平成12年(行ウ)第11号損害賠償請求事件(口頭弁論終結日平成13年7月18日)判決 主文 1 被告は,福井県に対し,金13万7600円及びこれに対する平成12年11月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告らのその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを20分し,その1を被告の負担とし,その余は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,福井県に対し,556万4395円及びこれに対する平成12年11月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,福井県の住民である原告らが,福井県知事の職にある被告及びほか3名の同県職員が実施した外国出張旅行に要した費用を,被告が公金から支出したのは違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,被告に対し,旅費に相当する556万4395円とこれに対する訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の損害賠償を求めた事案である。 1 前提事実(争いのない事実のほかは末尾に証拠を掲記した。)(一) 原告らは,いずれも福井県の住民である。被告は,福井県知事であり,以下の支出について支出命令権限を有していた。 (二) 被告,福井県秘書課長A(以下「A」という。)及び福井県国際課企画主査B(以下「B」という。)は,平成11年10月24日から同年11月1日までの9日間,以下の日程で海外出張旅行(以下「本件出張旅行1」という。)に行った(甲2,5の1,乙16の1,弁論の全趣旨)。 (なお,以下とくに断らない限り,年は平成11年を指す。)10月24日福井発関西空港発パリ経由フィレンツェ着(エクセル (なお,以下とくに断らない限り,年は平成11年を指す。)10月24日福井発関西空港発パリ経由フィレンツェ着(エクセルシオールホテル泊)25日フィレンツェ午前10時30分から12時00分までフィレンツェ産業連盟訪問午後2時00分から午後5時30分までフィレンツェ市内視察調査(エクセルシオールホテル泊)26日フィレンツェ発ピサ着午前11時30分から12時00分までピサ斜塔視察ピサ発ミラノ着(プリンチペ・ディ・サヴォイアホテル泊)27日ミラノ発クレモナ着午前10時15分から午前11時30分までクレモナ楽器製作所視察クレモナ発ミラノ着午後3時00分から午後3時20分までジェトロ・ミラノ・センター(県ミラノ事務所)訪問午後4時00分から午後4時45分まで鯖江市ミラノ事務所開所式出席午後5時00分から午後5時20分までシャルマン・イタリア(眼鏡フレーム卸売業)視察午後7時30分から午後9時30分まで鯖江市ミラノ事務所開所記念パーティー出席(プリンチペ・ディ・サヴォイアホテ 午後7時30分から午後9時30分まで鯖江市ミラノ事務所開所記念パーティー出席(プリンチペ・ディ・サヴォイアホテル泊)28日ミラノ発ハンブルク着(ルネッサンスホテル泊)29日午前10時30分から午前11時00分まで在ハンブルク日本国総領事館公邸訪問午前11時30分から午後1時00分まで福井県日独友好親善協会訪独団との結団式出席ハンブルク発ヴィンゼン着午後3時30分から午後4時45分までD氏(ヴィンゼン独日協会名誉会長)宅訪問午後5時00分から午後6時30分までハールブルク郡長,ヴィンゼン市長及びヴィンゼン独日協会会長らを交えた夕食会午後7時30分から午後10時30分まで福井県とドイツ連邦共和国ハールブルク郡及びヴィンゼン市との友好協定(以下「本件友好協定」という。)調印式(福井県,ハールブルク郡及びヴィンゼン市の各首長による調印)出席(シュトヒネスホテル泊)30日午前10時00分から午後1時00分まで福井県日独友好親善協会とヴィンゼン独日協会との交流会への参加ヴィンゼン発ハンブルク経由フランクフルト着 後1時00分まで福井県日独友好親善協会とヴィンゼン独日協会との交流会への参加ヴィンゼン発ハンブルク経由フランクフルト着(シュロスホテルクロンベルク泊)31日 フランクフルト発(機内泊)11月 1日関西空港着福井着(三) 福井県県民生活部長C(以下「C」という。)は,10月24日から11月3日までの間,以下の日程で,海外出張旅行(以下「本件出張旅行2」という。)に行った(甲2,5の1・2,乙16の1・2,弁論の全趣旨)(なお、「本件出張旅行1」及び「本件出張旅行2」とを併せて以下「本件出張旅行」という。)。 10月24日ないし同月29日までの日程は本件出張旅行1と同じである。 10月29日ハンブルク(ルネッサンスホテル泊)30日ハンブルク発フランクフルト経由ローテンブルク着午前11時00分から午後5時30分までドイツ連邦共和国(ローテンブルグ市,古城街道,ロマンティック街道)の現地調査等(アルテスブラウハウスホテル泊)31日ローテンブルク発ミュンヘン経由アムステルダム着(シェラトンアムステルダムホテル泊)11月 1日アムステルダム発ハーグ着午前10時00分から午前10時30分までハーグ市の在オランダ日本大使館の表敬訪問午後2時00分から午後3時00分までハーグ市のE氏(弟)宅訪問午後7時00分から午後9 午前10時00分から午前10時30分までハーグ市の在オランダ日本大使館の表敬訪問午後2時00分から午後3時00分までハーグ市のE氏(弟)宅訪問午後7時00分から午後9時00分までE氏兄弟とライデン大学の関係者を交えた夕食会に出席(ホテルソフィテルデンハーグ泊)2日ハーグ発ユトレヒト着午前10時00分から午前11時00分までユトレヒト市のオランダボランティアセンターを表敬訪問ユトレヒト発アムステルダム着(機内泊)3日関西空港着福井着(四)(1) 本件出張旅行の旅費支出金額は,被告分が214万6470円,A分が114万4155円,B分が109万3640円,C分が118万0130円の合計556万4395円であった(甲2,6の1ないし5,7の1ないし5,8の1・2,9,10,11の1・2,12,13の1・2,14,15,16の1・2)。 (2) なお,そのうち本件出張旅行にかかる被告分,A分,B分及びC分の各宿泊料及びその規定額は以下のとおりであった(甲2,7の5,8の1・2,乙1ないし6,乙21の1・2)。 (ア) まず,被告分は,規定額が16万9400円(1泊2万4200円×7日)のところ,増額調整がされて(シュトヒネスホテルを除く。),合計57万2000円となった(内訳は下記のとおり。)