主文 1 本件各訴えをいずれも却下する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告ら(請求の趣旨)(1) 被告が平成16年9月2日付けでした横須賀市選挙人名簿の登録についての原告らの異議の申出に対し,被告が同月8日付けでした異議の申出を却下する旨の各決定をいずれも取り消す。 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告(1) 本案前の答弁主文と同旨(2) 本案の答弁ア原告らの各請求をいずれも棄却する。 イ訴訟費用は原告らの負担とする。 第2 事案の概要被告が公職選挙法22条1項の規定に基づき平成16年9月2日付けで横須賀市の選挙人名簿の登録を行った(以下「本件登録」という。)ところ,選挙人である原告らにおいて,横須賀市内に住所を有していないAが横須賀市の選挙人名簿に登録されているのは違法であるとして,同法24条1項の規定に基づき被告に対し異議の申出をした(以下「本件各異議の申出」という。)。 これに対し,被告は,公職選挙法24条1項の規定に基づく異議の申出の対象となる事項は選挙人名簿への追加登録者に関する事項に限られるところ,Aは横須賀市の選挙人名簿に既に登録済みの者であり,被告が平成16年9月2日付けで行った選挙人名簿への追加登録者に含まれていないから,同人に関する事項は上記異議の申出の対象にならないとして,同月8日付けで本件各異議の申出を却下する旨の各決定をした。 そこで,原告らは,公職選挙法24条1項の規定に基づく異議の申出の対象は追加登録者に関する事項に限られるものではなく,また,Aは横須賀市内に「住所を有する」者(同法21条1項)とはいえないから,上記各却下決定は違法であるとして,同法25条の規定に基づき上記各却下決定の取消しを求めて本件訴訟を提起 れるものではなく,また,Aは横須賀市内に「住所を有する」者(同法21条1項)とはいえないから,上記各却下決定は違法であるとして,同法25条の規定に基づき上記各却下決定の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 第3 争点本件の争点は,①本案前の争点(本件各訴えの適法性に関する争点)と,②本案に関する争点(原告らの請求の当否に関する争点),に分かれる。 ① 本案前の争点は,選挙人である原告らは,本件登録の時点より前に既に横須賀市の選挙人名簿に登録されているAの登録に関する不服を理由として,適法に,公職選挙法24条1項の規定に基づく異議の申出をし,また,公職選挙法25条の規定に基づく訴訟を提起することができるかどうか② 本案に関する争点は,Aが,横須賀市内に「住所を有する」者(公職選挙法21条1項)といえるかどうかである。 第4 争点に関する当事者の主張 1 争点①について【被告の主張】(1) 公職選挙法19条1項は「選挙人名簿は,永久に据え置く」と規定しているところ,「永久に据え置く」とは,選挙人名簿に登録されたときは,その登録は永久に効力を有し,死亡,国籍喪失又は他の市町村の区域に住所を移し4か月を経過するに至ったとき等,法定の手続によって抹消される場合のほかはその効力を失わないことをいうと解され,いわゆる永久選挙人名簿制度を採用している。よって,既に選挙人名簿に登録されている者(既登録者)については,公職選挙法19条1項により,その登録が死亡等の事由がない限り永久に効力を有しているので,いったん同法22条1項の定時登録あるいは同条2項の選挙時登録により登録された既登録者について,定時登録あるいは選挙時登録において改めて登録をすることはない。 したがって,公職選挙法22条が規定する選挙人名簿への登録とは,その登録の前回の定時登録な 時登録により登録された既登録者について,定時登録あるいは選挙時登録において改めて登録をすることはない。 したがって,公職選挙法22条が規定する選挙人名簿への登録とは,その登録の前回の定時登録ないし選挙時登録が行われた後に同法21条が規定する被登録資格を有するに至った者の登録(以下「追加登録」という。)を指すものである。 (2) そして,公職選挙法23条1項は「前条・・・の規定により選挙人名簿に登録した者の氏名,住所及び生年月日を記載した書面を縦覧に供さなければならない。」と規定しているから,追加登録者の氏名,住所及び生年月日を記載した書面のみが同項の規定に基づく縦覧の対象となると解すべきである。 (3) そして,公職選挙法24条1項の異議の申出が縦覧期間内に限られ,かつ,上記(2)のとおり,縦覧の対象が追加登録者の氏名,住所及び生年月日を記載した書面のみであり,選挙人名簿そのものの縦覧は予定されていないことからすれば,定時登録及び選挙時登録という追加登録のみが異議の申出の対象となり,既登録者の登録に関する不服については同項の規定に基づく異議の申出の対象となり得ないものと解すべきである。 (4) そして,公職選挙法25条1項が規定する「前条第2項の規定による決定に不服がある」場合とは,追加登録者について異議を申し出た場合であって,同条は既登録者についてまでその登録の効力を争う訴訟を予定しておらず,選挙人名簿全般についてその脱漏及び誤載等の名簿自体の効力を争う訴訟を法が認めたものではないと解すべきである(徳島地方裁判所平成10年3月27日判決・判例タイムズ986号204頁)。 したがって,既登録者に係る登録の適否については,公職選挙法24条の登録に関する異議の申出とこれを前提とする同法25条の訴訟によって争うことはできない。 (5) 上 タイムズ986号204頁)。 したがって,既登録者に係る登録の適否については,公職選挙法24条の登録に関する異議の申出とこれを前提とする同法25条の訴訟によって争うことはできない。 (5) 上記のような解釈は,下記のような公職選挙法の改正の経過等に照らしても合理性を有するものである。 ア昭和41年法律第77号による公職選挙法改正により永久選挙人名簿が採用される前は,選挙人名簿は,毎年全面的に作り直す一年据え置きの基本選挙人名簿と,選挙時に補充的に調製される補充選挙人名簿の2種類があった。 そして,この定時又は選挙時に調製される基本選挙人名簿及び補充選挙人名簿そのものが縦覧に供され,かつ,その名簿の脱漏又は誤載に関しての異議の申出ができることになっていた。 イしかし,昭和41年法律第77号による公職選挙法改正により永久選挙人名簿が採用されたところ,この永久選挙人名簿としての選挙人名簿の性格は現在に至るまで変更されていない。 ウまた,昭和41年法律第77号による公職選挙法改正では,他の市町村に転出したことにより選挙人名簿から抹消すべき者の決定について,選挙人名簿に登録すべき者の決定についての縦覧,異議の申出,訴訟及び登録の手続が準用されており,選挙人名簿から抹消すべき者として決定された者についても登録期に縦覧の上抹消することとされていたが,昭和44年法律第30号による公職選挙法改正により,選挙人名簿からの抹消は実際の運用上ほとんど公簿である住民基本台帳に基づいて行われることとなる上,登録の場合と異なり,抹消については縦覧に供する意味に乏しいと考えられたことから,抹消についての縦覧制度が廃止され,選挙人名簿に登録されている者が抹消事由に該当するに至ったときは直ちに抹消し,その旨を告示しなければならないこととされ,登録抹消者の氏名,住 いと考えられたことから,抹消についての縦覧制度が廃止され,選挙人名簿に登録されている者が抹消事由に該当するに至ったときは直ちに抹消し,その旨を告示しなければならないこととされ,登録抹消者の氏名,住所等は縦覧には供されないことになったものである。 (6) そもそも,選挙に関する訴訟は,行政事件訴訟法において民衆訴訟と定義され,訴えの提起については同法42条によって「法律に定める場合において,法律に定める者に限り,提起することができる。」ものとされている。 そして,他人の選挙人名簿への登録について不服のある者は,自己の権利の救済を求めるものではないことから,どのような訴えを認めるかはまさに立法政策上の問題であり,現行法上,定時登録又は選挙時登録という追加登録についてのみ,いわゆる名簿訴訟の対象とされているに過ぎない。 他方,公職選挙法29条2項は,市町村の選挙管理委員会は選挙人名簿の抄本を閲覧に供しなければならないとしているから,選挙人は追加登録者のみならず既登録者についても名簿登録の有無について確認することができるのであり,同条3項において,「選挙人は,選挙人名簿に脱漏,誤載又は誤記があると認めるときは,市町村の選挙管理委員会に選挙人名簿の修正に関し,調査の請求をすることができる。」と規定されているところ,上記「誤載」には,登録すべき資格を有しないにもかかわらず誤って登録された者のほか,その後において資格を有しなくなった者も含まれると解されることから,選挙人に対し,既登録者に関して選挙人名簿を是正する端緒を与える方法が用意されているのである。 さらに,公職選挙法28条には,住所を有しなくなった日後4か月を経過するに至った既登録者について,市町村選挙管理委員会は,直ちに抹消しなければならない旨が規定されている。 このように,公職選挙法 さらに,公職選挙法28条には,住所を有しなくなった日後4か月を経過するに至った既登録者について,市町村選挙管理委員会は,直ちに抹消しなければならない旨が規定されている。 このように,公職選挙法は,選挙人名簿の抄本閲覧制度,選挙管理委員会に対する選挙人名簿の修正に関する調査請求及び選挙管理委員会による登録の抹消の制度を設けており,選挙人が既登録者の誤載について是正する方法が用意されているのであり,選挙人名簿の公正の確保の観点から,特段問題はないものである。 (7) 本件の場合,Aは,昭和17年○月○日生まれであり,満20歳に達するのは同37年○月○日であるところ,同37年7月1日には参議院議員通常選挙が行われているので,Aが当時の公職選挙法26条の規定に基づき選挙管理委員会に申請を行っていれば,この参議院議員通常選挙の補充選挙人名簿に登録されたはずであり,仮にAが上記申請を行っていなかった場合でも,当時の公職選挙法20条の規定により昭和37年9月の基本選挙人名簿に登録されたものと認められる。 そして,Aは,それ以後住所の移動がないので,現在まで横須賀市の選挙人名簿に登録されている。 したがって,本件訴えは,被告が本件登録を行った時までに,既に選挙人名簿に登録済みの者について登録の効力を争うものであるから,不適法であり,却下されるべきである。 【原告らの主張】(1) 公職選挙法22条1項は「市町村の選挙管理委員会は,登録月の1日現在により,当該市町村の選挙人名簿に登録される資格を有する者を当該登録月の2日に選挙人名簿に登録しなければならない。」として,いわゆる定時登録について規定している。他方,市町村の選挙管理委員会は選挙人名簿の「調製」を行う義務を負っており(公職選挙法19条2項),この「調製」には登録無資格者の除斥(抹消)も含ま 」として,いわゆる定時登録について規定している。他方,市町村の選挙管理委員会は選挙人名簿の「調製」を行う義務を負っており(公職選挙法19条2項),この「調製」には登録無資格者の除斥(抹消)も含まれる(同法28条参照)。したがって,市町村の選挙管理委員会は,公職選挙法22条1項の定時登録の際に,選挙人名簿に登録される資格を有する者すべてについてチェックをし,登録要件に欠ける者が選挙人名簿に登録されていた場合は,その者を選挙人名簿から削除しなければならないものであり,同項の定時登録は,同法21条1項(被登録資格等)の要件を充足する者すべてについて行わなければならないものである。 そして,公職選挙法23条1項は「前条第1項の規定による登録については・・・縦覧に供さなければならない。」と規定しているから,同項において縦覧が予定されているのは,上記定時登録における同法21条1項に規定する登録有資格者すべてが記載された選挙人名簿であると解される。 (2) そもそも公職選挙法23条の縦覧制度は,選挙人が,選挙委員会の故意や過失による登録忘れ,削除行為,不削除行為をチェックし,選挙人名簿への登録不適格者がいることを指摘するための制度である。 そして,選挙人名簿の個々の登録内容の誤り,すなわち選挙人名簿の脱漏,誤載に帰する瑕疵は,公職選挙法24条,25条所定の手続によってのみ争われるべきものである(最高裁判所昭和53年7月10日第一小法廷判決・民集32巻5号904頁)から,縦覧の対象は調製された選挙人名簿と同一内容の文書でなければならず,既登録者に関する事項も含まれることは明らかである。 したがって,公職選挙法23条1項における縦覧の対象について,同項後段部分にある「同条(公職選挙法22条)の規定により選挙人名簿に登録した者」とは,定時登録ごとに名 も含まれることは明らかである。 したがって,公職選挙法23条1項における縦覧の対象について,同項後段部分にある「同条(公職選挙法22条)の規定により選挙人名簿に登録した者」とは,定時登録ごとに名簿の調製を要するものであることから,すべての選挙人を意味するものであって,追加登録者に限定されないことは明らかである。 (3) 公職選挙法23条の「縦覧」の意義に関し,大審院の判決に,「衆議院選挙法施行令第7条及び衆法第20条(現行の公職選挙法23条)の規定は選挙人名簿の正確を期するがため該名簿の確定前予め選挙人をして該名簿の脱漏又は誤載の有無を検し法第21条(現行の公職選挙法24条)に依る修正申立の機会を得せしむる趣意なり」としているものがあり,縦覧の対象物は,「脱漏」のみならず「誤載」の有無をチェックする機会を与える目的においての「選挙人名簿」を指すことは,上記判決からも明らかである。 (4) 選挙管理委員会の処分の誤りについて,選挙人が指摘し改めさせる法律上の手続が存在しないシステムは,行政に対する司法的チェックを核心とする民主主義国家ではあり得ないことである。被告の解釈では,選挙人の確定という重要な行為に関する選挙管理委員会の処分の誤りについて,選挙人に司法的に改めさせる法律上の手続を認めないことになり,行政処分に対する民主的チェックのシステムを否定することになる。 また,既登録者であろうとなかろうと,選挙人名簿から抹消すべき者が抹消されていないときに,選挙人に無資格者の投票を防止するために異議申立てや訴訟等のチェック権限が存しないことは国民主権の本旨にも反する。 