- 1 -令和3年9月16日判決言渡令和3年(ネ)第10005号 損害賠償請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成29年(ワ)第28541号事件)口頭弁論終結日 令和3年6月24日判決5 控訴人・被控訴人(以下「一審原告」という。)株式会社豊田自動織機 同訴訟代理人弁護士 安國忠彦10同訴訟代理人弁理士 磯田志郎 被控訴人・控訴人(以下「一審被告」という。)ハノンシステムズ・ジャパン株式会社 15同訴訟代理人弁護士喜田村 洋 一同訴訟代理人弁理士園 田 吉 隆主文1 一審原告の控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。 ⑴ 一審被告は一審原告に対し,6億9885万8050円及びこれに対20する平成29年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 一審原告のその余の請求を棄却する。 2 一審原告の当審における追加請求を棄却する。 3 一審被告の控訴を棄却する。 254 訴訟費用は,第1,2審を通じこれを3分し,その1を一審被告の,そ- 2 -の余を一審原告の負担とする。 5 この判決は,第1項⑴に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由第1 当事者の求めた裁判1 一審原告5⑴ 原判決を次のとおり変更する。 ⑵ 一審被告は,一審原告に対し,18億5362万1468円及びこれに対する平成29年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (一審原告は,原審においては,10億円及びこれに対する遅延損害金又は10利息の支払を求めていたが,当審において,上記のように拡張した。)2 一審被告 年5分の割合による金員を支払え。 (一審原告は,原審においては,10億円及びこれに対する遅延損害金又は10利息の支払を求めていたが,当審において,上記のように拡張した。)2 一審被告⑴ 原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。 ⑵ 前記取消しに係る部分について,一審原告の請求を棄却する。 第2 事案の概要等151 事案の概要(以下において略称を用いるときは,別途定めるほか,原判決に同じ。)本件は,名称を「ピストン式圧縮機における冷媒吸入構造」とする発明に係る特許権を有する一審原告が,一審被告の輸入・販売する圧縮機(被告各製品)は同特許権に係る発明の技術的範囲に属すると主張して,一審被告に20対し,不法行為に基づく損害賠償又は不当利得返還請求として,17億1320万3366円のうち10億円及びこれに対する平成29年9月1日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金又は利息の支払を求めた事案である。 25原判決は,一審被告による特許権侵害を認め,一審原告の請求を4億38- 3 -30万0840円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余を棄却したので,当事者双方が敗訴部分を不服として控訴を提起した。 なお,一審原告は,当審において,18億5362万1468円及びこれに対する遅延損害金又は利息の支払を求める旨請求を拡張した。 2 「前提事実」,「争点」及び「争点に対する当事者の主張」は,以下のと5おり原判決の補正をし,後記3のとおり当審における当事者の補充主張を加えるほか,原判決の「事実及び理由」欄の第2の1及び2(ただし,一審被告は,当審において,無効理由1ないし6及び8については主張を撤回した 決の補正をし,後記3のとおり当審における当事者の補充主張を加えるほか,原判決の「事実及び理由」欄の第2の1及び2(ただし,一審被告は,当審において,無効理由1ないし6及び8については主張を撤回したので,⑵はキのみ)並びに第3の1ないし3,10,12及び13に記載するとおりであるから,これを引用する。 10⑴ 原判決3頁23行目の次に改行して次のように加える。 「一審原告が,一審被告に対し,被告各製品の製造販売の差止め等を求めた訴訟(東京地方裁判所平成26年(ワ)第34678号。以下「前件侵害訴訟」という。)につき,同裁判所は,平成29年4月21日,一審原告の請求を認容する判決をし,その控訴事件(知的財産高等裁判所平成2159年(ネ)第10060号)につき同裁判所は,同年11月28日,一審被告の控訴を棄却する旨の判決をし,同判決は上告棄却・不受理により確定した。(甲6,9,14)」⑵ 原判決4頁1行目の「との審決を」から4行目末尾までを「との審決(以下「本件審決」という。)をした。一審被告は,本件審決の取消しを求め20る審決取消訴訟を提起した(知的財産高等裁判所平成31年(行ケ)第10016号)が,同裁判所は,令和2年1月29日に一審被告の請求を棄却する旨の判決をし,同判決は上告棄却・不受理により確定した。(甲18,27,38)」と改める。 ⑶ 原判決65頁10行目の「ものである。」の次に「本件優先日当時,斜板25形のピストン圧縮機の冷媒吸入構造としては,一般に,弾性を有する金属- 4 -等の薄い板片(リード)をシリンダ室側に片持ち式に取り付け,吸入ポートを内側からリードによって閉塞して冷媒の逆流を防止するリードバルブ方式が採用されていたが,シリンダ室と吸入室及び吐出室の圧力差が必須であり,リードの弾 をシリンダ室側に片持ち式に取り付け,吸入ポートを内側からリードによって閉塞して冷媒の逆流を防止するリードバルブ方式が採用されていたが,シリンダ室と吸入室及び吐出室の圧力差が必須であり,リードの弾性変形で形成された隙間を通じてシリンダ室に冷媒を供給するため流路断面積が小さく,吸入抵抗が発生するという問題があっ5た。これを解決するためシャフト(回転軸)の回転によって冷媒を供給するロータリバルブ方式の開発が進められていたが,未だ実用化されていなかった。本件訂正発明は,冷媒漏れを防止し,体積効率を向上するなどの効果を得ることによって,ロータリバルブ方式の実用化を可能にした基本発明である。実際,一審原告は,本件優先日(平成13年11月21日)10後の平成16年から,業界で初めて,ロータリバルブ方式のピストン式圧縮機(10SR圧縮機)の販売を開始している。」を加える。 ⑷ 原判決68頁23行目末尾に改行して次のように加える。 「一審原告は,本件訂正発明はロータリバルブ方式の実用化を可能にした基本発明であり,一審原告は本件優先日後の平成16年から業界で初めて15ロータリバルブ方式のピストン式圧縮機の販売を開始していると主張する。 一審原告が本件優先日後にロータリバルブ方式のピストン式圧縮機の販売を開始したことは認めるが,その製品(10SR15C)は,ロータリバルブが円筒状でなく外周に凹部や溝を備えたものであった(現在は,外周に凹部や溝を備えない製品となっている。)。そうすると,本件訂正発20明によってロータリバルブ方式が実用化されたとはいえない。」3 当審における補充主張⑴ 争点⑵キ(無効理由7:実施可能要件又はサポート要件違反)についてア 一審被告の主張 本件訂正発明がその目的とする効果を奏しない 化されたとはいえない。」3 当審における補充主張⑴ 争点⑵キ(無効理由7:実施可能要件又はサポート要件違反)についてア 一審被告の主張 本件訂正発明がその目的とする効果を奏しないこと25a 本件訂正発明は,斜板形でロータリバルブ方式のピストン式圧縮- 5 -機において,スラスト軸受に撓み可能なスラスト軸受を用い,ロータリバルブの外周面を軸孔の内周面で直接支持することで,ロータリバルブを吸入通路に近づくように変位させて冷媒の漏洩を抑制し,体積効率を向上させることを目的としたものであるが,そもそも斜板形でロータリバルブ方式のピストン式圧縮機ではロータリバルブ5が吸入通路に接触するまで変位することは原理的に常に生じていることであって,本件訂正発明が上記構成を採用することによって冷媒の漏洩が抑制されることもないし,体積効率が向上することもない。 むしろ,撓み可能なスラスト軸受を用いた本件訂正発明において10は,ロータリバルブが軸孔内周面に接触する際の押圧力が増すために,摩擦力の増大,フレッチング(摩耗現象),振動の発生等の障害を生起する可能性がある。 b 本件訂正発明が,その目的とする効果を奏するかを検討するため,被告製品1(RS-15)と,従来型製品(RS-15N。被告各製15品を設計変更したもの〔以下「設計変更品」という。〕の1つであるが,その技術内容としては後記のとおり従来型製品である。)を用いて,比較実験した結果は,以下のとおりである。 ⒜ RS-15Nは,ロータリバルブがシリンダブロックとは別体のラジアルベアリングで支持されているという意味においても,撓20み可能なスラスト軸受等の他の技術的特徴に関しても従来技術である乙第18号証(特開平7-63165号公報。