。 エクセルシオールホテル(2泊) 21万6000円ジュニアスウィートルーム 1泊10万8000円×2泊プリンチペ・ディ・サヴォイアホテル(2泊) 21万2000円ジュニアスウィートルーム 1泊10万6000円×2泊ルネッサンスホテル(1泊) 5万8000円 000円×2泊プリンチペ・ディ・サヴォイアホテル(2泊) 21万2000円ジュニアスウィートルーム 1泊10万6000円×2泊ルネッサンスホテル(1泊) 5万8000円ジュニアスウィートルーム 1泊 5万8000円×1泊シュトヒネスホテル(1泊) 1万8000円デラックスルーム 1泊 1万8000円×1泊シュロスホテルクロンベルク(1泊) 6万8000円ジュニアスウィートルーム 1泊 6万8000円×1泊(イ) 次に,A分は,規定額が13万1600円(1泊1万8800円×7日)のところ,増額調整がされて(ルネッサンスホテル及びシュトヒネスホテルを除く。),合計23万2000円となった(内訳は下記のとおり。)。 エクセルシオールホテル(2泊) 8万4000円シングルルーム 1泊 4万2000円×2泊プリンチペ・ディ・サヴォイアホテル(2泊) 9万円シングルルーム 1泊 4万5000円×2泊ルネッサンスホテル(1泊) 1万8000円シングルルーム 1泊 1万8000円×1泊シュトヒネスホテル(1泊) 8000円シングルルーム 1泊 8000円×1泊シュロスホテルクロンベルク(1泊) 3万2000円シングルルーム 1泊 3万2000円×1泊(ウ) さらに,B分は,規定額が11万2700円(1泊1万6100円×7日)のところ,増額調整がされて(シュトヒネスホテルを除く。)合計23万2000円となった(内訳は下記のとおり。)。 エクセルシオールホテル(2泊) 700円(1泊1万6100円×7日)のところ,増額調整がされて(シュトヒネスホテルを除く。)合計23万2000円となった(内訳は下記のとおり。)。 エクセルシオールホテル(2泊) 8万4000円シングルルーム 1泊 4万2000円×2泊プリンチペ・ディ・サヴォイアホテル(2泊) 9万円シングルルーム 1泊 4万5000円×2泊ルネッサンスホテル(1泊) 1万8000円シングルルーム 1泊 1万8000円×1泊シュトヒネスホテル(1泊) 8000円シングルルーム 1泊 8000円×1泊シュロスホテルクロンベルク(1泊) 3万2000円シングルルーム 1泊 3万2000円×1泊(エ) C分は,規定額が9万4000円(1泊1万8800円×5日)のところ,増額調整がされて(ルネッサンスホテルを除く。),10月24日から同月28日までの間の分については,合計19万2000円となった(内訳は下記のとおり。)。 エクセルシオールホテル(2泊) 8万4000円シングルルーム 1泊 4万2000円×2泊プリンチペ・ディ・サヴォイアホテル(2泊) 9万円シングルルーム 1泊 4万5000円×2泊ルネッサンスホテル(1泊) 1万8000円シングルルーム 1泊 1万8000円×1泊(五) 原告らは,平成12年8月4日,福井県監査委員に対し,地方自治法242条1項による住民監査請求を行ったところ,同年9月29日,同委員は,請求の理由がないとして同請求 万8000円×1泊(五) 原告らは,平成12年8月4日,福井県監査委員に対し,地方自治法242条1項による住民監査請求を行ったところ,同年9月29日,同委員は,請求の理由がないとして同請求を棄却した。 その通知は,同月30日原告のもとに到達した(弁論の全趣旨)。 2 争点(一) 本件出張旅行には公務性が認められるか。 【被告の主張】本件出張旅行は,ファッションタウン構想推進事業調査,鯖江市ミラノ事務所開所式等への出席,友好協定締結,国際青年の船及び国際婦人の船事業の再構築にかかる現地調査などの数多くの重要な公務を遂行するために行われたものであり,公務性が認められる。 また,本件出張旅行のように複数の都市で数多くの公務を遂行する場合,移動に時間を要したり,訪問先の都合により空き時間が生じることはやむを得ない。訪問先の都合や不慮の事故等による日程変更に備えて日程にある程度の余裕を持たせておくことは公務の円滑な遂行を期す上で当然である。 なお,本件出張旅行中のピサの斜塔及びクレモナ楽器製作所の見学については,見学に要した費用は被告らが個人で負担し,県費は用いていない。また,被告は,夫人を本件出張旅行に同行したが,その同行費用は夫人に負担せしめ,県費は用いていない。 さらに,国際交流や外国との経済交流を推進するためには現地に赴いて直接調査しなければ得られないことが多く,人間関係を構築するためには直接会って信頼を得ることが不可欠であり,文書照会等では足りない。 以上のように,本件出張旅行は,県政及び被告らの職務と密接に関連した公務であり,必要性・合理性を有している。 【原告らの主張】本件出張旅行は,以下のとおり,観光旅行の域を出ない,公 以上のように,本件出張旅行は,県政及び被告らの職務と密接に関連した公務であり,必要性・合理性を有している。 【原告らの主張】本件出張旅行は,以下のとおり,観光旅行の域を出ない,公益性の乏しいものである。 (1) まず,本件出張旅行の行程の中で,多くの時間は観光と差異のない調査や移動,自由時間に費やされており,行程全体を見るとき,本件出張旅行は,一般の観光旅行の域を出ないのであり,本件出張旅行に公費を支出することは違法である。 すなわち,10月25日については,午前11時から12時までのフィレンツェ産業連盟を訪問したこと以外は単なる観光であり,公務とは認め難い。詳細な視察結果報告書すら存在しない。 同月26日については,被告らは,フィレンツェからピサの斜塔を経由してミラノまでの旅程を楽しんだものであり,全くの観光旅行である。 同月27日については,被告は,自らの私的な嗜好のため,クレモナ楽器製作所に出かけた。同日午後3時以降の訪問等は一応公務と認められるが,同日もその多くの時間を観光に費やしている。 同月28日については,同日午後2時40分にミラノ空港を出発するまでミラノ市内で過ごし,同日午後5時半にハンブルクのルネッサンスホテルに到着したものであり,全くの観光旅行である。 同月29日については,被告らはその大半を公務で過ごした。 同月30日については,多くの時間は観光旅行であった。 また,その後のCの本件出張旅行2においても,10月30日は,古城街道,ロマンティック街道を観光して回ったに過ぎず,この行程について調査結果は提出されているものの,視察しなくても調査可能な事項ばかりである。 