昭和53(行ク)23 大阪中央労基署長休業補償給付差止

裁判年月日・裁判所
昭和54年1月24日 大阪地方裁判所
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【DRY-RUN】主   文 申立人らの本件申立てをいずれも却下する。 申立費用は申立人らの負担とする。        理   由 第一 申立人らの申立ての趣旨および理由  別紙(一)ないし(五)記載のとおりである。

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主文 申立人らの本件申立てをいずれも却下する。 申立費用は申立人らの負担とする。 理由 第一申立人らの申立ての趣旨および理由別紙(一)ないし(五)記載のとおりである。 第二被申立人らの意見別紙(六)ないし(八)記載のとおりである。 第三当裁判所の判断一被申立人らが申立人らに対し、別紙(一)の執行停止申立書に添付する別紙処分一覧表記載の各休業補償給付および休業特別支給金(以下、これらを休業補償給付等という)の支払の一時差止め処分(以下、本件差止め処分という)を行なつたことは、本件記録上明らかである。 そこで、本件執行停止の申立てに申立ての利益があるか否か、換言すれば、本件差止め処分の効力を停止することによつて、申立人らに法的な利益が生ずるか否かについて、以下順次判断する。 二まず、申立人らは、休業補償給付等については既に被申立人らによる支給決定がなされているのであるから、本件差止め処分の効力が停止されたならば、申立人らは被申立人らから当然に休業補償給付等の支払を受けうることとなり、申立ての利益があると主張する。 しかしながら、休業補償給付等を支給する場合には、被申立人らにおいて支給決定がなされ、その旨書面をもつて申立人らに通知される(労災保険法施行規則一九条、労働者災害補償保険特別支給金支給規則二〇条)のであるから、支給決定がなされたことは右通知書の提出などによつて容易に認定することができるところ、そのような疎明のない本件においては、支給決定はいまだなされていないものと認めざるを得ない。 申立人らは、最初の請求に基づく業務上外の認定は慎重になされるが、その後の請求に対する支給決定は請求者に病状固定あるいは治ゆ等の事情変更がない限り形式的な審査だけでなされており、実質的には最初なされた業務上認定に 初の請求に基づく業務上外の認定は慎重になされるが、その後の請求に対する支給決定は請求者に病状固定あるいは治ゆ等の事情変更がない限り形式的な審査だけでなされており、実質的には最初なされた業務上認定に基づく継続的支払であるという実態を有すると主張する。 しかしながら、労災保険法等の関係法令の規定によれば、休業補償給付等の請求は、請求者が業務上の負傷又は症病による過去の休業により賃金を受けられなかつたことに対する補償の請求であり、これに対する支給決定も、請求者が請求書に記載した期間について、初回と同様その要件の存否に関する実質的な審査、判断を行なつたうえ、請求の都度個別的になされるものであると認められるのであつて、仮に、支給手続の実際において、最初の請求に対する審査が慎重で時間がかかり、第二回目以降の審査がそうでないとしても、そのことから直ちに第二回目以降の審査および支給決定が共に形式的で、その休業補償給付等の支給が最初の支給決定の継続的支払であるとか、最初の支給決定に将来の休業補償給付等の決定が含まれていると解することはできない。 また、労災保険法四七条の三の規定及び本件差止め通知書には、いずれも、休業補償給付等の支払を一時差止める旨記載されているところからみると、本件においては既に差止めの対象となつた休業補償給付等の支給決定がなされていて、その支払のみが一時差止められたものと解されないではない。 しかしながら、右法条および本件差止め通知者の文言を本件の休業補償給付等の支給に関して考察すると、右法条は、右給付の請求があつた場合において、いかなる決定をするか(継続して休業補償給付を行なうか、これを打切るか、あるいは傷病補償年金に切替えるかなど)を判断するに必要な請求者の病状に関する資料(診断書を添付した傷病の状態等に関する報告書)が提出 る決定をするか(継続して休業補償給付を行なうか、これを打切るか、あるいは傷病補償年金に切替えるかなど)を判断するに必要な請求者の病状に関する資料(診断書を添付した傷病の状態等に関する報告書)が提出されないときは、当該請求に関する適正な認定ができないので、右資料の提出があるまで右請求に対する決定を一時留保することができる旨を定めたものであつて、具体的な支給決定がなされていることを前提とするものではないと解するのが相当である。 そうだとすれば、支給決定の存在を前提とする申立人の主張は理由がない。 三次に、申立人らは、被申立人らによる支給決定がない場合においても、本件差止め処分の執行停止がなされたならば、被申立人らは必然的に休業補償給付等の支給又は不支給の決定をしなければならない法的状況におかれ、しかも、申立人らが支給決定を受けうることはほぼ確実な状態にあるから、申立人らにつき支給決定がなされたときに近い状況となるのであり、従つて、本件申立ての利益が存すると主張する。 しかしながら、被申立人らは労災保険法一二条の七、同法施行規則一九条の二に基づき申立人らに提出を要求している傷病の状態等に関する報告書が申立人らから提出されないことを理由に労災保険法四七条の三の規定により一時差止め処分を行なつたものであることは本件記録上明らかであり、たとえ本件の執行停止の申立てが認容されたとしても、それは本件差止め処分の効力の停止、即ち本件差止め処分が存在せず、単に休業補償給付等の支給申請が継続している状態になるにとどまり、直ちに支給又は不支給いずれかの決定を受けうる法的状況になるとか、あるいは支給決定を受けうることがほゞ確実な状態にまではなり得ずその他労災保険法等の関係法令および記録を精査しても、何らの申立ての法的利益を認めることはできない。 四以上の る法的状況になるとか、あるいは支給決定を受けうることがほゞ確実な状態にまではなり得ずその他労災保険法等の関係法令および記録を精査しても、何らの申立ての法的利益を認めることはできない。 四以上のとおりであつて、本件申立ては申立ての利益を欠くからその余の点について判断するまでもなく失当として却下することとし、申立費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条、九三条を適用して、主文のとおり決定する。 (裁判官上田次郎安斎隆上垣猛)別紙(一)執行停止申立書申立の趣旨相手方らが申立人らに対してなした別紙処分一覧表記載の各休業補償給付および休業特別支給金の支払いの一時差止処分の効力およびその執行は停止するとの決定を求める。 申立の理由第一処分に至る経過一申立人らは頸肩腕障害の業務上疾病により労働者災害補償保険法(以下労災保険法という)第一四条により休業補償給付を労働者災害補償特別支給金規則(以下特別支給金規則という)第二条により休業特別支給金の支払いを受けている者である。 二処分一覧表記載の各処分庁は申立人らに対し「傷病の状態等に関する報告書」(以下報告書という)を提出していないことを理由として労災保険法第四七条の三および特別支給金規則第二〇条の規定にもとづき申立の趣旨記載の各処分をおこなつた。 三前項の処分によつて申立人らが不利益を受けることは明らかであるから申立人ら(申立人A、同Bは除く)は昭和五三年一〇月一一日各処分庁の上級行政庁である大阪労働基準局長に対して前項の処分につき審査請求および執行停止申立をおこなつた。右執行停止申立に対しては昭和五三年一〇月一三日、「執行を停止しない」旨の決定がなされた。 四申立人らは昭和五三年一一月二七日本件各処分につき処分取消の訴を提起した。 第二本件処分の違法性一三疾病につい 立に対しては昭和五三年一〇月一三日、「執行を停止しない」旨の決定がなされた。 四申立人らは昭和五三年一一月二七日本件各処分につき処分取消の訴を提起した。 第二本件処分の違法性一三疾病については傷病補償年金の対象にならないのであるから、年金移行の症状把握に必要とされる報告書の提出義務はない。 1 相手方らの本件報告書を提出させる理由相手方らは本件報告書は労災保険法一二条の七、同施行規則一九条の二にもとづくものであり、その提出をさす理由としては、被災労働者に対する「適切な給付」をおこなうため、すなわち休業補償給付等を継続するか傷病補償年金に移行するかの判断をおこなうについて当該労働者の症状把握の必要があるということである。 2 労災保険法一条によれば、労災保険の目的は被災者に対して迅速且つ公正な保護をするため必要な保険給付をおこない、あわせて「社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、適正な労働条件の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与すること」とされている。 ところで申立人らの職業性疾病である頸肩腕症候群・腰痛症・むちうち症(いわゆるこれを「三疾病」と表する)などは、適切な治療と訓練的就労の場が保障されれば必ず職場復帰が可能であることが明らかにされている。このことをうけて行政は企業に治療の一環として職場復帰訓練を位置づけさせることの重要性を認識し、行政指導すべく通達を出している(頭頸部外傷症候群等の労働災害被害者に対する特別対策の実施についてー五九三号通達)。したがつて、三疾病については、それが長期の療養を必要とする場合であつても、またある時期にはほとんど症状に変化のみられないときがあつても、職場復帰を求めて適切な治療と訓練的就労の場を保障すべきであつて、それが前記労災保険の目的である「疾病にかかつた労働者の社会復 つても、またある時期にはほとんど症状に変化のみられないときがあつても、職場復帰を求めて適切な治療と訓練的就労の場を保障すべきであつて、それが前記労災保険の目的である「疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進」にかなつたものなのである。ところが、傷病補償年金はその適用をうければ業務上疾病中の療養期間中は原則として解雇してはならないという解雇制限(労基法一九条)が撤廃されるため(労災保険法一九条)、使用者はいつでも被災労働者を解雇し職場から放逐することができるようになつた。これでは現在通院治療あるいは訓練的就労を通して社会復帰のための諸活動をおこなつている申立人らのごとく三疾病被災者に対して傷病補償年金給付の判断材料としての報告書の提出を命ずることは、被災者保護にならないことはもちろん社会復帰の促進にもならないで前記労災保険の目的にも合致せず、また「手厚い保護」として導入された傷病補償年金の制度趣旨にも合致しないこと明白である。 したがつて適切な治療と訓練的就労があればかならず職場復帰できる三疾病については、傷病補償年金の対象にはならないといわなければならない。 このことから傷病補償年金移行のための判断に必要な報告書は被災者には提出する義務がないのである。また、労災保険法施行規則一九条の二にいう「報告書」の提出については、かかる三疾病の場合にはこれに含まれておらず、労災保険法一二条の七の提出義務もかかる三疾病については課せられないのである。 3 傷病補償年金新設過程と三疾病そもそも以上のことは傷病補償年金が新設された昭和五一年の労災法改正における国会審議あるいはその後の経過のなかで明白にされたところである。 すなわち、三疾病については、特に解雇制限との関係から「基本的に年金になじまない」ことが国会で認められ、その結果衆参両院ともに政府が講 国会審議あるいはその後の経過のなかで明白にされたところである。 すなわち、三疾病については、特に解雇制限との関係から「基本的に年金になじまない」ことが国会で認められ、その結果衆参両院ともに政府が講ずるべき措置として「傷病補償年金制度の運用に当たつては特に頸肩腕症候群、むち打ち症、腰痛症の職業性疾病患者の療養の実情に即して、適切に行うよう努めること」など附帯決議がなされた。あわせて、労災保険法一条の目的条項においても「労働者の社会復帰の促進」、「適正な労働条件の確保」の項目をつけ加えられたのである。 さらにその後の国会審議(昭和五二年三月二三日衆議院社会労働委員会)においても労働大臣は「頸肩腕症候群とかあるいは腰痛症とかむち打ち症というようなものは、治療を受ければ労働不能にはならない。労災法はできるだけ多くの人人に職場復帰をしてもらうというのがその精神であります。したがつて年金の対象にならない。したがつて解雇制限の解除にもならない」と明確に述べている(なお政府側は昭和五二年三月一一日の予算委員会第二分科会議、あるいは昭和五三年三月一日の予算委員会第三分科会議でも再三右の労働大臣答弁をくりかえしている)。 4 申立人らには報告書提出義務はない。 以上のことから明らかなように申立人らのような三疾病被災者については傷病補償年金の対象とならず、休業補償給付等が継続されるべきである。 したがつて、ここに相手方労働基準監督署長らが労災保険法の目的や国会審議の経過を全くわきまえず、年金移行の判断に必要と称して報告書を被災労働者に一律に強要することは労災保険法一条、同一二条の七、同施行規則一九条の二の法意を理解しないものであり、申立人らのその報告書の提出義務はない。 二申立人らが報告書を提出しないことについては労災保険法四七条の三の「正当な理由」が存 一条、同一二条の七、同施行規則一九条の二の法意を理解しないものであり、申立人らのその報告書の提出義務はない。 二申立人らが報告書を提出しないことについては労災保険法四七条の三の「正当な理由」が存在する。 1 一九二号通達と三疾病前項で述べたとおり、労災保険法の目的、傷病補償年金の新設過程からいつて、三疾病については年金に移行することなく休業補償給付などの継続が正しい補償である。 ところが、労働省は、昭和五二年三月三〇日基発第一九二号でもつて法の運用通達を出し、これでもつて年金移行の具体的取扱要件を示したのである。 これによれば、傷病補償年金の成立要件(労災保険法一二条の八・三項)としての廃疾等級三級六号の「常に労務に服することができない」とは、「基本的には『生命維持のため必要な身のまわりの処理の動作について自用を弁ずることはできるが、労務に服することができない状態にあるもの』をいう、『技能・労働・事務系労働などにあたつては、労働時間の一部について被災前と同様の労働に現に就労しているか、若しくは就労可能な状態にある場合、または労働時間の一部について補助的労働若しくは軽易な労働に現に就労しているか、若しくは(六カ月後には)就労可能な状態にあるもの』以外をいう」(一九二号通達参考Ⅱ廃病等級表の「常に労務に服することができないもの」の範囲についての判断基準)と規定している。 この運用通達は、三疾病の除外規定がないため、三疾病にそのまま適用されると法が予想しない事態、三疾病についても疾病等級に該当し、年金移行・解雇制限解除という事態が招来する。 すなわち、いわゆる三疾病は、前項で述べたように、職場復帰訓練を含めた「適切な」治療が必要であるが、「適切な」治療は、その疾病の特殊性、すなわちほかの疾病とは違つて、個々の被災者の実情に見合つた すなわち、いわゆる三疾病は、前項で述べたように、職場復帰訓練を含めた「適切な」治療が必要であるが、「適切な」治療は、その疾病の特殊性、すなわちほかの疾病とは違つて、個々の被災者の実情に見合つた治療、ということが特に要求され、徐々に回復していくというのが常であること、および職場復帰訓練を企業が拒否し、ほかの健康な労働者と同様に扱うという実態があることから、症状が一時悪化することもあり、相手方がこの一時期をとらえて三疾病の症状がこれに該当するとして傷病補償年金に移行させることができるのである。 さらに上記運用規定一九二号通達によつて職場復帰訓練中あるいは訓練可能にまで回復した申立人らに対してでさえ、年金移行の認定をおこなうことができる。このことは現に大阪労働基準局は、本件申立人らに対し職場復帰の行政指導などを通じて症状は十分すでに把握しているにもかかわらず、年金に移行しないとは明言せず、あくまでも、「一九二号通達、参考Ⅱに該当するや否やで判断する」と回答するのみならず(参考Ⅱの具体的運用の内容については回答せず)、労働省は「参考Ⅱに該当しないものは、年金移行、解雇もやむをえない」と言明さえしているところからも明らかである(昭和五三年四月一九日労働省交渉)。 2 報告書の提出により年金移行をするやいなやを判断される以上、本件申立人には報告書不提出の正当理由がある。 このような状況と、一九二号通達によれば、報告書の提出により年金に移行するや否やを判断すると明記しているところからすれば申立人らが報告書を提出すればそれをもとにして相手方が申立人らを傷病補償年金に移行させる可能性が極めて濃い。これは前項で述べた労災保険の目的(特に社会復帰の促進)、三疾病の特殊性(治療と訓練的就労をおこなえば必ずなおる)、国会での審議決議を軽視したものである。 病補償年金に移行させる可能性が極めて濃い。これは前項で述べた労災保険の目的(特に社会復帰の促進)、三疾病の特殊性(治療と訓練的就労をおこなえば必ずなおる)、国会での審議決議を軽視したものである。 しかも申立人らが報告書提出によつて不利益取扱いがなされるのだと早くから指摘しているのであるから、相手方としては十分な説明をしその納得を得べく努力する義務があるにもかかわらず全くしていない。この点では報告書と本質的に同じ問題をもつ届書(労災保険法施行規則一八条の二)の提出命令に対する審査請求においてさえ、全く具体的弁明を回避していることからも明らかである。 したがつて法そのものが正しく運用されておらず、被災者の正しい補償を受けることができないおそれがある状態においては、そのような状態がなくなるまで報告書の提出をしないことは被災労働者としての当然かつ最低の権利であり労災保険法四七条の三の「正当な理由」に該当する。 三本件において一時差止をおこなう必要性がなく、労災保険法第四七条の三の目的を逸脱するものである。 1 労災保険法第四七条の三は「保険給付の支払を一時差止めることができる」とあるのであるから、一時差止処分をおこなう場合には当然その必要性が存在しなければならない。 2 ところで本件一時差止処分の対象となつている休業補償給付等は、毎月の生活補償であり、被災者の生存にかかわるものであるから、その一時差止処分というのは被災者の生存権の侵害という最も重大な利益に関するものであると言うべく、その適用は最後の手段としてのみ許されるものと言わねばならない。 すなわち他に代替手段がない場合という高度の補充性が要求されるのである。 3 しかるに本件報告書の未提出によつても保険給付の実施という行政においては何ら支障は生じておらず、一時差止処分という最後の手段 すなわち他に代替手段がない場合という高度の補充性が要求されるのである。 3 しかるに本件報告書の未提出によつても保険給付の実施という行政においては何ら支障は生じておらず、一時差止処分という最後の手段をおこなう必要性は全く存しない。 すなわち、休業補償給付等の継続は報告書にもとづいておこなわれなければならないという法的規制は何らないのであるから(この点は労働省も認めている)、報告書が提出されていなくても休業補償給付等の継続はできるのであり、何ら行政上支障はない。 なおこの点は基発第九〇六号によれば、差止めの対象となるのは、「…当該命令に従わないことによつて支給決定に支障をきたすと認められるすべての保険給付」とあるが、本件報告書の未提出によつて休業補償給付等の継続には何ら支障がないのであるから、本件一時差止処分は右通達にも明らかに違反するものである。 また、代替手段に関して言えば、基発第一九二号に報告書の提出のない場合の処理方法を明示しているのであるから、この点からも本件差止処分はその必要性を欠くものと言わねばならない。 4 本件一時差止処分は被災者が労働行政側の命令に盲目的に従わないことに対する一種の報復的な措置であり何らその必要性のない違法なものである。 第三回復困難を避けるための緊急必要性本件一時差止処分の効力および執行の停止は申立人に生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要がある。 (1) 「回復の困難な損害」とは、抽象的な金銭賠償の能否や原状回復の能否を基準とすべきでなく、事実として生ずる損害を申立人に受忍させることが、社会通念上相当と認められるかどうかを係争処分が目的とする社会的利益との比較衡量によつて相対的に決せられるべきものであるとするのが通説である。 判例においても、原状回復または金銭賠償が不能な場合ばかりでなくた 相当と認められるかどうかを係争処分が目的とする社会的利益との比較衡量によつて相対的に決せられるべきものであるとするのが通説である。 判例においても、原状回復または金銭賠償が不能な場合ばかりでなくたとえ終局的には金銭賠償が可能であつても社会通念上そのことだけでは、填補されないと認められるような著しい損害を蒙ることが予想される場合や、特にその損害が人命にかかわり、あるいは身体の障害を惹起せしめるような場合がこれにあたるものと解している(東京高決昭四一・五・六行裁例集一七巻五号四六三頁、神戸地決昭三九・三・三〇 行裁例集一五巻三号四九四頁など)。 (2) 本件の場合申立人の唯一の生活の資金にかかる休業補償などの一時差止が申立人の生活に回復の困難な損害を生じさせることはあまりにも明白である(その詳細は申立人の報告書に記載されているとおりである)。 