平成14(行ウ)130 行政文書不開示決定取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年5月16日 東京地方裁判所 情報公開
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判決文本文19,492 文字)

主文 1 本件訴えのうち、被告が平成13年12月10日付けでした決定中、「雇用率未達成企業一覧」のうちの整理番号、会社名、産業分類、労働者数、合計、不足数及び備考の各欄並びに「障害者雇入れ計画の実施状況報告書」のうちの「C 雇入れを予定する事業所の数」、「D 雇用の状況」の①ないし⑥及び⑧、「E 雇入れ計画の実施状況」の①ないし⑥の各欄を不開示とした決定の取消しを求める部分を却下する。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告が原告に対し、平成13年12月10日付けでした「雇用率未達成企業一覧」及び「障害者雇入れ計画の実施状況報告書」について、「雇用率未達成企業一覧」のうち整理番号、会社名、産業分類、労働者数、身体、知的、短時間、合計、不足数及び備考の各欄並びに「障害者雇入れ計画の実施状況報告書」のうち「A事業主」、「C 雇入れを予定する事業所の数」、「D 雇用の状況」の①ないし⑥及び⑧、「E 雇入れ計画の実施状況」の①ないし⑥の各欄を不開示とした決定を取り消す。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、原告が、被告に対し平成13年11月8日付けでした、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)に基づく平成12年度「雇用率未達成企業一覧」(以下「本件企業一覧」という。)及び「障害者雇入れ計画の実施状況報告書」(以下「本件報告書」という。)の開示請求に対し、被告が平成13年12月10日付けでした一部開示決定(以下「本件決定」という。)につき、同決定により本件企業一覧のうち整理番号、会社名、産業分類、労働者数、身体、知的、短時間、合計、不足数及び備考の各欄並びに本件報告書のうち「A 事業主」、「C 雇入れを予定する事業所の数」、「D 雇用の状況」の 本件企業一覧のうち整理番号、会社名、産業分類、労働者数、身体、知的、短時間、合計、不足数及び備考の各欄並びに本件報告書のうち「A 事業主」、「C 雇入れを予定する事業所の数」、「D 雇用の状況」の①ないし⑥及び⑧、「E 雇入れ計画の実施状況」の①ないし⑥の各欄(以下「本件不開示部分」という。 )が情報公開法所定の不開示事由に該当しないのにこれを不開示とした本件決定は違法である旨主張して、本件決定のうち本件不開示部分を不開示とした部分の取消しを求める事案である。 なお、後記3(2)のとおり、本件決定は本訴提起後に厚生労働大臣の裁決によって変更されて、当初不開示とされた部分の一部(主文第1項掲記の部分)が開示されるに至り、被告は本件訴えのうち同部分(裁決開示部分)の取消しを求める部分の却下を求めた。 2 前提となる事実(1) 障害者の雇用の促進等に関する法律(以下「本法」という。)の制度概要ア本法の目的本法は、身体障害者又は知的障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、職業リハビリテーションの措置その他障害者がその能力に適合する職業に就くこと等を通じてその職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ、もって障害者の職業の安定を図ることを目的とする(1条)。 イ雇用義務本法は、すべて事業主は、身体障害者又は知的障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、適当な雇用の場を与える共同の責務を有するものであって、進んで身体障害者又は知的障害者の雇入れに努めなければならない旨規定するとともに(10条)、事業主は、厚生労働省令で定める雇用関係の変動がある場合(障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則(以下「本法施行規則」という。)5条は、事業主に雇用率の達成、維持の義務を課すべき場合として、「労働者の雇入れ及び 労働省令で定める雇用関係の変動がある場合(障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則(以下「本法施行規則」という。)5条は、事業主に雇用率の達成、維持の義務を課すべき場合として、「労働者の雇入れ及び解雇(労働者の責に帰すべき事由による解雇を除く。)」と定めている。)には、その雇用する身体障害者又は知的障害者である労働者の数が、その雇用する労働者の数に障害者雇用率(法定雇用率)を乗じて得た数以上であるようにしなければならない旨を規定している(本法14条1項。なお、除外率設定業種については同項かっこ書きにおいて例外規定が設けられている。)。 本法14条1項の法定雇用率は、同条2項に基づいて政令で定めるとされており、現在、民間事業主の法定雇用率は1.8パーセントである(障害者の雇用の促進等に関する法律施行令9条)。 ウ身体障害者又は知的障害者の雇用状況の把握雇用する労働者の数が常時56人以上である事業主は、毎年6月1日現在における身体障害者又は知的障害者の雇用に関する状況を、翌月15日までに、その主たる事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長(以下「管轄公共職業安定所長」という。)に報告しなければならないとされる(本法14条5項、本法施行規則7条、8条)。 