平成22(行ケ)10305 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年6月23日 知的財産高等裁判所 2部 判決 請求棄却
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判決文本文18,417 文字)

- 1 -平成23年6月23日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成22年(行ケ)第10305号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成23年6月9日判決原告株式会社小松製作所訴訟代理人弁理士黒川 恵津田幸宏早水浩一被告長野工業株式会社訴訟代理人弁護士平井昭光弁理士堀米和春平井善博 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 原告の求めた判決特許庁が無効2009-800242号事件について平成22年8月16日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要本件は,被告の請求に基づいてされた原告の特許を無効とする審決の取消訴訟であり,争点は,容易推考性の存否である。 1 特許庁における手続の経緯- 2 -原告は,平成8年3月8日に,名称を「油圧ショベルの油圧配管構造」とする発明について特許出願をし,平成17年1月21日に,本件特許第3637990号として特許登録を受けた(請求項の数4)。 被告は,平成21年12月1日に,本件特許の請求項1,2に記載された発明について無効審判請求をした。この請求は,無効2009-800242号事件として審理され,原告は,その手続中の平成22年6月11日付けで訂正請求をしたところ,特許庁は,平成22年8月16日,「訂正を認める。特許第3637990号の請求項1,2に記載された発明について 件として審理され,原告は,その手続中の平成22年6月11日付けで訂正請求をしたところ,特許庁は,平成22年8月16日,「訂正を認める。特許第3637990号の請求項1,2に記載された発明についての特許を無効とする。」との審決をし,その謄本は平成22年8月26日に原告に送達された。 2 本件発明の要旨平成22年6月11日付け訂正による本件特許の請求項1及び2(本件発明1及び2)は次のとおりである。 【請求項1】下部走行体の上部に装着された旋回可能な車体と,この車体と連結するスイングブラケットを介して連結される作業機と,この作業機を駆動する各油圧シリンダと,エンジンにより駆動される油圧ポンプの吐出圧油を各油圧シリンダへ油圧配管を介して給排する操作弁とを備えた油圧ショベルの油圧配管構造において,前記車体(13)の前端部にピン孔を有する車体突出部(13a)であって,該車体突出部(13a)の下面を前記車体(13)の下面より高くすることにより前記下部走行体(11)との間に前記油圧配管(1,1)を通過するスペースを形成した車体突出部(13a)と,この車体突出部(13a)のピン孔に挿入されたピン(19a)を介して左右回動自在なスイングブラケット(19)と,このスイングブラケット(19)と接続するブーム(21),アーム(23)およびバケット(25)からなる作業機(20)と,前記操作弁(18)から接続され,かつ,前記下部走行体(11)と前記車体突出部(13a)との間を通過するとともに,前記車体突出部(13a)と前記スイングブラケット(19)- 3 -とを連結するピン(19a)の下方の中心近傍を通過して,前記作業機(20)の各油圧シリンダ(22,24,26)と接続する複数の油圧配管(1,1)とを備えたことを特徴とする油圧ショベルの - 3 -とを連結するピン(19a)の下方の中心近傍を通過して,前記作業機(20)の各油圧シリンダ(22,24,26)と接続する複数の油圧配管(1,1)とを備えたことを特徴とする油圧ショベルの油圧配管構造。 【請求項2】前記操作弁(18)から各油圧シリンダ(22,24,26)へ接続される複数の油圧配管(1,1)は前記車体突出部(13a)と前記スイングブラケット(19)とを連結するピン(19a)の下方の中心近傍を通過してスイングブラケット(19)内でカバー(4a,4b)で被うようにしたことを特徴とする請求項1記載の油圧ショベルの油圧配管構造。 3 審判において審理された無効理由(1) 被告主張の無効理由1(特許法29条1項3号)本件発明1及び2は,米国特許3082890号明細書(刊行物2,甲1)に記載された発明である。 (2) 被告主張の無効理由2(特許法29条2項)本件発明1は,刊行物2記載の発明及び甲4-1~6-3に示された公知技術に基づいて,本件発明2は,刊行物2記載の発明,又は,刊行物2記載の発明及び甲5-1~5-8に示された公知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3) 職権により通知された無効理由(特許法29条2項)本件発明1及び2は,実願平5-63601号(実開平7-29041号)のCD-ROM(刊行物1,甲4-1)記載の発明及び刊行物2記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 審決の理由の要点平成22年6月11日付け訂正は,訂正要件を充足するので,訂正を認める。 