主文 本件控訴を棄却する。当審における未決勾留日数中八〇日を原判決の本刑に算入する。理由 本件控訴の趣意は、弁護人山田克己提出の控訴趣意書に記載するとおりであるから、ここに、これを引用するが、これに対する当裁判所の判断は、次のとおりである。控訴趣意第一点法令違反若しくは事実誤認の主張について、所論は、原判決は、原判示第一のA、同第二のBに対する関係(但し同(二)の事実について)において、いずれも詐欺罪の成立を認め、被告人と同女らとの間には当時戸籍簿上婚姻関係があつても、被告人には本来のいわゆる婚姻意思を欠いていたのであるから、かかる事案においては刑法二五一条、二四四条前段の適用がないとしているが、被告人は、右Aの場合も、Bの場合も、共に真実婚姻する意思のもとに、同女らと共に適式の婚姻届を了し、同棲のうえ、夫婦生活を送つていたものであるから、同女らに対する関係においては夫婦間の犯罪として刑法二五一条、二四四条前段の規定を適用すべく、従つて、右各事実については刑の免除の言渡をすべきである、というのである。<要旨>然し、原判決引用の当該事実関係の証拠、特に、原判示第一事実につき、被告人の検察官に対する昭和四八</要旨>年七月三〇日付供述調書、同司法警察員に対する同年六月二七日付供述調書、Aの司法警察員に対する供述調書、原判示第二事実につき、被告人の検察官に対する昭和四八年六月二六日付、同年七月三日付及び同月六日付各供述調書、同司法警察員に対する同年六月一七日付、同月二二日付、同月二四日付及び同年七月九日付各供述調書、Bの検察官に対する供述調書によれば、被告人は、真実右A、Bと結婚して継続的に夫婦生活を営む意思はなく、同女らとの婚姻届を所轄区役所に提出しても、いずれ時期を見はか 日付及び同年七月九日付各供述調書、Bの検察官に対する供述調書によれば、被告人は、真実右A、Bと結婚して継続的に夫婦生活を営む意思はなく、同女らとの婚姻届を所轄区役所に提出しても、いずれ時期を見はからつて離婚離籍の手続をする意思であり、婚姻届を提出するというのは、専ら同女らをして、被告人と正式な婚姻関係にあり継続的に夫婦生活を営むことができるものと信用させ、その信用関係に乗じ、同女らを欺罔して金員を騙取するための手段としてなされたものであることが認定できるのである。 、被告人は、真実右A、Bと結婚して継続的に夫婦生活を営む意思はなく、同女らとの婚姻届を所轄区役所に提出しても、いずれ時期を見はからつて離婚離籍の手続をする意思であり、婚姻届を提出するというのは、専ら同女らをして、被告人と正式な婚姻関係にあり継続的に夫婦生活を営むことができるものと信用させ、その信用関係に乗じ、同女らを欺罔して金員を騙取するための手段としてなされたものであることが認定できるのである。そして、Aとの間には、所轄区役所において、昭和四七年六月一七日婚姻届をし、同年七月一日離婚届をしたこと、Bとの間には、所轄区役所において、同年一〇月六日婚姻届をし、同年一一月八日迄戸籍簿上夫婦として記載されていたことは、関係証拠上明らかであるが、右両女との婚姻届はいずれも被告人が前記の意図のもとに、財物騙取の手段としてしたものであり、戸籍上の婚姻関係を作為したに過ぎないものであるから、被告人において、右両女と婚姻の意思のなかつたことはもとより、同女らにおいても被告人の真意を知つたならば被告人といずれも婚姻する意思はなかつたもので、婚姻はいずれも無効というべきであり、たとえ、その婚姻の無効が訴により明確にされない場合てあつても、前記の如く財物騙取の手段として戸籍上の婚姻関係を作為したに過ぎない場合においては、戸籍簿の外観上婚姻関係が認められるとしても、その戸籍簿上の婚姻関係の存続する間に被告人がA、Bから金員を騙取した原判示第一、同第二の(二)の各事実について、刑法二五一条、二四四条前段の規定を適用し刑の免除をするということは、もともと夫婦間の財物の得喪に法が立ち入らないとした前記法条の趣旨にも反するものというべく、これと同旨に出た原判決には、記録上所論の如き事実誤認のかどの 段の規定を適用し刑の免除をするということは、もともと夫婦間の財物の得喪に法が立ち入らないとした前記法条の趣旨にも反するものというべく、これと同旨に出た原判決には、記録上所論の如き事実誤認のかどの認められないのはもとより、刑法二五一条、二四四条の解釈適用を誤つた違法はない。