上記(2)のとおり,最高裁判所の判例が「選挙人名簿の脱漏,誤載に帰する瑕疵は,公職選挙法24条,25条所定の手続によってのみ争われるべきもの」としていることとの整合性も斟酌 権の本旨にも反する。 上記(2)のとおり,最高裁判所の判例が「選挙人名簿の脱漏,誤載に帰する瑕疵は,公職選挙法24条,25条所定の手続によってのみ争われるべきもの」としていることとの整合性も斟酌すれば,本来抹消すべき者を誤って選挙人名簿に登録しているケースについて,縦覧手続,異議申立て,行政訴訟の提起を経て,選挙人が訂正させる手続が存在して当然である。 (5) また,公職選挙法24条の異議の申出の要件は,①申出人が選挙人であること,②選挙人名簿の登録に関し不服があること,③縦覧期間中に限られること,④選挙人名簿の調製責任者である市町村の選挙管理委員会に対して行うこと,⑤文書をもってこれをしなければならないこと,であり,異議の申出の対象となる者が同法23条1項の縦覧に供された対象者に限られないことは明らかであるから,同法23条1項の縦覧に供する対象者として選挙人名簿に掲載されているか否かに関係なく,上記要件を充足するならば,異議の申出は適法である。 2 争点②について【原告らの主張】公職選挙法21条1項は「選挙人名簿の登録は,当該市町村の区域内に住所を有する・・・者について行う。」と規定しているところ,「住所」とは,住民票のあるところではなく,あくまでも「生活の本拠」をいうものである(最高裁判所昭和29年10月20日大法廷判決・民集8巻10号1907頁)。 Aは,生活の本拠を,国会議員就任以降は東京に置いており,特に内閣総理大臣就任以降は,東京都千代田区α5番の首相官邸及び東京都品川区βの仮公邸に置いており,住民票上の住所である横須賀市γ1番地で生活をしていない。 したがって,被告は,Aが横須賀市に生活の本拠を有していないことを知りながら横須賀市の選挙人名簿に登録しているものであり,この登録は違法である。 【被告の主張】(1) 公 番地で生活をしていない。 したがって,被告は,Aが横須賀市に生活の本拠を有していないことを知りながら横須賀市の選挙人名簿に登録しているものであり,この登録は違法である。 【被告の主張】(1) 公職選挙法21条1項にいう「住所」とは,生活の本拠,すなわち「その人の生活にもっとも関係の深い一般的生活,全生活の中心」を指すものと解すべきものである(最高裁判所昭和35年3月22日第三小法廷判決・民集14巻4号551頁)。 Aの住民基本台帳における住所は,昭和28年8月20日に横浜市δ4440番地から転入して以来,今日に至るまで「横須賀市γ1番地」であり,異動のないことは住民票から明らかである。この住民基本台帳の記載は,本人の意思を示すものとして住所を認定する有力な資料である。 Aは,昭和44年12月27日執行の衆議院議員神奈川2区選挙区選挙に初めて立候補し,昭和47年の同選挙において初当選して以来,国会議員として11期連続して当選しており,この間政治活動をはじめとする一般的な生活,全生活の中心が,上記「横須賀市γ1番地」に存在することは疑う余地がない。 Aが現在内閣総理大臣の要職にあり,極めて多忙なため,仮に「横須賀市γ1番地」の私邸に帰る機会が少ないとしても,何らその住所に変更があるものではない。 (2) また,具体的な係争の法律関係を離れて,「住所」ないし「生活の本拠」の存否を認定するというのは不合理であり,又無理なことである。公職選挙法における「住所」とは,「最も深い政治的な結び付きをもっている土地」で,「地方自治上の選挙権の行使が最も適正に行われる」ところでなければならないのである(水戸地方裁判所昭和29年3月18日判決・行裁集5巻3号492頁)。 よって,単に寝泊まりをしている場所を「住所」とするべきものではない。 この観点か に行われる」ところでなければならないのである(水戸地方裁判所昭和29年3月18日判決・行裁集5巻3号492頁)。 よって,単に寝泊まりをしている場所を「住所」とするべきものではない。 この観点からみると,平成15年11月9日執行の衆議院議員総選挙における立候補届出の告示及び当選告示におけるAの住所は上記「横須賀市γ1番地」であり,Aにとって,公職選挙法上の住所については同所とするのが相当である。 また,私生活の面でも,ハローページ,水道料金領収証,電気料金領収証及びガス料金領収証において,Aの住所として上記「横須賀市γ1番地」が記載されており,さらに,同所にはAの私邸があり,「A」と表札を掛けて存在している。 