同 行2においても,10月30日は,古城街道,ロマンティック街道を観光して回ったに過ぎず,この行程について調査結果は提出されているものの,視察しなくても調査可能な事項ばかりである。 同月31日も同様であり,ローテンブルクを出発し,ミュンヘンからアムステルダムまで観光地を巡って回っただけであり,調査結果もない。 11月1日については,公務らしいことはしているが,内容は粗末なものである。 同月2日については,午前10時から午前11時までのボランティアセンター訪問以外は移動しているだけである。 以上のように,被告らの旅程はそのほとんどが観光旅行であり,公務とは言い難く,旅程全体の公務性を認めるには足りず,公費の支出全体が違法というべきである。仮にそうでなくても,公務性が認められない部分への公費支出は違法である。 (2) また,本件出張旅行の中で公務といい得るものについては,いずれもその必要性・合理性や目的との均衡を欠いており,違法である。 (ア) 本件出張旅行1に関しては,フィレンツェ産業連盟訪問については,文書照会をすれば足りたものであり,被告が出かけ意見交換する必要性はなかった。 福井県ミラノ事務所訪問については,わずか20分の挨拶に立ち寄っただけであり,必要性は存しない。 鯖江市ミラノ事務所開所式,同事務所開所式記念パーティーについても,被告が行かなくてはならない必然性は存しない。 シェルマン・イタリア訪問については,被告の主張からもその必要性は認められない。 在ハンブルク日本国総領事表敬,福井県日独友好親善協会訪独団結団式についても,独自の目的となりうるものではなく については,被告の主張からもその必要性は認められない。 在ハンブルク日本国総領事表敬,福井県日独友好親善協会訪独団結団式についても,独自の目的となりうるものではなく本件友好協定調印に付随するものに過ぎない。 本件友好協定締結については,当該時期にかかる協定を締結する必要性を見出し難い。 D氏宅訪問についても,独自の必要性はない。 (イ) 本件出張旅行2に関しては,在オランダ日本大使館表敬については,文書での協力要請でも足りたはずであり,必要性は認められない。 E氏宅表敬やライデン大学関係者との夕食会も必要性はなかった。 ボランティアセンター表敬については,文書交換でも足りたことであり,あえて訪問する必要性はなかった。 よって,本件出張旅行は,いずれも必要性に乏しく,そのために公費の支出をすることは違法である。 (二) 本件出張旅行に係る旅費は著しく高額か。 【被告の主張】本件出張旅行にかかる旅費(以下「本件旅費」という。)は,福井県一般職の職員等の旅費に関する条例(昭和25年福井県条例第46号,以下「一般職旅費条例」という。)及び福井県特別職の職員の給与および旅費に関する条例(昭和29年福井県条例第3号,以下「特別職旅費条例」という。)に基づき適正に算定されたものであり,宿泊料の調整についても十分な合理性があるものである。 すなわち,福井県職員が公務により海外へ出張する際の旅費は,一般職の職員については,一般職旅費条例34条ないし37条に基づいて算定され,特別職の職員については,特別職旅費条例附則3項により,一般職の職員の規定に準じる(要領等の規程はないが,原則として,国家公務員 職員については,一般職旅費条例34条ないし37条に基づいて算定され,特別職の職員については,特別職旅費条例附則3項により,一般職の職員の規定に準じる(要領等の規程はないが,原則として,国家公務員等の旅費に関する法律の規定に基づき算出するものとし,この場合,知事は内閣総理大臣等《その他の者》の職に該当するものとして取り扱われている。)。そして,本件出張旅行にかかる旅費は,被告分については特別職旅費条例,A,B及びC分については一般職旅費条例に基づいて算定される。 また,宿泊料については,一般職旅費条例38条2項及び知事の事務部局等の職員等の旅費取扱規程(平成10年福井県訓令第1号,以下「旅費取扱規程」という。)16条3項に基づき,以下の「特別の事情」により増額調整が行われている。 すなわち,①イタリア共和国及びドイツ連邦共和国の都市部の治安が日本と比べて注意を要する状況にあること,②日程を円滑に遂行するためには,宿泊するホテルは訪問先に近く,また,空港等の主要交通拠点にアクセスしやすい位置にあることが必要であること,③日程を円滑に進めるための打合せ(スケジュールの確認,行事内容の確認等)や県との綿密な連絡を取るための打合せ(原子力安全対策に関すること,JR小浜線の電化に関すること,人事や組織に関すること等)を行う必要があること(宿泊施設に執務室を確保しておくことは,知事という立場にある被告としてとるべき危機管理の一つである。)から,寝室とは別に執務室を確保する必要があること等の「特別の事情」により増額調整が行われた。 そして,被告が宿泊するホテル及び部屋のクラスの選定については,上記①ないし③を考慮して候補となるホテルを抽出し,その中で宿泊料金が一番低額なものを選定した(ただし,ヴィンゼン市におい そして,被告が宿泊するホテル及び部屋のクラスの選定については,上記①ないし③を考慮して候補となるホテルを抽出し,その中で宿泊料金が一番低額なものを選定した(ただし,ヴィンゼン市においては,同市に宿泊する必要があり,外国人旅行者が一般的に利用するホテルは,現に宿泊したホテルのみであった。)。また,執務室を確保できる部屋のクラスは,スウィートクラスに限定されるが,その中で最も低額なジュニアスウィートルームを選定した。他方,被告に随行する職員は,被告との打合せ及び被告と県庁間との連絡調整事務に支障を来すことのないよう,被告と同じホテルに宿泊する必要があり,ホテルの部屋のクラスは,最も低額なシングルルームを選定した。 なお,これら宿泊料については,一般職旅費条例38条2項,旅費取扱規程16条3項に基づき,平成11年10月8日付け人第991号及び同日付け人第991-2号により承認されている。 よって,経費については,その金額には十分な合理性があり,県条例等の手続にしたがって適正に支出されたものである。 【原告らの主張】本件出張旅行の旅費支出金額は,合計556万4395円に上り,通常の海外出張旅行に要する金額に比して高額に過ぎる。特に,宿泊料は,何ら合理的理由もなく規定額を大幅に上回る額が支出されており,通常要する金額以上の支出は違法である。 まず,増額調整すべき「特別の事情」の検討は甚だ不十分である。すなわち,規定額以内で宿泊できる施設についての資料やその施設に宿泊したのでは出張の行程に支障を来すことの具体的な問題点についての資料は一切ない。