前記東京高裁の決定は、市立大学助教授の懲戒免職処分の効力停止申立につき、俸給を受けえないことによつて回復の困難な損害を避けるため緊急の必要性があると判示している。 さらに、本件申立人は頸肩腕障害などの疾病のために休業して療養を行つているものであるから、生活の手段である休業補償などが一時差止されることによつて、単に生活苦が生じるだけでなく、その療養にも悪影響を及ぼすことは必至である。 すなわち、申立人の療養の基本は精神的安定を保ち、規則正しい生活をするという、まさに全生活を療養として位置づけるものである。しかるに本件支払差止処分によりこのような生活条件は根本的に破壊された。また、申立人の中には休業補償として給付される金員により療養目的のために体操クラブや水泳教室に通つているものもあるが、差止処分によりそれもできなくなつている。さらに療養そのものについても、はり、きゅうなど療養給付以前に自己が費用を立 給付される金員により療養目的のために体操クラブや水泳教室に通つているものもあるが、差止処分によりそれもできなくなつている。さらに療養そのものについても、はり、きゅうなど療養給付以前に自己が費用を立替える療養方法は経済的に受けられない事態となつている。 このような身体への悪影響をも惹起する本件処分は、まさに申立人にとつて回復の困難な損害であり、また当然それを避けるための緊急の必要も存在する。 このことは、生活費である休業補償などの差止の執行停止のみが申立ての回復の困難な損害を避ける唯一の方法であり、処分の効力の停止以外の措置ではその目的は達せられない。 よつて本申立に及んだ。 (別紙) 処分一覧表<19705-001><19705-002>別紙(二)第一申請人等の求めている執行停止の対象たる行政処分の性質と申立の利益相手方らの本件申立却下の主張は、一時差止処分の性質が「拒否処分」であり、これに対してはその性質上執行停止の対象適格を欠くか、申立の利益を欠くとの理由による。 相手方らの右主張が全く不当なものであることを明らかにするため、以下、差止処分の内容を見、そして申立の利益と一時差止処分が「拒否処分」でないことを明らかにする。 一執行停止の対象たる一時差止処分の内容(一) 業務上の疾病又は負傷を理由として休業補償給付等の請求がなされた場合、労働基準監督署長は、請求者より提出された請求書の記載事項(労働者災害補償保険法施行規則第一三条)の検討はもちろん、必要な場合は請求者より事情をきき、又、勤務場所や労働実態、症病発生経過等の調査をしたうえで業務上外の認定をなすのであり、その決定に対して不服ある請求者に対しては、審査請求、再審査請求等の不服申立の制度が認められている(労働者災害補償保険法第三五条)。 右のように最初の業務 をしたうえで業務上外の認定をなすのであり、その決定に対して不服ある請求者に対しては、審査請求、再審査請求等の不服申立の制度が認められている(労働者災害補償保険法第三五条)。 右のように最初の業務上外の認定については非常に慎重な検討がなされて給付の支給決定がなされるのであるが、その後の休業補償等の支給決定は請求者に症状固定あるいは治ゆ等の事情変更がない限り請求者の請求に対しては形式的な(書面的な)審査だけで給付の支給がなされており実質的には一度なされた業務上認定に基づく継続的支払という実態にある。 (二) 以上のような実態をふまえつつも、本件の対象である一時差止処分の内容を直接決定するものは一時差止処分の根拠法である労働者災害補償保険法第四七条の三の文言及び労働基準監督署長等のなした「休業補償給付及び休業特別支給金の支払の一時差止めについて(通知)」と題する書面の内容である。そしてその書面の内容は「貴殿には昭和五三年月日を指定期限として『傷病の状態等に関する報告書』を提出されるように督促したところ、いまだに提出がないので(中略)昭和五三年月日から昭和五三年月日までの分に係る休業補償給付及び休業特別支給金の支払を当該報告書が提出されるまでの間一時差止めることとした」というものである。 二本件における申立人等の申立の利益について(一) 相手方等は休業補償給付及び休業特別支給金の各請求権は労働者災害補償保険法施行規則一九条、労働者災害補償保険特別支給金規則二〇条による支給決定により成立するものであり、本件申立人等には未だ右支給決定がなされていないから、一時差止処分の執行停止は申立の利益がないと主張する。 しかしながら、相手方等の主張は労災保険法第四七条の三の文言及び前記一、(二)に引用した差止処分の通知書の内容に反するものであ れていないから、一時差止処分の執行停止は申立の利益がないと主張する。 しかしながら、相手方等の主張は労災保険法第四七条の三の文言及び前記一、(二)に引用した差止処分の通知書の内容に反するものである。右通知書は「休業補償給付及び休業特別支給金の支払を・・・一時差止める」ものである。即ち、「昭和年月日から昭和年月日までの分」というすでに具体化された請求権の存在を前提にその「支払」を一時差止めるものであつて申立人等の労災保険法施行規則第一三条等に基づく請求に対して労働基準監督署長等が支給決定の処分を怠つている事態ではないのである。もし、相手方等の主張するように申立人等の請求権がそもそも成立していないのであれば本件の一時差止という処分自体その目的を欠く処分となり論理矛盾である。 なお、相手方等は、申立人等が支給決定通知書を受けていないことから、支給決定がないことが明らかとする。しかしながら、処分(決定)がなされたこととその通知がなされたこととは別個の行為であり、このことは労災保険法施行規則第一九条が処分と通知とを別に使いわけていることからも認め得ることである。よつて支給決定通知書の有無により申立人等の請求権の有無が決せられるものではない。 三執行停止の対象たる一時差止処分は「拒否処分」ではない。 (一) 相手方等は、「拒否処分はその性質上執行停止の対象適格を欠くか、執行停止の申立利益を欠く」との一般論を主張し、本件一時差止処分も「一種の一時的暫定的な拒否処分」であり、よつて、執行停止は不適法であるという。 しかしながら、すでに前記「一、執行停止の対象たる一時差止処分の内容」「二、本件申立における申立人らの申立の利益について」等で述べたところから、本件処分が拒否処分でないことは明らかであつて再論の必要をみないが、相手方等は三つの 執行停止の対象たる一時差止処分の内容」「二、本件申立における申立人らの申立の利益について」等で述べたところから、本件処分が拒否処分でないことは明らかであつて再論の必要をみないが、相手方等は三つの行政事件の判例を引用しているので、これらの判例は本件とは事案が全く異なるものであること、それにもかかわらず、相手方等が、その趣旨を曲解して引用していることを次に明らかにする。 (二) 東京高裁昭和二七年四月八日決定(行裁例集三巻三号六〇二頁)は、旅券発給拒否処分に対する執行停止申立事件であり、大阪地裁昭和四四年一〇月二一日決定(行裁例集二〇巻一二号一五五三頁)は、風俗営業不許可処分に対する執行停止申立事件であり、さらに東京地裁昭和四五年一二月二四日決定(判例時報六一八号一九頁)は、生活保護法に基づく保護開始申請却下処分に対する執行停止申立事件である。 これらの事件について共通していることは、執行停止の申立人等は、その申立時点においては何ら具体的な権利を有していないものであることである。 ところが本件の申請人等は既に業務上の認定を受け「保険給付を受ける権利を有する者」(労災保険法第四七条の三)となつている者であり、執行停止を求める行政処分は「昭和年月日から昭和年月日まで」の休業補償等という具体化された請求権の支払差止処分なのである。相手方等の引用する判例は、このような本件とは事案のことなる裁判例であつて、これによつて本件の判断を左右することはできないものである。 第二差止処分の経緯についての反論一相手方らは改正前労災法第一二条の八第三項及び改正労災法第十二条の八第三項を形式的に引用し、そこから労災則(省令)第一八条の二、第一九条の二の新設を合理化せんと試みるものであるが、改正前労災法の解釈、運用、及び基発第五九三号労働省通達、 及び改正労災法第十二条の八第三項を形式的に引用し、そこから労災則(省令)第一八条の二、第一九条の二の新設を合理化せんと試みるものであるが、改正前労災法の解釈、運用、及び基発第五九三号労働省通達、改正労災法の立法経緯ことに国会における付帯決議を全く無視した甚しい暴論である。 (一) もともと改正前労災法第一二条の八第三項が定めていた長期療養補償給付については療養の開始後三年を経過した場合であつても長期療養補償給付に移行するには「政府が必要と認めた場合」に限られていた。そして頸肩腕障害などいわゆる三疾病については、それが疲労性疾病であり適切な治療と訓練的就労により必ず職場復帰が可能であること、なしろ治療と職場復帰訓練が不可分の関係にあることから三疾病については一般的に同条の定める長期療養補償給付の対象外と解されてきた。そのため、行政当局が頸肩腕障害など三疾病について「政府が必要と認め」たことはなく、長期療養補償給付に移行する例はなかつた。勿論相手方らが本件差止処分の原因としている報告書の提出につき定めた労災則(省令)第一九条の二の規定も届書の提出についての同第一八条の二の規定も全く存在しなかつたのである。それどころか行政当局自身が、患者団体ら要望の運動の成果もあつて、三疾病につき基発第五九三号本省通達「頭頸部外傷症候群等(頸肩腕症候群も対象疾病として列記)の労働災害被災者に対する特別対策の実施について」(甲第五号証)により不充分ながらも職場復帰促進の措置を講じてきた。同通達は職場復帰の促進のための「規則的段階的な就労を図ること、就労条件について事業主に対して必要な行政指導を行なうこと、就労を困難とする諸条件の改善に努め、円滑に就労できるよう取計らうこと」などを行政の責任としている。大阪労基局においても「社会復帰特別対策事務処理要綱」(甲 業主に対して必要な行政指導を行なうこと、就労を困難とする諸条件の改善に努め、円滑に就労できるよう取計らうこと」などを行政の責任としている。大阪労基局においても「社会復帰特別対策事務処理要綱」(甲第六号証)により前記第五九三号通達に基づき同様に職場復帰促進の措置を講じてきた。右「要綱」もまた頸肩腕障害などを対象として職場復帰のための実態把握、職場復帰を阻害する事業主に対する行政指導につき詳細に定めている。なお右「要綱」は「社会復帰対策カード」(社復様式1)「社会復帰申出書」(同様式2)「社会復帰実態調査書」(事業主用)(同様式3)、「社会復帰実態調査書」(該当者用)(同様式4)などは「社会復帰対策の実施に関してのみ使用するものである」とし、「本来の目的以外、例えば長期療養補償給付への移行、保険給付打切り等の資料として使用しない」ことをわざわざ断つているほどである。 (二) 改正労災法第一二条の八第三項は長期療養補償給付に代えて傷病補償年金を新設した。同条は「療養の開始後一年六箇月を経過した日において」「疾病が治つていないこと」の外に、改正前の「政府が必要と認める場合」に代えて「廃疾の程度が労働省令で定める廃疾等級に該当すること」を要件とする規定になつたため、前記改正前労災法第一二条の八第三項の解釈と運用の実情基発第五九三号通達「復帰要綱」などをふまえ、より一層頸肩腕障害などについては、傷病年金にそもそもなじまないことを明らかにするため、国会における付帯決議、さらに労働大臣答弁に至つたものである。従つて、法改正の経緯、国会付帯決議による立法意思の明示等からみても、三疾病について「傷病補償年金」への移行を強行するための省令による報告書の提出強要などは全く予想するところではない。なお前記基発第五九三号通達「職場復帰要綱」はいずれも廃止されず 明示等からみても、三疾病について「傷病補償年金」への移行を強行するための省令による報告書の提出強要などは全く予想するところではない。なお前記基発第五九三号通達「職場復帰要綱」はいずれも廃止されず依然効力を持続しているのであつて、この点からみても、三疾病患者に対しては年金移行のための報告書の提出強要は全く理由がない。 二相手方らは、本件差止処分に先立ち、申立人らに対し、十分な配意をなし具体的措置を講じた旨主張するが全くの虚構である。 (一) 相手方らは申立人らが、報告書の提出につき、その使用目的が明らかにされ、傷病補償年金移行に使用しないことの保障が得られるなら、これに応じる方針を一貫して表明してきた。ところが当局は申立人らの病状把握については前記「社会復帰特別対策要綱」に基づく「社会復帰申出書」「社会復帰実態調査書(該当者用)」などや専門医の詳細な診断書が提出されていることもあつて症状は把握している旨を言明し、当初は申立人らについては年金移行はあり得ないかの如く申し向けて報告書を提出されたい旨を発言してきたが申立人らの追及にあうと年金移行か休業補償継続かを決めるために必要である、年金移行もあり得る旨を回答するに至るなど無責任な態度に終始した。そのため、申立人らにおいてなお交渉を継続し、明確な回答が得られるまで報告書の提出を一時留保したにすぎない。 (二) 相手方らは、その主張で明らかなように療養開始後一年六箇月以上経過した者で休業補償給付を継続している者一、六二五名に傷病補償年金制度の解説リーフレツトを送付しながら、うち一、〇三九名について報告書及び診断書用紙を発送し、さらに昭和五三年五月二五日報告書未提出者のうち七〇名にだけ報告書提出の督促状を発送したうえ、そのうちの一部である申立人らを含む一七名についてのみ全く恣意的に本件差止処 告書及び診断書用紙を発送し、さらに昭和五三年五月二五日報告書未提出者のうち七〇名にだけ報告書提出の督促状を発送したうえ、そのうちの一部である申立人らを含む一七名についてのみ全く恣意的に本件差止処分を強行した。右主張自体からも明らかなように本件差止処分の対象とされた被災者以外にも報告書未提出者は多数現存するのであり現に休業補償給付を継続受給しているのであつて、このことは、第一に報告書によらなければ年金移行か休業補償給付の継続かを決定できないかの如き相手方らの主張がいかに根拠のないものであるかを物語るものであり、第二に行政の恣意的判断により一方で報告書未提出者であつても、休業補償の継続給付がなされ、他方で休業補償給付を一時差し止めてまで報告書提出を強行する恣意的・差別的取扱いをなす点において著しく不公正であり、いずれにせよ本件差止処分が極めて不当なかつ違法の処分であることは明白である。 第三報告書の提出義務について(第二、二、1ないし4)一傷病補償年金制度は「手厚い保護」であるという主張について(第二、二、1および2)(一) 相手方は改正前の長期傷病補償給付にかえ傷病補償年金制度が創設され、一層「手厚い保護」が図られることとなつたと主張する。しかし、少なくとも申立人ら頸肩腕障害患者にとつては傷病補償年金制度は「手厚い保護」とならないことは明らかである。 (二) 即ち、① 傷病補償年金(以下単に年金という)には廃疾等級が廃疾の状態に応じて三級から一級まで分類されている。簡単に示せば、三級は諸々の障害により「常に労務に服することができないもの」であり、二級は「随時介護を要するもの」であり、一級は「常に介護を要するもの」という具合に、廃疾の状態は三級よりも二級、二級よりも一級が重くなつている。 ところが、二級、一級の廃疾の状態を示す「 」であり、二級は「随時介護を要するもの」であり、一級は「常に介護を要するもの」という具合に、廃疾の状態は三級よりも二級、二級よりも一級が重くなつている。 ところが、二級、一級の廃疾の状態を示す「介護」の意義が一九二号通達によつて「生命維持に必要な身のまわり処理の動作についての介護」を意味するため(乙六号証参照)、頸肩腕障害患者の年金移行はせいぜい「常に労務に服することができない」という廃疾等級三級が限度である旨、つとに相手方より言われているところである(これは申立人らと大阪労基局との交渉の中で相手方の指定代理人になつているC自身言明しているところである)。 そして、廃疾等級三級になつた場合は、当該患者が年金移行される前に支給されていた休業補償に比べ次の表の通り支給額は少なく、相手方のいう年金制度は「手厚い保護」になるという主張が全く偽瞞的であることを示している。 <19705-003>つまり、休業補償患者は、全体として平均賃金の八〇%の支給をうけるが、廃疾等級三級の年金患者は平均賃金になおすと約六七%の年金と(245÷365)、額が不安定な特別年金を取得しうるにすぎない。この特別年金もその算定基礎が、休業補償患者の特別支給金が基礎日額(特別事由ない限り平均賃金のこと)を基準にしているのとことなり、被災前一年間の特別給与または給付基礎年額(平均給与の年額)の二〇%に相当する額あるいは一〇〇万円のいずれか低い額を算定基礎とするため、いずれにしても休業補償患者の休業特別支給金も低くおさえられていることになる。たとえば極く単純計算すると、一カ月一〇万円の給与と年二〇万円のボーナスを支給されていた労働者が被災した場合、休業補償患者は一二〇万円×六〇%=七二万円の休業補償と、一二〇万円×二〇%=二四万円の特別支給金、合計九六万円を得るが、 〇万円の給与と年二〇万円のボーナスを支給されていた労働者が被災した場合、休業補償患者は一二〇万円×六〇%=七二万円の休業補償と、一二〇万円×二〇%=二四万円の特別支給金、合計九六万円を得るが、廃疾等級三級の年金患者は一二〇万円×245÷365=八〇万五四七九円と二〇万円×245÷365=一三万四二四六円、合計九三万九七二五円となる。 ② しかも年金移行にともなつて打切補償を支払つたものとみなされるため(労災法一九条)、労災休業期間は解雇できないという解雇制限が撤廃され(労基法一九条)、使用者はいつでも被災労働者を解雇し職場から放逐することができる。これは、適切な治療と訓練的就労があるとなおるとされている申立人ら頸肩腕障害を職場の外にすてさり社会復帰を困難にするもので、「手厚い保護」とならぬこと明白である。 ③ このように頸肩腕障害患者に対して、年金移行が「手厚い保護」とならないことは申立人と労基局との交渉の中で局側代表C(本件では相手方の指定代理人)自身が言明しているところである。にもかかわらず本件訴訟においてあらためて相手方が「手厚い保護」の理論をもち出すことは、みずから主張の不当性を証明するものである。 二報告書と休業補償給付(第二、二、3)(一) 相手方は、報告書は傷病年金の支給要件に該当するか否か換言すれば休業補償給付をおこなうべきかなどを中心に症状を把握するために提出を求めるものだと主張する。 しかし、これは相手方自身報告書提出について矛盾をしめし、且つ休業補償支給の要件をわすれたものである。 (二) すなわち、休業補償支給の要件は、施行規則一三条により、① 労働者の氏名、生年月日および住所② 事業の名称および事業場の所在地③ 負傷または発病の年月日④ 災害の原因および発生状況⑤ 平均賃金⑥ 休業の期間、療養の 要件は、施行規則一三条により、① 労働者の氏名、生年月日および住所② 事業の名称および事業場の所在地③ 負傷または発病の年月日④ 災害の原因および発生状況⑤ 平均賃金⑥ 休業の期間、療養の期間、傷病名および傷病の経過⑦ 他の保険との関係記載事項であつて、これをいわゆる八号様式書面に従つて書いて提出すれば必要十分であつて報告書提出と全く無関係である。また、報告書を年金支給と休業補償支給とあわせて要件として使用しようとする相手方の主張は、相手方自身、意見書の他の部分(第二、一、2)では、報告書は「傷病補償年金の支給要件に該当するかどうかなどを中心とした判断を継続的に行うため」と述べていることとも矛盾している。 いずれにしても、報告書を休業補償支給のふるいわけにも使用するという相手方の主張の不当性は明白である。 三頸腕・むち打ち・腰痛(いわゆる三疾病)は必ず職場復帰が可能である。 (一) 意見書は三疾病についての現在の医療水準は低く、被災者を職場に復帰させるまでに達していないという。 しかし、この主張は自己の立場を正当化するどころか、三疾病に対する行政の怠慢と不見識を自白するものでしかない。 確かにこれまで三疾病の被災者は長期の療養を強いられながらなおも職場復帰ができないケースが多数存在した。これは専ら疾病に対する医学的・社会的解明の立ち遅れに起因するものであつた。そもそもこの立ち遅れこそは三疾病に対する行政の怠慢に起因していたのである。即ち、行政は三疾病に対して、特に頸腕・腰痛の非災害性疾病については、高度経済成長期にあつた昭和四〇年頃より多発してきたにもかかわらず実態調査をサボタージュしてきた。この態度は認定基準を不当に厳格にすると共に、治養方法および予防方法の解明のサボタージュとつながるものであつた。何の補償もないままやつ より多発してきたにもかかわらず実態調査をサボタージュしてきた。この態度は認定基準を不当に厳格にすると共に、治養方法および予防方法の解明のサボタージュとつながるものであつた。何の補償もないままやつとのことで労災と認定された時には既に重症になつているという被災者が多く存在した。 (二) そこで行政に期待がかけられないことを知つた被災者は元の元気な体に戻りたいという一心で医療機関と共に真の治療を追求してきた。 その努力の積重ねの中で今日では医療機関から東洋医学(ハリ・キュウ等)を取り入れた「受ける治療」被災者自身の体力を自身でつけていく「する治療」が有効であることが解明されると共に、これに加えて職場復帰訓練が重要な治療であることが解明されるに至つた。 