平成26(ワ)7643 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年3月3日 東京地方裁判所
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判決文本文79,159 文字)

平成29年3月3日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成26年(ワ)第7643号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成28年11月30日判決原告 YKKAP株式会社原告日本総合住生活株式会社上記2名訴訟代理人弁護士小池豊同櫻井彰人同市村正紀同補佐人弁理士根本恵司被告三協立山株式会社同訴訟代理人弁護士三村量一同 羽鳥貴広同赤尾直人同湯浅正彦同鈴木一徳同湯浅知子同訴訟復代理人弁護士面山結同補佐人弁理士岩 﨑 孝治同七條耕司 主文 1 被告は,別紙物件目録イ-1,イ-3,イ-5,イ-6及びイ-7各記載の改修引戸装置並びに別紙物件目録ロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6各記載(ただし,下枠タイプAのもの。)の改修引戸装置を製造し,譲渡してはならない。 2 被告は,別紙物件目録イ-1,イ-3,イ-5,イ-6及びイ-7各 記載の改修引戸装置並びに別紙物件目録ロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6各記載(ただし,下枠タイプAのもの。)の改修引戸装置を廃棄せよ。 3 被告は,原告YKKAP株式会社に対し,8505万7000円及びうち1703万9000円に対する平成23年10月8日から,うち6188万6000円に対する平成26年4月8日から,うち231万4 3 被告は,原告YKKAP株式会社に対し,8505万7000円及びうち1703万9000円に対する平成23年10月8日から,うち6188万6000円に対する平成26年4月8日から,うち231万4000円に対する平成26年5月31日から,うち242万円に対する平成26年10月31日から,うち104万4000円に対する平成27年5月31日から,うち34万1000円に対する平成27年11月30日から,うち1万3000円に対する平成27年12月31日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告日本総合住生活株式会社に対し,8505万7000円及びうち1703万9000円に対する平成23年10月8日から,うち6188万6000円に対する平成26年4月8日から,うち231万4000円に対する平成26年5月31日から,うち242万円に対する平成26年10月31日から,うち104万4000円に対する平成27年5月31日から,うち34万1000円に対する平成27年11月30日から,うち1万3000円に対する平成27年12月31日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,これを5分し,その3を原告らの,その余を被告の各負担とする。 7 この判決は,第1項,第3項及び第4項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙物件目録イ-1,イ-3,イ-5,イ-6及びイ-7並びに同ロ-1,ロ-2,ロ-4,ロ-5及びロ-6各記載の改修引戸装置を製造し,譲渡してはならない。 2 被告は,別紙物件目録イ-1,イ-3,イ-5,イ-6及びイ-7並びに同ロ-1,ロ-2,ロ-4,ロ-5及びロ-6各記載の改修引戸 -5及びロ-6各記載の改修引戸装置を製造し,譲渡してはならない。 2 被告は,別紙物件目録イ-1,イ-3,イ-5,イ-6及びイ-7並びに同ロ-1,ロ-2,ロ-4,ロ-5及びロ-6各記載の改修引戸装置を廃棄せよ。 3 被告は,原告YKKAP株式会社に対し,5億0998万0446円及びうち5152万1946円に対する平成23年10月8日から,うち4億5845万8500円にする平成26年4月8日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告日本総合住生活株式会社に対し,5億0998万0446円及びうち5152万1946円に対する平成23年10月8日から,うち4億5845万8500円に対する平成26年4月8日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 訴訟費用は被告の負担とする。 6 仮執行の宣言第2 事案の概要 1 本件は,発明の名称を「引戸装置の改修方法及び改修引戸装置」とする特許権を有する原告らが,被告の製造,譲渡する改修引戸装置である別紙物件目録イ-1,イ-3,イ-5,イ-6及びイ-7各記載の各装置(商品名「HOOK工法」。以下,同目録イ-1,イ-3,イ-5,イ-6及びイ-7各記載の改修引戸装置をそれぞれ「イ-1号装置」などといい,これらを総称して「イ号装置」という。)並びに別紙物件目録ロ-1,ロ-2,ロ-4,ロ-5及びロ-6各記載の各装置(商品名「HOOKSLIM」。以下,同目録ロ-1,ロ-2,ロ-4,ロ-5及びロ-6各記載の改修引戸装置をそれぞれ「ロ-1号装置」などといい,これらを総称して「ロ号装置」という。また,イ号装置とロ号装置を併せて「被告各装置」という。)は原告らの有する上記特許権の 特許請求の範囲請求項4の技術的範囲に属すると主張して,被告に対 これらを総称して「ロ号装置」という。また,イ号装置とロ号装置を併せて「被告各装置」という。)は原告らの有する上記特許権の 特許請求の範囲請求項4の技術的範囲に属すると主張して,被告に対し,①被告各装置の製造・譲渡の差止め等を求めるとともに,②原告ら各自に対し,出願公開中の補償金として5152万1946円,不法行為(民法709条,特許法102条2項)に基づく損害賠償金として4億1678万0500円,弁護士・弁理士費用として4167万8000円の合計5億0998万0446円及びうち5152万1946円に対する平成23年10月8日(本件特許登録日の翌日)から,うち4億5845万8500円に対する平成26年4月8日(訴状送達の日の翌日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1) 当事者ア原告ら原告YKKAP株式会社(以下「原告YKKAP」という。)は窓,サッシ及びその他の建築材料の製造・販売等を目的とする株式会社である。 原告日本総合住生活株式会社(以下「原告日本総合住生活」という。)は,集合住宅の管理・改修等を目的とする株式会社である。 イ被告被告は,アルミニウムその他の金属製建材,木質建材,合成樹脂建材等の製造,加工及び販売等を目的とする株式会社である。 (2) 原告らの有する特許権原告らは,以下の特許権(請求項の数6。以下「本件特許権」又は「本件特許」という。また,本件特許に係る明細書及び図面〔甲2〕を「本件明細書等」という。なお,本件特許の特許公報を末尾に添付する。)を共有している。 特許番号 4839108号 発明の名 」という。また,本件特許に係る明細書及び図面〔甲2〕を「本件明細書等」という。なお,本件特許の特許公報を末尾に添付する。)を共有している。 特許番号 4839108号 発明の名称引戸装置の改修方法及び改修引戸装置出願番号特願2006-74123出願日平成18年3月17日分割の表示特願2003-62183の分割原出願日平成15年3月7日公開番号特開2006-152802公開日平成18年6月15日登録日平成23年10月7日(3) 特許請求の範囲本件特許の特許請求の範囲請求項4の記載は次のとおりである(以下,同記載にかかる発明を「本件発明」という。)。 「建物の開口部に残存した既設引戸枠は,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し,前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去され,その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり,この既設引戸枠内に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され,この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に,前記改修用下枠の室内寄りが,前記取付け補助部材で支持され,前記背後壁の上 枠が挿入され,この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に,前記改修用下枠の室内寄りが,前記取付け補助部材で支持され,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端が ほぼ同じ高さであり,前記改修用下枠の前壁が,ビスによって既設下枠の前壁に固定されていることを特徴とする改修引戸装置。」(4) 本件発明の構成要件本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,それぞれの記号に従い「構成要件A」などという。)。 A 建物の開口部に残存した既設引戸枠は,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し,前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去され,B その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり,C この既設引戸枠内に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され,D この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に,前記改修用下枠の室内寄りが,前記取付け補助部材で支持され,E 前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,F 前記改修用下枠の前壁が,ビスによって既設下枠の前壁に固定されている 改修用下枠の室内寄りが,前記取付け補助部材で支持され,E 前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,F 前記改修用下枠の前壁が,ビスによって既設下枠の前壁に固定されているG ことを特徴とする改修引戸装置。 (5) 被告各装置ア被告は, イ号装置を遅くとも平成18年5月1日から,ロ号装置を遅くとも平成22年6月1日から,製造・販売している。 イ被告各装置は構成要件A及びGを充足し,ロ-1号装置はこれに加えて構成要件Cも充足する。 ウ商品名を「HOOK工法」とする改修引戸装置には,イ号装置のほかに,「引違い窓 2枚建ウォーキング(ノンレールタイプ)」(以下「イ-2号装置」という。)及び「袖FIX付き引違い窓 2枚建ウォーキング(ノンレールタイプ)」(以下「イ-4号装置」という。)があり,商品名を「HOOKSLIM」とする改修引戸装置には,ロ号装置のほかに,「FIX窓」(以下「ロ-3号装置」という。)があるが,原告らは,本訴において,イ-2,イ-4及びロ-3号装置が侵害品であるとの主張はしていない(以下,被告各装置並びにイ-2,イ-4及びロ-3号装置を総称して「HOOK製品」ということがある。)。 (6) 本件特許の出願経緯等ア訴外株式会社日本アルミ(以後「日本アルミ」という。)は,平成15年3月7日,本件特許の原出願(以下「原出願」という。)につき特許出願した(特願2003-62183)。原出願の優先日は平成14年3月8日である。(乙1)イ平成18年3月17日,原出願から本件特許が分割出願(特願2006-74123)された(以下「本件出願」という。)。なお,本件出願の出願人は,日本アルミ及び原告らの三者である。(乙4)ウ本件出願は,平成18年6月15日に公 ら本件特許が分割出願(特願2006-74123)された(以下「本件出願」という。)。なお,本件出願の出願人は,日本アルミ及び原告らの三者である。(乙4)ウ本件出願は,平成18年6月15日に公開された。 エ本件出願は,その後拒絶査定され,日本アルミ及び原告らは,平成22年4月16日,拒絶査定不服審判請求(不服2010-8087)をした。 また,日本アルミ及び原告らは,平成23年6月15日付で,特許庁に対 し,手続補正書(案)(乙5の2)を提出した。(甲2,乙5の1・2)オ日本アルミ及び原告らは,平成23年6月21日起案の拒絶理由通知書(乙6)により,拒絶理由通知を受けた。上記拒絶理由通知書には,「本願の請求項1~6には,広い開口面積を確保する本願の課題に対応した構成が記載されていない。よって,請求項1~6に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものでない。」「なお,平成23年6月15日付け補正案のとおり補正すればこの限りではない。」と記載されていた。(乙6)カ日本アルミ及び原告らは,平成23年7月8日,上記エの手続補正書(案)のとおりに補正をする内容の手続補正書(乙7)を提出した。特許庁は,同年9月2日,本件出願について特許すべきものとする審決をした。(乙3,7)キ本件特許は,平成23年10月7日,設定の登録がされた。(甲1,2)ク日本アルミを一般承継した株式会社ナルコ岩井(以下「ナルコ岩井」という。)及び原告らは,平成25年8月5日,ナルコ岩井と原告らが共有する本件特許権について,ナルコ岩井が同年3月31日をもってその持分をすべて放棄したこと,及びナルコ岩井が放棄した本件特許権の持分は原告らに帰属し,ナルコ岩井が放棄した持分も含めた原告らの本件特許権の持分は,各2分の1とすることを合意した。(甲 日をもってその持分をすべて放棄したこと,及びナルコ岩井が放棄した本件特許権の持分は原告らに帰属し,ナルコ岩井が放棄した持分も含めた原告らの本件特許権の持分は,各2分の1とすることを合意した。(甲7)(7) 原告らによる警告日本アルミ及び原告らの三者は,平成18年10月5日付文書(甲6の1)により,被告に対し,被告が「HOOK工法」として施工しているビル用サッシの改装取付け方法が,公開された本件出願に係る特許請求の範囲請求項1及び5記載の発明に抵触し,被告による改装サッシの製造・販売が,間接侵害に当たるとして,本件出願の登録を経たうえで上記実施行為に対する補償金請求をする旨警告し,また,本件出願の公開特許公報を送付した。(甲6の1・2) (8) 無効審判請求等ア無効2012-800031号事件(ア) 被告は,平成24年3月16日,本件特許権の特許請求の範囲請求項1ないし6について,①新規事項追加補正(特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正)がある,②記載要件違反(特許法36条6項1号・2号,4項1号)がある,③実願昭57-63927号(実開昭58-167191号)のマイクロフィルム又は特開2002-285757号公報を主引例とした進歩性欠如の無効理由があると主張して,無効審判請求をした。(甲1,10)(イ) 特許庁は,上記無効審判請求に対し,平成24年10月26日,不成立とする審決をした。(甲10)(ウ) 被告は,上記審決を不服として,審決取消訴訟を提起したが(知的財産高等裁判所平成24年(行ケ)第10418号),同裁判所は,平成25年7月24日,請求棄却判決をし,同判決は確定した。(甲1,11)イ無効2013-800021号事件(ア) 被告は,平成25年2月8日,本件特 年(行ケ)第10418号),同裁判所は,平成25年7月24日,請求棄却判決をし,同判決は確定した。(甲1,11)イ無効2013-800021号事件(ア) 被告は,平成25年2月8日,本件特許権の特許請求の範囲請求項1ないし6について,①サポート要件違反(特許法36条6項1号)がある,②分割要件違反があり,原出願の公開公報により,新規性欠如又は進歩性欠如の無効理由があると主張して,無効審判請求をした。(甲1,11)(イ) 特許庁は,上記無効審判請求に対し,平成25年10月23日,不成立とする審決をした。(甲11)(ウ) 被告は,上記審決を不服として,審決取消訴訟を提起したが(知的財産高等裁判所平成25年(行ケ)第10321号),同裁判所は,平成26年9月11日,請求棄却判決をし,同判決は確定した。(甲13,弁論の全趣旨) 3 争点(1) 被告各装置が本件発明の技術的範囲に属するかア構成要件Bの「室内寄り」及び「固着」の解釈イ構成要件Cの「挿入」の解釈ウ構成要件Dの「支持」の解釈エ構成要件Eの「ほぼ同じ高さ」の解釈オ構成要件Fの「固定」の解釈カイ号装置の充足性キロ号装置の充足性(2) 本件特許権が特許無効審判により無効にされるべきものか否か(3) 補償金請求権の存否及びその額(4) 損害発生の有無及びその額第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)ア(構成要件Bの「室内寄り」及び「固着」の解釈)について〔原告らの主張〕(1) 「室内寄り」の意義ア構成要件Bの「室内寄り」とは,無効2012-800031号事件の審決(甲10:18頁末行~19頁4行)においても指摘されているように,「室内に近い方」を意味することは明白である。 イ被 ア構成要件Bの「室内寄り」とは,無効2012-800031号事件の審決(甲10:18頁末行~19頁4行)においても指摘されているように,「室内に近い方」を意味することは明白である。 イ被告の主張に対する反論この点に関して被告は,「室内寄り」とは「既設下枠において室内側案内レール及びその近傍よりも室内側から,当該既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁に至る領域である室内寄り」を意味するなどと主張する。 しかし,定義するまでもない用語の意味について,本件明細書等に記載された発明の例示にすぎない実施例の説明にこじつけて無理やり限定解釈 しようとするものであり,明らかに失当である。 すなわち,構成要件Bは,取付け補助部材が背後壁の立面にビスで固着して取り付けられることを規定しているだけであり,「室内寄り」の語が,室内外などを厳格に区分する趣旨で用いられている訳でもないから,「既設下枠の室内寄り」が厳格にどこからどこまでの領域をいうのか,室内に及ぶのか否かなどについて論じる意味はない。さらに,取付け補助部材が,背後壁よりも更に室内側に存在(延設)するか否かについても,構成要件Bとは何ら関係がない。 (2) 「固着」の意義被告は,「固着」について,「構成要件Dの取付け補助部材による「支持」を安定した不動状態とすることを技術的趣旨とする」などと主張するが,独自の見解にすぎない。本件明細書等にも被告の主張を裏付ける記載はない。 また,「不動状態」なる用語は,本件明細書等に一切記載がない被告独自の用語であって,このような「不動状態」の実現は,本件発明の課題でも構成要件でもない。 (3) 構成要件Bの解釈に関する被告の主張に対する反論この点に関する被告の主張は,構成要件Bを明細書等の実施形態に限定して のような「不動状態」の実現は,本件発明の課題でも構成要件でもない。 (3) 構成要件Bの解釈に関する被告の主張に対する反論この点に関する被告の主張は,構成要件Bを明細書等の実施形態に限定して解すべきと主張するものにすぎず,解釈として失当である。 〔被告の主張〕(1) 「室内寄り」の意義についてア構成要件Bの「その既設下枠の室内寄り」とは「その既設下枠において室内側案内レール及びその近傍よりも室内側から,当該既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁に至る領域である室内寄り」を意味する(下線は,被告が追記した部分を示す。構成要件の解釈に関する被告の主張において以下同じ。)。その理由は以下のとおりである。 まず,原出願の出願時の明細書等(乙1。以下「原出願当初明細書等」 という。)には,「室内寄り」という技術用語は存在しないから,「室内寄り」の技術的趣旨は,原出願当初明細書等記載の実施形態に即して判断されるべきであり,そうでなければ,分割要件違反となる。 そこで,原出願当初明細書等をみると,発明の詳細な説明においては,図3,6,10,11の各実施形態では,ビス110によって取付け補助部材106の室外側壁部(107)が室内側案内レール(115)に固着されることによって,室内側案内レール(115)の外側近傍に配設されている。また,図14に示す実施形態では,取付け補助部材(106)の室外側壁部(107)は,室内側案内レール(115)が存在した位置の外側近傍に配設されている。これらの記載は,本件明細書等においても同じである。 そして,上記各実施形態は,「既設下枠の室内寄り」が,「室内側案内レール及びその近傍から背後壁の立面に至るまでの領域」を指していることを客観的に裏付けている。 イ仮に,構成要件Bにお である。 そして,上記各実施形態は,「既設下枠の室内寄り」が,「室内側案内レール及びその近傍から背後壁の立面に至るまでの領域」を指していることを客観的に裏付けている。 イ仮に,構成要件Bにおいて,取付け補助部材が背後壁の立ち上がり面よりも室内側に存在し得るのであれば,構成要件Eの「ほぼ同じ高さ」を実現する一方の要因は,「背後壁の上端」のみではなく,「取付け補助部材の上端」である場合も生じ得るにもかかわらず,後者の場合は構成要件Eに規定されていない。これは,本件発明において,構成要件Bの「室内寄り」が,背後壁の立ち上がり面よりも更に室内側であることを予定していないからに他ならない。 構成要件Bにおいて,取付け補助部材が背後壁よりも室内側の「室内」にも延設される場合をも包摂しているとすれば,「既設下枠の室内寄り」には取付け補助部材自体ではなく,その一部が設けられていることになるが,構成要件Bは取付け補助部材の設置領域が「既設下枠の室内寄り」であることを要件としており,その一部の設置領域が「既設下枠の室内寄り」 であることまで包摂しているのではない。 ウこの点に関して原告らは,背後壁の立面よりも更に室内側に存在するか否かは構成要件Bとは無関係であるなどと主張する。 しかし,背後壁の立面よりも更に室内側とは,まさに「室内」である。 そして,原告らは,「室内寄り」とは「室内に近い方」を意味するなどとも主張するが,「室内に近い方」には「室内」は含まれない。「室内寄り」に「室内」が含まれないことは,本件明細書等の図3において,既設引戸枠(63)の領域と室内(68)の領域とが背後壁(104)の立面と連なる垂直方向ラインによって区分されていることからも明らかである。 (2) 「固着」の意義について構成要件Bの「固着」は,構 戸枠(63)の領域と室内(68)の領域とが背後壁(104)の立面と連なる垂直方向ラインによって区分されていることからも明らかである。 (2) 「固着」の意義について構成要件Bの「固着」は,構成要件Dの取付け補助部材による「支持」を安定した不動状態とすることを技術的趣旨としており,かつ本件発明は,構成要件Bの「固着」以外に取付け補助部材における他の部位と既設下枠の背後壁以外の場所との結合に基づく「支持」を必要とせずに,上記「固着」をもって必要にして十分であることを当然の前提としている。本件明細書等に記載された実施形態をみても,構成要件Bの背後壁への「固着」によって,取付け補助部材の安定した不動状態を実現することが可能であって,背後壁以外の部位へのビスによる固着を不要としていることは明らかである。 (3) 構成要件Bについて前記(1),(2)及び本件明細書等の段落【0018】が「既設下枠の形状,寸法に応じた形状,寸法」を有する対象物を,専ら取付け補助部材のみに限定し,取付け補助部材の形状等の変更を予定していることを併せて考慮すれば,構成要件Bは「その既設下枠において室内側案内レール及びその近傍よりも室内側から,当該既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁に至る領域である室内寄りに,前記既設下枠の形状,寸法に応じて形状,寸法を変更することを予定している取付け補助部材を設け,その取付け補助部材 が前記背後壁の立面にビスで固着され,かつ前記背後壁の立面以外の既設下枠における他の部位に対するビスによる固着を不要とする状態にて取付けてあり,」の趣旨と解すべきである。 2 争点(1)イ(構成要件Cの「挿入」の解釈)について〔原告らの主張〕(1) 「挿入」とは,一般的には「さしいれること,さしこむこと。」であっ 取付けてあり,」の趣旨と解すべきである。 2 争点(1)イ(構成要件Cの「挿入」の解釈)について〔原告らの主張〕(1) 「挿入」とは,一般的には「さしいれること,さしこむこと。」であって,ここで「さしいれる」の意味は,中へいれる,「さしこむ」は「さしいれる」ことであるから,「挿入」は,中に「入れた状態」,「差し込んだ状態」を指す。 (2) この点に関して被告は,構成要件Cの「改修用引戸枠が挿入され,」について,「改修用引戸枠が室外側から室内側へ向かう略直線状の移動によって挿入される」を意味するものと主張するが,かかる限定解釈をする理由は全くない。 構成要件Cの「挿入」は,「挿入された状態」を示すものであって,動作自体を示すものではない。 また,挿入動作の観点からも,例えば本件明細書等の図3(改修用引戸装置50と既設引戸枠への取付け手順を説明するための鉛直断面を示す分解図)と,図1の改修引戸装置が設置された窓の状態を対比してみても,また,本件明細書等の記載全体をみても,「挿入」の意味を略直線状の移動を伴うもののみに限定して解すべき理由はない。 さらに,現場で実際に既設引戸枠に改修用引戸枠を挿入する場合に,本件発明の改修用引戸枠の移動が,略直線状の移動のみに限定されるとみるのは非常識であり,この点からも被告の主張は失当である。 〔被告の主張〕(1) 構成要件Cの「改修用引戸枠が挿入され,」とは,「改修用引戸枠が室外側から室内側へ向かう略直線方向の移動を必要とするも,他の方向に沿った 移動を不要とする移動によって改修用下枠と取付け補助部材との間に格別の結合を必要としない状態にて挿入され,」の意味である。 (2) 「挿入」が室外側から室内側に向かう一定方向による移動である以上,当該移動は略直線状の移動 って改修用下枠と取付け補助部材との間に格別の結合を必要としない状態にて挿入され,」の意味である。 (2) 「挿入」が室外側から室内側に向かう一定方向による移動である以上,当該移動は略直線状の移動と解すべきである。このように解することが,通常直線状の移動を前提とし,かつ「差し込む」を意味する「挿入」の技術的趣旨(乙2・広辞苑第六版)と合致する。また,このように解することが,本件明細書等の図3に示すように,改修用引戸装置(50)は,室外(73)側から室内(68)側への水平方向の略直線状の移動によって,図1の状態に至るような「挿入」を実現していることとも合致する。 3 争点(1)ウ(構成要件Dの「支持」の解釈)について〔原告らの主張〕(1) 本件発明の構成要件Dは,取付け補助部材について,「改修用下枠の室内寄りが,取付け補助部材で支持されている」と規定するだけであって,改修用引戸枠の室内寄りから伝達された荷重が実際にどのように支持されるかは,その構成要件に含まれない。 (2) 被告の主張に対する反論アこの点に関して被告は,構成要件Dについて,荷重の伝達に関する事項に関して限定解釈すべきと主張する。 しかし,構成要件Dの規定はきわめて明確であり,被告の主張するような限定解釈を行うべき理由はない。 また,本件明細書等の発明の詳細な説明をみても,構成要件Dの解釈にあたり改修用引戸枠の室内寄りから伝達された荷重等を考慮すべき理由はない。 イまた,被告は,「取付け補助部材が改修用引戸枠の室内寄りの下側の位置にてDの『支持』を実現している場合」を仮定して主張するが,この仮定は本件発明とは何の関係もなく,無意味な主張である。 すなわち,構成要件B及びDをみても,既設下枠に設置される部材が取付け補助部材のみ ている場合」を仮定して主張するが,この仮定は本件発明とは何の関係もなく,無意味な主張である。 すなわち,構成要件B及びDをみても,既設下枠に設置される部材が取付け補助部材のみであること,及び改修用下枠の室内寄りに対する「支持」が専ら取付け補助部材によって実現されるもののみであることに限定していない。被告の上記主張は,構成要件B及びDを曲解したものであって,失当である。 ウさらに,被告は本件明細書等の段落【0018】の作用効果の記載を限定解釈の根拠として主張する。 しかし,特許請求の範囲で規定されていない事項は,当該発明の構成要件とされないというだけであって,規定されていない事項がその技術的範囲から除外されているとみるのは誤りである。段落【0018】の記載は,本件発明の構成要件B及びDに対応する効果を示しているが,本件明細書等の発明の詳細な説明全体をみても,その効果が本件発明の前記構成要件のみに対応し,被告のいう「取付け補助部材と既設引戸枠との間に介在する支持部材を用いる」構成を採用した場合にはもはや対応し得ないものとなると解すべき理由はない。 エ構成要件B及びDは,取付け補助部材の備えるべき構成として,それが既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付けてあり,かつ,前記改修用下枠の室内寄りを支持することを規定しているにすぎない。 したがって,改修用引戸装置の荷重が,取付け補助部材と既設下枠の間に,ビスのほかに,更に他の部材を介して伝達されているとしても,かかる態様を除外する理由は何ら存在しない。 〔被告の主張〕(1) 構成要件Dの「この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に,前記改修用下枠の室内寄りが, は何ら存在しない。 〔被告の主張〕(1) 構成要件Dの「この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に,前記改修用下枠の室内寄りが,前記取付け補助部材で支持され,」とは,「この改修用引戸枠の 改修用下枠の室外寄りの底壁が,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して下側から支持されると共に,改修用下枠の室内寄りの底壁が,前記取付け補助部材によって下側から支持され,かつ前記支持を安定した不動状態とするために,既設下枠に対してビスによって固着された他の部材による支持を不要としており,」の意味である。 (2) 上記のとおり解釈すべき理由は次のとおりである。 ア取付け補助部材の存在領域(ア) 構成要件Dの「支持」が実現した段階では,改修用下枠は背後壁よりも室外側に存在している。仮に改修用下枠が背後壁よりも更に室内寄りに存在し,かつその上端にまで延設されたのであれば,背後壁の上端と改修用下枠の上端が「ほぼ同じ高さ」であるという構成要件Eを充足しない。 (イ) 上記(ア)を考慮すると,取付け補助部材が存在する領域もまた,背後壁よりも室外側であることになる。というのも,①仮に取付け補助部材が背後壁の立面よりも更に室内側に存在し得るのであれば,背後壁の上端領域にまで延設されることに帰するが,このような延設状態は,背後壁よりも室外側領域にて,「支持」するうえで不要かつ無意味であるし,②上記延設の場合には,延設される領域が不特定であるのに対し,背後壁の上端領域は特定していることを考慮するならば,「既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用いる」という本件明細書等の段落【0018】記載の本件発明の基本的効果を達成するために必要な要件と矛盾するからである を考慮するならば,「既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用いる」という本件明細書等の段落【0018】記載の本件発明の基本的効果を達成するために必要な要件と矛盾するからである。 イ取付け補助部材の状態取付け補助部材が改修用引戸枠の室内寄りの下側の位置にて構成要件Dの「支持」を実現している場合には,引戸障子の荷重が取付け補助部材に伝達されている。しかも,上記荷重は,取付け補助部材から全て直接既設 下枠に伝達されており,取付け補助部材と既設下枠との間に他の部材は介在していない。 なぜならば,構成要件Bによれば,既設下枠に設置される部材は,取付け補助部材のみであり,かつ構成要件Dにおいては,改修用下枠の室内寄りに対する「支持」が専ら取付け補助部材によって実現されることを規定している以上,前記荷重が他の部材に伝達されたうえで更に既設下枠に伝達されるようなメカニズムを導出することができないからである。このことは本件明細書等の段落【0018】の記載及び本件発明に対応する図14に示される実施形態からも明らかである。 ウ構成要件Bの「固着」と構成要件Dの「支持」の関係構成要件Bの「固着」及びDの「支持」をみれば,取付け補助部材は,改修用下枠の室内寄りから伝達された引戸障子の荷重をビス以外の他の部材を介さずに,直接既設下枠に更に伝達する一方,取付け補助部材のうち,構成要件Bのビスによって,背後壁の立面への「固着」が行われている部位は,取付け補助部材における他の部位の既設下枠における背後壁の立面以外の他の場所とビスによる「固着」を含む結合に基づく「支持」を必要とせずに,既設下枠に荷重を伝達し,かつ安定した不動状態による構成要件Dの「支持」を維持していることを技術的前提としている。そして,本件明細書等の ビスによる「固着」を含む結合に基づく「支持」を必要とせずに,既設下枠に荷重を伝達し,かつ安定した不動状態による構成要件Dの「支持」を維持していることを技術的前提としている。そして,本件明細書等の記載(図14の実施形態の記載を含む。)は,上記荷重の伝達状態及び上記「支持」に関する技術的前提を裏付けている。 4 争点(1)エ(構成要件Eの「ほぼ同じ高さ」の解釈)について〔原告らの主張〕(1) 「ほぼ同じ」とは,技術常識の範囲内で概略的に同一という趣旨であり,厳密なものではない。たとえば,本件明細書等の段落【0021】に記載されたコンクリート構造の高層集合住宅の実際の引戸装置の高さは,通常の場合で約2000㎜(2m),低い場合でも約700㎜(0.7m)あるので あって,5㎜程度の差異がある場合は,有効開口面積の確保という作用効果からしても,構成要件Eの「ほぼ同じ高さ」に当たる。 (2) 本件発明では,既設下枠に存在した室外側案内レールを切断除去し,取付け補助部材で改修用下枠の室内寄りを支持した結果,当該レールの高さ分だけ改修用下枠を下方に取り付けることが可能となった。 ただし,その場合において,改修用下枠の上端と,(既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる)背後壁の上端との高さの差に一切制限を設けないと,室外側案内レールを切断除去することで,本来は改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく,有効開口面積が減少することがなく,広い開口面積が確保できることが可能になるにもかかわらず,改修用下枠の上端の前記背後壁の上端に対する高さいかんによっては,広い開口面積を確保するとの本件発明の効果を達成し得ない構成も,文言上は構成要件Eに包含されることになる。そこで,本件発明では,前記背後壁の上端と改修用下枠 後壁の上端に対する高さいかんによっては,広い開口面積を確保するとの本件発明の効果を達成し得ない構成も,文言上は構成要件Eに包含されることになる。そこで,本件発明では,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端が,「ほぼ同じ高さ」との要件を付した。 すなわち,「ほぼ同じ高さ」は前記目的,効果が達成できないものを除外する趣旨の要件であり,厳密に数値的に限界を付するためのものではなく,技術常識の範囲内で概略的に同一という趣旨のものである。 (3) 被告の主張に対する反論アこの点に関して被告は,構成要件Eの「前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さである」との意味を,「双方の高さの差を示す寸法は,前記背後壁の高さを示す寸法に比し1/13未満の状態にあり,」と限定解釈すべきと主張するが,失当である。 イすなわち,本件発明の目的は,改修引戸装置において「広い開口面積を確保すること」(本件明細書等の段落【0012】),換言すれば,既設引戸枠の開口面積に対して改修用引戸枠の開口面積を小さくしないようにすることである。そのために本件発明は,改修前の既設下枠の高さ(既設下 枠の背後壁の上端の高さ)と,改修後の改修用下枠の高さ(改修用下枠の上端の高さ)を比較することで改修前後の開口面積を比較し,その上で両者が「ほぼ同じ高さ」であることを構成要件Eとしているのである。 この点からみて,構成要件Eについて,被告が主張するように,使用者又は居住者によって「開口面積」の程度が判断され,したがって歩行の支障を除去することを基準にして「ほぼ同じ高さ」を対比する対象物を決めるなどという解釈を挟む余地はない。 被告の上記主張は,本件発明における改修用下枠と既設下枠を比較することの意義を正しく理解しないものである。構成要件Eの趣旨からみれば,改 を対比する対象物を決めるなどという解釈を挟む余地はない。 被告の上記主張は,本件発明における改修用下枠と既設下枠を比較することの意義を正しく理解しないものである。構成要件Eの趣旨からみれば,改修前の既設下枠に用いられていない部材同士(つまり取付け補助部材と改修用下枠)を比較しても無意味である。 ウ 「背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さである」のは,本件発明が既設下枠に存在した室外側案内レールを切断撤去し,当該レールの高さ分だけ改修用下枠を下方に取り付けることが可能になった結果である。 エ被告は本件明細書等記載の図面を測定して主張しているが,当該図面は設計図ではなく,個々の部品の寸法及び比例関係について厳密な正確さは求められていないものであるから,被告の上記図面に基づく数値限定の主張は誤りである。 〔被告の主張〕(1) 構成要件Eの「ほぼ同じ高さであり,」とは,「ほぼ同じ高さであって,双方の高さの差を示す寸法は,前記背後壁の高さを示す寸法に比し1/13未満の状態にあり,」の意味である。 (2) 上記のとおり解釈すべき理由は次のとおりである。 ア構成要件Eにおいて,背後壁の上端と改修用下枠の上端が「ほぼ同じ高さ」であることを要件としているのは,構成要件Aの室外側案内レールの付け根付近からの切断撤去に基づく広い開口面積の確保(段落【0018】) を更に一層助長する点にある。上記広い開口面積の確保における実質的意義は,改修用上枠と改修用下枠との間に位置している引戸障子の上下方向幅を大きくし,かつ「ほぼ同じ高さ」の設定によって引戸障子を支え,かつ改修用下枠の上端に位置しているレール(敷居)を越える場合の歩行の支障を除去し,かつ引戸障子における可視領域(ビジブルな領域)を狭くしないことにある(なお,ここ 」の設定によって引戸障子を支え,かつ改修用下枠の上端に位置しているレール(敷居)を越える場合の歩行の支障を除去し,かつ引戸障子における可視領域(ビジブルな領域)を狭くしないことにある(なお,ここで,使用者又は居住者によって「開口面積」の程度が判断されること及び構成要件Eにおいて,改修用下枠の上端が「ほぼ同じ高さ」であると判断する基準の位置が「背後壁の上端又は取付け補助部材の上端」ではなく,「背後壁の上端」とされていることに照らしても,取付け補助部材が背後壁の立面よりも更に室内側に存在し,かつ,背後壁の上端領域まで延設されることはないことは明らかであり,このことは,前記3〔被告の主張〕を裏付けるものである。)。 イ 「ほぼ同じ高さ」の客観的基準(ア) 「ほぼ」とは,「概略」の趣旨であるが(乙2),特許請求の範囲には「ほぼ同じ高さ」の客観的基準に関する記載はなく,特許請求の範囲の記載からは,「ほぼ同じ高さ」を充足するために,双方の上端の相違がどの程度であることを必要とするかについて把握することができない。また,本件出願の当初明細書等(乙4。以下「当初明細書等」という。)の全ての記載欄及び本件明細書等の発明の詳細な説明にも記載はない。 (イ) 「ほぼ同じ高さ」に関する説明が当初明細書等の発明の詳細な説明には記載されていないにもかかわらず,請求項4において「ほぼ同じ高さ」の要件を追加する手続補正が認容された。これは,当初明細書等の図面の範囲内である旨の判断がされたからに他ならない。 そして,当初明細書等における本件発明に対応する図14(本件明細書等の図14と同じ)に示す実施形態においては,別紙「図面A」に示すように,改修用下枠の上端と背後壁の上端との高さの差を示す距離,即 ち寸法は,背後壁の高さを示す距離,即ち寸 本件明細書等の図14と同じ)に示す実施形態においては,別紙「図面A」に示すように,改修用下枠の上端と背後壁の上端との高さの差を示す距離,即 ち寸法は,背後壁の高さを示す距離,即ち寸法に比し,約1/13.3であることを示している。本件特許の審査経過及び特許法17条の2第3項の規定を考慮するならば,「ほぼ同じ高さ」については,当初明細書等の図14を基準とすることが必要不可欠である。 とすれば,「ほぼ同じ高さ」の基準は,前者の寸法に比し後者の寸法が1/13未満をいうと解するほかない。 (ウ) また,上記(ア)からすれば,本件出願当時の技術常識に即して,「ほぼ同じ高さ」の基準に準拠すべきである。 平成7年11月当時,建設省住宅局住宅整備課監修の下に一般財団法人高齢者住宅財団が発行した「設計マニュアル」(乙27の1・2)は,高齢者対応の住宅施設として「バリアフリー」の住宅が普及しつつあることを指摘し,住宅内部の床及び出入口において,3mm以下の高さの差を「段差なし」,即ち高さの相違を「なし」と定義している。 上記に照らせば,「ほぼ同じ高さ」とは,3mm以下の「段差なし」の状態と解する以外にない。 (エ) ところで,本件出願前に公開された公報等の文献(乙28の1ないし4,乙14)によれば,3mm以下の高さ幅による「ほぼ同じ高さ」とする構成は,本件出願当時,周知の技術的事項であった。このことに照らすと,本件出願後において,3mm以下の背後壁と改修用下枠との段差を採用したとしても,構成要件Eの充足性の成否は不問とされなければならない。 (オ) 本件特許が,構成要件Eの「ほぼ同じ高さ」を付け加えることによって初めて特許査定をされたという出願経過に照らしても,「ほぼ同じ高さ」の具体的な意義を本件発明の作用効果との関係で考える い。 (オ) 本件特許が,構成要件Eの「ほぼ同じ高さ」を付け加えることによって初めて特許査定をされたという出願経過に照らしても,「ほぼ同じ高さ」の具体的な意義を本件発明の作用効果との関係で考えることは正当である。 そして,『かぶせ工法による建具取替え工事標準仕様と施工指針(2 002)』(乙36)の12頁には,かぶせ工法の標準仕様における「枠のレベル差」の取付け精度,すなわち枠の垂直方向における取付け精度は±2.0mm以内と記載されているから,かぶせ工法の一種である本件発明を実施するに際して不可避的に生ずる高さ方向の誤差の範囲は2. 0mmである。 また,従来技術において,背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差を肉厚部程度(3mm程度)に抑えていたものが多数存在することから,有効開口面積の減少を防ぐために同じ高さを指向する本件発明における「ほぼ同じ高さ」が3mmを超えることは考えられない。 したがって,「ほぼ同じ高さ」とは,既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差が2mm以内であることを意味するというべきであり,少なくとも3mmを超えることはないものと解すべきである。 百歩譲って,仮に「ほぼ同じ高さ」の範囲がもう少し広いものと解釈され得るとしても,10mm以上のものが含まれることなど到底考えられない。 ウ有効開口面積の高さの確保について本件明細書等の図1,3,6,10,11,13及び14に示す全ての実施形態が室外側案内レール撤去に基づく有効開口面積の確保を充足しているが,図10及び11の各実施形態は,Eの「ほぼ同じ高さ」を充足していない。 なぜならば,図10の状態については,「支持壁89が背後壁104より若干上方に突出する」(段落【0092】)と説明されており,支持壁(89)が「上方に突 ,Eの「ほぼ同じ高さ」を充足していない。 なぜならば,図10の状態については,「支持壁89が背後壁104より若干上方に突出する」(段落【0092】)と説明されており,支持壁(89)が「上方に突出する」ことによって背後壁(104)と「ほぼ等しい高さ」の状態ではなくなっているからである。このことは,図11においても同様である。また,「ほぼ等しい高さ」といえるためには,双方の上端の差が,図6及び14に示すように,背後壁の高さに比し桁違いに 少ないことを必要とするが,図10及び11では,その差は,背後壁の高さに比し桁違いに少ないとはいえないことが明らかである。 このように,本件明細書等の各実施形態のうち,「ほぼ同じ高さ」を充足していないものがあることは,室外側案内レールの撤去に基づく有効開口面積の高さの確保が,決してEの「ほぼ同じ高さ」の充足を意味しないことを裏付けている。 5 争点(1)オ(構成要件Fの「固定」の解釈)について〔原告らの主張〕(1) 構成要件Fは,改修用下枠の前壁が,ビスによって既設下枠の前壁に固定されていれば足りるのであって,構成要件Fの「固定されている」について限定を付する理由はない。 (2) 被告の主張に対する反論アこの点に関して被告は,構成要件Fに「改修用下枠の水平方向の位置が決定されている」との要件を付加して主張するが根拠がない。 イ被告は,構成要件Fのビスによる「固定」は,構成要件Cの「挿入」の最終段階に該当するとしているが,そのような構成要件ではないし,本件明細書等にもそのような記載はない。 本件明細書等をみると,段落【0055】には,「このように改修用引戸枠78および各竪枠用保持部材74,75および上枠用保持部材76が既設引戸枠63に装着されると,・・・室外73側 記載はない。 本件明細書等をみると,段落【0055】には,「このように改修用引戸枠78および各竪枠用保持部材74,75および上枠用保持部材76が既設引戸枠63に装着されると,・・・室外73側からビス112によって改修用下枠69を既設下枠56に固定し,」と記載されており,これによれば,ビス112が改修用下枠69を既設下枠56に固定するのは,改修用引戸枠78が既設引戸枠63に装着された後である。他方,装着については,段落【0019】に「本実施の形態の改修用引戸装置50は,・・・既設引戸枠63内に嵌まり込んだ状態で装着される。」と記載されている。 これらの記載から明らかなように,ビス112は,改修用引戸装置が既 設引戸枠内に嵌まり込んだ状態で装着された後に,室外73側から改修用下枠69を既設下枠56に固定するから,構成要件Fのビスによる「固定」は,構成要件Cの「挿入」の最終段階ではなく,「挿入」が終了した後で行われている。 