平成13(行ウ)12 平成14年(行ウ)第3号 土地収用裁決取消請求(乙事件)

裁判年月日・裁判所
平成14年3月27日 名古屋地方裁判所
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判決文本文35,729 文字)

主文 1 甲,乙両事件原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は甲,乙両事件原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 甲事件被告愛知県知事が名古屋市に対して平成12年8月8日付けでなした名古屋市高速度鉄道第4号線山下通・新瑞橋間建設工事事業に係る事業認定処分(平成12年愛知県告示第643号)を取り消す。 2 乙事件被告愛知県収用委員会が原告らに対して平成13年11月20日付けでなした名古屋市高速度鉄道第4号線山下通・新瑞橋間建設工事事業に係る土地使用裁決(12愛収第2-21号)を取り消す。 第2 事案の概要本件は,名古屋市高速度鉄道第4号線(以下「4号線」という。)山下通・新瑞橋間建設工事事業(以下「本件事業」という。)に関して,その起業地の一部を共有している甲,乙両事件原告(以下「原告」という。)らが,甲事件被告愛知県知事(以下「被告知事」という。)が行った本件事業の認定処分(以下「本件処分」という。)は,土地収用法(以下「法」という。)20条の定める要件を欠き違法である旨主張して,その取消しを求め(甲事件),併せて,乙事件被告愛知県収用委員会(以下「被告委員会」という。)が行った本件土地を使用し,明け渡す旨の裁決(以下「本件裁決」という。)も違法な本件処分を前提としたものである旨主張して,その取消しを求めた(乙事件)抗告訴訟である。 1 争いのない事実等(1) 当事者ア本件事業の起業地の一部となっている名古屋市瑞穂区市丘町一丁目24番地所在の土地(以下「本件土地」という。)について,原告Aは,6万2479分の6万1379の,原告Bは6万2479分の300の各持分権を有する共有者である。 なお,原告Aは,本件土地上に木造2階建ての住宅1棟(以下「 件土地」という。)について,原告Aは,6万2479分の6万1379の,原告Bは6万2479分の300の各持分権を有する共有者である。 なお,原告Aは,本件土地上に木造2階建ての住宅1棟(以下「本件建物」という。)を所有している(甲1)。 イ(ア) 被告知事は,法17条2項に基づき,本件事業の認定に関する権限を有する者である。本件事業の起業者は名古屋市であり,その管理者は名古屋市交通局長である(地方公営企業法7条及び8条,名古屋市交通事業の設置等に関する条例〔昭和41年12月26日条例第59号〕3条)。 (イ) 被告委員会は,法47条の2に基づき,起業者による土地収用申請に対し,申請を却下する場合のほか,収用又は使用の裁決をする権限を有する。 (2) 本件事業の概要(甲16,乙イ1,4の1)ア 4号線は,大曽根から砂田橋,本山,八事,新瑞橋を経由して金山に至る地下鉄路線であり,大曽根・新瑞橋間の総延長は約11.8キロメートルである。そして,4号線は,既存の地下鉄各路線を結ぶ環状路線の一部を形成し,名古屋市高速度鉄道第3号線(以下「3号線」のように号数で表す。)と八事駅で,6号線と新瑞橋駅で結節する予定となっている。また,4号線は,金山・新瑞橋間が既に営業路線として開通しており,残る大曽根・名古屋大学間を第1期工事(この内,大曽根・砂田橋間は既に営業を開始している。)として,名古屋大学・新瑞橋間を第2期工事として,建設が進められている。 イ本件事業は,上記第2期工事のうち山下通・新瑞橋間(以下「本件事業区間」という。)の地下鉄建設工事であり,名古屋市瑞穂区田辺通五丁目地内に工事起点を置き,同区洲山町二丁目地内の工事終点までの約958メートルの区間を全線地下式の複心円シールドトンネルで建設するものであり,法3条7号の事 鉄建設工事であり,名古屋市瑞穂区田辺通五丁目地内に工事起点を置き,同区洲山町二丁目地内の工事終点までの約958メートルの区間を全線地下式の複心円シールドトンネルで建設するものであり,法3条7号の事業に該当する。 ウ本件事業によって建設が予定されている施設等の概要(ア) 構造物シールド工法による複心円シールドトンネルから成り,その規模は,次のとおりである。 軌道中心間隔  4600ミリメートル内径縦5200ミリメートル横9800ミリメートル外径縦6300ミリメートル横1万900ミリメートル(イ) 軌道軌間1435ミリメートルの複線で,振動抑制のため,本件事業の区間の大半に継目のないロングレールを使用し,レールと枕木の締結に二重弾性締結方式を採用するとともに,防振コンクリート道床(PC枕木とコンクリート道床との間に防振ゴムを設置したもの)が採用されている。 (3) 本件事業の事業認定申請に至る経緯(甲5,23,25,29,乙イ4の1,25)ア昭和35年4月22日都市交通審議会名古屋部会,高速鉄道小委員会からの審議結果の報告に基づき,名古屋市の高速鉄道網整備に関する中間結論を取りまとめ,これを都市交通審議会総会に報告することが決定された。 イ昭和36年2月8日都市計画法(当時)による名古屋市都市計画高速度鉄道変更,追加及び廃止の決定,告示がされ,地下鉄敷設ルートが線で表示されるとともに4号線が追加された。これにより全5路線となった。 ウ昭和36年9月11日都市交通審議会名古屋部会は,本会議に対する答申案を採択した。 エ昭和36年10月21日都市交通審議会は,上記答申案を採択して,即日運輸大臣 ウ昭和36年9月11日都市交通審議会名古屋部会は,本会議に対する答申案を採択した。 エ昭和36年10月21日都市交通審議会は,上記答申案を採択して,即日運輸大臣に答申した。 オ昭和47年3月1日都市交通審議会答申(答申第14号)カ昭和50年3月12日,都市計画法の改正に伴い,都市計画が変更され, 地下鉄敷設ルートの表示方法が従前の線による表示から全区間15メートルの幅を持った表示に変更された。 キ平成4年1月10日運輸政策審議会答申(答申第12号)ク平成8年4月9日名古屋市が,第2期工事につき,鉄道事業免許を取得した。 ケ平成8年8月19日ないし9月2日都市計画変更原案及び環境影響評価準備書の閲覧コ平成8年8月23日,26日及び29日都市計画変更原案及び環境影響評価準備書の住民説明会が開催された(8月29日は瑞穂区の荻山中学校。意見書の提出期限は同年9月2日)。 サ平成8年10月3日名古屋市の変更原案が県知事に提出された。 シ平成9年1月24日県知事が,名古屋市長に対し,名古屋市都市計画都市高速鉄道名古屋市高速度鉄道4号線の変更(以下「本件変更」という。)について意見照会を行った。 ス平成9年2月5日都市計画変更案の公告セ平成9年2月5日ないし19日都市計画変更案の縦覧,環境影響評価準備書の閲覧ソ平成9年3月19日本件事業区間に対する工事施行認可タ平成9年3月21日名古屋市長が県知事案に同意した。名古屋市長の環境保全上の意見の閲覧が開始された。 チ平成9年6月9日名古屋市都市計画審議会答申ツ平成9年6月11日本 タ平成9年3月21日名古屋市長が県知事案に同意した。名古屋市長の環境保全上の意見の閲覧が開始された。 チ平成9年6月9日名古屋市都市計画審議会答申ツ平成9年6月11日本件事業区間に関する用地説明会が瑞穂区の弥富小学校において開催された。 テ平成9年7月23日愛知県都市計画地方審議会答申ト平成9年8月27日本件変更について建設大臣が認可した。 ナ平成9年9月8日本件事業区間についての都市計画変更決定(駅の位置に関して)の告示(愛知県告示第708号)及び環境影響評価書(以下「本件評価書」という。)の作成がされた。 ニ平成9年9月8日ないし16日都市計画変更図書の縦覧,本件評価書の公告閲覧ヌ平成10年4月10日(昼間)及び同16日(夜間) 山下通駅工区工事説明会が開催された。 (4) 本件処分(乙イ1ないし3)名古屋市は,平成12年3月30日,法16条に基づき,被告知事に対して,本件事業の事業認定の申請を行ったところ,被告知事は,平成12年8月8日,本件事業を認定するとの本件処分を行い,同日付けの愛知県公報でその旨告示された(平成12年愛知県告示第643号)。 (5) 異議申立て及び異議決定(甲3ないし7)原告A外37名及び原告Bは,平成12年9月6日及び7日,被告知事に対し本件処分の取消しを求める旨の異議申立てをそれぞれ行ったところ,被告知事は,同年11月21日,起業地内に所有権等を有しない36名の異議申立てを却下し,その余の者の異議申立てを棄却した。 (6) 本件裁決(乙ロ1)名古屋市は,平成13年2月16日,法39条に基づき,被告委員会に対して,本件土地の使用の裁決申請及び明渡裁決の申立てを行い,被告委員会 異議申立てを棄却した。 (6) 本件裁決(乙ロ1)名古屋市は,平成13年2月16日,法39条に基づき,被告委員会に対して,本件土地の使用の裁決申請及び明渡裁決の申立てを行い,被告委員会は,平成13年11月20日,以下のような裁決(12愛収第2-21号)を行った。 ア使用し,明け渡すべき土地の区域本件土地の別紙図面1<B>部分(258.10平方メートル)イ使用の方法及び期間(ア) 使用の方法a 使用の目的高速度鉄道事業用構築物を地下に築造すること並びにその構築物の所有及び保全b 使用の範囲東京湾中等潮位の上6.56メートルから下6.67メートルまでc 使用に伴う制限(a) 高速度鉄道事業用構築物を保全するため,使用する土地に木造以外の建物,工作物等を設置する場合,高速度鉄道事業用構築物に掛かる荷重を,建物,工作物等の底面において1平方メートル当たり8トン以下とし,高速度鉄道事業用構築物に障害を及ぼさない方法で設置すること(b) 高速度鉄道事業の障害となる建物,工作物等の設置及び掘削等の土地の形質変更を行わないこと(イ) 使用の期間高速度鉄道事業用構築物存続中ウ損失の補償(ア) 権利取得に伴う損失の補償a 土地所(共)有者原告Aに対し,金1992万6006円b 土地所(共)有者Cに対し,金16万2319円c 土地所(共)有者原告Bに対し,金9万7392円d 土地所(共)有者Dに対し,金9万7392円(イ) 明渡しに伴う損失の補償関係人原告Aに対し,金0円エ権利取得の時期及び 者原告Bに対し,金9万7392円d 土地所(共)有者Dに対し,金9万7392円(イ) 明渡しに伴う損失の補償関係人原告Aに対し,金0円エ権利取得の時期及び明渡しの期限共に平成14年1月21日(7) 本件裁決に対する不服審査請求原告らは,平成13年12月12日付けで,本件裁決について,国土交通大臣に対し,行政不服審査請求をした。 (8) 住民の会による代替案提出(甲22,乙イ21)「市民のための地下鉄を実現する住民の会」(以下「住民の会」という。)は,平成9年3月3日,名古屋市交通局長に対し,別紙図面2記載の代替案(以下「本件代替案」という。)を提出した。本件代替案は,新瑞橋駅から,山崎川の河川下を縦断的に通過したのち,瑞穂ラグビー場下を経由して,山下通駅に至るものである。なお,山下通駅の位置も別紙図面2記載の位置に変更することを内容としている。 (9) 本件評価書の内容(乙イ4の1及び2,26)本件評価書は,4号線の運行供用によって,本件事業区間において発生する振動について,以下のとおり予測している。 ア予測方法(ア) 予測式列車走行時に地表で観測される振動は,トンネルの振動と地盤の振動伝達特性によって表されるものと考え,トンネルでの類似事例調査,振動資料の収集,地盤関係資料の収集等を実施して予測を行った。地盤の振動伝達特性の検討には,地震学の分野で用いられるハスケルのマトリックス法(以下「ハスケル法」という。)を使用した。 (イ) 類似事例調査複線箱形及び単線シールドについては,名古屋市内の地下鉄における既存資料を,複心円シールドトンネルについては,JR東日本京葉線,東京・八丁堀間(以下「京 。 (イ) 類似事例調査複線箱形及び単線シールドについては,名古屋市内の地下鉄における既存資料を,複心円シールドトンネルについては,JR東日本京葉線,東京・八丁堀間(以下「京葉線」という。)における既存資料をそれぞれ収集し,トンネルの振動特性を把握した。 4号線の第2期工事に関わる,複心円シールドトンネルに関する予測条件は,以下のとおり設定した。 a トンネル重量:1メートル当たり53トンその内訳は,中柱を含むセグメントの重量が1メートル当たり約26トン,二次覆工の重量が1メートル当たり約16トン,インバートの重量が1メートル当たり約6トン,継ぎ手,ボルト類,道床コンクリート,レール及び枕木(以下「継ぎ手,ボルト類等」いう。)の重量が1メートル当たり約5トンである。 b 軌道:防振コンクリート道床c 列車速度:毎時65キロメートルd 地盤条件(a) N値(地盤の相対的な硬さ,締まりの程度を表す値):3ないし(b) P波速度(Vp):毎秒1500ないし2000メートル(c) S波速度(Vs):毎秒110ないし360メートル(d) 密度(ρ):1立方センチメートル当たり1.8ないし2.2グラム(e) 層厚(H):1.5ないし23.4メートルe 軌道構造による振動レベルの補正値:-8デシベルイ予測結果予測の結果,トンネル内に列車が走行した場合における本件事業区間における地表振動レベルの最大値は,複心円シールド区間で46デシベルとの結果となった。 ウ評価及び環境保全対策46デシベルの最大振動予測値は,常時微動( た場合における本件事業区間における地表振動レベルの最大値は,複心円シールド区間で46デシベルとの結果となった。 ウ評価及び環境保全対策46デシベルの最大振動予測値は,常時微動(人体には全く感じられないが,いつも存在している微振動)の範囲内であることから,環境保全目標は達成できるものと評価された。 2 本件の争点及び争点についての当事者の主張(1) 本件処分は,法20条2号の要件を満たすか。 (原告らの主張)本件事業の起業者たる名古屋市は,平成13年度の国の補助金が凍結されたため,その工事を実施することが不可能となっているから,法20条2号の「能力」を欠く。 (被告らの主張)そもそも行政処分に関する違法判断の基準時は当該処分時であり,それ以降の事由を主張して本件処分の違法を主張することは許されない。 また,平成13年度予算は既に成立しており,原告ら主張のように「凍結」ということはあり得ない。 (2) 本件処分は,法20条3号及び4号の要件を満たすか。 (原告らの主張)原告らは,以下に述べるとおり,本件事業によって受忍限度を超える約74デシベルの振動被害を被ることから,これにより大きな利益を失う一方で,かかる振動被害は,本件代替案の採用によって容易に回避することができる。この点について考慮していない本件処分は,裁量権の範囲を逸脱又は濫用した違法なものであり,法20条3号及び4号の合理性,公益上の必要性の要件を満たすものではない。 また,本件事業は,都市計画法に定められた都市計画に基づかないこと,本件事業が前提とする都市計画決定において住民参加の手続が欠けていたことにより,違法である。 さらに,本件事業は,長期にわたって実施されなかったことから,その公益上の必要性について大きな疑問がある 事業が前提とする都市計画決定において住民参加の手続が欠けていたことにより,違法である。 さらに,本件事業は,長期にわたって実施されなかったことから,その公益上の必要性について大きな疑問がある。 ア本件事業による振動被害の発生本件事業の完成に伴う地下鉄の運行によって原告らには深刻な振動被害が生じることが予測される。名古屋市の振動予測には誤りが存する。 (ア) 地下鉄の運行による振動被害の発生a 被害の内容以下のとおり,本件事業の完成に伴う地下鉄の運行によって,本件土地上の建物内では,少なくとも約74デシベルの振動が発生することが予測される。 この数値は,産業職場における快感減退境界に近い値であり,これまで静謐な環境を享受してきた原告らにとっては耐え難いものであって,受忍限度を超える被害というべきである。 b 算定根拠(a) 振動源であるトンネル内において発生する振動レベル(以下「底盤振動レベル」という。)ⅰ 振動予測式により予測される振動原告らは,名古屋市が類似事例として参考にした京葉線の振動測定結果から,本件事業線に最も類似した地点(以下「類似地点」という。)の実測振動レベル,測定条件等を抽出し,これを下記振動予測式に代入して底盤振動レベルを算出した。京葉線と本件路線は,いずれも防振コンクリート道床を採用しており,軌道構造に差がないことから,補正値であるKの値は0とした。類似地点は,本件事業線に最も類似した地点であるから,この地点における実測振動レベル,測定条件等を下記振動予測式に代入することによって,本件事業が完成された場合に地下鉄の運行により発生する底盤振動レベル(但し,後記補正前のもの)を想定することができる。 LTK=LT 測定条件等を下記振動予測式に代入することによって,本件事業が完成された場合に地下鉄の運行により発生する底盤振動レベル(但し,後記補正前のもの)を想定することができる。 LTK=LTR+20log(Z1/Z2)1.2-20log(V1/V2)-KLTK:計算上求められるトンネル内の振動レベル(dB)LTR:類似箇所におけるトンネル実測振動レベル(dB)Z1:類似箇所のトンネル重量(t/m)Z2:計画箇所のトンネル重量(t/m)V1:類似箇所の列車速度(km/h)V2:計画箇所の列車速度(km/h)K:類似箇所の軌道構造による補正値(dB)そして,京葉線の類似地点で行われた5回の測定の際の実測振動レベル等を上記振動予測式に代入すると,計算により求められる振動レベルは,最大で50.748デシベル,最低で43.158デシベルとなり,平均値は,47. 019デシベルとなる。 しかしながら,被害の実態を把握するためには,想定し得る最悪の状態を把握する必要があり,そのためには,数値に幅がある場合は幅があるものとして予測を行って最悪の数値を把握し,それをもって被害の予測値としなければならないから,上記最大値を採用すべきである。 ⅱ 複心円シールドトンネル使用による補正本件事業区間は複心円シールドトンネルが使用されるため,それに基づく補正が必要である。すなわち,複心円を構成するそれぞれのトンネルが独立して振動することによって振動レベルが増加する可能性を考慮すべきであり,また,列車がすれ違う ンネルが使用されるため,それに基づく補正が必要である。すなわち,複心円を構成するそれぞれのトンネルが独立して振動することによって振動レベルが増加する可能性を考慮すべきであり,また,列車がすれ違う場合に振動レベルが増加することも考慮しなければならない。列車がすれ違う回数は決して少なくないし,環境影響評価は発生し得る最悪の被害を想定して検討されなければならないからである。 こうした点を考慮すると,複心円シールドトンネルの採用及び列車のすれ違いによって振動レベルが3デシベル上昇するものと考えられるので,底盤振動レベルを予測するためには,前記ⅰの数値に3デシベルを加算する必要がある。 ⅲ 京葉線とのトンネル重量の違いによる補正本件事業の環境影響評価において,名古屋市は,類似事例である京葉線のデータと比較しつつ振動レベルを予測しているが,データを比較することによって予測を行う以上,比較の条件は両者で同一であることが必要である。 この点,名古屋市は,トンネルの重量を,一次覆工(中柱を含むセグメント),二次覆工,インバートのみならず,継ぎ手,ボルト類等の重量約5トンを含めて,1メートル当たり約53トンと設定し,それを前提に本件振動予測を行っているが,①原告らが東京都環境保全局に問い合わせたところ,評価書で用いる「トンネル重量」には,トンネルの一次覆工,二次覆工,中柱,インバートの重量の合計を意味するのが慣行であるとの回答があったこと,②原告ら自身による概算,③京葉線の中柱の材質などに照らすと,京葉線のトンネル重量に上記継ぎ手,ボルト類等の重量が含まれているとは考えられない。 したがって,本件における底盤振動レベルを予測する際には,継ぎ手,ボルト類等を除いた重量を基礎とすべきである。 そうすると,本件事業 上記継ぎ手,ボルト類等の重量が含まれているとは考えられない。 したがって,本件における底盤振動レベルを予測する際には,継ぎ手,ボルト類等を除いた重量を基礎とすべきである。 そうすると,本件事業区間のトンネル重量と京葉線のトンネル重量はほぼ同一であると考えられるから,本件事業区間のトンネル重量も1メートル当たり約47トンとすべきである。 1メートル当たりのトンネル重量を53トンとした場合と47トンとした場合に振動予測値に生じる差は,上記振動予測式に当てはめて計算すると,1.252デシベルであるから,前記ⅰの数値に1.252デシベルを加算する必要がある。 