令和2年2月20日判決言渡平成31年(行ケ)第10043号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和元年12月23日判決 原告株式会社ブリヂストン 同訴訟代理人弁理士丹治彰田部元史仁内宏紀同訴訟代理人弁護士三縄隆松村啓 被告コンパニーゼネラールデエタブリッスマンミシュラン 被告ミシュランルシェルシュエテクニークソシエテアノニム (以下,被告両名を併せて「被告ら」という。)被告ら訴訟代理人弁護士田中伸一郎佐竹勝一 西村英和同訴訟代理人弁理士弟子丸健倉澤伊知郎山本航介和田幸大 主文 1 特許庁が無効2016-800115号事件について平成31年2月26日にした審決のうち,特許第5642795号の請求項1ないし6に係る部分を取り消す。 2 訴訟費用は被告らの負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要(後掲証拠及び弁論の全趣旨から認められる事実) 1 特許庁における手続の経緯等(1) 立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要(後掲証拠及び弁論の全趣旨から認められる事実) 1 特許庁における手続の経緯等(1) 被告らは,名称を「高コントラストタイヤパターン及びその製作方法」とする発明に係る特許権(特許第5642795号。出願日平成22年9月9日(パリ条約に基づく優先権主張平成21年9月28日フランス,設定登録日平成26年11月7日。請求項の数7。以下この特許権に係る特許を「本件特許」という。)の特許権者である(甲44)。 (2) 原告は,平成28年9月30日,本件特許につき特許庁に無効審判請求をし,特許庁は上記請求を無効2016-800115号事件として審理した。 被告らは,平成30年2月14日付けで本件特許の特許請求の範囲につき訂正請求し(甲53),その後,同年5月31日付の手続補正書(甲60)及 び同年11月19日付の手続補正書(甲68)により,上記訂正請求を補正した(以下,2度にわたる補正を反映した訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。本件訂正後の請求項の数は6である。)。 (3) 特許庁は,平成31年2月26日,「特許第5642795号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1,2,4~7〕,3について訂正することを認める。特許第5642795号の請求項1~6に記載された発明についての特許に対する本件審判の請求は,成り立たない。特許第5642795号の請求項7に記載された発明についての特許に対する本件審判の請求は,却下する。」旨の審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年3月7日,原告に送達された。 (4) 原告は,平成31年4月3日,本件審決の取消しを求めて本件訴訟 に対する本件審判の請求は,却下する。」旨の審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年3月7日,原告に送達された。 (4) 原告は,平成31年4月3日,本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載(1) 本件訂正前本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1及び3の記載は,次のとおりである(甲44)。以下請求項3に記載の発明を「本件訂正前発明3」という。 【請求項1】可視面(11)を有するタイヤ(1)であって,前記可視面は,該可視面とコントラストをなすパターン(2)を有し,前記パターンは,該パターンの前記表面全体にわたって1mm2当たり少なくとも5本の密度状態で分布した複数本のタフト(21)又は互いに実質的に平行であり且つ0. 5mm未満のピッチ(p)で配置された複数個のブレード(22)を有し,各タフトは,0.03mm〜0.5mmの直径(d)を有する平均断面を備え又は各ブレードは,0.03mm〜0.5mmの平均幅(d)を有する,タイヤにおいて,前記タフト(21)又は前記ブレード(22)の壁は,その面積の少なくとも1/4にわたり,5μm〜30μmの平均粗さRzを有 し,この平均粗さを有する前記タフトの前記壁は,前記タフトの高さの下四分の一に位置している,タイヤ。 【請求項3】前記タフト(21)又は前記ブレード(22)は,前記タフト又は前記ブレードのベースから前記タフト又は前記ブレードの端に向かって減少した断面を有する,請求項1記載のタイヤ。 (2) 本件訂正後本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6の記載は,次のとおりである(甲68)。以下,各請求項に係る発明を請求項の番号に従い「本件発明1」,「本件発明2」などといい,「本件発明」と総称する。本件特許の明細書(甲44)を,図 の請求項1~6の記載は,次のとおりである(甲68)。以下,各請求項に係る発明を請求項の番号に従い「本件発明1」,「本件発明2」などといい,「本件発明」と総称する。本件特許の明細書(甲44)を,図面を含めて「本件明細書」という。なお,本件訂正の前後で,本件明細書の記載に変更はない。 【請求項1】 可視面(11)を有するタイヤ(1)であって,前記可視面は,該可視面とコントラストをなすパターン(2)を有し,前記パターンは,該パターンの前記表面全体にわたって1mm2当たり少なくとも5本の密度状態で分布した複数本のタフト(21)を有し,前記タフト(21)は,前記タフトのベースから前記タフトの端に向かって減少した断面を有し,前記タフト(21)は各タフト間に空間が存在するように分布し,各タフトは,0. 03mm〜0.5mmの直径(d)を有する平均断面を備えた,タイヤにおいて,前記タフト(21)の壁は,その面積の少なくとも1/4にわたり,5μm〜30μmの平均粗さRzを有し,この平均粗さを有する前記タフトの前記壁は,前記タフトの高さの下四分の一に位置している,タイヤ。 【請求項2】 前記タフト(21)は,少なくとも0.1mmの平均高さを有する,請求項1記載のタイヤ。 【請求項3】 可視面(11)を有するタイヤ(1)であって,前記可視面は,該可視面とコントラストをなすパターン(2)を有し,前記パターンは,互いに実質的に平行であり且つ0.5mm未満のピッチ(p)で配置された複 数個のブレード(22)を有し,前記ブレード(22)は,前記ブレードのベースから前記ブレードの端に向かって減少した断面を有し,前記ブレード(22)は各ブレード間に空間が存在するように配置され,各ブレードは,0.1mm〜0.5mmの平均幅(d)を有する,タイヤにおいて,前記ブ ら前記ブレードの端に向かって減少した断面を有し,前記ブレード(22)は各ブレード間に空間が存在するように配置され,各ブレードは,0.1mm〜0.5mmの平均幅(d)を有する,タイヤにおいて,前記ブレード(22)の壁は,その面積の少なくとも1/4にわたり,5μm〜30μmの平均粗さRzを有し,この平均粗さを有する前記ブレードの前記壁は,前記ブレードの高さの下四分の一に位置している,タイヤ。 【請求項4】 前記タフト(21)の高さ(h)と前記タフト(21)の平均断面の直径(d)の比は,1.2〜6である,請求項1記載のタイヤ。 【請求項5】 前記タフト(21)の高さ(h)と前記タフト(21)の平均断面の直径(d)の比は,2〜4である,請求項1記載のタイヤ。 【請求項6】 前記タフトの密度は,1mm2当たり15本未満のタフトである,請求項1記載のタイヤ。 3 本件審決の理由の要旨(1) 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりであり,原告主張の取消事由と関連する部分では,要するに,① 本件訂正は,特許法134条の2第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するものであり,適法なものである,② 本件発明について明確性要件違反(同法36条6項2号),サポート要件違反(同項1号),実施可能要件違反(同条4項1号)は認められない,③ 本件発明3について,以下の甲1文献に記載された発明(以下「甲1発明」という。)及び甲2文献に記載された事項に基づいて容易に発明することができたとはいえず,進歩性を欠くとはいえない,④ 本件発明1について,以下の甲3文献に記載された発明(以下「甲3発明」という。)及び甲2文献に記載された事項に基づいて容易に発明することができたとはいえず,進歩性を欠くとはいえない,また,本件発明1のすべての ついて,以下の甲3文献に記載された発明(以下「甲3発明」という。)及び甲2文献に記載された事項に基づいて容易に発明することができたとはいえず,進歩性を欠くとはいえない,また,本件発明1のすべての構成を備えた本件発明2,4ないし6も同様に進歩性を欠く とはいえないというものである。 甲1: 特許第3007825号公報甲2: 特開2003-252012号公報甲3: 特表2009-512584号公報(2) 本件審決が認定した引用発明は次のとおりである。 ア甲1発明「 タイヤ1のサイドウォール面2に設けた表示マーク3の外面を,一定方向にのびかつ等ピッチで平行に配された多数のV字状の細溝4が設けられた凹凸状断面とする空気入りタイヤ1であって,この細溝4の溝深さbを0.5mmとし,溝間ピッチaを0.3mmとした,空気入りタイヤ1。」イ甲3発明「 少なくとも1つの目に見える表面11を有するタイヤ100であって,この表面11は,その少なくとも一部分に,物品の表面11とは対照的なパターン2を備え,このパターン2は,前記パターン2の全体にわたって分布した複数の繊維状物21からなり,それぞれの繊維状物21の横断面は,繊維状物の基部から先端部に向けて減少し,0.003~0.06mm2の平均断面積を有し,このパターン2は,パターン2の表面上の繊維状物21の密度が,平方ミリメートル(mm2)で表現される単位面積あたり,少なくとも5つの繊維状物である,タイヤ100。」(3) 本件発明と引用発明の対比ア本件発明3と甲1発明両発明は以下の[一致点]で一致し,[相違点2]について相違する。 [一致点]可視面を有するタイヤであって,前記可視面は,該可視面とコントラス トをなすパターンを有し,前記パターンは 両発明は以下の[一致点]で一致し,[相違点2]について相違する。 [一致点]可視面を有するタイヤであって,前記可視面は,該可視面とコントラス トをなすパターンを有し,前記パターンは,互いに実質的に平行であり且つ0.5mm未満のピッチ(p)で配置された複数個のブレードを有し,前記ブレードは,前記ブレードのベースから前記ブレードの端に向かって減少した断面を有し,前記ブレードは各ブレード間に空間が存在するように配置され,各ブレードは,0.1mm~0.5mmの平均幅(d)を有する,タイヤ。 [相違点2]本件発明3は「ブレードの壁は,その面積の少なくとも1/4にわたり,5μm~30μmの平均粗さRzを有し,この平均粗さを有するブレードの壁は,ブレードの高さの下四分の一に位置している」との事項を有しているのに対して,甲1発明は,多数の細溝4から形成される壁状の構造の平均粗さについて特定されていない点。 