単に犯罪の発生率がかなり高いので常時玄関にドアマンが配置されている必要があるからという,極めて漠然とした理由で最高級ホテルであること の行程に支障を来すことの具体的な問題点についての資料は一切ない。単に犯罪の発生率がかなり高いので常時玄関にドアマンが配置されている必要があるからという,極めて漠然とした理由で最高級ホテルであることが決められ,打合せや多量のファックスを処理するための執務場所の確保が必要であるという,極めて非現実的な理由でスウィートクラスの部屋でなければならないと決められている。 そして,執務室を確保する必要性については,被告が打合せ事項として挙げるもののうち,本件出張旅行の行程の中で必然的に生じる事項は,スケジュール及び挨拶事項の確認程度であり,執務室のあるジュニアスウィートルームに宿泊する必要性はない。 また,広い部屋を確保するということは危機管理に直結するものではなく,両者の間に合理的関連性はない。ビジネスホテル,あるいはスタンダードタイプの部屋であっても,3,4名でミーティングを行ったり書類に目を通すことは十分に可能である。スウィートタイプの部屋は執務を行うのに特別に便利ではない。 結局,被告が宿泊料として費消した57万2000円のうち,規定額である16万9400円(2万4200円×7日)を超える部分は,安全性や執務上の必要性とは無関係な,高級感,贅沢さ,豪華さを満喫するために費やされているのであって,宿泊料の増額調整は裁量権の範囲を逸脱したものであり,違法である。 そして,本件出張旅行に同行したA,B及びCの各宿泊料の増額調整については,被告との打合せや連絡等の必要上,被告と同じホテルに宿泊した結果,宿泊料が規定額以内に収まらなかったものであり,上記3名の各宿泊料の増額調整も裁量権の範囲を逸脱したものであり,違法である。 (三) 本件支出についての被告の責任について。 【被告の主張】 泊料が規定額以内に収まらなかったものであり,上記3名の各宿泊料の増額調整も裁量権の範囲を逸脱したものであり,違法である。 (三) 本件支出についての被告の責任について。 【被告の主張】県において知事の権限に属する事務で本庁において処理するもののうち,旅費の予算執行及び旅費の支出命令に関することについては,福井県事務決裁規程(昭和50年福井県訓令第3号,以下「事務決裁規程」という。)3条により,課(室)長補佐の専決事項と規定されており,被告は,旅費の予算の執行及び旅費の支出命令に関する事務については決裁をしていない。 また,一般職旅費条例38条2項に係る「特別の事情の認定」及び「宿泊料の決定」の権限並びに旅費取扱規程16条3項に係る「特別の事情の認定」及び「宿泊料の決定」の権限については,事務決裁規程別表により,職員等の給与,手当および旅費に関する事項のうち,特別職の職員の外国旅行の旅費に関することは総務部長の専決事項と定められている。 そして,被告は,従前から行政運営及び予算執行の適正化について,職員に指示をしてきたところであり,地方公共団体の長としての指揮監督上の義務は果たしてきたものであり,被告は,旅費の支出命令に関する専決権を有する職員が本件旅費の支出という財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反しておらず,損害賠償責任を負わない。 第3 争点に対する判断 1 争点1について(本件出張旅行には公務性が認められるか。)地方公共団体の事務を処理するに当たっては最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならず(地方自治法2条13項),その経費は目的を達成するための必要かつ最小の限度をこえて支出してはならない(地方財政法4条1項)とされており,そのよ 最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならず(地方自治法2条13項),その経費は目的を達成するための必要かつ最小の限度をこえて支出してはならない(地方財政法4条1項)とされており,そのような法の趣旨を踏まえるならば,本件出張旅行も,その内容がその目的・効果等に照らして社会通念上相当な範囲内にあることが必要であり,上記判断は第一次的には予算の執行権限を有する財務会計職員の社会的,政策的又は経済的見地からする裁量に委ねられているものと解される。 そこで、以下,本件出張旅行が社会通念上相当な範囲内のものと評価できるかどうかについて検討する。 (一) フィレンツェ訪問について(本件出張旅行1)福井県は,昭和63年、平成12年度を目標年次とする新長期構想「福井21世紀へのビジョン」を策定したが,その一環として、地域産業である繊維産業の活性化を図るべく,ファッションタウン構想(地場産業の振興と生産地の活性化を結びつけた街づくりのことであり,産地が地域の産業,歴史,文化,自然環境等を融合させ個性ある街づくりを行うことにより,単なる生産基地から脱却して個性的で新しいファッションの発信基地となることを目指すもの)の推進を掲げており(乙7ないし9),他方、フィレンツェは,代表的なファッションタウンのひとつとして位置づけられている(乙10)。 そこで,福井県知事である被告は,A,B及びCとともに,ファッションタウン構想推進事業の調査(フィレンツェ市の都市景観《街づくり》,都市景観と地場産業の融合状況,地場産業の情報発信状況等の調査)をする目的で,上記のとおり,フィレンツェ訪問(フィレンツェ産業連盟訪問,フィレンツェ市内視察調査)を実施した(乙7ない 《街づくり》,都市景観と地場産業の融合状況,地場産業の情報発信状況等の調査)をする目的で,上記のとおり,フィレンツェ訪問(フィレンツェ産業連盟訪問,フィレンツェ市内視察調査)を実施した(乙7ないし10,11の1・2,弁論の全趣旨)。 なお,フィレンツェ産業連盟国際局長は,2000年1月20日付けの福井県知事である被告宛ての手紙において、同連盟が福井県のファッションタウン構想の推進に協力する旨述べるに至っている(乙11の1・2)。 (二) ミラノ訪問について(本件出張旅行1)福井県知事である被告及び同県県民生活部長であるCは,いずれも,鯖江市長から,9月9日付「鯖江市ミラノ事務所開所式について(御案内)」と題する書面で,10月27日の鯖江市ミラノ事務所(鯖江市が眼鏡をはじめとする地場産業等の販路拡大及び先端情報の収集を目的としてミラノ市に設置する事務所)開所式に出席するよう依頼を受けた(乙12の1・2)。 