令和6年7月4日判決言渡 令和5年(ネ)第10053号損害賠償請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和2年(ワ)第17104号) 口頭弁論終結日令和6年2月27日判決 控訴人兼被控訴人株式会社マネースクエアHD(以下「1審原告」という。) 同訴訟代理人弁護士伊藤真、丸田憲和、牧野知彦、平井佑希 同訴訟代理人弁理士石井明夫 同補佐人弁理士佐野弘 被控訴人兼控訴人株式会社外為オンライン(以下「1審被告」という。) 同訴訟代理人弁護士木村久也、中島慧、岡田紘明、茨城雄志、松原敦也 主文 1 原判決を次のとおり変更する。 (1) 1審被告は、1審原告に対し、4356万5491円及びこれに対する平成31年3月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 1審原告のその余の請求を棄却する。 (3) 1審被告の控訴を棄却する。 2 訴訟費用は、第1、2審を通じて、これを50分し 月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 1審原告のその余の請求を棄却する。 (3) 1審被告の控訴を棄却する。 2 訴訟費用は、第1、2審を通じて、これを50分し、その48を1審原告の負担とし、その余を1審被告の負担とする。 3 この判決の1項(1)は、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 1審原告(1) 原判決主文第1項及び第2項を次のとおり変更する。 (2) 1審被告は、1審原告に対し、4億2014万9093円及びこれに対する平成31年3月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 1審被告(1) 原判決中、1審被告敗訴部分を取り消す。 (2) 上記部分につき、1審原告の請求を棄却する。 第2 事案の概要 1 事案の要旨 本件は、発明の名称を「金融商品取引管理装置、金融商品取引管理システム、金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法」とする発明に係る特許(特許第6154978号。以下「本件特許」という。)の特許権者である1審原告が、1審被告に対し、1審被告が「iサイクル注文」との名称の外国為替取引管理方法に係るサービス(以下「被告サービス」という。)を原判決別紙被告サーバ目録記 載のサーバ(以下「被告サーバ」という。)からインターネット回線等を通じて顧 客に提供したことにつき、被告サーバが本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲に属するものであり、被告サーバの使用が本件発明の実施に当たると主張して、不法行為に基づき、11億9000万円(特許法102条1項、2項又は3項による損害金並びに弁護士費用及び弁理士費用。なお、同条1項又は3項による損害金との関 の使用が本件発明の実施に当たると主張して、不法行為に基づき、11億9000万円(特許法102条1項、2項又は3項による損害金並びに弁護士費用及び弁理士費用。なお、同条1項又は3項による損害金との関係では、一部請求である。) 及びこれに対する不法行為後の日である平成31年3月4日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原判決は、1審原告の1審被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求権を認め、その損害につき、特許法102条1項及び2項に基づく算定を否定し、同条3項に 基づく算定をした上で、2014万9093円及びこれに対する平成31年3月4日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の限度で請求を認容した。これに対し、1審原告は棄却された敗訴部分のうち4億円(1審における上記の認容元本額2014万9093円との合計額は4億2014万9093円となる。)及びこれに対する遅延損害金の部分についてのみ不服を申し立てて控訴を提起し、1審 被告は敗訴部分につき不服であるとして控訴をした。 2 前提事実 (当事者間に争いがない事実並びに証拠(以下、書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨から認められる事実)以下のとおり原判決を訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第2の1記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決3頁16~17行目(原判決「事実及び理由」第2の1(1)ア(イ))を「(イ) 株式会社マネースクエア(以下「原告子会社」という。)は、外国為替証拠金取引(FX取引)等を事業内容とする株式会社であり、1審原告の完全子会社である。原告子会社は、金融商品取引業者としての登録を受け、F 会社マネースクエア(以下「原告子会社」という。)は、外国為替証拠金取引(FX取引)等を事業内容とする株式会社であり、1審原告の完全子会社である。原告子会社は、金融商品取引業者としての登録を受け、FX取引業を営んでいた。」と改める。 (2) 原判決8頁19行目(原判決「事実及び理由」第2の1(6)イ(カ)の3行目) 末尾に行を改めて次のとおり加える。 「ウカバー取引店頭FX取引では、顧客とFX取引業者が直接取引(相対取引)を行うことから、店頭FX取引による顧客の利益は、そのままではFX取引業者にとって損失になってしまうため、FX取引業者が、顧客の注文に応じて、自らも銀行等の金融機 関に同様の注文を行い、リスクをヘッジするための取引のことである。全てのFX取引業者が同じようにカバー取引を行っているわけではなく、どのような頻度でどのような額をカバー取引しているかはFX取引業者によって異なっている。 (7) 被告サーバと本件発明被告サーバは、本件発明の技術的範囲に属する。」 3 争点(1) 本件特許の無効理由の有無(争点1)ア乙5発明を主引例、乙6発明を副引例とする進歩性の欠如(無効理由1)イ乙5発明を主引例、乙7発明又は乙8を副引例とする進歩性の欠如(無効理由2) (2) 損害額等(争点2)ア特許法102条1項に基づく損害額等(争点2-1)(ア) 特許法102条1項の類推適用の可否(争点2-1-1)(イ) 特許法102条1項に基づく損害額(争点2-1-2)イ特許法102条2項に基づく損害額等(争点2-2) (ア) 特許法102条2項の適用の可否(争点2-2-1)(イ) 特許法102条2項に基づく損害額(争点2-2-2)ウ特許法102条3項に基づく 条2項に基づく損害額等(争点2-2) (ア) 特許法102条2項の適用の可否(争点2-2-1)(イ) 特許法102条2項に基づく損害額(争点2-2-2)ウ特許法102条3項に基づく損害額等(争点2-3)(3) 消滅時効の成否(争点3)第3 争点に関する当事者の主張 以下のとおり原判決を訂正し、当審における当事者の補充主張を付加するほか、 原判決の「事実及び理由」の第3の1~5記載のとおりであるから、これを引用する。 1 原判決の訂正(1) 原判決44頁20行目(原判決「事実及び理由」第3の2(1)(原告の主張)イの第二段落末行)末尾に行を改めて、「この点1審被告は、1審原告及び原告子会 社は、原告ライセンス契約において、本件特許の分割の基礎となった特許を意図的に許諾の対象から除外していると主張する。しかし、原告ライセンス契約の別紙2は、2条に記載されているとおり、契約当時出願中であったものを列挙したものであり、その「指定国」というのは、PCT出願における指定国を意味しているのであって、ライセンス対象となる権利の範囲を意味するものではない。なお指定国欄 に「日本を除く全指定」と記載されているのは、本件特許のように日本における出願を基礎としてPCT出願を行う場合に、PCT出願の指定国から除いておかなければ、先行する日本における国内出願が取り下げたものとみなされてしまうためであり(特許法184条の15第4項、42条1項)、出願実務上一般的に行われているものであって、単にPCT出願の指定国から日本を除いたものである。したがっ て、日本における出願も原告ライセンス契約の対象に含まれている。」(2) 原判決50頁6行目(原判決「事実及び理由」第3の2(2)(原告の主張)イ(ア)の2行 を除いたものである。したがっ て、日本における出願も原告ライセンス契約の対象に含まれている。」(2) 原判決50頁6行目(原判決「事実及び理由」第3の2(2)(原告の主張)イ(ア)の2行目)の「甲12」を「甲13」と改める。 (3) 原判決62頁7行目(原判決「事実及び理由」第3の3(2)(原告の主張)ウ(ア)の末行)末尾に行を改めて以下のとおり加える。 「また、本件訴訟において1審被告から開示されたトレーディング損益及び手数料収入の金額については、トレーディング損益が●●●●●●●●●円、手数料収入が●●●●●●●●●●●円である。」