第6 当裁判所の判断 1 争点①について(1) 問題の所在争点①に関する判断については,公職選挙法22条ないし25条が定める「登録」,「縦覧」,「異議の申出」,「訴訟」という一連の手続の構造及びこれに関する各規定の内容を通覧すれば,同法22条が規定する選挙人名簿への「登録」とは,被告が主張するように,その登録の前回の定時登録ないし選挙時登録が行われた後に同法21条が規定する被登録資格を有するに至った者の登録すなわち追加登録を意味するものと解するのが相当なのか(争点①に関する【被告の主張】(1)第2段),それとも,原告らが主張するように,その登録をすべき時点において同法21条が規定する被登録者資格を有する者すべてについて登録をすることを意味するものと解するのが相当なのか(争点①に関する【原告らの主張】(1)第1段),の点がその核心をなすものということができる。 しかし,この論点について,公職選挙法22条の規定の文言や内容それ自体から直ちにそのいずれに解するのが相当なのかを判断することは困難というべきであって,同法第4章の「選 すものということができる。 しかし,この論点について,公職選挙法22条の規定の文言や内容それ自体から直ちにそのいずれに解するのが相当なのかを判断することは困難というべきであって,同法第4章の「選挙人名簿」に関する各規定の内容や,その相互関係を検討する必要がある。 また,公職選挙法第4章の選挙人名簿に関する諸規定については,過去に数度にわたる改正が行われており,現行の各規定の解釈に当たっては,これらの改正の経緯を踏まえることが重要である。 (2) 公職選挙法の選挙人名簿に関する規定の改正の経緯についてそこで,まず,上記の公職選挙法の選挙人名簿に関する規定の改正経緯のうち,争点①と関係する主要な改正について考察することとする(なお,以下に記載する条文は,各時点におけるものを指す。)。 ア昭和41年改正前の公職選挙法第4章の規定について(ア) 昭和41年法律第77号による改正がされる前の公職選挙法は,「選挙人名簿は,この法律に特別の定がある場合を除く外,各選挙を通じて一の基本選挙人名簿及び補充選挙人名簿とする。」(同法19条1項)と規定されていた。そして,基本選挙人名簿及び補充選挙人名簿そのものが,定時又は選挙時に調製しなければならないものとされ(同法20条,21条,26条),基本選挙人名簿及び補充選挙人名簿は,一定期間を限ってその効力を有するものとされていた。 (イ) そして,調製された各名簿そのものが縦覧に供され(公職選挙法22条,27条),選挙人は,各名簿に脱漏又は誤載があると認めるときは市町村の選挙管理委員会に異議を申し出ることができ(同法23条,29条),これに対する決定については出訴することができる(同法24条,29条)とされていた。 イ昭和41年の公職選挙法第4章の規定の改正について(ア) ところが,急激な人口変動や社会 同法23条,29条),これに対する決定については出訴することができる(同法24条,29条)とされていた。 イ昭和41年の公職選挙法第4章の規定の改正について(ア) ところが,急激な人口変動や社会生活の複雑化により,従来の基本選挙人名簿及び補充選挙人名簿の制度では,選挙人名簿の適正な調製が次第に困難になってきたとして,昭和41年法律第77号による公職選挙法の改正により,選挙人名簿に関する同法19条1項の規定は,「選挙人名簿は,この法律に特別の定めがある場合を除くほか,永久に据えおくものとし,かつ,各選挙を通じて一の名簿とする。」(同法19条1項)と改正され,選挙人名簿の登録は,一定の事由により法定の手続に基づき抹消される場合のほかは,その効力を失わないとされる,いわゆる永久選挙人名簿制度が採用された。 (イ) また,選挙人の選挙人名簿への登録は,一定の場合を除き,市町村の選挙管理委員会に対し登録の申出を行った者について,市町村の選挙管理委員会による登録すべき者の決定,決定した者の氏名及び住所を記載した書面の縦覧という一連の手続を経たうえで,行われることとされた(公職選挙法21条,22条,23条,26条)。 また,選挙人の選挙人名簿からの抹消については,市町村の選挙管理委員会による抹消すべき者の決定,決定した者の氏名及び住所を記載した書面の縦覧という手続を経て行われる場合(公職選挙法27条2項,3項,23条,24条,26条1項)と,市町村の選挙管理委員会によって直ちに抹消される場合(同法27条4項)とが定められた。 そして,上記の各縦覧に供されるのは,市町村の選挙管理委員会が,選挙人名簿に登録すべき者として決定した者及び選挙人名簿から抹消すべき者として決定した者の氏名及び住所を記載した書面とされた(公職選挙法23条1項,27条3項) れるのは,市町村の選挙管理委員会が,選挙人名簿に登録すべき者として決定した者及び選挙人名簿から抹消すべき者として決定した者の氏名及び住所を記載した書面とされた(公職選挙法23条1項,27条3項)。 また,上記市町村の選挙管理委員会による選挙人名簿に登録すべき者の決定又は選挙人名簿から抹消すべき者の決定に関し不服のある選挙人は,異議の申出(公職選挙法24条,27条3項),さらには訴訟の提起(公職選挙法25条,27条3項)ができることとされた。 