障害者雇用状況は、本法施行規則8条に従い厚生労働大臣の定める様式(昭和51年労働省告示第112号第4条、様式第6号)により報告しなければならないものとされ、その記載事項は、常用雇用労働者の総数、常用雇用の身体障害者及び知的障害者の数、実雇用率等である。 エ雇用義務の履行確保(ア) 雇入れ計画の作成命令本法15条1項は、「厚生労働大臣は、身体障害者又は知的障害者の雇用を促進するため必要があると認める場合には、その雇用する身体障害者又は知的障害者である労働者の数が法定雇用障害 入れ計画の作成命令本法15条1項は、「厚生労働大臣は、身体障害者又は知的障害者の雇用を促進するため必要があると認める場合には、その雇用する身体障害者又は知的障害者である労働者の数が法定雇用障害者数未満である事業主に対して、身体障害者又は知的障害者である労働者の数がその法定雇用障害者数以上となるようにするため、厚生労働省令で定めるところにより、身体障害者又は知的障害者の雇入れに関する計画の作成を命ずることができる。」と定め、雇入れ計画の作成命令の制度を設け、雇入れ計画の作成を命じられた事業主は、計画の始期及び終期、期間中に雇入れを予定する労働者の数並びにそのうちの身体障害者及び知的障害者の数、身体障害者である労働者又は知的障害者である労働者の雇入れを予定する事業所の名称及び所在地並びに当該事業所ごとの雇入れを予定する労働者の数並びにそのうちの身体障害者及び知的障害者の数、計画の終期において見込まれる労働者の総数並びにそのうちの身体障害者及び知的障害者の数の各事項を含む計画を作成し(本法施行規則9条1項)、遅滞なく、管轄公共職業安定所の長に提出しなければならない(同施行規則10条)。そして、雇入れ計画の作成命令に違反して計画を作成しなかった事業主又は当該計画を提出しなかった事業主については、罰則が設けられている。 (イ) 雇入れ計画の実施状況報告雇入れ計画を作成した事業主は、毎年6月1日現在における雇入れ計画の実施状況を、翌月15日までに、管轄公共職業安定所の長に報告しなければならず、また、計画の期間が終了したときは、雇入れ計画の実施状況を、計画の終期の翌日から遅くとも45日以内に、管轄公共職業安定所の長に報告しなければならない(本法施行規則11条)とされ、この報告のために作成された書面が「障害者雇入れ計画の実施状況報告書」であり 、計画の終期の翌日から遅くとも45日以内に、管轄公共職業安定所の長に報告しなければならない(本法施行規則11条)とされ、この報告のために作成された書面が「障害者雇入れ計画の実施状況報告書」であり、毎年6月1日現在で提出される計画期間中の報告書と計画終了後に提出される報告書の2種類がある。 (ウ) 勧告本法15条5項は、厚生労働大臣は、同条1項の計画が著しく不適当であると認めるときは、当該計画を作成した事業主に対してその変更を勧告することができるとし、同条6項は、厚生労働大臣は、特に必要があると認めるときには、当該計画を作成した事業主に対して、その適正な実施に関し、勧告をすることができる旨を定める。 (エ) 公表本法16条は、厚生労働大臣は、同法15条1項の計画を作成した事業主が正当な理由なく、同条5項又は6項の勧告に従わないときは、その旨を公表することができる旨を定める。 3 判断の前提となる事実(証拠を掲記しない事実は、いずれも当事者間に争いがないか、当裁判所に顕著な事実である。)(1) 本件訴訟に至る経緯ア原告は、被告に対し、平成13年11月8日付けで、本件企業一覧及び本件報告書の開示請求(本件請求)を行った。 イ被告は、本件企業一覧及び本件報告書のうち、本件不開示部分を不開示とし、その余の部分を開示する旨の決定をし、平成13年12月10日付けで原告に対し決定通知書を発送した。 ウ原告は、平成14年2月1日付け審査請求書をもって、厚生労働大臣に対し、本件開示決定に不服がある旨の審査請求を申し立てるとともに、平成14年3月14日、被告に対し、本件訴訟を提起した。 (2) 本件訴訟提起後の事情ア厚生労働大臣は、原告の前記審査請求を受けて、情報公開審査会に諮問を行ったところ、情報公開審査会は、平成14年11月22日付けで 日、被告に対し、本件訴訟を提起した。 (2) 本件訴訟提起後の事情ア厚生労働大臣は、原告の前記審査請求を受けて、情報公開審査会に諮問を行ったところ、情報公開審査会は、平成14年11月22日付けで本件企業一覧につき、諮問庁が不開示とした部分については、『整理番号』、『会社名』、『産業分類』、『労働者数』、『合計』、『不足数』及び『備考』の各欄は開示すべきである。また、本件報告書につき、諮問庁が不開示とした部分のうち、『C 雇入れを予定する事業所の数』、『D 雇用の状況』及び『E 雇入れ計画の実施状況』の各欄は開示すべきであるとの答申をした。 イ厚生労働大臣は、情報公開審査会による上記答申を受けて、平成14年12月9日付けで、本件審査請求に係る不開示決定処分はこれを変更し、本件企業一覧につき『整理番号』、『会社名』、『産業分類』、『労働者数』、『合計』、『不足数』及び『備考』の各欄及び本件報告書につき『C 雇入れを予定する事業所の数』、『D 雇用の状況』及び『E 雇入れ計画の実施状況』の各欄(以下、あわせて「裁決開示部分」と、裁決によって不開示とされた部分を「裁決不開示部分」と、裁決不開示部分のうち本件企業一覧に係るもの(具体的には同一覧のうち「身体」「知的」「短時間」の各欄である。)を「裁決不開示部分第1」、同じく本件報告書に係るもの(具体的には「A 事業主」欄である。)を「裁決不開示部分第2」という。)は、これを開示し、その余の部分はこれを不開示とする。」との裁決を行った。 (3) 本件企業一覧、本件報告書の各記載内容ア本件企業一覧本件企業一覧は、東京労働局が、平成12年度において、同年度の障害者雇用状況報告書を基礎資料として、東京都に主たる事務所が所在する事業所のうち、雇用する障害者の人数が法定雇用者数を下回っている事業者 本件企業一覧は、東京労働局が、平成12年度において、同年度の障害者雇用状況報告書を基礎資料として、東京都に主たる事務所が所在する事業所のうち、雇用する障害者の人数が法定雇用者数を下回っている事業者をとりまとめ、作成したものである。同文書には、具体的には「整理番号」、「会社名」、「産業分類」、「労働者数」(常用、算定)、「身体」(重度、軽度、小計)、「知的」(重度、軽度、小計)、「短時間」(身体、知的)、「合計」、「不足数」及び「備考」の記載がある。 裁決不開示部分第1のうち、「身体」の欄は、当該事業主が雇用するフルタイム常用労働者であって、本法2条2号に該当する身体障害者の数を記載するものである。「身体」の欄は、「重度」、「軽度」、「小計」に分かれ、「重度」の欄には、当該事業主がフルタイム常用雇用する身体障害者のうち、本法2条3号に該当する重度身体障害者の数が、「軽度」の欄には、重度身体障害者に該当しない身体障害者の数が、「小計」には、その合計が記載される。 「知的」の欄も同様であって、「知的」の欄は、当該事業主が雇用するフルタイム常用労働者であって、本法2条4号に該当する知的障害者の数を記載するものである。「知的」の欄は、「重度」、「軽度」、「小計」に分かれ、「重度」の欄には、当該事業主がフルタイム常用雇用する知的障害者のうち、本法2条5号に該当する重度知的障害者の数が、「軽度」の欄は重度知的障害者に該当しない知的障害者の数が、「小計」にはその合計が記載される。 また、「短時間」の欄は、当該事業主が雇用する短時間労働者(1週間の所定労働時間が、通常の労働者の1週間の所定労働時間に比し短く、かつ、厚生労働大臣の定める時間数未満である常用雇用する労働者、本法14条1項)であって、本法2条1号に該当する障害者の数を記載するものである。 時間が、通常の労働者の1週間の所定労働時間に比し短く、かつ、厚生労働大臣の定める時間数未満である常用雇用する労働者、本法14条1項)であって、本法2条1号に該当する障害者の数を記載するものである。「短時間」の欄は、「身体」と「知的」に分かれ、「身体」の欄には重度身体障害者数が、「知的」の欄には重度知的障害者数が記載される。 イ本件報告書本件報告書は、平成12年度分について、法定雇用率未達成企業のうち、本法15条1項に基づき障害者の雇入れに関する計画の作成を命じられて事業主が、その計画の平成13年6月時点での実施状況について東京労働局長に提出した報告書である。同文書には、具体的には「A 事業主」欄:住所(法人のときは主たる事務所の所在地)、名称、氏名(法人のときは代表者の氏名)、事業の種類、事業所の数、「B 計画の始期及び終期」欄:始期、終期、「C 雇入れを予定する事業所の数」欄、「D 雇用の状況欄」:①常用労働者である身体障害者の数、②法定雇用障害者数算定の基礎となる労働者の数、③常用労働者である身体障害者の数及び知的障害者の数、④重度身体障害者である短時間労働者の数、⑤重度知的障害者である短時間労働者の数、⑥計、⑦実雇用率、⑧身体障害者又は知的障害者の不足数、「E 雇入れ計画の実施状況欄」:D欄①~⑥の計画年ごとの雇入れ予定数、雇入れ実数及び合計、「備考」欄が記載されている。 裁決不開示部分第2の「A 事業主」欄には、東京都に主たる事務所の所在地を有する事業主であって、その雇用する障害者の人数が法定雇用障害者数を下回っており、当該障害者雇入れ計画の実施状況報告書の作成を行った事業主の名前等の情報が記載される。 4 争点及び争点に関する当事者の主張(1) 争点本件の争点は、①本件訴えのうち裁決開示部分に係る部分の訴えの利益 害者雇入れ計画の実施状況報告書の作成を行った事業主の名前等の情報が記載される。 4 争点及び争点に関する当事者の主張(1) 争点本件の争点は、①本件訴えのうち裁決開示部分に係る部分の訴えの利益の存否(争点1)、②裁決不開示部分第1の不開示事由該当性(争点2)、③裁決不開示部分第2の不開示事由該当性(争点3)である。 (2) 争点に関する当事者の主張ア争点1(本件訴えのうち裁決開示部分に係る訴えの利益の存否)(ア) 被告前記3(2)のとおり、本件決定の不開示部分のうち、裁決開示部分に係る記載を不開示とする決定は存在せず、本件訴えのうち裁決開示部分の取消しを求める部分の訴えの利益は消滅したものである。 なお、不開示決定の取消しの利益は、実際に開示を受けられるか否かではなく、取消判決によって法的効力を除去すべき開示決定が存在しているか否かによって決せられるものであるから、現実に開示がされるか否かの見込みは訴えの利益とは無関係である。 (イ) 原告開示決定の変更に対しては、情報公開法18条により不服申立権が認められており、不服申立てがあった場合には、再度その不服申立てについて情報公開審査会に諮問がされることとなる。 そして、実際に未達成企業のうち約1500社が公開に反対する意見を述べており、その企業からの不服申立てがされている限りは、開示はされず、情報公開審査会の答申を待つこととなる。 したがって、開示決定の変更により開示が命じられた部分であっても、現実に開示がされるかどうかは非常に流動的であり、訴えの利益が欠けるものではない。 イ争点2(裁決不開示部分第1の不開示事由該当性)(ア) 被告a 情報公開法5条1号前段該当性裁決不開示部分第1には、上記3(3)アの記載のとおり、各区分ごとに該当する障害者数が記載されて イ争点2(裁決不開示部分第1の不開示事由該当性)(ア) 被告a 情報公開法5条1号前段該当性裁決不開示部分第1には、上記3(3)アの記載のとおり、各区分ごとに該当する障害者数が記載されているが、その数字の多くは「0ないし1」であり、あるいは一桁の小さい数であることが大半である。