イ本件発明1と甲3発明両発明は以下の[一致点]で一致し,[相違点3-1][相違点3-2]について相違する。 [一致点]可視面を有するタイヤであって,前記可視面は,該可視面とコントラストをなすパターンを有し,前記パターンは,該パターンの前記表面全体にわたって1mm2当たり少なくとも5本の密度状態で分布した複数本のタフトを有し,前記タフトは,前記タフトのベースから前記タフトの端に向かって減少した断面を有し,前記タフトは各タフト間に空間が存在するように分布した,タイヤ。 [相違点3-1]本件発明1は,「各タフトは,0.03mm~0.5mmの直径(d)を有する平均断面を備えた」との事項を有しているのに対して,甲3発明は,「それぞれの繊維状物21は,0.003~0.06mm2の平均断面 積を有」するもの 0.03mm~0.5mmの直径(d)を有する平均断面を備えた」との事項を有しているのに対して,甲3発明は,「それぞれの繊維状物21は,0.003~0.06mm2の平均断面 積を有」するものであり,直径が特定されていない点。 [相違点3-2]本件発明1は「タフトの壁は,その面積の少なくとも1/4にわたり,5μm~30μmの平均粗さRzを有し,この平均粗さを有するタフトの壁は,タフトの高さの下四分の一に位置している」との事項を有しているのに対して,甲3発明は,繊維状物21の壁の平均粗さについて特定されていない点。 4 取消事由取消事由1:本件発明3に係る訂正要件についての判断の誤り取消事由2:本件発明の明確性要件,サポート要件及び実施可能要件についての判断の誤り取消事由3:本件発明3の進歩性判断の誤り取消事由4:本件発明1,2,4ないし6の進歩性判断の誤り第3 原告主張の取消事由 1 取消事由1(本件発明3に係る訂正要件についての判断の誤り)について(1) 審決は,本件訂正前発明3に,「この平均粗さを有する前記ブレードの前記壁は,前記ブレードの高さの下四分の一に位置している」との事項を付加する訂正(以下「訂正事項3」という。)について,本件明細書の段落【0015】,【0055】及び【0057】の記載を引用し,訂正事項3は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面の範囲内であると判断をしたが,以下のとおり誤った判断である。 ア段落【0015】の「・・・又はより粗い表面をタフト又はブレードの先端部寄り又は足部寄りに位置決めすることによりコントラストの強さを変えることができる。」との記載のうち,「足部寄り」という記載は,「先端部」に近い側か,それとも「足部」に近い側かという,相対的な位置関係が,定性 部寄りに位置決めすることによりコントラストの強さを変えることができる。」との記載のうち,「足部寄り」という記載は,「先端部」に近い側か,それとも「足部」に近い側かという,相対的な位置関係が,定性的に言及されているにすぎない。 イ段落【0055】は,図7に関するものであるが,「所望の粗さ」とあるのみで,粗さの具体的記載はない。被告らは,段落【0033】の「5μm~30μmの平均粗さRz」が,「所望の粗さ」であると主張するが,そうであることは本件明細書のいずれにも記載されていない。また,図7に関する段落【0055】の「相当大きな粗さが足部領域で得られる」形態及び図8,9に関する段落【0056】の「中程度の又は低い粗さ」,「顕著な粗さ」形態のうち,いずれの形態が,段落【0033】の「5μm~30μmの平均粗さRzにより定められる表面粗さ」を受けたものであるのかも全く不明である。 ウ段落【0057】には,「この動作モードは,必要な変更を加えると共に同じ作用効果が得られるようブレードを製作するのに利用できる。」と記載されている。ここで「これらの動作モード」ではなく,「この動作モード」と表現されていることからすると,この表現は,単数の「動作モード」について引用することを意味する記載であり,直前に記載された図9に示された動作モードを意味すると解するのが相当である。かかる解釈は,「これら互いに異なる動作モード」という段落【0054】の記載との対比によっても明らかである。 よって,段落【0057】は,ブレードに関して,図7の動作モードに関する「タフトの高さの下四分の一の表面が所望の粗さを有するようにする構成」を引用し,参照するものとはいえない。 仮に,段落【0057】の記載が,図9だけではなく,タフトに関する図7から9のすべての態 る「タフトの高さの下四分の一の表面が所望の粗さを有するようにする構成」を引用し,参照するものとはいえない。 仮に,段落【0057】の記載が,図9だけではなく,タフトに関する図7から9のすべての態様を引用し参照することを意味するとしても,この記載は,ブレードを製作するのに利用するにあたって,タフトと「同じ作用効果が得られる」ために「必要な変更を加える」ものであるところ,必要な変更を加えた場合であっても,「高さの下四分の一の表面が所望の粗さを有するようにする」との構成が変更されないものかは,明らかでな い。 (2) 以上のとおり,訂正事項3は,本件明細書に記載した事項の範囲でなされた訂正ではないから,訂正事項3に関し,本件訂正を認めた本件審決の判断は誤りである。 2 取消事由2(本件発明の明確性要件,サポート要件及び実施可能要件についての判断の誤り)について(1) 明確性要件及びサポート要件についてア本件発明3において,ブレードはベースから端に向かって減少した断面を有するものである。その典型的な形状である三角形の形状だとすると,その平均幅(d)について,数値範囲の半分以上を占める「0.25mm~0.5mm」の範囲では,「0.5mm未満のピッチ(p)で配置」することは不可能であり,当該範囲が,本件明細書にサポートされていないことは明らかであるし,本件発明3の数値範囲は不明確である。 イ本件発明1において,タフトの直径と平均粗さとの関係についての説明はなく,例えば,タフトの直径が0.03mmに対しどの程度の平均粗さを選択すると,「タフトのベースからタフトの端に向かって減少した断面を有し」となるのかは明確ではなく,また,明細書でサポートされる発明であるかも不明である。「タフトの間の空間」も明らかでない。 ( 択すると,「タフトのベースからタフトの端に向かって減少した断面を有し」となるのかは明確ではなく,また,明細書でサポートされる発明であるかも不明である。「タフトの間の空間」も明らかでない。 (2) 実施可能要件について本件発明1および3の「平均粗さRz」の数値範囲は,DIN4768(1990)規格で測定された数値範囲を意味すると解される。 当該規格においては触針装置で測定され,「5μm~30μmの平均粗さRz」の測定には,「総合測定区間lm」として少なくとも「4mm」が必要である。 しかるに,本件発明1のタフトの高さは大きくても3mm程度であり,平均断面の直径dは0.03mm~0.5mmであるので,タフト母線方向の 長さ,タフト周方向の長さとも,4mmに及ばない。本件発明3のブレードの高さも同様である。 よって,本件明細書の発明の詳細な説明は,本件発明1,3について,「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの」とはいえないことは明らかである。 3 取消事由3(本件発明3の進歩性判断の誤り)について(1) 甲1発明に甲2文献の記載事項を適用する動機付けが存在すること本件審決は「甲1発明に,コントラストを得ることを目的として甲第2号証に記載された事項を適用する動機付けはな」いとするが,甲1発明に甲2文献の記載事項を適用する場合の動機付けは,「コントラストを得ることを目的」とすることに限られるものではないことは明らかである。 甲2文献は「タイヤの外表面に一定の範囲に限定された表面粗さを付与することによって,タイヤに当たる光を乱反射し,タイヤの外表面をしっとりと黒っぽく見せ,前記添加剤の滲みだし等が生じてもこれを目立ち難くして,外 タイヤの外表面に一定の範囲に限定された表面粗さを付与することによって,タイヤに当たる光を乱反射し,タイヤの外表面をしっとりと黒っぽく見せ,前記添加剤の滲みだし等が生じてもこれを目立ち難くして,外観の悪化を抑制しうる」(甲2段落【0004】)ことを目的とするものである。よって,甲1発明と甲2文献とは,タイヤのサイドウォール部の視認性を向上することを目的とする点で一致している。そして,外観の経時劣化を抑制するという甲2文献の課題は,どのタイヤでも起こり得る課題であり,甲1発明も例外ではない。すなわち,甲1発明に触れた当業者が,さらに外観の経時劣化を抑制しタイヤ外観を向上させる目的で,甲2文献の記載事項を適用する動機付けは十分にあるといえる。しかも,甲2文献には,サイドウォール部の外表面に形成される標章等の模様9についても,粗面部で形成することが明記されている(甲2段落【0010】)。 このように,甲1発明に甲2文献の記載事項を適用する動機付けが存在する。 (2) 阻害事由が存在しないこと甲2文献の模様9は,サイドウォール部3の外表面3aと同じゴム材料で形成されているが,明暗差(コントラスト)が生じることによって識別されており,甲2文献において,サイドウォール部3に粗面部5を形成することは,模様9の視認性とも両立するものとして開示されている。 よって,甲2文献の粗面部は,甲1発明のマークの視認性とも両立するものと認識されるのであり,阻害要因とはならない。 (3) 甲1発明に甲2文献の記載事項を適用して,本件発明3とすることは当業者が容易に発明できたことタイヤのサイドウォール全面が5μm~30μmの平均粗さRzを有する態様も本件発明3に含まれる。 そして,甲1発明に甲2文献の記載事項を適用することにより,甲1発明の「 者が容易に発明できたことタイヤのサイドウォール全面が5μm~30μmの平均粗さRzを有する態様も本件発明3に含まれる。 そして,甲1発明に甲2文献の記載事項を適用することにより,甲1発明の「多数の細溝4から形成される壁状の構造」には,「十点平均粗さRzが5~100μmの表面粗さ,特に好ましくは15~35μmの表面粗さを有する粗面部5」が形成されることになるとともに,この粗面は高さの下四分の一においても位置することになる。 そして,甲2文献には,サイドウォール部の外表面の十点平均粗さRzが10μm及び30μmのタイヤを実施例1,2として含むのであるから(甲2段落【0029】表1),このうち上限値については,タフトなどの寸法に応じて30μmとすることにより,「5μm~30μmの平均粗さRz」の数値範囲とすることに格別の困難性は存しないことは明らかである。 本件明細書の段落【0011】,【0012】の記載からして,本件発明3における「5μm~30μmの平均粗さRz」に臨界的意義はない。また,本件明細書には,顕著な作用効果について,当業者に把握可能に記載されているとはいえない。 (4) 甲1発明のパターンを含むサイドウォール面のすべてを粗面部としても, 本件発明の目的を達成すること甲1発明に甲2文献の記載事項を適用することにより,パターンを含むサイドウォール面のすべてを粗面部とした場合,パターン以外の部分に入射した光の一部は,タイヤに配合されたカーボンブラックなどに吸収されるが,吸収されなかった光は適度に乱反射するため,相対的に明るく見えるのに対して,ブレードが形成されたパターンに入射した光については,カーボンブラックなどに吸収されなかった光は,ブレード間で乱反射を繰り返す結果,さらに吸収が繰り返されることになり,より 明るく見えるのに対して,ブレードが形成されたパターンに入射した光については,カーボンブラックなどに吸収されなかった光は,ブレード間で乱反射を繰り返す結果,さらに吸収が繰り返されることになり,より減衰することから,パターンはより黒く見えることになり,パターン以外のサイドウォール面とのコントラストが高まることになる。 よって,甲1発明に甲2文献の記載事項を適用することにより,甲1発明のパターンを含むサイドウォール面のすべてを粗面部としたとしても,本件発明の目的が達成されることになる。 なお,本件発明3には,パターン以外の可視面(サイドウォール面)には粗面部を設けないとする特定はされていない。 (5) 小括以上のとおり,甲1発明に甲2文献の記載事項を適用する動機付けが存在し,甲2文献の記載事項の模様と粗面部とにはコントラストの差異が生じること,甲1発明に甲2文献の記載事項を適用する阻害事由が存在しないこと,甲1発明に甲2文献の記載事項を組み合わせることにより,本件発明の構成となり同様の効果を奏すること,さらに本件発明の表面粗さには臨界意義がなく,顕著な効果がないことから,本件発明は,甲1発明に甲2文献の記載事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから,本件審決における進歩性の判断は誤りである。 4 取消事由4(本件発明1,2,4ないし6の進歩性判断の誤り)について審決の判断は,本件発明3の「ブレードに粗面部を設けること」の容易想到 性に関する判断において,「ブレード」を「タフト」に置き換えた上で,実質的に同様の判断を行ったものであるから,取消理由3と同様の理由により,本件発明1は,甲3発明と甲2文献の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 第4 被告らの反論 1 取消事由1(本件発明3に 行ったものであるから,取消理由3と同様の理由により,本件発明1は,甲3発明と甲2文献の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 第4 被告らの反論 1 取消事由1(本件発明3に係る訂正要件についての判断の誤り)について(1) 訂正事項3は,当業者によって,本件明細書の段落【0015】,【0055】,【0057】の記載より導かれる技術的事項の範囲内である。すなわち,本件明細書には,「コントラストの強さを変える」ため「粗い表面をタフト又はブレードの足部よりに位置決めすること」が示され,「タフトの高さの下四分の一の表面が所望の粗さを有するようにする」を受けて「この動作モードは同じ作用効果が得らえるようにブレード製作するのに利用できる」とされている。ここで,「所望の」とは,段落【0033】において,「本発明によれば,タフト又はブレードの足部から先端部までに位置する表面の少なくとも四分の一は,5μm~30μmの平均粗さRzにより定められる表面粗さを有すべきである。」との記載を受けたものである。よって,訂正事項3に係る構成が記載されている。 (2) 原告の主張は,以下のとおりいずれも理由がない。 ア原告は,段落【0057】の「この動作モード」は,直前に記載された図9の動作モードのみを意味すると主張する。 しかし,段落【0050】の記載,そして技術的な意義からも,段落【0057】が図9のみを指していることはない。図7,図8及び図9の動作モードを指していることは明白である。 イ原告は,ブレードを製作するのに利用するために「必要な変更を加える」とされていることを指摘する。 しかし,タフトについて示された動作モードのブレードへの適用にあた って,「必要な変更を加える」ことにより「高さの下四分の一の表面が所望の粗 な変更を加える」とされていることを指摘する。 しかし,タフトについて示された動作モードのブレードへの適用にあた って,「必要な変更を加える」ことにより「高さの下四分の一の表面が所望の粗さを有するようにする」との構成とし,「同じ」最大黒度に対応する好ましい「作用効果」が得られると記載しているのである。 (3) 以上のとおり,訂正事項3に係る本件訂正を認める審決の認定に誤りはない。 2 取消事由2(本件発明の明確性要件,サポート要件及び実施可能要件についての判断の誤り)について(1) 明確性要件及びサポート要件についてア本件発明3について,原告の主張は,各ブレードの平均幅がすべて同一であることを前提にするものであるが,一つのブレードの平均幅が0.5mmであり,別のブレードの平均幅が0.2mmであるなど,各ブレードの寸法が同一でない場合が一般的であり,もちろん本件発明3は各ブレードの平均幅が同一であるとの限定をしていない。 当業者であれば,本件発明3を実施するに際し,各ブレード間に空間が存在するようにブレードの平均幅(d)とピッチ(p)を適宜選択して,各ブレードを配置することは明らかであり,複数のブレードが相互に重なるような構成を採用することはあり得ない。 イ本件発明1についても,「各タフト間に空間が存在するように分布」することが限定されており,当業者であれば,本件発明1を実施するに際し,各タフト間に空間が存在するようにタフトの直径(d)と表面粗さ(Rz)を適宜選択して,各タフトを配置することは明らかであり,サポート要件の充足に問題ない。 (2) 実施可能要件についてア本件特許の優先日前において,表面粗さRzを測定する場合,DIN4768(1990)規格で規定されている電気接触装置を用いることなく, の充足に問題ない。 (2) 実施可能要件についてア本件特許の優先日前において,表面粗さRzを測定する場合,DIN4768(1990)規格で規定されている電気接触装置を用いることなく,電子顕微鏡により撮像された画像を用いて,表面粗さを測定することは, 広く知られており,当業者において技術常識であった。 したがって,上記の技術常識を有する当業者であれば,本件明細書の図4及び段落【0037】の記載に基づき,タフトの表面粗さを定量的な数値として測定しようとする場合において,電子顕微鏡写真を用いて測定することは可能であったことは明らかである。 イ DIN4768(1990)規格には,「製品が表1から表3による総合測定区間5×leを守れないなら、より少ない個別測定区間を持つ総合測定区間を使用してもよい。」と規定されているところ,本件明細書には,このような「少ない個別測定区間を持つ」ことを禁止する記載もない。 ウ以上によれば,当業者が本件明細書の記載と優先日当時の技術常識に基づいて,「5μm~30μmの平均粗さRz」のタフトの壁との構成上の限定を有する本件発明1を実施することが可能であったことは極めて明らかである。 3 取消事由3(本件発明3の進歩性の判断の誤り)について(1) 甲1発明に甲2文献の記載事項を適用する動機付けが一切ないこと目的について,甲1発明においてはサイドウォール部の外表面(サイドウォール面2)に対するマークの視認性であるのに対し,甲2文献はサイドウォール部の外表面全体の見栄えであり,目的は全く異なる。 (2) 阻害要因甲1発明の表示マークを設けた領域以外のサイドウォール面にも,甲2文献の粗面部を適用した場合,サイドウォール面でタイヤに当たる光を乱反射し,黒っぽくなり(甲2段落【0004】参 (2) 阻害要因甲1発明の表示マークを設けた領域以外のサイドウォール面にも,甲2文献の粗面部を適用した場合,サイドウォール面でタイヤに当たる光を乱反射し,黒っぽくなり(甲2段落【0004】参照),したがって表示マークの識別性が低下する。これは,甲1発明の目的に反するものであり,甲1発明の表示マークを設けた領域以外のサイドウォール面にも,甲2文献の粗面部を適用することには阻害事由が存在する。 (3) 甲1発明に甲2文献の記載事項を適用しても,本件発明3の構成を得るこ とができないこと甲2文献には,十点平均粗さRzについて,5μm~30μmという特定の数値範囲については一切開示も示唆もされていない。甲2文献においては,外観を向上させるためにタイヤの外表面に一定の範囲(5~100μm)の表面粗さを付与するとしているのであり,ブレードの表面の黒さを最大とし,タイヤ表面の残部とのコントラストを最大とするためという目的もなく,本件発明3のように平均粗さを一定の範囲(5μm~30μm)に限定する構成を選択する理由がない。他方,本件発明の「5μm~30μmの平均粗さRz」は臨界的意義があり(段落【0035】,【0036】),「光の最大補足状態に対応し,従って最大黒度に対応している」という顕著な効果を奏するものである。更に,甲2文献において,十点平均粗さRzの粗面部が設けられているのは,本件発明3の「可視面(11)」に相当するタイヤの外表面で,その甲2文献のタイヤの外表面には,本件発明3におけるパターン(ブレード)に相当する構造物は設けられていない。 以上のとおり,甲2文献には,その面積の少なくとも1/4にわたり5μm~30μmの平均粗さRzを有する「ブレードの壁」は何ら開示も示唆もされておらず,ましてや「この平均粗さを有するブレ ていない。 以上のとおり,甲2文献には,その面積の少なくとも1/4にわたり5μm~30μmの平均粗さRzを有する「ブレードの壁」は何ら開示も示唆もされておらず,ましてや「この平均粗さを有するブレードの壁は,ブレードの高さの下四分の一に位置している」構成は何ら開示も示唆もされていない。 したがって,そもそも,甲1発明に甲2文献に記載された構成を適用しても,本件発明3の構成を得ることはできない。 (4) 甲1発明のパターンを含むサイドウォール面のすべてを粗面部とすると,本件発明の目的を達成できないことサイドウォール面のすべてを粗面部とした場合,甲2文献に記載されているように「タイヤの外表面をしっくりと黒っぽく見」えるのであり,コントラスト効果が当然に高まるなどということはない。パターン部分はパターン以外のサイドウォール面よりも黒く見えても,原告の主張するようにパター ンとサイドウォール面とのコントラスト効果は高まることはない。 このように,甲1発明に甲2文献の記載事項を適用しても本件発明の目的を達成することができないことは明らかである。 (5) 小括よって,本件審決の判断に誤りはない。 4 取消事由4(本件発明1,2,4ないし6の進歩性判断の誤り)について上記3のとおり,取消理由3はいずれも理由がないことから,同様に,原告が主張する取消理由4についても理由がないことは明らかである。 第5 当裁判所の判断 1 本件発明(1) 特許請求の範囲訂正前及び訂正後につき,それぞれ前記第2の2(1)(2)のとおりである。 (2) 本件明細書の記載本件明細書には以下の記載がある(甲44)。なお,本件訂正の前後で,本件明細書の記載に変更はない。 ア技術分野【0001】 本発明は,非常にコントラストの高い印を備えた ) 本件明細書の記載本件明細書には以下の記載がある(甲44)。なお,本件訂正の前後で,本件明細書の記載に変更はない。 ア技術分野【0001】 本発明は,非常にコントラストの高い印を備えた車両用タイヤの技術分野に関し,特に,かかるタイヤを成型して加硫するようになったモールドを製作する方法に関する。 