(4) 原判決69頁7~8行目(原判決「事実及び理由」第3の3(2)(被告の主張)オの1~2行目)の「被告の利益に対する本件発明の貢献に応じた損害額の減額が なされるべきこと」を「被告の利益に対する本件発明の貢献に応じた損害額の減額 が行われるべきこと(特許法102条2項の推定を覆滅する事由としての主張を含む。)」と改める。 2 当審における当事者の補充主張(1) 争点2-1-1(特許法102条1項の類推適用の可否)及び争点2-2-1(特許法102条2項の適用の可否)について (1審原告の主張)アグループ会社における知的財産権管理を一元化するなどの目的で、グループ全体の知的財産権を、持株会社やグループ内の知的財産権の保有・管理を専門に行う会社に集中的に保有・管理させる例は多く、特許権を含む知的財産権はその保有している会社自身だけのために保有し、活用しているという理解はもはや時代に即 しておらず、グループ全体の利益のために保有し活用しているのが実情である。 特許発明を自己実施する場合でいえば、形式的に見れば自己実施をしているのは事業会社であるが、事 理解はもはや時代に即 しておらず、グループ全体の利益のために保有し活用しているのが実情である。 特許発明を自己実施する場合でいえば、形式的に見れば自己実施をしているのは事業会社であるが、事業会社は自身の利益だけのために特許発明を実施しているのではなく、グループ全体の利益を最大化するという目的の下、いわばそのグループの手足として、特許発明を実施して事業を営んでいるものである。 本件の1審原告のように、ホールディングス制をとる会社は多く(令和4年6月時点で600社以上の上場会社が持株会社であり、上場企業のうち15%以上を占めている。)、これによって、グループ全体としての利益の最大化を目的とした、グループにとって最適な意思決定を行うことができる。そして、1審原告と原告子会社とは、100%子会社の関係に立ち、本訴における損害賠償対象期間の当時、1 審原告グループにおいて事業で売上げを立てていたのはほぼ原告子会社のみであった。また、1審原告自身に生じる売上げも全て、原告子会社から1審原告に支払われる配当金、ロイヤリティ収入等で賄われており、原告子会社以外から生じる売上げはゼロであった。そうすると、1審原告と原告子会社は、経済的に一体の関係に立ち、原告子会社の売上げを最大化することが、1審原告グループとしての利益を 最大化することになるという関係に立ち、親会社の社員26名のうち21名が原告 子会社の業務を兼務しており、1審原告と原告子会社とは実質一体の関係にある。 このような実情に照らすと、特許法102条1項及び2項の適用場面においても、形式的な法人格の違いに着目するのは妥当ではなく、グループ全体として特許を保有・管理し、グループ全体として特許を活用した事業を展開しているという実態を捉えて、その適用を肯定すべき 用場面においても、形式的な法人格の違いに着目するのは妥当ではなく、グループ全体として特許を保有・管理し、グループ全体として特許を活用した事業を展開しているという実態を捉えて、その適用を肯定すべきである。 本件において、FX事業を行っているのは、原告子会社であって特許権者である1審原告ではないものの、1審原告は、原告子会社の株式の100%を保有する持株会社として本件特許権の管理及び権利行使をしており、原告子会社が1審原告の管理及び指示の下で、本件特許発明の競合サービスである原告サービス(FX事業)を実施しているのであるから、1審原告グループは、本件特許権の侵害が問題とさ れている期間、1審原告の管理及び指示の下でグループ全体として本件特許発明の競合サービスである事業を遂行していると評価することができるのであって、特許法102条1項及び2項の適用が認められるべきである。 イ 1審原告が特許法102条1項及び2項の適用において主張している逸失利益は、1審原告グループとして、被告サービスが提供されなかったとすれば、1 審原告グループに属する原告子会社が競合するFX事業を通じて得ることができたであろうという利益であって、1審原告の得られた実施料収入ではない。 ウ特許法102条2項は、立証の困難性を軽減する趣旨で設けられた規定で、その効果も推定にすぎないのであるから、同項を適用するための要件を殊更厳格にする合理的な理由はない。 エ 1審被告は、事業会社に専用実施権又は独占的通常実施権を設定すれば、専用実施権者又は独占的通常実施権者には固有の損害賠償請求権が認められるから、専用実施権者又は独占的通常実施権者がその固有の損害賠償請求権を行使すれば足り、そのような方法で不都合を回避可能であると主張するが、特許権者が事業会 実施権者には固有の損害賠償請求権が認められるから、専用実施権者又は独占的通常実施権者がその固有の損害賠償請求権を行使すれば足り、そのような方法で不都合を回避可能であると主張するが、特許権者が事業会社をして、特許発明を実施した事業を行わせるとともに、第三者にも特許権の通常許 諾をした場合、事業会社に対する実施許諾はもはや独占的なものではなく、事業会 社には固有の損害賠償請求権が認められないとの不都合が生じることになる。 (1審被告の主張)ア 1審原告が主張する「グループ全体として特許を保有・管理し、グループ全体として特許を活用した事業を展開しているという実態」の内容は不明瞭である。 1審原告は、ホールディングス化により別会社とすることのメリットを享受して おきながら、他方で、別会社であることによるデメリットについては受けたくないというのは、余りにも身勝手な主張である。 イいわゆる持株会社が特許権者であっても、事業会社も共有者として特許権者となって損害賠償請求をすれば1審原告が主張するような不都合は回避可能であるし、特許権を共有しなくても、事業会社に対し、専用実施権を設定したり、いわゆ る独占的通常実施権を許諾したりすることによって、当該事業会社自身が損害賠償請求の主体として、損害賠償を請求することができるから、1審原告が主張するような不都合は回避可能である。1審原告はそれすらも行っていない以上、保護に値しない。 ウ 1審原告は、特許法102条2項の効果が推定にすぎないことを理由として 挙げるが、1審原告が「実施の能力」を一切有していなかったことは法的に明らかであり、仮に本件に同条2項を適用したとしても、結局、推定が全て覆滅されるというべきである。 (2) 争点2-3(特許法102条3項に基づく損害 実施の能力」を一切有していなかったことは法的に明らかであり、仮に本件に同条2項を適用したとしても、結局、推定が全て覆滅されるというべきである。 (2) 争点2-3(特許法102条3項に基づく損害額等)について(1審原告の主張) 被告サービスの特徴は、本件特許発明のシフト機能が可能とする「相場に自動追従して注文を繰り返す」点にあるのであって、原判決が、価格が変更された最初の1回の取引のみに着目し、そこで得られる手数料収入の割合だけを考慮して実施料率を計算していることは誤りである。原審において1審原告が主張したとおりの損害が認定されるべきである。 (1審被告の主張) ア原判決は、取引開始時点において2個以下の新規買い注文しか生成されない取引(取引②)及び売り注文が相場価格の上昇に追従する取引(最も高い売り注文価格よりも更に高い売り注文価格の売り注文情報を生成した取引をいう。)以外の取引(取引③)のいずれについても、本件発明による取引に係るものとは異なるとしておきながら、これを「侵害品の売上高」に含まれるとするが、論理が不明であ って誤っている。 イ本件において、コンピュータテクノロジーの実施料率の平均値が正味販売高の3.1%にもかかわらず、●●●●●●●●●●●の実施料率を認定した原判決の判断は、近時の裁判例と比較しても実施料率を過大に認定するものであり不当である。本件発明の技術的価値は乏しく、代替性を有する競合サービスが多数存在し、 また、被告サービスは被告発明1~5を実施したものでもあるほか、被告サービスについて一定の売上げ及び利益を獲得できたのは、1審被告による格別の営業努力があったからであって、本件発明による1審被告の売上げや利益への寄与も小さいこと、仮にトレーディング損益及び結果 告サービスについて一定の売上げ及び利益を獲得できたのは、1審被告による格別の営業努力があったからであって、本件発明による1審被告の売上げや利益への寄与も小さいこと、仮にトレーディング損益及び結果として本件発明による取引に係るものとはならなかった取引(取引②及び取引③)の手数料を損害賠償算定の基礎とするので あれば、これらに対する本件発明の貢献はゼロに等しいことなどを踏まえれば、本件における相当実施料率は0.5%を上回ることはない。 (3) 推定覆滅部分への特許法102条3項の適用(1審原告の主張)特許法102条2項による推定が一部覆滅される場合であっても、当該推定覆滅 部分について、特許権者が実施許諾をすることができたと認められるときは、同条3項が適用される(知財高裁令和2年(ネ)第10024号同4年10月20日判決)。 1審被告が主張する推定覆滅事由のうち、①実施能力、②競合サービスの存在、③1審被告による格別の営業努力については、仮にこれらの事由による推定の一部 覆滅がされたとしても、①については1審原告の実施能力を超える部分について実 施許諾をすることで、②については競合他社に実施許諾をすることで、③については1審被告に実施許諾をすることで、それぞれ1審原告が実施許諾をすることができたと認められるから、これらの推定覆滅部分について特許法102条3項が適用される。 (1審被告の主張) 1審原告の主張は争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明の内容以下のとおり原判決を訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第4の1記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決97頁11行目(原判決「事実及び理由」第4の1(1)キ(ア)中の段落【0078】に係る記載の末行)末尾 の「事実及び理由」の第4の1記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決97頁11行目(原判決「事実及び理由」第4の1(1)キ(ア)中の段落【0078】に係る記載の末行)末尾に行を改めて「「図3に示すステップS1の処理の後、クライアント端末2の表示部22には入力画面が表示される。図13は、このとき表示部22に表示された入力画面40の一例を示す概念図である。同図の入力画面40においては、トラップリピートイフダン注文(一の金融商品について、 複数の「第一注文」としての新規注文と、複数の「第二注文」としての決済注文と、それぞれの新規注文同士、それぞれの決済注文同士が均等な値幅となるように発注し、一の新規注文がポジションを有し、そのポジションを有した新規注文について、一の決済注文が約定すると、その新規注文と同じ価格の新たな新規注文と、その決済注文と同じ価格の新たな決済注文とが再度生成されることが繰り返される注文形 態のこと。以下本明細書において同じ。)を発注するための入力画面が示されている。」(段落【0081】)」を加える。 (2) 原判決101頁6行目末尾(原判決「事実及び理由」第4の1(1)キ(イ)の末行)に行を改めて以下のとおり加える。 「「図23において示した状態で確認ボタン413がクリックされると、注文情 報生成部16は、図24に示す注文情報群1810B(判決注:図24の「181 0C」との記載は「1810B」の誤記であると解される。)を生成する。」(段落【0122】)「図24は、注文情報生成部16によって生成されて注文テーブル181に記録された、注文情報群を模式的に示した図である。なお、同図に示す態様のテーブルは、フロントページ配信部11によってクライアント端末2の表示部22に 報生成部16によって生成されて注文テーブル181に記録された、注文情報群を模式的に示した図である。なお、同図に示す態様のテーブルは、フロントページ配信部11によってクライアント端末2の表示部22にも画像 表示される。」(段落【0123】)「この注文情報群1810Bは、トラップ本数入力欄405に入力された本数分(つまり5本分)の新規注文情報と決済注文情報とを有する状態で生成される。即ち、注文情報群1810Bは、5つの新規注文情報18111,18112,18113,18114,18115と、5つの決済注文情報18116,18117, 18118,18119,18120と、1つのストップロス注文情報18121とを有する。」(段落【0124】)「それぞれの新規注文情報18111,18112,18113,18114,18115の構成は、実施の形態1の新規注文情報18101と同様である。それぞれの決済注文情報18116,18117,18118,18119,1812 0の構成は、実施の形態1の決済注文情報18102と同様である。ストップロス注文情報18121の構成は、実施の形態1のストップロス注文情報18103と同様である。」(段落【0125】)「図24に示すように、注文情報生成部16は、図23に示す入力画面40の入力情報に基づいて、スタート価格入力欄403に入力された(1ドル=)100. 00円を新規注文の基準価格とし、この価格を新規注文情報18111の注文価格情報181Gに設定する。そして、トラップ値幅入力欄406に入力された値である(1ドル=)0.20円を、新規注文情報18112,18113,18114,18115の値幅となるように、それぞれの新規注文情報18112,18113,18114,18115を生成する れた値である(1ドル=)0.20円を、新規注文情報18112,18113,18114,18115の値幅となるように、それぞれの新規注文情報18112,18113,18114,18115を生成する。即ち、図24に示すように、新規注文情報1 8111,18112,18113,18114,18115の注文価格情報18 1Gは、それぞれ、(1ドル=)100.00円、99.80円、99.60円、99.40円、99.20円と設定されている。」(段落【0126】)「また、注文情報生成部16は、対応する新規注文と決済注文(例えば新規注文情報18111と決済注文情報18116)が約定したときの利益金額が、利益金額入力欄407に入力された金額(100000円)となるように、それぞれの決 済注文情報18116,18117,18118,18119,18120の注文金額を設定する。即ち、利益金額入力欄407に入力された値(100000円)を注文金額入力欄402に入力された値(10万)で割った値である(1ドル=)1.00円が、対応する新規注文と決済注文との価格差になるように、それぞれの決済注文情報18116,18117,18118,18119,18120の注 文金額を設定する。即ち、図24に示すように、決済注文情報18116,18117,18118,18119,18120の注文価格情報181Gは、(1ドル=)101.00円、100.80円、100.60円、100.40円、100. 20円と設定として設定されている。それ以外の構成は、発明の実施の形態1と同じである。」(段落【0127】)」 (3) 原判決104頁21行目(原判決「事実及び理由」第4の1(2)の末行)の末尾に行を改めて以下のとおり加える。 「(3) 本件発明の構 形態1と同じである。」(段落【0127】)」 (3) 原判決104頁21行目(原判決「事実及び理由」第4の1(2)の末行)の末尾に行を改めて以下のとおり加える。 「(3) 本件発明の構成要件と本件明細書等の記載との関係ア本件発明の構成要件は、引用する原判決「事実及び理由」第2の1(2)ウのとおりであり、これらの構成要件のうち、構成B~D、F、Gが「トラップイフダン」 機能を特定する構成であり、構成E、Hが「シフト」及び「リピート」機能を特定する構成であるといえる。 イそして、「トラップリピートイフダン」注文の定義については、本件明細書等【0081】、【0119】に記載されており、トラップイフダンの特徴である、構成Fの「等しい値幅で価格が異なる」については本件明細書等【0081】、【01 27】に記載されている。 また、構成B~D、Gの「注文情報生成手段」の具体的な動作については、本件明細書等【0122】~【0127】に記載されており、特に、構成Bの「複数の買い注文情報を生成」は本件明細書等【0126】、構成Cの「複数の売り注文を生成」、構成Gの「一の注文手続で生成」は本件明細書等【0127】にそれぞれ記載されている。また、構成Eの「約定検知手段」の具体的な動作についての直接的な 説明は、本件明細書等には見当たらないものの、「一の決済注文が約定すると、その新規注文と同じ価格の決済注文と、その決済注文と同じ価格の新たな決済注文とが再度生成される」(【0081】)、「決済注文S1、S2、S3が約定した価格である1ドル=102.40円を基準として・・・取引価格をそれぞれシフトさせる」(【0144】)との各記載に照らすと、本件発明において何らかの手段により約定を検知 していることは明らかであ 格である1ドル=102.40円を基準として・・・取引価格をそれぞれシフトさせる」(【0144】)との各記載に照らすと、本件発明において何らかの手段により約定を検知 していることは明らかである。 さらに、「シフト」機能については、本件明細書等【0143】~【0147】に記載されており、構成Hの「前記複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知する」については、本件明細書等【0144】の「決済注文S1、S2、S3が約定した価格である1ドル=102.40円を基準 として」との記載における「S1、S2、S3が約定した価格」が「複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売り注文」に相当することから読み取ることができる。」 2 争点1(本件特許の無効理由の有無)について(1) 乙5発明について 以下のとおり原判決を訂正するほか、原判決104頁23行目~111頁13行目(原判決「事実及び理由」第4の2(1)及び(2))に記載のとおりであるから、これを引用する。 ア原判決107頁5行目(原判決「事実及び理由」第4の2(1)中の段落【0086】に係る記載の末行)の末尾に行を改めて以下のとおり加える。 「「注文発注装置2から注文が発注され、中央管理装置1が発注された注文の受 けつけを完了させた後、中央管理装置1の価格情報受信部19は、定期的に(例えば1分毎或いは1時間毎等の所定周期で)、為替相場の情報を取得し続ける。そして、相場価格と特定の注文情報の注文価格とが一致すると、約定情報生成部14が当該注文情報に基づく注文を約定させる。」