平成19年(ワ)第577号損害賠償請求事件(第1事件),平成19年(ワ)第920号損害賠償請求事件(第2事件)主文 第1事件被告・第2事件被告(以下「被告」という。)は,第1事件原告・第2事件原告(以下「原告」という。)に対し,30万円を支払え。 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,これを10分し,その9を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 事実 及び理由第1請求(第1事件)被告は,原告に対し,148万円を支払え。 (第2事件)被告は,原告に対し,232万1405円を支払え。 第2事案の概要本件は,原告が,原告所有の別紙物件目録記載の土地建物(以下「本件土地建物」といい,特に建物を「本件建物」という。)に設定された抵当権が実行された際の競売手続においてなされた競売開始決定及び引渡命令の公示送達による送達が違法かつ無効であり,それによって原告が競売手続に関与する機会を失い,本件建物内に保管していた動産類及び本件建物を保全することができなかったとして,国に対し,本件建物内に保管していた動産類を失ったことの財産的損害ないし精神的損害に対する賠償として148万円(第1事件)及び本件建物を失ったことの財産的損害ないし精神的損害に対する賠償として232万1405円(第2事件)の各支払を求めた事案である。 争いのない事実等(1) 原告は,平成9年3月10日,本件土地建物を訴外C株式会社から購入した際,訴外住宅金融公庫から訴外財団法人公庫住宅融資保証協会(以下「訴外保証協会」)の信用保証付で580万円を借り受け(以下「本件金銭消費貸借契約」という。),同日,本件土地建物に抵当権(以下「本件抵当権」という。)を設定し,その旨の抵当権設定登記をした。(甲1,乙1)(2)ア原告は,訴外保証協会と を借り受け(以下「本件金銭消費貸借契約」という。),同日,本件土地建物に抵当権(以下「本件抵当権」という。)を設定し,その旨の抵当権設定登記をした。(甲1,乙1)(2)ア原告は,訴外保証協会との間で,同日,訴外保証協会が本件金銭消費貸借契約に基づく原告の債務を保証する旨の保証委託契約(以下「本件保証委託契約」という。)を締結した。 イ原告は,平成15年1月9日の支払を最後に,本件金銭消費貸借契約に基づく債務の弁済を怠ったことから,訴外保証協会は,平成16年7月26日,訴外住宅金融公庫に対し,本件保証委託契約に従い,本件金銭消費貸借契約に基づく残債務276万1371円を代位弁済し,本件抵当権を取得し,その旨の移転登記を受けた。(乙1,2)ウ訴外保証協会は,名古屋地方裁判所に対し,本件抵当権に基づき,本件土地建物の競売を申し立てたところ,同裁判所は,平成16年9月15日,本件土地建物について競売を開始する旨の決定(以下「本件競売開始決定」という。)をした上で(本件競売開始決定に基づいて行われた競売手続を,以下「本件競売手続」という。),債務者兼所有者である原告に対しては,公示送達によって本件競売開始決定の正本を送達し,同送達は,平成16年11月20日に送達の効力が発生した。(弁論の全趣旨)その後,執行官による現況調査及び評価人による評価等を経て,平成17年3月23日,本件土地建物について最高価買受申出をした訴外Bに対し,365万6644円で売却する旨の売却許可決定をしたが,その後,Bからの申立てを受けて発せられた本件土地建物の引渡命令(以下「本件引渡命令」という。)についても,公示送達の方法によって原告に対して送達を行い,同送達は,平成17年5月21日に送達の効力が発生した。 (乙2,3の1,3の2,14)(3) Bは,平成1 以下「本件引渡命令」という。)についても,公示送達の方法によって原告に対して送達を行い,同送達は,平成17年5月21日に送達の効力が発生した。 (乙2,3の1,3の2,14)(3) Bは,平成17年6月23日,本件引渡命令の執行に基づき,本件土地建物の引渡しを受けたが,その際,執行官は本件建物内にあった動産類のうち一部を執行官保管としてBに保管を委託し,その余の動産類については無価値であるとしてBに廃棄を指示した。そして,同年7月11日,執行官保管の扱いとされていた動産について競り売りが実施され,Bがこれらを買い受け,その売却代金についてはBが競り売りまでの間の保管料として執行官から受領した。(甲3,乙4,5,6,11の1,11の2,14) 争点 (1) 執行裁判所の担当書記官が,本件競売開始決定及び本件引渡命令の各正本を公示送達によって原告に送達したことが違法であり,そのことに過失はあるか。 (原告の主張)ア本件競売手続において,本件競売開始決定及び本件引渡命令の各正本は,公示送達によって原告に送達されたものであるが,それらの当時,原告は刑務所で服役中であったところ,執行裁判所の担当書記官は,原告の住居所等について十分な調査をしないで公示送達を実施したものであって,違法かつ無効である。 イ(ア) 訴外保証協会が執行裁判所に提出した公示送達申立書及び同申立書に添付された調査報告書においても近隣住民からの聴取内容として「(原告は)刑務所に服役中」との記載がされていたことからも明らかなとおり,担当書記官において,本件競売手続の当時,原告が刑務所で服役中であったことは,容易に知り得た。 (イ) 原告が賃借していた公団住宅に関して賃貸人である訴外都市基盤整備公団から提起された建物明渡及び滞納家賃等の支払請求訴訟(名古屋地方裁判所平成 刑務所で服役中であったことは,容易に知り得た。 (イ) 原告が賃借していた公団住宅に関して賃貸人である訴外都市基盤整備公団から提起された建物明渡及び滞納家賃等の支払請求訴訟(名古屋地方裁判所平成15年(ワ)第3285号)においては,平成15年9月18日に原告が服役していたF刑務所の所長宛てに訴状が送達されているのであり,訴外都市基盤整備公団において原告の所在を知ることができていることからしても,執行裁判所の担当書記官において原告の住居所等について十分な調査をしていれば,原告の所在を確認することは容易であった。 (被告の主張)ア国家賠償法1条1項の「違法性」とは,公務員の個々の国民に対する職務上の法的義務違背がある場合をいうものであるところ,本件競売手続において,本件競売開始決定及び本件引渡命令の各正本の原告に対する送達は,債権者からの申立てを受けて,執行裁判所の担当書記官の判断により,公示送達によって行われることになったが,公示送達の可否を判断するための証明資料の収集及びこれに対する判断は裁判所書記官の裁量に属するものであり(民事訴訟法110条),執行裁判所の担当書記官は,相当と認められる方法によって収集した証明資料に基づいて判断すれば足りるのであって,証明資料の収集につき裁量権の範囲を逸脱し,あるいはこれに基づく判断が合理性を欠くなどの事情がない限り,担当書記官の判断は適法であると解するのが相当である。 しかして,本件競売手続において実施された公示送達は,以下のとおり,執行裁判所の担当書記官の裁量の範囲内のものであって,公示送達を実施したことについて担当書記官に過失はない。 イ(ア) 裁判所書記官が公示送達の可否を判断するにあたっては,①受送達者の最後の住居所等はどこか,②最後の住居所等に受送達者が居住,又は存在していないか したことについて担当書記官に過失はない。 イ(ア) 裁判所書記官が公示送達の可否を判断するにあたっては,①受送達者の最後の住居所等はどこか,②最後の住居所等に受送達者が居住,又は存在していないか,③就業場所がないか,又は判明しないか,の3つの観点から検討することになるが,これらの証明資料として,通常,申立人からは,受送達者の住民票の写し,申立人等が作成した調査報告書,近隣住民に対する聴取書などが提出される。 (イ) 本件競売手続の執行裁判所の担当書記官は,公示送達を実施するに先立ち,原告の住民票上の住所地に宛てて2度にわたり本件競売開始決定の正本の送達を試み(いずれも「全戸不在」の理由で功を奏しなかった。),その後に申し立てられた公示送達の申立書に添付されていた住民票の写し及び調査報告書を検討し,さらに,執行官作成の現況調査報告書に,「目的物件の状況から,留守状態ではあるものの,所有者が依然として占有しているものと認められる」旨の記載があること等を総合考慮した上で,公示送達を実施したものであり,担当書記官の判断に何ら過失は存在しない。 ウ(ア) また,公示送達の申立てに対して,裁判所書記官は,証明資料が不足している場合には,申立人に対し,証明資料の追加提出を促し,申立人において証明資料の追加提出が困難な場合には,裁判所の判断により職権で調査嘱託をすることも可能である(民事訴訟法186条)。 (イ) 本件において,申立人から証明資料として提出された調査報告書には,近隣住民からの聴取内容として,「静岡方面の刑務所に服役中と聴く」旨の記載があったものの,当該情報は,風評程度の漠然としたものにすぎず,申立人からも,確証がない旨の報告がされていたこと等の事情からすれば,当該情報は裁判所による職権調査の端緒となるようなものではないし,本件競売 ものの,当該情報は,風評程度の漠然としたものにすぎず,申立人からも,確証がない旨の報告がされていたこと等の事情からすれば,当該情報は裁判所による職権調査の端緒となるようなものではないし,本件競売手続の当時,個人情報の保護に関する法律が施行され,行政機関においても,個人情報については必要以上の不開示措置が取られていた傾向にあったという事情があり,仮に,担当書記官において更なる調査をしたとしても確実な情報の収集が期待できる状況にはなかったのであるから,申立人に対して補充調査を促すこと又は裁判所による職権調査を行うことをせずに公示送達を実施した担当書記官に過失があるとはいえない。 エ(ア) 法務省においては,現在,裁判所から,法務省矯正局成人矯正課宛に民事訴訟法訴法102条3項の送達実施を理由として服役中であるか否かについて書面照会がされた場合,成人矯正課長名によって回答するという取扱いが一般に採られているとのことであるが,本件競売開始決定及び本件引渡命令の各正本が送達された平成16年ないし平成17年当時において,そのような取扱いが法務省において採用されていたのかは必ずしも明らかではない。 (イ) 仮に,本件競売手続の当時,法務省矯正局成人矯正課において,上記取扱いが採用されていたとしても,原告が刑務所で服役中であるという情報が,漠然かつ不明確なものであったという事情の下では,更に原告の住居所等を調査すべき義務が裁判所書記官に具体的に発生するといえるものではなく,本件競売手続の執行裁判所の担当書記官が原告に対する送達について公示送達に付することとした判断について,裁量を逸脱したものとはいえない。 (2) 損害との因果関係の有無(原告の主張)ア本件競売手続において,原告が服役中の刑務所に本件競売開始決定及び本件引渡命令の送達を受けて とした判断について,裁量を逸脱したものとはいえない。 (2) 損害との因果関係の有無(原告の主張)ア本件競売手続において,原告が服役中の刑務所に本件競売開始決定及び本件引渡命令の送達を受けていれば,訴外保証協会との間で債務の弁済について交渉して競売の実施を延期させることもできたし,本件建物内に保管していた動産類についても,原告の子供らや知人,弁護士に連絡を取り,本件建物内から動産類を運び出して他で保管してもらうなどして処分されることを回避することができた。 イ原告は,平成16年8月31日に成立した民事調停(名古屋簡易裁判所平成14年(交)第45号)により,同年9月ころ,民事調停の相手方から解決金として150万円の支払を受けており,そのうちの100万円前後を訴外保証協会に対する債務の弁済に充てることができたから,それによって本件競売手続の実行を猶予してもらうことができた。 (被告の主張)ア原告は,本件土地建物について住宅ローン債務の支払義務を認識していたにもかかわらず,原告は,拘禁後,家族や第三者を介して債務の弁済に努めるなどして債務者としての支払義務を履行しようと努力した形跡は全く窺われず,本件競売手続が申し立てられたのは,原告による住宅ローン債務の滞納という債務不履行が原因であって,本件土地建物について抵当権の実行によって競売に付され,結果として本件建物内に保管していた動産類を本件競売手続により喪失したことは,原告の責めに帰すべき事由によって招来された結果であり,また,仮に,原告に対して本件競売開始決定及び本件引渡命令の各正本が送達されていたとしても,原告において家族,知人,弁護士等に連絡して本件建物内に保管していた動産類について何らかの対応を取ることができたともいえないから,本件競売手続における送達と原告が本件建物内 送達されていたとしても,原告において家族,知人,弁護士等に連絡して本件建物内に保管していた動産類について何らかの対応を取ることができたともいえないから,本件競売手続における送達と原告が本件建物内に保管していた動産類を失ったこととの間に相当因果関係はない。同様に,仮に,原告に対して本件競売開始決定及び本件引渡命令の各正本が送達されていたとしても,結果において本件土地建物の競売を免れることはできなかったということに変わりはないのであるから,本件競売手続における送達と原告が本件土地建物を失ったこととの間には相当因果関係がない。 イ抵当権の実行に基づく競売手続を停止させるには民事執行法183条1項各号で定める要件が必要であるところ,原告が主張するような債務の一部の弁済によっては,本件競売手続を停止させることはできないものであるし,訴外保証協会に対する残債務が約270万円以上あったことからすれば,原告において訴外保証協会に対し100万円程度の弁済をしたからといって訴外保証協会が本件競売手続の申立てを取り下げたとは到底考えらず,この面からも,本件競売手続における送達と原告が主張する各損害との間には相当因果関係がない。 (3) 損害の発生及びその額(原告の主張)ア原告は,違法かつ無効な本件競売手続の実行により,本件土地建物を失い,さらに,本件建物内に保管していた動産類もこれを運び出す機会を与えられることなく全て失った。 イ(ア) 原告が本件建物内に保管していた動産類は,記念硬貨などの現金約20万円(ギザ付10円硬貨を除く。),ギザ付10円硬貨約1万5000円,記念切手約5万円,テレホンカード100枚くらい約7万5000円,革のコート1着約8万円,革とジーパンの上下1着約4万円,下着類約2万円,書籍類約13万円,ミニウイスキー約5万円,サイ 00円,記念切手約5万円,テレホンカード100枚くらい約7万5000円,革のコート1着約8万円,革とジーパンの上下1着約4万円,下着類約2万円,書籍類約13万円,ミニウイスキー約5万円,サイドボード約35万円,洋服ダンス約5万円,本棚約2万円,テレビ2台約20万円,パソコン一式約20万円,大工道具,同窓会名簿,アルバム,実印などであり,これらの時価合計は148万円を下らないところ,本件競売手続において,原告に対する送達が適法にされなかったことにより,原告は,これらの動産類を保全することができず,同額の財産的損害を受けた。 (イ) 仮に,原告が上記動産類の存在及び価格を証明できなかったとしても,本件建物内に保管していた家財道具一切を失ったことで,出所後の生活に著しい不便や困窮をきたし,多大な精神的苦痛を被っており,それに対する慰謝料は148万円を下らない。 ウ(ア) 本件建物の平成16年度の固定資産税評価額は232万1405円であり,時価は同額を下らないところ,本件競売手続において,原告に対する送達が適法にされなかったことにより,原告は,本件建物を保全することができず,同額の財産的損害を受けた。 (イ) 仮に,原告に本件建物についての財産的損害が認められなかったとしても,本件競売手続において,原告に対する送達が適法にされなかったことにより,原告の当事者としての手続上の権利が侵害され,多大な精神的苦痛を受けており(ただし,動産類を失ったことによる精神的苦痛を含まない。),それに対する慰謝料は232万1405円を下らない。 