イ背景技術【0002】 特定形式のコントラストの高い印又はマークを記載している国際公開第2007/04542号パンフレットに記載された発明の改良に関する。 【0003】 タイヤの表面は,一方においてタイヤの品質に関する法上の技術的情報を提供し,他方,ユーザが製品のブランド及び出所を識別することができるようにするようになった多くの印又はマークを有している。 【0004】 一般に,これら印は,タイヤの表面に施された隆起パターンによって得られ,成形表面上に作られた沈んだ状態の又はネガの特徴部に相当している。通常,加硫用モールドは,表面仕上げの面で極めて良好な外観を備えた金属で作られる。しかしながら,その結果得られる滑らかな黒いタイヤの外面は,光を散乱させる作用効果を有する。 【0005】 上述の国際公開パンフレットに記載されたコントラスト効果は,パターン全体にわたって分布して配置された複数本のタフトを提供することにより得られ,各タフトは,0.03mm〜0.5mmの直径を備えた平均断面を有し,タフトの高さは,少なくとも0.1mmに等しく,タフトは,パターンの表面全体にわたって,1mm2当たり少なくとも5本の密度,好ましくは1mm2当たり15本を超える密度で分布して配置されている。 【0006】 注目されるべきこととして,同じコントラスト効果は,タフトに代えて,パターンの表面全体が0.03mm〜0.5mmの平 くは1mm2当たり15本を超える密度で分布して配置されている。 【0006】 注目されるべきこととして,同じコントラスト効果は,タフトに代えて,パターンの表面全体が0.03mm〜0.5mmの平均幅を有する互いに平行なブレードを備える場合に得られ,ブレードの高さは,少なくとも0.1mmに等しく,これらブレードは,せいぜい0.5mmのピッチで配置されている。 【0007】 上述のタフト又はブレードの作用効果は,パターンの表面への入射光を捕らえ,光吸収により,黒の艶消外観を製作されるようになったパターンに与えることにある。 ウ発明が解決しようとする課題【0009】 本発明の目的は,タフト又はブレードを有するパターンのコントラスト効果を高めることができるこれらタフト又はブレードの特定の表面仕上げを提供すると共に加硫ステップ中,かかるパターンを備えたタイヤの可視圧痕(インプリント)を形成するようになったモールドを製作することができる方法を提供することにある。 エ課題を解決するための手段【0010】 したがって,本発明は,可視面を有するタイヤであって,可視面は,この可視面とコントラストをなすパターンを有し,パターンは,このパターンの表面全体にわたって1mm2当たり少なくとも5本の密度状態で分布した複数本のタフト又は互いに実質的に平行であり且つ0.5mm未満のピッチで配置された複数個のブレードを有し,各タフトは,0. 03mm〜0.5mmの直径(d)を有する平均断面を有し又は各ブレードは,0.03mm〜0.5mmの平均幅(d)を有するタイヤに関する。 【0011】 本発明によれば,タフト又はブレードは,これらの面積の少なくとも1/4にわたり,5μm〜30μmの平均粗さRzを有する。 【0012】 これは,タフ d)を有するタイヤに関する。 【0011】 本発明によれば,タフト又はブレードは,これらの面積の少なくとも1/4にわたり,5μm〜30μmの平均粗さRzを有する。 【0012】 これは,タフト又はブレードの表面が平均表面と比較してこれらが提供する入射角が多数であるために光をランダムな方向に反射することができる凹凸を有している場合にタフト又はブレードの表面上で多数の反射光によって言わば捕捉されるということが実証されたからである。 この結果,一層艶消の視覚的印象が得られ,タイヤ上に作られるパターンの場合,より濃い黒色がタイヤの表面の残部と良好なコントラストをなす。 【0013】 コントラストは、パターンの表面が光沢のある表面に隣接して位置する場合により高い。 【0015】 同様に,後で理解されるように,この最小粗さを有する表面の比率を増大させることにより又はより粗い表面をタフト又はブレードの先端部寄り又は足部寄りに位置決めすることによりコントラストの強さを変えることができる。 【0016】 本発明は又,本発明のタイヤを成型して加硫するようになっていて,表面に高いコントラストを生じさせるパターンを備えた金属モールドを製作する方法に関する。 【0017】 この方法によれば,モールドの構成金属を昇華させるのに十 分なエネルギーの光ビームを発生させるレーザを用いて作られ,パターンは,レーザ源から出た光ビームを1回又は2回以上の連続パスでモールドの表面に当てることによって,その表面全体にわたって,0.03mm〜0.5mmの直径(d)を備えた平均断面及び1ミリメートル当たり少なくとも5つの密度のキャビティ又は互いに平行であり且つ0.03mm〜0.5mmの所与の平均幅(d)を有し,0.5mm未満のピッチで隔てられた溝を有し,パ を備えた平均断面及び1ミリメートル当たり少なくとも5つの密度のキャビティ又は互いに平行であり且つ0.03mm〜0.5mmの所与の平均幅(d)を有し,0.5mm未満のピッチで隔てられた溝を有し,パスの各々は,金属を所与の面積及び所与の深さにわたって腐食する作用効果を有する。この方法は,パスの際,光ビームによる金属の溶解及び昇華が液体金属を飛ばすと共に先のパス中に得られたキャビティの壁に金属蒸気を凝縮付着させる作用効果を有することを特徴とする。 【0018】 レーザ源により提供されるエネルギーによる金属の温度のほぼ瞬時の上昇により,金属が溶融するが,更に激しいガス発生という形態で昇華し,このことは,先のパス中に生じたキャビティ又は溝の壁に材料のノジュール(こぶ状生成物)をはねかけるという作用効果を有する。凝固の際,これらノジュールは,表面の凸凹を作り,この特性は,本発明の要旨をなすタフト又はブレードを成形する所望の粗さに正確に一致する。 オ発明を実施するための形態【0028】 図1は,タイヤ部分1を示し,その可視表面11は,パターン2を備えている。このパターンは,高さhの多数のタフト21から成り,タフトの平均断面は,直径dを有している。国際公開第2006/009980号パンフレットで説明されているように知覚可能なコントラスト効果を得るためには,タフトの平均断面の直径dは,0.03mm〜0.5mmでなければならず,タフトの密度は,1mm2当たり5本を超え,好ましくは,1mm2当たり15本を超えなければならない。 【図1】 【0029】 ・・・比h/dとして1.2〜6,好ましくは2〜4が選択される。 【0030】 ・・・「平均断面」という表現は,タフトの足部から先端部までの一定間隔で測定された断面の平均として 【0029】 ・・・比h/dとして1.2〜6,好ましくは2〜4が選択される。 【0030】 ・・・「平均断面」という表現は,タフトの足部から先端部までの一定間隔で測定された断面の平均として理解される。 【0031】 図2に示されているパターン2は,高さh及び平均幅dの複数個のブレード22を有している。上述した内容と同様,所望のコントラスト効果は,対応の寸法で,即ち,少なくとも0.1mmの平均幅d及び0.5mm未満でなければならず,好ましくは0.2mm未満の密度(この場合,ピッチpで説明される)で得られる。 【図2】 【0032】 タフトの場合と同様な理由で,比h/dは,1.2〜6,好ましくは2〜4であるように定められる。 【0033】 本発明によれば,タフト又はブレードの外面,即ち,タフト21又はブレード22の足部から先端部までに位置する表面の少なくとも四分の一は,5μm〜30μmの平均粗さRzにより定められる表面粗さを有するべきである。 【0034】 表面の平均粗さRzを計算するため,評価長さLnと呼ばれる評価されるべき表面の所与の長さを図3に示されているように同一長さのn個の基本長さLzに切り分ける。個々の輪郭高さRziを基本長さの各々について求め,この高さは,投影高さのうちの最も高い高さ寸法と基本長さLzi内の表面の輪郭の凹みの最も大きな深さ寸法の合計である。平均高さRzは,問題の基本長さ全体に関する個々の値Rziの算術平均であり(DIN4768(1990)規格),以下の公式で表される。 【数1】 【図3】 【0035】 5μm及び30μmの限度が実験的に定められた限度であり,これよりも小さな値は,タフト又はブレードの表面が「滑らか」になり,かくして入射光を反射す 【図3】 【0035】 5μm及び30μmの限度が実験的に定められた限度であり,これよりも小さな値は,タフト又はブレードの表面が「滑らか」になり,かくして入射光を反射すると考えられる上限の値であり,従って,かかる入射光は,タフトにより形成されたネットワークにはもはや捕捉されない。 【0036】 上限は,目安として与えられており,この上限は,タフトの寸法を考慮すると,タフトが成形中に引きちぎれるのを阻止する許容可能な限度に相当している。この値が増大すると,単位面積当たりのタフトの密度が減少し,従ってコントラスト比が減少するという作用効果が生じるということに注目すると,光捕捉現象の最大有効性に相当するこの上限値は,望ましくは,タフトの平均断面又はブレードの幅を増大させた場合に得られるのが良い。 【0039】 複数本のタフトを有するパターンは,コントラストを増大させるようになったパターンが見える硬化用モールドを成形する(この目的 のために提供する)ことにより得られる。 【0040】 本発明の方法は,レーザ光源を用い,その出力は,金型の構成金属を液化して昇華させるのに十分である。・・・【0049】 図5及び図6は,タフト21を成形するようになったキャビティ3の電子顕微鏡写真図である。図5で理解できるように,このキャビティの出現しつつある部分(タフト21の足部210を成形するようになっている)の近くに配置されたキャビティの壁310は,高い粗さを有している。図6及び挿入図としての拡大図は,タフトの先端部220を成形するようになったキャビティ3の底部320を示している。この領域では,キャビティ壁の表面は,極めて滑らかである。これは,最後に作られたキャビティの部分がノジュールのはねかけ及び先の連続して行わ 成形するようになったキャビティ3の底部320を示している。この領域では,キャビティ壁の表面は,極めて滑らかである。これは,最後に作られたキャビティの部分がノジュールのはねかけ及び先の連続して行われたパス中に作られた蒸気の凝縮にさらされた度合いが少なく,従って,所要の粗さを備えていないということにより説明できる。 【0050】 したがって,図7,図8及び図9に概略的に示されているように各パスで腐食される表面の断面を変化させることによりタフト又はブレードの表面に所望の粗さを有するゾーンの分布状態を変化させるためにこの現象から恩恵を受けることが可能である。 【0051】 図7は,第1のパス(A)中,パターンの表面がタフトの足部の断面に実質的に相当するその最も広い断面にわたり腐食される場合を示しており,これは,切欠き(白色で表されている)によって示されている。次のパス(B)中,キャビティは,最後のパス(E)がタフトの先端部を成形するようになったキャビティの部分に実質的に対応した最も狭い断面にわたり起こるということを考慮して,小さな断面(ライトグレーで表されている)にわたりえぐられることなどが生じる。 