そこで,被告は,A,B及びCとともに,鯖江市ミラノ事務所開所式に出席して,福井県と鯖江市との協力関係をアピールするとともに,同県ミラノ事務所と関係のあるミラノ市の経済界の関係者等に直接支援要請を行うなどの目的で,上記のとおり,ミラノ訪問(県ミラノ事務所訪問,鯖江市ミラノ事務所開所式出席,シャルマン・イタリア視察,鯖江市ミラノ事務所開所記念パーティー出席)を実施した(乙12の1・2,弁論の全趣旨)。 (三) ハンブルク,ヴィンゼン市訪問について(本件出張旅行1)福井県知事である被告は,A,B及びCとともに,本件友好協定(福井県,ハールブルク郡及びヴィンゼン市が積極的に協力し,交流していくことを誓い合うもの)を締結するなどの目的で,上記のとおり, 福井県知事である被告は,A,B及びCとともに,本件友好協定(福井県,ハールブルク郡及びヴィンゼン市が積極的に協力し,交流していくことを誓い合うもの)を締結するなどの目的で,上記のとおり,ハンブルク,ヴィンゼン市訪問(在ハンブルク日本国総領事館公邸訪問,福井県日独友好親善協会訪独団との結団式出席,D氏宅訪問,ハールブルク郡長等を交えた夕食会出席,本件友好協定調印式出席,福井県日独友好親善協会とヴィンゼン独日協会との交流会への参加)を実施し,被告は、福井県を代表して,ハールブルク郡長やヴィンゼン(ルーエ)市長とともに「福井県及びハールブルク郡・ヴィンゼン市(ルーエ)の友好協定書」に署名した(乙13,14,弁論の全趣旨)。 (四) Cのドイツ連邦共和国及びオランダ王国訪問について(本件出張旅行2)福井県県民生活部においては,県民生活の向上に関する事項,国際交流に関する事項,青少年および女性政策に関する事項等の事務をつかさどっており(乙24),同部長であるCは,国際青年の船事業(積極的な社会参加意欲を持った青年を育成し,様々な体験を持つ地域の青年リーダーの養成を行うことを目的として,海外での生活体験やボランティア等の社会参加活動経験の充実を図る)及び国際婦人の船事業(時代の要請に応えた男女共同参画社会の形成を推進する地域の女性リーダーの養成を行うことを目的として,男女共同参画や環境保護,福祉等についての諸外国の取組みを学ぶための現地女性団体との意見交換等の充実を図る)の再構築にかかる現地調査及び協力要請等を行う目的で,上記のとおり,10月30日から11月2日までの間,ドイツ連邦共和国及びオランダ王国での現地調査等(ドイツ連邦共和国の現地調査等,在オランダ日本大使館の表敬訪問,E氏宅訪問,E氏兄弟とライデ 目的で,上記のとおり,10月30日から11月2日までの間,ドイツ連邦共和国及びオランダ王国での現地調査等(ドイツ連邦共和国の現地調査等,在オランダ日本大使館の表敬訪問,E氏宅訪問,E氏兄弟とライデン大学の関係者を交えた夕食会への出席,オランダボランティアセンターの表敬訪問)を実施した(乙22,23,弁論の全趣旨)。 (五) なお,C及びBは,本件出張旅行1について,連名で11月24日付復命書を作成して福井県知事である被告に提出し,Cは,本件出張旅行2のうち10月30日以降に係る部分について,他2名と連名で11月29日付復命書を作成して福井県知事である被告に提出しているが,いずれについてもその記載内容は相当程度具体的であった(乙16の1・2)。 (六) 検討上記前提事実によれば,本件出張旅行は,出張先の大部分が観光地あるいは観光名所といわれる場所であること,約1週間以上に及ぶ日程であり,その費用も被告は200万円,同行した県職員も一人当たり100万円を超えていることなど,福井県の厳しい財政状況に照らして(甲18ないし20),その実体が適切なものといえるかどうか疑義を生じさせる側面もないではない。 しかしながら,近年の社会生活の発展と複雑化に伴い,地方行政の機能もまた多様化,複雑化しており,これに対応する県の行政施策の充実のためには,幅広く国内外との協力・連携を図ることが必要であることは否定できず,また,それに付随して,県知事である被告及びこれを補助する県職員が広く国内外の実情に通じてその見識と能力を高めることも必要であり,それがひいては住民の利益にも繋がると考えられる。 そして,上記認定事実によると,被告,A,B及びCは,上記のとおり,いずれも正当かつ多様な の見識と能力を高めることも必要であり,それがひいては住民の利益にも繋がると考えられる。 そして,上記認定事実によると,被告,A,B及びCは,上記のとおり,いずれも正当かつ多様な目的を持って各地を訪問して,本件出張旅行を実施しており,同旅行は,長期的に福井県の行政施策を実施していく上で有益であるともいえる。 これに対し,原告らは,上記のとおり,本件出張旅行の行程の中で,多くの時間は観光と差異のない調査や移動,自由時間に費やされており,行程全体を見るとき,本件出張旅行は一般の観光旅行の域を出ない,公益性の乏しいものであるなどと主張する。しかし,上記の本件出張旅行の各目的に照らすと,単に本件出張旅行の行程に各都市の著明な観光地や施設の見学等が盛り込まれ観光的要素が含まれるからといって,直ちに本件出張旅行の各都市の訪問が専ら私的な観光旅行であると評価することはできない。 また,原告らは,上記のとおり,本件出張旅行の各行程の必要性を否定する。 しかし,本件出張旅行の各行程にはそれぞれ上記の目的が存するものであり,また,原告らが指摘する上記各行程の必要性については,その実施結果が直ちに県の行政施策に反映できるものでなければならないわけではなく,中長期的な視点から県に利益をもたらすと思われるものについても,その必要性を否定することはできない。そして,本件出張旅行の行程の中には,県知事である被告自らが現地に行かなければならない行事もあった(特に,本件友好協定については,ハールブルク郡及びヴィンゼン市の各首長が調印しているのであり,県知事である被告が直に現地に赴いて調印することが同郡及び同市との関係上必要不可欠であったといえる。)。さらに,今後,被告らが本件出張旅行で訪問した各都市や各団体等の福井県への 印しているのであり,県知事である被告が直に現地に赴いて調印することが同郡及び同市との関係上必要不可欠であったといえる。)。さらに,今後,被告らが本件出張旅行で訪問した各都市や各団体等の福井県への協力及び支援を要請するためには,文書照会あるいは文書交換のみに頼るよりも県知事である被告が相手方と直接会って上記要請をする方が効果的であることは明らかであるから,原告らの主張は失当である。 また,原告らは,本件出張旅行の日程で公務の入っていない時間が多いことを指摘するが,相手方の予定の変更等万一の事態に備えて,同旅行の日程にある程度時間的余裕を持たせておくことには相応の合理性があるといえなくもなく,原告らの上記指摘は当を得ない。 