令和6(ワ)1008 原状回復請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年11月6日 大阪地方裁判所
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令和7年11月6日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和6年(ワ)第1008号原状回復請求事件口頭弁論終結日令和7年9月2日判決 原告株式会社デンケン代表者代表取締役訴訟代理人弁護士安部茂同小白川類 被告株式会社アルファ・プロダクト代表者代表取締役 訴訟代理人弁護士田上洋平同冨田信雄同小野夏海 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、原告に対し、2160万円及びうち2000万円に対する令和元年5月21日から、うち160万円に対する同年12月17日から各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告に対し、432万円及びこれに対する令和6年11月16日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 第2 本判決における略称 ・本件実用新案登録: 考案の名称を「トンネル内壁面撮影装置」とする実用新案登録(実用新案登録第3218047号)・本件実用新案権: 本件実用新案登録に係る実用新案権・本件特許1 : 発明の名称を「ドラム缶検査方法及びその装置」とする特許(特許第5883605号) ・本件特許権1: 本件特許1に係る特許権・本件特許2 : 発明の名称を「コンクリート製枕木のクラック検知方法及び装置」とする特許(特許第5951218号)・本件特許権2: 本件特許2に係る特許権・本件特許等 : 本件実用新案登録並びに本件特許1及び同2の総称(これ らに係る権利の総称は「 び装置」とする特許(特許第5951218号)・本件特許権2: 本件特許2に係る特許権・本件特許等 : 本件実用新案登録並びに本件特許1及び同2の総称(これ らに係る権利の総称は「本件特許権等」)・本件実施許諾契約: 本件特許権等につき、専用実施権者である被告と原告との間で締結された、原告に通常実施権を設定する旨の実施許諾契約・本件動産 : 別紙1「動産目録」記載の動産 ・本件動産契約: 本件動産につき、原告・被告間に成立したと原告が主張する契約・改正前商法 : 平成29年法律第45号による改正前の商法・改正前民法 : 平成29年法律第44号による改正前の民法・本件見積書 : 別紙2の見積書 第3 事案の概要等 1 原告の請求及び法的根拠(1) 原告は、被告の代表者が有する本件特許権等につき、その専用実施権者である被告との間で通常実施権の設定を受けるとともに、その実施に必要な情報等の提供を受ける旨の実施許諾契約(本件実施許諾契約)を締結し、許諾 の対価(初期費用)として2160万円(税込)を支払ったところ、被告の 債務不履行を理由として本件実施許諾契約を解除したため、被告に対し、原状回復請求権及び民法545条2項に基づき、2160万円及びこれに対する被告の受領日(2000万円につき令和元年5月21日、160万円につき同年12月17日)から支払済みまで商事法定利率年6分(改正前商法514条所定の利率)の割合による利息の支払を求める。 (2) 原告は、被告から本件動産を購入することなどを内容とする本件動産契約を締結し、対価として432万円(税込)を支払ったところ、被告に対し、主位的には以下のアを理由として、予備的には以下のイを理由として 原告は、被告から本件動産を購入することなどを内容とする本件動産契約を締結し、対価として432万円(税込)を支払ったところ、被告に対し、主位的には以下のアを理由として、予備的には以下のイを理由として、432万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める。 ア主位的請求(以下の(ア)と(イ)は選択的) (ア) 原告は、被告から本件動産を購入した後、被告との間の使用貸借契約に基づいて被告に対し本件動産の使用を許諾してきたところ、改正前民法597条3項に基づき、被告に対して本件動産の返還請求をしたにもかかわらず、被告はその返還をしないから、被告に対し、不当利得返還請求権(民法703条)に基づき、本件動産の価額相当分である432 万円及びこれに対する令和6年11月16日(訴えの変更申立書送達日の翌日)から支払済みまで年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。 (イ) 本件動産契約は、被告が本件動産を調達し、原告がこれを被告から購入した上で、これを被告に無償で貸し渡すことを内容とするものである ところ、被告が本件動産の調達さえしなかったことは、上記契約の債務不履行に当たるから、被告に対し、改正前民法415条に基づき、損害金432万円及びこれに対する前同様の遅延損害金の支払を求める。 イ予備的請求(以下の(ア)と(イ)は選択的と解される。)