ウ被告は,段落【0032】の記載をその主張の根拠としているが,同記載は,一旦装着された改修用引戸装置が,取付け作業が終了しないうちに既設下枠56に対して室外73側にずれてしまうことが防止できることを述べたにすぎず,もとより改修用引戸装置である本件発明に,かかる限定要件が付加される余地はない。 〔被告の主張〕(1) 構成要件Fの「固定されている」は,「固定されることによって,改修用下枠の水平方向の位置が決定されている」の意味である。 (2) 上記のとおり解釈すべき理由は次のとおりである。 ア構成要件Fのビスによる「固定」は,構成要件Cの「挿入」の最終段階に該当する。 構成要件Cの「挿入」の最終段階として当接及び当接位置の「決定」については,何ら規定していない。しかし,構成要件Fにお 構成要件Fのビスによる「固定」は,構成要件Cの「挿入」の最終段階に該当する。 構成要件Cの「挿入」の最終段階として当接及び当接位置の「決定」については,何ら規定していない。しかし,構成要件Fにおけるビスによる前壁同士の「固定」の場合には,改修用下枠の水平方向の位置を確定的に「決定」することができる。 そして,構成要件Dの「支持」は,構成要件Cの「挿入」を終了した後に実現されるが,構成要件Fのビスによる「固定」によって,改修用下枠の水平方向の最終的な位置が「決定」されることによって,構成要件Dの「支持」の位置も特定する以上,上記「固定」が構成要件Cの「挿入」の最終段階に該当するものとみなすことには,技術的合理性がある。 イ本件明細書等の発明の詳細な説明には,構成要件Fに関連して,「前壁80を室外73側から室内68側に向かって螺着されたビス112に よって既設下枠56の前壁102に固定するので,取付け作業中に改修用下枠69が既設下枠56に対して室外73側にずれてしまうことが防がれ,単にビス112を締付ければ,改修用下枠69を既設下枠56に対して位置決めされ,取付け作業の効率が向上される。」(段落【0032】。下線は被告による。)という記載がある。この記載から,本件発明では,ビスによる「固定」によって,改修用下枠69の既設下枠56に対する「位置決め」,すなわち,位置の「決定」が実現していることがわかる。 6 争点(1)カ(イ号装置の充足性)について〔原告らの主張〕(1) イ号装置の構成と本件発明の構成要件との対比アイ号装置の構成は別紙「イ号装置説明書」のとおりである。 イ前記第2,2(5)イのとおり,イ号装置は,構成要件A及びGを充足するとともに,後記ウ以下のとおり,構成要件BないしFも 件との対比アイ号装置の構成は別紙「イ号装置説明書」のとおりである。 イ前記第2,2(5)イのとおり,イ号装置は,構成要件A及びGを充足するとともに,後記ウ以下のとおり,構成要件BないしFも充足する。したがって,イ号装置は,本件発明の技術的範囲に属する。 ウ構成要件Bについてイ号装置は,前記既設下枠(56)の室内寄りに下枠受け材(106)(本件発明の取付け補助部材に該当)を設け,この下枠受け材を既設下枠の底壁(103)の最も室内側の端部に連なる背後壁(104)の立面(104a)にビス(110)で固着して取付けるものであるから,構成要件Bを具備する。 エ構成要件Cについてイ号装置は,この後に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠(72),アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠(70,71),アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも 高い底壁(81)を備えた改修用下枠(69)を有する改修用引戸枠(78)を,前記既設引戸枠内に室外側から挿入するものであるから,構成要件Cを具備する。 オ構成要件Dについてイ号装置は,その改修用下枠(69)の室外寄りを,スペーサ(301)を介して既設下枠(56)の室外寄りに接して支持すると共に,前記改修用下枠(69)の室内寄りを前記下枠受け材(106)(取付け補助部材に該当)で支持するものであるから,構成要件Dを具備する。 カ構成要件Eについてイ号装置は,前記背後壁の上端(104b)と改修用下枠の上端(69a)がほぼ同じ高さであるから,構成要件Eを具備する。 キ構成要件Fについてイ号装置は,前記改修用下枠の前壁(80)を,ビス(112)によって既設下枠の前 (104b)と改修用下枠の上端(69a)がほぼ同じ高さであるから,構成要件Eを具備する。 キ構成要件Fについてイ号装置は,前記改修用下枠の前壁(80)を,ビス(112)によって既設下枠の前壁(102)に固定するものであるから,構成要件Fを具備する。 (2) 被告の主張に対する反論ア前記1ないし5において被告が主張する構成要件の解釈はいずれも失当であるから,同解釈を前提とした充足性に係る主張はいずれも失当である。 イイ号装置の種類と充足性に関する主張についてイ号装置はいずれも本件発明の技術的範囲に属するものであり,構成要件該当性がないという被告の主張はいずれも次のとおり失当である。 (ア) イ-3号装置について被告は,イ-3号装置について,「たて骨」の存在を挙げ,改修用の枠が「引戸枠」に該当しないと主張するが,引違い部分の横にFIX部分が設けられていたとしても,製品全体が改修引戸装置として位置づけられることに何ら変わりはないから,被告の上記主張は失当である。 また,被告は,イ-3号装置は,本件発明の作用効果を奏していないなどとも主張するが,本件発明は,改修用下枠が既設下枠の案内レール上に直接乗載されることにより,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さの幅が小さくなる問題を,既設下枠の室外側案内レールを撤去した既設下枠に改修用下枠を乗載することで解決し,広い開口面積を確保するとの作用効果を得たのであるから,改修用引戸枠内にFIX部分が存在することによって,本件発明の作用効果がなくなるなどということもない。被告も,イ号装置を含むHOOK工法のカタログ(乙32・2頁)に,HOOK工法では「有効開口を広くとることが可能」と記載し,改修前後の開口面積に変わりはないことを顧客吸引力の要素としてアピールし 。被告も,イ号装置を含むHOOK工法のカタログ(乙32・2頁)に,HOOK工法では「有効開口を広くとることが可能」と記載し,改修前後の開口面積に変わりはないことを顧客吸引力の要素としてアピールしているのであるから,イ-3号装置は,本件発明の作用効果を奏していることは明らかである。 (イ) イ-5号装置について被告は,イ-5号装置について,「無目」の存在を挙げ,「改修用の枠が「引戸枠」に該当しない。」と主張するが,引違い部分の上部にFIX部分が設けられていたとしても,製品全体が改修引戸装置として位置づけられることに何ら変わりはない。また,本件発明において,引違い部分が改修引戸装置の上枠に接していなければならないとする記載は存在しないのであって,被告主張の誤りは明らかである。 また,被告はここでも作用効果について述べるが,上記(ア)同様に失当である。 (ウ) イ-6号装置についてイ-6号装置は,「FIX」部分が下部に設けられている点及びイ-3号装置と同じくFIX部分用のアタッチメントが取り付けられている点がイ-5号装置と異なるが,イ-6号装置においては,FIX部分用のアタッチメントが改修用下枠に取り付けられているのであり,他の点 は上記(イ)で述べたところと同じである。 (エ) イ-7号装置についてイ-7号装置は,カタログ(乙32・113頁「段窓バリエーション」の左側図面と無目バリエーション1,2参照)記載のとおり,イ-5号装置やイ-6号装置のFIX部分を引違い部分とした点が異なるだけで,あとは同じである。 (オ) 構成要件Eについて前記4〔原告らの主張〕のとおり,被告の主張には理由がない。 ウ現場の施工形態により技術的範囲から除かれるものがある旨の主張について(ア) 被告は,侵害論の審理が ) 構成要件Eについて前記4〔原告らの主張〕のとおり,被告の主張には理由がない。 ウ現場の施工形態により技術的範囲から除かれるものがある旨の主張について(ア) 被告は,侵害論の審理が終了した後になって,個々の施工現場を調査したところ技術的範囲に属さない物件が判明したなどと主張したが,侵害論のやり直しともいうべきものであって原告らとしては上記主張を認めることはできない。 (イ) その点を措くとしても,被告がその主張を裏付けるものとして提出した被告従業員A作成の陳述書(乙59,75)及び製品手配図一式(乙72,73)をみると,上記製品手配図は,被告が調査した物件のうち2例を示すものにすぎない上,客先の承認があるか否かも不明であって,同図記載のとおり施工されたということはできず,また,被告のいう「欠如事由」の存否は被告が独自に判断したものにすぎず,後記(ウ)のとおり,正確性が担保されていないというものであって,およそ信憑性を欠く。 (ウ) 被告の主張する各欠如事由に係る反論は次のとおりである。 ① 欠如事由A1について本件発明におけるレールを切断する目的・効果からすれば,レールを折り曲げることも実質的に技術的範囲に属する(折り曲げただけで止めるか切断まで及ぶかは,改修装置の目的,効果から変わるところ がない)。 ② 欠如事由A2について被告は,抽象的に主張するのみで証拠を提出しておらず,被告判断の正否を論ずることができない。 ③ 欠如事由B1について本件発明では,「既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け」,「改修用下枠の室内寄りが,取付け補助部材で支持され」と記載されているのみであって,取付け補助部材の大きさや構成点数等は限定されていない。この点に関する被告の主張は,独自の限定解釈に基づくも 」,「改修用下枠の室内寄りが,取付け補助部材で支持され」と記載されているのみであって,取付け補助部材の大きさや構成点数等は限定されていない。この点に関する被告の主張は,独自の限定解釈に基づくものであって失当である。 ④ 欠如事由B2について被告の挙げる工事例(乙42添付資料②-3,④-2)は一例にすぎないし,被告独自の限定解釈をした上で主張している可能性も否定できない。 ⑤ 欠如事由Dについて本件発明では,「改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持され」と記載されているのみであって,既設下枠に対するスペーサの詳細な接触箇所や,スペーサの構成点数・形状等は限定されていないのであるから,この点に関して被告は,被告独自の限定解釈に基づく主張をしているにすぎない。 ⑥ 欠如事由Fについて被告は,構成要件に独自の要件を付加して,欠如事由があると主張している可能性がある。たとえば,被告が,技術的範囲に属しないと主張する工事の図面(乙37)をみると,改修前から存在していたと推測されるS字状部材にビスが固着しているところ,S字状部材は既 存下枠の一部というべきであるから,技術的範囲に属することは明らかである。 〔被告の主張〕(1) イ号装置の構成と本件発明の構成要件との対比アイ号装置は,構成要件BないしFを充足しない。イ号装置全般について,前記1ないし5の構成要件の解釈に基づき,次のとおり主張する。 イ構成要件Bについてイ号装置においては,下枠受け材(106)の上側延設部(106b)は,背後壁の立面(104a)よりも更に室内側の領域である横向片(104c)の上側に延設されており,構成要件Bの「室内寄り」の領域範囲を超えている。 また,イ号装置では,下 上側延設部(106b)は,背後壁の立面(104a)よりも更に室内側の領域である横向片(104c)の上側に延設されており,構成要件Bの「室内寄り」の領域範囲を超えている。 また,イ号装置では,下枠受け材(106)を安定した不動状態とするためには,背後壁の立面(104a)に対するビス(110)による固着のみならず,背後壁の横向片(104c)におけるビス(113)による固着を必要不可欠としている。現に,JIS規格に即した試験の結果を記載した被告作成の「品質性能試験報告書」及び「品質性能試験に関する補足説明書(1)」(乙9の1・2,乙10)によれば,所定のJIS規格に基づく耐風圧試験において,室外側への負圧2800Paに至った場合には,水平方向の略中央位置及びその近傍における改修用下枠(69)と下枠受け材(106)との嵌着は,上記ビス(113)による固着が欠落した場合には,外れた状態に至り,安定した不動状態を維持することが不可能となった。なお,サッシ・ドアは耐風圧性,気密性及び水密性について,JIS規格の基準を満たす必要がある。 したがって,イ号装置は構成要件Bを充足しない。 ウ構成要件Cについて構成要件Cの「挿入」は,改修用引戸枠の室外側から室内側へ向かう略 直線移動によって実現している。 しかし,イ号装置の改修用引戸枠(78)は,略直線状の移動ではなく,略円運動を伴う回動である。また,改修用引戸枠(78)は,上記回動の後に,下側に移動しているが,このような移動は室外側から室内側への移動に該当しない。さらに,回動及びその後の下側への移動という複数の移動をしており,構成要件Cの「挿入」のような室外側から室内側への単一の移動ではない。 また,イ号装置においては,上記の各移動によって改修用下枠(69)の突起部(69 後の下側への移動という複数の移動をしており,構成要件Cの「挿入」のような室外側から室内側への単一の移動ではない。 また,イ号装置においては,上記の各移動によって改修用下枠(69)の突起部(69b)と下枠受け材(106)の立ち上がり部(106a)との「嵌着」という格別の結合関係を必要不可欠としているが,構成要件Cはこのような結合関係は必要としていない。 したがって,イ号装置は,構成要件Cを充足しない。 エ構成要件Dについてイ号装置においては,「取付け補助部材」が採用されておらず,「取付け補助部材で支持」することは実現されていない。しかも,改修用下枠の「室内寄り」の領域が支持されていない。 したがって,イ号装置は構成要件Dを充足しない。 オ構成要件Eについて背後壁の上端と改修用下枠の上端が「ほぼ同じ高さ」といえるには,前記背後壁の高さを示す寸法に比し,双方の高さの差が1/13未満の状態でなければならないから,背後壁の高さ寸法が40mmであるイ号装置の場合には,その高さの差は約3.1mm(40/13≒3.1)未満でなければならない。ところが,イ号装置ではその差は5mmである。 したがって,イ号装置は構成要件Eを充足しない。 カ構成要件Fについてイ号装置は,突起部(69b)と立ち上がり部(106a)との嵌着に よって,改修用引戸枠(78)の回動における改修用下枠(69)の水平方向の位置が決定されており,ビス(112)による固着は,改修用下枠(69)の水平方向の位置の決定を行っていない。すなわち,イ号装置では,ビス(112)による固着は,改修用下枠(69)の前壁(80)と既設下枠(56)の前壁(102)との結合を堅固な状態とすることを目的としており,構成要件Fの「固定」の技術的趣旨を発揮するに至ってい ビス(112)による固着は,改修用下枠(69)の前壁(80)と既設下枠(56)の前壁(102)との結合を堅固な状態とすることを目的としており,構成要件Fの「固定」の技術的趣旨を発揮するに至っていない。 したがって,イ号装置は構成要件Fを充足しない。 (2) イ号装置の種類と充足性ア別紙「HOOK工法商品体系図」記載のとおり,商品名を「HOOK工法」とする改修引戸装置には,同体系図の「製品名」欄記載の番号①ないし⑦に対応するイ-1ないしイ-7号装置の7種類があるが(うちイ-2及びイ-4号装置はイ号装置ではない。),それぞれの装置の中でも,カタログ(乙32)には記載されていないが,下枠の形状などが異なる枠種タカタログには,主に既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差が5mmのものが掲載されているが,同カタログ116ページにこれが13.5mmの製品の図面が記載されていることからわかるように,すべてのイ号装置について5mmなのではなく,枠種タイプが「標準外HOOK工法商品以外」のものには,5mm,13.5mm,19mm,25mmの4タイプがあり,さらには異なるもの(同別紙の「既設枠上端からの突出量(mm)」の欄参照)があり,枠種タイプが「標準外HOOK工法商品」の場合には,別紙「HOOK工法商品体系図」記載のとおり,さらに多数のタイプがあり,かつ,高さの差を特定できなかった製品もある。 なお,後記イ以下で述べるとおり,イ号装置は,本件発明の技術的範囲に属さないことが明らかであるから,これらの各装置における枠種タイプ による分類については記載を省略する。 イイ号装置が本件発明の技術的範囲に属さないことについて(ア) イ-3号装置(袖FIX付き引違い窓2枚建)についてイ-3号装置は,下図のとおり,改 による分類については記載を省略する。 イイ号装置が本件発明の技術的範囲に属さないことについて(ア) イ-3号装置(袖FIX付き引違い窓2枚建)についてイ-3号装置は,下図のとおり,改修用枠の内側がたて骨と呼ばれる部材によって左右に分けられており,引違い窓が左右方向の一方の端部から他方の端部まで動かない(たて骨を越えて動かない)ため,改修用竪枠の左右どちらか一方は引違い窓と接しない。イ-3号装置では,改修用の枠はたて骨と相まって引違い窓を囲んでおり,改修用の枠はそれ自体で独立して引違い窓を囲んでいるものではないから,それ自体で独立して「引戸枠」としての機能を果たすものではなく,「引戸枠」に該当しない。 したがって,イ-3号装置は,構成要件Cの「引戸枠」を有しない。 仮に,イ-3号装置が形式的に構成要件Cを充足するとしても,本件発明の作用効果は,「有効開口面積が減少することがなく,広い開口面積が確保できる」というものであるところ,イ-3号装置では,改修用の枠内の一部分はFIX窓(いわゆるはめ殺しの窓)になり開くことができないから,有効開口面積は改修前と比較して減少することになり,本件発明の作用効果を奏しない。 よって,イ-3号装置は本件発明の技術的範囲に属さない。 (イ) イ-5号装置(上段FIX付き引違い窓2枚建)イ-5号装置は,下図のとおり,改修用の枠の内側が無目と呼ばれるたて骨 部材(上下の構造が異なる段窓を作る際に,上段窓と下段窓との間に存在する部材のことを指す。)によって上下方向に分けられており,引違い窓が改修用の枠の上下方向の一部分(無目よりも下の部分)にしかなく,改修用枠の上枠は引違い窓と接することはない。イ-5号装置では,改修用の枠は無目と相まって引違い窓を囲んでいるもの れており,引違い窓が改修用の枠の上下方向の一部分(無目よりも下の部分)にしかなく,改修用枠の上枠は引違い窓と接することはない。イ-5号装置では,改修用の枠は無目と相まって引違い窓を囲んでいるものであり,改修用の枠はそれ自体で独立して引違い窓を囲んでいるものではないから,それ自体で独立して「引戸枠」としての機能を果たすものではなく,「引戸枠」に該当しない。 したがって,イ-5号装置は,構成要件Cの「引戸枠」を有しない。 また,仮に,イ-5号装置が形式的に構成要件Cを充足するとしても,イ-3号装置と同様に本件発明の作用効果を奏しない。 よって,イ-5号装置は本件発明の技術的範囲に属さない。 (ウ) イ-6号装置(下段FIX付き引違い窓2枚建)イ-6号装置は,下図のとおり,改修用の枠の内側が無目によって上下方向に分けられており,引違い窓が改修用の枠の上下方向の一部分(無目よりも上の部分)にしかなく,改修用枠の下枠は引違い窓と接することはない。イ-6号装置では,改修用の枠は無目と相まって引違い窓を囲んでいるものであり,改修用の枠はそれ自体で独立して引違い窓を囲んでいるものではないから,それ自体で独立して「引戸枠」としての機無目 能を果たすものではなく,「引戸枠」に該当しない。 したがって,イ-6号装置は,構成要件Cの「引戸枠」を有しない。 また,仮に,イ-6号装置が形式的に構成要件Cを充足するとしても,イ-3号装置と同様に本件発明の作用効果を奏しない。 よって,イ-6号装置は本件発明の技術的範囲に属さない。 (エ) イ-7号装置(上下段引違い窓2枚建)イ-7号装置は,下図のとおり,改修用の枠の内側が無目によって上下方向に分けられており,無目が上段の引違い窓の下部と接し,下段の引違い窓の上部と接して (エ) イ-7号装置(上下段引違い窓2枚建)イ-7号装置は,下図のとおり,改修用の枠の内側が無目によって上下方向に分けられており,無目が上段の引違い窓の下部と接し,下段の引違い窓の上部と接している。すなわち,この製品においては,無目が引戸枠としての機能を果たしており,上段下段の引違い窓をそれぞれ見たときに,それぞれとの関係で改修用下枠,改修用上枠及び2つの改修用竪枠のみでは引戸枠としての機能を果たすものではなく,「引戸枠」に該当しない。 したがって,イ-7号装置は,構成要件Cの「引戸枠」を有しない。 無目 さらに,イ-7号装置では,無目の存在により通行は困難となり,有効開口面積は改修前より減少することになる。 したがって,仮にイ-7号装置が構成要件C等を形式的には充足するとしても,本件発明の作用効果を奏しないものであるから,本件発明の技術的範囲に属さない。 (オ) 構成要件Eの「ほぼ同じ高さ」について前記4〔被告の主張〕のとおり,背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差は3mm以内でなければ「ほぼ同じ高さ」には当たらないから,5mm以上のタイプの製品しか存在しないイ号装置は構成要件Eを充足しない。 仮に「ほぼ同じ高さ」の範囲がもう少し広いとしても,10mm以上のものが含まれることなど到底考えられないから,イ号装置のうち,背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差が,13.5mmのタイプ,19mmのタイプ及び25mmのタイプについては,構成要件Eを充足しない。 ウ現場の施工形態により技術的範囲から除かれるものについて(ア) 上記のほか,イ号装置には,現場の施工態様により,本件発明の技術的範囲に属さないものがあり,これには次の六つの類型がある。 ① 欠如事由A1無目 かれるものについて(ア) 上記のほか,イ号装置には,現場の施工態様により,本件発明の技術的範囲に属さないものがあり,これには次の六つの類型がある。 ① 欠如事由A1無目 既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去していない類型② 欠如事由A2既設下枠の形状,材質等の関係で,アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠を有しない既設引戸枠である類型③ 欠如事由B1既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設けていない類型④ 欠如事由B2取付け補助部材が,既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付けられていない類型⑤ 欠如事由D改修用下枠の室外寄りが,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されていない類型⑥ 欠如事由F改修用下枠の前壁が,ビスによって既設下枠の前壁に固定されていない類型(イ) イ号装置について,平成18年10月1日から平成27年11月30日までに販売した窓数全●(省略)●のうち,●(省略)●に相当する261件の工事の製品手配図を調査したところ,いずれか一つ又は複数の構成要件を充足せず,本件発明の技術的範囲に属さないことが明らかな製品は,●(省略)●であった。構成要件欠如事由の内訳は次表(省略)のとおりである。 7 争点(1)キ(ロ号装置の充足性)について〔原告らの主張〕(1) ロ号装置の構成と本件発明の構成要件との対比 アロ号装置の構成は別紙「ロ号装置説明書」のとおりである。 