論旨は理由がない。同第二点事実誤認の主張について、所論は、原判示第二の(三)の事実について、原判決は、被告人がほしいままにBとの離婚届一通を作成偽造し、これを文京区役所戸籍係員に真正に成立したもののように装つて提出行使し、戸籍簿の原本にその旨不実の記載をなさしめた、との事実を認定しているが、Bは被告人との離婚に同意していたものであるから、原判決はこの点において事実の誤認がある、という。 違法はない。論旨は理由がない。同第二点事実誤認の主張について、所論は、原判示第二の(三)の事実について、原判決は、被告人がほしいままにBとの離婚届一通を作成偽造し、これを文京区役所戸籍係員に真正に成立したもののように装つて提出行使し、戸籍簿の原本にその旨不実の記載をなさしめた、との事実を認定しているが、Bは被告人との離婚に同意していたものであるから、原判決はこの点において事実の誤認がある、という。然し、原判決引用の当該関係証拠、特に、Bの検察官に対する供述調書、同昭和四八年五月三日、同月一九日付司法警察員に対する各供述調書によれば、被告人は、昭和四七年一一月七日ころBに対し、「結婚詐欺の件で警察が調べに来た、お前が警察にたれ込んだのだろう、警察が調べにくるから一時籍を抜く、」といつて同女との離婚届の提出を強く同女に迫つたが、籍を抜けばそれ迄被告人に貸したことにしてある金員の返済を受けることがてきなくなると思つた同女は、被告人の暴力を使つての離婚届の提出方要求に応ぜず、その後所轄の文京区役所係員に対し、被告人が離婚届を出しに行つても、同女は承知していないことだから、受理しないで貰いたい旨、わざわざ電話で申込んでいる事実も認められるのであり、同女か被告人の離婚の申出を承諾していたとの事実は論旨の独自の主張というべく、この点について、記録を精査してみても、原判決の事実認定に誤認を疑うべきかどはなく、原判示第二の(三)の事実は原判決引用の関係証拠上優に認定できるのであるか たとの事実は論旨の独自の主張というべく、この点について、記録を精査してみても、原判決の事実認定に誤認を疑うべきかどはなく、原判示第二の(三)の事実は原判決引用の関係証拠上優に認定できるのであるから、論旨は理由がない。なお、論旨後段の主張について附言するのに、原判示Bとの婚姻が前記の如く無効であるとしても、そのことの故に、原判示第二の(三)の所為が罪とならないとの論旨は独自の主張であつて、とうてい採用の限りでない。同第三点量刑不当の主張について、本件記録及び原裁判所が取り調べた証拠により認められる諸般の情状、特に、被告人の本件各犯行は、婚期を逸し、あるいは先夫との婚姻に失敗し、適当な配偶者を得て幸福な結婚生活を得たいものとあせつている女性の弱点に乗じ、結婚相談所を介し被害者らと交際をもち、原判示の甘言を弄し、同女らをして、被告人が社会的に相当の地位、身分もある人物で、被害者らと結婚して継続的に夫婦生活ができるものと信用させ、その信用に乗じ原判示の各犯行(但し第二の(三)を除く)を行つたもので、本籍地を移籍すれば過去の離婚歴が戸籍簿謄本に記載されないことを利用して、相手方女性を信用させる等、その詐欺の手段、手口は計画的であり、極めて巧妙であり、悪質な犯行というべく、昭和四三年以前は別として、被告人が昭和四六年四月以降四八年六月迄の間戸藉上婚姻届を提出した女性は五名にのぼり、結婚を前提としてあるいは結婚式まであげて同棲生活を送つた女性は多数あり、同時に結婚を前提として複数の女性と同棲生活を過すといつた乱脈なものであり、しかも、被告人は婚姻関係に名を籍り、本件被害者らから財産を騙し取り、もはや取るべき財産がないと見てとると、口実を設けて協議上の離婚届を出し、あるいは同棲生活を解消し、相手が離婚届に応じない場合は、原判示第二の(三)の如 