判決平成13年12月17日神戸地方裁判所平成13年(わ)第435号法人税法違反,所得税法違反被告事件 主文 被告人有限会社Aを罰金2700万円に,被告人Bを懲役1年6月に,被告人Cを懲役1年に,それぞれ処する。 被告人B及び被告人Cに対し,この裁判確定の日から4年間それぞれその刑の執行を猶予する。 訴訟費用(国選弁護人古殿宣敬に関する分)は被告人Cの負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人有限会社A(以下「被告会社」という。)は,神戸市D区E町a丁目b番c‐d号に本店を置き,風俗店の経営等を業とする有限会社であって,同市内において風俗店を経営し,居住者に対し給与・報酬等の支払いをする源泉徴収義務者であり,被告人Bは,被告会社の代表取締役として同社の業務全般を統括していたもの,被告人Cは,被告会社の監査役として同社の経理事務全般を統括していたものであるが,被告人B及び被告人Cは,被告会社の業務に関し,共謀の上,第1 不正の行為により法人税を免れようと企て,売上の一部を除外するなどの行為により,その所得の一部を秘匿した上,平成10年5月1日から平成11年4月30日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が9861万9579円であったにもかかわらず,平成11年6月28日,同区Fe丁目f番g号所在の所轄神戸税務署において,同税務署長に対し,同事業年度の所得金額が645万9601円で,これに対する法人税額が161万3300円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し,そのまま納期限を徒過し,もって,不正の行為により,同事業年度の正規の法人税額3326万2100円と前記申告法人税額との差額3164万8800円を免れた ある旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し,そのまま納期限を徒過し,もって,不正の行為により,同事業年度の正規の法人税額3326万2100円と前記申告法人税額との差額3164万8800円を免れた第2 被告会社の従業員,ホステス等の給与・報酬等からの源泉徴収に係る所得税の納付を免れようと企て,居住者である同社の従業員等に対する給与等やホステスに対する報酬等の支払いの際,これらについて所得税を徴収し,各徴収の日の属する月の翌月10日までに,これを国に納付しなければならないのに,別紙記載のとおり,平成10年7月から平成12年7月までの間,同社の従業員等に対して毎月支払った給与等やホステスに対して毎月支払った報酬等の額が合計12億8406万4326円で,これらについて源泉徴収して国に納付すべき所得税額が合計7544万8509円であったにもかかわらず,合計754万9800円しか納付せず,もって,前記徴収して納付すべき所得税額と前記納付した所得税額との差額合計6789万8709円を国に納付しなかったものである。 (証拠の標目)(省略)(争点に対する判断)被告人Bの弁護人は,判示第2の事実について,被告人Bは,被告人Cに被告人有限会社A(以下「被告会社」という。)の経理事務を全面的に任せており,ホステスの報酬等については正しく源泉徴収して所得税が納付されているものと思っていたものであって,被告人Bが被告人Cと源泉徴収所得税の不納付の点について共謀したことはないから,被告人Bは所得税法違反の事実については無罪である旨主張する。 しかしながら,被告人Cの公判供述を含む関係各証拠によれば,被告人Bは,平成7年6月ころ,被告人Cに対し,売上を3割程度除外するように指示し,それを被告人B名義の裏の預金口座にプールさせていたこと,被告人Cは,平成 告人Cの公判供述を含む関係各証拠によれば,被告人Bは,平成7年6月ころ,被告人Cに対し,売上を3割程度除外するように指示し,それを被告人B名義の裏の預金口座にプールさせていたこと,被告人Cは,平成8年4月ころ,被告人Bに対し,売上を除外するならホステスに対する報酬等も一部除外して裏の預金口座から支払うようにしないと比率のバランスが取れない旨進言し,被告人Bにおいてもその意味を理解して了解したこと,そのようにして,ホステスに対する報酬等の一部が公表分から除外され,被告人B名義の裏の預金口座から出金して支払われていたこと,被告人Bには,被告会社がホステスに対する報酬等について所得税を源泉徴収し,それを国に納付すべき義務を負っていることは分かっていたことなどの事実が認められるのであって,被告人Bには,被告人Cにおいて,被告会社がわざわざ公表分から除外して裏の預金口座から出金して支払ったホステスに対する報酬等について,所得税を源泉徴収して国に納付するはずのないことがもちろん分かっていたはずであり,被告人Bがその検察官調書(乙11)等においてその認識があった旨いうところは十分信用に値するから,判示第2の所得税法違反の事実についても,被告人Bが被告人Cと共謀の上犯したものであることは間違いがないと認められる。 