主文 1 原告A1,原告A2,原告A3,原告A4及び原告A5の本件訴えのうち,差止請求に係る部分をいずれも却下する。 2 上記原告らのその余の請求及びその余の原告らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 原告A1,原告A2,原告A3,原告A4及び原告A5(以下「原告A1ら」という。)の請求被告は,次のことをしてはならない。 ⑴ 自衛隊法76条1項2号に基づいて自衛隊の全部又は一部を出動させること⑵ 重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律6条1項又は2項に基づいて同法3条1項2号に定める後方支援活動として自衛隊に属する物品の提供又は自衛隊による役務の提供をすること⑶ 国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律7条1項又は2項に基づいて同法3条1項2号に定める協力支援活動として自衛隊に属する物品の提供又は自衛隊による役務の提供を実施すること 2 原告らの請求被告は,原告らそれぞれに対し,10万円及びこれに対する平成27年9月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要内閣は,平成26年7月1日,「国の存立を全うし,国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」と題する新たな安全保障法制の整備のための基本方針を閣議決定し,平成27年5月14日,我が国及び国際社会の平和及 び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律(以下,「平和安全法制整備法」という。)及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律(以下「国際平和支援法」といい,平和安全法制整備法 する法律(以下,「平和安全法制整備法」という。)及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律(以下「国際平和支援法」といい,平和安全法制整備法と併せて「平和安全法制関連2法」という。)に係る法律案を閣議決定し,同月15日,上記各法律案を衆議院に提出し,同法案は,同年9月19日,国会の可決により成立した。 本件は,①原告A1らが,平和安全法制整備法により定められた自衛隊の防衛出動の命令(請求の趣旨1⑴),後方支援活動及び協力支援活動(以下「後方支援活動等」という。)として行われる自衛隊に属する物品の提供及び自衛隊による役務の提供(請求の趣旨1⑵及び⑶)がいずれも憲法9条に反するものであって,上記各行為が行われることにより原告A1らの平和的生存権及び人格権が侵害されるおそれがあると主張して,被告に対し,平和的生存権及び人格権に基づいて,上記各行為の差止めを求める(以下,これらの請求を「本件各差止請求」という。)とともに,②原告らが,平和安全法制関連2法に係る上記の内閣の閣議決定及び法案提出行為並びに国会による立法行為によって原告らの平和的生存権及び人格権が侵害され精神的苦痛を受けたと主張して,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づいて,各10万円の慰謝料及びこれに対する平成27年9月19日(国会による平和安全法制関連2法の可決の日)から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(以下,これらの請求を「本件各損害賠償請求」という。)事案である。 1 関係法令の定め⑴ 自衛隊法ア 76条1項内閣総理大臣は,次に掲げる事態に際して,我が国を防衛するため必要があると認める場合には,自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。この場合においては,武力攻撃事態 自衛隊法ア 76条1項内閣総理大臣は,次に掲げる事態に際して,我が国を防衛するため必要があると認める場合には,自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。この場合においては,武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(略) 第9条の定めるところにより,国会の承認を得なければならない。 2号我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,これにより我が国の存立が脅かされ,国民の生命,自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態イ 95条の2第1項自衛官は,アメリカ合衆国の軍隊その他の外国の軍隊その他これに類する組織(次項において「合衆国軍隊等」という。)の部隊であつて自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動(括弧内略)に現に従事しているものの武器等を職務上警護するに当たり,人又は武器等を防護するため必要であると認める相当の理由がある場合には,その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。ただし,刑法第36条又は第37条に該当する場合のほか,人に危害を与えてはならない。 2項前項の警護は,合衆国軍隊等から要請があつた場合であつて,防衛大臣が必要と認めるときに限り,自衛官が行うものとする。 ⑵ 武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(以下「事態対処法」という。)2条この法律(略)において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。 4号存立危機事態我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,これにより我が国の存立が脅かされ,国民の生命,自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態をいう。 ⑶ 4号存立危機事態我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,これにより我が国の存立が脅かされ,国民の生命,自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態をいう。 ⑶ 重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律(以下「重要影響事態法」という。)ア 3条1項この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。 1号合衆国軍隊等重要影響事態に対処し,日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行うアメリカ合衆国の軍隊及びその他の国際連合憲章の 目的の達成に寄与する活動を行う外国の軍隊その他これに類する組織をいう。 2号後方支援活動合衆国軍隊等に対する物品及び役務の提供,便宜の供与その他の支援措置であって,我が国が実施するものをいう。 2項後方支援活動として行う自衛隊に属する物品の提供及び自衛隊による役務の提供(括弧内略)は,別表第一に掲げるものとする。(注・別表は省略)イ 6条1項防衛大臣又はその委任を受けた者は,基本計画に従い,第3条第2項の後方支援活動としての自衛隊に属する物品の提供を実施するものとする。 2項防衛大臣は,基本計画に従い,第3条第2項の後方支援活動としての自衛隊による役務の提供について,実施要項を定め,これについて内閣総理大臣の承認を得て,防衛省の機関又は自衛隊の部隊等にその実施を命ずるものとする。 ⑷ 国際平和支援法ア 3条1項この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。 1号諸外国の軍隊等国際社会の平和及び安全を脅かす事態に関し,次のいずれかの国際連合の総会又は安全保障理事会の決議が存在する場合において,当該事態に対処するための活動を行 定めるところによる。 1号諸外国の軍隊等国際社会の平和及び安全を脅かす事態に関し,次のいずれかの国際連合の総会又は安全保障理事会の決議が存在する場合において,当該事態に対処するための活動を行う外国の軍隊その他これに類する組織(略)をいう。 イ当該外国が当該活動を行うことを決定し,要請し,勧告し,又は認める決議ロイに掲げるもののほか,当該事態が平和に対する脅威又は平和の破壊であるとの認識を示すとともに,当該事態に関連して国際連合加盟国の取組を求める決議 2号協力支援活動諸外国の軍隊等に対する物品及び役務の提供であって,我が国が実施するものをいう。 2項協力支援活動として行う自衛隊に属する物品の提供及び自衛隊による役務の提供(括弧内略)は,別表第一に掲げるものとする。(注・別表は省略)イ 7条1項防衛大臣又はその委任を受けた者は,基本計画に従い,第3条第2項の協力支援活動としての自衛隊に属する物品の提供を実施するものとする。 2項防衛大臣は,基本計画に従い,第3条第2項の協力支援活動としての自衛隊による役務の提供について,実施要項を定め,これについて内閣総理大臣の承認を得て,自衛隊の部隊等にその実施を命ずるものとする。 ⑸ 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(以下「国際平和協力法」という。)ア第3条この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。 5号国際平和協力業務国際連合平和維持活動のために実施される業務で次に掲げるもの,国際連携平和安全活動のために実施される業務で次に掲げるもの,人道的な国際救援活動のために実施される業務で次のワからツまで,ナ及びラに掲げるもの(略)であって,海外で行われるものをいう。 ト防護を必要とする 安全活動のために実施される業務で次に掲げるもの,人道的な国際救援活動のために実施される業務で次のワからツまで,ナ及びラに掲げるもの(略)であって,海外で行われるものをいう。 ト防護を必要とする住民,被災民その他の者の生命,身体及び財産に対する危害の防止及び抑止その他特定の区域の保安のための監視,駐留,巡回,検問及び警護ラヲからネまでに掲げる業務又はこれらの業務に類するものとしてナの政令で定める業務を行う場合であって,国際連合平和維持活動,国際連携平和安全活動若しくは人道的な国際救援活動に従事する者又はこれらの活 動を支援する者(以下このラ及び第26条第2項において「活動関係者」という。)の生命又は身体に対する不測の侵害又は危難が生じ,又は生ずるおそれがある場合に,緊急の要請に対応して行う当該活動関係者の生命及び身体の保護イ第25条3項第9条第5項の規定により派遣先国において国際平和協力業務に従事する自衛官は,自己又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員,隊員若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体を防護するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には,その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で,(略)実施計画に定める装備である武器を使用することができる。 7項第9条第5項の規定により派遣先国において国際平和協力業務に従事する自衛官は,その宿営する宿営地(括弧内略)であって当該国際平和協力業務に係る国際連合平和維持活動,国際連携平和安全活動又は人道的な国際救援活動に従事する外国の軍隊の部隊の要員が共に宿営するものに対する攻撃があったときは,当該宿営地に所在する者の生命又は身体を防護するための措置をとる当該要員と共同して,第3項の規定による武器の使用をすることが する外国の軍隊の部隊の要員が共に宿営するものに対する攻撃があったときは,当該宿営地に所在する者の生命又は身体を防護するための措置をとる当該要員と共同して,第3項の規定による武器の使用をすることができる。(以下略)ウ第26条1項前条第3項(同条第7項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定するもののほか,第9条第5項の規定により派遣先国において国際平和協力業務であって第3条第5号トに掲げるもの(略)に従事する自衛官は,その業務を行うに際し,自己若しくは他人の生命,身体若しくは財産を防護し,又はその業務を妨害する行為を排除するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には,その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で,(略)実施計画に定める装備である武器を使用すること ができる。 2項前条第3項(同条第7項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定するもののほか,第9条第5項の規定により派遣先国において国際平和協力業務であって第3条第5号ラに掲げるものに従事する自衛官は,その業務を行うに際し,自己又はその保護しようとする活動関係者の生命又は身体を防護するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には,その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で,(略)実施計画に定める装備である武器を使用することができる。 2 前提事実(当裁判所に顕著な事実)⑴ 内閣は,平成26年7月1日,「国の存立を全うし,国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」と題する新たな安全保障法制の整備のための基本方針を閣議決定した。 ⑵ 内閣は,平成27年5月14日,平和安全法制関連2法に係る法律案を閣議決定し,同月15日,前記各法律案を衆議院に提出した。 ⑶ 平和安全法制関連2法に係る 備のための基本方針を閣議決定した。 ⑵ 内閣は,平成27年5月14日,平和安全法制関連2法に係る法律案を閣議決定し,同月15日,前記各法律案を衆議院に提出した。 ⑶ 平和安全法制関連2法に係る法律案は,衆議院本会議及び参議院本会議でそれぞれ可決され,平和安全法制関連2法は,平成27年9月19日に成立し,同月30日に公布され,平成28年3月29日から施行された。 ⑷ 平和安全法制整備法は,自衛隊法や重要影響事態法を含む10の法律を改正することをその内容とする法律である。平和安全法制整備法の成立により,自衛隊法76条1項2号及び95条の2,国際平和協力法3条5号ト,同号ラ,同法25条7項及び同法26条の定めがそれぞれ新設され,「周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」の題名が重要影響事態法に改められるとともに,同法3条及び6条が改正され,後方支援活動についての定めがされた(以下,平和安全法制整備法による改正前の重要影響事態法のことを「周辺事態法」という。)。 3 原告らの主張 ⑴ 平和安全法制関連2法の違憲性ア集団的自衛権の行使が違憲であること自衛隊法76条1項2号は,我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,これにより我が国の存立が脅かされ,国民の生命,自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態において,自衛隊に対し出動を命ずることができる旨を定め,いわゆる集団的自衛権の行使を認めたものである。 しかし,憲法9条1項は自衛のためであるか否かを問わず「武力の行使」を認めていないのであるから,自衛隊による武力の行使を認める自衛隊法76条1項2号は,憲法9条1項に反し無効である。 独立国が当然に保有する自衛権を憲法9条が否定するものではないと解すると 使」を認めていないのであるから,自衛隊による武力の行使を認める自衛隊法76条1項2号は,憲法9条1項に反し無効である。 独立国が当然に保有する自衛権を憲法9条が否定するものではないと解するとしても,その文言上武力の行使を全面的に禁止している以上,同条のもとで自衛のための武力の行使が認められるのは,自衛のため必要やむを得ない場合に,最小限度の範囲で行使することができるにすぎない。 そうすると,自衛のための武力の行使が認められるのは,我が国が他国からの攻撃を受けた場合に限られるのであって,他国に対する攻撃に対して集団的自衛権を行使することは憲法9条に違反するものといわざるを得ない。平成26年7月1日の閣議決定より前の政府解釈も,自衛のための措置としての必要最小限度の範囲での武力行使は憲法9条に反するものではないが,他国に加えられた武力行使を阻止することを内容とする集団的自衛権の行使は憲法上許されないとの立場を堅持してきた。 しかし,自衛隊法76条1項2号は,「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」があった場合にも自衛隊に対して出動命令を行うことを認めており,集団的自衛権の行使を正面から認めるものであるから,憲法9条の許容する自衛の範囲を超え,同条に反するものというべきである。 また,自衛隊法76条1項2号は,「我が国と密接な関係にある他国」に 対する武力攻撃により「我が国の存立が脅かされ」国民の生命等の権利に対する「明白な危険」がある場合,すなわち事態対処法2条4号にいう「存立危機事態」にある場合の集団的自衛権の行使を認めている。しかし,上記各要件は,いずれも客観的な判断基準を有するものではなく,主観的な評価判断にわたらざるを得ない。また,緊急の場合には,国会の事前承認なく出動命令を行うことができる(事態対処法9条4 る。しかし,上記各要件は,いずれも客観的な判断基準を有するものではなく,主観的な評価判断にわたらざるを得ない。また,緊急の場合には,国会の事前承認なく出動命令を行うことができる(事態対処法9条4項2号)とされていることからすると,時の政権の判断の下,その必要性が十分に吟味されないまま集団的自衛権が行使されるおそれが高く,その行使について必要最小限度にとどまるような歯止めがされているとはいえない。したがって,自衛隊法76条1項2号の定める集団的自衛権の行使は,憲法9条において許容される武力の行使の範囲を超えるものであって,同条に違反するものである。 