姻届を提出した女性は五名にのぼり、結婚を前提としてあるいは結婚式まであげて同棲生活を送つた女性は多数あり、同時に結婚を前提として複数の女性と同棲生活を過すといつた乱脈なものであり、しかも、被告人は婚姻関係に名を籍り、本件被害者らから財産を騙し取り、もはや取るべき財産がないと見てとると、口実を設けて協議上の離婚届を出し、あるいは同棲生活を解消し、相手が離婚届に応じない場合は、原判示第二の(三)の如 係に名を籍り、本件被害者らから財産を騙し取り、もはや取るべき財産がないと見てとると、口実を設けて協議上の離婚届を出し、あるいは同棲生活を解消し、相手が離婚届に応じない場合は、原判示第二の(三)の如く、離婚届を偽造して籍を抜くという方法を用いたもので、社会生活の基本である婚姻関係を犯罪の手段として利用したことは、とうてい看過することを許さない違法なものといわなければならないこと、その騙取にかかる金員も多額にのぼるばかりか、それらの金員、財産は、被害者らの辛苦の所産であり、同女らの生活のかてとなるものであつたこと、特に原判示第五のCの場合は、被告人によりすべての財産を処分され、将来の生活の方途も絶たれてしまつたこと、被告人はこの間、定職に従事せず、被害者らから騙取した金員を遊興費に使い、あるいは他の女性との結婚の約束を取りつけるためその歓心を買うための資金として使う等していたもので、犯行の動機としても同情すべき事情もないこと、被害の弁償も十分でなく、前記Cに対する場合の如きは、示談書を作成しながら、その示談契約の履行に毫も誠意が認められないこと、各被害者の蒙つた精神的苦痛は甚大であつたこと、その他被告人には原判示の累犯加重の原由となる詐欺等の前科があるほか、窃盗、詐欺、業務上横領、私文書偽造、同行使等の前科を累ねていることを考えれば、所論の事情のうち、当審における事実調の結果を併せ考え、被告人に有利な又は同情すべき諸事情を十分斟酌してみても、原判決の科刑が重きに過ぎ不当なものであるとは、とうてい認められない。論旨は理由がない。よつて、刑訴法三九六条に則り本件控訴を棄却することとし、刑法二一条により当審における未決勾留日数中八〇日を原判決の本刑に算入し、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官荒川正三郎裁判官谷口正孝裁判官時國 九六条に則り本件控訴を棄却することとし、刑法二一条により当審における未決勾留日数中八〇日を原判決の本刑に算入し、主文のとおり判決する。 過ぎ不当なものであるとは、とうてい認められない。論旨は理由がない。よつて、刑訴法三九六条に則り本件控訴を棄却することとし、刑法二一条により当審における未決勾留日数中八〇日を原判決の本刑に算入し、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官荒川正三郎裁判官谷口正孝裁判官時國 九六条に則り本件控訴を棄却することとし、刑法二一条により当審における未決勾留日数中八〇日を原判決の本刑に算入し、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官荒川正三郎裁判官谷口正孝裁判官時國康夫)
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