主文 1 原判決を次のとおり変更する。 (1) 控訴人は,被控訴人Aに対し金939万4517円及びこれに対する平成11年4月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 控訴人は,被控訴人Bに対し金748万1085円及びこれに対する平成11年4月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 被控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。 2 本件各附帯控訴を棄却する。 3 訴訟費用は第1,2審を通じて4分し,その1を控訴人の,その余を被控訴人らの各負担とする。 4 この判決は,第1項の(1)及び(2)に限り,仮に執行することができる。ただし,控訴人が被控訴人ら各自につきそれぞれ金550万円の担保を供するときは,同各仮執行を免れることができる。 事実及び理由 第1 控訴及び附帯控訴の趣旨(控訴人の控訴の趣旨) 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 (被控訴人らの附帯控訴の趣旨) 1 原判決を次のとおり変更する。 (1) 控訴人は,被控訴人A(以下「被控訴人A」という。)に対し,金4173万4079円及びこれに対する平成11年4月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 控訴人は,被控訴人B(以下「被控訴人B」という。)に対し,金3952万9799円及びこれに対する平成11年4月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は第1,2審とも控訴人の負担とする。 3 第1項につき仮執行宣言第2 事案の概要次のとおり補正するほかは,原判決の「第2 事案の概要」 まで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は第1,2審とも控訴人の負担とする。 3 第1項につき仮執行宣言第2 事案の概要次のとおり補正するほかは,原判決の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるから,これを引用する。 1 原判決2頁下から2行目から末行にかけての「、北方に左折し」を削除し,同3頁下から4行目から3行目にかけての「40」を「少なくとも30」と改める。 2 同4頁4行目の「そして」を「Cは,本件現場交差点を北方に左折しようとしていたところ」と改め,同5頁15行目末尾の次に次のとおり加える。 「また,仮に中間利息の控除についてライプニッツ係数を採用するとしても,中間利息の利率については,本件事故後現在まで低金利状況が継続しており,少なくとも今後3年間は同様の状況であることが予想されるから,本件事故後8年間については,現実の金利動向を反映した利率を,その後は年5パーセントをそれぞれ基礎とした係数(16.1135)を採用すべきであり,これを下回ることがあってはならない。」 3 同6頁初行から同16行目までを次のとおり改める。 「⑧ 葬儀費用及び墓代 200万円⑨ 損害の填補前記1の(5)のとおり⑩ 充当関係以上のとおり,被控訴人らの損害額は,被控訴人A分が合計5088万0698円,同B分が合計4888万0698円となるところ,前記⑨の各填補額を各填補日までの遅延損害金及び損害額に法定充当すると,被控訴人らの損害残額は,被控訴人A分が3873万4079円,同B分が3652万9799円となる。 ⑪ 弁護士費用各300万円⑫ 請求金額被控訴人A 4173万4079円 3万4079円,同B分が3652万9799円となる。 ⑪ 弁護士費用各300万円⑫ 請求金額被控訴人A 4173万4079円被控訴人B 3952万9799円」第3 当裁判所の判断 1 次のとおり補正するほかは,原判決の「第3 争点に対する判断」の説示と同一であるから,これを引用する。 (1) 原判決7頁4行目の「11」の前に「9,」を加え,同5行目の「被告本人」を「原審における被控訴人A及び控訴人各本人」と,同8行目から同8頁6行目までを次のとおりそれぞれ改める。 