エ原告は,平成18年8月11日まで刑務所に収容されていたが,出所後,住む場所及び家財道具一切を失い,病を患っていたにもかかわらず,ホテルや車中で寝泊まりすることを余儀なくされ,多大な精神的苦痛を被った。 (被告 18年8月11日まで刑務所に収容されていたが,出所後,住む場所及び家財道具一切を失い,病を患っていたにもかかわらず,ホテルや車中で寝泊まりすることを余儀なくされ,多大な精神的苦痛を被った。 (被告の主張)ア原告が主張する動産類のうち,サイドボード,和タンス,洋服ダンス,整理タンス,書籍(大百科事典)は,本件土地建物についての引渡命令執行事件の事件記録中に記載があるものの,その評価額は,原告が主張する価額とは大きく異なっていることからして,原告が主張する動産類と同一のものであるか明らかとはいえず,その他の動産類については存在自体が明らかでない。 また,動産類の損害額は,購入時の価格ではなく,経年を考慮した減価をするか,又は動産喪失時における同種同等の代替品の購入費用等をもって算定すべきであり,損害額として購入代金を主張することは相当でない。 イ(ア) 財産権の侵害に基づいて精神的苦痛に対する損害賠償を請求するためには,侵害された財産権が被害者にとって特別の価値を有し,財産的損害の賠償だけでは,賄いきれない甚大な精神的苦痛を受けたと認められる特段の事情がなければならない。 (イ) 本件競売手続は,原告が住宅ローン債務を滞納したことが原因であり,本件競売手続で本件土地建物が売却されたことについて,原告に精神的損害が発生する余地は全くないし,本件建物内に保管されていたという動産類についても,原告にとって特別の価値を有する動産があったことを窺わせる事情はなく,動産類はいずれも通常の価値を有するものばかりであったと考えられ,本件において,原告が本件建物内に保管していた動産類を失ったことによる精神的損害は認められない。 さらに,原告が主張する動産類のうち,ギザ付10円硬貨,記念切手及びテレホンカードについては,競り売り調書に記載されておらず,少 内に保管していた動産類を失ったことによる精神的損害は認められない。 さらに,原告が主張する動産類のうち,ギザ付10円硬貨,記念切手及びテレホンカードについては,競り売り調書に記載されておらず,少なくとも競り売り期日前に本件建物から持ち出されていたものと考えられる。 ウ原告の主張によれば,動産の競り売り以前に,本件建物内にあった動産類の一部について,原告の長女が搬出したとのことである上,長女が搬出した動産類以外にも,その所在が明らかでない動産があるが,原告自身も他の子供によって搬出された可能性を否定できないことを認めていることからして,原告が失ったと主張する動産類を特定することは不可能である。 第3争点に対する判断 争点(1)(担当書記官の過失の有無)について(1) 証拠(甲2,3,4,乙1,2,3の1,3の2,4,5,6,10,13,14,17,18,20,21の1,21の2,原告本人)によれば,以下の事実が認められる。 ア本件競売手続の執行裁判所の担当書記官は,本件競売開始決定の正本の原告に対する送達について,原告の住民票上の住所地に宛てて送達を試みたが,不在のため不送達となり,次いで,休日送達を試みたが,同様に不送達となったことから,本件競売手続の申立人である訴外保証協会は,公示送達の申立てをするとともに,原告の住民票と訴外株式会社D銀行ローンプラザEの調査員が訴外保証協会に宛てて作成した平成16年10月29日付け調査報告書(以下「本件報告書」という。)を証明資料として提出した。 住民票上,原告の住所としては本件建物の所在地が登録されたままであり,転居先の記載はなかった。本件報告書には,平成16年10月29日の現地調査の結果として,原告は住民票を本件建物の所在地に残したままで転居先の住所,居所等は不明であること,マンシ 録されたままであり,転居先の記載はなかった。本件報告書には,平成16年10月29日の現地調査の結果として,原告は住民票を本件建物の所在地に残したままで転居先の住所,居所等は不明であること,マンションの住宅配置案内には本件建物につき「A」,一階の集合ポスト及び自室には「A」の表示があり,一階集合ポストの「A」の投函口にはガムテープが貼ってあって何も投函できなくしてあり,自室ドアの新聞受けは溢れ落ちるほどに郵便物,チラシが差し込まれ垂れ下がっていること,本件建物の電気は平成15年7月9日に,ガスは同年9月ころにそれぞれ使用停止となっていること,近隣住民からの聴取内容として,1名からは,「何も知らないが,かなり前からいない」,他の1名からは,「誰もいない。子供もどこかへ行ってしまった。」「原告が何かを起こして静岡方面の刑務所に服役中と聴く。」等の情報が得られたこと,「刑務所に服役中」との証言は,平成15年7月の現地調査時にも聴き込んでいるが,確証はなく,他に原告の転居先の住所,居所等について知る者はいないこと,原告の就業先については,平成14年10月にC株式会社を退職し,現在の就業先は特定できないこと等が記載されていた。 