職権により通知された無効理由について検討するに,次の(1)及び(2)のとおり,本件発明1及び2は,刊行物1及び2記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得た 正要件を充足するので,訂正を認める。 職権により通知された無効理由について検討するに,次の(1)及び(2)のとおり,本件発明1及び2は,刊行物1及び2記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。したがって,本件発明1 及び2は,被告主張の無効理由1及び2- 4 -について検討するまでもなく,特許法123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。 (1) 本件発明1について本件発明1と刊行物1記載の発明との間には,次の一致点と相違点1及び2がある。 【一致点】下部走行体の上部に装着された旋回可能な車体と,この車体と連結するスイングブラケットを介して連結される作業機と,この作業機を駆動する各油圧シリンダと,エンジンにより駆動される油圧ポンプの吐出圧油を各油圧シリンダへ油圧配管を介して給排する操作弁とを備えた油圧ショベルの油圧配管構造において,前記車体の前端部にピン孔を有する車体突出部と,この車体突出部のピン孔に挿入されたピンを介して左右回動自在なスイングブラケットと,このスイングブラケットと接続するブーム,アーム及びバケットからなる作業機と,前記操作弁から接続され,かつ,前記車体突出部と前記スイングブラケットとを連結するピンの近傍を通過して,前記作業機の各油圧シリンダと接続する複数の油圧配管とを備えた油圧ショベルの油圧配管構造。 【相違点1】ピンの近傍における複数の油圧配管の通過位置が,本件発明1では「下部走行体と車体突出部との間」かつ「ピンの下方の中心近傍」であるのに対して,刊行物1記載の発明では「ピンの側方近傍」である点。 【相違点2】相違点1の油圧配管の通過位置に関連して,車体突出部が,本件発明1では「車体突出部の下面を車体の下面より高くすることにより下部走行体との間に油圧配管を通 ピンの側方近傍」である点。 【相違点2】相違点1の油圧配管の通過位置に関連して,車体突出部が,本件発明1では「車体突出部の下面を車体の下面より高くすることにより下部走行体との間に油圧配管を通過するスペースを形成し」ているのに対して,刊行物1記載の発明ではそのよ- 5 -うな構成をとらない点。 相違点1について,刊行物2には,「複数の油圧配管(ホース)が,車体突出部(支持部材21)に左右回動自在に支持されたシリンダ25 の下方の中心近傍を通過している油圧配管構造。」(刊行物2記載の発明)が記載されているものと認められる。 そして,油圧ショベルにおいて,ピン近傍における複数の油圧配管の通過位置をどこにするかは,ピン近傍にある部材(スイングブラケット,ピン等)の位置や構造,運転作業時の視認性といった通常考慮するべき事項に基づいて,当業者が適宜選択すべき配置上の設計事項にすぎないから,刊行物1記載の発明において,刊行物2記載の発明に接した当業者であれば,複数の油圧配管を「(車体突出部とスイングブラケットとを連結する)ピンの下方の中心近傍」を通過させることは,上記事項を考慮して適宜なし得たことにすぎない。また,そうすることによって,複数の油圧配管が「下部走行体と車体突出部との間」を通過することになるのは必然である。 したがって,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用して,相違点1に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 相違点2について,油圧ショベルにおいて,旋回可能な車体及びそれに付属する部材が,その下方にある下部走行体に干渉しないように装着されるべきことはもちろんであるが,車体及びそれに付属する部材の位置を,下部走行体に付着するであろう土等にも干渉しないように設定することも,車体の旋回作業 の下方にある下部走行体に干渉しないように装着されるべきことはもちろんであるが,車体及びそれに付属する部材の位置を,下部走行体に付着するであろう土等にも干渉しないように設定することも,車体の旋回作業を円滑に行い,かつ,車体に付属する部材を保護する上で当然考慮されるべき事項である。 そうすると,刊行物1記載の発明において,複数の油圧配管を「ピンの下方の中心近傍」を通過させるに当たり,油圧配管が下部走行体に付着した土の干渉を受けないように,「車体突出部の下面を車体の下面より高くすることにより下部走行体との間に油圧配管を通過するスペースを形成」することは,当業者が当然考慮すべき事項である。 - 6 -したがって,刊行物1及び2記載の発明に基づいて,相違点2に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 (2) 本件発明2について本件発明2と刊行物1記載の発明との間には,上記(1)の一致点,相違点1及び2があるほか,次の一致点と相違点3がある。 【一致点】操作弁から各油圧シリンダへ接続される複数の油圧配管は,車体突出部とスイングブラケットとを連結するピンの近傍を通過し,この複数の油圧配管のうち,アーム及びバケットを駆動する各油圧シリンダへ接続される油圧配管はスイングブラケット内でカバーで被うようにしたこと。 