- 1 -【判決要旨】横浜市がその設置する市立保育所4園を廃止し民営化したことが違法であるとされた事例。 平成18年5月22日判決言渡平成16年(行ウ)第4号横浜市立保育園廃止処分取消請求事件口頭弁論終結日平成17年12月14日判決原告別紙原告目録〔省略〕記載のとおり〔67名〕代理人弁護士海渡雄一同猿田佐世同金髙望横浜市中区港町一丁目1番地被告横浜市代表者市長中田宏代理人弁護士村瀬統一同大和田治樹同谷山哲也主文 別紙原告目録1(2)及び2(2)記載の原告ら〔卒園した児童原告及びその保護者原告〕の,被告が横浜市保育所条例の一部を改正する条例(平成15年横浜市条例第62号)の制定をもってした横浜市丸山台保育園,同鶴ヶ峰保育園,同岸根保育園及び同柿の木台保育園を平成16年3月31日限り廃止する旨の処分の取消しを求める訴えを却下する。 別紙原告目録1(1)及び2(1)記載の原告ら〔卒園していない児童原告及びそ- 2 -の保護者原告〕の,被告が横浜市保育所条例の一部を改正する条例(平成15年横浜市条例第62号)の制定をもってした横浜市丸山台保育園,同鶴ヶ峰保育園,同岸根保育園及び同柿の木台保育園を平成16年3月31日限り廃止する旨の処分の取消しを求める請求を棄却する。ただし,同処分は違法である。 被告は,別紙原告目録1(1)及び(2)記載の原告ら〔保護者原告〕(ただし,同目録1(2)記載の原告Aを除く。)に対して,それぞれ別紙認容金額一覧表〔省略〕に記載の各金額〔一世帯当たり10万円〕及びこれに対する平成16年2月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 別紙原告目録1(1)及び(2)記載の原告ら〔保護者原告〕のその余の 略〕に記載の各金額〔一世帯当たり10万円〕及びこれに対する平成16年2月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 別紙原告目録1(1)及び(2)記載の原告ら〔保護者原告〕のその余の請求並びに同目録1(2)記載の原告A並びに同目録2(1)及び(2)記載の原告ら〔児童原告〕の損害賠償を求める請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,以下のとおりとする。 (1)別紙原告目録1(1)記載の原告ら〔在園児童の保護者原告〕に生じた費用は,これを10分し,その1を同原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。 (2)別紙原告目録1(2)記載の原告ら〔卒園児童の保護者原告〕(ただし,原告Aを除く。)に生じた費用は,これを10分し,その9を同原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。 (3)別紙原告目録2(1)記載の原告ら〔在園児童原告〕に生じた費用は,これを5分し,その1を同原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。 (4)別紙原告目録1(2)記載の原告A及び同目録2(2)記載の原告ら〔卒園児童原告〕に生じた費用は,同原告らの負担とする。 (5)被告に生じた費用は,これを30分し,その1を別紙原告目録1(1)記載の原告ら〔在園児童の保護者原告〕の,その10を別紙原告目録1(2)記載の原告ら〔卒園児童の保護者原告〕(ただし,原告Aを除く。)の,その1を別紙原告目録2(1)記載の原告ら〔在園児童原告〕の,その6を別紙原告- 3 -目録1(2)記載の原告A及び同目録2(2)記載の原告ら〔卒園児童原告〕の負担とし,その余を被告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告が横浜市保育所条例の一部を改正する条例(平成15年横浜市条例第62号)の制定をもってした横浜市丸山台保育園,同鶴ヶ峰保育園,同岸根保育園及び同柿の木台 事実 及び理由第1請求 被告が横浜市保育所条例の一部を改正する条例(平成15年横浜市条例第62号)の制定をもってした横浜市丸山台保育園,同鶴ヶ峰保育園,同岸根保育園及び同柿の木台保育園を廃止する旨の処分を取り消す。 被告は,原告らに対し各20万円及びこれに対する平成16年2月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,被告が,その設置する市立保育所のうち4つの保育所を平成16年3月31日をもって廃止する内容の条例を制定し,その施行に伴ってこれらの保育所は民間の社会福祉法人が運営することとなったところ,当該廃止された各保育所に入所していた児童及びその保護者である原告らが,被告に対して,上記条例の制定は抗告訴訟の対象たる処分に該当し,原告らの保育所選択権等を侵害するものであって違法であるとして,これによる「廃止処分」の取消しを求めるとともに,国家賠償法1条1項に基づき上記処分等により被った精神的損害についての賠償を求めている事案である。 前提事実(当事者間に争いがないか,証拠により容易に認められる事実)(1)当事者等ア被告は,児童福祉法(以下,単に「法」ともいい,関連する条文は,いずれも平成16年法153号による改正前のものを指す。)35条3項の規定に基づき,横浜市保育所条例(昭和26年3月横浜市条例第7号。以下「本件条例」という。)を制定し,本件条例により,法39条が規定する保育所である横浜市丸山台保育園(以下「丸山台保育園」という。),横浜市鶴ヶ峰保育園(以下「鶴ヶ峰保育園」という。),横浜市岸根保育- 4 -園(以下「岸根保育園」という。)及び横浜市柿の木台保育園(以下「柿の木台保育園」といい,これら4つの保育園を併せて「本件4園」という。)を設置して,これら本件 いう。),横浜市岸根保育- 4 -園(以下「岸根保育園」という。)及び横浜市柿の木台保育園(以下「柿の木台保育園」といい,これら4つの保育園を併せて「本件4園」という。)を設置して,これら本件4園において児童の保育を実施していた。 イ別紙原告目録1(1)及び(2)記載の原告らは,同目録別表〔省略〕の同原告らに対応する児童氏名欄に記載の児童を,それぞれ記載の保育所に,同表保育実施期限欄記載の時期までの予定で入所させていた当該児童らの保護者であり(以下「保護者原告ら」という。),同目録2(1)及び(2)記載の原告らは,それぞれに記載の保育所に入所して保育の実施を受けていた児童(以下「児童原告ら」という。)である。 (2)事実経過ア法8条3項に基づき設置された横浜市児童福祉審議会は,平成14年度から「保育サービスの充実に向けて保育所のあり方と行政の役割はどうあるべきか」という問題についての審議を重ねていたが,平成15年2月28日付けで,横浜市長に対し,保育サービスの直接供給主体から保育サービスに関する基盤整備に重点的に取り組んでいくことが今後の行政の果たすべき役割として求められている,といったことなどを内容とする意見具申(甲34号証,乙2号証。以下「本件意見具申」という。)をした。 イ本件意見具申を受けて,被告は,同年4月23日に「今後の重点保育施策(方針)」(乙3号証の1。以下「重点保育施策」という。)を策定し,公表した(甲6号証,乙30号証)。 重点保育施策では,「多様な保育ニーズに応えるサービスの展開」,「保育の質の向上」等とともに,重点施策の一つとして,延長保育,一時保育,休日保育等の様々な保育ニーズに柔軟に対応することを目的とする「市立保育所の民営化」が掲げられていた。 そして,同施策には,上記民営化に向けての移管計画と ,重点施策の一つとして,延長保育,一時保育,休日保育等の様々な保育ニーズに柔軟に対応することを目的とする「市立保育所の民営化」が掲げられていた。 そして,同施策には,上記民営化に向けての移管計画として,平成16年度から,市立保育所の多い区から順に各区1園ずつ移管し,年4園程度- 5 -を民営化する計画が示され,その民営化される保育所は,各区ごとに施設・設備の管理状況,敷地面積,利便性,児童の入所状況を調査し,これを点数化して評価の高い保育所を候補とし,近隣の民間保育所の設置状況を勘案して選定するとの説明があり,平成16年度に実施する保育所として本件4園が挙げられていた(なお,被告は,民営化について「移管」との表現を用いており,この点は必ずしも正確ではないが,混乱を避けるために,本判決でもこの表現を用いる。)。 ウまた,被告は,福祉局長名義で,本件4園に入所している児童の保護者らに対し,当該各保育所を平成16年4月1日から民営化するとの方針を通知する平成15年4月23日付け文書(甲7号証,乙23号証の1)を送付した。 さらに,被告は,丸山台保育園及び鶴ヶ峰保育園については平成15年4月25日に,岸根保育園については同月26日に,柿の木台保育園については同年5月10日に,それぞれ保護者らに対する第1回目の説明会を実施し,その後も各保育所ごとに何回かの説明会が開催された(甲12号証,96号証の2。なお,原告らが「話し合い」と呼ぶものも含めて,以下「保護者説明会」と総称する。)。 エ被告は,同年7月1日,「横浜市立保育所の民間移管にかかる法人選考委員会」(以下「法人選考委員会」という。)を設置して,市立保育所を民間の法人に移管する際の条件等について協議し,移管保育所の定員構成,受け入れ年齢,年間行事等を継承すること等の移管条件を決定し 考委員会」(以下「法人選考委員会」という。)を設置して,市立保育所を民間の法人に移管する際の条件等について協議し,移管保育所の定員構成,受け入れ年齢,年間行事等を継承すること等の移管条件を決定した(乙10号証)。 オ被告は,同年9月から説明会を開催して,本件4園の移管を受ける社会福祉法人の募集を開始し,同年11月17日,法人選考委員会による選考を経て,丸山台保育園については社会福祉法人白百合会,鶴ヶ峰保育園については社会福祉法人ちとせ会,岸根保育園については社会福祉法人山百- 6 -合会,柿の木台保育園については社会福祉法人あすみ福祉会(以下,上記各法人を「本件各社会福祉法人」という。)を,それぞれ当該市立保育所の移管先として選定し,これを発表した(甲8号証,乙23号証の8,30号証)。 カ同年12月5日,横浜市長は横浜市議会に本件条例の一部を改正する条例案を提出し,同月18日,「横浜市保育所条例の一部を改正する条例」(平成15年横浜市条例62号。以下「本件改正条例」という。)が可決された。 本件改正条例は,被告が設置する保育所を掲げる本件条例の別表から本件4園の記載を削除するという内容のものであり,その附則において,平成16年4月1日から施行するものとされた。 キ本件4園は,平成16年4月1日の本件改正条例の施行により,被告の保育所としては廃止され,それぞれ本件各社会福祉法人に移管された。本件各社会福祉法人は,それぞれ移管を受けた保育所の設置認可を受けた上で,同日以降,本件4園の施設を使用して児童の保育を開始した(以下,本件4園の施設を使用して本件各社会福祉法人が運営する各保育所を「本件各新保育所」という。また,本件4園が廃止され,その運営が本件各社会福祉法人に移管されたことを「本件民営化」という。)。 ク本件各新保育 の施設を使用して本件各社会福祉法人が運営する各保育所を「本件各新保育所」という。また,本件4園が廃止され,その運営が本件各社会福祉法人に移管されたことを「本件民営化」という。)。 ク本件各新保育所の運営(ア)被告と本件各社会福祉法人は,平成16年3月16日付けで,本件各新保育所の運営に関し,それぞれ「保育所運営に関する覚書」(乙6ないし9号証。以下「本件各覚書」という。)を締結したが,その内容は,上記エ記載の法人選考委員会が定めた移管条件と一致している。 (イ)本件4園の施設については,被告から本件各社会福祉法人に対し,建物は有償譲渡,土地は無償貸与,備品は無償譲渡された。 なお,平成15年度における児童数は,若干の変動があるが,丸山台- 7 -保育園が107人前後,鶴ヶ峰保育園が60人前後,岸根保育園が100人前後,柿の木台保育園が152人前後であった。 (ウ)平成16年4月1日以降,本件4園において被告の嘱託職員又はアルバイト職員として勤務していた職員のうちの合計35人が本件各社会福祉法人に雇用された。 その内訳は,丸山台保育園が9名(うち保育士資格を有する者2名),鶴ヶ峰保育園が3名(同0名),岸根保育園が9名(同4名),柿の木台保育園が14名(同3名)である。 争点 (1)本件改正条例制定の処分性(争点1)(2)本件改正条例制定の違法性(争点2)(3)本件改正条例制定手続の違法性(争点3)(4)国家賠償請求の成否(争点4) 争点に関する当事者の主張(1)争点1(本件改正条例制定の処分性)について【原告らの主張】ア本件4園の廃止は本件改正条例により本件条例を改正することによって行われているが,このような条例による措置であっても,当該条例の制定自体によって,その適用を受ける特定の個人の具体的な権利義 張】ア本件4園の廃止は本件改正条例により本件条例を改正することによって行われているが,このような条例による措置であっても,当該条例の制定自体によって,その適用を受ける特定の個人の具体的な権利義務に直接の影響が及ぶ場合には,その条例の制定自体が抗告訴訟の対象である処分に該当すると解すべきである。 したがって,本件改正条例の制定が抗告訴訟の対象となるか否かは,本件改正条例によって原告ら個々人の具体的な権利,利益が直接に侵害されているかどうかの問題ということができるが,以下のとおり,本件においては,他に行政庁の具体的処分を経ることなく,本件改正条例の制定によって原告ら個々人の権利,利益が侵害されているから,本件改正条例の制- 8 -定は抗告訴訟の対象である処分に該当する。 (ア) 「保育所において保育を受ける権利」の侵害すべての児童は,憲法13条,25条,26条,児童の権利に関する条約(平成6年5月16日条約第2号。以下「子どもの権利条約」という。)3条及び児童福祉法(第一章・総則)に基づき「健全に発展することを保障される権利」を有している。この権利は広い概念であるが,その中には「保育所において保育を受ける権利」が包摂されている。厚生労働省の定める児童福祉施設最低基準(甲15号証,乙5号証)や厚生省児童家庭局による「保育所保育指針(児発第799号)」が示すところは,この児童の「保育所において保育を受ける権利」の内容をなすものである。 本件改正条例は,児童原告らの有する上記「保育所において保育を受ける権利」を侵害するものである。 (イ)「保育所選択権」の侵害a平成9年の児童福祉法の改正(平成9年法律第74号による改正。 同法による改正後の児童福祉法を「平成9年改正法」ということがある。)は,当時の小泉純一郎厚生大臣が「保育所につい 育所選択権」の侵害a平成9年の児童福祉法の改正(平成9年法律第74号による改正。 同法による改正後の児童福祉法を「平成9年改正法」ということがある。)は,当時の小泉純一郎厚生大臣が「保育所について,市町村の措置による入所の仕組みを保護者が保育所を選択する仕組みに改める」と述べ,「措置から契約へ」の売り文句の下に実行されたものである(甲45ないし47号証,110号証,証人甲)。 上記平成9年改正法によって,保護者は,入所申込書を提出して特定の保育所を利用する契約の申込みをし,これに対して,市町村が保育に欠ける乳幼児であるかどうかの事実確認をした上で,その保育所の受け入れ能力がある限りは,市町村はこの利用契約の申込みに応じなければならないとする制度が確保され(以下,このようにして締結される契約を「保育所利用契約」という。),この契約の内容として,- 9 -保護者には,保育所の選択権が認められたのである。 被告が提出した厚生省(現厚生労働省)による「児童福祉法の解説」(乙24号証)にも,同法24条3項について,保護者の保育所選択権を認めたとの記載がある(177頁)。 bまた,上記改正では,法24条5項において情報提供義務が定められ,これを受けた法施行規則24条は,保育所の施設や設備の状況に関する事項のみならず,①保育所の入所定員,入所状況,職員の状況及び開所している時間,②保育所の保育の方針,③その他保育所の行う事業に関する事項についての情報も提供すべきものとしている。 そして,厚生省児童家庭局長通達「児童福祉法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令などの施行について(平成9年9月25日児発596号)」(甲56号証)では,上記情報提供の内容をさらに細かく,詳細に定めている。 このように法24条5項,法施行規則24 伴う関係政令の整備に関する政令などの施行について(平成9年9月25日児発596号)」(甲56号証)では,上記情報提供の内容をさらに細かく,詳細に定めている。 このように法24条5項,法施行規則24条及び関係通達により,保育所は種々の情報を開示することが義務とされ,保護者はこれらの情報を見ながら保育所を選択するのである。このような情報開示の制度も原告らの「保育所選択権」を定めるものである。 c上記のようにして原告らに認められた保育所選択権の内容は以下のとおりである(甲110号証,証人甲)。 ①選択(希望)した保育所に入所する(希望しない保育所に入所決定されない)権利②選択(希望)した保育所に入所した後に,市町村の一方的な決定により他の保育所に転園させられない権利(その意に反して転園させられない権利)③定められた保育の実施期間が満了するまで,選択(希望)した保育所での保育を受ける権利(小学校就学の始期まで当該保育所に就- 10 -園する権利)d本件改正条例の制定は,上記のような原告らの保育所選択権を侵害するものである。 (ウ)手続上の権利の侵害a何らかの理由により,保育所における保育環境に大きな変化を生じさせる場合には,最低限,事前に保護者に対して十分な説明がされ,保護者の納得を得て行われなければならない。このような手続を経ずに行われる保育環境の大幅な変更は,保護者における上記手続上の権利を侵害するものである。 殊に,本件改正条例の制定による本件4園の廃止は,以下bに述べるように「保育の実施の解除」に該当するから,法33条の4に定めるところに従って児童の保護者に対する説明及び保護者からの意見聴取という手続を経る必要がある。 保護者原告らには上記手続上の権利が保障されており,本件改正条例の制定による本件4園の廃止は上 4に定めるところに従って児童の保護者に対する説明及び保護者からの意見聴取という手続を経る必要がある。 保護者原告らには上記手続上の権利が保障されており,本件改正条例の制定による本件4園の廃止は上記手続上の権利を侵害するものである。 b本件改正条例の制定が保育の実施の解除に該当することについて(a)本件民営化は,①入所している特定の保育所からいったん退所し,②改めて,希望する他の保育所に入所を申し込み,これが認められて入所するということであり,改正条例の制定による上記①は保育の実施の解除を意味する。 (b)すなわち,法24条2項は,保育の実施について「前項に規定する児童について保育所における保育を行うこと」と定義している。 そして,「保育所における保育」は,保護者からの申込みに基づき,市町村がこれを決定して行われ(同条1項)るが,この決定は申込書に記載された保育所ごとに行われる(同条3項)。したがって,保- 11 -育の実施は,申込書に記載された特定の保育所ごとに行われるものである。 (c)被告の横浜市保育所保育実施条例(昭和62年3月5日条例1号。 甲2号証)も,その1条で保育の実施が法24条1項に基づくことを明らかにしている。 また,保育所入所行政の実際についてみても,保育の実施を希望する保護者が提出する入所申込書には入所希望保育所名を記入することになっており,その後の,入所申込みの審査,選考は,希望保育所ごとに行われ,市町村は,保育の実施を決定した児童ごとに保護者に対して保育所入所承諾書を交付し,あわせて入所保育所に対しても当該入所承諾書の写を送付するが,この入所承諾書には入所保育所名,保育の実施期間などが記載されている(平成9年9月25日児発596号厚生省児童家庭局長通知。甲56号証)。この保育所入所行政の仕組みは 該入所承諾書の写を送付するが,この入所承諾書には入所保育所名,保育の実施期間などが記載されている(平成9年9月25日児発596号厚生省児童家庭局長通知。甲56号証)。この保育所入所行政の仕組みは,横浜市保育所保育実施条例施行規則(昭和62年3月25日規則15号。甲3号証)に規定するところでもある。 このように,市町村は,保育所を特定した入所申込みについて審査(選考)し,小学校入学直前までの入所の可否の決定を行い,保育の実施を行うのであり,保育の実施は特定の保育所におけるそれとして決定されるのである。 (d)以上のとおりであるから,特定の保育所での保育を廃止することは「保育の実施の解除」に当たる。 イよって,本件4園の廃止を定める本件改正条例の制定は抗告訴訟の対象となる処分に該当する。 【被告の主張】ア本件改正条例の制定は抗告訴訟の対象たる処分には該当しない。 - 12 -条例制定の処分性については,過去の裁判例(東京高裁平成8年11月27日判決)が「地方公共団体の行う条例の制定は,通常は,一般的,抽象的な規範を定立する立法作用の性質を持つものであり,そのような条例を制定する行為は,原則として個人の具体的権利義務に直接の効果を及ぼすものではなく,抗告訴訟の対象となる処分ということはできない。」と判示するとおり,原則として処分性は否定され,例外的にそれが個々人の具体的な権利義務に直接の効果を及ぼす場合に限り処分性が肯定されるに過ぎない。 イ上記の点につき,原告らは,本件改正条例の制定により,「保育所において保育を受ける権利」,「保育所選択権」及び「手続上の権利」が侵害された旨主張するが,以下のとおり,いずれも理由がない。 (ア)「保育所において保育を受ける権利」について児童原告らは,子どもの権利条約の規定等から同原告らには上 選択権」及び「手続上の権利」が侵害された旨主張するが,以下のとおり,いずれも理由がない。 (ア)「保育所において保育を受ける権利」について児童原告らは,子どもの権利条約の規定等から同原告らには上記権利が保障されている旨を主張しているが,これらの抽象的な条約の規定等が同原告らが主張する「保育所において保育を受ける権利」という具体的な権利ないし利益を保障しているとは解されない。 (イ)「保育所選択権」についてa原告らは,原告らには保育所選択権という権利が保障されている旨主張する。 しかし,法24条1項は,保育に欠ける乳幼児等についての市町村の保育所における保育の実施義務を定めているに過ぎず,市町村が保育を実施すべき義務を負うところの「保育所」については特段の限定をしていないから,これが児童福祉法上の「保育所」を意味するものであることは明らかである。そして,児童福祉法上の「保育所」には,公立の保育所のみならず,同法35条4項の認可を受けた民間の保育- 13 -所も含まれるから,24条1項により市町村に課せられた義務は,設置主体の相違を問わない「保育所における保育の実施」を規定しているものである。 