そして,被告,A,B及びCは,本件出張旅行の目的とは直接関係のないピサの斜塔見学及びクレモナ楽器製作所視察等については,いずれも費用を自己負担しており,また,被告は,本件出張旅行1に妻を同行させているが,その旅費は妻に負担せしめていることが窺われる(弁論の全趣旨)。 以上の点を総合考慮すると,本件出張旅行が社会通念上相当性を欠いているとまでいうことはできず,本件出張旅行には公務性が認められるというべきである。 2 争点2について(本件出張旅行に係る旅費は著しく高額か。)(一) 宿泊料について(1) 関係条例等別紙のとおり(2) 福井県職員が公務により海外へ出張する際の旅費は,一般職の職員については,一般職旅費条例34条ないし37条により算定され,同条例34条により国家公務員等の旅費に関する法律の適用を受ける国家公務員等に支給される外国旅行の旅費の例によるとされており,特別職の職員については,特別職旅費条例附則3項により 条により算定され,同条例34条により国家公務員等の旅費に関する法律の適用を受ける国家公務員等に支給される外国旅行の旅費の例によるとされており,特別職の職員については,特別職旅費条例附則3項により,一般職の職員の規定に準じることとされている。 そして,本件旅費のうち被告分については,同人が特別職であることから,特別職旅費条例附則3項により,一般職の職員の規定に準じることとされ,そのうち,宿泊料については,特別職旅費条例附則3項,一般職旅費条例34条,国家公務員等の旅費に関する法律35条1項により,規定額は一泊につき2万4200円となる(なお,この場合,知事である被告は,「内閣総理大臣等」のうち「その他の者」の職に該当するものとして取り扱われる。)。また,本件旅費のうちA,B及びC分については,同人らがいずれも一般職であることから,一般職旅費条例34条ないし37条に基づいて算定され,そのうち,宿泊料については,一般職旅費条例34条,国家公務員等の旅費に関する法律35条1項,国家公務員等の旅費支給規程16条ないし18条により,A及びC分については,Aが行政職9級,Cが行政職11級であることから(乙21の1・2参照),規定額はいずれも一泊につき1万8800円,B分については,Bが行政職5級であることから(乙21の2参照),規定額は一泊につき1万6100円となる。 ただし,一般職旅費条例38条2項には,「旅行者がこの条例の規定による旅費により旅行することが当該旅行における特別の事情によりまたは当該旅行の性質上困難である場合には,この条例の規定による旅費に代えて,人事委員会と協議して定める旅費を支給することができる。」と規定され,旅費取扱規程16条3項には,「職員が外国旅行において宿泊する場合で,目的地の治安状況そ には,この条例の規定による旅費に代えて,人事委員会と協議して定める旅費を支給することができる。」と規定され,旅費取扱規程16条3項には,「職員が外国旅行において宿泊する場合で,目的地の治安状況その他当該外国旅行における特別の事情があると知事が認めるとき。 知事がそのつど定める宿泊料」と規定されていることから,被告の宿泊料については,特別職旅費条例附則3項,一般職旅費条例38条2項及び旅費取扱規程16条3項に基づき,A,B及びCの各宿泊料については,一般職旅費条例38条2項及び旅費取扱規程16条3項に基づき,9月20日付で「特別の事情」に基づく旅費の増額調整の申請がなされ(乙21の1,2),いずれも10月8日付「旅費の調整について(承認)」で総務部長により承認された(甲8の1・2)。 (3)(ア) 上記のとおり,被告の宿泊料は,一泊につき基本額は2万4200円とされ,「目的地の治安の状況その他」特別の事情があるときに初めて増額調整ができるとされているのであるから,増額調整が恣意に流れることを防止するためにも,その額は全くの自由な裁量権に委ねられたものではなく,具体的かつ客観的に認められる事由に基づき,原則として基本額を大幅に超えることのない範囲で調整すべきものというべきである。 そこで,以下,本件旅費のうち宿泊料につき「特別の事情」があるとして増額調整をした点に裁量権の逸脱があるか否かにつき検討する。 (イ) 乙17,乙21の1・2,弁論の全趣旨によれば,被告の宿泊先として,上記ホテルのジュニアスウィートルーム等が選定され,宿泊料の増額調整が上記のとおり行われた理由・経緯は以下のとおりであることが認められる。 すなわち,本件出張旅行の訪問先であるイタリア,ドイツは日本に比べ ルーム等が選定され,宿泊料の増額調整が上記のとおり行われた理由・経緯は以下のとおりであることが認められる。 すなわち,本件出張旅行の訪問先であるイタリア,ドイツは日本に比べると犯罪の発生率がかなり高く,ホテルの選定に当たっては,料金面よりも安全面を重視せざるを得ないことから,常時玄関にドアマンが配置され不審者を排除するなど犯罪に対し十分な対策が講じられているホテルを選定する必要があること,及び,訪問中のスケジュールを円滑に進めるため知事である被告等を交えた打合せや,県から送付されてくる多量のファックスを処理するための執務場所の確保が必要なため,被告の部屋としては寝室とは別に1室ある部屋(スウィートクラス)を選定する必要があるとされた。 そこで,まず,フィレンツェにおいては,ファッションタウン構想推進事業調査及びフィレンツェ産業連盟を訪問するため,市中心部に近いホテルが適当であるとの理由で,エクセルシオール,グランド,ビラ・メディチの各ホテルが候補として挙げられ,市中心部に最も近く,料金も安いとの理由で,エクセルシオールホテルが選定された。 また,ミラノにおいては,候補としてプリンチペ・ディ・サヴォイア,フォーシーズン,パレスの各ホテルが挙げられたが,鯖江市ミラノ事務所開所記念パーティーに出席するため,移動時間,経費及び鯖江市関係者と打合せを行うことなどを考慮すると,鯖江市関係者も宿泊し,上記パーティー会場となるホテルが適当であるとの理由で,プリンチペ・ディ・サヴォイアホテルが選定された。 さらに,ハンブルクでは,訪問先である日本国総領事館に近いホテルが適当であるとの理由で,ルネッサンス,フィヤー・フィーツァイツェン,アトランティックの各ホテルが候補として された。 さらに,ハンブルクでは,訪問先である日本国総領事館に近いホテルが適当であるとの理由で,ルネッサンス,フィヤー・フィーツァイツェン,アトランティックの各ホテルが候補として挙げられたが,訪問先である日本国総領事館から近く,料金も安いとの理由でルネッサンスホテルが選定された。 