(ア) 仮に、本件動産の代金432万円が、原告が被告に対して支出した開 発費用の実態を有していたとしても、同費用の支出は本件実施許諾契約 に付随するものであるところ、本件実施許諾契約が解除されたことにより、被告は上記開発費用を保持する権原を失ったから、被告に対し、不当利得返還請求権(民法703条)に基づき、432万円及びこれに対する前同様の ものであるところ、本件実施許諾契約が解除されたことにより、被告は上記開発費用を保持する権原を失ったから、被告に対し、不当利得返還請求権(民法703条)に基づき、432万円及びこれに対する前同様の遅延損害金の支払を求める。 (イ) 被告は、本件動産を真実購入しないのに、購入して開発を進めていく かのように虚偽の事実を告げ、原告を欺いたものであるから、被告に対し、不法行為(民法709条)に基づき、損害金432万円及びこれに対する前同様の遅延損害金の支払を求める。 2 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠(枝番号を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1) 当事者ア原告は、電子技術の研究開発、電子特殊回路の設計、製造施工、販売、電気機器・電子制御機器の製造・販売・リース並びにレンタル業等を目的とする株式会社である。 イ被告は、非破壊検査業務(画像による外観検査装置、コンクリート探査 装置、超音波探傷装置の開発・販売及び調査業務)並びに知的財産権のノウハウ及び取得、実施、利用許諾、維持、管理、売買、譲渡及びこれらの仲介等を目的とする株式会社である。 (2) 本件特許権等及びこれらについての専用実施権の設定(甲5~9、乙2~4、弁論の全趣旨) ア本件実用新案登録は、トラックの荷台に乗せてトンネル内を走行することでトンネル内の壁面を撮影する装置に係るものであり、被告においては、本件実用新案権を実施して撮影した高精細画像からクラックを自動抽出するシステム(通称「FOCUS」)の開発実績があった。 本件特許1は、SH波によるドラム缶内面探査機に係る特許であり、被 告においては、その実施品(通称「SHEED」)の開発実績があった。 テム(通称「FOCUS」)の開発実績があった。 本件特許1は、SH波によるドラム缶内面探査機に係る特許であり、被 告においては、その実施品(通称「SHEED」)の開発実績があった。 本件特許2は、コンクリート製枕木のクラックを検知する広帯域超音波探査機に係る特許であり、被告においては、その実施品(通称「SEEC」)の開発実績があった。 イ被告代表者は、その保有する本件特許権等につき、令和元年5月7日に被告に対して専用実施権を設定した。 (3) 本件実施許諾契約原告及び被告は、令和元年5月20日、本件実施許諾契約を締結した。同契約に係る契約書は、原告が作成・用意したものであり、同契約書には、以下の内容が含まれる。(甲1、弁論の全趣旨)ア契約の目的(序文) 被告が有している特許及びノウハウを原告と共同して発展させることを目的とする。 イ定義(1条)なお、前記第2の本判決における略称と区別する趣旨で、本件実施許諾契約において定義された略称はかぎ括弧でくくることとする。 (ア) 「本件製品」「本件特許及びノウハウ」を使用して原告が製造・販売した製品及びその部品をいう。 (イ) 「本件特許及びノウハウ」「本件製品」に関して被告が本契約締結日現在所有している次のもの をいう。 ①実用新案登録第3218047号(本件実用新案登録)②特許第5883605号(本件特許1)③特許第5951218号(本件特許2)(ウ) 「正味販売価格」 「本件製品」の販売価格から、梱包費、輸送費及び保険料を控除した ものをいう。 ウ実施許諾の内容(2条1項)被告は、本契約の期間中、原告に「本件特 (ウ) 「正味販売価格」 「本件製品」の販売価格から、梱包費、輸送費及び保険料を控除した ものをいう。 ウ実施許諾の内容(2条1項)被告は、本契約の期間中、原告に「本件特許及びノウハウ」に基づいて日本国内において「本件製品」を製造及び販売する非独占的実施権を許諾する。 エ実施権許諾の対価(3条)(ア) イニシャル費2000万円(消費税が別途加算される。)(イ) 販売実施料半年ごとに販売した「本件製品」について「正味販売価格」の●●% の金額(消費税が別途加算される。)オ表示(7条)原告は、本契約の期間中、本契約に基づいて、原告が製造・販売する「本件製品」に「本件特許及びノウハウ」の表示を付けることができる。 カ特許権侵害の排除(11条2項) 原告は、第三者が「本件特許及びノウハウ」を侵害し又は侵害しようとしていることを知ったときは、直ちにその旨を被告に通知し、侵害の排除又は予防について被告に協力するものとする。 キ係争(12条)原告が直接または間接に「本件特許及びノウハウ」の有効性を争う場合、 被告は、本契約を解約できる。 ク解除(14条1項)原告及び被告は、相手方が本契約に違反した場合、相手方にその是正を催告し、催告後30日以内に相手方が当該違反を是正しないときは、本契約を解除することができる。 (4) 原告の被告に対する支払 原告は、被告に対して、令和元年5月21日に前記(3)エ(ア)のイニシャル費として2000万円、同年12月17日にその消費税として160万円をそれぞれ支払った。 (5) 本件見積書及び原告の支払ア被告は 令和元年5月21日に前記(3)エ(ア)のイニシャル費として2000万円、同年12月17日にその消費税として160万円をそれぞれ支払った。 (5) 本件見積書及び原告の支払ア被告は、原告に対し、別紙2のとおり、見積合計金額432万円(税込) の本件動産に係る令和元年6月25日付け見積書(本件見積書)を発行した(甲20)。 