【相違点3】本件発明2では,「(ブーム,アーム及びバケットを駆動する各油圧シリンダへ接続される)複数の油圧配管」をスイングブラケット内でカバーで被うようにしているのに対して,刊行物1記載の発明では,「複数の油圧配管のうち,アーム及びバケットを駆動する各油圧シリンダへ接続される油圧配管」はスイングブラケット内でカバーで被うようにしているが,ブームを駆動する油圧シリンダに接続される油圧配管は,スイ 数の油圧配管のうち,アーム及びバケットを駆動する各油圧シリンダへ接続される油圧配管」はスイングブラケット内でカバーで被うようにしているが,ブームを駆動する油圧シリンダに接続される油圧配管は,スイングブラケットの側面部に支持されていて,スイングブラケット内になく,カバーで被われていない点。 相違点1及び2については,上記(1)のとおりである。相違点3について,スイングブラケット周辺における油圧配管の通過位置は,接続対象の油圧シリンダの位置,配管後の作業時の視認性,油圧配管の保護といった通常考慮されるべき事項に基づいて,当業者が適宜決定するべき配置上の設計事項にすぎないから,刊行物1記載の発明において,ブームを駆動する油圧シリンダに接続される油圧配管についても,他の油圧配管と同様に,ピンの下方の中心近傍を通過させたのち,上記事項を考慮して「スイングブラケット内でカバーで被うように」することは,当業者が適宜なし得たことである。 - 7 -したがって,刊行物1記載の発明に基づいて,相違点3に係る本件発明2の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 第3 原告主張の審決取消事由 1 取消事由1(刊行物1記載の発明の認定の誤り,これに伴う相違点1の認定の誤り・判断の遺脱)審決は,刊行物1記載の発明として,「…前記コントロールバルブから接続され,かつ,前記前部フレーム13と前記スイングポスト5とを連結する縦軸12の側方近傍を通過して,…と接続する複数の油圧ホース18,24…」と認定する。しかし,本件発明1は,複数の油圧配管の配管構造について,①「下部走行体と車体突出部との間」,②「ピンの下方の中心近傍」の2点を規定しているから,これと対比する刊行物1記載の発明についても,①に対応する構成を認定すべきであり,上記認定 配管構造について,①「下部走行体と車体突出部との間」,②「ピンの下方の中心近傍」の2点を規定しているから,これと対比する刊行物1記載の発明についても,①に対応する構成を認定すべきであり,上記認定の「かつ,」の後に,「前記前部フレーム13の側方を通過するとともに,」が認定されるべきであった。 これに伴い,相違点1についても,「刊行物1記載の発明では「ピンの側方近傍」である点」に加えて,「車体突出部の側方」である点が認定されるべきであった。 この点が認定されなかったことにより,審決は,相違点1に関して,刊行物1記載の発明における「車体突出部の側方」にある油圧配管の通過位置を,本件発明1における「下部走行体と車体突出部との間」とすることの容易想到性についての判断を行っていないこととなり,判断すべき事項を遺脱していることとなる。 2 取消事由2(相違点1についての判断の誤り)(1) 審決は,油圧ショベルにおいて,ピン近傍における複数の油圧配管の通過位置をどこにするかは,配置上の設計事項にすぎないと判断している。 しかしながら,審決は,設計事項にすぎないとする根拠について,本件出願前の公知文献等による説明を行っておらず,この点を欠きながら,複数の油圧配管の通過位置が設計事項にすぎないことを当然であるかのごとき大前提とする審決の判断- 8 -は不当である。 (2) 審決は,刊行物2記載の発明について,単に「…油圧配管構造」と認定した。しかし,刊行物2に記載された油圧配管構造は,「バックホウ付きトラクタ」ならではのものであって,本件発明1や刊行物1記載の発明のような「油圧ショベル」ならではの油圧配管構造とは異なる。しかるに,刊行物2記載の発明として,バックホウ付きトラクタに係るものであることを捨象して,油圧配管構造に係る部分のみを認 行物1記載の発明のような「油圧ショベル」ならではの油圧配管構造とは異なる。しかるに,刊行物2記載の発明として,バックホウ付きトラクタに係るものであることを捨象して,油圧配管構造に係る部分のみを認定し,刊行物1記載の発明との組合せを安易に認めたことは誤りである。 (3) 審決は,複数の油圧配管の通過位置を,刊行物1記載の発明における「ピンの側方近傍」から「ピンの下方の中心近傍」とすることについて,適宜なし得たことにすぎないと判断している。 アしかしながら,本件発明1の構成は,「ピンの下方」のうち,その中心からの距離を近傍とするものである。複数の油圧配管を「ピンの下方の中心近傍」とすることにより,運転席からの視界を妨げることがない等の効果を得ることができる。この効果は,複数の油圧配管を,単にピンの下方に配置することによってもたらされるのではなく,ピンの下方の中心近傍とすることによって,最もよく発揮されるのである。 イ本件発明1や刊行物1記載の発明に係る「油圧ショベル」は,上部旋回体,下部走行体及び作業機から成り,旋回動作を必須としており,上部旋回体が左右方向を向いた場合の安定性確保等のために,作業機を軽量にするという設計思想を必要とする。これに対し,刊行物2記載の発明に係る「バックホウ付きトラクタ」は,上部旋回体が存在せず,旋回動作を必須としておらず,作業機の重量が増加しても作業の安定性に影響がない。したがって,旋回のある油圧ショベルの当業者が旋回のないトラクタの技術に接することは通常なく,接したとしても,トラクタの技術を油圧ショベルに適用することは考えない。 