平成25(行コ)29 法人税更正処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成23年(行ウ)第199号)

裁判年月日・裁判所
平成25年10月24日 東京高等裁判所 租税
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判決文本文22,321 文字)

-1-平成25年10月24日判決言渡平成25年(行コ)第29号法人税更正処分取消等請求控訴事件 主文 1 原判決主文1項のうち,麹町税務署長が被控訴人に対し平成21年8月7日付けでした平成19年4月1日から平成20年3月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち所得金額240億4448万2051円及び納付すべき法人税額45億2290万0900円を超えない部分,並びに過少申告加算税の賦課決定処分のうち過少申告加算税額3億1472万2000円を超えない部分を取り消した部分を取り消す。 2 前項に係る被控訴人の請求を棄却する。 3 原判決主文1項のうち,上記1項で取り消した部分を除くその余の部分は失効した。 4 訴訟費用は第1,2審を通じて,全部控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文第1,2項と同旨第2 事案の概要 1 我が国に支店を有して保険業を営んでいた被控訴人は,その保有する米国ドル建社債について,為替変動に伴って生ずるおそれのある損失の額を減少させるためのデリバティブ取引として通貨オプション取引を行っていたところ,平成19年4月1日から平成20年3月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)において,その終了時に保有する米国ドル建社債(以下「本件米ドル建社債」という。)を含む外貨建有価証券に関し,外国為替の売買相場が著しく変動したとして,法人税法61条の9第2項,3項,同法施行令122条の3の規定に基づき,外貨建有価証券の取得の原因となった外貨建取引-2-が事業年度終了の時に行われたものとみなして,外国為替の売買相場により円換算した金額と期末時の帳簿価額との差額に相当する金額を損金の額に算入し,本件事業年度の法人税の確定申告を行った。これに対し,麹町税務署長は, 時に行われたものとみなして,外国為替の売買相場により円換算した金額と期末時の帳簿価額との差額に相当する金額を損金の額に算入し,本件事業年度の法人税の確定申告を行った。これに対し,麹町税務署長は,本件米ドル建社債は法人税法61条の6第1項に規定するデリバティブ取引等を行った場合の資産に該当し,同法施行令122条の2の規定により同法施行令122条の3の規定が適用されないから,本件米ドル建社債に係る外国為替換算差損額は損金の額に算入されないなどとして,所得金額を562億7018万8168円,納付すべき法人税額を141億9061万2700円とする更正処分及び過少申告加算税額を17億1931万5500円とする過少申告加算税の賦課決定処分をした。 本件は,被控訴人が,本件米ドル建社債は上記にいうデリバティブ取引等を行った場合の資産に該当せず,法人税法施行令122条の3の規定が適用されることにより,本件米ドル建社債に係る外国為替換算差損額は損金の額に算入されるべきであるとして,上記更正処分のうち所得金額236億6968万2638円及び納付すべき法人税額44億1046万0900円を超える部分並びに上記過少申告加算税の賦課決定処分のうち過少申告加算税額3億0347万8000円を超える部分の取消しを求める事案である。ただし,本件控訴が提起された後,上記の更正処分について減額再更正処分が,過少申告加算税賦課決定について減額の変更賦課決定処分がされたことは,後記のとおりである。したがって,被控訴人の本訴請求は,原審及び当審における審理の経緯に鑑みると,この減額再更正処分等がされた後の本件更正処分等の取消しを求めるものとなっていると解される。 2 原審は,被控訴人の保有する本件米ドル建社債についてデリバティブ取引である通貨オプション取引(米国ドル 減額再更正処分等がされた後の本件更正処分等の取消しを求めるものとなっていると解される。 2 原審は,被控訴人の保有する本件米ドル建社債についてデリバティブ取引である通貨オプション取引(米国ドルプット・円コールの買建取引)が行われているものの,同取引は,法人税法施行令121条1項1号,121条の2第1項1号によると本件米ドル建社債の価額等の変動に伴って生ずるおそれのあ-3-る損失の額を減少させるために有効であるとは認められず,法人税法61条の6第1項の適用はないから,本件米ドル建社債は同法施行令122条の3所定の「外貨建資産等」に該当し,その外国為替換算差額(差損)を損金の額に算入することができるが,一方で,上記の通貨オプション取引について法人税法61条の6第1項の適用はないから,同法61条の5第1項の規定に従い,事業年度終了の時において取引を決済したものとみなして算出した決済損益額を益金又は損金に算入すべきところ,本件では利益の額に相当する金額である合計7113万9376円を益金の額に算入すべきであり,これらを前提に被控訴人の本件事業年度の法人税に係る所得金額等を算定すると,所得金額は237億4082万2014円,納付すべき法人税額は44億3180万2900円,過少申告加算税額は3億0561万3000円となるとして,被控訴人の本件請求について,本件更正処分及び本件賦課決定処分のうち上記の金額等を超える部分を取り消し,その余を棄却した。 3 この原判決に対し,控訴人のみが控訴し,原判決の判断を前提としても,被控訴人の保有する本件米ドル建社債について行われていたデリバティブ取引は,買建取引に係る通貨オプション取引だけでなく,売建取引(米国ドルコール・円プット)に係る通貨オプション取引があり,この取引においてもみなし決済による利 建社債について行われていたデリバティブ取引は,買建取引に係る通貨オプション取引だけでなく,売建取引(米国ドルコール・円プット)に係る通貨オプション取引があり,この取引においてもみなし決済による利益の額が生じているから,その利益額に相当する金額も益金の額に算入すべきであり,これらを前提に被控訴人の本件事業年度の法人税に係る所得金額等を算定すると,所得金額は240億4448万2051円,納付すべき法人税額は45億2290万0900円,過少申告加算税額は3億1472万2000円となるとして,原判決中の被控訴人の請求を認容した部分のうち,上記の金額等を超えない部分を取り消した部分の取消しを求めた(控訴における不服の範囲を限定した。)。