被告は,平成26年7月1日の閣議決定(前記前提事実⑴)において,我が国を取り巻く安全保障環境の変化に伴い,他国に対する武力攻撃であったとしても,その目的,規模,態様等によっては,我が国の存立を脅かすことも現実に起こり得るのであって,自衛のための必要最小限度の武力の行使としての集団的自衛権は憲法上も許容されるべきであるとの見解を示した。 しかし,平和安全法制関連2法の審議過程においても,我が国を取り巻く安全保障環境がいかに変化し,それによりどのように我が国の存立が脅かされる危険が高まったのかという点について具体的な根拠を有する事実は何ら提示されておらず,我が国に対する急迫不正の侵害に対処するために集団的自衛権を行使すべき必要性は明らかにされていないものといわざるを得ない。このことを措くとしても,閣議決定により政府解釈を改め,集団的自衛権の行使が憲法上許容されるべきであるとの見解を示したとしても,集団的自衛権の行使が憲法9条に反するという上記の結論が左 右されるものではなく,仮に集団的自衛権の行使を容認するのであれば,憲法改正によらなければならない。そうであるにもかかわらず ても,集団的自衛権の行使が憲法9条に反するという上記の結論が左 右されるものではなく,仮に集団的自衛権の行使を容認するのであれば,憲法改正によらなければならない。そうであるにもかかわらず,政府解釈の変更のみで集団的自衛権の行使を容認することは,立憲主義の精神そのものを崩壊させるものであるといわざるを得ない。 イ後方支援活動等の実施が違憲であること憲法9条1項の禁止する「武力の行使」とは,自衛隊が行う武力の行使に限らず,自衛隊が他国による武力の行使に密接に関与し,これと一体となって武力を行使したものと評価することができる場合も含まれる。従前の政府解釈も上記解釈を堅持しており,これを前提に,周辺事態法(平成11年制定),平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法(平成13年制定),イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法(平成15年制定)においては,自衛隊が行い得る支援活動を物品の補給や輸送等に限定するとともに,これを実施する区域を「現に戦闘が行われておらず,かつ,そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域に限定することで,他国による武力の行使と一体化しないことを法制上担保する旨の定めがされていた。 しかし,平和安全法制関連2法の成立により,自衛隊は,後方支援活動等として,弾薬の提供や戦闘作戦行動のため発進準備中の航空機に対する給油及び整備を行うことが可能となるとともに,その実施範囲も,現に戦闘を行っている地域でなければ活動を行うことができる(すなわち,活動を開始する の提供や戦闘作戦行動のため発進準備中の航空機に対する給油及び整備を行うことが可能となるとともに,その実施範囲も,現に戦闘を行っている地域でなければ活動を行うことができる(すなわち,活動を開始する直前まで戦闘が行われていた地域や,活動中に戦闘が行われることが予想される地域における活動も含まれる。)こととなった。すなわち,自衛隊は,他国による戦闘行為と時間的場所的に近接した地域において,戦闘行動を行 う戦車等への砲弾の提供や,戦闘に向かう航空機への給油や整備を後方支援活動等として行うことができるようになったものであり,このような後方支援活動等は,まさに他国の武力の行使と一体となるものと評価されるべきものであるから,後方支援活動等は,憲法9条1項に反し,違憲である。 ウ国際平和協力法の定める武器の使用が憲法9条に反すること国際平和協力法26条は,同法3条5号トに定める業務(以下「安全確保業務等」という。)及び同号ラに定める業務(以下「駆けつけ警護」という。)に従事する自衛官が,やむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には,合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができると定めている。安全確保業務等は,住民などの生命,身体及び財産に対する危害の防止や特定の地域の警備等を内容とするものであり,駆けつけ警護は,非政府組織や他国の部隊の国際連合平和維持活動の関係者が敵対勢力等に襲われた場合にその生命及び身体の保護を行うことを内容とするものであるから,いずれもその活動の性質上,武装勢力の排除等を行うに足りる強力な武器使用を前提とするものである。 また,同法25条7項は,国際連合平和維持活動に従事する自衛官が,共に宿営する外国の軍隊の部隊の要員と共同して武器を使用することを認めているが,これはまさに外国軍隊と共同し 前提とするものである。 また,同法25条7項は,国際連合平和維持活動に従事する自衛官が,共に宿営する外国の軍隊の部隊の要員と共同して武器を使用することを認めているが,これはまさに外国軍隊と共同して,共同宿営地及びそこに所在する者全体を防護しようとするものであるから,自己保存のための武器使用ではなく,他国防衛のための武器使用に該当する。 なお,これらの武器使用が認められる前提となる存立危機事態該当性の判断が政府の総合的判断に委ねられており,恣意的に判断される危険性が大きいことは,既に述べたとおりである。 上記の武器使用は,いずれも憲法9条1項の禁止する「武力の行使」に当たるものであって,国際平和協力法の改正により上記の武器使用を認めることを内容とする平和安全法制関連2法が憲法9条に違反することは明らか である。 エ自衛隊法95条の2が憲法9条に反するものであること自衛隊法95条の2は,米軍等の外国部隊の武器等(船舶や航空機等も含まれる。)を職務上警護する場合における必要な限度での武器使用を認めた規定であるが,米国の船舶や航空機を警護する場合の武器使用が自衛のための措置に該当しないことは明らかであるから,同条は憲法9条1項の禁止する「武力の行使」を容認するものとして同条に反する。また,武器の使用の可否は,外国軍隊の要請に基づいて,防衛大臣が活動内容や武器の種類等を踏まえて総合的に判断するとしているものの,総合判断における具体的な考慮要素等は明らかではなく,恣意的な判断がされる危険性が高い。 以上のとおり,自衛隊法95条の2は憲法9条1項に反するものであって,自衛隊法の改正により創設した平和安全法制関連2法が憲法9条に違反することは明らかである。 オ事後的統制が不十分であること平和安全法制関連2法によって認めら 憲法9条1項に反するものであって,自衛隊法の改正により創設した平和安全法制関連2法が憲法9条に違反することは明らかである。 オ事後的統制が不十分であること平和安全法制関連2法によって認められた武力行使等に関する情報が被告によって隠蔽された場合には,その適法性や憲法適合性について国民が事後的なチェックを行うことは事実上不可能となる。実際に,政府は,南スーダンにおける国際連合平和維持活動について,自衛隊が作成した日報を隠匿し,憲法9条に違反する武力の行使があるかどうかやその危険があったかどうかを国民が判断するのに不可欠な情報等を隠匿しているのであるから,平和安全法制関連2法によって認められた武力行使等がされた場合であっても,被告の隠蔽行為や特定秘密の保護に関する法律等により,国民による事後的監視が働かなくなる可能性が高い。このような事態は,文民統制の原則を根底から覆すものであり,このことからも平和安全法制関連2法の違憲性は明らかである。 ⑵ 本件各差止請求の請求原因 集団的自衛権の行使や後方支援活動等の実施は,前記⑴のとおり憲法9条に反する違憲違法なものであるところ,これらの行使ないし実施は,原告A1らの平和的生存権及び人格権(その具体的な内容は,後記⑷アないしウのとおりである。)を侵害するものである。かかる権利侵害の蓋然性は,平和安全法制関連2法が安全保障環境の変化に随時対応することができるように定められたという経緯や,その要件が抽象的かつ評価にわたる概念により定められており時の政権の判断により容易かつ安易に実行される恐れがあることに照らすと,極めて高いものであるといえる。そして,平和的生存権に対する侵害は,その性質上事後的な回復が困難であることに加え,集団的自衛権の行使や後方支援活動等の実施が既成事実化されて れがあることに照らすと,極めて高いものであるといえる。そして,平和的生存権に対する侵害は,その性質上事後的な回復が困難であることに加え,集団的自衛権の行使や後方支援活動等の実施が既成事実化されてしまえば,国民がこれを事後的に争うことは極めて困難であることからすると,上記各行為を事前に差し止めるべき必要性が高い。 よって,原告A1らは,平和的生存権及び人格権に基づいて,被告に対し,集団的自衛権の行使及び後方支援活動等の実施の差止めを求める。 ⑶ 本件各損害賠償請求の請求原因平和安全法制関連2法は,前記⑴のとおり,「武力の行使」の禁止という憲法9条の一義的な文言や確立した従前の政府解釈に明確に違反するものであるだけでなく,その審議の過程において,元最高裁判所長官,元内閣法制局長官,日本弁護士連合会及び多くの憲法学者から違憲の疑いが強い旨の指摘がされ,全国的な抗議活動が巻き起こるなど,平和安全法制関連2法の成立には慎重であるべきとの世論が強かった。