ヴィンゼン市では,同市の人口が3万人程度であり,安全でかつ知事である被告の宿泊先として比較的広い部屋を持つホテルは同市内で一つだけであること,儀礼上及び日程の都合上同市外のホテルに宿泊することは適当でないことから,シュトヒネスホテルが選定された。 そして,フランクフルトでは,移動のための宿泊であるので,空港との往復に便利なホテルが適当であるとの理由で,シュロス,インターコンチネンタル,マリオットの各ホテルが候補として挙げられたが,空港からの往復に便利であるとの理由でシュロスホテルクロンベルクが選定された。 (ウ) 他方,甲17によれば,フィレンツェでは,エクセルシオールホテル(五つ星)から車で約3分の距離の所にコンチネンタルホテル(四つ星)が存し,同ホテル入口付近に設けられた受付には常時レセプショニストとポーターが配置され,同ホテルのスタンダードタイプのツインルームは1泊1万6000円であり,添付図面及び写真からは,上記客室内で数名で打合せをするには十分な広さがあることが認められる。また,ミラノでは,ホテルプリンチペ・ディ・サヴォイア(五つ星)から車で約3分の距離の所にホテルセンチュリータワー(四つ星,1泊1万1200円),車で約4分の距離の所にホテルミケランジェロ(四つ星,1泊2万4000円)がそれぞれ存し,いずれのホテルも,その入口付近に設けられた受付には常時レセプショニスト及びポータ つ星,1泊1万1200円),車で約4分の距離の所にホテルミケランジェロ(四つ星,1泊2万4000円)がそれぞれ存し,いずれのホテルも,その入口付近に設けられた受付には常時レセプショニスト及びポーターが配置されており,添付図面及び写真からは,いずれの客室も数名で打合せを行うには十分な広さがあることが認められる。さらに,ハンブルクでは,ルネッサンスホテル(五つ星)は,受付にレセプショニスト及びポーターが配置されており,添付図面及び写真からは,スタンダードツインタイプの部屋(1泊2万1200円)でも数名で打合せを行うには十分な広さがあることが認められる。そして,フランクフルトでは,シュロスホテルクロンベルクは,フランクフルト空港から車で約30分の距離の所にあるのに対して,ホテルノボテルフランクフルトエシュボーンは,同空港から車で約20分の距離の所にあり,同ホテルの受付には常時複数名のレセプショニストが配置されている上,添付図面及び写真からは,そのスタンダードタイプの部屋(1泊2万700円)は数名で打合せを行うには十分な広さがあることが認められる。 上記の各事実によると,被告が訪問した各都市には,被告が宿泊した上記各ホテル以外に,規定額の範囲内で宿泊でき,かつ,数名で打合せを行うことが十分可能な広さの部屋のあるホテルが存することが認められる。 (エ) そこで,以上を前提として,被告らの宿泊先として上記各ホテルが選定されたことに合理性が認められるか否かについて検討する。 まず,安全面を重視し,常時玄関にドアマンが配置され不審者を排除するなど犯罪に対し十分な対策が講じられているホテルを選定する必要があることから,被告らの宿泊先としてエクセルシオールホテル(五つ星),プリンチペ・ディ・サヴォイア にドアマンが配置され不審者を排除するなど犯罪に対し十分な対策が講じられているホテルを選定する必要があることから,被告らの宿泊先としてエクセルシオールホテル(五つ星),プリンチペ・ディ・サヴォイアホテル(五つ星),ルネッサンスホテル(五つ星)及びシュロスホテルクロンベルク(五つ星)がそれぞれ選定されたことについては,被告の社会的地位とこれに対応した安全の確保という点を重視すると一応の合理性が認められる。特に,プリンチペ・ディ・サヴォイアホテルにおいては,上記鯖江市ミラノ事務所開所記念パーティーが開催されたものであり(甲2,乙16の1),被告,A,B及びCの宿泊先として同ホテルが選定されたことには,一般通念に照らしても,やむを得ない事由があったということができる。 しかし,他方,上記のとおり,被告の妻を別とすれば,本件出張旅行で被告に同行したのはA,B及びCの3名であったこと,同旅行中の打合せ事項は,差し当たり,スケジュールの確認,行事内容の確認及び県庁から送られてくる情報についての協議程度であったこと,その打合せ時間は,日によって異なるが,朝は20分ないし30分程度,夜は30分ないし1時間程度に過ぎなかったこと(弁論の全趣旨),県庁から送られてくるファクシミリ通信はいずれのホテルでも受付において扱い,直接各部屋で扱えるものではないこと(甲17),被告は,ヴィンゼン市ではシュトヒネスホテルのデラックスルームに宿泊しており,同ホテルでも特段の支障もなく打合せができたこと(甲2)などからすると,被告が宿泊する部屋として宿泊料のより低額な通常クラスの部屋を選定することについて十分具体的な検討をなさないままジュニアスウィートルームを選定した点については,裁量権の逸脱の有無を検討すべきである。 他方,A,B及 低額な通常クラスの部屋を選定することについて十分具体的な検討をなさないままジュニアスウィートルームを選定した点については,裁量権の逸脱の有無を検討すべきである。 他方,A,B及びCが上記各ホテルに宿泊したことについては,被告が宿泊するホテルと同じホテルに宿泊する必要があり,被告の宿泊先として五つ星ホテルである上記各ホテルが選定されたことに合理性があると認められることに照らすと,合理性があり,裁量権の逸脱があったとは認められない。 (オ) そこで,被告が宿泊するホテルの部屋の選定につき,裁量権の逸脱の有無を検討するに,上記のとおり,被告の宿泊料につき明確な基本金額を定めて旅費の支出が恣意に流れることを防止しようとしている法及び規程の趣旨からすると,執務上の便宜のほか,知事としての体面,外国の各ホテルのサービス内容を事前に把握するには困難が伴うことなど具体的に考慮しうる諸事情を併せても,上記(イ)(ウ)の事情が認められる本件においては,多くても基本額の3倍である一泊7万2600円を超える部分は,ホテルの高級感・豪華さ・雰囲気などをもたらすに過ぎず,旅行目的や執務に資するものとは言い難いから,格別の事情が主張立証されない限り,原則として裁量権の範囲を逸脱しているというべきである。 そして,本件において同額を超える宿泊料を要するジュニアスウィートルームを選定することについて格別の事情があったとは認められないから,被告の宿泊料のうち同額を超える部分についての支出は裁量権を逸脱したものと認めるのが相当である。 そうすると,被告の宿泊料については,以下の計算のとおり,合計13万7600円分について裁量権を逸脱しており,その部分の支出は違法と評価せざるを得ず,福井県には同額の損 る。 