なお,本件控訴提起の後にされた後記の本件減額再更正処分等は,上記の控訴人の主張する金額等と同内容のものである。 4 本件に関する関係法令等の定め及び前提事実は,次のとおり補正するほか,-4-原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1及び2に記載されたとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決は,上記の買建取引に係る通貨オプション取引の略称を「本件通貨オプション取引」と表示しているが,本判決では,上記の売建取引に係る通貨オプション取引との区別を明確にするため,これを「本件買建オプション取引」と表示し,これに伴い,原判決引用部分については適宜読み替えることとする。)。 (1) 原判決12頁18行目末尾の次に「また,本件事業年度における本件米ドル建社債の為替相場の変動は,基本通達13の2-2-10に定める算式により計算すると,いずれもその割合が15パーセントを超えているから(乙15),法61条の9第3項,施行令122条の3に規定する「外国為替の売買相場が著しく変動した場合」に該当する。」を加え る算式により計算すると,いずれもその割合が15パーセントを超えているから(乙15),法61条の9第3項,施行令122条の3に規定する「外国為替の売買相場が著しく変動した場合」に該当する。」を加え,同24行目から25行目にかけての「別表1」を「別表3」に改める。 (2) 原判決13頁18行目の次に以下を加え,同19行目の「(5)」を「(6)」に改める。 「 オ本件米ドル建社債の本件買建オプション取引時における価額,本件買建オプション取引時における米国ドルの為替レート,本件事業年度終了の時における米国ドルの為替レートは,それぞれ原判決別表7の「ヘッジ対象資産のオプション取引時価額」欄,「オプション取引時為替ート」欄,「期末時為替レート」欄のとおりであるから,本件買建オプション取引に係る「ヘッジ対象資産等評価差額」(施行令121条1項1号)は,同表の「ヘッジ対象資産等評価差額」欄のとおりとなる。(乙1,7)次いで,通貨オプションの価格を算定するモデルの1つであるブラック・ショールズ・モデルは,その算定方法として広く合理的と認められ,一般的に使用されているところ,ブラック・ショールズ・モデルにより算定した本件買建オプション取引の本件事業年度終-5-了の時における評価額は,原判決別表7の「期末時評価額」欄のとおりであり,本件買建オプション取引のオプション料は,同表の「オプション料」欄のとおりであるから,本件買建オプション取引に係る法61条の5第1項に規定する未決済デリバティブ取引に係るみなし決済損益額,すなわち,本件買建オプション取引の本件事業年度終了の時における評価額と本件買建オプション取引のオプション料(同取引を開始したときの評価額)との差額は,同表の「みなし決済損益額」欄のとおりとなる。(乙8,1 本件買建オプション取引の本件事業年度終了の時における評価額と本件買建オプション取引のオプション料(同取引を開始したときの評価額)との差額は,同表の「みなし決済損益額」欄のとおりとなる。(乙8,16,17の1・2,22)カ以上を前提として,本件買建オプション取引の有効性判定を行うものとすると,本件買建オプション取引に係るヘッジ対象資産等評価差額は,いずれも零を下回っているから,「デリバティブ取引等を行った時におけるヘッジ対象資産の価額が期末時又は決済時における価額を超える場合」に該当し(施行令121条の2第1項1号イ),有効性判定の方法は,同号イに定める方法,すなわち,デリバティブ取引等損益額に係る利益額を,その超える部分の金額で除して計算した割合が,概ね100分の80ないし125までとなっているか否かにより判定することとなるところ,これらのみなし決済損益額を,本件米ドル建社債の本件買建オプション取引を行った時における価額が本件事業年度終了の時における価額を超える部分の金額で除して計算した割合は,原判決別表7の「有効性割合」欄のとおり,いずれも概ね100分の80ないし125までの範囲に入らない。 (5) 本件売建オプション取引についてア本件米ドル建社債については,上記のとおり,レンジ・フォワードの手法を用いたデリバティブ取引が行われ,本件買建オプション-6-取引(米国ドルプット・円コールの買建取引)だけでなく,取引先を同一とする本判決別表1の「売」欄記載の合計18の通貨オプション取引(米国ドルコール・円プットの売建取引,以下「本件売建オプション取引」という。)が行われていた。本件売建オプション取引は,本件買建オプション取引と同じく店頭デリバティブ取引であって,金融商品取引法2条22項3 ール・円プットの売建取引,以下「本件売建オプション取引」という。)が行われていた。本件売建オプション取引は,本件買建オプション取引と同じく店頭デリバティブ取引であって,金融商品取引法2条22項3号,20項に規定するデリバティブ取引であるとともに,本件事業年度終了の時に決済されていなかった。(乙8,9,17の1・2)イ本件売建オプション取引について,ブラック・ショールズ・モデルにより算定した本件事業年度終了の時における評価額は,本判決別表1の「期末評価額」欄のとおりであり,オプション料は同表の「オプション料」欄のとおりであるから,その未決済デリバティブ取引に係るみなし決済損益額は,同表の「みなし決済損益額」欄のとおりとなる。そこで,本件買建オプション取引のみなし決済損益額と本件売建オプション取引のみなし決済損益額を通算すると,同表の合計欄のとおり3億7479万9413円となり(そのうち本件売建オプション取引に係る額は,3億0366万0037円である。),対応する両取引ごとに通算した各みなし決済損益額について,施行令121条の2第1項1号イの方法により有効性判定を行うと,有効性割合は同表の「有効性割合」欄のとおり,いずれも概ね100分の80ないし125までの範囲に入らない。(乙8,17の1・2,25)」(3) 原判決13頁20行目の「本件通貨オプション取引」を「本件買建オプション取引及び本件売建オプション取引」に,同15頁15行目の「(6)」を「(7)」に,同16頁8行目の「別表1」を「別表3」にそれぞれ改める。 (4) 原判決17頁5行目から7行目までを,次のとおり改める。 -7-「イ控訴人(処分行政庁である本所税務署長)は,原判決後の平成24年12月25日,本判決別紙「減額再更正処分等の根拠 (4) 原判決17頁5行目から7行目までを,次のとおり改める。 -7-「イ控訴人(処分行政庁である本所税務署長)は,原判決後の平成24年12月25日,本判決別紙「減額再更正処分等の根拠とされた被控訴人の所得金額等」記載のとおり,被控訴人の本件事業年度の所得金額を240億4448万2051円,納付すべき法人税額を45億2290万0900円,過少申告加算税額を3億1472万2000円とする減額再更正処分及び過少申告加算税の変更賦課決定処分をした(以下,これらの処分を「本件減額再更正処分等」という。)。(乙24)」 5 当審における争点(1) 原審において,控訴人は,本件更正処分等(ただし,本件減額再更正処分等がされる前のもの)の適法性に関し,原判決別紙1「本件更正処分等の根拠及び適法性に関する被告の主張」記載のとおり主張し,すなわち,本件米ドル建社債について,ヘッジ対象資産等損失額を減少させるためにデリバティブ取引が行われているところ,法61条の6第1項に規定する繰延ヘッジ処理が行われている場合に該当するから,本件外国為替換算差損の額は損金の額に算入されないと主張した。これに対し,被控訴人は,本件米ドル建社債について法61の6第1項の規定の適用を受ける場合に当たらないから,本件外国為替換算差損の額は損金の額に算入されると主張した。 以上のとおり,原審における争点は,本件米ドル建社債のヘッジ対象資産等損失額を減少させるためにデリバティブ取引(殊に本件買建オプション取引)が行われているところ,法61条の6第1項の規定に基づく繰延ヘッジ処理を適用するための要件を充足しているか否か,とりわけ,同取引について施行令121条1項に定められた方法により有効性判定を行った場合,ヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有 に基づく繰延ヘッジ処理を適用するための要件を充足しているか否か,とりわけ,同取引について施行令121条1項に定められた方法により有効性判定を行った場合,ヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有効であると認められる場合として施行令121条の2第1項に定める場合に該当するか否かというものであった。 -8-(2) 原判決が,上記の争点につき,本件買建オプション取引は本件米ドル建社債のヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有効であるとは認められず,法61条の6第1項の規定による繰延ヘッジ処理の適用はないから,本件米ドル建社債については,法61条の9第2項,3項,施行令122条の3の規定により,その外国為替換算差損益である本件外国為替換算差損の額を損金の額に算入することができ,一方で,本件買建オプション取引については,法61条の6第1項の規定による繰延ヘッジ処理が適用されないから,法61条の5第1項の規定により,そのみなし決済損益額(原判決別表7の「みなし決済損益額」欄の合計額7113万9376円)を益金の額に算入すべきであると判示したことを受け,控訴人は,本件米ドル建社債に係る本件外国為替換算差損の額を損金の額に算入した上,本件買建オプション取引のみなし決済損益額だけでなく,本件売建オプション取引のみなし決済損益額の合計3億7479万9413円を益金の額に算入して,本件減額再更正処分等を行った。 (3) そして,当審においては,次の諸点が当事者間に争いのない事実となった。 ア本件事業年度において,本件米ドル建社債につき,法61条の6第1項の適用があるデリバティブ取引が行われている場合のヘッジ対象資産に該当せず,法61条の9第2項,3項,施行令122条の3の規定により,その外国為替換算差損益である本件外国為替換算差 61条の6第1項の適用があるデリバティブ取引が行われている場合のヘッジ対象資産に該当せず,法61条の9第2項,3項,施行令122条の3の規定により,その外国為替換算差損益である本件外国為替換算差損の額326億0050万5530円を所得の金額の計算上,損金の額に算入することができる。 イ本件買建オプション取引については,法61条の5第1項の規定により,そのみなし決済損益額7113万9376円を益金の額に算入すべきである。 ウ本件売建オプション取引のみなし決済損益額が益金の額に算入されないとすると(すなわち,本件買建オプション取引のみなし決済損益額だけが-9-益金の額に算入されるとすると),被控訴人の本件事業年度における法人税に係る所得金額等は,原判決が認定した原判決別紙2「原告の本件事業年度の所得金額及び納付すべき法人税額並びに原告の本件事業年度の法人税に係る過少申告加算税額」記載のとおり,所得金額が237億4082万2014円,納付すべき法人税額が44億3180万2900円,過少申告加算税額が3億0561万3000円と算定される。 エ本件売建オプション取引については,法61条の5第1項の規定が適用され,そのみなし決済損益額に係る利益額は益金の額に算入されることになるところ,本件買建オプション取引のみなし決済損益額だけでなく,本件売建オプション取引のみなし決済損益額も益金の額に算入すると,被控訴人の本件事業年度における法人税に係る所得金額等は,本判決別紙「減額再更正処分等の根拠とされた被控訴人の所得金額等」記載のとおり,所得金額が240億4448万2051円,納付すべき法人税額が45億2290万0900円,過少申告加算税額が3億1472万2000円と算定される。 (4) 本件売建オプション取引に のとおり,所得金額が240億4448万2051円,納付すべき法人税額が45億2290万0900円,過少申告加算税額が3億1472万2000円と算定される。 (4) 本件売建オプション取引については,上記のとおり,法令の適用上はそのみなし決済損益額を益金の額に算入することになるが,この益金算入は当審になって控訴人が主張した事柄であるところ,被控訴人は,控訴人の当該主張について時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきであると主張する。したがって,この点が当審における唯一の争点となる。 ア被控訴人の主張(ア) 控訴人は,原審の平成23年10月7日の第2回口頭弁論期日において,本件買建オプション取引のみなし決済損益額に係る利益額が益金の額に算入されていないことを指摘するとともに,本件米ドル建社債の本件外国為替換算差損の額の損金算入を主張することについて,どのような法律解釈に基づくものであるのかという求釈明を行った。これに対-10-し,被控訴人は,続く同年12月21日の第3回口頭弁論期日において,本件更正処分等の適法性については専ら控訴人が主張すべきことを指摘するとともに,早期に争点を確定し,迅速な裁判により早期に控訴人との紛争から解放されることを目的として,法61条の5第1項が規定するみなし決済損益額に係る利益額を益金の額に算入していない点を理由に,処分の一部が適法であるとの予備的主張を行うのかどうか,その場合の所得金額等は幾らになるのかについて,明確にすることの求釈明を行った。