【図7】 【0052】 図8は,最初のパス(A)が最も小さな断面にわたって起こり,第2のパス(B)が各パス時に,キャビティの断面がその深さ全体にわたって増大するよう大きな断面に対応している逆の場合を示している。 【図8】 【0053】 図9は,中程度の断面の第1のパス(A)で始まって上述の2つの動作モードを組み合わせた状況を示している。第2のパス(B)及び第3のパス(C)は,先のパスの断面が拡大された状態で起こり,最後の2回のパス(D及びE)は,材料の連続的に小さくなった断面にわたり除去された状態で起こっている。 している。第2のパス(B)及び第3のパス(C)は,先のパスの断面が拡大された状態で起こり,最後の2回のパス(D及びE)は,材料の連続的に小さくなった断面にわたり除去された状態で起こっている。 【図9】 【0054】 これら互いに異なる動作モードの作用効果は,一方において,所望の範囲内にある粗さを備えた表面を有する選択的なゾーンを変化させ,他方,この粗さの大きさを変化させることにある。 【0055】 図7に示されている場合では,相当大きな粗さが足部領域で得られる。好ましくは,この形態は,光の最大捕捉状態に対応し,従って最大黒度に対応していることが判明した。また,好ましくは,タフトの高さの下四分の一の表面が所望の粗さを有するようにする構成が取られる。 【0056】 図8に示された場合では,タフトの表面全体にわたって分布して設けられた中程度の又は低い粗さが得られる。最後に,図9に示された場合では,タフトの表面全体にわたって分布して設けられているが,足部側で顕著な粗さが得られる。 【0057】 この動作モードは,必要な変更を加えると共に同じ作用効果が得られるようブレードを製作するのに利用できる。 【0059】 最後に,結論としてタフト又はブレード足部のところに高い粗さが存在することは,タフトの成形時にキャビティ内の取り込み空気を除去するという望ましい作用効果をもたらすということが実証された。 (3) 本件明細書に記載された発明上記(2)によれば,本件明細書に記載された発明は,以下のとおり理解できる。 ア本件明細書記載の発明は,非常にコントラストの高い印を備えた車両用タイヤの技術分野に関する(段落【0001】)。 イタイヤの表面にある,品質に関する技術的情報やブランドを示すための印又はマークについて 細書記載の発明は,非常にコントラストの高い印を備えた車両用タイヤの技術分野に関する(段落【0001】)。 イタイヤの表面にある,品質に関する技術的情報やブランドを示すための印又はマークについて,一般に,これらは,タイヤの表面に隆起パターンを設けることで作成されていたが,通常,加硫用モールド(すなわちタイヤの金型)は,表面仕上げの面で極めて良好な外観を備えた金属で作られるので,出来上がるタイヤの外面は滑らかであり,光を散乱させる効果が生じていた。そこで,コントラストを高めるために,パターンにタフト又はブレードを設けることで,当該部分が光を吸収し,艶消し効果をもたらすようにして,これを設けないパターン外の部分とのコントラストを高めるとの従来技術があった。本件明細書に記載された発明は,この従来技術を改良することを課題とする(段落【0002】から【0007】,【0009】)。 ウその解決手段は,タフト又はブレードの寸法,密度及び間隔を規定するとともに,タフト又はブレードの面積の少なくとも1/4にわたり,5μm〜30μmの平均粗さRzを設けるというものである(段落【0010】,【0011】)。 エ表面粗さを有することで,光を乱反射させ,タフト又はブレードの表面上で入射光が捕捉される結果,一層艶消しの視覚的印象が得られ,パターン部分がより濃い黒色となって,タイヤ表面の残部と良好なコントラストをなす(段落【0012】)。 2 取消事由1(本件発明3に係る訂正要件についての判断の誤り)について原告は,本件訂正に関し,本件訂正前発明3に,「この平均粗さを有する前記ブレードの前記壁は,前記ブレードの高さの下四分の一に位置している」との事項を付加する訂正(訂正事項3)について,本件明細書に記載した事項の範囲でなされた訂正ではない旨主張する 平均粗さを有する前記ブレードの前記壁は,前記ブレードの高さの下四分の一に位置している」との事項を付加する訂正(訂正事項3)について,本件明細書に記載した事項の範囲でなされた訂正ではない旨主張する。 しかし,当裁判所は,以下のとおり,本件明細書には,タフトについて,その下四分の一に5μm〜30μmの平均粗さRzを設ける構成が開示されており,かつ同様の構成をブレードに適用することも開示されているので,訂正事項3は,当業者によって,本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであると認める。 (1) タフトについてア段落【0055】には,「図7に示されている場合では,相当大きな粗さが足部領域で得られる。好ましくは,この形態は,光の最大捕捉状態に対応し,従って最大黒度に対応していることが判明した。また,好ましくは,タフトの高さの下四分の一の表面が所望の粗さを有するようにする構成が取られる。」と記載されているので,好ましい構成として,「所望の粗さ」を有する表面を,「タフトの高さの下四分の一」とする構成が開示されているといえる。 ここで,本件明細書には,段落【0033】及び前記1(3)イウのとおり,パターン部分とそれ以外の部分とのコントラストを高めるため,タフト又はブレードの面積の少なくとも1/4にわたり,5μm〜30μmの平均粗さRzを設けると記載されていること,段落【0035】,【0036】には5μm,30μmをそれぞれ下限,上限とする理由が記載されていることに照らせば,「所望の粗さ」は,「5μm〜30μmの平均粗さRz」と理解できる。 イ原告は,「所望の粗さ」が段落【0033】の粗さであることは本件明細書のいずれにも記載されていないし,図7に関す に照らせば,「所望の粗さ」は,「5μm〜30μmの平均粗さRz」と理解できる。 イ原告は,「所望の粗さ」が段落【0033】の粗さであることは本件明細書のいずれにも記載されていないし,図7に関する段落【0055】の「相当大きな粗さが足部領域で得られる」形態及び図8,9に関する段落【0056】の「中程度の又は低い粗さ」,「顕著な粗さ」形態のうち,いずれの形態が,段落【0033】の「5μm~30μmの平均粗さRz により定められる表面粗さ」を受けたものであるのかも全く不明であると主張する。 しかし,明記されていなくても,本件明細書のすべての記載を総合すれば,「所望の粗さ」が,段落【0033】等が定める5μm〜30μmの平均粗さRzであると理解できることは,前記アのとおりである。 また,粗さの大きさについて,「相当大きな粗さ」など定性的に表現する記載とは別に,「所望の粗さ」との語が用いられていることからすれば,「所望の粗さ」が,定性的に示された粗さの程度のいずれかに該当しなければならないものとは限らず,むしろ,「図7,図8及び図9に概略的に示されているように各パスで腐食される表面の断面を変化させることによりタフト又はブレードの表面に所望の粗さを有するゾーンの分布状態を変化させるためにこの現象から恩恵を受けることが可能である。」(段落【0050】)との記載によれば,「所望の粗さ」は図7から9に示される方法により得られる粗さのいずれも包含すると解するのが自然であるから,「相当大きな粗さ」などの具体的な数値が不明であることは,「所望の粗さ」が5μm~30μmの平均粗さRzであるとの解釈に影響を及ぼすものではない。 よって,原告の主張は採用できない。 (2) ブレードへの適用ア段落【0057】には,「この動作モードは,必 さ」が5μm~30μmの平均粗さRzであるとの解釈に影響を及ぼすものではない。 よって,原告の主張は採用できない。 (2) ブレードへの適用ア段落【0057】には,「この動作モードは,必要な変更を加えると共に同じ作用効果が得られるようブレードを製作するのに利用できる。」旨記載されている。 「この動作モード」とは,図7から9の各動作モードを意味すると解される。なぜなら,① 段落【0050】が,タフトとブレードの双方について,図7から9に示されるような成形方法があるとし,段落【0051】から【0056】が,タフトについて,図7から9の各動作モードによる タフトを成形するためのキャビティの製作方法の詳細及び各場合にタフトのどこにどのような粗面が形成されるかを説明する流れを受けて,ブレードについて説明する段落【0057】があるから,ブレード用の溝についても図7から9に示されるような製作方法があると解するのが文脈上自然であるし,② 本件明細書全体を見ても,段落【0011】,【0015】,【0033】,【0059】などにおいて,タフトとブレードを区別することなく,表面粗さを設ける位置や粗さの大きさを説明する一方,これらについてタフトとブレードで区別すべきことの記載は見当たらないから,本件明細書に記載された発明は,タフトとブレードで,相対的に同じ位置に粗面を設けるものと解されるからである。 よって,段落【0057】から,ブレードについても,コントラストを高めるために,図7の動作モードに必要な変更を加え,ブレードの高さの下四分の一の表面を,5μm〜30μmの平均粗さとする構成が読み取れるというべきである。 イ(ア) 原告は,段落【0054】が「これら互いに異なる動作モード」としているのに対し,段落【0057】が「この動作モー 面を,5μm〜30μmの平均粗さとする構成が読み取れるというべきである。 イ(ア) 原告は,段落【0054】が「これら互いに異なる動作モード」としているのに対し,段落【0057】が「この動作モード」と単数の「動作モード」について引用する記載となっているのは,直前に記載された図9に示された動作モードのみを指しているからであると主張する。 しかし,用語法に厳密さが欠けるところがあっても,本件明細書では,前記アのとおり,前後の文脈等から,「この動作モード」は,図7から9のすべての動作モードを含むと解することができるから,原告の主張は採用できない。 (イ) 原告はまた,段落【0057】は,ブレードについて,タフトと「同じ作用効果が得られる」ために「必要な変更を加える」ものであるところ,必要な変更を加えた場合であっても,「高さの下四分の一の表面が所望の粗さを有するようにする」との構成が変更されないものかは,明 らかでない旨主張する。 しかし,前記アのとおり,段落【0050】以下は「動作モード」すなわちタイヤの製造方法の説明であり,しかもタフトに関する段落【0054】が,「所望の範囲内にある粗さを備えた表面を有する選択的なゾーンを変化させ,他方,この粗さの大きさを変化させる」ことを「作用効果」としていることを踏まえれば,ブレードに関する段落【0057】においても,「作用効果」とは,粗面の位置や粗さの大きさを意味すると解される。 したがって,「必要な変更を加える」とは,タフトと相対的に同じ位置に一定の粗さの大きさの粗面があるブレードを作成するために動作モードを変更することを意味し,「高さの下四分の一の表面が所望の粗さを有するようにする」との構成自体を変更することを意味するものではないと認められる。 原告の主張は,「作用効果」と するために動作モードを変更することを意味し,「高さの下四分の一の表面が所望の粗さを有するようにする」との構成自体を変更することを意味するものではないと認められる。 