なお,訴外保証協会は,本件競売開始決定に先立ち,執行裁判所からの照会に対して,「不動産競売事件の進行等に関する照会書(回答)」と題する平成16年9月3日作成の書面を提出しているところ,同書面には,平成15年7月17日に現地調査をした際の近隣住民からの聴取内容として,「原告は静岡の刑務所にて受刑中」「妻はいない」「子供の出入りあり」との記載がされていた。 イ本件競売手続においては,本件競売開始決定の正本の送達に先立ち,本件土地建物について執行官による現況調査が行われているところ,執行官が作成した現況調査報告書によれば り」との記載がされていた。 イ本件競売手続においては,本件競売開始決定の正本の送達に先立ち,本件土地建物について執行官による現況調査が行われているところ,執行官が作成した現況調査報告書によれば,平成16年9月28日に実施した近隣住民からの聴取内容として,「本件建物は,以前は原告とその家族が居住していたが,この1年程は姿を見ておらず,現在は誰も居住していないようである」旨,管理組合長からの聴取内容として,「本件建物は,以前は原告が家族と共に居住していたが,この1年程前からは不在となっており,現在は電気も停止されているようである。所有者の家族以外の者が居住しているようなことはない。管理費は,平成15年1月分以降,滞納しており,平成16年9月末現在,滞納額の合計は29万4000円になっている。」旨が記載されており,また,執行官の意見として,郵便受け及び入居者の表示板には「A」の表示があり,居室内には原告宛の郵便物,請求書等が多数存在し,電気メーターに付けられていた紙札には,平成15年7月9日契約廃止の記載があるといった状況や近隣住民(管理組合長を含む)からの聴取内容から,本件建物は,留守状態ではあるものの,原告が依然として占有しているものと認められるとの記載がされていた。 ウその後,本件土地建物は,Bに売却されたが,同人から,原告による占有が続いているとして本件土地建物の引渡命令が申し立てられたことから,執行裁判所は,平成17年5月19日,本件引渡命令を発したところ,担当書記官は,原告に対する本件引渡命令の正本の送達手続を公示送達によって行った。 エ原告は,平成14年12月28日,刑事事件を起こし,静岡県内の拘置所に収容され,その後,刑事裁判において実刑判決を受け,同判決が確定したことから,平成15年1月31日,F刑務所に移送され った。 エ原告は,平成14年12月28日,刑事事件を起こし,静岡県内の拘置所に収容され,その後,刑事裁判において実刑判決を受け,同判決が確定したことから,平成15年1月31日,F刑務所に移送され,平成18年8月11日まで服役生活(以下「本件服役」という。)を送っていた。なお,原告は,服役中に,病気治療のため,一時期,G刑務所に収容されていたことがある。 オ原告に対しては,訴外都市基盤整備公団から原告の息子が原告名義で賃借していた公団住宅について建物明渡及び滞納家賃等の支払請求訴訟(平成15年(ワ)第3285号)が提起されたことがあるところ,同事件の原告に対する訴状は,平成15年9月18日,原告が収容されていたF刑務所の所長に宛てて送達がなされ,原告に届いたことから,原告においては,受訴裁判所に上申書を送るなどして対処していた。 (2)ア本件競売手続の当時,原告は刑事施設(F刑務所等)に収容され,在監中であったから,本件競売開始決定及び本件引渡命令の各正本の原告に対する送達は,本来,原告が在監していた刑事施設の長に宛ててされなければならなかったところ,いずれも公示送達がされたというのであるから,送達の効力は有しないと解される(民事訴訟法102条3項参照)。 ところで,民事訴訟関係書類の送達事務は,受訴裁判所(執行事件では執行裁判所)の裁判所書記官の固有の職務権限に属し,裁判所書記官は,原則として,その担当事件における送達事務を民事訴訟法の規定に従って独立して行う権限を有するものであるところ,公示送達の許否を含め,送達場所の認定に必要な証明資料の収集については,担当書記官の裁量に委ねられているものと解される。 したがって,裁判所書記官は,相当と認められる方法により収集した証明資料に基づいて,送達場所を判断すれば足りるのであって,その 資料の収集については,担当書記官の裁量に委ねられているものと解される。 したがって,裁判所書記官は,相当と認められる方法により収集した証明資料に基づいて,送達場所を判断すれば足りるのであって,その証明資料の収集につき裁量権の範囲を逸脱し,あるいはこれに基づく判断が合理性を欠くなどの事情がない限り,裁判所書記官のした送達は適法であると解するのが相当である(最高裁平成10年9月10日第一小法廷判決・裁判集民事189号703頁参照)。 もっとも,公示送達は,裁判所書記官が送達書類を保管し,いつでも受送達者に交付する旨を裁判所の掲示板に掲示して行う送達であるところ(民事訴訟法111条),同送達方法は,送達場所の不明等によって受送達者に送達書類を交付できない場合に,一定期間の交付を受ける機会を与えたことをもって送達を完了させる制度であり,受送達者が了知する可能性がある場所に送達書類を実際に送付する他の送達方法とは決定的に異なるものであり,他の送達方法によることのできない場合に選択される,いわば最後の手段である。 