以下,書証について 体のラジアルベアリングで支持されているという意味においても,撓20み可能なスラスト軸受等の他の技術的特徴に関しても従来技術である乙第18号証(特開平7-63165号公報。以下,書証については単に「乙18」などと略記する。)に記載された圧縮機と全く同一である。 RS-15Nの構造を,乙18に記載された圧縮機と比較した25場合,両者はロータリバルブ方式の斜板式圧縮機である点で共通- 6 -しており,相違点は,スラスト軸受の支持構造,つまり,乙18においては剛性の高いスラスト軸受が用いられているのに対して,RS-15Nでは撓み可能なスラスト軸受が採用されている点のみである。 したがって,RS-15Nは,従来技術(乙18)に属すると5いうことができる。 ⒝ 体積効率に関する実験結果(乙67)は,シャフトの回転数1000RPM及び1800RPMのいずれにおいても従来技術であるRS-15Nが本件訂正発明に基づく被告製品1よりも体積効率において優れていることを示している。 10上記比較試験の結果について,統計におけるt-検定を行った結果をみても,P値が1000RPMにおいて0.035,1800RPMにおいて0.002である。統計解析においては,P値が0.05以下であることが有意性の基準と考えられているので,従来技術であるRS-15Nが本件訂正発明の実施品である15被告製品1よりも優れていることが,統計的有意性をもって裏付けられている。 実施可能要件違反前記のとおり,撓み可能なスラスト軸受を用いた本件訂正発明においては,ロータリバルブが軸孔内周面に接触する際の押圧力が増20すために,摩擦力の増大,フレッチング,振動の発生等の障害を生起する可能性がある。 乙67の実験結果に鑑みれば,本件訂正発明はそ おいては,ロータリバルブが軸孔内周面に接触する際の押圧力が増20すために,摩擦力の増大,フレッチング,振動の発生等の障害を生起する可能性がある。 乙67の実験結果に鑑みれば,本件訂正発明はその効果を奏しないというべきで,本件訂正発明が,特定の条件下においては効果を奏することがあったとしても,そのための条件が何であるかは明細書に記25載されておらず,当業者にとって自明でもないから,その実施には過- 7 -度の試行錯誤を要する。 したがって,本件特許は,特許法36条4項1号に違反するものとして同法123条1項4号により無効とされるべきである。 サポート要件違反本件訂正発明の構成では,前記のとおり,発明の目的である体5積効率の向上を達成することはできない。そうすると,本件訂正発明は,課題の解決手段として発明の詳細な説明に記載したものでない。 したがって,本件特許は,特許法36条6項1号に違反するものとして,同法123条1項4号により無効とされるべきである。 イ 一審原告の主張10一審被告主張の体積効率に関する実験結果(乙67)は,実験条件も不明であり,信用性がない。 ⑵ 争点⑶(損害額及び不当利得額)についてア 一審原告の主張特許法102条2項により算定される損害について15原判決は,一審被告がマツダに本件訂正発明を実施しない設計変更品を継続して販売していたことから,本件訂正発明の作用効果に対する顧客吸引力等が相当限定的なものであったと認定している。しかし,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●一審被告及び顧客であるマツダが,侵20害当時に,代替品に切り替えることが直ちにできず,設計変更品に切り替えるのに相当長期を要したことは,顧 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●一審被告及び顧客であるマツダが,侵20害当時に,代替品に切り替えることが直ちにできず,設計変更品に切り替えるのに相当長期を要したことは,顧客にとって,本件訂正発明に代替性がなかったことを示すものである。 また,原判決は,圧縮機たる被告各製品が,汎用品ではなく,マツダの要求仕様・品質基準を満たすものとして開発されたことも推定覆25滅事情として挙げるが,このことをもって,顧客が本件訂正発明以外- 8 -の特徴等に着目して被告各製品を購入したという認定の論拠となるものではない。 被告の顧客であるマツダは,平成21年,内燃機関の効率改善による世界一の燃費性能向上を目指す独自戦略であるスカイアクティブテクノロジーを打ち出したが,平成24年から展開された上記テクノロ5ジーに基づく製品群には被告各製品が使用されていた。マツダの高度な要求を満足できる圧縮機は,一審被告による本件侵害行為の当時,本件訂正発明の技術であるロータリバルブ方式の圧縮機,すなわち,一審原告の製品と被告各製品しかなかったのであり,一審被告が長期間をかけて設計変更した圧縮機もまた,ロータリバルブ方式の圧縮機10であったことも,この事実を裏付けている。 従来技術であるリードバルブ方式では,回転数の上昇に伴い,本質的な欠点である開口の遅れに起因して,開閉動作の追随性が悪くなる傾向があるのに対し,ロータリバルブ方式では,圧力差によって開閉が行われるのではなく,回転軸に設けられて回転軸と同期して開閉が15行われるため,追随性の悪化はない。一審被告のホームページ(甲31)でも,ロータリバルブ方式が,従来型の吸入弁に対して吸入ロスを抑えることで燃費改善するものである旨記載されているところ,その比較対象とされ ため,追随性の悪化はない。一審被告のホームページ(甲31)でも,ロータリバルブ方式が,従来型の吸入弁に対して吸入ロスを抑えることで燃費改善するものである旨記載されているところ,その比較対象とされる「従来型の吸入弁」を備えた圧縮機とは,リードバルブ方式のものである。一審被告の製品ラインナップにおいては,20被告各製品の特徴が他の圧縮機と比較して示されており,その中で,顧客は,他の圧縮機を選択せずに,あえて価格の高い被告各製品を購入している。 また,被告各製品は,韓国で権威ある賞を受賞しているところ,受賞製品の特徴として紹介された3つの差別化技術のうち,少なくとも25「シャフトの回転によるオイル分離効果を介してエアコンの性能と車- 9 -両燃費を向上させる」ことと,「冷媒吸入バルブ削除による吸入損失低減にコンプレッサーの消費動力を最小限に抑える」ことは,本件訂正発明によってもたらされるものであり,本件訂正発明が顧客吸引力を有することは明らかである。 以上によれば,特許法102条2項により算定される損害について,5推定覆滅事由は認められない。 特許法102条3項により算定される損害についてa 原判決は,圧縮機の分野において,実施料率を3ないし4%とする例を中心としつつ,その前後の実施料率とする例も相当程度あることがうかがわれるとしながら,特許権侵害をした者に対して事後10的に認められるべき,本件での実施に対して受けるべき料率を,通常の実施料率より低い2%と認定している。 しかし,特許法102条3項における損害賠償請求は,通常の取引における実施権許諾契約の場面ではなく,侵害行為であることがしんしゃくされなければならず,当業界における正常な取引における実15施料率よりも高い実施料率が認定されることは当然で 求は,通常の取引における実施権許諾契約の場面ではなく,侵害行為であることがしんしゃくされなければならず,当業界における正常な取引における実15施料率よりも高い実施料率が認定されることは当然である。 本件においては,一審原告と侵害者である一審被告とのライセンス自体が想定困難であるから,なおさら想定実施料率も高率とならざるを得ない。また,ロータリバルブ方式のピストン式圧縮機の市場は寡占状態にあり,相互にライセンスを行っていない閉ざされた市場傾20向にあることに鑑みれば,単に競業関係にあるということではなく,「特許発明の実施」は通常認められるべきではないことを前提に,同項に定める「特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額」を検討しなければならない。 b 原判決は,一審被告がマツダに対し設計変更品を継続して販売し25ていることを理由に,本件訂正発明の顧客吸引力が相当に限定的な- 10 -ものであり,被告各製品の販売において,代替不可能な技術であったとはいい難いとしている。 しかし,技術の代替可能性についての判断は,侵害行為時を基準としてなされるべきである。前述のとおり,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●5●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●このような経緯を無視し,結果的に設計変更に至ったという事実をもって,本件訂正発明の代替不可能性は否定されない。 