既に病気一般に言えることとして職場復帰訓練は病気そのものが治つても身体が発病以前の状態に戻つているとは限らないことから病気のために二次的におきている心身のおとろえを計画的に訓練して、正常の状態に回復させるために是非とも必要とされてきた。 しかし、今日とりわけ頸腕障害の場合は治療の一環としての職場復帰訓練が重要であることが解明されてきたのである。 それは① その発病原因が職場の労働条件、労働環境、及び健康管理にある。 ② これ迄の経験から自覚症状、他覚的所見が消失した段階で原職に復帰し、再発している事例が少なくない。 などがあげられる。 職場復帰を保障させる条件としては、本人の身体の状態にあつた時間短縮軽作業の自由勤務(症状により作業密度・量の変更が自由にできる条件が必要である。)。 こうした考え方に基いて今日多くの人が職場復帰訓練を保障させ成果をあげてきている。 しかし一方「合理化」のおし進められている現在の職場に復帰する以上、治療のための訓練としての位置付が企業になく、被災者の自覚に 方に基いて今日多くの人が職場復帰訓練を保障させ成果をあげてきている。 しかし一方「合理化」のおし進められている現在の職場に復帰する以上、治療のための訓練としての位置付が企業になく、被災者の自覚に依存した方法で行なわれているという現状のもとでは、再発の危険にさらされ、完治の見通しも持てないという状態が存在する。 このようなことから被災者の強い要望を受けて、行政も重い腰をあげて企業に治療の一環として職場復帰訓練を位置づけさせることの重要性を認識し、行政指導すべく通達を出すに至つた。 (頭頸部外傷症候群等の労働災害被災者に対する特別対策の実施について-五九三号通達。 申立人らを管轄する大阪労働基準局はこれを受けて、社会復帰特別対策事務処理要綱を作成している。)ところで本件申立人らが長期の治療を強いられてきたのは前述の理由によるものであるが、治療方法の解明に伴ない序々にその治療効果をあげ、現在職場復帰訓練中四名(申立人D、E、B、F)でありその他の四名は訓練可能な状態(現実の職場復帰訓練ができないのは申立人らの勤務先である企業が行政の指導も拒否してこれを受け入れないためであるが、行政も企業に対してより以上の行政指導をするといつた姿勢にない)まで善快してきている。前記治療が有効であることは他にもその実例は多々存在している。 (三) これらの経過と実態を踏えて今日では適切な治療と訓練的就労の場が保障されれば必ず職場復帰が可能であることが公知の事実となつた。まさに職場復帰訓練の段階に入つて申立人らが今行政に要求することは五九三号通達の完全実施即ち、本来の行政の立前に沿つた申立人らに対する訓練的就労を企業に受け入れさせるよう強く指導することである。職場復帰訓練に入つている前記四名については企業が他の健康な労働者と同様に扱うといつた実態をただち 本来の行政の立前に沿つた申立人らに対する訓練的就労を企業に受け入れさせるよう強く指導することである。職場復帰訓練に入つている前記四名については企業が他の健康な労働者と同様に扱うといつた実態をただちに改め個々の被災者の実情に見合つた自由勤務を保障させること、又職場復帰訓練が可能であるとの医師の診断があるにもかかわらず企業が受け入れを拒否している他の四名についてはまず企業にこれを受け入れさせるよう行政指導することが緊急な任務であり、唯一申立人らが完全に職場復帰をなしうる道である。 ところでこの点は次のとおり国会(昭和五二年三月二三日衆院社会労働委員会)での質疑応答の中で明確に確認されている。 (三疾病の長期療養者について)G委員の質問要旨「昭和五一年一〇月発表の頸腕の実態調査によると療養期間一年以上の者は七二・二%、うち療養期間と休業期間の重なる全体者とみなされる者が一七・一%である。療養期間三年以上の者が三六%又全体者とみられるものが一〇・八%である。 これを見ると二割近くの人が傷病補償金に移つて、一割の人が解雇制限を受けることになるのではないかという疑問が出てくる。しかしながらこのようなことになると頸腕は相当期間適切な療養と段階的就労によつて職場復帰が可能であるという状況下にある患者に年金を支給することは職場復帰の希望を打ち砕くことになるがどうか。」H政府委員の答弁要旨「三疾病について長く療養しておられる方がいるが、こういつた方は恐らく近い将来に活動されるであろう、あるいは療養しながら一部労働や軽労働が可能だという方が大部分であると考えている。労災保険の最終の目的は職場復帰ということにある。行政としてはできるだけいろいろな援助をしながら、又事業主の指導をしながら速やかに職場に帰れるようにすることが望ましいと考えている。 長く えている。労災保険の最終の目的は職場復帰ということにある。行政としてはできるだけいろいろな援助をしながら、又事業主の指導をしながら速やかに職場に帰れるようにすることが望ましいと考えている。 長く療養を受けておられる方々に対しては一般的に私どもは治るという前提で以前から長期傷病補償年金は支給してこなかつたので今日においても大部分の方は休業補償給付として引続きその補償を受けられる方であり年金に移行しないというふうに考えている。」四解雇制限解除について(第二、二、4、(2))(一) 長期傷病補償給付との関係(1) 相手方は解雇制限解除は改正前法における長期傷病補償給付の場合となんらかわつていないのであるから、申立人の主張自体失当であると主張する。しかし本件は、まさに相手方が頸肩腕障害患者に対し年金制度が新設されたのにともないこれに移行させようと企てているのである。したがつてこれとの対比で改正前の長期傷病補償給付の場合を論ずるなら、改正前は頸肩腕障害患者に対し長期傷病補償給付に移行することがとられていたかを問題にすべきである。そうすると、改正前は法制度とその運用が頸肩腕障害については長期傷病補償給付へは移行はなされていなかつたのである。 (2) いま、頸肩腕障害を中心に、新旧条文を整理すると、次のとおりである。 <19705-004>つまり、長期傷病補償給付の場合は条文そのものがきわめて弾力的に書かれており、現にこの条文の運用通達であつた四一年一月三一日基発七三号にも、「単に療養開始後三年を経過しても傷病がなおらないだけでなく、傷病がなおらないため長期間にわたり労働不能の状態が継続するものと認められることを要するものとして、政府が必要と認める場合にその決定を行うべきものであることが明確にされた」となつていた。 そして具体的適用も各労 ため長期間にわたり労働不能の状態が継続するものと認められることを要するものとして、政府が必要と認める場合にその決定を行うべきものであることが明確にされた」となつていた。 そして具体的適用も各労働基準監督署長の広い裁量にまかされていた。 頸肩腕障害についていえば、適切な治療と訓練的就労の場を保障されれば社会復帰が可能であることを明らかにして、被災者に対する対策実施を講ずべしとした昭和四八年基発五九三号通達(甲五号証)からもあきらかなように、頸肩腕障害患者の長期傷害補償給付への移行はなされていなかつた(年金制度が新設された昭和五一年五月一〇日の国会において「傷病補償年金制度の運用に当つては特に頸肩腕症候群……等の職業性疾病患者の療養の実情に即して、適切に行うよう努めること」とした附帯決議=甲二号証は、以上の経過をふまえたものである)。 ところが、相手方は、改正後の年金制度の新設とともに年金移行が法律と一九二号通達によつて署長の裁量の余地なく規定されていることに目をつけ、頸肩腕障害の性質(適切な治療と訓練的就労をおこなえば必ず職場復帰が可能)、あるいは国会審議の経過や長期傷病補償給付時代の取扱を無視して、頸肩腕障害についても年金移行を公然と表明しているのである。 ここに、法律上は同じく解雇制限解除となる長期傷病補償給付と傷病補償年金との間において、頸肩腕障害に関して全く異なる運用がなされているのである。 (二) 解雇制限解除は労災保険制度の適用の結果生ずる「反射的結果」であるという主張についてこれは全く無責任且つ労災保険法一条の目的にそつて公務を履行すべき義務があるのを、みずからかなぐりすてた主張である。 (1) 解雇制限解除が単に反射的結果でなく、企業がまちのぞんでいることは、① 四八年一一月には関西の独占企業の集まりである関西経営 務を履行すべき義務があるのを、みずからかなぐりすてた主張である。 (1) 解雇制限解除が単に反射的結果でなく、企業がまちのぞんでいることは、① 四八年一一月には関西の独占企業の集まりである関西経営者協会が政府に対し労基法改正の要望書をだし、その中で労災療養中の労働者の事実上の解雇制限撤廃を要求した。この意思は年金移行に伴う解雇制限撤廃によつて十分達成できるのであり、企業が解雇をおこなうことは当然予想できる。 ② また年金移行とともに解雇してくることは、現に申立人(A、I、J、K)らの訓練的就労さえ拒絶している企業があることからも明白である。 (2) また、労災保険法の目的の一つには、「社会復帰の促進」も大きな柱である。ここからみても、本来この目的にそつて運用すべき立場にある相手方が、年金移行の結果当該解雇制限解除となる法律のたてまえを単に「反射的結果」とすますことはできないものというべきである。特に申立人は頸肩腕障害者であり、この病気の特殊性として精神的動揺も社会復帰にマイナスとして働くことは五九三通達でも認めるところである(甲五号証三四頁)。このことは当時労働省労働基準局長Hが五二年三月二三日におこなつた国会委員会での答弁でも明らかである。すなわち「私どもといたしましては、やはり労災保険の最終の目的は、職場復帰と申しますか、社会復帰にあるわけでございますから、できるだけそういつたいろいろな援助をしながら、また事業主の指導をしながら、速やかに職場に帰れるように、そういつた形にすることが行政として望ましい、こういうふうに考えております」と言つているのである。 みずから年金移行という種をまいておいて、それがもとで生ずる可能性ある解雇を単に「反射的結果」と言つて逃げるのは、労災保険をあつかう者の自殺行為である。 (3) 相手方は「反射的結果 るのである。 みずから年金移行という種をまいておいて、それがもとで生ずる可能性ある解雇を単に「反射的結果」と言つて逃げるのは、労災保険をあつかう者の自殺行為である。 (3) 相手方は「反射的結果」が「社会復帰の促進」に反するならことは三疾病傷病者以外にもあてはまるから、労災法は全体として矛盾をきたすことになると主張している。しかし、今問題にしているのは、申立人の疾病である頸肩腕障害患者の「社会復帰の促進」のことである。適切な治療と訓練的就労があればかならずなおるこの病気に対して年金移行=解雇というものが、なによりも訓練的就労を不可能にし職場復帰を不可能にさせることはあまりにも明白である。特に申立人らのように現在訓練的就労中の者(D、E、B、F)あるいは訓練的就労を要求して会社の拒否にあつている者(A、I、J、K)に対して、年金移行させ解雇の「反射的結果」を生起させることは「社会復帰促進」に反すること明白である。 五国会附帯決議と委員会審議について(第二、二、4、(二)、(3))(一) 相手方は傷病補償年金制度を決めた国会における附帯決議(甲二号証)は原則的には三疾病も年金対象に含まれることを当然の前提としているのであると主張する。 しかし、① 国会の附帯決議は「傷病補償年金制度の運用に当たつては、特に頸肩腕症候群、むちうち症、腰痛症等の職業性疾病患者の療養の実情に即して、適切に行うよう努めること」とあり、この文理からしても三疾病について年金移行が原則だと読めるものではない。 ② 次に、その附帯決議がなされた背景も、三疾病特に頸肩腕障害について適切な治療と訓練的就労こそが職場復帰ないし社会復帰の道である旨、その対策実施を訴えた五九三号通達(四八年一一月五日、甲五号証)や、あるいは五〇年一二月二五日の労働者災害補償保険審議会が出した いて適切な治療と訓練的就労こそが職場復帰ないし社会復帰の道である旨、その対策実施を訴えた五九三号通達(四八年一一月五日、甲五号証)や、あるいは五〇年一二月二五日の労働者災害補償保険審議会が出した意見書「労働者災害補償保険制度の改正について」に「長期療養者に関し、一年六箇月を経過した場合に年金に切換えることについては、該当者に不利益を来たすおそれがないよう本人に選択の余地を残すことも検討に価いしよう」と述べられている(甲一号証)こと、あるいは実際に治療と訓練的就労によつて職場復帰をかちとつていつた多数の頸肩腕障害患者の実体があつたのである。 ③ したがつて、附帯決議はまさに頸肩腕障害患者に対して解雇と結びつく年金移行をせずに安心してこれまでどおりの療養に専念してもらうための決議なのである。 (二) 次に、相手方は、衆議院社会労働委員会での労働大臣の発言は三疾病についての「一般的認識」を述べたものだと主張する。 しかし、これは労働行政の最高の責任者である労働大臣の答弁を全くないがしろにする独善的な意見であつて、かえつて本件報告書不提出による給付差止が違法であることを相手方みずからが証明していることになる(甲二号証)。 ① すなわち、労働大臣が「頸肩腕症候群とかあるいは腰痛症とかむちうち症というものは治療を受ければ労働不能にならない。労災法はできるだけ多くの人々に職場復帰をしてもらうというのが、その精神であります。したがつて、いわゆる労働不能という認定を下す状態にならない。したがつて、年金の対象にならない、したがつて、解雇制限の解除にもならない」と明白且つ具体的に述べているのである。 ② しかも、この労働大臣答弁は、G委員の「頸肩腕症候群患者の……一割の人が解雇制限の解除を受けることになるのではないかという疑問が出てくる、……頸肩腕症候群と 明白且つ具体的に述べているのである。 ② しかも、この労働大臣答弁は、G委員の「頸肩腕症候群患者の……一割の人が解雇制限の解除を受けることになるのではないかという疑問が出てくる、……頸肩腕症候群というような病気は、いわば疲労性の職業病でありまして、相当期間適切な療養と段階的な就労によつて職場復帰が可能である、……そこでこれら頸肩腕症候群、むちうち症、腰痛症等の患者の方々は、いま言う一級から三級の対象にはならないのかなるのか答えていただきたい」という具体的質問に答えたものである。 ③ この具体的労働大臣の答弁について、「一般的認識」を述べたものだとする考えは、相手方が、頸肩腕障害の性質を全く理解していないことを示すものであり、右患者である申立人への報告書提出をせまつて給付差止めにした処分の違法性を自ら証明している。 六報告書は休業補償給付を請求するものの症状を適確に把握する側面も有するという主張について(第二、4、(二)、(4))相手方は報告書を年金給付要件の資料にとどまらず休業補償給付を請求している者の症状を把握する面も有すると主張する。しかし、まず既に述べたように休業補償要件は七つの事項を記載し、これが認められれば支給されているのであり(第三、二、(二))、また後に述べるように休業補償患者の症状把握は報告書がなくても行なわれておることからすれば、これ以上さらに報告書を必要とする理由は結局のところ年金移行の資料に使用するとしか考えざるを得ないのである。したがつて、相手方が意見書において他方のところでは「年金の支給要件に該当するかどうかなどを中心とした判断をするため」(第二、一、2)、といいながら、ここでは他に休業補償の症状把握にも必要なのだという主張そのものが、相手方の論理の欺瞞性を証明するものである。 七労災法、労災則の規定のど 中心とした判断をするため」(第二、一、2)、といいながら、ここでは他に休業補償の症状把握にも必要なのだという主張そのものが、相手方の論理の欺瞞性を証明するものである。 七労災法、労災則の規定のどこにも「三疾病は除く」旨の文言はないとする主張について(第二、二、4、(二)、(5))結局、相手方の最後のよりどころは、労災法、労災則の文理のみである。しかし、法そのものは、労災保険法一条の目的にそつて解釈すべきものであり、くりかえし述べたとおり、頸肩腕障害患者の特殊性(適切な治療と訓練的就労があれば職場復帰できる)と、年金新設経過等を考えれば、解雇を可能とする年金移行のために報告書の提出義務はないこと明白である。 第四報告書不提出の正当性について本件申立人らに対し労働省が前記のとおり法に違反する一九二号通達参考Ⅱにより年金移行の判断を下され療養開始後三年経過していることから即解雇ということが十分に予想される。 以上、報告書の提出を留保するのは行政の違法行為に対する緊急性を要するいわば正当防衛的行為である。 よつて単なる主観的事情ではなく、まさに客観的事情による不提出である。 なお現に、本年一月分の休業補償給付の請求の際に提出を要したとされる本件と同時期の報告書の提出により全国で年金に移行したもの四四〇〇名で、そのうち三疾病は五〇名となつている。 第五本件においては、休業補償給付等の一時差止処分を行う必要性がない一報告書の未提出ということを理由として、休業補償給付等の一時差止処分を行うには、報告書の未提出によつて休業補償給付等の継続をするについて、何らかの支障をきたしているということが必要である。 それだからこそ、報告書が提出されて支障がなくなるまで、休業補償給付等を一時差止めるということがいえるのである。 二ところで、報告書 について、何らかの支障をきたしているということが必要である。 それだからこそ、報告書が提出されて支障がなくなるまで、休業補償給付等を一時差止めるということがいえるのである。 二ところで、報告書は何のために提出させるかというと、基発第一九二号通達(疎甲第七号証一五頁~一六頁)などから明らかなように、それを提出させることによつて、当該労働者の傷病の状態を把握し、それが廃疾等級に該当するか否かを判断するためのものである(この点は相手方も認めているー意見書第二、一、2)。 しかるに本件においては、相手方は申立人らの傷病の状態を十分把握しており、報告書が提出されなければ傷病の状態を把握できないというものではない。 即ち、申立人E、同D、同B、同Fは基発第五九三号通達(疎甲第五号証)及び社会復帰特別対策事務処理要綱(疎甲第六号証)に基づき、現在職場復帰訓練中であるが、これらの者は復帰にあたつては「社会復帰申出書」を相手方に提出し、復帰後も一ケ月に一度文書(訓練計画又、診断書を添付する場合もある)又は口頭にて症状報告を行つている。なお、口頭報告の場合は相手方において、その報告内容を記録している(疎甲第二二号証の二~二一等参照)。 又、前記以外の申立人らについても、会社が不当にも職場復帰訓練を認めないため、右訓練にはまだ入つていないが、それぞれの会社に対しては診断書などを添えて、その傷病の状態を明らかにした上で職場復帰訓練をさせるよう要求し、それと同時に相手方に対しても、その傷病の状態を明らかにした上で、前記通達や要綱の趣旨に添つて申立人らが職場復帰訓練に入れるよう、会社に対し強力な行政指導をするべく要請している。 以上述べたことからしても明らかなように、相手方は申立人らの傷病の状態は十分把握しているのである。 三なお、傷病補償年金に移行す 練に入れるよう、会社に対し強力な行政指導をするべく要請している。 以上述べたことからしても明らかなように、相手方は申立人らの傷病の状態は十分把握しているのである。 三なお、傷病補償年金に移行するか否かを判断するについては、傷病の状態を把握できればよいのであつて、それは原則としては報告書によつて行うが例外的には他の方法よつて行つてもよいのである。このことは基発第一九二号通達において、報告書の提出のない場合又はその内容が不十分な場合の代替手段が規定されていることからも明らかである。なお右代替手続に関して、相手方はその意見書(第二、二、6、(二))において「通達に示されている代替手段は、例えば病状が重度で必要な手続ができず、又他に代つて行うべき者も存しないといつたそれなりに理由のある場合についていつているものと解すべき」旨述べているが、このような解釈こそ自らに都合のよい、まさに独自の見解と言わざるを得ない。何故ならもし右のように解していたのなら、前記通達においては「提出がない」と規定せずに、「提出が出きない」と規定していたはずであり、又「報告書の内容が不十分な場合」にも代替手段を取り得ることを規定しているのは、相手方がいうような場合に限つたものではないことを示しているからである。 このように、報告書も傷病の状態把握のための原則的な手段ではあるが、決して絶対的なものではなく、他の方法により右把握が行われていれば、その上での判断に基づき、休業補償給付等の継続はできるのである。 四報告書が提出されていれば、傷病補償年金に移行されていたのに、それが未提出だつたため、休業補償給付等が継続されていたということが万一起つたとしても、そのような事態は内払処理の方法(労災法第一二条)により解決されるので、この点においては何ら保険給付上の支障は生じない。 出だつたため、休業補償給付等が継続されていたということが万一起つたとしても、そのような事態は内払処理の方法(労災法第一二条)により解決されるので、この点においては何ら保険給付上の支障は生じない。 五以上述べたことから明らかなように、報告書が未提出であつても、休業補償給付等の継続はできるのであり、右給付等の継続においては基発第九〇六号通達(疎甲第八号証)にいう支障は全く存しないのであるから、本件一時差止処分は全くその必要性を欠く違法なものである。 なおこの点についても、相手方は意見書において「支障がある」旨述べているが、その内容をつぶさに検討すると、「保険給付のより適切な実現、確保というまさしく労災法の根本にかかわる行政運営に必要」「報告書が適正な労災行政を行うために極めて重要な資料」「その未提出不存在は基本的に行政執行にとつて重大な支障」などという極めて抽象的で大上段にかまえた説明があるだけで、具体的に如何なる支障があるのかについては何ら述べられていない。