そうすると,このような公示送達の性質及び受送達者が民事裁判手続に関与する機会の保障という意義に照らせば,裁判所書記官が公示送達を行うにあたっては,受送達者の最後の住所,転居先,その他就業場所等の送達すべき場所が見当たらないことの客観的事情を証明するに足りる資料を収集するよう努めるべきであり,また,それによって得られた情報を総合的に考慮してもなお送達すべき場所が不明であるか否かを合理的に判断しなければならないものと解するのが相当である。 イそこで,本件競売手続の執行裁判所の担当書記官が本件競売開始決定及び本件引渡命令の各正本を公示送達したことについて過失があったか否かについて検討するに,前記認定事実によれば,担当書記官は,公示送達の こで,本件競売手続の執行裁判所の担当書記官が本件競売開始決定及び本件引渡命令の各正本を公示送達したことについて過失があったか否かについて検討するに,前記認定事実によれば,担当書記官は,公示送達の申立書に添付された住民票によって,本件建物の所在地が原告の住民票上の住所となっていることを確認するとともに,申立人である訴外保証協会から提出された調査報告書である本件報告書には,本件建物の電気,ガスは1年以上前から使用されていない状況にあること,近隣住民からの聴取内容として,本件建物には1年以上前から誰も居住していないこと,原告の就業場所も不明であることなどが記載されていたのであるから,担当書記官としては,原告の住居所等が不明であると認定するに足りる証明資料があるものと考えたとしてもあながち不合理とはいえないとも考えられるところである。 ウしかしながら,前記認定事実によれば,本件報告書には,平成16年10月29日の現地調査の結果,近隣住民からの聴取内容として,現在は誰もおらず,子供もどこかへ行ってしまったが,原告は何かを起こして,静岡方面の刑務所に服役中と聴いている旨記載され,「刑務所に服役中」との証言は,平成15年7月の現地調査時にも聴き込んでいることが記載されており,執行裁判所が,本件競売開始決定に先立って,訴外保証協会に対して照会を行った際の回答として訴外保証協会が提出していた平成16年9月3日作成の「不動産競売事件の進行等に関する照会書(回答)」には,平成15年7月17日の現地調査時の近隣住民からの聴取内容として,「原告は静岡の刑務所にて受刑中であり,妻はいないが,子供の出入りがある」旨の記載がされていたことが認められるところ,これらの「刑務所に服役中」との情報は,静岡あるいは静岡方面の刑務所(実際にも,原告は,刑事事件を起こし 受刑中であり,妻はいないが,子供の出入りがある」旨の記載がされていたことが認められるところ,これらの「刑務所に服役中」との情報は,静岡あるいは静岡方面の刑務所(実際にも,原告は,刑事事件を起こして未決時には静岡県内の拘置所に収容されていたものであり,拘置所を刑務所と誤ってはいるものの,客観的事実に符合する情報であったとも考えられるものである。)と,ある程度の具体性を伴うもので単に風評のたぐいを述べているとは言い切れないものがあり,また,平成15年7月の情報提供者と平成16年10月の情報提供者が同一人であるかどうかは不明であるが,こうした情報の提供者からは,原告に妻がいないことや,原告が服役してからも当初は子供が本件建物に出入りしていた時期があったことなど家族の状況についても言及され,全体として信憑性を窺わせる内容であったことを併せ考えれば,信憑性のありうる(実際に原告が刑事事件を起こして実刑判決を受けて服役中であることを知っている者から直接又は間接に伝わったなど)情報である可能性を相当程度示唆するものであったといえるものであり,確かに,本件報告書には,「刑務所に服役中」という情報について確証はないと記載はされているものの,他には「他に原告の転居先の住所,居所等につき知る者もない。」と記載されているのみで,確証の有無についていかなる裏付調査をしたのかについては何らの記載もされていないことからすると,確証がないとの記載があることをもって原告の所在が不明であるとして公示送達が相当であるとの判断をするには,相当に疑問の余地があるというべきである。したがって,近隣住民からの原告が「(静岡ないし静岡方面の)刑務所に服役中」との情報が果たして根拠のあるものか否かについて,なお補充調査をして確認をすることが必要であったと言わざるを得ず,かかる確 したがって,近隣住民からの原告が「(静岡ないし静岡方面の)刑務所に服役中」との情報が果たして根拠のあるものか否かについて,なお補充調査をして確認をすることが必要であったと言わざるを得ず,かかる確認のための補充調査をせずして直ちに公示送達を実施することは,送達が裁判所書記官の裁量に属することとはいっても,収集した情報を踏まえての判断としては,合理性を欠くものというべきである。 とりわけ,民事訴訟関係書類の送達手続においては,近隣住民からの聴取が,受送達者の住居所等が所在不明であることを客観的に証明する有力な情報の一つとして実務的によく利用されているところ(乙8,15参照),刑事施設に収容されている者に対する送達は刑事施設の長に行わなければ無効になってしまうものであり(民事訴訟法102条3項),在監者については身近な親族等からの情報を除けば近隣住民から聴取だけでは在監中であることについて確証ある情報が得られることは相当に困難であって,近隣住民からの服役中との情報には,単に風評のたぐいにとどまるものもあれば,実際に受送達者が刑事事件で実刑判決を受けて服役中であることを知っている者から伝わったような信憑性のある情報である場合もあり,後者の場合であっても近隣住民に面談して聴取するのみでは確証が得られないことが多く,さりとてこうした近隣住民からの情報を確証がないとしてすべて無視すれば受送達者が在監中であることを容易に看過する結果にもなりかねない。