また,設計変更品は,滑り軸受がブロンズ製のブッシュを軸孔に10打ち込むことにより形成され,当該ブッシュにより回転軸を軸受けする点を除き,設計変更前の被告各製品と同一である。この設計変更品は,①シリンダブロック(アルミ)とは異なるブロンズ製のブッシュを,シリンダブロックの軸 り形成され,当該ブッシュにより回転軸を軸受けする点を除き,設計変更前の被告各製品と同一である。この設計変更品は,①シリンダブロック(アルミ)とは異なるブロンズ製のブッシュを,シリンダブロックの軸孔に打ち込んで軸受けを形成することから,材質の熱膨張係数の相違による経年使用時の圧入状態の15変化,つれ回りを起こす可能性がある,②滑り軸受の圧入工程時に相応の衝撃がシリンダボアに付加されることに起因するシリンダボアの変形の可能性がある,③滑り軸受の圧入工程時に滑り軸受そのものの内径が減少するため,ロータリバルブとシリンダブロックの軸孔の内壁面との公差幅をより大きく確保する必要が発生し,それ20だけ圧縮機の性能が低下する,という問題を生じるものであり,そうすると,設計変更品は,本件訂正発明の構成を一部欠いただけで,技術的に劣後する設計変更を行ったものであるから,本件訂正発明との関係で代替技術に該当しない。 このように,本件訂正発明の作用効果を享受せず,被告各製品よ25りも技術的に劣る設計変更品がマツダに受け入れられたのは,代替- 11 -性を維持する範囲において,本件訂正発明の構成の一部を置換する程度のロータリバルブ方式のピストン式圧縮機でなければ,マツダにとって設計変更後の圧縮機として採用し得なかったからである。 c 一審原告は,莫大な開発コストと労力を投じ10年以上にわたって冷媒漏洩問題に取り組んだ結果,平成13年11月,本件訂正発5明の出願に至り,平成16年に世界で初めてロータリバルブ方式のピストン式圧縮機の販売開始に至った。これに対し,一審被告は,このような費用も労力も負うことなく,一審原告がロータリバルブ方式のピストン式圧縮機を市場に投入した後,本件訂正発明を実施したロータリバルブ方式のピストン式圧縮 始に至った。これに対し,一審被告は,このような費用も労力も負うことなく,一審原告がロータリバルブ方式のピストン式圧縮機を市場に投入した後,本件訂正発明を実施したロータリバルブ方式のピストン式圧縮機を製造し,平成20年10には韓国,米国において販売を開始し,平成24年には日本においても被告各製品の販売を開始し,市場に参入したのであるから,侵害態様としても悪質である。 d 以上の事実を総合すれば,一審原告が実施に対して受けるべき想定実施料率は,少なくとも8%を下らない。 15為替レートについて平成24年12月と平成25年1月の限界利益について,各月の為替レートの平均(平成24年12月につき1ドル83.64円,平成25年1月につき1ドル89.24円)で算定すべきとする一審被告の主張について異論はない。そうすると,これらの各月の売上につい20ても,同為替レートを基に算定すべきである(なお,被告各製品の平成25年2月から平成29年6月までの売上高及び限界利益(円ベース),平成24年12月分及び平成25年1月分の売上高及び限界利益(ドルベース)については争わない。)。 これを前提とすると,被告製品1については,売上高合計●●●●25●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●- 12 -●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●為替レート83.64円を乗じた●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●為替レート89.24円を乗じた●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●5●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●5●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●為替レート83.64円を乗じた●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●為替レート89.24円を乗じた●●●●●●●●●●●●●●●●となり,被告製品2については,売上高合計●●●●●●●10●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●為替レート83.64円を乗じた●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●為替レート89.24円を乗じた●●●●●●●●●●●●●●●15●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●為替レート83. 64円を乗じた●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●為替レート89.24円を乗じた●●●●●●●20●●●●●●●●●となる。 以上によれば,一審原告は,一審被告に対し,特許法102条2項により算定される損害の賠償として,限界利益の合計額●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●支払を請求することができる。また,同条3項により算定される損害の25賠償又は不当利得の返還請求として,売上高の合計額●●●●●●●●- 13 -●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 得の返還請求として,売上高の合計額●●●●●●●●- 13 -●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●の支払を請求することができる。 弁護士費用について本件訴訟において一審被告による特許権侵害の不法行為と相当因果5関係のある弁護士費用及び弁理士費用は,損害額●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●を下回るものではなく,そのうち,●●●●●●●●を請求する。 イ 一審被告の主張特許法102条2項により算定される損害について10a 特許法102条2項の適用がないことについてマツダは,カーエアコンシステムをデンソーないし一審原告からではなく,自社グループで調達できるよう,被告親会社,パナソニックとの合弁会社としてJCSを設立した。このため,マツダは特殊な製品を除いては,圧縮機については系列会社であるJCSから購入し,15JCSは系列会社である一審被告から本件製品を購入し,一審被告は親会社である被告親会社から本件製品を購入している。JCS設立の経緯からして,JCSが一審原告から本件訂正発明の実施品を購入することはあり得ない。前件侵害訴訟で一審原告勝訴の判決が下された際,マツダが仕入先を変更することなく,設計変更品の購入を選択し20ていることが,これを裏付ける。 b 限界利益の額について圧縮機とクラッチは別装置であり,被告製品の利益は,クラッチを含まないものとして算定されるべきである。 また,原判決は,平成24年12月分及び平成25年1月分の為25替レートに関する証拠はないとして,令和2年8月27日時点の為替- 14 -レート(1ドル=106円)で換算することで,限界利益を算 ,原判決は,平成24年12月分及び平成25年1月分の為25替レートに関する証拠はないとして,令和2年8月27日時点の為替- 14 -レート(1ドル=106円)で換算することで,限界利益を算定しているが,平成24年12月分及び平成25年1月分の為替レート(TTM) の平均はそれぞれ1ドル83.64円及び89.24円であるから(甲70の1及び2),被告製品の平成24年12月分及び平成25年1月分の限界利益は,この為替レートを用いて算出すべきであ5る(上記両月分の売上高についてもこの為替レートを用いて算出すべきことは争わない。)。 c 推定覆滅事由⒜ 本件訂正発明はロータリバルブ及びこれと一体となっている回転軸を,回転中心からずれたところでスリコギ運動させることが特10徴であるところ,シャフトとロータリバルブが偏心するだけでなくスリコギ運動をするので,機械的な問題が一層多く,例えば,ロータリバルブが潤滑油膜を破って軸孔と直接当接することによる接触面のフレッチング,オイルシールの損傷,摩擦,損耗,振動,騒音の発生,発熱,サービス寿命の短縮等,非常に多くの障15害を生じる可能性がある。 