(段落【0090】)」イ原判決108頁3行目(原判決「事実及び理由」第4の2(1)の段落【009 8】に係る記載の末行)の末尾に行を改め 成部14が当該注文情報に基づく注文を約定させる。」(段落【0090】)」イ原判決108頁3行目(原判決「事実及び理由」第4の2(1)の段落【009 8】に係る記載の末行)の末尾に行を改めて以下のとおり加える。 「「その後、米国ドルの相場購入価格71が、第三注文C5の価格まで下降すると(ステップS24の“Yes”)、第三注文C5の約定処理が行われる(図12BのステップS32~ステップS34参照)。上述のように、この実施の形態で、第三注文C5の価格は、1ドル当たり102.0円である。一方、米国ドルの相場 販売価格が、第三注文C5の価格まで下降すること無しに、第二注文51B5の価格まで上昇すると(ステップS25の“Yes”及び図13の時刻t22参照)、約定情報生成部14は、この第二注文51B5に対応する指値注文を約定させる(図12AのステップS26参照)。この実施の形態では、このときの約定価格は、1ドル当たり108.00円である。この約定処理では、第二注文51B5に対応す る状態情報181o2を“無”から“有”に変更する(図9(c)参照)とともに、第三注文C5を取り消す処理を行う(ステップS26)。さらに、予め規定された額の証拠金の存在が確認されたのち(図12AのステップS28~ステップS29の“Yes”参照)の後、約定情報生成部14は、注文テーブル181の、二巡目に対応する注文情報群の中から、5番目の注文情報群50A5(図示せず)を選択 する(図12AのステップS30参照)。そして、約定情報生成部14は、選択された注文情報群50A5の第一注文51A5の有効/無効情報181o1を、“無効”から“有効”に変更する(図12AのステップS31参照)。そして、中央管理装置1は、選択された注文情報群50A5についてもステッ 情報群50A5の第一注文51A5の有効/無効情報181o1を、“無効”から“有効”に変更する(図12AのステップS31参照)。そして、中央管理装置1は、選択された注文情報群50A5についてもステップS21に戻って処理を繰り返す。」(段落【0099】) 「図13において、相場購入価格71が第一注文51A1~51A3の価格と等 しくなったときの処理も、上述の注文情報群50A5の場合と同様である。」(段落【0101】)」(2) 対比ア本件発明と乙5発明を比較すると、一致点及び相違点は以下のとおりである。 (ア) 一致点 相場価格の変動に応じて継続的に金融商品の取引を行うための金融商品取引管理装置であって、前記金融商品の買い注文を行うための複数の買い注文情報を生成する買い注文情報生成手段と、前記買い注文の約定によって保有したポジションを、約定によって決済する売り 注文を行うための複数の売り注文情報を生成する売り注文情報生成手段とを有する注文情報生成手段と、前記買い注文及び前記売り注文の約定を検知する約定検知手段とを備え前記複数の売り注文情報に含まれる売り注文価格の情報は、それぞれ等しい値幅で価格が異なる情報であり、 前記注文情報生成手段は、前記複数の売り注文情報を一の注文手続で生成することを特徴とする金融商品取引管理装置(イ) 相違点① 売り注文が約定されたことを受けて注文情報生成手段(注文情報生成部)が 生成する新たな売り注文情報に含まれる売り注文価格が、本件発明においては、約定に係る売り注文価格よりも更に所定価格だけ高いのに対し、乙5発明においては、約定に係る売り注文価格と同じ価格とされている点(以下「相違点1」という。)② 注文情報生成手段(注文情報生成 ては、約定に係る売り注文価格よりも更に所定価格だけ高いのに対し、乙5発明においては、約定に係る売り注文価格と同じ価格とされている点(以下「相違点1」という。)② 注文情報生成手段(注文情報生成部)が新たな売り注文情報を生成する契機として検知の対象となる約定に係る売り注文を、本件発明は、「前記複数の売り注文 のうち、最も高い売り注文価格の売り注文」に特定しているのに対し、乙5発明は、 「複数の売り注文のうち、いずれかの売り注文価格の売り注文」である点(以下「相違点2」という。)イ 1審被告は、本件発明に係る特許請求の範囲(請求項1)は、「最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると、」と記載しているにすぎず、検知の対象を「最も高い売り注文価格の売り注文」に特定(限定)しているわけでは ないから、乙5発明が「最も高い売り注文価格の売り注文」に加えてそれ以外の売り注文をも検知の対象としているとしても、この点は本件発明との対比において相違点とはならないと主張する。 しかしながら、引用する原判決「事実及び理由」第4の1(2)のとおり、本件発明は、複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを 受けて、複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりも更に所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成するものである。これに対し、乙5発明の「前記複数の売り注文のうち、いずれかの売り注文価格の売り注文」との発明特定事項は、本件発明の「前記複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売り注文」との発明特定事項よりも広範な売り注文を含む事項であるから、両者は 発明特定事項として相違する。 したがって、1審被告の上記主張は採用できない。 (3) 無効理由1についての判断 売り注文」との発明特定事項よりも広範な売り注文を含む事項であるから、両者は 発明特定事項として相違する。 したがって、1審被告の上記主張は採用できない。 (3) 無効理由1についての判断以下のとおり原判決を訂正するほか、原判決113頁7行目~126頁5行目(原判決「事実及び理由」第4の2(4)ア)に記載のとおりであるから、これを引用 する。 ア原判決120頁24行目(原判決「事実及び理由」第4の2(4)ア(ア)中の段落【0077】に係る記載部分の4行目)の「被告注」を「判決注」に改める。 イ原判決123頁22行目~126頁5行目(原判決「事実及び理由」第4の2(4)ア(イ))を次のとおり改める。 「(イ) 乙6発明について 上記(ア)の記載によると、乙6発明は、金融商品の指値注文において、システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを行うことができ、システムを利用する顧客の利便性を高めることができる金融商品取引管理装置を提供することを課題としている(乙6【0005】)。 乙6の【0016】、【0075】~【0077】、【0094】及び図10の 記載によると、乙6には「イフダンオーダーを複数回自動的に繰り返すことで取引を行う構成において、相場価格が、第一注文情報(買いの指値注文)及び第二注文情報(売りの指値注文)が生成された時点の相場価格からトレール幅以上に上昇した場合、かつ、未約定の第一注文情報及び第二注文情報のリピート回数情報が最低リピート回数以上である場合、すなわち、売り注文の約定を検知した回数が最低リ ピート回数以上である場合に、元の第一注文情報及び第二注文情報の注文価格情報にトレール幅情報を加えた額を新たな第一注文情報及び第二注文情報の注文価 なわち、売り注文の約定を検知した回数が最低リ ピート回数以上である場合に、元の第一注文情報及び第二注文情報の注文価格情報にトレール幅情報を加えた額を新たな第一注文情報及び第二注文情報の注文価格とする、新たな注文情報を生成すること」とする発明が記載されており、かかる発明の構成により、上記課題を解決するものであるといえる。 そして、乙6発明により、イフダンオーダーを複数回自動的に繰り返すことで取 引を行う構成において、イフダンオーダーを実現するための第一注文情報と第二注文情報とからなる価格帯を、取引相場の実情に即して変動可能に構成できて、指値注文を行う顧客にとって一層利便性の高い取引システムを形成できる(乙6【0016】)。 (ウ) 相違点に係る構成の容易想到性 乙6において、トレール幅情報だけ高い注文価格の情報を含む売り注文情報が生成されるのは、「相場価格がトレール幅以上に上昇し」、かつ、「売り注文の約定を検知した回数が最低繰り返し回数以上である」場合であるから、乙6は「売り注文の約定を検知」したことのみを「売り注文情報」生成の契機とするものではない。 また、乙6には「相場価格がトレール幅以上に上昇した」ことによらず、上記売り 注文情報を生成することは、記載も示唆もされていない。さらに、乙6には「複数 の売り注文のうち、最も高い売り注文価格」という事項も記載されていない。 そうすると、乙6には、「複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知」した情報を受けて売り注文情報を生成すること、すなわち、相違点2に係る構成は記載されていない。 したがって、仮に乙5発明に乙6発明を組み合わせることができたとしても、本 件発明の構成には至らない。 (エ) 1審被告の主張について こと、すなわち、相違点2に係る構成は記載されていない。 したがって、仮に乙5発明に乙6発明を組み合わせることができたとしても、本 件発明の構成には至らない。 (エ) 1審被告の主張についてa 1審被告は、本件発明の構成要件Hについて、決済注文の約定と新たな注文情報の生成との間に、他の何らかの処理が介在していたとしても、新たな注文情報が時間的に見て決済注文の約定の「のちに」生成されていれば、構成要件Hの「前 記約定検知手段の前記検知の情報を受けて」を充足すると解釈すべきであり、乙6に記載された実施例においては、「第二注文」が約定し、リピート回数が最低リピート回数に達した場合にのみ、「売り注文情報を生成する」という処理が行われ、新たな注文情報は、時間的に見て決済注文の約定の「のちに」生成されるといえるから、乙6には本件発明の構成要件Hが開示されている旨主張する。 しかしながら、本件発明の構成要件Hで特定されているのは、「最も高い売り注文価格の売り注文が約定された」との情報を「受けて」新たな売り注文情報を生成する構成であるのに対し、乙6に記載されている構成は、「相場価格がトレール幅以上に上昇した」との情報及び「リピート回数が最低リピート回数以上である」との情報の両方を「受けて」新たな注文情報を生成する構成である。そうすると、両 者は新たな注文情報を生成する契機となる条件が異なるから、両者の構成が相違することは明らかである。そして、当該構成の相違は、「受けて」との文言が「のちに」と解釈可能か否かにより左右されるものではない。 b 1審被告は、乙6の図10に記載された取引例を基に、トレール幅情報が0. 28円以下に設定されていたときは、乙6発明は、「第二注文」(決済注文。例え ば、売り注文)が約定すると、これ い。 b 1審被告は、乙6の図10に記載された取引例を基に、トレール幅情報が0. 28円以下に設定されていたときは、乙6発明は、「第二注文」(決済注文。例え ば、売り注文)が約定すると、これを受けて、既存の注文情報群の注文価格にトレ ール幅情報を加えた額を注文価格情報とする新たな注文情報を生成するという構成(本件発明の構成要件H)を備えているといえる旨主張する。 1審被告が上記で主張する設定は、トレール幅を、第一のイフダン注文が生成されたときの相場価格と第二注文の価格との価格差以下とするものであり、結局、相場価格変動のしきい値(注文価格シフト実行の条件)を、第二注文の価格に固定す るものである。上記1審被告の主張は、そのようなトレール幅設定においては「トレール幅条件」と「約定検知回数条件」は同時に充足されるから、乙6には本件発明の構成要件Hが記載されているといえる、というものである。 しかしながら、「トレール幅条件」は相場価格の変動に追従するために設定されるものであり、しきい値を第二注文の価格に固定すると、相場価格がイフダン注文 の第一注文と第二注文の値幅を超えて上昇傾向にあるか否かを判別できなくなるから、そのような設定は相場価格の変動に追従するというトレール幅の意義に反し、不合理なものであって、乙6発明が想定しているものとはいえない。 したがって、乙6には本件発明の構成要件Hが記載されているとはいえない。 c 1審被告は、乙6の【0101】には、「態様2」として、相場価格の変動 とほぼ同時にステップS33の処理を行う構成としてもよいことが記載されているから、「態様2」に係る発明として、「第二注文」が約定すると、これを受けて、既存の注文情報群の注文価格にトレール幅情報を加えた額を注文価格情報とする新た 理を行う構成としてもよいことが記載されているから、「態様2」に係る発明として、「第二注文」が約定すると、これを受けて、既存の注文情報群の注文価格にトレール幅情報を加えた額を注文価格情報とする新たな注文情報を生成するという構成を備える発明が記載されている旨主張する。 しかしながら、「態様2」についての乙6の記載は、【0101】の「(態様2) 相場価格の変動とほぼ同時に、ステップS33、S35の処理が行われる。」との記載のみであり、「態様2」の具体的な構成は不明である。特に、態様2の元となる実施形態(【0074】~【0080】及び図5)にある「トレール幅情報」(ステップS31)や「最低繰り返し回数」(ステップS32)が態様2においてどう変更されるのか、変更される場合、それらに代わるシフトの契機が何になるのかが 不明であり、1審被告の主張する「態様2に係る発明」が乙6に記載されていると 認定することはできない。 d 1審被告は、乙6の【0101】には、「態様2」として、相場価格の変動とほぼ同時にステップS33の処理を行う構成としてもよいことが記載されているから、「態様2」に係る発明として、「第二注文」が約定すると、これを受けて、既存の注文情報群の注文価格にトレール幅情報を加えた額を注文価格情報とする新 たな注文情報を生成するという構成を備える発明が記載されている旨主張する。 しかしながら、「態様2」についての乙6の記載は、【0101】の「(態様2)相場価格の変動とほぼ同時に、ステップS33、S35の処理が行われる。」との記載が全てであり、「態様2」の具体的な構成は不明である。特に、態様2の元の実施形態(【0074】~【0080】及び図5)にある「トレール幅情報」(ス テップS31)や「最低繰り返し回数」(ス 記載が全てであり、「態様2」の具体的な構成は不明である。特に、態様2の元の実施形態(【0074】~【0080】及び図5)にある「トレール幅情報」(ス テップS31)や「最低繰り返し回数」(ステップS32)が態様2においてどう変更されるのか、変更される場合、それらに代わるシフトの契機が何になるのかが不明であり、1審被告の主張する「態様2に係る発明」が乙6に記載されていると認定することはできない。 (オ) よって、1審被告主張に係る無効理由1は理由がない。」 (4) 無効理由2についての判断以下のとおり原判決を訂正するほか、原判決126頁6行目~134頁10行目(原判決「事実及び理由」第4の2(4)イ)に記載のとおりであるから、これを引用する。 原判決133頁1行目冒頭~134頁10行目(原判決「事実及び理由」第4の 2(4)イb~d)を次のとおり改める。 「b 乙7発明及び乙8発明は、1組のイフダン注文を繰り返すという注文方法に係る発明であり、いずれも売り注文の約定を検知するものであって、先行する売り注文の約定を受けて、先行する売り注文価格よりも更に所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を、順次、生成するものであるから、「最も高い 売り注文価格の売り注文」の約定を検知する構成を有しているとはいえない。 また、乙5の【0155】には、乙5発明において「各注文情報51A~51Fの注文情報価格181h」を変更する(上昇又は下落させる)ことは記載されているが、当該変更は「相場価格がトレール幅情報以上に上昇又は下落した」ことを契機として行われるものであり、「最も高い売り注文価格の売り注文」の約定を契機とするものではない。 そうすると、乙5の記載、乙7発明及び乙8発明のいずれにも、「 以上に上昇又は下落した」ことを契機として行われるものであり、「最も高い売り注文価格の売り注文」の約定を契機とするものではない。 そうすると、乙5の記載、乙7発明及び乙8発明のいずれにも、「最も高い売り注文価格の売り注文」が約定されたことを検知するとの構成、すなわち相違点2に係る構成は示されていないから、仮に乙5発明と乙7発明又は乙8発明を組み合わせることができたとしても、本件発明の構成には至らない。 したがって、1審被告主張に係る無効理由2は理由がない。」 (5) 小括以上によると、本件発明は、乙5発明に乙6発明を組み合わせること、又は乙5発明に乙7発明若しくは乙8発明を組み合わせることによって当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 したがって、無効理由1及び無効理由2はいずれも理由がない。 (6) 特許無効の抗弁が却下されるべきとする1審原告の主張について原判決134頁11行目~135頁1行目(原判決「事実及び理由」第4の2(5))に記載のとおりであるからこれを引用する。 3 争点3(消滅時効の成否)について以下のとおり原判決を訂正するほか、原判決138頁23行目~140頁19行 目(原判決「事実及び理由」第4の5)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決139頁13行目及び140頁1行目(原判決「事実及び理由」第4の5(2)の第一段落6行目及び第二段落2行目)の各「平成27年7月19日」を「平成29年7月19日」とそれぞれ改める。 (2) 原判決140頁3行目(原判決「事実及び理由」第4の5(2)の第二段落3行 目)の「うかがうことはできず」の次に「、前訴提起に至るまでの一定の準備期間において、被告サービスにつき十分な検討を行っていたことが推認でき 決「事実及び理由」第4の5(2)の第二段落3行 目)の「うかがうことはできず」の次に「、前訴提起に至るまでの一定の準備期間において、被告サービスにつき十分な検討を行っていたことが推認でき」を加える。 (3) 原判決140頁6行目~7行目(原判決「事実及び理由」第4の5(2)の第三段落1行目~2行目)の「遅くとも平成29年7月8日までには」を「遅くとも本件訴訟を提起した令和2年7月9日の3年前である平成29年7月9日の前日の同 月8日までには」と改める。 (4) 原判決140頁14行目(原判決「事実及び理由」第4の5(2)の第四段落5行目)の「少なくとも」を「遅くとも」と改める。 4 争点2-3(特許法102条3項に基づく損害額等)について以下のとおり原判決を訂正するほか、原判決140頁20行目~149頁16行 目(原判決「事実及び理由」第4の6)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決142頁6行目(原判決「事実及び理由」第4の6(2)ア第二段落15行目)の「④原告ライセンス契約においては」~9行目(同18行目)の「と定められていたこと、」を削る。 (2) 原判決142頁13行目(原判決「事実及び理由」第4の6(2)ア第三段落の末行)の末尾に行を改めて、次のとおり加える。 「これに対し、1審原告は、特許法102条3項に基づく実施料相当額算定の前提となる「侵害品の売上高」は、被告サーバを使用したFX取引の取引高(3項損害主張①)、そうでなくとも、被告サーバを使用したFX取引の取引回数(3項損害 主張②)によるべき旨を主張する。しかしながら、前記のとおり、顧客とFX取引業者が直接取引を行うFX取引では、FX取引による顧客の利益は、FX取引におけるFX取引業者の損失となるため、FX 主張②)によるべき旨を主張する。しかしながら、前記のとおり、顧客とFX取引業者が直接取引を行うFX取引では、FX取引による顧客の利益は、FX取引におけるFX取引業者の損失となるため、FX取引業者は、そのリスクをヘッジするために、顧客の注文に応じて他の金融機関に対し同様の注文を行うカバー取引を行うのが一般的であり、また、FX取引は差金決済を前提とした取引であるところ、1 審被告は、FX取引を行う際に、被告サービスを含めた多数の顧客の注文を一定数 量や一定時間で合算し、売り注文と買い注文を相殺した後、差分数量について他の金融機関とカバー取引を行うことによりトレーディング損益を得るとの方法によっていたものであるから、同項に基づく実施料相当額算定の前提となる「侵害品の売上高」とは、被告サーバを使用したFX取引による手数料収入のほかは、このようなトレーディング損益によるのが1審被告のFX取引の実態に合致しているものと いうことができる。」(3) 原判決142頁14行目(原判決「事実及び理由」第4の6(2)ア第四段落の1行目)の「これに対し」を「他方」に改める。 (4) 原判決142頁19行目(原判決「事実及び理由」第4の6(2)ア第四段落6行目)の「現に、原告ライセンス契約に」~21行目(同8行目)の「実情を踏ま えても」を削る。 (5) 原判決144頁14行目冒頭~17行目末尾(原判決「事実及び理由」第4の6(2)イ(イ)b第二段落)を削る。 (6) 原判決144頁26行目冒頭~145頁4行目末尾(原判決「事実及び理由」第4の6(2)イ(ウ)第二段落)を「これを被告サーバを用いた取引②及び取引③につ いてみると、当該各取引は、その内容は本件発明が意図した取引結果とはならなかったものの、いずれの取 及び理由」第4の6(2)イ(ウ)第二段落)を「これを被告サーバを用いた取引②及び取引③につ いてみると、当該各取引は、その内容は本件発明が意図した取引結果とはならなかったものの、いずれの取引においても、複数の買い注文情報が生成されて相場価格が上昇したときは、本来、売り注文の価格を変動させることを意図して被告サーバを使用する被告サービスとして顧客に提供されたものであったことが認められる。」と改める。 (7) 原判決146頁4行目冒頭~10行目末尾(原判決「事実及び理由」第4の6(3)ア第二及び第三段落)を次のとおり改める。 「しかしながら、証拠(甲24、27)及び弁論の全趣旨によると、1審原告は、複数の特許又は商標(出願中のものを含む。)を対象として、原告子会社が顧客から受け取ったFX取引に関する手数料収入及びディーリング収入の●●%相当額の金 銭を受領する内容の契約を締結していたことが認められるところ、本件特許の分割 出願の基礎となった発明(特願2014-77354号)については、同契約に係る別紙2の項目「7」における「国内/国際」欄には「国際」と記載されており、その「指定国」欄には「日本を除く全指定」と明記されている。この理由につき、1審原告は、「2条に記載されているとおり、契約当時出願中であったものを列挙したものであり、その「指定国」というのは、PCT出願における指定国を意味して いるのであって、ライセンス対象となる権利の範囲を意味するものではなく、指定国欄に「日本を除く全指定」と記載されているのは、本件特許のように日本における出願を基礎としてPCT出願を行う場合に、PCT出願の指定国から日本を除いておかなければ、先行する日本における国内出願が取り下げたものとみなされてしまうためである(特許法 件特許のように日本における出願を基礎としてPCT出願を行う場合に、PCT出願の指定国から日本を除いておかなければ、先行する日本における国内出願が取り下げたものとみなされてしまうためである(特許法184条の15、42条1項)」と説明するところ、かかる 説明内容は不合理とはいえないものの、契約書の記載上、本件特許の分割出願の基礎となった発明のうち日本の国内出願が含まれていない以上、飽くまで、平成26年10月1日付けの原告ライセンス契約(甲24、27)においては、上記発明を基礎とした国際出願についてのみ許諾の対象となっているものと認められ、原告ライセンス契約(甲24、27)において、本件特許は含まれていないものと理解で きる。 また、原告ライセンス契約は、1審原告と1審原告の完全子会社である原告子会社との間で締結されたものであることからすると、その実施料率が経済合理性に従って定められたものとは直ちには認め難い。 したがって、原告ライセンス契約において、実施料率が●●%と定められていた ことをもって、本件特許の実施料率の算定に当たって、これを直ちに斟酌することは相当とはいえない。」(8) 原判決148頁6行目(原判決「事実及び理由」第4の6(3)イ(エ)の末行)末尾に行を改めて、次のとおり加える。 「(オ) この点1審原告は、価格が変更された最初の1回の取引のみに着目し、そ こで得られる手数料収入の割合だけを考慮して実施料率を計算していることは誤り であると主張するが、1審原告が主張する手数料収入の割合は、実施料率の算定の考慮要素となる発明の技術内容や重要性の検討において考慮したものであって、1審原告が主張する手数料収入の割合をもって、直ちに実施料率を計算しているものではないから、1審原告の上記主張は 料率の算定の考慮要素となる発明の技術内容や重要性の検討において考慮したものであって、1審原告が主張する手数料収入の割合をもって、直ちに実施料率を計算しているものではないから、1審原告の上記主張は理由がない。」(9) 原判決148頁21行目(原判決「事実及び理由」第4の6(3)エ第二段落2 行目)の「潜在的な競合関係」を「競合関係」に改める。 (10) 原判決148頁25行目(原判決「事実及び理由」第4の6(3)オの見出しを除く本文1行目)の「その他」の次に「、前記のとおり被告サーバを使用した取引であったが、結果としてその内容が本件発明による取引に至らなかったもの(取引②及び取引③)があることなど」を加える。 (11) 原判決149頁9行目の「イ弁護士費用及び弁理士費用」~16頁末尾(原判決「事実及び理由」第4の6(4)イ及びウ)を削る。 5 争点2-2-1(特許法102条2項の適用の可否)について(1) 特許法102条2項の適用の可否についてア特許法102条2項は、「特許権者…が故意又は過失により自己の特許権…を 侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者…が受けた損害の額と推定する。」と規定する。同項は、民法の原則の下では、特許権侵害によって特許権者が被った損害の賠償を求めるためには、特許権者において、損害の発生及び額、これと特許権侵害行為との間の因果関係を主張、立証しな ければならないところ、その立証等には困難が伴い、その結果、妥当な損害の塡補がされないという不都合が生じ得ることに照らして、侵害者が侵害行為によって利益を受けているときは、その利益の額を特許権者の損害額と推定するとして、 その立証等には困難が伴い、その結果、妥当な損害の塡補がされないという不都合が生じ得ることに照らして、侵害者が侵害行為によって利益を受けているときは、その利益の額を特許権者の損害額と推定するとして、立証の困難性の軽減を図った規定である。そして、特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には、 同項の適用が認められると解すべきである(知財高裁平成24年(ネ)第1001 5号同25年2月1日特別部判決、知財高裁平成30年(ネ)第10063号令和元年6月7日特別部判決)。 