これは,本件外国為替換算差損の額の損金算入について被控訴人の主張が認められても,法61条の5第1項にいうみなし決済損益額に係る利益額の益金算入漏れという点を,控訴人が後に追加主張することが具体的に予想されたためであったが,控訴人は 金算入について被控訴人の主張が認められても,法61条の5第1項にいうみなし決済損益額に係る利益額の益金算入漏れという点を,控訴人が後に追加主張することが具体的に予想されたためであったが,控訴人は,上記の予備的主張を行わず,法61条の5第1項にいうみなし決済損益額に係る利益額が幾らであるのかについて,本件買建オプション取引だけでなく本件売建オプション取引のみなし決済損益額に係る主張を行うことがなかった。なお,本件売建オプション取引について,法61条の5第1項の規定により,そのみなし決済損益額に係る利益額を益金の額に算入すべきであることを,控訴人の原審における主張から読み取ることは困難である。 一方で,被控訴人は,控訴人の求釈明に対し,本件買建オプション取引について,反対売買による方法を決済とみなすのではなく,現物売買(原資産事前購入)による方法を決済とみなすのが合理的であるから,その場合のみなし決済損益額は零であると主張するとともに,ブラック・ショールズ・モデルの方法により算定した場合のみなし決済損益額も具体的に示した。 (イ) 本件の訴訟は,本件更正処分等のうち本件外国為替換算差損の額の損金算入を否認した部分の取消しを求めたものであるが,裁判所は,上-11-記損金算入の否認が違法であると判断した場合,当事者の主張がなければ,別途,法61条の5第1項にいうみなし決済損益額に係る利益額の益金算入を認定することはないのであるから,控訴人は,上記のみなし決済損益額に係る利益額の益金算入漏れを主張する意思があるのであれば,原審の口頭弁論終結時までに当該益金算入漏れに係る金額を具体的に主張すべきであった。しかも,控訴人は,本件訴訟の提起前から,本件買建オプション取引及び本件売建オプション取引のみなし決済損益額が益 ,原審の口頭弁論終結時までに当該益金算入漏れに係る金額を具体的に主張すべきであった。しかも,控訴人は,本件訴訟の提起前から,本件買建オプション取引及び本件売建オプション取引のみなし決済損益額が益金の額に算入されていないことを認識していたし,上記のとおり,被控訴人から求釈明を受けていたのであるから,その主張を遅くとも原審の口頭弁論終結時までにすることが可能であった。 したがって,控訴人が当審になって本件売建オプション取引のみなし決済損益額の益金算入漏れを主張することは,時機に後れているし,このような時機に後れた主張を行うことについて,故意又は重過失がある。 (ウ) 被控訴人は,控訴人に対し上記の求釈明を行い,かつ,原審の最終口頭弁論期日には控訴人に上記の予備的主張を行う意思のないことを確認したが,控訴人は,本件売建オプション取引のみなし決済損益額の益金算入漏れを主張して,控訴を申し立てた。そして,当審の第1回口頭弁論期日においては,本件売建オプション取引のみなし決済損益額について当事者間に争いがあり,直ちに弁論を終結することができなかった。控訴人の上記主張が時機に後れた攻撃防御方法として却下されなければ,その主張についての証拠調べが必要になり,弁論手続を続行しなければならなかったからである。 したがって,控訴人の当審における新たな主張は,訴訟の完結を遅延させるものである。 (エ) 以上のとおり,本件売建オプション取引のみなし決済損益額の益金算入に関する控訴人の主張は,時機に後れた攻撃防御方法として却下さ-12-れるべきである。 イ控訴人の主張(ア) 本件売建オプション取引は,本件買建オプション取引と一体となって本件米ドル建社債の為替変動リスクをヘッジするものであるから 下さ-12-れるべきである。 イ控訴人の主張(ア) 本件売建オプション取引は,本件買建オプション取引と一体となって本件米ドル建社債の為替変動リスクをヘッジするものであるから,法61条の6第1項が規定する繰延ヘッジ処理の適用がないのであれば,その結果,法61条の5第1項が適用されることになる。 本件売建オプション取引が本件買建オプション取引と一体となって本件米ドル建社債の為替変動リスクをヘッジするものであることは,被控訴人がこれを前提として,それらのデリバティブ取引等損益額について繰延ヘッジ処理を行っていたことからして明らかであり,処分行政庁は,本件更正処分等において,本件売建オプション取引と本件買建オプション取引は一体となって本件米ドル建社債のヘッジ対象資産等損失額を減少させるために行われたデリバティブ取引であり,法61条の6第1項が規定する繰延ヘッジ処理が適用される場合であると判断して,本件買建オプション取引だけでなく,本件売建オプション取引のみなし決済損益額に係る利益額も含めて益金の額に算入しなかった。 (イ) 控訴人は,原審において,本件買建オプション取引及び本件売建オプション取引はいわゆるレンジ・フォワードの手法を用いたデリバティブ取引であること,すなわち,これらの取引は組み合わされ一体となって扱われるべきであることを主張し,いずれも取引についても法61条の6第1項が適用されると解していたのであり,仮に本件米ドル建社債について施行令122条の3が適用されるのであれば,法令解釈上,その為替変動リスクをヘッジしているデリバティブ取引について法61条の5第1項所定のみなし決済損益額に係る利益額の益金算入の問題が生じることを指摘している。また,控訴人は,原審において,本件買建オプショ 替変動リスクをヘッジしているデリバティブ取引について法61条の5第1項所定のみなし決済損益額に係る利益額の益金算入の問題が生じることを指摘している。また,控訴人は,原審において,本件買建オプション取引だけでなく,本件売建オプション取引のみなし決済損-13-益額の算定に必要な数値が記載された証拠(乙8,17の1・2)を提出している。控訴人は,確かに原審において,本件米ドル建社債のヘッジ対象資産等損失額を減少させるために行われたデリバティブ取引について,法61条の6第1項の適用がないと仮定した場合の法61条の5第1項の規定に基づく益金算入の金額を具体的に明示していないが,これは,この点が直接の争点となっていなかったためである。 しかも,本件売建オプション取引が本件米ドル建社債のヘッジ対象資産等損失額を減少させるために行われたデリバティブ取引でないとすれば,同取引について法61条の6第1項の適用の可否を検討するまでもなく,法61条の5第1項が適用されるのであって,これに関する主張は,原審において証拠上明らかになっていた事実に単純に法令を当てはめたものにすぎない。 