したがって,圧縮機等の製品を吟味する技術者にとっては,本件特許発明が明細書に記載された効果を有することと同時に,前記の障害を生じないことが必要であるところ,実験又は解析の結果が記載されていない本件明細書からは本件特許発明が主張する体積効率20向上効果が得られることはにわかには信じ難く,同時に,本件明細書からは前記障害に対する対策どころか,当該障害の存在が認識されていることすら読み取ることができない(なお,被告各製品では,厳密なクリアランス管理を採用することによって,本件訂正発明の技術的思想であるロータリバルブのスリコギ どころか,当該障害の存在が認識されていることすら読み取ることができない(なお,被告各製品では,厳密なクリアランス管理を採用することによって,本件訂正発明の技術的思想であるロータリバルブのスリコギ運動がもたらす障害を25解消している。)。このような状況において,本件訂正発明が需要- 15 -者の購買行動に与えた影響はゼロに等しいか,あるいはマイナスであって,積極的に寄与したと考えることはできない。 現に,需要者であるマツダは,本件訂正発明を実施しない設計変更品を購入しており,マツダにとって,本件訂正発明の効果は,購入意欲に結びついていない。 5⒝ 本件訂正発明に体積効率改善の効果がないことは前記のとおりである。 本件訂正発明に技術的価値がないことは,損害の算定に当たっても考慮されるべきである。 ⒞ 前記aで主張した被告製品の流通経路,一審被告(ハノンシステ10ムズグループ),JCS及びマツダの特殊な関係等の事情からすれば,本件特許権の侵害がなかった場合,その需要は,一審原告の製品に置き換わることはない。 ⒟ 本件訂正発明は,ピストン式圧縮機における冷媒吸入構造であり,論理的にピストン式圧縮機の一部の構造の特許である。 15また,本件訂正発明は,本件訂正により付加された構成である①ロータリバルブの外周が円筒形状(溝なし)であるとの構成と,②ロータリバルブの導入通路が回転軸内に形成された通路を介して連通する構成というものであり,もっぱら,圧縮機の中の冷媒吸入構造の中の更に一つの部品であるロータリバルブの形状に係20る発明である。 そうすると,本件特許権の実質的な価値は,本件訂正発明のうち,本件訂正により付加された構成に限定されるか,それにほぼ等しいものと評価せざるを得ず,本件訂正発明が, 形状に係20る発明である。 そうすると,本件特許権の実質的な価値は,本件訂正発明のうち,本件訂正により付加された構成に限定されるか,それにほぼ等しいものと評価せざるを得ず,本件訂正発明が,被告各製品に占める割合は極めて低いというべきである。 25⒠ クラッチの製造には高度の技術を要する。また,クラッチの構成- 16 -は,組み合わせる圧縮機だけによって決まる定型のものではなく,自動車やエンジンの種類や形式によって異なるため,製品ごとに顧客の要求事項に沿った設計製造が必要なことから費用が相対的にみて大きく発生する。また,クラッチは,圧縮機とは別個独立に取引されている。 5したがって,被告各製品の価額がクラッチを含むものである点を考慮しなかった原判決は不当である。 ⒡ 小括以上の事情を総合すれば,全体としての推定覆滅の割合は少なくとも8割,本件における特殊性を考慮すれば9割以上となると10解される。 特許法102条3項により算定される損害について原判決は,実施に対し受けるべき料率の認定において,その考慮要素の認定及び評価を誤っている。 a 実施料率認定の根拠等について15⒜ 本件特許権は,圧縮機の分野に係る日本の特許権1件であるところ,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●ライセンス契約(乙65の2。以下「本件ライセンス契約」という。) の事例が,本件の事例と最も共通性,近似性があるので,本件ライセ20ンス契約による実施料率を重視し,本件の実施料率を認定すべきである。 この点,原判決は,本件ライセンス契約の対象が本件特許権とは技術的な内容が相当に異なることを理由に,他の事例より特に重視すべき理由があるとはいえな 率を重視し,本件の実施料率を認定すべきである。 この点,原判決は,本件ライセンス契約の対象が本件特許権とは技術的な内容が相当に異なることを理由に,他の事例より特に重視すべき理由があるとはいえないとしているが,本件訴訟の事25案と本件ライセンス契約はいずれも圧縮機を販売するための特許- 17 -権の実施許諾を対象とするものであるから,実施許諾の対象は同じと評価すべきである。 ⒝ また,原判決は,甲19ないし21を根拠に,圧縮機の分野では,実施料率を3%程度とする例を中心としつつ,その前後の実施料率とする例も相当程度あると認定する。しかし,これらの事例は,5いずれも一審被告や一審原告とは何ら関係がない一般的なものであって,具体的な点において本件と共通性や類似性は全く認められない。さらに,本件特許権は,圧縮機の分野に係る日本の特許権1件であるから,特許法102条3項の実施に対し受けるべき料率を検討するに当たっては,日本の特許権1件の非独占的な実10施許諾による料率と対比すべきであるが,甲20は日本の特許権に関する実施許諾契約ではなく,また,独占的実施権を許諾した事案である。 b 特許発明の技術内容や重要性について本件訂正発明の構成が,体積効率改善の効果を奏しないか,むし15ろマイナスであること,設計変更品が被告各製品と同等の効果を奏していることは前記のとおりである。 c 特許発明の売上げ及び利益への貢献,侵害の態様について本件訂正発明の売上げ及び利益への貢献はほぼないか,さもなければマイナスであることは前記⒜のとおりである。 20また,侵害の態様についていえば,被告各製品は,本件訂正発明とは無関係に,厳密なクリアランス管理により,冷媒漏れ防止の効果を達成しているものである。 d 特許権者と侵 ⒜のとおりである。 20また,侵害の態様についていえば,被告各製品は,本件訂正発明とは無関係に,厳密なクリアランス管理により,冷媒漏れ防止の効果を達成しているものである。 d 特許権者と侵害者の競合関係について前記のとおり,被告各製品が組み込まれていたマツダ製の自25動車においては,圧縮機について,「被告親会社→一審被告→JCS- 18 -→マツダの商流」という系列関係が確立していることを考慮すると,特許権者と侵害者の競合関係が存在するとはいえない。 e その他の事情について本件訂正発明の作用効果について,前件侵害訴訟の控訴審判決(甲9)が「ロータリバルブの外周面が吸入通路の入口に近づき,圧5縮室内の冷媒が吸入通路から漏れ難くな」ることであると認定している(16頁14行目~16行目)一方,本件審決(甲18)が「回転軸を傾かせて,ロータリバルブの外周面を吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口付近の軸孔の内周面に押接」することと認定しており(63頁22行目~23行目),「押接」の要否という10本件の判断を左右する事項に関して矛盾している。 また,一審原告は,被告親会社に対し,韓国において本件特許権の韓国における対応特許権に基づいて,特許権侵害訴訟を提起したが,ソウル高等法院において被告親会社の主張が認められ,対象製品は対応韓国発明の保護範囲に属さないと認定し,一審原告の請求が棄却さ15れた(乙59)。本件特許権と対応韓国特許権は,特許請求の範囲は同一ではないものの,明細書の記載は同じ内容であり,発明の本質は全く同じである。一方,日本における前件侵害訴訟では,一審原告の請求が認容されている。 このように,各判断主体で判断が異なることは,本件特許発明の20価値が低いことを示すもの 発明の本質は全く同じである。一方,日本における前件侵害訴訟では,一審原告の請求が認容されている。 このように,各判断主体で判断が異なることは,本件特許発明の20価値が低いことを示すものである。 ⑶ 争点⑷(消滅時効)についてア 一審被告の主張一審原告は,遅くとも平成26年3月18日の時点において,被告親会社が製造した被告製品2が,日本で流通し,マツダに販売されているこ25とを認識し,一審被告が被告親会社の子会社として設立されていたことも- 19 -認識していた。 原判決は,一審原告は,被告親会社からマツダにRSコンプレッサーが販売される商流を具体的に把握することができなかったとし,一審証人Aは,被告親会社からマツダにRSコンプレッサーが販売される商流を具体的に把握することができなかったから,弁護士を通じて外部の調査会社5に商流調査を依頼し,平成26年10月17日に,その調査結果として,①被告親会社がマツダに対してロジスティックス会社経由で直接納品するルート,②被告親会社の日本法人である一審被告が輸入し,マツダに納品するルート,③JCSが輸入し,マツダに納品するルートの3つがあるのではないかと報告を受けていたと証言するが,これを裏付ける調査報告書10は,書証として提出されていない。 イ 一審原告の主張争う。 第3 当裁判所の判断当裁判所は,一審原告の請求は6億9885万8050円及びこれに対す15る遅延損害金の支払を求める限度で理由があると判断する。その理由は以下のとおりである。 