このように抽象的な言葉でしか説明できないということは、休業補償給付等を継続する上において具体的には何ら支障がないということを自認したのも同様である。 六相手方は他法律を持ち出してきて、一年一回の報告書提出義務は決して過重な義務ではないと弁解しているが、申立人らは報告書の必要性を問題としているのであつてその過重性を問題としているのではない。 七最後に、百歩譲つて報告書が未提出のため傷病の状態の把握が不十分な場合があるとしても、それは前述した基発第一九二号通達に規定する主治医に対する照会等の調査を行えば補充できることであり、右のよる支障といつても補充可能な軽微なものにすぎない。 そしてそのような軽微な支障をきたすことを防止するために、申立人らにとつては生活のかてが奪われ又療養面に の調査を行えば補充できることであり、右のよる支障といつても補充可能な軽微なものにすぎない。 そしてそのような軽微な支障をきたすことを防止するために、申立人らにとつては生活のかてが奪われ又療養面においても重大な影響を及ぼすいわば健康権、生存権の侵害という最大の不利益をもたらす本件一時差止処分を行うということは、国民に対する不利益処分はその処分によつて保護しようとする利益に相応する処分即ちその利益保護のために必要且最小限のものでなければならないといういわゆる比例原則に明らかに違反するものであり、本件一時差止処分は裁量権踰越又は濫用の違法なものである。 第六公共の福祉に重大な影響をおよぼすおそれがあるとの主張について一相手方は、効力の停止は正当な理由なく報告書の提出を拒絶する者を助長することになる、すなわち、その他の届書や報告書についても提出拒絶のおそれがあり、かくては労災法等の執行運営にまで著しい支障を生ぜしめることが明らかで、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとしている。 右における公共の福祉は、労災法等の執行運営と同一視された立論であるが、公共の福祉は決して行政処分の目的をさしているものではない。行訴法第三一条一項は、事情判決ができる場合として「取消訴訟については、処分又は裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分又は裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるとき」であるとしているが、この趣旨をふまえ同法第二五条三項にいう公共の福祉を考えるべきである。 二すなわち、公共の福祉は諸法益の対立を公正に調整した状態に他ならず、この点からみると、申請人らは既に述べた正当な理由によ が、この趣旨をふまえ同法第二五条三項にいう公共の福祉を考えるべきである。 二すなわち、公共の福祉は諸法益の対立を公正に調整した状態に他ならず、この点からみると、申請人らは既に述べた正当な理由による報告書の留保を行なつているのであり、労災給付について相手方が処分できる状況のもとで、一方で毎日の生活の糧と療養のための給付を相手方が差止めたという本件差止処分の効力停止につき、申請人らのもつ法益と報告書提出についての行政上の法益を公正に調整できないのが、公共の福祉に影響を及ぼす場合であるといえる。したがつて、いずれ本訴において結論が出されるにせよ、その解決まで、当事者間の対立状態(というより、一方的制裁的処分というべきであるが)を執行停止によつて調整するというべきであつて、執行停止が何ら公共の福祉が危殆に瀕するものではない。 三なお、相手方が例示している労働保険徴収法の保険料報告書は、同法第一四条一項にある「申告書」のことであるが、使用者の申告書不提出に対しては、同第三項により、政府が労働保険料額を決定でき、その額によつて徴収できるのであるから、申告書不提出があつても、何ら保険料徴収事務に支障をきたすことはない。 四申請人らは、既に述べたように正当な理由により提出を留保しているのであつて、それが何ら労災法等執行に支障をきたすものではないことが明らかであるから、相手方の主張は全く理由がないといわねばならない。 別紙(三)第一本件申立人らの申立の利益について一休業補償給付等の支給決定の有無と申立の利益について(一) 相手方は、休業補償給付等の支給決定はないと主張し、その釈明書一、1、において支給決定に関する手続の説明を加えている。しかしながら本件で問題としているのは、支給・不支給の決定の手続問題ではなく、まさに労災法第四七条の三が規定す 決定はないと主張し、その釈明書一、1、において支給決定に関する手続の説明を加えている。しかしながら本件で問題としているのは、支給・不支給の決定の手続問題ではなく、まさに労災法第四七条の三が規定する「支払の一時差止」の法的意味である。そして、その法的意味は支給決定がなされ具体化された請求権の「支払」が一時差止められているものであることは、労災法第四七条の三の文言及び一時差止め通知書の「昭和年月日から昭和年月日までの分に係る休業補償給は(中略)の支払を(中略)一時差止める」との内容から明らかである。 なお相手方は支払差止決議書(乙第一九号証)を提出し、それには「3、当該決議は、支給決定の支給決議に先行して行うこと」という注が記載されている。そこで支払差止決議書の書式の成立経過をのべ、これが本件紛争発生後に、相手方らが労災法第四七条の三を自己に都合よく解釈したうえで作成された書面であり、又それは相手方等の内部手続にすぎない旨を明らかにする。 即労働省労働基準局長は昭和五三年五月一五日付基発二七四号通達をもつて「傷病の状態に関する報告書」の履行確保を図ること、その手段として一時差止処分を行うことを指示し、さらに昭和五三年七月四日付基発三七三号通達をもつて一時差止処分の具体的措置手続を各労働基準局長に明らかにし、この通達のために作成添付された書式が乙第一九号証の支払差止決議書なのである。 このような経過からも相手方らの見解に基づいて作成された書面をもつて労災法第四七条の三を解釈することは、相手方の主張をそのままうのみにすることに外ならない。 (二) 被申立人らは労災法第四七条の三の「支払の一時差止」という文言は年金における支分権に基づく支払のような窓口的支払の意義のみならず、本件のように支給決定がなされないことから、当然具体的な い。 (二) 被申立人らは労災法第四七条の三の「支払の一時差止」という文言は年金における支分権に基づく支払のような窓口的支払の意義のみならず、本件のように支給決定がなされないことから、当然具体的な支払がなされないといつた場合も含むものと解さねばならないという。しかし、被申立人らは休業補償給付についての一時差止処分は支給決定前の処分であることを既述のとおり本件問題が起つてから作り出した内部文書でしか証明しえない。 この解釈およびこれに基づく内部文書の作成は本件申立を意識した被申立人らの本省である労働省の作為であり法の予定したところを著しく逸脱するものである(大阪労基局は審査請求に伴なう執行停止の申立の段階では申立の利益はあることを前提としていた)。 即ち、労災法第四七条の三は既述のとおりその文言および差止め通知書の形式からも窓口的支払を差止めることを予定したものであつた。だからこそ今日まで各回の支払が基本権から発生する支分権に基づくものである遺族補償年金および障害補償年金において専ら適用行使されてきた(被申立人らも認めるとおり)のである。 さすれば今回初めて適用された休業補償給付についても支給決定後の窓口的支払の差止めと解すべきである。支給決定のあるケースと支給決定前のケースを同一法条で規定するという被申立人らの主張は法の常道に反するものといわざるをえない。 二休業補償等の支給決定がない場合の本件申立人等の申立の利益について(一) 相手方らは本件にあつては休業補償等の支給決定がなされていないことを前提とし「それ故に申立人らの本件申立が仮に容認されたとしても、それは右一時差止処分の効力が停止されるにとどまり、これによつて申立人等に対し、右支給決定がなされたと同じ効力を生じることにはならず、申立人らの損害の発生、拡大を避けるためになん 認されたとしても、それは右一時差止処分の効力が停止されるにとどまり、これによつて申立人等に対し、右支給決定がなされたと同じ効力を生じることにはならず、申立人らの損害の発生、拡大を避けるためになんら役立つものでない」よつて申立の利益を欠くと主張し、その釈明書においても右をこえる説明はなされていない。 しかしながら仮に、申立人等に対し休業補償等の支給決定がなされていないとしても、それが即申立の利益がないとの主張に結びつけるのは論理の飛躍がある。 申立の利益の有無については、一時差止処分の執行停止が認容された場合、本件の当事者がどの様な法的状態におかれることになるかの検討がなされなければ判断できない事であつて、支給決定がないということと、申立の利益がないという事とは同義ではない。 (二)1 申立人らが本件執行停止が認容されれば、どの様な法的な利益を受け得るかと検討するためには、まず現在即ち、執行停止がいまだなされていない現時点において申立人等がどの様な法的状態にあるか、換言すればどの様な権利を有するかをみなければならない。そしてその状態とはまず第一に申立人らは、既に業務上の認定を受け「保険給付を受ける権利を有する者」(労災保険法第四七条の三)となつており、現在も療養給付については支給を受けているのである。即ち、全くの無権利者ではなく、保険給付の一部については権利者なのである。 第二に、相手らのうち大阪中央労働基準監督署長及び天満労働基準監督署長は、申立人らが休業補償給付について労基法第八四条の「労働者災害補償保険法又は命令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきもの」という法的地位にあることを認めている。即ち、労働基準法第七六条は、労働者が業務上の疾病による療養のため、労働することができないために賃金を いてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきもの」という法的地位にあることを認めている。即ち、労働基準法第七六条は、労働者が業務上の疾病による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養期間中平均賃金の一〇〇分の六〇の休業補償を行わなければならない旨を規定し、同法第八四条は、労災保険法等により災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は補償の責を免れる旨を規定している。そして申立人等の使用者である企業のなかには、申立人らが受けるべき労災保険給付につき、前述した補償金支払ののち、その既払の補償の全額又は一部の支払を受けそれを右の既払の補償金を充当する手続を取つているものもあつた。ところが、相手方らが労災保険法第四七条の三により給付の一時差止を行つたので、申立人らの使用者である企業も前述した申立人らに対する休業補償の支払をしなくなつた。 そこで申立人らは、昭和五三年一〇月一一日、その使用者である雇主等に労基法第七六条違反がある旨を、同法一〇四条に基づき大阪中央及び天満労基署長に申告したところ、同署長らは、申立人らが保険給付を現実に受けていなくてもそれを受けうる場合は、使用者の免責があるとの理由により右申告をしりぞけたのである(昭和四二年三月一日、大阪地裁判決、労民集一八巻二号一五七頁の判例を引用した)。 このことは、相手方らが、申立人らが休業補償給付についても一定の権利者である事を認めている事に外ならないのである。 2 現在右の様な法的地位にある申立人らに対して一時差止処分の執行停止があつた場合、相手方らは必然的に休業補償給付の支給あるいは不支給の決定をなさねばならない法的状況におちいるのである。そしてこの法的状況は、行政庁である相手方らに対して反省を 一時差止処分の執行停止があつた場合、相手方らは必然的に休業補償給付の支給あるいは不支給の決定をなさねばならない法的状況におちいるのである。そしてこの法的状況は、行政庁である相手方らに対して反省をうながし、再度の考案を期待するという様なものではなく、法的拘束力をもつたものなのである。 即ち、第一に相手方らが右決定をなさねばならない期限は、相手方らの裁量ではなく、労働基準法施行規則第三九条「休業補償は毎月一回以上これを行なわなければならない」との規定によるのである。けだし、右規則は使用者である企業の休業補償支払に関する規定であるが労災保険法による休業補償給付は使用者の休業補償の義務を保険化したものであるから、保険給付の支払についても当然適用あるいは準用されるものだからである。 第二に、相手方らの支給・不支給の決定は全く裁量というものではなく、次の様な支給要件等の事実に拘束されるのである。まず申立人らは現在も相手方らが釈明書三、1で認めている休業補償給付等に固有の要件、即ち(1)労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり、(2)その療養のため、労働する事ができず、(3)賃金を受けていない等を備えている。次に申立人らは前述(本書面二、(二)1)したように保険給付或いは休業補償給付についても全くの無権利者ではないこと、本件一時差止がなされるまで休業補償給付を受けていたこと等の事実がある。この様なことから、休業補償給付の支給・不支給の決定においては、申立人等が支給決定を受け得ることはほぼ確実な状態なのである。即ち、本件執行停止が認容されれば、申立人等に対して支給決定がなされたに近い状況となるのであつて、この様な状況は拒否処分にも執行停止を認める学説が申立の利益としていうところの「有効な申請状態に復し行政庁が欲すればあらためて執行停止決定の趣旨をも して支給決定がなされたに近い状況となるのであつて、この様な状況は拒否処分にも執行停止を認める学説が申立の利益としていうところの「有効な申請状態に復し行政庁が欲すればあらためて執行停止決定の趣旨をもかんがえた許否決定がなされうるという法的期待」以上の法的拘束力あるものである。 以上により本件における申立人らの申立の利益が存する事は明白といわねばならない。 (三)1 相手方は、「一般に拒否処分は、その性質上執行停止の対象適格を欠くか、執行停止の申立利益を欠くと解されている」旨主張している。しかしながら我国の判例は、行政処分の性質が拒否処分であつても、関係実体法の解釈により申立の利益を認める立場にあり、拒否処分に執行停止を認めた裁判例も多数存する(東京地裁決昭和四二・一一・二三、同四二・一一・二七、判例時報五〇一号五三頁、同五四頁、札幌地裁決昭和三四・五・一一行裁例集一〇巻五号一〇一六頁、東京地裁決昭和四五・九・一四行裁例集二一巻九号一一一三頁、東京高裁決昭和四五・一一・二五判例時報六一二号一一頁、東京地裁決昭和四三・八・九行裁例集一九巻八・九号一三五五頁)。 特に右判例中東京地裁決昭和四三・八・九は、法の規定がある札幌地裁決昭和三四・五・一一とは異なり、明文の規定が存しないにもかかわらず超短波放送実用化試験局の再免許拒否が停止されれば、有効期限後においても旧免許の効力が失効せずに維持されるものと解して、執行停止を認めた事例であり、本件執行停止申立事件に関して注目すべきものである。 2 右に引用した判例は、試掘権存続期間延長不許可あるいは外国人の上陸不許可処分、在留期間更新不許可等々全て実体法的な内容の検討がなされて不許可という拒否処分が出された後にそれに対し執行停止の申立がなされた事案である。これに対し本件においては、相手方の主張どおり 陸不許可処分、在留期間更新不許可等々全て実体法的な内容の検討がなされて不許可という拒否処分が出された後にそれに対し執行停止の申立がなされた事案である。これに対し本件においては、相手方の主張どおり支給・不支給決定以前に一時差止処分がなされたものであるとすれば、申立人らの休業補償請求について実体法的な内容の検討は未だ何らなされていないのである。そして前述したように実体法的な検討がなされれば申立人らはほぼ確実に休業補償給付を受け得るのであつて、本件の申立の利益は右引用判例以上のものがあると言わねばならない。 第二解雇制限解除と相手方監督署長の態度一はじめに申立人らが報告書を提出しないのは、相手方が「傷病補償年金の支給要件に該当するかどうかなどを中心とした判断を継続的に行う」(意見書第二、一、2)と言明しているように、報告書提出により傷病補償年金(以下単に「年金」という)に移行され、ひいては労災中の解雇制限が解除され(労基法一九条、労災保険法一九条)、企業が申立人らを解雇してくることはあまりに当然だからである。このうち、そもそも申立人ら頸肩腕障害患者(但し申立人Dはむちうち症)を含むいわゆる三疾病(頸肩腕障害、むちうち症、腰痛)については、年金の対象にならないのだから、これを前提とする報告書提出義務など存しないことを述べてきた。ここでさらに、申立人らの勤務している各会社が、実際においても申立人らの年金移行をまちのぞみ解雇をくわだてていることを主張しておくことは(大企業の集まりである関西経営者協会が労災中の解雇制限解除を要求していることは前回述べた)、申立人らには報告書提出義務がないことをいよいよ基礎づけるとともに、報告書を提出しないことにつき「正当な理由」(労災保険法四七条の三)の裏づけとなるものである(なお申立人前回準備書面第三、 べた)、申立人らには報告書提出義務がないことをいよいよ基礎づけるとともに、報告書を提出しないことにつき「正当な理由」(労災保険法四七条の三)の裏づけとなるものである(なお申立人前回準備書面第三、四、(二))。 二就業規則にみる年金患者に対する解雇の制度化① 申立人Bの使用者である住友生命保険相互会社は就業規則四一条でもつて、休業補償の継続中は療養休暇とするが、長期傷病補償の場合は休業後五年すぎると療養休暇とはならず解雇制限は撤廃されると定めている(就業規則七二条)。 ② また、申立人A、I、J、Fの使用者である日本生命保険相互会社の就業規則(その執務基準票の部分)あるいは申立人Eの使用者である(株)関西鉄工所の就業規則(三四条)は労働基準法八一条による打切補償を受けたとき身分喪失になるとして直接間接に規定しており、年金を受ければ打切補償を支払つたことになつている制度のもとでは、それらの企業は当然申立人らを解雇してくることは明白である。これは申立人Dの場合(東雲運輸(株))、申立人Kの場合(三国製紙(株))、申立人Fの場合(和泉乳児院、なお甲二九号証の一の自己意見書末尾には、就業規則を何度もかえて解雇をくわだてていることを明らかにしている。)も同様である。 三申立人らの訓練的就労に関する企業の態度(一) 申立人らのうちE、D、B、Fは現在それぞれの会社で訓練的就労にはげんでいる。いうまでもなく、頸肩腕障害、むち打ち症をなおすのに適切な治療とともに訓練的就労が必要であることは五九三号通達からも明白である(甲五号証)。 しかし、① Eの使用者(株)関西鉄工所は、五一年初めから再三、申立人が訓練的就労を訴えたにもかかわらず、これを拒否し続け、同年一一月には会社内には入れたが向こう五二年一一月まで守衛室で監禁状態にし、仕事も全く与えなかつた 株)関西鉄工所は、五一年初めから再三、申立人が訓練的就労を訴えたにもかかわらず、これを拒否し続け、同年一一月には会社内には入れたが向こう五二年一一月まで守衛室で監禁状態にし、仕事も全く与えなかつた(甲二二号証の二二、「昭和五二年」と書かれた書面)。 しかも、今回の相手方からの報告書提出後は、行政の命令に従わないことを理由に、かたよつた訓練をさせ、症状を悪化させている(甲二二号証の二二、「4、療養面に生じた支障」)。 さらには訓練的就労は申立人患者の積極的な要求によつておこなわれるのであるが、冷房の送風口に席が接近しているため配置換えして欲しいという当然の申し入れに対しても、会社は「休業してもらうしかない」と言つて、全く訓練的就労を敵視している(甲二二号証の二二)。 ② 申立人Dは使用者である東雲運輸(株)に対して五三年四月一七日に訓練的就労を要求したのであるが(甲二四号証の四)、結局すぐには認めることをせず五カ月以上たつた九月二〇日であつた(甲二四号証の六)。 ③ Bの使用者である住友生命保険相互会社も訓練的就労はさせているものの、「イヤだけど、これ以上実施しないと社会的に批判されるので実施する」にすぎない(甲二七号証の一、五頁)。 ④ 申立人Fの使用者である和泉乳児院もまた訓練的就労に全く無理解であつて、職員会議でのFの発言をとめ、研修会などにもいかせず、精神的圧迫を加えている。 結局、以上の事実は、何よりも各企業がおこなつているものは、訓練的就労は名も体もなしていないのであり、逆にすきをみては症状を悪化させ、監督署長の年金移行決定とあわさつて解雇することをねらつていることは明白である。なお右申立人らは各監督署長に対し、五九三通達実務処理要綱に従つて、訓練的就労を徹底させるべく企業への強い指導を要求しているのであるが、監督署長は企 さつて解雇することをねらつていることは明白である。なお右申立人らは各監督署長に対し、五九三通達実務処理要綱に従つて、訓練的就労を徹底させるべく企業への強い指導を要求しているのであるが、監督署長は企業のやり方を放任するのみである。 (二) その余の申立人らについては、各企業は訓練的就労を全く拒否している。 ① 申立人Aの使用者である日本生命保険相互会社は、昭和五二年二月よりたびかさなるAの要求に対して(甲二三号証の五)もこれを認めず、かえつて「無断病欠」の扱いをして解雇事由をさがそうとしている(甲二三号証の一、一七頁)。