ウ昭和44年の公職選挙法第4章の規定の改正についてその後,公職選挙法第4章の選挙人名簿に関する規定は,昭和44年法律第30号により,さらに改正されるところとなったが,この改正においては,上記の永久選挙人名簿制度については基本的にこれを維持しつつ(同法19条1項),選挙人の選挙人名簿への登録について,上記イ(イ)に説示した選挙人からの登録の申出,市町村の選挙管理委員会による登録すべき者の決定,決定した者の氏名及び住所を記載した書面の縦覧という一連の手続を経たうえで行われる登録手続が廃止され,選挙人名簿の登録は,市町村の選挙管理委員会が職権で行うこととされた(同法22条)。 また,選挙人の選挙人名簿からの抹消についても,市町村の選挙管理委員会による抹消すべき者の決定,決定された者の氏名及び住所を記載した書面の縦覧という手続を経たうえで行われる抹消手続は廃止され,市町村の選挙管理委員会は,選挙人名簿に登録されている者について登録を抹消すべき事由に該当するに至ったときは,これらの者を直ちに選挙人名簿から抹消しなければならないとされた(公職選挙法28条)。 そして,市町村の選挙管理委員会は,選挙人名簿に登録した者の氏名,住所及び生年月日を記載した書面を縦覧に供しなければならないとされた(公職選挙法 消しなければならないとされた(公職選挙法28条)。 そして,市町村の選挙管理委員会は,選挙人名簿に登録した者の氏名,住所及び生年月日を記載した書面を縦覧に供しなければならないとされた(公職選挙法23条1項)。 また,選挙人は,選挙人名簿の登録に関し不服があるときは,異議の申出(公職選挙法24条),さらには訴訟の提起(公職選挙法25条)ができることとされた。 (3) 現行の公職選挙法における選挙人名簿に関する規定の構造等についてア公職選挙法の選挙人名簿に関する規定は,上記(2)ウの各改正がされた後は大きな改正がされることはなく,現行の公職選挙法における規定となっている。 すなわち,公職選挙法19条1項は「選挙人名簿は,永久に据え置くものと・・・する。」と規定しているところ,ここに「永久に据え置くものとする。」とは,選挙人がいったん選挙人名簿に登録されたときは,その登録は継続的な効力を有するものとし,各選挙ごとに登録の効力が遮断されることはなく,その者が死亡し,又は国籍を喪失し,あるいは同法27条1項の表示(市町村の選挙管理委員会による,当該市町村の区域内に住所を有しなくなったことについての選挙人名簿における表示)をされた者が当該市町村の区域内に住所を有しなくなった日後4か月を経過するに至ったとき等,選挙人名簿から抹消すべき法定の事由に該当するものとして同法28条の規定に従って抹消されない限り,登録の効力が失われることはないということを意味するものと解されるところである(いわゆる「永久選挙人名簿制度」)。 イそうであるとすれば,既に選挙人名簿に登録されている者(既登録者)の登録は,公職選挙法19条1項の規定により,同法28条の規定によって抹消されない限り,継続的な効力を有しているのであるから,登録後,その者について,改めて,同法 名簿に登録されている者(既登録者)の登録は,公職選挙法19条1項の規定により,同法28条の規定によって抹消されない限り,継続的な効力を有しているのであるから,登録後,その者について,改めて,同法22条1項の規定に基づく定時登録又は同条2項の規定に基づく選挙時登録をする必要はないことは明らかである。 ウまた,仮に,公職選挙法22条にいう「登録」とは既登録者を含む同法21条に規定する被登録資格を有するすべての者の新たなる選挙人名簿への登録を意味するものとすれば,登録後に市町村の選挙管理委員会が縦覧に供するのは選挙人名簿そのものであるのが自然であり,条文上もその旨が規定されているのが自然であるということができる(ちなみに,未だ永久選挙人名簿制度が導入されていなかった昭和41年法律第77号による改正前の同法22条,27条においては,選挙人名簿そのものが縦覧に供されていたことは,前記(2)ア(イ)のとおりである。)。 しかし,公職選挙法23条1項は,市町村の選挙管理委員会は「前条・・・の規定により選挙人名簿に登録した者の氏名,住所及び生年月日を記載した書面」を縦覧に供しなければならない旨規定しているのであり,その文言上,選挙人名簿そのものを縦覧することを予定していないことは明らかである。 (4) 公職選挙法22条が規定する選挙人名簿への「登録」の意義等についてア(登録)上記(2)及び(3)において検討してきたよう公職選挙法の選挙人名簿に関する規定の改正の経緯や現行法における選挙人名簿に関する規定の構造等に照らせば,同法22条が規定する選挙人名簿への「登録」とは,その登録の前回の定時登録ないし選挙時登録が行われた後に同法21条が規定する被登録資格を有するに至った者の登録すなわち追加登録を意味するものと解するのが相当というべきである。 