これらのことからすると,国会においては,上記のような憲法適合性の疑念を払拭すべく,根拠のある立法事実を示した上で,国民の納得を得られるような説明や答弁をし,十分な審議を尽くすべき職務上の注意義務があったというべきである。特に,憲法9条は,戦力の行使や軍に関わる権能を憲法から排除しており,これらの点について国に立法権限があることを明示しておらず,これらの点に関する立法裁量は狭いものであるか ら,その憲法適合性については,特に慎重に審理を行い,十分な審議を尽くすべき義務があるといえる。 そうであるにもかかわらず,国会は,平和安全法制関連2法について,十分な根拠を有する立法事実を提示することも,違憲である旨の指摘に対し真摯な検討を加えることもなく,いわば「強行採決」したものであり,上 うであるにもかかわらず,国会は,平和安全法制関連2法について,十分な根拠を有する立法事実を提示することも,違憲である旨の指摘に対し真摯な検討を加えることもなく,いわば「強行採決」したものであり,上記職務上の注意義務に違反していることは明らかである。そうすると,国会は,上記の注意義務に反して憲法9条に違反する平和安全法制関連2法を成立させたものというべきであるから,国会による平和安全法制関連2法の立法行為は,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるべきものである。このことは,平和安全法制関連2法の成立に向けた内閣の行為(平成26年7月1日及び平成27年5月14日の閣議決定,同月15日の法案提出。前記前提事実⑴及び⑵参照)についても同様に妥当するものであり,これらの行為も国家賠償法1条1項の適用上違法と評価されるべきである。 そして,内閣及び国会の違法な上記各行為により,集団的自衛権の行使及び後方支援活動等の実施などが認められることとなった結果,我が国が戦争当事者となる危険性や個々の国民が戦争やテロリズムにより生命,身体及び財産を失う危険性が高まるとともに,個々の国民が,主権者として自衛隊が他国の国民を殺傷することに加担せざるを得ないこととなり,原告らの平和的生存権及び人格権(その具体的な内容は,後記⑷のとおりである。)が重大かつ根本的に侵害されている。かかる精神的苦痛を慰謝するには,少なくとも原告1人につき10万円が支払われるべきである。 よって,原告らは,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づいて,各10万円及びこれに対する平成27年9月19日(国会による平和安全法制関連2法の可決の日)から支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 ⑷ 原告らの被侵害利益(平和的生存権及び人格権) ア平和的生存 月19日(国会による平和安全法制関連2法の可決の日)から支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 ⑷ 原告らの被侵害利益(平和的生存権及び人格権) ア平和的生存権が憲法上保障された権利であること憲法は,その前文において,「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」と平和への強い決意を示した上で,「全世界の国民が,ひとしく恐怖と欠乏から免かれ,平和の裡に生存する権利を有すること」を確認している。その上で,戦争の放棄に関する規定(9条)を,人権及び統治機構に関する諸規定に先行して定めている。これらのことからすると,憲法は,基本的人権の保障の前提には平和が必要不可欠であることから,その前文においてすべての国民が平和的生存権を有することを確認するとともに,戦争の放棄を人権保障と民主主義の前提条件として位置づけたものと解するのが相当である。 このことからすると,憲法は,前文,9条及び第3章の諸条項(13条,25条等)が複合して,憲法上の基本的人権の基底的権利たる平和的生存権を保障しているものと解すべきである。 被告の指摘するとおり,「平和」という言葉は,その意味合いにおいても,これを達成する手段においても,一義的であるとはいい難い。しかし,これを憲法上の権利として考えるときは,憲法9条1項及び2項が,憲法上保障されるべき「平和」の具体的内容を充填し,平和的生存権に具体的権利性をもたらしているものと解すべきである。 このように解すると,憲法上保障される平和的生存権とは,戦争や軍隊によって自己の生命を奪われない権利,戦争や軍隊によって他者の生命を奪うことに加担させられない権利であると同時に,戦争の脅威と軍隊の強制から免れて平和のうちに生活し,行動することができ,他国の民衆 によって自己の生命を奪われない権利,戦争や軍隊によって他者の生命を奪うことに加担させられない権利であると同時に,戦争の脅威と軍隊の強制から免れて平和のうちに生活し,行動することができ,他国の民衆への軍事的手段による加害行為と関わることなく平穏な生活を享受することができる権利を意味するものである。 平和的生存権は,憲法第3章に規定された個別の人権規定と結合して,具体的な権利となる場合(憲法18条と結合した「徴兵されない自由」や, 憲法19条と結合した「良心的兵役拒否の権利」等)があることはもとより,国が憲法9条に反する武力の行使やその準備行為を行うことによって,個人の生命及び自由が侵害され,又は侵害の危機にさらされ,あるいは現実的な戦争等による被害や恐怖にさらされるような場合,また,憲法9条に反する戦争の遂行等への加担協力を強制した場合には,平和的生存権に基づいて,当該行為の差止請求や損害賠償請求をすることができる(名古屋高等裁判所平成20年4月17日判決・判例タイムズ1313号137頁参照)ほか,上記のような行為に至るおそれが生ずることによる精神的苦痛を受けた場合には,かかる苦痛に対する慰謝としての損害賠償請求が認められるものというべきである。 イ原告らの権利は人格権としても保障されるべきであること平和安全法制関連2法は,憲法9条に違反する集団的自衛権の行使及び後方支援活動等の実施を可能とするものであるとともに,我が国が戦争の当事者となる危険性やテロリズムの対象となる危険性を高めるものであって,同法の成立により,憲法9条のもとで平和な環境で平穏に生活したいとの信条や信念を真っ向から傷つけられ,原告ら日本の国民は,その生命,身体,精神及び生活等の全般にわたって危険に直面し,又は現に侵害を受ける恐怖を抱かされ,不 条のもとで平和な環境で平穏に生活したいとの信条や信念を真っ向から傷つけられ,原告ら日本の国民は,その生命,身体,精神及び生活等の全般にわたって危険に直面し,又は現に侵害を受ける恐怖を抱かされ,不安におののかされるなどして,その人格権を侵害されるに至った。 ウ原告A1らの具体的な損害原告A1は,高校の社会科教員を務める中で,生徒に対し,平和主義を現実社会に息づく確かな理念として教えることにこだわりを持ち,かかる理念に基づいて教鞭をとってきた。しかし,平和安全法制関連2法の成立により,原告A1の35年間の教師生活における上記の取組は真っ向から否定されることとなり,原告A1は著しい精神的損害を負った。 原告A2は,昭和8年に広島で生まれ,第二次世界大戦を経験した後, 高校教師を経て,4期にわたって衆議院議員を務めた。原告A2は,自身の戦争体験を踏まえ,教師として教え子に平和の尊さや日本国憲法の崇高な理念を教え,国会議員としてその実現に向けた実践の先頭に立ってきたが,平和安全法制関連2法の成立は,原告A2の体験と人格を根底から否定するものであり,原告A2は,これにより,著しい精神的損害を負った。 原告A3は,いわゆる恵庭訴訟の被告人の1人として,法廷において自衛隊の合憲性について争った者であり,その後も憲法の平和主義を守るための不断の努力を行っていた。平和安全法制関連2法の成立により,日本が再び戦争を行うことのできる国へと変わることは,原告A3の体験と人格を根底から否定するものであって,原告A3は,これにより,著しい精神的損害を負った。 原告A4は,札幌市内の医師であるが,妻が沖縄県出身であることや,a 大学において学生生活や研修医としての経験をする中で,第二次世界大戦時の沖縄戦の悲惨さを知り,戦争に強く反対す 損害を負った。 原告A4は,札幌市内の医師であるが,妻が沖縄県出身であることや,a 大学において学生生活や研修医としての経験をする中で,第二次世界大戦時の沖縄戦の悲惨さを知り,戦争に強く反対するようになった。原告A4は,憲法に反する平和安全法制関連2法が成立したことにより,法や社会情勢に関する啓発活動を行う必要性を感じ,生業を犠牲にして講演会や学習会を行うことを余儀なくされており,経済的に多大な損害を負っているほか,重大な精神的損害を負っている。 原告A5は,41年間にわたり小学校教員を務めていた者である。原告A5は,第二次世界大戦における多大な犠牲の下で日本国憲法が制定されたことや,これを守るために先人が不断の努力を行ってきたことへの思いや,子どもたちに平和な世界を引き継ぎたいとの思いから,平和憲法を守るべきであると考えている。しかし,平和安全法制関連2法は,このような原告A5の強い思いに反するもので,同原告の基本的人権や個人の尊厳を蹂躙したに等しく,同原告に重大な精神的損害を負わせるものである。 エその余の原告らの具体的な損害 自衛隊の家族である原告らの損害現職の自衛隊の家族である原告ら(原告A6,原告A7,原告A8)は,平和安全法制関連2法の成立により,自衛官である自身の家族が戦地に送られ,殺し殺される立場に直面させられるのではないかという現実的かつ具体的な危惧を抱いており,多大な精神的苦痛を被っている。