そして、これらの数字を含む情報は、当該事業主がどのような種類及び程度の障害者を、どのような勤務時間で雇用しているかに関する情報であるから、障害者個人に関する情報であるところ、これらの数字が「会社名」欄記載の会社名とともに公にされた場合、その会社名やその他の通常入手し得る情報と照合することにより、特定の個人を識別することが可能となる。 したがって、裁決不開示部分第1は、情報公開法5条1号前段にいう「個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」に当たり、不開示とすべきである。 b 情報公開法5条1号後段該当性また、仮に、裁決不開示部分第1が特定の個人を識別することができないとしても、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるというべきである。 まず、裁決不開示部分第1を開示すると、ここに数字として記載された障害者個人の権利利益を害するおそれがある。すなわち、雇用率未達成企業に勤務する障害者のうち、心臓機能障害、腎臓機能障害等の内部機能障害者や、軽度の知的障害者などは、外形的には障害者であることがわかりにくいため、障害者であること等を周囲の同僚等に知られていない場合もある。しかるに裁決不開示部分第1が開示されると、当該障害者が勤務する職場内で、障害者であることや障害の種類及び程度 ることがわかりにくいため、障害者であること等を周囲の同僚等に知られていない場合もある。しかるに裁決不開示部分第1が開示されると、当該障害者が勤務する職場内で、障害者であることや障害の種類及び程度を同僚等に推認されたり、詮索されたりするおそれがある。そのような事態となれば、みだりに自己の障害の有無、種類及び程度を他人に知られないという障害者の権利利益が害されることになる。 また、裁決不開示部分第1を開示すると、当該事業主に雇用されている障害者のうち、ここに数字として記載されていない障害者個人の権利利益を害するおそれがある。すなわち、事業主が雇用する者が本法2条各号に定める障害者に該当するか否かの確認は、身体障害者にあっては身体障害者手帳又は所定の医師の診断書・意見書によって行われ、知的障害者にあっては、都道府県知事又は政令指定都市市長が交付する療育手帳等又は地域センターの判定書(知的障害者であると判定した旨記入したもの)によって行われることとなっているところ、これらの手帳の交付申請や医師等の診断書の取得は本人の意思に基づいて行われるものであるから、事業主が強制することは許されない。このため、雇用率未達成企業に勤務する障害者の中には、当該個人が思想又は信条に基づき障害者としての保護を希望しないため、身体障害者手帳等の交付申請を行っておらず、医師等の診断書等も得ていないため、障害者雇用率算定の基礎データに含まれない障害者もいる。また、身体障害者手帳等の交付を受け、あるいは医師等の診断書等を得ていても、それを事業主に明らかにしていないために、障害者算定の基礎データに含まれない障害者もいる。しかるに、裁決不開示部分第1が開示され、当該企業に勤務する障害者の内訳が明らかになると、その数字と当該企業内で外形的に障害者であると推測されるものの数と 者算定の基礎データに含まれない障害者もいる。しかるに、裁決不開示部分第1が開示され、当該企業に勤務する障害者の内訳が明らかになると、その数字と当該企業内で外形的に障害者であると推測されるものの数との不一致をとらえ、同僚等が本人の意思を無視して身体障害者手帳の交付申請等をするよう働きかけたり、個人的な好奇心から、当該障害者が身体障害者手帳の交付申請をしない理由等を詮索するおそれがある。そうなれば、当該個人の権利利益を害する結果となる。 以上によれば、裁決不開示部分第1が、情報公開法5条1項前段の個人識別情報に当たらないとしても、これを公にすることにより、障害者である個人の権利利益を害するおそれがあるものであって、情報公開法5条1項後段に該当する。 (イ) 原告a 被告は、当初、情報公開法5条1号該当性に関する主張をしておらず、平成15年3月20日に裁判所に提出した同月26日付け準備書面(2)において初めてこの主張を行ったものである。この主張は、厚生労働大臣の裁決及びその前提となる情報公開審査会の答申に依拠するものと思われるところ、これらがされてから1ヶ月以上経過して開かれた本件第4回口頭弁論期日(平成15年1月24日)においても、被告は、この主張をしていないのであるから、このような主張の追加は信義則に反し、時期に遅れたものである。 b 職場内で、同僚等が障害者である者を探索すること自体がプライバシーの侵害であり、違法な人権侵害である。責められるべきはかような人権侵害であるのに、違法行為があることを前提にして情報公開を認めないのであれば、障害者の働く権利の実現はますます遠のいてしまう。 また、障害の程度の区分の数字が「0ないし1」あるいは一桁の少数であることが大半であることから、特定の者が障害者であること及びその障害の程度を推認する の働く権利の実現はますます遠のいてしまう。 また、障害の程度の区分の数字が「0ないし1」あるいは一桁の少数であることが大半であることから、特定の者が障害者であること及びその障害の程度を推認する可能性は否定できないとしているが、そもそもこのような少数の雇用しか実現されていないことが問題であるとして、情報公開を求めているのである。 さらに、障害者雇用率を向上させていくためには、障害者の種別についてきめ細かい対応が必要であり、どういった種別の障害者がどのような企業に雇用されているか、また雇用されていないのかを明確にしていくことが、今後の障害者雇用施策を進めていく上で有益である。 ウ争点3(裁決不開示部分第2の不開示事由該当性)(ア) 被告a 5条6号該当性雇用関係は、労使の信頼を基調とする人的結合であり、身体障害者又は知的障害者の適正な雇用を実現するためには事業主の理解と協力が不可欠であるから、障害者の雇用促進は事業主の自主的な努力によってのみ達成されるものである。 