1 本件訂正発明について原判決の第4の1に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 争点⑴(被告各製品が本件訂正発明の技術的範囲に属するか)について20原判決の第4の2ないし4に記載の 件訂正発明について原判決の第4の1に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 争点⑴(被告各製品が本件訂正発明の技術的範囲に属するか)について20原判決の第4の2ないし4に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 争点⑵キ(無効理由7 実施可能要件又はサポート要件違反)について⑴ 実施可能要件違反についてア 本件明細書の発明の詳細な説明には,発明の課題,課題を解決する手段,当該構成の作用,当該構成により得られる効果が記載され,実施例25において具体的な構成が記載され,特に【0043】ではクリアランス- 20 -管理についても具体的な示唆があることから,本件明細書の発明の詳細な説明の記載には,当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されており,当業者は,本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件優先日の技術常識に基づいて,過度の試行錯誤を要することなく,その物を製造し,使用できるものというべきである。 5したがって,本件訂正発明に実施可能要件違反は認められない。 イ 一審被告は,前記第2の3⑴アのとおり,撓み可能なスラスト軸受を用いた本件訂正発明においては,各種の障害を生起する可能性があるから,その実施に当たっては過度の試行錯誤を要すると主張する。しかし,圧縮機の分野においては,冷媒と共にコンプレッサーに帰還してく10るオイル(潤滑油)が摺動部を流れることによって潤滑がなされ,作動室内では室内の隙間をシーリングして冷媒のもれを防ぐ役割を果たしていることは技術常識であり(甲11),本件訂正発明を実施するに際し,摺動面の潤滑油の油膜が途切れないように付勢力を設定したり,潤滑油を選定したりすることは,圧縮機の設計上,当然に求められることで,15そのための調整が必要となるこ 本件訂正発明を実施するに際し,摺動面の潤滑油の油膜が途切れないように付勢力を設定したり,潤滑油を選定したりすることは,圧縮機の設計上,当然に求められることで,15そのための調整が必要となることをもって,過度の試行錯誤とはいえない。 また,一審被告は,乙67によれば設計変更品であるRS-15Nの方が,本件訂正発明の実施品であるRS-15(被告製品1)より体積効率において優れているから,本件訂正発明が効果を奏さないことは明らか20であるとし,本件訂正発明が特定の条件下では効果を奏することがあったとしても,そのための条件が何であるかが明細書に記載されていないとして,その実施に当たっては過度の試行錯誤を要するとも主張する。 しかし,乙67は,RS-15NとRS-15の構造上の違いを除き,実験条件が不明であり,その信用性を検証することができず,直ちにこれ25を採用することはできない。 - 21 -また,甲28,乙67によれば,RS-15Nは,ロータリバルブのラジアル軸受構造についてのみ,本件訂正発明の技術的範囲に属するRS-15(被告製品1)と異なるものである。すなわち,RS-15が,シャフト50の前側が,シャフト用孔21を介してフロント側シリンダブロック20によって直接支持され,また,シャフト50の後側は,シャフト5用孔31を介してリヤ側シリンダブロック30によって直接支持されている(引用に係る原判決203頁11行目~16行目)のに対し,RS-15Nは,シャフト50の前側が,フロント側シリンダブロック20の内側に設置された滑り軸受によって直接支持され,また,シャフト50の後側は,リヤ側シリンダブロック30の内側に設置された滑り軸受によって直10接支持されている点が異なる(本件訂正発明の構成要件Eを充足しない。 滑り軸受によって直接支持され,また,シャフト50の後側は,リヤ側シリンダブロック30の内側に設置された滑り軸受によって直10接支持されている点が異なる(本件訂正発明の構成要件Eを充足しない。)。他方で,RS-15Nは,RS-15同様に,本件訂正発明のその余の構成要件を充足するものであり,RS-15が構成要件Cの「ロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段」及び構成要件Fの「該圧縮反力伝達手段の一部をなすスラスト軸受手段」を充足することにより,吐出行15程にあるシリンダボアのフロント側通路に向けて近づくようにシャフトの外周面が変位し,このことによって冷媒漏れが防止されることは,引用に係る原判決の第4の3における説示のとおりである。そうすると,RS-15同様に本件訂正発明の構成要件C及びFを充足するRS-15Nが,被告製品1と同等以上の圧縮率を達成していることは,本件訂正発明が体20積効率の向上という効果を奏することを否定するものとはいえず,乙67の実験結果をもって,前記実施可能要件についての判断が左右されるものではない。 ⑵ サポート要件違反についてア 前記⑴アのとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,発明の課題,25課題を解決する手段,当該構成の作用,当該構成により得られる効果が- 22 -記載され,実施例において具体的な構成が記載されている。 そして,本件訂正発明は,構成要件Aにおいて,発明の前提となるロータリバルブを備えたピストン式圧縮機が特定され,構成要件CないしFでは,吐出行程にあるシリンダボア内のピストンに対する圧縮反力をロータリバルブに伝達して,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸5入通路の入口に向けてロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段とを有すること,当該圧縮反力伝達手段を ピストンに対する圧縮反力をロータリバルブに伝達して,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸5入通路の入口に向けてロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段とを有すること,当該圧縮反力伝達手段を構成するラジアル軸受及びスラスト軸受の構成が特定されており,これらは,本件訂正発明の詳細な説明において,課題を解決する手段として記載された発明に対応するから,本件訂正発明の特許請求の範囲に記載された発明は,発明の詳細な説明10に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 したがって,本件訂正発明にサポート要件違反は認められない。 イ 一審被告は,前記第2の3⑴アのとおり,乙67によれば設計変更品であるRS-15Nの方が,本件訂正発明の実施品であるRS-1515より体積効率において優れているから,本件訂正発明が効果を奏さないことは明らかであるとし,本件訂正発明の構成では,発明の目的である体積効率の向上を達成することはできないから,本件訂正発明は,課題の解決手段として発明の詳細な説明に記載したものでないと主張する。 しかし,乙67は,RS-15NとRS-15の構造上の違いを除き,20実験条件が不明であり,直ちにこれを採用することはできないことは,前記⑴イのとおりである。 また,前記アのとおり,本件訂正発明は,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口に向けてロータリバルブを付勢する圧縮反力伝達手段を有し,これが課題解決手段に対応するものであるところ,乙6257の実験におけるRS-15Nは,本件訂正発明の構成要件E以外の構成- 23 -要件を充足するもので,RS-15や本件訂正発明と同様の撓み可能なスラスト軸受構造,すわなち, ところ,乙6257の実験におけるRS-15Nは,本件訂正発明の構成要件E以外の構成- 23 -要件を充足するもので,RS-15や本件訂正発明と同様の撓み可能なスラスト軸受構造,すわなち,圧縮反力伝達手段に係る構成(スラスト軸受)を備え,これにより,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口に向けてロータリバルブを付勢するという,上記課題解決手段に相当する構成となっている(ラジアル軸受の構成を除く。)のであるから,当5該RS-15Nが,被告製品1と同等以上の圧縮率を達成していることは,本件訂正発明の効果を否定するものとはいえず,乙67の実験によって,上記サポート要件についての判断が左右されるものではない。 