なお,被控訴人は,原審において,処分の一部が適法であるとの予備的主張を行うのかどうか,その場合の所得金額等は幾らになるのかという求釈明をしたものの,控訴人がそれに応じなかったことから,それに関する主張は時機に後れた攻撃防御方法になる旨の主張をするが,控訴人は,そもそも本件米ドル建社債のヘッジ対象資産等損失額を減少させるために行われたデリバティブ取引には法61条の6第1項が適用されることを理由として,本件外国為替換算差損の額は損金の額に算入されないと主張していたのであり,その当否に関する裁判所の判断が何ら示されていない段階で,上記のような予備的主張を 条の6第1項が適用されることを理由として,本件外国為替換算差損の額は損金の額に算入されないと主張していたのであり,その当否に関する裁判所の判断が何ら示されていない段階で,上記のような予備的主張を行わなかったからといって,当該主張が時機に後れた攻撃防御方法になると評価すべきでない。 (ウ) 本件売建オプション取引のみなし決済損益額が益金の額に算入されること,その利益額が益金算入された場合の被控訴人の法人税に係る所得金額等については,当事者間に争いがない。したがって,本件売建オ-14-プション取引のみなし決済損益額を含めて新たな証拠調べは必要でない。 (エ) 以上のとおり,本件売建オプション取引のみなし決済損益額の益金算入に関する控訴人の主張は,原審以来の訴訟手続の経過を通観すれば,時機に後れたものと評価することはできず,訴訟の完結を遅延させるものでもない。 第3 当審における争点に対する判断 1 本件米ドル建社債に係る本件外国為替換算差損の額326億0050万5530円が損金の額に算入され,他方,本件買建オプション取引のみなし決済損益額7113万9376円が益金の額に算入されること,本件買建オプション取引のみなし決済損益額だけが益金の額に算入されるとすると,被控訴人の本件事業年度における法人税に係る所得金額等は,原判決が認定したとおり算定され(所得金額237億4082万2014円,納付すべき法人税額44億3180万2900円,過少申告加算税額3億0561万3000円),他方,法61条の5第1項の規定により,本来は益金の額に算入されるべき本件売建オプション取引のみなし決済損益額も併せて益金の額に算入すると,被控訴人の法人税に係る所得金額等は,本判決別紙「減額再更正処分等の根拠とされた被控訴人の所得金額等」記 金の額に算入されるべき本件売建オプション取引のみなし決済損益額も併せて益金の額に算入すると,被控訴人の法人税に係る所得金額等は,本判決別紙「減額再更正処分等の根拠とされた被控訴人の所得金額等」記載のとおり算定されること(所得金額240億4448万2051円,納付すべき法人税額45億2290万0900円,過少申告加算税額3億1472万2000円)は,当事者間に争いがない。 そして,法61条の5第1項の規定により,本件売建オプション取引のみなし決済損益額が益金の額に算入されることは,当審になって控訴人が主張した事実であるところ,この控訴人の主張が時機に後れた攻撃防御方法として却下されるか否かが争点となっているので,この点について判断する。 2 本件訴訟は,被控訴人が,本件米ドル建社債に係る本件外国為替換算差損の額を損金の額に算入して,本件事業年度の法人税の確定申告を行ったところ,-15-麹町税務署長が,本件米ドル建社債は法61条の6第1項に規定するデリバティブ取引等を行った場合の資産に該当し,本件外国為替換算差損の額は損金の額に算入されないなどとして本件更正処分等をしたことから,被控訴人が,本件米ドル建社債は上記にいうデリバティブ取引等を行った場合の資産に該当せず,本件外国為替換算差損の額は損金の額に算入されるべきであるとして,本件更正処分等の一部の取消しを求めたものである。そこで,原審においては,本件外国為替換算差損の額が損金の額に算入されるか否かが争点となり,これを決する前提として,本件米ドル建社債が法61条の6第1項に規定するデリバティブ取引等を行った場合の資産に該当するか否か,とりわけ,本件米ドル建社債についてヘッジ対象資産等損失額を減少させるためにデリバティブ取引である本件買建オプション取引が行われているところ,同 リバティブ取引等を行った場合の資産に該当するか否か,とりわけ,本件米ドル建社債についてヘッジ対象資産等損失額を減少させるためにデリバティブ取引である本件買建オプション取引が行われているところ,同取引について法61条の6第1項に規定する繰延ヘッジ処理を適用するための要件を充足しているか,特にその要件の中でも,ヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有効であると認められる場合として施行令121条の2第1項に定める場合に該当するか否かということについて,当事者双方の主張が対立したことから,この点を巡って主張立証が交わされた。 本件米ドル建社債について行われたデリバティブ取引としては,本件買建オプション取引のほかに本件売建オプション取引があるものの,有効性判定の対象として本件買建オプション取引のみが取り上げられたことは,原審における当事者双方の主張からして明らかであり,控訴人は,本件買建オプション取引のみについて有効性判定を行っても,本件米ドル建社債のヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有効であると認められる場合に当たるとして,本件米ドル建社債が法61条の6第1項に規定するデリバティブ取引等を行った場合の資産に該当すると主張していた(なお,前記の前提事実によれば,本件買建オプション取引だけでなく,本件売建オプション取引を併せて有効性判定を行っても,本件米ドル建社債のヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有-16-効であると認められる場合に当たらないから,本件米ドル建社債が上記にいうデリバティブ取引等を行った場合の資産に該当しないという結論に変わりはないと考えられる。)。 そうすると,原審において,本件更正処分等の適法性の主張立証責任を負う控訴人は,本件米ドル建社債の本件外国為替換算差損の額が損金の額に算入されるか否 う結論に変わりはないと考えられる。)。 そうすると,原審において,本件更正処分等の適法性の主張立証責任を負う控訴人は,本件米ドル建社債の本件外国為替換算差損の額が損金の額に算入されるか否かという争点について,本件買建オプション取引のみについて有効性判定を行っても,本件米ドル建社債のヘッジ対象資産等損失額を減少させるために有効であると認められる場合に当たるという主張をしていたのであって,仮に控訴人の主張が認められるとすると,本件外国為替換算差損の額が損金の額に算入されないことの前提として,本件米ドル建社債が法61条の6第1項に規定するデリバティブ取引等を行った場合の資産に該当し,すなわち,当該デリバティブ取引について同項に規定する繰延ヘッジ処理を適用するための要件を充足しているということになって,同取引に法61条の5第1項の適用はなく,本件買建オプション取引だけでなく,本件売建オプション取引のみなし決済損益額の益金算入という問題がそもそも生じないこととなる。 