ウ刊行物2記載のバックホウ付きトラクタは,作業機を左右にスライドすることが可能という特殊な構造を採用しているので,スライドに伴ってホースが外- 9 -側にはみ出るこ 用することは考えない。 ウ刊行物2記載のバックホウ付きトラクタは,作業機を左右にスライドすることが可能という特殊な構造を採用しているので,スライドに伴ってホースが外- 9 -側にはみ出ることを避けるため,側方には配管されない。また,作業機の回動軸に特殊なスイングシリンダが組み込まれているので,その内部空間に配管することもできない。このような特殊な事情の下で,下方への配管を採用しているにすぎないのに,このうち下方を通過させるという部分だけを切り出して,油圧ショベルに適用することは後知恵である。 エ刊行物1記載の発明のような油圧ショベルでは,車高が高くなることを押さえつつ,下部走行体のクローラ上に連行される土との干渉を避けるために,旋回体の下方に配管を通すことは避けようとするのが通常である。これに対し,刊行物2記載の発明の「バックホウ付きトラクタ」では,土との干渉を避けるという課題がなく,車体の下方に配管することを避けようとする必然性がない。したがって,刊行物2記載のバックホウ付きトラクタの配管構造を油圧ショベルに組み合わせることについては,動機付けがなく,阻害要因がある。 オ刊行物1記載の発明に係る油圧ショベルでは,下部走行体と車体突出部との間に,複数の油圧配管を配置することを意図するような間隙がない。相違点2に係る本件発明1の構成を採用しなければ,「下部走行体と車体突出部との間」には間隙がないのであるから,複数の油圧配管がピンの下方を通過することにはならない。審決は,相違点1の判断をするにあたり,相違点2に係る本件発明1の構成を暗黙のうちに取り入れて判断しているもので,典型的な後知恵である。また,刊行物1記載の発明では,縦軸12のすぐ後方の側板13bに,油圧ホースが前部フレーム13の内部から引き出される切欠き部13cが設 暗黙のうちに取り入れて判断しているもので,典型的な後知恵である。また,刊行物1記載の発明では,縦軸12のすぐ後方の側板13bに,油圧ホースが前部フレーム13の内部から引き出される切欠き部13cが設けられているから,複数の油圧配管を「(車体突出部とスイングブラケットとを連結する)ピンの下方の中心近傍」を通過させようとすると,すぐ後方の側方から引き出された油圧ホースが縦軸12の下方を通過することになり,物理的に極めて不自然な配管となる。当業者がそのような不自然な配管形態を採るような構成に想到するはずがない。 3 取消事由3(相違点2についての判断の誤り)審決は,相違点2について,「油圧ショベルにおいて,旋回可能な車体及びそれ- 10 -に付属する部材が,その下方にある下部走行体に干渉しないように装着されるべきことは勿論であるが,車体及びそれに付属する部材の位置を,下部走行体に付着するであろう土等にも干渉しないように設定することも,車体の旋回作業を円滑に行い,かつ,車体に付属する部材を保護するうえで当然考慮されるべき事項である。」と判断する。 しかしながら,刊行物1記載の発明もそのような点を考慮して設計されているにもかかわらず,下部走行体と車体突出部との間に油圧配管構造が配置されるべき間隙がないのであって,相違点2に係る本件発明1の構成は,当業者をして考えようともしない構成である。 したがって,当業者にとって容易に想到し得たとする審決の判断は誤りである。 4 取消事由4(相違点3についての判断の誤り)審決における「スイングブラケット周辺における油圧配管の通過位置は,…当業者が適宜決定するべき配置上の設計事項にすぎない」との認定判断は,上記2(1)で主張したのと同様に,その根拠を述べておらず,不当である。 第4 被告の反 周辺における油圧配管の通過位置は,…当業者が適宜決定するべき配置上の設計事項にすぎない」との認定判断は,上記2(1)で主張したのと同様に,その根拠を述べておらず,不当である。 第4 被告の反論 1 取消事由1に対し刊行物1の【図2】及び【図8】からすると,刊行物1記載の発明における複数の油圧配管は,前部フレーム13の内部(上下板材の間,略中央付近)を通過しており,その側方を通過していない。 また,審決は,刊行物1記載の発明における油圧配管の位置について,「前記前部フレーム13の存在する場所」と「縦軸12の側方近傍」を通過する点を認定している。審決が,ピン近傍における油圧配管の通過位置を設計事項と判断していることからすると,「下部走行体と車体突出部との間」を含む前部フレームの部分における油圧配管の配設も設計事項にすぎないから,「前記前部フレーム13を通過している」と記載すれば十分であり,「下部走行体と車体突出部との間」に対応す- 11 -る構成を独立に相違点として認定する意義は乏しく,審決が相違点として認定しなかったことも相当である。 2 取消事由2に対し(1) 油圧配管の通過位置を検討する際に,油圧配管が破損しないよう,近傍にある部材の位置や構造を考慮することや,運転作業時の視認性を考慮することは,甲8-1等の各証拠に記載されるように,当業者の常識である。また,審決は,刊行物2を参酌するように説示しているのであるから,その意味でも,十分論拠を示している。 (2) 油圧ショベルもバックホウ付きトラクタも油圧によって駆動する作業機(バックホウ)を備える点では共通であり,作業機(バックホウ)に対して車体から油圧配管を行う点も共通している。