「ア本件現場及び本件事故の状況は,原判決添付別紙図面(以下「別紙図面」という。)のとおりであり,本件現場は非市街地で,交通量は普通である。本件道路は,アスファルト舗装され,黄色の中央線が切れ目なく引かれ,南から北に向けて100分の5の割合の傾斜で下り坂になっており,本件事故当時,路面は乾燥していた。本件現場の制限速度は時速40キロメートルである。本件道路(幅員6.9メートル)は,交差道路(幅員4.7メートル)との関係では優先道路となっている。 交差道路は,a方面から見て左側に位置するところ,道路に隣接して法面の高さ約2メートルの水田の土手があるために,本件道路から左方(西側)の交差道路及び交差道路から本件道路の右方(南側)に対する見通しの状況は,いずれも良くないが,本件道路を北進した場合,交差道路入り口付近の身長1.2メートル程度の人物を約24メートル手前で視認することができる。また,交差道路向側の本件道路東側に設置されたカーブミラー(以下「本件カーブミラー」という。)によれば,衝突地点から約35メートル南側の地点(別紙図面のP点)で,衝突地点から西側18.9メー きる。また,交差道路向側の本件道路東側に設置されたカーブミラー(以下「本件カーブミラー」という。)によれば,衝突地点から約35メートル南側の地点(別紙図面のP点)で,衝突地点から西側18.9メートルの交差道路上の地点(同図面のP’点)まで見通すことができる。 イ控訴人は,本件事故以前にも約20回本件現場を走行したことがあり,本件道路には交差する道路が多いことは認識していたが,交差道路に気付いたことはなく,本件事故時も本件カーブミラーを見落とし,これによる交差道路の交通状況を確認していない。 控訴人は,本件現場近くのゴルフ場から帰宅するため,本件道路を控訴人車を運転して南から北に向けて進行していたところ,衝突地点の手前13.4メートルの地点(別紙図面の②点)で,本件現場交差点に自転車で進入しようとしているCを別紙図面の<ア>点に発見し,右にハンドルを切りながら急制動の措置を取ったが間に合わず,別紙図面の<×>点でC車と衝突した。なお,別紙図面の<ア>点と同<×>点間の距離は2.0メートルである。 ウ Cは,当時小学校3年生(8歳)であり,友人宅からの帰宅途中,交差道路をC車に乗って西から東に向けて進行し,本件現場交差点に進入して本件事故に遭ったものであるが,本件現場は,登下校時にも通っていた。 エ本件現場には,控訴人車による長さ約17.9メートルのスリップ痕が残っていた。また,衝突後,C車は衝突地点から北へ11.2メートル先の本件道路西側の溝(別紙図面の<エ>点)に,Cは衝突地点から北へ16.8メートル先の本件道路西側の路側帯(別紙図面の<ウ>点)にそれぞれ倒れていた。 オ本件事故により,控訴人車は,前部バンパー,左前フェンダー及びボンネットが凹損し,フロントガラスが破損した。また,C車は, 本件道路西側の路側帯(別紙図面の<ウ>点)にそれぞれ倒れていた。 オ本件事故により,控訴人車は,前部バンパー,左前フェンダー及びボンネットが凹損し,フロントガラスが破損した。また,C車は,前ホーク,前輪及びフレームが曲損した。」(2) 同8頁8行目の「速度」の次に「及び控訴人の過失」を,同9行目の冒頭に「乙第3号証(控訴人作成の陳述書)及び」を,同下から6行目の「証拠(」の次に「甲6,」を,同9頁7行目の「道路」の次に「(アスファルト舗装された道路で乾燥した路面の場合)」をそれぞれ加え,同10行目から同17行目の「また」までを次のとおり改める。 「 したがって,控訴人は,制限速度を20キロメートル以上も超過して本件道路を走行していたことになる。また,控訴人は,前記(1)のア,イのとおり,衝突地点の約20メートル以上手前から交差道路入り口付近の身長1.2メートル程度の人物を視認することができ,また,本件カーブミラーによれば,さらにその手前(衝突地点から約35メートル南側)で,衝突地点から交差道路の西側18.9メートルの地点まで見通すことができるのであって,交差道路を本件道路に向けて走行していたCを発見することが十分可能であったにもかかわらず,本件カーブミラーを見落とし,これによる交差道路の交通状況の確認を怠ったため,衝突地点の南側13.4メートルの地点に至るまでCを発見することができなかったものであるから,控訴人に前方不注視の過失ないしは交差道路から本件現場交差点に進入しようとする車両等の動静を注視する義務を怠った過失があったことが明らかである。