イ原告は、令和元年6月28日、被告に対して432万円を振込送金した(甲21)。 (6) 債務不履行解除の意思表示 原告は、被告に対し、遅くとも令和5年7月10日までに到達した書面により、本件実施許諾契約14条1項(債務不履行)を理由として同契約を解除する旨の意思表示をした。 (7) 本訴提起及び請求の追加原告は、令和6年2月2日に、前記1(1)の請求(以下「請求(1)」とい う。)に係る本件訴えを提起し、その後、同年11月13日付け訴えの変更申立書により同(2)の請求(以下「請求(2)」という。)を追加した。 (8) 消滅時効援用の意思表示被告は、原告に対し、令和7年6月27日の弁論準備手続期日において、原告の被告に対する後記4(3)の債務不履行に基づく損害賠償請求権につい て、後記4(4)の商事消滅時効を援用するとの意思表示をした。 3 争点(1) 請求(1)関係本件実施許諾契約に基づく被告の債務不履行の有無(争点1)(2) 請求(2)関係 ア主位的請求関係 (ア) 被告は本件動産に係る使用貸借契約終了に伴う不当利得返還義務を負うか(争点2)(イ) 被告は本件動産契約に基づく債務不履行責任を負うか(争点3:争点2と選択的)(ウ) 消滅時効は完成したか(争点4:本件 契約終了に伴う不当利得返還義務を負うか(争点2)(イ) 被告は本件動産契約に基づく債務不履行責任を負うか(争点3:争点2と選択的)(ウ) 消滅時効は完成したか(争点4:本件動産契約に基づく債務不履行責 任について)イ予備的請求関係(ア) 被告は開発費用相当額の不当利得返還義務を負うか(争点5)(イ) 被告は不法行為責任を負うか(争点6:争点5と選択的)ウ主位的請求・予備的請求共通 原告の損失又は損害の有無及び額(争点7) 4 争点に関する当事者の主張(1) 本件実施許諾契約に基づく被告の債務不履行の有無(争点1)〔原告の主張〕本件実施許諾契約は、「本件特許及びノウハウ」に基づいて、製品の製造 及び販売を行うことを内容としている。許諾の対価についてみても、イニシャル費のみならず「販売実施料」を規定している。そして、それにより、原告と被告が共同して「本件特許及びノウハウ」を発展させることを目的としている(契約序文)。 このことからすれば、被告は、「被告において、原告に対して特許権等侵 害の主張をしない」といった単なる不作為義務にとどまらず、少なくとも、原告に対し、原告が現実に製品の製造・販売を行うために必要な「本件特許及びノウハウ」に関する情報を提供し実施に協力する義務(作為義務)を負っていた。 本件実施許諾契約において実施許諾を受けている「本件特許及びノウハウ」 のうち、少なくとも本件実用新案登録及び本件特許2については、その性質 上、被告の協力・情報提供がなければ製品化及び販売の準備が不可能であった。すなわち、被告からの必要データや書類の提示、必要な作業に基づく情報提供がない限り、本件実施許諾契約において合意されて 上、被告の協力・情報提供がなければ製品化及び販売の準備が不可能であった。すなわち、被告からの必要データや書類の提示、必要な作業に基づく情報提供がない限り、本件実施許諾契約において合意されている原告の実施権の施行、製品の販売は不可能であった。実際にも、被告の営業部長は、原告の従業員宛ての電子メール(令和元年8月2日付け)において、SEECに つき「このままデンケンの製造に移行するのは無理がある」と記載しており(甲22)、必要な情報なしに原告においてSEECを製造することは不可能であると認識していた。 しかるに、被告は上記の協力・情報提供をしないから、このことは、本件実施許諾契約に基づく債務不履行に当たる。具体的には、本件実施許諾契約 の契約書に記載の「ノウハウ」には、別紙3及び別紙4の表のうち、「公開情報で対応不可の理由」欄において「公開情報に記載なし」とある部分(ただし、別紙4の12番及び13番を除く。)について、原告に対して情報を提供し、一定の作業を行うことは少なくとも含まれるから、被告にはかかる債務の不履行がある。 〔被告の主張〕被告は、本件実施許諾契約上、原告が「本件特許及びノウハウ」の実施に対し権利行使を行わない不作為義務を負うにすぎず、本件実施許諾契約に基づく被告の債務として、被告が製品の製造及び販売に必要な情報等を原告に提供し、その実施に協力する義務(作為義務)は含まれない。仮に、かかる 義務が存在するとしても、被告は当該義務を履行している。よって、原告が主張する債務不履行は存在しない。 特許・実用新案の実施許諾に伴い技術情報の開示提供・援助義務が定められることもあるが、そのような場合は契約書において当該義務とその内容及び費用負担の有無が明示的に定められるのであり、本件実施許諾契 特許・実用新案の実施許諾に伴い技術情報の開示提供・援助義務が定められることもあるが、そのような場合は契約書において当該義務とその内容及び費用負担の有無が明示的に定められるのであり、本件実施許諾契約におい ては当該義務が定められていない以上、原告が主張する被告の義務が認めら れる余地はない。なお、原告が指摘する電子メール(甲22)の記載は、原告が応募しようとしていた国土交通省の技術公募につき、公募期間内に原告製のSEECで応募することは時間的に間に合わないという趣旨にすぎない。 (2) 被告は本件動産に係る使用貸借契約終了に伴う不当利得返還義務を負うか(争点2) 〔原告の主張〕SEECの製品化に当たり、原告は被告から必要なデータや書類の提示等を受けられておらず、製品化が進んでいなかったことから、作業が停滞している理由等を被告に確認したところ、被告は、図面やデータ等を占有・所持している●●●●●●●●(製品の製造委託先)からこれらの引渡しを受け られていないからであると説明した。そこで、原告及び被告は協議の上、開発に必要な機器を被告が購入し、売買代金を原告が被告に支払うこととした。 こうすることで、SEECの開発全体を促進させ、被告が●●●●●●●●から各種図面やデータ等の引渡しを速やかに受けられるようにし、被告から原告に対する必要データや書類の提示等を行えるようにすることとした。 そして、原告は、遅くとも令和元年6月28日までに、被告が本件動産を調達するとともに、原告が本件動産を被告から購入することを内容とする本件動産契約を締結し、その代金432万円(税込)を被告に支払った(原告は、本件動産を現に資産計上している。)。 その上で、原告は、被告が本件動産を開発の用に供せ を被告から購入することを内容とする本件動産契約を締結し、その代金432万円(税込)を被告に支払った(原告は、本件動産を現に資産計上している。)。 その上で、原告は、被告が本件動産を開発の用に供せられるよう、被告と の間の使用貸借契約に基づいて被告に対し本件動産の使用を許諾してきたところ(占有改定による引渡しがされている。)、改正前民法597条3項に基づき、被告に対して本件動産の返還請求をしたにもかかわらず、被告はその返還をしないから、被告は、本件動産の価額相当分の不当利得返還義務を負う。 〔被告の主張〕 原告と被告の間で本件動産を売買する合意は存在しない。実際の合意内容は、原告が被告に対し量産型のSEECを開発するための開発費用を支払い、その開発の成果物として被告から原告に対しSEECの回路図と部品リストを交付するというものである。本件見積書は、原告においては開発費用名目での支出ができないため、物品の売買代金として開発費用を支払いたいとい う原告からの提案を受けて作成されたものである。すなわち、原告担当者のA 氏から被告に対し、原告においては社内ルールとして開発費名目の支出はできないと説明されたため、仮に本件動産に係る本件見積書を作成し、物品の対価として開発費用が支払われることとなった。なお、被告は、本件動産のうち、量産型広帯域探査機1台のみを購入したと説明したこともあった が、実際には、原告に対する義務の履行として購入した物品は存在しない。 上記のとおり、本件動産の売買契約は成立していないことに加えて、改正前民法下の使用貸借契約は要物契約であるところ、原告から被告に本件動産の引渡し(占有改定を含む。)はされていないから、使用貸借契約も成立していない。 成立していないことに加えて、改正前民法下の使用貸借契約は要物契約であるところ、原告から被告に本件動産の引渡し(占有改定を含む。)はされていないから、使用貸借契約も成立していない。 (3) 被告は本件動産契約に基づく債務不履行責任を負うか(争点3:争点2と選択的)〔原告の主張〕前記(2)の〔原告の主張〕欄記載のとおり、本件動産契約は、被告が本件動産を調達した上で、被告が調達した本件動産を原告が被告から購入し、さ らに、原告がこれを被告に無償で貸し渡すことを内容とするものであるところ、被告が本件動産の調達さえしなかったことは、本件動産契約の債務不履行に当たる。 〔被告の主張〕争う。前記(2)の〔被告の主張〕欄記載のとおり、原告・被告間で原告の 主張するような本件動産契約は成立しておらず、債務不履行の前提を欠いて いる。 (4) 消滅時効は完成したか(争点4:本件動産契約に基づく債務不履行責任について)〔被告の主張〕仮に、本件動産契約が遅くとも令和元年6月28日までに成立していたと しても、同契約に基づく債務及びその不履行に基づく損害賠償請求権の消滅時効は同月29日から進行するから、令和6年6月28日の経過により商事消滅時効(改正前商法522条本文に基づくもの)は完成した。 〔原告の主張〕原告が、本件動産契約に基づく被告の債務不履行を覚知したのは、本件訴 訟係属中に、被告が令和7年1月28日付け被告準備書面(5)により、本件動産のうち量産型広帯域探査機1台しか購入していない旨を明らかにした時である。したがって、消滅時効期間はその時から進行するから、消滅時効は完成していない。また、上記の経過を踏まえると、被告が消滅時効を 産のうち量産型広帯域探査機1台しか購入していない旨を明らかにした時である。したがって、消滅時効期間はその時から進行するから、消滅時効は完成していない。また、上記の経過を踏まえると、被告が消滅時効を援用するのは信義則に反する。 (5) 被告は開発費用相当額の不当利得返還義務を負うか(争点5)〔原告の主張〕本件動産契約が成立しておらず、本件動産の代金432万円が、原告が被告に対して支出した開発費用の実態を有していたとしても、同開発費用の支出は本件実施許諾契約に付随するものであるところ、本件実施許諾契約が解 除されたことにより、被告は上記開発費用を保持する権原を失ったから、被告は不当利得返還義務を負う。 〔被告の主張〕争う。被告は、量産型SEECの開発費用として原告から金員を受領しているところ、同金員を用いて、量産型SEECの開発を行い、実際に完成さ せている。原告も量産型SEECの試作機を完成させており、加えて、原告 は回路図を受領しているのであるから、原告に損失は生じていない。