また,油圧ショベルとバックホウ付きトラクタは関連する技術分野に属するものであり る作業機(バックホウ)を備える点では共通であり,作業機(バックホウ)に対して車体から油圧配管を行う点も共通している。また,油圧ショベルとバックホウ付きトラクタは関連する技術分野に属するものであり,解決すべき課題も共通している。したがって,刊行物1記載の発明と刊行物2記載の発明を組み合わせることは容易である。 (3)ア原告は,本件発明1の構成は,「ピン下方」のうち,その中心からの距離を近傍とすることに特定していると主張している。しかしながら,ピンの中心からの距離がどれくらいまでを近傍としているかについてのメルクマールは,一切開示されていない。すなわち,本件発明1の「ピンの下方の中心近傍」は,本件明細書の記載を参酌しても,漠然とピンの下方近くを通過するものを指し示すと解釈せざるを得ない。また,ピンの下方に配置する場合に,ピンの近傍とすることも,運転席からの視界を妨げないこと,油圧配管の配管長を短縮すること,他の部位との接触等を考慮すれば,当業者の常識である。 イ原告も会員となっている社団法人日本建設機械化協会等の団体において,委員会等の対象に「ショベル」と「トラクタ」が含まれているように,油圧ショベルの当業者はトラクタの当業者と接している。また,乙3のビデオにおいて,トラクタと油圧ショベルが様々な観点から比較検討されているように,油圧ショベ- 12 -ルとバックホウ付きトラクタは,同一の技術分野における製品として,研究・改良の対象となっている。原告は,上部旋回体の旋回の有無について主張するが,本件の油圧配管に関する技術は,上部旋回体の旋回と深い関係はなく,むしろ,作業機の旋回に関係するものであるところ,バックホウ付きトラクタにも旋回する作業機は備えられている。また,トラクタであっても,横の土砂を掘ることで不安定になるのであっ 旋回と深い関係はなく,むしろ,作業機の旋回に関係するものであるところ,バックホウ付きトラクタにも旋回する作業機は備えられている。また,トラクタであっても,横の土砂を掘ることで不安定になるのであって,作業機の重量は作業の安定性に関連する。さらに,上部旋回体を有するバックホウ付きトラクタも存在するのであって,このような同一又は関連する技術分野に属する製品間で,一方が考慮しない設計思想はほとんどない。 ウ刊行物2に接した当業者が,「スイングブラケットの回動部の下方の中心近傍に油圧ホースの配管があるという構成」を認識できることは明らかである。 また,作業機を左右にスライド可能にする構造やスイングブラケットの回動部の回動の具体的な手段はバックホウ付きトラクタの機種に応じて個々に設計される設計事項であって,「スイングブラケットの回動部の下方の中心近傍に油圧ホースの配管があるという構成」は,回動部の具体的な構成から独立して認識できるものである。また,仮に原告が主張するように,特殊な回動手段の採用から不可避的に当該油圧ホース配置の構成が帰結されるとしても,結果として生じた当該油圧ホース配置の構成自体については,これに接した当業者がその優位性や効果に着目して,これを他の構造のバックホウ付きトラクタや油圧ショベルに転用できないと考える理由は存在しない。 エ土との干渉は,油圧ショベルに限らず,バックホウ付きトラクタその他土工機械一般に存在する問題である。刊行物2記載の発明においても,ピン下方の油圧配管と地面との距離は決して遠くなく,油圧配管のカバーを備えることによりこのような問題に対処しようとしているものである。よって,土との干渉が油圧ショベルだけの技術的な課題であることを前提とする原告の主張は誤っている。 オ審決は,複数の油圧配管の通過位置につ とによりこのような問題に対処しようとしているものである。よって,土との干渉が油圧ショベルだけの技術的な課題であることを前提とする原告の主張は誤っている。 オ審決は,複数の油圧配管の通過位置について,ピン近傍にある部材(ス- 13 -イングブラケット,ピン等)の位置等,通常考慮するべき事項に基づいて,ピンの下方の中心近傍を通過させることは,適宜なし得る事項であると判断したが,ここにいう「ピン近傍にある部材」には,「車体突出部の下面」も含まれるものと解される。そして,車体下面と比べて車体突出部の下面を高く設計することは本件出願当時の当業者の技術常識又は周知技術である。 したがって,車体突出部の下面の位置に合わせて油圧配管の通過位置を検討するのと同様に,油圧配管の通過位置に合わせて車体突出部の下面を設計することもまた当業者の常識である。下部走行体と車体突出部との間に間隙を設けてはならないという技術的要求はなく,程度問題であるが,ある程度の間隙を設けることは,当業者にとって極めて容易である。 3 取消事由3に対し上記2で主張したとおり,車体下面と比べて車体突出部の下面を高く設計することにより,下部走行体との間にスペースを形成することは,本件出願当時の当業者の技術常識又は周知技術である。 4 取消事由4に対し上記2で主張したとおり,審決の判断に誤りはない。 第5 当裁判所の判断 1 本件発明について平成22年6月11日付け訂正による本件明細書及び図面(甲12,22)によれば,本件発明1及び2について,次のとおり認められる。 本件発明1及び2は,油圧ショベル等の建設機械の作業機用油圧配管の構造,特に作業機をスイングさせる油圧ショベルの油圧配管構造に関するものである(段落【0001】)。スイング式油圧ショベル れる。 本件発明1及び2は,油圧ショベル等の建設機械の作業機用油圧配管の構造,特に作業機をスイングさせる油圧ショベルの油圧配管構造に関するものである(段落【0001】)。