また訓練的就労を認めないので、結局申立人は正常勤務体制の中でやらざるを得ず、かえつて病状を悪化させているのである(同二〇頁~二五頁)。 結局、申立人Aは五二年一一月一八日から再度休業に入つたのであるが、この事例は、企業のやり方一つで申立人の症状を悪くすることができ、その悪い症状をとらえて監督署長が年金移行させ、そして企業は解雇にもつて行こうとするねらいをありありと示している。 ② 申立人I、同Jの使用者も日本生命保険相互会社であるが、訓練的就労を要求しても(甲二六号証の四、五、七)全く応じない。とくにIの場合、「二時間ぐらいより漸次増やしていけば完全就業可能と考えている」という診断になつているにもかかわらず(甲二六号証の一〇、なお、これと申立人Jの甲二八号証の七の療養内容の照会は西野田監督署長からのものであり、症状把握としてはこれで充分であるにもかかわらず、相手方が症状把握のために報告書が必要だと主張していることがいかに詭弁にすぎないかを示している)、日本生命保険相互会社は拒否しているのである。 また、申立人Jの場合も、五三年九月一日には次長から「職場排除もやむを得ぬ」という発言をしており(甲二八号証の一)、解雇をちらつ ないかを示している)、日本生命保険相互会社は拒否しているのである。 また、申立人Jの場合も、五三年九月一日には次長から「職場排除もやむを得ぬ」という発言をしており(甲二八号証の一)、解雇をちらつかせている。 ③ 申立人Kの使用人である三国紙工(株)は、昭和五一年九月四日でもつて訓練的就労の申し入れをしているが(甲二四号証の添付書類四)、現在まで拒否している。Kはくわしい医師の診断書を数通(甲二四号証)会社と同様監督署長にも提出して訓練開始を要求したが、全くききいれられなかつた(なお右診断書はすべて署に提出しており、とくに添付書類三は労災保険用紙のものであり、署長はこれにより十分に症状を把握しており、報告書提出は全く理由がないことを示している)。 四労災保険制度の趣旨を逸脱した監督署長の報告書の提出要求と休業補償等支払差止労災保険の目的はその法律一条が規定しているように、保険給付と疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進である。申立人らの疾病である頸肩腕障害およびむち打ち症については、その具体的社会復帰施策として五九三号通達が発せられ(甲五号証)、さらに細目を決めたものとして大阪労働基準局は社会復帰特別対策事務処理要綱を決めている(甲六号証)。したがつて、相手方監督署長がまずなすべきことは、前述した申立人らの使用人である各企業が、社会復帰のため必要とされている訓練的就労を阻害しているのであるからこれを完全且つスムーズにおこなわれるよう、各企業に対して五九三号通達や事務処理要綱に従わせることである。 ところが相手方監督署長は企業に対してこの当然のことをおこなわないか、これを放任しておいて、逆に企業によつて身体を害された申立人に対し(各人の報告書はこれをあますところなく伝えている)、国会審議あるいは大臣答弁等で結着がついているにもかかわら ことをおこなわないか、これを放任しておいて、逆に企業によつて身体を害された申立人に対し(各人の報告書はこれをあますところなく伝えている)、国会審議あるいは大臣答弁等で結着がついているにもかかわらず違法にも年金移行のため報告書を求めてきてしかも保険給付の差止までおこなつているのである。労働者が人たるに値する生活としての休業補償を本来なら確保してやらねばならぬ監督署長が(労基法一条、七六条、九七条)、申立人ら労災労働者を解雇しようとたくらんでいる企業を助けるべく年金移行をおこない、そのために報告書提出を求めて、その違法性を申立人らからつかれると休業補償等支給を差止めるということは、法的に許すことのできない処分であること明らかである。 第三傷病補償年金制度は「手厚い保護」ではない。 右の点については、既に前回準備書面第三、一で主張したが、これを申立人各人にとつてみるといよいよ明白である(解雇制限解除については前項で述べた)。 すなわち、① 申立人A、I、B、Jは日本生命保険相互会社の従業員であるが、同会社の就業規則五八条によれば、休業補償給付を受けている場合は付加給付をうけることができ、現在基準賃金全額相当額(一〇〇%)を支払されている。ところが、右申立人らが相手方監督署長によつて年金に移行されると、廃疾等級三級で六七%(相手方は頸肩腕障害患者の年金移行はせいぜい三級どまりである旨言つている)支払われるにすぎない。同一級でも三一三÷三六五=八六%であり、とうてい一〇〇%支払とならぬ。 なお申立人Fは和泉乳児院に勤務しているが、ここでも現在一〇〇%休業補償を得ているので、年金移行したら減額になること明白である。 ② 申立人Eは(株)関西鉄工所の従業員であるが、就業規則別表六(四七頁)によれば休業補償が労災保険から支給される場合、会社はさら %休業補償を得ているので、年金移行したら減額になること明白である。 ② 申立人Eは(株)関西鉄工所の従業員であるが、就業規則別表六(四七頁)によれば休業補償が労災保険から支給される場合、会社はさらに一〇%支給されることになつており、休業特別支給金とあわせれば九〇%支給となる。年金移行の場合は廃疾等級六七%どまりであり、低い。 ③ 以上の申立人らを含めて、申立人らすべて特別手当、臨時収入等、傷害特別年金の算定基礎となる賃金を得ていない。結局、年金に移行した場合、支払われるのは賃金相当額の六七%のみである。ここからみても申立人らに対する年金移行が相手方のいう「手厚い保護」にならないこと明白である。 第四不公正行政について一はじめに相手方監督署長は申立人らが報告書を提出しないという一点だけをもつて休業補償支払等を差止めてきた。したがつて、申立人らと同じ頸肩腕障害患者でありながら、監督署長が「差止め」どころか報告書提出を求めておらず、あいかわらず休業補償支払等を支給している実態を述べることは、本件差止処分が全く理由のないことを相手方みずから裏づけるものである。なお、これは申立人らが知りうる範囲内のものであり、類似例がこの他多数あることは報告書提出義務者が一、〇三二名もおる(五三年二月一〇日時点)ことからも明白である。 二報告書提出を求めぬままで休業補償を支払う。 申立人E、同Dに対して休業補償給付等支払差止をした中央労働基準監督署長は、同じ疾病であるLに対して報告書提出免除のまま休業補償給付を継続支給している。 また、堺労働基準監督署長は申立人らが差止めを開始された五三年七月から一〇月の間、M、N、Oに対して報告書の提出すら求めず継続して休業補償給付等を支給している。 さらに某患者団体に加盟している被災労働者多数に対しては報告書の 立人らが差止めを開始された五三年七月から一〇月の間、M、N、Oに対して報告書の提出すら求めず継続して休業補償給付等を支給している。 さらに某患者団体に加盟している被災労働者多数に対しては報告書の提出すら求めず、それどころか一部送付したものを後日回収し白紙撤回してまで休業補償給付等の継続支給をしているのである(以上甲三〇号証・報告書三)。 これらの人達は、すべて療養開始後一年六カ月を経過している頸肩腕障害を含む三疾病患者である。したがつて相手方が申立人に対して報告書提出を求めてきた理由が相手方がいうように正しいのであれば、当然これらの人達にも相手方は報告書の提出を厳格に求めるはずである。ところがこれをしていない事例があるということは、三疾病患者に対する報告書提出そのものが強要できるものではなく、ましてやその不提出を理由に休業補償支払差止できないことを示している。 三報告書提出督促もしないで差止めた申立人Aの事例申立人Aの場合は、報告書提出の督促も送付されておらず、いきなり差止めてきた(甲二三号証の一、二八頁)。 差止問題について相手方は報告書不提出が差止理由としているが、督促もしないで差止めたことは相手方のこの主張が全く理由がないことを示している。 第五1 申立人らの昭和五三年一二月六日付意見書の一時差止処分一覧表(別紙)において申立人らにつき「以後の休業補償給付の請求はない」旨の記載があるので、この点の事実関係につき以下に述べる。 2 申立人らが休業補償給付等を受領する具体的方法は、毎月休業補償給付等の請求書(以下単に請求書という)を各事業主に提出し、それと同時に右事業主から休業補償給付等を受領し、右各事業主はその後前記請求書を所轄労働基準監督署長宛に提出して、保険給付を受けるというものである。 3 申立人Eは、八月分の休業補償給 業主に提出し、それと同時に右事業主から休業補償給付等を受領し、右各事業主はその後前記請求書を所轄労働基準監督署長宛に提出して、保険給付を受けるというものである。 3 申立人Eは、八月分の休業補償給付(以下単に何月分という)については九月四日に、九月分については一〇月三日に、一〇月分については一一月七日に、一一月分については一二月七日にそれぞれその請求書を事業主に提出済である。しかるに、事業主においてその理由は不明であるが、右請求書を被申立人に提出していないのである。 4 申立人Aは、九月分については一一月末日に、一〇・一一月分については一二月八日にそれぞれ請求書を事業主に発送済である。なお、九月分については一二月七日付で本件同様の一時差止処分が行なわれている。 5 申立人Kは八~一一月分については一二月六日に請求書を事業主に発送済である。 6 申立人Iは、一〇・一一月分については一二月四日に請求書を事業主に提出済である。 7 申立人Bは、九~一一月分については一二月四日に請求書を事業主に提出済である。 8 申立人Jは、一〇・一一月分については一二月一一日に請求書を事業主に提出済である。 9 申立人Fは、一一月分については一二月九日請求書を事業主に提出済である。 別紙(四) 申立人第三回準備書面記第一申立人らは昭和五三年一二月一四日付準備書面第五の四で休業補償給付の継続と傷病補償年金への移行時期との関係において内払処理の方法が労災法一二条に定められており、この点からみても被申立人らが今回報告書の未提出を理由として申立人らに対し休業補償給付を差止める必要性がない旨を主張した。 本来、労災保険法四七条の三にいう支払いの一時差止めの対象になる保険給付は「支給決定に支障をきたすと認められる」ものである。(九〇六号通達、甲第八号証)従つて内払い める必要性がない旨を主張した。 本来、労災保険法四七条の三にいう支払いの一時差止めの対象になる保険給付は「支給決定に支障をきたすと認められる」ものである。(九〇六号通達、甲第八号証)従つて内払い処理制度が法で規定されていることは、第二回準備書面第四で述べた行政の不公正取扱いとともに本件支払差止めが全く理由のないことを示し、その違法性をあますところなく示すものである。 このことについて、以下補足すれば次のとおりである。 右の内払い処理の制度は従前から労災法一二条にあつたが、傷病補償年金の新設に伴つて同条三項において休業補償給付から傷病補償年金への移行に当つても保険給付に関する内払処理ができる旨を明記したものである。 つまり、休業補償給付を受ける権利が消滅し、同時に傷病補償給付を受けることとなつた場合に、従来支給されていた休業補償給付が引き続いて行なわれていたときは傷病補償年金の給付の内払とみなして処理できるのである。 これによつて、かかる場合に従来行つていた過払額の徴収に伴う受給者及び行政庁の事務手続が簡素化されるに至つた。 また、この内払いで処理の方法については昭和五二年三月三〇日付の基発第一九二号通達の中でも詳しくその方法が謳われているところである。 従つて申立人らは昭和五三年一二月二二日付準備書面第一、二、(二)、2でも述べたように休業補償給付を受ける地位にあり当然に休業補償給付を受給する地位にあるものであるが、仮に一〇〇歩ゆずつて、当該患者が傷病補償年金の受給者となつていたとしても、右内払処理の結果保険給付手続において何ら混乱を来さないのである。 被申立人らがこの内払処理のことに関し、何ら反論をしないのは反論すればするほど不利益になるか、そうでなければ一定の狙いすなわち、何としても申立人らに報告書を提出させようとするも さないのである。 被申立人らがこの内払処理のことに関し、何ら反論をしないのは反論すればするほど不利益になるか、そうでなければ一定の狙いすなわち、何としても申立人らに報告書を提出させようとするもの以外の何物でもない。 第二労災法第四七条の三は年金について規定したものである。 一厚生年金保険法・国民年金法も支払の一時差止めの規定をおいている。厚生年金保険法第七八条は「受給権者が正当な理由なくして……保険給付の支払を一時差止めることができる」と定め、国民年金法第七三条は「受給権者が正当な理由なくして……年金給付の支払を一時差止めることができる」と定めている。労災法第四七条の三も「保険給付を受ける権利を有するものが……保険給付の支払を一時差止めることができる」と定め、前記二法と同一の文言を使つていることから本条は年金について規定したものと解すべきである。 二被申立人は「休業補償給付についても労災則二二条の届出が提出されない場合及び労災法四七条、四七条の二の命令に従わない場合が多くみられるが、このような場合でも、行政庁による指導の結果短期間内にその提出がなされ、命令に応じるため、差止め処分に至つた事例はなかつた」という。しかし年金受給者は行政庁による指導に従わず、休業補償給付請求者はこれに応じてきたというのは不自然であり、休業補償の場合は本条を適用できないと解されていたと考える他はない。本件の問題が生じてから休業補償給付用に差止め決議書なるものを急きよ作成したことからしても明白である。 別紙(五)第一労働者災害補償保険法施行規則第十九条の二は法律の委任を超えた労働省令であつて違法である。 一労災保険法第四七条の三によつて、保険給付の支払を一時差止めし得る場合労災保険法第四七条の三は、次の三つの場合に保険給付の支払を一時差止めし得るこ 律の委任を超えた労働省令であつて違法である。 一労災保険法第四七条の三によつて、保険給付の支払を一時差止めし得る場合労災保険法第四七条の三は、次の三つの場合に保険給付の支払を一時差止めし得ることを規定している。 1 まず第一に労災保険法「第一二条の七の規定による届出をせず、若しくは書類その他の物件の提出をしないとき」である。 2 第二に、労災保険法第四七条による行政庁の文書等の提出命令又は出頭命令に従わない場合である。 3 第三に、労災保険法第四七条の二による行政庁の受診命令に従わない場合である。 そして右の2、3の場合については、右法条の委任により労災保険法施行規則第五一条の二として具体化され、又、右1の場合については労災保険法第一二条の七の委任により届出義務の一場合として労災保険法施行規則第一九条の二が規定されている。 二労災保険法第四七条の三の制定及び改正の経過(一) 保険給付の支払の一時差止めの根拠である労災保険法第四七条の三は、昭和四〇年六月法律三〇号をもつて追加的に規定されたものであり、この当時同条には保険給付の支払を差止めし得る場合としては前記一、2、3の場合のみが規定され前記一、1の労災保険法第一二条の七に違反した場合は未だ規定されていなかつた。 (二) ところが、昭和四五年五月法律八八号をもつて、現在の労災保険法一二条の七の前身であつてそれと同一内容をもつ同法二二条の二が追加的に設けられた。 これと同時に同法第四七条の三に、保険給付の支払を差止し得る一場合として同法第二二条の二が挿入(改正)されたのである。 右労災保険法第二二条の二の立法趣旨は、昭和四〇年に労災保険給付に年金制度が導入され「年金受給者が累増するに伴い、受給者の住所、受給権の内容等の正確な把握が実際の年金支払に関する事務処理の面で必要不可欠となつたの 二二条の二の立法趣旨は、昭和四〇年に労災保険給付に年金制度が導入され「年金受給者が累増するに伴い、受給者の住所、受給権の内容等の正確な把握が実際の年金支払に関する事務処理の面で必要不可欠となつたので……提出義務の根拠規定を設けた」とされ、又同条が保険給付の支払の差止しうる一場合として労災保険法第四七条の三に挿入された立法趣旨は「受給権者の現況報告の提出等を正当な理由がなくて怠つた者については、厚生年金保険等の例にならい、年金が正確に致達しないことがあるので……一時差止めを行うことができることとした」とされている。このように昭和四〇年に労災保険給付に年金制度が導入されたことに一程の問題がでてきたことに対応して労災保険法第二二条の二の制定及び同第四七条の三の改正が行なわれたのである。 (三) その後昭和四八年九月法律八五号をもつて労災保険法の「条名の整理」が行なわれ、労災保険法第二二条の二が同法第一二条の七となり、同時に同法第四七条の三に差止の一場合として規定されていた同法第二二条の二も同法第一二条の七となつたのである。 三労災保険法施行規則第一九条の二の制定とその違法性昭和五一年五月労災保険給付に傷病補償年金の制度が設けられ、これに伴ない昭和五二年三月労働省令第六号をもつて労災保険法第一二条の七を根拠法として労災保険法施行規則第一九条の二が設けられた。 右規則は休業補償給付の請求権者に対して報告書の提出義務を課するものである。しかしながら前述したところから明らかなように、規則一九条の二の根拠法である労災保険法第一二条の七は年金受給者に対して書類等の提出義務を課したものであつて、休業補償給付権者を対象とするものではない。昭和五一年に傷病補償年金制度が設けられた際にも、労災保険法第一二条の七及び同法四七条の三の法的性格には何ら改正、変 書類等の提出義務を課したものであつて、休業補償給付権者を対象とするものではない。昭和五一年に傷病補償年金制度が設けられた際にも、労災保険法第一二条の七及び同法四七条の三の法的性格には何ら改正、変更はなされていない。しかるに労働省が労災保険法第一二条の七についての独自の解釈にもとづき、労災保険法施行規則第一九条の二を設けたことは、労災保険法第一二条の七の委任の範囲を超えた規則制定であり、右規則はその法的根拠を欠く違法のものである。 第二仮に労災保険法施行規則第一九条の二が違法でないとしても、申立人らに対する本件一時差し止め処分は、労災保険法四七条の三に定められた要件を欠く違法なものである。 一報告書の提出命令なくして休業補償給付等の支払いの一時差し止め処分はできない。 すなわち、法四七条の三は、保険給付の支払いを一時差し止め得る場合として、① 一二条の七の規定による届出をせず、若しくは書類その他の物件の提出をしないとき。 または、② 前二条の規定による命令に従わないとき。 が要件として掲げられている。 後者の②のいう「前二条の規定」のうち法四七条は、「行政庁は、労働省令で定めるところにより、保険関係が成立している事業に使用されている労働者……に対して、この法律の施行に関し必要な報告、届出、文書その他の物件の提出若しくは出頭を命ずることができる」と規定されている。すなわち、申立人らが仮りに労災保険法施行規則第一九条の二により報告書の提出義務がありとしても、これに対して相手方が報告書不提出を根拠に休業補償給付等の支払いを差し止めるためには、法四七条による提出命令をした上ではじめて法四七条の三の差し止め処分ができるのである。 そして、前者の①のいう法一二条の七に規定する報告書等の提出義務違反の事実だけでもつて(すなわち提出命令をおこな 四七条による提出命令をした上ではじめて法四七条の三の差し止め処分ができるのである。 そして、前者の①のいう法一二条の七に規定する報告書等の提出義務違反の事実だけでもつて(すなわち提出命令をおこなわずに)保険給付の一時差し止め処分をおこなうことができるのは、年金などのばあいでその受給者の住所等がわからないため、提出命令そのものをおこなうことができない場合なのであつて、施行規則一九条の二による報告書提出義務違反の場合など含まれていないのである。 したがつて、相手方が申立人らに対して法四七条にしたがつて報告書の提出命令をおこなつていない以上、本件一時差し止め処分は違法である。 二理由 1 このように法が保険給付の一時差し止め処分をおこなうための要件として行政庁が、受給権者に対して報告書等の提出命令をおこなうこと、および右受給権者がその命令にしたがわないことを要件として規定したのは次のような理由からである。 すなわち、法治主義のもとにおいては、行政庁の行為はすべて法律に根拠をもち、その内容において適法であるだけでなく、その手続きにおいても適正なものであることが要求される。 とくに、国民に対して不利益な結果をもたらす行政行為である場合には、その行為の適法性を確保し、国民の権利侵害がおこなわれないようにするため手続きの適正さがより一層厳格に要請され、そのために右行政行為をおこなうにあたつては国民に事前に疑問を提出し、また反論をする機会を十分与えなければならないのである。 そして、保険給付の一時差し止め処分もその受給権者の生活や療養に重大な影響をおよぼし生存権の侵害という最も重大な利益に関するものであるから、このような処分をおこなうには受給者の人権を十分配慮した慎重な手続きがとられなければならないのは当然である。 そこで、法は報告書等を提 よぼし生存権の侵害という最も重大な利益に関するものであるから、このような処分をおこなうには受給者の人権を十分配慮した慎重な手続きがとられなければならないのは当然である。 そこで、法は報告書等を提出しない受給権者に対しては、提出義務違反という事実だけでもつて、ただちに保険給付の一時差し止め処分という不利益処分を課することをしないで、まず提出義務違反と判断した受給権者に対し、行政庁に提出命令を出させることによつて受給権者に報告書等の提出につき注意をうながすとともに、もしその提出につき受給権者に疑問・異議がある時には審査請求をすることによつて、提出義務の存否を十分検討する機会を与え、もつて違法不当な報告書等の提出を一方的に強要されない権利を規定したのである。 