戦地に派遣された自衛官は,戦地における悲惨な戦闘や殺傷を眼前にすることにより多大なストレス(コンバット・ストレス)を受け,帰国後に重篤な精神疾患を発症し,最悪の場合自殺に至るおそれもあり,自衛官の家族は,当該自衛官の帰国後も,当該自衛官のコンバット・ストレスに伴う多大な精神的な苦痛を負うこととなり ストレス)を受け,帰国後に重篤な精神疾患を発症し,最悪の場合自殺に至るおそれもあり,自衛官の家族は,当該自衛官の帰国後も,当該自衛官のコンバット・ストレスに伴う多大な精神的な苦痛を負うこととなりかねない。 原告A6は,その次男が現職の自衛官であるところ,平和安全法制関連2法の成立により,我が子の命が奪われる事態になりかねないことについての強い不安を覚えているほか,平和安全法制関連2法に対し反対の声を上げるためには自衛官の母親という立場にあってはならないと考え,次男と絶縁せざるを得なくなり,極めて大きな精神的苦痛を負っている。また,原告A8は,平和安全法制関連2法の成立により,自衛官である弟が戦争に巻き込まれて殺されるのではないかという強い不安を感じ,重度ストレス障害に罹患した。原告A9は,亡くなった父親が自衛官を務めていたことから,平和安全法制関連2法の成立により,自衛官や自衛官の家族の安全が破壊されることについて深い悲しみや不安を覚えており,著しい精神的苦痛を被っている。 戦争経験者である原告らの損害第二次世界大戦を経験した原告らは,平和安全法制関連2法の成立により,先の大戦による苦痛がよみがえり,再び戦禍にまみえることになるかもしれないという恐怖に苛まれ,多大な精神的苦痛を被っている。 原告A10及び原告A11は,いずれも広島県内において原子爆弾の投 下により被爆した経験を有する者であり,原告A10は,被爆により姉や父を亡くしている。上記各原告は,平和安全法制関連2法の成立により,再び日本が戦争をすることができる国となることで,自身が経験した苦痛を再び味わい,また子や孫の世代に再び恐怖を味あわせることになるのではないかとの不安を覚え,筆舌に尽くしがたい精神的損害を被っている。 また,原告A12は11歳で終戦 なることで,自身が経験した苦痛を再び味わい,また子や孫の世代に再び恐怖を味あわせることになるのではないかとの不安を覚え,筆舌に尽くしがたい精神的損害を被っている。 また,原告A12は11歳で終戦を経験し兄を戦死で失ったものとして,原告A13は父親を戦争で亡くし母親の悲しみを間近で見た者として,原告A14は学徒動員や北海道空襲を経験した者として,憲法の平和主義の理念の下,いずれも二度と戦争を起こしてはならないと考えている。これらの原告にとって,平和安全法制関連2法の成立は,再び戦禍に巻き込まれるという恐怖を抱かせるとともに,戦争体験に裏打ちされた上記各原告らの平和への信念を打ち砕くものであり,原告らは著しい精神的苦痛を負っている。 戦争体験の記憶を引き継いできた原告らの損害直接の戦争経験者ではないが,祖父母や両親等から戦争の悲惨さを聞いて育った原告らや,終戦直後の傷痍軍人の姿を見て戦争の爪痕を目撃した原告らも,平和安全法制関連2法の成立により,日本が戦争に加担する蓋然性が高くなり,自らは直接体験することのなかった戦争が現実の脅威となることに関する強い危惧感を抱いており,多大な精神的苦痛を被っている。 原告A15,原告A16及び原告A17は,両親や親族から先の大戦の悲惨さについての話を聞くことで,二度と戦争をしてはならないという強い思いを抱いている。平和安全法制関連2法は,かかる原告らの想いを打ち砕き,平和な生活を脅かすものであり,原告らに大きな精神的苦痛を与えているものである。 平和安全法制関連2法の成立により自らの生き方や信念を否定された 原告らの損害憲法が保障する平和主義を信頼し,平和主義を守るための活動を行ってきた原告らは,平和安全法制関連2法の成立により,自らの歩みや信念が否定されることとなり,筆 を否定された 原告らの損害憲法が保障する平和主義を信頼し,平和主義を守るための活動を行ってきた原告らは,平和安全法制関連2法の成立により,自らの歩みや信念が否定されることとなり,筆舌に尽くしがたい精神的損害を負った。 原告A18,原告A19,原告A20及び原告A21は,いずれも教師として,教え子に対し,平和の尊さや日本国憲法の定める平和主義の重要性,戦争の悲惨さを説いてきた。上記各原告らにとって,憲法9条に反する平和安全法制関連2法は,これまで教え子たちに説いてきた平和への信念を真っ向から否定するものであるとともに,教え子たちが戦争に巻き込まれる可能性を高めるものであり,上各原告らは耐え難い精神的苦痛を被っている。 原告A22,原告A23及び原告A24は,両親から戦争に関する話を聞いたり,ベトナム戦争の報道に接したりする中で,平和への想いを強くし,日本が二度と戦争をしないことを強く希求していた者であるが,平和安全法制関連2法は,このような原告らの平和への願いや信念を打ち砕くものであり,原告らに強い精神的損害を与えている。 このような平和に関する信念は,平成生まれの若年世代にも同様に妥当するものである。原告A25や原告A26は,両親や祖父母から戦争の悲惨さを聞き,平和への想いや二度と戦争をしてはならないという思いを強くするに至り,積極的に平和運動に参加するなどしてきた。平和安全法制関連2法は,このような若年世代の平和に対する信念をも打ち砕くものである。 海外での活動に従事してきた原告らの損害平和安全法制関連2法は,平和主義を定めた憲法の下に培われた「日本は戦争をしない国である」との諸外国からの評価を大きく覆すだけでなく,日本がテロリズムの対象となる可能性を高めるものである。 海外でのボランティア 和主義を定めた憲法の下に培われた「日本は戦争をしない国である」との諸外国からの評価を大きく覆すだけでなく,日本がテロリズムの対象となる可能性を高めるものである。 海外でのボランティア活動に従事してきた原告らは,諸外国の日本に対する評価が変容し,これに伴い両国間の信頼関係が破壊され,テロリズムの対象となる危険が高まることにより,従前どおりの活動を継続することができなくなり,多大な精神的苦痛を被った。 原告A27及び原告A28は,「b」のメンバーとして,ガザ地区において医療活動に従事している者である。上記各原告は,平和安全法制関連2法のもと,日本が中東においてアメリカやイスラエルに対する軍事的協力を行うような事態となれば,パレスチナにおける日本に対する評価が変容し,これまでと同様の活動を行うことができなくなるのではないかとの不安を有しており,多大な精神的苦痛を感じている。 大学教授等である原告らの損害原告A29,原告A30及び原告A31は,いずれも大学において教授等の研究職にある者であり,原告A32は,かつて大学教授を務めていた者である。 日本国憲法の平和主義について,あるいはこれと関連する研究を行っている上記各原告にとって,憲法9条に違反する平和安全法制関連2法の成立は,自らの研究内容に基づくものとして保障される平和的生存権を侵害するものであるとともに,研究活動そのものに対する侵害でもあり,上記各原告は,著しい精神的苦痛を負った。 平和を願う市民の損害原告らは,平和主義を定めた憲法9条のもとで,平和な生活を願い,また平和な生活を送ることを保障されてきた者たちである。これらの原告の平和への想いは,自分や近親者の経験,信仰心や信念,理性に基づいて,各個人の人格と密接に結び付いているものであり,多くの原告が,自 た平和な生活を送ることを保障されてきた者たちである。これらの原告の平和への想いは,自分や近親者の経験,信仰心や信念,理性に基づいて,各個人の人格と密接に結び付いているものであり,多くの原告が,自らの人格の発露として,平和を維持するためにデモンストレーション等の街頭における活動,紛争地での活動,募金,人々に平和の重要性を解く活動等 の具体的な行動を行っている。 また,原告A33や原告A34のように,自衛隊が戦争に巻き込まれることや,将来世代に平和な日本を残すことができないことを考えると強い不安に襲われ,身が引き裂かれるような思いをする原告らもいる。 このような原告らにとって,日本が再び戦争をすることを可能とし,これまで保障されてきた平和な生活を侵害し,原告らの人格の発露ともいうべき平和への想いを否定するかのような平和安全法制関連2法の成立は,原告らに極めて大きな精神的苦痛を及ぼすものである。北海道内において,自衛隊の規模が大きくなり,日米共同軍事演習等が繰り返されていることは,自衛隊が生活の周囲に存在する原告ら北海道民に対する平和的生存権の侵害が現実のものとなっていることを如実に示すものである。 ⑸ 本件訴訟における審理方法及び違憲審査権の行使について被告は,被侵害利益が認められない以上,平和安全法制関連2法の憲法適合性を論ずるまでもなく原告らの請求に理由はないと主張する。しかし,本件においては,積極的に違憲審査権が行使されるべきであり,そうでないとしても,被侵害利益の有無に先行して平和安全法制関連2法の憲法適合性が判断されるべきである。 ア裁判所が憲法判断を回避すべきか否かは,事件の重大性や違憲状態の程度,その及ぼす影響の範囲,事件で問題にされている権利の性質等を総合的に考慮して判断すべきである。 これを本件 るべきである。 