そうすると,信憑性のある情報か否かについて判断に迷う場合,裁判所であれば,関係官公署に対する照会等を行ったり,公示送達の申立人に補充調査を指示したりするによって情報の真偽を明らかにすることが可能であることからして,刑事施設に収容されているという情報があり,それが相応に具体性があり,かつ,信憑性があり り,公示送達の申立人に補充調査を指示したりするによって情報の真偽を明らかにすることが可能であることからして,刑事施設に収容されているという情報があり,それが相応に具体性があり,かつ,信憑性がありうると考える余地がある情報であって,風評のたぐいにとどまるものとはにわかに断じ難い場合(収集した情報からは,受送達者が所在不明であると判断するには,なお「合理的疑い」が残る場合と言い換えることができる。)には,それが信憑性のある情報か否か(ないしその情報の真偽)について更に相当な方法で補充調査を行い,その確認をすることによってはじめて,裁判所書記官として,受送達者の所在が客観的に不明であると合理的に判断し得るものである。 しかるに,本件全証拠を検討しても,本件競売手続の執行裁判所の担当書記官が上記の情報をもとに,関係官公署に問い合わせたり,あるいは,訴外保証協会に対し補充調査の実施を指示したりして,原告が刑事施設に収容されている可能性について検討した形跡は何ら見当たらない。 エそうすると,本件競売手続の執行裁判所の担当書記官が,本件競売開始決定及び本件引渡命令の各正本について原告に対して公示送達を行うことができると判断したことは,本件事案の下にあっては,いずれも合理性を欠くものであったと認められるから,原告に対する送達が無効であったことについて,担当書記官に過失があったものといわざるを得ない。 また,前記認定事実及び弁論の全趣旨からすれば,本件事案において,担当書記官が上記の補充調査を行い,「刑務所に服役中」との情報の真偽を確認しておれば,原告が在監中であったことが判明した蓋然性が高いと認められ,担当書記官の過失と原告が在監中の刑務所に本件競売開始決定及び本件引渡命令の各正本の送達を受けられなかったこととの間には相当因果関係があるものと認 監中であったことが判明した蓋然性が高いと認められ,担当書記官の過失と原告が在監中の刑務所に本件競売開始決定及び本件引渡命令の各正本の送達を受けられなかったこととの間には相当因果関係があるものと認められるというべきである。 争点(2)(原告の損害額について)(1) 証拠(甲5,6,乙2,原告供述)によれば,以下の事実が認められる。 ア平成16年7月26日当時,訴外保証協会の原告に対する債務は,合計276万1371円(元金269万3899円,利息6万7472円)であった。(乙2)イ(ア) 原告は,平成13年7月14日,普通乗用自動車を運転していたところ,訴外Hが運転する自動車に追突されるという交通事故により受傷したことから,翌年,Hに対して損害賠償請求を目的とする民事調停を名古屋簡易裁判所に申し立て(平成14年(交)第45号),平成16年8月31日,Hが原告に対し,同年9月30日限り,解決金として150万円を原告代理人J(以下「調停担当弁護士」という。)名義の預金口座に振り込む方法により支払う旨の民事調停が成立した(以下「本件調停」という。)。 (イ) 原告は,平成13年当時,C株式会社に勤務し,タクシー運転手として稼働していたが,上記交通事故により受傷して入院し,退院後はタクシー運転手として稼働することができず,その後,同会社を退職した。 ウ(ア) Hは,平成16年9月30日ころ,本件調停に基づいて150万円を調停担当弁護士に支払い,同弁護士は,間もなくして,これをG刑務所に収容中の原告に送金した。 (イ) 原告が調停担当弁護士から150万円を受領したころ,原告の知人である訴外Iから原告に対して連絡があり,原告の子の一人が車検代等の支払のため金銭が必要であること,Iも当時破産して困窮していたこと等から,それぞれに25万円ずつを 0万円を受領したころ,原告の知人である訴外Iから原告に対して連絡があり,原告の子の一人が車検代等の支払のため金銭が必要であること,Iも当時破産して困窮していたこと等から,それぞれに25万円ずつを贈与することとし,子に対しては,直接連絡が取れなかったことから,Iを介して25万円を送金し,Iに対しても25万円を送金したが,同年12月ころから,Iとは連絡が取れなくなった。 エ(ア) 原告には,子が6人いるが,原告が服役した後は,連絡がとれない状態になった。 (イ) 原告には,愛知県豊橋市内に居住する実兄がおり,本件服役後もしばらくは手紙で連絡を取ることができていたもので,上記調停により取得した150万円の残りを預けるなどしたが,その後,兄に宛てて手紙を送っても転送の方法により返送されてくるようになり,連絡がとれなくなった。 (2) 原告の財産的損害についてア前記認定事実によれば,原告には子が6人いるが,服役後はいずれも連絡をとることができず,服役中に実兄とも連絡を取ることができない状態になったというのであって,面会に訪れたことがあるという知人のIも,平成16年12月ころからは連絡をとることができなかったというのであるから,原告が,親族ないし親しい知人等を通じて,本件建物内に保管中の動産類等の引取りや,その管理あるいは本件競売手続の取下げに向けた訴外保証協会との交渉等を依頼することは極めて困難であったと考えられる。また,原告は,平成16年10月ころには,交通事故の解決金として150万円の支払を受け,同年11月ころ以降においても,100万円程度の現金を有していたことからすると,弁護士等に依頼して一定の対処をすることも可能であったとはいえるものの,動産類の保管には保管場所の確保が必要であり,親族ないし親しい知人の協力が得られなければ,費用 の現金を有していたことからすると,弁護士等に依頼して一定の対処をすることも可能であったとはいえるものの,動産類の保管には保管場所の確保が必要であり,親族ないし親しい知人の協力が得られなければ,費用もかかることであり,また,本件競売手続の延期や取下げを求めることについては,その債務残高からして容易でなかったと考えられるところである。 イしたがって,原告の主張する財産的損害と担当書記官が本件競売開始決定及び本件引渡命令の各正本を原告に対し公示送達したこととの間に相当因果関係があるとは,本件全証拠によっても認めるには足りないから,財産的損害に基づく賠償請求を認めることはできない。 (3) もっとも,原告は,本件競売開始決定及び本件引渡命令の各正本について有効な送達を受けることができなかったことにより,本件建物内に保管していた動産類を本件建物から運び出して保全したり,あるいは,本件競売手続について,債権者との間で債務の一部弁済を条件に競売の延期や取下げを求めて交渉するなどの機会を得られなかったものであって,仮に,動産類の保全といってもどの程度のことをなし得たか相当に疑問があり,本件競売手続の停止や取下げを実現することが極めて困難であったとしても,そのような対処の機会をまったく与えられないまま,自宅である本件建物と本件建物内に保管していた家財道具一切を失い,出所後にはじめてそうした事態を認識し,住むところもなく,着替えはもとより,身の回りの品や愛着のある思い出の品を含め,家財道具一切を失っている事態に直面するに至ったことについては,本件競売の当事者として弁護士等に依頼するなどして対処する機会を得られなかったことに基づく精神的損害がなかったということはできない。 そして,本件競売手続の当時,原告が服役中であって,親族ないし親しい知人等の協力を として弁護士等に依頼するなどして対処する機会を得られなかったことに基づく精神的損害がなかったということはできない。 そして,本件競売手続の当時,原告が服役中であって,親族ないし親しい知人等の協力を得て上記のような対処をすることはほとんど困難な状況にあり,残る方法としては,弁護士等に依頼して対処するしか現実的な方法はなかったと考えられる状況にあったところ,前示認定のとおり,原告は,本件競売開始決定の正本が公示送達された平成16年11月ころ,本件調停によって150万円の解決金の支払を受けていたのであるから,原告の期待する結果が得られるか否かは別として,原告において,弁護士等に依頼することも不可能ではなかったと考えられるところである。 そこで,本件に現れた一切の事情を総合考慮すると,原告が,本件競売手続について,弁護士等に依頼するなどして対処する機会を得られなかったことの精神的苦痛に対する慰謝料としては,30万円と認めるのが相当である(競売手続において債務者兼所有者として手続的な保障を受ける地位を侵害されたことによる慰謝料ということができるところ,弁護士等に依頼する場合には,着手金等一定の費用を要することではあるけれども,自己の権利・利益を確保するために法的に可能な方法で対処することができることを保障することが民事手続法の本旨であり,また,原告がそうした手続的機会を得られないまま直面した事態の深刻さなどを考慮すれば,慰謝料としてやむを得ない金額というべきである。)。 第4 結論 以上の次第で,原告の本訴請求は,主文第1項の限りで理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却し,仮執行の宣言は相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第7部裁判長裁判官田近年則裁判官井上博 認容し,その余は理由がないからこれを棄却し,仮執行の宣言は相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第7部裁判長裁判官田近年則裁判官井上博喜裁判官池田幸子(別紙)物件目録 所在豊明市a町b地番c番d地目宅地地積1997.59平方メートル(共有者A持分35分の1)2(一棟の建物の表示)所在豊明市a町bc番地d構造鉄筋コンクリート造陸屋根5階建床面積1階215.32平方メートル2階215.32平方メートル3階215.32平方メートル4階215.32平方メートル5階215.32平方メートル(専有部分の建物の表示)家屋番号a町be番地f建物の番号g-h種類居宅構造鉄筋コンクリート造1階建床面積2階部分51.63平方メートル以上
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