法を中止したことにより,食事摂取量は改善し,同月30日には,C自身,「注射止めてから,ぱったりと吐き気も,胸の方も落ち着いた」,「特に具合悪いところなく,今日は嘔気もいいです」等と述べ,8月31日には,昼食を3分の1,夕食の2分の1を摂取し,「昨日よりはだるさもいい」,「食欲はまずまず。食べられました。」などと述べる程度に体調,食欲は改善していた。 そして,同日行った検査の結果,プロトロンビン時間は前日の57パーセントから72パーセントまで回復し(8月31日のプロトロンビン時間の数値が,検査の誤りないし誤差によるものであったと認めるに足りる証拠はない。),ヘパプラスチンテストも異常値ではない50パーセントを示していた(劇症肝炎との関係におけるヘパプラスチンテストの異常値は,30パーセント以下と考えられている(乙27,証人D,証人F,証人I))。 このように,8月31日の時点で,Cには意識障害,肝萎縮及び腹水を示すような所見は見られなかった上,劇症肝炎の最も重要な指標と考 パーセント以下と考えられている(乙27,証人D,証人F,証人I))。 このように,8月31日の時点で,Cには意識障害,肝萎縮及び腹水を示すような所見は見られなかった上,劇症肝炎の最も重要な指標と考えられているプロトロンビン時間が回復し,プロトロンビン時間と同様に血液凝固系機能を示すヘパプラスチンテストも異常値ではなく,さらに,Cの食欲,全身倦怠感等が改善している様子が見られたのであって,D医師は,これらの症状,検査数値を総合的に判断して,Cの肝炎が極期を過ぎ改善傾向を示しているものと診断したのである。 前記のような症状や検査数値を前提とする限り,Cについて,肝炎の劇症化を疑うに足りる合理的な根拠があったものとはいえないし,むしろ,D医師は,劇症化に関してプロトロンビン時間を最も重要な指標と考える当時の水準的な見解に従った判断をしたものということができるから,結果的にCがその後劇症肝炎を発症した事実があるとしても,D医師の前記判断が不適切であったものということはできない。 なお,他方で,総ビリルビン値の上昇並びにアルブミン値,コリンエステラーゼ値及び総コレステロール値の低下は見られたが,これらの数値は,前記認定のとおり,急性肝炎にも見られたり,食事摂取量等にも影響されるものであって,一般的に劇症化を疑うべき重要な指標とまでは考えられていなかったから,これらの数値を理由に,8月31日の時点で,Cの肝炎が劇症化することを予知し,転院ないし劇症肝炎の特殊治療を行うべきであったということはできない。 争点・(9月3日における転院義務等の違反の有無)について・原告らは,D医師には,遅くとも9月3日において,Cを転院などさせるべき義務があったと主張する。 ・しかし,前記のとおり,Cは,9月1日には朝食を満腹になるほど食事を摂取し,9月3日には いて・原告らは,D医師には,遅くとも9月3日において,Cを転院などさせるべき義務があったと主張する。 ・しかし,前記のとおり,Cは,9月1日には朝食を満腹になるほど食事を摂取し,9月3日には朝食の2分の1を摂取するなど,食事摂取量が低下していたわけではなかった。しかも,Cは,9月1日に「だるさも取れました」と述べたり,増加していた発疹も減少するなどの状況にあった。そして,9月3日に行った採血検査の結果,GOT値,GPT値が低下しており,また,触診の結果,肝臓の萎縮,腹水等は見られなかった。もっとも,9月3日の血液検査において,Cのビリルビン値は上昇しているが,前記のとおり,この数値の回復は,GOT値,GPT値よりも遅れて回復するものであって,急性肝炎の回復期にもGOT値,GPT値の低下とビリルビンの上昇という状態が見られることから,D医師は,前記3・で述べたCの症状や検査数値を総合し,これを回復期を示すものと捉えたのである。なお,9月3日の時点におけるアルブミン値,コリンエステラーゼ値及び総コレステロール値の低下についても,これらが肝炎の劇症化を疑うべき重要な指標とまでは考えられていなかったことは前記のとおりである。 ・上記のようなD医師の判断は,プロトロンビン時間を中心として劇症肝炎を判断する当時の医療水準に照らしてみれば,不適切であったと認めることはできない(なお,D医師が,8月31日以降,血液凝固能検査をしなかったことについては,次の5において検討する。)