ア裁判所が憲法判断を回避すべきか否かは,事件の重大性や違憲状態の程度,その及ぼす影響の範囲,事件で問題にされている権利の性質等を総合的に考慮して判断すべきである。 これを本件についてみるに,憲法9条は,戦争や武力の行使により国民の個別的な基本的人権が侵害されることを防ぐ,いわば「防火壁」の役割があるのであるから,人権の保障という司法の果たすべき役割に照らすと,戦争行為による国民の人権侵害が現実化する前に,国家の憲法9条違反の行為を阻止すべき必要性は高い。また,平和安全法制関連2法の成立に際しては,国民の根強い反対があったにもかかわらず,十分な審議や立法事実の提示が されることのないまま「強行採決」がされたという経緯に鑑みると,国会はもはや機能不全に陥っており,民主的過程における是正は期待することができない状態にあるというべきであるから,司法においてかかる政治部門の暴走を止めることが強く要請される場面であるといえる。 以上のことからすれば,本件においては,憲法判断が積極的にされるべきである。 イまた,立法の内容等が憲法違反であることを理由とする国家賠償請求訴訟においては,立法の内容が国民の憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白であることが要件とされている(最高裁昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁,最高裁平成17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁,最高裁平成27年12月16日大法廷判決・民集69巻8号2427頁参照)。すなわち,ここで要求されているのは権利侵害の明白性であって,権利そのものが明確であることや個別具体性を備えたものであることまで要請されるものではない。 そうであるとすれば,本件訴訟においては,平和安全法制関連2法の内容が平 るのは権利侵害の明白性であって,権利そのものが明確であることや個別具体性を備えたものであることまで要請されるものではない。 そうであるとすれば,本件訴訟においては,平和安全法制関連2法の内容が平和的生存権をどのように侵害し,その侵害が明白といえるのかについて審理がされるべきである。そして,平和的生存権は憲法9条を前提としこれと不可分一体の権利であるから,本件における権利侵害の明白性を判断するためには,その前提として,平和安全法制関連2法の内容が憲法9条にどの程度違反するものであるかが判断されなければならない。したがって,仮に平和的生存権が個別具体性を有する権利でないとしても,平和安全法制関連2法の憲法適合性を判断する必要がないことにはならない。 4 被告の主張⑴ 本件各差止請求について本件各差止請求の対象となる行為のうち,自衛隊法76条1項2号に基づく自衛隊の防衛出動の命令は,内閣総理大臣が自衛隊に対して行うものであり, 重要影響事態法6条1項及び国際平和支援法7条1項に基づく自衛隊に属する物品の提供の実施は,防衛大臣又はその委任を受けた者(防衛省所属の職員を指す。)が実施するものであり,重要影響事態法6条2項及び国際平和支援法7条2項に基づく自衛隊の役務の実施命令は,防衛大臣が防衛庁の機関又は自衛隊の部隊等に対しその実施を命ずるものである。 以上のとおり,本件各差止請求の対象となる行為は,いずれも内閣総理大臣,防衛大臣又はその委任を受けた者が行う職務であり,行政権の行使そのものである。したがって,本件各差止請求は,必然的に,内閣総理大臣,防衛大臣又はその委任を受けた者の行政上の権限の行使の取消変更又はその発動を求める請求を包含するものであるところ,このような行政権の行使については,私人が私法上の給付請求権を有す に,内閣総理大臣,防衛大臣又はその委任を受けた者の行政上の権限の行使の取消変更又はその発動を求める請求を包含するものであるところ,このような行政権の行使については,私人が私法上の給付請求権を有するものではないから,当該訴えは不適法である(最高裁昭和56年12月16日大法廷判決・民集35巻10号1369頁,最高裁平成5年2月25日第一小法廷判決・民集47巻2号643頁参照)。 ⑵ 本件各損害賠償請求についてア国家賠償法は,公務員の不法行為によって損害を被った者が国又は公共団体にその賠償を求めることができる旨を定めた憲法17条を受け,国又は公共団体が賠償責任を負うための要件及び効果を定めるものであり,その目的は,公務員の不法行為によって被害を被った者の救済を図ることにある。したがって,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求が認められるためには,その前提として,民法709条と同様に,原告らの具体的な権利ないし法的利益が存在し,公務員の不法行為によってこれが侵害されていることが必要である。 イこれを本件についてみるに,内閣による閣議決定や法案提出行為は,外部的な効力を有しておらず,国民の具体的な権利や法的利益に影響を与えるものではないから,これらの行為によって原告らの具体的な権利ないし法的利益が侵害されているとはいえない。また,平和安全法制関連2法の立法行為 は,あくまで一般的抽象的な法規範を定立するものにすぎず,具体的な執行や適用を待つことなく国民の具体的な権利ないし法的利益に影響を及ぼすものではないから,原告らの具体的な権利ないし法的利益を侵害するものではない。 したがって,内閣及び国会の行為により,原告らの具体的な権利ないし法的利益が侵害されたとはいえない以上,本件各損害賠償請求には理由がない。 これに対し, ないし法的利益を侵害するものではない。 したがって,内閣及び国会の行為により,原告らの具体的な権利ないし法的利益が侵害されたとはいえない以上,本件各損害賠償請求には理由がない。 これに対し,原告らは,平和安全法制関連2法に係る内閣の閣議決定,法案提出及び国会の立法行為により,原告らの平和的生存権が侵害されたと主張する。 しかし,原告らの主張する平和的生存権は,「平和」の概念そのものが抽象的かつ不明確であるばかりでなく,具体的な権利内容,根拠規定,主体,成立要件及び法律効果等も一義性に欠け,その外延を画することのできない曖昧なものである。また,平和のうちに生存する権利を確保する方法は,常時変化する複雑な国際情勢によっても左右され,これを一義的に特定することはできない。このような不明確な権利について,国家賠償法上保護される権利ないし法的利益といえるほどの具体的権利性を肯定することはできない。 原告らは,憲法前文の規定を根拠として平和的生存権が憲法上保障されていると主張するが,憲法前文は憲法の理念や基本原理を宣明するものであって,原告らの指摘する箇所も,憲法前文第1段及び第2段で表明されている憲法の平和主義の原理を人々の生存に結び付けて説明するものにすぎないから,これをもって平和的生存権が基本的人権として保障されているということはできない。 また,原告らは,平和的生存権における「平和」の内容は憲法9条を前提として定められるものであって,少なくとも国家が憲法9条に違反する行為をした場合には,平和的生存権に基づいて当該行為の差止めや損害賠 償を求めることができると主張する。しかし,憲法9条は,国家の統治機構ないし統治活動についての規範を定めたものであり,主観的権利としての平和的生存権を具体的な権利として保障していることの 償を求めることができると主張する。しかし,憲法9条は,国家の統治機構ないし統治活動についての規範を定めたものであり,主観的権利としての平和的生存権を具体的な権利として保障していることの根拠とはなり得ない。 原告らは,内閣及び国会の上記各行為により,原告らの人格権が侵害されたとも主張する。しかし,原告らの主張する人格権の内容も,平和的生存権と同様,その具体的な権利内容や成立要件,法律効果等について一義性に欠ける極めて曖昧なものであるから,具体的権利性があるとはいえない。原告らが被侵害利益として主張するものは,つまるところ,我が国が敵対国からの攻撃やテロリズムの対象になることで,国民が何らかの犠牲を強いられたり危険にさらされたりすることに対しての漠然とした不安感をいうものにすぎず,これをもって具体的権利であるということはできない。 第3 当裁判所の判断 1 本件各差止請求について⑴ 本件各差止請求の対象となる行為のうち,①出動命令は,内閣総理大臣が存立危機事態に際し,事態対処法9条に定めるところによる国会の承認を得て,自衛隊に対して命ずるものであり,②後方支援活動等としての物品の提供は,防衛大臣又はその委任を受けた者が,重要影響事態(重要影響事態法1条)又は国際平和共同対処事態(国際平和支援法1条)に際し,その実施前に国会の承認を得て(重要影響事態法5条,国際平和支援法6条),閣議により決定された基本計画(重要影響事態法4条,国際平和支援法4条)に従って,アメリカ合衆国の軍隊その他諸外国の軍隊等に対して自衛隊の所有する物品を提供するものであり,③後方支援活動等としての役務の提供は,防衛大臣が,重要影響事態又は国際平和共同対処事態に際し,閣議決定により決定された基本計画に従って実施要領を定め,内閣総理大臣の承認を得 を提供するものであり,③後方支援活動等としての役務の提供は,防衛大臣が,重要影響事態又は国際平和共同対処事態に際し,閣議決定により決定された基本計画に従って実施要領を定め,内閣総理大臣の承認を得て,自衛隊の部隊等(陸 上自衛隊,海上自衛隊又は航空自衛隊の部隊及び機関を指す。