なお、本件報告書の提出と同じ目的を有するとされている症状届書の提出(施行規則一八条の二)の場合、申立人らはやはり届出は傷病補償年金移行を目的としたものだと判断し提出しなかつたのであるが、相手方はこれに対して、届書の提出命令を発したのである(現在、申立人らはこの点について行政不服審査を請求して争つている)。 2 次に、法第四七条の三の趣旨が右のようなものであることはその立法経過からして明らかである。 すなわち、昭和四〇年の法改正により労災保険給付に年金が導入されたのであるが、その時に第四七条の三の規定も設けられた。 そして、この時の第四七条の三の規定は、政府は保険給付を受ける権利を有する者が正当な理由がなくて、前二条の規定による命令にしたがわない時は、保険給付の支払いを一時差し止めることができるというものであつた。右規定の下においては行政庁が報告書等の提出命令や受診命令をおこなうこと、そして受給権者がそれにしたがわないことが一時差し止め処分をおこなうための要件であることは、その文理 きるというものであつた。右規定の下においては行政庁が報告書等の提出命令や受診命令をおこなうこと、そして受給権者がそれにしたがわないことが一時差し止め処分をおこなうための要件であることは、その文理上明らかであつた。 ところが、その後新設された年金の受給者が増え続ける中で、受給者の中には住所変更をする者もあり、せつかく年金を送つても手元に届かない等のトラブル(疎甲五二号証参照)が発生してきたため、そのような場合までも一時差し止め処分を行うには一律に提出命令をおこなわなければならないとするとその提出命令そのものが有効に送達されないため一時差し止め処分ができなくなるという不都合が生じてきたため、昭和四五年の法改正において報告書等の提出義務を規定した第二二条の二(現行第一二条の七)を新設し、それに伴つて前記のような例外的な場合には提出義務違反だけを理由として(すなわち提出命令をおこなうことなく)一時差し止め処分ができるよう第四七条の三を「前二条の規定による命令にしたがわない時」という文言に加えて「第二二条の二の規定による届出をせず若しくは書類その他の物件の提出をしない時」という文言を挿入し、現行のような内容に改正したのである。 改正の趣旨がこのようなものであることは、昭和四五年第二二条の二(現行第一二条の七)を新設する際の趣旨説明として「年金受給者が累増するに伴い受給権者の住所受給権の内容等の正確なは握が実際の年金支払いに関する事務処理の面で必要不可欠となつたので受給権者の現況報告の提出義務等の根拠規定を設けたものである」旨説明し、また第四七条の三の改正の際「受給権者の現況報告の提出等を正当な理由がなくて怠つた者については、厚生年金保険等の例にならい年金が正確に到達しないなどのことがあるので受給権者の現況が判明するまで年金の一時差し止めを の改正の際「受給権者の現況報告の提出等を正当な理由がなくて怠つた者については、厚生年金保険等の例にならい年金が正確に到達しないなどのことがあるので受給権者の現況が判明するまで年金の一時差し止めをおこなうことができることとしたものである」旨の趣旨説明から明らかである。昭和四五年の改正以後、条名の整理はあつたものの国会の審議を経て法の趣旨変更をおこなう旨の法的手続きはおこなわれていないのであるから、現在においても第四七条の三の趣旨が前述したものであることは疑問の余地がない。そして現にこれまで法四七条の三の差し止め処分は年金のみであり、休業補償に適用したことはないことを相手方自ら認めている(説明書四、1)。 3 なお、第四七条の三における一時差し止め処分の要件の規定の仕方が並列的であるため、相手方はその形式的な文理解釈から休業補償給付等の一時差し止め処分の場合も提出命令は不要であるとの解釈のもとに本件一時差し止め処分をおこなつてきていると思われるが、右解釈が誤つたものであることは前述した如き規定の趣旨およびその立法の経過からして明らかである。仮りに本条を右の如き形式的な文理解釈をするならば、本件の如き一時差し止め処分をおこなう際には事前に提出命令をおこなつてもよいし(法四七条)、またおこなわなくてもよい(法一二条の七)ということになつてしまうが、行政庁にこのような恣意的な選択を許容する解釈が誤つていることはすでにのべた適正な行政手続きの原則からして、明らかである。 三以上述べたことから明らかなように、本件の如き休業補償給付等の受給権者である申立人らに対して、一時差し止め処分をおこなうには「報告書の提出命令」が必要であるにもかかわらず、相手方はその提出についての督促-なお督促は行政処分ではなく不服申立をする方法がないので、法にいう提出命令と らに対して、一時差し止め処分をおこなうには「報告書の提出命令」が必要であるにもかかわらず、相手方はその提出についての督促-なお督促は行政処分ではなく不服申立をする方法がないので、法にいう提出命令とは異なるものであることは言うをまたない-をしただけで提出命令をおこなつていないのであるから、申立人らに対する本件一時差し止め処分は、法の規定する要件を欠いた違法なものである。 第三仮りに、法一二条の七が年金のみを対象としたものでないとしても、本件における休業補償給付等の支払い一時差し止め処分は法四七条の三の必要性を欠く処分であり違法である(申立書三、五三年一二月一四日付準備書面五の追加)。 一年金において差し止め処分がおこなわれる場合年金において、法一二条の七の規定による書類等を提出しないとして法四七条の三により差し止めることができるのは、「受給権者が定期報告若しくはその添付資料または随時報告若しくはその添付資料を提出しないことにより、受給権の存否、支給額、受給権者の住所等を把握することができず、過誤払いのおそれがあるとき」である(昭和五・一〇・三〇基発七八五号、甲八号証)。つまり年金の場合においても定期報告書あるいは随時報告書等が提出されなかつたら全て当然のように法四三条の七によつて差し止め処分を発せられるのではなく、過誤払いという実質弊害のおそれが生じてはじめて差し止め処分をしていたのである。これは定期報告あるいは随時報告等が提出されなくても過誤払いのおそれがない場合は、法四七条の三の差止めの必要性を欠くとして、差止めはおこなわれていなかつたことを示しているものである。これは既に述べたように、昭和四五年に法四七条の三の中に差し止めできる一場合として、法一二条の七(但し当時の法条は二二条の二)違反がつけ加えられた経過からみても当然のこ ことを示しているものである。これは既に述べたように、昭和四五年に法四七条の三の中に差し止めできる一場合として、法一二条の七(但し当時の法条は二二条の二)違反がつけ加えられた経過からみても当然のことである。むしろ過誤払いのおそれない場合は、定期報告など必要ないとして労働基準監督署長は通知を出すことができるようになつている(施行規則二一条)。 二休業補償の場合 1 ところで、休業補償の要件は、①労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり、②その療養のため、労働することができず、③賃金を受けていない、ことの三つであることは、相手方も認めているところである(五三年一二月一五日釈明書三、1)。したがつて、本件報告書の不提出が休業補償の過誤払いのおそれをきたすことはありえない。 2 また、休業補償の支払いは原則として月一回ごとの請求によつておこなわれており、年金とちがつて支給額や受給権者の住所等の把握ができず過誤払いのおそれをきたすことはありえない。ましてそのことと報告書の不提出とは何らかかわりあいはない。 3 さらに、報告書が提出されておれば本来傷病補償年金に移行し、その年金を支給すべきにもかかわらず、提出をしていないために誤つて休業補償を支給するようなおそれが仮りにあつたとしても(申立人としては三疾病については年金移行はないと主張し、また、症状把握は申立人らが既に出している社会復帰申出書等で明白であると主張しているのであるが)、この給付内容の過誤は内払い処理制度がある以上、これによつておこなわれるのであり(法一二条三項、甲四九号証、なお三回準備書面一、)本件一時差し止めによつておこなうべきものではない。けだし、申立人らにとつて生活のかてが奪われ、または療養面においても重大な影響をおよぼす、いわば健康権、生存権の侵害(申立人らが休業補償の一部を 、)本件一時差し止めによつておこなうべきものではない。けだし、申立人らにとつて生活のかてが奪われ、または療養面においても重大な影響をおよぼす、いわば健康権、生存権の侵害(申立人らが休業補償の一部を療養費用にもあてがつていることは各報告書にくわしい)という最大の不利益をもたらすのであるから、法が内払い処理制度を設けて保険給付の連続支給をすべく被災者の保護をはかつている以上、それにもかかわらず、差し止め制度を利用することは、内払処理制度の趣旨を没却するものだからである。 4 いずれにしても、休業補償の場合は、過誤払いのおそれはないし、内払い制度がある以上差し止め処分は必要がないにもかかわらずなされたものであり違法である。 第四頸肩腕障害などの病気の性質と申立人らの症状について一頸腕、むちうち、腰痛のいわゆる疲労性三疾病(以下三疾病という)はその症度から分類する発病期、増悪期、重症期の三つに分類され、当然その治療期間は右の症状の進行に正比例して長期化の傾向を示す。(疎甲四六号証、P医師報告書三頁、この報告書では頸肩腕障害が中心となつているが、むちうち、腰痛についても同様である)しかして、本症患者は当該患者のおかれている一つの企業の従業員という社会的背景の中で、その発見や治療の開始が遅れ、また治療を開始しても職場における業務軽減や休業治療が思うにまかせないという悪条件の下に健康破壊が進行し、その治療期間が遷延しているのである(同報告書三頁参照)。 しかし、三疾病は業務による神経、筋疲労を生ずる結果おこる機能的あるいは器質的障害であり、したがつて労働医学的にも臨床医学的にも当然治療によつてそれの回復は可能であり、また治療によつて職場復帰が可能であるとされているものである(同報告書五頁および七頁)。 二だが、三疾病の患者は現実には全快するま 働医学的にも臨床医学的にも当然治療によつてそれの回復は可能であり、また治療によつて職場復帰が可能であるとされているものである(同報告書五頁および七頁)。 二だが、三疾病の患者は現実には全快するまでには良くなつたり、悪くなつたりしながら長い期間を要している。それは何故なのか。 一つには右にも述べたように、健康破壊がかなり進行して始めて治療を開始するという患者がおかれている現実と、今一つは、企業が患者の健康回復に欠かすことができない訓練的就労を認めようとしない態度に終始してきたことに起因している。 申立人らは昭和五三年一二月一四日付準備書面第三、三において三疾病の患者が全快するためには医師による適切な治療という医学的要素と企業における訓練的就労等の社会的要因とが不可欠である旨を述べた。 患者の元の元気な体に戻りたいという基本的な願いとこれに応える医療機関の努力によつて、医療面における治療方法は一定の成果をあげるに至つている(同報告書四頁)。 そして、難治病とされていた三疾病は今や医師によつて「業務による神経・筋疲労を生ずる結果おこる機能的あるいは器質的障害であり、したがつて当然治療によりそれの回復は可能である」とされるに至つている(同報告書五頁)。 ところが、この治療過程において医学的にも、不可欠であるとされている企業における訓練的就労は労働行政におけるそのことを認めた五九三号通達にも拘らず、企業の受け入れ体制の不十分さとそれを是正させるための適切・強力な行政指導がなされない結果として十分な機能を発揮していない現状にある。 そればかりか、むしろ、企業は患者が健康を回復し、職場復帰を申し出ても、当該患者に完全就労を要求し、一切の訓練的就労を認めなかつたり、訓練的就労を認めても必ずしも患者が健康を十分なものにするための就労条件を確保し むしろ、企業は患者が健康を回復し、職場復帰を申し出ても、当該患者に完全就労を要求し、一切の訓練的就労を認めなかつたり、訓練的就労を認めても必ずしも患者が健康を十分なものにするための就労条件を確保しない(申立人らの各報告書および疎甲五一号証のGの報告書参照)など、およそ職業病を発生せしめたものにはあるまじき態度に終始しているのである。 かかる患者のおかれている現実が、回復期の本症患者に生理的にも心理的にも悪条件となつて、再発したり、再療養を余儀なくされているのである(疎甲四六号証、報告書四頁および六頁)。 三申立人らの症状の経過について申立人らは各々の報告書(疎甲二二ないし二九号証)でも明らかなように、いずれも少くとも療養開始後三年以上を経過した長期の治療期間を余儀なくされ、やつと職場復帰をして訓練的就労が可能となるまでに回復してきているが、あるいは企業からその就労を拒否され、あるいは訓練的就労をしていてもその受け入れ体制が不十分なために再休業、再治療においこまれたりしているのである。 しかして、申立人らの使用者である各企業の訓練的就労に関する拒否ないしは不十分な態度は、申立人らの昭和五三年一二月二二日付準備書面二の三「申立人らの訓練的就労に関する企業の態度」において主張したとおりである。かかる企業の態度が申立人らの健康回復に計り知れない弊害を与えているばかりか、かえつて症状を悪化させているというのが現状である。 ここでは申立人Aの事例を紹介するだけで十分であろう。 申立人Aは、昭和四三年初めごろから発病し、昭和五〇年三月から休業し、その治療に専念しなければならなかつた(疎甲第二三号証の一A報告書一頁)。そしてAは、使用者である日本生命に対し、昭和四六年六月より同五二年二月までの間、少くとも一四回にわたつて、リハビリのための適切 治療に専念しなければならなかつた(疎甲第二三号証の一A報告書一頁)。そしてAは、使用者である日本生命に対し、昭和四六年六月より同五二年二月までの間、少くとも一四回にわたつて、リハビリのための適切な訓練的就労を申し入れたにも拘らず、日本生命はすべてこれを拒否しているのである(同報告書二頁)。 日本生命の態度は、就労は「完治が前提」であり、したがつて、通常の勤務に就くことを主張し、訓練的就労は認めないというものである(同報告書二一頁から二三頁)。そのために、Aは昭和四八年のいわゆる五九三号通達が出されるという状況の中で、会社の良心的運用に期待をつないで、昭和五〇年六月就労したが、会社の五九三号通達無視の就労要求や職場におけるAを孤立化ないしは排斥するような雰囲気の下で再び症状を悪化し(同報告書二二頁から二三頁)、再休業・再治療をくり返えしているのである(同報告書二四頁から二五頁)。 このような職場実態および症状の変化について、相手方は一体どのように主張するのか。相手方が五九三号通達にもとづく企業への十分な指導もしないでおいて(同報告書二二頁、疎甲五一号証G報告書参照)、まさか、そのような職場実態にはないとか、症状が悪化し、再休業、再治療においこまれている事実はないなどと主張できないことだけは明白である。 また、現に本件申立後においても昭和五三年一二月初ごろより、かねてより訓練的就労をしていた申立人Dは、不十分な訓練的就労条件の下に療養のため休業を余儀なくされ、また、訓練的就労を拒否され続けている申立人Kは、三叉神経症の併発により右顔面のひきつけを起して再治療を余儀なくされているのである(疎甲五一号証Gの報告書参照)。これらの申立人らが「報告書」を提出すれば一体どうなるか、結論は一目瞭然である。 四以上みてきたように、申立人らの症状が けを起して再治療を余儀なくされているのである(疎甲五一号証Gの報告書参照)。これらの申立人らが「報告書」を提出すれば一体どうなるか、結論は一目瞭然である。 四以上みてきたように、申立人らの症状が回復にむかつているから、あとは悪化することなどありえないという保障はどこにもないのであり、相手方が現在「報告書」を提出しても一九二号通達参考Ⅱに徴して年金移行はありえないといくら主張しても、これは前述した三疾病の性質や企業の受け入れ体制を顧りみないまやかしの主張でしかないといわなければならない。申立人らが今後提出し続けなければならない「報告書」の提出のある時期に再療養、しかも、休業治療を要する症状にあつたとき、相手方はそれでも年金移行はありえない、したがつて解雇されることはありえないというのであろうか。このように申立人らが年金移行される蓋然性はきわめて高いといつても過言ではない。 第五訂正一昭和五三年一二月一四日付準備書面第二、一、(一)および(二)にある長期療養補償給付を長期傷病補償給付と訂正する。 二昭和五三年一二月二二日付準備書面第二、二、②にあるFは削除。 同第三、①のBは削除。 別紙(六)意見書意見の趣旨本件申立を却下する申立費用は申立人らの負担とするとの決定を求める。 意見の理由本件申立は以下その理由により不適法であるから速やかに却下されるべきである。 第一申立人らの本件申立にかかる一時差止処分はその性質上執行停止の対象となりえず、もしくは、本件申立は申立の利益を欠如するものである。 行政事件訴訟法二五条二項の規定は、行政処分の効力等を本案判決の確定までの間一時的に停止することによつて、当事者間の法的状態につき暫定的な安定を図るとともに不服申立人の権利の保全および損害の発生、拡大の防止を目的としたものであるから、行 分の効力等を本案判決の確定までの間一時的に停止することによつて、当事者間の法的状態につき暫定的な安定を図るとともに不服申立人の権利の保全および損害の発生、拡大の防止を目的としたものであるから、行政処分の効力等の停止の申立をなしうるのは、当該行政処分の効力等を停止することが申立人の権利の保全および損害の発生、拡大の防止に直接役立つ場合に限ると解すべきであり、一般に拒否処分は、その性質上執行停止の対象適格を欠くか、執行停止の申立利益を欠くと解されている(東京高裁決昭和二七・四・八行裁例集三巻三号六〇二頁、大阪地裁決昭和四四・一〇・二一行裁例集二〇巻一二号一五五三頁、東京地裁決昭和四五・一二・二四判例時報六一八号一九頁ー疎乙第一号証ないし三号証。Q、注釈行政事件訴訟法二二八頁)。 しかして、本件一時差止処分(以下「本件処分」という。)にかかる申立人らの休業補償給付及び休業特別支給金の各請求権は申立人らの労働者災害補償保険法施行規則(以下「労災則」という。)一三条及び労働者災害補償保険特別支給金支給規則(以下「労特則」という。)に基づく請求に対して被申立人らの支給決定がなされる(労災則一九条、労特則二〇条)ことによつて成立するものであるが、本件にあつては右支給決定がなされていない。このことは、申立人ら自身において、被申立人らの支給決定通知書を受けていないことからしても明白である。 それ故に、申立人らの本件申立が仮に容認されたとしても、それは、右一時差止処分の効力が停止されるにとどまり、これによつて申立人らに対し、右支給決定がなされたと同じ効力を生じることにはならず、申立人らの損害の発生、拡大を避けるためになんら役立つものでない(行訴法三二条二項は、執行停止の決定に準用されていない)。本件処分は、いわば一種の一時的暫定的な拒否処分というべきも ることにはならず、申立人らの損害の発生、拡大を避けるためになんら役立つものでない(行訴法三二条二項は、執行停止の決定に準用されていない)。本件処分は、いわば一種の一時的暫定的な拒否処分というべきものであり、本件申立は執行停止の対象適格を欠くか申立の利益を欠如するものといわねばならない。 第二本件申立ては、本案について理由がないことが明らかである。 一本件一時差止処分を行つた経緯 1 申立人らは頸肩腕障害の業務上疾病により労働者災害補償保険法(以下「労災法」という。)一四条の規定により休業補償給付を、労働者災害補償保険特別支給金規則二条の規定により休業特別支給金の支払いを受けてきた者である。 2 昭和五一年五月労災法の一部改正がなされ本件関係法は昭和五二年四月に施行されたものである。すなわち従前は療養開始後三年を経過してなお治療及び休業を必要とする長期療養者に対し政府が必要と認めたときは長期傷病補償給付が支給されていた(改正前法一二条の八第三項)が、改正法により療養開始後一年六箇月を経過した日において又は同日後、当該負傷又は疾病が治つていない者でその廃疾の程度が労働省令で定める廃疾等級に該当する者には、傷病補償年金が支給されることになつた(労災法一二条の八第一項六号、三項)。 そして、右改正に伴い労災則も改正され、傷病補償年金制度の適切な運用をはかるため、労災則一八条の二は業務上の事由により負傷し又は疾病にかかつた労働者が所定の要件を具備するとき所轄労働基準監督署長は、当該労働者について傷病補償金の支給の決定をしなければならないとし(一項)右署長は業務上の事由による傷病にかかつた労働者が療養開始後一年六箇月を経過した日において治つていないとき、又は右決定を行うため必要があると認めるときは、傷病の状態など所定の事項を記載した届書(以下「 長は業務上の事由による傷病にかかつた労働者が療養開始後一年六箇月を経過した日において治つていないとき、又は右決定を行うため必要があると認めるときは、傷病の状態など所定の事項を記載した届書(以下「届書」という。)又は右決定を行うため必要があると認めるときは、傷病の状態など所定の事項を記載した届書(以下「届書」という。)