イ前記第2,2(5)イのとおり,ロ号装置は構成要件A,Gを充足するが,ウ以下のとおり,構成要件BないしFも充足するので,ロ号装置は,本件発明の技術的範囲に属する。 装置説明書」のとおりである。 イ前記第2,2(5)イのとおり,ロ号装置は構成要件A,Gを充足するが,ウ以下のとおり,構成要件BないしFも充足するので,ロ号装置は,本件発明の技術的範囲に属する。 ウ構成要件Bの充足性ロ号装置は,前記既設下枠(56)の室内寄りに下枠補助材(106)(本件発明の取付け補助部材に該当)を設け,この下枠補助材を既設下枠の底壁(103)の最も室内側の端部に連なる背後壁(104)の立面(104a)にビス(110)で固着して取付けるものであるから,構成要件Bを具備する。 エ構成要件Cの充足性ロ号装置は,この後に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠(72),アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠(70,71),アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁(81)を備えた改修用下枠(69)を有する改修用引戸枠(78)を,前記既設引戸枠内に室外側から挿入するものであるから,構成要件Cを充足する。 オ構成要件Dの充足性ロ号装置は,その改修用下枠(69)の室外寄りを,スペーサ(301)を介して既設下枠(56)の室外寄りに接して支持すると共に,前記改修用下枠(69)の室内寄りを前記下枠補助材(106)(本件発明の取付け補助部材に該当)で支持するものであるから,構成要件Dを充足する。 カ構成要件Eの充足性ロ号装置は,前記背後壁の上端(104b)と改修用下枠の上端(69a)がほぼ同じ高さであるから,構成要件Eを充足する。 キ構成要件Fの充足性ロ号装置は,前記改修用下枠の前壁(80)を,ビス(112)によって既設下枠の前壁(102)に固定するものであるから,構成要件Fを充足 要件Eを充足する。 キ構成要件Fの充足性ロ号装置は,前記改修用下枠の前壁(80)を,ビス(112)によって既設下枠の前壁(102)に固定するものであるから,構成要件Fを充足する。 (2) 被告の主張に対する反論ア前記1及び3ないし5において被告が主張する構成要件の解釈はいずれも失当であるから,同解釈を前提とした充足性に係る主張はいずれも失当である。 イロ号装置の種類と充足性についてロ号装置はいずれも本件発明の技術的範囲に属するものであり,構成要件該当性がないという被告の主張はいずれも次のとおり失当である。 (ア) ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置についてそれぞれ,イ-3,イ-5及びイ-7号装置について述べた理由と同じ理由により,いずれも,被告の主張には理由がない。 (イ) ロ-5号装置についてイ-6号装置について述べた理由と同じ理由により,構成要件Cを充足しない旨の被告の主張には理由がない。 また,ロ-5号装置の下枠の構造は,カタログ(乙34・19頁)に記載されているが,これは別紙物件目録ロ-5記載の図のとおりであり,ロ-2号装置と同じ構造であるから,構成要件B及びFを充足しない旨の被告の主張は失当である。 (ウ) 構成要件Eについてイ号装置について述べた理由と同じ理由により,被告の主張には理由がない。 (エ) 下枠タイプB及びCについて原告らは,当初,被告が主張するとおりの納まりであることを前提と して,ロ-1号装置の下枠タイプB及びCについては損害賠償の対象から外すことを認めていた。 ところが,被告は,陳述書(乙42)の添付資料②-2において,ロ号装置の下枠タイプBのものとして,次の図(以下「乙42②-2図」という。)を開示した。 しかし,乙42② とを認めていた。 ところが,被告は,陳述書(乙42)の添付資料②-2において,ロ号装置の下枠タイプBのものとして,次の図(以下「乙42②-2図」という。)を開示した。 しかし,乙42②-2図記載の構成は,被告が主張する下枠タイプBの図のものとは異なるものであり,「改修下枠の前壁を既設下枠の前壁にビス止めしない形で用いられる」ものではない。被告は,下枠タイプB及びCは,施工態様とは関係なく,構成要件Fを充足しないと主張していたが,上記のとおり,下枠タイプBにおいても構成要件Fを充足するものが存在することが明らかとなった。 したがって,下枠タイプB及びCに係る被告の主張は真実に反する可能性が否定できないことから,原告らは,下枠タイプB及びCについてもロ号装置として本件審理の対象とするものとする。 また,被告は,原告らがロ-1号装置の下枠タイプB及びCについて損害賠償の対象から除外を認めた後に,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置にも下枠タイプB及びCがあり,これらについても除外を認めるべきなどと主張するに至ったが,そのような下枠は被告の商品カタログに掲載されていないこと及び上記のような信義にもとる審理経過に照らすと,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプB及びCについて,損害賠償の対象から外すことには到底同意できない。 ウ現場の施工形態により技術的範囲から除かれるものについてイ号装置について述べたとおり,被告の主張には理由がないが,さらに,ロ号装置について下枠タイプB及びCを除外して行った被告の現場施工調査には,信用性がないといわざるを得ない。 〔被告の主張〕(1) ロ号装置の構成と本件発明の構成要件との対比アロ号装置は,構成要件B及びDないしFを充足しない。ロ号装置全般について,前記1 には,信用性がないといわざるを得ない。 〔被告の主張〕(1) ロ号装置の構成と本件発明の構成要件との対比アロ号装置は,構成要件B及びDないしFを充足しない。ロ号装置全般について,前記1及び3ないし5の構成要件の解釈に基づき,次のとおり主張する。 イ構成要件Bについてロ号装置の下枠補助材(106)の場合には,水平方向脚部(106a)の室外側端は,室内側案内レール(115)と背後壁の立面(104a)との間の距離の約1/4程度室内側案内レール(115)よりも室外側に突出しており,室内側案内レールよりも明らかに室外側の位置にあり,到底室内側案内レール(115)の近傍の位置にはない。 構成要件Bにおいては,取付け補助部材は既設下枠の寸法,形状に応じて寸法,形状を変更することを予定しているのに対し,ロ号装置においては,当該変更を予定していない。 したがって,ロ号装置は構成要件Bを充足しない。 ウ構成要件Cについてロ-1号装置が構成要件Cを充足することは争わないが,後記(2)イのとおり,ロ-2,ロ-4,ロ-5及びロ-6号装置は構成要件Cを充足しない。 エ構成要件Dについてロ号装置は,下枠補助材(106)による「支持」を安定した不動状態とするために,室内側案内レール(115)に対しビス(113)によって固着された下枠受け材(116)によって,下枠補助材(106)の水平方向脚部(106a)の更に下側からの支持を必要不可欠としている。 現に,JIS規格に即した試験の結果を記載した被告作成の「品質性能試験報告書」及び「品質性能試験に関する補足説明書(2)」(乙11の1・2,乙12)によれば,所定のJIS規格に基づく水密性試験において,中央値を500Paとし,上限値を750Paとし,下限値を250Paとす 」及び「品質性能試験に関する補足説明書(2)」(乙11の1・2,乙12)によれば,所定のJIS規格に基づく水密性試験において,中央値を500Paとし,上限値を750Paとし,下限値を250Paとするような脈動圧を10分間加えた場合には,前記下枠受け材(116)による下側からの支持を欠落した状態では,前記水平方向脚部(106a)の室外側領域がやや下側に傾斜することを原因として,改修用下枠(69)の室内側上端(69c)と新設アルミ額縁(B)との間に隙間が生じ,漏水が発生していた。 したがって,ロ号装置は構成要件Dを充足しない。 オ構成要件Eについて背後壁の上端と改修用下枠の上端が「ほぼ同じ高さ」といえるためには,前記背後壁の高さを示す寸法に比し,双方の高さの差が1/13未満の状態でなければならないから,背後壁の高さ寸法が40mmであるロ号装置の場合には,その高さの差は約3.1mm(40/13≒3.1)未満でなければならない。ところが,ロ号装置ではその差は5mmである。 したがって,ロ号装置は構成要件Eを充足しない。 カ構成要件Fについてロ号装置の場合には,改修用下枠(69)の室内寄りの壁部下端が,下枠補助材(106)の水平方向脚部(106a)における突起(106b)に当接することによって,前記改修用引戸枠(78)の前記改修用下枠(69)の前記挿入における水平方向の位置が決定されており,ビス(112)による固着は,改修用下枠(69)の水平方向の位置の決定を行っていない。 すなわち,ロ号装置のビス(112)による固着は,改修用下枠(69)の前壁(80)と既設下枠(56)の前壁(102)との結合を堅固な状態とすることを目的としており,構成要件Fの「固定」の技術的趣旨を発揮するに至っていない。 したがって 固着は,改修用下枠(69)の前壁(80)と既設下枠(56)の前壁(102)との結合を堅固な状態とすることを目的としており,構成要件Fの「固定」の技術的趣旨を発揮するに至っていない。 したがって,ロ号装置は構成要件Fを充足しない。 (2) ロ号装置の種類と充足性ア別紙「HOOKSLIM商品体系図」記載のとおり,商品名を「HOOKSLIM」とする改修引戸装置には,同体系図の「製品名」欄記載の番号①ないし⑥に対応してロ-1ないしロ-6号装置の6種類があるが(うちロ-3号装置はロ号装置ではない。),それぞれの装置の中でも,カタログ(乙34)には記載されていないが,同体系図の「下枠タイプ」欄記載のとおり,下枠の形状などが異なる枠種タイプA,B及びCの3種類が存在するカタログには,主に既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差が5mmのものが掲載されているが,同体系図の「既設枠上端からの突出量(mm)」の欄記載のとおり,5mm及び10mmの製品があり,さらに異なるものがある。 イロ号装置が本件発明の技術的範囲に属しないことについて(ア) ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置についてロ-2,ロ-4及びロ-6号装置は,それぞれ,イ-3,イ-5及びイ -7号装置と同じ理由により,構成要件Cを充足せず,本件発明の作用効果を奏しない。 したがって,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置は本件発明の技術的範囲に属さない。 (イ) ロ-5号装置についてロ-5号装置もイ-6号装置と同じ理由により,構成要件Cを充足しない。 加えて,ロ-5号装置は,取付け補助部材に該当する部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付けていない上に改修用下枠の前壁を既設下枠の前壁にビス止めしていない。 えて,ロ-5号装置は,取付け補助部材に該当する部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付けていない上に改修用下枠の前壁を既設下枠の前壁にビス止めしていない。 したがって,構成要件B「…その取付け補助部材が…背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり,…」及び構成要件F「前記改修用下枠の前壁が,ビスによって既設下枠の前壁に固定されている」を充足しないことが明らかである。なお,原告らは,別紙物件目録ロ-5によりロ-5号装置を特定しているが,被告が製造・販売していたロ-5号装置の下枠部分は,ロ-3号装置の下枠部分と同じ構造であり(乙34・39頁,乙68),原告らが主張する構造とは異なる。 そして,仮に,ロ-5装置が形式的に上記各構成要件を充足するとしても,イ-6号装置と同様に本件発明の作用効果を奏しない。 よって,ロ-5号装置は本件発明の技術的範囲に属さない。 (ウ) 構成要件Eについてイ号装置と同じ理由により,ロ号装置についても構成要件Eを充足しない。 (エ) 下枠タイプB及びCについて下枠タイプにはA,B及びCの3タイプがあるが,このうち,下枠タ イプB及びCについては,改修用下枠の前壁と既設下枠の前壁とをビスで固定することを予定していない構造を有しているから,本件発明の技術的範囲に属さない。下枠タイプB及びCの構造は次のとおりである。 ① 下枠タイプBの製品は,下図のとおり改修用下枠の前壁を既設下枠の前壁にビス止めしない形で用いられるから,構成要件Fを充足しない。 なお,原告らは,陳述書(乙42)の添付資料②-2記載のロ号装置の下枠タイプBの図面が,被告の主張する上図と異なる旨指摘する。 しかし,上記添付資料②-2記載の例では,既設下枠にいくつかの特殊な事情が ,原告らは,陳述書(乙42)の添付資料②-2記載のロ号装置の下枠タイプBの図面が,被告の主張する上図と異なる旨指摘する。 しかし,上記添付資料②-2記載の例では,既設下枠にいくつかの特殊な事情があるため,特殊な施工になったものであり,ロ号装置の下枠タイプBの施工としては想定されていないものである。このことは,既設下枠の前壁とビスで固定するためのものではなく,既設下枠を隠して意匠性を良くするためのものである「垂下片」と既設下枠の前壁とがビスで固定されている上に,室外側から,既設下枠の前壁,「垂下片」という順に並ぶというかぶせ工法では通常考えられない施 工態様になってしまっていることからも明らかである。 したがって,上記資料②-2の図は,下枠タイプBが本件発明の技術的範囲に属さないという被告の上記主張に反するものではない。 ② 下枠タイプCの製品は,下図のとおり改修用下枠の前壁を既設下枠の前壁にビス止めしない形で用いられるから,構成要件Fを充足しない。 ウ現場の施工形態により技術的範囲から除かれるものについて(ア) ロ号装置についても,現場の施工態様により,本件発明の技術的範囲に属さないものがあり,これにはイ号装置と同じく六つの類型がある。 (イ) ロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプAについて,平成18年10月1日から平成26年10月31日までに販売した窓数●(省略)●のうち,●(省略)●に相当する89件の工事の製品手配図の調査を行ったところ,いずれか又は複数の構成要件を充足せず,本件発明の技術的範囲に属さないことが明らかな製品は,●(省略)●であった。本件発明の技術的範囲に属さないことが明らかな製品の構成要件 欠如事由の内訳は次表(省略)のとおりである。 8 争点(2)(本件 に属さないことが明らかな製品は,●(省略)●であった。本件発明の技術的範囲に属さないことが明らかな製品の構成要件 欠如事由の内訳は次表(省略)のとおりである。 8 争点(2)(本件特許権が特許無効審判により無効にされるべきものか否か)について〔被告の主張〕(1) 本件特許は,特許法36条6項2号,同項1号,同条4項1号及び同法29条2項に違反して特許されたものであり,特許無効審判により無効にされるべきものに当たるから,原告らは,被告に対して本件特許権を行使することはできない。なお,被告は,無効理由について詳細な主張をすることを希望したが,裁判所の訴訟指揮に従って,詳細な無効理由の主張を記載した平成27年12月4日付け第9準備書面及び平成28年7月13日付け第18準備書面は陳述しないものとされた。 (2) 明確性要件(特許法36条6項2号)違反について本件明細書等の特許請求の範囲には,「…前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり…」と記載されている。しかし,本件明細書等の記載や実施例を参酌しても,既設下枠の背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差がどの程度であれば,「ほぼ同じ高さ」に含まれるのかが明確でない。また,この点についての技術常識は存在しない。これらの点を踏まえると,本件特許においては特許請求の範囲に記載された特許発明が明確ではないから,本件特許は特許法36条6項2号に違反して特許されたものである。 (3) サポート要件(特許法36条6項1号)違反について本件明細書等の発明の詳細な説明(段落【0018】)には,「有効開口面積が減少することがなく,広い開口面積が確保できる」という作用効果を奏しない発明が含まれている。そのため,発明の詳細な説明全体を通じて,何が特許発明として記載 (段落【0018】)には,「有効開口面積が減少することがなく,広い開口面積が確保できる」という作用効果を奏しない発明が含まれている。そのため,発明の詳細な説明全体を通じて,何が特許発明として記載されているのか評価することができない。また,そもそも本件明細書等には,本件発明の実施例,すなわち本件発明の構成の全 てを備えた実施形態は開示されていない。したがって,本件特許においては,特許発明が発明の詳細な説明に記載されていると認めることはできないから,本件特許は特許法36条6項1号に違反して特許されたものである。 (4) 実施可能要件(特許法36条4項1号)違反について上記(2)のとおり,本件明細書等の記載から発明を明確に把握する事ができないから,当業者が本件発明を実施しようとしても,その発明をどのように実施するのかが理解できない。したがって,本件特許は特許法36条4項1号に違反して特許されたものである。 (5) 進歩性欠如(特許法29条2項)について仮に,上記(2)ないし(4)の無効理由が存在しないとしても,本件発明は,実用新案公報昭58‐45431(乙39:当該実用新案の公報)の第1図に記載された発明に本件特許の出願時の周知技術や公知文献の記載内容等を組み合わせることによって,当業者が本件特許の出願時に容易に発明することができたものである。したがって,本件特許は,特許法29条2項に違反してなされたものである。 なお,被告は,他の施工図面等を主引用例とする進歩性欠如の主張についても検討している。 〔原告らの主張〕否認し,争う。本件の審理については,平成27年2月26日の弁論準備手続の段階で侵害論の審理を終了し,それ以降これに関する主張は許されないとされたうえで,同年4月8日の期日において裁判所から心証を 否認し,争う。本件の審理については,平成27年2月26日の弁論準備手続の段階で侵害論の審理を終了し,それ以降これに関する主張は許されないとされたうえで,同年4月8日の期日において裁判所から心証を告げられた上,損害論の審理に入るとの進行で進められてきたものである。したがって,侵害論に関する審理が終了したことを確認された後において初めて主張された無効理由に関する被告の主張は,上記訴訟進行の約束に反し,また,時機に後れた攻撃防御方法である。 9 争点(3)(補償金請求権の存否及びその額)について 〔原告らの主張〕(1) 原告らは,平成18年10月5日,被告に対し,本件特許の出願公開に基づく警告をし,平成23年10月7日に本件特許は登録された。被告は,上記警告前である平成18年5月1日からイ号装置を製造・販売し,平成22年6月1日からロ号装置を製造・販売している。そこで,上記警告から登録までの期間の被告の本件特許侵害行為について,補償金を請求する(特許法65条1項)。なお,原告らは,本件特許を2分の1ずつ保有するから,原告ら各自は,補償金請求権を2分の1ずつ有する。 (2) 補償金請求の対象期間及び請求額は次のとおりである。なお,被告各装置の販売額が,被告が主張するとおり,別紙「HOOK製品売上」記載の額であることは争わない。同別紙記載の67期(平成23年6月1日~平成24年5月末日)については3分の1を補償金請求期間の売上げとして,3分の2を損害賠償請求期間の売上げであるものとして算出した。 アイ号装置 (平成18年10月5日~平成23年10月6日)・売上高●(省略)●・実施料率 5%・補償金請求額●(省略)●イロ号装置 (平成22年6月1日~平成23年10月6日)・売 0月5日~平成23年10月6日)・売上高●(省略)●・実施料率 5%・補償金請求額●(省略)●イロ号装置 (平成22年6月1日~平成23年10月6日)・売上高●(省略)●・実施料率 5%・補償金請求額 ●(省略)●ウ補償金請求額(合計)6216万3000円(原告ら各自3108万1500円)(3) 実施料率についてア特許法65条1項の補償金額は,同法102条3項の実施料率に準じて定められる。本件では,通常相場よりも高く認定されるべきであるが,通 常相場については,①「実施料率〔第5版〕」(発明協会研究センター編)(甲14の1)によれば,「建築技術」の技術分野において最頻値が3%,平均値が3.5%であり,②経済産業省知的財産政策室編「ロイヤルティ料率データハンドブック」(甲14の2)によれば,「建築物」の分野においては3ないし4%未満が最も多いが,5ないし6%未満も多く存在する。これらの数値を参酌し,また平成10年の法改正により特許法102条3項から「通常」の用語が削除された経緯及び趣旨を考慮すれば,侵害を前提にした本件における実施料率は,5%を下回るものではないことが明らかである。 イ被告の主張に対する反論被告は,本件特許が無効であるとか,本件発明の作用効果が公知であるなどとして3%の実施料率を主張するが,本件特許についてはすでに2度にわたり無効審判において不成立とされ,審決取消請求訴訟が棄却されて確定しており,被告も本件訴訟において当初から無効論(特許法104条の3)の主張は行わない旨明言していたのであるから,無効理由があることを前提に実施料率を低く主張することは失当である。 被告は,売上高につい り,被告も本件訴訟において当初から無効論(特許法104条の3)の主張は行わない旨明言していたのであるから,無効理由があることを前提に実施料率を低く主張することは失当である。 被告は,売上高についても製品代に限定すべきであると主張するが,はめ込むガラスや取り付け作業も一体となった事業であり,これが発明の実施に当たるから,特許法第102条3項の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭」の対象からガラス代や施工金額を除外する理由はない。 〔被告の主張〕(1) 被告各装置の販売額は,別紙「HOOK製品売上」記載のとおりである。 (2) 実施料率についてア特許法65条1項の「実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額」は,特許発明の侵害品の売上額に実施料率を乗じることで算出される。ここで いう売上額は,被告各装置本体の売上額(別紙「HOOK製品売上」の「製品代」)に限定されるべきである。なぜならば,本件発明は,改修引戸装置に関する発明であって,ガラスに関する発明でも取付け方法に関する発明でもないため,被告各装置に用いるガラスに関する売上げ(同別紙の「ガラス代」)及び被告各装置の取付け工事に関する売上げ(同別紙の「施工金額」)について,本件発明についての実施料が発生することはないからである。 イそして,上記実施料率の算定に関しては,本件発明の内容,本件各装置に関する事情等が総合的に考慮されるべきである。 有効開口面積が減少することを防止し,広い開口面積を確保する点にあるという本件発明の作用・効果を達成する別の技術は,実公昭55-40156(乙14・(5)),特開平10-30377(乙26・段落【0035】,段落【0045】参照。)