そこで、本法は、障害者の雇用に関する事業者の自主的努力を促進すべく、障害者雇用状況報告書の提出、雇入れ計画作成命令、事業主による雇入れ計画作成、厚生労働大臣による勧告、勧告に従わない事業主の公表という段階的な雇用率達成指導の制度を設け、この指導を通じて法定雇用率未達成の企業が自主的に雇用義務を果たすことを促進しようとしている。そして、段階的指導の中で、最終的な制裁措置として予定されているのは本法16条に基づく公表であり、段階的な雇用率達成指導の最後に厚生労働大臣による公表という効力な社会的制裁措置を設けることにより、その威嚇効果をもって、公表前の各種指導を実行あらしめ、もって、障害者雇用に関する事業主の自主的努力を促進しようとしているものである。 しかるに、裁決不 いう効力な社会的制裁措置を設けることにより、その威嚇効果をもって、公表前の各種指導を実行あらしめ、もって、障害者雇用に関する事業主の自主的努力を促進しようとしているものである。 しかるに、裁決不開示部分第2に記載された情報が指導と無関係に開示されると、このような雇用率達成指導制度に係る事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。すなわち、裁決不開示部分第2には、当該障害者雇入れ計画の実施状況報告書の作成を行った事業主の名前が記載されているところ、これが開示されれば、実施状況報告書の作成を行ったすべての事業主の情報が開示されることとなるし、また、開示請求には特段の時期の制限はないから、実施状況報告書の作成を行った事業主に係る障害者雇用状況が開示されることとなるが、このような情報が時期を問わず広く公開されるとなると、なされつつある雇用率達成指導に悪影響が生じる上、それ以後にされる公表の最終的制裁としての感銘力が殺がれ、社会的制裁としての機能を十分に発揮しなくなる。 情報公開審査会の答申においても「本件実施状況報告書は、本件企業一覧とは異なり、法定雇用率未達成事業者のうち、障害者の雇用に消極的であるなどの理由により、本法15条1項により雇い入れ計画の作成を命じられた各企業が、それぞれその計画の実施状況を報告するものとして提出したものであるが、その実施状況如何によっては、さらに、適正実施勧告、特別指導等の措置が取られるなど、正に公表制度における勧告・指導の手続きの一環としてなされるものであると認められる。このように、本件実施状況報告書は、将来における公表の有無に直接関わるものであって、これらをすべてそのまま開示し公にすると、諮問庁が説明するように障害者の雇用の促進に対するその後における当該企業の熱意や努力に悪影響を及ぼすこともあり得るも ける公表の有無に直接関わるものであって、これらをすべてそのまま開示し公にすると、諮問庁が説明するように障害者の雇用の促進に対するその後における当該企業の熱意や努力に悪影響を及ぼすこともあり得るものと考えられ、これによりその後に予定される適正実施勧告や特別指導、さらには公表措置を含む現行の制度による改善指導の効果が減殺され、当該制度の適正な運営に支障をきたすおそれがあることは否定できないものということができる、このような点から当該企業名が特定できる『A 事業主』欄については、情報公開法5条6号『その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの』に該当することを理由にこれを不開示としたことは妥当と認められる。」と述べているところである。 b 5条1号該当性前記第2、3(2)のとおり、障害者雇入れ計画の実施状況報告書について、「E雇入れ計画の実施状況」について開示する旨の裁決がされているところ、このうち「③常用労働者である身体障害者の数及び知的障害者の数」、「④重度身体障害者である短時間労働者の数」及び「⑤重度知的障害者である短時間労働者の数」の各欄には、その程度等の区分ごとに数字のみが記載されており、その数字は0又は1あるいは一桁の数字であることが大半である。そして、裁決不開示部分第2及び上記数字を含む情報は、前記イ(ア)記載のとおり、当該事業主が、どのような種類及び内容の障害者を、どのような勤務時間で雇用しているかに関する情報であって、特定の個人(障害者)に関する情報であるところ、裁決不開示部分第2以外の部分が既に開示されていることを前提として裁決不開示部分第2を開示すると、前記各欄の記載及びその他通常入手し得る情報と照合することによって、特定の個人を識別し得ることになる。したがって、 2以外の部分が既に開示されていることを前提として裁決不開示部分第2を開示すると、前記各欄の記載及びその他通常入手し得る情報と照合することによって、特定の個人を識別し得ることになる。したがって、裁決不開示部分第2は、情報公開法5条1号前段に該当するというべきである。 また、仮に、特定の個人を識別することができないとしても、裁決不開示部分第2は、公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがあり、情報公開法5条1号後段に該当することは上記イ(ア)bで述べたことと同様である。 (イ) 原告本法15条に基づく公表制度における勧告・指導はそもそも手続きがあいまいであり、本法16条によっていかなる場合に公表がされるかも明らかでない。現実に、過去に同法による公表がされたのは平成3年の4社のみである。実施状況報告書の作成を命じられた企業に対する勧告・指導がされた結果として障害者の雇用状況が改善されたのであれば格別、雇用状況の改善がされていない企業が多数存在すると考えられるにもかかわらず、上記のように過去に4社しか公表されたことがないという事実は、本法16条による公表制度が期待される効果を上げていないことを意味している。 