昭和37(ラ)52 農業協同組合変更登記失期事件

裁判年月日・裁判所
昭和38年12月25日 高松高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原決定中抗告人らに関する部分はいずれもこれを取消す。      抗告人らをいずれも処罰しない。          理    由  本件抗告の趣旨は、主文同旨の裁判を求めるという

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判決文本文2,725 文字)

主文 原決定中抗告人らに関する部分はいずれもこれを取消す。 抗告人らをいずれも処罰しない。 理由 本件抗告の趣旨は、主文同旨の裁判を求めるというにあり、その抗告理由は、要するに「(イ)農業協同組合法(以下農協法と略省する。)第七七条第一項、第八五条第一項等の変更登記は、理事がなすべき旨定められているが、理事が二人以上あつて、代表理事又は業務執行理事の定められている場合には、この代表理事又は業務執行理事がこれをなすべきであり、これを以て足りるのであるから、右変更登記を怠つた責任は右代表理事又は業務執行理事のみに存し、他の理事には存しないものというべきである。本件A農業協同組合においては組合定款により理事の互選によつて組合長を定め、組合長に代表権限及び業務執行権がある旨定めており(定款第三二条)、本件変更登記を怠つた当時の組合長はB及びCであるから、右両名には登記を怠つた責任はあるが、他の理事即ち本件抗告人らにはその責任はない。 従つて、抗告人らを処罰した原決定は違法である。(ロ)仮りに抗告人らにも登記を怠つた責任があるとするも、前記のとおり、組合の業務は組合長が処理していたものであるから、抗告人らの責任は軽いものといわなければならず、原審の各過料金額は重きに失する。」というにある。 よつて、案ずるに、記録によると、原裁判所は、抗告人らはいずれもA町農業協同組合の理事であつたもの及び現に理事であるものであるところ、同組合が昭和三〇年六月四日の総会において、組合の事業内容の一部を変更したのについて、同三七年六月三〇日まで、その変更登記を怠つたとして、過料に処したものである。 ところで、記録によると、本件A町農業協同組合においては、組合定款に、組合理事は組合長一人を互選し、組合長は組合を代表 同三七年六月三〇日まで、その変更登記を怠つたとして、過料に処したものである。 ところで、記録によると、本件A町農業協同組合においては、組合定款に、組合理事は組合長一人を互選し、組合長は組合を代表し、組合業務を処理する権限を有し(定款第三一条第三二条)、それ以外の理事の責務は理事会の構成員として理事会の決議に参加する(定款第三四条)が、組合の代表権限は勿論、その業扮の直接の処理権限をも有しないものであることが認められる。 <要旨>農協法第八五条第一項は、同法第七四条第二項の変更登記は、組合の理事の申請に因つてこれをなす旨定</要旨>め、更に同法第一〇一条第一九号によると、右登記を怠つた役員は一万円以下の過料に処する旨定めているのであり、これらの規定の文言からすれば、変更登記義務は各理事がそれぞれ負担しており、従つて、その懈怠が存するときには、全理事が罰せられると解せられないこともない。 しかしながら、農協法第四一条民法第五三条第五四条の規定によれば、農協法においても、民法上の法人と同様に、農業協同組合は定款等によつて理事の代表権限に制限を加えることがあり得ることは予定しているところであり、このように、定款等によつて理事の権限が制限され、組合の代表権限及び業務処理権限が特定の理事にのみ存する旨定められ、組合の業務がこの定めに従つて運営され、他のいわゆる平理事は、理事会の構成員に過ぎないような実体が存する場合においては、前記のような変更登記(これも組合業務の一種である)をすることは、前記法律の規定及び定款等の定めによつて、代表権限のある理事がすべきことであり、従つて、その登記懈怠の責任は、代表権限のある理事のみがこれを負担するのが相当であると解すべきである。 もつとも、右のような変更登記を含む農協法において定められた各種の登記に関する きことであり、従つて、その登記懈怠の責任は、代表権限のある理事のみがこれを負担するのが相当であると解すべきである。 もつとも、右のような変更登記を含む農協法において定められた各種の登記に関する規定は、公益的な理由に基づく強行性を有するものと解されるから、これに基づく登記義務はいわゆる公法上の義務であつて、組合の定款、規約その他総会の決議等によつて勝手にこれと相容れない事項を定めても、これを根拠にその義務を免れ得ないとも解せられる。しかしながら、右のように解するとしても、このような登記義務は、理事が数人ある場合においては、その内の一人の理事が義務を履行すれば、その義務は完全に果され、他の理事の義務は一切無くなる性質のものであり、かつ、登記義務懈怠に対する処罰は、いわゆる行政上の秩序罰であり、その行為が社会的な非難に値するとか、或は、行政秩序を直接に侵害するという種類のものではなく、単純な義務違反であり、いわば行政秩序の間接的な侵害にすぎない性質のものであるから、要はそのような義務懈怠を予防するために十分なものであれば、処罰を科する法の目的は十分に達せられるものということができる。このことは、農協法においても、農業協同組合中央会に関しては、代表権限についての規定を置いた上、変更登記等についてその代表者(会長)のみをその義務者と定めている(同法第八五条)のであり、また、商法上の代表役員の定めのある合名会社、株式会社等に関する変更登記については、代表社員、代表取締役のみをその登記義務者と定めている(非訟事件手続法第一八〇条第一八八条)ことからしても、裏付けされる。このような登記義務懈怠の責任の性質、これを処罰する法の目的に鑑みるときは、登記義務が公法上の義務であるとしても、定款等によつて代表理事が定められている場合は、その代表理事のみを処 、裏付けされる。このような登記義務懈怠の責任の性質、これを処罰する法の目的に鑑みるときは、登記義務が公法上の義務であるとしても、定款等によつて代表理事が定められている場合は、その代表理事のみを処罰すれば必要にしてかつ十分であり、それ以外の理事をも重ねて処罰するというようなことは、法の予定していたところではないし、また合理的な根拠のないものというべきである。 本件A町農業協同組合の業務処理は前認定の通りであり、また本件変更登記懈怠期間中の組合長であつたB及びCは、いずれも右登記懈怠について過料に処せられていることは記録によつて明らかであるから、右登記解怠期間中に理事であつた抗告人らを重ねて処罰することはできないものといわなければならない。 本件抗告申立は理由があるから、抗告人らを過料に処した原決定を取消し、抗告人らを処罰しないこととし、主文の通り決定する。 (裁判長裁判官渡辺進裁判官水上東作裁判官石井玄)

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