(疎乙第四号証)を提出させるものとする(二項)旨規定し、労災則一九条の二においては、療養開始後一年六箇月以上経過して、なお休業補償給付を請求している者について傷病補償年金の支給要件に該当するかどうかなどを中心とした判断を継続的に行い、適正な保険給付を行うために年一回これらの者の症状を適確には握できるよう傷病の状態等に関する報告書(以下「報告書」という。)(疎乙第五号証)を対象労働者より提出させることとしている。 3 ところで、申立人らは、いずれも当該業務上の負傷又は疾病にかかる療養開始後、昭和五三年一月一日において一年六箇月以上経過し、同年一月一日から同月末日までの間についての休業補償給付の請求をしている者であるから労災則一九条の二にもとづく報告書の提出義務があるにもかかわらず、いまだもつてこれを提出していない。 4 申立人らの右の不提出に対して被申立人らは、申立人らが「大阪労働者生命と健康を守る実行委員会」、「大阪頸腕罹病者の会」等頸肩腕患者の組織する団体に所属する関係から、申立人らを含む団体との間で行つた再三にわたる話し合いの過程においてはもちろん、各傷病者に対しても強く報告書の提出を、求めたほか一時差止処分を行う前には、その旨予告付きの督促状を送付して督促を行う等提出を求めて必要な措置を講じてきた。それらは以下のとおりである。 (一) 昭和五二年八月五日療養開始後一年六箇月以上経過した者で休業補償給付を継続している者 旨予告付きの督促状を送付して督促を行う等提出を求めて必要な措置を講じてきた。それらは以下のとおりである。 (一) 昭和五二年八月五日療養開始後一年六箇月以上経過した者で休業補償給付を継続している者一、六二五名に対し傷病補償年金制度の解説リーフレツト(疎乙第六号証)を送付した。 (二) 同月同日大阪府下労災保険指定診療七〇〇機関に対し傷病補償年金制度についての解説リーフレツト(疎乙第七号証)を発送した。 (三) 昭和五二年八月一一日及び同月一二日大阪府下労災指定診療機関に対し改正法の説明会を実施し、傷病補償年金制度の周知ならびに診断書記載要領等を説明した(疎乙第八号証の一及び二)。 (四) 昭和五三年二月一日頃療養開始後一年六箇月以上経過した者で昭和五三年一月分の休業補償給付等の請求が見込まれる者一、〇三九名に対し報告書及び診断書用紙を発送した(疎乙第九号証の一ないし一二)。 (五) 昭和五三年五月二五日報告書未提出者七〇名(申立人らを含む)に対し保険給付の一時差止処分がある旨の警告を付して報告書提出の督促状を発送した(疎乙第一〇号証の一ないし一一)。 被申立人らが以上のような具体的措置を講じ十分な配意を行つたにかかわらず、申立人らはあくまでも報告書の提出義務はないとの独自の見解を固執し、提出に応じなかつたものである。 5 そこで被申立人らは、やむなく労災法四七条の三にもとづき別紙処分一覧表のとおり申立人らに対し本件給付の一時差止処分を行つたものであるが、申立人ら(A、Bを除く。)は、この一時差止処分を不服とし昭和五三年一〇月一一日各処分庁の上級行政庁である大阪労働基準局長に対し、行政不服審査法にもとづく審査請求及び執行停止の申立を行つた(疎乙第一一号証の一ないし一二)が、右局長は当該処分の執行を停止しない旨昭和五三年一〇月一三日決定を行つ 政庁である大阪労働基準局長に対し、行政不服審査法にもとづく審査請求及び執行停止の申立を行つた(疎乙第一一号証の一ないし一二)が、右局長は当該処分の執行を停止しない旨昭和五三年一〇月一三日決定を行つた(疎乙第一二号証の一ないし六)ものである。なお、申立人A、Bは昭和五三年一一月二七日行政不服審査法にもとづく審査請求及び執行停止の申立てを行つた(疎乙第一三号証の一ないし四)が昭和五三年一一月三〇日前記同様当該処分の執行を停止しない旨の決定をなされている(疎乙第一四号証の一ないし二)。 二本件一時差止処分は適法である 1 労災保険制度は、その発足以来、被災労働者の負傷、廃疾等の程度に応じた適切な給付を行うべく給付内容の改善を図つており、この一環として五一年改正法において改正前法の長期傷病補償給付にかえて傷病補償年金制度が創設され、被災労働者の傷病の程度に応じた一層手厚い保護が図られることとなつた。 2 この傷病補償年金は療養開始後一年六箇月を経過した日又は同日後において、当該傷病が治ゆせず、かつ、廃疾の程度が一定要件に該当している者には、廃疾の程度に応じた年金を給付するものであり、(労災法一八条)従来の長期傷病補償給付の画一的給付内容(一律給付基礎年額の六割すなわち給付基礎日額の二一九日分)(疎乙第一五号証)をより合目的化して症状の程度(廃疾等級)に応じて給付基礎日額の三一三日分(第一級)、二七七日分(第二級)、二四五日分(第三級)が給付されること(疎乙第一六号証の一及び二)に改善されたものである。他方傷病が治ゆせずしかも廃疾の程度が前記要件に該当しない者には、従来どおりの給付が行われることとなる。このように廃疾の程度に応じた適切な給付を行うことによつて被災労働者を保護すると共に窮極的にはその社会復帰の促進を図つているものである。 3 とこ ない者には、従来どおりの給付が行われることとなる。このように廃疾の程度に応じた適切な給付を行うことによつて被災労働者を保護すると共に窮極的にはその社会復帰の促進を図つているものである。 3 ところで、労災法一二条の七は保険給付を受ける権利を有する者に対して労働省令で定めるところによる保険給付に関する必要な書類の提出等の義務を課している。この規定をうけて労災則一九条の二は前記一・3で述べたように当該業務上の負傷又は疾病にかかる療養開始後その年の一月一日において一年六箇月を経過して同年一月一日から一月末日までの間の日についての休業補償給付を請求する者について、傷病補償年金の支給要件に該当するか否か換言すれば休業補償給付を行うべきかどうかなどを中心にこれらの者の症状を適確には握するため、その休業補償給付請求に際して、当該対象者に対し報告書の提出を求めている。したがつて前記一・3で述べたように報告書の提出は、労災法一二条の七によつて申立人らに課せられた義務であることは明らかである。 4 この点について申立人らは申立人らの傷病である頸肩腕症候群、むち打ち症、腰痛(以下「三疾病」という。)については、傷病補償年金の対象とならず、したがつて報告書提出義務は課されていない旨主張し、その根拠として累々述べているが、以下に述べるように、いずれも申立人らの単なる独断にすぎず、その主張に理由のないことは明らかである。 (一) 申立人らの根拠とするところを要約すれば、「三疾病については適切な治療と訓練的就労の場が保障されれば、必ず職場復帰が可能であることが明らかにされている。したがつて三疾病については、長期の療養を必要とする場合でも、またある時期にはほとんど症状に変化のみられないときがあつても、あくまで職場復帰を求めて適切な治療と訓練的就労の場を保障すべきであ ている。したがつて三疾病については、長期の療養を必要とする場合でも、またある時期にはほとんど症状に変化のみられないときがあつても、あくまで職場復帰を求めて適切な治療と訓練的就労の場を保障すべきである。 しかるに、傷病補償年金の適用をうければ労働基準法一九条の解雇制限が解除され職場復帰ができなくなる。これでは「社会復帰の促進」にならず改正の趣旨である「手厚い保護」にはならない。 したがつて、三疾病については傷病補償年金の対象から除外され、労災則一九条の二の報告書を提出する義務はないと解すべきである。 このことは、改正に関する国会審議の過程でなされた付帯決議ないしは、その後の国会審議における大臣答弁から明らかである。」ということになろう。 (二) しかしながら(1) もちろん三疾病についても適切な治療方法の研究開発の努力は続けられなければならない。しかし、そのことと現実に適切な治療方法が発見、利用されているかどうかとは自ら別問題で、この点についての現在の医療水準は、申立人らがいう程度に達していない。そのことは申立人ら自身その大部分の者が療養を五、六年ないし一〇年継続していることからも明らかである。したがつて申立人らがいうような「必ず職場復帰が可能であることが、明らかにされている。」ということは、必ずしもいえない。 (2) また、解雇制限解除の点は、なんら理由となし得ない。なぜなら、まず、本件傷病補償年金と解雇制限解除の関係は、改正前法における長期傷病補償給付と解雇制限解除との関係となんら変らないのである(改正前法一二条の八第三項、一九条-疎乙第一七号証)から、本件傷病補償年金創設による新たな問題かのごとく主張すること自体失当である。 また、解雇制限解除という法的効果は、労災保険制度の適正な運用の結果生じうる可能性のあるひとつの反射的結 一七号証)から、本件傷病補償年金創設による新たな問題かのごとく主張すること自体失当である。 また、解雇制限解除という法的効果は、労災保険制度の適正な運用の結果生じうる可能性のあるひとつの反射的結果であるが、申立人らの言うように、このような結果が発生すること自体「社会復帰の促進」に反することになるなら、事は、三疾病傷病者以外の傷病者にもあてはまるから、労災法は全体として矛盾を来たすことになる。しかし、そのような理解は社会復帰促進方法に関する立法的選択ないし政策を非難する独自の見解というべきであり、しかも前述したように報告書の提出自体は解雇制限解除を目的とするものではなく、あくまで症状に適応したより適切な給付を実現すべく求められるものであるから、解雇制限解除の是非という別個の問題をもつて、報告書提出義務の存否に結びつけ得ないというべきである。 したがつて、かりに提出した報告書等に基づいて審査がなされ傷病補償年金給付の決定がなされたとしても、これに対し不服がある者は、法定救済制度(労働者災害補償保険審査官、労働保険審査会に対する不服審査請求、訴訟上の請求)によつて救済を求めることができるのであつて、右の決定を阻止するために報告書の提出を拒むことは、全く正当な理由になり得ず法制度を曲解するものといわざるを得ない。 (3) さらに申立人らは、三疾病については、基本的に年金になじまないことが、国会で認められたとして、衆参両議院における附帯決議ないしは、改正成立・公布後の衆議院社会労働委員会における労働大臣の発言を挙げているが、国会における附帯決議は改正法の施行にあたり三疾病等の症状の特異性を考慮に入れつつ、実情に即した運用を行うよう求めたものであり、三疾病の傷病認定については、他の疾病以上に慎重に行うべきであることをいつているのであつて、かえつ 法の施行にあたり三疾病等の症状の特異性を考慮に入れつつ、実情に即した運用を行うよう求めたものであり、三疾病の傷病認定については、他の疾病以上に慎重に行うべきであることをいつているのであつて、かえつて原則的には、三疾病も傷病補償年金の対象に含まれることを当然の前提にするものであることが明らかである。 なお労働大臣の発言は、前記したように本件改正法が成立・公布された後の国会でなされたもので、法運用における三疾病についての一般的認識を述べたものである。 (4) また、報告書は傷病補償年金の支給要件に該当するか否かのみを判断するための資料にとどまらず適正な給付を行うため、療養開始後一年六箇月以上経過して、なお、休業補償給付を請求している者の症状を適確には握するという重要な側面も有しており、しかも傷病補償年金に移行するか否か休業補償給付が引続き給付されることとなるか否かについては、報告書の提出があつてはじめて行政庁の適切な判断がなされる性質のものである。 (三) 以上に述べてきたこと及び傷病補償年金等に関する労災法・労災則の規定のどこにも、申立人らの主張する「三疾病は除く」旨の文言はなく、またそれをうかがわせるような文言すらないことからして、申立人らの主張する根拠は理由のないものであることが明らかである。申立人らに報告書提出義務が存在することは、疑問の余地がないといわなければならない。 5 申立人らが報告書を提出しないことについては、労災法四七条の三に定める「正当な理由」は全く存在しない。 申立人らは、報告書提出義務の不存在を主張したと同様の根拠から、右「正当な理由」が存在する旨主張する。 しかしながら同法四七条の三にいう「正当な理由」とは、そのような事情があれば誰しもが命令に従うことができず、義務を履行することができなかつたであろうと認め 右「正当な理由」が存在する旨主張する。 しかしながら同法四七条の三にいう「正当な理由」とは、そのような事情があれば誰しもが命令に従うことができず、義務を履行することができなかつたであろうと認められる場合をいい、当事者の単なる主観的事情はこれに含まれない(昭和四〇・七・三一基発第九〇六号ー疎乙第一八号証ー参照)と解すべきところ、前記4で明らかにしたように申立人らの正当理由の根拠とするところは、いずれも、独自の観点に立つた主観的判断にとどまるものであつてとうてい正当の理由となし難いことは明らかである。 6 被申立人らが、申立人らの労災法一二条の七の義務不履行に対して同法四七条の三の一時差止処分を選択し行つたことに何ら違法性はない。 すなわち、申立人らは本件においては一時差止処分を行う必要性及び補充性がなく、したがつて同法四七条の三の目的を逸脱している旨主張するが、その失当であることは、以下に述べるとおりである。 (一) 本件において一時差止処分を行う十分の必要性が存在した。 すなわち、同法一二条の七は「……保険給付に関し必要な……書類の提出」と規定し、何がこれに該当するかは、労働省令に委ねている。 他方これを受けて労災則一九条の二が保険給付のより適切な実現・確保というまさしく労災法の根本にかかわる行政運営に必要なものとして、報告書の提出を規定したものであり、このことは、これまで繰り返し明らかにしてきたところである。 しかして報告書が右のごとく適正な労災行政を行うために、極めて重要な資料である以上、その未提出・不存在は基本的に行政執行にとつて重大な支障となるものといわざるを得ない。 それにもかかわらず申立人らのように、保険給付の実施になんらの支障をも及ぼさないかのごとくいうのは、独自の観点に立つた暴論というべきである。 もつとも、被申立 支障となるものといわざるを得ない。 それにもかかわらず申立人らのように、保険給付の実施になんらの支障をも及ぼさないかのごとくいうのは、独自の観点に立つた暴論というべきである。 もつとも、被申立人らは、申立人らが報告書を提出しないにもかかわらず、直ちに一時差止処分を断行することはせず、一定期間(六箇月)は申立人らの請求にかかる休業補償給付等について給付決定し給付してきた。しかしながら、この措置は、決して行政執行において支障がなかつたことを意味するものでなく、被申立人らとして可能なかぎり申立人らの理解を求め説得をくりかえすという行政努力によつて提出を得ようとし、そのため一時差止処分を行うことを差し控えていたものである。 しかしながら、このような長期にわたる行政努力と、処分猶予の期間経過にもかかわらず、なお、申立人らは種々の理由に藉口して報告書の提出を拒み続けたので、被申立人らはついに一時差止処分という手段に訴えたものである。 (二) また、申立人らは基発第一九二号通達で報告書の提出のない場合の処理方法が明示されているから、まずその方法によるべきであつて、この点からも一時差止処分は、その必要性を欠如するかのように主張する。 しかし、右通達に示されている未報告の場合の調査等は、例えば、症状が重度で必要な手続ができず、また、他に代つて行うべき者も存しないといつた場合等、それなりに理由のある場合についていつているものと解すべきであつて、本件の申立人らのように、独自の法解釈のもとに労災則の趣旨を否定し、それ故報告書を提出しないといつた場合等は、到底本通達の予想し含みうるところではない。 仮に報告書の提出がなされない場合、そのすべてについて被申立人らが調査を行うべきものとすれば労災法一二条の七が受給権者に対して義務を課していること自体が全く無意 達の予想し含みうるところではない。 仮に報告書の提出がなされない場合、そのすべてについて被申立人らが調査を行うべきものとすれば労災法一二条の七が受給権者に対して義務を課していること自体が全く無意味となり、また同条をも受けて立法されている同法四七条の三の存在意義も没却されることになるが、このような結果を招来する申立人らの主張の失当なことは、明白である。 さらにそもそも、事業主の負担による限られた原資から労災法の目的にかなつた適切な給付を実現・確保するにあたつて、保険給付受給権者に課せられた本件の一年一回報告書提出義務は受給権者の最小限度のいわば権利が当然に前提とする協力内容を法的義務としたものであつて、決して過重な義務ではない。 この点は労災法と同様に保険給付を行う他の社会法においても同一の規定がおかれており、例えば国家公務員災害補償法二六条の義務規定とその履行担保のための一時差止処分規定、厚生年金保険法九八条三項と七八条、国民年金法一〇五条三項と七三条等がそれであるが、このことからしても、右に述べたことが、看取されよう。 したがつて、申立人らのような義務不履行の場合、法はまずもつて被申立人らが独自に調査すべきことを、少なくとも本件一時差止処分を違法ならしめる意味において要求しているものとは到底解されないのである。 以上述べたことから明らかなように、本件一時差止処分は、その必要性にもとづいて行われたものである。 三結論以上詳述してきたように、申立人らは、前記一・3で述べたように昭和五三年一月一日においていづれも当該業務上の傷病にかかる療養開始後一年六箇月以上経過し、かつ同年一月一日から同月末日までの間の当該業務上傷病のため労働することができず賃金を受けられなかつた日についての休業補償給付を請求しているものであるから、本件報告 療養開始後一年六箇月以上経過し、かつ同年一月一日から同月末日までの間の当該業務上傷病のため労働することができず賃金を受けられなかつた日についての休業補償給付を請求しているものであるから、本件報告書を提出すべき義務があるにもかかわらず、現在に至るも提出していないのであつて、労災法一二条の七の義務不履行であることは明らかなところであるところ、右義務不履行につき何ら正当な理由が存在しないので、同条の実効性を担保すべく規定されている同法四七条の三に基づき行つた被申立人らの本件処分が適法であることは疑問の余地がないというべく、したがつて、申立人らの本案につき理由がないことは明白であるといわねばならないのである。 第三本件一時差止処分の効力を停止することは、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある。 一時差止処分は、過去の違法行為に対する制裁的処分ではない。この処分は、労災法一二条の七の義務履行の促進を図るものであり、したがつて、本件の場合においても、報告書が提出され、差止理由がなくなれば直ちに差止処分を解除し直ちに休業補償給付請求等について審査し、その支給要件充足の有無を判断のうえ支給決定を行つて給付すべき保険給付等を支給することとなるのである。 ところで、右のような内容を有する本件処分は申立人らの義務不履行に対して保険給付の適正な支払を確保し、法の適正・円滑な運営を確保するため、行政上とりうる唯一の法的対抗手段であるところ、その処分の効力が停止されることになれば、申立人らのように独自の主張のもとに、正当な理由もなく報告書の提出を拒絶する者を助長することとなる。 すなわち、申立人らはもちろんのこと、これらを含む少なくとも三疾病による長期療養中の被災労働者約八〇〇名(大阪局管内)の者の明五四年一月中の定期報告時から報告書提出義務不履行を助 することとなる。 すなわち、申立人らはもちろんのこと、これらを含む少なくとも三疾病による長期療養中の被災労働者約八〇〇名(大阪局管内)の者の明五四年一月中の定期報告時から報告書提出義務不履行を助長することになり、またその他の届書や報告書、例えば労災給付の原資である保険料について、その負担者である事業主に自主的に額を申告のうえ納付させる目的で、労働保険徴収法が事業主に課している労働保険料報告書の提出義務についても、そのおそれが発生することとなる。 かくては、労災法のみならずその関係法の執行運営にまで著しい支障を生ぜしめることが明らかであるから、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるといわねばならないのである。 以上のとおりであるから、本件申立はすみやかに却下されるべきである。 (別紙) 一時差止処分一覧表<19705-005><19705-006>別紙(七)釈明書一求釈明第一項について 1 休業補償給付等の支給に関する手続は次のとおりである。 一定様式の請求書・申請書(疎乙第二〇号証)による請求(労災則一三条、五四条の規定による労働者災害補償保険法の施行に関する事務に使用する文書の様式を定める告示・様式第八号)に基づき書面上の審査及び必要がある場合は調査を行い、その結果、支給すべきものについては、様式上部の決議欄に支給すべき金額を記載して、行政官庁の長であり同時に資金前渡官吏である労働基準監督署長が決裁することにより、支給決定決議が、また、同時に会計法上の支払決議が行われ、支給すべきでないものについては、その旨の決議が行われ請求に関する決定が、内部的に成立する。 右決定は一定様式の書面(疎乙第二一号証一ないし三)により請求人あて通知され(労災則一九条)、これにより外部的に成立し効力を生じる。 2 また、右請求はあくまで各 関する決定が、内部的に成立する。 右決定は一定様式の書面(疎乙第二一号証一ないし三)により請求人あて通知され(労災則一九条)、これにより外部的に成立し効力を生じる。 