や特開2001-227244(乙28の2・段落【0058】参照 する別の技術は,実公昭55-40156(乙14・(5)),特開平10-30377(乙26・段落【0035】,段落【0045】参照。)や特開2001-227244(乙28の2・段落【0058】参照。)などに記載されているものであるから,本件発明独自の有意な作用・効果ではない。そもそも,本件発明は,進歩性を欠くものであり,万が一,進歩性が認められるとしても,その進歩性は著しく低い。しかも,本件発明は,サッシ・ドアにおいて重要とされる耐風圧性,気密性,水密性等のJIS規格において要求される性能(乙8)に関係する発明ではなく,有効開口面積の減少を防ぐといういわば感性に訴える効果を達成するための発明にすぎない。加えて,被告各装置は,デザインや開閉時の始動の軽さ,工期の短縮化,メンテナンス性向上,費用軽減,高い耐風圧性・気密性・水密性など様々な優れた特徴を有しており,本件発明の技術的意義は著しく低い。 以上からすると,本件発明の実施料率はせいぜい3%である。 争点(3)(損害発生の有無及びその額)について〔原告らの主張〕 (1) 原告らは,本件特許が登録された平成23年10月7日以降の被告の本件特許侵害行為について,特許法102条2項により,損害賠償請求をする。 原告らは,本件特許を2分の1ずつ保有するから,原告ら各自は,損害賠償請求権を2分の1ずつ有する。 (2) 損害賠償請求の対象期間及び請求額は次のとおりである。なお,平成27年11月末日までの被告各装置の売上額が,被告が主張するとおり,別紙「HOOK製品売上」記載のとおりであること,また,同年12月におけるイ-1号装置及びイ-7号装置の売上額が合計●(省略)●であることは争わない。 アイ号装置 (平成23年10月7日~平成27年12月末日)・売上高 おりであること,また,同年12月におけるイ-1号装置及びイ-7号装置の売上額が合計●(省略)●であることは争わない。 アイ号装置 (平成23年10月7日~平成27年12月末日)・売上高 ●(省略)●・限界利益率 37.4%・限界利益 ●(省略)●・寄与率 100%・損害賠償請求額 ●(省略)●イロ号装置 (平成23年10月7日~平成26年10月末日)・売上高 ●(省略)●・限界利益率 37.4%・限界利益 ●(省略)●・寄与率 100%・損害賠償請求額 ●(省略)●ウ損害賠償請求額(合計)9億5551万7752円(原告ら各自4億7775万8876円)(3) 限界利益率についてア特許法102条2項の「利益の額」は,侵害物件に係る売上金額から,当該侵害物件の製造・販売のために追加的に必要となる経費(変動費)を 控除した額(以下「限界利益」という。)をいう。原告らは,審理遅延の回避のため,限界利益を算出するための被告各装置についての個々の項目を算出する手法を採用しないことには同意する。 イ被告の平成24年6月1日から平成25年5月31日の年度(第68期)の有価証券報告書(「製造原価明細書」を含む)から,限界利益率を推測すると次のとおりである。 (ア) 売上高は242,828百万円である(甲18の2「損益計算書」の最上部に記載)(イ) 変動費は,材料費(115,688百万円),外注加工費(32,716百万円)及び運送費(3,544百万円)である(甲18の3「製造原価明細書」)(ウ) 限界利益額は,242,828百万円-(115,688百万円+32, 688百万円),外注加工費(32,716百万円)及び運送費(3,544百万円)である(甲18の3「製造原価明細書」)(ウ) 限界利益額は,242,828百万円-(115,688百万円+32,716百万円+3,544百万円)=90,880百万円である。 (エ) したがって,限界利益率は,約37.4%(=90,880÷242,828)である。 ウ被告の主張に対する反論被告は,変動費の割合は少なくとも●(省略)●であると主張し,その根拠として,被告従業員作成の陳述書(乙60)を提出した。ここで,被告は,同陳述書の添付資料(以下「乙60表」という。)記載の30件の工事物件のみについて,同陳述書に記載された算出過程により,各工事物件の経費割合を出し,加重平均を計算したとしている。 しかし,各経費項目の詳細は不明である上,各工事の経費割合も●(省略)●の開きがあり,その算出手法自体に合理性があるのか疑問である。 また,被告は,労務費以外の固定費を,変動費に含ませて控除している点において不当であり,さらには,運賃,外注費などの変動費を二重に控除している。 そして,乙60表を前提として,人件費の割合(11%)だけではなく,経費の割合(平成24年6月1日~平成25年5月31日の27.1%:甲18の3)を控除して変動費率を計算すると●(省略)●となるから,限界利益率は●(省略)●ということになり(甲19),原告らの主張する限界利益率(37.4%)に合理性があることが裏付けられる。なお,乙60表には,経費割合を高くするために恣意的に選択した疑いがあるものや物件の不存在が疑われるものが含まれており信用性がないが,乙60表記載の物件から,上記のような疑義がある物件(No.18,30,9,12)を除いて算出すると,限界利益率は●( 択した疑いがあるものや物件の不存在が疑われるものが含まれており信用性がないが,乙60表記載の物件から,上記のような疑義がある物件(No.18,30,9,12)を除いて算出すると,限界利益率は●(省略)●となる。 (4) 寄与率について被告各装置は,本件発明の対象たる改修引戸装置そのものであるから,被告各装置の実施(本件発明の侵害行為)によって得た利益は,そのまま特許法102条2項にいう「その者がその侵害の行為により利益を受けているときは」の「利益」に当たる。したがって,本件において,本件発明の寄与率は100%である。 被告は需要者の購入動機へ寄与し得る各種の事情が考慮されるべきであるなどと主張しているが,これは,購入動機となった諸々の要素のうち,特許対象品である要素がどの程度の割合を占めたかによって,当該特許の寄与率を算定するがごとき主張であり,そのようなことは特許法102条2項の想定するものではなく失当である。もっとも,被告は,被告各装置の販売に当たり,既設窓枠の開口面積を維持できるところに特徴があるなどと,本件発明の特徴部分と同一の構成,効果を大きくアピールしているから,顧客の購入動機形成に本件発明が100%寄与していることもまた明白である。 〔被告の主張〕(1) 平成27年12月末までの被告各装置の売上額は,別紙「HOOK製品売上」記載のとおりである。また,同年12月におけるイ号装置の販売数は● (省略)●,販売金額・施工金額の合計は●(省略)●であり,その内訳は次の表のとおりであるが,この額は同別紙の「71期(H27.12.1~H27.12末日)」の欄に記載されている。なお,被告は,イ号装置については平成28年1月1日以降,ロ号装置については,平成26年11月1日以降,出荷していない。 工事番号 期(H27.12.1~H27.12末日)」の欄に記載されている。なお,被告は,イ号装置については平成28年1月1日以降,ロ号装置については,平成26年11月1日以降,出荷していない。 工事番号窓種枠種タイプ既設下枠上端からの突出量販売数量販売金額・製品代販売金額・ガラス代施工金額470121500①引違い窓2枚建ABC 5mm 560146000①引違い窓2枚建E19mm 261000900⑦上下段引違い窓2枚建E19mm (2) 限界利益率についてア被告各装置の売上額に対する変動経費の割合を明らかにするため,被告の販売管理システムに記録されている情報から,平成18年10月1日から平成26年10月31日までに行われた被告各装置を用いた工事のうち,売上額が●(省略)●以上のもので,かつ,売上額における被告各装置の売上額の割合が50%以上である工事について,売上額,変動経費に関する情報を抽出した。販売管理システムに記録されている経費のうち,運賃,外注費,工事費は,いずれも売上に応じて変動する変動経費である。自社製品の原価には変動経費以外に被告従業員の人件費が含まれているので,人件費としてその12%を控除した。これは被告の第67期(平成23年6月~平成24年5月)の労務費が11.7%,第68期(平成24年6月 ~平成25年5月)の労務費が11.0%であることから推測した数字である(乙61)。 以上の点を踏まえて,これらの工事におけるHOOK製品に係る変動経費を算出したところ,その割合は,当該工事におけるHOOK製品に係る売上額に対する●(省略)●であった(乙60)。 した 61)。 以上の点を踏まえて,これらの工事におけるHOOK製品に係る変動経費を算出したところ,その割合は,当該工事におけるHOOK製品に係る売上額に対する●(省略)●であった(乙60)。 したがって,変動経費の割合は少なくとも●(省略)●である。 イこの点に関して原告らは,被告の上記算定について,固定費の控除が不十分であるとか,変動費を二度引きしているなどと主張するが,製造原価明細書の「経費」の大部分は「外注加工費」及び「運送費」を含めた変動経費であるから,固定費の控除が不十分であるという批判は当たらないし,自社製品原価には「運賃」及び「外注費」は含まれていないから二度引きはしておらず,原告らの上記主張は失当である。 (3) 寄与率についてア特許法102条2項に基づく損害額の算定に際しては,侵害品の販売に対する特許発明の寄与率が考慮されるべきであり,寄与率の算定に際しては,特許発明による商品の価値や需要者の購入動機へ寄与しうる各種の事情が考慮されるべきである。 イ HOOK製品本体に対する寄与率イ号装置については,スリムなデザインで意匠性に優れている点,開閉の際の始動が軽い点,外まわりのノンシール化により工期の短縮化を可能にした点,メンテナンス性が向上している点が需要者の購入動機へ寄与している上,JIS性能表示において,耐風圧性はS-4以上,気密性は最高ランクのA-4,水密性も最高ランクのW-5であるなど高い性能を有している(乙32,乙8)。また,ロ号装置についても,スリムなデザインで意匠性に優れている点,開閉の際の始動が軽い点,外まわりのノンシール化による工期の短縮化を可能にした点,メンテナンス性が向上している 点が需要者の購入動機へ寄与している上,部材・部品点数の削減による費用の軽減の点,JIS性 い点,外まわりのノンシール化による工期の短縮化を可能にした点,メンテナンス性が向上している 点が需要者の購入動機へ寄与している上,部材・部品点数の削減による費用の軽減の点,JIS性能表示において,耐風圧性はS-4以上,気密性は最高ランクのA-4,水密性も最高ランクのW-5であるなど高い性能を有している(乙34,乙8)。このように被告各装置が,本件発明の効果とは別個に高い性能を有していることに加え,被告が,優れた外装商品を揃えて窓枠の改修も含めた外装全体について総合的な提案を行っていること,すなわち外装全体の工事を総合的に請け負う能力を有していることが需用者の購入動機へ大きく寄与している。 以上の事情及び本件発明の技術的価値が低いことを総合すれば,被告各装置本体に対する本件発明の寄与率はせいぜい3%である。 ウガラスに対する寄与率本件発明はガラスに関する発明ではない上,被告各装置に用いるガラスは,被告が外部業者から購入したものを取り付けているだけにすぎず,必ずしも被告各装置と一緒に被告を通じて購入する必要があるものではない。 そうすると,被告各装置に用いるガラスに対する本件発明による需要者の購入動機への寄与が仮に存在するとしても,非常に小さいというべきである。加えて,本件発明の技術的価値が極めて低いことからすると,本件発明の被告各装置に用いるガラスに対する寄与率は1%を超えることはない。 エ取付け工事に対する寄与率本件発明は,改修引戸装置の取付け方法に関する発明ではない上,改修引戸装置を取り付けようとした場合には取付け工事が必要となるものであって,取り付けられる改修引戸装置が本件発明の実施品であるか否かによって,取付け工事を行うか否かが決まるものではない。そうすると,被告各装置の取付け工事に対する本件発明に け工事が必要となるものであって,取り付けられる改修引戸装置が本件発明の実施品であるか否かによって,取付け工事を行うか否かが決まるものではない。そうすると,被告各装置の取付け工事に対する本件発明による需用者の動機への寄与が仮に存在するとしても非常に小さいというべきである。加えて,本件発明の技術的価値が極めて低いことを踏まえると,本件発明の被告各装置の取付け 工事に対する本件発明の寄与率は1%を超えることはない。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明の意義(1) 本件明細書等には次の記載がある。 ア技術分野・「本発明は,建物の壁に窓として設けられている既設引戸を改修用引戸に改修する引戸装置の改修方法,及び,その改修した改修引戸装置に関する。」(段落【0001】)イ背景技術・「図15は従来の技術の改修用引戸装置1を示す鉛直断面図であり,図16は図15の切断面線VII-VIIから見た水平断面図である。経年変化によって老朽化した集合住宅などの建物は,リフォームとも呼ばれる改修工事の一環として,その建物に設けられる窓もまた,改修される。この窓は,集合住宅の場合,一棟に設けられる設置箇所数が多いため,改修作業の効率の向上が望まれている。」(段落【0002】) ・【図15】 ・【図16】 ・「建物の開口部2には,この開口部2の開口3に下方から臨む下縁部4に固定される既設下枠5と,開口部2の前記開口3に左右両側から臨む両側縁部6にそれぞれ固定される一対の既設竪枠7と,開口部2の前記開口3に上方から臨む上縁部8に固定される既設上枠9とを有する既設引戸枠10が設けられ,この既設引戸枠10に改修用引戸装置1が装着される。」(段落【0003】)・「改修用 枠7と,開口部2の前記開口3に上方から臨む上縁部8に固定される既設上枠9とを有する既設引戸枠10が設けられ,この既設引戸枠10に改修用引戸装置1が装着される。」(段落【0003】)・「改修用引戸装置1は,引戸障子を図15の紙面に垂直な間口方向に移動自在に支持する複数の案内レール11,12を有し,既設下枠5に固定される改修用下枠13と,各既設竪枠7に固定される一対の改修用竪枠14と,既設上枠9に固定される改修用上枠15と,この改修用上枠15に固定され,改修用上枠15と既設上枠9との間を室内16側から覆う上枠カバー材17と,各改修用竪枠14と各既設竪枠7との間を室内16側からそれぞれ覆う一対の竪枠カバー材18と,改修用下枠13 と既設下枠5との間を室内16側から覆う下枠カバー材19とを含む。」(段落【0004】)・「また,前記改修用下枠13は,既設下枠5の2本の案内レール21,22上に直接乗載されて,室外23側から螺着されたビス24によって固定される下枠下地材25と,前記2本の案内レール11,12を有し,下枠下地材25に室外23側から螺着されたビス26によって固定される下枠本体27と,下枠本体27に2本のビス28,29によって固定される断面が略W字状の下枠補助材30とを含む。」(段落【0005】)・「さらに,前記改修用竪枠14は,室内16側から螺着されたビス34によって既設竪枠7に固定される竪枠下地材35と,この竪枠下地材35に室内16側から螺着されたビス36によって固定される竪枠補助材37と,竪枠補助材37に嵌着される竪枠本体39とを含む。」(段落【0006】)・「さらに,前記改修用上枠15は,室内16側から螺着されたビス40によって既設上枠9に固定される上枠下地材41と,室内16側から螺着されたビス4 る竪枠本体39とを含む。」(段落【0006】)・「さらに,前記改修用上枠15は,室内16側から螺着されたビス40によって既設上枠9に固定される上枠下地材41と,室内16側から螺着されたビス42によって前記上枠下地材41に固定される上枠補助材43と,上枠補助材43に嵌着される上枠本体44とを含む。」(段落【0007】)・「上記の改修用下枠13,改修用竪枠14および改修用上枠15が,既設下枠5,既設竪枠7および既設上枠9にそれぞれ取付けられた後,下枠カバー材19が改修用下枠13の下枠補助材30にビス47によって固定され,竪枠カバー材18が改修用竪枠14の竪枠補助材37にビス48によって固定され,上枠カバー材17が改修用上枠15の上枠補助材43にビス49によって固定される。」(段落【0008】)・「これらの下枠カバー材17(判決注:「下枠カバー材19」の誤記と認める。)と下縁部4と間,竪枠カバー材18と側縁部6との間,およ び上枠カバー材17と上縁部8との間には,室内側シール材45と室外側シール材46とが打設され,室外23から室内16への風雨の浸入が防止されている。」(段落【0009】)ウ発明が解決しようとする課題・「このような従来の技術では,改修用下枠13が既設下枠5に載置された状態で既設下枠5に固定されるので,改修用下枠13と改修用上枠15との間の空間の高さ方向の幅H1が小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題がある。」(段落【0010】)・「また,改修用下枠13の下枠下地材30は既設下枠5の案内レール21,22上に直接乗載され,その案内レール21,22を基準として固定されているから前述の改修用下枠13と改修用上枠15との間の空間の高さ方向の幅H1がより小さくなり,有効開口面積が減少して レール21,22上に直接乗載され,その案内レール21,22を基準として固定されているから前述の改修用下枠13と改修用上枠15との間の空間の高さ方向の幅H1がより小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題がある。」(段落【0011】)・「本発明の目的は,広い開口面積を確保することができる引戸装置の改修方法及び改修引戸装置を提供することである。」(段落【0012】)エ課題を解決するための手段・「請求項4記載の本発明は,建物の開口部に残存した既設引戸枠は,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し,前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去され,その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり,この既設引戸枠内に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって 上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され,この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に,前記改修用下枠の室内寄りが,前記取付け補助部材で支持され,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,前記改修用下枠の前壁が,ビスによって既設下枠の前壁に固定されていることを特徴とする改修引戸装置である。」(段落【0013】)オ 前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,前記改修用下枠の前壁が,ビスによって既設下枠の前壁に固定されていることを特徴とする改修引戸装置である。」(段落【0013】)オ発明の効果・「請求項1~6記載の本発明によれば,既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去したので,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく,有効開口面積が減少することがなく,広い開口面積が確保できる。 また,既設下枠に室内寄りに取付補助部材を設けるとともに,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け,取付け補助部材を基準として改修用引戸枠を既設引戸枠に取付けるので,既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用いることで,形状,寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできる。」(段落【0018】)カ発明を実施するための最良の形態・「図1は本発明の実施の一形態の改修用引戸装置50が設置された窓51の鉛直断面図であり,図2は図1の切断面線II-IIから見た窓51の水平断面図である。本実施の形態の改修用引戸装置50は,建物52の開口部53の開口54に下方から臨む下縁部55に,略水平(図1の紙面に垂直な方向)に固定される既設下枠56と,開口部53の前記 開口54に左右両側から臨む両側縁部57,58に略鉛直(図1の上下方向)にそれぞれ固定される一対の既設竪枠59,60と,開口部53の前記開口54に上方から臨む上縁部61に略水平に固定される既設上枠62とを有する既設引戸枠63内に嵌まり込んだ状態で装着される。」(段落【0019】)・【図1】 ・【図2】 ・「この改修用引戸装置50は,引戸障子6 既設上枠62とを有する既設引戸枠63内に嵌まり込んだ状態で装着される。」(段落【0019】)・【図1】 ・【図2】 ・「この改修用引戸装置50は,引戸障子64,65を略水平な矢符A1,A2で示す間口方向に移動自在に支持する複数の案内レール66,67を有し,既設下枠56に室外73側から当接して支持される改修用下枠69と,各既設竪枠59,60に室外73側から当接して支持される一対の改修用竪枠70,71と,既設上枠62に室外73側から当接して支持される改修用上枠72と,各既設竪枠59,60に室内68側から当接して支持され,各改修用竪枠70,71にそれぞれ連結される一対の竪枠用保持部材74,75と,既設上枠62に室内68側から当接し て支持され,改修用上枠72に連結される上枠用保持部材76とを含む。 (段落【0020】)・「上記の既設引戸枠63と改修用引戸装置50と各引戸障子64,65とを含んで,窓51が構成される。前記建物52は,コンクリート構造の高層集合住宅などであって,本実施の形態の改修用引戸装置50を既設引戸枠63に装着して,各階層毎に多数の窓51が実現される。」(段落【0021】)・「また,前壁80を室外73側から室内68側に向かって螺着されたビス112によって既設下枠56の前壁102に固定するので,取付け作業中に改修用下枠69が既設下枠56に対して室外73側にずれてしまうことが防がれ,単にビス112を締付ければ,改修用下枠69を既設下枠56に対して位置決めされ,取付け作業の効率が向上される。」(段落【0032】)・「図3は改修用引戸装置50の既設引戸枠63への取付け手順を説明するための鉛直断面を示す分解図であり,図4は図3の切断面線IV-IVから見た水平断面を示す が向上される。」(段落【0032】)・「図3は改修用引戸装置50の既設引戸枠63への取付け手順を説明するための鉛直断面を示す分解図であり,図4は図3の切断面線IV-IVから見た水平断面を示す分解図である。既設引戸枠63に改修用引戸装置50を取付けるにあたって,まず既設下枠56の室外側案内レール114がその付け根付近から切断されて撤去され,室内側案内レール115には取付け補助部材106が上壁部109を上方にして装着され,ビス110によって固定される。こうして取付け補助部材106が室内側案内レール115に取付けられた状態では,前記上壁部109はほぼ水平に配置されている。 前記取付け補助部材106は長手方向全長に亘って取付けても良いし,長手方向複数位置に取付けても良い。」