したがって,市町村の保育の実施義務を定める24条1項から,原告らが主張する保育所選択権が保障されていると解釈することはできない。 bこれに対し,原告らは,法24条1項に「保護者からの申込みがあったとき」と規定されていること等を根拠に,同項の市町村の保育の実施義務を「特定の保育所にて保育を行うこと」と解釈すべきである旨主張する。 しかし,同項の「保護者からの申込み」が保育の開始要件を定めているに過ぎないことは条文の規定上からも明らかであり,他に特段の意味を読み込むことは困難である。法24条の規定は,保育に欠ける乳幼児等を有する保護者が 「保護者からの申込み」が保育の開始要件を定めているに過ぎないことは条文の規定上からも明らかであり,他に特段の意味を読み込むことは困難である。法24条の規定は,保育に欠ける乳幼児等を有する保護者が入所を希望する保育所等を記載して保育サービスの提供を申し込んだ場合には,市町村は,所定の条件に合致する限りは,保育所における保育の実施をしなければならないとして,保護者の申込みに対する応諾義務を定めたものである。平成9年改正法によって,保育所入所をめぐる法律関係が,それまでの保護者の申請に基づく市町村の措置(行政処分)という制度から契約関係に変更されたとしても,それは従前の運用を法制化したに過ぎない。法24条の規定からは,保護者が入所申込みに当たり希望する保育所を申込書に記載することになったこと,市町村に保育の応諾義務があること,保護者が表明した希望について市町村は可能な範囲で尊重すべきことが読みとれるが,同条がこの域を超えて,原告らの主張するような内容を有する保育所選択権なるものを保障したとは解し得ない。 - 14 -以上からすれば,原告らが主張する保育所選択権なるものは,法24条が市町村の保育応諾義務を課していることにより事実上享受し得る反射的利益に過ぎないものというほかはなく,これを法によって具体的に保障された法的権利ということはできない。 (ウ)手続上の権利保障についてa保護者原告らは,本件4園の廃止が法33条の4に規定する「保育の実施の解除」に当たるとの前提で,本件改正条例の制定により同条に定める保育の実施の解除理由の説明及び意見聴取という手続上保障された権利が侵害された旨主張している。 bしかし,「保育の実施」については,同法24条2項において「前項に規定する児童について保育所における保育を行うこと」と定義している。こ 取という手続上保障された権利が侵害された旨主張している。 bしかし,「保育の実施」については,同法24条2項において「前項に規定する児童について保育所における保育を行うこと」と定義している。ここでいう「前項に規定する児童」とは,保護者の労働又は疾病その他政令に定める基準に従い条例で定める事由により保育に欠ける乳幼児等である。したがって,法33条の4の規定により保護者に対してあらかじめ理由を説明し,その意見を聴かなければならない「保育の実施の解除」とは,保育の実施理由(法施行令9条の3,横浜市保育所保育実施条例2条)の消滅等によって,保育所で保育を行うことを解除する場合を指すものであることは明らかである。 そして,法24条2項が「保育所における保育を行うこと」と規定し,「保育所」に関して特段の限定等を加えていないことからすれば,上記「保育所」が設置主体の相違を問わない児童福祉法上の保育所(公立保育所及び認可を受けた民間保育所)を指していることも明らかである。 以上のことからすれば,法33条の4の規定は,保育の実施を解除する場合の手続を定めた規定であるが,同条の適用を受ける「保育の- 15 -実施の解除」とは,現在保育所において保育を行っている児童に対して,今後,保育所における保育を行わないこととする場合を意味しているのであり,本件のように,設置運営主体が変更されるだけで引き続き認可保育所における保育が継続される場合をいうものではないことは明らかである。 ちなみに,厚生労働省でも「市立保育所の民営化」が法33条の4の保育の実施の解除には該当せず,したがって再度保育の実施決定を行う必要がない旨の見解を示している(乙22号証)。 cこの点,保護者原告らは,法24条2項の「保育所において保育を行うこと」について,同条1項に「保護者から 当せず,したがって再度保育の実施決定を行う必要がない旨の見解を示している(乙22号証)。 cこの点,保護者原告らは,法24条2項の「保育所において保育を行うこと」について,同条1項に「保護者から申込みがあったとき」と規定されていること等をもって「特定の保育所にて保育を行うこと」と解釈すべきである旨を主張するが,上記のとおり,このような解釈には無理がある。 ウ以上のとおり,本件4園の廃止を定める本件改正条例の制定が抗告訴訟の対象としての処分性を有しないことは明らかである。 よって,本件改正条例の取消しを求める原告らの請求は不適法であり,却下を免れない。 (2)争点2(本件改正条例制定の違法性)について【原告らの主張】ア前記(1)の【原告らの主張】アの(ア)及び(イ)において述べたとおり,児童原告らないし原告らは,「保育所において保育を受ける権利」ないし「保育所選択権」を有しており,本件改正条例の制定により本件4園を廃止したことは,児童原告らないし原告らの上記各権利を侵害するものであって,違法であるから取消を免れない。 イ保育所廃止に係る設置者の裁量権- 16 -(ア)公の施設の廃止については,その利用者の権利と関係づけて検討されねばならず,利用者の権利の侵害を裁量権の範囲を制限する要素と考えることは行政法学における定説といってよい。 殊に,継続的利用関係にある就学施設などは,道路や歩道橋と同一に論じることはできないのであり,地方公共団体が設置する保育所については,それが公の施設であり,地方自治法の適用があるにしても,その一方で,保育所については児童福祉法が適用されるのであり,保育所の廃止については当然同法の規律による制限があるというべきである。 (イ)保育所の設置について,法35条3項は,「市町村は都道府県知事に届け出 保育所については児童福祉法が適用されるのであり,保育所の廃止については当然同法の規律による制限があるというべきである。 (イ)保育所の設置について,法35条3項は,「市町村は都道府県知事に届け出て,児童福祉施設を設置できる。」と定め,さらに,法24条1項では「市町村は児童の保育に欠けるところがある場合において,保護者から保育の申込みがあつたときは,それらの児童を保育所において保育しなければならない」と市町村の保育義務が規定されている。この保育義務を履行するためには,保育所が必要なだけ存在している必要があり,もしそれが不足する場合,市町村は保育所を設置し,あるいは,定員確保などの整備をしなければならないのであり,市町村の保育所設置,整備についての裁量はそれほど広範なものではない。 (ウ)そして,本件は,現に保育所に児童が在籍しており,保護者が選択した保育所で保育の実施を受ける権利が存続している期間中に保育所が廃止されたという事案であり,利用中の者の権利の侵害が問題となる。 法は,市町村の設置する保育所の廃止については都道府県知事への届出(法35条6項)以外の規定は置いていないが,設置義務と表裏の義務として,市町村の区域内にいわゆる待機児童が大量にいる場合等に保育所を廃止することが裁量権の行使として妥当でないことは明らかであり,保育所廃止についての設置者の裁量は広範なものではない。 また,保育所の廃止については,他の公の施設とは異なり,市町村は,- 17 -上記のとおり,法24条1項により保育所において保育する義務が課されているから,その廃止の裁量はさらに狭められるというべきである。 このように考えれば,保育所の設置は市町村の広い裁量にゆだねられているという理解は必ずしも適切ではないのであり,上記のような場合の公の施設である保育所の廃 の裁量はさらに狭められるというべきである。 このように考えれば,保育所の設置は市町村の広い裁量にゆだねられているという理解は必ずしも適切ではないのであり,上記のような場合の公の施設である保育所の廃止については,市町村の裁量権は一定程度狭められていると考えなければならない。 ウ長期的視点で計画的に行われるべき保育の必要性(ア)保育所保育指針(平成11年10月29日児発799号・甲35号証)は,平成9年改正法を受けて制定され,法24条,39条によって児童に保障されている児童福祉法上の権利を具現化するものである。 上記保育所保育指針は,「保育の内容」について示しており,その中では保育の目標,保育の方法,保育の環境などが定められている。そして,保育士と子どもの関わり合いが保育の中心であるとするとともに(第2章第2節),保育は長期の計画性を持ってなされねばならず,保育の内容の一貫性が重要であることが規定されている(第11章)。 (イ)また,被告は「よこはまの保育」(甲50号証)という指針を発行し,被告における保育の基準を定めている。この「よこはまの保育」は,被告自身が策定し,ときに国の定める基準よりも条件を加配するものであるから,同指針は被告を拘束するものである。 「よこはまの保育」においては,「保育者の仕事は『見通しを持って保育する』こと」であるとされ,保育者のこの「見通し」と「ねらい」を表わしたものが保育の計画であるとして,計画性のある保育の重要性が述べられ,また,「保育者の存在は保育環境そのものです」「一瞬一瞬の子供と保育者との関わりが保育のすべてであるといっても過言ではない」として,保育者と子どもとの関わり合いの重要性が述べられている。 - 18 -このように,被告の保育指針でも,0歳から6歳までを見通した長期的保育計画に従い, すべてであるといっても過言ではない」として,保育者と子どもとの関わり合いの重要性が述べられている。 - 18 -このように,被告の保育指針でも,0歳から6歳までを見通した長期的保育計画に従い,子どもたちの保育環境を整えて保育は行われるべきであり,ここにいう保育環境においては,保育士(保育者)と子どもの関わり合いが一番重要であると述べられているのである。 (ウ)このように,被告は,保育所保育指針や「よこはまの保育」で定められているように,一貫性を持ち長期的視点を持って保育を計画的に行われなければならない義務を負っているのであり,この点も上記の保育所廃止に係る市町村の裁量を判断するについて配慮されるべき事項である。 エ本件における具体的な事情本件における下記(ア)ないし(オ)の事情は,本件4園の廃止に係る被告の裁量の範囲を検討するについて十分にしんしゃくされなければならない。 (ア)原告らは保育所選択権を行使して本件4園を選択したものであること原告らは,保育所を選択する際に,以下のように,その保育方針,保育の年間計画,保育士の対応,個性,などを十分に吟味して本件4園を選んだのであり,原告らは保育所選択権を行使し,本件4園を選択したのである。 被告の担当者であった福祉局児童福祉部保育運営課の丙(以下「丙課長」という。)は,保育所の選択は交通の便を第一義的に考える旨を証言し,また,同じく被告の担当者である戊係長は,民営化の説明会の当時から,保育所については認可と無認可の区別しかないと発言しているが,認識不足も甚だしいというべきである。子どもたちは,保護者といる時間よりも,保育所にいる時間の方が長く,保育士は子どもにとって第二の親たる存在なのであり,保育所は第二の家なのである。保護者が保育所を選択するに際し,保育所の住所地や施設建 もたちは,保護者といる時間よりも,保育所にいる時間の方が長く,保育士は子どもにとって第二の親たる存在なのであり,保育所は第二の家なのである。保護者が保育所を選択するに際し,保育所の住所地や施設建物もその選択要素と- 19 -なるが,何よりも,保育者集団が形作る保育の方針,保育内容こそが,その第一の要素となっている。保育士は毎年少しずつ入れ替わるが,保育内容は受け継がれていき,その受け継がれ続ける保育の内容を見て,保護者は保育所を選択しているのである。 aBは,インターネット等で情報を収集し,公立園であることを優先して三つの公立保育所に絞った後,岸根保育園を園外から見学していたところ,園内から保育士が「こんにちは」と声をかけてくれた。他の2園ではこのような声かけはなかったことから,Bは,岸根保育園は保育士が非常によく訓練されており,経験豊富なのだと好感を抱き,岸根保育園に子どもを入所させることにした(証人B)。 b原告Cが,家の隣に公立の保育所があったにもかかわらず丸山台保育園を選んだのは,実際に丸山台保育園を見に行ったときの体験に基づく。丸山台保育園では,静かで明るい環境の中で,園庭で遊んでいる子どもたちが非常に落ち着いていた。また,園長に話を聞いたことからも同園に好意を抱き,そういった事前調査を通じて丸山台保育園には子どもを安心して預けられると判断した。 原告Cは,長男を通わせてみて,丸山台保育園の保育士が献身的で細かいところに目が行き届いていたため,長女も同園に通わせたいと考え,年度途中では入園できないことから,妻が産休を6か月で切り上げ新年度に合わせて申し込み,第三希望までの欄がある申込書には,第二,第三希望は記入せず,第一希望欄にのみ丸山台保育園と書いて,やっとのことで長女も丸山台保育園に通わせた。 c原告dの母親 切り上げ新年度に合わせて申し込み,第三希望までの欄がある申込書には,第二,第三希望は記入せず,第一希望欄にのみ丸山台保育園と書いて,やっとのことで長女も丸山台保育園に通わせた。 c原告dの母親であるDは,長男をX保育所に通わせながらも,毎年,鶴ヶ峰保育園への転園希望を出していた。それは,自然にあふれ,アットホームな家庭的雰囲気の園であるとの評判を聞いていたからであった。 - 20 -d原告兼原告e法定代理人親権者父Eは,園長から,保育方針,内容を聞き,柿の木台保育園を選択し,入園希望を出した。年度初めには入園許可が出なかったが,入園希望を維持し続けて,欠員が出たところで入園させた。原告Eは,柿の木台保育園の「みんな自分色」という保育が気に入っており,子どもを3人とも同園に入れている。 原告Eの3番目の子どもは,Y保育所であればすぐに入れるという連絡をもらったが,Y保育所を見学に行ったところ,その保育方針が気に入らなかったため,無認可の保育所に1年間通わせて,その翌年に第一希望の柿の木台保育園だけを申込用紙に書いて柿の木台保育園に入園させることができた。 (イ)民営化による保育内容の変更a本件民営化の前後で本件4園の保育方針や保育内容は激変している。 被告は本件民営化に当たって,保育内容や行事などについて急激な変更がないようにするとの説明を原告らに繰り返ししていたが(甲7号証の1の2,2の3,3の2),これは全くの虚偽であった。 本件各新保育所で生じている変化は,①現場の保育士の対応によるもの,②本件各社会福祉法人の方針や政策によるもの及び③被告の直接的な責任によるものに分類されるが,その具体的内容は別紙1ないし3〔省略〕に記載のとおりである。 b①現場の保育士の対応による変化は,別紙1に具体的に記載したとおりであり,民営 の及び③被告の直接的な責任によるものに分類されるが,その具体的内容は別紙1ないし3〔省略〕に記載のとおりである。 b①現場の保育士の対応による変化は,別紙1に具体的に記載したとおりであり,民営化後は概して経験のない保育士が多く,余裕のない中で十分な保育ができていないことに起因するものである。これは,民営化により人員削減が行われ,人件費の格差から若い層の保育士が中心となっていることによるものであって,これでは,十分な保育は不可能である。また,経験ある保育士と若年層がバランスを持って混ざり構成されていないと保育の蓄積の伝承はありえないし,人員が確- 21 -保されていないと,保育士も余裕がなくなり,辞める者も多くなって安定した保育を行うことが不可能となっている。 また,民営化後は,保育の根本である父母と保育所との信頼関係が決定的に破壊されている。信頼関係のない中,保護者が望まず,対話もなされずに民営化が行われたために,保育士と自分の子どもの状態について語り合って有益なアドバイスをもらうという,そういった関係が失われてしまった。保護者と保育所との信頼関係は,それ自体が子どもの保育環境として必須のものであり,またさまざまな保育環境を整えるべく保護者と保育所が協力するために最も重要なものであるが,被告の拙速な保育所民営化は,この良好な保育の基本となるべき保護者と保育所,保育士との信頼関係を破壊したのである。 上記のような問題点は,現場の保育士個人の能力の問題に帰せられるものではない。これらは,被告が,資格があるものが引き継ぐのだから問題はないとの一点張りで引き継ぎを十分に行わず,経験豊かな保育士を置かずに民営化を強行した結果生じたものであり,被告に責任がある。 c②本件各社会福祉法人の方針や政策による変化は,別紙2に具体的に記載した の一点張りで引き継ぎを十分に行わず,経験豊かな保育士を置かずに民営化を強行した結果生じたものであり,被告に責任がある。 c②本件各社会福祉法人の方針や政策による変化は,別紙2に具体的に記載したとおりであり,民営化後は本件各新保育所で大きく保育方針が変化するとともに,安全面,衛生面の著しい低下が進み,児童の負傷等の重大な事故が多発している。これらの事故は,性急に本件民営化が断行され,引き継ぎも十分になされないまま,ほとんどの保育士が入れ替わり,かつ経験豊富な保育士が殆どいなくなったことによって発生したものである。 また,本件各新保育所では不合理な保育の方針や差別等のために保育士間の信頼関係も失われており,このような状況下で,市立園や他園から採用された保育士と,社会福祉法人出身の保育士とが信頼し合- 22 -って保育所を作り上げていくことなど不可能である。 これらはすべて,準備不足のまま強行された被告の拙速な民営化により生じたものであり,保育水準を低下させ,「安全でない状態」を作り出した被告の行為の違法性は著しく高いものである。 d③被告の直接的な責任による変化は,別紙3に具体的に記載したとおりであり,本件各新保育所では,子どもの怪我や脱走が多発しており,子どもの脱走については先に保育所の民営化を行った大東市等でも報告されており,十分に予見し得るものであった。にもかかわらず,被告は必要な対策を行うどころか緊急連絡先すら引き上げる等,子どもの安全を無視した行為を行ったのである。 (ウ)本件民営化が子どもに与えた影響a本件民営化に伴って,本件4園のすべての職員が平成16年4月1日を境に一斉に入れ替わった。また,運営主体が本件各社会福祉法人となることで保育方針も大幅に変化した。 保育所に通う年齢の児童は可塑性に富み,多感な時期を過ご 本件4園のすべての職員が平成16年4月1日を境に一斉に入れ替わった。また,運営主体が本件各社会福祉法人となることで保育方針も大幅に変化した。 保育所に通う年齢の児童は可塑性に富み,多感な時期を過ごしているから周囲の環境の変化に影響されやすい。保育所は日中すべての時間を児童が過ごす場所であり,その環境や指導方針はその後の人格形成に決定的ともいえる大きな影響を与える。 b保育所では,朝の受け入れから夕方の保護者の迎えまで,保育士は保護者の代わりとして,ありとあらゆることを行い,保護者は子どもの命,心と体の健康,生活のすべてを保育士に預けている。保育士は自己の人格そのもので幼児と接し,その場面に応じて各児童にあわせた保育計画を立て児童らの保育を行なうのである。 幼い児童にとって保育士は父母の代理であり,簡単に入れ替えの効く存在ではない。したがって,児童に接している保育士を短期間の内に全面的に取り替えるような措置は,子どもたちへの影響を考えると- 23 -絶対に認められないことなのである。 仮に民営化を認めるとしても,少なくとも3年以上の期間をとって,順次施設の管理者,保育士の入れ替えを行うべきであり,このような配慮を欠いた本件4園の廃止を内容とする本件改正条例は,子どもたちへの影響にかんがみても,児童福祉法1条,2条,児童福祉施設最低基準2条,24条,39条,及び子どもの権利条約3条1ないし3項,18条2,3項のそれぞれに違反する違法なものである。 c本件民営化後,子どもたちに保育所に行きたがらない,体調を崩す,赤ちゃん返りするなどの変化が現れている。その具体的な内容は別紙4〔省略〕に記載のとおりである。 上記のような行動は民営化前の保育所では見られなかったことである。子どもたちが自ら学び,成長をして,行わなくなっていた幼児的行為を れている。その具体的な内容は別紙4〔省略〕に記載のとおりである。 上記のような行動は民営化前の保育所では見られなかったことである。子どもたちが自ら学び,成長をして,行わなくなっていた幼児的行為を再び行うようになっており,このことからも,民営化が子どもたちの成長に著しい悪影響を及ぼしていることが明らかである。 そして,このような現象は決して一時的なことではない。民営化による保育の質の変化がトラウマとして残り長期的にも影響を与え続けるし,また,今後の人生を支えていくはずであった「保育所時代」が喪失したという点でも,子どもたちに悪影響を与え続ける。本件民営化は,子どもたちに深刻な悪影響を与え,トラウマを生じさせた。また,体験の連続性を断ち切り,成長へ大きな障害を与えたのである。 (エ)被告がした措置の不十分性被告が本件民営化に際してした配慮は,以下に述べるように,全く不十分であり,保育はあらゆる面で全般的に変化し,子どもたちへ著しい悪影響を及ぼした。 a引き継ぎについて(a)岸根保育園- 24 -岸根保育園では,保育士による具体的な引き継ぎはされていない。 保護者は不安でたまらず,信頼の置けない被告を除き,平成16年2月末に保護者と社会福祉法人との二者協議を行ったところ,二十項目以上の引継事項のうち,4分の1程しか終了していなかった。 引き継ぎがされていた4分の1は,容易に形式的に引き継ぎのできる行事関係であって,子どもたちの特性など保育の質の部分についての引き継ぎはされていなかった(証人B)。 (b)丸山台保育園丸山台保育園では,平成16年1月に入ってから6名の職員が引き継ぎに来ただけであり,うち4名は1日か2日だけ,残り2名も5日,7日といった短い期間の訪問に過ぎなかった(甲65号証)。 わずかな保育士が保育所を訪れ,現場に 16年1月に入ってから6名の職員が引き継ぎに来ただけであり,うち4名は1日か2日だけ,残り2名も5日,7日といった短い期間の訪問に過ぎなかった(甲65号証)。 わずかな保育士が保育所を訪れ,現場に入らず見学をしていただけであり,同年2月に入ってから少人数が現場に入るという状況であった。 同月20日には,社会福祉法人と保護者間で共同保育の話し合いがされたが,法人側も,「保育士どうしの関係を築くのに時間を費やすだけで,到底間に合わないでしょう」と述べ,「このまま4月を迎えると,絶対に子どもに影響が出るのは間違いない」という発言もあった。保護者から法人に対し,このままでは問題だから延期するなどの意見を被告に言って欲しいという声が上がったが,法人も,引き継ぎが十分になされていないことを認めつつ,「移管条件で4月1日というのは決まってます」「子どもの状況に合わせて保育士を残していいなんていうことも聞いていないし,言えないんです」と述べていた(原告C)。 (c)柿の木台保育園柿の木台保育園で実際に共同保育が行われたのは平成16年3月- 25 -に入ってからであった(原告E)。同年の1月及び2月には保育士はほとんど来園しておらず,被告が主張する共同保育の予定は全く実践されていない(原告E)。 移管先法人であるあすみ福祉会からも,今回のスケジュールは厳しいため延期して欲しいと被告に提案がされたほどである(甲75号証,原告E)。 (d)鶴ヶ峰保育園鶴ヶ峰保育園でも十分な引き継ぎはなされておらず,他園同様の状況であった。 bアフターケアについて(a)被告は,嘱託職員,アルバイトの継続雇用,臨床心理士,保育士及び看護師の巡回,本件4園の元園長又は保育士による対応,三者協議会の設置等により民営化後のアフターケアを実施したことにより,保育内 a)被告は,嘱託職員,アルバイトの継続雇用,臨床心理士,保育士及び看護師の巡回,本件4園の元園長又は保育士による対応,三者協議会の設置等により民営化後のアフターケアを実施したことにより,保育内容に変化はなく,子どもたちへの悪影響はなかった旨主張している。 (b)しかし,臨床心理士,保育士,看護師の巡回は,利用者である原告らには全く伝えられておらず,いつ誰がどのような形で巡回したのかの報告を聞いたことも,現実にそれを体験したこともない。 ただ単に巡回したということだけでは,たとえ元園長経験者の嘱託保育士が巡回したとしても,その嘱託保育士は当該園の園長であった者ではないのであり,子どもたちにとっては慣れない他人がやってきているだけに過ぎない。嘱託保育士が子どもたちの性格を知っているわけでもなく,子どもたちが同嘱託保育士に懐いているわけでもない。 これらの巡回が少しでも意味を持つとしたら,本件新保育所の保育士や保護者らに状況をインタビューし,適切な報告書が作成され- 26 -て,改善が図られる必要があるが,巡回した者による意味のある報告等は極く少なく,丙課長の後任者である丁(以下「丁課長」という。)は,現状を全く把握しておらず,改善案を提示することもなかった。丁課長は,形式的な報告を読むだけであり,ときに具体的な問題点が書かれていても,専門家であり保育士がいるから被告としての対応は不要であると述べているに過ぎない(証人丁)。 月に二,三回,本件各新保育所を回り,物言わぬ子どもたちを一瞬だけ覗いている元園長ら(当該園の園長ではない)には,子どもたちの変化が分かるはずもなく,丁課長は平成16年度は7回,平成17年度は半年で一度保育所に行ったのみであり,訪問して話をするのは園長と保育士1名と主任のみなのである。保護者と話をしたことも児 もたちの変化が分かるはずもなく,丁課長は平成16年度は7回,平成17年度は半年で一度保育所に行ったのみであり,訪問して話をするのは園長と保育士1名と主任のみなのである。保護者と話をしたことも児童と触れあったこともほとんどない状態で,民営化後の状況を被告が把握できるはずはないのである(甲112号証,証人丁,証人B)。 (c)三者協議についても,被告の強硬な民営化実現の過程で,保護者は被告への信頼を完全に失ったことから,現在,実施されていない。一部を除いては,この三者協議の実施は今後も不可能である。 c保護者の努力被告は状況が落ち着いたと主張するが,せめて少しだけでも状況が落ち着いた側面があるとすると,それは,保護者と本件各社会福祉法人の努力があったからである。熱心な法人の保育士や保護者が民営化さえなければ必要ではなかった時間を割き,話し合い,努力を重ねて何とか保育の質を最低限度維持しているのである。 d以上のとおり,本件民営化で保育の変化を最小限に留めるとして被告が執った手段はすべてほぼ無意味であり,保育の著しい変化は否定すべくもない。 - 27 -(オ)民営化する理由が乏しいことについてa被告は本件民営化の理由として,①多様な保育ニーズへの迅速かつ柔軟な対応,②待機児童の解消,③本件意見具申の3点を挙げているが,丙課長の説明(証人丙)からすれば,④財政的な面で余裕がなく一年で民営化を実施しなければならなかったという事情があったもので,財政難こそが本件民営化の一番の理由と考えられる。 しかし,いずれにせよ,以下詳述するとおり,被告が主張する民営化の理由には全く根拠がなく,ましてや,このように異常に性急な手続で保育所を民営化しなければならないような行政上の必要性は全く見いだせない。 bまず,鶴ヶ峰保育園を始め,本件4園で 告が主張する民営化の理由には全く根拠がなく,ましてや,このように異常に性急な手続で保育所を民営化しなければならないような行政上の必要性は全く見いだせない。 bまず,鶴ヶ峰保育園を始め,本件4園では民営化を求める声はなかった(甲12号証の3)し,被告は市民の保育ニーズを全く把握していない。 柿の木台保育園の第1回保護者説明会において,被告から「多様な保護者のニーズ」の根拠として挙げられたのは,「24時間型緊急一時保育事業モデル実施のための実態調査」の結果であった。しかし,そもそもこの調査は民営化に関する調査を目的としたものではなかった(証人丙)。そこで保護者から,この調査結果は本件民営化の参考とはならず,民営化の理由にはならないとの指摘がされところ,被告は,「市長への手紙」において様々な保育ニーズが見受けられると回答を変えたのである。しかし,さらに悪質なことには,被告はその時点で「市長への手紙」を集計すらしていなかった。すなわち,全く実体のない数字を提示して,保護者のニーズとして提案したのである。 なお,その後発表された,「市長への手紙」の集計結果の回答(平成15年7月29日付・8月9日配布)は,45件中26件が「保育所の増設」,6件が「保育時間の延長」を希望するもので,待機児童の- 28 -解消については1件しか回答がなかった(甲32号証)。 c被告は多様なニーズに応えるために本件民営化をしたのではない。 例えば,「障害児保育」も被告のいう「多様なニーズ」には含まれるが,岸根保育園においては,民営化以前の説明会において,被告が基本的な他都市調査すら怠っていたことが明らかになっている(証人B)。障害児保育についての調査が不十分なまま本件民営化が実施されているのである。被告は,真に障害児のための保育をしようという姿勢で本件民営化を 都市調査すら怠っていたことが明らかになっている(証人B)。障害児保育についての調査が不十分なまま本件民営化が実施されているのである。被告は,真に障害児のための保育をしようという姿勢で本件民営化を行ったのではない。 これまでの市立園の時代でも多様なニーズに応えるべく努力されてきており,障害児保育の導入などが積極的に行われてきている。同様の改訂を行えば,一時保育,延長保育等を実施するのは市立園でも容易に可能である(証人乙,同丙)。にもかかわらず,被告は,その努力を怠り,問題をすべて民営化に丸投げしたのである。 d民営化の効果鶴ヶ峰保育園では,夜9時までの延長保育が実施されるようになったが,これを利用する者はわずかであり,逆に土曜保育や,今までの延長保育ですら,多くの保護者は,民営化後の保育所には危なくて預けられないとして利用していない(証人D)。 被告は,一時保育のニーズがあったことを強調するが,柿の木台保育園では,民営化後1年半経っても一時保育は行われていない(原告E)。また,同保育所では夕方の保育時間が1時間延長されたが,これを利用しているのは150人中わずか1名である。 以上のように,被告が理由としてあげる「保護者のニーズ」は何ら根拠なく持ち出されたものに過ぎないばかりか,そのニーズが仮にあったとしても,民営化によって解決できるものではないのである。 e財政難による民営化が理由のないことについて- 29 -(a)民営化による経費削減は,人件費の削減によって生じる。 被告は,本件民営化によっても保育の質は変わらず,保育士の年齢構成も変わらないと原告らに約束していたが,現実には,民営化後の保育士は低年齢で構成されており,経験の豊かな保育士が減少している。これをもって,民営化の方が費用が削減できるなどと述べるのは言語道断である。 わらないと原告らに約束していたが,現実には,民営化後の保育士は低年齢で構成されており,経験の豊かな保育士が減少している。これをもって,民営化の方が費用が削減できるなどと述べるのは言語道断である。 (b)本件民営化による財産の移動は,「適正な対価」なくして建物を安価で売却し,備品を無償譲渡し,土地を無償貸与するというものである。すなわち,それら処分行為はすべて被告の財政に損害を与えるものであり,財政難による経費の削減はおろか,それに反する行為にほかならない。 この点,被告に先がけ,財政難を理由に保育所の民営化を計画した千葉県八千代市では,一園を民営化した後,経費は下がらず反対に増えているため,民営化のメリットがないとして他園についての民営化計画を取りやめているのである。 f待機児童の解消について被告は,民営化の目的として待機児童の解消を特に強調するが,担当部局は民営化が待機児童解消につながるものではないと市議会で答弁し(甲44号証),説明会でもその旨答えている(甲12号証の2)。丙課長も待機児童の問題は,被告が抱えている保育行政の問題点の一つであり,民営化に直接つながるものではないと述べている(証人丙)。なお,先に民営化を行なっている堺市においても,民営化が待機児童の解消につながらないことが認められている(甲33号証)。 待機児童の実態について,被告は,数だけは把握をしているが,解消のための要望調査を十分に行なっていない。待機児童には入所申請- 30 -をしながら第一希望の保育所に入れないために他に空きがあっても待機している児童も含まれるのであり,保護者の要望の正確な調査なくして待機児童の解消は不可能である。 被告はかかる実態調査を十分に行なわずに,何ら解決策とならない民営化をもって待機児童の解消を図ろうとしたのである。 g まれるのであり,保護者の要望の正確な調査なくして待機児童の解消は不可能である。 被告はかかる実態調査を十分に行なわずに,何ら解決策とならない民営化をもって待機児童の解消を図ろうとしたのである。 g本件意見具申について被告は今回の民間化を含む今後の重点保育施策を策定したことについて,本件意見具申を根拠として挙げるが,同具申は本件民営化の根拠とはならない。 本件意見具申は,「運営主体の変更による子ども達への影響について十分配慮していくことが保育に関わるものの責務」とし,「入所児童の保護者の意見・要望を聞きながら,保育の向上を図るという共通の目的になった信頼関係の下に進めること」としているのである。 これに対し,被告の方針は,「最大の目標は来年(平成16年)4月1日実施」「保護者との信頼関係がなくても実施する」というものであり(甲41号証),同具申に沿わないものである。この姿勢は既にくり返し主張したように,アンケートの集計結果として誤った数字を故意に示したり,保護者が説明会を開かせないなどとの虚偽の情報を一方的に広報誌に掲載するなど(甲25号証)の点にも現れている。 h以上,被告の挙げる民営化の理由は,すべて正当な根拠とはなり得ない。 被告は,人件費を削って保育の質を落とし,財政難を解決するために本件民営化を行った。また,単に被告横浜市の市長である中田氏の人気取りと独自の価値観の実現のために本件民営化を行ったのである。 本件民営化の決定には会議は開かれておらず,中田市長が独断で決定している。 - 31 -百歩譲って,ある程度民営化の必要性を認めたとしても,発表から1年も経ず,準備も不十分なままに強行する必要があったのかということの説明にはならない。被告の本件民営化が必要とする説明は,十分な準備期間を設けて,今回のような問題が生じないよ たとしても,発表から1年も経ず,準備も不十分なままに強行する必要があったのかということの説明にはならない。被告の本件民営化が必要とする説明は,十分な準備期間を設けて,今回のような問題が生じないような配慮をした上で民営化を進めることがなぜできないのかの論証とはなっていないのである。 被告の中田市長は,保護者から早急な民営化への強い反対の声が上がっており,のみならず,法人選考委員会の委員からも,移管先法人からも,民営化は延期した方が良いのではないかという意見が出ているにもかかわらず,独断でその意見を無視し,平成16年4月1日の強行実施を行ったのである。 オまとめ以上述べたとおり,原告らは,就学直前まで選択した保育所で保育を受ける権利を有しており,この権利を十分に行使すべく,見学を重ね,さまざまな観点から保育所を吟味して,本件4園を選択した。 しかし,本件民営化において,その選択した本件4園の保育環境は激変し,保育士もすべて変わり,保育方針もすべて変わってしまった。その変化たるや施設が同じであるだけであって,かつての本件4園は完全に失われてしまったのである。 被告は,一定の場合には市立保育所を廃止し得る権限を有するというが,本件の廃止に合理的理由はない。特に,1年の間にすべてを行うという拙速な民営化には全く理由が見いだせない。 本件民営化は,原告らの保育所選択権を侵害するものであり,被告の保育所廃止の裁量権を逸脱するものとして違法である。 なお,以上述べたことからすれば,本件改正条例の制定による本件4園の廃止は,児童へ大きな悪影響を与える保育環境の根本的変化を断行する- 32 -ものであって,原告らの保育所選択権を侵害するものとして違法であるにとどまらず,児童福祉法24条,39条及び子どもの権利条約3条,18条2・3項によって保障さ 境の根本的変化を断行する- 32 -ものであって,原告らの保育所選択権を侵害するものとして違法であるにとどまらず,児童福祉法24条,39条及び子どもの権利条約3条,18条2・3項によって保障され,児童福祉施設最低基準2条,保育所保育指針によって明確にされた児童原告らの「保育所において保育を受ける権利」をも侵害するものであって,この点でも違法である。 【被告の主張】ア(ア)本件4園の廃止は,これが公立保育所の廃止であることから,「公の施設の廃止」に該当する。 公の施設に関しては,これをどのように設置し配置するかは,財政事情や様々な要因等を総合的に考慮した上での高度に政策的な判断を必要とするものであるから,地方公共団体の裁量的判断にゆだねられ,個々の利用者に特定の施設の設置やその存続を求める権利が当然に認められるわけではない。 (イ)法令上も,「公の施設の廃止」に関しては,地方自治法244条の2第2項が「普通地方公共団体は,条例で定める重要な公の施設のうち条例で定める重要なものについて,これを廃止・・・するときは,議会において出席議員の3分の2以上の者の同意を得なければならない。」と規定しているほかは,特段の制限を設けていない。 また,児童福祉法上も,35条6項が「市町村は,児童福祉施設を廃止しようとするときは,その廃止の1月前までに,厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に届け出なければならない。」と規定し,これを受けて,同法施行規則38条1項2号が「法第35条第6項に規定する命令で定める事項は,次のとおりとする。一廃止又は休止の理由,二入所されている者の処置」と規定しているとおり,むしろ,保育所等の児童福祉施設について入所者がいる時点でも廃止される場合があるこ- 33 -とを前提とした廃止手続を定めている。 以上の法令の ,二入所されている者の処置」と規定しているとおり,むしろ,保育所等の児童福祉施設について入所者がいる時点でも廃止される場合があるこ- 33 -とを前提とした廃止手続を定めている。 以上の法令の規定等からすれば,公立保育所のような「公の施設」の廃止については,行政庁の広範な裁量にゆだねられているものと解釈すべきことは明らかであり,その目的や内容において,一見して著しく不合理であることが明白で裁量権の逸脱,濫用となるような場合を除き,その廃止が違法の評価を受けることはない。 (ウ)原告らは本件民営化により「保育所において保育を受ける権利」や「保育所選択権」が侵害されたと主張するが,原告らにそのような具体的権利が保障されているとは解されないことは,既に述べたとおりである。 殊に,原告らの主張する保育所選択権なるものは法文上も明確ではなく,法24条1項が市町村に保育の応諾義務を課していることの反射的効果として享受し得る事実上の利益に過ぎない。保護者と市町村との契約関係は公法上の附合契約であり,その性質上,保育所選択権なるものの具体的内容として,保育所設置者の変更等,契約条件の変更を制限するまでの内容を含むものではない。 なお,原告らがその主張の拠とする甲証人の見解は,継続的な利用関係にある公の施設の廃止について理由の如何を問わず,違法になる旨述べているものと解されるが,そのように解すべきことについての法令上の根拠が明らかでないばかりか,保育所の廃止についての行政裁量を認めない見解に等しく,児童福祉法上も入所者がいる場合に保育所が廃止されることがあり得ることを前提とした規定(前記法35条6項,同施行規則38条1項2号)を置いていることとの整合性を図り得ないものであって,本件改正条例の適法性を論ずる際の解釈指針とはなり得ない。 - 34 があり得ることを前提とした規定(前記法35条6項,同施行規則38条1項2号)を置いていることとの整合性を図り得ないものであって,本件改正条例の適法性を論ずる際の解釈指針とはなり得ない。 - 34 -イ本件4園廃止(本件民営化)の合理性(ア)本件4園は,市立保育所の民営化に伴い廃止されたものであり,その目的は以下のとおりである。 (イ)すなわち,現在においては,就業形態の変化や女性の社会進出の増加により,延長保育や一時保育,休日保育など様々な保育ニーズがあり,地域で求められる保育ニーズに迅速かつ柔軟に対応することが求められている。市会や市長への手紙でも保育所の民営化について議論がされ,このような状況を踏まえて,平成14年度から,学者,弁護士,保育関連の有識者で構成される横浜市児童福祉審議会において「保育サービスの充実に向けて保育所のあり方と行政の役割はどうあるべきか」について審議が行われ,平成15年2月28日に同審議会から横浜市長宛てに本件意見具申が提出された。本件意見具申には,「本市が今後とるべき施策の方向」の一つとして,「公立保育所の民営化」が掲げられ,「保育サービスの実施状況で述べたように民間事業者の方が市の直営施設よりも多様化した近年の保育ニーズに柔軟かつ迅速に応えることが可能です。また,本市の財政状況は大変厳しい状況ですが,引き続き定員拡大をはじめとする保育施策を充実させていく必要があることから,保育水準を下げることなく,保育コストの有効配分に努め,更なる保育施策等の充実を図ることが求められています。そこで,民間保育所が公立保育所に比べて『柔軟かつ効率的に運営が期待できる』点に着目し,今後は公立保育所の民営化について児童福祉を増進するという観点を踏まえて実施していくことが必要であると考えます。」との意見が示された( 保育所に比べて『柔軟かつ効率的に運営が期待できる』点に着目し,今後は公立保育所の民営化について児童福祉を増進するという観点を踏まえて実施していくことが必要であると考えます。」との意見が示された(乙2号証の12頁ないし13頁)。 これを受けて,被告は,同4月23日に重点保育施策(乙3号証の1・2)を公表し,その重点項目の一つに「市立保育所の民営化」を掲- 35 -げたのである。 先に述べたとおり,現在では様々な新しい保育ニーズに応える必要があるが,予算による制約などがあり,迅速性に欠ける傾向のある市立保育所ではこれらニーズに十分に応えることは難しいことから,民間保育所の柔軟性や即応性に着目して現に地域にある保育ニーズに速やかに対応することを目的として市立保育所の民営化を実施することとしたものである。 ちなみに,乙4号証は,厚生労働省のホームページに掲載された,学識者で構成される「次世代育成支援施策の在り方に関する研究会」の意見であるが,ここにも「私営保育所の方が延長保育等の特別保育の実施率が高いなど利用世帯の多様なニーズに応えている一方で,公営保育所は,多様なニーズへの対応が不十分で,かつ,保育士の年齢が高いこともあって費用がかかるなど費用対効果という面で問題がある。『民ができることは民で』という官民の役割分担の観点を踏まえると,今後とも公設民営形式の推進や公営保育所の民営化など民間活力の導入を進めていくことが適当である」と記載されている。 また,原告らも訴状にて指摘するとおり,平成13年11月の児童福祉法の改正により,56条の7が新設され,同1項が「保育の実施への需要が増大している市町村は,公有財産(地方自治法第238条第1項に規定する財産をいう。)の貸付けその他の必要な措置を積極的に講ずることにより,社会福祉法人その他の多様 れ,同1項が「保育の実施への需要が増大している市町村は,公有財産(地方自治法第238条第1項に規定する財産をいう。)の貸付けその他の必要な措置を積極的に講ずることにより,社会福祉法人その他の多様な事業者の能力を活用した保育所の設置又は運営を促進し,保育の実施に係る供給を効率的かつ計画的に増大させるものとする。」旨規定し,児童福祉法上も民営化を促進する規定を置いている。 (ウ)子どもの成長の早さを考慮すると,現在サービスを利用している人- 36 -だけでなく,サービスを利用していない人にも必要な保育サービスを素早く提供しなければならず,そのためには,迅速かつ効率的に対応することが必要となる。そこで,被告は,このように多様な保育ニーズに円滑かつ迅速に応えることを目的として,平成16年4月1日より民営化を実施することとしたものである(乙30号証,証人丙)。 なお,公立保育所の民営化に関しては,被告では本件民営化以降,平成17年度に4園の民営化を実施し,18年度も4園の民営化を予定しており,また,本訴で明らかとなっている大阪の大東市,高石市,千葉の八千代市のほか,複数の他自治体においても民営化が実施されている。 (エ)このように本件民営化に伴う本件4園の廃止措置には合理的な理由がある。 ウ本件民営化の経緯(ア)被告は,丸山台保育園,鶴ヶ峰保育園,岸根保育園,柿の木台保育園の4園を本件民営化の対象保育所に選定した。これら4園を本件民営化の対象保育所に選定した理由は次のとおりである。 まず,これら保育所のある区は市立保育所の数が多いということでこれら4区を選定し,選定区内においては,被告で設定した評価項目のうち,評価点の高い保育所を民営化の対象とするということで選定した。 ちなみに,評価項目としては,まず一つは施設規模,すなわち敷地面積 これら4区を選定し,選定区内においては,被告で設定した評価項目のうち,評価点の高い保育所を民営化の対象とするということで選定した。 ちなみに,評価項目としては,まず一つは施設規模,すなわち敷地面積や建物の残存年数等を考慮要素とし,最寄り駅等からの至便性と距離も考慮要素とし,さらに,過去3年間の子供の充足率,定員の関係もあり,大きな定員割れをしているところは経営面等の観点から難しい問題もあるため,その意味で過去3年間の定員の充足率も考慮要素とした。 以上の考慮要素等を総合的に評価し,順位付けを行った結果,本件- 37 -4園を今回の民営化の対象とするのが適当と判断した(乙30号証,証人丙)。 (イ)その後,被告は本件4園の保護者を対象として,平成15年4月25日に丸山台保育園や鶴ヶ峰保育園で開催した説明会を始めとして,4園で合計11回の保護者説明会を開催した。説明会の中には最長13時間にも及ぶものがあり,また,説明会以外にも全保護者に対し,計11回にわたり,福祉局長名による文書を始めとしたお知らせ(乙23号証)を送付し,その他,出張相談やFAXによる相談にも応ずるなど,被告としては,十分な説明を尽くし,極力保護者の理解を得られるよう努めた(乙30号証,証人丙)。 (ウ)同年9月には移管を受ける社会福祉法人に対する説明会を開催し,その募集を行ったところ,市内市外を含めて18の社会福祉法人から応募があったが,学識者等からなる法人選考委員会において厳選された結果,本件各社会福祉法人(社会福祉法人白百合会,社会福祉法人ちとせ会,社会福祉法人山百合会,社会福祉法人あすみ福祉会)が移管先に決定し,同年11月17日に発表された(乙23号証の8)。 (エ)そして,本件4園の廃止を定めた本件改正条例は住民の代表により構成された横浜市会で十分な議 合会,社会福祉法人あすみ福祉会)が移管先に決定し,同年11月17日に発表された(乙23号証の8)。 (エ)そして,本件4園の廃止を定めた本件改正条例は住民の代表により構成された横浜市会で十分な議論がなされた上,平成15年度第4回市会の本会議(平成15年12月18日)において,賛成多数により可決されたのである。 エ本件民営化の内容(ア)公民間で保育条件,内容につき格差が生じないこと保育所等の児童福祉施設については,児童福祉法45条1項を受けた厚生省令(昭和23年12月29日厚生省令第63号。乙5号証。この- 38 -うち第32条ないし第36条)により児童福祉施設最低基準が定められ,民間保育所であってもかかる児童福祉施設最低基準を満たす認可保育所であるという点で,保育条件・保育内容や保育士等職員の配置基準について公民間では格差はない。 乙6ないし9号証は,本件民営化に先立って被告と本件各社会福祉法人との間で取り交わされた「保育所運営に関する覚書」であるが,これに記載されているとおり,従前の保育条件,保育内容の継承が条件とされているほか,幼児に対する主食の提供,延長保育サービスの実施,一時保育事業の実施を条件として上乗せしており,民営化によって保育条件,保育内容に格差が生じないばかりか,むしろ充実した保育サービスの提供が受けられるものとなっている。 (イ)適正な職員配置数及び職員の質の確保職員の配置等に関して,移管先法人に被告法外基準に基づく保育士等及び経験者の確保を義務付け(乙6ないし9号証),移管後においても実際にこれに基づく適正な職員配置数や人材の確保が図られている(乙31号証)。 (ウ)園児を取り巻く環境(物的施設,交友関係)にも大幅な変化が生じないことa本件民営化においては,「財産の交換,譲渡,貸付け等に関する な職員配置数や人材の確保が図られている(乙31号証)。 (ウ)園児を取り巻く環境(物的施設,交友関係)にも大幅な変化が生じないことa本件民営化においては,「財産の交換,譲渡,貸付け等に関する条例」に基づき,被告は従前の本件4園の敷地を移管先法人に無償で貸与するとともに,建物・備品も譲渡しており,児童は従前の施設を移管後も引き続き,そのまま利用している(乙6ないし9号証,31号証)。 bまた,他保育所に転園した一部児童を除き,通園園児の顔ぶれにも- 39 -変更はなく,児童間の交友関係も維持されている(乙31号証)。 (エ)移管先法人の質の確保移管先法人は,いずれも学識経験者や市民代表者等から構成された法人選考委員会(乙10号証の添付資料7,8参照)における厳正な審査により選考した社会福祉法人である。移管先法人は,既に保育所運営を行っている法人であって,営利を目的としない社会福祉法人である以上,利潤追求により児童の福祉が疎かにされる虞もなく,地域で質の高い保育の実践が立証できる法人である。これら移管先法人については,被告は,移管後も法人監査や保育所の監査を行い,経営状況や保育内容等について助言,指導を行っている。 (オ)移管に当たり引き継ぎが十分に行われていること被告は,本件4園のすべてにおいて,平成15年11月下旬から民間移管前日の平成16年3月31日までの5か月間,移管先法人の雇用予定職員が参加する等して共同保育を実施した。この共同保育の内容は,本件4園の園長を含む現役の園長8名が既に民営化を実施している八千代市等の自治体における引継内容を調査,検討した上で策定したものであり,平成15年11月下旬から平成16年3月31日まで実施されている。これらの共同保育の実施により,被告は運営主体の変更による影響が生じないよう における引継内容を調査,検討した上で策定したものであり,平成15年11月下旬から平成16年3月31日まで実施されている。これらの共同保育の実施により,被告は運営主体の変更による影響が生じないような十分な配慮をしたといえる。 (カ)民営化後の児童に対する手当ても十分に施したこと被告においては,運営主体変更による影響がないよう,①嘱託職員やアルバイトの継続雇用の確保,②臨床心理士の巡回,③園長経験者の巡回,④看護士の巡回,⑤本件4園の元園長又は保育士による対応,⑥三者協議会の設置等,民営化後の児童に対する手当ても十分に施した- 40 -(乙30号証,31号証)。 (キ)その他その他,移管に当たり,被告は,①障害児保育に対する配慮もし(乙14号証の1ないし5,乙15号証ないし18号証,乙30号証),また②他の市立保育所に転園することが可能となるような配慮もした(乙19号証,31号証)。 オまとめ以上に述べた本件民営化の目的・内容,民営化に至る経緯等にかんがみれば,本件4園の廃止措置に裁量権の逸脱・濫用がないことは明白である。 (3)争点3(本件改正条例制定手続の違法性)について【原告らの主張】ア本件改正条例の制定により本件4園を廃止したことが,保育の実施の解除に該当することは,既に述べたとおりである。 イしたがって,被告は本件4園を廃止するについては,法33条の4に定める保護者に対する説明及び意見聴取の手続をする必要があった。 (ア)すなわち,法33条の4は,市町村長,福祉事務所長は,「次に掲げる措置又は保育の実施を解除する場合には,あらかじめ,当該各号に定める者に対し,当該措置又は保育の実施の解除の理由について説明するとともに,その意見を聴かなければならない。」として,同条3号で「第24条第1項の規定による保育の実施, は,あらかじめ,当該各号に定める者に対し,当該措置又は保育の実施の解除の理由について説明するとともに,その意見を聴かなければならない。」として,同条3号で「第24条第1項の規定による保育の実施,当該保育の実施にかかる児童の保護者」を定めており,市町村が,保育の実施を解除する場合には,事前に,当該保育の実施に係る児童の保護者に対し,保育の実施の解除の理由について説明するとともに,その意見を聴かなければならないとしている。 - 41 -また,上記法33条の4の規定に基づく「福祉の措置及び保育の実施等の解除に係る説明に関する省令」(甲18号証・平成6年9月27日・厚生省令第62号)は,2条1項において,市町村長,福祉事務所長は,「説明等を行うに当たっては,あらかじめ説明等の相手方となるべき者に対し,予定される措置又は保育の実施等の解除の内容及び理由並びに説明等の期日及び場所を通知しなければならない。」とし,同条2項で「前項の通知をするときは,説明等の期日において意見を述べ,又は説明等の期日への出頭に代えて意見書を提出することができる旨を教示しなければならない。」と規定している。そして,同省令5条1項は,「説明等の期日において,予定される措置又は保育の実施等の解除の内容及び理由を当事者に説明し,当該措置又は保育の実施等の解除についての当事者の意見を聴かなければならない。」として意見の聴取を義務付けている。また,同省令8条は,行政庁に対して,説明等の経過を記載した調書を作成することを義務付け,同9条は「行政庁は,措置又は保育の実施等の解除の決定をするときは,前条第1項の調書の内容を十分に斟酌してこれをしなければならない」と定めている。 (イ)福祉の措置の解除又は保育の実施の解除については,これまでサービスを受けて生活していた者がその終 をするときは,前条第1項の調書の内容を十分に斟酌してこれをしなければならない」と定めている。 (イ)福祉の措置の解除又は保育の実施の解除については,これまでサービスを受けて生活していた者がその終了後どのように生活していくかという点について,本人や関係者との双方向的な話し合いを通じて確認した上で結論を出すことが必要という特徴を有しており,また現にそのような手続が行なわれていることから,最初の通知の段階から不利益処分の内容が確定しているという行政手続法による手続がなじまない。このため保育の実施の解除処分の特徴を踏まえた,事前の意見聴取の手続を児童福祉法において定めると共に,一般法たる行政手続法の関係規定の適用を排除したものである(最新「児童福祉法の解説」時事通信社)。 上記(ア)の各規定の趣旨は上記のようなものであり,措置の決定前に- 42 -関係者の意見聴取を行い,施策の妥当性を検討し,双方向的な話し合いを経てから結論を出すことが求められているのである。 (ウ)しかるに,本件民営化の過程において上記のような説明手続は執られていない。 本件民営化においては,保護者も保育所職員も,平成15年4月23日に突然民営化の話が押し付けられた。その通知は,被告横浜市福祉局長名で送付され,「横浜市では,平成16年4月1日から・・・『横浜市柿の木台保育園』の運営を民間法人(社会福祉法人等の公共的団体)へ移管する準備を進めております」という内容であった。既に,本件4園の民営化は決定しており,準備までも進められているという状況であった。 もっとも,上記の点に関して説明会等が形式的には開催されているが,既に同年4月1日の時点で民営化については決定されており(証人丙),その後の説明会は法33条の4の規定にいう説明及び意見の聴取には当たらない。 被告は,本 して説明会等が形式的には開催されているが,既に同年4月1日の時点で民営化については決定されており(証人丙),その後の説明会は法33条の4の規定にいう説明及び意見の聴取には当たらない。 被告は,本件4園につき合計11回の説明会を行なったというが,被告の関係者が保護者らと顔を合わせたのは7回のみであり,それ以外は,被告が一方的に説明会と称して来園したに過ぎない。同年4月及び5月に開催された説明会も,極めて形式的なものであり,保護者の意見が聴かれる場面は一度もなかった。 さらに,説明会の調書も適正に作成されておらず,被告の対応は,上記省令8条にも反するものである。説明会後に議事録が配布されたが,それは被告の都合の悪い部分が記載されていなかったり,説明部分が恣意に変更されたりしており,保護者からの抗議に対して,被告は調査をして,調査結果と訂正版を出す旨を述べていたが,現在に至っても調査結果も訂正版も出されていない(同年9月13日開催の被告と保護者と- 43 -の話し合い,及び10月24日に開催された保護者と法人選考委員会との話し合いの議事録は未だ発行されていない。)。 (エ)なお,平成16年4月1日以降の保育について,被告は「保育所入所継続書類」のみを提出させ,何ら変更手続を行わせなかった(甲114号証)。 被告は,例年どおりの書式を保護者に配布し,その提出を要請し,保護者等はこれを提出せざるを得なかった。被告は,保護者原告らに対し,他の市立園へ転園しやすいことを説明することもなく,例年どおりの手続をさせたのであり,保護者原告らは,同継続書類を提出しなければ,翌春より自分の子どもをどこへも預けることができなくなってしまうことから,他に選択肢を奪われ強制的に同申込書を提出したのである。したがって,「保育所継続申込書」を提出したからといっ 提出しなければ,翌春より自分の子どもをどこへも預けることができなくなってしまうことから,他に選択肢を奪われ強制的に同申込書を提出したのである。したがって,「保育所継続申込書」を提出したからといって,自ら希望して本件4園から退所したものでないことは明らかである。被告は,入所継続という手続で,保育所の転園手続きを行ってしまったのであり,被告は保護者原告らを騙したに等しい(証人甲)。 ウ以上のとおり,本件民営化に伴う被告の処分は,保育の実施の解除が児童及びその保護者に与える多大な影響を考慮して定めた法の規定を一切無視するものであり,法33条の4並びに同省令2条1項,2項,同5条1項,8条及び9条に反し,保育の実施の解除の際に保護者原告らに保障された説明を受け,意見を述べる権利を侵害するものであって違法である。 さらにいえば,本件民営化における移管先法人の決定過程は不透明であり,保護者には何ら情報が知らされず,意見の聴取も一切なされていない。 この点も上記説明義務違反の内容として加えられねばならない。 【被告の主張】本件改正条例の制定により本件4園を廃止したことが,保育の実施の解除に該当するものでないことは,既に述べたとおりである。 - 44 -したがって,原告らの上記主張は,その前提を欠くものであって失当である。 ちなみに,本件民営化については,被告において法33条の4に規定する説明及び意見聴取をする義務はないというものの,保育所の運営主体が変更することにかんがみて,平成15年4月25日の丸山台保育園及び鶴ヶ峰保育園における説明会を始めとして合計11回(保護者欠席の8回は含んでいない)の保護者説明会を開催してきたし,同じく11回にわたって福祉局長名による文書を始めとしたお知らせ(乙23号証)を送付する等,被告は本件民営化を円滑に進めるた 11回(保護者欠席の8回は含んでいない)の保護者説明会を開催してきたし,同じく11回にわたって福祉局長名による文書を始めとしたお知らせ(乙23号証)を送付する等,被告は本件民営化を円滑に進めるために保護者に対して十分な説明を尽くしている。 (4)争点4(国家賠償請求の成否)について【原告らの主張】ア本件民営化が児童に与える影響については,他の市町村の例からも事前に明らかであった。したがって,被告は,本件4園を拙速に民営化してはならない注意義務,仮に民営化するにしても,十分な引き継ぎの期間をとり,また,保育内容,保育の実施に当たる職員に継続性が保たれるような措置を講じた上で,保育水準が低下しないような方法で民営化すべき義務を負っていたというべきである。 イ被告の故意,過失原告である本件4園の保護者らは,拙速な本件4園の廃止が児童にもたらす悪影響を懸念し,被告による説明会の席で,被告福祉局職員らに対し,繰り返し児童の利益を最優先課題として慎重に取り組むよう要請してきたほか,中田市長に対しても書簡を提出した。 にもかかわらず,被告は原告らの意向を無視し,自ら計画した本件4園廃止をスケジュールどおり進めることに固執し,民営化を平成16年4月1日に強行した。既に述べたとおり,被告による性急,拙速な本件4園の廃止及びそれに向けた一連の民営化の過程,そして実施された民営化の結- 45 -果生じた保育所の廃止,新しい保育所での保育は,原告らの権利を著しく侵害するものである。このような頑なな行政姿勢によって原告ら父母と児童に耐え難い苦痛と不安を与え,ひいては,将来に心理的なトラウマとして後遺症を残す可能性があることは明らかであった。 よって,被告による原告らの権利侵害行為について,担当の公務員らに故意か,少なくとも過失があったことは明らかで ,ひいては,将来に心理的なトラウマとして後遺症を残す可能性があることは明らかであった。 よって,被告による原告らの権利侵害行為について,担当の公務員らに故意か,少なくとも過失があったことは明らかである。 ウ原告らの損害(ア)本件民営化は,保護者原告らの保育を受けさせる権利,保育所選択権を侵害するものである。 保護者原告らは,本件民営化により,自らが必死の思いで情報を収集し,引っ越しをし,産休を早く切り上げるなどまでして選択した本件4園が廃止され,保育方針,保育内容,保育環境が全く異なる他園に移されるという多大な損害を被った。保護者原告らは子どもたちが望ましくない保育環境に置かれ,トラウマを生じさせるなどの悪影響を受けているという事実に不安を募らせ大きな精神的打撃を受けている。 (イ)本件民営化の過程で必要な手続が執られなかったことも保護者原告らに大きな精神的な苦痛を与えた。 本件民営化が強行される過程で,保護者原告らは,最愛の子どもを人質に取られながら,この問題を放り出すわけにいかず,必死の思いで少しでもよい保育環境を子どもたちに与えようと,奔走した。子どものことを全く考えていない本件民営化について,情報収集をし,他の保育所と連絡を取り,仕事と育児・家事の合間から時間を作り出して,会議に参加したのである。保護者会のお知らせを配るのに仕事を休まなければならなくなったということもあった。普段から仕事を持つ中で,子どもが眠った後に保護者同士が連絡を取り,休みも寝る間もなく時間を割かざるを得なかったこと,このことだけに1年間を棒に振ったことは,保- 46 -護者原告にとって極めて重大な損害である(甲113号証)。 そして,安心して保育所に預けられないので,他に兄弟を作ることをやめた保護者,家を買い直して他の市立保育所に転園した保護者, 保- 46 -護者原告にとって極めて重大な損害である(甲113号証)。 そして,安心して保育所に預けられないので,他に兄弟を作ることをやめた保護者,家を買い直して他の市立保育所に転園した保護者,共働きで,せっかく保育所に子どもを預けているのに,その園に子どもを預けることを躊躇せざるを得ず,預ける期間を最も短時間にするように努力している保護者,土曜の保育を辞めた保護者などもいる。保護者会が説明会を妨害したと広報され,恐怖をもった保護者も少なくない。 上記のように,保護者原告らにとって,本件民営化は,結果はもちろんのことその過程も著しい精神的損害を与えるものであった。 また,本件民営化の手続過程の杜撰さによっても,保護者原告らは大きな精神的打撃を受けた。 (ウ)上記(ア)及び(イ)の保護者原告らの精神的損害は計り知れず,その損害額は1人当たり20万円を下ることはない。 (エ)児童原告は,本件民営化により,幼児返りをする,保育所を脱走する,大怪我をする,病気になる,チック症状を繰り返しトラウマになる,将来の精神的よりどころを失う,などの多大な損害を被った。 (オ)上記(エ)の事実は,児童原告らの保育所選択権を侵害し,また安定した保育を受ける権利をも侵害するものであって,その損害額は児童原告1人当たり20万円を下らない。 【被告の主張】ア原告らは,本件民営化により,多大な精神的損害を被ったとして,被告に対し,国家賠償請求をしている。 しかし,既に述べたとおり,本件で原告らが主張する保育所選択権等の権利ないし利益といったものに法的な権利性を承認し得る余地はなく,国家賠償請求の違法性を基礎づける程度の権利侵害自体がない。 - 47 -また,本件4園の廃止が「公の施設」の廃止に該当し,裁量権の逸脱,濫用がない限りは違法の評価を受けないこと, 得る余地はなく,国家賠償請求の違法性を基礎づける程度の権利侵害自体がない。 - 47 -また,本件4園の廃止が「公の施設」の廃止に該当し,裁量権の逸脱,濫用がない限りは違法の評価を受けないこと,本件4園の廃止が裁量権の逸脱,濫用とはならないこと,その廃止手続に児童福祉法上の手続違反もないことも既に述べたとおりであり,被告の執った措置にいずれの意味においても違法な点はない。 イ原告らは,本件4園の廃止の違法を基礎づける間接事実などとして,本件民営化後の状況等を盛んに述べているが,これらの事項は,以下のように不正確なものが多く,いずれにしても本件4園廃止の違法性を基礎づける事情とはなり得ない。 (ア)原告らは,民営化後の本件各新保育所において,児童の怪我等が大幅に増加したかのように主張している。 原告らの上記主張は,情報公開により被告から開示を受けた民営化前後の事故報告書の件数の比較によるものであるが,この事故報告書のみをもって民営化前の事故件数とするのは適当ではない。すなわち,民営化前には,被告は,事故報告書のほか,独立行政法人スポーツ振興センターの災害共済給付制度の共済給付の対象となる事故についての災害報告書を各保育所から提出させており(乙37号証),事故報告書は各保育所の園長の判断で備忘録的な意味合いで作成していたに過ぎない(乙31号証,証人丁)。したがって,民営化前の事故件数のことをいうのであれば,事故報告書のみならず,かかる災害報告書の件数をも考慮に入れなければならない。また,民営化後に提出された事故報告書の中には,民営化前であれば保育所内で対処し事故報告書の作成にまで至らなかった件数も含まれている(乙31号証,証人丁)。これらの事情を考慮すれば,本件各新保育所において,民営化前と比べて,児童の事故件数が大幅に増加した れば保育所内で対処し事故報告書の作成にまで至らなかった件数も含まれている(乙31号証,証人丁)。これらの事情を考慮すれば,本件各新保育所において,民営化前と比べて,児童の事故件数が大幅に増加したなどとはいえないことは明らかである。 - 48 -(イ)その他の民営化後の本件各新保育所の状況に関する原告らの主張は,事実に反するもの,民営化と因果関係がないもの,民営化直後に生じた事象でその後改善がなされているもの,一部で生じている事象を殊更一般化しようとするものなどが殆どである(乙32号証)。 そして,原告らが述べる保護者アンケートの集計結果は本件各新保育所の大半の保護者の意見を反映しているものではない。例えば,甲105号証のアンケートの回答者数は約130世帯のうち47件に過ぎないのであり,民営化後の移管先法人の保育内容を評価する保護者の意見等も相当数存在する。 第3争点に対する判断 争点1(本件改正条例制定の処分性)について(1)ア本件改正条例が制定され,本件条例1条2項に基づき被告が設置する保育所を定めている別表から本件4園の記載が削除されたことにより,本件4園が平成16年3月末日をもって廃止されたことは当事者間に争いがなく,原告らの請求の第1は,このような本件改正条例の制定を行政事件訴訟法3条2項所定の「処分」ととらえて,その取消しを求めるものである。 イところで,条例の制定は,通常は,一般的,抽象的な法規範を定立する立法作用としての性質を有するものであり,原則として個人の権利義務に直接の効果を及ぼすものではないから,それ自体が抗告訴訟の対象である上記行政事件訴訟法3条2項所定の「処分」に該当するものとは解されない。 もっとも,条例という形式によるものではあっても,他に行政庁による具体的な処分を待つまでもなく,それ自体 抗告訴訟の対象である上記行政事件訴訟法3条2項所定の「処分」に該当するものとは解されない。 もっとも,条例という形式によるものではあっても,他に行政庁による具体的な処分を待つまでもなく,それ自体によって,その適用を受ける特定の個人の権利義務や法的地位に直接の影響を及ぼす場合には,例外的に- 49 -当該条例の制定行為をもって処分と解するのが相当である場合のあることも否定できない。