もっとも,本件買建オプション取引及び本件売建オプション取引のみなし決済損益額の益金算入は,本件更正処分等について,その一部の適法性を基礎付ける事実であるが,この問題は,控訴人の上記の主張が否定された場合,すなわち,本件米ドル建社債が法61条の6第1項に規定するデリバティブ取引等を行った場合の資産に該当せず,そのため本件外国為替換算差損の額が損金の額に算入されると判断された場合に生ずる法令適用上の帰結であって,本件外国為替換算差損の額が損金の額に算入されるか否かという争点との関係では,控訴人にとって,当該争点が控訴人の不利に判断された場合に生ずる争点であるから,控訴人の主張としては予備的主張という位置付けになる事柄といえる。 3 以上の検討に加え,本件外国為替換算 関係では,控訴人にとって,当該争点が控訴人の不利に判断された場合に生ずる争点であるから,控訴人の主張としては予備的主張という位置付けになる事柄といえる。 3 以上の検討に加え,本件外国為替換算差損の額が損金の額に算入されるか否かという原審の争点に関する控訴人の主張が,事実上又は法律上の根拠を欠く-17-ものであるとか,本件更正処分等の適法性を一部にせよ基礎付ける事実として,本件売建オプション取引のみなし決済損益額の益金算入に関する主張の提出が原審裁判所から促されたといった特段の事情もうかがえないことを考え合わせると,控訴人が,当審に至って,原判決の判断を前提とした上で,本件更正処分等の一部の適法性を基礎付ける事実として本件売建オプション取引のみなし決済損益額の益金算入を主張したとしても,本件訴訟の経緯に照らし,この攻撃防御方法の提出が時機に後れていると解することはできず,また,仮に時機に後れたものといえるとしても,控訴人に故意又は重大な過失があるということはできない。 被控訴人は,原審において,控訴人に対し,本件米ドル建社債について行われたデリバティブ取引のみなし決済損益額に係る利益額が益金の額に算入されていないことを挙げて,本件更正処分等の一部が適法であることの予備的主張を行うのかどうか,また,その場合の被控訴人の所得金額等は幾らになるのかについて求釈明を行ったものの,控訴人はこれに応えなかった旨主張する。 しかし,本件外国為替換算差損の額が損金の額に算入されるか否かという争点についての裁判所の判断が示されていない段階において,当該争点について控訴人の不利に判断された場合に生ずる別途の争点に関する予備的主張をしなかったとしても,上記にいう特段の事情がうかがえない本件においては,いかに被控訴人からの求釈明があったからとい 当該争点について控訴人の不利に判断された場合に生ずる別途の争点に関する予備的主張をしなかったとしても,上記にいう特段の事情がうかがえない本件においては,いかに被控訴人からの求釈明があったからといって,控訴人が原審でその主張をしなかったことにより,その後にその主張をすることが時機に後れた攻撃防御方法の提出であると評価することは相当でない。被控訴人において上記の求釈明を行ったのは,本件外国為替換算差損の額の損金算入という争点について被控訴人の主張が認められた場合に生ずる別途の争点を意識して,紛争の早期解決を意図したものであるとしても,控訴人がその求釈明に応じないことが不当であるとまでいえる事情は見当たらず,そうである以上は,本件における被控訴人の紛争の早期解決に対する期待も,事実上のものにとどまるというべきであ-18-る。 4 さらに,当審になって,本件売建オプション取引のみなし決済損益額の益金算入とその場合における被控訴人の所得金額等如何の争点が持ち出されたことについては,本件売建オプション取引に法61条の5第1項の規定が適用され,そのみなし決済損益額が益金の額に算入されること,そして,本件買建オプション取引及び本件売建オプション取引のみなし決済損益額を益金の額に算入すると,被控訴人の所得金額等が上記のとおり算定されることは,当事者間に争いがなく,加えて,本件売建オプション取引のみなし決済損益額が本判決別表1の「みなし決済損益額」欄のとおりであることは,前記前提事実のとおり,証拠上容易に認められる。 そうすると,控訴人が当審に至って上記の争点に関する主張をしたことにより,本件の第1回口頭弁論期日において直ちに弁論が終結できないこととなり,本件争点についての判断に必要な相応の時間を要したことを前提としても,少なくとも現時 って上記の争点に関する主張をしたことにより,本件の第1回口頭弁論期日において直ちに弁論が終結できないこととなり,本件争点についての判断に必要な相応の時間を要したことを前提としても,少なくとも現時点(当審における口頭弁論終結の時点)では,控訴人の新たな主張についての審理をすることによって,訴訟の完結が遅延しないことも明らかである。 5 以上の次第であるから,本件売建オプション取引のみなし決済損益額の益金算入に関する控訴人の主張は,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるものでないというべきである。 6 以上を総合すると,被控訴人の本件事業年度については,本判決別紙「減額再更正処分等の根拠とされた被控訴人の所得金額等」記載のとおり,所得金額が240億4448万2051円,納付すべき法人税額が45億2290万0900円となり,過少申告加算税額が3億1472万2000円と計算され,被控訴人の本件更正処分等(ただし,本件減額再更正処分等により変更された後のもの)の取消しを求める請求は,控訴人による本件控訴提起の後に処分行政庁により本件減額再更正処分等がされた結果,理由がないことに帰したこと-19-となる。 なお,申告に係る税額につき更正処分がされた後に減額再更正処分がされた場合,再更正処分は,それにより減少した税額に係る部分についてのみ法的効果を及ぼすものであり,当初の更正処分とは別個独立の課税処分ではなく,その実質は当初の更正処分の変更であるから,納税者は,専ら減額された当初の更正処分の取消しを訴求することをもって足りるのであり,しかも,更正処分の取消しを求める訴訟の係属中にその処分の一部が処分行政庁によって取り消された場合には,既に取り消された部分の取消しを求める訴求部分については,その利益を失う。そして,被控訴人の本件請 も,更正処分の取消しを求める訴訟の係属中にその処分の一部が処分行政庁によって取り消された場合には,既に取り消された部分の取消しを求める訴求部分については,その利益を失う。