このような現状において、「A 事業主欄」を公表することによって公表制度を含む現行の制度による改善指導の効果が減縮されるという理由に合理性はないといえる。 それどころか、公表された事業主が社会的責任を自覚することによってより障害者雇用促進「事業の適正な遂行に」資することにもなると考えられる。すなわち、事業主の側で障害者の雇用を促進支障とするなれば、事業所によっては新たな設備が必要であったり、障害者の就業を可能とするための方策を講じる必要がある場合が考えられるが、これまで必ずしも積極的にその努力を行ってこなかった事業 用を促進支障とするなれば、事業所によっては新たな設備が必要であったり、障害者の就業を可能とするための方策を講じる必要がある場合が考えられるが、これまで必ずしも積極的にその努力を行ってこなかった事業主が状況の改善を行うことには何かきっかけが必要であり、そのきっかけとして事業主名が公表されることは有益であると考えられるのである。さらに、事業主が障害者の雇用が少ないことを反省し、障害者雇用の促進に取り組んでいくことを社会にアピールすることはむしろ事業主の社会的評価を高くするものである。この観点でも障害者雇用促進事業の適正な遂行に資するものと考えられる。このように雇用状況報告書を提出した企業名が公表されることによって現行制度による行政指導の効果が減縮されることはなく、逆に、障害者雇用の促進に資するものである。 なお、情報公開法5条1号該当性については、前記イ(イ)aのとおり、主張すること自体が許されないものである。 第3 争点に対する判断 1 争点1(本件訴えのうち裁決開示部分に係る訴えの利益の存否)本件不開示決定については、前記第2、3(2)イ記載のとおり、厚生労働大臣が平成14年12月9日に、本件不開示決定のうち裁決開示部分について、当初された本件不開示決定を変更して開示を行う旨の決定をしており、これによって裁決開示部分については既に不開示決定が取り消されたものというべきであって、現時点においては、取消しの対象を欠くこととなり、その意味で訴えの利益は消滅したものというべきである。 原告は、裁決開示部分について取消判決がないと未達成企業からの不服申立てがされ、その審理過程において再び判断が覆る可能性があることを指摘し、取消判決の効力によってそのような事態を防止することが必要であり、そのために裁決開示部分に係る訴えの利益が存する旨を主張 服申立てがされ、その審理過程において再び判断が覆る可能性があることを指摘し、取消判決の効力によってそのような事態を防止することが必要であり、そのために裁決開示部分に係る訴えの利益が存する旨を主張する。しかし、仮に、そのような必要性が存するとしても、前記のとおり、本件不開示決定中の裁決開示部分については、既に不開示決定が取り消されているのであるから、これをさらに取り消すことは不可能というべきである。また、本件訴訟手続には未達成企業は全く関与していないのであるから、その不服申立ての機会を奪うことはできず、むしろ、同部分の開示の可否については、その不服申立てを受けた後の手続において最終的な解決が図られるべきものである(このように解すると、不開示決定の取消しを求めるものは2段階の訴訟に関与せざるを得なくなる事態が生ずることとなるが、現行の情報公開法制の下においては、そのような事態もやむを得ないものというべきである。)。 よって、本件訴えのうち、本件不開示決定のうち裁決開示部分の取消しを求める部分は不適法である。 2 争点2(裁決不開示部分第1の不開示事由該当性)(1) 情報公開法5条1号該当性を主張することの可否被告がこの点について主張をしたのが、本訴提起後1年以上経過した平成15年3月20日に提出した同日付け準備書面(2)においてであることや、その主張に至る経緯については、原告の指摘するとおりである。 しかし、この点は、本件提起後の平成14年12月9日にされた厚生労働大臣の裁決によって、それまで不開示とされた部分のうち相当部分が開示することとされたことにより新たに生じた不開示事由と考えられるから、それ以前に被告がこの主張をしなかったことはやむを得ないことというべきである。もっとも、同裁決後の本件第4回口頭弁論期日(平成15年1月24 されたことにより新たに生じた不開示事由と考えられるから、それ以前に被告がこの主張をしなかったことはやむを得ないことというべきである。もっとも、同裁決後の本件第4回口頭弁論期日(平成15年1月24日)においては、被告は、同裁決書及びその依拠する情報公開審査会の答申(乙6、7)を書証として提出したものの、それらに記載のある上記主張を追加することはせず、当裁判所がこの点を質したのに対し、被告指定代理人は、同裁決書の考え方は被告がこれまで主張してきたことと基本的に同一であるとして、主張の追加をする意思はないと理解できる発言をした。原告は、同期日において口頭弁論の終結を希望したが、当裁判所としては、上記裁決を踏まえて原告が請求の趣旨の変更を検討するのが相当であり、かつ、被告指定代理人が同裁決の趣旨を誤解している可能性がある以上、本来あるべき主張をさせるのが本件の適正な処理に資するものと考え、次回期日を同年2月21日と定め、同期日に弁論を終結する予定であると告げた。その後、被告から準備書面の作成が間に合わない旨の上申がされたため、当裁判所は、当年3月26日に期日を変更し、同期日において、上記被告準備書面(2)の陳述がされ、口頭弁論を終結したものである(以上の事実は、当裁判所に顕著な事実である。)。以上の経緯からすると、被告は、本来、平成15年1月24日の期日において主張すべきであった上記主張につき、いったん同期日において主張する意思はないかのような態度を採ったのち、その後2ヶ月後に改めて主張するに至ったこととなるが、同期日における被告の対応は指定代理人の誤解に基づくものと考えられ、それ自体誠に遺憾なことではあるが、信義則に反するとまでは評価し難い。