同法3条3項,自衛隊法8条参照)に対してその実施を命ずるものであって,これらの各行為を自衛隊やその部隊等に実施させるか否かについては,自衛隊法,重要影響事態法又は国際平和支援法の各規定によって内閣総理大臣又は防衛大臣に付与された行政上の権限に基づくものであって,公権力の行使に当たるというべきである。 そうすると,本件各差止請求は,必然的に,内閣総理大臣,防衛大臣による行政権の行使の取消し,変更又はその発動を求める請求を包含するものであるから,平和的生存権又は人格権の侵害のおそれを理由として,上記各行為を民事上の請求として求めることは不適法といわざるを得ない。 ⑵ また,仮に本件各差止請求が行政訴訟であると解するとしても,前記⑴で説示したところによれば,出動命令及び後方支援活動等としての役務の提供は,いずれも上級行政機関から下級行政機関に対して行われる命令であって,行政機関相互の行為にすぎず,後方支援活動等としての物品の提供は,事実上の行為であって,直接個々の国民の権利義務を形成するものではない。そうすると,本件各差止請求の対象となる行為は,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為により直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものであるとはいえず(最高裁昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照),いずれも抗告訴訟の対象である「公権力の行使」(行政事件訴訟法3条1項)に当たら 法律上認められているものであるとはいえず(最高裁昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照),いずれも抗告訴訟の対象である「公権力の行使」(行政事件訴訟法3条1項)に当たらない。 したがって,本件各差止請求は,抗告訴訟としても不適法である。 なお,原告A1らが被侵害利益として主張する平和的生存権は,後記2⑴のとおり憲法上の権利とはいえず,また,原告A1らの主張する人格権も,後記2⑵アのとおり法的保護に値するものであるとはいえない。本件各差止請求を行政訴訟として解する余地があるとしても,その実質は,国の機関の法規に適合しない行為の是正を自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起する民 衆訴訟(行政事件訴訟法5条)に該当するものと解さざるを得ない。しかして,民衆訴訟は,法律の定める場合において,法律に定める者に限りこれを提起することができる(同法42条)ところ,本件各差止請求についてこれを提起することができる旨定めた具体的な法律の規定はなく,民衆訴訟としても不適法であるといわざるを得ない。 小括以上によれば,原告A1らの本件各差止請求は,不適法なものとして却下すべきである。 2 本件各損害賠償請求について⑴ 原告らは,平和安全法制関連2法の成立に係る内閣の閣議決定及び法案の提出並びに国会による立法行為が,いずれも国会議員及び内閣の職務上の注意義務に反して行われたものであり,これらの行為により原告らの平和的生存権(憲法前文の定める「平和のうちに生存する権利」が9条及び第3章以下の諸条項により具体化されたもの。)が侵害されたと主張して,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めている。 確かに,憲法前文は,「全世界の国民が,ひとしく恐怖と欠乏から免かれ,平和のうちに生存する権利を有することを確 もの。)が侵害されたと主張して,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めている。 確かに,憲法前文は,「全世界の国民が,ひとしく恐怖と欠乏から免かれ,平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」(第2項第3文)と宣言し,憲法9条は,国際紛争を解決する手段としての国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使を放棄し,この目的を達成するための陸海空軍その他の戦力の保持をしない旨を規定している。しかして,憲法の規定する恒久平和主義は,憲法上重要な理念であって,また,国民が平和のうちに生存することは各人の基本的人権が保障されるための基礎的な条件であるから,平和のうちに生存していくことと各人の基本的人権が保障されることは,密接な関連性を有しているものであるというべきである。 しかし,憲法前文は,憲法の「崇高な理想と目的」(前文第4項)を示すものであり,憲法における解釈指針や憲法第3章で定める人権規定においてその 趣旨が斟酌されることがあっても,前文に上記文言があることから直ちに国民に「平和のうちに生存する権利」が具体的な権利として保障されているものと解することはできない。また,平和とは理念ないし目的としての抽象的概念であって,その具体的に意味するところは,各人の思想や信条,世界観等の主観によって異なるものであり,これを達成ないし確保する手段も,他者との関係を含めて達成し得るものであって,その当時の国際情勢によっても左右されるところが大きいのであるから,「平和的生存権」の具体的な内容について一義的に確定することは困難であるといわざるを得ない。この点,原告らは,憲法9条1項及び2項が憲法上保障されるべき「平和」の具体的内容を充填し,平和的生存権を具体的な権利性をもたらしていると主張するが,憲法9条は国の統治機構ない といわざるを得ない。この点,原告らは,憲法9条1項及び2項が憲法上保障されるべき「平和」の具体的内容を充填し,平和的生存権を具体的な権利性をもたらしていると主張するが,憲法9条は国の統治機構ないし統治活動についての基本的政策を明らかにしたものであるにすぎず,国民の私法上の権利義務を具体的に定めたものと解することはできない。 したがって,原告らが国家賠償法1条1項の被侵害利益として主張するところの平和的生存権は,法律上保護された具体的な権利ないし利益であるとはいえない。 ⑵ また,原告らは,平和安全法制関連2法の成立等により,平和な環境の下で平穏に生活できるとの信条や信念を真っ向から傷つけられ,原告ら日本の国民はその生命,身体,精神及び生活等の全般にわたって危険に直面し又は現に侵害を受ける恐怖を抱かされ不安におののかされるなどして,その人格権を侵害されるに至ったと主張する。 ア確かに,証拠(甲D1からD179まで)によれば,原告らは,平和な環境の下で平穏に生活したい,憲法9条の平和主義の理念を守り,日本が他国の武力行使に加担することがあってはならないとの強い信念を有していること,原告らの中には,先の第二次世界大戦を経験した者や,同大戦における広島市への原子爆弾の投下による被爆の被害に遭った者も含まれること がそれぞれ認められ,これらのことからすると,原告らのこうした平和に対する信念や信条は,十分に尊重されるべきものである。 しかし他方で,自らの信条や信念と反する立法等が行われることによって生ずる精神的苦痛は,多数決原理を基礎とする間接民主主義の下では不可避的に生じるものであるから,信条や信念を尊重すべきか否かにかかわらず,かかる精神的苦痛は社会通念上受忍されるべきものといわざるを得ない。そうすると,平和安全法制関連 とする間接民主主義の下では不可避的に生じるものであるから,信条や信念を尊重すべきか否かにかかわらず,かかる精神的苦痛は社会通念上受忍されるべきものといわざるを得ない。そうすると,平和安全法制関連2法の成立等により原告らに精神的苦痛が生じているとしても,かかる苦痛が社会通念上受忍すべき限度にとどまるものである以上,これによって原告らの人格権その他法律上保護される利益が違法に侵害されたということはできない。 また,原告らは,平和安全法制関連2法の成立等により,集団的自衛権の行使や後方支援活動等を行うことが可能となった結果,国際社会からの日本に対する評価が変わり,原告らを含む日本国民が戦争に巻き込まれる可能性や,我が国が敵対国からの攻撃やテロリズムの対象となる可能性が高まったことで,原告らの生命,身体及び財産に現に危害が加えられることへの恐怖を抱かされ,人格権が侵害されたと主張する。しかし,平和安全法制関連2法の成立から1年半近くが経過した本件訴訟の第1審口頭弁論終結時においても,我が国は,他国による武力行使の対象とはされていない(それどころか,集団的自衛権の行使や後方支援活動等の実施もされていない。)のであるから,現時点においても,戦争やテロリズムによる原告らの生命,身体及び財産等の侵害の危険が切迫し,現実のものとなったとまではいえない。 このことからすると,平和安全法制関連2法の成立やこれに至るまでの閣議決定等のみで,我が国が敵対国からの攻撃やテロリズムによる原告らの生命,身体及び財産等に対する具体的な侵害のおそれが生じたものとはいい難い。 そうすると,原告らが,平和安全法制関連2法の成立により,我が国が敵対国からの攻撃やテロリズムの対象となって原告らの生命,身体及び財産等に 危害が加えられるのではないかとの恐怖や不安を抱い そうすると,原告らが,平和安全法制関連2法の成立により,我が国が敵対国からの攻撃やテロリズムの対象となって原告らの生命,身体及び財産等に 危害が加えられるのではないかとの恐怖や不安を抱いたとしても,それは漠然かつ抽象的な不安感にとどまるものといわざるを得ず,原告らの人格権ないし法律上保護される利益が侵害されたということはできない。 