そして,被控訴人の本件請求も,本件減額再更正処分等がされた後の本件更正処分等の取消しを求めるものになったと解されることは,前記のとおりであり,かつ,控訴人の控訴は,被控訴人の本件事業年度における所得金額等が本件減額再更正処分等のとおり計算されることを前提として,原判決の敗訴部分のうちの本件減額再更正処分等に即した金額を超えない部分を取り消した部分の取消しを求めるものであるから,不服の範囲に照らし,上記金額を超えない部分を取り消した部分を取り消した上,それに係る被控訴人の請求を棄却すべきである。 第4 結論よって,控訴人の新たな主張に基づく本件控訴は理由があるから,原判決の控訴人敗訴部分(原判決主文1項)のうち本件減額再更正処分等に即した金額を超えない部分を取り消した部分を取り消した上,それに係る被控訴人の請求を棄却することとするが,訴訟費用の負担については,本件訴訟の経緯に照らし(殊に,原審では被控訴人の請求のほとんどが認容されており,控訴人の控訴は,これと比較しても,僅かな範囲の取消しを求めるものであること),行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条ただし書,67条2項前段を適用して全部控訴人に負担させることとする。 なお,原判決主文1項のうち,本件減額再更正処分等がされたことにより本件-20-更正処分等が変更された部分(すなわち,控訴人の控訴により取り消されるべき部分を除くその余の部分)については,被控訴人の請求の減縮により失効した。 東京高等裁判所第24民事部 裁判長裁判官三輪和雄 裁判官内 り消されるべき部分を除くその余の部分)については,被控訴人の請求の減縮により失効した。 東京高等裁判所第24民事部 裁判長裁判官三輪和雄 裁判官内藤正之 裁判官佐久間健吉 -21-別紙「減額再更正処分等の根拠とされた被控訴人の所得金額等」 1 被控訴人の所得金額及び納付すべき法人税額(1) 所得金額 240億4448万2051円上記金額は,次のアの金額にイの金額を加算し,ウの金額を減算したものである。 ア確定申告における所得金額 135億9437万6810円上記金額は,本件確定申告書の「所得金額」欄に記載された金額である。 イ所得金額に加算される金額 105億1775万0629円上記金額は,次の(ア)ないし(サ)の金額の合計額である。 (ア) 本件通貨オプション取引及び本件売建オプション取引のみなし決済損益額 3億7479万9413円上記金額は,本件事業年度の益金の額に算入されるべき本件通貨オプション取引及び本件売建オプション取引に係るみなし決済損益額である。 (イ) 外貨建株式に係る為替換算差損の過大計上額 92億9776万8101円上記金額は,被控訴人が本件事業年度終了の日において保有する外貨建株式のうちのAの外貨建株式につき,外国為替の売買相場が著しく変動したとして,本件事業年度の損金の額に算入した外国為替換算差損の金額である。当該外貨建株式に係る外国為替の売買相場の変動は,施行令122条の3に規定する外国為替の売買相場が著しく変動した場合に該当しないため,当該金額は,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 。当該外貨建株式に係る外国為替の売買相場の変動は,施行令122条の3に規定する外国為替の売買相場が著しく変動した場合に該当しないため,当該金額は,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (ウ) 再保険料の過大計上額 2億9271万0963円上記金額は,被控訴人が,一時払最低死亡保障特約付変額個人年金保険における最低死亡保障部分に係る再保険として出再した再保険料のうち,本件事業年度終了の日までの収益に対応しない未経過再保険料の額であ-22-り,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (エ) 有価証券評価損の過大計上額 822万0976円上記金額は,被控訴人が,有価証券評価損として損金の額に算入した非上場会社の株式に係る帳簿価額と本件事業年度終了の日の同株式の時価との差額であるが,同社の資産状態が著しく悪化したとは認められないことから,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (オ) 支払手数料のうち損金の額に算入されない金額 2億1201万1084円上記金額は,被控訴人が,支払手数料として計上した生命保険募集代理店に対して支出した奨励手当の金額のうち,本件事業年度終了の日までに債務が確定していない金額であり,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (カ) 支払備金の過大計上額 1億1789万5000円上記金額は,本件事業年度終了の日における支払備金勘定のうち,同日において保険契約に基づく支払義務が認められないものであり,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (キ) 減価償却超過額 4880万6345円上記金額は,被控訴人が,外注費用に計上したシステム開発におけるプログラム作成に要した費用 年度の損金の額に算入されない金額である。 (キ) 減価償却超過額 4880万6345円上記金額は,被控訴人が,外注費用に計上したシステム開発におけるプログラム作成に要した費用としてソフトウェアの取得価額に算入されるべき金額のうち,償却限度額を超える部分の金額であり,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (ク) 減価償却費のうち損金の額に算入されない金額 9754万4600円上記金額は,次のaないしcの金額の合計額である。 a 6895万3086円上記金額は,被控訴人が減価償却費に計上した金額のうち,開発中の-23-システムの取得価額に算入すべき金額であり,当該システムは事業の用に供されていないことから,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 b 1459万9200円上記金額は,被控訴人が,本件事業年度において除却したとして減価償却費に含めて計上した汎用開発ツールの使用ライセンスの本件事業年度終了の日の未償却残高であるが,同汎用開発ツールが除却された事実が認められないことから,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 c 1399万2314円上記金額は,被控訴人が,本件事業年度において除却したとして減価償却費に含めて計上した自社開発ソフトウェアの本件事業年度終了の日の未償却残高であるが,同ソフトウェアが除却された事実は認められないことから,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (ケ) 交際費等の損金不算入額 928万0297円上記金額は,次のaないしcの金額の合計額である。 