また、量産型SEECの開発には、被告において、原告が支払った金額である432万円以上の開発費を要しており、被告に利得はない。 (6) 被告は不法行為責任を負うか(争点6:争点5と選択的)〔原告の主張〕 仮に、本件動産契約の債務不履行に基づく損害賠償請求権について消滅時効が完成しているとしても、本件においては、本件見積書記載の本件動産を被告が購入し、これらを利用して開発を進めていくということが、原告が上記契約の代金を支払った理由であった。他方で、被告は、本件動産のうち、現実に購入したのは量産型広帯域探査機1台のみであった(あるいは、全く 購入していなかった)と主張する。 被告 、原告が上記契約の代金を支払った理由であった。他方で、被告は、本件動産のうち、現実に購入したのは量産型広帯域探査機1台のみであった(あるいは、全く 購入していなかった)と主張する。 被告のこうした行為は、本件見積書記載の本件動産を真実購入しないのに、本件動産を購入し開発を進めていくかのように原告に虚偽の事実を告げ欺いた行為といえ、原告にその旨信じさせた上で、代金相当額432万円を得た詐欺といえる。したがって、被告は不法行為責任を負う。 〔被告の主張〕争う。前記(2)の〔被告の主張〕欄記載のとおり、原告・被告間で原告の主張するような本件動産契約は成立していないから、原告の主張は前提を欠く。 (7) 原告の損失又は損害の有無及び額(争点7) 〔原告の主張〕原告は、売買代金若しくは開発費用として被告に支払った432万円又は本件動産の価額相当額432万円の損失又は損害を被った。 〔被告の主張〕争う。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実並びに証拠(後掲のほか、甲23、乙19、証人A 、証人 B )及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 (1) 原告及び被告は、令和元年5月20日、本件特許権等につき、原告に通常実施権を設定する旨の本件実施許諾契約を締結した。 その当時、被告は、①本件実用新案登録を実施して撮影した高精細画像からクラックを自動抽出するシステム(通称「FOCUS」)の開発実績、②本件特許1(SH波によるドラム缶内面探査機に係る特許)の実施品(通称「SHEED」)の開発実績、③本件特許2(コンクリート製枕木のクラックを検知する広帯域超音波探査機に係る特許)の実施品(通称「SEEC」) の開発実 ム缶内面探査機に係る特許)の実施品(通称「SHEED」)の開発実績、③本件特許2(コンクリート製枕木のクラックを検知する広帯域超音波探査機に係る特許)の実施品(通称「SEEC」) の開発実績を有していたが、上記②及び③については新型(発展型)を開発中であり、上記③については、従来型SEECの量産型を開発中であった。 本件実施許諾契約のもと、原告による各実施品の製造・販売が軌道に乗ることは、原告の事業上の利益となるのはもちろんのこと、販売実施料として「正味販売価格」の●●%の支払を受けることができる被告の経済的利益に もつながるもので、原告が自社でそれら実施品を製造できる態勢を整えることは、双方にとって共通の事業目標となった。 (2) 原告は、被告に対して、令和元年5月21日に、本件実施許諾契約3条所定のイニシャル費として2000万円、同年12月17日にその消費税として160万円をそれぞれ支払った。 (3) 本件実施許諾契約を締結した当時、原告と被告との間では、本件特許2の実施品である広帯域超音波探査機(SEEC)の量産型の開発について、原告が単独でこれを行うことが実際上は容易でない旨の共通認識を前提に、開発までは被告が行う一方で、開発完成後の量産段階では、原告が製造を担うとの役割分担で事業を行っていくことが共通認識となっていた。 (4) 被告は、原告に対し、別紙2のとおり、見積合計金額432万円(税込) の令和元年6月25日付け見積書(本件見積書)を発行した。本件見積書には、その内容として本件動産が記載されているところ、そのうち、原告が量産化を目指していたSEECの従来型に関わるものは「量産型広帯域探査機」のみで、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 本件動産が記載されているところ、そのうち、原告が量産化を目指していたSEECの従来型に関わるものは「量産型広帯域探査機」のみで、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●に関するものであった。 (5) 原告は、令和元年6月28日、被告に対し、本件見積書に記載の金額である432万円を振込送金した。 原告と被告との間では、同金銭の支払について、被告が本件特許2の実施 品であるSEECの量産型を開発するための費用であること、これが完成した後の量産段階では、原告が製造を行っていくこととの共通認識があり、両社の従業員間の電子メール(乙22)でも、その旨の認識が確認された。 他方で、原告及び被告の間では、本件見積書の交付こそされたものの、本件動産の売買を約する旨や被告に対する引渡時期・方法などを定めた契約書 が作成されることはなかった。当時、原告が本件動産の受領の希望や関心を示すこともなく、原告の関心は、もっぱら、SEECの量産型の開発が成就し、原告自身で量産可能な状態に至ることであった。 (6) 原告従業員は、令和元年8月2日、被告従業員に電子メールを送信し、SEECに関して以下のとおりの記載をした。ここでいう「アンプ」とは、本 件動産のうち「量産型広帯域探査機」のことである。(乙22)「③超音波量産型探査機回路図を頂き次第、進めさせて頂きます。 ※アンプ2台について、弊社で確認致しましたが弊社では不要となります。 回路図が出来上がり次第、お送り頂けましたらと存じます。 回路図を頂き次第、進めさせて頂きます。 ※アンプ2台について、弊社で確認致しましたが弊社では不要となります。 回路図が出来上がり次第、お送り頂けましたらと存じます。 量産型作成に向け対応いたします。」 その後、被告は、上記メールで言及されていたSEEC(従来型)の量産型の回路図(乙17)を製作し、原告に提供した。 (7) 原告は、本件実施許諾契約のもと、FOCUS及びSEECの自社製造・販売に向けた準備を進め、その過程では、被告から、上記回路図ほか、一定の情報・知見や機材の提供を受けるなどの協力もあった(これが、本件実施 許諾契約に基づく義務の履行としてであったかについては争いがある。)が、結局、自社でこれら製品の製造を行うことはできなかった。 原告は、代理人弁護士を通じ、令和5年6月30日付けの書面で、被告に対し、被告が本件実施許諾契約に基づく情報提供義務の履行を行わなかったことに起因して、上記製品の製造を行うことができなかったため、本件実施 許諾契約を解除するとして、対価であるイニシャル費2000万円の返還を求めるとともに、本件見積書に記載の本件動産について、原告が購入してその所有権を有するものであるとして、所有権に基づく返還を請求し、仮に、被告が本件動産を調達すらしていないのであれば、対価として支払った金員の返還を求めるとの請求をした(甲11)。 原告は、これ以前において、被告が本件動産を調達したか否かについて、積極的に確認しようとしたことはなかった。 2 争点1(本件実施許諾契約に基づく被告の債務不履行の有無)について(1) 前記前提事実(3)のとおり、本件実施許諾契約は、被告が、原告に対し、原告が「本件特許及びノウハウ」に基づいて日本国内におい 1(本件実施許諾契約に基づく被告の債務不履行の有無)について(1) 前記前提事実(3)のとおり、本件実施許諾契約は、被告が、原告に対し、原告が「本件特許及びノウハウ」に基づいて日本国内において「本件製品」 を製造及び販売する非独占的実施権を許諾することを内容とするものである(2条1項)。そして、ここでいう「本件特許及びノウハウ」とは、「本件製品」(「本件特許及びノウハウ」を使用して原告が製造・販売した製品及びその部品)に関して、被告が保有している本件特許等(本件実用新案登録並びに本件特許1及び同2)を指すものと定義されている(1条)。 こうした本件実施許諾契約の定めからすれば、同契約上、被告は、原告が 本件特許等を実施して、製品及び部品を製造・販売することを許諾し、原告はこれに対する対価として消費税を含めて2160万円を支払ったものであり、被告において、これを超えての情報等を提供することで、原告による上記製造・販売に積極的に協力すべき法的義務まで負うものではないと解するのが相当である。 (2) これに対し、原告は、本件実施許諾契約上、被告には上記のような許諾に伴う権利不行使の不作為義務にとどまらず、少なくとも、現実に製品の製造・販売に必要な「本件特許及びノウハウ」に関する情報を原告に提供し、実施に協力する義務(作為義務)が存在する旨主張する。 この点、本件実施許諾契約において、「本件特許」との表現ではなく、 「本件特許及びノウハウ」との表現が用いられていることに着目すれば、一般の用語・用例として、特許発明に含まれない情報等も契約の目的となっている旨の原告の主張の趣旨自体が理解できないわけではない。しかしながら、前記のとおり、本件実施許諾契約の定義規定(1条)においては、「本件特 用例として、特許発明に含まれない情報等も契約の目的となっている旨の原告の主張の趣旨自体が理解できないわけではない。しかしながら、前記のとおり、本件実施許諾契約の定義規定(1条)においては、「本件特許及びノウハウ」とは、本件特許等(本件実用新案登録並びに本件特許1及 び同2)を指すことが明確に定義されているもので、これを超えた何らかの情報等まで上記文言に含まれることに言及する定めは見当たらない。また、本件実施許諾契約のうち、上記定義規定以外を見ても、表示に関する7条の定め(原告は、本契約の期間中、本契約に基づいて、原告が製造・販売する「本件製品」に「本件特許及びノウハウ」の表示を付けることができる。)、 特許権侵害の排除に関する11条2項の定め(原告は、第三者が「本件特許及びノウハウ」を侵害し又は侵害しようとしていることを知ったときは、直ちにその旨を被告に通知し、侵害の排除又は予防について被告に協力するものとする。)、係争に関する12条の定め(原告が直接または間接に「本件特許及びノウハウ」の有効性を争う場合、被告は、本契約を解約できる。) のいずれについても、「本件特許及びノウハウ」とは、本件特許等自体を指 すものとしか理解されない。 このことは、原告が指摘する序文(被告が有している特許及びノウハウを原告と共同して発展させることを目的とする。)の存在や、実施許諾の対価として販売実施料が定められていること(3条)により左右されるものではない。