ⅳ 車輪・レールの摩耗等による補正底盤振動レベルは,車輪やレールの状況によって大きく左右される。本件評価書が使用した京葉線のデータは,運行供用に先立って観測されたものであり,車輪も軌道も新しい状態で観測されたデータである可能性が高いため,運行開始以降の振動レベルの予測には,この点の考慮が必要である。 すなわち,本件評価書の資料編には,車輪の摩耗により振動レベルが4倍になるという報告や,「この種のフラット(車輪踏面上に生じた波状の摩耗)により,地表振動は10dB程度増加する」との記載があるほか,レールの「コルゲーション」(波状摩耗)により10デシベル程度増加する旨のドイツの文献の紹介がある。 よって,車輪及びレールの摩耗により,地表の振動レベルがそれぞれ10デシベル増加する可能性があるから,少なくとも10デシベルを加算する必要がある。 (b) 地盤による振動の減衰ⅰ 本件評価書は,本件土地が存在する距離程(大曽根駅の中心を起点として算定)「10キロ900メートル」の地点における地表予測振動レベ 要がある。 (b) 地盤による振動の減衰ⅰ 本件評価書は,本件土地が存在する距離程(大曽根駅の中心を起点として算定)「10キロ900メートル」の地点における地表予測振動レベルを46デシベルとしているところ,原告らの計算によれば,同地点の底盤振動レベルは,前記のとおり平均47.019デシベルであるから,本件評価書は,地表振動レベルと,底盤振動レベルの差を約1デシベルと算定していることになる。 これを前提とすると,本件土地における地盤による振動の減衰があるとしても,それは約1デシベルにすぎないというべきである。 ⅱ 本件評価書は,地盤の特性による振動減衰効果をハスケル法を用いて算出しているが,ハスケル法は,本来,地震のような強力なエネルギーによって生じる深い振動源の振動が,異質な地層を通過する際,振動が一部反射されることによって複雑な減衰の過程をたどることを考慮した計算方法であり,本件のようにわずか13メートルないし30メートル程度の低深度における振動源に対して利用できるとした研究はなく,このような低深度では信頼性は著しく低下する。また,ハスケル法は昭和50年代の古い手法であり,全国的に見るとハスケル法を利用した評価書は少なく,一般的に用いられている手法とはいえない。したがって,本件にハスケル法を使用するのは相当でない。 (c) 地上建物の構造による補正本件土地上に存する原告A所有の本件建物は木造であるところ,横浜市営地下鉄1号線の環境影響評価書所収の論文には,一般に木造家屋は比較的柔らかい結合で造られ,多くの共振を持つ振動系であるため,加振の振動数がその共振領域に入ればしばしば振動増幅という現象が現れ,実測結果では板床及び板壁などでは10デシベル前後の増幅が見ら 屋は比較的柔らかい結合で造られ,多くの共振を持つ振動系であるため,加振の振動数がその共振領域に入ればしばしば振動増幅という現象が現れ,実測結果では板床及び板壁などでは10デシベル前後の増幅が見られたとの報告があり,かつそれを裏付ける測定結果が記載されていることに鑑みれば,建物の構造,素材による補正は必要不可欠であり,地上建物による振動増幅分として10デシベルを前記(a)ⅰの数値に加算すべきである。 (d) まとめ以上を総合すると,地下鉄の運行により,本件土地上の建物内では,前記(a)ⅰの最大値である50.748デシベルに同ⅱないしⅳ及び前記(c)の各数値を加算し,前記(b)の数値を控除した約74デシベルの振動被害が発生することが予測できる。 (イ) その他,本件事業の実施により,地下鉄の運行による騒音及び工事に伴う騒音,振動の発生も予想される。 イ代替案の採用について(ア) 平成9年3月に提出された本件代替案は,住宅地,民有地を避けて設計されたものであり,これによって,上述の振動被害を回避することができるのはもちろん,①権利の強制収用の回避,②本件事業についての土地収用費用の節減,③行政側,住民側の費やす時間と労力の削減,④工事の早期完成などの利点があり,その採用にさしたる障害はない。したがって,本件代替案について考慮していない本件処分には,裁量権の逸脱又は濫用が存する。 (イ) 被告らは,本件代替案は路線の多くが河川の下を通過する点で問題が存する旨主張するが,山崎川はさほど規模の大きくない三面コンクリート張りの河川である上,平成9年の河川法改正及び同11年8月5日付け建設事務次官通達「河川敷地の占用許可について」(建設省河政発第67号)中の「河川敷地占用許可準則」の改正が,各地 い三面コンクリート張りの河川である上,平成9年の河川法改正及び同11年8月5日付け建設事務次官通達「河川敷地の占用許可について」(建設省河政発第67号)中の「河川敷地占用許可準則」の改正が,各地域の主体性を尊重しつつ,河川敷の積極的・拡大活用を進めることを目的としていることからすれば,本件代替案を採用して河川敷を利用することは,むしろ改正の趣旨に合致するものであるから,被告らの主張は失当である。 (ウ) 被告らは,本件代替案によればカーブが増加し,レールの構造や乗り心地に影響すると主張するが,本件代替案によって生じるカーブは,普通鉄道構造規則10条が規定する設計最高速度毎時70キロメートル以下の場合の最小曲線半径の基準を超えないものであり,構造上の問題はない。また,本件代替案において最も急なカーブが生じる地点は,新瑞橋駅の近接地であって,カーブの有無にかかわらず,駅への進入のため当然減速する地点であるから問題はない。しかも,乗り心地の悪化の点については,何ら実証的でないばかりか,仮に実証されたとしても,その程度の利益により原告らの財産権及び生活権に対する侵害を正当化することはできない。 (エ) 確かに,本件代替案は,被告ら主張のとおり駅の位置等を変更することを内容としていたが,原告らは,本訴においては駅位置の変更を要求するものではないため,この点については問題とならない。 (オ) 本件代替案の採用により建設費が増加することがあり得るが,国民の権利を犠牲にしてまで回避すべきことではない。 ウ都市計画上の違法本件事業は,以下のとおり,都市計画法に定められた都市計画に基づくものではない上,本件事業が前提とする都市計画決定は,住民参加の手続を欠くから,本来実施してはならない違法なものである 違法本件事業は,以下のとおり,都市計画法に定められた都市計画に基づくものではない上,本件事業が前提とする都市計画決定は,住民参加の手続を欠くから,本来実施してはならない違法なものである。 (ア) 都市計画の不存在昭和36年2月の都市計画決定は,昭和25年1月に決定された都市計画による路線の大幅な変更を含むものであるから,本来であれば従前の都市計画を廃止した上で,新たな路線として新規に都市計画を決定すべきところを,「変更・追加・廃止」の形式で処理したものであって無効である。そして,昭和50年及び平成9年の都市計画変更決定は,いずれも,上記の無効な都市計画を前提とするものであるから,同様に無効である。 このように,本件事業は,そもそも根拠となるべき都市計画が有効に存在せず,違法である。 (イ) 住民に対する都市計画の説明の欠如本件事業の前提となる都市計画決定は,以下のとおり,住民参加の手続が欠如した違法なものであり,それに基づく本件処分もまた違法である。 a 昭和36年の都市計画決定は,地権者が図面を見ても,路線がどの土地にどのような形で通るか判断できないようなあいまいなものであった。また,名古屋市は,路線決定に当たり,当時の法律では不要とされていたとはいえ,市民・地域住民への事前説明など,行政が果たすべき義務を果たさなかった。 b 昭和50年の都市計画変更の際,昭和44年の改正都市計画法に定められた事前の公聴会や説明会が開かれず,地元関係者への周知に重大な瑕疵があった。 c 平成9年9月の都市計画(変更等)決定に際して,名古屋市は,平成8年8月29日の平日に1回,住民説明会を開いたのみで,しかも路線 ず,地元関係者への周知に重大な瑕疵があった。 c 平成9年9月の都市計画(変更等)決定に際して,名古屋市は,平成8年8月29日の平日に1回,住民説明会を開いたのみで,しかも路線の決定の根拠・経緯について合理的な説明を避けた。 また,名古屋市は,都市計画法16条によって必要があれば開くことと定められている「公聴会」を,理由を明確にしないまま簡易な「説明会」として開催した。 (ウ) 都市計画の違法性と本件処分の適法性の関係都市計画法11条1項は,「都市計画には,当該都市計画地域における次に掲げる施設で必要なものを定めるものとする。」として,都市高速鉄道を挙げているが,このような条文の構造は,昭和三十五,六年当時の都市計画法(以下「旧法」という。)でも同様であり,都市計画区域内の鉄道施設は,旧法16条1項及び同法施行令21条により,都市計画事業であると指定され,「内閣ノ認可ヲ受ケタルモノニ必要ナル土地ハ之ヲ収用又ハ使用スルコトヲ得」とされているのである。旧法3条では,「都市計画事業ハ都市計画審議会ノ議ヲ経テ主務大臣(建設大臣)之ヲ決定シ内閣ノ認可ヲ受クヘシ」とされていた(甲21)。 すなわち,当時でも,鉄道建設には,地方鉄道事業法に基づく鉄道免許が必要であることはもちろんであるが,それに加えて,軌道・トンネル等施設の工事施行には都市計画法に基づく建設大臣の決定及び内閣の認可が必要とされていた。したがって,都市計画の違法は本件処分の違法をもたらす。 エ本件事業の都市政策上の必要性について原告らは,地下鉄の公共性を原則として否定するものではない。 しかしながら,本件事業は,長期にわたって実施されなかった計画であるため,計画 エ本件事業の都市政策上の必要性について原告らは,地下鉄の公共性を原則として否定するものではない。 しかしながら,本件事業は,長期にわたって実施されなかった計画であるため,計画当時の状況と現況との間に多大な懸隔があるにもかかわらず,その必要性,公共性について未検討のまま本件事業が踏襲されている。  すなわち,昭和35年に計画された名古屋市営地下鉄の全5路線は,25年後の昭和60年に市の人口が350万人となり,1日の乗客数が210万人となることを想定して計画されたものである。ところが,その後,人口は想定どおりに増加せず,現在においても人口自体が210万人程度にとどまっており,地下鉄利用者は1日に112万人程度である。