原告の主張は,「作用効果」とは,タイヤが「最大黒度に対応していること」(段落【0055】)を意味するとの前提に立つものと思われるが,上述したところに加え,図8及び図9については,このような意味での作用効果は記載されておらず,粗面の位置や粗さの大きさのみが記載されていることから,採用できない。 (3) 小括以上のとおり,本件明細書の記載を総合すれば,ブレードについて,高さの下四分の一の表面を,5μm〜30μmの平均粗さとする技術的事項を導くことができるから,訂正事項3は,新たな技術的事項を導入しないものであると認められる。 よって,取消事由1は理由がない。 3 取消事由3(本件発明3の進歩性判断の誤り)について事案に鑑み,取消事由3及び4を先に判断する。 (1) 甲1発明についてア甲1文献には,以下の事項が記載されている。 (ア) 特許請求の範囲【請求項1】タイヤのサイドウォール面に設けた表示マークの外面を,一定方向にのびかつ等ピッチで平行に配された多数の細溝が設けられた凹凸状断面とするとともに,この細溝の溝深さbを0.3mm上かつ1.0mm以下,溝間ピッチaに対する前記溝深さbの比である溝深さb/aを0.5以上かつ2. 2以下とし,前記細溝は,その溝壁面が前記サイドウォール面に垂直な法線に対して0度以上かつ25度以下の角度で外開きをなすことを特徴とする空気入りタイヤ。 (イ) 発明の属する技術分野【0001】 本発明は,タイヤのサイドウォール面に設けた表示マークの識別性を向上しうる空気入りタイヤに関する。 (ウ) 従 ことを特徴とする空気入りタイヤ。 (イ) 発明の属する技術分野【0001】 本発明は,タイヤのサイドウォール面に設けた表示マークの識別性を向上しうる空気入りタイヤに関する。 (ウ) 従来の技術【0002】 一般に,タイヤにおいては,例えば商号,商標等である文字記号及び図形等の表示マークをサイドウォール面に設けることが広く行われており,又このような表示マークmは,従来,例えば図8に示すように,黒色のタイヤにおいては,該マークmの全体を白色ゴムで形成するなどタイヤ本体とは異なる色のゴムで,かつサイドウォール面sから隆起させることによりその識別効果を高めている。近年は,特に乗用車用タイヤにおいて外観に優れたタイヤが好まれ,表示マークも見映えの向上が要望されるようになった。 (エ) 発明が解決しようとする課題【0003】 従来の表示マークでは,白色ゴムを用い色彩を違えている とはいえ,マークの外面全体が周囲のサイドウォール部外面と同一の光沢を有するためその識別効果が不十分であり,しかも変化に乏しく見映えを低下している。又表示マーク部分に異質のゴムを貼付けるため加工に手間を要す。 【0004】 前記問題点を解決するため表示マークを表示するための標識領域を,細溝を交差させメッシュ模様状に配したものも提案されている。 【0005】 しかし前記提案によるものは識別性は若干向上するものの,標識領域がメッシュ模様として構成されているため,溝深さを深くし得ず,又細溝が交差しているため標識領域に入射する光が乱反射するなどの要因により,標識領域以外の面との明暗の差が少なくなる結果,前記問題点の完全な解決には至っていない。 【0006】 本発明は,サイドウォール面に設けた表示マークの外面を,一定方向にのびる多数の細溝により形 り,標識領域以外の面との明暗の差が少なくなる結果,前記問題点の完全な解決には至っていない。 【0006】 本発明は,サイドウォール面に設けた表示マークの外面を,一定方向にのびる多数の細溝により形成しかつ細溝の溝深さ,溝間ピッチを規制することにより,表示マークの識別性を高めるとともに,マークの表示が容易になしうる空気入りタイヤの提供を目的としている。 (オ) 課題を解決するための手段【0007】 本発明は,タイヤのサイドウォール面に設けた表示マークの外面を,一定方向にのびかつ等ピッチで平行に配された多数の細溝が設けられた凹凸状断面とするとともに,この細溝の溝深さbを0.3mm以上かつ1.0mm以下,溝間ピッチaに対する前記溝深さbの比である溝深さb/aを0.5以上2.2以下とし,前記細溝は,その溝壁面が前記サイドウォール面に垂直な法線に対して0度以上かつ25度以下の角度で外開きをなす空気入りタイヤである。 (カ) 発明の実施の形態【0018】 表示マーク3の領域をこのような細溝4…によって形成す ることにより,タイヤのサイドウォール面2を照射する光は,表示マーク3以外では該サイドウォール面2が滑らかな面によって形成されているため,光を反射させる一方,表示マーク3の領域では,光が細溝4の壁面にあたり,サイドウォール面2とは異なる方向に光を反射させる。 【0019】 従って,タイヤのサイドウォール面2を看視した場合には,表示マーク3の領域は反射光が少なく,領域外の部分とは,明暗の差が顕著に現れ,表示マーク3の外面3Aを他のサイドウォール面と同質かつ同色のゴムで形成した場合であっても,表示マーク3を表示をすることが出来る。 【0027】 前記細溝4は,溝深さb及び溝深さ比b/aが前記規制値を充足する範囲において,その ドウォール面と同質かつ同色のゴムで形成した場合であっても,表示マーク3を表示をすることが出来る。 【0027】 前記細溝4は,溝深さb及び溝深さ比b/aが前記規制値を充足する範囲において,その細溝4の溝底ラインと直交する溝断面形状において,図3に示す如くV字状に,又は図4に示す如く外面,溝底を円弧によって形成される波状に形成してもよく,又細溝4の溝断面形状が,例えば鋸歯状など非対象(判決注:非対称の誤記であると認める。)であってもよい。 【0031】の【表1】には,実施例1として,溝間ピッチが0.3mm,溝深さが0.5mmのものが記載されている。 イ一致点及び相違点甲1発明並びに甲1発明と本件発明3との一致点及び相違点についての審決の認定(前記第2の3(2)(3))が妥当であることは,当事者間に争いはない。 すなわち,相違点は以下の相違点2であり,審決は,当該相違点2は容易想到ではないとした。 [相違点2]本件発明3は「ブレードの壁は,その面積の少なくとも1/4にわたり,5μm~30μmの平均粗さRzを有し,この平均粗さを有するブ レードの壁は,ブレードの高さの下四分の一に位置している」との事項を有しているのに対して,甲1発明は,多数の細溝4から形成される壁状の構造の平均粗さについて特定されていない点。 (2) 甲2文献についてア甲2文献の記載甲2文献には,以下の事項が記載されている。 (ア) 発明の属する技術分野【0001】 本発明は,外観を向上しうる空気入りタイヤに関する。 (イ) 従来の技術【0002】 空気入りタイヤは,通常,カーボンブラックなどの補強材が配合された黒色のゴムによって形成される。ところが,時間の経過とともにゴムに添加されたワックス等の油分や老化防止剤などの の技術【0002】 空気入りタイヤは,通常,カーボンブラックなどの補強材が配合された黒色のゴムによって形成される。ところが,時間の経過とともにゴムに添加されたワックス等の油分や老化防止剤などの添加剤がタイヤの外表面に移行して滲み出し,反射光等によっては外表面がぎらついて見えることがあり外観を損ねやすい。特にこのような傾向は,外部から視認されやすいサイドウォール部において顕著となる。 【0004】 発明者らは,このような実状に鑑み鋭意研究を重ねたところ,タイヤの外表面に一定の範囲に限定された表面粗さを付与することによって,タイヤに当たる光を乱反射し,タイヤの外表面をしっとりと黒っぽく見せ,前記添加剤の滲みだし等が生じてもこれを目立ち難くして外観の悪化を抑制しうることを見出した。以上のように,本発明は,タイヤの外表面の表面粗さを規制することを基本として,外観を向上しうる空気入りタイヤを提供することを目的としている。 (ウ) 課題を解決するための手段【0005】 本発明のうち請求項1記載の発明は,外表面の少なくとも一部に,十点平均粗さRzが5〜100μmでありかつ局部山頂の平均間隔Sが20〜150μmの表面粗さを有する粗面部を具えることを特 徴とする空気入りタイヤである。 【0006】 ここで,「十点平均粗さRz」は,JIS−B−0601の規定に準拠して測定される。すなわち,タイヤの外表面を針触式の表面粗さ測定器で測定し,粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り,この抜き取り部分の最も高い山頂から5番目までの山頂の標高の絶対値の平均値と,最も低い谷底から5番目までの谷底の標高の絶対値の平均値との和を求め,この値をマイクロメートルで表したものを十点平均粗さRzとする。なお本例では基準長さLを0.8mm,評価長 の絶対値の平均値と,最も低い谷底から5番目までの谷底の標高の絶対値の平均値との和を求め,この値をマイクロメートルで表したものを十点平均粗さRzとする。なお本例では基準長さLを0.8mm,評価長さを4mmの条件とする。 (エ) 発明の実施の形態【0009】 以下本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤの部分斜視図を示している。・・・【図1】 【0010】 本発明の空気入りタイヤ1は,その外表面の少なくとも一部に,十点平均粗さRzが5〜100μmでありかつ局部山頂の平均間隔Sが20〜150μmの表面粗さを有する粗面部5を含むことを特徴事項の一つとしている。本実施形態の粗面部5は,外部から視認されやすいサイドウォール部3の外表面3aに形成したものを示している。またサイドウォール部3の外表面3aに標章等の模様9が形成される場合があるが,本例ではこの模様9についても粗面部5で形成している。 【0011】 発明者らの種々の実験の結果,このような粗面部5は外部からの光を好ましい加減で乱反射できタイヤ1をしっとりとした色調で黒々と見せることが判明した。そして,曝露実験等を繰り返しタイヤ外表面に添加剤を滲み出させても,この粗面部5では滲みだしが殆ど目立たず,長期に亘ってタイヤの外観を向上維持しうることを見出した。 【0012】 前記粗面部5において,十点平均粗さRzが5μm未満であると,光が良い加減に乱反射せず,逆にタイヤが白っぽく見えてしまう傾向が強く,しかもタイヤ外表面に滲みだした油分などのぎらつきなどが目立ちやすくなる。なお従来のタイヤでは,この十点平均粗さRzが2μm程度のものが多く,このように滲みだしが目立っていたと考えられる。逆に粗面部5の十点平均粗さRzが1 した油分などのぎらつきなどが目立ちやすくなる。なお従来のタイヤでは,この十点平均粗さRzが2μm程度のものが多く,このように滲みだしが目立っていたと考えられる。逆に粗面部5の十点平均粗さRzが100μmよりも大きくなると,タイヤの外表面がヤスリのようにザラザラとした質感となり,商品価値を損ね易いため好ましくない。より好ましくは,粗面部5の十点平均粗さRzを8〜80μm,さらに好ましくは10〜50μm,特に好ましくは15〜35μmとするのが望ましい。 【0016】 本実施形態では,前記粗面部5が,サイドウォール部3の外表面3aをなすものを示しているが,特にこの位置には限定されるわけではない。従って,サイドウォール部3の外表面3a以外にも,トレッド部2やビード部4などの各外表面を粗面部5とすることもできる。 