スイング式油圧ショベルにおいては,車体と作業機とを連結するスイングブラケット近傍に油圧配管が配設されていたが,複数の油圧配管同士の干渉や土石等との接触による損傷といった問題があり,従来技術では,車体突出部及- 14 -びスイングブラケット内に空間を設けて油圧配管を通過させる方法や,油圧配管同士の干渉を避けるためクランプを用いる方法があったが,空間を設ける方法には製作コストが大きいという欠点が,クランプを用いる方法には土石等との接触による損傷や視界性が悪いという問題が解消しないという欠点があった(段落【0002】~【0006】)。そこで,本件発明1は,車体突出部13aの下面を車体13の下面よりも高くして,油圧配管を通過させるスペースを形成し,油圧配管を,下部走行体と車体突出部との間,かつ,車体突出部とスイングブラケットとを連結するピンの下方の中心近傍を通過させる構成とすることで,車体突出部及びスイングブラケット内に空間を設ける必要がなく,運転席からの視界性がよく,油圧配管とスイングブラケットとの接触がなくなるという効果を奏するものである(段落【0008】)。また,本件発明2は,本件発明1に加えて,スイングブラケット内で油圧配管をカバーで被う構成とすることで,スイングブラケット内における土砂等による油圧配管の損傷を防止する効果を奏するものである(段落【0009】)。なお,本件明細書には,本件発明1及び2について,下部走行体と車体突出部との間,かつ,ピンの下方の中心近傍における油圧配管と土砂等との接触防止に関する記載はなく,この部分における油圧配管と土砂等との接触防 本件明細書には,本件発明1及び2について,下部走行体と車体突出部との間,かつ,ピンの下方の中心近傍における油圧配管と土砂等との接触防止に関する記載はなく,この部分における油圧配管と土砂等との接触防止は,請求項3の「コ字状のガイド部材」により図られるとされている(段落【0010】,【図3】)。 【図1】油圧ショベルの側面図 【図3】油圧配管構造の説明図- 15 - 2 刊行物1(甲4-1)記載の発明について甲4-1によれば,刊行物1記載の発明について,次のとおり認められる。 刊行物1記載の発明は,上部旋回体の前部に油圧で作動するフロントアタッチメントの基端部を取り付けて構成される建設機械における油圧ホースの保護構造に関するものであって,従来技術の問題点,すなわち,油圧ホースを配管する際に,前部フレームから引き出される油圧ホースを撓ませる状態でそのままフロントアタッチメント側に配管すると,フロントアタッチメントを上下左右に揺動させた場合に,油圧ホースがスイングポストやブーム等の周辺部材に当たり,擦れたり傷付いたりして寿命が短くなってしまう,という問題の解決を目的とするものである(段落【0001】,【0003】)。同発明の油圧ショベル1は,上部旋回体3とフロントアタッチメント4とが,スイングポスト5を介して連結されており,スイングポスト5は,上部旋回体3の前部フレーム13に設けられた前端筒軸部13aに挿入された縦軸12を介して左右揺動自在に軸支されている(段落【0006】,【0008】,【図2】,【図3】)。そして,複数の油圧ホース18,24は,前部フレーム13の側面に設けられた切欠き部13cで上部旋回体3の内部から外部へと引き出され,前端筒軸部13a及び縦軸12の側方を通過するが,その ,【図3】)。そして,複数の油圧ホース18,24は,前部フレーム13の側面に設けられた切欠き部13cで上部旋回体3の内部から外部へと引き出され,前端筒軸部13a及び縦軸12の側方を通過するが,その先は,これらのうち,アームシリンダ10及びバケットシリンダ11へ接続される油圧ホース18は,スイングポスト5内を通過するよう配管され,ブームシリンダ9へ接続される油圧ホース24は,スイングポスト5の側面に支持される(段落【0011】,【0014】,【0015】,【図2】,【図3】)。また,アームシリンダ10- 16 -及びバケットシリンダ11へ接続される油圧ホース18は,スイングポスト内において,スイングポスト本体5aの前面板と支持部材20によって保護されている(段落【0013】,【図3】,【図6】,【図7】)。 【図2】油圧ホースの配管状態を示す側面図 3 取消事由1(刊行物1記載の発明の認定の当否等)について原告は,審決が,刊行物1記載の発明における複数の油圧配管の位置に関して,「前部フレームの側方」を通過する点を認定していないことが誤りであると主張する。 しかしながら,上記2のとおり,刊行物1記載の縦軸12は,前部フレーム13の一部である前端筒軸部13aの内部に挿入されており,縦軸12の側方は前端筒軸部13aに囲まれているのであるから,審決は,前端筒軸部13aの側方,すなわち「前部フレームの側方」も含めて,「縦軸12の側方近傍」を認定したものと理解することができる。 また,審決は,ピン近傍における油圧配管の位置について,刊行物1記載の発明の「縦軸12の側方近傍」である構成を,本件発明1に係る「下部走行体と車体突出部の間」かつ「ピンの下方の中心近傍」である構成とすることの容易想到性については,相違点1に関して判断してい 1記載の発明の「縦軸12の側方近傍」である構成を,本件発明1に係る「下部走行体と車体突出部の間」かつ「ピンの下方の中心近傍」である構成とすることの容易想到性については,相違点1に関して判断しているのであり,しかも,刊行物1の【図8】等からすると,縦軸12を囲む前端筒軸部13aの幅はさほど大きくないものと認められるから,刊行物1記載の発明におけるピン近傍の油圧配管の位置が「縦軸12の側方近傍」であっても,「前端筒軸部13aの側方」であっても大差はなく,相- 17 -違点1に関する判断が左右されるものではない。 