名古屋市交通局長も,既に昭和59年及び同60年に,推定人口の計算が誤っていたことを認識し,計画見直しの必要を認めていながら,実際には見直されることなく今日に至ったものであり,今般4号線が完成したとしても,名古屋市の地下鉄利用者が1日に210万人にのぼるとは到底予測できない。 このように,本件事業は40年前の誤った人口推定に基づいているにもかかわらず,その公益性,必要性について再検討・再討議されることなく本件処分がなされており,その都市政策上の必要性は大いに疑問である。 (被告らの主張)以下のとおり,本件事業によって原告ら主張の振動被害が発生するとは認められず,そうである以上,名古屋市が本件代替案を採用しなかったことは本件処分に何らの違法をもたらすものではない。また,そもそも代替案の有無及びその内容は,法20条3号及び4号の充足性を審査する際に考慮すべき事情とはならないし,仮に考慮すべきであったとしても,本件代替案には以下のような難点があるため,本件代替案を考慮しなかったことは,裁量権の逸脱又 法20条3号及び4号の充足性を審査する際に考慮すべき事情とはならないし,仮に考慮すべきであったとしても,本件代替案には以下のような難点があるため,本件代替案を考慮しなかったことは,裁量権の逸脱又は濫用をもたらすものではない。 そして,地下鉄の建設が都市計画に基づいてなされることは必ずしも必要ではなく,また,本件事業の都市計画決定において所定の住民参加手続は履行されている。そもそも都市計画の適法性と本件処分の適法性は関連しない。 さらに,本件事業による社会的,経済的効果は多大であり,本件土地を使用する公益上の必要性は極めて高い。加えて,本件事業は,決して長期にわたって実施されなかったものではないばかりか,そもそも事業が長期にわたって実施されなかったこと自体が事業認定を違法とするものではない。 以上の点に鑑みれば,本件処分には,裁量権を逸脱又は濫用した違法などは存在せず,法20条3号及び4号の要件を満たすというべきである。 ア振動の発生について(ア) 地下鉄による振動発生の原理は,科学的な調査,研究によって相当程度解明されており,本件事業においても,そうした現代の科学的知見を駆使して環境影響評価がなされた結果,振動の発生について環境保全目標の達成が確保できる旨の評価がなされている。具体的には,本件評価書により,本件事業区間における地表振動レベルは最大でも46デシベルと見積もられているところ,これは,人体が振動を感じ始めるとされる55デシベルを下回っているから,原告らに受忍限度を超える振動被害が発生することはない。 なお,本件評価書においては,原告らの主張のとおり,特異な値を除外したり,平均値を使用する方法が採用されているが,観測データには計器の機械的誤差や対象としていない他の要因が混在することがあるため,上下何 ,本件評価書においては,原告らの主張のとおり,特異な値を除外したり,平均値を使用する方法が採用されているが,観測データには計器の機械的誤差や対象としていない他の要因が混在することがあるため,上下何パーセントかの値を削除したり,平均的数値を用いたりして予測式に反映させることは一般的な手法である。 また,本件事業においては,防振効果のより高い軌道構造やロングレールの採用,日常的な軌道及び車両の点検及び整備等により,更なる防振対策に努めることを予定している。 (イ) 原告らの主張する地表振動レベル64デシベル(建物内で74デシベル)は,以下のとおり根拠を欠く数値である。 a 底盤振動レベルの算定について名古屋市は,本件事業の環境影響評価において,振動予測式に京葉線の実測振動レベルや重量比,速度比を直接代入して計算することによって4号線の振動レベルを算定しているわけではなく,以下のとおり,名古屋市営地下鉄の単線シールドトンネルにおける類似事例の実績と,京葉線のMFシールドトンネル(4号線の複心円シールドトンネルに類似)及び単線シールドトンネルの測定結果との比較を基に,本件路線における複心円シールドの予測値を把握したものである。具体的には,以下のとおりである。 ① まず,名古屋市営地下鉄の類似事例から,4号線の単線シールドにおけるトンネル内振動特性を周波数帯の7バンドごとにパターン化する。 ② 次に,京葉線の単線シールドトンネルとMFシールドトンネルの実測振動値を解析・比較することによって,それぞれの振動特性を周波数帯ごとにパターン化する。 ③ そして,京葉線の単線シールドトンネルとMFシールドトンネルの周波数帯ごとの振動特性の違いを,4号線の単線シールドトンネルの振 て,それぞれの振動特性を周波数帯ごとにパターン化する。 ③ そして,京葉線の単線シールドトンネルとMFシールドトンネルの周波数帯ごとの振動特性の違いを,4号線の単線シールドトンネルの振動パターンと比較することによって,これと同条件下の複心円シールドトンネルの振動特性を把握する。 ④ 最後に,③の結果に振動特性式を適用することによって4号線の複心円シールドトンネルの振動レベルを周波数帯ごとに把握する。 原告らは,京葉線における実測振動レベルや重量比,速度比を直接算出式に代入して結論を導いているが,本件評価書はそのような方法は採用していないのであって,原告らの方法は誤りである。 また,複心円シールドンネルは,円を重ねた形状であるものの,セグメントの組立ては一体のものとして行われ,構造的には完全に一体化しているから,振動源としては一つと見るべきである。そして,上下線が同じ条件で同時に通過した場合を考えてみても,その際の振動レベルの増加は,せいぜい3デシベル程度にすぎず,環境保全目標の達成に支障となるようなものではない。なお,本件評価書が単独走行の場合を想定して予測を行っているのは,列車は常に同一の箇所ですれ違うわけではないからである。 さらに,名古屋市は,前記のとおり,京葉線の事例を単線シールドトンネルとMFシールドトンネルとの比較のために用いたにすぎないから,京葉線のトンネル重量の問題は本件に影響しない。 車輪及びレールの経年変化による狂いや摩耗等によって振動レベルが増加することは事実であるものの,その要因や程度については,現在,予測手法が確立されていない。そして,未だかつて地下鉄による地表への具体的な振動被害の報告がなされていないことに鑑みると 振動レベルが増加することは事実であるものの,その要因や程度については,現在,予測手法が確立されていない。そして,未だかつて地下鉄による地表への具体的な振動被害の報告がなされていないことに鑑みると,原告ら主張のような振動レベルの増加が発生するとは経験則上認められない。また,名古屋市は,経年変化を可能な限り防止すべく,きめ細かい車両の点検・整備,軌道の保守・管理に努めることとしているから,原告ら主張のような振動レベルの増加が発生するとはいえない。 原告らは,底盤振動レベルが65デシベルである旨主張するが,複心円シールドトンネルの底盤振動レベルは,コンクリート道床で58デシベル前後と考えられ,本件事業区間においては,本件評価書が想定した防振コンクリート道床よりも防振効果の高い防振パッド等が採用されていることからすると,これをさらに下回るものと考えられる。 b 地盤特性による振動の減衰についてハスケル法は,主に地震学の分野で用いられる手法であるが,建設関係の耐震設計の分野で用いられることも少なくなく,決して特異な手法ではない。また,この手法は,距離等による減衰のみでなく,地層境界で反射した振動波も考慮するため,重複反射による増幅効果も計算できるという利点がある。その意味で,むしろ減衰効果のみを対象とする予測式と比べ,より大きな振動予測値を算定する可能性が高い。したがって,名古屋市がハスケル法を用いた点に問題はない。 また,地盤による減衰効果が1デシベルにすぎないとの原告らの主張は,科学的な常識からおよそかけ離れたものである。そして,複心円シールドトンネル内の底盤振動レベルが前記のとおりコンクリート道床で58デシベル前後と考えられることからすると,地盤減衰の結果,地表振動レベルが最大46デシベルになるとの ものである。そして,複心円シールドトンネル内の底盤振動レベルが前記のとおりコンクリート道床で58デシベル前後と考えられることからすると,地盤減衰の結果,地表振動レベルが最大46デシベルになるとの本件評価書の結論は妥当なものである。 c 建物の構造による振動の増幅について本件評価書が,建物の振動を考慮していないことは認めるが,これは,建物へ伝播してからの振動特性や伝播特性が十分に解明されていないことや,建物の基礎や構造形式は多種多様であり,類型化も含めて予測が困難であることに基づくものである。 しかしながら,地下鉄の走行によって,原告らの主張するような振動被害が生じるならば,すでに多くの被害の実例が報告されてしかるべきところ,未だかつて他都市も含め地下鉄営業線上での被害の報告は存在しないことに鑑みれば,地上の建物によって,振動が10デシベル増幅される旨の原告らの主張が誤りであることは経験則上証明されているというべきである。 また,仮に原告らが主張する程度に振動レベルが増幅されるとしても,本件において地表振動レベルの最大値が46デシベルと予測されていることからすると,木造建物内の振動レベルは閾値である55デシベル程度にしか至らないので,受忍限度を超える被害が生じることはない。 イ本件代替案について本件代替案には,以下のような難点が存在するので,これを採用しなかったことが裁量権の逸脱又は濫用に該当するとはいえない。 (ア) 河川下を通過することについて河川法24条及び平成11年8月5日付け建設事務次官通達「河川敷地の占用許可について」によれば,河川区域内の占用については,原則として許可すべきでなく,社会経済上必要やむを得ない場合又は公共用物として利用に 4条及び平成11年8月5日付け建設事務次官通達「河川敷地の占用許可について」によれば,河川区域内の占用については,原則として許可すべきでなく,社会経済上必要やむを得ない場合又は公共用物として利用に供する場合に限って許可されるものと考えられる。 また,上記通達中「河川敷地占用許可準則」第八,2の五には,「工作物は,原則として河川の縦断方向に設けないものであり,かつ,洪水時の流出などにより河川を損傷させないものであること。」との規定があり,平成6年9月22日付け建設省治水課長通達「工作物設置許可基準について」中の「工作物設置許可基準」第18章(河底横過トンネルの設置の基準)第36の1共通事項①は,「河底横過トンネルの平面形状は直線とし,設置の方向は洪水時の流水の方向に対して直角を基本とするものとすること。」