そうすると,被告の宿泊料については,以下の計算のとおり,合計13万7600円分について裁量権を逸脱しており,その部分の支出は違法と評価せざるを得ず,福井県には同額の損害が生じたというべきである。 (計算式)エクセルシオールホテル分(10万8000円-7万2600円)×2日=7万0800円プリンチペ・ディ・サヴォイアホテル分(10万6000円-7万2600円)×2日=6万6800円(二) 宿泊料以外の旅費について甲7の1ないし4,11・13・16の各1・2,乙1ないし6,弁論の全趣旨によれば,被告,A,B及びCの本件出張旅行の宿泊料以外の旅費については,いずれも各規定額の範囲内であることが認められ,その支出過程にも違法性は窺われない。 3 争点3について(本件支出についての被告の責任について。)事務決裁規程3条及び別表によれば,特別職の職員の外国旅行の旅費に関することは総務部長の専決事項とされており,被告自身は本件支出行為には直接関与していない。 そして,地方公共団体の長の権限に属する財務会計上の行為を補助職員が専決により処理した場合は,地方公共団体の長は,上記補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失により上記補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったときに限り,普通公共団体が被った損害につき賠償責任を負うものと解される(最高裁平成3年12月20日第二小法廷判決・民集45巻9号1455頁参照)。 これを本件についてみると,地方公共団体の長である被告は,自ら本件出張旅行に赴くものであること,自己の旅行命令(依頼)の「旅行者の認印」欄に自ら押印し(甲6 巻9号1455頁参照)。 これを本件についてみると,地方公共団体の長である被告は,自ら本件出張旅行に赴くものであること,自己の旅行命令(依頼)の「旅行者の認印」欄に自ら押印し(甲6の1),旅費概算請求書に記名押印していること(甲11の1)から,自己の旅費が各規定額を大幅に上回るものであることを知っていたか,少なくとも容易に知り得たものであって,被告としては事前に違法な支出行為がなされることを知っていたか,又は知らなかったことについて過失があったものと認めるのが相当である。 したがって,本件においては,被告が,専決を任された補助職員である総務部長が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失により,上記補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったものと認められるから,本件支出行為については被告の責任は免れない。 4 結論以上の次第で,原告らの被告に対する請求は,主文1項の限度で理由があるから,主文のとおり判決する。 なお,仮執行宣言は相当でないので付さないこととする。 福井地方裁判所民事第2部裁判長裁判官小原卓雄裁判官酒井康夫裁判官入子光臣別紙① 福井県特別職の職員の給与および旅費に関する条例(昭和29年3月25日福井県条例第3号)附則3項特別職の職員の外国旅行の旅費は,当分の間,一般職員に準じ知事が定める。(乙1)② 福井県一般職の職員等の旅費に関する条例(昭和25年7月12日福井県条例第46号)第34条第2条から前条までの規定にかかわらず,外国旅行( ② 福井県一般職の職員等の旅費に関する条例(昭和25年7月12日福井県条例第46号)第34条第2条から前条までの規定にかかわらず,外国旅行(本邦と外国(本邦以外の領域(公海を含む。)をいう。以下同じ。)との間および外国における旅行をいう。以下同じ。)の旅費については,次条から第37条までに定めるものを除き,国家公務員等の旅費に関する法律の適用を受ける国家公務員等に支給される外国旅行の旅費の例による。 第38条第2項任命権者は,旅行者がこの条例の規定による旅費により旅行することが当該旅行における特別の事情によりまたは当該旅行の性質上困難である場合には,この条例の規定による旅費に代えて,人事委員会と協議して定める旅費を支給することができる。(乙2)③ 知事の事務部局等の職員等の旅費取扱規程(平成10年3月27日福井県訓令第1号)第1条職員(知事の事務部局および地方労働委員会事務局の職員に限る。以下同じ。)および職員以外の者に対して支給する旅費の取扱いについては,福井県一般職の職員等の旅費に関する条例(昭和25年福井県条例第46号。以下「条例」という。)…に定めるもののほか,この訓令の定めるところによる。 第16条次の各号に掲げる場合には,条例第38条第2項の規定により,当該各号に定める旅費を支給することができる。 (3) 職員が外国旅行において宿泊する場合で,目的地の治安状況その他当該外国旅行における特別の事情があると知事が認めるとき。 知事がそのつど定める宿泊料 (乙4)④ 国家公務員等の旅費に関する法律(昭和25年 状況その他当該外国旅行における特別の事情があると知事が認めるとき。 知事がそのつど定める宿泊料 (乙4)④ 国家公務員等の旅費に関する法律(昭和25年4月30日法律第114号)第3章外国旅行の旅費第35条第1項日当及び宿泊料の額は,旅行先の区分に応じた別表第2の定額による。 別表第2(抄) 1 日当,宿泊料及び食卓料区分宿泊料(一夜につき)甲地方 内閣総理その他の者大臣等 24200円9級以上の職務にある者18800円8級以下4級以上の職務にある者16100円備考 2 指定都市とは,大蔵省令で定める都市の地域をいい,甲地方とは,北米地域,欧州地域及び中近東地域として大蔵省令でめる地域のうち指定都市の地域以外の地域で大蔵省令で定める地域をいい,…(乙5)⑤ 国家公務員等の旅費支給規程(昭和25年5月1日大蔵省令第45号)第16条法別表第2の1の備考2に規定する指定都市は,シンガポール,ロス・アンジェルス,ニュー・ヨーク,サン・フランシスコ,ワシントン,ジュネーヴ,ロンドン,モスクワ,パリ,アブ・ダビー,ジェッダ,クウェイト,リアド及びアビジャンの地域とする。 第17条法別表第2の1の備考2に規定する次の各号に掲げる地域として大蔵省令で定める地域は,当該各号に定める地域とする。 2号欧州地域ヨーロッパ大陸…第18条法別表第2の1の備考2 号に掲げる地域として大蔵省令で定める地域は,当該各号に定める地域とする。 2号欧州地域ヨーロッパ大陸…第18条法別表第2の1の備考2に規定する甲地方は,前条第1号から第3号までに定める地域のうち第16条の地域以外の地域で…を除いた地域とする。(乙6)
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