また、これによって本件口頭弁論の終結が約2ヶ月遅延したこととなるが、その原因となった上記指定代 人の誤解に基づくものと考えられ、それ自体誠に遺憾なことではあるが、信義則に反するとまでは評価し難い。また、これによって本件口頭弁論の終結が約2ヶ月遅延したこととなるが、その原因となった上記指定代理人の誤解を重大な過失と評価し得るか否かには疑問がないでもなく、その遅延の期間と本件の適正な処理の要請を総合考慮すると、被告の上記主張を却下するのは相当でないというべきである。 よって、この点についての原告の主張は採用できない。 (2) 情報公開法5条1号前段該当性情報公開法5条1号は、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日、その他の記述等により特定の個人を識別することができるものを不開示情報と定め、個人の識別性のある情報、すなわち個人の内心、身体、身分、地位、健康状態その他個人に関する一切の事項についての事実、判断、評価等のすべての情報を一般的に開示しないことを定めたものと解される。そして、前記の情報には、「他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。」旨が規定されており、当該情報自体では特定の個人を識別することができないが、他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができるものについても個人識別情報として不開示情報とする趣旨である。 これを本件についてみると、本件企業一覧の基礎資料である障害者雇用状況報告書の提出を義務付けられているのは、雇用する労働者の数が常時56人以上の事業主であり、そして、法定雇用率が1.8パーセントとされていること、そして、本件企業一覧には法定雇用率を下回った事業主に関する情報が記載されていることにかんがみれば、裁決不開示部分第1の身体、知的、短時間の小計欄には、0または1、あるいはそれに近い小さい数が記載されており、その内訳である各欄にはさら 下回った事業主に関する情報が記載されていることにかんがみれば、裁決不開示部分第1の身体、知的、短時間の小計欄には、0または1、あるいはそれに近い小さい数が記載されており、その内訳である各欄にはさらに小さい数が記載されていることが推認され、これを覆すに足りる証拠はない。 被告は、このことを前提として、これらの部分を裁決開示部分に含まれた事業主名等、既に開示された部分とともに開示した場合には、その会社名やその他の通常入手し得る情報と照合することにより、特定の個人を識別することが可能であると主張する。 確かに、当該事業場における同僚は、既に同僚中に障害者が存在することを認識していた場合においても、その障害の種類が身体障害か知的障害か、その程度が重度か軽度かは認識していないことであるから、上記の「身体」、「知的」及び「短時間」の各欄の人数の多くが0か1であることからすると、それらの開示により、これらを新たに認識し得ることとなる(想定①)。また、同僚中に障害者が存在するとは認識していなかった者も、上記の開示によってその存在を知り、その後改めて同僚らを仔細に観察し、あるいは同僚らに問い質すことにより、同僚のうち誰が障害者であるかを特定し、かつ、その障害の種類及び程度を認識し得る場合もある(想定②)。 ところで、情報公開法5条1号にいう上記「他の情報」がいかなる範囲の者を指すかについては、同法の文言のみからは明らかでないといわざるを得ないが、これを一般人が容易に入手し得る情報について限定すると、不開示情報の範囲は自ずから限定されるのに対し、特定の個人と特別の関係のある者のみが有している情報を含むとすると、不開示情報の範囲はかなり広くなるし、さらに、ある情報の開示をきっかけとして聞き取り調査等を行うことによって入手し得る情報をも加えると、個人に 特別の関係のある者のみが有している情報を含むとすると、不開示情報の範囲はかなり広くなるし、さらに、ある情報の開示をきっかけとして聞き取り調査等を行うことによって入手し得る情報をも加えると、個人に関する情報はほとんどが開示し得ないこととなりかねない。この「他の情報」範囲を広く捉える考え方は、情報開示請求の主体に限定がないことからすると、特定の個人と特別の関係にある者も開示請求をし得るという点を論拠とするものであり、傾聴に値する点がないでもない。しかし、個人に関する情報のすべてを情報公開の対象外とすることは、情報公開法が想定しているところではないのであって、同法も、本来は、そのうち公開によって個人の権利利益を害するおそれのあるもののみを不開示とすべきところ、この点を個々の情報ごとに吟味して決定することは多大の困難が伴うため、やむを得ず個人を識別し得る情報は、それが当該個人の権利利益を害するものか否かを問わず、一律に不開示と定めたものである。そして、上記「他の情報」と組み合わせることによって、特定の個人を識別し得る情報をも不開示とした点は、それをさらに広げる附加的な規定であるから、これによって不開示情報の範囲が本来の個人識別情報の範囲を大きく超えて拡大することは、同法の想定していないところであり、この点については、開示された情報のみでは特定の個人を識別できるとはいい難いが、ほとんどそれと等しいもの、すなわち、一般人が容易に入手し得る情報と組み合わせると特定の個人が識別され得る場合には、本来の個人識別情報と同様に取り扱わざるを得ないという趣旨に解するのが相当である。もっとも、上記のような解釈によって個人識別情報に該当しないとしても、当該個人と特別の関係のある者が開示請求によって得た情報と自己の有する情報を組み合わせることにより、当該個人に するのが相当である。