4 争点⑶(損害額及び不当利得額)について⑴ 被告各製品の売上高及び限界利益について10ア 売上高平成25年2月から平成29年6月までの被告各製品の売上高が,被告製品1につき●●●●●●●●●●●●●●被告製品2につき●●●●●●●●●●●●●●であることに争いはない。 また,平成24年12月,平成25年1月の被告各製品のドルベース15での売上高が,被告製品1につき平成24年12月●●●●●●●●●●平成25年1月●●●●●●●●●●●被告製品2につき平成24年12月●●●●●●●●●●●平成25年1月●●●●●●●●●●であること,平成24年12月の為替レートの平均は1ドル83.64円(乙70の1),平成25年1月の為替レートの平均は1ドル89.24円(乙7200の2)であり,この両月分の売上高についてもこの為替レートを用いて算出すべきことについても争いがない。そうすると,両月の被告各製品の円ベースでの売上高は,被告製品1につき平成24年12月●●●●●●●●●●●平成25年 分の売上高についてもこの為替レートを用いて算出すべきことについても争いがない。そうすると,両月の被告各製品の円ベースでの売上高は,被告製品1につき平成24年12月●●●●●●●●●●●平成25年1月●●●●●●●●●●●●●被告製品2につき平成24年12月●●●●●●●●●●●●●平成25年1月●●●●●25●●●●●●●となる。 - 24 -これらを合計すると,被告製品1の売上高総計は●●●●●●●●●●●●●●被告製品2の売上高総計は●●●●●●●●●●●●●●である。 イ 限界利益について平成25年2月から平成29年6月までの被告各製品の限界利益が,5被告製品1につき●●●●●●●●●●●被告製品2につき●●●●●●●●●●●●であることは争いがない。 また,平成24年12月,平成25年1月の被告各製品のドルベースでの限界利益が,被告製品1につき平成24年12月●●●●●●●●●平成25年1月●●●●●●●●●被告製品2につき平成24年12月●10●●●●●●●●平成25年1月●●●●●●●●であること,平成24年12月分については同月の為替レートの平均である1ドル83.64円,平成25年1月分については同月の為替レートの平均である1ドル89. 24円で換算すべきことについても争いがない。そうすると,両月の被告各製品の円ベースでの限界利益は,被告製品1につき平成24年12月●15●●●●●●●●●平成25年1月●●●●●●●●●●被告製品2につき平成24年12月●●●●●●●●●●平成25年1月●●●●●●●●●となる。 これらを合計すると,被告製品1に係る限界利益が●●●●●●●●●●●被告製品2に係る限界利益が●●●●●●●●●●●●であると認20められる。 ⑵ 特許法102条3項 ●●●●となる。 これらを合計すると,被告製品1に係る限界利益が●●●●●●●●●●●被告製品2に係る限界利益が●●●●●●●●●●●●であると認20められる。 ⑵ 特許法102条3項についてア 特許法102条3項による損害額として,侵害品の売上高を基準とし,そこに実施に対し受けるべき料率を乗じて算定する場合,実施に対し受けるべき金銭の料率の算定に当たっては,①当該特許発明の実際の実施25許諾契約における実施料率や,それが明らかでない場合には業界におけ- 25 -る実施料の相場等も考慮に入れつつ,②当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性,他のものによる代替可能性,③当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上及び利益への貢献や侵害の態様,④特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して,合理的な料率を定めるべきである。以下,順に5検討する。 ① 当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や,それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等 本件訂正発明について実際に実施許諾契約が締結されたことを示す証拠はない。 10 a Intellectual Property Research Associates作成の自動車関連技術分野のロイヤルティ料率の調査結果の報告書には,「車両用空調システム用の新型の圧縮機及び液分離器の製造につき,非公開の外国車両製造企業と技術ライセンス契約を締結した。1998年後半に技術移管15を完了予定の上で,Shanghai Machinery(ライセンシー)は,7年間にわたって製造される全ての対象製品の正味販売価格の3%を外国車両製造企業に支払う必要がある。」との記載,「Prime Manufa ,Shanghai Machinery(ライセンシー)は,7年間にわたって製造される全ての対象製品の正味販売価格の3%を外国車両製造企業に支払う必要がある。」との記載,「Prime Manufacturing Company(ライセンシー)は,オフロード用車両及びバスのため20の高効率な空調システムの開発に用いられる,他に類をみない環境保護上安全でかつオゾン保護機能を備えた車両空調技術につき,独占的な全世界の特許契約を締結した。Primeは,販売された空調や冷媒システムそれぞれの範囲内に含まれる全てのRovac(ライセンサー)の基本部品の正味販売価格の6%の実施料25をRovacに支払う。これには,主に圧縮機,熱交換機,弁体,- 26 -配管システムが含まれる。」との記載がある(甲19)。 b 米国のマーケティングコンサルティング会社(AUS Consultants)が作成したロイヤルティのデータベースには,自動車関連技術につき,「ライセンス協定:会社は軌道ベーン圧縮機を製造する独占的ライセンスを有する。ライセンスは,自動5車空調,輸送用冷凍機,工業用空気圧縮機,真空ポンプを含めて複数の市場に及ぶ。:インド,パキスタン,セイロン,ネパール,バングラディッシュ」「支払い詳細:実施料:実施料率は,・・・上記各国以外に輸出する場合は8%,上記各国へ販売する場合は5%と開示された。」との記載,「ライセンス協定:10韓国企業は・・・エジプトの車両部品会社と,車両用空調部品の製造及び組立に関する韓国企業の技術を当エジプト企業に供与する契約を締結した。」「支払い詳細:前払い金:契約の下で,Elteriak(ライセンシー)は,手付金の200.000アメリカドル,及び実施料:10月を起算日とした5年間の純売上高1 ト企業に供与する契約を締結した。」「支払い詳細:前払い金:契約の下で,Elteriak(ライセンシー)は,手付金の200.000アメリカドル,及び実施料:10月を起算日とした5年間の純売上高15の3%の実施料をHalla(ライセンサー)に支払わなければならない。」との記載がある(甲20)。 c 経済産業省知的財産政策室編「ロイヤルティ料率データハンドブック」(甲21)には,ロイヤルティ料率アンケート調査結果として,本件訂正発明の技術分野に近似する原動機,圧縮性流体用20ポンプ等を対象製品とする「技術分類 機関またはポンプ」において,16件の事例があり,実施料率1%未満が1件(6. 3%),実施料率1~2%未満が3件(18.8%),実施料率2~3%未満が2件(12.5%),実施料率3~4%未満が6件(37.5%),実施料率5~6%未満が2件(12.5%),25その他2件(12.5%)と記載されている。 - 27 -d ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●5●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●本件ライセンス契約によれば,ロイヤルティは101台当たり固定額で支払われるので,料率方式とは異なる。 e ●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●本件ライセンス契約によれば,ロイヤルティは101台当たり固定額で支払われるので,料率方式とは異なる。 e ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●15●●●●●●●●●●●●●●●●●●●同契約も,契約時及び量産化時に固定額で支払うもので,料率方式とは異なる。 本件訴訟において,本件特許権の技術分野については実際の実施許諾契約の実施料率を示す証拠はない。 