としている。 さらに,本件代替案には,山崎川の河川区域の占用許可権者である県知事の許可が得られることの見込みについて何ら触れられておらず,その実現の可能性について全く未知数な,未成熟なものである。 この点につき,原告らは,東京の新川における地下駐車場の事例を挙げるが,新川と山崎川との間には,前者が,水の動きがなく治水上問題がないいわゆる「死に川」であるのに対し,後者は,千種区の猫ヶ洞池に源を発し名古屋港に至る全長13.6キロメートルのいわば「生きた」河川であるという差異や,新川の事例が,極度の用地難のため駐車場整備に必要な用地の確保ができない東京都における事例であるの対し,本件では,あえて山崎川の河川敷地の地下を使用しなくても地下鉄建設用地を確保する方法が存在するという差異が存するのであり,新川の事例を山崎川にそのまま当てはめることはできない。 以上のとおり,河川の縦断占用は困難であり,河川直 使用しなくても地下鉄建設用地を確保する方法が存在するという差異が存するのであり,新川の事例を山崎川にそのまま当てはめることはできない。 以上のとおり,河川の縦断占用は困難であり,河川直下を500メートルも縦断的に通るような本件代替案を採用することは不可能である。 (イ) 曲線の増加について本件代替案は,急なカーブが連続する軌道形状を有し,これを採用すると,以下のような問題が発生する。 すなわち,急な曲線部分を走行する列車は,その安定性を考慮してその速度を制限しなければならないところ(鉄道運転規則84条2項),本件代替案においては,S字形の急曲線部が連続しており,駅間すべてにわたって速度が制限されることになる。原告らは,新瑞橋に近接した曲線部分は,カーブがなくても当然減速する地点であり,カーブのために特に乗り心地が悪くなったり,速度が落ちたりすることはないと主張するが,反対方向の路線においては,逆に加速しなければならない地点であるから,かかる主張は失当である。 また,普通鉄道構造規則16条の規定により,曲線部分では遠心力の影響を低減するため曲線の内側のレールに比べて外側のレールを高くしており(カント),これにより乗客は車両の傾きを感じるが,これは曲線が急な場合ほど大きくなる。代替ルートの場合はS字形の曲線が連続するため,これが交互に繰り返されることにより揺れが発生し,また同時に,急カーブでは列車の車輪とレールのきしみにより車内に不快な騒音が発生する。こうした揺れや騒音のため本件代替案は乗客にとって大変乗り心地の悪いものとなる。 さらに,曲線部分の軌道では,列車の台車をスムーズに走行させるため,前述のカントやレールとレールの幅を広げるスラックを設けることとされ 代替案は乗客にとって大変乗り心地の悪いものとなる。 さらに,曲線部分の軌道では,列車の台車をスムーズに走行させるため,前述のカントやレールとレールの幅を広げるスラックを設けることとされている(普通鉄道構造規則15条)。また,曲線と直線の間には緩和曲線(曲線の曲がりを次第に大きくして直線につなげるとともに曲線部のカント,スラックを逓減する。)が挿入されることとなる(同規則12条)。そのため,本件代替案における軌道は非常に複雑な線形となり,加えて,急曲線部では車輪が大きな力でレールに当たりながら走行するため,著しい摩耗が予測される。その結果,本件代替案は,軌道の狂いが生ずる可能性が大きく,走行の安全確保のためにレール締結装置の点検及びこれらの位置関係の適正な維持,きしみ音緩和や摩耗防止並びにせり上がり防止の塗油装置の管理など,通常の線形に比べて保守管理上極めて困難な状況が生じる。 (ウ) 駅の位置,形態について本件代替案では,駅を瑞穂陸上競技場の前に設置することになるが,その結果,①主要交差点である山下通交差点から外れることになり,バス等の路面交通機関との接続が悪化する上,②駅位置が西側に寄ることになり,営業中の4号線新瑞橋駅や6号線瑞穂運動場駅の駅勢圏と重複することになる一方で,多数の利用者が見込まれる山下通交差点付近及びその東・北方向の地域からは遠ざかることになり,整備の効果が薄れることになる。また,本件代替案では,駅のプラットホームが急な曲線となるため,車両とホームの間に透き間が生じたり,車掌から目視できない部分が生じることから,乗客の安全に問題が生じる。 なお,原告らは,本訴においては駅の位置,形態の変更を要求していない旨主張するが,行政処分の違法性,瑕疵の有無の判 視できない部分が生じることから,乗客の安全に問題が生じる。 なお,原告らは,本訴においては駅の位置,形態の変更を要求していない旨主張するが,行政処分の違法性,瑕疵の有無の判断は当該行政処分がなされた当時を基準とする以上,本件において比較衡量の対象とされるべき代替案は,本件処分時に関係資料等から比較考量することが可能であった平成9年3月に提案された本件代替案に限られる。 (エ) 本件代替案を採用すると,建設費の増加は避けられない。 ウ都市計画法上の問題について鉄道事業は,必ずしも都市計画法上の都市計画事業として施行されなければならないものではなく,鉄道事業法上の免許を受ければ実施可能であり,本件事業も,都市計画において計画されたものの,都市計画法59条の都市計画事業として施行されているものではない。 したがって,本件処分が適法であるか否かの判断において,都市計画の有無の問題や住民に対する都市計画上の手続欠如等の問題は直ちには関係せず,その判断は,あくまで事業自体が合理性・公益性を有しているか否かによってなされるべきである。都市計画の適法性と法20条に基づく本件処分の適法性とは別個の問題である。 なお,昭和50年3月12日付けの都市計画の変更においては,軽微な変更であった新瑞橋駅付近については説明会等は開催されなかったものの,大幅な変更があった他の路線の必要な地区については,名古屋市による説明会の開催のほか,都市計画変更案に対する縦覧も適法に行われた。また,平成9年9月8日告示の都市計画の変更については,「広報なごや」に説明会及び縦覧に関する案内を掲載した上で(平成8年8月),関係地域を対象として,「都市計画変更原案の概要及び環境影響評価準備書のあらまし」を配 8日告示の都市計画の変更については,「広報なごや」に説明会及び縦覧に関する案内を掲載した上で(平成8年8月),関係地域を対象として,「都市計画変更原案の概要及び環境影響評価準備書のあらまし」を配布し,名古屋市役所,昭和区役所,瑞穂区役所,天白区役所の4か所において都市計画変更原案と環境影響評価準備書を縦覧に供したほか,滝川小学校(平成8年8月23日),表山小学校(同月26日),荻山中学校(同月29日)において,それぞれ住民周知のための説明会を開催している(3か所で合計256名が出席)。そのほか,平成8年8月以降,本件事業に反対している住民に対しても十分な説明を行っている。 エ本件事業の都市政策上の必要性について事業が長期にわたって実施されなかったこと自体は事業認定の拒否事由となるものではない。また,本件事業が計画立案されてから本件事業認定告示までの間,本件事業が放置されていたわけではなく,前記のとおり,住民に対する説明会の開催,用地の取得,利便性の向上等の目的による計画の一部変更,法令によって定められている諸手続の実行等,本件事業の実施のために必要な諸行為が行われてきたのであるから,本件事業が長期にわたって実施されていなかったということはできない。 他方,以下のとおり,本件事業の社会的,経済的効果は多大なものがあり,その公益上の必要性は極めて高い。 (ア) 4号線は,昭和36年の都市計画決定の告示以降,今日まで一貫して運輸政策上整備が必要な路線として位置付けられ,順次整備が進められてきたもので,開業時には1日約14万4千人の利用が見込まれている。 (イ) 名古屋市は,公共交通機関の整備の立ち遅れのため,典型的な自動車型の交通体系となっており,その結果,道路混雑,環境問題,駐車問題等が発生 には1日約14万4千人の利用が見込まれている。 (イ) 名古屋市は,公共交通機関の整備の立ち遅れのため,典型的な自動車型の交通体系となっており,その結果,道路混雑,環境問題,駐車問題等が発生している。こうした問題の解決には,都市高速鉄道を基幹とした公共交通網の整備拡充が必要であるが,既設地下鉄路線は,都心域からの放射状路線としての性格が強く,不便なものとなっている。 この点,4号線は,名古屋市において初の地下鉄環状線を形成し,他の路線,鉄道との結節により,効率的で質の高い都市高速鉄道のネットワークを構築する。 (ウ) また,以下の理由から,早急に整備を進める必要がある。 a 4号線の沿線には,住宅を中心とした市街地が形成され,高層住宅や団地群,大学群,病院施設及び大規模集客施設などが立地し,また,八事地区や新瑞橋地区には,商業・業務機能が集積している。 b 名古屋市東南部から都心に向かって,著しい交通渋滞が発生しているので,4号線の整備により道路混雑の緩和を図る必要がある。 c 4号線は,都心域に集中する鉄道利用者を分散し,既設線の混雑を緩和するために不可欠である。また,都心一極集中の都市構造の是正を図る上でも,4号線を整備する必要は大きい。 (3) 本件処分が違法なものである場合,それを前提としてなされた本件裁決は, 本件処分の違法性を承継するか。 (原告らの主張)本件裁決は,上記のとおり,違法な本件処分を前提としているので,その違法性を承継し,同様に違法なものとなる。 (被告委員会の主張)原告らは,既に本件処分の取消訴訟を提起し,その違法性を主張している以上,さらに裁決取消訴訟においてこれを主張することは許されない。 すな 違法なものとなる。 (被告委員会の主張)原告らは,既に本件処分の取消訴訟を提起し,その違法性を主張している以上,さらに裁決取消訴訟においてこれを主張することは許されない。 すなわち,いわゆる違法性の承継の理論は,先行処分の取消訴訟を提起せず,その出訴期間が経過した後に,後行処分の取消訴訟を提起して,先行処分の違法を理由に後行処分の取消しを求める場面のように,先行処分の違法性を主張する利益が存すると認められる場合に用いられるべきものであり,本件のように,すでに先行する本件処分の取消訴訟でその違法性を争う機会を得ている場合には,この理論を用いるべきではない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(法20条2号違反)について原告らは,本件事業は,平成13年度の国の補助金が凍結され,工事実施が不能となっていることから,起業者たる名古屋市は,法20条2号の「能力」を欠く旨主張する。 