イこれを本件についてみると、1審原告の完全子会社(株式会社マネースクエア)はFX事業を提供しており、「トラリピ」という名称の原告サービスを提供しているところ、証拠(甲30)によると、トラリピとは、イフダン(新規と決済を同時に 発注する注文)に、リピート(注文を繰り返す機能)とトラップ(一度にまとめて発注できる仕組み)を搭載したFXの発注管理機能をいい、トラリピの専用機能として「決済トレール」(決済価格が値動きのトレンドを追いかけることで、利益の極大化を狙う機能)があることが認められ、被告サービスと競合するものであるといえる。そして、原告サービスを提供しているのは1審原告の完全子会社であって、 特許権者である1審原告とは別法人であるものの、1審原告は、原告子会社の株式の100%を保有し、会社の目的や主たる業務が子会社の支配・統括管理をすることにあり、その利益の源泉が子会社の事業活動に依存するいわゆる純粋持株会社である(甲33。以下、持株会社である1審原告と原告子会社を併せて「1審原告グループ」ともいう。)。そうすると、原告子会社は、1審原告のグループ会社として 持株会社の保有する多数 純粋持株会社である(甲33。以下、持株会社である1審原告と原告子会社を併せて「1審原告グループ」ともいう。)。そうすると、原告子会社は、1審原告のグループ会社として 持株会社の保有する多数の特許権を前提として原告サービスを提供しているのであり(甲24、27)、本件特許は原告ライセンス契約に含まれていないものの、これは国際出願に伴う不都合を回避するためにそのような体裁とすべきであったことによるものにとどまり、1審原告が原告子会社に本件発明の実施許諾をしていないことを意味するものとはいえないことも踏まえると、原告子会社が本件発明を実施し ているものといえ、1審原告グループは、本件特許権の侵害が問題とされている平成29年7月から平成31年3月までの期間、持株会社である1審原告の管理及び指示の下で、グループ全体として本件特許権を利用した事業を遂行していたと評価することができる。 したがって、1審原告グループにおいては、本件特許権の侵害行為である被告サ ービスの提供がなかったならば利益が得られたであろう事情があるといえる。 そして、1審原告の利益の源泉が子会社の事業活動に依存していること、1審原告は1審原告グループにおいて、同グループのために、本件特許権の管理及び権利行使につき、独立して権利を行使することができる立場にあるものといえ、そのような立場から、同グループにおける利益を追求するために本件特許権について権利行使をしているということができ、1審原告グループにおいて1審原告のほかに本 件特許権に係る権利行使をする主体が存在しないことも併せ考慮すれば、本件について、特許権者に侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在するものといえるから、特許法102条2項を適用すること 体が存在しないことも併せ考慮すれば、本件について、特許権者に侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在するものといえるから、特許法102条2項を適用することができるというべきである。 ウ 1審被告の主張について (ア) 1審被告は、1審原告が主張する「グループ全体として特許を保有・管理し、グループ全体として特許を活用した事業を展開しているという実態」の内容は不明瞭であると主張する。 しかしながら、上記イで説示するとおり、1審原告と原告子会社は、いわゆる純粋持株会社と完全子会社の関係にあるところ、実際に持株会社制を採用する企業が 多数存在する実情にあること(甲32)、純粋持株会社と完全子会社は法人格が別であるものの、グループ法人の一体的運営が進展している状況を踏まえ、実態に即した課税の実現を目的としたグループ法人税制や支配従属関係にある二つ以上の企業からなる企業集団を単一の組織体とみなして親会社が企業集団の財政状態、経営成績、キャッシュフローの状況を総合的に報告するための連結財務諸表など、企業グ ループを、親会社を中心とした経済的一体性に着目して捉える制度が採用されている実情があることも踏まえると、本件事実関係の下においては、1審原告の管理及び指示の下でグループ全体として本件特許権を利用した事業を遂行していると評価することができるから、1審被告の上記主張は理由がない。 (イ) 1審被告は、持株会社が特許権者であっても、事業会社も共有者として特許 権者となるか、又は専用実施権を設定したり、いわゆる独占的通常実施権を許諾す ることにより、当該事業会社自身が損害賠償請求の主体として、損害賠償を請求することによって、事業会社の損害賠償請求が認められないとする不都合は回 定したり、いわゆる独占的通常実施権を許諾す ることにより、当該事業会社自身が損害賠償請求の主体として、損害賠償を請求することによって、事業会社の損害賠償請求が認められないとする不都合は回避可能であるから、特許法102条2項の適用を認める必要はない旨を主張する。 しかしながら、前記のとおり、本件においては1審原告の管理及び指示の下でグループ全体として本件特許権を利用した事業を遂行していると評価することができ る以上、1審被告の上記主張に係る事情は特許法102条2項の適用の妨げにはなるといえず、実施能力を有しないことにより得べかりし利益が存在しない等の個別の事情から生じるところは、推定覆滅の問題として考えるのが相当である。 そもそも1審被告の上記主張は、1審原告のほかに原告子会社が本件特許権の侵害に係る損害賠償請求の主体として認めるべきかどうかの問題に関わる事情であっ て、本件における1審原告の本件特許権の侵害に係る損害賠償請求における特許法102条2項の適用を否定すべきものとはいえない。 したがって、1審被告の上記主張は理由がない。 (2) 1審被告の利益(限界利益)ア売上高について 証拠(乙63の2、乙73の2)及び弁論の全趣旨によると、本件期間から、消滅時効に係る期間を除いた平成29年7月9日から平成31年3月2日までの期間における被告サービスの手数料収入の合計額は、●●●●●●●●●●●円であり、また、同期間におけるトレーディング損益の合計額は、1審被告の全取引数量に占める被告サーバを使用した取引数量で按分すると●●●●●●●●●円であること が認められる。 そうすると、特許法102条2項に基づく1審被告が得た利益の額の算定の前提となる「使用行為による売上高」は、上記手数料収入及びトレー 按分すると●●●●●●●●●円であること が認められる。 そうすると、特許法102条2項に基づく1審被告が得た利益の額の算定の前提となる「使用行為による売上高」は、上記手数料収入及びトレーディング損益の合計額である●●●●●●●●●●●円と認められる。 イ経費について 1審被告は、被告サーバの使用について、被告サービスを顧客に提供するに当た り、取引件数に応じてシステム使用料を支払っているとして、システム使用料が、被告サーバの使用に直接関連して追加的に必要となった経費に当たる旨を主張する。 しかしながら、証拠(甲34)によると、システムの使用料は一定の取引件数までは取引件数に関わりなく●●●●●円の定額のシステム使用料が発生するものであり、システム定額料を超えた使用料について、それが被告サービスを利用したこ とによるものであるかは、必ずしも明らかではないことからすると、被告サーバの使用に直接関連して追加的に必要となった経費とまではいえない。 これに反する1 審被告の主張はいずれも採用することができない。 ウ限界利益額について前記ア及びイによると、1審被告が被告サーバの使用により得た限界利益額は、 ●●●●●●●●●●●円である。 (3) 推定の覆滅についてア 1審被告は、①本件発明の技術的価値は乏しく、1審被告の利益に対する本件発明の貢献は乏しいこと、②1審原告はそもそも金融商品取引業者としての登録を受けておらず、FX取引を業として行うことができなかったこと、③本件発明と 代替性が認められる競合サービスが多数存在したこと、④被告サービスにおいて一定の売上げ及び利益を獲得できたのは、1審被告による格別の営業努力があったためであることなどを、本件推定の覆滅事由に該当する旨主張するので れる競合サービスが多数存在したこと、④被告サービスにおいて一定の売上げ及び利益を獲得できたのは、1審被告による格別の営業努力があったためであることなどを、本件推定の覆滅事由に該当する旨主張するので、以下において判断する。 イ ①本件発明の技術的価値は乏しく、1審被告の利益に対する本件発明の貢献 は乏しいとの主張について証拠(乙38)及び弁論の全趣旨によると、人気がある五大リピート系注文としてトラリピ(原告子会社によるサービス)、ループ・イフダン、iサイクル注文(被告サービス)、トライオートFX、オートレールが挙げられているところ、それぞれのサービスの比較の項目として、取扱い通貨ペアの多さ、注文方法(指値・逆指値 か、成行注文か)、値幅・利益幅の設定の自由度、売買方向(同一通貨ペア・同一売 買方向・同一値幅の複数の注文ができるかなど)、ポジション数、自動損切の仕様、手数料・スプレッドの金額、スワップ金利の多寡、トレール機能の有無、相場追尾機能の有無、スマホ対応の有無、独自コンテンツの有無などが挙げられており、これらがFX取引のサービスを利用する際の比較項目になるものと認められる。