本件特許権の技術分野に近似する分野(「機関またはポンプ」)20の実施料率についてのアンケート調査結果によれば,実施料率3~4%未満の例が最も多く(37.5%),実施料率5~6%未満の例や実施料率2~3%未満の例は同数(12.5%),実施料率1~2%未満は3件(18.8%)とされており,また,他の調査結果やデータベースには,実施料率3%又は6%の例や実施料率5~8%又25は3%の例もあったとされていることからすれば,圧縮機の分野でも,- 28 -実施料率を3%から4%程度とする例を中心としつつ,その前後の実施料率とする例も相当程度あることがうかがわれる。 なお,一審被告は,前記第2の3本件訴訟の事案と本件ライセンス契約はいずれも圧縮機を販売するための特許権の実施許諾を対象とするものであって,実施許諾の対象は同じと評価5すべきであるから,本件ライセンス契約を重視すべきであると主張するが,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● と評価5すべきであるから,本件ライセンス契約を重視すべきであると主張するが,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●10●●●●●●●●●このようなライセンス契約の事例を他の事例より特に重視すべき理由があるとはいえず,圧縮機分野の実施料率の一例としてみるのが相当である。 また,一審被告は,甲19ないし21に掲げられた事例は,いずれも,一審被告や一審原告とは何ら関係がない一般的なものであって,15具体的な点において,本件と共通性や類似性はないとか,本件特許権は,圧縮機の分野に係る日本の特許権1件であるから,特許法102条3項の実施に対し受けるべき料率を検討するに当たっては,日本の特許権1件の非独占的な実施許諾による料率と対比すべきであるところ,甲20は日本の特許権に関するものではなく,また,独占的実施20許諾の事例であるなどと主張するが,実施料率を定める事例として,具体的な点において完全に合致する事例がなければ,同分野の他の事例(他の国の特許権に関するものを含む。)を参酌することは当然であるし,甲20で独占的とされるのは製造のみであり,販売についてライセンシーが独占権を得ていることはうかがわれない。したがって,25一審被告の主張は採用できない。 - 29 -② 本件訂正発明の技術内容や重要性,他のものによる代替可能性 本件優先日前である平成9年3月25日に発行された書籍「カーエアコン」(甲11)には,ピストン式圧縮機の斜板形のものでロータリバルブを使用したものは記載されておらず,113頁の図6. 性 本件優先日前である平成9年3月25日に発行された書籍「カーエアコン」(甲11)には,ピストン式圧縮機の斜板形のものでロータリバルブを使用したものは記載されておらず,113頁の図6.5で吸入弁(リードバルブ)が図示されている。 5従来技術であるリードバルブ方式は,シリンダ室と吸入室の圧力差が必要であること,流路断面積が小さいこと,弁による吸入抵抗が発生するという難点があることから,シャフトの回転によって冷媒を提供するロータリバルブ方式が提案されてはいたものの(乙18,22,23,28,30等),回転軸の外周面と軸孔の内周面のクリア10ランスによって,吐出行程時の圧縮室から冷媒が漏れるという問題があったこと,クリアランス管理が非常に難しいこと(本件明細書【0004】)から実用化には至っていなかったのであり,本件訂正発明において,ロータリバルブを備えた回転軸に伝達される圧縮反力を利用して,吐出行程にあるシリンダボアに連通する吸入通路の入口に向15けてロータリバルブを付勢させて,体積効率を向上させていること(本件明細書【0015】),クリアランスに関する厳密な管理が不要となること(本件明細書【0043】)は,コスト面も含め,ロータリバルブ方式を実用化するのに寄与したものと認められ,一審原告が,本件優先日後に,ロータリバルブ方式のピストン式圧縮機を販売20していることは争いがない。 もっとも,実用化当初の一審原告の製品(10SR15C)は,本件訂正前の構成であるから,ロータリバルブが円筒状でなく凹部や溝が設けられており,本件訂正発明そのものの実施品ではないと考えられる。しかし,同製品も,圧縮反力で冷媒漏れを防止するという本25件訂正発明の技術思想を利用するものであり,この点については本件- 30 - ており,本件訂正発明そのものの実施品ではないと考えられる。しかし,同製品も,圧縮反力で冷媒漏れを防止するという本25件訂正発明の技術思想を利用するものであり,この点については本件- 30 -訂正の前後で変更はない。 そうすると,本件訂正発明はロータリバルブ方式のピストン式圧縮機の実用化に寄与したものというべきで,相応の顧客吸引力があるということができる。 一審被告は,被告各製品の販売先であるマツダに対し,設計変更5品を継続して販売しているが,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●少なくとも,侵害時(平成24年12月から平成1029年6月)の大部分において,本件訂正発明の効果を奏する代替技術はなかったということになる。 ③ 当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上及び利益への貢献や侵害の態様本件訂正発明がロータリバルブ方式を実用化するのに貢献したこ15とは前記②のとおりである。 一方,どの程度の体積効率の向上がもたらされるかは具体的数値をもっては明らかではなく,本件訂正発明の作用効果についての顧客吸引力等は一定程度限定される。 被告各製品はクラッチ部分と組み合わされて販売されている。 20乙62によれば,被告各製品に該当する部品番号に相当するコンプレッサー(クラッチ部分及び圧縮機部分)の販売価格は468.15ドル,クラッチ部分のみの販売価格は231.82ドルとする事例があることが認められるが,これはアフターマーケット(商品販売後の需要に対する正規ディーラーではない業者の市場)における販売価25格 ドル,クラッチ部分のみの販売価格は231.82ドルとする事例があることが認められるが,これはアフターマーケット(商品販売後の需要に対する正規ディーラーではない業者の市場)における販売価25格であり,直ちに一審被告とJCSないしマツダとの間の被告各製品- 31 -の取引にあてはめることはできない。また,一審被告は,被告各製品と別にクラッチを販売しているものではない。 しかし,クラッチ部分と圧縮機部分は観念的には区別することができ,特許法102条3項の適用に当たっては,被告各製品の売上高は,クラッチ部分を含むものであるという事情も考慮する必要がある。 5一審被告は,前記第2の3被告各製品は,本件訂正発明とは無関係に,厳密なクリアランス管理により,冷媒漏れ防止の効果を達成していると主張する。 一審被告のいう被告各製品における「厳密なクリアランス管理」は,シャフトとシャフト用孔を極めて高精度に仕上げ,クリアラン10スを30μmに設定する構造を採用し,ラジアル軸受は,斜板取付け部とスラスト軸受を除く全領域でシャフトを支持する軸受とし,さらに,軸受がシリンダブロックの外側に突き出る長い構造を採用することによって,シャフトの動きを伴うことなく,冷媒が吸入通路の入口から漏出するのを防止するというものである(引用に係る15原判決12頁5行目ないし13行目)。 しかし,一審被告の主張のとおり厳密なクリアランス管理により冷媒漏れを防止しているというのであれば,乙3報告書(被告製品1〔クリアランスが30μm〕と,クリアランスを50μm,70μm,90μm,110μmに変更した圧縮機の体積効率を比較したもの)20において,クリアランスが30μmである被告製品1よりも50μmのものの方が体積効率は落ちることになるは を50μm,70μm,90μm,110μmに変更した圧縮機の体積効率を比較したもの)20において,クリアランスが30μmである被告製品1よりも50μmのものの方が体積効率は落ちることになるはずであるが,30μmと50μmとで体積効率はほとんど変わらなかったとされているのであるから,一審被告の主張は十分な裏付けを欠くものというべきである。 また,仮に,被告各製品が,一審被告主張の厳密なクリアランスを25採用し,その構成が冷媒漏れの防止に対する効果を奏することがある- 32 -としても,一方で,被告各製品は,原判決別紙イ号物件説明書及びロ号物件説明書記載のとおりの構造を有しており,ピストン60に作用した圧縮反力Fが斜板やスラスト荷重吸収機能が付与されたフロント側スラスト軸受70に伝達され,このスラスト荷重吸収により斜板51の動きを許容することで斜板51の径中心部を中心としてシャフト550を傾かせようと作用し,これによって,シャフト50(回転弁)は,吐出行程中のシリンダボア22に連通するフロント側通路23の入口に向けて付勢され,この際シャフト50が変位しているのであって,この本件訂正発明の構成要件C,Fを充足する構成によっても,冷媒漏れが防止されるものといえることは,原判決が第4の3で説示10するとおりであるから,本件訂正発明とは無関係に冷媒漏れを防止しているという一審被告の主張は採用できない。 ④ 特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針一審原告は,ロータリバルブ方式のピストン式圧縮機を製造・販売しており,一審被告は,平成24年12月以降,ロータリバルブ15方式のピストン式圧縮機である被告各製品を輸入・販売しているのであるから,両者は競合関係にある。一審被告は,前記第2の3⑵のとおり,被 おり,一審被告は,平成24年12月以降,ロータリバルブ15方式のピストン式圧縮機である被告各製品を輸入・販売しているのであるから,両者は競合関係にある。一審被告は,前記第2の3⑵のとおり,被告各製品が組み込まれていたマツダ製の自動車においては,圧縮機について,「被告親会社→一審被告→JCS→マツダの商流」という系列関係が確立しているとして競業関係を否20定するが,ここでは,特許権者と侵害者の間の料率を定める上で競業関係が問題とされているのであるから,一審原告がマツダに直接販売することができるかどうかの問題ではなく,一審被告の主張は採用できない。 ロータリバルブ方式のピストン式圧縮機の市場は寡占状態にあり,25相互に実施許諾を行っていない閉ざされた市場傾向にある(弁論の- 33 -全趣旨)。 イ 以上の検討を踏まえると,圧縮機の分野では,実施料率を3%から4%程度とする例を中心としつつ,その前後の実施料率とする例も相当程度あることがうかがわれること,本件訂正発明が相応の技術的価値を有し,代替品もなかったこと,一審原告と一審被告が競業関係にあり,5相互に実施許諾を行うことが考えにくいこと,他方,本件訂正発明の作用効果に対する顧客吸引力等は一定程度限定されること,被告各製品の売上高はクラッチ部分を含むものであること等の本件諸事情を考慮すれば,特許権侵害をした者に対して事後的に定められるべき,本件での実施に対し受けるべき料率は,3%と認めるのが相当である。 10なお,一審被告は,第2の3本件訂正発明の作用効果や侵害の成否等について,前件侵害訴訟における知財高裁判決や本件無効審決,ソウル高等法院等,判断主体によって判断が分かれていることを理由に,本件訂正発明の価値が低いと主張するが,事前の実施許諾契約の料 害の成否等について,前件侵害訴訟における知財高裁判決や本件無効審決,ソウル高等法院等,判断主体によって判断が分かれていることを理由に,本件訂正発明の価値が低いと主張するが,事前の実施許諾契約の料率については特許権が無効となる可能性等も考慮して算定されるのと15異なり,特許法102条3項の損害は,特許権が有効であり,特許権侵害があることを前提に算定されるものであるから,別個の手続の状況を考慮に入れるのは相当でない。 ウ 損害額の算定前記⑴ア認定の被告製品1及び同2の売上高によれば,特許法10220条3項による一審原告の損害額は,以下の計算式のとおり,合計●●●●●●●●●●●●となる。 (計算式)・ 被告製品1(RS-15)●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●25●●●●●●●●●●●●●●- 34 -・ 被告製品2(RS―13)●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●・ 合計 ●●●●●●●●●●●●エ 特許法102条2項により算定される損害について5特許法102条2項により特許権者が受けた損害と推定される侵害者が侵害行為により受けた利益の額は,侵害者の侵害品の売上高から,侵害者において侵害品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額であるところ,前記⑴イのとおり,●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●10●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●であり,●●●●●●●●●●●●●●が一審被告の特許権侵害行為により一審原告が被った損害の額と推定される。 そうすると,この限界利益の額●●● 10●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●であり,●●●●●●●●●●●●●●が一審被告の特許権侵害行為により一審原告が被った損害の額と推定される。 そうすると,この限界利益の額●●●●●●●●●●●●が同条2項による損害の上限となるが,この金額が同条3項による前記損害●●●15●●●●●●●●●より少ないことは明らかであるから,同条2項の推定の覆滅事由の有無にかかわらず,同条3項により算定される損害額が同条2項により算定される損害額を上回ることは明らかといえる。したがって,同条2項による損害についてはこれ以上の判断を要しない。 オ 消費税相当額20消費税は,「国内において事業者が行つた資産の譲渡等」に課されるものである(消費税法4条1項)。「資産の譲渡等」には,「無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠償金」が含まれると解する消費税基本通達があること(消費税基本通達5-2-5)から,特許権を侵害された者が特許権侵害25の不法行為に基づく損害賠償金を侵害者から受領した場合,その損害- 35 -賠償金は消費税の課税対象とされているものと解される。そうすると,本件では,前記エのとおり特許法102条3項により算定された●●●●●●●●●●●●が損害賠償金となるところ,一審原告の損害額の算定に当たっては,上記損害額に消費税相当額を乗じた額を加算するのが相当と解される。一審原告は,消費税相当額として損害額に58%を乗じた額を請求しており,その額は,以下の計算式のとおり,●●●●●●●●●●となる。 (計算式)●●●●●●●●●●●●×8%=●●●●●●●●●●したがって,消費税相当額を加えた損害額は,●●●●●●●●●10●●●となる。 一審被 ●●●●●●●●となる。 (計算式)●●●●●●●●●●●●×8%=●●●●●●●●●●したがって,消費税相当額を加えた損害額は,●●●●●●●●●10●●●となる。 一審被告は,一審原告の主張する損害額の根拠となる一審被告の売上について既に消費税相当額を納税済みであり,国が既に支払われた一審被告の売上に対応する消費税相当額に加え,当該売上に対応する知的財産権侵害の損害賠償額について消費税相当額を重ねて徴収でき15る理由はなく,消費税相当額を加算することは認められないと主張する。しかしながら,本件では,特許法102条3項により算定された●●●●●●●●●●●●が損害賠償金となり,この損害賠償金を侵害者から受領することが「資産の譲渡等」に当たると解されているのであるから,一審被告が被告各製品の売上げについて消費税相当額を20納付したことをもって,一審原告が本件の損害賠償金について消費税を課税されないことにはならないと解される。したがって,一審被告の上記主張を採用することはできない。 カ 弁護士費用及び弁理士費用本件事案の性質・内容,本件訴訟に至る経過,本件審理の経過等諸般の25事情に鑑みれば,一審被告による不法行為と相当因果関係のある弁護士費- 36 -用及び弁理士費用は,●●●●●●をもって相当と認める。 キ 小括以上によれば,一審原告の損害額は,6億9885万8050円となる。 なお,一審原告は,民法703条に基づき不当利得金の返還請求をしているが,当該請求が上記の損害額を上回ると認めることはできないから,5これについては判断を要しない。 5 争点⑷(消滅時効)について原判決の第4の14における説示のとおりであるから,これを引用する。 第4 結論 回ると認めることはできないから,5これについては判断を要しない。 5 争点⑷(消滅時効)について原判決の第4の14における説示のとおりであるから,これを引用する。 第4 結論以上によれば,一審原告の請求は,6億9885万8050円及びこれに対10する不法行為の後の日である平成29年9月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるところ,これと異なる原判決を一審原告の控訴に基づき主文1項のとおり変更し,一審原告の当審において追加された請求は理由がないから棄却し,一審被告の控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 15 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官菅 野 雅 之 裁判官本 吉 弘 行 - 37 - 裁判官岡 山 忠 広
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