そこで判断するに,証拠(乙イ28の1及び2)によれば,平成13年8月16日,国土交通省の翌年度以降の予算概算要求の方針として,補助対象となっている全国17路線のうち,4号線を含まない3路線を優先させることが明らかにされたのに対し,名古屋市交通局は,所要の補助金の交付を受けられるよう,働き掛けを強める考えを示した事実が認められる。 しかしながら,上記事実だけでは,起業者たる名古屋市が本件事業を実施する能力を喪失したとはいえない上,国土交通省の上記方針の決定は,本件処分がなされた平成12年8月8日以降に生じた事由であるところ,行政処分の違法性判断は当該処分がなされた時を基準としてすべきものとされている(最高裁第二小法廷昭和28年10月30日判決・行裁集4巻10号2316頁など)ことに照らすと,かかる主張が失当であることは明らかであり 判断 は当該処分がなされた時を基準としてすべきものとされている(最高裁第二小法廷昭和28年10月30日判決・行裁集4巻10号2316頁など)ことに照らすと,かかる主張が失当であることは明らかであり,採用できない。 2 争点(2)(法20条3号及び4号違反)について(1) 法20条3号は,「事業計画が土地の適正且つ合理的な利用に寄与するものであること。」を,同条4号は,「土地を収用し,又は使用する公益上の必要性があるものであること。」をそれぞれ事業認定の要件として掲げているところ,「公共の利益の増進と私有財産との調整を図り,もって国土の適正且つ合理的な利用に寄与する」(法1条)との同法の目的に照らすと,上記各要件は,当該土地がその事業の用に供されることによって得られる公共の利益と,これによって失われる公共的又は私的利益とを比較衡量し,前者が後者に優越すると認められる場合に充足すると解すべきである。そして,この存否についての判断は,事業認定に係る事業計画の内容,事業計画の達成によってもたらされるべき公共の利益,事業計画において収用の対象とされる土地の状況等の諸要素の比較衡量に基づく総合判断として行われるべきものであり,その性質上,必然的に政策的,専門技術的判断を伴うものであるから,事業認定庁の判断が社会通念上明らかに不相当であって,裁量権の逸脱又は濫用にわたると認められない限り,違法をもたらすものではないと解される。 もっとも,事業認定の審査・判断に当たり,当該事業認定申請書等から代替案のあることが判明しており,かつ,これが申請に係る事業計画案よりも明らかに合理的かつ適正であるような場合には,法1条の趣旨に照らし,申請に係る事業計画案自体不適正もしくは不合理なものとして法20条3号,4号の要件を欠くと解すべきであるが,ここで 事業計画案よりも明らかに合理的かつ適正であるような場合には,法1条の趣旨に照らし,申請に係る事業計画案自体不適正もしくは不合理なものとして法20条3号,4号の要件を欠くと解すべきであるが,ここで比較衡量すべき代替案は,起業者は事業認定の申請に当たり,代替案の有無についての資料提出の義務を課せられていないことに照らすと,事業認定庁が審査する過程で関係資料等から当然に検討することが可能なものに限定されるというべきである。 以上の見地に立って,本件処分に裁量権の逸脱又は濫用が存するか否かにつき判断する。 (2) 本件事業の概要及びその効果前記争いのない事実等に証拠(乙イ1,4の1)を総合すれば,以下の事実が認められる。 ア 4号線は,昭和36年の都市計画決定の告示の後,昭和47年の都市交通審議会答申,昭和50年の都市計画変更決定の告示を経て,平成4年1月10日の運輸政策審議会の答申において,大曽根・新瑞橋間を平成20年までに整備することが適当な路線と位置付けられたものであり,これを受けて,名古屋市は,平成5年に大曽根・名古屋大学間の,平成8年には名古屋大学・新瑞橋間の各鉄道事業免許を取得した。このように,4号線は,一貫して運輸政策上整備が必要な路線として位置付けられ,順次整備が進められてきたもので,開業時には1日約14万4千人の利用が見込まれている。 イ名古屋市における各交通機関別の輸送人員に関する分担割合を見ると,公共交通機関の整備の立ち遅れのため典型的な自動車型の交通体系となっており,その結果,道路混雑に拍車がかかる一方,排気ガスや騒音等の環境問題,更には慢性的な都心域での駐車問題等が発生している。これらの問題の解決には,高速かつ大量の輸送を可能にする都市高速鉄道を基幹とした公共交通網の整備拡充が必要か かかる一方,排気ガスや騒音等の環境問題,更には慢性的な都心域での駐車問題等が発生している。これらの問題の解決には,高速かつ大量の輸送を可能にする都市高速鉄道を基幹とした公共交通網の整備拡充が必要かつ有効であるが,名古屋市の既設地下鉄路線は,都心域からの放射状路線としての性格が強く,環状方向へ移動するためには,いったん都心域を経由せざるを得ないことから,非効率かつ不便なものとなっている。この点,4号線の第1,2期工事は,既設の2号線の大曽根・金山間及び4号線の金山・新瑞橋間と一体となって,名古屋市において初の地下鉄環状線を形成するものであり,併せて1号線(本山),2号線(大曽根,金山),3号線(八事),6号線(新瑞橋),及びJR東海道本線(金山),同中央本線(金山,大曽根),名鉄名古屋本線(金山,堀田),同瀬戸線(大曽根)との各結節により,効率的で質の高い都市高速鉄道のネットワークを構築することが予定され,自動車中心の交通体系を是正し,効率的で調和のとれた総合交通体系の形成を図ることが期待されている。 ウ以下のとおり,本件事業の整備を早急に進める必要がある。 (ア) 4号線の沿線には,住宅を中心とした市街地が広範囲に形成されており,シャンボール山手,八事パークマンション,シティファミリー八事などの著名な高層集合住宅や団地群,名古屋大学,南山大学,中京大学などの大学群,名古屋第二赤十字病院等の病院施設及び瑞穂陸上競技場などの大規模集客施設などが立地している。また,八事地区や新瑞橋地区には,大規模スーパーマーケットを始めとする商業・業務機能が集積しており,これらの沿線から大量の輸送需要が発生しているが,現在は,3号線,6号線などにより,都心域との直線的結合にとどまっている。 (イ) 人口増加の著しい名古屋市東 業務機能が集積しており,これらの沿線から大量の輸送需要が発生しているが,現在は,3号線,6号線などにより,都心域との直線的結合にとどまっている。 (イ) 人口増加の著しい名古屋市東南部から都心に向かう路面交通は,国道153号線,県道岩崎名古屋線に集中し,朝夕には多数の乗用車,貨物車による著しい交通渋滞が,日中においても慢性的な道路混雑が発生している。これらをバス輸送によって緩和することは,定時性・高速性の観点から限界があるため,4号線の整備により鉄道への転換を促進し,道路混雑の緩和を図ることが期待されている。 (ウ) 4号線は,上記のとおり,既設の路線網と有機的に結節する地下鉄環状線を形成するものであり,都心域に集中する鉄道利用者を分散し,既設線の混雑を緩和するために必要不可欠である。また,大曽根,金山,本山,八事,新瑞橋といった地域拠点の間で発生する輸送需要に対応し,各拠点間の連携を一層強化することによって,都心一極集中の都市構造の是正を図る上でも,4号線を整備する必要は大きい。 エ本件事業によってもたらされる直接的な効果として,以下のとおり,想定されている。 (ア) 4号線は,その沿線に立地する上記学校群,病院施設,大規模集客施設などとの迅速かつ確実なアクセスを提供する最適の輸送機関となり得る。 (イ) 既設の放射状の路線網に環状の路線が結節することによって移動距離が短くなり,乗換回数も減少することから,利用者は大幅な時間短縮を図ることができる。また,環状方向への移動は,都心を経由する必要がなくなるため,既設線の混雑緩和にも大きく寄与するものと見込まれている。 (ウ) 名古屋大学・新瑞橋間が結節されることにより,路線に沿った南北方向の道路交通や市の東南部から都心方向への流 要がなくなるため,既設線の混雑緩和にも大きく寄与するものと見込まれている。 (ウ) 名古屋大学・新瑞橋間が結節されることにより,路線に沿った南北方向の道路交通や市の東南部から都心方向への流入交通につき地下鉄への転換を促進し,当該道路の混雑緩和に大きく寄与すると期待されている。 (エ) 都心部の交通渋滞,違法駐車,大気汚染,自動車騒音等の自動車交通の著しい増加がもたらす様々な社会問題や公害の軽減にも寄与し得る。 (オ) 4号線は,既設の2,4号線と一体となって環状線を形成し,大曽根,金山などの副次拠点域や,本山,八事,新瑞橋などの地域中心地と都心核を一つの路線として運行するものであるから,各拠点の拡大と連携の強化を図り,一極集中の都市構造の変革に資するとともに,これら拠点からの新たな需要に対応して,迅速かつ確実な輸送機関となり得る。 以上の点に鑑みると,本件事業計画が社会的,経済的に大きな公益性を有することは明らかというべきである(原告らも,地下鉄自体が公共性を有していることを否定するものではない)。 この点につき,原告らは,本件事業が長期にわたって実施されなかった計画であることを公益性欠如の一事情として主張しているところ,確かに,4号線は,当初の計画立案以来,その実施に至るまで長い年月を要したものであり,証拠(甲23ないし25)によると,この間,当初の想定人口や1日当たりの地下鉄利用乗客予想人数と現実のそれとの間に相当の開きを生じたことが認められるものの,長時間を要した原因は様々なものが考えられるから,計画の策定から実現まで長い期間を要したことが直ちに公益性の欠如を示すものとはいい難い。そして,前記認定のとおり,本件事業を実施することにより,現在においても名古屋市内の交通の利便が著しく向上し,交 画の策定から実現まで長い期間を要したことが直ちに公益性の欠如を示すものとはいい難い。そして,前記認定のとおり,本件事業を実施することにより,現在においても名古屋市内の交通の利便が著しく向上し,交通渋滞の解消等に資することが認められるのであるから,この点に関する原告らの主張は公益性に関する前記認定,判断を左右するものとはいえない。 (3) 本件事業が原告らに与える影響ア運行供用による振動の発生原告らは,本件事業の実施により,原告ら共有地の地下を地下鉄が走行することに伴って,原告らに受忍限度を超える約74デシベルの振動被害が発生する旨主張するので,まずこの点について判断する。 (ア) 振動被害の予測方法について原告らは,名古屋市の行った環境影響評価の振動予測に対して,被害実態を把握するためには,想定し得る最悪の数値を把握し,それをもって被害の予測値としなければならないので,予測の過程で特異な数字を除外したり,平均化したりすることは,被害の実態を過小評価するものであって妥当でないと主張するけれども,計測によって得られた数値には計測地点での特異な条件が影響しているものもあると考えられるので,一般的な被害を予測するための手法として極端なものはこれを除外し,その余の中間値を採用することには合理性があると解され,現に振動規制法施行規則(昭和51年11月10日付け総理府令第58号)は,変動幅がある場合は,上下10パーセントのデータはカットする旨規定し,昭和59年11月27日付け環境庁長官通達も「予測は,調査結果により必要と認める項目について,一般的な条件下における環境状態の変化を明らかにすることにより行う。」としている(乙イ30)。したがって,名古屋市が振動予測の際にこのような手法を採用したことには合理 より必要と認める項目について,一般的な条件下における環境状態の変化を明らかにすることにより行う。」としている(乙イ30)。したがって,名古屋市が振動予測の際にこのような手法を採用したことには合理性があり,この点に問題があるとは認められない。 (イ) 原告ら主張の予測振動値についてa 底盤振動レベルについて(a) トンネル内の振動レベルについて証拠(乙イ4の1及び2)及び弁論の全趣旨によれば,名古屋市は,本件事業の環境影響評価において,以下のとおり,京葉線のMFシールドトンネル及び単線シールドトンネルの測定結果との対比を基に,名古屋市営地下鉄の単線シールドトンネルのデータから,本件事業区間の複心円シールドトンネルの振動レベルを予測していることが認められる。 ① まず,名古屋市営地下鉄の単線シールドトンネルにおける多くの類似事例の実績を基に,4号線の単線シールドにおけるトンネル内振動特性を周波数帯の7バンドごとにパターン化する。これは,ハスケル法や振動特性式を用いて,類似事例の地表面振動レベルから,トンネル内の振動源における振動レベルを逆算するものである。 ② 次に,京葉線の単線シールドトンネルとMFシールドトンネルの実測振動値を振動特性式を用いてそれぞれ解析・比較することによって,同じ重量,同じ速度,同じ軌道構造と仮定した場合のそれぞれの振動特性を周波数帯ごとにパターン化する。 ③ そして,パターン化された京葉線の単線シールドトンネルとMFシールドトンネルの周波数帯ごとの振動特性の違い(②により把握される。)を,①の4号線の単線シールドトンネルの振動パターンと比較することによって,4号線の単線シールドトンネルと同一条件下の複心円シールドトン トンネルの周波数帯ごとの振動特性の違い(②により把握される。)を,①の4号線の単線シールドトンネルの振動パターンと比較することによって,4号線の単線シールドトンネルと同一条件下の複心円シールドトンネルの振動特性を把握する。 ④ 最後に,予測対象の4号線の複心円シールドトンネルの重量や速度は,4号線の単線シールドトンネルの条件と異なることから,③の結果に振動特性式を適用することによって4号線の複心円シールドのトンネル内の振動レベルを周波数帯ごとに計算する。 上記認定事実によれば,名古屋市は,既設路線における類似事例のデータを基に,異なった重量,速度,軌道構造下の周波数帯ごとの振動特性を把握し,それらをコンピューターを用いて解析,比較することによって,4号線の複心円シールドトンネルにおける振動レベルを予測したものであって,その手法は汎用性と科学的合理性を有すると判断することができる。 これに対し,原告らは,本件事業区間に最も類似した地点であることを前提として,京葉線の類似地点における実測振動レベルや重量比,速度比を,直接振動予測式に代入し,4号線のトンネル内の振動レベルを平均47.019デシベル,最大50.748デシベルと算定した上,本件事業によって起こり得る最悪の状態を想定すべきという観点から,後者を採用すべきであると結論付けているが,その前提の正確性や最大値を採るべき根拠について十分な検討がなされているとはいえず,上記の認定のとおり,名古屋市が各類似事例との相互の比較対象の下に総合的に振動レベルを予測している手法と対比して,原告らの予測手法が,より正確な予測値を導くものであるとはにわかに認め難い。 (b) 複心円シールドトンネル使用による補正について次に,原告らは 測している手法と対比して,原告らの予測手法が,より正確な予測値を導くものであるとはにわかに認め難い。 (b) 複心円シールドトンネル使用による補正について次に,原告らは,複心円シールドを構成するそれぞれのトンネルが独立して振動し,振動レベルを増加させる可能性があり,列車のすれ違いによる振動レベルの増加の点と併せてではあるものの,振動レベルが3デシベル増加すると主張する。しかしながら,上記主張は,単に複心円シールドトンネルの断面構造が単心円シールドトンネルより複雑であることのみを根拠とするもので,何ら科学的な検証を経ていない上,具体性も認められない。かえって,証拠(乙イ4の1,26)によれば,複心円シールドトンネルは,単線シールドトンネルが1メートル当たり32トンの重量であるのに比べ,1メートル当たり53トンと,約1.5倍の重量を有すること及び複心円シールドトンネルは構造上の一体性を有していることが認められるところ,乙イ第4号証の2(72ページ)によれば,列車の走行によるトンネルの底盤振動はトンネルの重量が増加することにより重量の0.82乗に反比例して低減すると認められるから,構造上一体性を有し,かつ単心円シールドトンネルよりも重量の大きい複心円シールドトンネルが,単心円シールドトンネルよりも高いレベルの振動を発生させるとは認め難い。 なお,列車のすれ違いに伴う振動レベルの増加については,被告らも3デシベル程度の増加があり得ることを認めており,これに沿う証拠も存する(乙イ7)から,予測されるトンネル内の振動レベルにこの数値を加算するのが相当である。 (c) 京葉線とのトンネル重量の違いによる補正について原告らは,京葉線のデータと比較しつつ,底盤振動レベルを の振動レベルにこの数値を加算するのが相当である。 (c) 京葉線とのトンネル重量の違いによる補正について原告らは,京葉線のデータと比較しつつ,底盤振動レベルを予測する以上,比較の条件を同一にすべきであるとして,名古屋市のトンネル重量には,京葉線のトンネルの重量に含まれていない継ぎ手,ボルト類等の重量約5トン分が含まれていること,したがって,底盤振動レベルを予測する際に用いるべきトンネル重量は,これらを除いた重量を基礎とすべきであると主張して,これを振動予測式に当てはめ,1.252デシベルの振動補正が必要であると主張している。 しかしながら,前記認定のとおり,本件事業計画の環境影響評価においては,京葉線のMFシールドトンネル及び単線シールドトンネルの測定結果との対比を基に,名古屋市営地下鉄の単線シールドトンネルのデータから,本件事業区間の複心円シールドトンネルの振動レベルを予測しているのであって,京葉線のデータは,単に単線シールドトンネルとMFシールドトンネルの振動レベルがどのような相互関係にあるかということを把握するための係数として用いられているにすぎないのであるから,仮に,京葉線のトンネル重量に継ぎ手,ボルト類等の重量が含まれていないとしても,そのことは本件事業区間における複心円シールドトンネルの振動予測値に何ら影響を及ぼすものではない。したがって,原告ら主張のような補正を行うべきであるとは考え難い。 (d) 車輪・レールの摩耗等による補正について車輪及びレールの摩耗等によって振動源の振動レベルが増加すること自体については,当事者間に争いがない。 ① 車輪の摩耗についてまず,車輪の摩耗による地表の振動レベルの変化について判断する ルの摩耗等によって振動源の振動レベルが増加すること自体については,当事者間に争いがない。 ① 車輪の摩耗についてまず,車輪の摩耗による地表の振動レベルの変化について判断するに,乙イ第4号証の2によれば,フラットを生じた車輪の輪重が2倍程度に増加すること,小さな車輪踏面上の摩耗が地表振動に大きな影響を与え,この種の摩耗によって地表の振動レベルが10デシベル程度増加することが認められる一方で,レールの摩耗による振動レベルの変化について確立した知見はないとの被告らの主張を明確に裏付ける証拠はない。 もっとも,未だかつて地下鉄による地表への具体的な振動被害の報告が存在しないこと(乙イ19)及び本件評価書によれば,一層の振動低減を図るため,きめ細かい車両の点検・整備,軌道の保守・管理に努めるとされており(乙イ4の1),こうした経年変化に対して最大限の防止が図られることが期待できることに鑑みれば,原告らの主張するように,4号線において,直ちに地表の振動レベルが10デシベルも増加する蓋然性を認めることはできない。 ② レールの摩耗について次に,レールの摩耗による振動レベルの変化について判断するに,まず,原告らは,ドイツの文献(乙イ4の2)を参考にしてレールの摩耗によって地表の振動レベルが10デシベル上昇する旨主張するが,そもそも同文献に記載されている例は,コルゲーション(波状摩耗)によってトンネルの振動が10デシベル程度増加した例が引用されているにすぎず,他方で,大きなコルゲーションを削正しても顕著な効果が現れなかった事例も同時に紹介されており(乙イ4の2),かかる事実に鑑みると,少なくともレールの摩耗による振動レベルの変化の有無や程度については,未だ確立された知見が存在しないといわざる 顕著な効果が現れなかった事例も同時に紹介されており(乙イ4の2),かかる事実に鑑みると,少なくともレールの摩耗による振動レベルの変化の有無や程度については,未だ確立された知見が存在しないといわざるを得ない。そして,前述のとおり,未だかつて地下鉄による地表への具体的な振動被害の報告が存在しないこと(乙イ19)及び本件評価書によれば,一層の振動低減を図るため,きめ細かい車両の点検・整備,軌道の保守・管理に努めるとされており(乙イ4の1),経年変化に対する適切な対応が期待できることに鑑みれば,条件の類比を検証することなく,4号線において,原告らの主張する10デシベルもの振動レベルの増加を認めることはできないというべきである。 