そして、本件発明の内容は上記比較項目のうち「相場追尾機能」に相当するものと認め られるところ、「リピート系注文で最も大事なのが自動損切りの仕様です」、「サービスの特徴が最も出るのがこの値幅と利益幅の設定方法」、「長期運用が基本となるリピート系注文で成績に直結するのがこの手数料とスプレッド」、「スワップ金利は長期間ポジションを保持し続けるリピート系注文においては大きな収入源となります」などと「自動損切りの仕様」「値幅と利益幅の設定方法」「手数料とスプレッド」「ス ワップ金利」を評価する記載がある一方、「相場追尾機能」についてはそ ート系注文においては大きな収入源となります」などと「自動損切りの仕様」「値幅と利益幅の設定方法」「手数料とスプレッド」「ス ワップ金利」を評価する記載がある一方、「相場追尾機能」についてはそれに類する記載はない。 そうすると、相場追尾機能をもってFX取引の利用者が重視する項目とまでは認められず、被告サービスの使用の動機の形成に対する本件発明の寄与は限定的であるというべきであるから、1審被告が被告サービスの使用により得た限界利益額に は、本件発明が寄与していない部分を含むものと認められる。 以上によると、同部分が含まれることは、本件推定の覆滅事由に該当するものと認められる。 この点に関し、1審被告は、これに加えて、仮に本件発明が被告サービスの売上げに寄与していると解するのであれば、被告サービスにおいて実施されていた1審 被告の各発明も被告サービスの売上げに貢献しており、当該各発明の寄与率により1審被告の利益の額を按分すべきと主張するが、1審被告が主張する1審被告の各発明が被告サービスの利益に具体的に寄与していたと認めるに足りる証拠はないから、1審被告の上記主張は採用できない。 ウ ②1審原告はそもそも金融商品取引業者としての登録を受けておらず、FX 取引を業として行うことができなかったとの主張について 前記5(1)イで判示したとおり、1審原告グループは、本件特許権の侵害が問題とされている平成29年7月から平成31年3月までの期間、持株会社である1審原告の管理及び指示の下で、グループ全体として本件特許権を利用した事業を遂行していると評価することができるから、持株会社である1審原告が、金融商品取引業者としての登録を受けておらず、FX取引を業として行うことができなかったこと は、推定覆滅事由とは認 用した事業を遂行していると評価することができるから、持株会社である1審原告が、金融商品取引業者としての登録を受けておらず、FX取引を業として行うことができなかったこと は、推定覆滅事由とは認められない。 エ ③市場における競合サービスの存在との主張について前記のとおり、五大リピート系注文としてトラリピ(原告子会社によるサービス)、ループ・イフダン、iサイクル注文(被告サービス)、トライオートFX,オートレールが挙げられており、証拠(乙38)によると、その他にもリピート系注文とし てFX取引のサービスが紹介されており、市場において競合するサービスが存在していたものと認められる。 そうすると、1審被告主張の市場における競合するサービスの存在は、被告サービスの限界利益額と1審原告が受けた損害額との間の相当因果関係を一部否定すべき事情に当たるといえるから、本件推定の覆滅事由に該当するものと認められる。 オ ④1審被告の営業努力(ブランド力、宣伝広告)との主張について1審被告の宣伝広告が、推定覆滅を認めることが相当な程度に被告サービスの使用動機の形成に寄与したと認めるに足りる証拠はない。 したがって、1審被告主張の営業努力は、本件推定の覆滅事情に該当するものと認めることはできない。 カ以上のとおり、市場において競合するサービスが存在していたこと、被告サービスの使用の動機の形成に対する本件発明の寄与は限定的であるというべきであること、1審被告が被告サービスの使用により得た限界利益額には、本件発明が寄与していない部分を含むものといえることなどを総合考慮すると、1審被告の使用動機の形成に対する本件発明の寄与割合は●割と認めるのが相当であり、上記寄与 割合を超える部分については、1審被告の限界利益額と1審原告 含むものといえることなどを総合考慮すると、1審被告の使用動機の形成に対する本件発明の寄与割合は●割と認めるのが相当であり、上記寄与 割合を超える部分については、1審被告の限界利益額と1審原告の受けた損害額と の間に相当因果関係がないものと認められる。 したがって、本件推定は、上記限度で覆滅されるものと認められるから、特許法102条2項に基づく控訴人の損害額は、1審被告の限界利益額の●割に相当する合計●●●●●●●●●円と認められる。 この点、1審原告は、推定覆滅部分につき、特許法102条3項の重畳適用の主 張をするが、上記判断において推定の覆滅事由として認めた事情は特許権者の実施の能力を超えることを理由とする覆滅事由とはいえず、1審原告が実施許諾をすることができたと認めるに足りる証拠もないから、1審原告の主張は理由がない。 6 争点2-1(特許法102条1項に基づく損害)について本件において、1審原告は、特許法102条1項に基づく損害について、平成2 9年度及び平成30年度における被告サーバを使用した取引総量は2億1495万0600ロット(甲13)であり、侵害期間が1年9か月(1.75年)、被告サーバを使用した被告サービスが占める割合は、少なく見積もっても5%は下らないことを前提に、侵害期間における被告サービスを使用した取引数量は、940万4089ロット(2億1495万0600(ロット)×1.75/2(年)×0.05 の小数点第一位以下で四捨五入)であるとして、手数料収入相当の損害額として、原告サービスを利用した取引1ロット当たりの単位利益額●●●円で計算した●●●●●●●●●●●●円(=●●●×940万4089)、トレーディング損益相当の損害額とし、原告サービスを利用した取引1ロット当たりの単位利 用した取引1ロット当たりの単位利益額●●●円で計算した●●●●●●●●●●●●円(=●●●×940万4089)、トレーディング損益相当の損害額とし、原告サービスを利用した取引1ロット当たりの単位利益額●●●円で計算した●●●●●●●●●●●●円(=●●●×940万4089)を主張す るが、被告サーバを使用した取引総量のうち被告サーバを使用した被告サービスが占める割合が5%であることや原告サービスを利用した取引1ロット当たりの単位利益額について、いずれもこれらを認めるに足りる証拠はなく、上記5における特許法102条2項に基づく損害額を超える損害が認められることが立証されているとはいえない。 7 損害額 (1) 以上によると、前記4で認定した特許法102条3項に係る損害額又は前記6で検討した同条1項に係る損害額よりも、前記5で認定した同条2項に係る損害額の方が多いことから、この金額(●●●●●●●●●円)をもって1審原告の損害額(弁護士費用及び弁理士費用相当額並びに消費税相当額を除く。)と認めるべきことになる。 (2) 弁護士費用及び弁理士費用事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌すると、本件の不法行為と相当因果関係にある弁護士費用及び弁理士費用は、●●●●円が相当である。 (3) 消費税相当額について1審原告は、特許法102条2項に基づく逸失利益額に対する消費税相当額8% 並びに弁護士費用及び弁理士費用相当額に対する消費税相当額10%が損害であると主張する。 しかるところ、このうち上記(1)において特許権侵害の損害額として認めた●●●●●●●●●円に対しては、「その実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められるもの」(消費税基本通達5-2-5)に当たり、消費税が課税される ち上記(1)において特許権侵害の損害額として認めた●●●●●●●●●円に対しては、「その実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められるもの」(消費税基本通達5-2-5)に当たり、消費税が課税されるものと認 め、1審原告が主張する8%を乗じた●●●●●●●●円を消費税相当額の損害として認めることが相当である。 他方、このうち弁護士費用及び弁理士費用相当額に対しては、このようなものとして消費税が課税されるものといえないことから、同額に消費税相当額の損害を認めることはできない。 (4) 上記(1)、(2)及び(3)の合計額は、4356万5491円となる。 第5 結論よって、1審原告の1審被告に対する請求は、4356万5491円及びこれに対する1審原告請求に係る不法行為後の日である平成31年3月4日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払の限度で理由があるか らこの限度で認容し、その余は理由がないから棄却すべきところ、これと異なり、 1審原告の損害賠償請求を2014万9093円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払の限度で一部認容し、その余を棄却した原判決は一部失当であって、1審原告の控訴は一部理由があるから原判決を上記のとおり変更し、1審被告の控訴には理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官 本多知成 裁判官 多知成 裁判官遠山敦士 裁判官天野研司
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