。 ・よって,原告らの上記主張も,採用することができない。 争点・(検査義務違反の有無)について・原告らは,D医師が,8月28日以降も画像診断を,8月31日以降も凝固能検査を経時的に行い,劇症化の傾向が現れているかどうかを慎重に観察し,肝炎の劇症化を正確に予知す 査義務違反の有無)について・原告らは,D医師が,8月28日以降も画像診断を,8月31日以降も凝固能検査を経時的に行い,劇症化の傾向が現れているかどうかを慎重に観察し,肝炎の劇症化を正確に予知すべきであったと主張する。 ・しかしながら,証拠(証人D,証人I)及び弁論の全趣旨によれば,血液凝固能検査や画像検査は,通常の急性肝炎患者に対して,必ずしも連日ないし経時的に行うべき検査ではないことが認められる。 また,前記のとおり,Cは,8月31日の時点において,プロトロンビン時間が72パーセントまで改善し,GI療法の中止とともに食欲,全身倦怠感等も改善していたのであるから,当時の肝炎の劇症化に関する医学水準からみれば,D医師がCの劇症肝炎を改善していたものと診断するのはやむを得ないことというべきであり,その時点でプロトロンビン時間の検査間隔を広げて次回を9月7日としたことについても,特に不合理な判断であったということはできない。さらに,証拠(証人D)によれば,D医師は,プロトロンビン時間が回復した後,再び低下するということがあるという認識はなかったことが認められるところ,当時において,そのような認識を持つことが誤った知見であったということを認めるに足りる証拠はない。 このような状況に照らせば,D医師が,8月28日以降に画像診断をせず,8月31日の時点でCの急性肝炎が回復に向かっているものと判断し,それを前提に凝固能検査を経時的に行わなかったことについては,これが医療行為として不適切であったということはできない。 確かに,原告らが主張するとおり,プロトロンビン時間を8月31日以降も毎日検査していれば,本件において現実に劇症化が疑われた時点よりも若干早くその判断がされた可能性があるとも言い得るところであり,原告らとしては,そのような最善の措置が ロンビン時間を8月31日以降も毎日検査していれば,本件において現実に劇症化が疑われた時点よりも若干早くその判断がされた可能性があるとも言い得るところであり,原告らとしては,そのような最善の措置が執られなかったことに対し不審の念を抱くということについても,理解できないわけではない。しかし,その最善の措置というのも事後に過去を顧みて考察した結果として得られる結論であって,その当時現に久慈病院で行われたD医師らの医療行為について見る限り,これが当時の医療水準に達していなかったとは認めることができないのである。 ・よって,原告らの上記主張は理由がない。 6 なお,付言するに,Cが久慈病院,岩手医大病院及び信州大学病院での診療を経たにもかかわらず,その貴重な生命を落とす結果になったことは,原告らにとって著しく無念であろうことは想像に難くない。その原告らが主張する肝炎の劇症化の早期予知と早期の対処ということは,医学的な課題として容易に克服できるものではないとしても,劇症肝炎亜急性型の救命率の低さを考えれば,真剣な取組が必要とされるものであることは疑いを容れないところであるから,本件治療に当たった医療従事者の過失の有無にかかわらず,原告らの上記主張の意図するところは医療関係者において十分な認識が求められる事項である。特に,劇症化の機序を解明すること,劇症化の予知のための的確な指標と有効な治療法を確立し,一般の医療水準として普及させることが,医学界や臨床の現場に課された重要な課題であると考えられる。 7 以上によれば,その余の点を検討するまでもなく,原告らの本訴請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担については民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 盛岡地方裁判所第二民事部裁判長裁判官髙橋 本訴請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担については民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 盛岡地方裁判所第二民事部裁判長裁判官髙橋譲裁判官中里敦裁判官細島秀勝は,転任のため,署名押印することができない。 