そして,控訴人のこれら制限速度違反,前方不注視等の過失の程度は,前記認定の事実に照らし,著しいものといわなければならない。 (3) Cの過失についてCとしては たことが明らかである。そして,控訴人のこれら制限速度違反,前方不注視等の過失の程度は,前記認定の事実に照らし,著しいものといわなければならない。 (3) Cの過失についてCとしては,本件道路が優先道路であること,交差道路から本件道路右側の見通しが良くないことから,交差道路から本件現場交差点に進入するに際しては(本件道路を横断するにせよ,左折するにせよ,いずれの場合も同様である。),本件道路を走行する車両の動静に注意し,左右の安全を確認した上,本件現場交差点に進入すべき義務があったというべきところ,控訴人がC車を発見してから(この時点で,Cも被告車を発見し得たものと推認できる。),控訴人車がC車に衝突するまでの間,C車も2メートル走行して本件道路の路側帯を越えて走行車線に進入していることに照らせば,Cは,少なくとも本件道路の右方の安全確認をしないまま漫然と本件現場交差点に進入したものといわざるを得ず,Cにも過失があったことは否定できない。ところで」(4) 同9頁末行の「その際」を「Cが自転車のハンドルを左に切っていたとしても,その角度が45度ということは考えにくいこと(原審証人D)などからして,衝突時」と,同10頁3行目の「一旦停止をせず、」を「安全確認が不十分なまま」と,同6行目の「諸事情」から同9行目の「していたこと」までを「控訴人及びCの前記認定の各過失の内容及び程度のほか」と,同下から7行目の「広島大学付属病院」を「広島大学医学部附属病院」とそれぞれ改める。 (5) 同10頁下から3行目から同11頁下から7行目までを削除し,同6行目の「②」を「ア」と改め,同12頁5行目の次に改行して次のとおり加える。 「イ逸失利益の現価計算における中間利息の控除に関する被控訴人らの主張について,検討する。 でを削除し,同6行目の「②」を「ア」と改め,同12頁5行目の次に改行して次のとおり加える。 「イ逸失利益の現価計算における中間利息の控除に関する被控訴人らの主張について,検討する。 (ア) 中間利息の控除方法(ライプニッツ方式とホフマン方式)について交通事故訴訟における若年者の逸失利益の算定において,適正,妥当な損害額を認定するためには,基礎収入の認定方法と中間利息の控除方法とを整合的に関連させて考える必要があるところ,同算定において,被害者が生涯を通じて全年齢平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合には,基礎収入を全年齢平均賃金又は学歴別平均賃金(賃金センサスの全年齢平均賃金)によるのが妥当であるが,基礎収入として初任給固定賃金でなく,比較的高額の全年齢平均賃金を用いることとの均衡,ホフマン方式(年別・単利・利率年5分)の場合には,就労年数が36年以上になるときは,賠償金元本から生じる年5分の利息額が年間の逸失利益を超えるという不合理な結果になるのに対して,ライプニッツ方式(年別・複利・利率年5分)の場合には,そのような不合理な結果を招来しないことなどを考慮すると,中間利息の控除方法としては,ライプニッツ方式を採用するほうが,より適正かつ妥当な逸失利益を算定できるものというべきであるから,同方式を用いるのが相当である。 (イ) 中間利息の利率についてここ数年間は低金利の状況が続いているが,それ以前の十数年間の定期預金の金利は年5パーセント前後の水準で推移し,公定歩合をみると,戦後年5パーセントを上回っていた時期の方が年5パーセントを下回っていた時期より長く,この30年間のうち,昭和50年前後の数年間の公定歩合は年6パーセントを超え一時的には年9パーセントに達す