イ( の「登録」とは,その登録の前回の定時登録ないし選挙時登録が行われた後に同法21条が規定する被登録資格を有するに至った者の登録すなわち追加登録を意味するものと解するのが相当というべきである。 イ(縦覧)そして,上記(3)ウのように,公職選挙法23条1項は「前条・・・の規定により選挙人名簿に登録した者の氏名,住所及び生年月日を記載した書面を縦覧に供しなければならない。」と規定している。 また,上記(2)イ(イ),ウにみたところから明らかなように,現行法においては,選挙人名簿から抹消すべき者に関する事項を記載した書面は縦覧に供されないこととなっている。 上記のところからすると,公職選挙法23条1項の規定に基づく縦覧の対象となるのは,追加登録者の氏名,住所及び生年月日を記載した書面であって,同法は,選挙人名簿そのものや,選挙人名簿から抹消すべき者に関する事項を記載した書面の縦覧は,これを予定していないものと解すべきである。 ウ(異議の申出)次に,公職選挙法24条1項は「選挙人は,選挙人名簿の登録に関し不服があるときは,縦覧期間内に,文書で当該市町村の選挙管理委員会に異議を申し出ることができる。」と規定しているところ,異議の申出をすることができるのが縦覧期間内に限られ,かつ,上記イのとおり,縦覧の対象となるのは追加登録者の氏名,住所及び生年月日を記載した書面であり,選挙人名簿そのものや選挙人名簿から抹消すべき者に関する事項を記載した書面の縦覧は予定されていないことからすれば,異議の申出の対象となる「選挙人名簿の登録に関」する事項とは,選挙人名簿の追加登録に関する事項をいうものと解するのが相当である。 したがって,既登録者の登録に関する不服については,公職選挙法24条の規定に基づく異議の申出の対象とならないと解するほかはない(なお,上記 の追加登録に関する事項をいうものと解するのが相当である。 したがって,既登録者の登録に関する不服については,公職選挙法24条の規定に基づく異議の申出の対象とならないと解するほかはない(なお,上記(2)イの昭和41年における公職選挙法の改正前においては,選挙人から異議の申出を受けた市町村の選挙管理委員会がその異議の申出が正当であるかどうかを決定しなければならない期間が,異議の申出を受けた日から20日以内(上記改正前の同法23条2項)とされていたのが,上記改正により,異議の申出を受けた日から7日以内(上記改正後の同法24条2項)と大幅に短縮されているが,これは,上記改正により永久選挙人名簿制度が採用され,これに伴い登録の対象者が追加登録者に限られることになり,そのため選挙人からの異議の申出も大きく減少することが予想されたためであると考えられるところであり,同法24条についての上記解釈と整合性を有するものであるということができる。)。 エ(訴訟)さらに,公職選挙法25条1項は「前条第2項の規定による決定に不服がある異議申出人・・・は,当該市町村の選挙管理委員会を被告として・・・出訴することができる。」と規定しているところ,上記ウのとおり,公職選挙法24条の規定に基づく異議の申出の対象となる事項は当該市町村の選挙管理委員会がした選挙人名簿の追加登録に関する不服に限られ,既登録者の登録に関する不服についてはその対象とならないのであるから,上記異議の申出に対する決定を不服とする公職選挙法25条の規定に基づく訴訟においても,当該市町村の選挙管理委員会がした選挙人名簿の追加登録に関する不服のみが審判の対象となり,既登録者の登録に関する不服(選挙人名簿への誤載)については審判の対象とはならないものと解するのが相当である。 オ(原告らの主張について した選挙人名簿の追加登録に関する不服のみが審判の対象となり,既登録者の登録に関する不服(選挙人名簿への誤載)については審判の対象とはならないものと解するのが相当である。 オ(原告らの主張について)原告らは,上記のような公職選挙法の解釈を採ると,選挙人名簿から抹消すべき者が誤って登録されている場合においても,選挙人にはこれを是正させるための司法的手続を認めないことになり,国民主権の本旨に反し,相当でない旨を主張する(争点①に関する【原告らの主張】(4))。 しかし,本件のような,選挙人が他の選挙人に係る選挙人名簿の登録に関する不服を争う訴訟は,選挙人たる資格という自己の法律上の利益にかかわらない資格に基づいて提起し,国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求めるいわゆる民衆訴訟の一種であり(行政事件訴訟法5条),法律に定める場合において,法律に定める者に限り,提起することができるものである(行政事件訴訟法42条)。