被告人Bの公判供述は,被告人Cに対し,売上を3割程度除外するように指示したが,自分の意識としては,2,3パーセントのつもりであったとか,被告人Cから,ホステスに対する報酬等を裏の預金口座から出金して支払っていることを聞いて,裏の預金口座が裏の預金口座でなくなったと思ったなどと弁解して,所得税法違反の事実についての犯意や共謀を否認しているが,被告人Bもまた裏の預金口座の通帳を見たことのあることを自認しているところ,そこに入金されている金額 金口座でなくなったと思ったなどと弁解して,所得税法違反の事実についての犯意や共謀を否認しているが,被告人Bもまた裏の預金口座の通帳を見たことのあることを自認しているところ,そこに入金されている金額が売上の2,3パーセントに止まらないことはすぐに分かるところであり,また,2,3パーセントの売上除外ならわざわざホステスに対する報酬等の一部を除外する必要はないし,その報酬等を裏の預金口座から出金して支払ったからといって,その預金口座が裏の預金口座でなくなったと思ったというのも理由のないところであるから,被告人Bの前記弁解はとうてい信用できず,これをもって前記認定に合理的な疑いを容れるには至らない。 弁護人の前記主張は採用できない。 (法令の適用)以下において,法人税法159条1項は,刑法6条,平成13年法律第6号附則10条により,平成12年法律第14号及び平成13年法律第6号による改正前の法人税法159条1項をいい,同条2項は,平成13年法律第6号附則10条により,同法による改正前の法人税法159条2項をいうものとする。 1 被告人有限会社A関係罰条判示第1の行為刑法60条,法人税法164条1項,159条1項,2項(情状により罰金は500万円をこえその免れた法人税の額に相当する金額以下とする。)判示第2の各行為納付すべき各月ごとにいずれも刑法60条,所得税法244条1項,240条1項,2項,183条1項,204条1項2号(別紙番号18を除く。),6号(情状により罰金は100万円をこえその納付しなかった所得税の額に相当する金額以下とする。)併合罪の処理刑法45条前段,48条2項(各罪の罰金の多額を合算)宣告刑罰金2700万円 2 被告人B関係罰条判示第1の行為刑法 る金額以下とする。)併合罪の処理刑法45条前段,48条2項(各罪の罰金の多額を合算)宣告刑罰金2700万円 2 被告人B関係罰条判示第1の行為刑法60条,法人税法159条1項判示第2の各行為納付すべき各月ごとにいずれも刑法60条,所得税法244条1項,240条1項,183条1項,204条1項2号(別紙番号18を除く。),6号刑種の選択判示各罪についていずれも懲役刑併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第1の罪の刑に法定の加重)宣告刑懲役1年6月刑の執行猶予刑法25条1項(4年間) 3 被告人C関係罰条判示第1の行為刑法60条,法人税法159条1項判示第2の各行為納付すべき各月ごとにいずれも刑法60条,所得税法244条1項,240条1項,183条1項,204条1項2号(別紙番号18を除く。),6号刑種の選択判示各罪についていずれも懲役刑併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第1の罪の刑に法定の加重)宣告刑懲役1年刑の執行猶予刑法25条1項(4年間)訴訟費用の負担刑事訴訟法181条1項本文(量刑の事情)本件は,被告人有限会社Aの代表取締役として同社の業務全般を統括していた被告人B及び同社の監査役として同社の経理事務全般を統括していた被告人Cが,共謀の上,同社の法人税について,売上の一部を除外するなどの不正の行為により所得を秘匿した上,法人税3164万円余りをほ脱し,また,同社の従業員等に対する給与等やホステスに対する報酬等の支払いの際に源泉徴収して納付すべき所得税について,25 除外するなどの不正の行為により所得を秘匿した上,法人税3164万円余りをほ脱し,また,同社の従業員等に対する給与等やホステスに対する報酬等の支払いの際に源泉徴収して納付すべき所得税について,25か月間にわたり合計6789万円余りを納付しなかったという事犯であるが,ほ脱等の手口は二重帳簿を作るなどした悪質なものであって,ほ脱等した額の合計は1億円近くと相当に多額であり,ほ脱等の率は法人税について約95パーセント,所得税について約90パーセントと非常に高率であるから,この種脱税事犯が税の公平負担の原則を害し,国家の租税収入を減少させるとともに,申告納税制度や源泉徴収制度に対する国民の信頼を損なうものであることを考え併せると,犯情は悪く,被告人らの刑事責任は重いといわざるを得ない。 また,被告人Bが,所得税法違反の事実について,被告人Cに責任を押し付け,自己の責任を免れようとしていることや,被告人Cが,売上除外した所得の一部を着服して自らの利益としていたことも,量刑上看過するわけにはいかない。 しかしながら,被告人有限会社Aは,国税当局の査察が入り本件が発覚するや,脱税の事実を認めて修正申告を済ませ,現在,ほ脱等に係る本税,重加算税,延滞税等のほか,消費税等の他の不納付税を含めて,毎月分割してその支払いをしていること,被告人B及び被告人Cは,いずれも,現在,被告人有限会社Aの役員を辞めていること,被告人Bもそれなりに本件各犯行を反省していること,被告人Bにはこれまで同種前科はもちろん禁錮以上の刑に処せられた前科がないこと,被告人Cは,本件各犯行を認め,現在では反省していること,被告人Cには前科前歴が見当たらないことなどの,被告人らのために酌むべき事情も認められる。 (検察官の科刑意見被告人有限会社Aについて罰金3000万円,被告人Bにつ を認め,現在では反省していること,被告人Cには前科前歴が見当たらないことなどの,被告人らのために酌むべき事情も認められる。 (検察官の科刑意見被告人有限会社Aについて罰金3000万円,被告人Bについて懲役1年6月,被告人Cについて懲役1年)よって,主文のとおり判決する。 平成13年12月17日神戸地方裁判所第12刑事係甲裁判官森岡安廣・
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