そこで,本件改正条例の制定が上記処分に該当するか否かについては,本件改正条例の制定という行為が,他に行政庁による具体的な処分を待つまでもなく,その適用を受ける特定の個人の権利義務や法的地位に直接の影響を及ぼすものであるか否かの検討を要することになる。 ウ原告らも,基本的には上記と同様の見地に立って,本件改正条例の制定「保育所選択権」,「保育所において保育を受は,原告らの児童原告らの保護者原告らの「手続上の権利」を直接侵害すると主張しける権利」及びているので,以下,順次これらの点について検討する。 なお,前記第2,1に認定したところから明らかなように,本件改正条例の制定は,被告の掲げた市立保育所の民営化(本件民営化)という方針に沿って,その一環として本件4園を廃止するというものであって,被告の計画としては,上記4園の廃止後,新たに認可された社会福祉法人等によって当該保育所の運営が引き継がれることを当然の前提としていたものであるが,本件改正条例自体は本件4園を廃止するとの効果しか有しないのであるから,以下のことは,このようなものとしての本件改正条例を検討するものである。 (2)ア原告らの保育所選択権の侵害について「市町村は乳幼児の保育に欠けるところがある場(ア)法24条1項は,合において,保護者から保育の申込みがあつたときは,それらの児童を市 ものである。 (2)ア原告らの保育所選択権の侵害について「市町村は乳幼児の保育に欠けるところがある場(ア)法24条1項は,合において,保護者から保育の申込みがあつたときは,それらの児童を市町村の保育義保育所において保育しなければならない」旨を規定し,務を定めている。 そして,同条の規定をみると,1項において,市町村は,保育に欠ける乳幼児について,保護者からの申込みがあったときは,それらの乳幼児を保育所において保育しなければならないとした上で,2項において,上記申込みは,入所を希望する保育所その他厚生労働省令の定める事項- 50 -を記載した申込書を市町村に提出して行うものと定め,3項において,市町村は,一の保育所について,申込書に係る児童のすべてが入所する場合には当該保育所における適切な保育の実施が困難となることその他のやむを得ない事由がある場合においては,当該保育所に入所する児童を公正な方法で選考することができるとしている。 また,同条4項は,一定の場合に,必要があると認めるときは,市町村は児童の保護者に対し,保育の実施の申込みを勧奨しなければならないことを定め,同条5項において,市町村は,1項に規定する保護者の保育所選択等に資するため,厚生労働省令の定めるところにより,保育所の設置者,設備及び運営の状況等に関する情報の提供を行わなければならないことを定めている。 (イ)上記の点をより子細にみると,法24条2項に規定する申込書の記載内容及び5項に定める提供すべき情報については児童福祉法施行規則24条,25条に定めがあるが,平成9年法改正時に発せられた厚生省児童家庭局長通知「児童福祉法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法令の整備に関する制令等の施行について」(平成9年9月25日児発596号。甲56,124号証)では 9年法改正時に発せられた厚生省児童家庭局長通知「児童福祉法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法令の整備に関する制令等の施行について」(平成9年9月25日児発596号。甲56,124号証)では,この点をより具体的に説明している。上記通達では,「入所者の選考は基本的には保育所に対する申込者が当該保育所の定員を超える場合に行うこととし,入所を希望する保育所への受入れが可能である場合には当該保育所に入所させること」,「市町村は保育の実施を決定した児童ごとに,保護者に対して「保育所入所承諾書」を交付すること」といったことのほか,保育所入所申込書,保育所入所承諾書,保育所入所不承諾通知書等の書式が示されており,上記保育所入所申込書の書式には「保育の実施を希望する期間」欄が設けられ「小学校就学始期に達するまでの4の保育の実施を必要とする理由に該当すると見込まれる期間の範囲内で記入して下さい」と注記され- 51 -ており,保育所入所承諾書には,「申込みのありました保育所への入所について次のとおり承諾します。」とあって,入所する保育所名とともに保育の実施期間が記載されることになっている。 そして,上記通達に示されている扱いは,横浜市保育所保育実施条例施行規則(甲3号証)及び横浜市保育所保育実施事務取扱要領(乙25号証)に基づき,被告においても同様に実施されているものと認められる。上記取扱要領では,保育の実施期間は,小学校に就学するまでの範囲で保護者が希望する期間とするとされている。 (ウ)以上の各規定等からすると,乳幼児は保護者が申し込んだ保育所において保育の実施を受けることになり,選考が行われる場合でも,当該申込みに係る保育所ごとに行われるのであって,保護者が申込みをしていない保育所で保育の実施を受けるということはないことになる。そして おいて保育の実施を受けることになり,選考が行われる場合でも,当該申込みに係る保育所ごとに行われるのであって,保護者が申込みをしていない保育所で保育の実施を受けるということはないことになる。そして,市町村から保育所入所承諾書には,具体的な保育所名とともに,保育の実施期間が記載され,これを承諾するとされるのである。 このような仕組みからすると,法24条は,保護者に対して,その監護する乳幼児にどの保育所で保育の実施を受けさせるかを選択する機会を与え,市町村はその選択を可能な限り尊重すべきものとしていると認められるのであって,この保育所を選択し得るという地位を保護者における法的な利益として保障しているものと解するのが相当である。 (エ)これに対して,被告は,法24条1項は,保育所における保育の実施義務を定めているに過ぎず,平成9年改正法により,保育所入所をめぐる法律関係が,それまでの保護者の申請に基づく市町村の措置(行政処分)から契約関係に変更されたとしても,それは従前の運用を法制化したものであって,原告らが主張する保育所選択権なるものは,法24条が市町村の保育応諾義務を課していることにより事実上享受し得る反射的な利益に過ぎない旨主張する。 - 52 -しかしながら,法24条は,上記改正により現行の2項ないし5項が追加されたものであるが(その後,2項及び4項,5項については改正がある。),それ以前の同条は,市町村が児童の保育に欠けるところがあると認めるときは,当該児童を保育所に入所させて,保育する措置を採らなければならない旨を規定していたところ,平成9年改正法は,前述のように,この保育所の入所関係を保護者からの特定の保育所を指定した申込みに基づくものとし,「保育所に入所させて保育する措置を採保育所において保育しなければなららなければな 平成9年改正法は,前述のように,この保育所の入所関係を保護者からの特定の保育所を指定した申込みに基づくものとし,「保育所に入所させて保育する措置を採保育所において保育しなければなららなければならない」との文言を「市町村はやむを得ない事由のない限りは当該申込ない」と改め,また,みのあった保育所において保育の実施をすることを承諾すべきものとしたのであって,その保護者の選択等に資するために一定の情報提供義務まで定めているのである。被告は,保護者が保育所を選択できるのは,法が市町村に保育応諾義務を課していることの反射的な利益に過ぎないと主張するが,そもそも法がいかなる理由から市町村の応諾義務を定めているかを考えるならば,上記被告の主張は皮相的に過ぎるというべきである。法は,児童の保育を実施する保育所を定めるについて,保護者の選択というものを事実上の参考ということではなく,可能な限り尊重すべきものとして市町村に応諾義務を課したものであり,保護者に保育所選択に関する一定の主体的な地位を認めたものというべきである。 平成9年改正法の趣旨については,国会審議における政府関係者も「市町村の措置による入所の仕組みを,保育所に関する情報の提供に基づき保護者が保育所を選択する仕組みに改め」とか,「保護者の申し込みの権利と市町村のの保育サービス提供義務を法律上位置づけ,市町村との間で契約により保育サービスの提供を受ける権利を有することとした」ものである等と繰り返し説明している(甲45,46号証)し,立法関係者が関与したことがうかがわれる文献にも上記と同趣旨の記載が- 53 -ある(乙24号証)。これらのことも上記の理解に沿うものである。 (オ)以上のことからすれば,法24条は,保護者に対して,その監護する乳幼児が保育の実施を受けるべき保育所を選択し 載が- 53 -ある(乙24号証)。これらのことも上記の理解に沿うものである。 (オ)以上のことからすれば,法24条は,保護者に対して,その監護する乳幼児が保育の実施を受けるべき保育所を選択し得るという地位を一つの法的利益として保障したものと認めるのが相当である。 そして,入所時における保育所の選択は,入所時だけの問題ではなく,その後の一定期間にわたる継続的な保育の実施を当然の前提としたものであるし,入所後に転園や退園を求めるのは自由であるというのでは入所時の選択は空疎なものとなるから,法が入所時における保育所の選択を認めていることは,必然的に入所後における継続的な保育の実施を要請するものということができる。そして,入所に当たっては,前記のとおり,具体的な保育の実施期間を前提として利用関係が設定されるのであるから,この保育期間中に当該選択に係る保育所を廃止することは,このような保護者の有する保育所を選択し得るとの法的利益を侵害するものと評価することができる。 なお,原告らは,児童原告らも保育所選択権を有している旨を主張しているが,既に述べたとおり,保育所を選択し得るという法的利益は法24条に基づいて保護者に対して保障されたものであり,これを児童原告らの権利ということは困難であるから,児童原告らにも保護者原告らと同じ法的利益が保障されているという趣旨とすれば,この主張は採用できない(この点は後記イで検討する。)。 また,保育所入所後の利用関係について,法24条の2項,3項において「申込書」といった表現が用いられ,これに応じる場合には市町村において「保育所入所承諾書」を交付する等とされ,これに沿った運用がされている(甲3号証,123号証,124号証,乙25号証)。また,平成9年の法改正時には「保護者の申し込みの権利と市町村の保育サ において「保育所入所承諾書」を交付する等とされ,これに沿った運用がされている(甲3号証,123号証,124号証,乙25号証)。また,平成9年の法改正時には「保護者の申し込みの権利と市町村の保育サービス提供義務を法律上位置づけ,市町村との間で契約により保育サ- 54 -ービスの提供を受ける権利を有することとした」ものであると説明され(甲46号証の1),立法関係者が関与したことがうかがわれる文献にも同趣旨の記載がある(乙24号証)。 これらのことから,法は入所後の保育所利用関係を保護者と市町村との契約(保育所利用契約)として構成しているようにもみえるし,実務的にはそのような理解に立った運用がされているものといえる。しかしその一方で,保護者からの入所申込みに応じない場合の決定や保育の実施を解除する措置は,いずれも行政処分として運用されており(保育所入所不承諾通知書には異議申立てができる旨が記載される。甲3号証,123号証,124号証),このような運用は一貫しないように思われる。そして,保護者からの申込みに対しては,市町村において,当該児童に保育に欠けるところがあるかどうかの認定や,場合によれば選考も実施し,1年に1回は保育の実施の要件を認定して,その要件が消滅した児童については保育の実施を解除する(乙25号証)ともされている。 このようなことからすれば,保育所入所後の利用関係を直ちに契約関係といい得るかは疑問であるというべきであるから,以下における本案についての検討も含めて,本件改正条例の制定が保護者原告らの契約上の地位を侵害するとの前提での検討は行わないこととする。 「保育所において保育を受ける権利」の侵害についてイ児童原告らの(ア)原告らは,すべての児童は,憲法13条,25条,26条,子どもの権利条約3条及び児童福祉法(第一章 討は行わないこととする。 「保育所において保育を受ける権利」の侵害についてイ児童原告らの(ア)原告らは,すべての児童は,憲法13条,25条,26条,子どもの権利条約3条及び児童福祉法(第一章・総則)に基づき「健全に発展することを保障される権利」を有しており,その中には「保育所において保育を受ける権利」が包摂されているとし,厚生労働省の定める児童福祉施設最低基準や厚生省児童家庭局による「保育所保育指針(児発第799号)」は,この児童の「保育所において保育を受ける権利」の内容児童原告らをなすものである旨主張し,本件改正条例の制定は,これら- 55 -「保育所において保育を受ける権利」を侵害すると主張している。 の規定をみても,これらは,(イ)しかし,原告らの指摘する上記各法令等の児童の福祉や国,地方公共団体の責務等のいずれも抽象的な理念を掲げるものであって,これらの各規定等から直ちに,原告らが主張するような,児童の「保育所において保育を受ける権利」といった具体的な権利ないし法的な利益が保障されいると認めることは困難である。 もっとも,保育所における保育ということについては,児童福祉法が上記総則規定を受けて,その24条1項で,前記のとおり,市町村の保育所における保育義務を定めており,その反面として児童に対して「保育所において保育を受ける権利」を保障しているものと認められる。 (ウ)本件改正条例は,現に原告児童らが保育の実施を受けている保育所を廃止するというものであるから,当該児童らは当該保育所での保育は受けられなくなるが,上記の市町村の義務に照らすならば,そのことは,直ちに当該児童らが保育所における保育が受けられなくなることを意味するものではない(本件でも代替の保育所の設置が想定されている。)し,新たな保育所で行われる保育 村の義務に照らすならば,そのことは,直ちに当該児童らが保育所における保育が受けられなくなることを意味するものではない(本件でも代替の保育所の設置が想定されている。)し,新たな保育所で行われる保育が必然的に保育内容において劣るという根拠もない。 しかしながら,保育所における保育は,一定の保育方針の下における物的設備や人的体制等を前提として実施されるものであり,保護者の協力を含め,これら諸条件がその保育の質を決定づけるものと考えられるところであり,保育所における保育であれば,どの保育所であっても児童が受ける利益は共通,等質であるとはいえない。前述したように,法が保護者に対して保育所の選択を認めているのも保育所により保育の質,内容が異なり得るものであり,その違いに一定の意味があることを前提としているものと解される。そして,児童は,保育の対象であるとともに,その利益を享受する主体であり,保護者による保育所の選択も児童- 56 -が心身ともに健やかに育成されることを旨として行われるべきものであるから(法1ないし3条),現に児童が保護者の選択した特定の保育所で保育の実施を受け,また,将来保育期間中にわたって受け得るという利益は,保護者が保育所を選択したことによる反射的な利益に過ぎないと把握するのは相当でない。そうだとすれば,児童が特定の保育所で保育の実施を受けており,また,将来保育期間中にわたって受け得るという利益は,法的に保護された利益と解するのが相当である。 本件改正条例は,本件4園を廃止するという効果を有するものであり,現に保育の実施を受けている当該保これにより,児童原告らに対して,育所(本件4園)で保育の実施を受けることを不可能とするものであるから,上述した児童の特定の保育所において保育の実施を受けるという法的利益を侵害するもの いる当該保これにより,児童原告らに対して,育所(本件4園)で保育の実施を受けることを不可能とするものであるから,上述した児童の特定の保育所において保育の実施を受けるという法的利益を侵害するものといえる。 原告らの前記主張は,上記の限度で理由があるものと認められる(エ)(なお,以下においては,上記アで述べた保護者の有する保育所を選択し得るとの利益と上記の入所中の児童が当該保育所において保育の実施を受け得るとの利益を併せて,「児童及び保護者の特定の保育所で保育の実施を受ける利益」という。)。 ウ保護者原告らの「手続上の権利」について(ア)原告らは,保育環境に大きな変化を生じさせる場合には事前に保護者に対する説明とその納得を得ることが必要であり,本件改正条例の制定により本件4園を廃止することは,①保護者原告らの上記手続上の権利を侵害するものであり,②殊に,本件改正条例の制定による本件保育の実施の解除」に該当するか4園の廃止は法33条の4に定める「ら,本件改正条例の制定は,同条に定める保護者に対する説明及び保護者からの意見聴取という保護者原告らの手続上の権利を侵害すると主張している。 - 57 -平成16年3(イ)しかし,本件改正条例が定めていることは,本件4園を月末日をもって廃止するということであって,そのための手続に関しては何ら規定するものではない。したがって,仮に,原告らが主張しているような手続上の権利というものが認められるとしても,本件改正条例は,その効果として,そのような権利を消滅させたり,その内容を変更する等,その権利自体に何らかの影響を及ぼすものではない。 原告らが上記に主張していることは,条例の制定によって保育所の廃止を定める行為が,一般的にその保護者の手続上の権利を害するということではなく,本件において適 自体に何らかの影響を及ぼすものではない。 原告らが上記に主張していることは,条例の制定によって保育所の廃止を定める行為が,一般的にその保護者の手続上の権利を害するということではなく,本件において適法な手続が行われていないことをいうに過ぎないものと解されるのであって,このような事情があることをもって条例制定行為の処分性が基礎づけられるというのは当を得ない。 したがって,原告らの上記主張は,本件改正条例の制定が処分性を有する根拠としては採用できない。 (ウ)しかし,上記の手続上の権利侵害ということとは別に,原告らが指摘している「保育の実施の解除」ということについてみると,本件改正条例は,本件4園を平成16年3月末日をもって廃止することを定めるものであるから,これが法33条の4に定める保育の実施の解除に当たることは否定できないと思われる(この点,被告は民営化の場合には保育の実施が解除されるわけではない旨主張するが,それは事実上,新たな保育所において引き続き保育が実施されるということに過ぎないのであって,このような場合にいかなる手続が必要かについての議論はあり得ても,本件4園における保育の実施が解除されることを否定し得るものではない。)。 そうだとすれば,法は,保育の実施の解除を行うについては,解除理由を説明し,保護者の意見を聴かなければならないとし(法33条の4),行政手続法12ないし14条の適用がある旨を規定している(法- 58 -33条の5)。このことからすれば,法は保育の実施の解除をもって不利益処分と位置づけていることは明らかであって,この点からも本件改正条例の処分性は裏付けられるというべきである。 エ本件改正条例制定の処分性についてのまとめ上記アないしウで検討したとおり,児童及び保護者の特定の保育所で保育の実施を受ける利益は の点からも本件改正条例の処分性は裏付けられるというべきである。 エ本件改正条例制定の処分性についてのまとめ上記アないしウで検討したとおり,児童及び保護者の特定の保育所で保育の実施を受ける利益は,いずれも法律上保護された利益であり,本件改正条例の制定は,このような利益を他に行政庁による具体的な処分によることなく,必然的に侵害するものである。また,本件改正条例は本件4園における保育の実施を解除するものであり,法はこれを不利益処分と位置づけていると解される。 これらのことからすると,本件改正条例の制定は,行政事件訴訟法3条2項所定の「処分」に該当するものと解するのが相当である。 (3)その他の訴訟要件についてア児童原告らは,本件改正条例の制定によって,本件4園の中で自らが保育の実施を受けていた保育所における保育の実施を受ける利益を害された旨を主張するものであるから,そのうちで,未だ保育期間が満了していない児童原告らは本件改正条例の制定の取消しを求めるについて,原告適格及び訴えの利益を有するといえる。他方,既に保育期間が満了した児童原告らは,本件改正条例を取り消しても,本件4園のいずれかにおいて保育の実施を受ける地位を回復することにはならないし,その他,同条例制定の取消しを求める法的利益があるとも認められないから,その訴えの利益は既に失われたものといわなければならない。 別紙原告目録2(2)に記載の児童原告らは,上記の理由で訴えの利益を有しないものと認められるから,これら児童原告らの本件改正条例制定の取消しを求める訴えは不適法である。 イ保護者原告らのうち,現時点で未だその監護する児童の保育期間が満了- 59 -していない者(複数の児童のうち,1人でも保育期間が経過していない児童のいる者を除く。)は,本件改正条例の制定の取消しを求 護者原告らのうち,現時点で未だその監護する児童の保育期間が満了- 59 -していない者(複数の児童のうち,1人でも保育期間が経過していない児童のいる者を除く。)は,本件改正条例の制定の取消しを求めるについて,原告適格及び訴えの利益を有するといえる(これらの保護者原告らの中には配偶者の名義により入所の申込みし,被告からの承諾があった者が含まれているが,この場合には夫婦協議の上で保育所を選択したものと推認すべきであるから,これに該当する保護者原告らについても原告適格及び訴えの利益があるものと認めるのが相当である。)。 そして,保護者原告らのうち,既にその監護する児童の保育期間が経過した者については,本件改正条例を取り消しても,当該児童が本件4園のいずれかにおいて保育の実施を受ける地位を回復することにはならないし,その他,同条例制定の取消しを求める法的利益があるとも認められないから,その訴えの利益は既に失われたものというべきである。 別紙原告目録1(2)に記載の保護者原告らは,上記の理由で訴えの利益を有しないものと認められるから,これら保護者原告らの本件改正条例制定の取消しを求める訴えは不適法である。 (4)本件改正条例制定の取消しを求める訴えの適法性についてのまとめ以上の次第であるから,本件改正条例制定の取消を求める訴えは,別紙原告目録1及び2の各(1)記載の原告らが提起した訴えとしては適法であり,その余の原告らの訴えとしては不適法である。 争点2(本件改正条例制定の違法性)について次いで,前記1でその訴えが適法と判断された原告らの主張に基づいて,本件改正条例制定の違法性について検討する(本項で「原告ら」とあるのは上記原告らの趣旨である。)。 (1)本件4園の廃止と原告らの利益の侵害との関係ア本件4園は,被告が設置し,運営して づいて,本件改正条例制定の違法性について検討する(本項で「原告ら」とあるのは上記原告らの趣旨である。)。 (1)本件4園の廃止と原告らの利益の侵害との関係ア本件4園は,被告が設置し,運営していた保育所であるから,地方自治法244条にいう「住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供する- 60 -ための施設」,すなわち「公の施設」に該当する。このような公の施設を廃止することについては同法244条の2がその手続を規定しているほかは同法上に特段の制限規定はない。 また,児童福祉法においても,35条6項が「市町村は,児童福祉施設を廃止しようとするときは,その廃止の1月前までに,厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に届け出なければならない。」と規定して,児童福祉施設が廃止される場合のあることを当然の前提としているが,その廃止を制約する事由等についての明文の規定は置かれていない。そして,上記35条6項の規定を受けた同法施行規則38条1項は「法第35条第6項に規定する命令で定める事項は,次のとおりとする。」として,その2号において「入所させている者の処置」を挙げているから,児童福祉法は入所者がいる児童福祉施設の廃止を予定しているものともいえる。 イ他方,前述したように,法は,児童及び保護者の特定の保育所で保育の実施を受ける利益を法的な利益として尊重すべきことを規定しているものと解される。したがって,これらの利益を侵害し得ないものと考えるならば,市町村は,入所児童の保護者の同意が得られない限りは,その設置する保育所を廃止することはできないということになるが,上記諸利益の保障を,そこまで絶対的なものと解するのが適切かは疑問なしとしない。上記の児童及び保護者の各利益は,平成9年改正法において認められるに至ったものであるが,これらの利益が保 ことになるが,上記諸利益の保障を,そこまで絶対的なものと解するのが適切かは疑問なしとしない。上記の児童及び保護者の各利益は,平成9年改正法において認められるに至ったものであるが,これらの利益が保育所の廃止をも制約する絶対的なものであることを明示した規定は存しない。また,本件中には,これらの関係について立法段階でどのように考えられていたかを示す的確な証拠はないが,上記法改正時に児童福祉施設の廃止を定める法35条6項について特段の検討がされたような形跡はない。一定の利益を保障する以上は,それができ得る限り尊重されるべきは当然としても,公の施設であるからには,基本的には住民全体の利益に沿う利用がされるべきであり,保育所の- 61 -利用は長ければ6年間にも及び,その間には選択された当該保育所を取り巻く諸情勢に変化が生じることも避け難いし,もともと入所時に定める保育期間も当該時点における見込みという性質を有するものである。市町村の有する限られた資産等の有効利用ということを考えると,保護者が入所時にする保育所の選択や当該保育所において保育の実施を受ける利益というものを当該保育所の廃止についての絶対的制約事由とまで解することは相当でない。 エ以上のことからすれば,市町村の設置する保育所の廃止については,設置者の政策的な裁量判断にゆだねられているものと解するのが相当であり,これら児童や保護者の同意が得られない限りその廃止が違法となるとまでは解し得ない。 (2)本件4園の廃止に係る被告の裁量権について上記のとおり,市町村が設置している保育所の廃止についての判断は,ア保育所を取り巻く諸事情を総合的に考慮した上での当該市町村の政策的な裁量判断にゆだねられているものと解される。 もっとも,一応上記のようにいえるとしても,保育所廃止に係る判断は, ついての判断は,ア保育所を取り巻く諸事情を総合的に考慮した上での当該市町村の政策的な裁量判断にゆだねられているものと解される。 もっとも,一応上記のようにいえるとしても,保育所廃止に係る判断は,もとより無制約に許容されるわけではないのであり,当該施設が保育所であるという施設の性質や入所中の児童や保護者の前記利益が尊重されるべきことを踏まえた上で,その廃止の目的,必要性,これによって利用者の被る不利益の内容,性質,程度等の諸事情を総合的に考慮した合理的なものでなければならないことは当然である。 被告は,公の施設の廃止は当該地方公共団体の広範な裁量にゆだねられイているから,その目的や内容において,一見して著しく不合理であることが明白で裁量権の逸脱,濫用となるような場合を除き,違法の評価を受けることはないと主張する。 しかし,公の施設といっても種々のものがあり,その廃止による利害も- 62 -様々であることからすれば,「公の施設」というだけで,一律にそのように論じることは相当でない。 これを保育所の廃止ということについてみれば,その保育所としての性質からして,利用者の日々の生活と密接に結びついており,長期間にわたる継続的な利用関係が想定されていること,その廃止が利用者に与える影響は,児童及び保護者のいずれに対しても,一般的には深刻なものがあると考えられること,法は市町村に対して必要な保育所の設置義務を定めていること(24条),そして,再三述べるように,法は,児童及び保護者の特定の保育所で保育の実施を受ける利益利益を尊重すべきものとしていること等のことが挙げられるのであり,これらの点にかんがみるならば,その廃止について被告が主張するように市町村の広範な裁量にゆだねられているとは解し得ない。 (3)そこで,以下においては,上述したとこ と等のことが挙げられるのであり,これらの点にかんがみるならば,その廃止について被告が主張するように市町村の広範な裁量にゆだねられているとは解し得ない。 (3)そこで,以下においては,上述したところに従い,本件4園を廃止するとの本件改正条例の制定が被告の有する裁量権の範囲を逸脱,濫用したものであるかどうかについて検討する。 そして,上記の点は,本件改正条例の制定を処分とみて,その裁量権の逸脱,濫用を検討するものであるから,その判断は,当該行為がされた時点,すなわち本件改正条例が横浜市会で可決された平成15年12月18日の時点を基準とし,その時点での事実関係及びその時点で予測し得た諸事情を前提として検討することになる(原告らは本件改正条例制定後の事情についても多岐にわたる主張をしているが,上記の限度で検討の対象となるものというべきである。)。 (4)本件民営化公表までの経緯ア背景事情(乙2号証,30号証,証人丙)(ア)横浜市における保育所は,昭和30年代には民間のものが圧倒的に多かったが(昭和41年で,公立13施設・定員861人,民間57施- 63 -設・定員4625人),その後の人口増加にもかかわらず民間保育所の進出は少なく,公立保育所(ほとんどが市立保育所)を中心として保育所の整備が進められてきた(昭和50年で,公立62施設・定員4285人,民間85施設・定員8411人。昭和60年で,公立121施設・定員9310人,民間107施設・定員1万1102人。平成10年で,公立124施設・定員1万0268人,民間103施設・定員1万0801人)。 (イ)このような中で,保育所への入所申込者は平成2年以降増加傾向にあったが,被告ではこれに応じ切れず,いわゆる待機児童が多数発生した。また,女性の就労形態や保護者の子育てに対する意識 01人)。 (イ)このような中で,保育所への入所申込者は平成2年以降増加傾向にあったが,被告ではこれに応じ切れず,いわゆる待機児童が多数発生した。また,女性の就労形態や保護者の子育てに対する意識も変化し,延長保育などの多様な保育サービスが求められるようにもなった。 一方,被告の財政状況は,一般会計の予算規模が平成11年度から5年連続で前年度を下回り,今後急速に回復することは見込めない状況にあったため,限られた予算の中で,上記の課題を克服していく必要があった。 (ウ)被告では,上記待機児童の解消に向けて,平成9年度から「緊急保育計画」,平成13年度から「よこはま子育て支援計画」を進め,かなりの数の待機児童を解消したが,それでも1000人を越える,全国的にも高水準の待機児童が存在するため,平成14年度からは市の総合計画である「中期政策プラン」の中で,平成18年4月1日の保育所待機児童数ゼロを目標とした保育所等整備計画が策定された。 これらの政策は,基本的には,市有地を無償貸与する等して民間保育所の設置を誘導するもので,その結果,同市における民間保育所の数は,平成10年の103施設(定員1万0801人)から,平成11年には106施設(同1万1130人),平成12年には111施設(同1万1714人),平成13年には120施設(同1万2172人),平成- 64 -14年には131施設(同1万3367人),平成15年には140施設(1万4225人)と顕著に増加した。 イ本件意見具申とその後の経過「保育サービスの(ア)上記アのような状況下で,平成14年6月以降,充実に向けて保育所のあり方と行政の役割はどうあるべきか」について平成15年2月28日に横浜市審議していた横浜市児童福祉審議会は,長に対して(甲34号証,乙2号証)。 本件意 成14年6月以降,充実に向けて保育所のあり方と行政の役割はどうあるべきか」について平成15年2月28日に横浜市審議していた横浜市児童福祉審議会は,長に対して(甲34号証,乙2号証)。 本件意見具申をした本件意見具申では,幾つかの検討事項の中の一つとして,保育所における主な保育サービスの実施状況等について公立保育所(その大部分は市立保育所)と民間保育所の現状が比較され,①延長保育については,18時30分を超えて開所しているのは公立保育所の17%,民間保育所の73%であり,公立保育所では平成14年度から20か所で(全部で127か所)朝,夕の保育時間を30分ずつ拡大して7時から19時まで開所することになったが,民間保育所では40%が19時を超えて開所し,21時まで開所している園もあること,②一時保育の実施率は,公立保育所では0%であるが民間保育所では32%となっていること,③障害児保育は,公立保育所では全園が実施しているが民間保育所では42%に止まること等のことを踏まえて,障害児保育や地域活動のように公立保育所が積極的に取り組んでいる保育サービスもあるが,民間保育所は公立保育所と比べて相対的に多様な保育ニーズに応えていると報告されている。 また,保育需要への柔軟な対応という観点から入所率(入所者数を定員で除したもの)の比較がされ,公立保育所では98.3%,民間保育所では105.2%であるとした上で,民間保育所の方が柔軟な対応がされているとの指摘もあり,さらに運営経費の比較では,定員120人規模の保育所でモデル的に計算すると,民間保育所は公立保育所に比べ- 65 -て運営経費が17%下回っていると報告されている。 本件意見具申は,上記のような分析を踏まえ,今後被告では待機児童の解消に向けた定員拡大や多様な保育ニーズに応えていく必要 立保育所に比べ- 65 -て運営経費が17%下回っていると報告されている。 本件意見具申は,上記のような分析を踏まえ,今後被告では待機児童の解消に向けた定員拡大や多様な保育ニーズに応えていく必要があるが,これまでのような税収の増加は見込めないとし,その方策として,「民間施設で十分対応が可能な場合は,漸次民営化していくべきであり,公立保育所についても民営化を進めていくことが必要である。」と述べている。 (イ)本件意見具申を受けて間もなくの平成15年4月23日,被告は重点保育施策(乙3の1)を作成し,公表した。 この重点保育施策では,大きな施策目標として,①多様な保育ニーズに応えるサービスの展開,②保育の質の向上,③市立保育所の民営化,④障害児保育の全園展開の4項目が挙げられている。そのうちの一つである「市立保育所の民営化」については,(ア) 延長保育や一時保育など様々な保育ニーズが要望されていることから,地域で求められる保育ニーズに柔軟に対応することを目的として,市立保育園の民営化を進めること,(イ) 移管先の法人については,学識経験者,市民代表者等からなる移管法人選考委員会(仮称)により,保育目標及び保育内容等を選考項目として総合的に考慮して決定すること,(ウ) 移管条件として,移管される市立保育園で実施している保育内容及び新たな保育サービスの実施を義務付けること等のことが説明され,(エ) 民営化の計画及びスケジュールとして,平成16年4月から実施するものとし,初年度に民営化を実施する保育所として既に本件4園が示されていた。 (5)本件改正条例が可決された平成15年12月18日ころまでの状況ア保護者との関係について(ア)被告は,前記重点保育施策で本件民営化の方針を明らかにした後,福祉局長名義で,本件4園に入所している児童 件改正条例が可決された平成15年12月18日ころまでの状況ア保護者との関係について(ア)被告は,前記重点保育施策で本件民営化の方針を明らかにした後,福祉局長名義で,本件4園に入所している児童の保護者らに対し,当該- 66 -各保育所を平成16年4月1日から民営化するとの方針を通知する平成15年4月23日付け文書(甲7号証,乙23号証の1)を送付した。 その上で,被告は,丸山台保育園及び鶴ヶ峰保育園については同月25日に,岸根保育園については同月26日に,柿の木台保育園については同年5月10日に,それぞれ各保護者らに対する第1回目の説明会を実施し,その後も,本件4園の民営化について,合計11回にわたって保護者説明会を実施した(甲12号証,96号証の2,乙30号証,証人丙)。 上記説明会では,いずれの保育所でもほぼ共通して,保護者らから本件民営化を決定する前に保護者の意見を聴かなかったことや本件民営化の決定が唐突に過ぎる等の不満や本件民営化に対する不安,実施まで時間的余裕がないことに対する危惧等が述べられた。 上記保護者説明会での質疑等をより具体的にみると,保護者からは,①本件民営化を決定する前に保護者の意見を聴くべきではなかったのか,本件民営化の話は唐突にすぎる,②本件民営化の計画は保護者らの反対によって変更されることがあるのか,民営化の時期を少し先にすべきである,③本件民営化の理由や本件4園を対象に選んだ理由を明確に説明すべきである,④市立の保育所のままでは多様な保育ニーズに応えられない理由は何か,⑤被告は,保育ニーズを把握しているのか,⑥現在本件4園で行われている保育の内容は引き継がれるのか,障害児保育について問題は生じないのか,⑦平成16年1月から3月に共同保育を実施するというのでは,時期的にも期間的にも不適切,不十分 か,⑥現在本件4園で行われている保育の内容は引き継がれるのか,障害児保育について問題は生じないのか,⑦平成16年1月から3月に共同保育を実施するというのでは,時期的にも期間的にも不適切,不十分ではないか,同じ横浜市内にある笹山保育園は6年かけて民営化しているが,参考にすべきではないか,⑧児童に悪影響が出ないことを最優先に考えて欲しい,といった意見が述べられている。 これに対して,被告の担当者は,上記の質疑等にほぼ対応するものと- 67 -して,①本件民営化は本件意見具申を受けた上でのものである,②保護者の意見も踏まえて進めていくが,本件民営化の実施時期を変更する被告としては本件民営化は決定事項であるが,最ことは考えていない,③本件民営化の目的は多様な終的には市会の判断によることになる,保育ニーズに応えるためである,本件4園を選定した理由は重点保育施待機児童の問題は,平成18年までに策に説明してあるとおりである,なくするということで,本件民営化ではなく,別途,保育所の整備,新④市立保育所では均一的なサービスが要請される設で対応していく,等のことから,柔軟,迅速な対応に欠ける面がある,民営化で対応する平成14年4月から24時方法が最良と判断した,⑤保育ニーズは,間緊急保育事業を行うについて無作為抽出により2400人からアンケート調査を行ったほか,市長への要望の手紙等によって把握している,⑥移管先の社会福祉法人には保育水準を下げないような移管条件を付ける,移管後には園長経験者等の保育士の資格を有する者に定期的に巡回してもらい,指導するというシステムを作る,スケジュールとし⑦ては,平成15年8月に移管先の法人の募集を開始し,10月に決定して,そこから引き継ぎを開始し,平成16年の1月から3月の期間を共同保育の期間とする するというシステムを作る,スケジュールとし⑦ては,平成15年8月に移管先の法人の募集を開始し,10月に決定して,そこから引き継ぎを開始し,平成16年の1月から3月の期間を共同保育の期間とすることを考えている,民営化した他の市町村に赴いて,移管先の園長から聴取り等の調査をし,3か月の引継期間で可能と判断した,今後,専門家である保育士を調査に赴かせ,保護者からも意見を聴取する予定である,共同保育の開始時期を前倒しすることは考え得る,重点保育施策に定めた施策内容を全体としてみれば,何年もかけて実行していくのでは遅すぎ,1年で実行するのが適当と判断した,笹山保育園の場合は,他の市町村における民営化と比べても例外的である,⑧本件民営化により児童に何の影響もないとは考えていないが,なるべくデメリットが生じないように措置していく,等と答えている(甲12号- 68 -証,96号証の2)。 (イ)上記保護者説明会と並行して,被告は上記平成15年4月23日付け福祉局長名義の文書(甲7号証,乙23号証の1)のほか,同局長名で合計10通の書面(甲8号証,乙23号証の2ないし11)を保護者に送付して,その中で被告の財政状況,社会福祉法人に対する移管条件,移管先社会福祉法人の選考状況,移管先社会福祉法人の概要,引き継ぎのための共同保育の予定,保護者・移管先法人・市立保育所(被告福祉局を含む。)から成る三者協議会設置の提案,本件改正条例が可決され,本件民営化が正式に決定されたこと等を説明したほか,「民間移管についてのQ&A」といった冊子も同封して本件民営化についての理解を求めた。 (ウ)一方,本件4園に児童を入所させてる保護者らの多くは,被告が本件民営化を押し進めていることに対して,各保育所で本件民営化問題の対策委員会を設置する等して本件民営化に対 いての理解を求めた。 (ウ)一方,本件4園に児童を入所させてる保護者らの多くは,被告が本件民営化を押し進めていることに対して,各保育所で本件民営化問題の対策委員会を設置する等して本件民営化に対する取り組みを開始した。 そして,平成15年7月中旬には本件4園での第2回目ないし3回目の保護者説明会が予定されていたが,保護者らは,同月7日に横浜市長に対してした陳情への回答が示された後に開催してほしい旨を要望し,いずれの説明会にも出席しなかった(甲22号証,23号証,24号証の1・2,25号証,26号証,65号証,83ないし85号証,96号証の2,112号証,乙23号証の2,3,30号証,証人丙)。 被告は,上記保護者らの対応を「説明会開催を拒否している」と評し,その旨を公表した(甲104号証,原告E)。 平成15年9月13日には柿の木台保育園で保護者説明会(原告らのいう「話し合い」)が開催されたが,被告のそれまでの対応の是非をめぐって紛糾し,せっかく他の市町村で行われた民営化の実情調査に赴いた保育士(園長)らも出席していたが,その説明を聞くような建設的な- 69 -場とはならなかった。この保護者説明会は夜を徹して行われた(甲96号証の2)。 また,被告は,平成15年8月ころから,移管先法人が決定した後に共同保育の課題や移管先法人への要望等を協議する場として,被告,移管先法人及び保護者の三者から成る三者協議会の設置を呼びかけていたが(乙23号証の4,5),この点は互いの信頼関係が構築されず実現しなかった。 (エ)以上の保護者との関係をみると,以下の点が指摘できる。 a被告の担当者は,保護者らの疑問等に対して根気強く,丁寧に応えているが,平成16年4月1日をもって本件4園を民営化するとの方針を変更することはないとの前提であるために,これ 下の点が指摘できる。 a被告の担当者は,保護者らの疑問等に対して根気強く,丁寧に応えているが,平成16年4月1日をもって本件4園を民営化するとの方針を変更することはないとの前提であるために,これらの説明は,結局のところ被告の上記方針を了解して欲しいということに尽きており,保護者らがこの点を了解しない限りは,それ以上の建設的な話し合いは困難であった。 b保護者説明会では,何故本件民営化を行うのかという点が一つの焦点となっているが,この点について,被告担当者は,多様な保育ニーズに応えるためであり,市立の保育所のままでは柔軟な対応に欠け,困難である旨を説明しているが,必ずしも保護者らの納得は得られていない。 c保護者説明会でもう一つの焦点であった本件民営化の時期についても,「子どもの成長を考慮すると,現在必要な保育サービスは素早く提供しなければならない」といった説明が繰り返され,他の民営化した市町村の例からも「3か月間の引き継ぎ」で支障はない旨が説明されているが,これらの点についても保護者らの納得は得られていない。 殊に,上記引継期間の点については,被告の担当者らが民営化した保育所の関係者(行政,園長,保護者)からの聞き取り調査を行ったと- 70 -されているが,その調査結果が具体的に説明されているわけではない。 d保護者にとって本件民営化は突然の話であり,既に決定したこととして説明されているだけに反発も強く,被告との間で感情的な対立にまで至っている。一連の経緯に照らしてみると,このような結果になったことについて一概に保護者を非難することはできない。 イ移管先法人の選定等について(ア)被告は本件民営化を推進するため,平成15年7月1日,法人選考委員会を設置して市立保育所を民間の法人に移管する際の条件等について協議し,移管のた はできない。 イ移管先法人の選定等について(ア)被告は本件民営化を推進するため,平成15年7月1日,法人選考委員会を設置して市立保育所を民間の法人に移管する際の条件等について協議し,移管のための条件を決定した(乙10号証)。 「横浜市立保育所の移管を受ける社会福祉法人募集要項」によれば,移管の対象となる保育所は本件4園であり,平成16年4月1日を移管期日とし,保育所建物は有償譲渡,保育所備品は無償譲渡,保育所用地は無償貸与とされ,条件として,①移管保育所の定員構成,受け入れ年齢,年間行事等を継承すること,②一定の受け入れ児童数枠を確保した障害児保育を実施すること,③日曜日,祝日,12月29日ないし1月3日以外は休園しないこと,④幼児の主食代・延長保育サービスの実施に伴う夕食代等の被告があらかじめ認めた実費徴収以外の費用負担を保護者に求めないこと,⑤入所児童数に応じて,被告が定めた法外基準に基づく保育士等を確保するとともに,一定の経験のある保育士等を確保すること,⑥幼児に対する主食の提供,延長保育サービス(午前7時から午後8時)の実施及び一時保育を従前の保育内容に上乗せして実施すること,⑦被告が指定する引継期間において,当該保育所に勤務する職員(保育士等)を配置できること,⑧三者協議会に参加すること,等のことが定められていた(乙10号証)。 (イ)次いで,被告は,同年9月から社会福祉法人に対する説明会を開催して,移管先社会福祉法人の募集を開始し,同年11月17日,17の- 71 -社会福祉法人からの応募があった中で,法人選考委員会による選考を経て,本件各社会福祉法人を移管先として選定した(甲8号証,乙23号証の6・8,証人丙)。 (ウ)上記の移管先法人の選定手続,移管条件及び結果として選定された社会福祉法人については,本件 る選考を経て,本件各社会福祉法人を移管先として選定した(甲8号証,乙23号証の6・8,証人丙)。 (ウ)上記の移管先法人の選定手続,移管条件及び結果として選定された社会福祉法人については,本件証拠上特段の問題があったとは認められない。 ウ本件改正条例の制定について同年12月5日に,横浜市長は横浜市議会に本件条例の一部を改正する条例案を提出し,同月18日に本件改正条例が可決されて,本件4園は平成16年3月末日をもって,被告の設置する保育所としては廃止されることとなった(甲11号証)。 エ上記の経過にかんがみると,被告は,移管先の法人を選定する等して平成16年4月1日の本件民営化に向け着々と準備を進めてきたということができる。 しかし,その一方で,本件改正条例が制定された時点でもなお,本件民営化については保護者の大方の納得が得られたとはいい難い状況であったといわざるを得ない。前記アで述べたとおり,保護者説明会における状況をみても,長時間に及んでいるものも少なくなく,中には夜を徹して行われたものも見受けられるし,福祉局長名義の書面も多数回にわたっており,被告の担当者は,その時点,時点において可能な説明は尽くしていたものといえる。しかし,被告の説明は,あくまで平成16年4月に本件民営化を実施するという前提でのものであるから,これに疑問,不安を抱いている保護者との間で,同じ土俵の上に立った建設的な話し合いは困難であったというほかはないし,その疑問,不安を解消させるだけの具体性のある説明がされていたともいい難い。 本件民営化の目的について(6)- 72 -ア原告らは,本件民営化の原因は被告の財政問題にあると主張し,被告は,多様な保育ニーズに応えることが目的であり,財政問題の解決は主たる目的ではない旨主張している。 イ本件民営化 )- 72 -ア原告らは,本件民営化の原因は被告の財政問題にあると主張し,被告は,多様な保育ニーズに応えることが目的であり,財政問題の解決は主たる目的ではない旨主張している。 イ本件民営化は,前述のとおり,本件意見具申を受けて公表されたものである。 本件意見具申は,児童福祉等に造詣の深い委員が,9回にわたる保育部会と4回の総会を経て行った提言であり,被告にとって重く受け止めるべき性質,内容のものであったと認められる。 「次世代育成支援施策の在り方に関するそして,厚生労働省が所管する研究会」の平成15年8月7日付けの提言(乙4号証)でも「運営の効率「私営保育所の方が延長保育等の特別保育の実施率が高化」という項目でいなど利用世帯の多様なニーズに応えている一方で,公営保育所は,多様なニーズへの対応が不十分で,かつ,保育士の年齢が高いこともあって費用がかかるなど費用対効果という面で問題がある。『民ができることは民で』という官民の役割分担の観点を踏まえると,今後とも公設民営形式の推進や公営保育所の民営化など民間活力の導入を進めていくことが適当である。」と報告されている。 公立保育所の民営化ということは,上記のようなことにも徴するならば,保育所における柔軟な対応を推進し,また,運営を効率化する上で考慮すべき一つの施策であったものといえる。 ただ,本件意見具申にしても,上記研究会提言にしても,保育所における柔軟な対応を推進するということだけではなく,保育所の運営の効率化という観点を踏まえて保育所の民営化を提言しているものと認められることからすると,被告が主張しているように,多様な保育ニーズに応えるこ- 73 -とを主たる目的として保育所の民営化を推進するということは若干趣旨が異なるように思われるが,重点保育施策の内容を一般に説明する ると,被告が主張しているように,多様な保育ニーズに応えるこ- 73 -とを主たる目的として保育所の民営化を推進するということは若干趣旨が異なるように思われるが,重点保育施策の内容を一般に説明するために作成されたものと思われる「ヨコハマの保育サービスがさらに充実します」と題する冊子(乙3号証の2)にも,市立保育園の民営化として,その保育内容に関し,移管する園ではこれまでの保育サービスに加え,「保育時間の延長」「一時保育」「幼児への主食の提供」等を新たに行います,といった説明のあることに照らしても,本件民営化において,多様な保育ニーズに応えるという目的があったことは否定できないというべきである。 多様な保育ニーズに応えるためのものではウ(ア)原告らは,本件民営化はなく,被告の財政難を解決するため,あるいは市長の人気取りと独自の全く必要性のないものであった価値観の実現のために行われたもので,と主張している。 (イ)原告らは,上記主張の根拠として種々主張しているが,主要なもの市民の保育ニーズを的確に把握しておらず,結果としては,①被告は的にみても,新たに導入されたサービスはほとんど利用されていないこと,②市立の保育所であっても,多様な保育ニーズに応え得ること,③民営化が待機児童の解消につながるものではないこと,といった点が挙げられる。 本件意見具申でも言及され(ウ)しかしながら,上記①の点については,ている被告が平成14年8月に行った「24時間型緊急一時保育事業モデルのための実態調査」は,2400人を対象にしたアンケート調査であり,1308件の回答が寄せられたというのであるから,これだけをとってみても,被告において市民の保育ニーズについて相応の調査をしていたものといえる。原告らは,同調査は民営化そのもののを調査の対象とした 1308件の回答が寄せられたというのであるから,これだけをとってみても,被告において市民の保育ニーズについて相応の調査をしていたものといえる。原告らは,同調査は民営化そのもののを調査の対象としたものではないと主張するが,だからといって同調査が市民の保- 74 -育ニーズを反映したものでないということはできない。 この調査によれば,最も要望の多かったのは認可保育所の増設・定員増であった(126件,19・7%)が,次いで一時保育・緊急保育の充実(81件,12・7%)があり,その他,病児保育の充実や延長保育・夜間保育の充実といったことにも少なからぬ要望があったことが明らかである。 その他,原告らは,被告が横浜市長に対して寄せられた手紙での要望を整理,集計していなかったとか,既に民営化を実施した他の市町村へ調査に行きながら障害児保育の点を調査していなかった等の点を挙げるが,そのような事実があったとしても,それらのことから本件民営化の目的を推測することには論理の飛躍があるように思われる。 また,本件民営化後の延長保育等の利用状況についても,証人Dや原告Eの供述のみからでは正確なところは把握できないのであり,これらの断片的な供述を基にして本件民営化により利用可能となった保育サービスについて,もともとニーズがなかったと結論づけることはできない。 上記②の点についてみると,市立の保育所のままでも,制度的(エ)次に,には,本件民営化が目的として掲げているような多様な保育ニーズに応えることは不可能ではないと思われる。その意味では,多様な保育ニーズに応えるということと,保育園を民営化するということは論理必然の関係にはない。 この点について被告は,市立の保育所のままで多様な保育ニーズに応えようとすれば,すべての市立保育所で均一なサービスが要請されると いうことと,保育園を民営化するということは論理必然の関係にはない。 この点について被告は,市立の保育所のままで多様な保育ニーズに応えようとすれば,すべての市立保育所で均一なサービスが要請されるといった事情や,予算化等行政上の手続が必要とされるといった事情があって,柔軟な対応は困難である旨を主張しており,保護者説明会等でも同様の説明が繰り返されてきたことが認められる(甲12号証,96号証の2,乙30号証,証人丙)。これらの説明は,一般論としては理解- 75 -できないでもないが,多様な保育ニーズに応えるといっても,それほど臨機の措置が求められているわけでもないから,民営化の計画と同様に,毎年計画的に多様なサービスを行う市立の保育園を増やしていくといった対応がとれない理由としては必ずしも釈然としない。 ただ,一応上記のようにいえるにしても,被告が指摘する上記のような事情を踏まえて,多様な保育ニーズに応えるために民営化を推進するというのも一つの選択肢であって,原告らが主張するように,多様な保育ニーズに応えるためには必ずしも民営化する必要はなかったとしても,そのことから直ちに,本件民営化の目的が多様な保育ニーズに応えるためではなかったとまでいうことはできない。 上記③の点については,被告も本件民営化が待機児童の解消を(オ)また,直接の目的としたものとは説明していない。 むしろ,被告の担当者は,保護者説明会において,被告の保育所行政には二つの大きな柱があり,一つは1000名を超える待機児童の解消であり,他の一つが重点保育施策であるとし,待機児童の問題については,平成18年4月にゼロを目標に,平成15年度に新たに19園を設置する等,新設保育所設置で対応していく計画である旨を説明していることが認められる(甲12号証の1ないし4)。 したがっ 問題については,平成18年4月にゼロを目標に,平成15年度に新たに19園を設置する等,新設保育所設置で対応していく計画である旨を説明していることが認められる(甲12号証の1ないし4)。 したがって,待機児童解消の問題との関連で本件民営化の目的を論じることは当を得ない。 本件民営化の目的(カ)以上のことからすれば,原告らが指摘する点は,多様な保育ニーズに応えることにあったのではないことを裏付けるまがでの事情とは認められない。 エ財政問題について(ア)被告は,本件民営化を推進した目的は財政難の解消といったことではない旨を主張している。 - 76 -(イ)しかしながら,本件意見具申は,被告の財政が大幅な税収増を見込めない状況下にあることを説明し,その一方で,被告には待機児童の解消に向けた定員拡大や多様な保育ニーズに応えていく必要があることを説くものであり,その提言する市立保育所の民営化がこのような被告の財政事情を前提としていることは明らかである。 そして,保護者説明会でも,被告の担当者は本件民営化の背景事情の一つとして被告の財政問題があることを否定してはいないし,具体的に,市立保育園を1園民営化することで被告の財政負担が約3300万円,4園で1億3200万円軽減されるといった説明もしている。また,被告が作成した「民間移管についてのQ&A」(乙23号証の4)には,本件民営化の目的はコスト削減を考えたものではないとしながらも,120人定員の保育所を民営化した場合の運営費は約1億6300万円と試算され,市立の保育所の場合には運営費が1億9640万円であるといった説明がされているし,被告福祉局長が保護者に宛てた平成15年8月8日付け書面(甲23号証の3)には,被告の一般会計が平成11年度から5年連続で前年度を下回っており,現在のサ 640万円であるといった説明がされているし,被告福祉局長が保護者に宛てた平成15年8月8日付け書面(甲23号証の3)には,被告の一般会計が平成11年度から5年連続で前年度を下回っており,現在のサービス水準を維持した場合には平成18年度までの累計で860億円の財源が不足する見通しであることが説明され,待機児童の解消等のために福祉局の予算を増やすことが認められる状況にはないことが述べられている(保護者説明会でも本件民営化により削減された費用が結果的には待機児童解消の費用に回るとの説明がされている。甲12号証の6)。 以上のようなことからすれば,本件民営化が決定された背景事情として上記のような説明にみられる被告の財政問題があったことは明らかというべきである(乙30,証人丙)。 しかしながら,上記財政問題を改善するのが目的で本件民営化が推進されたのかということになると,本件証拠上,この点は定かでないとい- 77 -うほかはないし,事柄の性質からして,あまり一面的に割り切ってとらえることも妥当ではないであろう。むしろ,本件意見具申の趣旨や上記被告関係者の説明に照らすならば,被告においては,上記のような財政事情から予算の増額が望めない中でも,多様な保育ニーズに応える必要があるということで本件民営化を推進したものと考える方が素直な見方というべきである。 なお,上記財政問題の点は,被告においても本件民営化の目的であったと主張しているわけでもないし,保護者に対しても積極的にその旨を説明してきたわけでもないから,本件民営化を正当化する事情としてそれほど重視することは適切でない。その意味で,本件ではかかる事情は背景事情として考慮するにとどめる。 オ以上のことを総合するならば,本件民営化の目的は,被告の置かれた財政状況の中で,多様な保育ニーズに応えて することは適切でない。その意味で,本件ではかかる事情は背景事情として考慮するにとどめる。 オ以上のことを総合するならば,本件民営化の目的は,被告の置かれた財政状況の中で,多様な保育ニーズに応えていくことにあったと認めて差し支えないものと考えられる。 (7)本件民営化の内容ア保育の質の確保について本件改正条例が制定された時点でみれば,移管先法人における保育の質児童福祉施設最の確保については,その設置する本件各新保育所において低基準(昭和23年12月29日厚生省令第63号。乙5号証)の定める法人選考委員会が定めた前記移管条件を満足するもので内容はもとより,あることが当然の前提となっていたものと認められる(乙23号証の3)。 そして,保育環境の面でいえば,保育所の運営主体が変更することによる保育士の入れ替わり等,本件民営化に伴い必然的に生じる変化は避け難いものの,その保育所施設はそのまま移管先法人に譲渡又は貸与される予定であったし,入所児童についても基本的に変更はないものと想定されていたといえる。 - 78 -確かに,保育所を民営化することで経費が節約されるということは,主に人件費の減少を意味していると考えられるから,移管後の保育所において保育士等の若年化が進むであろうことは容易に想定できるが,移管条件として,被告の法外基準に基づく職員数を確保することや,一定の経験を有する保育士を一定割合確保することが定められていることからすれば,この点を格別に憂慮しなければならない状況であったとは認められない。 したがって,上記のような事情と前記上記移管先法人の選定過程とにかんがみれば,本件改正条例が可決された時点で本件各社会福祉法人による保育の質が具体的に懸念されるような状況があったとは認められない。 イ民営化の時期について(ア)重点 移管先法人の選定過程とにかんがみれば,本件改正条例が可決された時点で本件各社会福祉法人による保育の質が具体的に懸念されるような状況があったとは認められない。 イ民営化の時期について(ア)重点保育施策を公表した時点から被告は,平成15年4月23日に平成16年4月1日に本件民営化を実施するとの姿勢を崩して一貫して本件改正条例はこの点を追認したものといえる。 おらず,(イ)被告が本件民営化実施の時期を平成16年4月1日と定めた理由は必ずしも明確ではないが,この点,被告は前記第2,3(2)【被告の主張】イ(イ)のように,子どもの成長の早さを考慮すると,迅速に対応する必要があった旨を主張し,保護者説明会でも同様の説明が繰り返され,福祉局長の送付文書や「民間移管についてのQ&A」(乙23号証の4)でも基本的に同趣旨のことが述べられている。 上記の説明は,必ずしも理解しやすいものではないが,子どもの成長が早いといっても,一人の子どもを対象にしているわけではないのであるから,要するに,必要な施策は早期に行うべきであるという以上のことを述べているとは解されない。 また,平成15年10月3日付け福祉局長名義の書面(乙23号証の5)には,「市の財政がひっ迫する中で財源の有効活用を直ちに実施することが行政の責務」とあり,上記のように本件民営化の時期を定めた- 79 -については,このような事情もあったものと思われる(証人丙も同旨のことを述べている。)。 (ウ)本件改正条例は,平成15年12月18日の時点で平成16年4月1日を本件民営化の実施時期と定めたわけであるが,この時期は,前記(5)でみたように,移管先の社会福祉法人は既に決定しているものの,保護者からは民営化についての理解は得られておらず,被告において,移管に伴い発生する諸事項を協議す たわけであるが,この時期は,前記(5)でみたように,移管先の社会福祉法人は既に決定しているものの,保護者からは民営化についての理解は得られておらず,被告において,移管に伴い発生する諸事項を協議する場として予定している三者協議会の設置を呼びかけるも,その目途も立っていない状況下にあった。 被告としては,平成16年4月1日を本件民営化の実施時期として,これまで種々の手続を積み重ねてきており,移管先法人の都合もあるから,この予定を軽々に変更できない事情はあったというべきであるが,このようなことを除けば,「多様な保育ニーズに応える」という本件民営化の目的からすれば,上記のように「子どもの成長が早い」といっても,特別に本件民営化を急ぐべき理由があったとは認められない。 (エ)a被告は,引き継ぎ,共同保育の期間として3か月あれば民営化に支障はないと判断した旨を保護者等に再三説明している。被告の上記説明の根拠は,まず,重点保育施策を公表する前の段階で,被告の職員が民営化を実施した市町村(尼崎市,堺市,守口市)に赴き,移管先法人の園長からの事情を聴取したこと,及び,その後に専門家である保育士(園長)を尼崎市,堺市,八千代市へ調査に赴かせ,その保護者を含めて事情を聴取をしたことであるとし,このような調査の結果,上記のように判断されたとしている(甲12号証,96号証の2,104号証,乙23号証の4「民間移管についてのQ&A」)。 そして,上記の調査結果等を踏まえて,具体的なスケジュールとしては,平成15年11月に移管先法人が決定した後に保育の引き継ぎ及び共同保育を実施することとし,11月は「保育園全体の雰囲気を- 80 -把握し,子どもたちや保護者の皆様にご挨拶をして顔なじみになってもらうこと」を目標に移管先法人の園長,主任保育士1,2名が週に 保育を実施することとし,11月は「保育園全体の雰囲気を- 80 -把握し,子どもたちや保護者の皆様にご挨拶をして顔なじみになってもらうこと」を目標に移管先法人の園長,主任保育士1,2名が週に2日ほど保育に入ることとされ,その後,月ごとに接触の度合いを深め,平成16年3月には,「保育の補助として積極的に保育に関わる」,後半には「移管先法人の保育士がリーダーとして保育を行う日を設ける」予定であるとされており,被告としては上記のような計画で引き継ぎ及び共同保育を実施することで特段の支障なく民営化が実施できると考えていたことが認められる(甲10号証,乙23号証の7,30号証,証人丙)。 しかしながら,このような説明ないしスケジュールの設定は,被告の担当者ないし調査に赴いた園長らがそのように判断したというだけであって,その前提となる調査結果等が明らかにされているわけでもないし,調査先の選定がどのようにして行われたのかも明らかではない。例えば,上記聞き取り調査の対象となった尼崎市でも民営化については保護者に異論があったことがうかがわれるが(甲12の7),これらの意見がどのように評価され,上記のような判断に至ったのかが説明されないと保護者らの納得を得ることは困難なように思われる。 b被告が予定していた引き継ぎ及び共同保育の内容は,平成15年11月中旬ころに保護者らにも明らかにされたものと認められるが(乙23号証の7),その内容は,事務引き継ぎや様子観察も重要なことには違いないが,肝心の,何時から,何名の保育士等が,どのくらいの頻度で児童と接触するというのかが必ずしも明確ではない。したがって,結果的にみて,被告の丙課長はほぼ予定どおりに引き継ぎ及び共同保育が実施されたと認識している(乙30号証,証人丙)のに対して,保護者原告らは,そのように いうのかが必ずしも明確ではない。したがって,結果的にみて,被告の丙課長はほぼ予定どおりに引き継ぎ及び共同保育が実施されたと認識している(乙30号証,証人丙)のに対して,保護者原告らは,そのように認識していない(証人B,原告C,原告E等)。 - 81 -c本件証拠上でうかがわれる限度で他の市町村等における民営化についてみてみると,横浜市保土ヶ谷区にあった神奈川県社会福祉事業団が運営していた笹山保育園の場合は,平成10年に平成14年度からの民営化が発表されたことを契機として,その後,保護者と同事業団及び神奈川県とで継続的に話し合いが行われ,移管先の社会福祉法人についての保護者の要望等も取り入れられた上で平成15年4月に民営化が実施されたが,保育士については同年から平成20年までの6年間をかけて漸次入れ替えていくこととされている(甲77号証)。 また,相模原市では,平成13年度に策定した「相模原市公立保育所活性化・民間移管計画」に基づいて平成17年度から10年を目途に公立保育所を4園民営化する計画を公表しているが,最初に民営化される橋本保育園でも平成14年度に移管先法人が決定され,3年後の平成17年4月1日から実施されている(甲90ないし94号証)。 被告は,聞き取り調査した結果,3か月間の引き継ぎでスムースに移管できたと判断された例として,八千代市の「おおわだみなみ保育園」,堺市の「三原台保育園」,尼崎市の「キンダーメーソン・タチバナ保育園」を挙げているが(乙23号証の4「民間移管についてのQ&A」),その判断の当否を検証し得ないことは上記のとおりである。 他方,3か月の引継期間で民営化された別の例としては,高石市の東羽衣保育所(平成14年4月1日民営化)や大東市の上三箇保育所(平成15年4月1日民営化)があるが,これらの保育所で のとおりである。 他方,3か月の引継期間で民営化された別の例としては,高石市の東羽衣保育所(平成14年4月1日民営化)や大東市の上三箇保育所(平成15年4月1日民営化)があるが,これらの保育所では少なからぬ混乱があったことがうかがえるのであり(甲17,43の1ないし7,82号証),このような事例も参考にされる必要があったように思われる。 cこのようにみてくると,被告が説明している引き継ぎ,共同保育の- 82 -期間として3か月あれば民営化に支障はないと判断は,それほど明確な根拠のあることとは認められない。そして,保護者の納得が得られていないという状況を前提にすれば,むしろその判断は疑問というべきである。 (オ)本件民営化は,本件意見具申に基づいて行われたものとされている。 前述のとおり,本件意見具申は被告のとるべき施策の一つとして公立保育所の民営化を挙げているが,その実施については,既に入所している児童に配慮し,保育内容・行事などの保育環境について急激な変更は行わないこと,民営化に関する情報公開を積極的に行い,入所児童の保護者の意見・要望を聴きながら,保育の向上を図るという共通の目的に立った信頼関係の下に進めること,といった留意事項も同時に示している。 