すなわち,このような争訟についての審判は,憲法76条以下が規定する司法権の固有の領域に属するものではないのであって,法律によって特に裁判所の権限として定められることによって初めて,裁判所において審判権を有することとなるのである(裁判所法3条1項後段参照)。 したがって,選挙人に対し,他の選挙人に係る選挙人名簿の登録に関して,選挙人としての資格においてどのような争訟を認めるかは立法政策の問題なのであり,現行の公職選挙法において,選挙人名簿の登録に関する訴訟について選挙人名簿への追加登録に関する不服のみが審判の対象となるものと限定し,既登録者の登録に関する不服(選挙人名簿への誤載)についての争訟を用意していないとしても,そのことをもって,裁判所において裁判を受ける権利を保障する憲法32条の規定の趣旨との関連におい のと限定し,既登録者の登録に関する不服(選挙人名簿への誤載)についての争訟を用意していないとしても,そのことをもって,裁判所において裁判を受ける権利を保障する憲法32条の規定の趣旨との関連においても,ただちに不合理であるということはできないというべきである。 そして,公職選挙法は,市町村の選挙管理委員会は,選挙人名簿に登録されている者の記載内容に変更があったこと又は誤りがあることを知った場合には,直ちにその記載の修正又は訂正をしなければならないとし(同法27条2項),当該市町村の選挙人名簿に登録されている者について,当該市町村の区域内に住所を有しなくなった者が住所を有しなくなった日後4か月を経過するに至った場合や,登録の際に登録されるべきでなかったことを知った場合等には,その者を直ちに選挙人名簿から抹消しなければならないとしている(同法28条,27条1項)のである。 そして,同法28条2号及び3号の事由により選挙人名簿から抹消する場合には,市町村の選挙管理委員会においてその旨を告示することとされているのである。 また,市町村の選挙管理委員会は,選挙の期日の公示又は告示の日から選挙の期日後5日に当たる日までの間を除いて,選挙人名簿の抄本を閲覧に供しなければならないとしている(公職選挙法29条2項)から,選挙人は,追加登録者ばかりでなく,既登録者についても,選挙人名簿により誤載の有無等を調査することが可能である。さらに,公職選挙法は,選挙人は,選挙人名簿に脱漏,誤載又は誤記があると認めるときは,市町村の選挙管理委員会に選挙人名簿の修正に関し,調査の請求をすることができると規定している(同条3項)ところでもある。 このように,現行の公職選挙法においても,選挙管理委員会に選挙人名簿の記載の修正及び訂正義務並びに被登録資格を有しない者の抹消義 の請求をすることができると規定している(同条3項)ところでもある。 このように,現行の公職選挙法においても,選挙管理委員会に選挙人名簿の記載の修正及び訂正義務並びに被登録資格を有しない者の抹消義務を課しているとともに,選挙人名簿の抄本閲覧制度や市町村選挙管理委員会への名簿修正に関する調査請求制度を設けており,選挙人が既登録者の選挙人名簿への誤載について是正を求める方法も用意されていることに照らせば,選挙人名簿の登録に関する訴訟について,選挙人名簿への追加登録に関する不服のみを審判の対象とし,既登録者の登録に関する不服(選挙人名簿への誤載)についての争訟を用意していないからといって,それが不合理であるということができないことは明らかである。 (5)小括本件において,Aは,被告が平成16年9月2日に公職選挙法22条1項の規定に基づいてした横須賀市の選挙人名簿への追加登録(本件登録)より前に行われた登録によって,既に横須賀市の選挙人名簿に登録されている既登録者であって,本件登録の対象者には含まれていない〔乙6,21号証,弁論の全趣旨〕。 したがって,既登録者であるAの横須賀市選挙人名簿への登録に関する不服(誤載の有無)については,公職選挙法24条1項の規定に基づいて適法に異議の申出をすることはできず,したがってまた,公職選挙法25条の規定に基づく本件訴訟における審判の対象とはならないというべきである。 2 まとめ上記のとおり,本件各訴えは,公職選挙法25条の規定に基づく訴訟における審判の対象とはならない事項に関する訴えであるから,いずれも不適法である。 第7 結論以上のとおりであって,本件各訴えは,いずれも不適法であるからこれらを却下することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して 法である。 第7 結論以上のとおりであって,本件各訴えは,いずれも不適法であるからこれらを却下することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 横浜地方裁判所第1民事部裁判長裁判官川勝隆之裁判官菊池絵理裁判官諸岡慎介
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