したがって,人格権の侵害を理由とする本件各損害賠償請求については,国会や内閣の行為の違法ないし違憲性を判断するまでもなく理由がないというべきである。 イなお,原告A6,原告A7及び原告A8は,自衛官の家族として,平和安全法制関連2法の成立により,自らの子や弟が海外へ派兵され,戦闘行為に巻き込まれるのではないかとの不安や恐怖にさいなまれ,人格権が侵害されたと主張する。 証拠(甲D2,D14,D166)及び弁論の全趣旨によれば,原告A6の次男,原告A7の三男及び原告A8の弟はいずれも現職の自衛官であることが認められる。そして,平和安全法制関連2法に基づき,自衛官に対して実際に出動命令がされた場合には,派遣された地域において,当該自衛官が戦闘に巻き込まれ,生命及び身体に危害が加えられる可能性があることは否定できず,当該自衛官の家族が,自身の子や弟が海外における戦闘行為に巻き込まれその生命又は身体に危害が及ぶかもしれないという不安や恐怖を抱くことは当然である。自衛官の家族が有する上記の不安や恐怖は,自衛官を家族に持たない者には容易に推し量ることのできないものであり,これを単なる危惧感や不安感にとどまるものにすぎないと断ずることはできない面もある。 しかし,本件訴訟の第1審口頭弁論終結時点において,自衛隊法76条1項2号に基づく集団的自衛権の行使としての出動命令が発された事実や,その前提となる存 にすぎないと断ずることはできない面もある。 しかし,本件訴訟の第1審口頭弁論終結時点において,自衛隊法76条1項2号に基づく集団的自衛権の行使としての出動命令が発された事実や,その前提となる存立危機事態の認定(事態対処法9条2項1号イ)がされた事実が認められないこと,重要影響事態法及び国際平和支援法に基づく後方支援活動等の実施が行われた事実や,その前提となる合衆国軍隊等に対する具 体的な武力行使又は国際平和支援法3条1項1号にいういわゆる国連軍の組織がされた事実が認められないことは,いずれも当裁判所に顕著である。 そうすると,本件訴訟の第1回口頭弁論終結時点においても,集団的自衛権の行使として実際に出動命令がされ,あるいは後方支援活動等によって海外への派遣が行われる蓋然性は未だ低いものといわざるを得ず,上記各原告らの子や弟が,集団的自衛権の行使や後方支援活動等によって海外へ派遣される蓋然性も同様に低く,海外における戦闘行為によって上記各原告らの子や弟の生命又は身体に危害が及ぶ蓋然性もまた低いものであるといわざるを得ない。 以上で説示したところによれば,平和安全法制関連2法の成立やこれに至る内閣の閣議決定等によって,上記各原告らの家族が自衛官として海外に派遣され,その生命及び身体に危害が及ぶ現実的な危険性が生じたものということはできず,上記各原告らの抱く不安や恐怖は,同時点においては未だ抽象的な不安の域を出ないというものであるから,上記各原告らの人格権ないし法律上保護される利益が侵害されたということはできない。 ウまた,原告A27及び原告A28は,パレスチナ自治区における医療支援活動を行っている者であり,平和安全法制関連2法の成立により,パレスチナ自治区や諸外国から,日本が戦争を行うことが可能な国であるとの評価を受け 27及び原告A28は,パレスチナ自治区における医療支援活動を行っている者であり,平和安全法制関連2法の成立により,パレスチナ自治区や諸外国から,日本が戦争を行うことが可能な国であるとの評価を受けることにより,かかる支援活動を行うことが困難となるおそれがあり,人格権が侵害されていると主張する。 しかし,上記各原告らの主張及び陳述(甲D11,D75)するところを前提としても,上記各原告らは,平和安全法制関連2法の成立や集団的自衛権の行使により,我が国や日本人に対する諸外国の評価が変わり,上記支援活動が困難になる可能性を指摘するにとどまり,実際に平和安全法制関連2法が成立したことで原告らの医療支援活動が具体的に困難になったとの事実を認めることはできない。そうすると,平和安全法制関連2法の成立やこ れに至る内閣の閣議決定等によって,上記各原告らのかかる活動を行うことに関する人格権ないし人格的利益が侵害されたと認めることはできず,上記各原告らの主張は認められない。 ⑶ なお,原告らは,本件においては裁判所が積極的に憲法判断を行うべきであり,また,本件各損害賠償請求の成否を判断するためには,立法行為による権利侵害の明白性及びその前提となる平和安全法制関連2法の憲法適合性を判断しなければならないと主張する。 しかし,我が国における違憲立法審査権の行使は,具体的な事件の解決に必要な場合にその限度で行われるものである(最高裁判所昭和27年10月8日大法廷判決・民集6巻9号783頁参照)から,具体的事件の結論を導くのに必要な場合を超えて憲法判断を行う必要はなく,また相当ではないと解すべきである。そして,平和安全法制関連2法の成立やこれに至る閣議決定等により原告らの権利又は法律上保護される利益が侵害されたとは認められないことは前記で説示し 行う必要はなく,また相当ではないと解すべきである。そして,平和安全法制関連2法の成立やこれに至る閣議決定等により原告らの権利又は法律上保護される利益が侵害されたとは認められないことは前記で説示したとおりであるから,本件各損害賠償請求を判断するに際し,平和安全法制関連2法の憲法適合性について検討を加える必要はないものというべきである。 原告らは,立法行為を理由とする国家賠償請求訴訟においては,憲法上保護される権利又は法的利益に対する侵害が明白であることが要求されるにすぎず,権利又は法的利益が具体性を有することは要求されていないとして,複数の最高裁判例を挙げるものの,これらの判例は,いずれも立法行為が国家賠償法1条1項の適用上違法と評価される場合の要件について述べたものであって,違法な行為による被侵害利益が認められないことを理由とする本件とは事案を異にするものであるから,上記の結論が左右されるものではない。 3 証拠調べの必要性について原告らは,①平和安全法制関連2法の違憲性を立証するために,B1元最高裁判所判事,B2c 大学教授及びB3d 大学教授の証人尋問を,②自衛隊の実情や, 平和安全法制関連2法の成立による日本を巡る情勢の変化を立証するために,B4(e 新聞編集委員),B5(フリージャーナリスト)及びB6(フリージャーナリスト)の証人尋問を,③国会における平和安全法制関連2法の審議の過程等について立証するために,B7参議院議員の証人尋問を,④平和的生存権及び人格権の侵害を立証するために,原告ら17名の当事者尋問をそれぞれ申請している。 しかし,①の各証人については,裁判所の専権事項である法律の解釈及び適用について意見を述べるものにすぎず,争いのある事実の立証を行うためのものではないから,いずれも証拠調べの必要性 請している。 しかし,①の各証人については,裁判所の専権事項である法律の解釈及び適用について意見を述べるものにすぎず,争いのある事実の立証を行うためのものではないから,いずれも証拠調べの必要性がない。また,②及び③の各証人は,いずれも自衛隊の実情や日本を巡る国際情勢,国会における審議過程を明らかにすることで,平和安全法制関連2法の違憲性及び国会の立法行為等に国家賠償法上の違法性が認められることを立証する趣旨であると解されるが,平和安全法制関連2法の違憲性や国会及び内閣の行為の違法性について判断するまでもなく,原告らの請求に理由がないことは既に説示したとおりであるから,いずれも証拠調べの必要性がない。②の各証人が,我が国が敵対国からの攻撃やテロリズムの対象となる危険性があり,原告らの人格権が侵害されていることを立証する趣旨であるとしても,平和安全法制関連2法の成立後に我が国が具体的な攻撃対象とされておらず,また,集団的自衛権の行使や後方支援活動等の実施もされていない等の事実からすると,平和安全法制関連2法の成立をもって原告らの人格権ないし法律上保護される人格的利益が侵害されたと認められないことは既に説示したとおりであるから,証拠調べの必要性がない。さらに,④の各原告については,いずれも平和的生存権及び人格権の具体的な侵害を基礎づける事実について上記各原告が主張ないし陳述するところについて,被告はこれを争わないのであるから,平和的生存権及び人格権の侵害の有無については原告らの主張ないし陳述するところを前提として判断すれば足り,別途の当事者尋問を行う必要性はない。 そして,原告らの主張ないし陳述するところを前提としても,原告らの平和的生 存権及び人格権に対する侵害があるとは認められないことは既に説示したとおりである。 第4 を行う必要性はない。 そして,原告らの主張ないし陳述するところを前提としても,原告らの平和的生 存権及び人格権に対する侵害があるとは認められないことは既に説示したとおりである。 第4 結論以上によれば,本件各差止請求は不適法であるからこれを却下することとし,原告A1らのその余の請求及びその余の原告らの請求(本件各損害賠償請求)にはいずれも理由がないからこれを棄却すべきである。 よって,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第5部 裁判官牧野一成 裁判長裁判官岡山忠広及び裁判官根本宜之は,転補のため署名押印することができない。 裁判官牧野一成
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