また,平成16年の1月段階ではあるが,柿の木台保育園の移管を受けるあすみ福祉会の理事長は,保護者に対して,被告と保護者との間の信頼関係がどうしても構築されないのであれば,同年4月1日の本件民営化の実施を延期すべきであると考えていること,他の移管先法人の園長にも同様の意見があり,被告にも伝えていること,ただ,あすみ福祉会としては2月からの態勢を整えているので4月1日の民営化実施は不可能とは考えていない旨を話しており(甲75号証,証人丙,原告E),本件民営化の実施に当たり,被告と 伝えていること,ただ,あすみ福祉会としては2月からの態勢を整えているので4月1日の民営化実施は不可能とは考えていない旨を話しており(甲75号証,証人丙,原告E),本件民営化の実施に当たり,被告と保護者との間の信頼関係が構築されていないことを危惧していたことがうかがわれる。 ウ本件民営化に向けて被告の予定していたその他の措置について上記の引き継ぎ及び共同保育のほか,被告は,本件民営化により児童等に悪影響を与えないように,①本件4園で保育の実施に当たっていた嘱託職員及びアルバイトを本件各社会福祉法人に継続雇用してもらうよう要請すること,②本件民営化後しばらくの間,(ア) 臨床心理士を週に1回の割合で巡回させ,保育士等の指導に当たらせること,(イ) 市立保育所の- 83 -園長経験者3名を訪問巡回させ,専門的な立場から指導に当たらせること,(ウ) 市立保育所の看護士を巡回させ,健康や医療面での相談に当たらせること,(エ) 個別対応が必要な児童に対しては,本件4園の園長又は保育士が本件各新保育所を訪問し,児童らの状況を聴取し,指導すること,等の他の市立保育所に転園することが可能と措置をとり,そのほかにも,③と主張している。 なるような配慮もした本件改正条例制定の適否という観点からすると,同条例はこれらの施策が実施されることを前提として可決されたものかどうかが問題となるが,これらの施策が何時決定され,保護者らに対してどのように説明されたものかは,本件証拠上必ずしも明らかではない。被告としては,本件民営化に向けての具体的な諸事項を協議する場として三者協議会を設置し,そこでこれら種々の施策を協議することを予定していたものと認められるから,これらの施策は三者協議会の設置の目途が立たないために,本件改正条例の制定後に被告において決定した可能 て三者協議会を設置し,そこでこれら種々の施策を協議することを予定していたものと認められるから,これらの施策は三者協議会の設置の目途が立たないために,本件改正条例の制定後に被告において決定した可能性が否定できない。つまり,本件改正条例が,このような具体的な施策が行われることを前提としたものであったかどうかについては疑問なしとしない。 この間の事情をみてみると,三者協議会については,被告から保護者に対して比較的早い段階から設置が提案されており(乙23号証の4),この中で本件民営化に当たっての要望等を協議することが予定されていたものであるが,前記のとおり,この三者協議会設置の点は実現していない。 そして,その他の施策については,例えば,岸根保育園での保護者説明会(平成15年4月段階。甲12の7)では,看護士を置くとか,医師を派遣するとか,色々とあると思うので他都市のことも参考に詰めていきたい,といった説明があり,平成15年10月3日付け福祉局長名義の書面(乙23号証の5)には,上記②(エ)について,現時点での一つの例であるとして紹介されている。このように,本件改正条例が前記各施策が行われる- 84 -ことを前提としたものかどうかは明確でないが,他方で,上記の担当者の説明振りからしても,これに類する何らかの施策が行われることは想定していたといって差し支えないようにも思われる。 なお,結果的にみると,上記①及び②の施策は実施されたものと認められるが(乙31号証,証人丁),③の転園が可能となる措置とは,他の市立の保育所に転園を希望する場合には,通常の場合の扱いとは異なって,新規の入所希望者と比較して劣後しないものとして取り扱うこととしたというものであるが(乙19,30号証),原告Eの供述に照らすと,このような取扱いが保護者に説明されていたかに 合の扱いとは異なって,新規の入所希望者と比較して劣後しないものとして取り扱うこととしたというものであるが(乙19,30号証),原告Eの供述に照らすと,このような取扱いが保護者に説明されていたかについては疑問がある。また,三者協議会の設置が実現していないことは上記のとおりである。 エ本件民営化が入所児童に与える影響等について(ア)前記アのとおり,本件改正条例が可決された時点で,本件4園の運営を引き継ぐ本件各社会福祉法人による保育の質が具体的に懸念されるような状況があったとは認められない。 しかし,このような制度的な問題はともかく,現実に保育士が入れ替わるという保育環境の変化が入所児童へ与える影響は軽視し得ないものと思われるが,このようなことが,一時的な混乱といったことで終息するものか,将来的に何らかの悪影響を残すものか(悪影響を残す児童が発生するか)といったことは証拠上も明確ではないし,これらのことを現時点で的確に把握することは困難と思われる。 (イ)ただ,本件民営化が実施された場合,平成16年4月1日を境にして保育士等の大部分が入れ替わることになる。例えば,保護者の転勤等で児童が保育所を変わる等のことは珍しいことではないが,このような場合は,一定の保育環境が確立している保育所に当該児童が入っていくのであり,受け入れる保育所側も当該児童に対して特別の配慮をすることが可能である。民営化の場合には,移管先保育所の保育環境が十分に- 85 -確立していないところに,本件4園でいえば60人から150人もの児童が同時に新たに受け入れられるのであり,保育所側でも個々の児童の把握に困難があることは否定できない。この保育環境の変化に対する個々の児童の反応は様々であると思われるし,将来的な予測は困難としても,少なくとも民営化後相当の期間にわた り,保育所側でも個々の児童の把握に困難があることは否定できない。この保育環境の変化に対する個々の児童の反応は様々であると思われるし,将来的な予測は困難としても,少なくとも民営化後相当の期間にわたって相乗的な混乱が起こるであろうことは容易に想像できる。 (ウ)上記のような保育環境の変更について,保育環境を急激に変化させることは児童の成長に悪影響を与えるとの専門家の指摘がある(甲76号証,87号証)。また,長年保育士を務めてきた乙は保育の連続性が絶たれることの問題点を指摘している(甲111号証,証人乙)。 被告では,「よこはまの保育」(甲50号証)という冊子を作成し,その保育指針を示しているが,この中では長期的視点に立った計画的な保育の重要性が説かれている。また,その保育の連続性を保つ趣旨もあ保育士職員配置換要綱(甲16号証)では,当該職場におって,被告のける保育士の配置換えはその職員数の30%までとする旨が定められている。 このようなことにかんがみるならば,保育所の民営化ということについては,慎重な対応が要求されるものと思われる。 (8)本件改正条例制定後の事情について原告らは,本件改正条例制定後の事情として,①本件各新保育所への引き継ぎについて被告のとった措置は結果的に全く不十分であった旨,②本件アフターケアも児童や保護者の目に見える実質的なものではな民営化後のく,保育環境の変化を補い得るようなものではなかった旨,あるいは,③本件民営化により,本件4園での保育内容,保育環境は大幅に変更され,児童らに様々な悪影響が出ている旨,その他,本件改正条例制定後における被告の対応には種々の問題があった旨を主張している。 - 86 -しかし,これら本件改正条例制定後の事情については,基本的に本件改正条例の制定を違法と評価すべき事情とは ,本件改正条例制定後における被告の対応には種々の問題があった旨を主張している。 - 86 -しかし,これら本件改正条例制定後の事情については,基本的に本件改正条例の制定を違法と評価すべき事情とはなり得ないものというべきであり,これらの事情のうち,本件改正条例制定前から予測され,あるいは予測すべき事情の主要なものについては,それが本件改正条例制定時においてどのように評価されるかを中心に既に述べたとおりである。 (9)まとめ以上検討してきたことをまとめると,以下のようにいうことができる。 ア本件民営化は,被告の置かれた財政状況を前提として,その中で待機児童の解消を図るとともに,多様な保育ニーズに応えていくことを目的としたものと認められる。多様な保育ニーズに応える必要があるということと保育所の民営化ということは必ずしも必然的な関係にあるものではないが,所与の条件下において,必要とされる行政課題に対して,民営化でもって対処するということも一つの選択肢であることは否定できないというべきであるから,このこと自体を違法とまでいうことはできない。 イしかしながら,入所児童がいる保育所を民営化するについては,当該保育所で保育の実施を受けている児童及び保護者の特定の保育所で保育の実施を受ける利益を尊重する必要があり,その同意が得られない場合には,そのような利益侵害を正当化し得るだけの合理的な理由とこれを補うべき代替的な措置が講じられることが必要であると解される。 ウ上記代替措置として,本件4園の廃止に伴って移管先として本件社会福祉法人が選定されており,その選定手続を含め,この移管先に特段の問題があったとは認められない。そして,その他の措置として,上記(7)ウで述べたような措置も検討されていたものと認めることができるから,被告としては現実的に対応 の選定手続を含め,この移管先に特段の問題があったとは認められない。そして,その他の措置として,上記(7)ウで述べたような措置も検討されていたものと認めることができるから,被告としては現実的に対応できる範囲の措置をとる用意があったものと評価できる。 エしかし他方で保護者との関係をみてみると,本件改正条例制定時点にお- 87 -いて,本件民営化について大方の保護者の承諾が得られているとはいい難い状況であった。のみならず,これら保護者と被告との関係は,本件民営化に向けて建設的な話し合いが期待できるという状況にはなく,早急に信頼関係の回復が見込める状況にもなかったといわざるを得ない。 保護者らが態度を硬化させていた根本的な理由は,被告において,1年後に本件民営化を実施するということは行政的には決定事項であり,変更できないものとして対応していたため,この点について協議の余地がなかった点にあるものと認められる。 公立保育所を民営化するについて,保護者全員の同意が必要とまでは解されないが,本件民営化について保護者らが上記のような対応をとったことについては,突然に本件民営化が公表されたことや上記の被告の対応等に照らすと,一概に理不尽なものということはできず,また,それが極く一部の保護者の意向であったとも認められない。 オ上記のような事態は,本件民営化について,本件4園を選択した保護者の同意が得られていないということのほかに,円滑に民営化が実施されることを危惧させる事情ともいえる。 本件民営化に向けての具体的協議の場として予定されていた三者協議会は,本件4園のいずれについても設置にも至っていない。そして,被告が主張していた3か月の引き継ぎ及び共同保育期間ということについては,十分な根拠があるとはいえないし,保護者の納得が得られていない状況下では 4園のいずれについても設置にも至っていない。そして,被告が主張していた3か月の引き継ぎ及び共同保育期間ということについては,十分な根拠があるとはいえないし,保護者の納得が得られていない状況下では,なおさらのことといえる。 カこのような状況下にあった平成15年12月18日の時点で,平成16年4月1日に本件民営化を実施しなければならないといった特段の事情があったとはいえない。「多様な保育ニーズに応えるため」「子どもの成長が早い」といった被告が説明してきた理由は,他方で種々の不利益を被る可能性のある児童,保護者の存在することを思えば,このような状況下で- 88 -の早急な民営化を正当化する根拠としては不十分といわざるを得ない。 このような民営化は,児童及び保護者の特定の保育所で保育の実施を受ける利益を尊重したものとは到底いえない。 キ以上のことからすれば,本件4園を民営化するという判断自体については,なお裁量の範囲内のことと解する余地もないではないが,被告が,本件改正条例の制定によって,上記民営化を平成16年4月1日に実施する(平成16年3月末日をもって本件4園を廃止する。)としたことは,その裁量の範囲を逸脱,濫用したものであり,その余の点(争点3)について検討するまでもなく,違法であると認めるのが相当である。 (10)事情判決の理由上記のとおり,本件改正条例の制定は,その裁量権の行使に逸脱,濫用があり違法と解されるから,その制定行為(処分)を取り消すのが原則である。 しかしながら,本件4園が廃止されてから既に2年余りが経過しており,既に保育所の建物,敷地は売却ないし貸与され,保育士等もそれぞれ新たな職場で勤務しているものと推測されるから,上記取消しによって法的には被告の設置する保育所としての地位を回復するとしても,現実問題として従前 所の建物,敷地は売却ないし貸与され,保育士等もそれぞれ新たな職場で勤務しているものと推測されるから,上記取消しによって法的には被告の設置する保育所としての地位を回復するとしても,現実問題として従前の保育環境が復活するわけではない。 そして,その一方で,上記期間の経過によって,本件各新保育所では新たな保育の環境が形成されるとともに,新たに同保育所で保育の実施を受けるに至った児童も存在するものと考えられる。現時点で本件改正条例の制定を取り消すことは,これらの新たな秩序を破壊するものであり,無益な混乱を引き起こすことにもなりかねない。 そこで,本件改正条例の制定を取り消すことは公の利益に著しい障害を生じるものであり,公共の福祉に適合しないものと認められるから,行政事件訴訟法31条1項を適用して,本件改正条例の制定が違法であることを宣言することにとどめ,原告らの請求は棄却することとした。 - 89 - 争点4(国家賠償請求の成否)について(1)原告らは,被告の公務員は,本件民営化が児童原告らに与える悪影響にかんがみ,原告らに対して,①本件民営化を拙速に行ってはならない注意義務,及び②仮に,本件民営化を実施する場合には,十分な引き継ぎの期間を設ける等して,保育の内容や保育の実施に当たる職員の継続性が保たれるような措置を講じ,保育水準が低下しないような方法で民営化すべき義務を負っていたにもかかわらず,これらの注意義務に違反した旨主張している。 原告らの上記主張は判然としない部分もあるが,その損害に関する主張と本件4園を廃止したことの違法,(イ)も併せ検討すると,大別すれば,(ア)本件民営化を進める過程における被告担当公務員の対応の違法(多忙な中で本件民営化に対する対応を余儀なくされたこと,被告の担当者において原告らの意向を尊重した対応をし せ検討すると,大別すれば,(ア)本件民営化を進める過程における被告担当公務員の対応の違法(多忙な中で本件民営化に対する対応を余儀なくされたこと,被告の担当者において原告らの意向を尊重した対応をしてくれなかったこと等),(ウ) 本件民営化の実施に伴ってとった措置の違法(十分な引き継ぎや民営化実施後の手当てをせず,児童を劣悪な保育環境に置いたこと等)の3点をいうものと解される。 そして,原告らは,個々人に対する個別の違法行為や固有の損害を主張するものではないから,上記の請求は,原告ら保護者原告らなり,児童原告らに対する共通した違法行為を原因として,これにより,これら原告らが共通して被った損害の賠償を請求するものと解される。 (2)本件4そこで,検討するに,既に述べたことからすれば,被告においてを廃止することが直ちに原告らに対する不法行為になるとまでは解されな園いが,被告としては,平成16年4月1日以降も保育期間が満了しない児童らが本件4園で保育の実施を受ける予定であったのであるから,仮に本件4園を廃止,民営化する場合には,これによる児童への悪影響を最小限にとどめるに必要な措置をとり,また,そのような観点に立って民営化の実施時期を定めるべき注意義務を負っていたものといえる。 そして,本件改正条例の制定により,本件4園を廃止,民営化する時期を- 90 -平成16年4月1日としたことが,その裁量権を逸脱,濫用したもので違法と解されることは前述したとおりであり,上記の注意義務に照らすならば,この点は国家賠償法上も原告らに対する違法行為となるものと解される。 しかして,原告らは上記の違法のほかにも,本件民営化を進める過程における被告担当者の対応(上記(イ))を違法と主張するが,これらの点は,被告の公務員による個別,具体的な発言や対応を問題とす される。 しかして,原告らは上記の違法のほかにも,本件民営化を進める過程における被告担当者の対応(上記(イ))を違法と主張するが,これらの点は,被告の公務員による個別,具体的な発言や対応を問題とするものではない以上,結局は,本件4園の民営化を平成16年4月1日に実施したことと別個の不法行為を構成するものとは認められない。被告の担当公務員が,本件4園の民営化をスケジュールどおり進めることを最大の目標として保護者らと対応した等のことは,本件改正条例制定行為に係る事情として考慮すれば足りるものと解される。 また,原告らは,本件民営化の実施に伴う措置等の違法(上記(ウ))も主張している。上記主張は,仮に本件民営化を実施するにしても,被告の担当公務員は児童に与える悪影響を最小限にとどめるに必要な措置をとるべき義務に違反し,これによって原告らに更なる精神的な苦痛等を与えたとの趣旨に理解される。しかし,原告らは,上記義務違反に該当する事実として引き継ぎや民営化後の手当て等の不手際,不十分さを種々主張しているが,三者協議会も設置されず,保護者らとの信頼関係が回復できない状況下では被告の担当公務員がとり得る措置や,とった措置の実効性に一定の限界が存することは否定できないし,その中で,前記(7)ウでみたような措置がとられていることからすれば,一概にその対応を批判することはできない。原告らは,民営化後の本件新保育所における保育環境が劣悪である等のことを種々主張するが,その提出する断片的な証拠からだけでは,本件新保育所に共通して一定の保育環境の悪化が生じているとまで認定することは困難である(例えば,丸山台保育園では,他の3園に比して良好な関係が形成されていることがうかがわれる。原告C)。結局のところ,引き継ぎや共同保育,あるいは- 91 -民営化後にお で認定することは困難である(例えば,丸山台保育園では,他の3園に比して良好な関係が形成されていることがうかがわれる。原告C)。結局のところ,引き継ぎや共同保育,あるいは- 91 -民営化後における前記(7)ウでみたような措置等に必ずしも十分でない点があったとしても,その根本原因は,平成16年4月1日に本件民営化を実施すると定めた点にあるものというべきであって,その条件下で行った被告担当公務員の対応に格別の問題があったということはできないし,本件証拠上,原告らに対する共通の不法行為と目すべき事実も見いだせない。したがって,原告らの主張する上記(ウ)の点も,平成16年4月1日に本件民営化を実施したことと別個の不法行為を構成するものとは解されない。 (3)以上のとおりであるから,本件では,平成15年12月18日の段階で本件民営化を決定した本件改正条例の制定を違法行為としてとらえれば足り,被告は,この本件改正条例の制定及びこれに起因する諸事情により原告らが共通に被ったと認められる損害を賠償すべきであるということになる。 そして,上記損害を保護者原告らについてみると,これら保護者原告らは,共通して,平成15年4月後半に突然に本件民営化の計画を知らされて以来,被告の担当者らに対して反対の意思を表明してきたものの,結局は本件改正条例の制定により本件民営化は予定どおり実施され,これに対する憤りや,引き継ぎ,共同保育の期間が十分でなかった等のことから児童の保育環境の悪化を心配し,心を痛めたものと認められる(同原告らは,本件新保育所における保育内容の悪化も主張するが,上記のとおり,原告らに共通したものとして,この点を認定できるまでの的確な証拠はない。)。これら保護者原告らの精神的な苦痛を慰謝する額としては,1世帯につき金10万円を基準として,別紙認 張するが,上記のとおり,原告らに共通したものとして,この点を認定できるまでの的確な証拠はない。)。これら保護者原告らの精神的な苦痛を慰謝する額としては,1世帯につき金10万円を基準として,別紙認容金額一覧表のとおりと認めるのが相当である(なお,保護者原告Aについては,その監護するaの保育期間は平成16年3月31日までであったから,もともと同原告に対する違法行為があったとは認められず,その請求は理由がない。また,保護者原告F1及び同F2については,その監護する児童原告f1が上記同様の事情にあるので,同児童原告の保護者としての請求部分は理由がない。したがって,上記両保護者原告の請求は,同- 92 -じくその監護する児童原告f2の保護者としての請求部分のみ理由がある。)。 また,児童原告らも損害の賠償を請求しているが,確かに,本件改正条例の制定により,その保育環境に一定の変更が生じたとはいえ,これにより,個々の児童原告らがどのような影響を受けたのかは明らかでないし,また,これら児童原告らの年齢を考えるならば,その被った精神的な苦痛といったものを,全児童原告らに共通のものとして定型的に把握することも困難である。したがって,これら児童原告らの損害賠償の請求は,理由がないものと解するのが相当である。 (4)まとめよって,本件損害賠償の請求については,保護者原告らについては,別紙認容金額一覧表に記載の限度でその請求には理由があるが,同原告らのこれを超える請求部分並びに保護者原告A及び児童原告らの請求は,いずれも理由がない。 第4 結論 以上の次第であるから,本件改正条例制定の取消しを求める訴えについては,別紙原告目録1(1)及び2(1)記載の原告らの請求は棄却するものの,同処分の違法を宣言することとし,その余の原告らの本件改正条例制定の取消 あるから,本件改正条例制定の取消しを求める訴えについては,別紙原告目録1(1)及び2(1)記載の原告らの請求は棄却するものの,同処分の違法を宣言することとし,その余の原告らの本件改正条例制定の取消しを求める訴えは不適法であるから却下することとする。そして,本件損害賠償を求める訴えについては,別紙原告目録1(1)及び(2)記載の原告ら(ただし,同目録1(2)記載の原告Aを除く。)につき,別紙認容金額一覧表に記載の限度でその請求に理由があるから,その限度でこれを認容することとし,同原告らのこれを超える請求部分並びに上記A及び児童原告らの請求は,いずれも理由がないから棄却することとする。 よって,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条及び65条1項各本文を適用し,仮執行の宣言は相当でないから付さな- 93 -いこととして,主文のとおり判決する。 横浜地方裁判所第1民事部裁判長裁判官河村吉晃裁判官植村京子裁判官高橋心平
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