裁判長裁判官髙橋譲月日朝食昼食夕食その他医師の観察所見看護師観察所見8月24日1/58月25日超音波検査のため,抜き1/22/3昨日より食事摂取できた(昼)。特に何ともない(夜)。 8月26日いつもどおり摂取記載なし食事いつも通り。だるくもない,何ともない(昼)。夕食後気持ち悪い8月27日ほぼ全量主食2口主食1/2,副食2/3朝食全量摂取(昼)。吐き気はない(夜)。 8月28日主食2口,みそ汁3口主食3口,おかず1/2ほんの少し具合がすぐれない,昨夜は食べられたが今朝は食べられない(乙1の6・1頁)夕食後気持ち悪い(夜)。 8月29日ほとんど摂取せず主食1/5,グレープフルーツバナナ1/2食欲ない,朝食摂取せず(朝)。 むかむかする(昼)。食欲ない(夜)。 8月30日記載なし記載なし串団子1串,ミニトマトパン1口(甲18・9頁)注射止めてから嘔気も落ち着いた(朝)。具合悪いところない,嘔気も良い(昼)。 8月31日3口1/31/2昨日より食欲良好(乙1の6・4頁)昨日よりはだるさも良い。食欲はまずまず(夜)。 9月1日おなかいっぱい主食1口,グレープフルーツ主食1/5弱,副食1/2全身疲労感改善している。食欲良好(乙1の6・4頁)おなかいっぱい食べた(朝)。朝食食べすぎて胃がもたれる(昼)。 9月2日 ぱい主食1口,グレープフルーツ主食1/5弱,副食1/2全身疲労感改善している。食欲良好(乙1の6・4頁)おなかいっぱい食べた(朝)。朝食食べすぎて胃がもたれる(昼)。 9月2日ロールパン3個,牛乳副食1/2副食1/2消化不良あり(乙1の6・4頁)嘔気嘔吐なし(朝)。胃がもたれてはっている(朝・昼)。 9月3日1/21/5なしはきけない(朝)。昼はお腹がいっぱいで食べれなかった(昼)。胃の調子が悪くて食べたくない9月4日記載なしサンドイッチ2切れ,オレンジジュース少々点滴後の嘔気(朝)。胃部不快感なし(昼)。食べたい感はあるが食べると入っていかない(夜)。 9月5日パン3個主食1/2,副食1/41/39月6日記載なし少々少量のみいつもと変わらない,嘔気も余りない,食欲はない(昼)。 9月7日全量桃2,3口記載なし朝食ほぼ全量摂取(朝)。食欲はいくらかある,今朝は食欲があった(昼)。昼はお腹がすかず食べたくなかった(昼)。食べれない・腹もすっきりしない,はっている(別紙)肝性脳症の昏睡度分類 │昏睡度│精神症状 │参考事項││Ⅰ │睡眠一覚醒リズムの逆転 │retrospectiveにしか││ │多幸気分ときに抑うつ状態 │判定できない場合が多││ │だらしなく,気にとめない態度 rospectiveにしか││ │多幸気分ときに抑うつ状態 │判定できない場合が多││ │だらしなく,気にとめない態度 │い││Ⅱ │指南力(時,場所)障害,物をとり違える(confusion)│興奮状態がない ││ │異常行動(例.お金をまく,化粧品をゴミ箱に捨てる│尿便失禁がない││ │など) │羽ばたき振戦あり ││ │ときに傾眠状態(普通の呼びかけで開眼し会話ができ│││ │る) │││ │無礼な言動があったりするが,医師の指示に従う態度│││ │をみせる │││Ⅲ │しばしば興奮状態またはせん妄状態を伴い,反抗的態│羽ばたき振戦あり ││ │度をみせる │(患者の協力が得られ││ │嗜眠状態(ほとんど眠っている) │る場合)││ │外的刺激で開眼し得るが,医師の指示に従わない,ま│指南力は高度に障害 ││ │たは従えない いる) │る場合)││ │外的刺激で開眼し得るが,医師の指示に従わない,ま│指南力は高度に障害 ││ │たは従えない(簡単な命令には応じ得る) │││Ⅳ │昏睡(完全な意識の消失) │刺激に対して,払いの││ │痛み刺激に反応する │ける動作,顔をしかめ││ │ │るなどがみられる ││Ⅴ │深昏睡 │││ │痛み刺激にもまったく反応しない ││(厚生省特定疾患難治性の肝炎調査研究班劇症肝炎分科会,1981年9月)
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