また、前記前提事実(3)のとおり、本件実施許諾契約の契約書は原告 自身が作成・用意したものでもあることからしても、原告の真意に反する文言や定義が用いられていると解することは困難である。 (3) また、前記1の認定のとおり、本件実施許諾契約締結当時、原告が直ち 自身が作成・用意したものでもあることからしても、原告の真意に反する文言や定義が用いられていると解することは困難である。 (3) また、前記1の認定のとおり、本件実施許諾契約締結当時、原告が直ちにSEECの製造を行うことは難しいとの両社の共通認識のもと、被告が量産型SEECの開発を担ったほか、原告に対して、SEEC製造に用いる回路 図の提供などの協力を行ったという事実経過があることは確かである。しかし、原告が、本件実施許諾契約のもとで各実施品の製造・販売を軌道に乗せていくことは、原告のみならず、被告にとっても経済的利益に資する枠組みの中で、上記事実経過については、原告及び被告間で、そのような事業展開に向けた協力連携がとられていた一環と見ることができ、それら被告の行為 をもって、本件実施許諾契約に基づく法的な協力義務の存在及びその一部履行が行われていたことを積極的に裏付けるものとはいえない。 最終的に、原告が、原告及び被告双方の企図に反して、上記各実施品の製造を実現することができなかったことは確かであるものの、この背景としては、原告に不足する知見等の正確な理解、共有も含め、原告及び被告間の連 携ないし意思疎通上の課題があった可能性はうかがわれる一方、当事者が本件特許等の実施を可能とするに足る情報は、特許公報及び登録実用新案公報で開示されているところでもあり(乙2~4)、原告の主張するような本件実施許諾契約に基づく被告の法的義務ないしその不履行を観念し、これに起因すると評価することは困難というほかない。 (4) したがって、被告において、現実に製品の製造・販売に必要な「本件特許 及びノウハウ」に関する情報を原告に提供し、実施に協力する義務(作為義務)が存在することを前提に、被告がか (4) したがって、被告において、現実に製品の製造・販売に必要な「本件特許 及びノウハウ」に関する情報を原告に提供し、実施に協力する義務(作為義務)が存在することを前提に、被告がかかる義務を履行しないことは本件実施許諾契約に基づく債務不履行に当たるとする原告の主張は、理由がない。 3 争点2(被告は本件動産に係る使用貸借契約終了に伴う不当利得返還義務を負うか)、争点3(被告は本件動産契約に基づく債務不履行責任を負うか)及 び争点4(消滅時効は完成したか)について(1) 原告は、遅くとも令和元年6月28日までに、被告が調達した本件動産をさらに被告から購入し、代金432万円(税込)を被告に支払ったとして、原告・被告間に本件動産の売買契約が成立し、その上で、原告は、被告との間の使用貸借契約に基づいて被告に対し本件動産の使用を許諾していたので あるから、その使用貸借の終了によって本件動産の返還義務を負うにもかかわらず、これを履行せず、不当利得がある旨主張する(争点2)ほか、選択的に、被告がそもそも原告との間で約した本件動産の調達すらしていなかったのであれば、そのことをもって、本件動産契約の不履行がある旨主張する(争点3)。 この点、原告と被告の主張は、一見全く相いれないように映る面もあるものの、原告から被告に対し、令和元年6月28日に、同月25日付けの本件見積書記載の金額432万円の支払がされたもので、その原因たる何らかの合意が原告及び被告間で成立したといえること、その合意の目的が、被告による開発行為の費用に充てるためであったことまでは、実は当事者間に争い がなく、ただ、法技術的な構成のとらえ方はともかくとして、実質的にみると、上記合意の内容につき、①当該開発費用として、本件見積書記載の本件 用に充てるためであったことまでは、実は当事者間に争い がなく、ただ、法技術的な構成のとらえ方はともかくとして、実質的にみると、上記合意の内容につき、①当該開発費用として、本件見積書記載の本件動産の調達という具体的使途が特定されていたか、さらに、②その所有権を原告に帰属させ、開発の用を終えた後は原告に引き渡すことが契約の内容となっていたか(原告の主張は、このような合意内容を、民法上の典型契約の 組み合わせによって表現しようとしたものと理解できる。)、という主に2 点が、双方の対立点であると理解される。 (2) そこで検討するに、まず、前記認定事実に照らせば、原告及び被告間のメールのやりとりでも共通認識であると確認されているとおり、上記432万円の支払の趣旨は、対象とする開発自体は特定していた、すなわち、本件実施許諾契約のもとで双方が協力連携関係にあった原告によるSEEC量産化 に向けて、被告が量産型SEECを開発するための費用としての趣旨であったといえる。 他方で、本件見積書に記載されていた本件動産のうち、原告が量産を目指していた従来型のSEECに関係する物品は、「量産型広帯域探査機」のみであった。このことは、本件見積書の記載内容が、開発費用の実際の使途と は整合していないことを示すものといえる。 また、原告は、上記432万円の支払をした当時、本件見積書記載の本件動産の中で、唯一従来型のSEECと関係する「量産型広帯域探査機」でさえ、原告としては不要である旨メール上で明言していたことをはじめ、本件動産の受領を想定せず、関心もなかったというほかない。