また,特に好適にはタイヤ1の外表面全体をこのような粗面部5で形成することが望ましい。 (オ) 実施例【0028】 粗面部を有するサイズ235/45ZR17の乗用車用ラジアルタイヤ(実施例)を表1の仕様に基づき試作しタイヤの外観を評価した。また比較のために,粗面部を有しない同サイズのタイヤ(比較例)についても併せて試作した。実施例については,サイドウォール部の外表面に粗面部を設けた。またタイヤの外観は,新品状態及び曝露(夏期の晴天時10日間の曝露)を行った後の状態の双方で行い,5点法により評価した。数値が大きいほど良好である。テストの結果などを表1に示すが,実施例のものは,比較例に比べて外観を大幅に向上していることが確認できる。 【0029】【表1】 (カ) 発明の効果【0030】 上述したように,本発明の空気入りタイヤは,粗面部によって外部からの光を好ましい加減で乱反射できタイヤを黒々と見せるこ る。 【0029】【表1】 (カ) 発明の効果【0030】 上述したように,本発明の空気入りタイヤは,粗面部によって外部からの光を好ましい加減で乱反射できタイヤを黒々と見せるこ とができる。これにより,添加剤の滲みだし等が目立ちにくくなり,長期に亘りタイヤの外観を向上しうる。とりわけ,請求項2記載の発明のように,外部から視認されやすいサイドウォール部にこの粗面部を形成することにより,より効果的にタイヤの外観が向上できる。 イ甲2文献に記載された技術的事項以上によれば,甲2文献には,時間の経過によって,ゴムに添加されたワックス等の油分や老化防止剤などの添加剤がタイヤの外表面に移行して滲み出し,反射光等によっては外表面がぎらついて見えることがあり外観を損ねやすいという課題を解決することを目的として,タイヤの外表面の少なくとも一部に,十点平均粗さRzが5〜100μmであり,かつ局部山頂の平均間隔Sが20〜150μmの表面粗さを有する粗面部5を含むとの技術的事項が記載されていると認められる。 (3) 相違点2の容易想到性ア甲1発明に甲2文献の記載事項を適用することの難易及びその際の構成(ア) 甲1発明は,タイヤのサイドウォール面に設けた表示マークの識別性を向上させることを目的とするものであるから(甲1段落【0001】,【0006】),当業者であれば,表示マークの識別性をさらに向上させることを検討すると考えられる。また,「近年は,特に乗用車用タイヤにおいて外観に優れたタイヤが好まれ,表示マークの見映えの向上も要望されるようになった」との記載(甲1段落【0002】)からすれば,表示マークの識別性向上は,タイヤの外観を優れたものとするための一手段であり,甲1発明のタイヤの外観をさらに向上させる手段があるの 望されるようになった」との記載(甲1段落【0002】)からすれば,表示マークの識別性向上は,タイヤの外観を優れたものとするための一手段であり,甲1発明のタイヤの外観をさらに向上させる手段があるのであれば,それが望ましいことといえる。 ここで,甲2文献は,空気入りタイヤを技術分野としているから(甲2段落【0001】),本件発明と技術分野が共通しており,しかも甲2文献は外観を向上することを目的とするとされているから,甲1発明 に接した当業者であれば,甲2文献に記載された内容を検討対象とすると考えられる。 そして,甲2文献の記載を具体的に見ると,時間の経過によって,タイヤのゴムに添加されたワックス等の油分や老化防止剤などの添加剤がタイヤの外表面に移行して滲み出し,外観を損ねるという現象を課題として認識し,これを解決するための技術的事項が記載されたものであることがわかる(前記(2)イ)。このような現象は,甲1発明のタイヤ全体に生じうるものといえるが,そうなれば甲1発明のタイヤの外観を損なうことになる。また,このような現象は,甲1発明の表示マーク部分にも生じうるものであり,そうなれば表示マークの識別性の低下をもたらす。 よって,甲2文献の記載事項は,表示マーク部分を含む,甲1発明のタイヤの外観をさらに向上させるのに適した内容と考えられるから,当業者であれば,甲1発明に甲2文献の記載事項を組み合わせることを試みる十分な動機付けがあるといえる。 甲2文献には,コントラストを高めるという発想はないが,そうであっても,別の理由から,甲1発明との組み合わせが試みられることは,以上に述べたところから明らかである。 (イ) そして,甲1発明に甲2文献の記載事項を適用するにあたっては,甲2文献には,標章等の模様をも粗面部とすること(甲2段落 の組み合わせが試みられることは,以上に述べたところから明らかである。 (イ) そして,甲1発明に甲2文献の記載事項を適用するにあたっては,甲2文献には,標章等の模様をも粗面部とすること(甲2段落【0010】),タイヤ1の外表面全体あるいはサイドウォール部を粗面部とすることが望ましいこと(甲2段落【0016】,【0030】)が記載されているから,甲1発明のタイヤの細溝によって形成された表示マーク(甲2文献の「標章等の模様」に相当する。)を含めたサイドウォール面全体に,甲2文献所定の表面粗さを設ける構成とすることが考えられる。 ここで,甲2文献では,表面粗さはJIS−B−0601の規定の十点平均粗さで5μmから100μmとされているが(甲2段落【0005】,【0006】),それに加え,下限を5μmとすべきであり,これより小さな表面粗さでは,タイヤが白っぽく見え,しかも油分などのぎらつきなどが目立ちやすくなること,特に好ましくは15~35μmであること(甲2段落【0012】)が記載され,さらに,それぞれ表面粗さを10μm,30μmとする実施例1,2が開示され,特に30μmの実施例2が,新品時外観及び暴露時外観の双方で最高得点と評価されていること(甲2段落【0028】,【0029】)からすれば,甲1発明に組み合わせるにあたって,表面粗さを5μm~30μmとすることは,当業者が適宜設計する事項の範囲内であるといえる。 なお,表面粗さについて,本件発明3はDIN4768(1990)規格であるのに対し,甲2文献は,JIS−B−0601の規定の十点平均粗さである。しかし,本件明細書は,5μm「よりも小さな値は,タフト又はブレードの表面が「滑らか」になり,かくして入射光を反射する」(段落【0035】)とし,甲2文献も「5μm未満で 定の十点平均粗さである。しかし,本件明細書は,5μm「よりも小さな値は,タフト又はブレードの表面が「滑らか」になり,かくして入射光を反射する」(段落【0035】)とし,甲2文献も「5μm未満であると,光が良い加減に乱反射せず」(段落【0012】)として,類似の理由に基づきいずれも5μmを下限としていること,両規格で表面粗さの数値に大きな差異が生じると認めるに足りる証拠はなく,当事者も規格の違いを特に問題としていないことに照らすと,この点は実質的な相違点とはならないと解される。 (ウ) 被告らは,甲1発明の表示マークを設けた領域以外のサイドウォール面にも甲2文献の粗面部を適用した場合,サイドウォール面でタイヤに当たる光を乱反射し黒っぽくなり,表示マークの識別性が低下するから,甲1発明の目的に反することとなるので,甲1発明に甲2文献の記載事項を適用することには阻害事由が存在する旨主張する。 しかし,前記(イ)のとおり,甲2文献に記載の技術は,標章等の模様9と外表面3の双方に一定の表面粗さを設けるものであるが(甲2段落【0010】),標章等が視認不能になってしまうならばこれを設ける意味がなくなってしまうから,このような構成としても,模様9が視認可能であることは,当然の前提となっていると解される。 また,甲1発明においては,表示マークが細溝で形成されている一方,表示マーク以外の領域は細溝が設けられていないことによって,すでにコントラストが生じている。そのため,表示マークとそれ以外の領域の双方を粗面部とした場合,それ以外の領域が黒っぽくなるとともに,表示マークも,より黒っぽくなることも想定されるから,必ずしも表示マークのコントラストが低下しないとも考えられる。 以上のとおり,甲1発明に甲2文献の粗面部を適用しても,表示マー くなるとともに,表示マークも,より黒っぽくなることも想定されるから,必ずしも表示マークのコントラストが低下しないとも考えられる。 以上のとおり,甲1発明に甲2文献の粗面部を適用しても,表示マークの識別性が低下するとは限らないから,被告らが指摘する点は,前記(ア)のとおり,十分な動機づけに基づく甲1発明と甲2文献とを組み合わせるとの試みを,阻害するまでの事由とは認められない。 (エ) 以上のとおり,甲1発明と甲2文献の記載事項を組み合わせる動機づけがあり,当業者であれば,両者を組み合わせ,細溝を含むサイドウォール面全体に,5μm~30μmの表面粗さを設ける構成に容易に想到すると認められる。 (オ) そして,前記(エ)の構成は,相違点2に係る本件発明3の構成に含まれるといえる。 すなわち,本件発明3は,「前記ブレード(22)の壁は,その面積の少なくとも1/4にわたり,5μm〜30μmの平均粗さRzを有し,この平均粗さを有する前記ブレードの前記壁は,前記ブレードの高さの下四分の一に位置している」という発明特定事項を有するが,ブレードの高さの下四分の一より上側や,ブレードを設けたパターン以外の 可視面の表面粗さについては,何ら特定していない。かえって,「少なくとも」とあるので,ブレード部分については,面積の1/4より広い範囲において5μm〜30μmの平均粗さRzを有することが想定されているといえる。 他方,本件発明3は,「可視面は,該可視面とコントラストをなすパターン(2)を有し,」との発明特定事項(以下「発明特定事項②」という。)を有するところ,非常にコントラストの高い印を備えた車両用タイヤを製造するという本件発明の意義(前記1(3))に照らせば,パターン部分の表面粗さが,パターン以外の部分の表面粗さより大きい方が,コ )を有するところ,非常にコントラストの高い印を備えた車両用タイヤを製造するという本件発明の意義(前記1(3))に照らせば,パターン部分の表面粗さが,パターン以外の部分の表面粗さより大きい方が,コントラストが高まると考えられ,したがって,発明特定事項②は,パターン部分とパターン以外の部分とで表面粗さが異なる構成のみを含めるものとしているのではないかとの疑問も生じないではない。しかし,パターン以外の部分の表面粗さについて,発明特定事項②はもとより,本件明細書中にも具体的な記載はなく,かえって,「コントラストは、パターンの表面が光沢のある表面に隣接して位置する場合により高い。」(段落【0013】)との記載によれば,本件明細書は,パターンの表面に隣接する部分が,光沢のある表面でない場合をも想定しているものと考えられる。なお,パターンとそれ以外の双方を粗面としても,コントラストが生じると解されることは,前記(ウ)のとおりである。 そうだとすれば,本件発明3の「可視面」について,一定の表面粗さであるものに限定して解することはできない。 よって,ブレードの高さの下四分の一より上側や,ブレード以外の可視面にも,ブレードの高さの下四分の一と同様に5μm〜30μmの平均粗さRzを有するようにした構成,例えばブレードを含む可視面全体について,5μm〜30μmの平均粗さRzを有するようにした構成 も,本件発明3に含まれると解すべきである。 なお,被告らは,本件発明3が上記のとおり解されるとの原告の主張に対し,明示的な反論をしていない。 