ると,戦後年5パーセントを上回っていた時期の方が年5パーセントを下回っていた時期より長く,この30年間のうち,昭和50年前後の数年間の公定歩合は年6パーセントを超え一時的には年9パーセントに達する時期があったこと(甲12,13,15,弁論の全趣旨),本件における逸失利益は,口頭弁論終結時から約4年後(Cが満18歳に達する時)以降約50年間にわたる得べかりし収入に係るものであって,そのような長期間にわたる将来の金利の推移を客観的かつ高度の蓋然性をもって予測することは極めて困難であること,また,民法において法定利率が年5分とされている(民法404条)ことや遅延損害金の利率が法定利率の年5分とされている(民法419条)こととの均衡(逸失利益における中間利息の控除の趣旨からして,その場合の控除割合を前記法定利率や遅延損害金の利率と同一のものとしなければならないものとは必ずしもいえないが,民法制定当時,法定利率等を定めるに当たり,一般的な運用利益が考慮されて年5分とされた経緯に照らすと,中間利息の控除と共通する面があることは否定し難いところ,民法の前記規定は,制定後現在に至るまで改正されていない。),破産法46条5号,会社更生法114条,民事再生法87条等の規定において中間利息控除の割合が年5分とされていることのほか,大量の交通事故による損害賠償請求事件においては,定型的で迅速な処理が要請されるところ,逸失利益の算定における中間利息の控除割合については,永年にわたり,金利動向の高低にかかわらず,民法上の法定利率による扱いが定着して採用されてきたのであって,個々の事件ごとに利率の認定作業をすることは前記要請に反することなどを考慮すると,本件の逸失利益の算定における中間利息の控除割合は,年5パーセントとするのが相当である。なお,甲15には,初 あって,個々の事件ごとに利率の認定作業をすることは前記要請に反することなどを考慮すると,本件の逸失利益の算定における中間利息の控除割合は,年5パーセントとするのが相当である。なお,甲15には,初期の低金利は,将来の高金利よりもライプニッツ係数の算出により影響するとして,現在の低金利を無視して逸失利益を算定すべきではない旨の記載があるが,前記説示に照らすと,年5パーセントとするのが不合理であるとまではいえず,他にこれを不合理とする特段の事情があるものとも認められない。」(6) 同13頁9行目の「そして」から同12行目までを削除し,同13行目から同下から2行目までを次のとおり改める。 「(11) 損害の填補及び充当計算以上によれば,被控訴人Aは2348万8964円,同Bは2188万8964円の各損害賠償請求権を有しているところ,被控訴人らは,前記第2の1の(5)のとおり,損害の填補を受けたから,各填補額を各填補日までの遅延損害金にまず充当し,残額を前記損害額に充当すると,別紙計算書のとおり,損害残金は,被控訴人Aにつき854万4517円,同Bにつき678万1085円となる。 (12) 弁護士費用本件事案の内容,審理の経過,認容額等に照らし,被控訴人らが本件事故による損害として控訴人に対し賠償を求め得る弁護士費用は,被控訴人Aにつき85万円,被控訴人Bにつき70万円と認めるのが相当である。 (13) 損害賠償請求債権そうすると,被控訴人らの損害賠償請求債権は,被控訴人A分が939万4517円,同B分が748万1085円となる。」 2 以上の次第で,被控訴人らの本訴請求は,控訴人に対し被控訴人Aが939万4517円,被控訴人Bが748万1085円及び同各金員に対する平成1 9万4517円,同B分が748万1085円となる。」 2 以上の次第で,被控訴人らの本訴請求は,控訴人に対し被控訴人Aが939万4517円,被控訴人Bが748万1085円及び同各金員に対する平成11年4月20日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は失当として棄却すべきであり,これと異なる原判決は不当であるから,これを前記のとおり変更し,本件各附帯控訴は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法67条2項,64条,61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第2部裁判長裁判官高升五十雄裁判官布村重成裁判官松井千鶴子
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