a 591万0050円上記金額は,被控訴人がその他会議費として ケ) 交際費等の損金不算入額 928万0297円上記金額は,次のaないしcの金額の合計額である。 a 591万0050円上記金額は,被控訴人がその他会議費として損金の額に算入した金額のうち,支社マーケティング本部が行ったミーティング後の社員懇親会に伴う社員のホテル宿泊代であり,措置法61条の4第3項(平成20法律第23号による改正前のもの,以下同じ。)に規定する交際費等に該当するため,同条1項により本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 b 298万4672円上記金額は,被控訴人がその他会議費として損金の額に算入した金額のうち,被控訴人の保険代理店の従業員を接待するために要した懇親会-24-代及びB観光代等であり,措置法61条の4第3項に規定する交際費等に該当するため,同条1項により本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 c 38万5575円上記金額は,措置法61条の4第3項に規定する交際費等に係る消費税等の額のうち,控除対象外消費税額等の増加額であり,同項に規定する交際費等の額に含まれる金額である(消費税法等の施行に伴う法人税の取扱通達(平成元年3月1日直法2-1)12(注)2参照)。 (コ) 損金の額に算入されない控除対象外消費税額等の額 5871万1590円上記金額は,被控訴人が,本件事業年度の損金の額に算入した控除対象外消費税額等のうち施行令139条の4第3項に規定される繰延消費税額等以外の金額68億4187万0828円と,被控訴人が被控訴人の本件事業年度における消費税等の課税期間に係る消費税等の修正申告書及び麹町税務署長が平成21年8月7日付けで被控訴人に対して行った同課税期間の消費税等の更正処 7万0828円と,被控訴人が被控訴人の本件事業年度における消費税等の課税期間に係る消費税等の修正申告書及び麹町税務署長が平成21年8月7日付けで被控訴人に対して行った同課税期間の消費税等の更正処分に基づき再計算した控除対象外消費税額等67億8315万9238円との差額であり,本件事業年度の損金の額に算入されない金額である。 (サ) 繰延消費税額等の損金算入限度超過額 2260円上記金額は,被控訴人が施行令139条の4第3項に規定する繰延消費税額等について,本件事業年度の損金の額に算入した金額4861万7163円と,同項の規定に基づき計算した損金の額に算入される金額4861万4903円との差額であり,法65条及び施行令139条の4第3項の規定により,損金の額に算入されない金額である。 ウ所得金額から減算される金額 6764万5388円上記金額は,次の(ア)及び(イ)の金額の合計額である。 -25-(ア) 減価償却超過額の損金算入額 1616万9320円上記金額は,本件事業年度の前事業年度から繰り越された減価償却資産の償却超過額のうち,本件事業年度における償却不足額であり,本件事業年度の損金の額に算入される金額である。 (イ) 前払費用の過大計上額 5147万6068円上記金額は,被控訴人が本件事業年度に募集人支払手数料として計上した金額のうち,新規代理店に前払したものとして,本件事業年度の損金の額から減算した金額10億8099万7441円のうちの消費税等に相当する金額であるが,被控訴人が会計上税抜経理を選択していることから,本件事業年度の損金の額から減算する必要のない金額である。 (2) 所得金額に対する法人税額 72億1334万4600円上記金額は,上記 ,被控訴人が会計上税抜経理を選択していることから,本件事業年度の損金の額から減算する必要のない金額である。 (2) 所得金額に対する法人税額 72億1334万4600円上記金額は,上記(1)の所得金額(通則法118条1項の規定に基づき1000円未満の端数を切り捨てた後の金額である。)に法143条(ただし,平成19年法律第6号による改正前のもの。)に規定する税率を乗じて計算した金額である。 (3) 法人税額の特別控除額 761万2189円上記金額は,措置法42条の11(ただし,平成19年法律第6号による改正前のもの。)に規定される所得金額に対する法人税額から控除する情報基盤強化設備等を取得した場合の法人税額の特別控除額であり,本件事業年度の法人税額から控除される金額である。 (4) 法人税額から控除される所得税額等 26億8283万1506円上記金額は,法144条により準用された読替え後の法68条の規定により,法人税の額から控除される金額であり,本件確定申告書に記載された金額と同額である。 (5) 納付すべき法人税額 45億2290万0900円上記金額は,上記(2)の金額から上記(3)及び(4)の金額を差し引いた金額であ-26-る(ただし,通則法119条1項の規定に基づき100円未満の端数金額を切り捨てた後の金額である。)。 (6) 既に納付の確定した法人税額 13億7567万2400円上記金額は,本件確定申告書の提出により納付の確定した法人税額である。 (7) 差引納付すべき法人税額 31億4722万8500円上記金額は,上記(5)の金額から上記(6)の金額を差し引いた金額である。 2 被控訴人の本件事業年度の法人税に係る過少申告加算税額(1) 被控訴人が新たに納付 1億4722万8500円上記金額は,上記(5)の金額から上記(6)の金額を差し引いた金額である。 2 被控訴人の本件事業年度の法人税に係る過少申告加算税額(1) 被控訴人が新たに納付すべき法人税額31億4722万8500円については,その計算の基礎となった事実について,被控訴人がこれを計算の基礎としなかったことに,通則法65条4項所定の「正当な理由」があるとは認められない。 (2) したがって,被控訴人の本件事業年度の法人税に係る過少申告加算税の額は,被控訴人が新たに納付すべきこととなった法人税額31億4722万8500円を基礎として,通則法65条1項の規定を適用し,31億4722万円(通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後の金額である。)に対して,100分の10の割合を乗じて算出した金額3億1472万2000円となる。

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