(段落【0051】) ・【図3】 ・「このように改修用引戸枠78および各竪枠用保持部材74,75および上枠用保持部材76が既設引戸枠63に装着されると,ビス154,174によって各竪枠保持部74,75を各既設竪枠59,60にそれぞれ固定し,室外73側からビス112によって改修用下枠69を既設下枠56に固定し,内側からビス153,173によって各竪枠保持部材74,75と各改修用竪枠70,71とを連結し,ビス134,136によって上枠用保持部材76と改修用上枠72とを連結し,さらにビス110によって改修用下枠69を取付け補助部材106に固定する。 その後,各引戸障子64,65を各案内レール66,67上に建て込むことによって,改修用引戸装置50の設置作業が終了する。」(段落【0 055】)・「図6は本発明の実施の他の形態の改修用引戸装置50bが設置された窓51の鉛直断面図で,図7は図6の切断面線B-Bから見た窓51の水 設置作業が終了する。」(段落【0 055】)・「図6は本発明の実施の他の形態の改修用引戸装置50bが設置された窓51の鉛直断面図で,図7は図6の切断面線B-Bから見た窓51の水平断面図である。」(段落【0067】前段)・【図6】 ・【図7】 ・「この実施の形態の既設下枠56,改修用下枠69,取付け補助部材106は前述の図1,図2に示す実施の形態の既設下枠56,改修用下枠69,取付け補助部材106とほぼ同様で,既設下枠56の背後壁104の上端部に室内68側に向かう横向片104aを有し,この横向片104aと改修用下枠69の支持壁89の上端が同一高さであること,改修用下枠69の室外73側部分に乾式の室外側下枠シール材300が室内68側に向けて装着され,この室外側下枠シール材300が既設下枠56の前壁102に圧接していることが大きく相違する。」(段落【0069】) ・「具体的には,既設下枠56の室外側案内レール114を図6の仮想線で示すように切断して撤去されている。この室外側案内レール114は全てを切断して撤去しても良いし,若干残して撤去しても良い。 取付け補助部材106は,その室外側壁部107が室内側案内レール115にビス110で固着して取付けられる。 改修用下枠69の支持壁89,室内側脚部分91が取付け補助部材106の上壁部109に支持され,底壁81の室外寄りがスペーサ301を介して既設下枠56の底壁103の室外寄りに支持され,ビス112で取付け補助部材106に固定される。」(段落【0070】)・「(手順6)上枠用保持部材76,各竪枠用保持部材74,75にカバー303,312をそれぞれ取付ける。」(段落【0090】)・「この実施の形態によれば, 定される。」(段落【0070】)・「(手順6)上枠用保持部材76,各竪枠用保持部材74,75にカバー303,312をそれぞれ取付ける。」(段落【0090】)・「この実施の形態によれば,図1と図2と同様な作用効果を奏すると共に,次のような作用効果を奏する。 (1)既設下枠56に取付け補助部材106を取付け,改修用下枠69の室内側脚部分91,支持壁89(つまり,改修用下枠69の室内側部分)を取付け補助部材106に載置し,その取付け補助部材106にビス112で固着して取りと付けたことをによって,その取付用補助部材106の高さ寸法を変えることで,異なる形状の既設下枠56にも同一形状の改修用下枠56を,その支持壁89と背後壁104を同一高さに取付けることが可能である。」(段落【0091】)・「(2)また,前述の(1)と室外側下枠シール材300が既設下枠56の前壁102に圧接していることによって,室内側案内レール115の立上り寸法が大きな既設下枠56にも同一形状の改修用下枠69を取付けできる。 例えば,図10に示すように取付け補助部材106の高さ寸法を大き くして室内側壁部108を底壁103に当接し,かつ室内側案内レール115にビス110で取付ける。 室内側下枠シール材300を前壁102に当接する。 この場合には,支持壁89が背後壁104より若干上方に突出する。」(段落【0092】)・【図10】 ・「(3)また,前述の(1),(2)によって図11と図12に示すように,既設下枠56の背後壁104の上端部に室外側に突出部104bを有し,既設上枠62の室内側フランジ306の内方部分306bが室外側に位置ずれしている場合でも,同一形状の改修用下枠69,改修用上枠62,各改修用竪枠70,71を取付けで に室外側に突出部104bを有し,既設上枠62の室内側フランジ306の内方部分306bが室外側に位置ずれしている場合でも,同一形状の改修用下枠69,改修用上枠62,各改修用竪枠70,71を取付けできる。」(段落【0093】) ・【図11】 ・「また,図14に示すように,既設下枠56の室内側案内レール115を前述と同様に切断して撤去し,取付け補助部材106を既設下枠56の背後壁104にビス110で固着しても良い。 例えば,取付け補助部材106の室内側壁部108を既設下枠56の背後壁104にビス110で固着する。この場合には室外側壁部107に図示しないビス挿通孔を形成し,そのビス挿通孔からビス止めすることが好ましい。」(段落【0100】) ・【図14】 (2) 上記各記載によれば,本件発明は,建物の壁に窓として設けられている既設引戸を改修用引戸に改修する引戸装置の改修方法,及びその改修した改修引戸装置に関するものであり,従来技術においては,(ア) 改修用下枠が既設下枠に載置された状態で既設下枠に固定されるので,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題と,(イ) 改修用下枠の下枠下地材は既設下枠の案内レール上に直接乗載され,その案内レールを基準として固定されているから改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅がより小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題(課題)があったため,これらの問題(課題)を,①既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去する(構成1),②既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設けるとともに,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付け,改 案内レールを切断して撤去する(構成1),②既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設けるとともに,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付け,改修用下枠の室内寄りの部分を取付け補助部材で支持し,取付け補助部材を基準として改修用引戸枠を既設引戸枠に取付ける(構成2)ことにより解決したものであり,構成1及び2を採ることにより,改修用下枠と 改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく,広い開口面積を確保でき,構成2とすることにより,既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用いることで,形状,寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできるという効果を奏するものであると認められる。 2 争点(1)ア(構成要件Bの「室内寄り」「固着」の解釈)について(1)「室内寄り」の意義についてア広辞苑第六版(乙2)によれば,「…寄り」とは,「…に近い方。…に寄ったところ」を意味する。 イ次に,本件特許の特許請求の範囲請求項4の記載をみると,「室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠」(構成要件C)という記載があり,ここでは,「室内寄り」は「室外寄り」と対比して用いられ,改修用下枠という部材について,「室内寄り」と「室外寄り」の二つの領域があり,上記部材のうちの室内に近い方を「室内寄り」,室外に近い方を「室外寄り」と呼称しているものと認められる。一つの部材に二つの領域があるのであるから,当該部材のうちのおよそ半分について,「室内寄り」と呼んでいるものと解するのが自然である。そして,同一の請求項内において同一の用語が用いられており,別異の意味で用いられていることをうかがわせる記載はないから,構成要件Bにおける「室内寄り」について 呼んでいるものと解するのが自然である。そして,同一の請求項内において同一の用語が用いられており,別異の意味で用いられていることをうかがわせる記載はないから,構成要件Bにおける「室内寄り」についても,上記と同じ意味で用いられていると解すべきである。 ウ以上からすると,構成要件Bにおける「室内寄り」とは,既設下枠を二つの領域に分けた場合の,室内に近い方の領域を意味するものと解するのが相当である。 エ被告の主張に対する判断この点に関して被告は,構成要件Bの「室内寄り」は「その既設下枠において室内側案内レール及びその近傍よりも室内側から,当該既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁に至る領域である室内寄り」を意 味するものであるなどと主張する。 しかし,特許請求の範囲にはそのような記載はなく,また,本件明細書等の記載をみても「室内寄り」についての特段の定義はされていないことからすれば,通常の用語の意味をもって解釈することが相当であるから,被告の上記主張は採用することができない。 また,被告は,構成要件Bは取付け補助部材が背後壁よりも室内側に存在する場合を含まないなどと主張する。 しかし,構成要件Bは「既設下枠の室内寄り」に取付け補助部材を設置するものと規定しているのであって,取付け補助部材が室内にあるか室外にあるかは構成要件Bの充足性とは関係がないから,被告の上記主張は採用することができない。 (2) 「固着」の意義について被告は,本件発明は,構成要件Bの「固着」以外に,取付け補助部材における他の部位と既設下枠の背後壁以外の場所との結合に基づく「支持」を必要としないことを前提としているなどと主張するが,特許請求の範囲の記載をみても,取付け補助部材が,背後壁の立面に対するビスで「固着」されていることが記 の背後壁以外の場所との結合に基づく「支持」を必要としないことを前提としているなどと主張するが,特許請求の範囲の記載をみても,取付け補助部材が,背後壁の立面に対するビスで「固着」されていることが記載されているのみであって,背後壁以外の場所との結合を排除する趣旨の記載はない。また,本件明細書等の段落【0092】及び【図10】には,取付け補助部材を室内側案内レールにビスで取付けた状態で,室内側壁部を底壁に当接する実施形態が記載されており,この点は被告の上記主張と矛盾する。なお,本件明細書の【図10】で示される実施形態が本件発明の技術的範囲に含まれることは,後記5(3)のとおりである。 したがって,被告の上記主張は採用することはできず,構成要件Bを限定解釈すべき理由はない。 3 争点(1)イ(構成要件Cの「挿入」の解釈)について(1) 広辞苑第六版(乙2)によれば,「挿入」とは,一般に,「さし入れるこ と。さしこむこと。」を意味するものと認められる。そして,本件特許の特許請求の範囲の記載及び本件明細書等の記載をみても,上記意義と異なる定義はされていないから,構成要件Cの「挿入」とは,通常の用語に従い,「さし入れること。さしこむこと。」を意味すると解するのが相当である。 (2) 被告の主張に対する判断この点に関して被告は,「挿入」が室外側から室内側に向かう一定方向による移動である以上,当該移動は略直線状の移動と解すべきであり,このような解釈が本件明細書等の【図3】記載の実施形態にも合致すると主張する。 しかし,本件明細書等には挿入時の移動方向についての記載はないし,本件明細書等の【図3】をみても挿入時の移動方向を示唆する部分はないから,被告の上記主張は採用することができない。 4 争点(1)ウ(構成要件Dの「支持」 挿入時の移動方向についての記載はないし,本件明細書等の【図3】をみても挿入時の移動方向を示唆する部分はないから,被告の上記主張は採用することができない。 4 争点(1)ウ(構成要件Dの「支持」の解釈)について(1) 構成要件Dは,改修用下枠の室内寄りが,取付け部材で「支持」されていると規定するものであるが,その支持の方法や方向については何らの限定もされていない。 (2) この点に関して被告は,改修用下枠の室内寄りの底壁が,取付け補助部材によって下側から支持されていることを意味するなどと主張するが,特許請求の範囲の記載をみても,構成要件Dの「支持」について,その方向を示唆する記載はないし,本件明細書等をみても,支持の方法や方向を限定すべき根拠となる記載はない。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 5 争点(1)エ(構成要件Eの「ほぼ同じ高さ」の解釈)について(1) 構成要件Eの「ほぼ同じ高さ」の程度に関しては,本件特許の特許請求の範囲請求項4には,背後壁の上端と改修用下枠の上端が「ほぼ同じ高さ」である旨の記載があるのみであって,具体的にどの程度同じであるかについての記載はない。 そして,広辞苑第六版(乙2)によれば,「ほぼ」とは「おおかた。およそ。 大略。あらあら。」を意味するものと認められるから,「ほぼ同じ高さ」とは「大略同じ高さ」という意味をいうにすぎないというほかないから,ある程度幅のある概念であって具体的な数値を意味するものではないと解釈せざるを得ない。 (2) そこで,本件明細書等の記載をみるに,本件明細書等にはどの程度の高さの範囲を「ほぼ同じ高さ」というかについて,具体的な数値に係る限定は何ら記載されていない。 しかし,前記1(2)のとおり,本件発明が,(ア) 改修用下枠が 載をみるに,本件明細書等にはどの程度の高さの範囲を「ほぼ同じ高さ」というかについて,具体的な数値に係る限定は何ら記載されていない。 しかし,前記1(2)のとおり,本件発明が,(ア) 改修用下枠が既設下枠に載置された状態で既設下枠に固定されるので,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題と,(イ) 改修用下枠の下枠下地材は既設下枠の案内レール上に直接乗載され,その案内レールを基準として固定されているため改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅がより小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題(課題)に対して,①既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去する(構成1),②既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設けるとともに,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付け,改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持し,取付け補助部材を基準として改修用引戸枠を既設引戸枠に取付ける(構成2)ことにより上記課題を解決し,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく,広い開口面積を確保できるという効果を奏するものであること及び本件特許の審査経過において,「広い開口面積を確保する本願の課題に対応した構成が記載されていない」という拒絶理由通知を受け,構成要件Eに対応する部分を追記する補正をしたことによって特許査定を受けていることに照らすと,背後壁の上端と改修用下枠の上端を「ほぼ同じ高さ」とするのは,広い開口面積を確保するという効果を 得るための構成であるということができる。 そして,上記課題及び効果からすると,背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差が,少なくとも従来技術における改修用下枠の上端と背後壁 効果を 得るための構成であるということができる。 そして,上記課題及び効果からすると,背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差が,少なくとも従来技術における改修用下枠の上端と背後壁の上端の差よりも小さいものである必要があると認められる。すなわち,改修用下枠が既設下枠に載置された状態で固定されたり,改修用下枠の下枠下地材が既設下枠の案内レール上に直接乗載されて固定されたりした場合の改修用下枠の上端と背後壁の上端の高さの差異よりも,改修用下枠の上端と背後壁の上端の差が相当程度小さいものであれば,「ほぼ同じ高さ」であると認められるというべきである。 (3) この点に関して被告は,「ほぼ同じ高さ」について,双方の高さの差が,背後壁の高さの1/13未満であるとか,バリアフリー住宅の段差なしといえる場合と同等の3mm以下であるとか,かぶせ工法における誤差範囲である2mm以下であるとか,10mmを超えることはないなどと主張する。 しかし,本件明細書等をみても,背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差と背後壁の高さの比に関する記載はなく,双方の高さの差が,背後壁の高さの1/13未満であると解釈すべき根拠となる記載は存しない。なお,当初明細書等には本件明細書等記載の図面が全て掲載されているから,本件特許の審査経過及び特許法17条の2第3項に照らしても,「ほぼ同じ高さ」を解釈するにあたって,本件明細書等記載の【図14】のみを基準にすべきとする理由はないばかりか,そもそも同図の縮尺が正確なものであるとも認められないから,【図14】を根拠とする被告の上記主張は採用することができない。 また,バリアフリー住宅の実現は本件発明の課題ではないから,そのことを理由として,「ほぼ同じ高さ」が,双方の高さの差が3mm以下の場合を意味すると解すべき 告の上記主張は採用することができない。 また,バリアフリー住宅の実現は本件発明の課題ではないから,そのことを理由として,「ほぼ同じ高さ」が,双方の高さの差が3mm以下の場合を意味すると解すべき理由はない。そして,前記本件発明の効果からすれば,誤差範囲といえるほど「同じ高さ」であることを要求するものと解することは 相当ではなく,さらには,10mm以下を意味すると解すべき理由もない。 むしろ,本件明細書等の【図10】及び【図11】をみると,改修用下枠の上端を室内側レールが構成しているが,同室内側レールのほぼ全体が,背後壁の上端の高さより,上方に突き出ていることが認められる。そして,上記各図記載の形態について,本件発明の技術的範囲から除外されることをうかがわせる記載はなく,本件発明の技術的範囲に含まれる実施形態であることが認められるから,背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差が,室内側レールの高さ程度である場合も,構成要件Eの「ほぼ同じ高さ」に当たるということができる。 (4) 以上からすると,構成要件Eの「ほぼ同じ高さ」とは,背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差が,改修用下枠が既設下枠に載置された状態で固定されたり,改修用下枠の下枠下地材は既設下枠の案内レール上に直接乗載されて固定されたりした場合の改修用下枠の上端と背後壁の上端の高さの差よりも相当程度小さいものであれば足り,室内側レールの高さ程度の差異がある場合も,「ほぼ同じ高さ」といえるというべきである。 6 争点(1)オ(構成要件Fの「固定」の解釈)について(1) 構成要件Fは,改修用下枠の前壁が,ビスによって,既設下枠の前壁に「固定」されていることが規定されているが,固定と改修用下枠の位置の決定の関係については何ら規定されていない。 (2) この点 1) 構成要件Fは,改修用下枠の前壁が,ビスによって,既設下枠の前壁に「固定」されていることが規定されているが,固定と改修用下枠の位置の決定の関係については何ら規定されていない。 (2) この点に関して被告は,構成要件Fの「固定されている」とは,「固定されることによって,改修用下枠の水平方向の位置が決定されている」の意味であるなどと主張するが,本件特許の特許請求の範囲の記載をみても,ビスによって改修用下枠の前壁が,既設下枠の前壁に固定されることが規定されているのみであって,それによって改修用下枠の水平方向の位置が決定されていることについては何ら規定していないから,被告が主張するような限定的解釈をする根拠はない。 また,被告は,構成要件Fのビスによる「固定」は,構成要件Cの「挿入」の最終段階に該当し,「固定」によって構成要件Dの「支持」の位置も決定するなどとも主張するが,本件特許の特許請求の範囲には,挿入と固定の先後関係に係る記載はなく,本件明細書等の記載をみても上記被告の主張を裏付ける記載はない。被告は,本件明細書等の段落【0032】の記載を上記主張の根拠として挙げるが,同段落には,ビスで固定することによって,改修作業中に改修用下枠が既存下枠に対して室外側にずれることを防止できる旨の記載があるにすぎず,ビスによる固定によって位置が決定される旨の記載はされていないし,位置を決定してから固定する方法も十分に考えられ,このような方法で製造された装置が本件発明の技術的範囲に含まれないというべき理由もない。 したがって,被告の主張は採用することができない。 7 争点(1)カ(イ号装置の充足性)について(1) イ号装置の構成イ号装置の構成について,原告らは別紙イ号装置説明書のとおりであると主張しているところ,同別紙 は採用することができない。 7 争点(1)カ(イ号装置の充足性)について(1) イ号装置の構成イ号装置の構成について,原告らは別紙イ号装置説明書のとおりであると主張しているところ,同別紙の各図面(第1ないし第3図)は,被告が,被告装置の構成を説明するために作成した図面(平成26年9月12日付け第1準備書面別紙イ号装置説明書の第1ないし第3図)と同一であるから,その構成自体については当事者間に争いがないといえ,イ号装置の構成は,別紙イ号装置説明書の各図面(第1ないし第3図)のとおりであると認められる(なお,各部材の呼称には原告らと被告で一致していない部分もあるが,構成自体には争いがなく,当該不一致部分は本判決の判断に影響しない。)。 そこで,上記各図面を前提として,イ号装置が本件発明の技術的範囲に属するか検討する。なお,構成要件の充足性について,前記2ないし6のとおり,被告が主張する構成要件の解釈は採用できないことから,被告が主張する解釈を前提とした充足性の主張はいずれも理由がない。 (2) 構成要件Bについて別紙イ号装置説明書の各図面記載の構成をみると,イ号装置では,既設下枠(56)を室内寄りと室外寄りの二つの領域に分けてみた場合の室内寄りに,取付け補助部材(106。なお,第2図では「下枠受け材」と呼称されているが同じ部材である。)を設け,取付け補助部材(106)は,既設下枠の底壁(103)の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面(104a)にビス(110)で取り付けられていることが認められる。 したがって,イ号装置は構成要件Bを充足する。 (3) 構成要件Cについてア別紙イ号装置説明書の各図面記載の構成をみると,イ号装置では,既設上枠(62),既設下枠(56)及び既設竪枠(59,60)を有する既設 装置は構成要件Bを充足する。 (3) 構成要件Cについてア別紙イ号装置説明書の各図面記載の構成をみると,イ号装置では,既設上枠(62),既設下枠(56)及び既設竪枠(59,60)を有する既設引戸枠(63)内に,改修用上枠(72),改修用下枠(69),改修用竪枠(70,71)を有する改修用引戸枠が挿入されており,改修用下枠は,室外から室内に向かって上方へ段差をなして傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外よりも高い底壁を備えているものと認められる。