したがって,審決の刊行物1記載の発明の認定に,原告主張の遺脱等の誤りはなく,これを前提とする原告のその余の主張も理由がないこととなるから,取消事由1は理由がない。 4 取消事由2(相違点1に関する判断の当否)について(1) 審決は,油圧ショベルに関する刊行物1記載の発明に,バックホウ付きのトラクタに関する刊行物2記載の発明を適用して,相違点1に係る本件発明1の構成とすることは容易であると判断した。 一般的な油圧ショベルとバックホウ付きトラクタとの間には,原告が主張するように,上部旋回体が旋回動作をするか否か等の違いがある。しかしながら,油圧ショベルとバックホウ付きトラクタは,一般的に油圧式の建設機械であるという点で共通し,切削及び積込みを行うという機能の点でも同種に分類されること(甲7-1~7-3),両方の機械を開発する企業もあること(乙7の1~7の3),市場において,上部旋回体のないバックホウローダーから上部旋回体を備えた油圧ショベルへの機種の変遷があった経緯があること(乙8)などからすると,これらの機械はいずれも同一の技術分野に属するものと認められる。 また,上記2のとおり,刊行物1記載の発明は,撓んだ油圧ホースが ショベルへの機種の変遷があった経緯があること(乙8)などからすると,これらの機械はいずれも同一の技術分野に属するものと認められる。 また,上記2のとおり,刊行物1記載の発明は,撓んだ油圧ホースがスイングポストやブーム等(作業機)に接触し,耐久性が低下するという課題の解決を目的とするものである。同様に,刊行物2記載のバックホウ付きトラクタも,「…油圧システムに最大稼働を許すに足るだけの十分な長さのホースがなくてはならない。必然的に,油圧ホースは相当に嵩張ったものとなりえ,バックホウ機構の本来の動作に対する障害となる可能性がある。」(1欄38行~42行,翻訳文1欄19行~21行),「…石やその他の物質がホースに引っ掛かるなどとしてホースが傷つかないように,支持フレームの下を通るホースの下方にホースガードを備え…」(1欄49行~52行,翻訳文1欄26行~27行)との記載によれば,油圧ホースの余剰分が作業機の運動を遮り,あるいは,石などと接触して耐久性が低下するとい- 18 -う課題を前提とした上で,油圧配管を下方に設置し,油圧配管のガードを用いたものであって,解決すべき課題も刊行物1記載の発明と共通している。 このような技術分野や解決課題の共通性からすると,油圧ショベルの技術分野に属する当業者が,バックホウ付きトラクタの技術手段の適用を試みることは,通常の創作能力の発揮にすぎず,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用する動機付けを一般的に否定することはできない。 以上のとおりであるから,複数の油圧配管がピンの側方近傍を通過する油圧ショベルに関する刊行物1記載の発明に,複数の油圧配管がシリンダの下方の中心近傍を通過する刊行物2記載の発明を適用して,複数の油圧配管が「ピンの下方の中心近傍」を通過させるようにすることについての容易想 ベルに関する刊行物1記載の発明に,複数の油圧配管がシリンダの下方の中心近傍を通過する刊行物2記載の発明を適用して,複数の油圧配管が「ピンの下方の中心近傍」を通過させるようにすることについての容易想到性を否定することはできず,むしろ,そうすることにより,複数の油圧配管が「下部走行体と車体突出部との間」を通過することは自明であるといえる。したがって,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用して,相違点1に係る本件発明1の構成とすることは容易に想到し得たとする審決の判断に誤りはない。 (2) 原告の主張に対する判断ア原告は,審決が,「ピン近傍における複数の油圧配管の通過位置をどこにするかは,配置上の設計事項にすぎない」と判断した点について,その根拠が示されていない旨主張する。しかしながら,一般論として,油圧配管の通過位置を検討する場合に,その近傍にある部材の位置や構造,運転作業時の視認性等を考慮することは,適宜行われることである。また,具体的な配置については,審決は,刊行物2記載の発明を認定した上で,これを刊行物1記載の発明に適用することの容易想到性を判断したもので,判断の根拠は示されている。したがって,原告の主張は理由がない。 イ原告は,審決が,刊行物2記載の発明(油圧配管構造)について,「バックホウ付きトラクタ」のものであることが捨象されていると主張する。しかしながら,油圧ショベルにバックホウ付きトラクタの技術を適用し得ることは,上記(1)- 19 -で説示したとおりである。 ウ原告は,本件発明1のように「ピンの下方の中心近傍」とすることで,単に「ピンの下方」とする場合と比較して,運転席からの視界を妨げられることがない等の効果が最も良く発揮される旨主張する。しかしながら,油圧配管を「ピンの下方」に配置すれば,運転席 傍」とすることで,単に「ピンの下方」とする場合と比較して,運転席からの視界を妨げられることがない等の効果が最も良く発揮される旨主張する。しかしながら,油圧配管を「ピンの下方」に配置すれば,運転席からの視界が妨げられることがなくなるのは自明であり,さらに,作業機の回動に伴う油圧配管の変位を少なくするために,ピンの下方の「中心」近傍に配置することも,当業者にとって容易になし得ることである。