もっとも、上記のような解釈によって個人識別情報に該当しないとしても、当該個人と特別の関係のある者が開示請求によって得た情報と自己の有する情報を組み合わせることにより、当該個人に関する情報を取得することにより、当該個人の権利利益が害されるおそれがある場合には、情報公開法5条1号後段により、不開示情報となし得ることはいうまでもない。 以上の観点から、裁決不開示部分第1の情報公開法5条1号該当性を検討するに、被告が主張する「他の情報」は、いずれも一般人が容易に入手し得るものではなく、特定の個人と特別の関係ある者のみが有している情報であると考えられるから、その主張は、同号前段かっこ書き該当性を基礎付けるものではなく、同号後段該当性を指摘するものと理解するほかない。 そこで、裁決不開示部分第1を開示することにより、そこに記載されている障害者の権利利益を害するおそれが生ずるか否かを検討するに、上記想定①及び②のいずれの場合にも、当該障害者の同僚が、開示により又はそれをきっかけとして当該障害者の障害の種類及び程度を知り得ることとなる。もっとも、このうち想定②の場合は、そのような事態は開示自体によって生じたものではなく、開示をきっかけとしてされた調査などによって生じるのであるから、開示によって障害者の権利利益が害されたとはいい難い(被告が指摘する本件企業一覧に計上されていない障害者への影響についても同様に考えることができる。)。これに対し、想定①の場合には、それまでは当該障害者につき、単に障害者であるとの認識を有するのみで、その種類及び程度について認識を有しなかった同僚が、上記開示によってそれらを認識するに至ることとなる。このような事態については、当該障害者が既に自己が障害者であることを明らかにして雇用されていることを前提と び程度について認識を有しなかった同僚が、上記開示によってそれらを認識するに至ることとなる。このような事態については、当該障害者が既に自己が障害者であることを明らかにして雇用されていることを前提とすると、開示によって認識可能となる内容が障害の種類及び程度ともに2種類の大分類のいずれかにすぎず、特に身体障害の場合には、その性質上、身体障害の有無をその程度が重度か軽度かについては外見上おおよそ明らかになるものであることからして、当該障害者としては、それらを同僚に知られることは甘受すべきものであり、むしろ、共に働く同僚にはそれらを積極的に理解してもらうよう努めるべきであるとの考え方もないではないが、未だ障害者に対する偏見や差別意識が根強く存する現在の我が国の状況に照らすと、これらの認識を得た同僚から新たな嫌がらせ等が生ずるおそれは否定し難いところであり、上記部分の開示は、そこに記載された障害者個人の権利利益を害するおそれを生じさせるものとして、情報公開法5条1号後段に該当するものと考えられる(なお、「短時間」欄の記載は、短時間労働に就いていることを示す点においては、それが外形上明らかなことからして、同号後段該当性は否定すべきであるが、同欄は重度の身体及び知的障害者数の内数でもあることから、これらを開示することにより重度の身体又は知的障害者を特定して認識することが可能となる点において、上記と同様の理由から同号後段に該当するものと考えられる。)よって、裁決不開示部分第1を不開示として原処分の判断は、結論において相当であり、原告の本訴請求のうち、その取消しを求める部分は理由がない。 3 争点3(裁決不開示部分第2の不開示事由該当性)まず、情報公開法5条1号後段該当性について検討するに、裁決不開示部分第2を開示すると、同裁決によって開示するこ 取消しを求める部分は理由がない。 3 争点3(裁決不開示部分第2の不開示事由該当性)まず、情報公開法5条1号後段該当性について検討するに、裁決不開示部分第2を開示すると、同裁決によって開示することとされた「E 雇入れ計画の実施状況」中の③常用労働者である身体障害者の数及び知的障害者の数、④重度身体障害者である短時間労働者の数及び⑤重度知的障害者である短時間労働者の数の各欄の記載と組み合わせることにより、同欄記載の障害者個人の同僚らが当該障害者の障害の種類及び程度を認識し得る事態を招くこと及びその事態が当該障害者個人の権利利益を害するおそれがあることについては、前記2(2)で説示したのと全く同様のことが当てはまると考えられる。 そうすると、裁決不開示部分第2が情報公開法5条1号後段に該当することが明らかであり、その余の不開示事由該当性について検討するまでもなく、これを不開示とした原処分の判断は結論において相当であり、原告の本訴請求のうち、その取消しを求める部分もまた理由がないこととなる。 第4 結論以上によれば、原告の訴えのうち裁決開示部分の開示を求める部分は不適法であるからこれを却下することとし、その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担については、上記却下部分については本件裁決によって原告の主張の大部分が認められる結果によるものであること、及び上記棄却部分についても、その理由は、当初の被告の主張とは異なるものであって、その主張変更の経緯においても被告に不手際のあったことからすると、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、62条の趣旨に基づき、全部被告に負担させることとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行裁判官鶴岡稔彦裁判官廣澤諭 61条、62条の趣旨に基づき、全部被告に負担させることとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行裁判官鶴岡稔彦裁判官廣澤諭・

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