2 また、右請求はあくまで各請求者の過去の「休業により賃金をうけられなかつた」ことに対する「補償」の請求であり、これに対する支給決定も当然各請求にかかる過去の休業・療養の期間等所定要件事実をそれぞれ認定・判断して行うものであつて、その性質上、将来の給付等に関することをその内容とするものではあり得ない(労災則一三条、一九条の二、告示様式第八号等)。したがつて、右決定はその点で年金におけるように基本権を発生させる支給決定とは根本的に異なる。 3 労災法一二条の七に規定する届出・書類・その他の物件等(労災則一九条の二、二二条等)の内容及び労災法四七条、四七条の二に規定する命令の内容は、適正な給付に関する決定すなわち当該請求にかかる支給・不支給の決定(認定判断)に重要な資料であるから、このような資料が得られないということは、右の支給・不支給のいずれにしても適正な決定ができないことを意味する。 そこで権限者において裁量判断の結果、資料なしで給付に関する決定をすることは妥当でないとの結論に達したときは、労災法四七条の三の一時差止処分を行うこととなるのである。 すなわち、本項冒頭に挙げた法令に基づく届出・書類の内容及び命令の内容はいずれも支給・不支給の決定或いは、支給決定の内容それ自体にかかわるもので「支払」という窓口的問題以前の問題にかかわるものであるところ、労災法四七条の三は、これらの有する労災給付の支給に関する適正な決定に重要な資料であるという性格をふまえて、不適正な給付決定をさけるべく、権限者に裁量権を付与すると同時に、適正給付の決定を可能ならしめるべくその提出等の促進を図つ する労災給付の支給に関する適正な決定に重要な資料であるという性格をふまえて、不適正な給付決定をさけるべく、権限者に裁量権を付与すると同時に、適正給付の決定を可能ならしめるべくその提出等の促進を図つて、その不提出等の義務不履行の場合には「支払の一時差止処分」をなしうるとしたものである。 したがつて、これらの場合において、年金におけると同じように、まず、決定をなすべきことが常に要求され、差止された「支払」は単なる窓口的支払の意味にすぎないと解することは、法の根本趣旨に反するといわねばならないのである。 そこで、右のような制度趣旨を具体化する各法条の相互関係から労災法四七条の三の「支払の一時差止」という文言は、年金における支分権に基づく支払のような窓口的支払の意義のみならず、本件のように支給決定がなされないことから、当然具体的な支払がなされないといつた場合をも含むものと解さねばならないのである。 被申立人らは、このような理解のもとに本件支払の一時差止処分を行い、申立人らにはその旨の通知のみ行い、支給決定の通知はこれを行わなかつたものである。 二同第二項について 1 同項前段について昭和五三年二月一日時点における報告書提出義務者は一、〇三二名である。 2 同項後段について報告書提出の督促状を発送した未提出者七〇名のうち一時差止処分を受けたものは一七名(内一名は、報告書を提出したため差止処分解除)である。 その他の者が右処分を受けていない理由及びその数は次のとおりである。 報告書の提出を得ようとして督促状を発送し、或は説得を繰り返すなどの行政努力をなし、そのため一時差止処分を猶予している間に報告書を提出してきた者が三二名であり、七月一日以後の休業補償給付等の請求自体がなされない者が七名である。また、提出の意志があり、かつ、医療機関の診 力をなし、そのため一時差止処分を猶予している間に報告書を提出してきた者が三二名であり、七月一日以後の休業補償給付等の請求自体がなされない者が七名である。また、提出の意志があり、かつ、医療機関の診断書の依頼が行われているが医療機関の十分な理解が得られず報告書に添付すべき診断書の受領に手間どつて提出が遅延している事情が認められたため処分を差し控えた者が一四名である。 三同第三項について 1 休業補償給付等に固有の要件としては(1) 労働者が業務上負傷し又は疾病にかかり(2) その療養のため、労働することができず(3) 賃金を受けていないことがその内容となつている(労災法一四条)。 なお、傷病補償年金を受ける者には、休業補償給付は行わないこととされている(労災法一八条第二項)。 すなわち、前記の要件を満たしていても、その者が療養開始後一年六箇月を経過し、当該負傷又は疾病が治つておらず、かつ、当該負傷又は疾病による廃疾の程度が労働省令で定める廃疾等級に該当する場合は、傷病補償年金を支給されることとなり(労災法一二条の八第三項)休業補償給付は支給されない。 2 報告書等の提出については、これまで繰り返し明らかにしてきたように、その存否が保険給付の支給に関する適正な決定(認定・判断)に重要な影響を及ぼすものであるから、未提出の場合には、右支給に関する決定がなされない場合もありうる(労災法一二条の七、四七条の三)。したがつて、この意味においていずれの給付が求められているにしろ、給付の実現にとつて根本的障碍事由となりうるものである。 四同第四項について 1 同項前段について休業補償給付について、労災法四七条の三に基づく一時差止処分を行つた事例はない。 ただし、労災則二二条の届出が提出されない場合及び労災法四七条、四七条の二の命令に従わな て 1 同項前段について休業補償給付について、労災法四七条の三に基づく一時差止処分を行つた事例はない。 ただし、労災則二二条の届出が提出されない場合及び労災法四七条、四七条の二の命令に従わない場合が多くみられるが、このような場合でも、行政庁による指導の結果短期間内にその提出がなされ、命令に応じるため、本件のように差止処分に至つた事例はないのである。 2 同項後段について労災年金については、基本権である年金額が裁定され、各四半期ごとに年金が受給権者に支払われているが、基本権である年金額は受給権者の数の増減(遺族補償年金)、身体障害の程度の増悪、軽減等所定事由の発生により変動を生ずるので、このような事由を行政庁は十分は握して適正な保険給付を行う必要があるところから、受給権者には毎年一回定期報告の義務を課している(労災法一二条の七、労災則二一条)。(なお、各種の変更に関する届出(労災則二一条の二、二一条の三)も要請されている。)この定期報告書の提出については、通常の場合、提出督促を行うとそのほとんどが提出期限後一箇月程度までに提出されるが、受給権者の中には、住所不明等で督促状も返送され、事業場等に照会しても所在が判明しない者があり、このような者に対しては労災法四七条の三に基づく一時差止処分を実施している。そして、その数は昭和五三年一〇月現在において遺族・障害・傷病の各年金を併せ三七名である(大阪局管内)。 なお、労働省所管にかかる他の法制度には、労災法四七条の三のような一時差止処分にかかる規定はない。 別紙(八)意見書(補足)一申立人らは、「・・・・最初の業務上外の認定については、非常に慎重な検討がなされて給付の支給決定がなされるのであるが、その後の休業補償等の支給決定は、請求者に症状固定あるいは治ゆ等の事情変更がない限 申立人らは、「・・・・最初の業務上外の認定については、非常に慎重な検討がなされて給付の支給決定がなされるのであるが、その後の休業補償等の支給決定は、請求者に症状固定あるいは治ゆ等の事情変更がない限り、請求者の請求に対しては、形式的な(書面的な)審査だけで給付の支給がなされており、実質的には一度なされた業務上認定に基づく継続的支払という実態にある。」と主張し、以上の実態をふまえつつも、労働者災害補償保険法四七条の三の文言、及び本件処分の通知の書面内容から、申立人らには、すでに具体的請求権が存在する旨主張している。 しかし、この点については、既に釈明書で述べたことから明らかなところであるが、以下に補足主張するように、申立人らの右主張は失当である。 二1 本件休業補償給付等は、その性質上、継続的な支払を予定されているものではない。 (一) 休業補償給付等の請求は、あくまで各請求者が、その請求行為前の過去の日において、療養のため休業し労働することができないためにその賃金を受けなかつた場合に、その補償を請求することを意味するものであり、この補償請求に対する決定も、これに対応して、申立人ら請求者が請求書に記載した期間(一般に過去一箇月間単位の請求が多い)における要件の存否についての認定判断に基づいてなされるものであり、支給される場合は、一括して支払われるのである。 (二) 右のとおり、請求とこれに対する決定は、個別請求毎の個別決定としてなされるものであつて、決して年金における基本権と支分権のような関係を発生させるものではない。 すなわち、その個別請求が、一の請求者について初回のものであろうと数回目のものであろうと、これに対する審査・決定において何の変更もなく行われるものである。つまり、申立人らの頸肩腕障害については、その疾病が業務上であるかどう 一の請求者について初回のものであろうと数回目のものであろうと、これに対する審査・決定において何の変更もなく行われるものである。つまり、申立人らの頸肩腕障害については、その疾病が業務上であるかどうかに関し、当初の調査に際しては慎重を期する必要から、決定に至るまでの日数がかかることがあるにとどまり、第二回目以降の請求についても、その都度その要件存否に関する審査を実質的に行い(請求期間についての事業主の証明の有無とその内容の適否、主治医の証明にかかる傷病名と業務上とした傷病名との関連の有無及びその適否、請求期間にかかる療養の有無及び診療実日数の適否等)、請求期間にかかる負傷・疾病の業務上外、その療養のために必要な休業であるかどうか等を判断し決定を行つている。したがつて、第二回目以降の請求については、治ゆ・症状固定等の事情変更がない限り、形式的審査だけで決定を行うという性質のものでは決してなく、本件休業補償給付等が、申立人らが強調するごとき年金給付の支分権と同様の継続的支払であるということは、法制度上も実際上もあり得ないのである。 申立人らがいう「継続的支払」というのも、単に、結果から見た現象にすぎず、その実体は、前記した個別の請求とこれに対する個別の決定の結果的集積にほかならない。 2 本件一時差止処分の法的性格(一) 意見書及び釈明書において明らかにしたように、本件における申立人らの休業補償給付等の請求に対しては、被申立人らの支給決定は未だなされておらず、したがつて、申立人らの国に対する具体的な金銭支払請求権は発生していない。 しかし、労災法四七条の三は、このような場合、つまり、本件報告書等は、具体的な保険給付の請求がなされた場合、これに対していかなる決定を行うか、すなわち傷病補償年金給付、休業補償給付等、若しくは治ゆ・症状固定等によ 四七条の三は、このような場合、つまり、本件報告書等は、具体的な保険給付の請求がなされた場合、これに対していかなる決定を行うか、すなわち傷病補償年金給付、休業補償給付等、若しくは治ゆ・症状固定等による障害補償年金或いは障害補償一時金給付ないしは不支給のいずれの決定を行うか、について重要な資料であるにもかかわらず、その提出がなされない結果、当該請求に対して法の趣旨にしたがつた適正な保険給付に関する決定ができず、その結果、給付すべき決定を前提とする具体的金員の支払も当然なされ得ないという場合をも含むものないし予定しているものと解さねばならない。 (二) その理由は次のとおりである。 (1) 釈明書一ー3において明らかにしたように、関係法条を相関的有機的にみれば、被災労働者の公正な保護(法一条)、したがつて適正な保険給付の実現・確保、を図るという制度の根本趣旨にとつて、保険給付に関する決定は、具体的にして重要な機能をもたされていることは明らかなところであり、この決定の可否、適不適は、その用いる判断資料が存在するか否かまたそれが十分か否かによつて決定的に影響を受けることもまた明らかなところである。 そうだとすれば、そのような判断資料がなくあるいは不足しているにもかかわらず、常に給付に関する決定をなすことを法は求めているとみることはできず、右決定以前にまずそれに必要な資料を確保し、あるいは補うための措置を講じ、これを得たのち給付に関する適切な決定を行うべきことを求め、その間は右決定を差し控えることを、法としてはむしろ予定しているものと解さねばならない。 しかして、法四七条の三は、同一二条の七(本件については労災則一九条の二で具体化)、同四七条、同四七条の二を受けているが、右三つの法条における文言(「・・・保険給付に関し必要な・・・」、「・・・この しかして、法四七条の三は、同一二条の七(本件については労災則一九条の二で具体化)、同四七条、同四七条の二を受けているが、右三つの法条における文言(「・・・保険給付に関し必要な・・・」、「・・・この法律の施行に関し必要な・・・」、「・・・保険給付に関し必要がある・・・」)及びその求める診断書等の資料の支給・不支給決定ないし支給決定の場合の内容の確定における重要性からみて、これらの法条は、少くとも保険給付に関する決定がなされていない者をも対象としているものと解される。 (2) 法四七条の三の「保険給付を受ける権利を有する者」の意義は、具体的支払請求権を有する者に限定して解すべきでなく、広く保険給付を受ける地位を有する者、換言すれば支給決定を受ける前の抽象的な保険給付受給資格を有する者一般を意味すると解される。 すなわち、例えば法一二条の八は「保険給付は・・・・災害補償の事由が生じ・・・補償を受けるべき労働者・・・の請求に基づいて行う。」と規定しているが、右の「補償を受けるべき」者とは、補償を受けることができる者すなわち、保険給付を受ける地位ないし資格を有する者を意味していると解され、また同一一条の一項と二項を見れば、未だ請求行為をしていない者を「保険給付を受ける権利を有する者」と表現している。 更に、同四二条では、諸種の保険給付(同一八条の二、二一条)を受ける権利の時効消滅について規定しているが、具体的な金銭支払請求権であれば、国に対する金銭債権であるから、会計法三〇条一項後段により消滅時効期間は、五年とされねばならず、しかも右法四二条がその特則を定めたものと解せるだけの特段の理由はない。したがつて、同条は抽象的な「保険給付を受ける権利」換言すればその具体的表われである保険給付に関する審査決定請求権の消滅時効期間について定めたものと解 則を定めたものと解せるだけの特段の理由はない。したがつて、同条は抽象的な「保険給付を受ける権利」換言すればその具体的表われである保険給付に関する審査決定請求権の消滅時効期間について定めたものと解さねばならない。 (3) 法四七条の三の立法趣旨説明及び、その後の運用からも、支給決定未済したがつて具体的支払請求権の発生していない者をもその対象としていることが明らかである。 すなわち、本条は「保険給付の支給の適正を確保するため、保険給付を行うについて必要な報告等をしない受給権者」に対する保険給付の支払の一時差し止めを行うべきことをその趣旨として(疎乙第二二号証)国会に上程され、昭和四〇年に制定されたものである。 そして、同年発せられた昭和四〇年七月三一日基発第九〇一号通達(新法第四七条の三関係・・・・保険給付に関する事務の円滑化をはかるため、保険給付の受給権者その他の者が、正当な理由なく、新法四七条及び四七条の二の規定に基づいてなされる都道府県労働基準局長又は労働基準監督署長の保険給付の支給について必要な文書等の提出、医師の診断を受けるべきこと等の命令に従わない場合には、保険給付の支払を一時差止める・・・。)(疎乙第二三号証)及び同日付基発第九〇六号通達(2・イ・・・差止めの対象となる保険給付・当該労働者の請求に係る保険給付で、命令時において支給決定未済のもののうち、当該命令に従わないことによつて支給決定に支障をきたすと認められるすべての保険給付)(疎乙第一八号証)の理解のもとに運用してきたものである。 (三) 以上述べたことから明らかなように、法四七条の三は、本件におけるような保険給付に関する決定がなされず、その当然の結果として具体的な支払もなされ得ないといつた場合をも予定した規定と解すべく、「支払」という文言にこだわり、これを狭く限 法四七条の三は、本件におけるような保険給付に関する決定がなされず、その当然の結果として具体的な支払もなされ得ないといつた場合をも予定した規定と解すべく、「支払」という文言にこだわり、これを狭く限定して解釈することは正当でない。 被申立人らが申立人らになした本件通知の書面に、申立人ら指摘の文言(報告書の提出があるまでの間、昭和五三年月日から昭和五三年月日までの分に係る休業補償給付等の支払を一時差止める旨の文言)が用いられているのは、右の当然の結果として生じるところを表現したものであるから、申立人らのいう具体的権利が存在することの根拠ないし理由とはならない。 (四) 以上の結果、本件「支払の一時差止処分」は、意見書第一に述べたごとく、一種の一時的暫定的拒否処分というべきであるが、その実質的意味は、当該請求人がその義務を履行するまで保険給付に関する審査・決定の手続を続行しないこととすることにある。 三以上詳述したことから明らかなように、申立人らには、本件申立てにつき申立ての利益がないというべきであるから、本申立てはすみやかに却下されるべきである。 なお、申立人らは、被申立人ら引用の判例における事案と異なる旨主張し、その根拠として申立人らは、右事案における申立人と異つて、申立時において具体的権利を有していると主張する。 しかしながら、申立人らの申立時における権利が具体的給付との関係では、抽象的な地位ないし資格にとどまるものであり、保険給付に関する審査決定請求権としてしか表現されないことは、前述したところから明らかであり((二)ー(2))、他方、例えば、生活保護申請に関する生活保護法二条、七条、二四条をみれば、保護をうける抽象的地位ないし資格を有し、その審査決定請求権たる申請権を有しているものであることが看取されるのであつて、申立 、他方、例えば、生活保護申請に関する生活保護法二条、七条、二四条をみれば、保護をうける抽象的地位ないし資格を有し、その審査決定請求権たる申請権を有しているものであることが看取されるのであつて、申立人らと同程度の権利ないし地位を有しているものというべきである。したがつて、申立人らの右主張は正当でないことに帰着する。 申立人らの昭和五三年一二月一九日付求釈明に対する釈明一求釈明第一項前段について次のとおりである。 1 昭和五三年七月一日時点において報告書用紙を送付するという形でその提出を要請した事実はない(右時点以前に口頭等で直接間接その提出要請を行つている)。 なお、昭和五三年二月一日頃一、〇三九名に対し報告書用紙を送付するなどしてその提出を要請していることは、意見書で明らかにしたとおりである。 2 昭和五三年七月一日時点における報告書提出義務者であつて、しかも報告書を提出していない者の数を現時点からみて確定するならば八四名であるが、右提出義務者のうち、前記二月一日頃、報告書用紙を送付するという形でその提出を要請している者は四五名であり、その頃、右方法による報告書の提出を要請していなかつた者は三九名である。 3 右三九名について、報告書用紙を送付するという形でその提出の要請をしなかつた理由は、次のとおりである。 すなわち、被申立人らは、報告書の提出の促進を図つて、種々の具体的措置を講じ、十分な配意を行つたところ、右の者のうち大部分の者は報告書は提出するが提出については、関係医療機関に対して、当局から法改正にともなう報告書(診断書を含む)提出の趣旨ならびに診断書の記載要領について理解を得て欲しい等の要請を行い、当局はこの申出に対し、そのような手段を講ずることにより報告書の提出が円滑に行われると判断したため、当面報告書の要請を差し控えたも 趣旨ならびに診断書の記載要領について理解を得て欲しい等の要請を行い、当局はこの申出に対し、そのような手段を講ずることにより報告書の提出が円滑に行われると判断したため、当面報告書の要請を差し控えたものである。 その他その時点における事務手続上の誤により要請が遅れたものも若干数あつた。 なお、申立人らの場合はあくまでも、報告書の提出義務はない、との独自の見解を固執し、その見解に基づく取扱いを規則・通達で保証されない限り提出に応じられないという主張、(すなわちそれは、法律が改正されない限りその提出は全く見込まれないことを意味するものである。)を繰り返すのみであつた。 4 その後右三九名に対しても、すでに報告書用紙を送付するという形での提出の要請をも実施している。 その結果、大半の者が報告書を提出しており、提出未済の者のうちでも、医療機関に対し本人からの診断書の依頼は行われており、医療機関における作成事務処理が遅れているため、提出が遅延している事情が認められる者が大部分である。 二求釈明第一項後段については次のとおりである。 報告書の提出のあつた者については、現在までに労災法一二条の八第三項(傷病補償年金)に該当する者は無く、他方休業補償給付の支給要件を充足していると認められた都度決定のうえ、支払を行つている。また、現在までに報告書の提出がない者については、上述の医療機関との実情を考慮し、裁量判断の結果、差止処分を差し控えて、右同様の措置をとつている。 なお、その他の者で事務手続上の誤りにより、報告書用紙を送付してその提出要請を行わなかつた者についても、すでにその提出要請を行つているが、提出状況に応じ、提出督励のための督促状発送等を行う予定としており、現時点では右同様の措置を行つている。 いても、すでにその提出要請を行つているが、提出状況に応じ、提出督励のための督促状発送等を行う予定としており、現時点では右同様の措置を行つている。

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