以上を総合すれば,車輪やレールの摩耗等の経年変化を理由とする振動レベルの増加に関する原告らの主張は採用できない。 b 振動の減衰について原告らは,本件土地における地盤による減衰効果を約1デシベルであると主張するところ,その根拠は,被告ら主張の地表振動レベル46デシベルと,原告らが計算により推測した底盤振動レベル47.019デシベルの差が約1デシベルであるというものである。 しかしながら,本件評価書は,本件土地部分における底盤振動レベルを47.019デシベルと予測しているわけではなく,上記数値は原告らが独自の手法により求めたものにすぎないところ,上記手法に問題が存することは,既に述べたとおりである。 そして,証拠(乙イ4の1,2)及び弁論の全趣旨によれば,4号線のうち,既に営業を開始している金山・西高蔵間の単線シールドトンネルにおいて,トンネル底部から地表までの距離が18.1メートルの地点で実測した底盤振動レベルは63デシベル,同所の直上で計測した地表振動レ ち,既に営業を開始している金山・西高蔵間の単線シールドトンネルにおいて,トンネル底部から地表までの距離が18.1メートルの地点で実測した底盤振動レベルは63デシベル,同所の直上で計測した地表振動レベルは46デシベルであり,17デシベルの減衰がみられること,同所は本件事業区間に比較的近接していること,4号線の単線シールドトンネルの垂直方向の直径は複心円シールドトンネルのそれと同じく約6.3メートルであること,本件事業区間のトンネルの地表からの深さは,トンネル底部から計測すると15.3メートルないし25.3メートルであり,本件土地付近ではトンネル底部から22.8メートル(トンネル上端から16.5メートル)ないし24.9メートル(トンネル上端から18.6メートル)前後であること,トンネル上の土被による振動の減衰については,多少のばらつきはあるものの,土被の厚さが増加するのと比例して直線的に振動が減衰するとの調査結果があること,以上の事実が認められる。 ところで,原告らは,前記計算式により求めた底盤振動レベル(補正前のもの)を50.748デシベルと主張しているところ,これに,前記認定のとおり補正を行うことが相当であると認められる列車のすれ違いによる3デシベルの加算を行うと53.748デシベルとなる。そして,被告らは,防振構造の点を除き,コンクリート道床の場合の複心円シールドトンネルの底盤振動レベルが58デシベル前後となることを自認しているから,両者のうち,より大きな数値である58デシベルと本件評価書による地表振動レベル46デシベルとの差は12デシベルとなるが,この地盤減衰率は,4号線の前記実測による減衰量17デシベルと対比しても合理的な数値と認めることができる。 したがって,地表振動レベルを46デシベルとする本件評 は12デシベルとなるが,この地盤減衰率は,4号線の前記実測による減衰量17デシベルと対比しても合理的な数値と認めることができる。 したがって,地表振動レベルを46デシベルとする本件評価書の数値には合理性があるのに対し,問題を内包した前提に基づいて,トンネル上部から計測しても16メートルを超える土被がある本件土地付近についての地盤減衰をわずか1デシベルとする原告らの主張が不合理なものであることは明らかである。 c 木造家屋による振動の増幅について名古屋市の行った環境影響評価においては,建物の振動を考慮していないこと,本件建物が木造であることについては,当事者間に争いがない。 そこで,木造家屋における振動増幅の存否について判断するに,乙イ第29号証の2によれば,実測による統計に基づき調査した結果,土被が3ないし25メートル前後の場合,地下鉄の走行による振動は,地表に現れる周波数成分としてはほぼ同一になること,木造家屋は多くの共振を持つ振動系であるため,加振の振動数がその共振領域に入れば振動増幅現象がしばしば現れること,木造家屋における振動増幅は,建物の新旧にかかわらず板床及び板壁などでおおむね10デシベル前後であり,柱は地表振動レベルと同程度であること,以上の事実が認められる。 そうすると,本件建物に対する振動の影響につき考察する際には,前記地表振動レベル46デシベルに10デシベルを加算した56デシベルを家屋内における振動予測値として採用すべきであるが,乙イ第4号証の1によれば,住居内振動の認知限界は55デシベルであると認められるから,上記振動が居住者に不快感ないしそれ以上の被害を与えるものであるとは到底認め難い。 イその他の利益について原告らは,地下鉄の走 内振動の認知限界は55デシベルであると認められるから,上記振動が居住者に不快感ないしそれ以上の被害を与えるものであるとは到底認め難い。 イその他の利益について原告らは,地下鉄の走行に伴う振動被害以外に,走行に伴う騒音被害及び本件事業の工事実施に伴う振動被害が予想されるとも主張するものの,これらの被害については,その具体的内容について全く主張,立証しないから,採用できない。 (4) 代替案についてア原告らは,本件事業の起業者である名古屋市に対し,平成9年3月に,瑞穂陸上競技場と山崎川の下を通る本件代替案が提案されていたことを,裁量権の逸脱又は濫用の一要素として主張するので,この点について判断する。 (ア) 河川下を通過することについて本件代替案が,山崎川の河川下を縦断的に通過するものであることは前記争いのない事実等のとおりである。 ところで,河川法24条は「河川区域内の土地を占用しようとする者は,建設省(現国土交通省)令で定めるところにより,河川管理者の許可を受けなければならない。」と規定し,平成11年8月5日付け建設事務次官通達中の「河川敷地占用許可準則」は,「工作物は,原則として河川の縦断方向に設けないものであり,かつ,洪水時の流出などにより河川を損傷させないものであること。」と規定している(第八,2の五)。また,平成6年9月22日付け建設省治水課長通達中の「工作物設置許可基準」は,「河底横過トンネルの平面形状は直線とし,設置の方向は洪水時の流水の方向に対して直角を基本とするものとすること。」と規定している(第18章,第36条の1共通事項①)。これらによれば,河川下の利用については,治水上の観点から制約が設けられており,しかも,本件代替案のように,河川下に縦断的にトンネ すること。」と規定している(第18章,第36条の1共通事項①)。これらによれば,河川下の利用については,治水上の観点から制約が設けられており,しかも,本件代替案のように,河川下に縦断的にトンネルを設けることは,原則として許されていないことが認められる。 この点,原告らは,平成9年の河川法改正及び同11年の「河川敷地占用許可準則」の改正の趣旨を根拠に,河川敷の積極的,拡大活用を進めるべきであると主張し,東京の新川下の地下駐車場をその例証として挙げるが,証拠(乙イ22,23)及び弁論の全趣旨によれば,新川が,水の動きがなく治水上問題がない「死に川」であるのに対し,本件代替案が通過する山崎川は,千種区の猫ヶ洞池に源を発し名古屋港に至る全長13.6キロメートルのいわば「生きた」河川であること,建設省としては,河川下の土地利用は「死に川」に限って認める方針であることが認められ,これらの事実に上記各制約を総合考慮すると,本件代替案には河川法及び治水行政上難点があるといわざるを得ない。 (イ) カーブの増加について本件代替案が多くのS字状曲線を有する軌道を内容とするものであることは前記争いのない事実等のとおりであるところ,このような軌道が採用された場合,一応,かかるカーブが,普通鉄道構造規則10条に規定する基準を満たすとしても,同規則12条,15条及び16条並びに鉄道運転規則84条2項によりレールの構造が複雑となり,保守点検の負担が増大するほか,安全確保にも問題が生じ,速度も制限されることとなって,営業効率にも影響すると認められる。また,乗客の乗り心地や立客の安全性について悪影響を与えることも容易に推測できるところである。 イ以上認定,判断のとおり,本件代替案は重大な問題点を抱えている上, 響すると認められる。また,乗客の乗り心地や立客の安全性について悪影響を与えることも容易に推測できるところである。 イ以上認定,判断のとおり,本件代替案は重大な問題点を抱えている上,代替案を採用した場合に建設費用が増大することは原告らも争わない。そうすると,本件代替案に関するその余の問題点について検討するまでもなく,本件代替案を採用しなかったことが裁量権の逸脱又は濫用に該当し,ひいては本件処分の合理性,公益性を喪失させるとの原告らの主張は採用できない。 (5) 総合判断以上を総合的に判断すると,本件事業によって得られる公共上の利益は大きく,本件事業には大きな公益性が認められる一方で,原告らが本件事業の実施により所定の補償を受けることによっても償い難いような不利益を受けるとは認められないのであるから,本件処分には,何ら裁量権の逸脱又は濫用は認められない。 なお,原告らは,本件処分には,都市計画の不存在や住民に対する説明の欠如等,都市計画上の違法が存在する旨主張するが,本件事業はそもそも都市計画法上の都市計画事業として認可されたものではないから,都市計画上の違法と本件処分の違法性とは直ちに結びつく関係にはない上,そもそも,前記争いのない事実等及び乙イ第4号証の1によれば,名古屋市は,住民に対して都市計画の説明を必要かつ十分な程度に行ってきたことが認められるから,原告らの上記主張はその前提を欠くものとして採用できない。 したがって,本件処分が法20条3号,4号に違反するものである旨の原告らの主張には理由がない。 3 争点(3)(違法性の承継)について原告らの主張する本件裁決の違法事由は,本件処分の違法事由と共通するところ,上記のとおり,本件処分には何らの違法事由も認められないのであるから,本件 3 争点(3)(違法性の承継)について原告らの主張する本件裁決の違法事由は,本件処分の違法事由と共通するところ,上記のとおり,本件処分には何らの違法事由も認められないのであるから,本件裁決も適法というべきである。 第4 結論以上の次第で,原告らの請求はいずれも理由がないからこれらを棄却し,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部裁判長裁判官加藤幸雄裁判官橋本都月裁判官小嶋宏幸

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