当時の原告の関心 は、被告との連携、役割分担のもと、もっぱら被告が量産型のSEECの開発に成功し、自らの製造につながる情報を提供してくれることで 受領を想定せず、関心もなかったというほかない。当時の原告の関心 は、被告との連携、役割分担のもと、もっぱら被告が量産型のSEECの開発に成功し、自らの製造につながる情報を提供してくれることであって、開発段階の個々の物品たる有体物を、原告に帰属させる意思はなかったものというべきである。 この点、本件見積書のような見積書は、売買契約締結の前段階として作成、 交付されるのが一般的であることは確かである。しかし、それ自体は、売買契約を直接証する処分証書というわけではないし、上記のような本件の特殊な経過、事情のもとで、その形式的な記載及び体裁を、原告及び被告間の契約内容を律するものとして重視することは相当でない。そして、その他、売買契約書など、本件動産の所有権を原告に帰属させ、最終的に原告に引渡し がされるべき旨の合意があったことを直接証する証拠は見当たらない。 以上のような諸事情の検討に照らせば、原告から被告に対する令和元年6月28日の432万円の支払は、本件見積書を経理処理等の便宜上利用しつつ、原告のSEEC量産の前段階として必要と認識されていた被告による量産型SEECの開発費用について、特に使途を特定・限定することなく原告として支出する趣旨で、その旨の合意に基づくものであったと認めるのが相 当であり、被告が本件動産を調達したり、本件動産を原告の所有に帰して、開発の用を終えた後に引き渡したりするとの合意が原告・被告間にあったとは認められない。 (3) 争点2及び争点3に係る原告の主張は、どの段階のどの不作為等を被告の不履行ないし不当利得と捉えるかの違いはあるものの、いずれにしても、被 告が、その開発行為の一環として、本件動産を調達した上、開発の用を終えた後は、その所有権者である原告に引き渡す 等を被告の不履行ないし不当利得と捉えるかの違いはあるものの、いずれにしても、被 告が、その開発行為の一環として、本件動産を調達した上、開発の用を終えた後は、その所有権者である原告に引き渡すことが、両社間の契約の内容となっていたことを前提とするものであるところ、その主張は上記のとおり前提を欠いており、採用できない。 (4) なお、仮に、令和元年6月28日の上記432万円の支払に係る原告及び 被告間の合意について、従来型SEECと関係する「量産型広帯域探査機」の調達についてのみは、開発費用の使途として具体的に特定されていたと解する場合(この場合も、原告の所有に帰して、原告に引き渡すことまで合意されていたと解することは困難である。)、本件で被告はその調達をしていなかったというのであるから、この点で、被告に債務不履行があり、これに 基づく損害賠償請求権が発生したことにはなる。 しかし、かかる被告の債務は期限の定めなきものとして、その不履行に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間は、遅くとも令和元年6月29日から起算されるものであるから、原告が令和6年11月13日付け訴えの変更申立書によって請求(2)を追加する前に、商事消滅時効(改正前商法522条本 文に基づくもの)は完成したもので、被告によるその援用の意思表示によっ て、上記損害賠償請求権は消滅したものといえる(争点4)。 消滅時効の起算点や信義則違反に関する原告の主張はいずれも具体的根拠を欠くもので、採用できない。 4 争点5(被告は開発費用相当額の不当利得返還義務を負うか)について原告は、上記432万円の支払が、被告の主張するとおり、使途を本件動産 の調達に特定・限定せずに開発費用に充てる趣旨であったとしても、同開発費用の支出は本件実施 還義務を負うか)について原告は、上記432万円の支払が、被告の主張するとおり、使途を本件動産 の調達に特定・限定せずに開発費用に充てる趣旨であったとしても、同開発費用の支出は本件実施許諾契約に付随するものであるところ、本件実施許諾契約が解除されたことにより、被告は上記開発費用を保持する権原はないから、被告は不当利得返還義務を負う旨主張する。 しかし、前記判示のとおり、被告には本件実施許諾契約の債務不履行があっ たとは認められないから、同契約14条1項(債務不履行)を理由として同契約が解除されたとは認められない。 したがって、原告の上記主張は理由がない。 5 争点6(被告は不法行為責任を負うか)原告は、被告が、本件見積書記載の本件動産を真実購入しないのに、本件動 産を購入し開発を進めていくかのように原告に虚偽の事実を告げて欺き、原告にその旨信じさせた上で、代金相当額432万円を得た詐欺行為(不法行為)を行った旨主張する。しかし、前記3での検討のとおり、原告は、具体的な使途を特定・限定することなく、被告による量産型SEECの開発費用として432万円を支払う旨合意し、これに基づく金銭の支払をしたもので、そこに錯 誤も欺罔行為も認められないから、原告主張の不法行為が被告に成立するとは認められず、原告の主張は理由がない。 6 結論よって、原告の請求は、いずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官 松川充康 裁判官 裁判長 裁判官 松川充康 裁判官 阿波野右起 裁判官 西尾太一 ※(別紙1)ないし(別紙4)はいずれも掲載省略

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