そして,改修用上枠(72),改修用下枠(69)及び改修用竪枠(70,71)がアルミニウム合金の押出し形材からなることについて被告は争っていない。 そうすると,少なくともイ-1号装置は,構成要件Cを充足する。 この点に関して被告は,イ-3,イ-5,イ-6及びイ-7号装置については,改修用の枠が「引戸枠」に当たらないから構成要件Cを充足しないと主張するので,以下,イ-3,イ-5,イ-6及びイ-7号装置について検討する。 イイ-3号装置(袖FIX付き引違い窓2枚建)について(ア) 被告は,イ-3号装置では,改修用の枠がたて骨と相まって引違い窓を囲んでおり,改修用の枠が独立して引違い窓を囲んでいるものではないから,改修用の枠は構成要件Cの「引戸枠」に当たらないと主張する。 しかし,本件発明に係る特許請求の範囲には,改修用引戸枠が改修用上枠,改修用下枠及び改修用竪枠を有することや(構成要件C),改修用引戸枠の一部である改修用下枠が既設下枠に接して支持されるとともに取付け補助部材で支持されていること(構成要件D),改修用引戸枠の一部である改修用下枠の前壁がビスで既設下枠の前壁に固定されていること(構成要件F)が記載されているものの,改修用引戸枠が独立して引違い窓を囲んでいる 持されていること(構成要件D),改修用引戸枠の一部である改修用下枠の前壁がビスで既設下枠の前壁に固定されていること(構成要件F)が記載されているものの,改修用引戸枠が独立して引違い窓を囲んでいる旨の記載はなく,また,本件明細書等にも被告の上記主張を裏付ける記載はない。そして,広辞苑第六版(乙55)によれば,「枠」とは,「木・竹・金属などの細い材で造り,器具の骨または縁としたもの」を意味することが認められるから,「引戸枠」は,引戸の骨又は縁とする細い材で造られたものをいうものとはいえるものの,一般に,独立して引違い窓を囲んでいるものでなければ「引戸枠」ということはできないと認めるべき理由はない。そうすると,改修用の枠がたて骨と相まって引違い窓を囲んでいることをもって,イ-3号装置の改修用の枠が「改修用引戸枠」に当たらないということはできない。 さらに,枠が独立して引違い窓を囲んでいる場合に限り「引戸枠」に当たるものと解したとしても,イ-3号装置において,FIX窓付きの引違い窓の全体が「引戸」であるものと解すれば,改修用の枠が独立して「引戸」であるFIX窓付きの引違い窓を囲んでいるということができるから,被告の主張を前提としても,イ-3号装置の改修用の枠は,構成要件Cの「改修用引戸枠」に当たると認められる。 したがって,イ-3号装置の改修用の枠は,構成要件Cの「引戸枠」に当たる。 (イ) 被告は,改修用の枠内の一部がFIX窓(はめ殺しの窓)であることから,「有効開口面積が減少することがなく,広い開口面積が確保できる」という本件発明の作用効果を奏しないとして,イ-3号装置は,本 件発明の技術的範囲に含まれない旨主張する。 前記1(2)のとおり,本件発明は,従来技術では有効開口面積が減少してしまうという課題を解決するた 果を奏しないとして,イ-3号装置は,本 件発明の技術的範囲に含まれない旨主張する。 前記1(2)のとおり,本件発明は,従来技術では有効開口面積が減少してしまうという課題を解決するために,①既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去するという構成及び②既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設けるとともに,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付け,改修用下枠の室内寄りを取付け補助部材で支持し,取付け補助部材を基準として改修用引戸枠を既設引戸枠に取付けるという構成を採ることにより,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく,広い開口面積を確保できるという効果を奏するというものである。なお,社団法人日本サッシ協会作成の「カタログ,商品説明書などに於ける表現と用語の統一に関する指針<改訂版>」(乙40)によれば,「有効開口」とは開きドアや引き戸などで,人の出入り,物の搬入のために完全な効率を与える開口面積をいうものと認められる。 そして,本件発明の効果の「広い開口面積を確保できる」とは,従来技術と比べて広い開口面積を確保することを意味するというべきである。 すなわち,本件明細書等の段落【0018】には,発明の効果として「有効開口面積が減少することがなく,広い開口面積が確保できる。」と記載されているものの,本件発明は,構成要件Cに規定されるように,既存引戸枠内に改修用引戸枠を挿入するものであることからして,改修前の有効開口面積と同じ有効開口面積が得られることを前提としているとは考えられないし,本件明細書等をみても,例えば,【図3】,【図6】及び【図11】で示される実施形態は,いずれも,既設上枠よりも改修用上枠の方が相当程度低い位置に設置されており,改修後の有効 いるとは考えられないし,本件明細書等をみても,例えば,【図3】,【図6】及び【図11】で示される実施形態は,いずれも,既設上枠よりも改修用上枠の方が相当程度低い位置に設置されており,改修後の有効開口面積は,改修前の有効開口面積よりも減少していることが明らかであるから,本件発明は,改修により有効開口面積が減少すること自体は当然 に予定しながらも,その減少の程度が従来技術と比べて相当程度少ないという効果が生じるものであるというべきである。 そして,「FIX窓付きの引違い窓」を使用する改修引戸装置について,改修用下枠が既設下枠に載置された状態で既設下枠に固定されたり,改修用下枠の下枠下地材が既設下枠の案内レール上に直接乗載され,その案内レールを基準として固定されたりしている従来技術と比較すれば,イ-3号装置では,有効開口面積が拡大しているものと認められるから,イ-3号装置は,本件発明の効果を奏していると認められる。 したがって,イ-3号装置の作用効果を考慮しても,イ-3号装置が本件発明の技術的範囲に属さないということはできない。 (ウ) 以上から,イ-3号装置は構成要件Cを充足する。 ウイ-5号装置(上段FIX付き引違い窓2枚建)被告は,イ-5号装置の改修用枠の上枠が引違い窓と接することがなく,改修用の枠が独立して引違い窓を囲んでいるものではないから,改修用の枠は構成要件Cの「引戸枠」に当たらないと主張する。 しかし,上記イ(ア)で説示したとおり,引戸の引違い部分の周辺の全てに接しているものでなければ構成要件Cの「引戸枠」に当たらないというべき理由はない。また,イ-5号装置において,FIX窓部分までを含めて「引戸」に当たると解せば,改修用の枠が独立して「引戸」を囲んでいるといえることはイ-3号装置と同様である。 に当たらないというべき理由はない。また,イ-5号装置において,FIX窓部分までを含めて「引戸」に当たると解せば,改修用の枠が独立して「引戸」を囲んでいるといえることはイ-3号装置と同様である。 さらに,イ-3号装置と同じ理由により,イ-5号装置についても,本件発明の作用効果を奏していると認められる。 したがって,イ-5号装置は構成要件Cを充足する。 エイ-6号装置(下段FIX付き引違い窓2枚建)被告は,イ-6号装置についても,改修用枠の下枠が引違い窓と接することがなく,改修用の枠が独立して引違い窓を囲んでいるものではないか ら,改修用の枠は構成要件Cの「引戸枠」に当たらないと主張する。 しかし,上記イ(ア)で説示したとおり,引戸の引違い部分の周辺の全てに接しているものでなければ構成要件Cの「引戸枠」に当たらないというべき理由はない。また,イ-6号装置においても,イ-3号装置及びイ-5号装置と同様に,FIX窓部分までを含めて「引戸」に当たると解せば,改修用の枠が独立して「引戸」を囲んでいると認められる。 さらに,イ-3号装置及びイ-5号装置と同じ理由により,イ-6号装置についても,本件発明の作用効果を奏していると認められる。 したがって,イ-6号装置は構成要件Cを充足する。 オイ-7号装置(上下段引違い窓2枚建)被告は,イ-7号装置についても,無目が引戸枠としての機能を果たしており,改修用下枠,改修用下枠及び二つの改修用竪枠のみでは引戸枠の機能を果たさないと主張する。 しかし,イ-7号装置においては,上下二つの引き戸窓及び無目部分を含めて「引戸」に当たると解することができるから,改修用の枠が独立して「引戸」を囲んでいるといえる。 また,無目部分を挟んで上下二つの引違い窓からなる「引戸」を使用する改 の引き戸窓及び無目部分を含めて「引戸」に当たると解することができるから,改修用の枠が独立して「引戸」を囲んでいるといえる。 また,無目部分を挟んで上下二つの引違い窓からなる「引戸」を使用する改修引戸装置について,改修用下枠が既設下枠に載置された状態で既設下枠に固定されたり,改修用下枠の下枠下地材が既設下枠の案内レール上に直接乗載され,その案内レールを基準として固定されたりしている従来技術と比較すれば,イ-7号装置の方が有効開口面積が広いことは明らかであるから,本件発明の作用効果を奏していると認められる。 したがって,イ-7号装置は構成要件Cを充足する。 カ以上のとおり,イ号装置は,いずれも構成要件Cを充足する。 (4) 構成要件Dについて別紙イ号装置説明書の各図面記載の構成をみると,イ号装置では,改修用 下枠(69)を室内寄りと室外寄りの二つの領域に分けてみた場合の室外寄りに,スペーサ(301)を介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に,前記改修用下枠の室内寄りが,取付け補助部材(106)で支持されていることが認められる。 したがって,イ号装置は構成要件Dを充足する。 (5) 構成要件Eについてア別紙イ号装置説明書の各図面記載の構成をみると,背後壁の上端(104b)と改修用下枠の上端(69a)とは,その高さが近いものであるが,少しの差があることが認められる。 イこの点に関して被告は,イ号装置においては,別紙「HOOK工法商品体系図」記載のとおり,背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差が,5mmから41mmまで様々な種類のものがあり,いずれも「ほぼ同じ高さ」には当たらないものであり,少なくとも10mmを超える場合には「ほぼ同じ高さ」に当たらないと主張する。 しかし,上記高さの差について, ら41mmまで様々な種類のものがあり,いずれも「ほぼ同じ高さ」には当たらないものであり,少なくとも10mmを超える場合には「ほぼ同じ高さ」に当たらないと主張する。 しかし,上記高さの差について,様々なものが存在するとしても,原告らが,本件訴訟において侵害の当否に係る審理が終了するまでは,上記差は5mmであると主張していたこと,イ号装置のカタログ(乙32・116頁)には,上記差が13.5mmであるものが記載されているものの,そのほかには,5mm又は13.5mm以外のものは掲載されていないこと,イ号装置の販売状況を示す別紙「HOOK製品売上」をみても,上記差が11mm,15mm,23mm,24mm,28.5mm,36mm,39.6mm,41mmであるものについては,ある特定の期にのみ販売されているものであり,販売数量も1から144窓と,5mmのものが全期間を通じて1万窓以上販売されていることと比べてもごく少ないものであることなどに照らすと,イ号装置の商品として存在するものといえるかどうかについても疑問といわざるを得ないものもあり,既設部材との関係 などに応じた施工の結果,商品が予定していたよりも上記差が大きくなるものとして設置されたものが含まれる可能性が否定できない。そして,このような場合に,構成要件に該当しないとはいえないことは後記(7)のとおりである。 また,前記5で説示したとおり,構成要件Eの「ほぼ同じ高さ」とは,背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差が,改修用下枠が既設下枠に載置された状態で固定されたり,改修用下枠の下枠下地材は既設下枠の案内レール上に直接乗載されて固定されたりした場合の改修用下枠の上端と背後壁の上端の高さの差よりも相当程度小さいものであれば足り,室内側レールの高さ程度の差異がある場合も,「 下枠下地材は既設下枠の案内レール上に直接乗載されて固定されたりした場合の改修用下枠の上端と背後壁の上端の高さの差よりも相当程度小さいものであれば足り,室内側レールの高さ程度の差異がある場合も,「ほぼ同じ高さ」といえるというべきであるところ,カタログ(乙32)に記載されている5mmや13.5mm程度の差については,「ほぼ同じ高さ」に当たることは明らかである。 そして,イ号装置の構成からすれば,背後壁の上端と改修用下枠の上端の高さの差が,改修用下枠が既設下枠に載置された状態で固定されたり,改修用下枠の下枠下地材は既設下枠の案内レール上に直接乗載されて固定されたりした場合の改修用下枠の上端と背後壁の上端の高さの差よりも相当程度小さいものであると推認されるのであるから,イ号装置はいずれも構成要件Eを充足すると認めるのが相当であって,イ号装置の中に従来技術による場合よりも改修用下枠の上端と背後壁の上端の差が大きくなっているなどして,「ほぼ同じ高さ」とはいえないものがあると認めるべき証拠はないというほかない。 ウしたがって,イ号装置はいずれも構成要件Eを充足する。 (6) 構成要件Fについて別紙イ号装置説明書の各図面記載の構成をみると,イ号装置では,改修用下枠の前壁(80)を,ビス(112)によって,既設下枠の前壁(102)に固定されていることが認められる。 したがって,イ号装置は構成要件Fを充足する。 (7) 現場の施工形態により技術的範囲から除かれるものがある旨の被告の主張について被告は,現場の施工形態により本件発明の技術的範囲から除かれる物件がある旨主張する。 仮に施工者の判断による現場施工方法に応じて,本件発明の技術的範囲から外れる態様で設置されたものがあったとし, 被告がその主張を裏付けるものとして提出 術的範囲から除かれる物件がある旨主張する。 仮に施工者の判断による現場施工方法に応じて,本件発明の技術的範囲から外れる態様で設置されたものがあったとし, 被告がその主張を裏付けるものとして提出した被告従業員A作成の陳述書(乙59,75)及び製品手配図一式(乙72,73)を前提としても,上記製品手配図は,被告が調査した物件のうち2例を示すものにすぎないのであって,本件発明の技術的範囲に属しない現場施工が一定の割合で存在することは否めないものの,その方法及びその数が,被告の主張するとおりであることを認めるに足りる証拠はない。 (8) したがって,イ号装置は,現場施工により本件発明の技術的範囲に属しない一定割合のものを除き,いずれも本件発明の技術的範囲に含まれる。 8 争点(1)キ(ロ号装置の充足性)について(1) ロ号装置の構成ロ号装置の構成について,原告らは別紙ロ号装置説明書のとおりであると主張しているところ,同別紙の各図面(第1ないし第3図)は,被告が,被告装置の構成を説明するために作成した図面(平成26年9月12日付け第1準備書面別紙ロ号装置説明書の第1ないし第3図)と同一であるから,その構成自体については当事者間に争いがないといえ,ロ号装置の構成は,別紙ロ号装置説明書の各図面(第1ないし第3図)のとおりであると認められる(なお,各部材の呼称には原告らと被告で一致していない部分もあるが,構成自体には争いがなく,当該不一致部分は本判決の判断に影響しない。)。 そこで,上記各図面を前提として,ロ号装置が本件発明の技術的範囲に属 するか検討する。なお,構成要件の充足性について,前記2及び4ないし6のとおり,被告が主張する構成要件の解釈は採用できないことから,被告が主張する解釈を前提とした充足性の主張はいずれ するか検討する。なお,構成要件の充足性について,前記2及び4ないし6のとおり,被告が主張する構成要件の解釈は採用できないことから,被告が主張する解釈を前提とした充足性の主張はいずれも理由がない。 (2) 構成要件Bについてア別紙ロ号装置説明書の各図面記載の構成をみると,ロ号装置では,既設下枠(56)を室内寄りと室外寄りの二つの領域に分けてみた場合の室内寄りに,取付け補助部材(106。なお,第2図では「下枠補助材」とされているが同じ部材である。)を設け,取付け補助部材(106)は,既設下枠の底壁(103)の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面(104a)にビス(110)で取り付けられていることが認められる。 もっとも,被告は,ロ-5号装置については,下枠の構造が他のロ号装置とは異なり,構成要件Bを充足しないと主張するので,次にロ-5号装置について検討する。 イロ-5号装置(下段FIX 付き引違い窓2枚建)について被告は,ロ-5号装置の下枠の構造は別紙物件目録ロ-5記載の図とは異なり,ロ-3号装置の下枠の構造と同じであると主張する。 ロ-5号装置は,カタログ(乙34)の39頁の「段窓バリエーション」の欄において段窓上段窓種が「引違い窓2枚建」で,段窓下段窓種が「FIX窓」であるものをいうところ,その図面は同カタログの19ないし21頁記載の各図に示されており,同各図によればロ-5号装置の下枠の構造は次の図のとおりであることが認められる。これは,別紙物件目録ロ-5記載の下枠の図面とは異なるものである。 そして,上図によれば,ロ-5号装置では,①取付け補助部材に相当する部材が,背後壁の立面にビスで取り付けられていないこと及び②改修用下枠の前壁が既設下枠の前壁にビスで固定されていないことが認 そして,上図によれば,ロ-5号装置では,①取付け補助部材に相当する部材が,背後壁の立面にビスで取り付けられていないこと及び②改修用下枠の前壁が既設下枠の前壁にビスで固定されていないことが認められる。 そうすると,ロ-5号装置は上記①により,「取付け補助部材が・・背後壁の立面にビスで固着して取り付けてあ」るものではないといえるから,構成要件Bを充足しない。 ウしたがって,ロ-5装置を除くロ号装置は構成要件Bを充足するが,ロ-5号装置は構成要件Bを充足しない。 (3) 構成要件Cについてア別紙ロ号装置説明書の各図面記載の構成をみると,ロ号装置では,既設上枠(62),既設下枠(56)及び既設竪枠(59,60)を有する既設引戸枠(63)内に,改修用上枠(72),改修用下枠(69),改修用竪枠(70,71)を有する改修用引戸枠が挿入されており,改修用下枠は,室外から室内に向かって上方へ段差をなして傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外よりも高い底壁を備えているものと認められる。そして,改修用上枠(72),改修用下枠(69)及び改修用竪枠(70,71)がアルミニウム合金の押出し形材からなることについては争いがない。 イロ-2,ロ-4,ロ-5及びロ-6号装置についてところで,被告は,上記各装置について,改修用の枠が「引戸枠」に当たらないから構成要件Cを充足しないと主張するが,それぞれ,イ-3,イ-5,イー6及びイ-7号装置と同じ理由で被告の主張には理由がない。 ウしたがって,ロ号装置は構成要件Cを充足する。 (4) 構成要件Dについて別紙ロ号装置説明書の各図面記載の構成をみると,ロ号装置では,改修用下枠(69)を室内寄りと室外寄りの二つの領域に分けてみた場合の室外寄りに,スペーサ(301)を介して既設 ) 構成要件Dについて別紙ロ号装置説明書の各図面記載の構成をみると,ロ号装置では,改修用下枠(69)を室内寄りと室外寄りの二つの領域に分けてみた場合の室外寄りに,スペーサ(301)を介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に,前記改修用下枠の室内寄りが,下枠補助材(106)で支持されていることが認められる。 したがって,ロ号装置は構成要件Dを充足する。 (5) 構成要件Eについて別紙ロ号装置説明書の各図面記載の構成をみると,背後壁の上端(104b)と改修用下枠の上端(69a)とは,その高さが近いものであるが,少しの差があることが認められる。 被告は,ロ号装置は構成要件Eを充足しないと主張するが,イ号装置について述べたものと同じ理由により,被告の主張には理由がない。 したがって,ロ号装置はいずれも構成要件Eを充足と認められる。 (6) 構成要件Fについてア別紙ロ号装置説明書の各図面記載の構成をみると,ロ号装置(ロ-5号装置を除く。また,下枠タイプAに限る。)では,改修用下枠の前壁(80)を,ビス(112)によって,既設下枠の前壁(102)に固定されていることが認められる。 したがって,ロ号装置(ロ-5号装置を除く。また,下枠タイプAに限る。)は構成要件Fを充足する。 イロ-5号装置についてロ-5号装置においては,前記(2)イのとおり,「②改修用下枠の前壁が既設下枠の前壁にビスで固定されていない」から,「改修用下枠の前壁が,ビスによって既設下枠の前壁に固定されてい」ないので,構成要件Fを充足しない。 ウ下枠タイプB及びCについて(ア) 被告は,ロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプB及びCは,構成要件Fを充足しないと主張する。 証拠(乙35の1・2)によれば,下枠タイ い。 ウ下枠タイプB及びCについて(ア) 被告は,ロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプB及びCは,構成要件Fを充足しないと主張する。 証拠(乙35の1・2)によれば,下枠タイプB及びCの改修用下枠と既存下枠の構造は,下図のとおりであると認められる。 上図によれば,下枠タイプB及びCにおいては,改修用下枠の前壁が,ビスによって既存下枠の前壁に固定されていないことが認められる。 したがって,下枠タイプB及びCは構成要件Fを充足しない。 (イ) この点に関して原告らは,乙42②-2図について,改修用下枠の前壁が既存下枠の前壁にビスで固定されている図面が記載されていることから,下枠タイプB及びCに係る被告の主張は真実に反する可能性があ ると主張する。しかし,上記下枠タイプBの図と乙42②-2図を比較すると,既設下枠の構造が大きく異なっており,乙42②-2図では,既設下枠の室外側案内レールを切断することなく折り曲げる態様で施工されていることが認められるから,乙42②-2図は特殊な事情があるために特殊な施工になったもので下枠タイプBの施工として想定されているものではないという被告の主張は不合理とはいえない。 (ウ) また,原告らは,被告がロ-2,ロ-4及びロ-6号装置に下枠タイプB及びCが存在すると主張することは信義にもとり,また,信用できないなどとも主張しているが,被告は,平成27年9月18日付け第7準備書面において,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置についてタイプB及びCが存在しないと主張していたものではなく,その他の理由により非充足であるから詳細の主張をしないと述べていたと認められるから,原告らの認否を確認した後に,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプB及びCの存在を明確に主張したとしても,何 その他の理由により非充足であるから詳細の主張をしないと述べていたと認められるから,原告らの認否を確認した後に,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプB及びCの存在を明確に主張したとしても,何らかの訴訟上の効果を生じさせるほどの信義に反する行為であるとまではいえない。