イ被告らの主張について(ア) 発明の目的について被告らは,甲1発明のパターンを含むサイドウォール面のすべてを粗面部とすると,コントラスト効果が当然に高まることはなく,本件発明の目的を達成できないと主 主張について(ア) 発明の目的について被告らは,甲1発明のパターンを含むサイドウォール面のすべてを粗面部とすると,コントラスト効果が当然に高まることはなく,本件発明の目的を達成できないと主張する。 しかし,本件発明3には,ブレードを含む可視面全体を5μm〜30μmの平均粗さRzを有するようにした構成,すなわち,甲1発明に甲2文献の粗面部を適用した構成も含まれることは,前記ア(オ)のとおりである。そして,構成が同一であれば効果も同一であると考えられる。 よって,本件発明3には,甲1発明に甲2文献の粗面部を適用した構成と同程度のコントラストしか生じないものが含まれているのであるから,甲1発明に甲2文献の粗面部を適用した構成が,本件発明の目的を達成できていないとはいえない。また,以上によれば,本件発明3に,顕著な作用効果があるとも認められない。 (イ) 数値範囲について被告らは,本件発明3の表面粗さの範囲には臨界的意義があるとも主張する。 しかし,本件発明3における5μmという下限は,これよりも小さいとタフト又はブレードの表面が「滑らか」になり,入射光を反射してしまうことを考慮して定められたものであるが(段落【0035】),甲2文献の段落【0012】にも,5μm未満であると,光が良い加減に乱反射しないことが記載されているから,下限について,新たな臨界を発見したというものではない。 また,上限は,タフトについてすら,成形中に引きちぎれるのを阻止する限度として,目安として与えられている(段落【0036】)にすぎないとされるにとどまり,ブレードについては特段の説明はないから,臨界的意義があるとはいえない。 (4) 小括以上のとおり,甲1発明に甲2文献に記載された事項を適用することにより相違点2に係る本件発明3の にとどまり,ブレードについては特段の説明はないから,臨界的意義があるとはいえない。 (4) 小括以上のとおり,甲1発明に甲2文献に記載された事項を適用することにより相違点2に係る本件発明3の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものと認められるから,この容易想到性が認められないことを理由に,本件発明3について無効理由が成り立たないものとした本件審決の判断は誤りである。 よって,取消事由3に関する原告の主張には理由がある。 4 取消事由4(本件発明1,2,4ないし6の進歩性判断の誤り)について(1) 甲3発明についてア甲3文献には,以下の事項が記載されている。 (ア) 特許請求の範囲【請求項1】 物品(1)であって,少なくとも1つの目に見える表面(11)を有し,この表面は,その少なくとも一部分に,物品の表面とは対照的なパターン(2)を備え,このパターン(2)は,前記パターンの全体にわたって分布した複数の繊維状物(21)を備え,それぞれの繊維状物(21)は,0.003〜0.06mm2の平均断面積を有し,このパターンは,パターンの表面上の繊維状物(21)の密度が,平方ミリメートル(mm2)で表現される単位面積あたり,少なくとも5つの繊維状物であることを特徴とする物品。 【請求項4】 それぞれの繊維状物(21)の横断面は,繊維状物の基部から前記繊維状物の先端部に向けて減少していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の物品(1)。 (イ) 技術分野【0001】 本発明は,マーキング,及び様々な物品にそうしたマーキングを作る方法に関し,限定はしないが,特に,物品は,プラスチック又はゴムから作られる。 (ウ) 背景技術【0005】 マーキングが作られる物品に統合されたタイプのマーキング にそうしたマーキングを作る方法に関し,限定はしないが,特に,物品は,プラスチック又はゴムから作られる。 (ウ) 背景技術【0005】 マーキングが作られる物品に統合されたタイプのマーキングであって,公知のマーキングに比べて視認性が改善され,また,物品が使用された後にも視認できる,充分な長い持続性を有するマーキングが望ましい。 (エ) 発明が解決しようとする課題【0006】 本発明によるモールド成形方法は,従来技術に関連して前述した問題点を解決し,長く持続して,同一の色の表面(この表面は黒又は任意のその他の色である。)に非常に大きなコントラストを呈するような,マーキングを得ることを可能にする。 (オ) 課題を解決するための手段【0007】 本発明によれば,モールド成形によって得られる物品に,高いコントラストのパターンが作られ,そのために,モールドの表面のパターンの位置に,平均断面積が0.003〜0.06mm2である複数の孔を設け,パターンの形成に適切な密度をもった,所望のパターンを作成する。好ましくは,この密度は,1mm2の面積あたり,少なくとも5つの孔の密度を有し,前記孔は,少なくとも0.1mmの深さを有している。 【0009】 本発明によるマーキングによれば,マーキングが作られる物品の色と同一の色で,非常に高いコントラストのマーキングを有し,繊維状物の数及び長さによって繊維状物の長寿を保証することが可能になる。 【0013】 方法及びその様々な実現は,限定はしないが,特に,タイヤの製造などのゴム物品の生産に適用され,これらは黒又は任意の他の色を有している。 【0014】 また,本発明は,物品の表面に形成されたマーキングに関し,このマーキングは,物品自体の色に対して,非常に大きなコントラストを呈 に適用され,これらは黒又は任意の他の色を有している。 【0014】 また,本発明は,物品の表面に形成されたマーキングに関し,このマーキングは,物品自体の色に対して,非常に大きなコントラストを呈する。 (カ) 発明を実施するための最良の形態【0025】 図1は,物品1を示しており,その1つの外面11には,マーキング2が設けられ,マーキングは,本発明の実現のおかげで,特に良く目に見えると共に,任意の角度の入射光に対して高いコントラストを有している。 【図1】 【0038】 さらに,ゴム化合物の組成に用いられるある種の化学要素,特に,タイヤに採用されるものは,外面に移動し,これらの表面を着色することが知られている。本発明によるマーキングのおかげで,この移動がマーキングを損なう衝撃は制限され,というのは,そうした移動を阻止することなく,表面は,タイヤの平均表面に対して比較的急に傾斜しており,これらの着色は側壁の視認性を害することがなく,それによ り,前記マーキングの寿命を効果的に増加させる。 イ一致点及び相違点甲3発明の認定及び甲3発明と本件発明1との一致点及び相違点についての審決の認定(前記第2の3(2)(3))が妥当であることは,当事者間に争いはない。 すなわち,相違点は以下の相違点3-1及び3-2であり,審決は,当該相違点3-1は容易想到であるものの,相違点3-2は容易想到ではないとしたところ,相違点3-1に係る審決の判断については,当事者双方とも特に争っていない。 [相違点3-1]本件発明1は,「各タフトは,0.03mm~0.5mmの直径(d)を有する平均断面を備えた」との事項を有しているのに対して,甲3発明は,「それぞれの繊維状物21は,0.003~0.06mm2の平均断面積を有」するも タフトは,0.03mm~0.5mmの直径(d)を有する平均断面を備えた」との事項を有しているのに対して,甲3発明は,「それぞれの繊維状物21は,0.003~0.06mm2の平均断面積を有」するものであり,直径が特定されていない点。 [相違点3-2]本件発明1は「タフトの壁は,その面積の少なくとも1/4にわたり,5μm~30μmの平均粗さRzを有し,この平均粗さを有するタフトの壁は,タフトの高さの下四分の一に位置している」との事項を有しているのに対して,甲3発明は,繊維状物21の壁の平均粗さについて特定されていない点。 (2) 容易想到性の判断ア相違点3-2の容易想到性について判断するに,甲3発明は,タイヤなどのマーキングの視認性を改善させることを目的とするものであり,甲2文献は,時間の経過とともに,タイヤのゴムに添加されたワックス等の油分や老化防止剤などの添加剤がタイヤの外表面に移行して滲み出し,外観を損ねるという課題を解決することを目的とするものであるから,両者 は,タイヤの外観を向上させるという点で目的が一致している。そして,時間の経過とともに,タイヤのゴムに添加されたワックス等の油分や老化防止剤などの添加剤がタイヤの外表面に移行して滲み出し,外観を損ねるという甲2文献の課題は,甲3発明においても生じうるものであるし,「充分な長い持続性を有するマーキングが望ましい。」(甲3段落【0005】)との甲3発明の示唆にもかなうものである。 甲2文献に,コントラストを高めるという発想はないが,そうであっても,別の理由から,甲3発明との組み合わせが試みられることは,前記3(3)ア(ア)と同様である。 よって,当業者であれば,甲3発明に甲2文献の記載事項を組み合わせることは,容易に想到することというべきである。 イ 甲3発明との組み合わせが試みられることは,前記3(3)ア(ア)と同様である。 よって,当業者であれば,甲3発明に甲2文献の記載事項を組み合わせることは,容易に想到することというべきである。 イ組み合わせにあたって,マーキング部分を含むタイヤの目に見える表面全体に所定の表面粗さを設けること,表面粗さの範囲を5μm~30μmとすることは,前記3(3)ア(イ)と同様である。 また,本件発明1は,タフトを含む可視面全体について,5μm〜30μmの平均粗さRzを有するようにした構成も含むことは,前記3(3)ア(オ)と同様である。 よって,甲3発明に甲2文献の記載事項を組み合わせた構成は,相違点3-2に係る本件発明1の構成に含まれることになる。 (3) 小括以上のとおり,甲3発明に甲2文献に記載された事項を適用することにより相違点3-2に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものと認められるから,この容易想到性が認められないことを理由に,本件発明1について無効理由が成り立たないものとした本件審決の判断は誤りである。 また,審決は,本件発明2,4ないし6について,本件発明1をさらに限 定した構成であることから直ちに容易想到ではないとしているが,前記のとおり本件発明1に関する審決の判断は誤りであるから,本件発明2,4ないし6についての前記判断も誤りであることは明らかである。 よって,取消事由4は理由がある。 5 結論以上のとおり,取消事由1は理由がないが,取消事由3及び4は理由があるから,取消事由2について判断するまでもなく,本件審決は取り消されるべきことになる。 よって,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 主文 判断するまでもなく,本件審決は取り消されるべきことになる。よって,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 鶴岡稔彦 裁判官 高橋彩 裁判官 石神有吾
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