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 エ原告は,上部旋回体の旋回の有無という相違があるから,油圧ショベルの技術分野の当業者がトラクタの技術に接することはなく,適用を考えることはないなどと主張する。しかしながら,油圧ショベルにバックホウ付きトラクタの技術を適用し得ることは,上記(1)で説示したとおりである。 オ原告は,刊行物2記載の発明は,側方や内部空間への配管ができないという特殊事情により下方に配管したもので,下方を通過させる点だけを切り出すことは後知恵であると主張する。しかしながら,刊行物2の「…トラクタからバックホウまで伸びる油圧ホースは,支持スタンドの上か,下か,又は間を通らなくてはならない。」(1欄34行~36行,翻訳文1欄16行~18行)との記載に照らすと,刊行物2記載のバックホウ付きトラクタにおいて,側方への配管は想定されないとしても,上,下,その間のいずれを通過させるかは適宜選択され得るのであって,下方を通過させる油圧配管構造が刊行物2記載のバックホウ付きトラクタの特殊な構造に基づく特有の構成であるとは認められない。 カ原告は,油圧ショベルでは土との干渉を避けるために下方への配管を避けようとするのが通常であるが,バックホウ付きトラクタには土との干渉を避ける必然性がないので,バックホウ付きトラクタの技術を油圧ショベルに適用する阻 ョベルでは土との干渉を避けるために下方への配管を避けようとするのが通常であるが,バックホウ付きトラクタには土との干渉を避ける必然性がないので,バックホウ付きトラクタの技術を油圧ショベルに適用する阻害事由があるなどと主張する。しかしながら,上記(1)で認定したとおり,刊行物2記載のバックホウ付きトラクタについても,石等との干渉による油圧ホースの損傷を- 20 -防止するという課題があるのであって,原告の主張は前提を欠く。また,上記1のとおり,本件発明においても,「ピンの下方近傍」における油圧配管に対する土砂等の干渉防止は請求項3の構成によるものであって,本件発明1及び2ではそのような課題は解決されていないのであるから,本件発明1及び2に係る容易想到性が審理対象となっている本件において,ピンの下方近傍における土砂等の干渉防止を理由として,刊行物2記載の発明が適用できないとはいえない。 キ原告は,刊行物1記載の発明においては,下部走行体と車体突出部との間に複数の油圧配管を配置することを意図させる間隙がない旨主張する。しかしながら,審決は,相違点2において,油圧配管の通過位置と関連することを示した上で,「車体突出部の下面を車体の下面より高くすることにより下部走行体との間に油圧配管を通過するスペースを形成」することの容易想到性について判断している。 そして,相違点2に関する審決の判断に誤りがないことは,後記5で判示するとおりである。したがって,原告の上記主張は理由がない。また,原告は,油圧配管が縦軸12の下方を通過することは不自然である旨主張するが,車体突出部の下面を車体の下面より高くするという相違点2に係る本件発明1の構成を採用すれば,これに伴い縦軸12の位置も高くなるから,その下方を油圧配管が通過することは不自然ではなく,相違点2に関 ,車体突出部の下面を車体の下面より高くするという相違点2に係る本件発明1の構成を採用すれば,これに伴い縦軸12の位置も高くなるから,その下方を油圧配管が通過することは不自然ではなく,相違点2に関する判断に誤りがないことは後記5で判示するとおりであるから,原告の上記主張も理由がない。 5 取消事由3(相違点2に関する判断の当否)について油圧ショベルにおいて,車体下面と比べて車体突出部の下面を高く設計することは,甲6-3,9-1,9-2,9-4~9-10の特許公開公報等の図面に示されるように,本件出願時における当業者の技術常識又は周知技術である。したがって,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用するに当たり,このような周知技術を斟酌して,車体突出部の下面を車体の下面より高くし,下部走行体との間に油圧配管用のスペースを設けることに格別の困難性はない。 したがって,相違点2に関する審決の判断に誤りはない。 - 21 - 6 取消事由4(相違点3に関する判断の当否)についてスイングブラケット周辺における油圧配管の通過位置を検討する場合に,接続対象となる油圧シリンダの位置,作業時の視認性,油圧配管の保護等を考慮することは,当業者が通常行うことである。そして,刊行物1記載の発明においても,複数の油圧配管の一部はスイングブラケット内でカバーに被われるようになっているのであるから,その他の油圧配管を同様の構成とすることは,当業者が適宜なし得るものといえる。したがって,相違点3に係る審決の判断に誤りはない。 第6 結論以上のとおりであるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官 主文 原告の請求を棄却する。 理由 原告主張の取消事由はいずれも理由がない。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官 塩月秀平 裁判官 清水 裁判官 古谷健二郎

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