また,下枠タイプB及びCが記載された基準図(乙35の1・2)が存在すること,被告が,ロ号装置の種類別の販売数量を開示するにあたっては,別紙「HOOK製品売上」記載のとおり,下枠タイプごとに販売数量を開示していること及び証拠(乙41)によれば,同別紙は被告の工図情報システムに記録された情報から下枠タイプごとの販売数量の情報を開示していたものと認められ,何ら根拠なく存在もしないタイプ別に,根拠なく販売数量を割り振って開示しているなどとはいえないことに照らすと,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置については,被告が主張するとおり,下枠タイプB及びCが存在すると認めるのが相当である。 エしたがって,ロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプAは構成要件Fを充足するが,ロ-5号装置並びにロ-1,ロ-2,ロ-4 及びロ-6号装置の下枠タイプB及びCは構成要件Fを充足しないと認めるのが相当である。 (7) 現場の施工形態により技術的範囲から除かれるものがある旨の被告の主張についてこの点については,前記7(7)において説示したのと同様に理由により,本件発明の技術的範囲に属しない現場施工が一定の割合で存在することは否めないものの,その方法及びその数が,被告の主張するとおりであることを認めるに足りる証拠はない。 (8) したがって,ロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプA(本件発明の技術的範囲に属しない現場施工のものを除く。)は本件発明の技術的範 おりであることを認めるに足りる証拠はない。 (8) したがって,ロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプA(本件発明の技術的範囲に属しない現場施工のものを除く。)は本件発明の技術的範囲に属するが,ロ-5号装置並びにロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプB及びCは本件発明の技術的範囲に属しない。 9 争点(2)(本件特許権が特許無効審判により無効にされるべきものか否か)について被告は,本件特許権に,①明確性要件違反,②サポート要件違反,③実施可能要件違反,④進歩性欠如の各無効理由がある旨主張するとして準備書面を提出している。 しかし,本件の審理については,平成27年2月26日の弁論準備手続の段階で侵害論の審理を終了し,当事者双方がそれ以降侵害論に関する主張はしないものとして弁論準備手続調書にその旨記載された上で,同年4月8日の弁論準備期日において裁判所から心証を告げた上で,損害論の審理に入った段階において,被告が初めて上記無効理由を主張したものである。 したがって,被告の上記無効の主張は,時機に後れた攻撃防御方法であって,却下されるべきものである。 争点(3)(補償金請求の成否及びその額)について(1) 補償金請求権について 原告らが,被告に対し,本件特許に関し,特許法65条1項所定の警告をしたこと及び警告日が平成18年10月5日であることについて被告は明らかに争っていない。したがって,本件特許権を2分の1ずつ共有する原告らは,特許法65条1項に基づき,被告に対し,警告後本件特許の設定の登録前における本件発明の実施行為について,本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金を請求することができる。 本件では,前記7及び8において説示したとおり,原告らは,被告に対 定の登録前における本件発明の実施行為について,本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金を請求することができる。 本件では,前記7及び8において説示したとおり,原告らは,被告に対し,平成18年10月5日から本件特許の登録日の前日である平成23年10月6日までの期間,被告がイ号装置並びにロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプA(本件発明の技術的範囲に属しない現場施工のものを除く。)を製造,販売したことについて,実施料相当額を補償金として請求することができる。 (2) 売上額について別紙「HOOK製品売上」によれば,平成18年10月5日から平成23年10月6日までの期間のイ号装置並びにロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプAの売上額は,別紙「損害額算定表」記載のとおり,●(省略)●(千円未満四捨五入)である。 なお,67期(平成23年6月~平成24年5月)については,一年を366日とする日割り計算により,平成23年6月から平成23年10月6日までの売上額を算定した(以下,67期の計算はいずれも同じ方法による。)。 また,上記別紙の単位が「千円」であることから,本件の計算においては,千円未満を四捨五入するものとする。 ところで,前記7(7)及び8(7)に説示したとおり,イ号装置及びロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプAには,本件発明の技術的範囲に属しない現場施工が一定割合存在することが否定できない。その割合について,被告は,イ号装置については●(省略)●のうち●(省略)●,ロ -1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプAについては●(省略)●のうち●(省略)●において,本件発明の技術的範囲に属しない現場施工がされた旨主張しているところ,上記被告の主張は,被告 -1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプAについては●(省略)●のうち●(省略)●において,本件発明の技術的範囲に属しない現場施工がされた旨主張しているところ,上記被告の主張は,被告独自の調査に基づくものであって,現実に本件発明の技術的範囲に属さない施工であると認められないものが含まれる可能性もあることから,被告が主張する割合において本件発明の技術的範囲に属しない施工がされていると認めるに足りる客観的証拠がないといわざるを得ない。しかし,被告従業員A作成の陳述書(乙59,75)によれば被告がイ号装置並びにロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプAに係る図面のうち8割を超える製品手配図を調査したことが認められること,また,現に調査に供した設計手配図の一部であるとして上記設計手配図一式(乙72,73)を提出していることを踏まえると,イ号装置及びロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプAのうちの2割について,本件発明の技術的範囲に属しない現場施工がされたものと認めるのが相当である。 したがって,上記で算出したイ号装置並びにロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプA売上額の8割が,本件発明の実施品の売上額に当たり,その額は,別紙「損害額算定表」記載のとおり,●(省略)●である。 (3) 実施料率について発明協会研究センター編「実施料率〔第5版〕」(甲14の1)によれば,家屋のリフォーム等を含む「建築技術」の実施料率の平成4年度から平成10年度の平均は●(省略)●であることが認められる。そして,経済産業省知的財産政策室編「ロイヤルティ料率データハンドブック」(甲14の2)によれば,「建造物」の技術分野において最頻値が3ないし4%未満,次に多いのが2ないし3%未満であることが認められる。これら 業省知的財産政策室編「ロイヤルティ料率データハンドブック」(甲14の2)によれば,「建造物」の技術分野において最頻値が3ないし4%未満,次に多いのが2ないし3%未満であることが認められる。これらからすると,本件において,実施料率は●(省略)●と認めるのが相当である。 なお,実施料率について,原告らは5%が相当であると主張し,被告はせいぜい3%であると主張するが,平均的な料率以上又は平均的な料率未満の実施料率を認めるべき特段の事情をうかがわせる証拠はない。また,被告は,別紙「HOOK製品売上」における製品代のみに実施料が生じ,ガラス代及び施工金額については実施料が生じないと主張するが,後記11(4)ウで説示するとおりの理由により,ガラス代及び施工金額についても,実施料算定の基礎となる売上額に含まれるものと認めるのが相当である。 (4) 補償金額について上記(2)及び(3)から,本件における補償金額は合計●(省略)●(=●(省略)●×●(省略)●)である。 そして,原告らは,本件特許の権利を2分の1ずつ有するから,各原告らの補償金はそれぞれ,●(省略)●である。 11 争点(4)(損害発生の有無及びその額)について(1) 損害賠償請求権について前記7及び8において説示したとおり,イ号装置並びにロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプA(本件発明の技術的範囲に属しない現場施工のものを除く。)は本件特許を侵害するから,特許法102条2項に基づいて,本件発明の実施行為であるイ号装置並びにロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプAの製造・販売により被告が受けた利益の額が,原告らの損害の額と推定される。 以下,被告が,本件特許権が登録された平成23年10月7日以降に,イ号装置並びにロ-1,ロ- 及びロ-6号装置の下枠タイプAの製造・販売により被告が受けた利益の額が,原告らの損害の額と推定される。 以下,被告が,本件特許権が登録された平成23年10月7日以降に,イ号装置並びにロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプA(本件発明の技術的範囲に属しない現場施工のものを除く。)の製造・販売により受けた利益の額を算定する。 (2) 売上額について別紙「HOOK製品売上」をもとに算定すると,別紙「損害額算定表」の とおり,平23年10月7日から平成27年12月31日までの期間のイ号装置の売上額は●(省略)●であり,平成23年10月7日から平成26年10月31日までの期間のロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプAの売上額は●(省略)●であり,その合計額は●(省略)●である。 そして,前記10(2)のとおり,イ号装置及びロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプAのうち2割については,本件発明の技術的範囲に属しない現場施工がされたものと認めるのが相当であるから,上記合計額の8割が本件発明の実施品の売上額に当たり,その額は,別紙「損害額算定表」記載のとおり,●(省略)●である。 なお,証拠(乙69の1ないし4,乙70,71)によれば,被告は,イ号装置及びロ号装置下枠タイプAについて設計変更をしたことから,上記各期間後は同被告各装置の販売をしておらず,また,設計変更後の被告の製品は,改修用下枠の前壁がビスによって既設下枠の前壁に固定されていないから,本件発明の技術的範囲に含まれないものであると認められる。 (3) 限界利益率についてア次に,特許法102条2項の「利益の額」を算定するため,侵害物件に係る売上金額から,当該侵害物件の製造販売のために要した変動費を控除し,いわゆる限界利益を算 る。 (3) 限界利益率についてア次に,特許法102条2項の「利益の額」を算定するため,侵害物件に係る売上金額から,当該侵害物件の製造販売のために要した変動費を控除し,いわゆる限界利益を算出する。本件では,限界利益を算出するため利益率を乗ずる方法によることについて当事者間に争いはない。そこで,以下,被告がイ号装置並びにロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプAの製造・販売における限界利益率を検討する。 イ原告らは,被告の平成24年6月1日ないし平成25年5月31日の年度(第68期)の有価証券報告書(甲18の1ないし3)から限界利益率を推測しているところ,上記報告書から認められる売上高は242,828百万円,変動費は,材料費,外注加工費及び運送費の合計151,948百万円であると認められる。 ●(省略)●である。 ウこの点に関して被告は,被告各装置の売上額に対する変動費の割合は少なくとも●(省略)●である(すなわち限界利益率は●(省略)●である)と主張する。 しかし,被告が主張の根拠とする乙60表に関し,被告は,被告各装置を用いた全ての工事の変動費を示したものではなく,被告各装置を用いた工事のうち売上額が●(省略)●以上でかつHOOK製品の売上額が占める割合が50%以上の工事だけを抽出したものであると説明しているところ,同説明のとおりに工事が抽出されていることを裏付ける客観的な証拠がないばかりか,同説明のとおりに工事が抽出されていたとしても,一部の工事のみを抽出したものであることからすると,乙60表が被告各装置の限界利益率を正確に反映したものと認めることはできないといわざるを得ない。また,被告は,自社製造原価の12%が労務費に当たるとしてこれを控除しているが,被告の第68期(平成24年6月 が被告各装置の限界利益率を正確に反映したものと認めることはできないといわざるを得ない。また,被告は,自社製造原価の12%が労務費に当たるとしてこれを控除しているが,被告の第68期(平成24年6月1日から平成25年5月31日まで)有価証券報告書中の製造原価明細書(甲18の3)によれば,被告における労務費の割合は,製造原価(材料費,労務費,経費)の合計額中の割合であるところ,被告は,自社製造原価には経費の大部分に当たる外注費及び運賃は含まれていないというのであるから,自社製造原価に占める労務費の割合は,上記製造原価明細書記載の労務費の割合よりも高くなるはずであるが,これが考慮されていない。さらには,被告が変動経費の割合の算定をした根拠とする30件の工事の中には,外注費(HOOK製品の組み立て費用及び被告が製造していない製品の仕入・工事費用)が突出して高いために利益率が低いものも含まれているところ(乙60表のNo.1,18など),これらの工事において外注費を控除することが,被告各装置の利益率を算出するに当たって相当といえるかについては疑問があるといわざるを得ない。そして,被告における全体の限界利益 率よりも,被告各装置の限界利益率が低いというべき事情は何ら説明されていない。 したがって,乙60表を根拠として,変動経費の割合を●(省略)●とし,限界利益率を●(省略)●と認めるのは相当とはいえない。 エ以上を総合すると,被告各装置の限界利益率については,●(省略)●と推認することが相当である。 (4) 推定覆滅事由(寄与率)に関する被告の主張についてア被告は,被告各装置の販売により得た被告の利益に対する本件発明の寄与率は製品代について3%,ガラス代及び施工金額については1%にすぎず,それぞれ利益額の3%ないし1% 関する被告の主張についてア被告は,被告各装置の販売により得た被告の利益に対する本件発明の寄与率は製品代について3%,ガラス代及び施工金額については1%にすぎず,それぞれ利益額の3%ないし1%を超える部分については,本件特許侵害による原告の損害に当たらないと主張する。 特許法102条2項は,損害が発生している場合でも,その損害額を立証することが極めて困難であることに鑑みて定められた推定規定であるから,当該特許権の対象製品に占める技術的価値,市場における競合品・代替品の存在,被疑侵害者の営業努力,被疑侵害品の付加的性能の存在,特許権者の特許実施品と被疑侵害品との市場の非同一性などに関し,その推定を覆滅させる事由が立証された場合には,それらの事情に応じた一定の割合(寄与率)を乗じて損害額を算定することができるというべきである。 イそこでこれを本件について検討するに,別紙「損害額算定表」のとおり,イ号装置並びにロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプAに係る販売金額及び施工金額の合計額は,●(省略)●である。そして,そのうち,被告各装置の製品代は,●(省略)●であり,この額は,販売金額及び施工金額の合計の約7割を占める額である。そして,本件発明は,既設引戸を改修用引戸に改修する引戸装置の改修方法及びその改修した改修引戸装置に関し,従来技術においては有効開口面積が減少してしまうという課題を解決する発明であるが,引戸装置の改修方法及び改修用引戸装 置の製品としての価値は有効開口面積をより広くすることのみではないから,本件特許権の対象製品に占める技術的価値は必ずしも高いものとは認められないこと,被告各装置のカタログ及びニュースリリース(甲3,5の1・2,乙32,34)によれば,被告各装置は,有効開口が広いこ ら,本件特許権の対象製品に占める技術的価値は必ずしも高いものとは認められないこと,被告各装置のカタログ及びニュースリリース(甲3,5の1・2,乙32,34)によれば,被告各装置は,有効開口が広いことの他に,スリムなデザインであること,遮音性能,オプションで結露排水部を付けられること,引き出し時の抵抗が少ないこと,サブロック付クレセントと補助ロック(戸先用)を併用することで防犯建物部品の対象となり得ること,部品の交換などのメンテナンス性が向上したこと,さらには,複層ガラス35mm溝幅を用意し,JIS性能表示(乙8参照)において断熱性H-2の性能を有すること,遮音性T-2(30等級線)を有することといった多数の特長があるものとして説明した上で被告各装置を販売していることが認められ,さらには,同カタログ(乙32,34)における性能仕様の記載をみると,被告各装置は,JIS性能表示において,耐風圧性はS-4以上(7段階あるランクにおいて4番目のランク以上),気密性については最高ランクであるA-4,水密性についても最高ランクのW-5であることが認められるから,本件発明の効果である「開口面積が広い」こと以外の特長を重視して購入する顧客も相当程度存在するであろうことが推認される。 これらを総合考慮すると,本件発明の寄与率は●(省略)●と認めるのが相当である。 ウなお,被告は,ガラス代及び施工金額については特に本件発明の寄与率が低い旨の主張もしているところ,ガラス及び被告各装置を併せて施工することによって本件発明の技術的範囲に属する実施品となって需要者に販売されるものであることに照らせば,イ号装置及びロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプA(本件発明の技術的範囲に属しない現場施工のものを除く。)そのものの製造・販売と,ガラス代 要者に販売されるものであることに照らせば,イ号装置及びロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプA(本件発明の技術的範囲に属しない現場施工のものを除く。)そのものの製造・販売と,ガラス代及び施工金額 に対する本件発明の寄与率を別異に評価すべき理由があるとはいえないから,被告の上記主張は採用できない。 (5) 損害額前記(2)ないし(4)から,本件発明の実施行為により被告が受けた利益の額は,合計●(省略)●(=●(省略)●×●(省略)●×●(省略)●)であると認められる。 そして,原告らは,本件特許の権利を2分の1ずつ有するから,各原告の損害額は,特許法102条2項により,●(省略)●と推定される。 (6) 弁護士費用本件事案の内容,事案の難易,訴訟の経緯及び認容額等の諸般の事情を考慮すると,被告の不法行為と相当因果関係のある損害としての弁護士費用は,1500万円(原告ら各750万円)と認めるのが相当である。 (7) 合計額及び遅延損害金上記(5)及び(6)により,原告らの損害額の合計は,1 億3603万5000円億であり,各原告の損害額はそれぞれ6801万8000円である。 ところで,原告らは,損害金の全額に対する訴状送達の日の翌日である平成26年4月8日からの遅延損害金の支払を求めているが,同日までに被告各装置が販売されたことにより原告らに生じたと推定される損害額(合計)は,別紙「損害額算定表」のとおり,1億0877万1000円であり(なお,69期〔平成25年6月1日から平成26年5月31まで〕において生じた損害額のうち,平成26年4月8日までに生じた額を年365日とする日割り計算により推定した。),平成26年4月9日以降の被告各装置の販売により生じた損害については平成26 月31まで〕において生じた損害額のうち,平成26年4月8日までに生じた額を年365日とする日割り計算により推定した。),平成26年4月9日以降の被告各装置の販売により生じた損害については平成26年4月8日までに生じていないというほかないから,損害額のうち1 億0877万1000円(各原告について5438万6000円)及び弁護士費用1500万円(各原告について750万円)についてのみ同日を起算日とする遅延損害金の請求を認めることと する。 そして,別紙「損害額算定表」のとおり,原告らについて,平成26年4月9日から同年5月31日までに生じた額は462万8000円(各原告について231万4000円),同年6月1日から同年10月31日までの間にロ号装置について生じた額は484万円(各原告について242万円),同年6月1日から平成27年5月31日までにイ号装置について生じた額は208万7000円(各原告について104万4000円),同年6月1日から同年11月30日までにイ号装置について生じた額は68万3000円(各原告について34万1000円),同年12月1日から同月31日までにイ号装置について生じた額は2万6000円(各原告について1万3000円)であると認められるから,それぞれの額について,それぞれの期間の最終日を遅延損害金の起算日とした遅延損害金の請求を認めるものとする。 12 結論以上によれば,原告らの請求は,被告に対し,イ号装置並びにロ-1,ロ-2,ロ-4及びロ-6号装置の下枠タイプAの製造及び譲渡の差止め並びに廃棄を求め,また,それぞれ,8505万7000円及びうち1703万9000円に対する平成23年10月8日から,うち6188万6000円に対する平成26年4月8日から,うち231万4000円に対する 棄を求め,また,それぞれ,8505万7000円及びうち1703万9000円に対する平成23年10月8日から,うち6188万6000円に対する平成26年4月8日から,うち231万4000円に対する平成26年5月31日から,うち242万円に対する平成26年10月31日から,うち104万4000円に対する平成27年5月31日から,うち34万1000円に対する平成27年11月30日から,うち1万3000円に対する平成27年12月31日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,この限度で認容し,その余の請求にはいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。なお,主文第2項については,仮執行宣言を付すのは相当でないから,これを付さないこととする。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 瀬孝 裁判官 勝又来未子 別紙「HOOK製品売上」及び「特許公報」は省略

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